JP7462382B2 - 容器入り食品の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、容器入り食品、及び容器入り食品の製造方法に関する。
豆腐は、大豆から作製した豆乳を、塩化マグネシウム、又はその他食品衛生法で認められている凝固剤によって固めた加工食品である。工業的に製造して流通させる豆腐は、容器に収容して密閉した形態で製品化されている。
豆腐製品の形態として、豆乳と凝固剤を含む原料液を容器に満量充填して密閉し、熱湯槽又は蒸気槽中に浸漬して、原料液を加熱凝固させた充填豆腐が知られている(例えば特許文献1)。
特開昭62-195262号公報
このような、原料液を容器に満量充填して密閉した後、熱湯槽等に浸漬して加熱殺菌する従来の充填豆腐の製法では、容器内に隙間なく充填された製品形態以外の製品設計が難しい。
本発明は、新規な容器入り食品及びその製造方法を提供する。
本発明は以下の態様を有する。
[1] 容器と、前記容器内に収容された食品と、前記容器を密閉する蓋とを備え、前記食品は、大豆由来タンパク質と凝固剤とを含む原料液が前記容器内で凝固した豆腐様組成物を含み、前記食品と前記蓋との間にヘッドスペースが存在する、容器入り食品。
[2] 前記食品が、前記豆腐様組成物からなる第1層と、前記第1層とは組成が異なる第2層を含む、[1]の容器入り食品。
[3] 開口部を有する容器に、大豆由来タンパク質と凝固剤とを含む原料液を充填し、前記開口部を開放した状態で加熱して前記原料液を凝固させた後、前記開口部を蓋で密閉する、容器入り食品の製造方法。
[4] 開口部を有する容器に、大豆由来タンパク質と凝固剤とを含む第1原料液と、
前記第1原料液とは組成が異なる第2原料液を充填し、前記開口部を開放した状態で加熱して、少なくとも前記第1原料液を凝固させた後、前記開口部を蓋で密閉する、容器入り食品の製造方法。
[5] 前記第1原料液と前記第2原料液の比重差が0.04以上である、[4]の製造方法。
[6] 前記第2原料液の比重が前記第1原料液の比重より高く、前記第1原料液の粘度がV1(mPa・s)、前記第2原料液の粘度がV2(mPa・s)であるとき、100<V1≦3000かつ10≦V2≦400、又は10≦V1≦100かつ50≦V2≦3000である、[4]又は[5]の製造方法。
本発明によれば、容器内にヘッドスペースを有する新規な容器入り食品が得られる。さらに、当該食品は、豆腐様組成物からなる第1層と、当該第1層とは組成が異なる第2層を含む2層の食品とすることができる。
本発明の容器入り食品は、容器と、容器内に収容された食品と、容器を密閉する蓋とを備え、容器内の食品と蓋との間にはヘッドスペースが存在する。
容器内の食品は、少なくとも、容器内で凝固した豆腐様組成物を含む。
本明細書において、豆腐様組成物とは、大豆由来タンパク質と凝固剤を含む原料液の凝固物を意味する。
ヘッドスペースが存在するとは、容器内の食品と蓋との間に空気層が存在することを意味する。
本明細書において「~」で表される数値範囲は、~の前後の数値を下限値及び上限値とする数値範囲を意味する。
容器内の食品は、1種の豆腐様組成物のみからなっていてもよく、豆腐様組成物からなる第1層と、第1層とは組成が異なる第2層を有する多層食品であってもよい。
本明細書において、多層食品の「層」とは、組成が均一な領域を意味し、連続層であってもよく、不連続層であってもよい。多層食品は、連続層が積層された形態が好ましいが、連続層中に不連続層が存在する海島状の形態であってもよい。
多層食品を構成する各層は混じり合わずに分離している。各層の境界面は明瞭であることが好ましいが、不明瞭な部分が存在してもよい。
多層食品において、各層の割合は特に限定されない。豆腐様の風味が充分に得られやすい点では、食品の総質量に対して、第1層が70質量%以上であることが好ましく、80質量%以上がより好ましい。上限は、多層とすることによる製品の差別化を図りやすい点では98質量%以下であることが好ましく、95質量%以下がより好ましい。
<第1実施形態>
本実施形態の容器入り食品は、容器内の食品が、1種の豆腐様組成物のみからなる。
[豆腐様組成物]
本実施形態における豆腐様組成物は、大豆由来タンパク質と凝固剤を含む原料液を、容器内で凝固させて得られる。
大豆由来タンパク質を含む原料としては、豆乳、大豆から分離した大豆タンパク質、大豆粉等が挙げられる。これらは1種を用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
豆乳は、大豆又は大豆由来の原材料を含む豆乳であれば特に限定されない。大豆の品種、産地は特に限定されない。通常の豆腐用豆乳を使用できる。豆乳は、乳化剤(グリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル等の消泡剤を含む)やpH調整剤(炭酸カルシウムなど)等の品質改良剤を含んでいてもよい。超高温殺菌(UHT)等の加熱殺菌済みの豆乳や大豆繊維質を含む豆乳(全粒豆乳ないしオカラ乳)であってもよい。
大豆タンパク質は、大豆から分離されたタンパク質であれば特に制限されない。例えば、脱脂大豆からタンパク質を抽出し、噴霧乾燥した粉状の製品が望ましい。市販の粉状大豆タンパク質として、ニューフジプロSEH(不二製油社製)、プロリーナ300(不二製油社製)、フジプロCL(不二製油社製)、スプロ500E(Solae社製)等が挙げられる。
凝固剤は、豆腐の製造において公知の凝固剤を使用できる。例えば、塩化マグネシウム、塩化カルシウム、グルコノデルタラクトン、硫酸カルシウムが挙げられる。2種以上の凝固剤を併用してもよい。
塩化マグネシウムとして、塩化マグネシウム・6水和物、塩化マグネシウム・無水和物、又は粗製海水塩化マグネシウムを使用してもよく、これらを併用してもよい。
塩化カルシウムとして、塩化カルシウム・2水和物、又は塩化カルシウム・無水和物を使用してもよくこれらを併用してもよい。
原料液は必要に応じて水を含んでよい。
原料液は、上記以外のその他の成分を含んでもよい。
その他の成分として、凝固補完剤(トランスグルタミナーゼ、葛粉)、呈味原料(乳類、油脂類、卵、チョコレート、ココアパウダー、コーヒー、茶類、果汁、みりん、タンパク加水分解物、かつおエキス、かつおぶしエキス、酒類、醤油等の発酵調味料等)、食物繊維、ミネラル、ビタミン、バイオジェネクス素材、乳化剤、調味料(糖類、糖類以外の甘味料、食塩等)、香料、色素等が挙げられる。
バイオジェネクス素材とは、直接、あるいは腸内フローラを介して、免疫賦活効果、コレステロール低下作用、血圧降下作用、整腸作用、抗腫瘍効果、抗血栓、造血作用等、生体調節、生体防御に効く成分を意味する。例えば乳酸菌、ビフィズス菌等が挙げられるが、加熱殺菌して効能を発揮できるものが好ましい。たとえば、ラクトバチルス・パラカゼイ・MCC1849株、ラクトバチルス・パラカゼイ・MCC1375株が挙げられる。
原料液の総質量に対するタンパク質の含有量は凝固性の確保の点から2.5質量%以上が好ましく、3質量%以上がより好ましく、5質量%以上がさらに好ましい。上限は殺菌適性および充填適性の点から8質量%以下が好ましく、7.5質量%以下がより好ましく、7質量%以下がさらに好ましい。
原料液中のタンパク質の含有量と、原料液の凝固物である豆腐様組成物中のタンパク質の含有量は同じである。
原料液または豆腐様組成物中のタンパク質の含有量は、以下の方法で測定できる。
ケルダール法(日本食品工業学会編、「食品分析法」、第102頁、株式会社光琳、昭和59年)により試料の全窒素量を測定し、窒素たんぱく質換算係数5.71を用いてタンパク質の含有量を算出する。
原料液が少なくとも豆乳を含むことが好ましい。原料液の総質量に対して、豆乳の含有量は40質量%以上が好ましく、70質量%以上がより好ましく、80質量%以上がさらに好ましい。上記範囲の下限値以上であると良好な凝固性と良好な風味が得られやすい。
[容器・蓋]
容器の材質は、原料液を凝固させるための加熱処理温度に対して、耐熱性を有するものであればよい。例えば、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリスチレン(PS)等の樹脂単体(単層)もしくは樹脂混合物、紙、アルミニウムまたはこれらの組み合わせ(複数層の積層物)が使用できる。
容器の形状は、原料液を充填するための開口部と、開口部を密閉するための蓋を有するものが好ましい。例えば、上方に開口部を有する各種カップ状の容器が好ましい。蓋として、例えば、ヒートシール用のプラスチック蓋材を用いてもよく、嵌合式の蓋体を用いてもよい。
容器の容量は、例えば50~500mLが好ましく、50~300mLがより好ましい。
容器内の食品と蓋との間にはヘッドスペースが存在する。ヘッドスペースが小さすぎると、製造工程中に原料液がこぼれたり、蓋で密封するときにシール不良が発生するおそれがある。またヘッドスペースが大きすぎると、容器容量に対して可食部が少なくなり商品価値が低下する。したがって、容器内に存在する食品とヘッドスペースとの比率は、これらの不都合が生じないように設定することが好ましい。
例えば、下記式(1)で表される充填率が55~95%となる範囲が好ましく、58~92%がより好ましく、65~85%がさらに好ましい。
充填率=食品の体積÷容器の容量×100・・・(1)
容器内の豆腐様組成物は、一部が離水していてもよい。離水が生じている場合、離水で生じた分離液と残りの凝固物の合計が豆腐様組成物である。
容器から取り出した豆腐様組成物の全量を、ふるい上に載せ、30秒後にふるいの下に落ちた液の質量を、離水量とする。
外観および食感を損なわないという観点から離水量は少ない方が好ましい。豆腐様組成物の総質量に対して、離水量は3質量%以下が好ましく、1質量%以下がより好ましく、ゼロが最も好ましい。
[製造方法]
本実施形態の容器入り食品は、開口部を有する容器に、大豆由来タンパク質と凝固剤とを含む原料液を充填し、開口部を開放した状態で加熱して原料液を凝固させた後、開口部を蓋で密閉する方法で製造できる。
大豆由来タンパク質を含む原料は、必要に応じて水に溶解してタンパク質含有液とする。タンパク質含有液に凝固剤を添加して原料液を調製する。凝固剤は予め水に溶解した凝固剤溶液の形態で用いることが好ましい。
その他の成分を用いる場合、その他の成分はタンパク質含有液と凝固剤溶液の一方又は両方に含有させる。凝固剤と反応する成分はタンパク質含有液に含有させる。
タンパク質含有液は必要に応じて均質化処理を行ってもよい。
タンパク質含有液は、凝固剤を添加する前に加熱殺菌してもよい。大豆由来タンパク質を含む原料とその他の成分等を別々に加熱殺菌した後に混合してもよい。
凝固剤の使用量は、少なすぎると原料液が充分に凝固せず、多すぎると風味、食感が損なわれるため、これらの不都合が生じない範囲で適宜設定することが好ましい。
凝固剤がタンパク質と接触すると凝固反応が始まり、反応が進むにしたがって原料液の粘度が増大する。
原料液の容器への充填を開始する直前の、原料液の粘度を充填時の粘度V(単位:mPa・s)とする。粘度Vが10~3000mPa・sとなるように、凝固剤の種類及び添加量を調整することが好ましい。
前記Vが上記範囲の下限値以上であると、良好な凝固性が得られやすく、上限値以下であると、製造工程中での原料液の取り扱い性に優れる。前記Vは、10~420mPa・sが好ましく、10~200mPa・sがより好ましい。
本明細書において、粘度は、B型粘度計を用いて測定した値である。
調製した原料液は速やかに容器に充填する。タンパク質含有液に凝固剤を添加した時点から充填開始までの時間は20分以内が好ましく、10分以内が好ましく、5分以内がさらに好ましい。
充填方法は特に限定されない。公知の充填機を用いることができる。例えば、容器の開口部の上方に設けたノズルから、原料液を容器内に吐出する方法を用いることができる。このとき満量充填せずヘッドスペースを設ける。
原料液の容器への充填開始直前の、原料液の温度を充填温度とする。充填温度は、2~25℃が好ましく、5~15℃がより好ましい。上記範囲の下限値以上であると、充填時に原料液が凍結し難く、良好な流動性が得られやすい。上限値以下であると充填時に原料液が凝固し難く、良好な流動性が得られやすい。
次いで、容器の開口部を開放した状態で加熱して原料液を凝固させる。この方法によれば、開口部を閉じた状態で加熱する方法に比べて、離水量を少なくできる。
加熱方法としては、空気、又は水蒸気を含む空気を加熱媒体として用いる方法が好ましい。例えば、空気を媒体とする対流式のコンベクションオーブン内で加熱する方法、水を張ったトレーに容器を並べた状態でコンベクションオーブン内で加熱する方法等が挙げられる。
加熱媒体の温度は、低すぎると原料液が充分に凝固せず、高すぎると凝固物の組織が悪くなるため、これらの不都合が生じない範囲で適宜設定することが好ましい。
例えば、オーブンの炉内温度は90~140℃が好ましく、90~120℃がより好ましい。
加熱時間は、原料液が完全に凝固するのに足りる時間であればよく、加熱温度に応じて設定できる。必要以上に加熱することは外観、風味を悪化させるので好ましくない。したがって加熱時間は、加熱温度にもよるが、一般的には10~120分程度が好ましく、20~60分程度がより好ましい。
加熱により原料液が凝固した後、蓋で開口部を密閉する。加熱後、冷蔵庫に収容するなどして速やかに冷却した後に蓋で密閉することが好ましい。開口部に蓋を被せる直前の品温は、例えば50℃以下が好ましく、30℃以下がより好ましい。上記範囲の上限値以下であると、最終製品の品温に冷却されたときの、ヘッドスペース内の空気の体積減少に伴う容器や蓋の凹みや、容器内での結露発生を防止しやすい。
本実施形態によれば、蓋で密閉された容器に、容器内で凝固した豆腐様組成物が収容されており、豆腐様組成物と蓋との間にヘッドスペースが存在する、新規な容器入り食品が得られる。
従来の充填豆腐は、容器内に豆腐が隙間なく充填されているのに対して、本実施形態の容器入り食品は、容器内にヘッドスペースが存在するため、トッピングを設けることができるなど、製品設計の自由度が高い。
<第2実施形態>
本実施形態の容器入り食品は、容器内の食品が、豆腐様組成物からなる第1層と、第1層とは組成が異なる第2層を有する多層食品である。
豆腐様組成物、容器、蓋、ヘッドスペースは第1実施形態と同様である。第1層を形成する原料液(以下、第1原料液という)は、第1実施形態における原料液と同様である。
第2層は、少なくとも固形分を含む。第2層の固形分濃度は20質量%以上が好ましく、25質量%以上がより好ましく、30質量%以上がさらに好ましい。
本明細書において、固形分の含有量は、固形分(質量%)=100-水分(質量%)で算出した値である。水分含有量は、常圧加熱乾燥法(乾燥助剤添加法)により測定した値である。
第2層は、ゲル状でもよく、流動性を有するゾル状又は液状であってもよい。輸送適性の点では、第2層が、ゲル化原料を含む第2原料液が容器内で凝固したゲル状物であることが好ましい。
ゲル化原料は、冷却によってゲル化する原料、他の成分との反応によってゲル化する原料、加熱によってゲル化する原料のいずれでもよく、それらを組み合わせてもよい。具体例として、ゼラチン、寒天、ペクチン、ジェランガム、ローカストビーンガム、グアーガム、タラガム、キサンタンガム、カラギナン、でん粉、加工デンプン、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、卵、乳たんぱく、大豆たんぱく等が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
第2層中のゲル化原料の種類及び含有量は、所望の保形性と食感を有するゲルが形成されるように設定できる。
第2原料液は必要に応じて水を含んでよい。
第2原料液は、水及びゲル化原料以外のその他の成分を含んでもよい。
その他の成分の例としては、第1実施形態におけるその他の成分と同様のものが挙げられる。
第1原料液の比重と、第2原料液の比重は異なることが好ましい。両者に比重差があると、比重が低い方の原料液を容器に充填した後、比重が高い方の原料液を充填し、その後に第1原料液を凝固させる方法で、比重が高い層の上方に、比重が低い層が位置している多層構造を形成できる。原料液の比重を高くするには、原料液の固形分濃度が高くなるように組成を調整すればよい。
第1原料液と第2原料液の比重差は、充填温度において0.04以上が好ましく、0.05以上がより好ましく、0.08以上がさらに好ましい。
前記比重差が前記下限値以上であると、第1層と第2層の良好な分離状態が得られやすい。前記比重差の上限は、充填時の工程適性の点で0.3以下が好ましく、0.2以下がより好ましく、0.15以下がさらに好ましい。
なお、充填温度における第1原料液と第2原料液の比重差と、容器入り食品の製品温度における第1層と第2層の比重差とは、測定温度が異なるため一致するとは限らない。また、製品の保存中に第1層と第2層の比重差は水分の移行により小さくなる傾向がある。したがって第1層と第2層の比重差は成り行きの値でよいが、充填温度における比重差が0.04以上であるとき、容器入り食品の製品温度における第1層と第2層の比重差は0.01以上となりやすい。
[製造方法]
本実施形態の容器入り食品は、開口部を有する容器に、第1原料液と第2原料液を充填し、開口部を開放した状態で加熱して、少なくとも第1原料液を凝固させた後、開口部を蓋で密閉する方法で製造できる。第2原料液がゲル化原料を含む場合、開口部を蓋で密閉する前にゲル化してもよく、開口部を蓋で密閉した後にゲル化してもよい。
充填方法は、第1の実施形態と同様の方法を用いることができる。タンパク質含有液に凝固剤を添加した時点から、第1原料液及び第2原料液の充填開始までの時間は20分以内が好ましく、10分以内が好ましく、5分以内がさらに好ましい。
第1原料液の充填温度は、第1原料液の充填時の粘度V1が後述の範囲に維持される温度であれば特に制限はされない。例えば2~25℃、または5~15℃で充填することができる。
第2原料液の充填温度は、第2原料液の充填時の粘度V2が後述の範囲に維持される温度であれば特に制限はされない。例えば60℃以下、または50℃以下で充填することができる。
加熱方法は、第1の実施形態と同様の方法を用いることができる。
第2原料液が、加熱によってゲル化する原料を含む場合、第1原料液が凝固すると同時に、第2原料液がゲル化する条件で、加熱することが好ましい。
第2原料液中のゲル化原料が冷却によってゲル化する原料を含む場合、加熱終了後に第2原料液がゲル化する条件で冷却することが好ましい。
充填温度における第1原料液の比重は1.01~1.06が好ましく、1.02~1.05がより好ましく、1.02~1.04がさらに好ましい。上記範囲の下限値以上であると良好な凝固性、および良好な嗜好性が得られやすい。上限値以下であると良好な殺菌適性および充填適性が得られやすい。
また、充填温度における第2原料液の比重は1.05~1.3が好ましく、1.07~1.2がより好ましく、1.1~1.2がさらに好ましい。上記範囲の下限値以上であると、第1層と第2層との良好な分離性が得られやすく、上限値以下であると良好な充填適性、および良好な嗜好性が得られやすい。
第1原料液と第2原料液に比重差を設けることによって、比重が高い層の上方に、比重が低い層が位置している多層構造を有する容器入り食品を製造できる。
例えば、第2原料液の比重を、第1原料液の比重より高くすることで、第2層(例えばソース層)の上に、豆腐様の第1層が積層している容器入り食品を製造できる。
第1原料液の容器への充填を開始する直前の、第1原料液の粘度を充填時の粘度V1(単位:mPa・s)とする。第2原料液の容器への充填を開始する直前の、第2原料液の粘度を充填時の粘度V2(単位:mPa・s)とする。
V1は、容器に充填できる粘度であれば特に制限されないが、例えば、10mPa・s以上、50mPa・s以上、100mPa・s以上であってもよく、3000mPa・s以下、2000mPa・s以下、1000mPa・s以下、500mPa・s以下、100mPa・s以下であってもよい。粘度範囲としては、例えば、10~3000mPa・sが好ましく、10~2000mPa・sがより好ましく、10~1000mPa・sがさらに好ましく、10~500mPa・sがよりさらに好ましく、10~420mPa・sが特に好ましい。
V2は、第1原料液との適切な比重差があり、容器に充填できる粘度であれば特に制限されないが、例えば、5mPa・s以上、10mPa・s以上、50mPa・s以上、100mPa・s以上、300mPa・s以上であってもよく、3000mPa・s以下、2000mPa・s以下、1000mPa・s以下、400mPa・s以下、100mPa・s以下であってもよい。粘度範囲としては、例えば、10~3000mPa・sが好ましく、50~3000mPa・sがより好ましく、300~3000mPa・sがさらに好ましく、10~1000mPa・sであってもよい。
さらに、第2原料液の比重が第1原料液の比重より高い場合、第1層と第2層との良好な分離性が得られやすい点で、100<V1≦3000であるときは、10≦V2≦400であることが好ましく、10≦V2≦60がより好ましい。また100<V1≦3000であるときに、V1/V2の比は、0.25超、300以下が好ましく、0.25超、42以下がより好ましい。一方、10≦V1≦100であるときは、50≦V2≦3000が好ましく、300≦V2≦3000がより好ましい。また10≦V1≦100であるときに、V1/V2の比は、0.003以上、2以下が好ましく、0.01以上、2以下がより好ましい。
V1は、第1原料液に含まれる凝固剤の種類と含有量によって調整できる。例えば、凝固剤の使用量が同じである場合、凝固剤の凝固反応が速いほどV1の値は大きくなる。
V2は、第2原料液に含まれる増粘剤の種類と含有量によって調整できる。例えば、前記に挙げたゲル化原料のうち、特に、ペクチン、タラガム、ゼラチン、グアーガム、ローカストビーンガム、タマリンドシードガムは増粘剤として好適に使用できる。
本実施形態によれば、蓋で密閉された容器に、容器内で凝固した豆腐様組成物を含む多層食品が収容されており、多層食品と蓋との間にヘッドスペースが存在する、新規な容器入り食品が得られる。
従来の充填豆腐は、容器内に豆腐が隙間なく充填されているのに対して、本実施形態の容器入り食品は、容器内にヘッドスペースが存在するため、トッピングを設けることができるなど、製品設計の自由度が高い。
また、従来の充填豆腐は、原料液を容器に満量充填して密閉するため、比重が異なる2種以上の原料液を充填する方法で多層構造を形成することが難しいのに対して、本実施形態の容器入り食品は、満量充填せずにヘッドスペースを設けるため、かかる方法を適用して工業的に製造できる。
なお、第2の実施形態の多層食品は2層からなるが、組成が互いに異なる3層以上を設けてもよい。互いに比重が異なる3種以上の原料液を用いることにより、第2の実施形態と同様にして多層構造を形成できる。
以下に実施例を用いて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。以下において、含有量の単位である「%」は特に断りのない限り「質量%」である。
実施例、比較例、試験例で使用した原料及び容器は以下である。
[原料]
豆乳(1):アメリカ産大豆を原料とし、常法で得た全固形分12.0%の豆乳、タンパク質含有量5.2%。
豆乳(2):カナダ産大豆を原料とし、常法で得た全固形分12.0%の豆乳、タンパク質含有量5.1%。
大豆タンパク質:不二製油株式会社製、商品名「ニューフジプロSEH」、タンパク質含有量87%。
塩化マグネシウム6水和物:富田製薬社製、塩化マグネシウム・6水和物含有量100%。
グルコノデルタラクトン:扶桑化学工業社製、商品名「フジグルコン」。
タラガム:三菱ケミカルフーズ社製、商品名「MT1000」。
粉飴:昭和産業社製、商品名「K-SPD」。
普通精製塩:日本海水社製、商品名「日本海水食塩」。
醤油:キッコーマン食品社製、商品名「しぼりたて本醸造生しょうゆ」。
砂糖:ホクレン農業協同組合連合会製、商品名「HBSビートグラニュ糖」。
チョコレート:森永製菓株式会社製、商品名「エフィカスノワール」。
ココアパウダー:森永製菓株式会社製、商品名「F11-T」。
濃縮いちご果汁:サンクレメンテ社、ストロベリー透明濃縮果汁。
[容器]
容器:デザートカップ、KISCO社製品名リーベ(ストレートタイプ)、ポリプロピレン製、開口部の直径71mm、内容量90mL。
蓋:ヒートシール用蓋材。
<実施例1>
表1の配合で、予め凝固剤溶液を調製し、豆乳(5℃)と凝固剤溶液(5℃)を混合して原料液を調製し、10℃に保持した。前記原料液(10℃)の79g(充填率85%)を容器に充填した。豆乳と凝固剤溶液の混合開始から充填開始までの時間は5分であった。充填終了直後に、炉内温度105℃に設定したオーブン(久電舎社製コンベクションオーブン)で55分間加熱した。加熱終了後ただちにオーブンから取り出し、庫内温度2℃に設定した冷蔵庫内で1時間静置した後、容器の開口部に蓋をかぶせ、ヒートシールして密閉した。その後、再び10℃の冷蔵庫内で一晩静置して容器入り食品を得た。
Figure 0007462382000001
<比較例1>
実施例1と同様にして原料液を調製して容器に充填した。容器の開口部に蓋をかぶせ、ヒートシールして密閉した後、90℃の湯浴中に40分間浸漬して加熱した。加熱終了後、湯浴から取り出し、庫内温度10℃に設定した冷蔵庫内で一晩静置して容器入り食品を得た。
<評価>
実施例1、比較例1それぞれの方法で、6個の容器入り食品を製造し、製造不良の有無を評価した。また下記の方法で離水量を測定した。
(離水量の測定方法)
容器の内容物(豆腐様組成物)の全量を、ふるい上に載せ、30秒後にふるいの下に落ちた液の質量を測定し、離水量(単位:g)とした。
実施例1では、全部の製品において、加熱工程で容器内の豆腐様組成物が沸騰することは無く、豆腐様組成物が飛び散って開口部のシール部分に付着することもなく、蓋をヒートシールする際にシール不良は生じなかった。また全部の製品において、離水量はゼロであった。さらに、容器内の豆腐様組成物の外観は、「す」もひび割れもなく良好であり、試食したところ、ぼそつきが無く、良好な風味であった。
一方、比較例1では、加熱工程中に容器内のヘッドスペースの空気が熱により膨張し、湯浴中に原料液が漏れ出る製造不良が3個発生した。製造不良が生じなかった残りの製品の離水量は3~6gの範囲であり、平均4.6gであった。比較例1の離水量には、容器内のヘッドスペースで発生した結露も含まれている可能性がある。
<試験例>
本例では第1原料液(以下、単に原料液という)として豆乳と凝固剤溶液の混合液を用い、第2原料液としてソースを用いて多層食品を製造した。
表2の配合で、予め凝固剤溶液を調製し、豆乳(5℃)と凝固剤溶液(5℃)を混合して原料液1~7を調製し、10℃に保持した。表3に示す全原料を混合し、90℃で10分間加温した後、室温(25℃)に冷却してソース1~4を調製し、25℃に保持した。
豆乳と凝固剤溶液の混合開始から5分後の原料液(10℃)の粘度V1と、ソース(25℃)の粘度V2を、B型粘度計(東機産業株式会社製、RB-80L ローターNo.1~2)にて測定した。結果を表2、3に示す。
前記原料液(10℃)の65gを容器に充填し、その直後にソース(25℃)の8gを充填した。豆乳と凝固剤溶液の混合開始から原料液の充填開始までの時間は5分であった。ソースの充填終了直後に、炉内温度105℃に設定した前記オーブンで55分間加熱した。充填温度における原料液の比重とソースの比重を表2、3に示す。
加熱終了後ただちにオーブンから取り出し、庫内温度2℃に設定した冷蔵庫内で1時間静置した後、容器の開口部に蓋をかぶせ、ヒートシールして密閉した。その後、再び10℃の冷蔵庫内で一晩静置して容器入り食品(充填率65%)を得た。
<評価>
原料液1~7とソース1~4を組み合わせて28通りの容器入り食品を製造した。得られた容器入り食品について、下記の方法で豆腐様組成物(第1層)とソース(第2層)の分離状態を評価した。
まず、容器の開口部側から、豆腐様組成物の表面を目視で観察し、豆腐様組成物の表面にソース充填痕が視認できるかどうかを判定した。次いで容器を逆さにして豆腐様組成物を取り出し、縦方向(容器の深さ方向)に半分に切断し、切断面における豆腐様組成物とソースの分離状態を目視で観察した。下記の基準により評点した結果を表4に示す。
[評価基準]
(ソースの充填痕)
3点:充填痕が認められない。
2点:充填痕が認められるが、不明瞭である。
1点:充填痕が明瞭に認められる。
(豆腐様組成物とソースの分離状態)
3点:豆腐様組成物とソースが2層に分離しており、境界面が明瞭である。
2点:豆腐様組成物とソースが2層に分離しているが、境界面が不明瞭である。
1点:豆腐様組成物中にソースの不連続層が海島状に存在しているところがある。
Figure 0007462382000002
Figure 0007462382000003
Figure 0007462382000004
表4の結果より、原料液の粘度V1(mPa・s)が100<V1≦3000であるときは、ソースの粘度V2(mPa・s)が10≦V2≦400の範囲であると2層に分離しやすく、10≦V1≦100であるときは、50≦V2≦3000の範囲であると2層に分離しやすいことが認められた。
得られた容器入り食品において、ソース1からなる層は液状であり、ソース2~4からなる層はゲル状であった。
<実施例2:チョコレート風味の容器入り食品の製造>
表5の配合のうち、凝固剤と凝固剤用溶解水以外の原料を一括混合し、70℃まで加温した後、均質機(三丸機械工業社製、製品名「Homogenizer」)を用いて15MPaの圧力で均質化し、豆乳混合液を調製した。これとは別に、凝固剤と凝固剤用溶解水を混合して凝固剤溶液を調製した。
得られた豆乳混合液(5℃)と凝固剤溶液(5℃)を混合して原料液を調製し、10℃に保持した。前記原料液(10℃)を、充填率が85%となるように容器に充填した。実施例1と同様にして、オーブンで105℃、55分間加熱し、2℃で1時間静置し、蓋をした後に10℃の冷蔵庫で一晩静置して容器入り食品を得た。
Figure 0007462382000005
<実施例3:いちご風味の容器入り食品の製造>
豆乳混合液及び凝固剤溶液の配合を表6に示すとおりに変更した以外は、実施例2と同様にして容器入り食品を得た。
Figure 0007462382000006

Claims (4)

  1. 容器と、容器内に収容された食品と、容器を密閉する蓋とを備え、容器内の食品と蓋との間にヘッドスペースが存在する容器入り食品を製造する方法であって、
    開口部を有する容器に、大豆由来タンパク質と凝固剤とを含む第1原料液を充填した後、前記第1原料液とは組成が異なり、前記第1原料液より比重が高い第2原料液を充填する充填工程を有し、
    前記充填工程において、前記第1原料液の粘度がV1(mPa・s)、前記第2原料液の粘度がV2(mPa・s)であるとき、100<V1≦3000かつ10≦V2≦400、又は10≦V1≦100かつ50≦V2≦3000であり、
    前記充填工程の後、前記開口部を開放した状態で加熱して、少なくとも前記第1原料液を凝固させた後、前記開口部を蓋で密閉する、容器入り食品の製造方法。
  2. 前記第1原料液と前記第2原料液の比重差が0.04以上である、請求項1に記載の製造方法。
  3. 前記大豆由来タンパク質と前記凝固剤とが接触した時点から、前記第2原料液の充填開始までの時間が20分以内である、請求項1又は2に記載の製造方法。
  4. 前記第1原料液と前記第2原料液の比重差は、充填温度において0.04以上0.3以下である、請求項1~3に記載の製造方法。
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