JP3545722B2 - 豆腐材料一体包装体、豆腐の製造方法および豆腐 - Google Patents
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Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、豆腐材料一体包装体(豆腐製造キット)および豆腐の製造方法および豆腐に関し、さらに詳しくは、一包装体に内包された材料のみで豆腐をつくることができ、保存可能で搬送容易な豆腐材料の包装体であって、どこにでも携帯することができ、かつ熟練技術がなくても失敗なく高品質の豆腐を容易につくることができ、したがって場所・時間を問わず風味があってまろやかな出来たての豆腐を供すことができる豆腐材料一体包装体、これを用いた豆腐の製造方法および豆腐に関する。
【0002】
【従来の技術】
豆腐は、豆乳(大豆タンパク)を凝固させたものであり、栄養価が高く、かつ消化吸収のよいタンパク源として有用な食品であるだけでなく、その風味、食感などもほとんどの人に好まれるため、日常的に広く食されている。
豆腐の美味しさは、味、香りなどの旨味、風味、さらには歯ざわり、舌ざわりなどの食感など、多くの要素で評価されるため、単に使用される原料大豆、水だけでなく、その製造過程たとえば大豆から豆乳の製造工程、豆乳の凝固(豆腐の出来)工程でのそれぞれの出来具合にも大きく影響される。伝統的に手作りされる風味があってまろやかな豆腐は、大豆の甘味や風味をうまく引き出すことができるニガリ(苦汁)を用いて、丁寧につくられた豆乳の旨味、風味を損なわずに、微妙な人為的調節を加える熟練技術により豆乳を固めて得られる。
【0003】
しかしながら豆腐は変質・劣化しやすく、空気に曝しておくと短時間で腐敗し、水に浸すと風味を失ってしまい、賞味期間が極めて短い上、柔らかい保水構造物であり形も崩れやすく、本質的に保存性および搬送性に劣る。豆腐の変質は製造時の加熱工程から始まるため、豆腐の美味しさは、つくりたてに最も保持されているといえる。それ故、味覚には嗜好性があるとしても、一般に豆腐はつくリたてが最も美味とされ、つくリたて豆腐に対する指向は根強い。特に伝統的な製法により丁寧につくられたつくリたて豆腐に対する指向は根強い。
【0004】
製造直後の豆腐を直にパック詰めし、保存性および搬送性を改善した豆腐(量販品)も多量に流通されている。しかし一旦豆腐にしたものはパック詰めしても経時的に保水構造が崩れ食感が劣るようになり、また水に浸してパック詰めすると風味が低下し、あるいは保水構造を保持させるために充填剤などを添加したものは歯ざわりや舌ざわりなどが豆腐とは異なる食感になってしまう。またパック詰め豆腐の原料に使用する豆乳は、通常、凝固前に保存性付与のために行われる高温殺菌(煮熟)により、豆乳そのものの風味が低下している。このためパック詰め豆腐は、つくりたて豆腐のような美味しさを得ることは困難である。
【0005】
また豆腐の製造は労働上の拘束が多いだけでなく、凝固剤としてニガリを用いてまろやかな豆腐を失敗なく得るには熟練技術を要する。具体的に、大豆を水に浸して膨潤させた後、磨り潰して得られる磨砕大豆(呉、豆汁)を加熱(煮呉)して絞り、おからを分離して得られた豆乳を凝固させる豆腐の工程において、加熱した大豆タンパクは品質の劣化が早いため、呉の加熱から豆乳の凝固までの工程を連続して行う必要があり、さらに味や香りの良い豆腐を造るためには、品質の高い豆乳を造る技術が要求されるとともに、豆乳にニガリを加えて凝固させる技術に高い専門性が要求される。このため小規模で伝統的に豆腐を製造する業者は、つくりたての美味しい豆腐を朝食時間に間に合わせるために、早朝から休むことのない労働を強いられている。家庭において、日常的に大豆から豆腐をつくることが容易ではないことはいうまでもない。
【0006】
上記のような情況から、従来、豆腐の製造方法そのものについては多くの提案がなされており、また豆乳に保存性を持たせることにより家庭などでもつくリたて豆腐を供し得るようにする方法も提案されている。
たとえば特開平9−327273号には、蒸煮した豆乳を包装し、変質を防ぐため冷蔵または氷蔵下に流通させる方法が提案されている。該公報には、家庭において、上記包装豆乳を加熱した後または加熱前に、該豆乳と別包添付で流通させた凝固剤を添加して凝固させ豆腐類をつくることが提案されている。
また豆乳液を充填包装した容器に、これとは別パックにパックしたニガリを添加し、豆乳充填容器を豆腐製造容器としてそのまま用いる豆腐製造方法(特開平7−2650076号)、豆乳を二段階で脱泡してパック詰めすることにより、消泡剤の添加を省略しても豆腐を手づくリできる方法(特開平8−242801号)など多様な提案がなされている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
上記で提案されているように大豆から豆乳を得る工程までを省略することができれば、家庭でも豆腐をつくることは可能であるが、豆乳に凝固剤を加える操作は豆腐製造工程のうちでも熟練技術が要求される操作であり、豆乳と凝固剤とを混合するだけで均質な豆腐が必ずできるとは限らない。特にニガリを用いると素人では豆腐にならないこともあり、業者が製造するようなまろやかな豆腐を確実に得ることは到底できない。
一方、豆腐製造業者においても、拘束の多い労働を軽減することができ、かつ伝統的な熟練技術に頼る高品質の豆腐を容易にかつ確実に製造することが望まれている。
このため保存性、搬送性に優れ、時、場所を選ばず豆腐をつくることができるだけでなく、熟練技術がなくても均質でかつまろやかな美味しい豆腐を失敗することなくつくることができる豆腐材料一体包装体もしくは製造方法の出現が望まれていた。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、上記のような情況に鑑み、保存可能で搬送性に優れ、熟練技術がなくてもどこでも豆腐が手づくりできる方法について検討を重ねるうちに、外部シールよりは開封容易な内部分割シール部分を有し、このシールで区画された各室(空間)内に豆乳とニガリとを別々に密閉すれば、搬送、携帯、保存時などには、豆腐製造の全材料を一包装体で取扱うことができ、また使用時には容器外側から押圧するかまたは容器(シート)を引張ることにより、密閉容器内で一気に混合を行うことにより、容易に均質な混合物を得ることができ、凝固剤としてニガリを封入した場合であっても、熟練技術を要さずに失敗なく均質な豆腐が得られることを見出した。したがって、時、場所を問わず手づくり豆腐が可能であるだけでなく、特に溶存酸素をほとんど含まず、ムラがなく、保存のための高温煮熟処理が施されてない豆乳を用いた場合には、豆腐を失敗なく製造できるだけでなく、極めて風味がよくまろやかで商品となりうる豆腐を得ることができ、豆腐製造業者が使用すればその労力をも軽減しうるものであり、上記従来の課題を一挙に解決しうることを見出して本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち本発明は、
密閉容器の開封を許容しない押圧力または引張力により開封しうる内部シールにより少なくとも2室に分画された複室構造を有する可撓性材料からなる密閉容器と、
上記分画された室の少なくとも1つに封入された豆乳と、少なくとも1つの他室に封入された凝固剤とを含む豆腐材料一体包装体を提供する。
【0010】
上記密閉容器の好ましい態様例は、少なくともガスバリヤ層とヒートシール最表層とを含む積層構造を有する可撓性シートを重ねた袋状体であり、袋内面側に配置されたヒートシール層同士の熱融着により前記内部シールが形成されている。
上記内部シールの強度は、好ましくは約5〜8N/15mm程度である。
上記内部シールは、前記押圧力または引張力により破裂的に開封することが望ましい。
【0011】
上記凝固剤として、ニガリを含むことができる。
上記豆乳は、実質的に溶存酸素を含まないことが望ましい。
上記豆乳は、水膨潤大豆の磨砕物(呉)から脱酸素処理水の過熱蒸気により抽出された大豆タンパクからなる豆乳であることが望ましい。上記により得られ、密閉容器内に封入される豆乳は、通常、100℃を超える温度での加熱が加えられてない。
【0012】
本発明では、上記の豆腐材料一体包装体の前記密閉容器を押圧または引張ることにより内部シールを開封し、豆乳と凝固剤とを密閉容器内で混合した後、密閉状態のまま、または開封して混合物を加熱する豆腐の製造方法、およびこれにより得られる豆腐も提供される。
【0013】
なお内部を開封容易なシール部で区画し複室構造とした密閉容器については、その材料を含め数多く提案されており、またこれを利用した包装体もいくつか提案されてはいるが、豆腐材料をすべて封入し、豆腐製造キットを構成したものは全く知られておらず、何ら提案もされてない。いかに多くの複室容器が知られていても、これに豆腐材料をすべて充填し、豆腐材料一体包装体とし、一の包装体だけで豆腐を造ることは誰も考えつかなかった使用方法である。
またすでに市販され、周知の豆乳パックを用いれば家庭で豆腐をつくることも可能であり、前述したように家庭で豆腐をつくる方法も提案されてはいるが、いずれも豆乳パック容器を開封した後、凝固剤を添加するものであり、豆乳と凝固剤とを一密閉容器内にパックすることは何ら提案されていない。また豆乳とニガリとを一容器内にパックして未開封のまま用いた場合と、これらを別包して用いる場合とでは、豆腐の出来具合に格別な差異があることは何ら教示されておらず、これを示唆する記載も見当たらない。
上記複室構造を有する密閉容器に豆腐材料のすべてを充填することは本発明者により創作されたものであり、このような本発明の豆腐材料一体包装体は、構造的に利便性が高いだけでなく、容器内での材料混合により、従来の豆乳パックにニガリを後添する方法に比して予想外に出来のよい豆腐を誰でも失敗なく確実にできるという効果も奏する。勿論、本発明の豆腐材料一体包装体は、従来のパック詰め豆腐とは全く別異なものである。
【0014】
【発明の実施の形態】
本発明の豆腐材料一体包装体は、一密閉容器内に含まれる材料のみで豆腐をつくることができる豆腐製造キットであり、内部分画された室内に別々に封入された、通常時は混り合わない豆乳と凝固剤とを一密閉容器内に含む。
密閉容器は、可撓性材料からなり、容器の開封は許容しない押圧力または引張力により開封しうる内部シールにより少なくとも2室に分画された複室構造を有する。
以下、図を参照しながら本発明をより具体的に説明する。
【0015】
図1および図2は本発明の好ましい態様の一例を示し、図1は本発明に係る豆腐材料一体成形体1を構成する密閉容器10が可撓性シート11からなる袋状体の斜視図であり、図2はそのII-II 線に沿う概略断面図である。具体的に、密閉容器10は、袋内面側に配置されたヒートシール層同士の熱融着により形成された内部シール4により少なくとも豆乳室2と凝固剤室3との2室に分画された複室構造を有する。
内部シール4は、密閉容器10の外側から押圧または容器(シート)をつまんで引張ることにより開封しうるものであるが、内部シール4の開封圧では、密閉容器10の(外部)開封は許容しないシール強度を有する。たとえば内部シールの強度に対し5倍以上の強度で外部シールすることが好ましく、通常約10倍以上の強度を選択して外部シールすることが望ましい。
【0016】
可撓性シート11は、液密性好ましくは気密性の密閉容器10を形成することができるとともに、外方からの押圧により内包された液状材料(豆乳、凝固剤)の変形に追従することができる可撓性材料であって、100℃近辺での加熱あるいは10℃以下での低温保存でも、もちろんその中間の温度でも無害で、密閉性を保持しうる公知の食品用材料のうち、上記のような強度の内部シールを形成しうるものを特に制限なく使用することができる。
具体的に可撓性材料11は、少なくともガスバリヤ層、特に酸素非透過性の抗菌性フィルム層を含む可撓性シート(またはフィルムともいう)であることが好ましい。この可撓性シートは、ヒートシール性を有することが好ましく、ガスバリヤ性とヒートシール性との両方を満たすことができれば単層構造であってもよいが、通常はガスバリヤフィルム層の表層にヒートシール層が形成された積層構造のシート材料が用いられる。なお本明細書において、シートとは、単に板状体ではなく、チューブ状に成形されたものなども含めた意味で用いられる。
【0017】
上記のような積層シートおよび複室構造の密閉容器そのものは、すでに多くの構成および製造方法が提案され、市販品としても入手可能であり、本発明の目的を達成しうる複室構造の密閉容器を形成しうる食品用シートであればこれら公知のものを特に限定することなく広く使用することができる。たとえば延伸、未延伸のポリオレフィン(ホモポリマーまたは共重合体およびこれらの変性物)、ポリスチレン、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体などのスチレン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどの熱可塑性ポリエステル、ポリアミド、ポリ塩化ビニルなどおのハロゲン含有樹脂などの熱可塑性樹脂のうちから、ガスバリヤ性またはヒートシール性が得られるものを適宜選択して積層した公知の食品用シートを使用することができる。
可撓性材料は、内容物が確認できる透明あるいは半透明であってもよく、また不透明であってもよく、したがってガスバリヤ層としてアルミニウム箔を含んでいてもよく、さらに紙との複合材などであってもよい。またシートには印刷が施されていてもよい。
【0018】
密閉容器10は、搬送可能で、使用時に押圧または引張ることにより内部開放することができる形状であればよく、図1に示す二枚重ねした可撓性シート11の外周5を強固にシールすることにより形成された袋状体の形状に何ら限定されるものではない。密閉容器10内の空間を液密好ましくは気密に保持しうる構造であれば、外周シール5は、図に示されるものに何ら限定されず、たとえば一枚の可撓性シート11を折畳んだものの三方外周であってもよく、チューブ成形体の開口両辺であってもよい。また袋状体(ピロー状体などとも称される)は、図3に示すようなガセット袋などのマチを有するものであってもよく、また箱型形状、口付きチューブ状体などであってもよい。このような複室構造の密閉容器の一例として、特開平9−295648号に提案されたピーラブル樹脂部が形成された分割包装用容器などを用いることもできる。
豆乳充填の作業上からは、ガセット袋形状のものが好ましい。
【0019】
また内部シール4は通常、積層シート11の最表層ヒートシール層同士が袋内面側で対向するように重ね、熱融着すれば容易に形成することができる。内部シール4は、密閉容器10そのものの開封は許容しない押圧力または引張力で開封され、豆乳および凝固剤を封入した後、外部シール5により密閉された容器10を、外部から押圧または引張ることにより開封しうる強度で形成される。たとえば豆乳室2および/または凝固剤室3の腹部分を外から手などで押さえる(図2参照)ことにより開封できる強度であることが望ましく、破裂的に開封することが望ましい。一方、内部シール4が通常の保存時および搬送(携帯)時に容易にリークまたは開封されることは避ける必要があり、内部シールのシール強度は、約3〜10N/15mm程度であることが好ましく、通常、約5〜8N/15mm程度に設定される。
また内部シール4のシール巾をある程度広く取れば、無防備な押圧には容易に開封しにくく、かつ通常時の内部シール4のリークを避けることができる。具体的に内部シール4のシール巾は、通常、2〜25mm程度、好ましくは2〜10mm程度、より好ましくは3〜7mm程度が望ましい。
【0020】
密閉容器10は、上記内部シール4により豆乳室2と凝固剤室3とに区画される。内部シール4は、必ずしも図1に示すような直線シールに限らず、開封時の豆乳と凝固剤との素早い混合が得られるものであればよく、たとえば図4に示すように枠取り形状であってもよい。また3以上の複室構造が形成されてもよい。また豆乳室2および/または凝固剤室3を複数有していてもよい。
たとえば図5には、内部シール4が複数設けられ、豆乳室2の両側に凝固剤室3,3を有する複室構造であってもよい。なお図3〜6の各図中、図1または図2と同一符号は同一のものを意味し、説明の重複は避ける。また図4〜6に示す豆乳室2と凝固剤室3とを入れ替えた態様のものも例示される。
【0021】
内部シール4は、豆乳と凝固剤とを別々に封入できるように形成されていればよく、内容物を充填する前に予め形成されていても、また豆乳または凝固剤のいずれかを充填した後に形成されてもよく、その形成方法は限定されない。またたとえば二枚重ねしたシートの所望箇所をシールしてもよく、またチューブ押出成形時に同時に押出方向に平行に設けてもよく、あるいは予め押出あるいはインフレーションなどにより成形されたチューブに形成してもよい。シール方法は、通常、熱融着で行われるが、接着剤によるものでも構わない。
内部シール4を外部シール5とは異なる強度でシールするには、外部シールと内部シールとの熱融着温度あるいは圧力、時間などを変える方法、シール巾を変える方法、内部シール部分に外部シール部よりも熱融着しにくいかシール強度の弱いシール層(ピーラブル層など)をさらに設ける方法など、適宜に行うことができ、公知の方法を選択することができる。
【0022】
また外部シール5は、豆乳と凝固剤を封入した後、密閉性を保持するために、無防備に手で押圧した程度では容易に開封しないように強固にシールされる。このため外部シール5は、内容物を混合した後にナイフ、鋏などで開封するか、あるいは外部シール5の一部に切込み、楔状切込みなどの任意形状の引裂き口が形成されていてもよい。
密閉容器10の大きさは、搬送時および使用時の利便性、内容物の混合容易性、一回に喫食する豆腐の量などの目的に応じて適宜選択されればよく、特に限定されない。たとえば豆腐一丁分(通常豆乳量で150〜300ml程度)の材料を封入したものなどが挙げられる。
【0023】
上記のような密閉シール(外部シール5)と内部シール4とのシール強度の異なる複室容器のより具体的な一例を挙げると、スタンディングフィルム(旭化成社製ポリ/ナイロンラミネート)を使用して、加熱条件を変更することにより、内部シール4を5〜8N/15mmで、外部シール5を50〜60N/15mmのシール強度に形成した態様例などを挙げることができる。
密閉容器10内への凝固剤および豆乳の充填は、これらが混合しない状態で充填されればよく、その順序、シール方法などは特に限定されず公知の技術のうちから適宜に選択して採用することができる。
【0024】
本発明では上記のような密閉容器10内に豆腐(製造)材料がすべて封入されており、一容器内で豆腐をつくることができる。一包装体内には、通常、豆腐を製造する量比の豆乳および凝固剤が内包される。この量比は豆乳濃度、ニガリ濃度などによっても異なり、特に制限されるものではないが、一例を挙げると、12〜15%濃度の豆乳200mlに対して、塩化マグネシウム濃度で約3〜4%のニガリ(水溶液)を約2〜4ml程度用いることができる。
【0025】
本発明に用いられる凝固剤も、特に制限的ではなく、たとえば塩化マグネシウム、塩化カルシウム、これらを主成分とするニガリ(苦汁)、硫酸カルシウム等を挙げることができるが、ニガリは豆腐に大豆の風味や甘みを引き出すことができ好ましい。
豆腐は、豆乳を凝固剤で凝固反応させて得られるが、本発明では、豆腐材料を一包装体内にすべて内包させ、かつ別々に包装されたものと異なり、使用時には内部シールの破裂により豆乳と凝固剤とが一気に混合できるため、豆乳の凝固反応を極めて均質な状態で反応させることができ、凝固剤が熟練技術を要するニガリであっても、素人でも失敗なく豆腐をつくることができる。
【0026】
本発明では、上記豆乳室2内には、従来の製法で製造された豆乳を特に制限なく封入することができ、またおからを除去せず煮呉そのものを封入してもよい。したがって本明細書では、豆乳室2内に充填される豆乳は煮呉を含む意味で用いられる。
本発明の包装体が上記構造であることにより、高濃度の豆乳を封入しても豆腐を失敗なくつくることができる。ここで、豆乳中の大豆タンパクの濃度は、特に制限的ではないが、呉(煮呉)からおからなどの固形分を分離して得られたままの状態で、すなわち濃縮処理などの熱処理をしない状態で、好ましくは12%以上、より好ましくは13%以上であるのがよい。濃度は高めが好ましく、特に上限は制限ないが、現実に濃縮処理なしで達成できる濃度は、約15ないし16%程度である。
ここで保存性を考慮すれば、豆乳(または呉)は溶存酸素量が少ないほど好ましく、実質的に含まないことが望ましい。具体的には溶存酸素濃度が5〜6ppm程度以下、好ましくは現在可能な溶存酸素分析方法での検出限界に近い濃度で含まないことが好ましい。また豆乳室2に充填される豆乳は、製造時に均一加熱され、煮ムラのないものが好ましい。
【0027】
本発明では、このように高濃度でかつ溶存酸素濃度が低く、しかもムラのない豆乳として、特許第3004981号公報に記載された煮釜を用いて製造された豆乳を用いることができる。この煮釜の構造および該煮釜を用いた豆乳の製造方法については、該特許公報に詳細に記載されており、本明細書にもその記載を含ませるものとし、ここでの記載を省略する。
簡潔に説明すれば、該公報の図1〜7に示される構造の煮釜を用い、内部に供給された原料大豆を過熱水蒸気により煮沸し、大豆タンパク(豆乳)を抽出する方法である。
【0028】
原料大豆は、通常、まず原料となる大豆を所定時間水に浸して膨潤させ、得られた膨潤大豆を磨り潰して磨砕大豆(呉)として煮釜に供給するが、膨潤大豆を磨砕する方法および手段は特に制限的ではなく、従来公知の磨砕方法および手段を用いればよい。また大豆の磨砕は必ずしも水で膨潤した後に限定されず、乾燥磨砕した大豆を水に浸して膨潤させてもよい。また煮釜に供給する原料は、膨潤磨砕大豆をそのまま用いる場合に限定されず、予め膨潤磨砕大豆を予備加熱しておいて呉製造用煮釜での大豆タンパクの抽出を促進して煮沸を容易にしてもよく、また乾燥したまま粉砕または磨砕した大豆と水とを混合して膨潤させることなく直ちに呉製造用煮釜に供給してもよい。
【0029】
上記で用いられる過熱水蒸気は酸素を含まないことが望ましい。水は通常8〜10ppmの酸素を含有するため、酸素を極力除去した脱酸素処理水で上記過熱蒸気(脱酸素過熱蒸気)をつくるのがよい。水の脱酸素方法および過熱蒸気による加熱方法などは、本明細書に含まれるものとした上記公報の記載に準じて行うことができる。
脱酸素過熱蒸気の供給温度は、大豆タンパクを抽出できれば特に制限はなく、通常110℃以上であればよいが、大豆の風味を出したい場合には150〜190℃とするのがよく、大豆の風味を特に強くしたい場合には180〜190℃とするのがよい。しかし、あまり高温にすると抽出された大豆タンパクが変質することも考えられるので、通常の煮沸であれば、蒸気の温度は、110〜120℃とするのがよく、大豆の状態や好みに応じて適宜設定すればよい。また脱酸素過熱蒸気の供給圧力は、大豆をムラなく煮沸できれば特に制限はないが、効率的に行うためには、たとえば5〜7kg/cm2 するのがよい。
【0030】
大豆タンパク(豆乳)の抽出は、上記図1〜7(ここでは図示せず)で示される煮釜を用いることにより、ムラなく均一かつ充分に煮沸された高品質の豆乳(煮呉)を連続的に得ることができる。
脱酸素過熱蒸気により煮沸された煮呉(おからを含む豆乳)は、通常、90〜99℃の高温で煮釜から注出されるが、本発明では、通常、この煮呉から固形分であるおからを分離した豆乳を密閉容器10の豆乳室2内に充填してもよく、またおからを分離せず高品質の煮呉をそのまま充填してもよい。
【0031】
煮釜から注出直後の煮呉は、溶存酸素量が極めて低く好ましくは実質的に溶存酸素を含有しない。また煮釜から注出した直後の高温の煮呉を冷却せずにおからを分離することにより、溶存酸素量が極めて低く好ましくは実質的に溶存酸素を含有しない豆乳を得ることができる。
おからの分離方法および手段は、特に制限的ではなく、従来公知の分離方法および手段やろ過方法および手段を用いることができるが、好ましくは実質的に酸素を含有しない脱酸素環境下で行うのが好ましい。
具体的には、煮釜から注出直後の高温の煮呉から、好ましくは脱酸素状態で、固型分であるおからを分離すれば、実質的に溶存酸素を含有しない高温(たとえば80〜95℃程度)の大豆タンパクの懸濁液(豆乳)を得ることができ、溶存酸素を含まないので従来の高温での殺菌処理(煮熟)などの熱処理を施さなくてもよい。
【0032】
豆乳(または煮呉)は、気体(特に酸素含有気体)を巻込まないようにして密閉容器10へに充填することが望ましい。
本発明では、上記豆乳(煮呉)は一旦冷却した後充填してもよいが、通常、煮釜から注出直後の煮呉またはこれから冷却することなくおからを分離した豆乳を高温のまま充填することが好ましい。高温のまま充填すれば、仮に豆乳が酸素含有環境下で密閉容器10内に封入され、細菌などが混入したた場合であっても、封入直後のパック容器の内部の豆乳の温度は80〜95℃の高温であるので、高温殺菌されてしまうし、またたとえ完全に殺菌されなくて残ったとしても、豆乳パック内の溶存酸素および封入時の混入酸素の含有量は極めて少ない、もしくは実質的に0であるので、細菌の繁殖は困難である。従って、上記のように封入された豆乳は、長期間の保存が可能である。
【0033】
上記で得られた豆乳(煮呉)は、高温殺菌処理などの熱処理をしなくても、溶存酸素が極めて少ないため、細菌繁殖しにくく長期間の保存が可能であり、豆乳の新鮮さが失われない。
また過熱蒸気による抽出によれば、濃縮処理などの熱処理をしなくても、高濃度の豆乳を得ることができる。たとえば従来の豆乳が10〜12%程度であるのに対し、過熱蒸気による抽出では前記したように13〜16%にも達する。
しかも従来の呉そのものを高温加熱(煮熟)して得られる豆乳に比べ、豆乳の旨味、風味を保つことができる。
このような豆乳を密閉容器10内に封入すれば、大豆の持つ風味や甘味を持ち、豆乳としての新鮮さや味や香りや風味などがよく、保存性も高い。特に豆腐に成形してパックする場合に比べ、高い風味を持続する。さらに豆乳に煮ムラがないため特にまろやかで、かつ溶存酸素に起因する巣(鬆)がなく食感のよい美味しい豆腐が得られる。
【0034】
上記のような溶存酸素の少ない豆乳は、空気などの酸素含有雰囲気に接触させず、好ましくは1〜10℃の温度範囲で低温保存すれば、製造後も新鮮な味やうま味や風味を保持し、具体的にたとえば溶存酸素量が5ppm以下のもので製造から1週間、2ppm以下のもので3週間、実質的に0ppmのものは1ヶ月間に渡って品質を劣化させずに高品質のまま保存することができる。
保存温度はより好ましくは2〜5℃程度であり、この温度範囲であれば上記豆乳はさらに長期間の保存が可能である。
【0035】
本発明では、上記密閉容器10内には、豆乳および凝固剤とともに必要に応じて他の成分が含まれていてもよい。他の成分は本発明の効果を損なわない範囲であれば食品成分を広く含ませることができるが、具体例をいくつか挙げれば、大豆タンパクに不足するアミノ酸またはそれを含むペプチド、ビタミン類、ミネラル類、柚子粉などの香付け成分、着色剤などを含ませることができる。これら豆腐製造時に豆乳および凝固剤とともに混合し豆腐内に含ませることが好ましい他の成分は、上記豆乳室2および/または凝固剤室3に適宜に含ませることができ、あるいは図5に示す複室態様例の凝固剤室3の一方の室などを他の成分の収容室としてもよい。
さらに醤油、だし汁などの調味料、さらには刻み葱、乾燥葱、生姜、唐辛子などの薬味など、豆腐をつくった後に添えるものも包装体1に含ませることができる。このような態様の一例を図6に示す。これらは外部シール5と同じ強度で区画された外室6に収容される。
本発明では、この外室6は必ずしも密閉容器10と一体に成形されなくてもよく、別包装体であってもよいことはいうまでもない。
【0036】
上記のような豆腐材料一体包装体から豆腐を製造するには、密閉容器10のシート11部分、通常は容量の大きい豆乳室2のシート11部分を手の平などで押圧するかまたは各シート11、11をつまんで引張り、内部シール4を破裂的に開封する。この破裂開封により、豆乳と凝固剤とは瞬時に混合され、均質な混合物が容易に得られるが、さらに密閉容器10を掌中で揉み混合を促進してもよい。
次いで混合物を加熱凝固させるが、この加熱手段は従来の方法に従って行えば失敗なく豆腐が得られる。たとえば密閉容器のまま湯煎あるいは電子レンジで短時間加熱すれば固まって豆腐ができる。また上記内部シール4の開封後は、密閉容器10を開封するか、あるいは混合物を容器に移して加熱しても失敗なく豆腐が得られる。
加熱温度および時間は、豆乳の初期温度が約10℃とすると、通常加熱必要温度が、75〜90℃であるので、約15分程度で豆乳を凝固させ、豆腐を製造することができる。
【0037】
なお本発明の豆腐材料一体包装体中に含まれる豆乳は、そのまま飲用しても何ら差支えない。
上記のような本発明の豆腐材料一体包装体は、長期間の保存が可能で、家庭や飲食店や豆腐製造の専門業者などの用途に応じた分配、運搬が可能であるだけでなく、だれでも失敗なく豆腐をつくることができる。たとえば一般家庭、飲食店、旅行先、キャンプ場、交通利便性などの悪い地域などに携帯して、所望時に豆腐を失敗することなくつくることができる。
また特に上記好ましい豆乳が含まれている場合には、格別に新鮮な風味があり、まろやかで鬆のない豆腐を得ることができる。
より具体的には、キャンプ場または旅行先の宿泊施設などの簡便な加熱調理しかできないような場所であっても、豆腐材料一体包装体1を手の平などで押圧するまたはつまんで引張り、内部シール4を破裂させ、豆乳と凝固剤とを瞬時に混合した後、湯の入った飯盒中あるいはポット中などで湯煎することにより容易に熱々の豆腐を供すことができる。あるいはこれを冷奴にして供すこともできる。
【0038】
豆乳に凝固剤としてニガリ(塩化マグネシウム)を加えて凝固させて豆腐を製造する場合、ニガリが大豆の甘味や風味をうまく引き出すことができるが、凝固反応が早く、失敗が多いため、豆乳へのニガリの混合に高度な技術が要求されるばかりか、凝固状態を細かく監視し、温度の制御を行って凝固反応の速度をコントロールする必要があった。このため、従来は、豆乳を冷却して凝固反応を遅くし、ニガリを豆乳に良く混合した後、得られた混合液を蒸気や湯せんでゆっくりと加熱している。このため、加熱に1〜2時間を要し、極めて非効率であるという問題があった。また、加熱に時間がかかることから、豆腐外部が内部に比べて常に高い温度に晒され、豆腐外部に熱がかかり過ぎるため、豆腐外部が2次、3次の加熱の状態となり、保水性の悪い豆腐ができてしまうという問題があった。本発明では、可撓性容器を押圧または引張るだけで美味しい豆腐を失敗することなくつくることができるため、豆腐製造業者がこれを用いて豆腐をすることも好ましく、豆腐製造に拘束される労力を大きく軽減することができ有用である。したがって本発明では、本発明の豆腐材料一体包装体を用いて製造された豆腐を提供することもできる。
【0039】
上記には、本発明に係る豆腐材料一体包装体、これを用いる豆腐の製造方法および豆腐について、いくつかの態様例を挙げ説明したが、本発明は上記態様例に限定されるわけではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の改良や設計の変更があっても良いことはもちろんである。
【0040】
【発明の効果】
本発明の豆腐材料一体包装体は、簡素で豆腐材料の搬送性および保存性に優れるだけでなく、だれでも簡単に場所、時間を選ばず豆腐を失敗なくつくることができるという大きな利点を有する。一般家庭、飲食店のみならず、豆腐製造の専門業者にも極めて有用である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る豆腐材料一体包装体の一態様例を示す斜視図である。
【図2】図1のII−II線に沿う断面図である。
【図3】本発明に係る豆腐材料一体包装体がガゼット袋の形状である態様例を示す斜視図である。
【図4】本発明に係る豆腐材料一体包装体の他の態様例を示す平面図である。
【図5】本発明に係る豆腐材料一体包装体の他の態様例を示す平面図である。
【図6】本発明に係る豆腐材料一体包装体の他の態様例を示す平面図である。
【符号の説明】
1…豆腐材料一体成形体
2…豆乳室
3…凝固剤室
4…内部シール
5…外部シール
10…密閉容器10
11…可撓性シート
【発明の属する技術分野】
本発明は、豆腐材料一体包装体(豆腐製造キット)および豆腐の製造方法および豆腐に関し、さらに詳しくは、一包装体に内包された材料のみで豆腐をつくることができ、保存可能で搬送容易な豆腐材料の包装体であって、どこにでも携帯することができ、かつ熟練技術がなくても失敗なく高品質の豆腐を容易につくることができ、したがって場所・時間を問わず風味があってまろやかな出来たての豆腐を供すことができる豆腐材料一体包装体、これを用いた豆腐の製造方法および豆腐に関する。
【0002】
【従来の技術】
豆腐は、豆乳(大豆タンパク)を凝固させたものであり、栄養価が高く、かつ消化吸収のよいタンパク源として有用な食品であるだけでなく、その風味、食感などもほとんどの人に好まれるため、日常的に広く食されている。
豆腐の美味しさは、味、香りなどの旨味、風味、さらには歯ざわり、舌ざわりなどの食感など、多くの要素で評価されるため、単に使用される原料大豆、水だけでなく、その製造過程たとえば大豆から豆乳の製造工程、豆乳の凝固(豆腐の出来)工程でのそれぞれの出来具合にも大きく影響される。伝統的に手作りされる風味があってまろやかな豆腐は、大豆の甘味や風味をうまく引き出すことができるニガリ(苦汁)を用いて、丁寧につくられた豆乳の旨味、風味を損なわずに、微妙な人為的調節を加える熟練技術により豆乳を固めて得られる。
【0003】
しかしながら豆腐は変質・劣化しやすく、空気に曝しておくと短時間で腐敗し、水に浸すと風味を失ってしまい、賞味期間が極めて短い上、柔らかい保水構造物であり形も崩れやすく、本質的に保存性および搬送性に劣る。豆腐の変質は製造時の加熱工程から始まるため、豆腐の美味しさは、つくりたてに最も保持されているといえる。それ故、味覚には嗜好性があるとしても、一般に豆腐はつくリたてが最も美味とされ、つくリたて豆腐に対する指向は根強い。特に伝統的な製法により丁寧につくられたつくリたて豆腐に対する指向は根強い。
【0004】
製造直後の豆腐を直にパック詰めし、保存性および搬送性を改善した豆腐(量販品)も多量に流通されている。しかし一旦豆腐にしたものはパック詰めしても経時的に保水構造が崩れ食感が劣るようになり、また水に浸してパック詰めすると風味が低下し、あるいは保水構造を保持させるために充填剤などを添加したものは歯ざわりや舌ざわりなどが豆腐とは異なる食感になってしまう。またパック詰め豆腐の原料に使用する豆乳は、通常、凝固前に保存性付与のために行われる高温殺菌(煮熟)により、豆乳そのものの風味が低下している。このためパック詰め豆腐は、つくりたて豆腐のような美味しさを得ることは困難である。
【0005】
また豆腐の製造は労働上の拘束が多いだけでなく、凝固剤としてニガリを用いてまろやかな豆腐を失敗なく得るには熟練技術を要する。具体的に、大豆を水に浸して膨潤させた後、磨り潰して得られる磨砕大豆(呉、豆汁)を加熱(煮呉)して絞り、おからを分離して得られた豆乳を凝固させる豆腐の工程において、加熱した大豆タンパクは品質の劣化が早いため、呉の加熱から豆乳の凝固までの工程を連続して行う必要があり、さらに味や香りの良い豆腐を造るためには、品質の高い豆乳を造る技術が要求されるとともに、豆乳にニガリを加えて凝固させる技術に高い専門性が要求される。このため小規模で伝統的に豆腐を製造する業者は、つくりたての美味しい豆腐を朝食時間に間に合わせるために、早朝から休むことのない労働を強いられている。家庭において、日常的に大豆から豆腐をつくることが容易ではないことはいうまでもない。
【0006】
上記のような情況から、従来、豆腐の製造方法そのものについては多くの提案がなされており、また豆乳に保存性を持たせることにより家庭などでもつくリたて豆腐を供し得るようにする方法も提案されている。
たとえば特開平9−327273号には、蒸煮した豆乳を包装し、変質を防ぐため冷蔵または氷蔵下に流通させる方法が提案されている。該公報には、家庭において、上記包装豆乳を加熱した後または加熱前に、該豆乳と別包添付で流通させた凝固剤を添加して凝固させ豆腐類をつくることが提案されている。
また豆乳液を充填包装した容器に、これとは別パックにパックしたニガリを添加し、豆乳充填容器を豆腐製造容器としてそのまま用いる豆腐製造方法(特開平7−2650076号)、豆乳を二段階で脱泡してパック詰めすることにより、消泡剤の添加を省略しても豆腐を手づくリできる方法(特開平8−242801号)など多様な提案がなされている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
上記で提案されているように大豆から豆乳を得る工程までを省略することができれば、家庭でも豆腐をつくることは可能であるが、豆乳に凝固剤を加える操作は豆腐製造工程のうちでも熟練技術が要求される操作であり、豆乳と凝固剤とを混合するだけで均質な豆腐が必ずできるとは限らない。特にニガリを用いると素人では豆腐にならないこともあり、業者が製造するようなまろやかな豆腐を確実に得ることは到底できない。
一方、豆腐製造業者においても、拘束の多い労働を軽減することができ、かつ伝統的な熟練技術に頼る高品質の豆腐を容易にかつ確実に製造することが望まれている。
このため保存性、搬送性に優れ、時、場所を選ばず豆腐をつくることができるだけでなく、熟練技術がなくても均質でかつまろやかな美味しい豆腐を失敗することなくつくることができる豆腐材料一体包装体もしくは製造方法の出現が望まれていた。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、上記のような情況に鑑み、保存可能で搬送性に優れ、熟練技術がなくてもどこでも豆腐が手づくりできる方法について検討を重ねるうちに、外部シールよりは開封容易な内部分割シール部分を有し、このシールで区画された各室(空間)内に豆乳とニガリとを別々に密閉すれば、搬送、携帯、保存時などには、豆腐製造の全材料を一包装体で取扱うことができ、また使用時には容器外側から押圧するかまたは容器(シート)を引張ることにより、密閉容器内で一気に混合を行うことにより、容易に均質な混合物を得ることができ、凝固剤としてニガリを封入した場合であっても、熟練技術を要さずに失敗なく均質な豆腐が得られることを見出した。したがって、時、場所を問わず手づくり豆腐が可能であるだけでなく、特に溶存酸素をほとんど含まず、ムラがなく、保存のための高温煮熟処理が施されてない豆乳を用いた場合には、豆腐を失敗なく製造できるだけでなく、極めて風味がよくまろやかで商品となりうる豆腐を得ることができ、豆腐製造業者が使用すればその労力をも軽減しうるものであり、上記従来の課題を一挙に解決しうることを見出して本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち本発明は、
密閉容器の開封を許容しない押圧力または引張力により開封しうる内部シールにより少なくとも2室に分画された複室構造を有する可撓性材料からなる密閉容器と、
上記分画された室の少なくとも1つに封入された豆乳と、少なくとも1つの他室に封入された凝固剤とを含む豆腐材料一体包装体を提供する。
【0010】
上記密閉容器の好ましい態様例は、少なくともガスバリヤ層とヒートシール最表層とを含む積層構造を有する可撓性シートを重ねた袋状体であり、袋内面側に配置されたヒートシール層同士の熱融着により前記内部シールが形成されている。
上記内部シールの強度は、好ましくは約5〜8N/15mm程度である。
上記内部シールは、前記押圧力または引張力により破裂的に開封することが望ましい。
【0011】
上記凝固剤として、ニガリを含むことができる。
上記豆乳は、実質的に溶存酸素を含まないことが望ましい。
上記豆乳は、水膨潤大豆の磨砕物(呉)から脱酸素処理水の過熱蒸気により抽出された大豆タンパクからなる豆乳であることが望ましい。上記により得られ、密閉容器内に封入される豆乳は、通常、100℃を超える温度での加熱が加えられてない。
【0012】
本発明では、上記の豆腐材料一体包装体の前記密閉容器を押圧または引張ることにより内部シールを開封し、豆乳と凝固剤とを密閉容器内で混合した後、密閉状態のまま、または開封して混合物を加熱する豆腐の製造方法、およびこれにより得られる豆腐も提供される。
【0013】
なお内部を開封容易なシール部で区画し複室構造とした密閉容器については、その材料を含め数多く提案されており、またこれを利用した包装体もいくつか提案されてはいるが、豆腐材料をすべて封入し、豆腐製造キットを構成したものは全く知られておらず、何ら提案もされてない。いかに多くの複室容器が知られていても、これに豆腐材料をすべて充填し、豆腐材料一体包装体とし、一の包装体だけで豆腐を造ることは誰も考えつかなかった使用方法である。
またすでに市販され、周知の豆乳パックを用いれば家庭で豆腐をつくることも可能であり、前述したように家庭で豆腐をつくる方法も提案されてはいるが、いずれも豆乳パック容器を開封した後、凝固剤を添加するものであり、豆乳と凝固剤とを一密閉容器内にパックすることは何ら提案されていない。また豆乳とニガリとを一容器内にパックして未開封のまま用いた場合と、これらを別包して用いる場合とでは、豆腐の出来具合に格別な差異があることは何ら教示されておらず、これを示唆する記載も見当たらない。
上記複室構造を有する密閉容器に豆腐材料のすべてを充填することは本発明者により創作されたものであり、このような本発明の豆腐材料一体包装体は、構造的に利便性が高いだけでなく、容器内での材料混合により、従来の豆乳パックにニガリを後添する方法に比して予想外に出来のよい豆腐を誰でも失敗なく確実にできるという効果も奏する。勿論、本発明の豆腐材料一体包装体は、従来のパック詰め豆腐とは全く別異なものである。
【0014】
【発明の実施の形態】
本発明の豆腐材料一体包装体は、一密閉容器内に含まれる材料のみで豆腐をつくることができる豆腐製造キットであり、内部分画された室内に別々に封入された、通常時は混り合わない豆乳と凝固剤とを一密閉容器内に含む。
密閉容器は、可撓性材料からなり、容器の開封は許容しない押圧力または引張力により開封しうる内部シールにより少なくとも2室に分画された複室構造を有する。
以下、図を参照しながら本発明をより具体的に説明する。
【0015】
図1および図2は本発明の好ましい態様の一例を示し、図1は本発明に係る豆腐材料一体成形体1を構成する密閉容器10が可撓性シート11からなる袋状体の斜視図であり、図2はそのII-II 線に沿う概略断面図である。具体的に、密閉容器10は、袋内面側に配置されたヒートシール層同士の熱融着により形成された内部シール4により少なくとも豆乳室2と凝固剤室3との2室に分画された複室構造を有する。
内部シール4は、密閉容器10の外側から押圧または容器(シート)をつまんで引張ることにより開封しうるものであるが、内部シール4の開封圧では、密閉容器10の(外部)開封は許容しないシール強度を有する。たとえば内部シールの強度に対し5倍以上の強度で外部シールすることが好ましく、通常約10倍以上の強度を選択して外部シールすることが望ましい。
【0016】
可撓性シート11は、液密性好ましくは気密性の密閉容器10を形成することができるとともに、外方からの押圧により内包された液状材料(豆乳、凝固剤)の変形に追従することができる可撓性材料であって、100℃近辺での加熱あるいは10℃以下での低温保存でも、もちろんその中間の温度でも無害で、密閉性を保持しうる公知の食品用材料のうち、上記のような強度の内部シールを形成しうるものを特に制限なく使用することができる。
具体的に可撓性材料11は、少なくともガスバリヤ層、特に酸素非透過性の抗菌性フィルム層を含む可撓性シート(またはフィルムともいう)であることが好ましい。この可撓性シートは、ヒートシール性を有することが好ましく、ガスバリヤ性とヒートシール性との両方を満たすことができれば単層構造であってもよいが、通常はガスバリヤフィルム層の表層にヒートシール層が形成された積層構造のシート材料が用いられる。なお本明細書において、シートとは、単に板状体ではなく、チューブ状に成形されたものなども含めた意味で用いられる。
【0017】
上記のような積層シートおよび複室構造の密閉容器そのものは、すでに多くの構成および製造方法が提案され、市販品としても入手可能であり、本発明の目的を達成しうる複室構造の密閉容器を形成しうる食品用シートであればこれら公知のものを特に限定することなく広く使用することができる。たとえば延伸、未延伸のポリオレフィン(ホモポリマーまたは共重合体およびこれらの変性物)、ポリスチレン、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体などのスチレン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどの熱可塑性ポリエステル、ポリアミド、ポリ塩化ビニルなどおのハロゲン含有樹脂などの熱可塑性樹脂のうちから、ガスバリヤ性またはヒートシール性が得られるものを適宜選択して積層した公知の食品用シートを使用することができる。
可撓性材料は、内容物が確認できる透明あるいは半透明であってもよく、また不透明であってもよく、したがってガスバリヤ層としてアルミニウム箔を含んでいてもよく、さらに紙との複合材などであってもよい。またシートには印刷が施されていてもよい。
【0018】
密閉容器10は、搬送可能で、使用時に押圧または引張ることにより内部開放することができる形状であればよく、図1に示す二枚重ねした可撓性シート11の外周5を強固にシールすることにより形成された袋状体の形状に何ら限定されるものではない。密閉容器10内の空間を液密好ましくは気密に保持しうる構造であれば、外周シール5は、図に示されるものに何ら限定されず、たとえば一枚の可撓性シート11を折畳んだものの三方外周であってもよく、チューブ成形体の開口両辺であってもよい。また袋状体(ピロー状体などとも称される)は、図3に示すようなガセット袋などのマチを有するものであってもよく、また箱型形状、口付きチューブ状体などであってもよい。このような複室構造の密閉容器の一例として、特開平9−295648号に提案されたピーラブル樹脂部が形成された分割包装用容器などを用いることもできる。
豆乳充填の作業上からは、ガセット袋形状のものが好ましい。
【0019】
また内部シール4は通常、積層シート11の最表層ヒートシール層同士が袋内面側で対向するように重ね、熱融着すれば容易に形成することができる。内部シール4は、密閉容器10そのものの開封は許容しない押圧力または引張力で開封され、豆乳および凝固剤を封入した後、外部シール5により密閉された容器10を、外部から押圧または引張ることにより開封しうる強度で形成される。たとえば豆乳室2および/または凝固剤室3の腹部分を外から手などで押さえる(図2参照)ことにより開封できる強度であることが望ましく、破裂的に開封することが望ましい。一方、内部シール4が通常の保存時および搬送(携帯)時に容易にリークまたは開封されることは避ける必要があり、内部シールのシール強度は、約3〜10N/15mm程度であることが好ましく、通常、約5〜8N/15mm程度に設定される。
また内部シール4のシール巾をある程度広く取れば、無防備な押圧には容易に開封しにくく、かつ通常時の内部シール4のリークを避けることができる。具体的に内部シール4のシール巾は、通常、2〜25mm程度、好ましくは2〜10mm程度、より好ましくは3〜7mm程度が望ましい。
【0020】
密閉容器10は、上記内部シール4により豆乳室2と凝固剤室3とに区画される。内部シール4は、必ずしも図1に示すような直線シールに限らず、開封時の豆乳と凝固剤との素早い混合が得られるものであればよく、たとえば図4に示すように枠取り形状であってもよい。また3以上の複室構造が形成されてもよい。また豆乳室2および/または凝固剤室3を複数有していてもよい。
たとえば図5には、内部シール4が複数設けられ、豆乳室2の両側に凝固剤室3,3を有する複室構造であってもよい。なお図3〜6の各図中、図1または図2と同一符号は同一のものを意味し、説明の重複は避ける。また図4〜6に示す豆乳室2と凝固剤室3とを入れ替えた態様のものも例示される。
【0021】
内部シール4は、豆乳と凝固剤とを別々に封入できるように形成されていればよく、内容物を充填する前に予め形成されていても、また豆乳または凝固剤のいずれかを充填した後に形成されてもよく、その形成方法は限定されない。またたとえば二枚重ねしたシートの所望箇所をシールしてもよく、またチューブ押出成形時に同時に押出方向に平行に設けてもよく、あるいは予め押出あるいはインフレーションなどにより成形されたチューブに形成してもよい。シール方法は、通常、熱融着で行われるが、接着剤によるものでも構わない。
内部シール4を外部シール5とは異なる強度でシールするには、外部シールと内部シールとの熱融着温度あるいは圧力、時間などを変える方法、シール巾を変える方法、内部シール部分に外部シール部よりも熱融着しにくいかシール強度の弱いシール層(ピーラブル層など)をさらに設ける方法など、適宜に行うことができ、公知の方法を選択することができる。
【0022】
また外部シール5は、豆乳と凝固剤を封入した後、密閉性を保持するために、無防備に手で押圧した程度では容易に開封しないように強固にシールされる。このため外部シール5は、内容物を混合した後にナイフ、鋏などで開封するか、あるいは外部シール5の一部に切込み、楔状切込みなどの任意形状の引裂き口が形成されていてもよい。
密閉容器10の大きさは、搬送時および使用時の利便性、内容物の混合容易性、一回に喫食する豆腐の量などの目的に応じて適宜選択されればよく、特に限定されない。たとえば豆腐一丁分(通常豆乳量で150〜300ml程度)の材料を封入したものなどが挙げられる。
【0023】
上記のような密閉シール(外部シール5)と内部シール4とのシール強度の異なる複室容器のより具体的な一例を挙げると、スタンディングフィルム(旭化成社製ポリ/ナイロンラミネート)を使用して、加熱条件を変更することにより、内部シール4を5〜8N/15mmで、外部シール5を50〜60N/15mmのシール強度に形成した態様例などを挙げることができる。
密閉容器10内への凝固剤および豆乳の充填は、これらが混合しない状態で充填されればよく、その順序、シール方法などは特に限定されず公知の技術のうちから適宜に選択して採用することができる。
【0024】
本発明では上記のような密閉容器10内に豆腐(製造)材料がすべて封入されており、一容器内で豆腐をつくることができる。一包装体内には、通常、豆腐を製造する量比の豆乳および凝固剤が内包される。この量比は豆乳濃度、ニガリ濃度などによっても異なり、特に制限されるものではないが、一例を挙げると、12〜15%濃度の豆乳200mlに対して、塩化マグネシウム濃度で約3〜4%のニガリ(水溶液)を約2〜4ml程度用いることができる。
【0025】
本発明に用いられる凝固剤も、特に制限的ではなく、たとえば塩化マグネシウム、塩化カルシウム、これらを主成分とするニガリ(苦汁)、硫酸カルシウム等を挙げることができるが、ニガリは豆腐に大豆の風味や甘みを引き出すことができ好ましい。
豆腐は、豆乳を凝固剤で凝固反応させて得られるが、本発明では、豆腐材料を一包装体内にすべて内包させ、かつ別々に包装されたものと異なり、使用時には内部シールの破裂により豆乳と凝固剤とが一気に混合できるため、豆乳の凝固反応を極めて均質な状態で反応させることができ、凝固剤が熟練技術を要するニガリであっても、素人でも失敗なく豆腐をつくることができる。
【0026】
本発明では、上記豆乳室2内には、従来の製法で製造された豆乳を特に制限なく封入することができ、またおからを除去せず煮呉そのものを封入してもよい。したがって本明細書では、豆乳室2内に充填される豆乳は煮呉を含む意味で用いられる。
本発明の包装体が上記構造であることにより、高濃度の豆乳を封入しても豆腐を失敗なくつくることができる。ここで、豆乳中の大豆タンパクの濃度は、特に制限的ではないが、呉(煮呉)からおからなどの固形分を分離して得られたままの状態で、すなわち濃縮処理などの熱処理をしない状態で、好ましくは12%以上、より好ましくは13%以上であるのがよい。濃度は高めが好ましく、特に上限は制限ないが、現実に濃縮処理なしで達成できる濃度は、約15ないし16%程度である。
ここで保存性を考慮すれば、豆乳(または呉)は溶存酸素量が少ないほど好ましく、実質的に含まないことが望ましい。具体的には溶存酸素濃度が5〜6ppm程度以下、好ましくは現在可能な溶存酸素分析方法での検出限界に近い濃度で含まないことが好ましい。また豆乳室2に充填される豆乳は、製造時に均一加熱され、煮ムラのないものが好ましい。
【0027】
本発明では、このように高濃度でかつ溶存酸素濃度が低く、しかもムラのない豆乳として、特許第3004981号公報に記載された煮釜を用いて製造された豆乳を用いることができる。この煮釜の構造および該煮釜を用いた豆乳の製造方法については、該特許公報に詳細に記載されており、本明細書にもその記載を含ませるものとし、ここでの記載を省略する。
簡潔に説明すれば、該公報の図1〜7に示される構造の煮釜を用い、内部に供給された原料大豆を過熱水蒸気により煮沸し、大豆タンパク(豆乳)を抽出する方法である。
【0028】
原料大豆は、通常、まず原料となる大豆を所定時間水に浸して膨潤させ、得られた膨潤大豆を磨り潰して磨砕大豆(呉)として煮釜に供給するが、膨潤大豆を磨砕する方法および手段は特に制限的ではなく、従来公知の磨砕方法および手段を用いればよい。また大豆の磨砕は必ずしも水で膨潤した後に限定されず、乾燥磨砕した大豆を水に浸して膨潤させてもよい。また煮釜に供給する原料は、膨潤磨砕大豆をそのまま用いる場合に限定されず、予め膨潤磨砕大豆を予備加熱しておいて呉製造用煮釜での大豆タンパクの抽出を促進して煮沸を容易にしてもよく、また乾燥したまま粉砕または磨砕した大豆と水とを混合して膨潤させることなく直ちに呉製造用煮釜に供給してもよい。
【0029】
上記で用いられる過熱水蒸気は酸素を含まないことが望ましい。水は通常8〜10ppmの酸素を含有するため、酸素を極力除去した脱酸素処理水で上記過熱蒸気(脱酸素過熱蒸気)をつくるのがよい。水の脱酸素方法および過熱蒸気による加熱方法などは、本明細書に含まれるものとした上記公報の記載に準じて行うことができる。
脱酸素過熱蒸気の供給温度は、大豆タンパクを抽出できれば特に制限はなく、通常110℃以上であればよいが、大豆の風味を出したい場合には150〜190℃とするのがよく、大豆の風味を特に強くしたい場合には180〜190℃とするのがよい。しかし、あまり高温にすると抽出された大豆タンパクが変質することも考えられるので、通常の煮沸であれば、蒸気の温度は、110〜120℃とするのがよく、大豆の状態や好みに応じて適宜設定すればよい。また脱酸素過熱蒸気の供給圧力は、大豆をムラなく煮沸できれば特に制限はないが、効率的に行うためには、たとえば5〜7kg/cm2 するのがよい。
【0030】
大豆タンパク(豆乳)の抽出は、上記図1〜7(ここでは図示せず)で示される煮釜を用いることにより、ムラなく均一かつ充分に煮沸された高品質の豆乳(煮呉)を連続的に得ることができる。
脱酸素過熱蒸気により煮沸された煮呉(おからを含む豆乳)は、通常、90〜99℃の高温で煮釜から注出されるが、本発明では、通常、この煮呉から固形分であるおからを分離した豆乳を密閉容器10の豆乳室2内に充填してもよく、またおからを分離せず高品質の煮呉をそのまま充填してもよい。
【0031】
煮釜から注出直後の煮呉は、溶存酸素量が極めて低く好ましくは実質的に溶存酸素を含有しない。また煮釜から注出した直後の高温の煮呉を冷却せずにおからを分離することにより、溶存酸素量が極めて低く好ましくは実質的に溶存酸素を含有しない豆乳を得ることができる。
おからの分離方法および手段は、特に制限的ではなく、従来公知の分離方法および手段やろ過方法および手段を用いることができるが、好ましくは実質的に酸素を含有しない脱酸素環境下で行うのが好ましい。
具体的には、煮釜から注出直後の高温の煮呉から、好ましくは脱酸素状態で、固型分であるおからを分離すれば、実質的に溶存酸素を含有しない高温(たとえば80〜95℃程度)の大豆タンパクの懸濁液(豆乳)を得ることができ、溶存酸素を含まないので従来の高温での殺菌処理(煮熟)などの熱処理を施さなくてもよい。
【0032】
豆乳(または煮呉)は、気体(特に酸素含有気体)を巻込まないようにして密閉容器10へに充填することが望ましい。
本発明では、上記豆乳(煮呉)は一旦冷却した後充填してもよいが、通常、煮釜から注出直後の煮呉またはこれから冷却することなくおからを分離した豆乳を高温のまま充填することが好ましい。高温のまま充填すれば、仮に豆乳が酸素含有環境下で密閉容器10内に封入され、細菌などが混入したた場合であっても、封入直後のパック容器の内部の豆乳の温度は80〜95℃の高温であるので、高温殺菌されてしまうし、またたとえ完全に殺菌されなくて残ったとしても、豆乳パック内の溶存酸素および封入時の混入酸素の含有量は極めて少ない、もしくは実質的に0であるので、細菌の繁殖は困難である。従って、上記のように封入された豆乳は、長期間の保存が可能である。
【0033】
上記で得られた豆乳(煮呉)は、高温殺菌処理などの熱処理をしなくても、溶存酸素が極めて少ないため、細菌繁殖しにくく長期間の保存が可能であり、豆乳の新鮮さが失われない。
また過熱蒸気による抽出によれば、濃縮処理などの熱処理をしなくても、高濃度の豆乳を得ることができる。たとえば従来の豆乳が10〜12%程度であるのに対し、過熱蒸気による抽出では前記したように13〜16%にも達する。
しかも従来の呉そのものを高温加熱(煮熟)して得られる豆乳に比べ、豆乳の旨味、風味を保つことができる。
このような豆乳を密閉容器10内に封入すれば、大豆の持つ風味や甘味を持ち、豆乳としての新鮮さや味や香りや風味などがよく、保存性も高い。特に豆腐に成形してパックする場合に比べ、高い風味を持続する。さらに豆乳に煮ムラがないため特にまろやかで、かつ溶存酸素に起因する巣(鬆)がなく食感のよい美味しい豆腐が得られる。
【0034】
上記のような溶存酸素の少ない豆乳は、空気などの酸素含有雰囲気に接触させず、好ましくは1〜10℃の温度範囲で低温保存すれば、製造後も新鮮な味やうま味や風味を保持し、具体的にたとえば溶存酸素量が5ppm以下のもので製造から1週間、2ppm以下のもので3週間、実質的に0ppmのものは1ヶ月間に渡って品質を劣化させずに高品質のまま保存することができる。
保存温度はより好ましくは2〜5℃程度であり、この温度範囲であれば上記豆乳はさらに長期間の保存が可能である。
【0035】
本発明では、上記密閉容器10内には、豆乳および凝固剤とともに必要に応じて他の成分が含まれていてもよい。他の成分は本発明の効果を損なわない範囲であれば食品成分を広く含ませることができるが、具体例をいくつか挙げれば、大豆タンパクに不足するアミノ酸またはそれを含むペプチド、ビタミン類、ミネラル類、柚子粉などの香付け成分、着色剤などを含ませることができる。これら豆腐製造時に豆乳および凝固剤とともに混合し豆腐内に含ませることが好ましい他の成分は、上記豆乳室2および/または凝固剤室3に適宜に含ませることができ、あるいは図5に示す複室態様例の凝固剤室3の一方の室などを他の成分の収容室としてもよい。
さらに醤油、だし汁などの調味料、さらには刻み葱、乾燥葱、生姜、唐辛子などの薬味など、豆腐をつくった後に添えるものも包装体1に含ませることができる。このような態様の一例を図6に示す。これらは外部シール5と同じ強度で区画された外室6に収容される。
本発明では、この外室6は必ずしも密閉容器10と一体に成形されなくてもよく、別包装体であってもよいことはいうまでもない。
【0036】
上記のような豆腐材料一体包装体から豆腐を製造するには、密閉容器10のシート11部分、通常は容量の大きい豆乳室2のシート11部分を手の平などで押圧するかまたは各シート11、11をつまんで引張り、内部シール4を破裂的に開封する。この破裂開封により、豆乳と凝固剤とは瞬時に混合され、均質な混合物が容易に得られるが、さらに密閉容器10を掌中で揉み混合を促進してもよい。
次いで混合物を加熱凝固させるが、この加熱手段は従来の方法に従って行えば失敗なく豆腐が得られる。たとえば密閉容器のまま湯煎あるいは電子レンジで短時間加熱すれば固まって豆腐ができる。また上記内部シール4の開封後は、密閉容器10を開封するか、あるいは混合物を容器に移して加熱しても失敗なく豆腐が得られる。
加熱温度および時間は、豆乳の初期温度が約10℃とすると、通常加熱必要温度が、75〜90℃であるので、約15分程度で豆乳を凝固させ、豆腐を製造することができる。
【0037】
なお本発明の豆腐材料一体包装体中に含まれる豆乳は、そのまま飲用しても何ら差支えない。
上記のような本発明の豆腐材料一体包装体は、長期間の保存が可能で、家庭や飲食店や豆腐製造の専門業者などの用途に応じた分配、運搬が可能であるだけでなく、だれでも失敗なく豆腐をつくることができる。たとえば一般家庭、飲食店、旅行先、キャンプ場、交通利便性などの悪い地域などに携帯して、所望時に豆腐を失敗することなくつくることができる。
また特に上記好ましい豆乳が含まれている場合には、格別に新鮮な風味があり、まろやかで鬆のない豆腐を得ることができる。
より具体的には、キャンプ場または旅行先の宿泊施設などの簡便な加熱調理しかできないような場所であっても、豆腐材料一体包装体1を手の平などで押圧するまたはつまんで引張り、内部シール4を破裂させ、豆乳と凝固剤とを瞬時に混合した後、湯の入った飯盒中あるいはポット中などで湯煎することにより容易に熱々の豆腐を供すことができる。あるいはこれを冷奴にして供すこともできる。
【0038】
豆乳に凝固剤としてニガリ(塩化マグネシウム)を加えて凝固させて豆腐を製造する場合、ニガリが大豆の甘味や風味をうまく引き出すことができるが、凝固反応が早く、失敗が多いため、豆乳へのニガリの混合に高度な技術が要求されるばかりか、凝固状態を細かく監視し、温度の制御を行って凝固反応の速度をコントロールする必要があった。このため、従来は、豆乳を冷却して凝固反応を遅くし、ニガリを豆乳に良く混合した後、得られた混合液を蒸気や湯せんでゆっくりと加熱している。このため、加熱に1〜2時間を要し、極めて非効率であるという問題があった。また、加熱に時間がかかることから、豆腐外部が内部に比べて常に高い温度に晒され、豆腐外部に熱がかかり過ぎるため、豆腐外部が2次、3次の加熱の状態となり、保水性の悪い豆腐ができてしまうという問題があった。本発明では、可撓性容器を押圧または引張るだけで美味しい豆腐を失敗することなくつくることができるため、豆腐製造業者がこれを用いて豆腐をすることも好ましく、豆腐製造に拘束される労力を大きく軽減することができ有用である。したがって本発明では、本発明の豆腐材料一体包装体を用いて製造された豆腐を提供することもできる。
【0039】
上記には、本発明に係る豆腐材料一体包装体、これを用いる豆腐の製造方法および豆腐について、いくつかの態様例を挙げ説明したが、本発明は上記態様例に限定されるわけではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の改良や設計の変更があっても良いことはもちろんである。
【0040】
【発明の効果】
本発明の豆腐材料一体包装体は、簡素で豆腐材料の搬送性および保存性に優れるだけでなく、だれでも簡単に場所、時間を選ばず豆腐を失敗なくつくることができるという大きな利点を有する。一般家庭、飲食店のみならず、豆腐製造の専門業者にも極めて有用である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る豆腐材料一体包装体の一態様例を示す斜視図である。
【図2】図1のII−II線に沿う断面図である。
【図3】本発明に係る豆腐材料一体包装体がガゼット袋の形状である態様例を示す斜視図である。
【図4】本発明に係る豆腐材料一体包装体の他の態様例を示す平面図である。
【図5】本発明に係る豆腐材料一体包装体の他の態様例を示す平面図である。
【図6】本発明に係る豆腐材料一体包装体の他の態様例を示す平面図である。
【符号の説明】
1…豆腐材料一体成形体
2…豆乳室
3…凝固剤室
4…内部シール
5…外部シール
10…密閉容器10
11…可撓性シート
Claims (9)
- 密閉容器の開封を許容しない押圧力または引張力により開封しうる内部シールにより少なくとも2室に分画された複室構造を有する可撓性材料からなる密閉容器と、
上記分画された室の少なくとも1つに封入された豆乳と、少なくとも1つの他室に封入された凝固剤とを含む豆腐材料一体包装体。 - 前記密閉容器が、少なくともガスバリヤ層とヒートシール最表層とを含む積層構造を有する可撓性シートを重ねた袋状体であり、袋内面側に配置されたヒートシール層同士の熱融着により前記内部シールが形成されている請求項1に記載の豆腐材料一体包装体。
- 前記内部シールが、前記押圧力または引張力により破裂的に開封する請求項1または2に記載の豆腐材料一体包装体。
- 前記凝固剤が、ニガリである請求項1ないし3のいずれかに記載の豆腐材料一体包装体。
- 前記豆乳が、実質的に溶存酸素を含まない請求項1ないし4のいずれかに記載の豆腐材料一体包装体。
- 前記豆乳が、水膨潤大豆の磨砕物から脱酸素処理水の過熱蒸気により抽出された大豆タンパクからなる豆乳である請求項1ないし5のいずれかに記載の豆腐材料一体包装体。
- 前記密閉容器内に封入される前記豆乳が、100℃を超える温度での加熱が加えられてない豆乳である請求項6に記載の豆腐材料一体包装体。
- 請求項1〜7のいずれかに記載の豆腐材料一体包装体の前記密閉容器を押圧または引張ることにより内部シールを開封し、豆乳と凝固剤とを密閉容器内で混合した後、密閉状態で、または開封して混合物を加熱する豆腐の製造方法。
- 請求項8に記載された豆腐の製造方法により得られる豆腐。
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