(第1実施形態)
以下、車両の制御装置の第1実施形態を図1~図13に従って説明する。
図1には、本実施形態の制御装置の一例である姿勢制御装置40と、制動装置20と、駆動装置30とが図示されている。駆動装置30は、パワーユニット31と、パワーユニット31を制御する駆動制御部32とを有している。パワーユニット31は、車両の動力源として、エンジン及び電気モータのうちの少なくとも一方を有している。駆動制御部32は、パワーユニット31を制御することによって車両の駆動力DPを調整する。なお、図1及び図2に示すように、パワーユニット31は、車両に設けられている複数の車輪11,12のうち、前輪11には駆動力DPを出力する一方で、後輪12には駆動力DPを出力しない。つまり、本実施形態では、前輪11が「第1車輪」に相当し、後輪12が「第2車輪」に相当する。
図1に示すように、制動装置20は、制動アクチュエータ21と、制動アクチュエータ21を制御する制動制御部22とを有している。図1及び図2に示すように、制動アクチュエータ21は、前輪11の制動力、及び、後輪12の制動力を個別に制御することができるように構成されている。前輪11の制動力のことを「前輪制動力BPF」ともいい、後輪12の制動力のことを「後輪制動力BPR」ともいう。制動制御部22は、制動アクチュエータ21を制御することによって車両の制動力BPを調整する。車両の制動力BPとは、全ての車輪11,12の制動力の総和である。
図3及び図4を参照し、車両10が減速して停止した際における、車両姿勢の推移について説明する。
図3に示すように、前輪11及び後輪12への制動力の付与によって車両10が減速している場合、車両10がノーズダイブ側にピッチング運動する。この場合、減速に伴うピッチングモーメントによって、前輪11に対して設けられているサスペンションである前輪用サスペンション13Fは収縮する一方で、後輪12に対して設けられているサスペンションである後輪用サスペンション13Rは伸長する。同時に、各サスペンション13F,13Rのジオメトリによって、車体16の前部には前輪11への制動力の付与に伴うアンチダイブ力が発生するとともに、車体16の後部には後輪12への制動力の付与に伴うアンチリフト力が発生する。アンチダイブ力とは、車体16の前部を上方に変位させる力である。アンチリフト力とは、車体16の後部を下方に変位させる力である。また、車両10が減速している場合、図3に白抜きの矢印で示すように、各車輪11,12における路面との接地面には、摩擦力FF1,FF2が車両10の後方である坂下側に作用する。なお、前輪11における路面との接地面に作用する摩擦力FF1のことを「第1接地面摩擦力FF1」といい、後輪12における路面との接地面に作用する摩擦力FF2のことを「第2接地面摩擦力FF2」という。
図3に示す車両10にあっては、前輪用サスペンション13Fの前輪11側の端部における車両前後方向Xの位置が前輪用サスペンション13Fの車体16側の端部における車両前後方向Xの位置と相違し、前輪用サスペンション13Fの車体16側の端部を支点とするように、前輪用サスペンション13Fが設けられている。同様に、後輪用サスペンション13Rの後輪12側の端部における車両前後方向Xの位置が後輪用サスペンション13Rの車体16側の端部における車両前後方向Xの位置と相違し、後輪用サスペンション13Rの車体16側の端部を支点とするように、後輪用サスペンション13Rが設けられている。そのため、上記のように前輪用サスペンション13Fが収縮するなどのように前輪用サスペンション13Fが上下方向に変位すると、前輪11の車両前後方向Xの位置は前輪11の基準位置と相違する。前輪11の基準位置とは、停止基準状態での上下方向の位置に前輪用サスペンション13Fが位置するときにおける前輪11の車両前後方向Xの位置のことである。また、上記のように後輪用サスペンション13Rが伸長するなどのように後輪用サスペンション13Rが上下方向に変位すると、後輪12の車両前後方向Xの位置は後輪12の基準位置と相違する。後輪12の基準位置とは、停止基準状態での上下方向の位置に後輪用サスペンション13Rが位置するときにおける後輪12の車両前後方向Xの位置のことである。
停止基準状態とは、例えば、現時点で車両10が位置する路面上に車両10が停止しているときに、停止中に発生しない力が作用していない状態である。すなわち、傾斜αの登坂路に車両10が停止しているときの停止基準状態とは、例えば、水平な板上に車両10を載置して十分な制動力を車両10に付与し、この状態から当該板の前後方向における一方を持ち上げて車両10の前後方向の傾斜を傾斜αとした状態に相当する。また、傾斜αの登坂路に車両10が停止しているときの停止基準状態とは、制動力及び駆動力の双方を付与せず惰性で傾斜αの登坂路を車両10を前進させ、重力による減速によって車体速度VSが「0(零)」となった時点で、車両10が停止している状態を維持するのに十分な大きさまで制動力を一瞬で増大させて車両10が停止した状態に相当する。
前輪11及び後輪12のうちの少なくとも一方の車輪の車両前後方向Xの位置が当該車輪の基準位置から変位すると、車両のホイールベースWBLが基準ホイールベースWBLBと相違する。基準ホイールベースWBLBとは、前輪11が前輪11の基準位置に位置するとともに後輪12が後輪12の基準位置に位置する場合のホイールベースである。なお、図3に示す各サスペンション13F,13Rの形式は一例であり、制動によってサスペンションが上下方向に変位するなどし、制動時に車輪の車両前後方向Xの位置が基準位置から変わるものであれば、他の形式のサスペンションをサスペンション13F,13Rとして採用してもよい。
各車輪11,12への制動力の付与によって車両10が登坂路で停止している場合、車両10に加わる重力が、ずり下がらせる力として車両10に作用する。そのため、車両10が登坂路で停止している場合、図3に白抜きの矢印で示すように、各車輪11,12における路面との接地面には、車両10の前方である坂上側に接地面摩擦力FF1,FF2が作用する。すなわち、車両10の停止前後で接地面摩擦力FF1,FF2の向きが変わる。
また、車両10の停止後でも前輪11への制動力の付与が継続される場合、前輪制動力BPFによって、前輪11は、回転が規制されるロック状態となる。これにより、前輪11と路面との間の第1接地面摩擦力FF1、及び前輪制動力BPFの影響によって、前輪11の車両前後方向Xの位置を基準位置に戻すような前輪11の変位が規制される。すなわち、前輪用サスペンション13Fの上下方向の位置を上記停止基準状態での上下方向の位置に戻すような前輪用サスペンション13Fの作動が規制される。同様に、車両10の停止後でも後輪12への制動力の付与が継続される場合、後輪制動力BPRによって、後輪12は、回転が規制されるロック状態となる。これにより、後輪12と路面との間の第2接地面摩擦力FF2及び後輪制動力BPRの影響によって、後輪12の車両前後方向Xの位置を基準位置に戻すような後輪12の変位が規制される。すなわち、後輪用サスペンション13Rの上下方向の位置を停止基準状態での上下方向の位置に戻すような後輪用サスペンション13Rの作動が規制される。ここでいうサスペンション13F,13Rの上下方向の位置とは、サスペンション13F,13Rの収縮や伸長に伴う車体16を基準とする車輪11,12の上下方向の位置である。
図1に示すように、車両10には、各種のセンサが設けられている。センサとして、例えば、車輪速度センサ101及び前後加速度センサ102を挙げることができる。車輪速度センサ101は、車輪11,12毎に設けられている。そして、車輪速度センサ101は、対応する車輪11,12の車輪速度VWを検出し、検出した車輪速度VWに応じた信号を検出信号として出力する。前後加速度センサ102は、車両前後方向Xの加速度である前後加速度GXを検出し、検出した前後加速度GXに応じた信号を検出信号として出力する。
姿勢制御装置40には、車輪速度センサ101からの検出信号、及び、前後加速度センサ102からの検出信号が入力される。姿勢制御装置40では、各車輪速度センサ101からの検出信号に基づいた車輪11,12の車輪速度VWを基に、車両10の車体速度VSが導出される。また、姿勢制御装置40では、車体速度VSを時間微分した値が車両の車体加速度DVSとして導出される。
姿勢制御装置40には、車両10が坂路で停止した際に車両姿勢を調整する機能部として、坂路判定部41、姿勢制御部42、制動増大指示部43及び駆動減少指示部44を有している。
坂路判定部41は、車両10が停止している路面が登坂路であるか否かの判定を行う。すなわち、坂路判定部41は、車両10が停止すると、路面の勾配である路面勾配θを導出し、この路面勾配θを基に判定を行う。例えば、坂路判定部41は、前後加速度GXから車体加速度DVSを引いた値を路面勾配θとして算出する。車両が登坂路で停止している場合、前後加速度GXは車体加速度DVSよりも大きいため、路面勾配θは正の値となる。そのため、坂路判定部41は、路面勾配θが登坂路判定値θTh1以上であるときには路面が登坂路であるとの判定をなす。一方、坂路判定部41は、路面勾配θが登坂路判定値θTh1未満であるときには路面が登坂路であるとの判定をなさない。
姿勢制御部42は、車両10が停止しているとともに、坂路判定部41によって路面が登坂路であるとの判定がなされているときに、姿勢制御を実施する。姿勢制御とは、前輪制動力BPF及び後輪制動力BPRの減少を制動装置20に指示し、車両10の停止を維持する範囲での車両の駆動力DPの増大を駆動装置30に指示する制御である。姿勢制御は、第1制動減少指示処理、第2制動減少指示処理、第1駆動増大指示処理及び第2駆動増大指示処理を含んでいる。各処理の開始タイミング、及び各処理の内容については後述する。
制動増大指示部43は、姿勢制御の実施に起因する車両の駆動力DPの増大の終了後に、前輪制動力BPF及び後輪制動力BPRのうちの少なくとも一方の増大を制動装置20に指示する制動増大制御を実施する。本実施形態では、制動増大指示部43は、制動増大制御では、前輪制動力BPF及び後輪制動力BPRの双方の増大を制動装置20に指示する。制動増大制御は、第1制動増大指示処理及び第2制動増大指示処理を含んでいる。各処理の開始タイミング、及び各処理の内容については後述する。
駆動減少指示部44は、姿勢制御部42による姿勢制御の実施に起因する車両の駆動力DPの増大の終了後に、駆動力DPの減少を駆動装置30に指示する駆動減少制御を実施する。駆動減少制御は、第1駆動減少指示処理及び第2駆動減少指示処理を含んでいる。各処理の開始タイミング、及び各処理の内容については後述する。
次に、図5~図11を参照し、姿勢制御装置40が実行する処理ルーチンについて説明する。図5~図11で示される一連の処理ルーチンは、車両10が登坂路上に位置するときには繰り返し実行される。
はじめに、図5に示すメイン処理ルーチンについて説明する。
本処理ルーチンにおいて、ステップS11では、車両10が停止しているか否かの判定が行われる。例えば、車体速度VSが「0(零)」である場合は、車両10が停止しているとの判定をなす一方、車体速度VSが「0(零)」ではない場合は、車両10が停止しているとの判定をなさない。車両10が停止しているとの判定がなされていない場合(S11:NO)、処理が次のステップS12に移行される。ステップS12において、第2停止前制動力BP2bとして、現時点の第2指示制動力BPTr2が設定される。第2指示制動力BPTr2とは、第2車輪の制動力の指示値である。自動制動によって車両10の制動力BPが調整されている場合、自動制動用の制御装置によって決定されている第2車輪の制動力の指示値が第2指示制動力BPTr2として設定される。一方、運転者の制動操作によって車両10の制動力BPが調整されている場合、現時点の第2車輪の制動力が第2指示制動力BPTr2として設定される。本実施形態では後輪12が第2車輪に該当するため、第2指示制動力BPTr2として、現時点の後輪12の制動力の指示値、及び、現時点の後輪制動力BPRのうちの何れか一方が設定される。第2停止前制動力BP2bが設定されると、処理が次のステップS13に移行される。
ステップS13において、制御中フラグFLG1及び制御完了フラグFLG2にオフがそれぞれセットされる。また、停止カウンタCNTT及びステップカウンタCNTSが「0(零)」にそれぞれリセットされる。制御中フラグFLG1は、姿勢制御、制動増大制御及び駆動減少制御のうちの少なくとも1つの制御が実施されているときにオンがセットされるフラグである。制御完了フラグFLG2は、姿勢制御、制動増大制御及び駆動減少制御の何れもが完了した際にオンがセットされるフラグである。停止カウンタCNTTは、姿勢制御の開始タイミングを計るために更新されるカウンタである。ステップカウンタCNTSは、後述する各種の処理を切り替える際に更新されるカウンタである。その後、本処理ルーチンが一旦終了される。
その一方で、ステップS11において、車両10が停止しているとの判定がなされている場合(YES)、処理が次のステップS14に移行される。ステップS14において、制御完了フラグFLG2にオンがセットされているか否かの判定が行われる。制御完了フラグFLG2にオンがセットされている場合、姿勢制御、制動増大制御及び駆動減少制御の何れもが完了している。一方、制御完了フラグFLG2にオフがセットされている場合、姿勢制御、制動増大制御及び駆動減少制御の何れもが未だ実施されていない、若しくは、姿勢制御、制動増大制御及び駆動減少制御のうちの少なくとも1つの制御が実施中である。制御完了フラグFLG2にオンがセットされている場合(S14:YES)、本処理ルーチンが一旦終了される。一方、制御完了フラグFLG2にオフがセットされている場合(S14:NO)、処理が次のステップS15に移行される。
ステップS15において、制御中フラグFLG1にオンがセットされているか否かの判定が行われる。制御中フラグFLG1にオンがセットされている場合、姿勢制御、制動増大制御及び駆動減少制御のうちの少なくとも1つの制御が実施されている。一方、制御中フラグFLG1にオフがセットされている場合、姿勢制御、制動増大制御及び駆動減少制御の何れもが未だ実施されていない。制御中フラグFLG1にオンがセットされている場合(S15:YES)、処理が次のステップS16に移行される。
ステップS16において、車両10の発進指示があるか否かの判定が行われる。自動運転によって車両10を走行させる場合、自動運転用の制御装置から発進指示が姿勢制御装置40に入力される。そのため、発進指示が姿勢制御装置40に入力された場合、発進指示があるとの判定がなされる。一方、運転者の手動操作によって車両10を走行させる場合、アクセル操作が開始されたことが検知された場合、発進指示があるとの判定がなされる。制動操作の急な解除が検知されたときに、発進指示があると判定するようにしてもよい。発進指示があるとの判定がなされていない場合(S16:NO)、処理が後述するステップS23に移行される。すなわち、実施中の制御が継続される。
一方、発進指示があるとの判定がなされている場合(S16:YES)、処理が次のステップS17に移行される。ステップS17において、第1車輪に入力する駆動力の指示値である第1指示駆動力DPTr1として「0(零)」が設定される。本実施形態では前輪11が第1車輪に該当するため、第1指示駆動力DPTr1は、前輪11に入力される駆動力の指示値である。そして、処理が前述したステップS13に移行される。
その一方で、ステップS15において、制御中フラグFLG1にオフがセットされている場合(NO)、処理が次のステップS18に移行される。ステップS18において、停止カウンタCNTTが「1」だけインクリメントされる。続いて、ステップS19において、ステップS18で更新した停止カウンタCNTTが制御開始判定値CNTTThよりも大きいか否かの判定が行われる。制御開始判定値CNTTThは、車両10が停止している状態の継続時間に相当する停止カウンタCNTTの大きさを基に姿勢制御の開始を許可するか否かの判断基準として設定されている。停止カウンタCNTTが制御開始判定値CNTTTh以下である場合(S19:NO)、本処理ルーチンが一旦終了される。すなわち、姿勢制御が未だ開始されない。
一方、停止カウンタCNTTが制御開始判定値CNTTThよりも大きい場合(S19:YES)、処理が次のステップS20に移行される。ステップS20において、制御中フラグFLG1にオンがセットされ、且つ、ステップカウンタCNTSが「1」だけインクリメントされる。続いて、ステップS21において、停止保持力Fhが導出される。停止保持力Fhとは、車両10が登坂路で停止する状態を維持するのに必要な力のことである。すなわち、停止保持力Fhは、重力の作用に対抗して車両10の停止を維持するのに必要な力である。停止保持力Fhは、車両10の停止している登坂路の路面勾配θを基に導出される。具体的には、停止保持力Fhは、路面勾配θが大きいほど大きい。そして、ステップS22において、現時点の第1指示制動力BPTr1が第1制動力前回値BP1aとして設定され、現時点の第2指示制動力BPTr2が第2制動力前回値BP2aとして設定され、現時点の第1指示駆動力DPTr1が第1駆動力前回値DP1aとして設定される。第1指示制動力BPTr1とは、第1車輪の制動力の指示値である。本実施形態では前輪11が第1車輪に該当するため、第1指示制動力BPTr1とは、前輪11の制動力の指示値、及び、現時点の前輪制動力BPFのうちの何れか一方が設定される。そして、ステップS22の処理が完了すると、処理が次のステップS23に移行される。
ステップS23において、制駆動力を調整するための処理が実行される。当該処理については後述する。そして、当該処理が実行されると、本処理ルーチンが一旦終了される。
次に、図6を参照し、上記ステップS23の処理について説明する。
本処理ルーチンにおいて、ステップS31では、ステップカウンタCNTSが「1」であるか否かの判定が行われる。ステップカウンタCNTSが「1」であるとの判定がなされている場合(S31:YES)、処理が次のステップS32に移行される。ステップS32において、姿勢制御部42によって、姿勢制御の第1制動減少指示処理及び第1駆動増大指示処理が実行される。第1制動減少指示処理とは、第1車輪の制動力の減少を制動制御部22に指示する処理である。第1駆動増大指示処理とは、第1車輪の駆動力、すなわち車両10の駆動力DPの増大を駆動制御部32に指示する処理である。この第1駆動増大指示処理は、車両10の停止を維持する範囲での車両10の駆動力DPの増大を駆動装置30に指示する駆動増大指示処理の1つである。第1制動減少指示処理及び第1駆動増大指示処理の具体的な内容については後述する。第1制動減少指示処理及び第1駆動増大指示処理が実行されると、本処理ルーチンが終了される。
ステップS31において、ステップカウンタCNTSが「1」であるとの判定がなされていない場合(NO)、処理が次のステップS33に移行される。ステップS33において、ステップカウンタCNTSが「2」であるか否かの判定が行われる。ステップカウンタCNTSが「2」であるとの判定がなされている場合(S33:YES)、処理が次のステップS34に移行される。ステップS34において、姿勢制御部42によって、姿勢制御の第2駆動増大指示処理が実行される。第2駆動増大指示処理とは、第1車輪の駆動力、すなわち車両10の駆動力DPの増大を駆動制御部32に指示する処理である。すなわち、第2駆動増大指示処理もまた駆動増大指示処理の1つである。第2駆動増大指示処理の具体的な内容については後述する。第2駆動増大指示処理が実行されると、本処理ルーチンが終了される。
ステップS33において、ステップカウンタCNTSが「2」であるとの判定がなされていない場合(NO)、処理が次のステップS35に移行される。ステップS35において、ステップカウンタCNTSが「3」であるか否かの判定が行われる。ステップカウンタCNTSが「3」であるとの判定がなされている場合(S35:YES)、処理が次のステップS36に移行される。ステップS36において、姿勢制御部42によって、姿勢制御の第2制動減少指示処理が実行される。第2制動減少指示処理とは、第2車輪の制動力の減少を制動制御部22に指示する処理である。第2制動減少指示処理の具体的な内容については後述する。第2制動減少指示処理が実行されると、本処理ルーチンが終了される。
ステップS35において、ステップカウンタCNTSが「3」であるとの判定がなされていない場合(NO)、処理が次のステップS37に移行される。ステップS37において、ステップカウンタCNTSが「4」であるか否かの判定が行われる。ステップカウンタCNTSが「4」であるとの判定がなされている場合(S37:YES)、処理が次のステップS38に移行される。ステップS38において、制動増大制御の第2制動増大指示処理が制動増大指示部43によって実行され、駆動減少制御の第1駆動減少指示処理が駆動減少指示部44によって実行される。第2制動増大指示処理とは、第2車輪の制動力の増大を制動制御部22に指示する処理である。第1駆動減少指示処理とは、第1車輪の駆動力の減少を駆動制御部32に指示する処理である。第2制動増大指示処理及び第1駆動減少指示処理の具体的な内容については後述する。第2制動増大指示処理及び第1駆動減少指示処理が実行されると、本処理ルーチンが終了される。
ステップS37において、ステップカウンタCNTSが「4」であるとの判定がなされていない場合(NO)、ステップカウンタCNTSが「5」であるため、処理が次のステップS39に移行される。ステップS39において、制動増大制御の第1制動増大指示処理が制動増大指示部43によって実行され、駆動減少制御の第2駆動減少指示処理が駆動減少指示部44によって実行される。第1制動増大指示処理とは、第1車輪の制動力の増大を制動制御部22に指示する処理である。第2駆動減少指示処理とは、第1車輪の駆動力の減少を駆動制御部32に指示する処理である。第1制動増大指示処理及び第2駆動減少指示処理の具体的な内容については後述する。第1制動増大指示処理及び第2駆動減少指示処理が実行されると、本処理ルーチンが終了される。
次に、図7を参照し、上記のステップS32の第1制動減少指示処理及び第1駆動増大指示処理について説明する。本処理ルーチンは、姿勢制御部42によって実行される。
本処理ルーチンにおいて、第1制動減少指示処理が実行される。第1制動減少指示処理において、はじめのステップS51では、上記の第1制動力前回値BP1aから第1制動減少量ΔBP1を引いた値が最新の第1指示制動力BPTr1として算出される。第1制動減少量ΔBP1として正の値が設定されている。続いて、ステップS52において、ステップS51で算出した第1指示制動力BPTr1が「0(零)」以下であるか否かの判定が行われる。第1指示制動力BPTr1が「0(零)」以下である場合(S52:YES)、処理が次のステップS53に移行される。ステップS53において、第1指示制動力BPTr1として「0(零)」が設定され、且つ、ステップカウンタCNTSが「1」だけインクリメントされる。すなわち、ステップカウンタCNTSが「2」となる。そして、処理が次のステップS54に移行される。一方、ステップS52において、第1指示制動力BPTr1が「0(零)」よりも大きい場合(NO)、処理が次のステップS54に移行される。すなわち、ステップカウンタCNTSは「1」で保持される。
ステップS54において、第1指示制動力BPTr1及び第2指示制動力BPTr2を制動装置20に出力する出力処理が実行される。本処理ルーチンの実行が繰り返されている間では、制動装置20に出力される第1指示制動力BPTr1が減少し続ける。そのため、本処理ルーチンの実行を通じ、第1指示制動力BPTr1を制動装置20に出力することが、第1車輪の制動力の減少を制動装置20に指示することに相当する。そして、実行する処理が、第1制動減少指示処理から第1駆動増大指示処理に移行される。
なお、出力処理の実行によって第1指示制動力BPTr1及び第2指示制動力BPTr2が入力されると、制動制御部22は、当該第1指示制動力BPTr1に第1車輪の制動力が追随するとともに、当該第2指示制動力BPTr2に第2車輪の制動力が追随するように制動アクチュエータ21を制御する。第1制動減少指示処理では、第1指示制動力BPTr1は減少される一方で、第2指示制動力BPTr2は保持される。そのため、第1制動減少指示処理の実行に基づいた指示が制動制御部22に入力されることにより、第2車輪の制動力を維持しつつ、上記第1制動減少量ΔBP1に応じた速度で第1車輪の制動力を減少させることができる。
第1駆動増大指示処理において、はじめのステップS55では、第1指示制動力BPTr1と上記の第2制動力前回値BP2aとの和が上記の停止保持力Fh以上であるか否かの判定が行われる。当該和が停止保持力Fh以上である場合、第1車輪の制動力を第1指示制動力BPTr1と等しくすることにより、車両10の停止の保持が可能である。一方、当該和が停止保持力Fh未満である場合、第1車輪の制動力を第1指示制動力BPTr1と等しくしても車両10の停止を保持できない可能性がある。
第1指示制動力BPTr1と第2制動力前回値BP2aとの和が停止保持力Fh以上である場合(S55:YES)、処理が次のステップS56に移行される。ステップS56において、第1指示駆動力DPTr1として「0(零)」が設定される。そして、処理が後述するステップS58に移行される。一方、当該和が停止保持力Fh未満である場合(S55:NO)、処理が次のステップS57に移行される。ステップS57において、当該和から停止保持力Fhを引いた値が第1指示駆動力DPTr1として算出される。本処理ルーチンが繰り返し実行されると、第1指示制動力BPTr1が減少されるため、第1指示制動力BPTr1と第2制動力前回値BP2aとの和が徐々に小さくなる。そのため、第1駆動増大指示処理では、第1指示制動力BPTr1の減少速度に応じた速度で第1指示駆動力DPTr1が増大される。そして、処理が次のステップS58に移行される。
ステップS58において、第1指示駆動力DPTr1を駆動装置30に出力する出力処理が実行される。本処理ルーチンの実行が繰り返されている間では、駆動装置30に出力される第1指示駆動力DPTr1が増大し続ける。そのため、本処理ルーチンの実行を通じ、第1指示駆動力DPTr1を駆動装置30に出力することが、車両10の駆動力DPの増大を駆動装置30に指示することに相当する。
なお、出力処理の実行によって第1指示駆動力DPTr1が入力されると、駆動制御部32は、当該第1指示駆動力DPTr1に駆動力DPが追随するようにパワーユニット31を制御する。これにより、車両10の停止を維持できる範囲で車両10の駆動力DPを増大させることができる。
出力処理が実行されると、処理が次のステップS59に移行される。ステップS59では、上記ステップS22と同様に、現時点の第1指示制動力BPTr1が第1制動力前回値BP1aとして設定され、現時点の第2指示制動力BPTr2が第2制動力前回値BP2aとして設定され、現時点の第1指示駆動力DPTr1が第1駆動力前回値DP1aとして設定される。その後、本処理ルーチンが終了される。
なお、ステップカウンタCNTSが「1」である状態で本処理ルーチンが終了された場合、第1制動減少指示処理及び第1駆動増大指示処理がそれぞれ継続されることとなる。一方、ステップカウンタCNTSが「2」である状態で本処理ルーチンが終了された場合、第1制動減少指示処理及び第1駆動増大指示処理がそれぞれ終了されることとなる。
次に、図8を参照し、上記ステップS34の第2駆動増大指示処理について説明する。本処理ルーチンは、姿勢制御部42によって実行される。
本処理ルーチンにおいて、ステップS71では、上記の第1駆動力前回値DP1aと第1駆動増大量ΔDP1との和が最新の第1指示駆動力DPTr1として算出される。第1駆動増大量ΔDP1として、パワーユニット31の諸元から導出された正の値が設定されている。続いて、ステップS72において、ステップS71で算出した第1指示駆動力DPTr1が上記の停止保持力Fh以上であるか否かの判定が行われる。第1指示駆動力DPTr1が停止保持力Fh以上である場合、車両10の制動力BPが「0(零)」になった際に車両10が発進してしまうおそれがある。そこで、第1指示駆動力DPTr1が停止保持力Fh以上である場合(S72:YES)、処理が次のステップS73に移行される。ステップS73において、第1指示駆動力DPTr1として停止保持力Fhが設定され、且つステップカウンタCNTSが「1」だけインクリメントされる。すなわち、ステップカウンタCNTSが「3」となる。そして、処理が次のステップS74に移行される。
一方、ステップS72において、第1指示駆動力DPTr1が停止保持力Fh未満である場合(NO)、処理が次のステップS74に移行される。すなわち、ステップカウンタCNTSは「2」で保持される。
ステップS74において、第1指示駆動力DPTr1を駆動装置30に出力する出力処理が実行される。本処理ルーチンの実行が繰り返されている間では、駆動装置30に出力される第1指示駆動力DPTr1が増大し続ける。そのため、本処理ルーチンの実行を通じ、第1指示駆動力DPTr1を駆動装置30に出力することが、車両10の駆動力DPの増大を駆動装置30に指示することに相当する。
なお、出力処理の実行によって第1指示駆動力DPTr1が入力されると、駆動制御部32は、当該第1指示駆動力DPTr1に駆動力DPが追随するようにパワーユニット31を制御する。これにより、第1駆動増大量ΔDP1に応じた速度で車両の駆動力DPを増大させることができる。
出力処理が実行されると、処理が次のステップS75に移行される。ステップS75では、上記ステップS22と同様に、現時点の第1指示制動力BPTr1が第1制動力前回値BP1aとして設定され、現時点の第2指示制動力BPTr2が第2制動力前回値BP2aとして設定され、現時点の第1指示駆動力DPTr1が第1駆動力前回値DP1aとして設定される。その後、本処理ルーチンが終了される。
なお、ステップカウンタCNTSが「2」である状態で本処理ルーチンが終了された場合、第2駆動増大指示処理が継続されることとなる。一方、ステップカウンタCNTSが「3」である状態で本処理ルーチンが終了された場合、第2駆動増大指示処理が終了されることとなる。
次に、図9を参照し、上記ステップS36の第2制動減少指示処理について説明する。本処理ルーチンは、姿勢制御部42によって実行される。
本処理ルーチンにおいて、ステップS91では、上記の第2制動力前回値BP2aから第2制動減少量ΔBP2を引いた値が最新の第2指示制動力BPTr2として算出される。第2制動減少量ΔBP2として正の値が設定されている。第2制動減少量ΔBP2は、第1制動減少量ΔBP1と同じであってもよいし、第1制動減少量ΔBP1よりも少なくてもよいし、第1制動減少量ΔBP1よりも多くてもよい。続いて、ステップS92において、ステップS91で算出した第2指示制動力BPTr2が「0(零)」以下であるか否かの判定が行われる。第2指示制動力BPTr2が「0(零)」以下である場合(S92:YES)、処理が次のステップS93に移行される。ステップS93において、第2指示制動力BPTr2として「0(零)」が設定され、且つ、ステップカウンタCNTSが「1」だけインクリメントされる。すなわち、ステップカウンタCNTSが「4」となる。そして、処理が次のステップS94に移行される。一方、ステップS92において、第2指示制動力BPTr2が「0(零)」よりも大きい場合(NO)、処理が次のステップS94に移行される。すなわち、ステップカウンタCNTSは「3」で保持される。
ステップS94において、第1指示制動力BPTr1及び第2指示制動力BPTr2を制動装置20に出力し、且つ、第1指示駆動力DPTr1を駆動装置30に出力する出力処理が実行される。本処理ルーチンの実行が繰り返されている間では、制動装置20に出力される第2指示制動力BPTr2が減少し続ける。そのため、本処理ルーチンの実行を通じ、第2指示制動力BPTr2を制動装置20に出力することが、第2車輪の制動力の減少を制動装置20に指示することに相当する。
なお、出力処理の実行によって第1指示制動力BPTr1及び第2指示制動力BPTr2が入力されると、制動制御部22は、当該第1指示制動力BPTr1に第1車輪の制動力が追随するとともに、当該第2指示制動力BPTr2に第2車輪の制動力が追随するように制動アクチュエータ21を制御する。第2制動減少指示処理では、第1指示制動力BPTr1は保持される一方で、第2指示制動力BPTr2は減少される。そのため、第2制動減少指示処理の実行に基づいた指示が制動制御部22に入力されることにより、第1車輪の制動力を維持しつつ、上記第2制動減少量ΔBP2に応じた速度で第2車輪の制動力を減少させることができる。また、第2制動減少指示処理の実行では第1指示駆動力DPTr1は変更されない。そのため、第2制動減少指示処理の実行に基づいた指示が駆動制御部32に入力されることにより、車両10の駆動力DPが保持される。
出力処理が実行されると、処理が次のステップS95に移行される。ステップS95では、上記ステップS22と同様に、現時点の第1指示制動力BPTr1が第1制動力前回値BP1aとして設定され、現時点の第2指示制動力BPTr2が第2制動力前回値BP2aとして設定され、現時点の第1指示駆動力DPTr1が第1駆動力前回値DP1aとして設定される。その後、本処理ルーチンが終了される。
なお、ステップカウンタCNTSが「3」である状態で本処理ルーチンが終了された場合、第2制動減少指示処理が継続されることとなる。一方、ステップカウンタCNTSが「4」である状態で本処理ルーチンが終了された場合、第2制動減少指示処理が終了されることとなる。
次に、図10を参照し、上記ステップS38の第2制動増大指示処理及び第1駆動減少指示処理について説明する。
本処理ルーチンにおいて、制動増大指示部43によって第2制動増大指示処理が実行される。第2制動増大指示処理において、はじめのステップS111では、上記の第2制動力前回値BP2aと第2制動増大量ΔBP21との和が最新の第2指示制動力BPTr2として算出される。第2制動増大量ΔBP21として正の値が設定されている。続いて、ステップS112において、ステップS111で算出した第2指示制動力BPTr2が第2目標制動力BPS2以上であるか否かの判定が行われる。第2目標制動力BPS2として、例えば姿勢制御の開始時点における第2車輪の制動力、又は当該制動力よりも僅かに大きい値が設定される。あるいは、第2目標制動力BPS2として、現時点の運転者による制動操作に応じた制動力、又は、自動制動用の制御装置によって設定されている制動力などを設定するようにしてもよい。第2指示制動力BPTr2が第2目標制動力BPS2以上である場合(S112:YES)、処理が次のステップS113に移行される。ステップS113において、第2指示制動力BPTr2として第2目標制動力BPS2が設定され、且つステップカウンタCNTSが「1」だけインクリメントされる。すなわち、ステップカウンタCNTSが「5」となる。そして、処理が次のステップS114に移行される。
一方、ステップS112において、第2指示制動力BPTr2が第2目標制動力BPS2未満である場合(NO)、処理が次のステップS114に移行される。すなわち、ステップカウンタCNTSが「4」で保持される。
ステップS114において、第1指示制動力BPTr1及び第2指示制動力BPTr2を制動装置20に出力する出力処理が実行される。本処理ルーチンの実行が繰り返されている間では、制動装置20に出力される第2指示制動力BPTr2が増大し続ける。そのため、本処理ルーチンの実行を通じ、第2指示制動力BPTr2を制動装置20に出力することが、第2車輪の制動力の増大を制動装置20に指示することに相当する。そして、実行する処理が、第2制動増大指示処理から第1駆動減少指示処理に移行される。
なお、出力処理の実行によって第1指示制動力BPTr1及び第2指示制動力BPTr2が入力されると、制動制御部22は、当該第1指示制動力BPTr1に第1車輪の制動力が追随するとともに、当該第2指示制動力BPTr2に第2車輪の制動力が追随するように制動アクチュエータ21を制御する。第2制動増大指示処理では、第1指示制動力BPTr1は保持される一方で、第2指示制動力BPTr2は増大される。そのため、第2制動増大指示処理の実行に基づいた指示が制動制御部22に入力されることにより、第1車輪の制動力を維持しつつ、上記第2制動増大量ΔBP21に応じた速度で第2車輪の制動力を増大させることができる。
第1駆動減少指示処理は駆動減少指示部44によって実行される。第1駆動減少指示処理において、ステップS115では、上記の第1制動力前回値BP1aと第2指示制動力BPTr2との和が停止保持力Fh以上であるか否かの判定が行われる。当該和が停止保持力Fh未満である場合、車両10の駆動力DPを小さくしないと、車両10が発進する可能性がある。当該和が停止保持力Fh未満である場合(S115:NO)、処理が次のステップS116に移行される。ステップS116において、停止保持力Fhから当該和を引いた値が第1指示駆動力DPTr1として算出される。本処理ルーチンが繰り返し実行されると、第2指示制動力BPTr2が増大されるため、第1制動力前回値BP1aと第2指示制動力BPTr2との和が大きくなる。その結果、第1指示駆動力DPTr1は、第2指示制動力BPTr2の増大速度に応じた速度で減少される。そして、処理が後述するステップS118に移行される。
一方、ステップS115において、第1制動力前回値BP1aと第2指示制動力BPTr2との和が停止保持力Fh以上である場合(YES)、処理が次のステップS117に移行される。ステップS117において、第1指示駆動力DPTr1として「0(零)」が設定される。そして、処理が次のステップS118に移行される。
ステップS118において、第1指示駆動力DPTr1を駆動装置30に出力する出力処理が実行される。本処理ルーチンの実行が繰り返されている間では、駆動装置30に出力される第1指示駆動力DPTr1が減少し続ける。そのため、本処理ルーチンの実行を通じ、第1指示駆動力DPTr1を駆動装置30に出力することが、車両10の駆動力DPの減少を駆動装置30に指示することに相当する。
なお、出力処理の実行によって第1指示駆動力DPTr1が入力されると、駆動制御部32は、当該第1指示駆動力DPTr1に車両10の駆動力DPが追随するようにパワーユニット31を制御する。第1駆動減少指示処理では、第1指示駆動力DPTr1は減少される。そのため、第1駆動減少指示処理の実行に基づいた指示が駆動制御部32に入力されることにより、車両10の駆動力DPを減少させることができる。
出力処理が実行されると、処理が次のステップS119に移行される。ステップS119では、上記ステップS22と同様に、現時点の第1指示制動力BPTr1が第1制動力前回値BP1aとして設定され、現時点の第2指示制動力BPTr2が第2制動力前回値BP2aとして設定され、現時点の第1指示駆動力DPTr1が第1駆動力前回値DP1aとして設定される。その後、本処理ルーチンが終了される。
なお、ステップカウンタCNTSが「4」である状態で本処理ルーチンが終了された場合、第2制動増大指示処理及び第1駆動減少指示処理がそれぞれ継続されることとなる。一方、ステップカウンタCNTSが「5」である状態で本処理ルーチンが終了された場合、第2制動増大指示処理及び第1駆動減少指示処理がそれぞれ終了されることとなる。
次に、図11を参照し、上記ステップS39の第1制動増大指示処理及び第2駆動減少指示処理について説明する。
本処理ルーチンにおいて、制動増大指示部43によって第1制動増大指示処理が実行される。第1制動増大指示処理において、はじめのステップS131では、第1制動力前回値BP1aと第1制動増大量ΔBP11との和が第1指示制動力BPTr1として算出される。第1制動増大量ΔBP11として正の値が設定されている。続いて、ステップS132において、ステップS131で算出した第1指示制動力BPTr1が第1目標制動力BPS1以上であるか否かの判定が行われる。第1目標制動力BPS1として、例えば姿勢制御の開始時点における第1車輪の制動力、又は当該制動力よりも僅かに大きい値が設定される。あるいは、第1目標制動力BPS1として、現時点の運転者による制動操作に応じた制動力、又は、自動制動用の制御装置によって設定されている制動力などを設定するようにしてもよい。第1指示制動力BPTr1が第1目標制動力BPS1以上である場合(S132:YES)、処理が次のステップS133に移行される。一方、第1指示制動力BPTr1が第1目標制動力BPS1未満である場合(S132:NO)、処理が後述するステップS134に移行される。
ステップS133において、第1指示制動力BPTr1として第1目標制動力BPS1が設定され、ステップカウンタCNTSが「0(零)」にリセットされる。また、制御完了フラグFLG2にオンがセットされる。すなわち、各フラグFLG1,FLG2の何れにもオンがセットされた状態になる。そして、処理が次のステップS134に移行される。
ステップS134において、第1指示制動力BPTr1及び第2指示制動力BPTr2を制動装置20に出力する出力処理が実行される。本処理ルーチンの実行が繰り返されている間では、制動装置20に出力される第1指示制動力BPTr1が増大し続ける。そのため、本処理ルーチンの実行を通じ、第1指示制動力BPTr1を制動装置20に出力することが、第1車輪の制動力の増大を制動装置20に指示することに相当する。そして、実行する処理が、第1制動増大指示処理から第2駆動減少指示処理に移行される。
なお、出力処理の実行によって第1指示制動力BPTr1及び第2指示制動力BPTr2が入力されると、制動制御部22は、当該第1指示制動力BPTr1に第1車輪の制動力が追随するとともに、当該第2指示制動力BPTr2に第2車輪の制動力が追随するように制動アクチュエータ21を制御する。第1制動増大指示処理では、第2指示制動力BPTr2は保持される一方で、第1指示制動力BPTr1は増大される。そのため、第1制動増大指示処理の実行に基づいた指示が制動制御部22に入力されることにより、第2車輪の制動力を維持しつつ、上記第1制動増大量ΔBP11に応じた速度で第1車輪の制動力を増大させることができる。
第2駆動減少指示処理は駆動減少指示部44によって実行される。第2駆動減少指示処理において、はじめのステップS135では、上記第2制動力前回値BP2aと第1指示制動力BPTr1との和が停止保持力Fh以上であるか否かの判定が行われる。当該和が停止保持力Fh未満である場合、車両10の駆動力DPを小さくしないと、車両10が発進する可能性がある。当該和が停止保持力Fh未満である場合(S135:NO)、処理が次のステップS136に移行される。ステップS136において、停止保持力Fhから当該和を引いた値が第1指示駆動力DPTr1として算出される。本処理ルーチンが繰り返し実行されると、第1指示制動力BPTr1が増大されるため、第2制動力前回値BP2aと第1指示制動力BPTr1との和が大きくなる。その結果、第1指示駆動力DPTr1は、第1指示制動力BPTr1の増大速度に応じた速度で減少される。そして、処理が後述するステップS138に移行される。
一方、ステップS135において、第2制動力前回値BP2aと第1指示制動力BPTr1との和が停止保持力Fh以上である場合(YES)、処理が次のステップS137に移行される。ステップS137において、第1指示駆動力DPTr1として「0(零)」が設定される。そして、処理が次のステップS138に移行される。
ステップS138において、第1指示駆動力DPTr1を駆動装置30に出力する出力処理が実行される。本処理ルーチンの実行が繰り返されている間では、駆動装置30に出力される第1指示駆動力DPTr1が減少し続ける。そのため、本処理ルーチンの実行を通じ、第1指示駆動力DPTr1を駆動装置30に出力することが、車両10の駆動力DPの減少を駆動装置30に指示することに相当する。
なお、出力処理の実行によって第1指示駆動力DPTr1が入力されると、駆動制御部32は、当該第1指示駆動力DPTr1に車両10の駆動力DPが追随するようにパワーユニット31を制御する。第2駆動減少指示処理では、第1指示駆動力DPTr1は減少される。そのため、第2駆動減少指示処理の実行に基づいた指示が駆動制御部32に入力されることにより、車両10の駆動力DPを減少させることができる。
出力処理が実行されると、処理が次のステップS139に移行される。ステップS139では、上記ステップS22と同様に、現時点の第1指示制動力BPTr1が第1制動力前回値BP1aとして設定され、現時点の第2指示制動力BPTr2が第2制動力前回値BP2aとして設定され、現時点の第1指示駆動力DPTr1が第1駆動力前回値DP1aとして設定される。その後、本処理ルーチンが終了される。
なお、制御完了フラグFLG2にオフがセットされた状態で本処理ルーチンが終了された場合、第1制動増大指示処理及び第2駆動減少指示処理がそれぞれ継続されることとなる。一方、各フラグFLG1,FLG2にオンがセットされた状態で本処理ルーチンが終了された場合、第1制動増大指示処理及び第2駆動減少指示処理がそれぞれ終了されることとなる。
次に、図12を参照し、本実施形態の作用及び効果について説明する。前提として、車両10が登坂路上に位置するものとする。
図12(a),(b),(c),(d),(e),(f)に示すように、車両10が登坂路を走行している最中のタイミングT11で車両に制動力BPが付与される。この際、タイミングT11からタイミングT12までの期間では、第1車輪の制動力である前輪制動力BPFが増大されるとともに、第2車輪の制動力である後輪制動力BPRが増大される。そして、タイミングT12以降では、前輪制動力BPF及び後輪制動力BPRがそれぞれ保持される。
このように第1車輪である前輪11に制動力が付与されると、前輪11における路面との接地面には第1接地面摩擦力FF1が車両10の後方である坂下側に作用する。第1接地面摩擦力FF1は、前輪制動力BPFが大きいほど大きくなる。同様に、第2車輪である後輪12に制動力が付与されると、後輪12における路面との接地面には第2接地面摩擦力FF2が車両10の後方である坂下側に作用する。第2接地面摩擦力FF2は、後輪制動力BPRが大きいほど大きくなる。そして、制動力BPの付与によって車両10がタイミングT13で停止されると、第1接地面摩擦力FF1及び第2接地面摩擦力FF2の正負が反転する。すなわち、前輪11における路面との接地面に第1接地面摩擦力FF1が車両10の前方である坂上側に作用するとともに、後輪12における路面との接地面に第2接地面摩擦力FF2が車両10の前方である坂上側に作用するようになる。
また、制動力BPの付与によって車両10が減速している場合、車両10がノーズダイブ側にピッチング運動する。すると、前輪用サスペンション13Fが収縮する一方で、後輪用サスペンション13Rが伸長する。同時に、各サスペンション13F,13Rのジオメトリによって、車体16の前部には前輪制動力BPFに応じたアンチダイブ力が発生し、車体16の後部には後輪制動力BPRに応じたアンチリフト力が発生する。これにより、前輪11の車両前後方向Xの位置が前輪11の基準位置から変わるとともに、後輪12の車両前後方向Xの位置が後輪12の基準位置から変わる。その結果、車両10のホイールベースWBLが基準ホイールベースWBLBから変わる。
図12に示す例では、タイミングT13で車両10が停止しても、前輪制動力BPF及び後輪制動力BPRがそれぞれ保持される。その結果、各車輪11,12は、回転が規制されたロック状態になり、各サスペンション13F,13Rの上下方向の位置が変位した状態が維持される。これにより、前輪11の車両前後方向Xの位置が前輪11の基準位置とは異なるとともに後輪12の車両前後方向Xの位置が後輪12の基準位置とは異なる状態が継続される。すなわち、車両10のホイールベースWBLが基準ホイールベースWBLBと異なる状態が継続される。
本実施形態では、車両10の停止中のタイミングT14から姿勢制御が開始される。姿勢制御が実施されると、前輪制動力BPF及び後輪制動力BPRが減少される。また、このように車両の制動力BPが減少されても車両10の停止が維持されるように車両の駆動力DPが増大される。姿勢制御の実施によって前輪制動力BPFが減少されると、前輪11の回転が許容されるため、前輪11の車両前後方向Xの位置を前輪11の基準位置に戻すことができる、すなわち前輪用サスペンション13Fの状態を元に戻すことができる。また、姿勢制御の実施によって後輪制動力BPRが減少されると、後輪12の回転が許容されるため、後輪12の車両前後方向Xの位置を後輪12の基準位置に戻すことができる、すなわち後輪用サスペンション13Rの状態を元に戻すことができる。つまり、車両10の停止中に、車両10のホイールベースWBLを基準ホイールベースWBLBに戻すことができる。そのため、その後に車両10を発進させるべく車両10の制動が解除された際には、ホイールベースWBLの変化に起因して車両10の姿勢が急に変化することを抑制できる。したがって、車両発進時において車両10の乗員に不快感を与えてしまうことを抑制できる。
具体的には、タイミングT14からは、姿勢制御の第1制動減少指示処理が開始される。第1制動減少指示処理が実行されると、第1指示制動力BPTr1が減少されるため、制動アクチュエータ21の駆動によって前輪制動力BPFが減少される。タイミングT16で第1指示制動力BPTr1が「0」になるため、第1制動減少指示処理が終了される。本実施形態では、タイミングT14からタイミングT16までの期間内で前輪制動力BPFが減少されているときに、前輪11の回転が許容され、前輪11の車両前後方向Xの位置が前輪11の基準位置に戻る。
第1制動減少指示処理の実行中では、車両の制動力BPが減少される。そして、第1制動減少指示処理の実行中のタイミングT15で、第1指示制動力BPTr1と第2制動力前回値BP2aとの和が停止保持力Fh未満になるため、姿勢制御の第1駆動増大指示処理の実行によって、第1指示駆動力DPTr1の増大が開始される。すると、第1指示駆動力DPTr1の増大に応じ、パワーユニット31の駆動によって車両10の駆動力DPが増大される。すなわち、第1制動減少指示処理の実行中に第1駆動増大指示処理も実行することにより、前輪制動力BPFから車両10の駆動力DPへのすり替えが行われる。これにより、第1制動減少指示処理の実行に起因して車両10の制動力BPが減少されても、車両10が停止している状態を維持することができる。
タイミングT16で第1制動減少指示処理が終了されると、第1駆動増大指示処理が終了され、駆動増大指示処理として第2駆動増大指示処理が開始される。そのため、タイミングT16以降でも第1指示駆動力DPTr1が増大されるため、車両10の駆動力DPが増大される。そして、タイミングT17で第1指示駆動力DPTr1が停止保持力Fhに達するため、第2駆動増大指示処理が終了される。すなわち、車両10の駆動力DPの増大が終了される。この時点では、車両10の制動が解除されたとしても、駆動力DPでもって車両10の停止を維持することができる。
すると、タイミングT17からは、第1指示駆動力DPTr1、すなわち車両10の駆動力DPが保持された状態で、姿勢制御の第2制動減少指示処理が開始される。第2制動減少指示処理が実行されると、第2指示制動力BPTr2が減少されるため、制動アクチュエータ21の駆動によって後輪制動力BPRが減少される。タイミングT18で第2指示制動力BPTr2が「0」になるため、第2制動減少指示処理が終了される。本実施形態では、タイミングT17からタイミングT18までの期間内で後輪制動力BPRが減少されているときに、後輪12の回転が許容され、後輪12の車両前後方向Xの位置が後輪12の基準位置に戻る。その結果、タイミングT17からタイミングT18までの期間内に、車両のホイールベースWBLが基準ホイールベースWBLBに戻る。
なお、前輪11の制動が解除されたタイミングT16以降では、車両10の駆動力DPが増大されるため、車両10を前進させようとする推進力が車両10に加わることとなる。すると、駆動力DPと後輪制動力BPRとの和が停止保持力Fhよりも大きい状態となる。前輪制動力BPFが「0(零)」よりも大きい場合、駆動力DPが前輪制動力BPFによって相殺されるということもできる。そのため、駆動力DPから前輪制動力BPFを引いた値である余剰駆動力と後輪制動力BPRとの和が停止保持力Fhよりも大きい状態であるということもできる。この場合、前輪制動力BPFが「0(零)」であるため、余剰駆動力は駆動力DPと等しい。そして、駆動力DP、すなわち余剰駆動力の増大によって推進力が大きくなるにつれ、後輪12に作用する第2接地面摩擦力FF2が徐々に小さくなる。これは、坂下側に車両10を移動させようとする重力を、上記推進力によって支えるかたちとなるためである。そして、第1指示駆動力DPTr1が停止保持力Fhと等しくなると、すなわち余剰駆動力が停止保持力Fhと等しくなると、第2接地面摩擦力FF2がほぼ「0(零)」となる。
ここで、車両10が停止する直前での第2接地面摩擦力FF2を第2接地面作用力基準値FF2Bとした場合、後輪12の車両前後方向Xの位置が後輪12の基準位置に戻るときの第2接地面摩擦力FF2と第2接地面作用力基準値FF2Bとの偏差ΔFF2が大きいほど、後輪12がロックされた状態から後輪12が回転する状態に移行する際に後輪用サスペンション13Rが急に動く。すなわち、後輪12の車両前後方向Xの位置が後輪12の基準位置に戻る際の後輪12の変位速度が高くなる。この際、後輪用サスペンション13Rの急な動きに起因する振動や音が発生するおそれがある。
この点、本実施形態では、駆動力DPの増大によって第2接地面摩擦力FF2をほぼ「0(零)」としてから後輪12の車両前後方向Xの位置を後輪12の基準位置に戻すことができる。このように後輪12を回転させる場合、後輪12がロックされた状態から後輪12が回転する状態に移行する際に後輪制動力BPRに相当する摩擦力が静摩擦から動摩擦に変わる。例えば後輪12に設けられている制動機構がディスク式のものである場合、ディスクと摩擦材との間の摩擦が静摩擦から動摩擦に変わる。そのため、摩擦材をディスクに押し付ける力である押圧力を滑らかに減少させても、静摩擦から動摩擦に変わる瞬間に制動力が急に減少する。この際、上記の偏差ΔFF2が小さいほど、後輪12が回転する状態に移行する時点において後輪12を後輪12の基準位置まで変位させる力が小さくなる。その結果、上記の偏差ΔFF2が大きい場合と比較し、後輪12がロックされた状態から後輪12が回転する状態に移行し、後輪制動力BPRに相当する摩擦力が静摩擦から動摩擦に変わった際における後輪用サスペンション13Rの急な動きを抑制することができる。
制動時にあっては、上記停止基準状態であるときよりも後輪用サスペンション13Rは伸長しているため、制動中の後輪12の車両前後方向Xの位置は、後輪12の基準位置に対してホイールベースWBLを短くする側に位置している。そのため、制動後では、後輪12の車両前後方向Xの位置は、制動中の基準位置に対してホイールベースWBLを短くする位置から後輪12の基準位置に戻る途中である。よって、後輪12には、後輪12を車両後方に動かそうとする力が作用している。さらに、登坂路に車両10が停止している場合、後輪12における路面との接地面には、車両の後方である坂下側に第2接地面摩擦力FF2が作用している。この場合、第2接地面摩擦力FF2は、後輪12を車両後方に動かそうとする力として後輪12に作用する。つまり、後輪12を車両後方に動かそうとする力がさらに大きくなる。そこで、駆動力DPの増大によって第2接地面摩擦力FF2を小さくすることで、後輪12が回転する状態に移行する時点では、後輪12を車両後方に移動させる方向に後輪12を回転させる力を小さくすることができる。その結果、車両10の後方である坂下側への第2接地面摩擦力FF2が大きい場合と比較し、後輪12がロックされた状態から後輪12が回転する状態に移行し、後輪用サスペンション13Rは後輪制動力BPRに相当する摩擦力が静摩擦から動摩擦に変わった際における後輪用サスペンション13Rの急な動きを抑制することができる。
上記のように駆動力DPによって第2接地面摩擦力FF2を適切に変化させることによって、ホイールベースWBLの変化に起因する車両10の姿勢の変化を緩やかに行わせることができる。また、後輪用サスペンション13Rの動きに起因する振動や音の発生を抑制することができる。
また、本実施形態では、後輪12の車両前後方向Xの位置を後輪12の基準位置に戻すタイミングを、前輪11の車両前後方向Xの位置を前輪11の基準位置に戻すタイミングとずらしている。これにより、前輪11及び後輪12をほぼ同時に基準位置に戻す場合と比較し、ホイールベースWBLの変化速度が高くなることを抑制できる。これにより、車両10の停止中におけるホイールベースWBLの変化に起因する車両10の姿勢の変化を車両10の乗員に気付かせにくくすることができる。
このように第2制動減少指示処理、すなわち姿勢制御が終了されると、制動増大制御の実施に基づいた制動アクチュエータ21の駆動によって、前輪制動力BPF及び後輪制動力BPRが増大される。また、駆動増大制御の実施に基づいたパワーユニット31の駆動によって、車両10の駆動力DPが減少される。これにより、車両10の停止中に駆動力DPが車両10に付与され続けることを抑制できる分、車両のエネルギー効率の低下を抑制できる。
本実施形態では、タイミングT18から第2制動増大指示処理及び第1駆動減少指示処理が開始される。第2制動増大指示処理が実行されると、第2指示制動力BPTr2が増大されるため、制動アクチュエータ21の駆動によって後輪制動力BPRが増大される。タイミングT19で第2指示制動力BPTr2が第2目標制動力BPS2に達するため、第2制動増大指示処理が終了される。すなわち、タイミングT19以降では、後輪制動力BPRが保持される。
また、第1駆動減少指示処理が実行されると、第1指示駆動力DPTr1が減少されるため、パワーユニット31の駆動によって車両10の駆動力DPが減少される。この際の駆動力DPの減少速度は、後輪制動力BPRの増大速度と対応している。すなわち、タイミングT18からタイミングT19までの期間では、駆動力DPから後輪制動力BPRへのすり替えが行われる。そして、タイミングT19で第1駆動減少指示処理が終了される。
すると、タイミングT19から第1制動増大指示処理及び第2駆動減少指示処理が開始される。第1制動増大指示処理が実行されると、第1指示制動力BPTr1が増大されるため、制動アクチュエータ21の駆動によって前輪制動力BPFが増大される。タイミングT111で第1指示制動力BPTr1が第1目標制動力BPS1に達するため、第1制動増大指示処理が終了される。すなわち、タイミングT111以降では、前輪制動力BPFが保持される。
また、第2駆動減少指示処理が実行されると、第1指示駆動力DPTr1が減少されるため、パワーユニット31の駆動によって車両10の駆動力DPが減少される。そして、タイミングT110で第1指示駆動力DPTr1が「0(零)」となる。この際の駆動力DPの減少速度は、前輪制動力BPFの増大速度と対応している。すなわち、タイミングT19からタイミングT110までの期間では、駆動力DPから前輪制動力BPFへのすり替えが行われる。
ここで、前輪制動力BPF及び後輪制動力BPRを同時に増大させる比較例について考える。この比較例では、車両10の駆動力DPを車両10の制動力BPにすり替える場合、駆動力DPの減少速度が高くなる。この場合、駆動力DPの減少に起因してパワーユニット31から発生する音や振動を、車両10の乗員が感じやすい。
この点、本実施形態では、後輪制動力BPRの増大と前輪制動力BPFの増大とを時間的にずらしている。そのため、上記比較例の場合よりも、駆動力DPの減少速度を低くすることができる。これにより、駆動力DPの減少に起因してパワーユニット31から発生する音や振動を車両10の乗員が感じにくくなる。
また、本実施形態では、車両10の制動力BPの増大と同時に車両10の駆動力DPを減少させるようにしている。これにより、制動増大制御の実施に起因する制動力BPの増大の完了後に駆動力DPの減少を開始させる場合と比較し、駆動力DPの減少を早期に開始させることができる分、車両のエネルギー効率を高くすることができる。
図12に示す例は、姿勢制御の開始前における後輪制動力BPRが停止保持力Fhよりも小さい場合の一例である。路面勾配θによっては、姿勢制御の開始前における後輪制動力BPRが停止保持力Fhよりも大きい場合もある。図13には、姿勢制御の開始前における後輪制動力BPRが停止保持力Fhよりも大きい場合のタイミングチャートが図示されている。
図13(a),(b),(c),(d),(e),(f)に示すように、前輪11及び後輪12への制動力の付与によって車両10が停止していると、タイミングT41から姿勢制御の第1制動減少指示処理が開始される。第1制動減少指示処理はタイミングT42まで実行される。そのため、タイミングT41からタイミングT42までの期間内で前輪制動力BPFが減少されているときに、前輪11の回転が許容され、前輪11の車両前後方向Xの位置が前輪11の基準位置に戻る。また、前輪用サスペンション13Fの状態が元に戻る。
図13に示す例では、停止保持力Fhは後輪制動力BPRよりも小さい。そのため、第1制動減少指示処理の実行中に、第1駆動増大指示処理の実行によって第1指示制動力BPTr1の増大が開始されることはない。そのため、第1制動減少指示処理が終了されるタイミングT42から開始される第2駆動増大指示処理の実行によって、第1指示駆動力DPTr1が増大されるようになる。タイミングT43で第1指示駆動力DPTr1が停止保持力Fhに達すると、第2駆動増大指示処理が終了され、第2制動減少指示処理が開始される。なお、タイミングT43以降での処理の流れは、図12に示す例の場合と同様であるため、説明を割愛する。
(第2実施形態)
次に、車両の制御装置の第2実施形態を図14及び図15に従って説明する。第2実施形態では、実行される各種の処理のうちの一部の処理の内容が第1実施形態と相違している。そこで、以下の説明においては、第1実施形態と相違している部分について主に説明するものとし、第1実施形態と同一又は相当する部材構成には同一符号を付して重複説明を省略するものとする。
図14を参照し、本実施形態で実行される第2駆動増大指示処理について説明する。本処理ルーチンは、姿勢制御部42によって実行される。
本処理ルーチンにおいて、ステップS151では、現時点の第2指示制動力BPTr2が上記第2停止前制動力BP2b未満であるか否かの判定が行われる。第2停止前制動力BP2bは、図5を用いて説明した処理ルーチンのステップS12で設定される。第2指示制動力BPTr2が上記第2停止前制動力BP2b未満である場合(S151:YES)、処理が次のステップS152に移行される。ステップS152において、嵩上げ目標力BP2tとして第2指示制動力BPTr2が設定される。そして、処理が後述するステップS154に移行される。
一方、ステップS151において、第2指示制動力BPTr2が第2停止前制動力BP2b以上である場合(NO)、処理が次のステップS153に移行される。ステップS153において、嵩上げ目標力BP2tとして第2停止前制動力BP2bが設定される。そして、処理が次のステップS154に移行される。
ステップS154において、上記ステップS71と同様に、上記の第1駆動力前回値DP1aと第1駆動増大量ΔDP1との和が最新の第1指示駆動力DPTr1として算出される。続いて、ステップS155において、ステップS154で算出した第1指示駆動力DPTr1が、上記の停止保持力Fhと嵩上げ目標力BP2tとの和以上であるか否かの判定が行われる。第1指示駆動力DPTr1が当該和以上である場合、車両10の駆動力DPをこれ以上増大させると車両10が発進してしまう。そこで、第1指示駆動力DPTr1が当該和以上である場合(S155:YES)、処理が次のステップS156に移行される。ステップS156において、第1指示駆動力DPTr1として、停止保持力Fhと嵩上げ目標力BP2tとの和が設定され、且つステップカウンタCNTSが「1」だけインクリメントされる。すなわち、ステップカウンタCNTSが「3」となる。そして、処理が次のステップS157に移行される。
一方、ステップS155において、第1指示駆動力DPTr1が、停止保持力Fhと嵩上げ目標力BP2tとの和よりも小さい場合(NO)、処理が次のステップS157に移行される。すなわち、ステップカウンタCNTSは「2」で保持される。
ステップS157において、上記ステップS74と同様に、第1指示駆動力DPTr1を駆動装置30に出力する出力処理が実行される。本処理ルーチンの実行が繰り返されている間では、駆動装置30に出力される第1指示駆動力DPTr1が増大し続ける。そのため、本処理ルーチンの実行を通じ、第1指示駆動力DPTr1を駆動装置30に出力することが、車両10の駆動力DPの増大を駆動装置30に指示することに相当する。そして、次のステップS158では、上記ステップS22と同様に、現時点の第1指示制動力BPTr1が第1制動力前回値BP1aとして設定され、現時点の第2指示制動力BPTr2が第2制動力前回値BP2aとして設定され、現時点の第1指示駆動力DPTr1が第1駆動力前回値DP1aとして設定される。その後、本処理ルーチンが終了される。
次に、本実施形態で実行される第1駆動減少指示処理について説明する。第1実施形態では第2制動増大指示処理と同時に第1駆動減少指示処理が開始される一方で、本実施形態では、第1駆動減少指示処理は、第2駆動増大指示処理の実行に起因する車両10の駆動力DPの増大の完了後に第2制動減少指示処理の開始前から開始される。具体的には、第1駆動減少指示処理は、第2駆動増大指示処理の実行に起因する車両10の駆動力DPの増大の完了したときに開始される。
本実施形態で実行される第1駆動減少指示処理では、予め設定された速度で第1指示駆動力DPTr1が減少されるように、第1指示駆動力DPTr1が更新される。第1駆動現象指示処理は、第2制動増大指示処理の開始後も継続される。そして、第2制動増大指示処理が終了されると、第1駆動減少指示処理も終了される。
次に、図15を参照し、本実施形態の作用及び効果のうち、第1実施形態と相違する部分を中心に説明する。
図15(a),(b),(c),(d),(e),(f)に示すように、前輪11及び後輪12への制動力の付与によってタイミングT21で車両10が停止する。タイミングT21から姿勢制御が開始されるタイミングT22までの期間では、前輪制動力BPF及び後輪制動力BPRがそれぞれ保持される。そのため、前輪11の車両前後方向Xの位置が前輪11の基準位置とは異なるとともに後輪12の車両前後方向Xの位置が後輪12の基準位置とは異なる状態が継続される。すなわち、車両10のホイールベースWBLが基準ホイールベースWBLBと異なる状態が継続される。
そして、タイミングT22から姿勢制御の第1制動減少指示処理が開始される。第1制動減少指示処理はタイミングT24まで実行される。そのため、タイミングT22からタイミングT24までの期間内で前輪制動力BPFが減少されているときに、前輪11の回転が許容され、前輪11の車両前後方向Xの位置が前輪11の基準位置に戻る。また、前輪用サスペンション13Fの状態が元に戻る。
第1制動減少指示処理の実行中のタイミングT23で、第1指示制動力BPTr1と第2制動力前回値BP2aとの和が停止保持力Fh未満になるため、姿勢制御の第1駆動増大指示処理の実行によって、第1指示制動力BPTr1の増大が開始される。そして、タイミングT24で第1制動減少指示処理が終了されるため、駆動増大指示処理が第1駆動増大指示処理から第2駆動増大指示処理に切り替わる。
第2駆動増大指示処理は、第1指示駆動力DPTr1が停止保持力Fhに達するタイミングT25以降でも継続される。そして、タイミングT26で、第1指示駆動力DPTr1が、停止保持力Fhと嵩上げ目標力BP2tとの和に達するため、第2駆動増大指示処理が終了される。したがって、本実施形態では、第2駆動増大指示処理の実行によって、車両10の駆動力DPを、停止保持力Fhと嵩上げ目標力BP2tとの和、又は当該和の近傍まで増大させることができる。なお、停止保持力Fhと嵩上げ目標力BP2tとの和は、現時点の制動力BPが保持されている状況下において車両10の停止を維持できる駆動力DPの上限、又は上限近傍の値である。
なお、車両10の駆動力DPを停止保持力Fhよりも大きくすることにより、後輪12の路面との接地面に対して第2接地面摩擦力FF2が坂下側に作用するようになる。そして、駆動力DPが停止保持力Fhと嵩上げ目標力BP2tとの和と等しくなるタイミングT26で、第2接地面摩擦力FF2が、車両10が停止するタイミングT21の直前の第2接地面摩擦力FF2である第2接地面作用力基準値FF2Bとほぼ等しくなる。
本実施形態では、第2接地面摩擦力FF2を第2接地面作用力基準値FF2Bとほぼ等しくしてから、第2制動減少指示処理の実行によって、第2指示制動力BPTr2、すなわち後輪制動力BPRが減少される。すなわち、上記の偏差ΔFF2が「0(零)」に近い値であるときに、後輪12の車両前後方向Xの位置が基準位置に戻され、且つ、後輪用サスペンション13Rの状態が元に戻される。この際、後輪12の車両前後方向Xの位置をよりゆっくりと変位させることができるため、ホイールベースWBLの変化に起因する車両10の姿勢の変化をより緩やかに行わせることができる。また、後輪用サスペンション13Rの急な動きの抑制効果を高くすることができるため、後輪用サスペンション13Rの動きに起因する振動や音の発生の抑制効果を高めることができる。
タイミングT26から第2制動減少指示処理の実行に起因して後輪制動力BPRが減少されるため、タイミングT26以降では、後輪制動力BPRの減少に合わせ、第1指示駆動力DPTr1、すなわち車両10の駆動力DPが減少される。そして、第2制動減少指示処理が終了されるタイミングT27では、第1指示駆動力DPTr1が停止保持力Fhに達している。そのため、第2制動減少指示処理の実行中でも車両10の停止を維持することができる。
(第3実施形態)
次に、車両の制御装置の第3実施形態を図16に従って説明する。第2実施形態では、各種の処理の開始タイミングなどが第2実施形態と相違している。そこで、以下の説明においては、第1実施形態及び第2実施形態と相違している部分について主に説明するものとし、第1実施形態及び第2実施形態と同一又は相当する部材構成には同一符号を付して重複説明を省略するものとする。
本実施形態で実行される第1駆動増大指示処理のうち、第2実施形態で実行される第1駆動増大指示処理と相違する点を中心に説明する。
本実施形態で実行される第1駆動増大指示処理では、図7に示すステップS55において、第1指示制動力BPTr1と第2制動力前回値BP2aとの和が、停止保持力Fhと第1補正量Fαとの和以上であるか否かの判定が行われる。停止保持力Fhとして路面勾配θに応じた値が設定されるものの、路面勾配θには導出誤差が含まれているおそれがある。路面勾配θが実際の路面の勾配よりも小さい場合、第1指示制動力BPTr1と第2制動力前回値BP2aとの和が停止保持力Fh未満になってから車両10の駆動力DPの増大を開始させる場合、第1制動減少指示処理の実行に起因した第1車輪の制動力の減少によって車両10のずり下がりが発生するおそれがある。そこで、第1補正量Fαとして、路面勾配θの導出誤差に応じた値、又は当該値よりも大きい値が設定されている。
そして、第1指示制動力BPTr1と第2制動力前回値BP2aとの和が、停止保持力Fhと第1補正量Fαとの和以上である場合(S55:YES)、処理がステップS56に移行され、第1指示駆動力DPTr1として「0(零)」が設定される。すなわち、駆動力DPの増大が未だ開始されない。一方、第1指示制動力BPTr1と第2制動力前回値BP2aとの和が、停止保持力Fhと第1補正量Fαとの和未満である場合(S55:NO)、処理がステップS57に移行される。ステップS57において、第1指示制動力BPTr1と第2制動力前回値BP2aとの和から停止保持力Fhと第1補正量Fαとの和を引いた値が、第1指示駆動力DPTr1として算出される。
なお、ステップS58以降の各処理の内容は、第1実施形態及び第2実施形態の場合と同様であるため、その説明を割愛する。
次に、本実施形態で実行される第2駆動増大指示処理のうち、第2実施形態で実行される第2駆動増大指示処理と相違する点を中心に説明する。
本実施形態で実行される第2駆動増大指示処理では、図14に示すステップS151において、現時点の第2指示制動力BPTr2が上記第2停止前制動力BP2b未満であるか否かの判定が行われる。第2指示制動力BPTr2が上記第2停止前制動力BP2b未満である場合(S151:YES)、処理が次のステップS152に移行される。ステップS152において、第2指示制動力BPTr2から第2補正量Fβを引いた値が嵩上げ目標力BP2tとして設定される。そして、処理が後述するステップS154に移行される。一方、ステップS151において、第2指示制動力BPTr2が第2停止前制動力BP2b以上である場合(NO)、処理が次のステップS153に移行される。ステップS153において、第2停止前制動力BP2bから第2補正量Fβを引いた値が嵩上げ目標力BP2tとして設定される。そして、処理が次のステップS154に移行される。
上述したように、停止保持力Fhには、路面勾配θの導出誤差成分が含まれているおそれがある。また、第2指示制動力BPTr2と実際の後輪制動力BPRとの間にも乖離が生じているおそれもある。こうした誤差成分を考慮して嵩上げ目標力BP2tを設定しないと、停止保持力Fhと嵩上げ目標力BP2tとの和まで第1指示駆動力DPTr1を増大させた際に、車両10の停止を維持できないおそれがある。そこで、停止保持力Fhの導出誤差、及び、第2指示制動力BPTr2と実際の後輪制動力BPRとの乖離を考慮して第2補正量Fβが設定されている。
なお、ステップS154以降の各処理の内容は、第2実施形態の場合と同様であるため、その説明を割愛する。
次に、本実施形態で実行される第1制動増大指示処理について説明する。
本実施形態で実行される第1制動増大指示処理は、第2駆動増大指示処理が終了されると開始される。すなわち、第1制動増大指示処理は、第2制動減少指示処理及び第1駆動減少指示処理と同時に開始される。
第1制動増大指示処理は、第1増大指示期間処理と、第1増大指示期間処理の終了後に実行される保持期間処理と、保持期間処理の終了後に実行される第2増大指示期間処理とを含んでいる。第1増大指示期間処理では、上記第1制動増大量ΔBP11に応じた速度よりも低速で第1指示制動力BPTr1が増大される。第2制動減少指示処理及び第1駆動減少指示処理が終了して第2制動増大指示処理が開始されると、第1増大指示期間処理も終了される。
保持期間処理は、第2制動増大指示処理の実行中に実行される。保持期間処理では、第1指示制動力BPTr1が保持される。すなわち、本実施形態では、第2制動増大指示処理の実行に起因して第2車輪の制動力が増大されるときには、第1車輪の制動力が保持される。そして、第2制動増大指示処理が終了されると、保持期間処理も終了される。
第2増大指示期間処理は、第2駆動減少指示処理の実行中に実行される。第2増大指示期間処理では、第1指示制動力BPTr1が第1目標制動力BPS1に達するまで、上記第1制動増大量ΔBP11に応じた速度で第1指示制動力BPTr1が増大される。
次に、図16を参照し、本実施形態の作用及び効果のうち、第1実施形態及び第2実施形態と相違する部分を中心に説明する。
図16(a),(b),(c),(d),(e),(f)に示すように、前輪11及び後輪12への制動力の付与によって車両10が停止していると、タイミングT31から姿勢制御の第1制動減少指示処理が開始される。第1制動減少指示処理はタイミングT33まで実行される。そのため、タイミングT31からタイミングT33までの期間内で前輪制動力BPFが減少されているときに、前輪11の回転が許容され、前輪11の車両前後方向Xの位置が前輪11の基準位置に戻る。また、前輪用サスペンション13Fの状態が元に戻る。
第1制動減少指示処理の実行中のタイミングT32で、第1指示制動力BPTr1と第2制動力前回値BP2aとの和が、停止保持力Fhと第1補正量Fαとの和未満になるため、姿勢制御の第1駆動増大指示処理の実行によって、第1指示駆動力DPTr1の増大が開始される。このように第1指示制動力BPTr1と第2制動力前回値BP2aとの和が停止保持力Fh未満になるタイミングよりも前から車両10の駆動力DPの増大を開始させることにより、前輪制動力BPFの減少によって車両10がずり下がることの抑制効果を高めることができる。そして、タイミングT33で第1制動減少指示処理が終了されるため、駆動増大指示処理が第1駆動増大指示処理から第2駆動増大指示処理に切り替わる。
第2駆動増大指示処理の実行によって第1指示駆動力DPTr1が停止保持力Fhと嵩上げ目標力BP2tとの和に達するタイミングT34で、第2駆動増大指示処理が終了される。本実施形態では、嵩上げ目標力BP2tは、第2補正量Fβを加味して設定されている。そのため、車両10の駆動力DPが停止保持力Fhと嵩上げ目標力BP2tとの和と等しくなるまで駆動力DPを増大させても、車両10の意図しない発進の抑制効果を高めることができる。
さらに、本実施形態では、タイミングT34からは、第2制動減少指示処理及び第1駆動減少指示処理に加え、第1制動増大指示処理における第1増大指示期間処理が開始される。これにより、後輪制動力BPR及び車両10の駆動力DPがそれぞれ減少されるものの、前輪制動力BPFが増大される。その結果、後輪制動力BPR及び車両10の駆動力DPがそれぞれ減少される際における車両10のずり下がりの抑制効果を高めることができる。
そして、第2制動減少指示処理の実行によって第2指示制動力BPTr2が「0(零)」になるタイミングT35で、第2制動減少指示処理が終了され、第2制動増大指示処理が開始される。タイミングT35では、後輪制動力BPRがほぼ「0(零)」となっているものの、前輪11には制動力が付与されている。そのため、駆動力DPと停止保持力Fhとの間に多少の乖離があったとしても、車両10のずり下がりを抑制したり、車両10の意図しない発進を抑制したりすることができる。また、第1制動増大指示処理では、第1増大指示期間処理が終了されて保持期間処理が開始される。そのため、後輪制動力BPRが増大されている期間では、前輪制動力BPFが保持される。そして、タイミングT36で第2指示制動力BPTr2が第2目標制動力BPS2に達すると、第2制動増大指示処理が終了される。また、第1駆動減少指示処理が終了され、第2駆動減少指示処理が開始される。さらに、第1制動増大指示処理では、保持期間処理が終了されて第2増大指示期間処理が開始される。
(変更例)
上記各実施形態は、以下のように変更して実施することができる。上記各実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
・上記各実施形態では、制動増大制御の実施に起因する車両10の制動力BPの増大の完了前に駆動減少制御の実施に起因する車両10の駆動力DPの減少を完了させるようにしている。しかし、制動増大制御の実施に起因する車両10の制動力BPの増大の完了後に、駆動減少制御の実施に起因する車両10の駆動力DPの減少を完了させるようにしてもよい。
・上記第1実施形態及び第2実施形態において、制動増大制御の終了後に駆動減少制御を開始するようにしてもよい。
・上記第1実施形態及び第2実施形態において、車両10の停止後で比較的早期に車両10が発進すると予測できるときには、制動増大制御を実施しなくてもよい。
・上記第1実施形態及び第2実施形態で実施される制動増大制御では、第2制動増大指示処理が終了してから第1制動増大指示処理を開始するようにしている。しかし、制動増大制御の実施によって車両10の制動力BPを増大させることができるのであれば、第2制動増大指示処理の実行中に第1制動増大指示処理を開始させるようにしてもよい。
・上記第1実施形態及び第2実施形態で実施される制動増大制御では、第2制動増大指示処理が第1制動増大指示処理よりも先に開始されるようにしている。しかし、制動増大制御の実施によって車両10の制動力BPを増大させることができるのであれば、第1制動増大指示処理を、第2制動増大指示処理と同時に開始させるようにしてもよい。また、第1制動増大指示処理を、第2制動増大指示処理より先に開始させるようにしてもよい。
・上記第1実施形態及び第2実施形態において、制動増大制御の実施によって車両10の制動力BPを増大させ、且つ制動力BPでもって車両10の停止を維持することができるのであれば、制動増大制御の実施によって前輪制動力BPF及び後輪制動力BPRの双方を増大させなくてもよい。例えば、制動増大制御は、前輪制動力BPF及び後輪制動力BPRのうちの一方の制動力のみの増大を制動装置20に指示する制御であってもよい。
・上記第1実施形態では、図12に示したように第2駆動増大指示処理が終了して第1指示駆動力DPTr1が停止保持力Fhで保持されている状態で、第2制動減少指示処理が開始されるようになっている。しかし、姿勢制御中では車両10の停止を維持することができるのであれば、第2駆動増大指示処理の終了前から第2制動減少指示処理を開始させるようにしてもよい。例えば、図17(a),(b),(c),(d),(e),(f)に示すように、第1制動減少指示処理の終了後であって第2駆動増大指示処理が開始されるタイミングT51から第2制動減少指示処理を開始させるようにしてもよい。図17に示す例では、第2駆動増大指示処理によって第1指示駆動力DPTr1が停止保持力Fhに達するタイミングT52で、第2指示制動力BPTr2が「0(零)」となるように第2制動減少指示処理が実行されるようになっている。しかし、これに限らず、タイミングT52よりも後で第2指示制動力BPTr2が「0(零)」となるように第2制動減少指示処理を実行するようにしてもよい。
・上記第1実施形態において、第2制動減少指示処理を実行する際に、上記第3実施形態の場合のように前輪11に制動力を付与するようにしてもよい。
・姿勢制御装置40を備える車両は、後輪12には駆動力を出力する一方で前輪11には駆動力を出力しない駆動装置を備えるものであってもよい。姿勢制御において当該駆動装置を制御する場合、後輪12が第1車輪に相当し、前輪11が第2車輪に相当することとなる。
・車両が降坂路に停止しているときに姿勢制御を実施するようにしてもよい。この場合、姿勢制御では、車両を後退させるような駆動力がパワーユニット31から第1車輪に出力されるような指示駆動力が駆動制御部32に出力されることとなる。これにより、車両の駆動力DPによって車両10が坂下側に移動することを抑制しつつ、前輪制動力BPF及び後輪制動力BPRを減少させることが可能となる。
・姿勢制御装置40は、以下(a)~(c)の何れかの構成であればよい。
(a)コンピュータプログラムに従って各種処理を実行する一つ以上のプロセッサを備えている。プロセッサは、CPU並びに、RAM及びROMなどのメモリを含んでいる。メモリは、処理をCPUに実行させるように構成されたプログラムコード又は指令を格納している。メモリ、すなわちコンピュータ可読媒体は、汎用又は専用のコンピュータでアクセスできるあらゆる利用可能な媒体を含んでいる。
(b)各種処理を実行する一つ以上の専用のハードウェア回路を備えている。専用のハードウェア回路としては、例えば、特定用途向け集積回路、すなわちASIC又はFPGAを挙げることができる。ASICとは「Application Specific Integrated Circuit」の略記であり、FPGAとは「Field Programmable Gate Array」の略記である。
(c)各種処理の一部をコンピュータプログラムに従って実行するプロセッサと、各種処理のうち残りの処理を実行する専用のハードウェア回路とを備えている。
・制動装置20の制動制御部22は、上記(a)~(c)の何れかの構成であればよい。
・駆動装置30の駆動制御部32は、上記(a)~(c)の何れかの構成であればよい。