JP3820731B2 - 車輌の停止制御装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、車輌の停止制御装置に係り、更に詳細には車輌の停止時に於ける車体の揺り返しに起因するショックを低減する停止制御装置に係る。
【0002】
【従来の技術】
周知の如く、自動車等の車輌が制動により停止する場合には、車輌の停止直前に車体(ばね上)が前方への荷重移動によって前傾姿勢(ノーズダイブ)になり、車輌の停止直後にサスペンションの復元力により車体の重心が車輌後方へ移動されることにより車体がピッチングし、車輌の乗員は車体のこの挙動を不快な車体の揺り返しとして感じる。
【0003】
かかる車輌の停止時に於ける車体の揺り返し及びこれに起因するショックを低減する車輌の停止制御装置の一つとして、例えば本願出願人の出願にかかる特開平1−164656号公報に記載されている如く、車輌の停止時に車速が所定値以下になると、車輪に対する制動力を自動的に低減し、これにより車体の揺り返し及びこれに起因するショックを低減するよう構成された停止制御装置(ブレーキ装置)が従来より知られている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
上述の如き停止制御装置によれば、車輌の停止時に於ける車体の揺り返し及びこれに起因するショックを低減することはできるが、かかる従来の停止制御装置に於いては停止前の車体の減速加速度が低減されることによって車体揺り返しのエネルギが低減されるため、必然的に車輌の制動距離が長くなるという不具合がある。
【0005】
本発明は、車輌の停止時に車速が所定値以下になると車輪に対する制動力を自動的に低減するよう構成された従来の停止制御装置に於ける上述の如き問題に鑑みてなされたものであり、本発明の主要な課題は、車輌の停止時に車輪が車体に対し相対的に前方へ移動するよう制動力を制御することにより、車輌の制動距離が長くなることを回避しつつ車体の揺り返し及びこれに起因するショックを低減することである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上述の主要な課題は、本発明によれば、請求項1の構成、即ち車輌の制動状態を検出する手段と、ばね上としての車体が停止したことを検出する手段と、必要に応じて運転者による制動操作に関係なく車輪に対する制動力を制御可能な制動装置と、車輌の制動時に前記車体が停止した瞬間より所定の時間車輪に対する制動力を解除する制御手段とを有する車輌の停止制御装置に於いて、路面の傾斜方向を検出する手段と、運転者による駆動操作に関係なく車輪に対する駆動力を制御可能な駆動装置とを有し、前記制御手段は路面が上り坂であるときには車輌の制動時に前記車体が停止した瞬間より所定の時間車輪に対する制動力を解除すると共に、車輪が後退しない程度に前記駆動装置により車輪に駆動力を与えることを特徴とする車輌の停止制御装置によって達成される。
【0007】
一般に、車輪(ばね下)の質量は車体(ばね上)の質量よりも遥かに小さいので、路面が水平路である場合には車輌の停止時に於ける車体の停止と同時に車輪に対する制動力を解除すれば、サスペンションの復元力の反作用により車輪が車体に対し相対的に車輌前方へ移動され、これにより実質的に車体が車輪に対し相対的に車輌後方へ移動されることなく車体の姿勢が前傾姿勢より通常の姿勢に復元し、これにより車輌の停止時に於ける車体の揺り返し及びこれに起因するショックが効果的に低減される。
【0012】
しかし車輌が傾斜路に於いて停止する場合には、車輌には重力の車輌前後方向の成分が作用し、また傾斜路が下り坂であるか上り坂であるかにより、換言すれば路面の傾斜方向により車輌に作用する重力の車輌前後方向の成分の方向が異なり、そのため車輌の停止時に車体及び車輪に作用する車輌前後方向の力は車輌が水平路に於いて停止する場合とは相違し、また路面の傾斜方向によっても相違する。
【0017】
に、車輌が上り坂に於いて停止する場合には、車輌に作用する重力の車輌後方への成分に起因して水平路での停止時に比して車輌の停止直後に於ける車体の後方への移動量が大きくなり易いと共に車輪が前方へ移動し難く、また車輌が後退し易い。
上記請求項の構成によれば、車輌が停止する路面が上り坂であるときには車輪に対する制動力が解除されると共に車輪が後退しない程度に駆動装置により車輪に駆動力が与えられるので、車輌が上り坂で停止する際にもサスペンションの復元力の反作用により車輪が車体に対し相対的に前方へ移動されることによって車体の揺り返し及びこれに起因するショックが効果的に低減されると共に、車輌が後退し車輌の停止位置が所望の位置よりも後方になることが確実に回避される。
【0018】
また本発明によれば、上述の主要な課題を効果的に達成すべく、上記請求項1の構成に於いて、前記制御手段は車輪に対する制動力を解除すると共に車輪が後退しない程度に前記駆動装置によって車輪に駆動力を与えることにより、前記車体が停止した状態にて車輪を車体に対し相対的に前方へ移動させるよう構成される(請求項の構成)。
【0019】
記請求項の構成によれば、停止状態の車体に対し相対的に車輪を確実に前方へ移動させることが可能になる。
【0020】
【課題解決手段の好ましい態様】
本発明の一つの好ましい態様によれば、上記請求項1又は2の構成に於いて、車輌の制動状態を検出する手段は運転者により操作されるブレーキペダルの踏み込み状態を検出するよう構成される(好ましい態様1)。
【0021】
本発明の他の一つの好ましい態様によれば、上記請求項1又は2の構成に於いて、車体が実質的に停止したことを検出する手段は車体の対地速度が実質的に0になったことを検出するよう構成される(好ましい態様2)。
【0022】
本発明の他の一つの好ましい態様によれば、上記請求項1又は2の構成に於いて、停止制御装置は車輌の減速度を検出する手段を有し、制御手段は車輌の制動時であって車輌の減速度が基準値以上であるときに車体が停止した瞬間より所定の時間車輪に対する制動力を解除するよう構成される(好ましい態様3)。
【0023】
本発明の他の一つの好ましい態様によれば、上記請求項1又は2の構成に於いて、停止制御装置は運転者により操作されるメインスイッチを含み、メインスイッチがオン状態にあるときにのみ作動するよう構成される(好ましい態様4)。
【0024】
本発明の他の一つの好ましい態様によれば、上記請求項1又は2の構成に於いて、車輌は減衰力可変式のショックアブソーバを有し、ショックアブソーバは伸び側及び縮み側の減衰力を相互に独立に制御可能であり、制御手段は車体が実質的に停止した瞬間より少なくとも前記所定の時間が経過するまでの間前輪用ショックアブソーバの伸び側の減衰力及び後輪用ショックアブソーバの縮み側の減衰力を増大させるよう構成される(好ましい態様5)。
【0025】
本発明の他の一つの好ましい態様によれば、上記好ましい態様5の構成に於いて、制御手段は前輪用ショックアブソーバの伸び側の減衰係数及び後輪用ショックアブソーバの縮み側の減衰係数を実質的に臨界減衰係数に制御するよう構成される(好ましい態様6)。
【0026】
本発明の他の一つの好ましい態様によれば、上記好ましい態様5又は6の構成に於いて、制御手段は車体が実質的に停止するまで前輪用ショックアブソーバの縮み側の減衰力及び後輪用ショックアブソーバの伸び側の減衰力を増大させるよう構成される(好ましい態様7)。
【0027】
本発明の他の一つの好ましい態様によれば、上記請求項1又は2の構成に於いて、路面の傾斜方向を検出する手段は路面の傾斜角をも検出し、停止制御装置は路面の傾斜角に応じて車輪に駆動力を与えるよう構成される(好ましい態様8)。
【0029】
【発明の実施の形態】
以下に添付の図を参照しつつ、本発明を好ましい実施形態について詳細に説明する。
【0030】
図1は後輪駆動車に適用された本発明による車輌の停止制御装置の一つの実施形態を示す概略構成図(A)及び制御系のブロック線図(B)である。
【0031】
図1に於いて、10はエンジンを示しており、エンジン10の駆動力はトルクコンバータ12及びトランスミッション14を含む自動変速機16を介してプロペラシャフト18へ伝達される。プロペラシャフト18の駆動力はディファレンシャル20により左後輪車軸22L 及び右後輪車軸22R へ伝達され、これにより駆動輪である左右の後輪24RL及び24RRが回転駆動される。
【0032】
一方左右の前輪24FL及び24FRは従動輪であると共に操舵輪であり、図1には示されていないが運転者によるステアリングホイールの転舵に応答して駆動されるラック・アンド・ピニオン式のパワーステアリング装置によりタイロッドを介して操舵される。
【0033】
エンジン10の出力は吸気通路26に設けられたスロットルバルブ28により制御され、スロットルバルブ28の開度は通常時には運転者により操作されるアクセルペダル30の踏み込み量に応じてエンジン制御コンピュータ32によりアクチュエータ34を介して制御され、また後述の如く車輌の制動停止時には必要に応じて停止制御コンピュータ36よりの制御信号に基づき、運転者によるアクセルペダル30の踏み込み量に拘りなくエンジン制御コンピュータ32によりアクチュエータ34を介して制御される。
【0034】
左右の前輪24FL、24FRのサスペンションにはそれぞれ減衰力可変式のショックアブソーバ38FL、38FRが設けられており、左右の後輪24RL、24RRのサスペンションにはそれぞれ減衰力可変式のショックアブソーバ38RL、38RRが設けられている。ショックアブソーバ38FL〜38RRは通常時には図には示されていない横加速度センサ等の検出結果に基づき減衰力制御コンピュータ40により図には示されていないアクチュエータを介して制御され、また後述の如く車輌の制動停止時には必要に応じて停止制御コンピュータ36よりの制御信号に基づき減衰力制御コンピュータ40により制御される。
【0035】
左右の前輪24FL、24FR及び左右の後輪24RL、24RRの制動力は制動装置42の油圧回路44により対応するホイールシリンダ46FL、46FR、46RL、46RRの制動圧が制御されることによって制御される。図には示されていないが、油圧回路44はリザーバ、オイルポンプ、種々の弁装置等を含み、各ホイールシリンダの制動圧は通常時には運転者によるブレーキペダル48の踏み込み操作に応じて駆動されるマスタシリンダ50により制御され、また必要に応じて後に詳細に説明する如く自動ブレーキ制御コンピュータ52により制御される。
【0036】
尚後に詳細に説明する如く、自動ブレーキ制御コンピュータ52及び制動装置42は停止装置による駐停車時には停止制御コンピュータ36よりの制御信号に応答して運転者によるブレーキペダル48の踏み込み操作に拘りなく制動力を制御する自動ブレーキ装置54を構成している。
【0037】
図1(B)に示されている如く、停止制御コンピュータ36には、車速センサ56より車速Vを示す信号、対地車体速度センサ58より対車体速度Vb を示す信号、傾斜角センサ60より車輌前後方向の路面の傾斜角φを示す信号、ストロークセンサ62FL、62FR、62RL、62RRよりそれぞれ左前輪24FL、右前輪24FR、左後輪24RL、右後輪24RRのサスペンションのストロークSfl、Sfr、Srl、Srrを示す信号が入力される。
【0038】
尚傾斜角センサ60は車輌前後方向の路面の傾斜角を検出し得る限り当技術分野に於いて公知の任意の構成のものであってよいが、特に重力の路面傾斜角成分を検出するセンサや車体の前後加速度を検出するセンサである場合には、検出値に車輌の加減速に伴う誤差が重畳しないよう、車速Vの変化率Vd にて検出値が補正されることが好ましい。
【0039】
また停止制御コンピュータ36には、ブレーキペダルスイッチ(BKSW)64より運転者によってブレーキペダル48が踏み込まれているか否かを示す信号、パーキングブレーキスイッチ(PBKSW)66より図1には示されていないパーキングブレーキがオン状態にあるか否かを示す信号、停止装置を作動させるためのメインスイッチ68より該スイッチがオン状態にあるか否かを示す信号が入力される。
【0040】
停止制御コンピュータ36は、図2及び図3に示されたフローチャートに従って車輌が比較的急激な制動停止状態にあり車体の揺り返しが生じる虞れがあるか否かを判定し、車体の揺り返しが生じる虞れがあるときには路面が水平路、上り坂、下り坂の何れであるかに応じてエンジン制御コンピュータ32、減衰力制御コンピュータ40、自動ブレーキ制御コンピュータ52へ制御信号を出力し、これにより車輌の制動距離が長くなることを回避しつつ車輌停止時の車体の揺り返しを防止する。
【0041】
尚エンジン制御コンピュータ32、停止制御コンピュータ36、減衰力制御コンピュータ40、自動ブレーキ制御コンピュータ52は、実際にはそれぞれCPU、ROM、RAM、入出力ポート装置を含む周知の構成のマイクロコンピュータであってよい。
【0042】
次に図2及び図3に示されたフローチャートを参照して図示の実施形態に於ける停止制御について説明する。尚図2及び図3に示されたフローチャートによる制御は図には示されていないメインスイッチ68の閉成により開始される。
【0043】
まずステップ10に於いては、車速センサ54により検出された車速Vを示す信号等の読み込みが行われ、ステップ20に於いては、例えば車速Vの時間微分値として車速の変化率Vd が演算されると共に、Vdoを正の定数として車速の変化率Vd が基準値−Vdo以下であるか否かの判別、即ち車輌が比較的急激な減速状態にあるか否かの判別が行われ、否定判別が行われたときにはステップ30に於いてショックアブソーバ38FL〜38RRが減衰力制御コンピュータ40により通常の制御モードにて制御され、定判別が行われたときにはステップ40へ進む。
【0044】
ステップ40に於いては、左右前輪24FL、24FRのショックアブソーバ38FL、38FRの縮み側の減衰力が通常制御モードに於ける減衰力よりも高くなるよう増大制御されると共に、左右後輪24RL、24RRのショックアブソーバ38RL、38RRの伸び側の減衰力が通常制御モードに於ける減衰力よりも高くなるよう増大制御される。
【0045】
ステップ50に於いては、車速Vが基準値Vo (正の定数)以下であるか否かの判別、即ち車輌が停止直前の状態にあるか否かの判別が行われ、否定判別が行われたときにはそのままステップ10へ戻り、肯定判別が行われたときにはステップ60に於いてブレーキペダルスイッチ64がオン状態にあるか否かの判別、即ち運転者により制動操作が行われているか否かの判別が行われ、否定判別が行われたときにはステップ10へ戻り、肯定判別が行われたときにはステップ70へ進む。
【0046】
ステップ70に於いては、対地車体速度Vb が実質的に0であるか否かの判別、即ち車体が実質的に停止したか否かの判別が行われ、否定判別が行われたときにはステップ10へ戻り、肯定判別が行われたときにはステップ80に於いて左右前輪のショックアブソーバ38FL、38FRの伸び側の減衰力が最大値に設定されると共に、左右後輪のショックアブソーバ38RL、38RRの縮み側の減衰力が最大値に設定される。尚この場合、減衰力を最大値に設定する制御は制動停止時の車体のピッチングが実質的に1周期にて収束するよう、減衰係数を例えば臨界減衰係数まで高くすることによって達成される。
【0047】
ステップ90に於いては、例えば傾斜角センサ60により検出された路面の傾斜角φの絶対値が基準値以下であるか否かの判別により路面が水平路であるか否かの判別が行われ、肯定判別が行われたときにはステップ100に於いて自動ブレーキ制御コンピュータ52へ制御信号が出力されることにより各輪の制動力が実質的に0になるよう解除され、否定判別が行われたときにはステップ110へ進む。
【0048】
ステップ110に於いては、路面の傾斜角φの符号に基づき路面が上り坂であるか否かの判別が行われ、否定判別が行われたときにはそのままステップ140へ進み、肯定判別が行われたときにはステップ120に於いて各輪の制動力が実質的に0になるよう解除され、ステップ130に於いて路面の傾斜角φに基づき図には示されていないマップより車の後退を防止するに必要なスロットルバルブ28の目標開度が演算され、該目標開度を示す信号がエンジン制御コンピュータ32へ出力され、これにより車の後退を防止し車体に対し相対的に車輪を前方へ移動させるための駆動力(エンジン10の出力)の制御が行われる。
【0049】
ステップ140に於いては、左右前輪のストロークセンサ62FL、62FRにより検出されたストロークSfl、Sfrに基づき、例えば時間微分値としてそれぞれのストローク速度Vsfl 及びVsfr が演算され、それらの平均値として前輪のストローク速度Vsfが演算されると共に、ストローク速度Vsfが実質的に0であるか否かの判別が行われ、否定判別が行われたときにはステップ90へ戻り、肯定判別が行われたときにはステップ150へ進む。
【0050】
同様に、ステップ150に於いては、左右後輪のストローセンサ62RL、62RRにより検出されたストロークSrl、Srrに基づき、例えば時間微分値としてそれぞれのストローク速度Vsrl 及びVsrr が演算され、それらの平均値として後輪のストローク速度Vsrが演算されると共に、ストローク速度Vsrが実質的に0であるか否かの判別が行われ、否定判別が行われたときにはステップ90へ戻り、肯定判別が行われたときにはステップ160へ進む。
【0051】
ステップ160に於いては、各ショックアブソーバの減衰力の制御が通常制御モードに戻され、ステップ170に於いては各車輪にそれらが移動しない程度の制動力が再度付与され、ステップ180に於いては、パーキングブレーキスイッチ66がオン状態にあるか否かの判別、運転者による停止状態維持操作が行われたか否かの判別が行われ、否定判別が行われたときにはステップ170へ戻り、肯定判別が行われたときにはステップ190に於いて自動ブレーキ制御コンピュータ52へ制御信号が出力されることにより各輪の制動力の制御モードが通常の制御モードに戻される。
【0052】
尚図2及び図3には示されていないが、メインスイッチ68がオフに切り換えられた場合にも、ショックアブソーバの減衰力の制御モード及び各車輪の制動力の制御モードはそれぞれ通常の制御モードに戻される。
【0053】
かくして図示の実施形態によれば、ステップ20、50、60に於いて車輌が比較的急激な制動停止状態にあり車体の揺り返しが生じる虞れがあるか否かの判定が行われ、ステップ70に於いて車体が実質的に停止したか否かの判別が行われ、車輌が水平路を走行している際に車輌が制動により停止し車体が停止したときにはステップ70及び90に於いて肯定判別が行われ、ステップ100、140、150により所定の時間各輪の制動力が0に制御される。
【0054】
図4(A)に示されている如く、本発明による停止装置が搭載されていない通常の車輌100が白抜きの矢印102に示された方向へ実質的に一定の車速にて走行する場合には、それぞれサスペンションスプリング104F 及び104R を介して前輪106F 及び後輪106R により支持される車体108は実質的に水平の状態にある。
【0055】
また図4(B)に示されている如く、車輌100が制動により比較的急激に減速すると、黒塗りの矢印110にて示されている如く車輌前方への荷重移動が生じ、前輪側のサスペンションスプリング104F が縮むと共に後輪側のサスペンションスプリング104R が伸びることより車体108が前傾姿勢になる。
【0056】
更に図4(C)に示されている如く、制動により車輪106F 及び106R が停止しても車体108は慣性力により車輌前方へ移動し、前輪側のサスペンションスプリング104F が更に縮むと共に後輪側のサスペンションスプリング104R が更に伸張し、これにより車体108の前傾度合が大きくなり、車体の重心112が車輪106F 及び106R に対し相対的に前方へ変位した状態で車体が停止する。
【0057】
そのため図4(D)に示されている如く、車体108が停止した直後にサスペンションスプリング104F 及び104R の復元力によって車体は重心112が車輌後方へ変位するよう付勢されることにより後傾姿勢になり、これにより車体のピッチングが発生し、従って車輌の乗員が車輌の停止直後に車体の後方への変位を不快な車体の揺り返しとして感じることが避けられない。
【0058】
これに対し図示の実施形態によれば、図5(C)に示されている如く車輪106F 及び106R が停止し車体108が前傾姿勢にて停止すると、車輪106F 及び106R に対する制動力が解除され、これにより図5(D)に示されている如くサスペンションスプリング104F 及び104R の復元力の反作用により車輪106F 及び106R が僅かに前進し、車体108は実質的に後方へ変位することなく図5(E)に示されている如く実質的に水平の姿勢に復帰する。従って車輌の乗員が車輌の停止直後に不快な車体の揺り返し及びこれに起因するショックを感じることを確実に防止することができる。
【0059】
また車輌が下り坂に於いて停止する場合には、車輌に作用する重力の車輌前方への成分に起因して水平路での停止時に比して車輌の制動距離が長くなり易い。図示の実施形態によれば、車輌が下り坂に於いて停止する場合には制動力の解除が禁止されるので、車輌が下り坂に於いて停止する際に車輌の制動距離が長くなることを確実に防止することができる。尚この場合、車輌に作用する重力の車輌前方への成分に起因して水平路での停止時に比して車輌停止直後に於ける車体の後方への移動量は小さいので、制動力の解除が禁止されても車輌の乗員が車体の大きい揺り返しやこれに起因する強いショックを感じることはない。
【0060】
更に車輌が上り坂に於いて停止する場合には、車輌に作用する重力の車輌後方への成分に起因して水平路での停止時に比して車体の後方への移動量が大きくなり易いと共に車輪が前方へ移動し難く、また車輌が後退し易い。図示の実施形態によれば、車輌が上り坂に於いて停止する場合には車輪に対する制動力が解除されると共に車輪が後退しない程度に車輪に駆動力が与えられるので、車輌が上り坂に於いて停止する場合にもサスペンションの復元力の反作用により車輪を確実に停止状態の車体に対し相対的に前方へ移動させることができ、これにより車体の揺り返し及びこれに起因するショックを効果的に低減することができる。
【0061】
特に図示の実施形態によれば、車輌の制動停止時に車体が実質的に停止すると、ステップ80に於いて前輪のショックアブソーバ38FL、38FRの伸び側の減衰力及び後輪のショックアブソーバ38RL、38RRの縮み側の減衰力が最大値に設定されるので、車体は前後の揺動を繰り返すことなくゆっくりと通常の姿勢に復帰し、従ってかかる減衰力の制御が行われない場合に比して一層確実に車体の揺り返し及びこれに起因するショックを低減することができる。
【0062】
また図示の実施形態によれば、ステップ20に於いて車速の変化率Vd が基準値−Vdo以下であるか否かの判別により車体の揺り返しが生じる虞れが高いか否かの判別が行われ、車体の揺り返しが生じる虞れが高い状況に於いてのみステップ50以降が実行されるので、かかる判別が行われない場合に比して不必要な制動力の制御及びショックアブソーバの減衰力の制御が行われる虞れを低減することができる。
【0063】
更に図示の実施形態によれば、ステップ20に於いて肯定判別が行われたときにはステップ40に於いて前輪のショックアブソーバ38FL、38FRの縮み側の減衰力及び後輪のショックアブソーバ38RL、38RRの伸び側の減衰力が通常制御モードに於ける減衰力よりも高くなるよう増大制御されるので、車輌の停止時に於ける車体の前傾度合を低減することができ、これによりかかる減衰力の制御が行われない場合に比して一層確実に車体の揺り返し及びこれに起因するショックを低減することができる。またこの場合各ショックアブソーバの伸び側及び縮み側両方の減衰力が増大制御される訳ではないので、減衰力の増大制御によって車輌の乗り心地性が悪化することを確実に回避することができる。
【0064】
以上に於いては本発明を特定の実施形態について詳細に説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内にて他の種々の実施形態が可能であることは当業者にとって明らかであろう。
【0065】
例えば上述の実施形態に於いては、ステップ20に於いて肯定判別が行われたときにはステップ40に於いてショックアブソーバの減衰力の増大制御が行われるようになっているが、ステップ40による減衰力の増大制御は省略されてもよい。
【0066】
また上述の実施形態に於いては、ステップ140及び150に於いて前後輪のサスペンションのストローク速度が実質的に0である旨の判別が行われると、それぞれステップ160及び170に於いて減衰力制御及び制動力解除制御が終了されるようになっているが、減衰力制御及び制動力解除制御の時間は一定の値に設定されてもよく、またステップ20に於いて最初に肯定判別が行われた時点に於ける車速V及びその変化率Vd に基づきこれらが高いほど長くなるよう可変設定されてもよい。
【0067】
更に上述の実施形態に於いては、ステップ180に於いて否定判別が行われるとそのままステップ170へ戻るようになっているが、ステップ180に於いて否定判別が行われたときにはタイマがスタートされ、そのカウント値が基準値を越えたときには図には示されていない警報装置が作動されるよう構成されてもよい。
【0068】
【発明の効果】
以上の説明より明らかである如く、本発明の請求項1の構成によれば、車輌が停止する路面が上り坂であるときには車輪に対する制動力が解除されると共に車輪が後退しない程度に駆動装置により車輪に駆動力が与えられるので、車輌が上り坂で停止する際にもサスペンションの復元力の反作用により車輪が車体に対し相対的に前方へ移動されることによって車体の揺り返し及びこれに起因するショックを効果的に低減することができると共に、車輌が後退し車輌の停止位置が所望の位置よりも後方になることを確実に回避することができる。
【0069】
また請求項2の構成によれば、停止状態の車体に対し相対的に車輪を確実に前方へ移動させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】後輪駆動車に適用された本発明による車輌の停止制御装置の一つの実施形態を示す概略構成図(A)及び制御系のブロック線図(B)である。
【図2】実施形態に於ける停止制御ルーチンの前半を示すフローチャートである。
【図3】実施形態に於ける停止制御ルーチンの後半を示すフローチャートである。
【図4】従来の車輌が水平路にて制動により停止する際に於ける車体の挙動を誇張して示す説明図である。
【図5】図示の実施形態による停止制御装置が搭載された車輌が水平路にて制動により停止する際に於ける車体の挙動を誇張して示す説明図である。
【符号の説明】
10…エンジン
30…アクセルペダル
32…エンジン制御コンピュータ
36…停止制御コンピュータ
40…減衰力制御コンピュータ
42…制動装置
48…ブレーキペダル
52…自動ブレーキ制御コンピュータ
54…自動ブレーキ装置
56…車速センサ
58…対地車体速度センサ
60…傾斜角センサ
62FL〜62RR…ストロークセンサ
64…ブレーキペダルスイッチ

Claims (2)

  1. 車輌の制動状態を検出する手段と、ばね上としての車体が停止したことを検出する手段と、必要に応じて運転者による制動操作に関係なく車輪に対する制動力を制御可能な制動装置と、車輌の制動時に前記車体が停止した瞬間より所定の時間車輪に対する制動力を解除する制御手段とを有する車輌の停止制御装置に於いて、路面の傾斜方向を検出する手段と、運転者による駆動操作に関係なく車輪に対する駆動力を制御可能な駆動装置とを有し、前記制御手段は路面が上り坂であるときには車輌の制動時に前記車体が停止した瞬間より所定の時間車輪に対する制動力を解除すると共に、車輪が後退しない程度に前記駆動装置により車輪に駆動力を与えることを特徴とする車輌の停止制御装置。
  2. 前記制御手段は車輪に対する制動力を解除すると共に車輪が後退しない程度に前記駆動装置によって車輪に駆動力を与えることにより、停止状態の車体に対し相対的に車輪を前方へ移動させることを特徴とする請求項1に記載の車輌の停止制御装置。
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