以下、一実施形態にかかる電動弁及び冷凍サイクルシステムについて説明する。まず、電動弁の第1実施形態について説明する。
図1は、第1実施形態にかかる電動弁の内部構造を、弁体が弁座部から離座した弁開状態で示す模式的な断面図である。図2は、図1に示されている電動弁を、弁体が弁座部に着座した弁閉状態で示す模式的な断面図である。
本実施形態の電動弁10は、一例として家庭用エアコン等の空気調和機に用いられるものであり、ケース1と、弁本体2と、ロータ軸3と、駆動部4と、ねじ送り機構5と、弁体6と、弁ホルダ7と、圧縮ばね8と、転がり軸受9と、を備えている。なお、以下の説明における「上下」の概念は図1の図面における上下に対応する。
ケース1は、有蓋筒状で内側が各種部品の収納空間となった部位であり、ドーム状の天井を有する第1ケース11と、この第1ケース11の下側開口に固定された筒状の第2ケース12と、を備えている。
弁本体2は、内部空間が弁室21となった有底有蓋筒状の部位であり、その蓋部をなす天井壁が第2ケース12の下側開口に固定されている。この弁本体2の周壁には、弁室21に連通した冷媒の第1ポート22が設けられ、底壁には、弁室21に連通した冷媒の第2ポート23が設けられている。第1ポート22には一次継手管221が取り付けられ、第2ポート23には二次継手管231が取り付けられている。また、底壁における第2ポート23の弁室21側の周縁を含む部分が、弁室21と第2ポート23との間を仕切り、弁体6によって開閉される弁座部24となっている。このように、弁本体2は、弁室21及び弁座部24を構成する部位となっている。また、弁本体2の天井壁には、弁体6を内側に通して軸線Lに沿った方向(軸線方向D11)に進退案内する筒状のガイド部材25が天井壁を貫通して設けられている。
ロータ軸3は、その中途に雄ねじ部31が形成された丸棒状の部位である軸本体3aと転がり軸受9とを備えており、ロータ軸3の弁室21の側の先端部である下端部32において、この下端部32の一部をなす転がり軸受9の内輪91が軸本体3aに固定されている。詳述すると、ロータ軸3の下端部32における内輪91の設置個所よりも更に先端では軸本体3aが他の部位よりも大径の鍔状に張り出している。また、この下端部32よりもロータ軸3の中央寄りに、内側に雌ねじが形成された筒状で一端側が雄ねじ部31に螺合した軸受固定金具33が固定されている。そして、この軸受固定金具33の下端と大径の下端部32における大径鍔状の先端との間に挟み込まれることで転がり軸受9の内輪91が軸本体3aに固定されてロータ軸3の下端部32の一部をなしている。
駆動部4は、ロータ軸3を回転駆動するステッピングモータであり、コイル41、マグネット42、マグネット連結金具43、マグネット固定金具44、及びストッパ機構45を備えている。コイル41は、ケース1における上側の第1ケース11の外周面に配設され、不図示のコントローラからロータ軸3を回転駆動するためのパルス信号が供給される部位である。マグネット42は、筒状に形成され、また外周部が多極に着磁されて、第1ケース11の内側に、その周壁を挟んでコイル41と外周面が対向するように配置される。そして、コイル41にパルス信号が与えられることにより、そのパルス数に応じて軸線L回りに回転する部位である。マグネット連結金具43は、マグネット42とロータ軸3の上端部34とを連結する部位である。このマグネット連結金具43は、有蓋筒状に形成され、その外周面に筒状のマグネット42が配置され、前記マグネット42の下端に設ける座金46と止め輪47により、マグネット42の上端を前記マグネット連結金具43の上端の鍔部に当接させて固定され、その天井壁の中央にマグネット固定金具44を介してロータ軸3の上端部34を保持するための貫通孔が設けられている。マグネット固定金具44は、筒状に形成され、内側にロータ軸3の上端部34が嵌め込まれて固着されるとともに、マグネット連結金具43の天井壁中央の貫通孔に嵌め込まれてかしめ等にて固定される部位である。
駆動部4では、コイル41にパルス信号が供給されると、マグネット42と一体となった、マグネット連結金具43、マグネット固定金具44、及びロータ3軸が軸線L回りに回転する。このとき、ロータ軸3は、このような回転に伴って、後述のねじ送り機構5によって軸線方向D11に進退する。駆動部4におけるストッパ機構45は、このような回転に伴うロータ軸3の進退の上下限を規制する機構であり、ガイド軸451と、ガイド線体452と、可動スライダ453と、スライダ当接軸454と、を備えている。
ガイド軸451は、第1ケース11の天井から垂下された軸部であり、その外周にガイド線体452が螺旋状に巻き付けられて固定されている。巻き付けられたガイド線体452における天井側の端部が突出して上端ストッパ452aとなっている。また、ガイド軸451の下端には、下端ストッパ451aが設けられている。可動スライダ453は、ガイド線体452にガイドされて回転かつ上下動可能となるように、ガイド軸451の外周に一周巻き付けられている。この可動スライダ453における天井側の端部は突出して、可動スライダ453が回転しつつ天井に向かって上昇したときに上端ストッパ452aに当接する第1爪部453aとなっている。また、可動スライダ453における下方側の端部も突出して、可動スライダ453が回転しつつ下降したときに下端ストッパ451aに当接する第2爪部453bとなっている。更に、この第2爪部453bは第1爪部453aよりも長く突出し、以下に説明するスライダ当接軸454にも当接するようになっている。スライダ当接軸454は、マグネット連結金具43の天井壁の周縁寄りに、第1ケース11の天井に向かって立設された軸であり、ロータ軸3やマグネット連結金具43と一緒に軸線L回りに回転しつつ軸線方向D11に進退する。そして、可動スライダ453の第2爪部453bは軸線L回りに回転するスライダ当接軸454に押されることでガイド線体452に沿って回転しつつ上昇又は下降する。
上昇の際には、可動スライダ453は第1爪部453aが上端ストッパ452aに当接したところで可動スライダ453の回転と上昇が止まり、動きを止めた可動スライダ453の第2爪部453bがスライダ当接軸454、即ちマグネット42の回転と上昇を止める。下降の際には、可動スライダ453は第2爪部453bが下端ストッパ451aに当接したところで可動スライダ453の回転と下降が止まり、その第2爪部453bがスライダ当接軸454、即ちマグネット42の回転と下降を止める。つまり、可動スライダ453の第1爪部453aが上端ストッパ452aに当接するときのロータ軸3の軸線方向D11の位置がロータ軸3の上限位置となり、第2爪部453bが下端ストッパ451aに当接するときの位置がロータ軸3の下限位置となる。
ねじ送り機構5は、駆動部4によるロータ軸3の回転に伴ってロータ軸3を軸線方向D11に進退させる機構であり、雌ねじ部51と、雌ねじ固定金具52と、を備えている。雌ねじ固定金具52は、下側にフランジ部分521が設けられた筒状の部位である。フランジ部分521が、第2ケース12の上側の開口を塞ぐように固定されており、雌ねじ固定金具52の内側に雌ねじ部51が一体に形成されている。そして、雌ねじ部51に、ロータ軸3の雄ねじ部31が螺合している。ロータ軸3が軸線L回りに回転すると雌ねじ部51に沿って雄ねじ部31が、つまりはロータ軸3が軸線方向D11に進退する。
弁体6は、ロータ軸3の進退に伴って弁本体2の内部の弁座部24に着座又は離座可能な丸棒状の部位である。弁体6は、上述したように弁本体2の天井壁を貫通して設けられたガイド部材25に挿入され、第2ケース12の内側から弁本体2の弁室21へと進入して配置されている。この弁体6の基端部61は、後述の弁ホルダ7を介してロータ軸3の下端部32に接続されており、ロータ軸3が軸線方向D11に進退すると、弁体6も軸線方向D11に進退する。弁体6の下端部62は、弁座部24に向かって先細りのテーパ形状となっており、このテーパ形状の下端部62が弁座部24に着座又は離座する。
弁ホルダ7は、ロータ軸3と弁体6とを接続する部位であり、ホルダ本体71と、第1保持部72と、第2保持部73と、座金74と、を備えている。
ホルダ本体71は、有底有蓋筒状の部位であり、その蓋部をなす天井壁に設けられた貫通孔を通ってロータ軸3の下端部32が、この下端部32の一部をなすように設けられた転がり軸受9ごと内部に進入している。ホルダ本体71の底側には、第2保持部73の係止部をなすリング状の止め輪711が固定されて貫通孔の開いた底壁を構成している。この止め輪711の貫通孔を通って弁体6の基端部61がホルダ本体71の内部に進入している。
第1保持部72は、ホルダ本体71の天井側に設けられ、ロータ軸3の下端部32を回転自在かつ軸線方向D11及び径方向D12に所定の遊びをもって保持する。つまり、第1保持部72は、軸線方向D11及び径方向D12について、ロータ軸3の下端部32がホルダ本体71に対して若干相対移動できる状態で、この下端部32を保持している。
詳述すると本実施形態では、この第1保持部72は、鍔部と側壁部721とを有した有底筒型に形成されており、ホルダ本体71の天井壁の中央から下方に突出した筒状突部に、側壁部721の内部に転がり軸受9を内包して座金74とともに前記鍔部の内周部が嵌入固定され、前記ホルダ本体71と一体となっている。第1保持部72の底壁には、ロータ軸3の下端部32の一部をなす転がり軸受9における内輪91を軸本体3aに固定するための大径鍔状の先端が通る貫通孔が設けられている。座金74は、上述の如くホルダ本体71の筒状突部に第1保持部の鍔部とともに嵌入固定される部位であり、ドーナッツ状の薄板であって、転がり軸受9の上面と摺接するので、滑り性及び/または耐摩耗性に優れる表面処理を施されるのが好ましい。
このような第1保持部72によるロータ軸3の下端部32の保持は、この転がり軸受9にて行われる。即ち、第1保持部72の底壁と、ホルダ本体71の天井壁における筒状突部と、の間に、筒状突部に密着固定された座金74を介して転がり軸受9の外輪92が内包されている。このとき、第1保持部72の底壁から筒状突部側の座金74までの寸法が転がり軸受9の外輪92の軸線方向D11の寸法よりも大きくなっている。これにより、転がり軸受9の外輪92と第1保持部72との間、即ち、ロータ軸3の下端部32と第1保持部72との間に保持の上での軸線方向D11の遊びが生じることとなっている。また、第1保持部72の側壁部721(転がり軸受9を内包する部位)の内径が転がり軸受9の外輪92の外径よりも大きくなっている。これにより、転がり軸受9の外輪92と第1保持部72との間、即ち、ロータ軸3の下端部32と第1保持部72との間に保持の上での径方向D12の遊びが生じることとなっている。
第2保持部73は、ホルダ本体71の底側に設けられて弁体6の基端部61を回転自在かつ軸線方向D11及び径方向D12に所定の遊びをもって保持する。つまり、第2保持部73は、軸線方向D11及び径方向D12について、弁体6の基端部61がホルダ本体71に対して若干相対移動できる状態で、この基端部61を保持している。
詳述すると本実施形態では、この第2保持部73は、中央に弁体6の基端部61を通す貫通孔が設けられた円板状に形成され、ホルダ本体71の内側でその周縁が止め輪711の上に非固定で載置された状態となっている。
このような第2保持部73による弁体6の基端部61の保持は、次のようにして行われる。まず、弁体6の基端部61は、この第2保持部73の中央部の貫通孔を通ってホルダ本体71の内部に進入している。この基端部61には雄ねじが形成されており、この雄ねじにナット63が締結されることで弁体6の基端部61が第2保持部73に保持される。このとき、弁体6において基端部61よりも下端部62側は、第2保持部73の前記貫通孔の内径よりも太い大径部64となっている。そして、締結されたナット63の下面から大径部64までの寸法が第2保持部73の前記貫通孔周辺の厚み寸法よりも大きくなっている。これにより、弁体6の基端部61と第2保持部73との間に保持の上での軸線方向D11の遊びが生じることとなっている。また、第2保持部73の前記貫通孔の内径が弁体6における基端部61の貫通部分の外径よりも大きくなっている。これにより、弁体6の基端部61と第2保持部73との間に保持の上での径方向D12の遊びが生じることとなっている。
圧縮ばね8は、以上に説明した弁ホルダ7に内蔵されるコイルばねであり、ホルダ本体71の内部において、第1保持部72の鍔部と第2保持部73の周縁部の段差形状部との間に圧縮状態で介装されている。本実施形態では、上述したように第1保持部72がホルダ本体71の天井壁における筒状突部に嵌入固定され、第2保持部73がホルダ本体71の底壁をなす止め輪711の上に非固定で載置されている。その結果、第1保持部72と第2保持部73のうち非固定の第2保持部73が、圧縮ばね8の付勢力によって、ホルダ本体71の止め輪711に係止される。また、第2保持部73は、止め輪711の上に非固定で載置されていることから、圧縮ばね8の付勢力に抗して、止め輪711から離間して第1保持部72に近づく近接方向D13に移動可能に設けられている。弁体6の下端部62が弁座部24に着座した状態でロータ軸3の回転に伴い更に弁ホルダ7が下降すると、軸線方向D11について不動状態の弁体6の大径部64に下方から支持された第2保持部73が、圧縮ばね8を圧し縮めながら第1保持部72に近づくこととなる。
転がり軸受9は、上述したようにロータ軸3の下端部32に該下端部32の一部として設けられて第1保持部72による下端部32の保持に寄与する部位である。転がり軸受9の内輪91が、ロータ軸3の下端部32に固定され、外輪92が、有底筒状の第1保持部72の内部に、軸線方向D11径方向D12に所定の遊びをもって収められて保持される。
図1及び図2に示されている電動弁10では、図1の弁開状態から図2の弁閉状態への移行時には、駆動部4に閉弁のためのパルス信号が供給される。すると、駆動部4によってロータ軸3が回転駆動され、ねじ送り機構5によって閉弁方向D111に作動する。その結果、弁ホルダ7を介してロータ軸3の下端部32に接続された弁体6がロータ軸3と一緒に閉弁方向D111に作動し、その下端部62が弁座部24に着座して図2の弁閉状態となる。他方、弁閉状態から弁開状態への移行時には、駆動部4に開弁のためのパルス信号が供給される。すると、駆動部4によってロータ軸3が回転駆動され、ねじ送り機構5によって開弁方向D112に作動する。その結果、弁体6がロータ軸3と一緒に開弁方向D112に動き、その下端部62が弁座部24から離座して図1の弁開状態となる。
以上に説明した電動弁10では、図1の弁開状態から図2の弁閉状態へと、以下に説明する第1~第3の三状態を経て移行する。これらの三状態は主に弁ホルダ7の内部で生じる。
図3は、弁開状態から弁体が弁座に着座した瞬間までの移行の際の第1状態を示す弁ホルダの拡大断面図であり、図4は、図3に示されている第1状態から、前記ロータ軸が弁閉方向に所定量下降した際の第2状態を示す弁ホルダの拡大断面図である。また、図5は、図4に示されている第2状態から、前記ロータ軸が弁閉方向に所定量下降させた際の第3状態を示す弁ホルダの拡大断面図である。
図3には第1状態の一例として図1に示されている弁開状態が示されており、図3は、図1に示されている弁ホルダ7の拡大断面図となっている。この第1状態ではロータ軸3の下端部32に弁ホルダ7が、弁ホルダ7及び弁体6の重量によって吊下がっている。そして、弁ホルダ7の第2保持部73に、弁体6が自重によって吊下がっている。
詳述すると、この第1状態では、弁ホルダ7の内部における座金74が、ロータ軸3の下端部32をなす転がり軸受9における外輪92の上面に当接した状態で弁ホルダ7が吊下がっている。このとき、有底筒状の第1保持部72における底壁の上面と外輪92の下面との間隙t11が、第1保持部72とロータ軸3の下端部32との間の軸線方向D11の遊びとなる。また、第1保持部72の側壁部721(転がり軸受9を内包する部位)の内周面と外輪92の外周面との間隙t12が、第1保持部72とロータ軸3の下端部32との間の径方向D12の遊びとなる。
また、この第1状態では、弁体6の基端部61に締結されたナット63が、弁ホルダ7の止め輪711に圧縮ばね8によって押し付けられた第2保持部73の上面に当接した状態で弁体6が吊下がっている。このとき、第2保持部73の下面と弁体6の大径部64の上端部との間隙t13が、第2保持部73と弁体6の基端部61との間の軸線方向D11の遊びとなる。また、第2保持部73の貫通孔の内周面と弁体6の基端部61の貫通部分の外周面との間隙t14が、第2保持部73と弁体6の基端部61との間の径方向D12の遊びとなる。そして、この第1状態では、圧縮ばね8は弁ホルダ7の止め輪711に第2保持部73を押し付けるだけで、その付勢力は、弁体6には及んでいない。このように、第1状態は、第1保持部72の底壁と転がり軸受9の外輪92の下面との間、及び第2保持部73の下面と弁体6の大径部64の上端面との間、それぞれの軸線方向D11の遊びが残り、圧縮ばね8の付勢力が弁体6に作用せず、径方向D12に弁体6が移動可能な状態となっている。なお、弁体6が弁座部24に着座した瞬間も同じ状態(第1状態)となる。
図4に示されている第2状態は、図1に示されている弁開状態からロータ軸3及び弁ホルダ7によって弁体6が閉弁方向D111に所定量動かされて、その下端部62が弁座部24に着座し(ここまでが第1状態)、その後に、ロータ軸3が弁閉方向D111に更に所定量進んだ状態である。このときの第1状態からのロータ軸3の進み量は、弁体6の下端部62が弁座部24に着座して、この後軸線方向D11に不動状態の弁体6の大径部64に第2保持部73が接触し、更に、弁ホルダ7の座金74から転がり軸受9の外輪92が軸線方向D11に離れて反対側の第1保持部72の底壁に接触する量となる。
第2状態では、座金74と転がり軸受9の外輪92の上面との間に間隙t15が開くが、外輪92の下面が第1保持部72の底壁に接触しており、ロータ軸3が更に閉弁方向D111に動く時の遊びは消失している。また、第2保持部73についても、ナット63の下面との間に間隙t16が開くが、弁体6の大径部64に第2保持部73が接触しており、ロータ軸3が更に閉弁方向D111に動く時の遊びが消失している。
他方、径方向D12については、第1保持部72の側壁部721(前記転がり軸受9を内包する部位)の内周面と転がり軸受9の外輪92の外周面との間の間隙t12及び第2保持部73の貫通孔の内周面と弁体6の基端部61の貫通部分の外周面との間の間隙t14が維持されている。つまり、この第2状態でも、第1保持部72及び第2保持部73の双方とも、径方向D12の遊びは維持されている。そして、この第2状態でも、圧縮ばね8の付勢力は未だ弁体6には及んでいない。このように、第2状態は、第1保持部72の底壁と転がり軸受9の外輪92の下面との間、及び第2保持部73の下面と弁体6の大径部64の上端面との間、それぞれの閉弁方向D111の遊びは消失したが、圧縮ばね8の付勢力は弁体6に作用せず、未だ径方向D12に弁体6が移動可能な状態となっている。この第2状態から、ロータ軸3を弁閉方向D111に進めると弁体6に圧縮ばね8の付勢力が弁体に作用し始めるが、第2保持部73と止め輪711とが未だ当接しているため、圧縮ばね8の付勢力のうちの一部のみが弁体6に作用する。
図5に示されている第3状態は、図2に示されている弁閉状態そのものであり、図5は、図2に示されている弁ホルダ7の拡大断面図となっている。この第3状態では、図4に示されている第2状態から、更に、ロータ軸3が弁閉方向D111に所定量進んでいる。このときの第2状態からのロータ軸3の進み量は、軸線方向D11に不動状態の弁体6の大径部64によって支持されて同じく不動状態となった第2保持部73が止め輪711から離れるまで、弁ホルダ7を圧縮ばね8の付勢力に抗して閉弁方向D111に進ませる量となる。
第3状態では、第2保持部73と止め輪711との間に間隙t17が開く。そして、この間隙t17に応じた量だけ圧縮ばね8が押し縮められ、その反力であるばね荷重が間隙t17の増加量に応じて生じる閉弁荷重として、第2保持部73の下面に当接した弁体6に作用し、その下端部62が弁座部24に押し付けられることとなる。
このとき、仮に上述の第2状態の段階での着座状態において弁体6と弁座部24との間に軸の芯ずれや傾きが生じていた場合、第2状態から第3状態への移行時に着座状態が次のように修正される。即ち、ロータ軸3の移動によって生じるばね荷重に押されて、第2状態での径方向D12の遊びの範囲内で弁体6が径方向D12に動くことで軸の芯ずれや傾きが補正されて着座状態が修正される。このような修正が生じた場合には、そのときの修正分だけ径方向D12の遊びが減少することとなる。
第3状態は、第1保持部72の底壁と転がり軸受9の外輪92の下面との間、及び第2保持部73の下面と弁体6の大径部64の上端面との間、それぞれの閉弁方向D111の遊びが消失し、更に圧縮ばね8の付勢力が閉弁荷重として弁体6に作用する状態となっている。
なお、上記のように第2状態から第3状態までの間においても弁体には圧縮ばね8の付勢力の一部が作用するが、第3状態においては、間隙t17が生じることにより、圧縮ばね8の軸方向の付勢力の全てが弁体に作用する。以上、図にて本実施形態の弁開から弁閉の状態について順番に説明したが、この逆の弁閉から弁開の時は、この逆の順番で同様の作動となることは言うまでもない。
以上に説明した第1実施形態の電動弁10によれば、ロータ軸3、弁体6、及び弁ホルダ7と、がそれぞれ軸線方向D11及び径方向D12に遊びをもって接続されている。この構成では、弁体6が弁座部24に着座してから更にロータ軸3及び弁ホルダ7が進んで軸線方向D11の遊びが消えてから圧縮ばね8の付勢力が弁体6に作用する。つまり、着座の瞬間には圧縮ばね8の付勢力が弁体6に作用していないために着座の際の弁座部24に対する弁体6の摺れ回りによる摩擦の発生が無くなり、その結果、弁体6及び弁座部24の摩耗を軽減することができる。また、着座の瞬間に弁体6と弁座部24との間に軸の芯ずれや傾きが生じていたとしても、次のように確実に着座させることができる。即ち。着座の瞬間に続いてロータ軸3や弁ホルダ7が進む際に圧縮ばね8の付勢力に押される弁体6が径方向D12の遊びの範囲内で動くことにより、軸の芯ずれや傾きを補正して弁体6を弁座部24に確実に着座させることができる。このように、本実施形態の電動弁10によれば、弁漏れ性能を向上させることができる。
ここで、本実施形態では、弁体6と弁本体2に設けられたガイド部材25との径方向D12のクリアランスが、弁体6と第2保持部73との径方向D12の遊びよりも小さい。この構成によれば、まず、ガイド部材25を設けたことで弁体6の軸線方向D11の進退を安定させることができる。そして、弁体6とガイド部材25とのクリアランスが、弁体6と第2保持部73との遊びよりも小さいので、仮にガイド部材25において弁体6に芯ずれ等が発生したとしても、弁体6と第2保持部73との遊びによって上記の芯ずれを吸収することができる。つまり、上記の構成によれば、ガイド部材25によって弁体6の安定した作動を得ることができるとともに、ガイド部材25での弁体6の芯ずれ等に起因する弁体6の傾き等を抑えて弁漏れ性能を一層向上させることができる。
また、本実施形態では、ロータ軸3の下端部32において、転がり軸受9の内輪91がロータ軸3に固定され、外輪92が第1保持部72に、軸線方向D11及び径方向D12に所定の遊びをもって保持される。この構成によれば、転がり軸受9を設けたことで、ロータ軸3の回転の、ホルダ本体71及び弁体6への伝達が一層抑えられ、その結果、着座の際の弁座部24部に対する弁体6の摺れ回りが更に抑えられるので、弁漏れ性能を一層向上させることができる。
以上で第1実施形態の電動弁10についての説明を終了し、第2~第5実施形態の電動弁について説明する。これらの電動弁は、弁ホルダの内部構造が、上述の第1実施形態の電動弁10と異なっている。他方で、電動弁の全体構造等は、第1実施形態の電動弁10と同じである。そこで、以下では、第2~第5実施形態の電動弁について、第1実施形態の電動弁10との相違点に注目して説明を行い、同一点である全体構造等については図示や説明を割愛する。
まず、第2実施形態の電動弁について説明する。
図6は、第2実施形態の電動弁における弁ホルダの内部構造を示す図である。尚、この図6には、第2実施形態の電動弁10Aにおける弁ホルダの内部構造が、図3と同様の第1状態で示されている。そして、図6では、図3に示されている構成要素と同等な構成要素には図3と同じ符号が付されており、以下では、それら同等な構成要素については重複説明を省略する。以上の点は、後述の第3実施形態の電動弁を示す図7、後述の第4実施形態の電動弁を示す図8、及び後述の第5実施形態の電動弁を示す図9においても同様である。
図6に示されている電動弁10Aでは、弁ホルダ7Aにおいて、第1保持部72Aとホルダ本体71Aとが一体に形成されている。有底筒状の第1保持部72Aの内側に、ロータ軸3の下端部32の一部をなす転がり軸受9が収められ、第1保持部72Aの開口に、転がり軸受9の抜止め部75Aが嵌め込まれ固着されている。このとき、第1保持部72Aの底壁から抜止め部75Aの下面までの寸法が転がり軸受9の外輪92の軸線方向D11の寸法よりも大きくなっている。これにより、転がり軸受9の外輪92と第1保持部72Aとの間、即ち、ロータ軸3の下端部32と第1保持部72Aとの間に軸線方向D11の遊びが生じることとなっている。また、第1保持部72Aの側壁部721A(転がり軸受9を内包する部位)の内径が転がり軸受9の外輪92の外径よりも大きくなっている。これにより、転がり軸受9の外輪92と第1保持部72Aとの間、即ち、ロータ軸3の下端部32と第1保持部72Aとの間に保持の上での径方向D12の遊びが生じることとなっている。この他、ナット63を介した第2保持部73による弁体6の基端部61の保持構造や、圧縮ばね8の介装構造等は、図3に示されている第1実施形態と同じである。
次に、第3実施形態の電動弁について説明する。
図7は、第3実施形態の電動弁における弁ホルダの内部構造を示す図である。
図7に示されている電動弁10Bでは、弁ホルダ7Bに設けられる第1保持部72Bの形状と、この第1保持部72Bとロータ軸3Bの下端部32Bとの連結構造が上述の第1実施形態と異なっている。
本実施形態の第1保持部72Bは、弁体6を保持する第2保持部73と類似の形状を有しており、中央にロータ軸3Bの下端部32Bを通す貫通孔が設けられた円板状に形成され、周縁部に圧縮ばね8の上端側が嵌め込まれる段差形状が形成されている。そして、この第1保持部72Bが、有底有蓋筒状のホルダ本体71Bの天井壁の内側に非固定で配置されている。第1保持部72Bは、この第1保持部72Bと第2保持部73との間に介装された圧縮ばね8の付勢力によって、止め輪711に押し付けられる第2保持部73と同様に、ホルダ本体71Bの天井壁に押し付けられる。このように、本実施形態では、圧縮ばね8の付勢力によって、第2保持部73が止め輪711に係止されるとともに、第1保持部72Bも天井壁に係止される。そして、閉弁時には、第2保持部73が圧縮ばね8の付勢力に抗して止め輪711から離間して第1保持部72Bに近づく。他方、第1保持部72Bは天井壁に終始当接したままとなる。
第1保持部72Bによるロータ軸3Bの下端部32Bの保持は、次のようにして行われる。まず、ロータ軸3Bの下端部32Bは、この第1保持部72Bの貫通孔を通ってホルダ本体71Bの内部に進入している。この下端部32Bの下端には段差状の小径部が形成されており、この小径部に押さえ部材35Bが嵌め込まれ固着されることでロータ軸3Bの下端部32Bが第1保持部72Bに保持される。このとき、ロータ軸3Bにおいて下端部32Bよりも駆動部の側は、第1保持部72Bの貫通孔の内径よりも太い大径部36Bとなっている。そして、下端部32Bの一部をなす押さえ部材35Bの上面から大径部36Bまでの寸法が第1保持部72Bの貫通孔周辺の厚み寸法よりも大きくなっている。これにより、ロータ軸3Bの下端部32Bと第1保持部72Bとの間に保持の上での軸線方向D11の遊びが生じることとなっている。また、第1保持部72Bの貫通孔の内径がロータ軸3Bにおける下端部32Bの一部である貫通部分の外径よりも大きくなっている。これにより、ロータ軸3Bの下端部32Bと第1保持部72Bとの間に保持の上での径方向D12の遊びが生じることとなっている。この他、ナット63を介した第2保持部73による弁体6の基端部61の保持構造等は、図3に示されている第1実施形態と同じである。
次に、第4実施形態の電動弁について説明する。
図8は、第4実施形態の電動弁における弁ホルダの内部構造を示す図である。この第4実施形態は、図7に示されている第3実施形態の変形例となっている。
図8に示されている電動弁10Cでは、上述の第3実施形態において円板状に形成された第1保持部72Bが圧縮ばね8の付勢力によってホルダ本体71Bの天井壁に押し付けられていたのに対し、ホルダ本体71Cの天井壁自体が第1保持部72Cとなっている。
本実施形態の第1保持部72Cは、弁ホルダ7Cにおけるホルダ本体71Cの天井壁であって、その中央にロータ軸3Cの下端部32Cを通す貫通孔が設けられ、ホルダ本体71Cの周壁との間に、圧縮ばね8の上端側が嵌め込まれる窪みが形成されている。そして、この第1保持部72Cと、止め輪711の上面に載置された第2保持部73との間に圧縮ばね8が介装され、その付勢力によって、第2保持部73が止め輪711に押し付けられる。
このような第1保持部72Cによるロータ軸3Cの下端部32Cの保持は上述の第3実施形態と同じであり、下端部32Cに形成された段差状の小径部への押さえ部材35Cの固着によってロータ軸3Cの下端部32Cが第1保持部72Cに保持される。そして、下端部32Cの一部をなす押さえ部材35Cの上面からロータ軸3Cの大径部36Cまでの寸法が第1保持部72Cの貫通孔周辺の厚み寸法よりも大きくなっている。これにより、ロータ軸3Cの下端部32Cと第1保持部72Cとの間に軸線方向D11の遊びが生じることとなっている。また、第1保持部72Cの貫通孔の内径が、ロータ軸3Cにおける下端部32Cの一部である貫通部分の外径よりも大きくなっている。これにより、ロータ軸3Cの下端部32Cと第1保持部72Cとの間に径方向D12の遊びが生じることとなっている。この他、ナット63を介した第2保持部73による弁体6の基端部61の保持構造等は、図3に示されている第1実施形態と同じである。
次に、第5実施形態の電動弁について説明する。
図9は、第5実施形態の電動弁における弁ホルダの内部構造を示す図である。
本実施形態の電動弁10Dにおける弁ホルダ7Dは、駆動側ばね受け7D-1と、弁体側ばね受け7D-2と、を備えている。駆動側ばね受け7D-1は、ロータ軸3の下端部32の一部をなす転がり軸受9を保持するとともに圧縮ばね8Dの一端部(上端部)に当接する部材である。また、弁体側ばね受け7D-2は、弁体6の基端部61を保持するとともに圧縮ばね8Dの他端部(下端部)に当接する部材である。本実施形態では、圧縮ばね8Dが、駆動側ばね受け7D-1と弁体側ばね受け7D-2との間に圧縮状態で介装されることで、弁ホルダ7Dに外装されている。
駆動側ばね受け7D-1は、第1ばね受け部材71Dと、第1ばね受け部材71Dの内周側に設けられて転がり軸受9の外輪92を保持するためのリング部材72Dと、が互いに溶接固定されて一体に構成されている。第1ばね受け部材71Dは、その上端部にて径方向D12の外側に延びて圧縮ばね8Dの一端部に当接する第1外鍔部711Dと、第1外鍔部711Dに連続して軸線方向D11の下方に延びる筒状に形成された第1筒状案内部712Dと、第1筒状案内部712Dの下端部から内方に延びる第1規制部713Dと、を有して形成されている。リング部材72Dは、第1ばね受け部材71Dの上側から第1筒状案内部712Dの内周面に沿って挿入され、第1筒状案内部712Dの段差部712D-1との間に転がり軸受9の外輪92を保持した状態で、第1ばね受け部材71Dの上端縁に対して溶接固定されている。
弁体側ばね受け7D-2は、第2ばね受け部材73Dと、第2ばね受け部材73Dの内周側に設けられる環状のフランジ74Dと、フランジ74Dの内周側に設けられて弁体6の基端部61を保持する接続リング75Dと、が互いに固定されて一体に構成されている。第2ばね受け部材73Dは、その下端部にて径方向D12の外側に延びて圧縮ばね8Dの他端部に当接する第2外鍔部731Dと、第2外鍔部731Dに連続して軸線方向D11の上方に延びる筒状に形成された第2筒状案内部732Dと、を有して形成されている。接続リング75Dは、弁体6の縮径部の外周を囲む下側筒状部751Dと、下側筒状部751Dに連続して上方に延びてナット63Dの外周を囲む上側筒状部752Dと、上側筒状部752Dの上端部から外方に延びる第2規制部753Dと、を有して形成されている。第2ばね受け部材73Dとフランジ74Dとは、互いに挿入されて圧縮ばね8Dの付勢力により係止固定され、フランジ74Dと接続リング75Dとは互いに溶接固定されている。
なお、本実施形態では、フランジ74Dと接続リング75Dの下側筒状部751Dを固定する際、フランジ74Dの上面を下側筒状部751Dの段差部に係止させて固定している。しかしながら、下側筒状部751Dに前述のような段差部を設けずに、下側筒状部751Dの側面形状をフランジ74Dの内径に沿った円筒状として、フランジ74Dの上面が下側筒状部751Dに係止しない形態としてもよい。この場合は、フランジ74Dと接続リング75Dとを溶接固定する際に、フランジ74Dの下側筒状部751Dに対する挿入量の調整により、圧縮ばね8Dの圧縮量を任意に調整可能である。これにより、第1規制部713Dと第2規制部753Dとが係止した状態における圧縮ばね8Dの圧縮荷重、すなわち弁体6に作用する弁閉荷重のばらつきを抑えることができる。
図9には、本実施形態において、ロータ軸3の下端部32に弁ホルダ7Dが、弁ホルダ7D及び弁体6の重量によって吊下がり、弁ホルダ7Dに弁体6が自重によって吊下がった第1状態が示されている。そして、図9に拡大して示されているように、第1筒状案内部712Dの段差部712D-1と転がり軸受9における外輪92の下面との間隙t18が、駆動側ばね受け7D-1によるロータ軸3の下端部32の保持における軸線方向D11の遊びとなる。また、第1筒状案内部712Dの内周面と外輪92の外周面との間隙t19が、駆動側ばね受け7D-1によるロータ軸3の下端部32の保持における径方向D12の遊びとなる。
また、この第1状態では、圧縮ばね8Dの付勢力によって駆動側ばね受け7D-1の第1規制部713Dに、弁体側ばね受け部7D-2の接続リング75Dにおける第2規制部753Dが係止している。そして、弁体6の基端部61に締結されたナット63Dが、接続リング75Dにおける段差部に当接した状態で弁体6が吊下がっている。このとき、接続リング75Dの下面と弁体6の大径部64の上端部との間隙t20が、弁体側ばね受け部7D-2による弁体6の基端部61の保持における軸線方向D11の遊びとなる。また、接続リング75Dの内周面と弁体6の縮径部の外周面との間隙t21が、弁体側ばね受け部7D-2による弁体6の基端部61の保持における径方向D12の遊びとなる。
そして、本実施形態では、駆動側ばね受け7D-1における第1ばね受け部材71Dと、弁体側ばね受け部7D-2における第2ばね受け部材73Dとを組み合わせた部位が、弁ホルダ7Dにおけるホルダ本体76Dに相当する。また、駆動側ばね受け7D-1においてロータ軸3の下端部32の保持に寄与する第1ばね受け部材71Dの上方の転がり軸受9を内包する部位が、弁ホルダ7Dにおいてロータ軸3の下端部32を、回転自在かつ軸線方向D11及び径方向D12に所定の遊びをもって保持する第1保持部77Dに相当する。また、弁体側ばね受け部7D-2において弁体6の基端部61の保持に寄与する第2ばね受け部材73Dの下方の部位、フランジ74D、及び接続リング75Dの組合せ部位が、弁体6の基端部61を、回転自在かつ軸線方向D11及び径方向D12に所定の遊びをもって保持する第2保持部78Dに相当する。本実施形態では、圧縮ばね8Dが、このような第1保持部77Dと第2保持部78Dとの間に圧縮状態で介装されることで、弁ホルダ7Dに外装されている。
以上に説明した第2~第5実施形態の電動弁10A,10B,10C,10Dの何れによっても、上述の第1実施形態の電動弁10と同様に、弁漏れ性能の向上効果が得られることは言うまでもない。
次に、上述の第1~第5実施形態の電動弁10,10A,10B,10C,10Dが共通して適用される冷凍サイクルシステムの一実施形態について説明する。
図10は、一実施形態の冷凍サイクルシステムを示す図である。
この図10において、符号「100」は上述の各実施形態の電動弁10,10A,10B,10C,10Dを用いた膨張弁である。また、「200」は室外ユニットに搭載された室外熱交換器、「300」は室内ユニットに搭載された室内熱交換器、「400」は四方弁を構成する流路切換弁、「500」は圧縮機である。膨張弁100、室外熱交換器200、室内熱交換器300、流路切換弁400、および圧縮機500は、それぞれ導管によって図示のように接続され、ヒートポンプ式の冷凍サイクルシステム100Aを構成している。なお、アキュムレータ、圧力センサ、温度センサ等は図示を省略してある。
冷凍サイクルシステム100Aの流路は、流路切換弁400により冷房運転時の流路と暖房運転時の流路の2通りに切換えられる。冷房運転時には、図に実線の矢印で示したように、圧縮機500で圧縮された冷媒は流路切換弁400から室外熱交換器200に流入される。この室外熱交換器200は凝縮器として機能し、室外熱交換器200から流出された液冷媒は膨張弁100を介して室内熱交換器300側に流され、この室内熱交換器300は蒸発器として機能する。
一方、暖房運転時には、図に破線の矢印で示したように、圧縮機500で圧縮された冷媒は流路切換弁400から室内熱交換器300、膨張弁100、室外熱交換器200、流路切換弁400、そして、圧縮機500の順に冷媒が循環する。室内熱交換器300が凝縮器として機能し、室外熱交換器200が蒸発器として機能する。
膨張弁100は、冷房運転時に室外熱交換器200から流入する液冷媒、または暖房運転時に室内熱交換器300側から流入する液冷媒を、それぞれ減圧膨張し、さらにその冷媒の流量を制御する。冷房運転時には、一次継手管101から二次継手管102へと液冷媒が流れ、暖房運転時には逆向きに二次継手管102から一次継手管101へと液冷媒が流れる。
本実施形態の冷凍サイクルシステム100Aによれば、上述の各実施形態の電動弁10,10A,10B,10C,10Dが膨張弁100として用いられていることから、この膨張弁100における弁漏れ性能を向上させることができる。
尚、以上に説明した実施形態は本発明の代表的な形態を示したに過ぎず、本発明は、これに限定されるものではない。即ち、本発明の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。かかる変形によってもなお本発明の電動弁及び冷凍サイクルシステムの構成を具備する限り、勿論、本発明の範疇に含まれるものである。
例えば、上述した実施形態では、電動弁の一例として、家庭用エアコン等の空気調和機に用いられる電動弁10,10A,10B,10C,10Dが例示されている。しかしながら、電動弁は、家庭用エアコンに限らず、業務用エアコンであってもよいし、空気調和機に限らず、各種の冷凍機等にも適用可能である。
また、上述した実施形態では、ロータ軸を回転駆動する駆動部の一例として、ステッピングモータとしての駆動部4が例示されている。しかしながら、駆動部はこれに限るものではなく、ロータ軸を回転駆動するものであれば、他のモータであってもよく、その具体的な態様を問うものではない。
また、上述した実施形態では、電動弁の一例として、着座の際に第2保持部73,78Dが第1保持部72,72A,72B,72C,77Dに近づく方向に移動する電動弁10,10A,10B,10C,10Dが例示されている。しかしながら、電動弁は、これに限るものではなく、着座の際に第1保持部が第2保持部に近づく方向に移動するものであってもよく、着座の際に第1保持部と第2保持部の両方が互いに近づく方向に移動するものであってもよい。
また、上述した実施形態では、電動弁の一例として、弁本体2に弁体6のガイド部材25が設けられ、弁体6とガイド部材25とのクリアランスが、弁体6と第2保持部73との遊びよりも小さくなった電動弁10,10A,10B,10C,10Dが例示されている。しかしながら、電動弁は、これに限るものではなく、弁本体に弁体のガイド部材を設けないこととしてもよく、ガイド部材を設ける場合であっても、弁体とガイド部材とのクリアランスが、弁体と第2保持部との遊びよりも大きくなるように設定してもよい。ただし、弁本体2に弁体6のガイド部材25を設け、弁体6とガイド部材25とのクリアランスを弁体6と第2保持部73との遊びよりも小さくすることで、弁体の安定した作動を得て、更に弁漏れ性能を一層向上させることができる点は上述した通りである。
また、上述した第1,第2,第5実施形態では、電動弁の一例として、ロータ軸3に転がり軸受9が設けられ、内輪91がロータ軸3に固定され、外輪92と第1保持部72,72A,77Dとの間に遊びが設けられた電動弁10,10A,10Dが例示されている。しかしながら、電動弁は、これに限るものではなく、スラストベアリングや滑り軸受け等を使用して駆動軸の回転を弁体に伝えない様にしてもよい。また、第3,第4実施形態のように、転がり軸受を設けないこととしてもよい。ただし、転がり軸受9を設けることで、弁漏れ性能を一層向上させることができる点も上述した通りである。