図1、本発明の一実施形態であるエスカレータ(乗客コンベア)10の構成を示す斜視図である。図1では、後述する欄干部21の一部を省略して示している。図2は、図1に示すエスカレータ10の構成を模式的に示す図である。図2において、踏段チェーン31を2点鎖線で示している。図3は、図2に示すエスカレータ10における走行路SWの構成を説明するために躯体部分の図示を一部省略して示す模式的に示す図である。
図1~図3に示すように、エスカレータ10は、上階側に設けられた乗り場12と、下階側に設けられた降り場14と、乗り場12および降り場14との間に設けられた走行路SWとを含み、乗り場12から降り場14に向かう搬送方向Aに沿って乗客を搬送する機能を有する。この走行路SWは、複数の踏段32A,32B,32C,・・・(以下、特に区別する必要が無い場合は適宜、踏段「32」と表記)が階段状を呈して走行する斜行区間DL(図3参照)と乗り場12および降り場14に各々隣接し各踏段32が略水平に走行する水平区間HN1,HN2(図3参照)とを含む。
乗り場12及び降り場14は、ほぼ同一の構成を備える。図1に示すように降り場14の踏段32が床面に潜り込む位置には櫛状に構成されたコムプレートPLが取り付けられている。このコムプレートPLには、安全装置(不図示)が取り付けられており、踏段32とコムプレートPLの間に異物が挟まるなどした場合に後述する踏段32を停止させる役割を有する。
また、図1および図2に示すように、上記走行路SWおよび乗り場12および降り場14から構成される乗客通路15の両側には欄干部21,22が各々設けられている。欄干部21および欄干部22は、乗客通路15を挟んで対称形をなしており、同様の構成部材からなる。以下の説明では、欄干部22について主に説明を行うとともに欄干部21については適宜説明を省略する。
欄干部22は、乗客通路15に沿って立設する欄干パネル23と、欄干パネル23を支持する支持部24とを有する。この欄干パネル23は、例えば、複数の板ガラスを列状に並べて構成され透光性を有する。また、欄干パネル23の乗り場12側の端部および降り場14側の端部は、各々円弧状に構成される。また、欄干部22の外周部には、踏段32と同じ向きに同じ速度で循環走行する無端状に構成されたハンドレール(移動手摺)27が移動可能に取り付けられている。支持部24には、乗客通路15の側面を覆うように複数のスカートガード(側板)26-1,26-2,26-3,・・・(以下、特に区別する必要が無い場合にはスカートガード「26」と表記)が乗り場12から降り場14まで並べて取り付けられている。
図1~図3に示すように、スカートガード26には、走行路SWの上階(上流)側から下階(下流)側に向かって予め設定された位置に各々検知部(物体検知部)P1,P2,P3,P4,P5,P6,P7がこの順に設けられている。検知部P1,P7は、各々水平区間HN1,HN2に配置されており、検知部P2~P6は、斜行区間DLに乗り場12側から降り場14側に向かって等間隔に配置される。
各検知部P1~P7は、踏段32に乗って乗り場12から降り場14に向かって移動する乗客や乗客の手荷物などの通過を検知する役割を有する。各検知部P1~P7の構成は同一であり、以下の説明において特に区別する必要が無い場合は適宜、検知部「P」と表記する。
ここで、図1の一部に示す部分拡大図は、図1に示すB方向から見たときの踏段32とスカートガード26の位置関係を示すものである。図1の一部に示す上記部分拡大図に示すように、検知部Pは、例えば、対向配置された投光部PXと受光部PYとを含む透過型光電センサで構成され、踏段32に乗った状態の乗客や荷物などの物体が投光部PXの照射する光を遮る(遮光する)ことにより物体の通過を検知する機能を有する。投光部PXは欄干部21のスカートガード25に穿設された貫通孔H1に取り付けられ、受光部PYは欄干部22のスカートガード26に上記貫通孔H1と対向する位置に穿設された貫通孔H2に取り付けられている。
本実施形態では、エスカレータ10は、斜行区間DLに5つの検知部P2~P6を備える例を挙げているが、搬送方向Aに沿って検知部Pを4つ以下または6つ以上備えるものとしてもよい。
図2の一部に踏段32および検知部P周辺の部分拡大図を示しているが、同部分拡大図においてハッチングを付して示す領域CVは、側面から見たときにスカートガード26に踏段32が重なる領域、換言すると、スカートガード26が踏段32に対向する領域を示すものである。検知部Pは、領域CVの直上方に各々設置するようにしてもよい。また、検知部Pを構成する投光部PX(図1参照)および受光部PY(図1参照)は、領域CVとの間の距離が20cm以内となる位置に設置するのが好ましく、より好ましくは10cm以内に設置するのが好適である。このように踏段32の通過領域である領域CVに近接する位置に検知部Pを設けることで検知精度を向上させることができる。
図2に示すように、無端搬送体30は、踏段チェーン31を介して上述した複数の踏段32を無端状に連結して構成される。また、降り場14の直下方に設けられた下階側機械室14Mには回転自在に支持された踏段スプロケット14Pが設けられ、乗り場12の直下方に設けられた上階側機械室12Mには回転自在に支持された踏段スプロケット12Pが設けられる。両踏段スプロケット12P,14Pには、上述した無端搬送体30の一部を構成する踏段チェーン31が各々巻き掛けられており、踏段チェーン31が後述する従動スプロケット12Qを介して回転駆動されるのに伴い踏段32が走行路SWを乗り場12から降り場14に向かって循環移動するように構成される。
図2に示すように、乗り場12および降り場14の欄干部22の支持部24においてスピーカSP1,SP2(以下、特に区別する必要が無い場合には適宜スピーカ「SP」と表記)が各々内蔵されている。各スピーカSPは、音声案内などを放送する役割を有する。本実施形態では、欄干部22にスピーカSPを内蔵しているが、エスカレータ10の他の部分にスピーカを設けてもよいし、エスカレータ10周辺の建屋の壁面や天井などにスピーカを設置してもよい。
また、上階側機械室12Mには、電動機34が設置されており、電動機34の駆動力は減速機(不図示)を介して出力軸(不図示)に伝達され、出力軸を介して駆動スプロケット34Pが回転駆動される。この駆動スプロケット34Pの回転動力は、ローラーチェーン34Cを介して従動スプロケット12Qに伝達される。従動スプロケット12Qは踏段スプロケット12Pとともにシャフト12Xに取り付けられており、従動スプロケット12Qを回転させることにより踏段スプロケット12Pも連動して回転させることとなる。これにより、上述した踏段チェーン31がガイドレール(不図示)に沿って周回走行し、これに伴い同チェーン31に無端状に各々連結された複数の踏段32が循環走行する。
上記シャフト12Xには、従動スプロケット12Qの回転量を検出する回転検出部36(図5参照)が取り付けられている。この回転検出部36はロータリーエンコーダ(不図示)を含み、シャフト12Xの回転(角)量に応じてパルス信号を後述する測定部43(図5参照)に出力する機能を有する。本実施形態では、回転検出部36を従動スプロケット12Qのシャフト12Xに取り付けているが、電動機34の出力軸(不図示)や、その他、無端搬送体30の駆動と連動して回転する軸などに取り付けるようにしてもよい。
また、図2に含まれる従動スプロケット12Qと駆動スプロケット34P周辺の部分拡大図に示すように、回転検出部36は、上記ロータリーエンコーダに代えて、従動スプロケット12Qの外周に等角度間隔で形成される歯の先端部(歯先)を各々検出する機能を有する近接センサ36Aを用いるものとしてもよい。この場合には、従動スプロケット12Qの回転に伴って近接センサ36Aの検出位置に従動スプロケット12Qの歯先が逐次到来し近接センサ36Aにより検出される。そして、近接センサ36Aの検出信号が後述する測定部43に出力されることで上記ロータリーエンコーダを用いる場合と同様に後述する測定部43において無端搬送体30の搬送速度を算出することが可能となる。
続いて、図5を用いて制御装置40の構成について説明を行う。図5は、制御装置40を中心としたブロック図である。図5に示すように、エスカレータ10は、エスカレータ10の運転を統括的に制御する制御装置40を上階側機械室12M(図2参照)に備える。制御装置40は、各種制御プロブラムが記憶されたROM、RAM、およびHDDなどからなる記憶デバイス(不図示)やCPUなどの演算処理装置(不図示)を備える。そして、制御装置40は、演算処理装置が記憶デバイスから上記制御プログラムを読み出して演算処理を行うことにより無端搬送体30の搬送速度を測定する測定部43や、無端搬送体30における異常発生の有無を判定する異常判定部44と、電動機34の駆動を制御する運転制御部45として機能する。
この測定部43は、上述した回転検出部36から送信されるパルス信号を基に無端搬送体30の搬送速度を測定する機能を有する。また、運転制御部45は、測定部43の測定結果に基づいて運転モードを選択し、選択された運転モードに対応する速度指令信号などの制御信号を電動機34に送信する機能を有する。
異常判定部44は、検知部Pが物体(遮光)を継続的に検知する検知時間Tと無端搬送体30の搬送速度V(すなわち、踏段32の走行速度)との積である算出値U(すなわち、算出値U=検知時間T×搬送速度V)が閾値α以上であるか否かに基づいて異常発生の有無について判定する。
運転制御部45は、通常運転モードを実行するとともに異常判定部44を介して異常が検知された場合に通常運転モードから第1減速運転モードや停止モードに運転モードを切り替える機能を有する。この際、運転制御部45は、異常判定部44を介して検知される異常発生の頻度に基づいて通常運転モードから第1減速運転モードまたは停止モードのいずれかに運転モードを切り替える。
本実施形態において、通常運転モードは毎分30mの設定速度で踏段32を走行させる運転モードであり、第1減速運転モードは毎分10mの設定速度で踏段32を走行させる運転モードであり、停止モードは踏段32を停止させる運転モードである。
また、第1減速運転モードの減速度(すなわち、負の加速度)の方が停止モードの減速度よりも絶対値が小さくなるように設定し減速度合いが緩やかなものとなるようにしてもよい。
なお、本実施形態では、運転制御部45は、無端搬送体30の搬送速度を測定部43より取得しているが、電動機34に送信する速度指令信号などに基づいて無端搬送体30の搬送速度を算出するようにしてもよい。
本実施形態では、上記閾値αは、検知部Pの検知位置を無端搬送体30に載置された状態で移動する物体の長さが、同検知位置を2つの踏段32が通過するときの長さSD(図2参照)に相当する長さとなる値に設定される。これにより、上記SD以上の長さの物体、例えば、2つ以上の踏段32に横たわるように置かれた荷物や、転倒などにより2つ以上の踏段に横たわる状態となっている乗客など、エスカレータ10の正常な利用状況で発生し得ないような長尺の物体について検知部Pを介して検知することが可能となる。
従って、上記SD以上の長さの物体、換言すると、本実施形態では2つ以上の踏段32に横たわる乗客や荷物を検知した場合に異常が発生したものと判断することが可能となる。
また、搬送速度Vと検知時間Tの積である算出値Uを用いることにより無端搬送体30の搬送速度が異なる場合において、いずれの搬送速度の場合においても同じ物体の長さを想定した判定基準で異常検知が可能となる利点もある。
本実施形態では、閾値αを上記長さSDに相当する値としているが、エスカレータ10の使用環境などに応じて上記長さSDよりも短い長さに相当する値を閾値αとしてもよいし、上記長さSDよりも長い長さに相当する値を閾値αとして用いてもよい。
続いて、図4をさらに参照しつつ各検知部Pの配置について説明を行う。図4は、検知部P2~P7の位置関係を模式的に示す図である。なお、図4に示す位置GはコムプレートPL(図1参照)の先端の位置を示すものである。
図4に示すように、斜行区間DL(図3参照)に配置された検知部P2~P6は互いに隣接する検知部P同士の間隔が各々距離Lとなるよう等間隔に配置されている。このため、無端搬送体30を構成する各踏段32が一定速度で各検知部P2~P6の直下方位置を通過するために要する時間長さ(以下、「所要時間」と呼称する)も略同一となる。
また、水平区間HN1(図3参照)に配置されている検知部P1と下流側に隣接する検知部P2の間の間隔は、検知部P1,P2間を上記一定速度で踏段32が移動するのに要する時間が上記所要時間と同じ長さとなるように設定するのが好ましい。これにより、各踏段32が検知部P1,P2における各々の直下方位置の間を上記一定速度で移動するのに要する時間長さが上述した所要時間と略同一となるように設定できる。
同様に、水平区間HN2(図3参照)に配置されている検知部P7と上流側に隣接する検知部P6の間の間隔についても、検知部P6,P7の直下方位置の間を踏段32が上記一定速度で移動するのに要する時間が上記所要時間と略同一となる長さに設定するのが好ましい。これにより、各踏段32が検知部P6,P7における各々の直下方位置の間を上記一定速度で移動するのに要する時間長さが上述した所要時間と略同一となるように設定できる。
続いて、図6を用いて制御装置40における無端搬送体30の異常検知時における運転制御の流れについて説明を行う。図6は、無端搬送体30の異常検知時の制御装置40における運転制御の流れを示すフローチャートである。
図6に示すように、検知部Pが遮光を検知すると(ステップS1:YES)、異常判定部44は検知部Pにおける検知時間Tと無端搬送体30における搬送速度Vの積(すなわち、検知時間T×搬送速度V)である算出値Uを計算し(ステップS2)、算出値Uが閾値α以上であれば異常検知と判断する(ステップS3:YES)。
運転制御部45は、ステップS3において異常を検知した検知部が検知部P7である場合には(ステップS4:YES)、スピーカSPを介して「異常を検知しました大きく減速します、ハンドレールにおつかまり下さい」などのアナウンスを実行するとともに停止モードを実行する(ステップS13,S14)。これにより、検知部P7の直下流側に位置するコムプレートPL(図1参照)に物体が乗り上げたり、或いは、ぶつかったりする前に踏段32をできるだけ減速させることができる。
一方、運転制御部45は、ステップS3において異常を検知した検知部Pが検知部P7以外の検知部、すなわち検知部P1~P6のいずれかである場合には(ステップS4:NO)、スピーカSPを介して「異常を検知しました減速します、ハンドレールにおつかまり下さい」などのアナウンスを実行するとともに第1減速運転モードの実行を開始する(ステップS5,S6)。さらに、運転制御部45は、第1減速運転モードの継続時間である減速時間T2の測定を開始する(ステップS7)。
これにより、踏段32が低速で移動するため異常検知の原因となった荷物などの物体を踏段32上から乗客などが取り除きやすい状態となる。また、異常検知の原因となった物体が、例えば、踏段32上に倒れ込んだ乗客である場合においても踏段32の移動速度が通常の運転速度よりも低速となることで起き上がりやすく、また、周辺に居合わせた乗客などが助け起こしたりしやすくできるという利点もある。
そして、運転制御部45は、第1減速運転モードの実行開始後に検知部Pを介して遮光が検知されない場合には(ステップS8:NO)、減速時間T2が予め設定された時間W(一例として10分)以上の時間の長さとなっているか否かを判断する(ステップS16)。さらに、運転制御部45は、検知部Pを介して遮光が検知される場合でも(ステップS8:YES)、検知される遮光の検知時間Tと無端搬送体30における搬送速度Vの積である算出値Uを計算し(ステップS9)、異常判定部43を介して算出値Uが閾値α未満であると判定される場合には(ステップS10:NO)、減速時間T2が予め設定された時間W以上の時間の長さとなっているか否かを判断する(ステップS16)。
運転制御部45は、減速時間T2が予め設定された時間W以上の長さとなっている場合には(ステップS16:YES)、減速時間T2を0にリセットする(ステップS17)。さらに、運転制御部45は、スピーカSPを介して「エスカレータが通常速度まで加速します。お気を付けください。」などのアナウンスを実行した後、通常運転モードを実行する(ステップS18,S19)。これにより、異常検知がなされた場合でも比較的小規模な異常、例えば、踏段32の上に荷物が放置されている、或いは、乗客が単独で転倒しているなどの場合にはある程度の時間だけ減速運転を実行し、減速運転中に異常検知が再度なされなければ通常運転に復帰することとなる。一方、ステップS16において、減速時間T2が予め設定された時間W未満の長さである場合には(ステップS16:NO)、ステップS8の処理に進む。
また、ステップS6における第1減速運転モードの実行開始後に検知部Pを介して遮光が検出され(ステップS8:YES)、異常判定部44を介して検知時間Tおよび搬送速度Vの積である算出値Uを算出し(ステップS9)、同算出値Uが閾値α以上となる場合には異常検知と再度判断する(ステップS10:YES)。
ここで、ステップS10において異常検知した検知部が検知部P7である場合には(ステップS11:YES)、運転制御部45はスピーカSPを介して「異常を検知しました大きく減速します、ハンドレールにおつかまり下さい」などのアナウンスを実行するとともに停止モードを実行して一連の処理を終了する(ステップS13,S14)。このようにコムプレートPLに近い位置に配置された検知部P7を介して再度異常検知された場合には速やかに踏段32を停止させることができる。
また、運転制御部45は、ステップS10において異常検知した検知部が検知部P7以外の検知部である場合、すなわち、検知部P1~P6である場合には(ステップS11:NO)、基準時間T1が経過しているか否かを判断する(ステップS12)。
ここで、図7(a)~図7(c)を用いて基準時間T1が経過している否かの判定方法について説明を行う。図7(a)は検知部Pの遮光検知に基づいて異常検知との判定を行う場合の検知状態の一例を示すタイミングチャートである。これに対して、図7(b)は検知部Pの遮光検知に基づいて異常検知との判定が行われない平常時の場合における検知状態の一例を示すタイミングチャートである。図7(c)は、図7(a)に示す異常検知との判定がなされた後に検知部Pが遮光を再度検知したことに基づいて異常検知と判定したときの検知状態の一例を示すタイミングチャートである。図7(a)~図7(c)において各々縦軸に示す「ON」は検知部Pが遮光を検知している状態、「OFF」は検知部Pが遮光を検知していない状態を示し、遮光を検知している領域にハッチングを付して示している。なお、図7(c)に示すタイミングTP1およびタイミングTP2において遮光を検知している検知部Pは異なる検知部であってもよいし、同じ検知部であってもよい。
図7(a)において、異常判定部44を介して算出値Uが閾値α以上であると判断されたタイミングをタイミングTP1と表記する。図7(c)において、異常判定部44を介して算出値Uが閾値α以上であると上記タイミングTP1の後に再度判定されたタイミングをタイミングTP2と表記し、検知部Pが遮光を再検知した最初のタイミングをタイミングTP3と表記する。
図7(a)に示すように、異常判定部44は、検知部Pが遮光を検知している状態において算出値Uが閾値α以上となったタイミングTP1で異常発生と判定する。従って、図7(a)に示すように遮光を継続的に検知している状態がタイミングTP1を超えて継続している場合には遮光検知状態の継続中に異常検知との判定が上述したステップS3(図6参照)の処理においてなされることとなる。
一方、図7(b)に示すように、異常が発生していない平常時の場合においても例えば踏段32に乗りこんでいる乗客が通過する際に検知部Pを介して遮光(物体)が検知されるが、平常時にはタイミングTP1に至る前に乗客や荷物などの物体の通過が完了するため異常検知との判定がなされることがないまま検知部Pが遮光を検知していない状態に変化する。このため、異常判定部44を介して異常検知との判定がなされることはない。
また、図7(c)に示すように、上記タイミングTP1の後に検知部Pが再び遮光を検知した場合において、算出値Uが閾値α以上となるタイミングTP2を経過しても遮光検知の状態が継続していれば、異常判定部44を介して異常検知との判定がステップS10(図6参照)においてなされることとなる。
そして、本実施形態において、運転制御部45は、上記タイミングTP1とタイミングTP2の差分時間TLが基準時間T1以上の時間の長さであるか、或いは基準時間T1未満の時間の長さであるかに基づいて基準時間T1の経過後であるか(ステップS12:YES)、或いは基準時間T1の経過前であるか(ステップS12:NO)を判断する。
ここで、基準時間T1は、無端搬送体30を構成する踏段32上における乗客や荷物などの物体が一の検知部Pによって検知されることでステップS3において異常判定部44を介して異常検知と判定されるタイミング(すなわち、上述したタイミングTP1)から同物体が踏段32に対して相対的に移動することなく踏段32によって下流側に搬送されたと仮定した場合に下流側に隣接する他の検知部Pにより再度検知され異常判定されるまでに要する時間の長さに設定される。
換言すると、基準時間T1は、互いに隣接する検知部P同士の距離Lだけ踏段32が移動するために要する時間の長さに相当する。なお、運転制御部45は、測定部43から取得される無端搬送体30における踏段32の搬送速度の実測値を用いて基準時間T1を算出して用いてもよい。或いは、運転制御部45は、第1減速運転モード実行時の無端搬送体30における踏段32の搬送速度(本実施形態では毎分10m)を用いて基準時間T1を簡易的に算出してもよい。
ここで、上記基準時間T1の経過前に異常検知との判定(以下、単に「異常判定」と適宜表記)が再度なされた場合において、仮に同一の物体が複数の検知部Pによって各々検知されて異常判定が複数回されたものであるとすると1回目の異常判定と2回目の異常判定の間に踏段32上を同物体が能動的に移動する必要が生じる。しかしながら、通常の使用状況においてそのような状況は起こりにくいと考えられる。
一方、上記基準時間T1の経過後に異常検知との判定が再度なされた場合には上述のように異なる物体に起因した異常判定であるものの他、同一の物体が無端搬送体30によって搬送されることで再度異常判定がなされたものも含まれることとなる。
従って、基準時間T1経過前における再度の異常判定の場合には、少なくとも異なる物体に起因する異常判定であると推定することができる。この結果、異常判定のタイミングに基づいて発生した異常の規模が比較的小規模なもの(例えば、踏段32の上に放置された荷物や、乗客の単独転倒)か、比較的大規模なもの(例えば、複数の乗客の転倒)かが判別可能となる。
図6に示すように、上述したステップS12において、運転制御部45は、ステップS10における異常検知が基準時間T1の経過前であると判定した場合には(ステップS12:NO)、スピーカSPを介して「異常を検知しました大きく減速します、ハンドレールにおつかまり下さい」などのアナウンスを実行するとともに停止モードを実行し一連の処理を終了する(ステップS13,S14)。
上記構成により検知部P1~P6の物体検知に基づいて異常検知した場合には減速運転を実行しつつ、さらに、基準時間T1の経過前に再度異常検知した場合には無端搬送体30を停止させることができる。これにより、比較的小規模な異常が発生している場合には減速運転を実施しつつ比較的大規模な異常が発生している場合には踏段32を速やかに停止させることができる。
一方、上述したステップS12においてステップS10における異常検知が基準時間T1の経過後であると判定された場合には(ステップS12:YES)、運転制御部45は減速時間T2を0にリセットし(ステップS15)、上述したステップS16の処理に進む。これにより、無端搬送体30における減速運転の運転時間を延長される。
上記第1実施形態では、ステップS12(図6参照)の処理において、運転制御部45は基準時間T1を用いて停止モードの実行可否を判断しているが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、基準時間T1の代わりに基準時間T1よりも短い時間の長さに設定された基準時間TMを用いてもよい。
第1実施形態のエスカレータ10によれば、一の検知部P(検知部P1~P5のいずれか1つ)による物体検知に基づいて異常検知との判定がなされた場合に通常運転時よりも無端搬送体30における踏段32の搬送速度を低速としつつ、上記判定がなされてから一の検知部Pの搬送方向Aにおける下流側に隣接する他の検知部P(検知部P2~P6のいずれか1つ)によって一の検知部Pによって検知された物体が再度検知され異常が発生していると判定されるまでに要する時間である基準時間T1の経過前に異常発生との判定がなされた場合には無端搬送体30を停止させることができる。
このため、異常の発生頻度が比較的低い場合には無端搬送体30を低速運転としつつ、異常の発生頻度が比較的高い場合は無端搬送体30を停止させることが可能となる。
すなわち、無端搬送体30上で発生する異常の発生頻度(換言すると、発生間隔)に基づいて発生した異常の規模を判別し、異常の規模に応じて無端搬送体30の運転状態を変更することが可能となる。
上記第1実施形態では、各検知部P同士の間隔が等間隔、すなわち、距離L(図4参照)となるように配置する例を挙げて説明しているが、本発明はこれに限定されるものではなく、各検知部P同士の間隔が異なるものであってもよい。但し、この場合には、互いに隣接する各検知部P同士の間隔も個々に異なるため、運転制御部45は隣接する各検知部P同士の間隔に基づいて基準時間を各々設定して上述した基準時間T1の代わりに用いるのが好ましい。より具体的には、上述したステップS12(図6参照)において異常を検知した検知部Pに各々対応する基準時間を上述した基準時間T1の代わりに用いて同基準時間の経過前であるか経過後であるのかを判断することなどが考えられる。
上記第1実施形態では、運転制御部45は、第1減速運転モードの実行中に再度異常判定部44を介して異常検知がなされた場合にはステップS14(図6参照)において停止モードを実行する例を挙げて説明している。しかしながら、本発明は、これに限定されるものではない。例えば、運転制御部45は、第1減速運転モードの実行開始後において基準時間T1の経過前に再度異常判定部44を介して異常検知がなされた場合には第1減速運転モードよりもさらに低速で無端搬送体30を走行させる第2減速運転モードを停止モードの代りに実行するようにしてもよい。この場合の第2実施形態について図8を用いて説明を行う。
以下の第2実施形態に係る説明において、上記第1実施形態と構成の共通する部分については適宜同一の符号を付して示すとともに構成の異なる部分についてのみ説明を行う。第2実施形態において第2減速運転モードは一例として毎分1mの設定速度で踏段32を走行させる運転モードである。
図8は、第2実施形態に係る制御装置40における無端搬送体30の異常検知時における運転制御の流れを示すフローチャートである。以下の説明において、上記第1実施形態に係る制御装置40における制御処理の流れと同一の部分については適宜説明を省略しつつ同一の符号を付して示すとともに構成の異なる部分についてのみ主に説明を行うものとする。
図8に示すように、検知部Pが遮光を検知すると(ステップS21:YES)、異常判定部44は検知部Pにおける検知時間Tと無端搬送体30における搬送速度Vの積(すなわち、検知時間T×搬送速度V)である算出値Uを計算し(ステップS22)、算出値Uが閾値α以上であれば異常検知と判断する(ステップS23:YES)。
運転制御部45は、ステップS23において異常を検知した検知部が検知部P7である場合には(ステップS24:YES)、「異常を検知しました大きく減速します、ハンドレールにおつかまり下さい」などのアナウンスを実行するとともに停止モードを実行して一連の処理を終了する(ステップS39,S40)。
一方、運転制御部45は、ステップS24において異常を検知した検知部が検知部P7以外の検知部、すなわち検知部P1~P6のいずれかである場合には(ステップS24:NO)、ステップS25の処理に進む。そして、運転制御部45は、「異常を検知したため減速します、ハンドレールにおつかまり下さい」などのアナウンスを実行し(ステップS25)、その後、第1減速運転モードの実行を開始する(ステップS26)。そして、運転制御部45は、第1減速運転モードおよび第2減速運転モードを含む減速運転の継続時間である減速時間T3の測定を開始する(ステップS27)。
続いて、運転制御部45は、第1減速運転モードの実行中に異常判定部44を介して異常検知されない状態が予め設定された時間Wだけ継続したか否かを判断する(ステップS35,ステップS28~S30)。具体的には、検知部Pを介して遮光が検知されない状態や(ステップS28:NO)、検知部Pを介して検知される遮光の検知時間Tと無端搬送体30における搬送速度Vの積である算出値Uが閾値α未満である状態(ステップS29,ステップS30:NO)の継続時間に相当する減速時間T3が予め設定された時間W以上の時間の長さとなっているか否かを判断する(ステップS35)。
運転制御部45は、減速時間T3が予め設定された時間W以上継続していると判断した場合には(ステップS35:YES)、減速時間T3を0にリセットする(ステップS36)。さらに、運転制御部45は、スピーカSPを介して「エスカレータが通常速度まで加速します。お気を付けください。」などのアナウンスを実行後、通常運転モードを実行する(ステップS37,S38)。
一方、運転制御部45は、減速時間T3の長さが予め設定された時間W未満である場合には(ステップS35:NO)、ステップS28の処理に進む。
また、第1減速運転モードの実行開始から減速時間T3が経過する前に(ステップS35:NO)、検知部Pを介して再度遮光検知された場合には異常判定部44は算出値Uを算出し、算出値Uが閾値α以上であれば異常検知と判断する(ステップS28:YES,ステップS29,ステップS30:YES)。
次に、運転制御部45は、遮光を再検知した検知部Pが検知部P7以外の検知部P1~P6であり、且つ、基準時間T1の経過前である場合には(ステップS31:NO,ステップS32:NO)、第2減速運転モードの実行を開始する(ステップS33)。そして、運転制御部45は、減速時間T3を0にリセットする(ステップS34)。これにより、第1減速運転モードから第2減速運転モードに運転モードを切り替えて実行するとともに減速運転の実行時間が延長される。そして、運転制御部45は、上述したステップS35の処理に進む。
このように、基準時間T1の経過前に異常発生との判定が再度なされた場合には無端搬送体30における踏段32の移動速度をさらに低速とすることができる。
第2実施形態のエスカレータ10によれば、一の検知部P(検知部P1~P5のいずれか1つ)による物体検知に基づいて異常発生との判定がなされた場合には通常運転時よりも無端搬送体30の搬送速度を低速としつつ上記判定がなされてから一の検知部Pの搬送方向Aにおける下流側に隣接する他の検知部P(検知部P2~P6のいずれか1つ)によって一の検知部Pによって検知された物体が再度検知され異常が発生していると判定されるまでに要する時間の経過前に異常が発生していると判定された場合には無端搬送体30をさらに低速で移動(走行)させることができる。
このため、異常の発生頻度が比較的低い場合には無端搬送体30を低速運転としつつ、異常の発生頻度が比較的高い場合は無端搬送体30をさらに低速で運転させることが可能となる。
すなわち、無端搬送体30上で発生する異常の発生頻度(換言すると、発生間隔)に基づいて異常の発生規模を判別し、異常の発生規模に応じて無端搬送体30の運転状態を変更することが可能となる。
第2実施形態では、ステップS32において基準時間T1の経過前である場合には(ステップS32:NO)、ステップS33において第2減速運転モードを運転制御部45が実行する例を挙げて説明している。このため、ステップS32において基準時間T1の経過前であるとの判定がなされたときに既に第2減速運転モードが実行されている場合には第2減速運転モードが継続されることとなる。しかしながら、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、ステップS32において基準時間T1の経過前であるとの判定がなされた場合において(ステップS32:NO)、既に第2減速運転モードが実行されている場合には運転制御部45は実行中の第2減速運転モードから停止モードに運転モードを切り替えるようにしてもよい。
また、第2実施形態では、ステップS33において第2減速運転モードを運転制御部45が実行するときにスピーカSPを介して乗客に減速運転を行う旨のアナウンスを行うようにしてもよい。
また、上記第1および第2実施形態では、エスカレータ10における搬送方向Aが上階側から下階側に向かう方向である場合を例に挙げて説明しているが、搬送方向Aを下階側から上階側に向かう方向としてもよい。
上記実施形態では、乗客コンベアの一例としてエスカレータ10を例に挙げて説明しているが、動く歩道に本発明を適用してもよい。
本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲で当業者の知識に基づいて種々なる改良、修正、又は変形を加えた態様でも実施できる。また、同一の作用又は効果が生じる範囲内で、何れかの発明特定事項を他の技術に置換した形態で実施しても良い。