JP7442882B1 - 電気化学素子用セパレータ及び電気化学素子用セパレータの製造方法 - Google Patents

電気化学素子用セパレータ及び電気化学素子用セパレータの製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】毛羽立ちの発生が無く、巻回性に優れ、電解液や導電性高分子溶液の浸透性と保持性のバランスが良く、長期使用による特性劣化の程度が小さい電気化学素子を実現する電気化学素子用セパレータ及びその製造方法を提供することである。【解決手段】湿式不織布を構成する全繊維に対して、フィブリル化アラミド繊維15質量%以上、55質量%以下、フィブリル化セルロース繊維5質量%以上、15質量%以下、合成主体繊維10質量%以上、50質量%以下、芯鞘型熱融着性繊維25質量%以上、40質量%以下含有し、厚さ30μm以上、60μm以下、平均細孔径2.6μm以上、25.0μm以下、縦方向の引張強度が740N/m以上、縦方向と横方向の引張強度の比が3.00以上、10.0以下である湿式不織布からなることを特徴とする電気化学素子用セパレータ。【選択図】なし

Description

本発明は、電気化学素子用セパレータ及び電気化学素子用セパレータの製造方法に関するものである。
リチウムイオン電池、電気二重層キャパシタ、導電性高分子アルミ固体電解コンデンサ、導電性高分子ハイブリッドアルミ電解コンデンサなどの電気化学素子の内部抵抗や等価直列抵抗を低くするためには、厚みが薄く、且つ低密度なセパレータが求められる。近年、導電性高分子アルミ固体電解コンデンサなどは自動車電装機器に搭載されるようになっている。自動車電装機器に搭載される固体電解コンデンサは、最高使用温度85~150℃程度の高温環境で長時間使用されるため、耐熱性に優れる電気化学素子用セパレータが求められる。こうした要求に応える電気化学素子用セパレータとしては、フィブリル化耐熱性繊維、フィブリル化セルロース、非フィブリル化繊維を含有する湿式不織布からなる電気化学素子用セパレータや固体電解コンデンサ用セパレータ(例えば、特許文献1~6参照)が開示されている。
特許文献1~6の電気化学素子用セパレータは、厚みを薄く、且つ低密度に作製する際に抄紙条件によっては、抄紙網ワイヤーマークが強く付く場合があった。抄紙網ワイヤーマークが強く付いた状態の湿式不織布には大きめの穴が規則的に形成されており、且つフィブリル化セルロースやフィブリル化耐熱性繊維を主体とする微細繊維群が抄紙網の網目の位置に集中的に堆積して偏在している。この微細繊維群の領域は電解液の浸透性が不十分であり、電気化学素子の内部抵抗が高くなる問題があった。目視で視認できる100μm前後の大きさの穴が多数ある場合は、リチウムイオン電池や電気二重層キャパシタなどの内部短絡率が高くなる問題、導電性高分子溶液などの保持性が悪く、導電性高分子アルミ固体電解コンデンサや導電性高分子ハイブリッドアルミ固体電解コンデンサの等価直列抵抗が高くなる場合や漏れ電流が大きくなる場合や特性劣化が早まる場合があった。それゆえ、湿式不織布を構成する微細繊維群の偏在を改善し、大きな穴の形成を抑制することにより、電気化学素子の諸特性を改善できる余地が残されていた。
特許文献7には、固体電解コンデンサ又はハイブリッド電解コンデンサ用セパレータとして合成樹脂繊維を含有し、空隙率が65~85%、平均孔径が0.5~25.0μm、クラークこわさが1~10cm/100であることを特徴とするものが開示されている。このクラークこわさの範囲に相当する試験片の臨界長さは1cm以上、2.2cm未満であり非常にやわらかいことを意味し、実質的に非フィブリル化合成繊維を含有しないセパレータである。また、合成樹脂からなるフィブリル化繊維の含有量が70~100質量%と多いため耐摩耗性が悪く、フィブリル化繊維が毛羽立ちやすい問題、スリット加工の際にフィブリル化繊維が紙粉となって脱落してスリット加工作業に支障を来す問題があった。
特許文献8には、構成するシート層の少なくとも1層の繊維の配向性の比が2.0以下である電解コンデンサセパレータが開示されている。これは従来例である繊維径13μmのポリエステル繊維と繊維径11μmの未延伸ポリエステル繊維からなる電解コンデンサセパレータの横方向の導電性高分子分散液の吸液度が2mm/10分と乏しいため、少なくとも1層の繊維シートの繊維配向性を2.0以下に調節して吸液度を8mm/10分以上に改善することを目的としたものである。
一般的に導電性高分子など高分子物質を溶解又は分散させた溶液は粘度が高いため、自由な状態のセパレータ単体で吸い上げることは難しく、セパレータの種類や繊維配向性によらず10分間で0mmから数mm程度しか吸い上がらない傾向にある。導電性高分子アルミ固体電解コンデンサの製造工程においては、アルミ電極箔とセパレータを重ねて素子巻きにした状態で導電性高分子溶液に浸けて導電性高分子溶液を素子巻き内部に吸い上げる方法が採られる。素子巻きを導電性高分子溶液に浸けることによりアルミ電極箔とセパレータの界面において導電性高分子溶液が吸い上がるのである。しかし、繊維径10μm超の太い繊維を主体とするセパレータは、繊維が横向きに揃ってしまうと隣合う繊維間の空間が広くなりすぎて、液が吸い上がらなくなるため、素子巻きの状態であっても横方向の吸液性が乏しくなりやすい。一方、特許文献1~6のようなフィブリル化繊維を主体とするセパレータは、繊維間の空間にフィブリル化繊維や細い繊維がランダムな方向に存在するため繊維の配向性に関係なく、素子巻きでの横方向の吸液性は優れている。
特許文献8に開示されている実施例にあるように、電解コンデンサセパレータが非フィブリル化合繊繊維のみからなる場合は、非フィブリル化合成繊維の繊維径が太いが故に該繊維自体が抵抗成分となり、電解コンデンサの等価直列抵抗が高くなる問題と特性劣化が早い問題があった。電解コンデンサ用セパレータ中の麻パルプなどのセルロース繊維の含有量が多い場合は、導電性高分子を含浸した際にセルロース繊維同士の結合が弱くなりセパレータが解れるため、その後の乾燥による収縮が大きくなり、セパレータに亀裂が入るなどして素子不良率が高くなる問題や、導電性高分子アルミ固体電解コンデンサの等価直列抵抗や静電容量などの特性が安定しない場合やコンデンサ個体間のばらつきが大きくなりやすい問題があった。
特許文献9には、融点又は炭化温度が300℃以上の樹脂からなるフィブリル化耐熱性繊維が非繊維状態の熱可塑性樹脂により固定された湿式不織布からなり、前記湿式不織布は円網-短網-円網により三層漉きされた湿式繊維ウェブ又は円網-長網-円網により三層漉きされた湿式繊維ウェブに由来する電解コンデンサ用セパレータが開示されている。このセパレータは、フィブリル化セルロース繊維及び非フィブリル化合成繊維を含まないため、耐摩耗性が悪くフィブリル化耐熱性繊維の毛羽立ちが生じる問題、スリット加工時にフィブリル化耐熱性繊維が紙粉となって脱落してスリット加工作業に支障を来す問題があった。フィブリル化耐熱性繊維を非繊維状態の熱可塑性樹脂で固定する熱処理方法は、実施例によると490℃に設定した赤外線ヒーターを上下に12基ずつ配置し、その間に湿式不織布を低速度で通過させると同時に260℃の熱風を吹き付けるものであるが、赤外線ヒーターの温度、赤外線ヒーターの照射部と湿式不織布間の距離、隣り合う赤外線ヒーター間の距離、赤外線ヒーターの基数、湿式不織布の搬送速度、熱風の温度、熱風の風量及び風速、熱風を当てる位置や方向性、湿式不織布の張力など多くの設定条件を調節しなければならない。例えば、隣り合う赤外線ヒーターが遠すぎると熱可塑性樹脂繊維の溶融が不完全になり、近すぎると溶融したまま固定せず湿式不織布が破断すると考えられ、熱風により湿式不織布のばたつきが生じ、熱可塑性樹脂の溶融状態に斑ができることが想定され、これら設定条件のバランスを取ることが非常に難しい熱処理方法といえる。
特許文献10及び11には、150℃~250℃で熱処理されてなる電気化学素子用セパレータが開示されている。具体的には、加熱されたロールに湿式不織布の片面または両面を接触させるもので、片面5秒以上で両面接触させることが好ましいと明記されている。特許文献10及び11の実施例で最も速い処理速度は20m/分である。このとき、湿式不織布がロールに接触する長さを仮にロール円周の半分とした場合、不織布の片面当たりの接触時間は5.6秒で、これが最も短い接触時間となる。片面当たり5秒以上接触させるためには、熱処理装置が大掛かりなものとなり、湿式不織布のロスが多くなる問題があった。設備上、巻出し張力を適切な張力で一定に制御できない場合は、熱処理作業が進行して巻出し径が小さくなるにつれ、巻出し張力が小さくなり、熱処理効果が弱くなるため、湿式不織布の流れ方向で引張強度が低下するなど品質を一定以上に維持できない問題があった。
国際公開第2005/101432号 特開2017-174928号公報 特開2020-053425号公報 特開2020-167386号公報 特開2022-141392号公報 特開2022-143093号公報 特開2019-176073号公報 特開2013-197297号公報 特開2008-283085号公報 特開2003-59766号公報 国際公開第2001/093350号
解決しようとする課題は、毛羽立ちが無く、巻回性に優れ、電解液や導電性高分子溶液の浸透性と保持性のバランスが良く、長期使用による特性劣化が起こりにくい電気化学素子を実現できる電気化学素子用セパレータ及び電気化学素子用セパレータの製造方法を提供することである。
上記課題を解決する電気化学素子用セパレータは、湿式不織布を構成する全繊維に対して、フィブリル化アラミド繊維15質量%以上、55質量%以下、フィブリル化セルロース繊維5質量%以上、15質量%以下、合成主体繊維10質量%以上、50質量%以下、芯鞘型熱融着性繊維25質量%以上、40質量%以下含有し、厚さ30μm以上、60μm以下、平均細孔径2.6μm以上、25.0μm以下、縦方向の引張強度が740N/m以上、縦方向と横方向の引張強度の比が3.00以上、10.0以下である湿式不織布からなる。これにより、表面の毛羽立ちが無く、巻回性に優れ、電解液や導電性高分子溶液の浸透性と保持性のバランスが良くなる。
また、電気化学素子が、導電性高分子アルミ固体電解コンデンサまたは導電性高分子ハイブリッドアルミ電解コンデンサである。
また、湿式不織布が、ワイヤー径0.045mm以上、0.140mm以下、目開き0.091mm以上、0.174mm以下、目開き面積0.008mm以上、0.030mm以下である90メッシュ以上、180メッシュ以下の抄紙網を具備してなる円網抄紙機を用いて抄紙されてなる。
さらに、湿式不織布を抄紙後に220℃以上、260℃以下に加熱されたヒートロールまたはヒートパイプに接触させて熱処理する熱処理工程を含み、ヒートロールまたはヒートパイプがフッ素樹脂加工されてなり、巻出し張力を15N以上、40N以下の範囲で一定にし、ヒートロールまたはヒートパイプへの湿式不織布の片面当たりの接触時間を0.3秒以上、1.6秒未満とする。
本発明によれば、フィブリル化アラミド繊維を主体とする微細繊維群が抄紙網の網目の位置に集中的に偏在せず広く散在し、大きな穴の形成が抑制され、表面の毛羽立ちが無く、巻回性に優れ、電解液や導電性高分子溶液の浸透性と保持性のバランスが良い電気化学素子用セパレータが得られ、該セパレータを具備することにより、長期使用による特性劣化の程度が小さい電気化学素子を実現することができる。
以下、本発明を具体化した電気化学素子用セパレータ及び電気化学素子用セパレータの製造方法の一実施形態を説明する。本発明における電気化学素子とは、リチウムイオン電池、電気二重層キャパシタ、導電性高分子アルミ固体電解コンデンサ、導電性高分子ハイブリッドアルミ電解コンデンサなどを指す。ここでいう導電性高分子アルミ固体電解コンデンサとは、固体電解質として導電性高分子を用いるアルミ固体電解コンデンサを指す。導電性高分子としては、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリアニリン、ポリアセチレン、これらの誘導体が挙げられる。これらの中でもポリチオフェンが好ましく、特にポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)、所謂PEDOTと表記されるものが好ましい。さらにはポリ(4-スチレンスルホン酸)をドーパントとして含むポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)、所謂PEDOT/PSSと表記されるものが好ましい。ドーパントとしては、トルエンスルホン酸、アルキルベンゼンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸、ポリビニルスルホン酸、ポリスチレンスルホン酸、ポリアリルスルホン酸、ポリアクリルスルホン酸、ポリメタクリルスルホン酸、ポリイソプレンスルホン酸、ポリアクリル酸なども用いられるが、これらに限定されるものではない。溶媒としては、水、メタノール、エタノール、アセトン、ペンタン、テトラヒドロフラン、ギ酸エチルなどが挙げられる。本発明における導電性高分子溶液とは、導電性高分子のモノマー液、導電性高分子モノマーと酸化剤の混合溶液、導電性高分子とドーパントを混合分散させた溶液の何れをも指す。
本発明における導電性高分子ハイブリッドアルミ電解コンデンサは、導電性高分子からなる固体電解質と電解液または機能性液体を併用したアルミ電解コンデンサを指す。電解液に用いられる溶媒としては、ポリエチレングリコール、γ-ブチロラクトン、スルホラン、3-メチルスルホラン、2,4-ジメチルスルホラン、ジメチルホルムアミドなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。電解液に添加される添加剤としては、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、マレイン酸、アジピン酸、安息香酸、マロン酸、硼酸、リン酸、亜リン酸、次亜リン酸、リン酸エステル、炭酸、珪酸などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。電解液の電解質としては、アンモニウム塩、四級アンモニウム塩、四級化アミジニウム塩、アミン塩などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。機能性液体は電解液とは異なるもので、水溶性化合物を溶解させてなる液体を指す。具体的には、ポリアルキレンオキサイド、エチレングリコール、ジエチレングリコール、水溶性シリコーン、ポリエーテル、ジグリセリンなどを水に溶解させてなる水溶液が挙げられ、水溶性化合物は1種類だけでも良く、2種類以上混合しても良い。
ここで、本発明の電気化学素子用セパレータを単に「セパレータ」と表記する場合がある。この場合、湿式不織布を構成する全繊維に対して、フィブリル化アラミド繊維15質量%以上、55質量%以下、フィブリル化セルロース繊維5質量%以上、15質量%以下、合成主体繊維10質量%以上、50質量%以下、芯鞘型熱融着性繊維25質量%以上、40質量%以下含有し、厚さ30μm以上、60μm以下、平均細孔径2.6μm以上、25.0μm以下、縦方向の引張強度が740N/m以上、縦方向と横方向の引張強度の比が3.00以上、10.0以下である湿式不織布からなるセパレータであることを意味する。
本発明におけるフィブリル化アラミド繊維とは、少なくとも一部が繊維径1μm以下にフィブリル化されたアラミド繊維を意味する。アラミド繊維の中でも耐熱性や繊維強度に優れることからパラアラミド繊維が好ましい。フィブリル化アラミド繊維の平均繊維長は0.3mm以上、1.2mm以下が好ましい。平均繊維長が0.3mm未満だとセパレータから脱落しやすくなる場合がある。平均繊維長が1.2mmより長いと繊維同士の絡みが生じて電気化学素子用セパレータの地合いが不均一になる場合がある。試料濃度0.3質量%におけるフィブリル化アラミド繊維の変法濾水度は50ml以上、180ml以下が好ましい。変法濾水度が50ml未満では、フィブリル化アラミド繊維が微細すぎて、繊維スラリーの濾水性が著しく悪くなり、抄紙性に支障を来す場合がある。変法濾水度が180ml超では、フィブリルの程度が不十分で電気化学素子用セパレータの細孔径を十分に小さくできない場合がある。変法濾水度は、JISP8121-2:2012に規定されているカナダ標準濾水度の測定において、標準ふるい板の代わりに線径0.140mm、目開き0.178mmの80メッシュ金網を用いて測定するものである。変法濾水度を用いる理由は、フィブリル化アラミド繊維が標準ふるい板をすり抜けてしまい、フィブリル化の程度の差を明確にしにくいからである。
本発明におけるフィブリル化アラミド繊維の平均繊維巾は10μm以上、40μm以下が好ましく、平均フィブリル周囲長比は70%以上、85%以下が好ましい。平均繊維巾が10μm未満では、セパレータが緻密になり、細孔径が小さくなりすぎて電気化学素子の内部抵抗や等価直列抵抗が高くなる場合がある。40μmより太いと、電気化学素子用セパレータの緻密性が不十分になり、細孔径が大きくなりすぎて電気化学素子の内部短絡率が高くなる場合がある。平均フィブリル周囲長比が70%未満では、フィブリル化の程度が不十分でセパレータの緻密性が不十分になり、電気化学素子の内部短絡率が高くなる場合がある。フィブリル化周囲長比が85%を超えると、フィブリル化の程度が過剰となり、セパレータをスリット加工する際にフィブリル化アラミド繊維が紙粉となって脱落し、スリット後の巻き取りに混入しやすくなる場合がある。
本発明におけるフィブリル化セルロース繊維とは、少なくとも一部が繊維径1μm以下にフィブリル化されたセルロース繊維を意味する。セルロース繊維としては、コットンリント、コットンリンター、麻、エスパルトなどの非木材繊維、松、杉、檜、ブナ、欅、桜、ユーカリなどの木材繊維、木材パルプなどの天然セルロース、溶剤紡糸セルロースなどが挙げられる。フィブリル化セルロース繊維の平均繊維長は0.200mm以上、0.800mm以下が好ましい。平均繊維長が0.200mm未満だと抄紙網から抜けやすく、0.800mmより長いとフィブリル化セルロース繊維同士や他の繊維と団子状に絡んでダマになる場合がある。
本発明におけるフィブリル化セルロース繊維は、試料濃度0.1質量%の変法濾水度50ml以上、600ml以下が好ましい。本発明に用いられるフィブリル化セルロース繊維は、試料濃度0.2質量%以上では濃度が濃すぎて濾水度計測の時、脱水開始直後に金網上にフィブリル化セルロース繊維のケーキ層が形成されてしまい、すぐに脱水しなくなり濾水度が0ml~数ml程度にしかならず、フィブリル化の程度の差を明確にできない。試料濃度0.1質量%であれば、金網上にフィブリル化セルロース繊維のケーキ層が形成される前に金網から脱水されるようになり濾水度を計測できるようになるため、0.1質量%の変法濾水度を採用する。ただし、試料濃度0.1質量%のとき微細なフィブリル化セルロース繊維も一緒に金網を抜けるため、フィブリル化の程度が進んでいるほど、変法濾水度の値は大きくなる。変法濾水度が50ml未満では、フィブリル化の程度が不十分でフィブリル化アラミド繊維との絡み合いが不十分となり、フィブリル化アラミド繊維の毛羽立ちや脱落が起こりやすくなる場合がある。600ml超では、フィブリル化セルロース繊維が微細すぎて、該繊維を含む繊維スラリーの濾水性が悪くなり、抄紙網上の脱水が悪くなり、湿紙を形成しにくくなり抄紙性に支障を来す場合がある。
本発明におけるフィブリル化セルロース繊維の平均繊維巾は5μm以上、30μm以下が好ましく、平均フィブリル周囲長比は60%以上、80%以下が好ましい。平均繊維巾が5μm未満では、抄紙網から抜けやすくなる場合がある。30μmより太いとフィブリル化アラミド繊維や合成主体繊維との絡みが不十分になる場合がある。平均フィブリル周囲長比が60%未満では、フィブリル化の程度が不十分でフィブリル化アラミド繊維との絡み合いが不十分になり、セパレータが毛羽立ちやすくなり、フィブリル化アラミド繊維が紙粉となって脱落しやすくなる場合がある。平均フィブリル周囲長比が80%を超えると、フィブリル化の程度が過剰となり、抄紙の際に繊維スラリーの濾水性が著しく悪くなり、抄紙性に支障を来す場合がある。本発明においては、フィブリル化アラミド繊維とフィブリル化セルロース繊維を総称して「フィブリル化繊維」と表記する場合がある。
本発明におけるフィブリル化繊維は、シングルディスクリファイナー、ダブルディスクリファイナー、コニカルファイナー、ビーター、ミル、高圧ホモジナイザー、高速ホモジナイザー、回転式ホモジナイザーなどを用いてフィブリル化することができる。
本発明におけるフィブリル化繊維の平均繊維長、平均繊維巾、平均フィブリル周囲長比は、何れも長さ加重平均値である。これらは市販の繊維長測定装置を用いて、光学的自動分析法により測定することができる。具体的には水に分散させた状態の繊維を撮影し、自動的に画像解析される。長さ加重平均繊維長は、測定されたn本の繊維長の2乗の総和をn本の繊維長の総和で除して得られる。長さ加重平均繊維巾は、測定されたn本の繊維の面積の総和、すなわち、n本の繊維巾(W)と繊維長(L)を乗じて得られる値(A)の総和をn本の繊維長の総和で除して得られる。フィブリル周囲長比(FPR)は、フィブリルの周囲長(FP)を幹繊維の周囲長(P)とフィブリルの周囲長(FP)の和で除した値(FP/(FP+P))である。幹繊維とはフィブリルではない元の繊維を指す。周囲長(P)は幹繊維の繊維長(L)と巾(W)の和を2倍した値(2(L+W))である。フィブリル周囲長(FP)は、フィブリルの繊維長(FL)と巾(FW)の和を2倍した値(2(FL+FW))である。長さ加重平均周囲長比は、測定されたn本の繊維のフィブリル周囲長と繊維長(L)を乗じた総和を繊維長(L)の総和で除して得られる。長さ加重平均繊維長、長さ加重平均繊維巾、長さ加重平均フィブリル周囲長比は自動的に算出される。
本発明における合成主体繊維とは、合成樹脂からなるフィブリル化してない短繊維であって、熱融着性を持たない繊維を意味する。合成樹脂としてはポリエステル、ポリオレフィン、アクリル、ナイロン、ポリアミド、ポリイミド、エチレン-酢酸ビニル共重合体、これらの誘導体などが挙げられるが、融点または軟化点の何れか低い方が200℃以上のものが好ましい。さらに水分散性に優れる点からポリエステルが好ましい。ポリエステルとしては、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートが挙げられる。
本発明における合成主体繊維の繊度は、0.01デシテックス以上、2.2デシテックス以下が好ましく、0.1デシテックス以上、1.7デシテックス以下がより好ましい。繊維径が0.01デシテックス未満では、湿式不織布がしわになりやすくなり、製品化できない場合がある。2.2デシテックスより太いと、セパレータの厚みを薄くしにくくなる場合がある。
本発明における合成主体繊維の繊維長は、1mm以上、10mm以下が好ましく、3mm以上、6mm以下がより好ましい。繊維長が1mm未満では、フィブリル化アラミド繊維との絡みが不十分になり、セパレータからフィブリル化アラミド繊維が脱落しやすくなる場合がある。10mmより長いと合成主体繊維の分散が不均一になり、セパレータの厚みむらが生じやすくなる場合がある。
本発明における合成主体繊維は1種類だけでも良く、2種類以上併用しても良い。2種類以上とは、例えば同じ素材からなり、繊度(または繊維径)、繊維長、繊維断面形状の少なくとも何れかが異なるものを2種類以上用いる場合、合成樹脂成分の異なる2種類以上の主体繊維を用いる場合が挙げられる。非水溶性の2成分以上の樹脂からなる分割型複合繊維を1種類用いた場合は、該分割型複合繊維が分割することによって2成分以上の繊維が混在することになるため、この場合も2種類以上の合成主体繊維を用いる範疇に入る。
本発明における芯鞘型熱融着性繊維とは、融点または軟化点の高い樹脂成分を芯部に配し、芯部よりも融点または軟化点の低い樹脂成分を鞘部に、または融点及び軟化点を持たない非晶性樹脂を鞘部に配してなる芯鞘型複合繊維を意味する。芯部の融点または軟化点の何れか低い方が200℃以上であることが好ましい。芯部と鞘部の比率は30/70~70/30が好ましい。芯部を構成する樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどが好ましい。鞘部を構成する樹脂としては、非晶性共重合ポリエステルやポリエステルエーテル、ポリエチレンなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
非晶性共重合ポリエステルとしては、例えばテレフタル酸とイソフタル酸を含む酸成分とジオール成分との共重合体(イソフタル酸共重合ポリエチレンテレフタレートと呼ぶこともある)が挙げられる。イソフタル酸以外の酸成分、例えばナフタレンジカルボン酸、ジフェニルスルホンジカルボン酸、ベンゾフェノンジカルボン酸、アジピン酸、コハク酸、セバシン酸などを共重合したものでも良い。ジオール成分としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、1,2-プロピレングリコール、1,3-プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4-シクロヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、ヒドロキノン、4,4‘-ジヒドロキシビスフェノール、1,4-ビス(β-ヒドロキシエトキシ)ベンゼン、ビスフェノールA、2,5-ナフタレンジオール、これらの誘導体が挙げられ、これら単独でも良く、混合でも良い。
ポリエステルエーテルは、ハードセグメントとソフトセグメントのブロック共重合体である。ハードセグメントとしては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリヘキサメチレンテレフタレートなどが挙げられ、ソフトセグメントとしては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコールなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
本発明の湿式不織布を構成する全繊維に対するフィブリル化アラミド繊維の含有量は15質量%以上、55質量%以下である。フィブリル化アラミド繊維の含有量が15質量%未満では、セパレータの細孔径が大きくなりすぎて電気化学素子の内部短絡率が高くなる場合や、耐熱性が不十分になる場合がある。フィブリル化アラミド繊維の含有量が55質量%を超えるとセパレータからフィブリル化アラミド繊維が毛羽立つ場合や、スリット加工時に紙粉となって脱落しやすくなり、取り扱いに支障を来す場合がある。
本発明の湿式不織布を構成する全繊維に対するフィブリル化セルロース繊維の含有量は5質量%以上、15質量%以下である。フィブリル化セルロース繊維の含有量が5質量%未満では、フィブリル化アラミド繊維との絡み合いが不十分となり、フィブリル化アラミド繊維の毛羽立ちや紙粉が発生しやすくなり、紙粉の脱落によりセパレータの緻密性が低下して電気化学素子の漏れ電流が大きくなる場合がある。フィブリル化セルロース繊維の含有量が15質量%を超えると繊維スラリーの濾水性が悪くなり、抄紙網からフェルトへ湿紙が転写しにくくなるなど抄紙性に支障を来す場合や、セパレータが緻密になりすぎて電解液や導電性高分子溶液の浸透性が著しく悪くなり、電気化学素子の内部抵抗や等価直列抵抗が著しく高くなる場合がある。
本発明の湿式不織布を構成する全繊維に対する合成主体繊維の含有量は10質量%以上、50質量%以下である。合成主体繊維の含有量が10質量%未満では、フィブリル化アラミド繊維との絡み合いが不十分となり、フィブリル化アラミド繊維の毛羽立ちや脱落が起こりやすくなる場合がある。合成主体繊維の含有量が50質量%を超えるとフィブリル化繊維の含有量が少なくなりすぎて、セパレータの平均細孔径が本発明の範囲より大きくなる場合がある。
本発明の湿式不織布を構成する全繊維に対する芯鞘型熱融着性繊維の含有量は25質量%以上、40質量%以下である。芯鞘型熱融着性繊維の含有量が25質量%未満では、十分な引張強度が発現しない場合がある。芯鞘型熱融着性繊維の含有量が40質量%を超えると、フィブリル化アラミド繊維や合成主体繊維の含有量が少なくなり、セパレータの平均細孔径が本発明の範囲より大きくなる場合がある。
本発明のセパレータは、平均細孔径が2.6μm以上、25.0μm以下である。平均細孔径が2.6μm未満では、電解液や導電性高分子溶液の浸透性が悪く、電気化学素子の内部抵抗や等価直列抵抗が高くなる場合がある。平均細孔径が25.0μm超では、電気化学素子の漏れ電流が大きくなる場合がある。平均細孔孔径を2.6μm以上、25.0μm以下にするには、フィブリル化アラミド繊維及びフィブリル化セルロース繊維の配合量、合成主体繊維及び芯鞘型熱融着性繊維の繊維径と配合量、湿式不織布の坪量を調整すれば良い。本発明のセパレータの最大孔径は、90μm以下が好ましく、70μm以下がより好ましい。最大孔径が90μm超では、電気化学素子の内部短絡率が高くなる場合がある。
本発明のセパレータは、坪量11g/m以上、20g/m以下が好ましく、密度0.275g/cm以上、0.460g/cm以下が好ましい。すなわち厚みが薄く、且つ低密度なセパレータである。それ故、抄紙条件によっては抄紙網ワイヤーマークが強く付きやすい。抄紙網ワイヤーマークとは、抄き上げた湿式不織布に付いた抄紙網ワイヤーの跡を指す。ここでいう抄紙網ワイヤーとは抄紙網を構成する線であり、その材質はステンレス、ニッケル、チタン、ポリエチレン、ナイロン、ポリエステル、フッ素樹脂、テフロン(登録商標)などが一般的である。本発明においては、抄紙網ワイヤーのことを単に「ワイヤー」と表記する場合がある。
円網抄紙機は、胴面及び側面が空洞となっている円筒状の骨格体からなるシリンダーの胴面全体に抄紙網が張られており、このシリンダーが回転する。本発明においては、円網抄紙機に具備されている円筒状のシリンダーのことを円網シリンダーと表記する。一般的に円網シリンダーには、抄紙網が2層以上張られており、最上層(最外層)以外の抄紙網のメッシュ数は8~40程度と少なく、最上層の抄紙網はそれらより多いメッシュのものが用いられる。メッシュとは抄紙網の網目の数のことで、1インチ(25.4mm)一辺の中に含まれる数で表し、40個含まれていれば40メッシュと呼称される。最上層以外の抄紙網は少ないメッシュ数であり、繊維スラリーの濾水性にはほとんど影響しないため、本発明においては考慮する必要はない。本発明においては特段の断りが無い限り、円網抄紙機の抄紙網とは、円網シリンダーの最上層の抄紙網のことを指し、円網抄紙機の抄紙網ワイヤーとは、円網シリンダーの最上層の抄紙網を構成するワイヤーのことを指す。
円網抄紙機に具備される抄紙網としては、一般的に平織タイプや綾織タイプが用いられる。平織タイプは、ワイヤーの縦線と横線を一定の間隔をもって1本ずつ交わらせて織ったものである。平織タイプの抄紙網を用いた場合の抄紙網ワイヤーマークは格子状に付く。格子状に見えるのは、穴が格子状に形成されるからである。ワイヤーの縦線と横線の交点において縦線の最も高い領域と横線の最も高い領域に繊維が存在しない穴が形成され、その穴が規則正しく縦、横それぞれ1本おきに形成されるのである。その穴は円形や楕円形に形成されることが多い。
綾織タイプは、縦線と横線が一定の間隔を保ち、2本以上乗り越して相互に交わらせて織り込んだものである。綾織タイプの抄紙網ワイヤーマークも平織タイプと同様に縦線と横線の交点において縦線の最も高い領域と横線の最も高い領域に繊維が存在せず穴が形成されることにより湿式不織布に綾織状に跡が付く。
このような抄紙網ワイヤーマークが付いた湿式不織布は、抄紙網上に繊維が堆積して水分を多く含んだ湿紙が形成される過程において、フィブリル化繊維を主体とする微細繊維が抄紙網の網目の位置に集中的に堆積し、微細繊維群を形成する。そして横や斜めに隣り合う微細繊維群の間を長い合成主体繊維等が絡み合い橋掛け構造のようになる。フィブリル化繊維を主体とする微細繊維が集中的に堆積している個所はそれ以外の個所より電解液の浸透性が悪い。電解液の浸透性が悪い個所があることにより、電気化学素子の内部抵抗が高くなる場合がある。微細繊維群自体が抵抗成分となり、導電性高分子アルミ固体電解コンデンサの等価直列抵抗が高くなる場合がある。抄紙網ワイヤーマークの穴が目立つ場合は電気化学素子の内部短絡率が高くなる場合がある。
導電性高分子アルミ固体電解コンデンサや導電性高分子ハイブリッドアルミ電解コンデンサのアルミニウム陽極箔の表面はエッチング処理により粗面化されて微細なピットが多数形成されている。これらの電解コンデンサを製造する工程において、エッチング処理されたアルミニウム陽極箔は化成処理されてその表面に誘電体皮膜が形成される。そして誘電体皮膜の上に導電性高分子が形成され、導電性高分子は真の陰極として作用する。湿式不織布の抄紙網ワイヤーマークの穴の個所は導電性高分子溶液の保持性が悪いため、誘電体皮膜が形成された微細なピット内に導電性高分子が浸透しにくくなり、導電性高分子による誘電体皮膜の被覆と、両者の密着が不十分になり、これら電解コンデンサの等価直列抵抗、漏れ電流、静電容量などの諸特性が低下する場合がある。また、誘電体皮膜が損傷しやすくなり、これら電解コンデンサの特性劣化が早まる場合がある。抄紙網ワイヤーマークの穴の個所は電解液や機能性液体の保持性も悪いため、損傷した誘電体皮膜の修復が不十分となり、導電性高分子ハイブリッドアルミ電解コンデンサの特性劣化が早まる場合がある。
本発明者は、フィブリル化繊維を主体とする繊維スラリーから円網抄紙機を用いて抄紙して得られる湿式不織布にこのような抄紙網ワイヤーマークが付いているときは、上記したように抄紙網の網目の位置に形成される微細繊維群の間を長い繊維が絡み合い、橋掛け構造を形成するため、横方向の引張強度が比較的強く、縦方向の引張強度を横方向の引張強度で除した値、すなわち、縦方向と横方向の引張強度の比(以下、単に「強度比」と表記する場合がある。)が1以上、3未満程度あるいは、1以上、2未満程度の小さな値になることを見出した。
本発明のセパレータは、上記の問題点を解決するものである。すなわち厚みが薄く、低密度のセパレータであって、フィブリル化繊維を主体とする微細繊維群が広範囲に散在し、繊維全般の流れが相対的に縦方向に揃ってなる。従って本発明のセパレータは、横方向の引張強度に対して縦方向の引張強度が大幅に強く、縦方向と横方向の引張強度の比が3.00以上、10.0以下である。強度比が3.00未満ではセパレータに抄紙網ワイヤーマークが強く付いており、上記した問題点が生じる。強度比が10.0より大きいと横方向の引張強度が著しく弱く、素子巻きを作製する際にセパレータが破断しやすくなる場合がある。本発明の強度比は、10未満のときは小数点第3位を四捨五入し、10以上のときは小数点第2位以下を切り捨てた値である。
本発明のセパレータの強度比を3.00以上、10.0以下にするには、湿式不織布を抄紙するに際し、ワイヤー径0.045mm以上、0.140mm以下、目開き0.091mm以上、0.174mm以下、目開き面積0.008mm以上、0.030mm以下である90メッシュ以上、180メッシュ以下の抄紙網を具備してなる円網抄紙機を用いて抄紙する。これらの範囲条件は、平織、綾織の何れの抄紙網についても適用され、「特定の範囲」と表記する場合がある。ここでいう目開きとは、隣り合う2本のワイヤー間の距離を指し、既知のワイヤー径とメッシュ数から計算により求めることができる。目開き面積とは、縦の目開きと横の目開きを掛け合わせた面積を意味する。本発明における目開き及び目開き面積は、計算により算出されたそれら数字の小数点第4位以下を切り捨てた値である。
抄紙網のメッシュが90未満では、抄紙網上の脱水が急激に起こりやすくなるため、フィブリル化繊維が網目に集中的に堆積しやすく、湿式不織布に抄紙網ワイヤーマークが付きやすくなる場合がある。抄紙網のメッシュが180超では、フィブリル化繊維等が目詰まりしやすくなる場合や、抄紙網からの脱水が起こりにくくなることにより湿紙の水分率が高くなりすぎて抄紙網からフェルトへ湿紙が転写しにくくなるなど抄紙性に支障を来す場合がある。ワイヤー径が0.045mm未満ではワイヤー自体の強度が弱くなり、抄紙網に凹みや傷が付きやすくなり耐久性が低下する場合がある。ワイヤー径が0.140mmより太いと縦線の最も高い領域と横線の最も高い領域に繊維が存在しない大きな穴が形成されやすく、抄紙網ワイヤーマークが付きやすくなる場合がある。目開きが0.091mm未満だとフィブリル化繊維等が目詰まりしやすくなる場合や、抄紙網からフェルトへ湿紙が転写しにくくなるなど抄紙性に支障を来す場合がある。目開きが0.174mmより大きいと抄紙網上の脱水が急激に起こりやすくなるため、フィブリル化繊維が網目に集中的に堆積しやすく、抄紙網ワイヤーマークが付きやすくなる場合がある。目開き面積が0.008mm未満では、フィブリル化繊維等が目詰まりしやすくなり、一旦目詰まりすると抄紙網に高圧洗浄水を当てても目詰まりしたフィブリル化繊維を除去しきれなくなり、その部分への繊維の堆積が阻害されるため湿式不織布に透け模様が生じ、目標とする物性の湿式不織布を連続製造できない場合がある。目開き面積が0.030mmより大きいと、抄紙網上の脱水が急激に起こりやすくなるため、フィブリル化繊維が網目に集中的に堆積しやすく、抄紙網ワイヤーマークが付きやすくなる場合がある。
本発明に用いられる抄紙網は、メッシュ、ワイヤー径、目開き、目開き面積が全て本発明における特定の範囲を満足する場合はメッシュ、ワイヤー径、目開きの何れか1つ以上が縦と横で異なっていても良い。例えば、縦と横の何れもワイヤー径0.100mmで縦120メッシュ、横90メッシュ(120/90メッシュと表記する)といった具合である。どのような抄紙網を用いるかは、繊維原料の構成、作製しようとする湿式不織布の目標物性や抄紙網の耐久性などを考慮して選択すれば良い。本発明においては、抄紙網について単に「90メッシュ以上、180メッシュ以下」とのみ表記する場合は、特段の断りがない限り、ワイヤー径、目開き、目開き面積が本発明における特定の範囲を満たすものとする。
本発明で用いられる円網抄紙機が、2機以上の円網シリンダーを具備してなる2連式以上の場合は、全ての円網シリンダーの抄紙網が同じ規格であっても良く、各々の抄紙網の規格が異なっていても良い。規格とは織タイプ、メッシュ、ワイヤー径、目開き、目開き面積を指し、メッシュ、ワイヤー径、目開き、目開き面積が本発明における特定の範囲を満たしていることが前提である。
円網抄紙機以外の抄紙機としては、傾斜型抄紙機、短網抄紙機、長網抄紙機などがある。これらの抄紙網は切れ目の無い長い輪になっており、これが多数のロールを介して抄紙条件に合わせて一定速度で周回する。ワイヤーの材質はポリエチレン、ポリエステル、ナイロンなどが主流で、1重織、1.5重織、2重織、2.5重織、3重織、3.5重織などがある。これらのワイヤーは、多数のロールを介して周回するため、ワイヤーとロールとの摩擦により使用時間が長くなるほどロールに接する面のワイヤーが潰れて断面が扁平になり、さらには削れて抄紙網の厚みが薄くなる。このような耐久性の観点から、円網抄紙機に用いられるワイヤーに比べて一般的に縦、横ともに太いワイヤーが用いられ、抄紙網の表面平滑性が低く、抄紙網が厚い。それ故、本発明のフィブリル化繊維を含有する繊維スラリーを抄紙した場合には、抄紙網からの脱水が不十分になる場合があり、湿紙の含水量が過剰となり、フェルトへの湿紙の転写に支障を来す場合がある。1.5重織以上になると縦横とも2本以上乗り越して深さ方向に複雑に織られてなるため深さ方向へ微細繊維等が入り込みやすく、抄紙網からの湿紙の剥離が悪くなり、フェルトへの湿紙の転写が安定しないなど抄紙安定性に問題が生じる場合がある。
傾斜型抄紙機、短網抄紙機、長網抄紙機はヘッドボックスからの繊維スラリーの吐出速度と抄紙網の搬送速度、いわゆるジェットワイヤー比を調節することにより、湿式不織布の強度比を調節することができるが上記した抄紙網の特徴により、本発明のフィブリル化繊維を含有する繊維スラリーを抄紙した場合には、湿式不織布の強度比に関係なく抄紙網ワイヤーマークが強く付きやすく、繊維が少ない領域や穴の領域が長くつながったように形成されやすく、本発明の目標とする湿式不織布を作製することは難しい。
本発明に用いられるフィブリル化繊維を主体とする繊維スラリーを抄紙して得られる湿式不織布において、同じ配合と坪量であって抄紙網ワイヤーマークが付いている場合とそうでない場合を比較したとき、抄紙網ワイヤーマークが付いている場合は、そうでない湿式不織布に比べて最大細孔径は大きく、最小細孔径は小さく、平均細孔径は小さい傾向がある。本発明の湿式不織布は、フィブリル化繊維を主体とする微細繊維群が抄紙網の網目の位置に偏在せず、広く散在するため、抄紙網ワイヤーマークが付きにくく、平均細孔径が相対的に大きく、電解液や機能性液体、導電性高分子溶液の浸透性と保持性のバランスが良い。
本発明のセパレータは、縦方向の引張強度が740N/m以上である。740N/m未満では、擦れにより毛羽立ちやすくなる場合や、セパレータを巻回して素子巻きを作製する際に破断する場合がある。本発明のセパレータは、縦方向の破断伸度が4.0%以上、15.0%以下であることが好ましい。破断伸度が4.0%未満では、素子巻きを作製する際に破断しやすくなる場合がある。破断伸度が15.0%より大きいと素子巻きを作製する際にセパレータが必要以上に伸ばされて巾が狭くなった状態で巻回されてしまう場合があり、電気化学素子の内部短絡不良が生じる場合がある。
本発明のセパレータの縦方向の引張強度を740N/m以上にするためには、本発明における湿式不織布を220℃以上、260℃以下に加熱されたヒートロールまたはヒートパイプに接触させて熱処理する熱処理工程を経ることが好ましい。この熱処理工程は巻出し張力を15N以上、40N以下の範囲で一定にし、ヒートロールまたはヒートパイプへの湿式不織布の片面当たりの接触時間を0.3秒以上、1.6秒未満とする。ヒートロールまたはヒートパイプは、フッ素樹脂加工されたものを用いる。湿式不織布は、円網抄紙機に付属の乾燥ゾーン、すなわち90℃~140℃程度のドライヤーに通して乾燥した状態のものを用い、加圧せずにヒートロールまたはヒートパイプに接触させる。そのときの湿式不織布の水分率としては0.01%以上、3.0%以下であることが好ましい。ドライヤーとしては、多筒式ドライヤーやヤンキードライヤーが挙げられる。
本発明におけるフッ素樹脂加工とは、ヒートロールやヒートパイプにフッ素樹脂テープの貼着や、フッ素樹脂をコーティングすることを意味する。フッ素樹脂としては、ポリテトラフルオロエチレン、パーフルオロアルコキシアルカン樹脂が挙げられる。フッ素樹脂加工されたヒートロールやヒートパイプを用いることにより、ヒートロールやヒートパイプからの湿式不織布の剥離性が確保され、安定して連続的に熱処理することができる。フッ素樹脂加工されていないヒートロールやヒートパイプを用いて熱処理すると溶融した熱融着成分がヒートロールやヒートパイプに張り付いてしまい、湿式不織布が破断するなどして連続的に熱処理できなくなる場合がある。また、湿式不織布を構成する繊維の一部がヒートロールやヒートパイプ上に付着堆積し、その個所においてヒートロールやヒートパイプから湿式不織布への熱伝導が遮断され、熱処理が不十分になる場合がある。フッ素樹脂テープの厚みは0.1mm以上、1.0mm以下が好ましい。フッ素樹脂のコーティング厚みは5μm以上、100μm以下が好ましい。
本発明に用いる熱処理設備の大まかな配置としては、巻出し側から見て熱処理前の湿式不織布の巻取り、第一のヒートロールまたはヒートパイプ、ニップロール、第二のヒートロールまたはヒートパイプ、熱処理された湿式不織布の巻取りの順に位置する。巻出し張力とは、熱処理前の湿式不織布の巻取りとニップロール間の張力を意味する。巻出し張力が15N未満では湿式不織布がヒートロールまたはヒートパイプ上で溶融切断する場合があり、40N超では湿式不織布が破断する場合がある。ニップロールと熱処理された湿式不織布の巻取り間の張力、すなわち巻取り張力も一定にして巻き取る。巻取り張力は20N以上、200N以下が好ましい。湿式不織布の片面当たりの接触時間が0.3秒未満では、熱処理効果が不十分になる場合があり、1.6秒以上では湿式不織布へかかる熱量が過剰となり、湿式不織布が劣化して脆くなる場合やヒートロールまたはヒートパイプ上で溶融切断する場合がある。ニップロールは湿式不織布の厚みを薄くするためのものではなく、巻出し張力及び巻取り張力を一定にするためのものである。
ヒートロールやヒートパイプを加熱する方法としては、ヒートロールやヒートパイプの内部に熱源を設置する方式、ヒートロールやヒートパイプの外部に熱源を設置する方式、内部と外部両方に設置する方式がある。1本のヒートロール又はヒートパイプにつき、設置する熱源の数は1つだけでも良いし、2つ以上でも良い。熱源としては、誘導コイル、ハロゲンヒーター、赤外線ヒーター、遠赤外線ヒーター、中赤外線ヒーター、カーボンヒーターなどを用いることができる。ヒートロール及びヒートパイプの長さは500mm以上、3000mm以下が好ましい。ヒートロールの外径は50mm以上、1000mm以下が好ましい。ヒートパイプの内径は50mm以上、1000mm以下が好ましく、50mm以上、500mm以下がより好ましい。ヒートパイプの厚みは0.5mm以上、5mm以下が好ましく、0.5mm以上、3mm以下がより好ましい。厚みが0.5mm未満では、ヒートパイプの強度が不十分になり、へこみや歪みが生じる場合がある。厚みが5mmより厚いとヒートパイプの中に熱源を配したときにヒートパイプ表面の温度が設定温度に達するまでに時間がかかる場合がある。ヒートロール及びヒートパイプは回転式でも良く、回転しない固定式でも良い。ヒートロールとしては、ステンレスロール、金属ロール、ゴムロール、樹脂ロールなどが用いられる。ヒートパイプとしてはステンレスやその他金属類が用いられる。
本発明の方法で熱処理することにより、湿式不織布を構成する芯鞘型熱融着性繊維の熱融着成分の溶融が広い範囲で起こり、ヒートロールまたはヒートパイプに接している時間だけ該繊維の芯繊維上で熱融着成分が流動性を帯びると考えられる。流動性を帯びた熱融着成分がフィブリル化繊維や合成主体繊維との接点及び交点に集中しやすくなり、熱処理前よりもこれら接点及び交点における融着面積が広くなり、繊維間の結合がより強固になる。熱処理前の湿式不織布は、抄紙工程のドライヤーで90℃~140℃程度の温度で水分を多く含む湿紙を乾燥したものであるから、熱融着成分全体が流動性を帯びるまでの熱量はかかっておらず、芯鞘型熱融着性繊維と他の繊維との接点及び交点における熱融着面積は相対的に小さい。本発明の熱処理によって熱融着した接点では、繊維に沿って長く融着される個所ができる場合がある。本発明の熱処理により熱融着した交点では、熱融着成分が水掻き状や玉状に固着する場合があり、そのような個所が多数形成されることがある。また、合成主体繊維の繊維径が数μm程度の細さの場合には、該繊維の太さの半分以上が熱融着成分に埋まるような形で固着する場合がある。本発明の熱処理においては、芯鞘型熱融着性繊維の芯部は溶融せず形状を保持したまま残るため、湿式不織布の骨格の役目を果たし、湿式不織布の剛性を保持することができる。
本発明における熱処理は湿式不織布の片面のみでも良いし、両面でも良い。湿式不織布の両面を熱処理する場合は、220℃以上、260℃以下の範囲であれば両面とも同じ温度でも良く、異なる温度でも良い。熱処理温度が220℃未満では熱量が不十分になり、湿式不織布の引張強度や耐摩耗性が強くならない場合があり、260℃より高いと熱量過剰となり、合成主体繊維や芯鞘型熱融着性繊維の芯部自体が劣化して湿式不織布が脆くなる場合や、ヒートロールまたはヒートパイプ上で湿式不織布が溶融切断する場合がある。
本発明の熱処理方法により、湿式不織布のロスが少なく、短い接触時間で効率良く、安定して長尺の巻取りをむらなく熱処理することができる。熱処理前に比べて縦、横両方の引張強度と破断伸度が大きくなり、湿式不織布の腰が強くなり、数mm巾にスリット加工する際に破れるなどの不具合の頻度が減る効果がある。また、熱処理によって湿式不織布の耐摩耗性などの表面強度が強くなり、擦れによる毛羽立ちや繊維の脱落を抑制することができる。さらに、電解液、導電性高分子溶液、化成処理液などを保持させたときに繊維の一部が解れるなどの不具合が起こりにくくなり、電気化学素子の不良率が下がる。本発明の熱処理においては、巻出し張力と巻取り張力が一定のとき、熱処理温度と接触時間を調整することにより、縦、横両方の引張強度と破断伸度を調整することができる。
以下、実施例にて本発明を詳しく説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。
<フィブリル化繊維>
表1に示した平均繊維長、変法濾水度、平均フィブリル周囲長比を有するフィブリル化アラミド繊維及びフィブリル化セルロース繊維を用いた。フィブリル化アラミド繊維は「FA1」、フィブリル化セルロース繊維は「FC1」のように表記した。平均繊維長及びフィブリル周囲長比は、JISP8226-2:2011に対応する市販の繊維長分布測定装置L&WFiber Tester Plus(Lorentzen & Wettre製)を用いて測定した。本発明のフィブリル化アラミド繊維「FA1」、「FA2」、「FA3」には繊維長が4mm超のものも含まれる。
<合成主体繊維>
合成主体繊維として表2に示したポリエステル繊維を用いた。ポリエステル繊維は「PET1」のように表記した。ポリエステル繊維の繊度0.1デシテックス、0.6デシテックスはそれぞれ円形の繊維径3.0μm、6.7μmに相当する。
<芯鞘型熱融着性繊維>
表2に示した芯鞘型熱融着性繊維「PET4」を用いた。すなわち、ポリエチレンテレフタレートを芯部、熱融着成分である非晶性共重合ポリエステルを鞘部に配した繊度1.7デシテックス、繊維長5mmの芯鞘型熱融着性繊維である。
<湿式不織布>
表3及び表4に示した繊維と配合量(質量%)に従って繊維スラリーを調成し、表5及び表6に示した抄紙網を具備した抄紙機を用いて湿式不織布1~36を作製した。抄紙機は、平織抄紙網を具備してなる2連式の円網抄紙機を用いた。円網抄紙機は2連とも同じ規格の平織抄紙網を用いた。湿式不織布18、19、32、36の抄紙においては表6に示したメッシュ、ワイヤー径、目開き、目開き面積を有する1重織抄紙網を具備してなる傾斜型抄紙機を用いた。表6の1重織抄紙網のメッシュ、ワイヤー径、目開きはそれぞれ縦/横の数値を示している。湿式不織布19は、傾斜型抄紙機のジェットワイヤー比を調節して抄紙し、強度比を3以上にした。湿式不織布20は、抄紙網の目開きと目開き面積が小さすぎたため、フィブリル化繊維による網目の目詰まりが生じたことと、フェルトへの湿紙の転写が円滑に出来なかったため安定して抄紙することができなかった。
<電気化学素子用セパレータ>
湿式不織布1~19、21~36を表7及び表8に示した熱処理条件で熱処理して電気化学素子用セパレータとした。熱処理面の「なし」とは湿式不織布を熱処理しなかったことを意味し、湿式不織布をそのまま電気化学素子用セパレータとした。熱処理面の「両面」とは、湿式不織布の両面をヒートパイプに接触させたことを意味し、「片面」とは湿式不織布の片面をヒートパイプに接触させたことを意味する。接触時間とは、ヒートパイプへの湿式不織布の片面当たりの接触時間を意味する。熱処理においては、フッ素樹脂コーティングしたステンレス製ヒートパイプの中に赤外線ヒーターを設置して加熱し、巻出し張力と巻取り張力を一定にして、湿式不織布を加圧せず一定速度で接触させて連続的に熱処理した。
実施例1~6、実施例7~13、実施例14~17、比較例1~11、比較例12~24、比較例25~28で作製した電気化学素子用セパレータをそれぞれ電気化学素子用セパレータA1~A6、B1~B7、C1~C4、AC1~AC11、BC1~BC13、CC1~CC4とし、それらの物性値を表9及び表10に示した。表中の「MD強度」は縦方向の引張強度、「CD強度」は横方向の引張強度、「強度比」は「MD強度」を「CD強度」で除した値、「ワイヤーマーク」は抄紙網ワイヤーマークを意味する。
<厚さ>
JISC2300-2の「5.1厚さ」に規定された外側マイクロメータを用いて、「5.1.3 紙を折り重ねて厚さを測る場合」の10枚に折り重ねる方法に準拠して電気化学素子用セパレータの厚さを測定した。
<密度>
JISC2300-2のB法に規定された方法に準拠して電気化学素子用セパレータの密度を測定した。
<強度比>
JISC2300に規定された方法に準拠して縦、横方向の引張強度を測定した。縦の引張強度を横の引張強度で除した値を強度比とした。強度比が10未満の場合は小数点第3位を四捨五入し、10以上の場合は小数点第2位以下を切り捨てた値とした。
<平均細孔径>
ASTMF316-86に規定されたバブルポイント法により平均細孔径を測定した。
<抄紙網ワイヤーマーク>
実施例及び比較例で作製した電気化学素子用セパレータを目視で観察し、抄紙網ワイヤーマークが付いているものを「あり」、付いていないものを「なし」とした。表中には「ワイヤーマーク」と表記した。
<毛羽立ち>
実施例及び比較例で作製した電気化学素子用セパレータを指で5往復擦り、毛羽立ちを評価した。毛羽立ちが無い場合を「〇」、毛羽立ちが生じ、紙粉や繊維の脱落がある場合を「×」とした。
<巻回性>
アルミニウム電極箔と電気化学素子用セパレータを積層して電気化学素子の素子巻きを作製する際に、電気化学素子用セパレータの破断やほつれが生じることなく作製できた場合を「〇」、電気化学素子用セパレータの破断やほつれが生じた場合を「×」、電気化学素子用セパレータの破断やほつれは生じなかったが、アルミ電極箔とのずれが生じるときがあった場合を「△」とした。
JISP8143に規定された方法に準拠してクラークこわさを測定した結果、本発明の実施例で作製した電気化学素子用セパレータにおいて、クラークこわさが最も小さかったものは実施例15で作製したセパレータC1の216cm/100であった。
<導電性高分子アルミ固体電解コンデンサ>
セパレータA1~A6、AC1~AC11を用いて、定格電圧63V、静電容量33μFの導電性高分子アルミ固体電解コンデンサを作製し、電気化学素子1~17とした。セパレータB1~B7、BC1、BC2、BC7~BC13を用いて定格電圧20V、静電容量120μFの導電性高分子アルミ固体電解コンデンサを作製し、電気化学素子18~33とした。セパレータ~C1~C4、CC1~CC4を用いて、定格電圧6.3V、静電容量330μFの導電性高分子アルミ固体電解コンデンサを作製し、電気化学素子34~41とした。
<導電性高分子ハイブリッドアルミ電解コンデンサ>
セパレータA1~A6、AC1~AC11を用いて、定格電圧80V、静電容量22μFの導電性高分子ハイブリッドアルミ電解コンデンサを作製し、電気化学素子H1~H17とした。
電気化学素子1~41、H1~H17の素子不良率、初期等価直列抵抗、漏れ電流、高温負荷加速試験後の等価直列抵抗及び静電容量減少率を表11~14に示した。高温負荷加速試験後の等価直列抵抗及び静電容量減少率を長期使用後の特性として評価した。
<素子不良率>
電気化学素子1~41、H1~H17の各コンデンサ1000個に対し105℃、2時間定格電圧を印加後の等価直列抵抗や漏れ電流などの規格値から外れた個数の割合を素子不良率とした。
<初期等価直列抵抗>
電気化学素子1~41、H1~H17の各コンデンサの1000個中の良品の初期等価直列抵抗を20℃、100kHzの条件で測定し、それぞれの平均値を示した。
<漏れ電流>
電気化学素子1~17の各コンデンサ1000個中の良品に対し定格電圧63Vを印加して2分経過した時点での漏れ電流を測定し、その平均値を示した。電気化学素子18~33の各コンデンサ1000個中の良品に対し定格電圧20Vを印加して2分経過した時点での漏れ電流を測定し、その平均値を示した。電気化学素子34~41の各コンデンサ1000個中の良品に対し定格電圧6.3Vを印加して2分経過した時点での漏れ電流を測定し、その平均値を示した。電気化学素子H1~H17の各コンデンサ1000個中の良品に対し定格電圧80Vを印加して2分経過した時点での漏れ電流を測定し、その平均値を示した。
<等価直列抵抗>
電気化学素子1~41の各コンデンサ1000個中の良品に対し105℃、2000時間定格電圧印加後、室温に戻して20℃、100kHzの条件で等価直列抵抗を測定し、その平均値を示した。電気化学素子H1~H17の各コンデンサ1000個中の良品に対し105℃、10000時間定格電圧を印加後、室温に戻して20℃、100kHzの条件で等価直列抵抗を測定し、その平均値を示した。
<静電容量減少率>
電気化学素子1~41の各コンデンサ1000個中の良品に対し105℃、2000時間定格電圧印加後、室温に戻して20℃、120Hzの条件で静電容量を測定し、初期の静電容量からの減少率(%)の平均値を示した。電気化学素子H1~H17の各コンデンサ1000個中の良品に対し105℃、10000時間定格電圧を印加後、室温に戻して20℃、120Hzの条件で静電容量を測定し、初期の静電容量からの減少率(%)の平均値を示した。
実施例1~17で作製したセパレータA1~A6、B1~B7、C1~C4は、湿式不織布を構成する全繊維に対して、フィブリル化アラミド繊維15質量%以上、55質量%以下、フィブリル化セルロース繊維5質量%以上、15質量%以下、合成主体繊維10質量%以上、50質量%以下、芯鞘型熱融着性繊維25質量%以上、40質量%以下含有し、厚さ30μm以上、60μm以下、平均細孔径2.6μm以上、25.0μm以下、縦方向の引張強度が740N/m以上、縦方向と横方向の引張強度の比が3.00以上、10.0以下である湿式不織布からなるため、毛羽立ちの発生が無く、巻回性に優れ、導電性高分子溶液や電解液の浸透性と保持性のバランスが良く、該セパレータを具備した導電性高分子アルミ固体電解コンデンサ及び導電性高分子ハイブリッドアルミ電解コンデンサは、素子不良率が低く、初期等価直列抵抗と漏れ電流が小さく、高温負荷加速試験後の等価直列抵抗と静電容量減少率が小さく、長期使用による特性劣化が小さく抑えられることが示された。
本発明で作製した湿式不織布1~13は、湿式不織布を構成する全繊維に対して、フィブリル化アラミド繊維15質量%以上、55質量%以下、フィブリル化セルロース繊維5質量%以上、15質量%以下、合成主体繊維10質量%以上、50質量%以下、芯鞘型熱融着性繊維25質量%以上、40質量%以下含有し、ワイヤー径0.045mm以上、0.140mm以下、目開き0.091mm以上、0.174mm以下、目開き面積0.008mm以上、0.030mm以下である90メッシュ以上、180メッシュ以下の抄紙網を具備してなる円網抄紙機を用いて抄紙してなるため、フィブリル化繊維を主体とする微細繊維群が網目に偏在せず、広く散在し、厚さ30μm以上、60μm以下、平均細孔径2.6μm以上、25.0μm以下で、縦方向と横方向の引張強度の比が3.00以上、10.0以下であり、電解液や導電性高分子溶液の浸透性と保持性のバランスが良かった。
実施例1~17で作製したセパレータA1~A6、B1~B7、C1~C4においては、湿式不織布が220℃以上、260℃以下に加熱されたヒートパイプに接触させて熱処理されてなり、ヒートパイプがフッ素樹脂加工されたものであり、熱処理時の巻出し張力を15N以上、40N以下の範囲で一定にし、ヒートパイプへの湿式不織布の片面当たりの接触時間を0.3秒以上、1.6秒未満にしたことにより、長尺の巻取りを安定して効率よく熱処理でき、湿式不織布の縦方向の引張強度を740N/m以上にすることができ、セパレータ表面の毛羽立ちを抑制し、素子巻きを作製する際の巻回性に優れていた。
比較例1、12、20で作製したセパレータAC1、BC1、BC9は、強度比は好適な範囲に含まれるが、熱処理されていないため縦方向の引張強度が740N/m未満で弱く、巻回性に支障を来した。セパレータBC9は、フィブリル化アラミド繊維の含有量が少なかったため、毛羽立ちは生じなかったが、セパレータAC1及びBC1は毛羽立ちによる紙粉と繊維の脱落が多かった。セパレータAC1、BC1、BC9を具備した電気化学素子7、H7、25、29は、それぞれ同じ配合で熱処理されてなるセパレータA1、B1、B6を具備した電気化学素子1、H1、18、23より素子不良率が劣っていた。比較例25で作製したセパレータCC1は、強度比は好適な範囲に含まれるが、熱処理されていないため縦方向の引張強度が740N/m未満でかなり弱く、且つ横方向の強度が著しく弱いため解れやすく、毛羽立ちによる紙粉と繊維の脱落が多く、巻回性に支障を来した。該セパレータを具備した電気化学素子38は、同じ配合で熱処理されてなるセパレータC1を具備した電気化学素子34より素子不良率が劣っていた。
比較例2で作製したセパレータAC2は、強度比は好適な範囲に含まれるが、熱処理時のヒートパイプへの湿式不織布の片面当たりの接触時間が0.3秒未満であるため、縦方向の引張強度が740N/m未満で弱く、毛羽立ちによる紙粉と繊維脱落が多く、巻回性に支障を来した。該セパレータを具備した電気化学素子8、H8は、同じ配合で熱処理時の片面当たりの接触時間が0.3秒以上、1.6秒未満であるセパレータA1を具備した電気化学素子1、H1よりも素子不良率が劣っていた。比較例13で作製したセパレータBC2は、強度比は好適な範囲に含まれるが220℃未満の温度で熱処理されてなるため、縦方向の引張強度が740N/m未満で弱く、毛羽立ちによる紙粉と繊維脱落が多く、巻回性に支障を来した。該セパレータを具備した電気化学素子26は、同じ配合で220℃以上、260℃未満の温度で熱処理されてなるセパレータB1を具備した電気化学素子18より素子不良率が劣っていた。
比較例14で作製を試みたセパレータBC3は、260℃を超える温度で熱処理されたためヒートパイプ上で湿式不織布が溶融切断し、セパレータを作製することができなかった。比較例15で作製を試みたセパレータBC4は、ヒートパイプへの湿式不織布の片面当たりの接触時間が1.6秒以上だったため、湿式不織布にかかる熱量が過剰となり、ヒートパイプ上で湿式不織布が溶融切断し、セパレータを作製することができなかった。比較例16で作製を試みたセパレータBC5は、熱処理時の巻出し張力が15N未満であったため、湿式不織布がヒートパイプ上で溶融切断し、セパレータを作製することができなかった。比較例17で作製を試みたセパレータBC6は、熱処理時の巻出し張力が40Nを超えたため、湿式不織布が破断し、セパレータを作製することができなかった。
比較例3~6で作製したセパレータAC3~AC6は、縦方向の引張強度が740N/m未満であるため、巻回性がやや劣っていた。強度比が3未満で抄紙網ワイヤーマークが強く付いており、平均細孔径が2.6μm未満であるため、導電性高分子溶液の浸透性と保持性のバランスが著しく悪く、該セパレータを具備した電気化学素子9~12、H9~H12は、同じ配合で強度比が3.00以上、10.0以下であるセパレータA1を具備した電気化学素子1、H1より素子不良率が高く、初期等価直列抵抗が高く、漏れ電流が大きく、高温負荷加速試験後の等価直列抵抗及び静電容量減少率が劣っており、長期使用による特性劣化が早いことが示された。
比較例11で作製したセパレータAC11は、縦方向の引張強度が740N/m以上で、毛羽立ちはなく巻回性に優れていた。平均細孔径は好適な範囲に含まれるが、強度比が3未満で抄紙網ワイヤーマークが強く付いているため、導電性高分子溶液の浸透性と保持性のバランスが悪く、該セパレータを具備した電気化学素子17、H17は、同じ配合で強度比が3.00以上、10.0以下であるセパレータA5を具備した電気化学素子5、H5より初期等価直列抵抗が高く、漏れ電流が大きく、高温負荷加速試験後の等価直列抵抗及び静電容量減少率が劣っており、長期使用による特性劣化が早いことが示された。
比較例18、24で作製したセパレータBC7、BC13は、縦方向の引張強度が740N/m以上で毛羽立ちはなく巻回性に優れていた。平均細孔径は好適な範囲に含まれるが、強度比が3未満で抄紙網ワイヤーマークが強く付いているため、導電性高分子溶液の浸透性と保持性のバランスが悪く、該セパレータを具備した電気化学素子27、33は、同じ配合で強度比が3.00以上、10.0以下であるセパレータB1を具備した電気化学素子18より初期等価直列抵抗が高く、漏れ電流が大きく、高温負荷加速試験後の等価直列抵抗及び静電容量減少率が劣っており、長期使用による特性劣化が早いことが示された。
比較例27、28で作製したセパレータCC3、CC4は、縦方向の引張強度が740N/m以上で毛羽立ちはなく巻回性に優れていた。平均細孔径は好適な範囲に含まれるが、強度比が3未満で抄紙網ワイヤーマークが強く付いているため、導電性高分子溶液の浸透性と保持性のバランスが悪く、該セパレータを具備した電気化学素子40、41は、同じ配合で強度比が3.00以上、10.0以下であるセパレータC2、C3を具備した電気化学素子35、36より初期等価直列抵抗が高く、漏れ電流が大きく、高温負荷加速試験後の等価直列抵抗及び静電容量減少率が劣っており、長期使用による特性劣化が早いことが示された。
比較例7で作製したセパレータAC7は、傾斜型抄紙機のジェットワイヤー比を調節して強度比を3以上にしたが、抄紙網ワイヤーマークが強く付いており、平均細孔径が2.6μm未満であるため導電性高分子溶液の浸透性と保持性のバランスが著しく悪く、該セパレータを具備した電気化学素子13、H13は、同じ配合で強度比が3.00以上、10.0以下であるセパレータA1を具備した電気化学素子1、H1より素子不良率が高く、初期等価直列抵抗が高く、漏れ電流が大きく、高温負荷加速試験後の等価直列抵抗と静電容量減少率が劣っており、長期使用による特性劣化が早いことが示された。
比較例8で作製したセパレータAC8は、フィブリル化アラミド繊維の含有量が55質量%超で、且つ芯鞘型熱融着性繊維の含有量が25質量%未満であるため縦方向の引張強度が740N/m未満であり、毛羽立ちによる紙粉と繊維脱落が非常に多く発生し、巻回性に支障を来した。強度比は好適な範囲に含まれるが、平均細孔径が2.6μm未満であるため導電性高分子溶液の浸透性が悪く、該セパレータを具備した電気化学素子14、H14は漏れ電流は小さいものの、フィブリル化アラミド繊維の含有量が15質量%以上、55質量%以下であるセパレータA1~A6を具備した電気化学素子1~6、H1~H6より素子不良率が高く、初期等価直列抵抗が高く、高温負荷加速試験後の等価直列抵抗と静電容量減少率が劣っており、長期使用による特性劣化が早いことが示された。
比較例9で作製したセパレータAC9は、縦方向の引張強度が740N/m未満で巻回性がやや劣っていた。合成主体繊維の配合量が10質量%未満であるため、フィブリル化アラミド繊維との絡み合いが不十分で毛羽立ちによる紙粉と繊維の脱落が多く生じた。強度比は好適な範囲に含まれるが、平均細孔径が2.6μm未満であるため導電性高分子溶液の浸透性が悪く、該セパレータを具備した電気化学素子15、H15は、漏れ電流は小さいものの、合成主体繊維の含有量が10質量%以上、50質量%以下であるセパレータA1~A6を具備した電気化学素子1~6、H1~H6より素子不良率が高く、初期等価直列抵抗が高く、高温負荷加速試験後の等価直列抵抗と静電容量減少率が劣っており、長期使用による特性劣化が早いことが示された。
比較例10で作製したセパレータAC10は、縦方向の引張強度が740N/m未満であり、巻回性がやや劣っていた。強度比は好適な範囲に含まれるが、フィブリル化セルロース繊維の含有量が15質量%超のため、セパレータが緻密になりすぎており、平均細孔孔径が2.6μm未満であり、導電性高分子溶液の浸透性が悪く、該セパレータを具備した電気化学素子16、H16は漏れ電流は小さいものの、フィブリル化セルロース繊維の配合量が5質量%以上、15質量%以下であるセパレータA1~A6を具備した電気化学素子1~6、H1~H6より初期等価直列抵抗が高く、高温負荷加速試験後の等価直列抵抗と静電容量減少率が劣っており、長期使用による特性劣化が早いことが示された。
比較例19で作製したセパレータBC8は、縦方向の引張強度が740N/m以上で毛羽立ちがなく巻回性に優れていた。強度比は好適な範囲に含まれるが、芯鞘型熱融着性繊維の含有量が40質量%超のため、平均細孔径が25μmより大きく、該セパレータを具備した電気化学素子28の初期等価直列抵抗は小さいものの、芯鞘型熱融着性繊維の含有量が25質量%以上、40質量%以下であるセパレータB1~B7を具備した電気化学素子18~24より素子不良率が高く、漏れ電流が大きく、高温負荷加速試験後の静電容量減少率が劣っていた。
比較例21で作製したセパレータBC10は、縦方向の引張強度が740N/m以上で毛羽立ちがなく、巻回性に優れていた。強度比は好適な範囲に含まれるが、フィブリル化アラミド繊維の含有量が15質量%未満であるため平均細孔径が25μmより大きく、該セパレータを具備した電気化学素子30の初期等価直列抵抗は小さいものの、フィブリル化アラミド繊維を15質量%以上、55質量%以下含有するセパレータB1~B7を具備した電気化学素子18~24より素子不良率が高く、漏れ電流が大きく、高温負荷加速試験後の静電容量減少率が劣っていた。
比較例22で作製したセパレータBC11は、縦方向の引張強度が740N/m以上で毛羽立ちがなく巻回性に優れていた。強度比は好適な範囲に含まれるが、フィブリル化セルロース繊維の含有量が5質量%未満であるため平均細孔径が25μmより大きく、該セパレータを具備した電気化学素子31の初期等価直列抵抗は小さいものの、フィブリル化セルロース繊維を5質量%以上、15質量%以下含有するセパレータB1~B7を具備した電気化学素子18~24より素子不良率が高く、漏れ電流が大きく、高温負荷加速試験後の静電容量減少率が劣っていた。
比較例23で作製したセパレータBC12は、縦方向の引張強度が740N/m以上で毛羽立ちがなく巻回性に優れていた。強度比は好適な範囲に含まれるが、合成主体繊維の含有量が50質量%より多いため、平均細孔径が25μmより大きく、該セパレータを具備した電気化学素子32の初期等価直列抵抗は小さいものの、合成主体繊維の含有量が10質量%以上、50質量%以下であるセパレータB1~B7を具備した電気化学素子18~24より素子不良率が高く、漏れ電流が大きく、高温負荷加速試験後の静電容量減少率が劣っていた。
比較例26で作製したセパレータCC2は、平均細孔径は好適な範囲に含まれるが、縦方向の引張強度が740N/m未満であり、強度比が10.0を超えるため横方向の強度が弱すぎて解れやすく、毛羽立ちによる紙粉と繊維脱落が多く、巻回性に支障を来した。該セパレータを具備した電気化学素子39は、縦方向の引張強度が740N/m以上で、強度比が3.00以上、10.0以下であるセパレータC1~C4を具備した電気化学素子34~37より素子不良率が高く、初期等価直列抵抗は高く、高温負荷加速試験後の等価直列抵抗と静電容量減少率が劣っていた。
本発明の電気化学素子用セパレータは、リチウムイオン電池、電気二重層キャパシタ、導電性高分子アルミ固体電解コンデンサ、導電性高分子ハイブリッドアルミ電解コンデンサに好適に適用できる。

Claims (4)

  1. 湿式不織布を構成する全繊維に対して、フィブリル化アラミド繊維15質量%以上、55質量%以下、フィブリル化セルロース繊維5質量%以上、15質量%以下、合成主体繊維10質量%以上、50質量%以下、芯鞘型熱融着性繊維25質量%以上、40質量%以下含有し、厚さ30μm以上、60μm以下、平均細孔径2.6μm以上、25.0μm以下、縦方向の引張強度が740N/m以上、縦方向と横方向の引張強度の比が3.00以上、10.0以下である湿式不織布からなることを特徴とする電気化学素子用セパレータ。
  2. 電気化学素子が導電性高分子アルミ固体電解コンデンサまたは導電性高分子ハイブリッドアルミ電解コンデンサであることを特徴とする請求項1に記載の電気化学素子用セパレータ。
  3. 湿式不織布を構成する全繊維に対して、フィブリル化アラミド繊維15質量%以上、55質量%以下、フィブリル化セルロース繊維5質量%以上、15質量%以下、合成主体繊維10質量%以上、50質量%以下、芯鞘型熱融着性繊維25質量%以上、40質量%以下含有し、厚さ30μm以上、60μm以下、平均細孔径2.6μm以上、25.0μm以下、縦方向の引張強度が740N/m以上、縦方向と横方向の引張強度の比が3.00以上、10.0以下である湿式不織布からなる電気化学素子用セパレータの製造方法であって、
    ワイヤー径0.045mm以上、0.140mm以下、目開き0.091mm以上、0.174mm以下、目開き面積0.008mm以上、0.030mm以下である90メッシュ以上、180メッシュ以下の抄紙網を具備してなる円網抄紙機を用いて抄紙することを特徴とする電気化学素子用セパレータの製造方法。
  4. 前記抄紙した湿式不織布を220℃以上、260℃以下に加熱されたヒートロールまたはヒートパイプに接触させて熱処理する熱処理工程を含み、
    同熱処理工程は、ヒートロールまたはヒートパイプがフッ素樹脂加工されてなり、巻出し張力を15N以上、40N以下の範囲で一定にし、ヒートロールまたはヒートパイプへの湿式不織布の片面当たりの接触時間を0.3秒以上、1.6秒未満とすることを特徴とする請求項3に記載の電気化学素子用セパレータの製造方法。
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