JP7439421B2 - 調光システム - Google Patents

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本発明は、建物の出入り口やその周辺の壁、あるいは空間を分離する設備などの仕切り部材として設けられる大型のガラス板や透明シートに適用して、通行人が誤って衝突するのを防ぐ対策が施された調光システムに関する。
従来、ガラス板への衝突防止の対策としては、赤色などの視認性の高い色の紙をガラス板に貼付したり、塗料などでガラス板表面に文字や図形を描くなどして注意喚起することが行なわれている。建物の美観を損ない易いという問題を解消すると共に、夜間の視認性にも優れるガラス衝突防止安全マークとして、金属質光輝材とこの金属質光輝材の一部に設けられた蓄光性蛍光材からなり、ガラスの表面に貼着されるようになされた提案が公知である。(特許文献1参照)
特許文献1による提案では、昼間や照明のあたっている間は、金属質光輝材が視認され、通行者がガラス板に衝突するのを防止されるが、衝突防止の成否は、衝突防止安全マークの存在に気付いて衝突を回避する通行者本人の判断力に依存する部分が大きい。注意力が散漫であったり放心状態でガラス板に近づく通行者に対して、一層高い視認性やインパクトを伴って注意喚起する上では、通行者がガラス板の直前まで近づいた際に、通行者の視覚や聴覚に劇的に訴える動的な変調をガラス板に発現させることが望まれる。
特開2006-330531号公報
本発明は、通行者の接近時に注意喚起のアピール効果が飛躍的に向上する衝突防止対策が講じられたガラス板や透明シートに適用される調光システムを提案するものである。
本発明による調光システムは、
印加電圧に応じて透過率を2段階以上に切り替え可能な調光フィルムと、
前記調光フィルムを貼付または挟み込む透明基板と、
移動物体の接近および離反を検知する検知手段と、
前記検知手段の情報に基づいて前記調光フィルムの透過率を所定パターンで切り替える駆動制御手段と、を有することを特徴とする。
前記検知手段の情報に基づき、前記調光フィルムは低ヘイズ状態から高ヘイズ状態に切り替わる。
前記検知手段の情報に基づき、透過率の切り替えとは異なる手段により、接近する人に存在を知らしめる報知手段を備えるようにしても良い。
前記報知手段は、音声,発光の少なくとも何れかであることが好適である。
前記検知手段には撮像手段を備えており、接近または離反する移動物体が人あるいはそれ以外であるかの判別を行なえるようにしても良い。
前記調光フィルムは、通常時は低ヘイズ状態であり、
前記駆動制御手段によって、移動物体の接近に従い高ヘイズ状態に切り替わり、移動物体の離反に従い低ヘイズ状態に戻るように透過率が変調されるようにしても良い。
調光フィルムは、少なくとも透明電極が形成されたフレキシブルな透明基材フィルムを互いの透明電極側を対向して調光層を挟持してなる構成であり、
調光層は、液晶分子がポリマー中に分散配置された高分子分散型液晶、または三次元の網目状に形成された樹脂からなるポリマーネットワークの内部に形成された空隙内に配置された液晶分子を有するポリマーネットワーク型液晶の何れかであることが好適である。
本発明による調光システムは、ガラス板に近づく通行者や移動物体に対して、視覚や聴覚に劇的に訴える動的な変調をガラス板に発現させることが出来、高い視認性やインパクトを伴って注意喚起されるため、衝突防止効果が向上する。
本発明の一例に係る調光システム10の外観を示す説明図。 本発明の他例に係る調光システム10の外観を示す説明図。 実施形態の調光フィルム50の構成概略を示す説明図。 調光フィルム50の給電部70近傍の構造例を示す断面図。 実施形態の調光システム10の構成概略を示す説明図。
以下、本発明の実施形態について図面を参照しつつ説明する。図1は、本発明の一例に係る調光システム10の外観を示す説明図である。
図1(a)は、調光システム10の調光フィルムが低ヘイズ(透明)状態にある場合の調光システム10を通して景色が視覚される状態を示す説明図であり、調光システム10の外形(輪郭)を便宜的に点線で示している。
通行人100が調光システム10に近づくと、調光システム10に備えられる検知手段20が通行人100の接近を検知し、調光フィルムの駆動制御手段(図示せず)と連動して、図1(b)に示す様に、調光フィルムが高ヘイズ(散乱)状態に切り替わる。通行人100にとっては目前の景色が突如消えて曇りガラスが現れるような劇的な変化が体感されるため、調光システム10の先には進もうとせず、自ずと立ち止まることになる。
検知手段20は、通行人100の接近を検知するものであれば、撮像カメラ,超音波センサ,レーダセンサ,赤外線センサ等の何れでも良い。また、その感度は通行人100の接近距離,人以外の小動物や鳥の接近も検知するなど、用途に応じて適宜設定される。特に、ガラス技術の進歩に伴い、全ガラスカーテンウォールを有する建物を構築することも可能となっており、バードストライクの低減の課題は重要性を増している。
そのため、検知手段20には撮像手段を備えており、接近または離反する移動物体が人あるいはそれ以外であるかの判別を行なうことが出来ると、調光フィルムの駆動制御のタイミングとその速度や、後述する報知手段による警告のタイミング,音量,光量などを適切に変更する上で有効である。
調光フィルムの透過率の切り替えは、図1での例示に限らず、図2(a)に示す様な部分的あるいはパターン状の切り替え(または、それらの組み合わせ)でも良い。また、図1(a)⇔図1(b)の透明/不透明の状態が点滅する様な切り替えでも良い。これらは、検知手段20と連動する調光フィルムの駆動制御手段により、タイミングも含めてプログラム制御される。
さらに、調光フィルムの透過率の切り替えに加えて、図2(b)に示す様に、接近する人100に存在を知らしめる他の報知手段として、発光手段31,音声手段32の少なくとも何れかを併用することで、特に夜間での注意喚起が一層確実となる。発光手段31,音声手段32は、調光フィルムの透過率が切り替わる範囲内,検知手段20の近傍など、調光システム10内で任意の箇所に配置される。
<調光フィルム>
調光システム10の主要部である調光フィルムの調光層として、一定の間隔を保持して配置された電極を有する基板間に液晶分子を配向して挟み込み、さらにこれらを2枚の偏光板で挟み込んだ構成であり、電気的に液晶を駆動することにより、偏向光の透過率を変えることで、セル(画素)単位での透光状態-遮光状態の変調による表示を行なうTN方式,VA方式,IPS方式の何れも採用可能である。
本実施形態では、透光状態-遮光状態の切り替えでなく、偏光板を用いず光の利用効率の高い液晶表示素子として、液晶の透過状態(透明状態)と散乱状態(不透明状態)との間でスイッチングを行う液晶表示素子の採用が好適である。三次元の網目状に形成された樹脂からなるポリマーネットワークの内部に形成された空隙内に配置された液晶分子を有する構成のポリマーネットワーク型液晶(PNLC:Polymer Network Liquid Crystal)、または、液晶分子がポリマー中に分散配置された構成の高分子分散型液晶(PDLC:Polymer Dispersed Liquid Crystal)を用いたものが代表的であり、以降はPNLCについて説明する。
PNLCからなる調光層を具備する調光フィルムの製造にあたっては、液晶と光重合性化合物(モノマー)との混合物を一対の透明電極基板の間に挟み、一定の条件下で紫外線を照射し、光重合によって光重合性化合物が高分子に変化すると共に、光重合および架橋結合により、微細なドメイン(高分子の空隙)を無数に有するポリマーネットワークが液晶中に形成する。
PNLCの駆動電圧は、一般にポリマーネットワークの構造上の特性(ドメインの大きさや形状,ポリマーネットワークの膜厚など)に依存しており、ポリマーネットワークの構造と、得られる光透過と散乱度との関係において、駆動電圧が決定されている。100V以下の電圧領域において、十分な光透過と散乱度とが得られるようなPNLCを構成するには、各ドメインがいずれも適正な大きさで均一となるように、かつ、形状も均一となるようにポリマーネットワークを形成する必要がある。本発明では、ポリマーネットワーク構造に依存するドメインサイズを3μm以下、好ましくは2μm以下、一層好ましくは約1μmとなる様に制御する。
図3に示すように、調光フィルム50は、PNLCからなる調光層52と透明導電フィルム53(a,b)とを備えている。透明導電フィルム53(a,b)は、調光層52(PNLC)を挟持しており、給電部(不図示)から調光層52(PNLC)に電圧を印加して、高ヘイズ(散乱状態),低ヘイズ(透過状態)を変化させる。
調光層52は、5μm~50μm(好適には10μm~25μm程度)の厚さでの製造が好ましい。透明導電フィルム53は、透明基材55上にITOやIZOや有機導電膜などの透明な導電材料からなる透明電極56を成膜してなる透明導電フィルム53を互いの透明電極56側を対向して調光層52を挟持する。透明電極56の好適な厚さは略80nm以上150nm以下である。尚、PNLCでは印加電圧に応じて、任意の中間調のヘイズ状態を表現することも可能である。
また、所望に応じて、透明電極56のパターニングが必要となった場合には、エッチング法,リフトオフ法,レーザトリミング法,各種マスクを用いる方法など、任意の方法によって行うことができる。
液晶素子からなる調光層52には、その使用態様により、ノーマルモードとリバースモードの二種が知られている。ノーマルモードとは、電圧印加(ON)により透過状態となり、電圧除去(OFF)により散乱状態となるモードを言う。また、リバースモードとは、電圧除去(OFF)により透過状態となり、電圧印加(ON)により散乱状態となるモードを言う。リバースモードの場合、透明電極56の上に配向膜が形成されたフィルム基材を要することとなる。配向膜は従来公知の配向膜であれば、水平配向膜,垂直配向膜のいずれが用いられていても良く、用途に応じて適宜選定することができる。
調光フィルム50は、通常時は低ヘイズ)状態であり、移動物体の接近に従い高ヘイズ状態に切り替わり、移動物体の離反に従い低ヘイズ状態に戻るように透過率が変調されるという使用形態が想定される。その場合、リバースモードの調光層が消費電力の低減の上で優位性を持つ。
透明導電フィルム53を構成する透明基材55には、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム,ポリエチレン(PE)フィルム,ポリカーボネート(PC)フィルムなどを用いることができる。透明基材55の厚みは、約50~200μm程度が望ましい。
透明導電フィルム53を構成する透明導電層56には、一般的にITOなどの金属酸化物が用いられるが、ITOに替えて低抵抗の導電性ポリマーを採用することも可能である。導電性ポリマーとしては、PEDOT/PSSに例示されるπ共役系導電性高分子にドープされたポリアニオンを含む材料の採用が好適である。
ITO,IZO,有機導電膜からなる透明電極56は、ハンダに接着しないため、ハンダ付が可能となる様に、透明電極上に金属メッキ層(Niが代表的)を形成したり、導電性接着剤による厚膜層を形成したりするなどの中継的役割を担う端子処理が必要となる。
<調光システム>
図4,図5により、調光フィルム50を適用した調光システム10について説明する。
調光層52(PNLC)に電圧を印加するための給電部の形成手法の一例では、透明導電フィルム53(a,b)それぞれの端部において、透明基材55,透明導電層56,(リバースモードの場合、配向膜も含めて),および調光層52が切り欠かれて露出させた透明導電層56の表面に、接着強度を一層高める上で銀ペースト,カーボンテープ,銅テープがそれぞれ用いられて、接続端子(給電部)70が形成され、ハンダを経由した引回し配線により電源(不図示)に接続される。一方の透明導電フィルム側に形成される給電部は、他方の透明導電フィルム側に形成された給電部とは重なり合わず離間した箇所に形成される。こうして透明導電フィルム53に付与された給電部70から電圧が印加され、調光フィルム50の液晶駆動が行なわれる。(図4)
大面積の調光フィルム50は剛性が不十分であり、例えばガラス等に固定することにより、窓ガラスや展示ウィンドウ,間仕切りなどに採用することが可能となる。機械的強度の付与のため、調光フィルム50は、特に合わせガラスの形態で使用されることが多い。合わせガラスの形態とは図5(a)に示す形態であり、調光フィルム50を一対のガラス板90で挟み、それぞれを中間膜95で接着した形態である。合わせガラスの中間膜95には、合わせガラスが破損した場合に、ガラスの飛散を抑制する上で好適な素材としてPVB(ポリビニルブチラール)樹脂が多用されている。図5(b)は調光フィルム50の片面側のみを中間膜95を介してガラス板90に固定した形態の図示である。調光フィルム50を図5(a)(b)の何れの形態で使用するか、支持基板や接着層としてガラス板
90,PVB製中間膜95に替わる素材の選択は、用途に応じて適宜に選定される。
調光システム10には検知手段20が設置され、検知手段20による検知結果(人や動物の接近)と連動して、調光フィルム50による表示状態を変調する駆動制御手段80も具備する。駆動制御手段80による表示状態の変調は、透明状態から不透明状態(低ヘイズ→高ヘイズ)に限らず、高ヘイズ部分による特定パターン表示など、プログラム設計は多様に変更され得る。
透明状態にある調光システム10に接近する移動物体が人あるいはそれ以外であるかの判別を行なうことが出来ると、調光フィルムの高ヘイズ化(パターン表示)のタイミングとその速度や、他の報知手段(発光手段や音声手段)による警告のタイミング,音量,光量などを含むプログラム変更を適切に実行する上で有効である。
駆動制御手段80と連動して動作する発光素子やスピーカーも調光システム10に設置される。検知手段20,報知手段,給電部70,駆動制御手段80は図示の配置に限らず、存在に気付かれにくい隠匿した状態での配置が一層望ましい。
10 調光システム
20 検知手段
31 発光手段
32 音声手段
50 調光フィルム
52 調光層
53(a,b) 透明導電フィルム
55(a,b) 透明基材
56(a,b) 透明電極
70 給電部
80 駆動制御手段
90 ガラス板
95 中間膜
100 通行人

Claims (4)

  1. 印加電圧に応じて透過率を2段階以上に切り替え可能な調光フィルムと、
    前記調光フィルムを貼付または挟み込む透明基板と、
    移動物体の接近および離反を検知する検知手段と、
    前記検知手段の情報に基づいて前記調光フィルムの透過率を所定パターンで切り替える駆動制御手段と、
    を有する調光システムであって、
    前記駆動制御手段は、
    前記検知手段による前記接近の検知に従い、前記調光フィルムの状態を低ヘイズ状態から前記低ヘイズ状態と高ヘイズ状態とを交互に繰り返す状態に切り替え
    ことを特徴とする調光システム。
  2. 前記駆動制御手段は、
    前記検知手段による前記離反の検知に従い前記調光フィルムの状態を前記高ヘイズ状態から前記低ヘイズ状態に戻す、
    請求項1記載の調光システム。
  3. 前記検知手段には撮像手段を備えており、接近または離反する前記移動物体が人あるいはそれ以外であるかの判別を行なう
    請求項1記載の調光システム。
  4. 前記調光フィルムは、少なくとも透明電極が形成されたフレキシブルな透明基材フィルムを互いの透明電極側を対向して調光層を挟持してなる構成であり、
    前記調光層は、液晶分子がポリマー中に分散配置された高分子分散型液晶、または三次元の網目状に形成された樹脂からなるポリマーネットワークの内部に形成された空隙内に配置された液晶分子を有するポリマーネットワーク型液晶の何れかである
    請求項1~のいずれか一項に記載の調光システム。
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