本発明の異種視覚表示構造体は、光透過性平面基材の表面に、多数の空隙部と、非空隙部とからなる視覚制御層を設け、光透過性平面基材の裏面にコントラスト調整層、着色透明フィルム層、及びエレクトロルミネッセンス素子層の順に配置した発光性積層体において、視覚制御層表面には第1視覚表示層を設け、さらにエレクトロルミネッセンス素子層上には第2視覚表示層を配置することによって得られるものである。本発明に用いる光透過性平面基材としては、厚さ0.5mm〜8mm、特に厚さ2.5mm〜5mmの透明樹脂板(全光線透過率がJIS K7375において90%以上)であることが好ましく、この光透過性平面基材を第1視覚表示層付き視覚制御層と、第2視覚表示層との間に設けることによって、本来第1視覚表示層付きの視覚制御層側に第2視覚表示層の輪郭が浮き出て見える外観的な図柄干渉問題を、光透過性平面基材の有する光屈折効果によって抑止することができる。透明樹脂板に適した合成樹脂としては、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリエステル樹脂(PET樹脂)、ビニルエステル樹脂、半硬質ポリ塩化ビニル樹脂などの熱可塑性樹脂であり、屈折率1.4〜1.6nd(JIS K7105)を有する透明樹脂が最も好ましいが、乳濁半透明のもの、あるいは透明色樹脂に光拡散性微粒子を配合したものも使用できる。本発明においてはアクリル樹脂(メタクリレート樹脂)板、及びポリカーボネート樹脂が最も好ましい。光透過性平面基材の厚さが0.5mm未満だと、第2視覚表示層の図柄輪郭が第1視覚表示層側に浮き出て図柄が干渉する問題を効果的に抑止することが出来ないことがある。また厚さが8mmを超えると、得られる異種視覚表示構造体が過度に重量化し、施工・設置が困難となることがある。
また光透過性平面基材としては、繊維布帛を芯材として含み、その片面以上に熱可塑性樹脂層を有するシート状積層体であってもよい。このシート状積層体は具体的に、繊維織布、繊維編布、不織布などの繊維布帛を芯材として、その片面もしくはその両面に、軟質ポリ塩化ビニル樹脂、ポリエチレン樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリオレフィン系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、スチレン系エラストマー、ポリウレタン系エラストマー、フッ素系共重合樹脂から選ばれた、1種以上の熱可塑性樹脂から得られた光透過性のフィルムを積層したものである。これらの熱可塑性樹脂のフィルム厚さは、0.1mm〜2.0mm、好ましくは0.2mm〜1.0mmである。また繊維布帛は、ポリエステル繊維(ポリエチレンテレフタレート繊維)、ポリプロピレン繊維、ナイロン繊維、ビニロン繊維、ガラス繊維などの無着色モノフィラメント糸条、もしくは無着色マルチフィラメント糸条を用いることができ、これらの糸条は250〜1000デニールであり、これら糸条の交絡によって得られる、粗目、目抜け、非目抜け組織の織布、または編布である。本発明において最も好ましい例は、ポリエステル(ポリエチレンテレフタレート)繊維織布(目抜け平織)を芯材として、この両面に0.2mm〜0.5mmの軟質ポリ塩化ビニル樹脂シートを接着剤、または熱ラミネートの手段で積層した厚さ0.5mm〜2.0mmのターポリン膜材である。この軟質ポリ塩化ビニル樹脂シートには光透過性を極端に阻害しない範囲で、顔料、安定剤、充填材、難燃材、耐候安定剤など、公知のPVC用配合剤を任意で添加することができる。これらの光透過性平面基材の全光線透過率はJIS K7375にて25〜90%、好ましくは50〜75%である。光透過度が25%未満だと第2視覚表示層の図柄現出が不鮮明となることがある。
本発明の異種視覚表示構造体に用いる視覚制御層は、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、フッ素樹脂などの単品による熱可塑性樹脂フィルム(例えばポリエステルフィルムとしてPETフィルム)、または複数の熱可塑性樹脂フィルムからなる複層シートが耐屈曲性に優れ好ましい。視覚制御層は穿孔部と非穿孔部(シート実体部)からなり、非穿孔部は遮光性を有することが好ましい。非穿孔部が透光性だと、第2視覚表示層の現出時に第1視覚表示層と重なり合って第2視覚表示層が不明瞭となる。光遮断の手段としては二酸化チタンやカーボンブラックなどの無機顔料添加による着色隠蔽が挙げられるが、本発明においては表面に印刷など(第1視覚表示層)を施す観点から視覚制御層の表面は少なくとも二酸化チタンなどの白顔料によって着色されていることが好ましい。また遮光性を増すためにシート裏面をカーボンブラック含有インキ、或いはアルミニウムなどの金属粉含有インキで印刷して隠蔽層とすることが好ましい。また上記複層シートにおいては表面層を白着色として、裏面層、もしくは中間層をカーボンブラック着色、或いはアルミニウムなどの金属粉着色によって隠蔽層としたシートなども使用できる。
これらの視覚制御層は、パンチング穿孔またはレーザー穿孔により多数の穴開けを、単位面積当りに均一な配置密度個数で施した、熱可塑性樹脂フィルムまたはシートである。また、視覚制御層にはパンチング穿孔またはレーザー穿孔したアルミニウム板、ステンレ板などの多孔金属板を用いることもできる。これら穿孔フィルム、穿孔シート、穿孔金属板の厚さは0.05mm〜1mm、好ましくは0.1mm〜0.5mmであり、孔径は0.3mm〜5.0mmφ、好ましくは0.5mm〜3.0mmφである。孔径が0.3mmφ未満だと、得られる表示構造体において第2視覚表示層の表示現出、及びエレクトロルミネッセンス素子層の発光輝度が不十分となることがあり、また孔径が5.0mmφを超えると、得られる表示構造体において第1視覚表示層の鮮明性が不十分となることがある。特に穴の形状は丸型に限定されず、三角型、四角型、五角型、六角型、星型などであってもよい。特に大型表示構造体で設置位置が人目から離れる関係の場合は孔径サイズを2.5mm〜5.0mmとすることで第2視覚表示層の強調性を得ることができ、反対に小型表示構造体で設置位置が人目から近い関係の場合は孔径サイズを0.3mm〜1.5mmとすることで第1視覚表示層の緻密性を得ることができる。必要に応じて視覚制御層は、第1視覚表示層及び第2視覚表示層のデザインによって大小複数の孔径サイズ及び形状を併用、使い分けることもできる。また、視覚制御層の孔穴は線状であってもよく、視覚制御層の外観がストライプ状に形成されたものであってもよい。ストライプを形成する孔線としての線幅は0.3mm〜5.0mm、好ましくは1mm〜3.0mmである。ストライプ孔線はヨコ方向に形成されたもの、タテ方向に形成されたもの、斜め方向に形成されたもののいずれであってもよい。また視覚制御層の穿孔度は0.2〜0.6であり、特に好ましくは0.3〜0.5である。穿孔度は視覚制御層の単位面積に対して、その単位面積中に含む穿孔(孔線)の合計面積の比であり、穿孔度が0.2未満(穿孔の合計面積が20%未満)だと、得られる表示構造体において第2視覚表示層の表示現出、及びエレクトロルミネッセンス素子層の発光輝度が不十分となることがあり、また穿孔度が0.6を超える(穿孔の合計面積が60%を超える)と、得られる表示構造体において第1視覚表示層の鮮明性が不十分となることがある。
また視覚制御層としては、経糸条と、緯糸条からなる粗目布帛を芯材として含み、この経糸条と緯糸条の表面が熱可塑性樹脂で被覆して得られるメッシュ状シートも使用できる。このメッシュ状シートは具体的に、織布もしくは編布で、特に糸条と糸条との間に隙間を有する粗目布帛を芯材として、その粗目布帛に含む糸条の表面全面を、軟質ポリ塩化ビニル樹脂、アクリル樹脂、ポリエチレン樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂、ポリプロピレン樹脂、アイオノマー樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、フッ素樹脂、及びこれらの共重合体樹脂から選ばれた1種以上の熱可塑性樹脂で被覆したものである。これらの熱可塑性樹脂被覆は、粗目布帛の単位面積当りの質量に対して20〜100wt%で、その一部が繊維糸条に含浸していてもよい。粗目布帛としてはポリエステル繊維、ポリプロピレン繊維、ナイロン繊維、ビニロン繊維、ガラス繊維などのモノフィラメント糸条、もしくはマルチフィラメント糸条で、特に表面が平坦なフラットヤーンを用いることが第1視覚表示層形成に都合がよい。これらの糸条は250〜1500デニール、好ましくは500〜1000デニールであり、これら糸条の交絡によって得られる、粗目の織布、または編布である。本発明において最も好ましい例は、ポリエステルフラットヤーンによる粗目平織物を芯材として、着色ポリ塩化ビニル樹脂ペーストをコーティング、またはディッピングの手段で(含浸)被覆して得た実体部が遮光性を有するフラットなメッシュ状シートを用いることである。
メッシュ状シートは開孔部と非開孔部(メッシュ状シート実体部)からなり、非開孔部は熱可塑性樹脂被覆によって遮光性を有することが好ましい。非開孔部が透光性だと、第2視覚表示層の現出時に第1視覚表示層と重なり合って第2視覚表示層が不明瞭となる。光遮断の手段としては二酸化チタンやカーボンブラックなどの無機顔料添加による着色隠蔽が挙げられるが、本発明においては表面に印刷など(第1視覚表示層)を施す観点からメッシュ状シート(視覚制御層)の表面は少なくとも二酸化チタンなどの白顔料によって着色されていることが好ましい。また遮光性を増すためにシート裏面をカーボンブラック含有インキ、或いはアルミニウムなどの金属粉含有インキで印刷して隠蔽層とすることが好ましい。またメッシュ状シートにおいては表面層を白着色として、下地層をカーボンブラック着色、或いはアルミニウムなどの金属粉着色によって隠蔽層とした2層構成の熱可塑性樹脂被覆であってもよい。また、これらのメッシュ状シート(視覚制御層)の開孔部は、厚さが0.05mm〜1mm、好ましくは0.1mm〜0.3mmの開孔シートであり、孔サイズは0.5mm〜5.0mm、好ましくは1mm〜2.5mmである。孔サイズが0.5mm未満だと、得られる表示構造体において第2視覚表示層の表示現出、及びエレクトロルミネッセンス素子層の発光輝度が不十分となることがあり、また孔サイズが5.0mmを超えると、得られる表示構造体において第1視覚表示層の鮮明性が不十分となることがある。またメッシュ状シートの開孔度は0.20〜0.6であり、特に好ましくは0.3〜0.5である。開孔度はメッシュ状シートの単位面積に対して、その単位面積中に含む開孔の合計面積の比であり、開孔度が0.2未満(穿孔の合計面積が20%未満)だと、得られる表示構造体において第2視覚表示層の表示現出、及びエレクトロルミネッセンス素子層の発光輝度が不十分となることがあり、また開孔度が0.6を超える(穿孔の合計面積が60%を超える)と、得られる表示構造体において第1視覚表示層の鮮明性が不十分となることがある。開孔の形状は四角形、長方形、菱形もしくは、これらの角が潰れた変形体などである。
また視覚制御層としては印刷により形成されたものであってもよく、具体的に、グラビア印刷、シルクスクリーン印刷、インクジェット印刷、及び転写印刷のいずれか1種の方法により形成され、印刷実体部及び、多数の印刷空隙部とを有し、しかも印刷実体部が遮光性であることが好ましい。この視覚制御層は、1)光透過性平面基材上に直接設けられ、光透過性平面基材と一体化して得られるもの、2)厚さが0.05mm〜1.0mm透明シート上に設けられ、この透明シートを介在して光透過性平面基材上に配置されたもので、透明シートと光透過性平面基材とは接着されていないもの、のいずれかである。透明シートは具体的にポリエチレンテレフタレート、ボリブチレンテレフタレート、ポリナフタレンテレフタレートなどのポリエステルシート、アクリルシート、ポリカーボネートシート、ポリスチレンシート、ポリエチレンシート、ポリプロピレンシート、半〜硬質ポリ塩化ビニルシートなどである。特に2)場合、第1視覚表示層は自由に差替できるので、第1視覚表示層付き透明シートを単離し、他の第1視覚表示層付き透明シートとの差替を行うことで、特に商業用途での日替サービスやPOP表示などを即時的に変更することができる。このような第1視覚表示層の即時的変更を可能とするには、本発明の異種視覚表示構造体がアルミニウムやステンレスなどの金属製フレーム、またはポリカーボネートやポリスチレンなどプラスチック製フレームで、ネジ止装着、蝶番装着、差込嵌合装着などで固定されて着脱自在であることが必要である。そうすることにより、このフレームを分解して外し、本発明の異種視覚表示構造体の構成層を分離して、第1視覚表示層付き透明シートを単離し、他の第1視覚表示層付き透明シートとの差替を行うことができる。
印刷による視覚制御層形成の場合、印刷実体部が透光性だと、第2視覚表示層の現出時に第1視覚表示層と重なり合って第2視覚表示層が不明瞭となる。印刷実体部に遮光性を付与するためには、カーボンブラック含有インキ、或いはアルミニウムなどの金属粉含有インキで下地印刷し、その上に二酸化チタン含有白インキで被覆することが好ましい。具体的に印刷空隙部は、形状が円形、三角型、四角型、五角型、六角型、星型などであり、これらが、規則的配置、または不規則な配置で多数個設けられた非印刷部であり、径(形状ごとの最長径)が0.5mm〜5.0mm、好ましくは1mm〜2.5mmである。径が0.5mm未満だと、得られる表示構造体において第2視覚表示層の表示現出、及びエレクトロルミネッセンス素子層の発光輝度が不十分となることがあり、また径が5.0mmを超えると、得られる表示構造体において第1視覚表示層の鮮明性が不十分となることがある。また、視覚制御層の印刷空隙部は線状であってもよく、視覚制御層の外観がストライプ状に印刷されたものであってもよい。ストライプを形成する孔線としての非印刷線幅は0.5mm〜5.0mm、好ましくは1mm〜2.5mmである。また、遮光性を有する印刷実体部の線幅は0.5mm〜5.0mm、好ましくは1mm〜2.5mmである。ストライプ孔線はヨコ方向に形成されたもの、タテ方向に形成されたもの、斜め方向に形成されたもののいずれであってもよい。また視覚制御層の空隙度は0.2〜0.6であり、特に好ましくは0.3〜0.5である。空隙度は視覚制御層の単位面積に対して、その単位面積中に含む非印刷部の合計面積の比であり、空隙度が0.2未満(非印刷部の合計面積が20%未満)だと、得られる表示構造体において第2視覚表示層の表示現出、及びエレクトロルミネッセンス素子層の発光輝度が不十分となることがあり、また空隙度が0.6を超える(非印刷部の合計面積が60%を超える)と、得られる表示構造体において第1視覚表示層の鮮明性が不十分となることがある。
本発明の異種視覚表示構造体において、第1視覚表示層は、絵画、イラスト、写真、文字など表示内容に特に限定は無く、これらはグラビア印刷、シルクスクリーン印刷、インクジェット印刷、転写印刷のいずれかの手段によって、視覚制御層(メッシュ状シート)の表面に形成されるものであるが、特にコンピューターで処理された画像データの出力によるインクジェット印刷が好適である。本発明の異種視覚表示構造体は、予め視覚制御層(メッシュ状シート)表面に第1視覚表示層を設け、この第1視覚表示層が設けられた視覚制御層(メッシュ状シート)を、光透過性平面基材の表面に積層したものである。また本発明においてこの視覚制御層(メッシュ状シート)は、光透過性平面基材の表面に配置して用いる。この配置には、光透過性平面基材との分離が容易な粘着剤、粘着テープによる固定、或いは雌雄凹凸部材、例えば面ファスナーなどによる固定、クリップ固定、ネジ止め固定などが挙げられるが、特に本発明の異種視覚表示構造体がフレーム固定される場合は、本発明の異種視覚表示構造体を構成する各層は特に接着一体化されている必要はない。本発明の異種視覚表示構造体に使用するフレームはアルミニウムやステンレスなどの金属製、またはポリカーボネートやポリスチレンなどプラスチック製のパーツで構成され、ネジ止、蝶番、差込嵌合などで装着することにより異種視覚表示構成各層の縁部を全体固定し、外部からの水や異物の侵入を防ぐものである。このフレームを外して本発明の異種視覚表示構造体の構成各層を分離すること、特に第1視覚表示層(視覚制御層と一体化)を単離し、他の第1視覚表示層視覚制御層と一体化)との差替を行うことで、特に商業用途での日替サービスやPOP表示などを即時的に変更することができる。
本発明の異種視覚表示構造体において、第2視覚表示層は、グラビア印刷、シルクスクリーン印刷、インクジェット印刷、転写印刷、及びマーキングフィルム貼着のいずれか1種の方法により形成される。これら印刷に用いるインク、及びマーキングフィルムは光透過性を有するものが得られる異種視覚表示構造体の美的観点において好ましいが、印刷部やマーキングフィルム貼着をシルエット部として利用する場合にはインク、及びマーキングフィルムは光不透過性のものであってもよい。また光透過性インクと光不透過性のマーキングフィルムとの併用であってもよい。このような第2視覚表示層は、1)エレクトロルミネッセンス素子層上に直接設けられ、エレクトロルミネッセンス素子層と一体化して得られるもの、2)厚さが0.05mm〜1.0mm透明シート上に設けられ、この透明シートを介在してエレクトロルミネッセンス素子層上に配置されたもので、透明シートとエレクトロルミネッセンス素子層とは接着されていないもの、のいずれかである。透明シートは具体的にポリエチレンテレフタレート、ボリブチレンテレフタレート、ポリナフタレンテレフタレートなどのポリエステルシート、アクリルシート、ポリカーボネートシート、ポリスチレンシート、ポリエチレンシート、ポリプロピレンシート、半〜硬質ポリ塩化ビニルシートなどである。特に2)場合、第2視覚表示層は自由に差替できるので、第2視覚表示層付き透明シートを単離し、他の第2視覚表示層付き透明シートとの差替を行うことで、特に商業用途での日替サービスやPOP表示などを即時的に変更することができる。このような第2視覚表示層の即時的変更を可能とするには、本発明の異種視覚表示構造体がアルミニウムやステンレスなどの金属製フレーム、またはポリカーボネートやポリスチレンなどプラスチック製フレームで、ネジ止装着、蝶番装着、差込嵌合装着などで固定されて着脱自在であることが必要である。そうすることにより、このフレームを分解して外し、本発明の異種視覚表示構造体の構成層を分離して、第2視覚表示層付き透明シートを単離し、他の第2視覚表示層付き透明シートとの差替を行うことができる。あるいはフレームそのものに第2視覚表示層付き透明シートの差替を行うための専用スリット孔が設けられていればよい。この方法だと本発明の異種視覚表示構造体からフレームを取り外すことなく、第2視覚表示層付き透明シートとの差替を行うことができる。この場合、専用スリット孔を隠し、水や異物の侵入を防ぐためのカバー部材が付属装着することが好ましい。
本発明の異種視覚表示構造体において、エレクトロルミネッセンス素子層は、無機エレクトロルミネッセンス素子または有機エレクトロルミネッセンス素子などの面発光体、さらにはLEDエッジライト面発光体である。本発明においては安価で大面積を面発光可能な無機エレクトロルミネッセンス素子またはLEDエッジライト面発光体が好ましい。無機エレクトロルミネッセンス素子とは具体的に、発光体としての無機蛍光体の背面に誘電体層を設け、無機蛍光体の前面に設けた透明電極(透明導電膜)と、誘電体層の背面に設けた背面電極の間に電圧を印加して、無機蛍光体を発光させるものである。無機蛍光体としては、例えば、バリウムチオアルミネート(BaAl2S4)などの硫化アルミニウム系蛍光体材料や、硫化亜鉛(ZnS)系蛍光体材料、あるいは硫化ストロンチウム(SrS)などのアルカリ土類金属硫化物蛍光体材料などが使用可能である。これらのBaAl2S4、ZnS、SrSなどの母材に遷移金属や稀土類金属イオンを微量に添加することにより、種々の色の発光を可能とする。例えばZnS:Mnは橙色、ZnS:Tbは緑色、ZnS:Cuは青緑、SrS:Ceは青緑、CaS:Euは赤色、BaAl2S4:Euは青色に発光させることができる。
透明電極としては、酸化インジウム(In2O3)に数%の酸化錫(SnO2)を添加した酸化インジウム錫(ITO)エッチング膜を用いたものが一般的であるが、この透明電極は折曲や屈曲により微細亀裂を伴うことで面発光素子としての機能を損なうことがあるので、本発明の異種視覚表示構造体においては特に有機透明導電膜が好ましい。透明電極を有機透明導電膜とすることで、本発明の異種視覚表示構造体の応力変形による透明電極の亀裂発生を防ぐことを可能とする。このような有機透明導電膜の例としては、ポリチオフェン、ポリ3,4−エチレンジオキシチオフェン(PEDOT)、ポリ3, 4−エチレンジオキシチオフェン/ ポリスチレンスルホン酸(PEDOT/PSS)などのポリチオフェン誘導体、ポリアニリン、及びポリアセチレンなどの導電性高分子膜を、厚さ1μm〜3μm程度に形成したものである。また背面電極としては、銀(Ag)ペースト薄膜、あるいは銀ペーストに15質量%以下程度の白金(Pt)やパラジウム(Pd)を添加した合金(Ag−Pt、Ag−Pd)薄膜などの金属薄膜などを厚さ8μm〜15μm程度に印刷形成したものが挙げられる。また誘電体層としては、比誘電率と絶縁破壊電圧が高い材料が好ましく、例えば、チタン酸バリウム(BaTiO3)薄膜やチタン酸バリウムストロンチウム(BaSrTiO3)薄膜などの誘電体薄膜が挙げられる。誘電体層の比誘電率が高いほど、透明電極と背面電極との間に印加した電圧が効率的に無機蛍光体に印加される。誘電体層の厚みは、例えばBaTiO3を用いた場合には16μm以上であることが好ましい。
無機エレクトロルミネッセンス素子にはさらに、その表面を保護するための透明フィルム層(PETまたはシリカ蒸着PET:75μm〜200μm)を設けること、裏面を保護するための防湿フィルム層(シリカ蒸着PET:75μm〜200μm)を設けること、無機エレクトロルミネッセンス素子層の裏面にベースパネルを設けること、前面透明電極と無機蛍光体との間に絶縁膜を設けること、背面電極と無機蛍光体との間に絶縁膜を設けることができる。無機エレクトロルミネッセンス素子への電源供給はAC100〜220V 50/60Hzをインバーターにより周波数を上げ、400Hz〜1000Hzに調整することで発光輝度を高くすることができ、またDC(3V、5V、12Vなど)の場合は、直流/交流インバーターにより電圧、周波数を上げることによって発光輝度の制御を行うことができる。また、本発明の異種視覚表示構造体には太陽電池を附帯装備することによって無機エレクトロルミネッセンス素子に太陽光発電した電力(蓄電池)を供給することもできる。このような無機エレクトロルミネッセンス素子への電源供給(電源ON)、すなわち第2視覚表示層の現出手段は、電波信号、インターネット回線信号、電話回線信号のような遠隔操作、または本発明の異種視覚表示構造体に附帯装備する震度センサーによる特定の揺れ感知による自己点灯などが挙げられ、本発明の異種視覚表示構造体には公知の電波受信機器、及び公知のインターネット回線装置、公知の電話回線装置、公知の震度センサー装置などを構造体内に附帯することができる。
本発明の異種視覚表示構造体は、光透過性平面基材の表面に、多数の空隙部と、非空隙部とからなる視覚制御層が設けられ、光透過性平面基材の裏面に、コントラスト調整層、着色透明フィルム層、エレクトロルミネッセンス素子層の順に配置した発光性積層体で、特に着色透明フィルム層は、エレクトロルミネッセンス素子層の発光色と補色関係の着色であることがナチュラル色の現出に必要である。補色関係とは、CIE(国際照明委員会)XYZ表色系のxy色度図において、中央付近の白色点を通る直線の両側等距離の位置関係にある色であり、互いの混合で白色となる。また、マンセル表色系の色相環においては、互いに相対する位置に配置された色同士の組み合わせ、例えば、赤と青緑,橙と青,黄と青紫,黄緑と紫,緑と赤紫などが挙げられる。具体的には汎用性の高いエレクトロルミネッセンス素子層として、硫化亜鉛(ZnS)に銅(Cu)をドープした青緑の蛍光発光体を用いた場合、第2視覚表示層(グラビア印刷、シルクスクリーン印刷、インクジェット印刷、転写印刷、及びマーキングフィルム貼着などで光透過性を有する)の発色が青緑色の加色となって色彩が不自然となる。そのため第2視覚表示層本来の発光色とするために、青緑の補色であるピンク系着色透明フィルム層を無機エレクトロルミネッセンス素子層上に設けてフィルター補正することが好ましい。着色透明フィルム層を構成する樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート、ボリブチレンテレフタレート、ポリナフタレンテレフタレートなどのポリエステル、アクリル、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、半〜硬質ポリ塩化ビニルなどが挙げられ、これらのフィルム(シート)厚さとしては0.05mm〜1mm程度である。ピンクの透明着色には公知の有機顔料及び、無機顔料を用いることができ、無機顔料単独ではピンク系としては、(Zr,Fe)SiO4(サーモンピンクまたはコーラルピンク)、(Al,Cr)2O3、Zn(Al,Cr)2O4、(Al,Mn)2O3(マンガンピンクまたは陶試紅)、(Sn,Cr)O2、CaO・SnO・SiO2・Cr2O3、Zr−Si−Pr系化合物(イエロー系)と、Cr−Ti−Sb系化合物(レッド系)の混合によるピンク色が例示できる。また有機顔料の赤を希釈したピンク色、または赤と黄を混合して得たピンク色であってもよく、さらにペリレン系蛍光顔料(染料)を希釈したピンク色、またはローダミン系染料によるピンク色であってもよい。他の発光色補正例としては、例えばZnS:Mn(橙色)の色補正に黄緑(コバルトグリーン、リンマングリーン、コバルトクロムグリーン、ビクトリアグリーン、エジプトグリーン、マンガングリーンなど)の着色透明フィルム層、ZnS:Tb(緑色)の色補正に赤の着色透明フィルム層、SrS:Ce(青緑)の色補正にピンクの着色透明フィルム層、CaS:Eu(赤色)の色補正に青(コバルトブルー、セルリアンブルー、マンガンブルー、エジプトブルー、タングステンブルーなど)の着色透明フィルム層、BaAl2S4:Eu(青色)の色補正に赤の着色透明フィルム層が例示できる。このような着色透明フィルム層の最も簡単な製造方法は、市販のフィルム(好ましくはポリエチレンテレフタレートフィルム)表面に、着色コーティング層を設けたものである。
本発明の異種視覚表示構造体において、コントラスト調整層は、微粒子及び熱可塑性樹脂とで構成され、無着色の熱可塑性樹脂中に微粒子が分散してなる層を含むフィルムであって、また微粒子が着色された光半透過性微粒子であり、その粒子径が2μm〜20μm、かつ、全光線透過率(JIS K7375)が10〜40%であり、その含有率がコントラスト調整層に対して0.1〜10質量%であることが好ましい。このコントラスト調整層は、第2視覚表示層の画像色彩を鮮明とする作用を発揮するのみならず、エレクトロルミネッセンス素子を発光させない時には第2視覚表示層を隠蔽して、第1視覚表示層との画像の重なり合いを防止する作用効果を発揮する。光半透過性微粒子の粒子径が2μm未満だと第2視覚表示層のコントラストが不十分となることがあり、また粒子径が20μmを越えると第2視覚表示層の表示が不鮮明となることがある。また光半透過性微粒子の全光線透過率が10%未満だと第2視覚表示層の表示が不鮮明となることがあり、また全光線透過率が40%を超えると第2視覚表示層のコントラストが不十分となることがある。上記の光半透過性微粒子のコントラスト調整層に対する含有率が0.1質量%未満だと第2視覚表示層のコントラストが不十分となることがあり、含有率が10質量%を超えると第2視覚表示層の表示が不鮮明となることがある。コントラスト調整層に用いる熱可塑性樹脂としては、アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、半〜硬質塩化ビニル樹脂、フッ素系共重合体樹脂、スチレン系共重合体樹脂などが挙げられる。光半透過性微粒子としては、カーボンブラック、アニリンブラック、チタンブラックなどの黒顔料を微量含有して光透過性の黒とした樹脂微粒子、またはガラス微粒子、あるいは、青(シアン)・赤(マゼンダ)・黄(イエロー)の有機系顔料の3原色混合によって光透過性の黒系の着色とした樹脂微粒子が挙げられる。有機系顔料の3原色混合による黒系の着色とは、スモークブルー、スモークグリーン、スモークブラウン、スモークグレーなどを包含するものとする。樹脂微粒子を構成する樹脂はフェノール樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、不飽和ポリエステル樹脂などの熱硬化性樹脂からなるもので、これらによる微粒子は有機系顔料の3原色混合によって光透過性の黒系の着色とした熱硬化性樹脂コンパウンドを粉砕処理した粒子径が2μm〜20μmのものである。また、アクリル樹脂(ポリメタクリル酸メチル)、ポリウレタン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリエステル樹脂、塩化ビニル樹脂などに黒顔料を微量添加した組成物を電子線架橋、またはイソシアネート架橋剤処理し、それを粉砕してなる粒子径が2μm〜20μmの光透過性樹脂微粒子、同様にこれらの樹脂に青(シアン)・赤(マゼンダ)・黄(イエロー)の有機系顔料の3原色混合によって光透過性の黒系の着色とした組成物をイソシアネート架橋処理し、それを粉砕してなる粒子径が2μm〜20μmの光透過性樹脂微粒子などが挙げられる。本発明の異種視覚表示構造体において、コントラスト調整層は、微粒子及び熱可塑性樹脂とで構成され、無着色の熱可塑性樹脂中に微粒子が分散してなる層を含むフィルムである。拠って、微粒子及び熱可塑性樹脂とで構成され、無着色の熱可塑性樹脂中に着色光半透過性微粒子が分散した層は、ポリエチレンテレフタレート、ボリブチレンテレフタレート、ポリナフタレンテレフタレートなどのポリエステル、アクリル、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、半〜硬質ポリ塩化ビニルなどの、厚さが0.1mm〜1mmの無色透明フィルム(シート)を基体として、その片面もしくは両面にコーティングによって設けられた厚さが0.11mm〜1.5mmのフィルム(シート)であってもよい。コントラスト調整層の態様は、1)着色光半透過性微粒子分散無着色熱可塑性樹脂層のみの構成、2)着色光半透過性微粒子分散無着色熱可塑性樹脂層/無色透明フィルム(シート)基体の構成、3)着色光半透過性微粒子分散無着色熱可塑性樹脂層/無色透明フィルム(シート)基体/着色光半透過性微粒子分散無着色熱可塑性樹脂層の構成の何れかである。
また、本発明の異種視覚表示構造体において、コントラスト調整層は、微粒子及び熱可塑 性樹脂とで構成され、着色された熱可塑性樹脂中に無着色の光透過性微粒子が分散してなる層を含むフィルムであってもよく、この無着色光透過性微粒子の粒子径が5μm〜25μm、かつ、全光線透過率(JIS K7375)が80%〜99%であり、その含有率がコントラスト調整層に対して5〜40質量%であることが好ましい。このコントラスト調整層は、第2視覚表示層の画像色彩を鮮明とする作用を発揮するのみならず、エレクトロルミネッセンス素子を発光させない時には第2視覚表示層を隠蔽して、第1視覚表示層との画像の重なり合いを防止する作用効果を発揮する。無着色光透過性微粒子の粒子径が5μm未満だと第2視覚表示層の表示が不鮮明となることがあり、また粒子径が25μmを越えると第2視覚表示層のコントラストが不十分となることがある。また無着色光透過性微粒子の全光線透過率が80%未満だと第2視覚表示層の表示が不鮮明となることがある。上記の無着色光透過性微粒子のコントラスト調整層に対する含有率が5質量%未満だと第2視覚表示層の表示が不鮮明となることがあり、含有率が40質量%を超えると第2視覚表示層のコントラストが不十分となることがある。無着色光透過性微粒子はガラスビーズまたはガラス粉が好ましい。また無着色光透過性微粒子は樹脂であってもよく、無着色光透過性微粒子を構成する樹脂はフェノール樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、不飽和ポリエステル樹脂などの熱硬化性樹脂からなるもの、または架橋アクリル樹脂(ポリメタクリル酸メチル)、架橋ポリスチレン樹脂などの粉砕体で、これらによる微粒子は熱硬化性樹脂コンパウンドを粉砕処理した粒子径が5μm〜25μmのものである。コントラスト調整層に用いる熱可塑性樹脂としては、アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、半〜硬質塩化ビニル樹脂、フッ素系共重合体樹脂、スチレン系共重合体樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ボリブチレンテレフタレート、ポリナフタレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリエチレン、ポリプロピレンなどが挙げられ、これらの熱可塑性樹脂にはカーボンブラック、アニリンブラック、チタンブラックなどの黒顔料を含有して光透過性の黒としたもの、あるいは青(シアン)・赤(マゼンダ)・黄(イエロー)の有機系顔料の3原色混合によって光透過性の黒系の着色としたものであり、有機系顔料の3原色混合による黒系の着色とは、スモークブルー、スモークグリーン、スモークブラウン、スモークグレーなどを包含するものとする。コントラスト調整層として着色熱可塑性樹脂中に無着色の微粒子が分散してなるフィルム(シート)厚さとしては0.1mm〜1mm程度で、これらはカレンダー成形、Tダイス押出成形、もしくはコーティング成形によって製造することができる。本発明の異種視覚表示構造体において、コントラスト調整層は、微粒子及び熱可塑性樹脂とで構成され、着色された熱可塑性樹脂中に無着色の光透過性微粒子が分散してなる層を含むフィルムである。拠って、微粒子及び熱可塑性樹脂とで構成され、着色の熱可塑性樹脂中に無着色の光透過性微粒子が分散した層は、ポリエチレンテレフタレート、ボリブチレンテレフタレート、ポリナフタレンテレフタレートなどのポリエステル、アクリル、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、半〜硬質ポリ塩化ビニルなどの、厚さが0.1mm〜1mmの無色透明フィルム(シート)を基体として、その片面もしくは両面にコーティングによって設けられた厚さが0.11mm〜1.5mmのフィルム(シート)であってもよい。コントラスト調整層の態様は、1)無着色光透過性微粒子分散着色熱可塑性樹脂層のみの構成、2)無着色光透過性微粒子分散着色熱可塑性樹脂層/無色透明フィルム(シート)基体の構成、3)無着色光透過性微粒子分散着色熱可塑性樹脂層/無色透明フィルム(シート)基体/無着色光透過性微粒子分散着色熱可塑性樹脂層の構成の何れかである。
本発明の異種視覚表示構造体において、視覚制御層の最外層に透明保護層が設けられていることが好ましい。これによって第1視覚表示層及び第2視覚表示層の表示に光沢感及び立体感をもたらし、さらに第1視覚表示層を雨や紫外線から保護し、更には汚れ付着を防ぐことで長期間第1視覚表示層の美観を維持することができる。透明保護層としては、厚さが0.5mm〜3.0mmのガラス板のような透明基体の他、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリエステル樹脂(PET樹脂)、ビニルエステル樹脂、半硬質ポリ塩化ビニル樹脂など、屈折率1.4〜1.6nd(JIS K7105)を有する厚さが0.5mm〜3.0mmの硬質透明樹脂板が使用できる。また厚さが0.5〜1.0mmのポリエステル(ポリエチレンテレフタレート)、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリウレタン樹脂、半〜硬質ポリ塩化ビニル樹脂、軟質フッ素樹脂共重合体などの軟質フィルム(シート)であってもよい。これらの樹脂板やフィルム(シート)表面には耐候保護層が設けられていることが好ましい。耐候保護層とは、第1視覚表示層の色褪せを抑制する効果、第1視覚表示層の煤塵汚れ付着を抑制する効果を本発明の異種視覚表示構造体に附帯させるものであり、この耐候保護層は、透明性を有する塗膜、もしくは透視性を有するフィルムの積層によって形成される。透明性を有する塗膜、及び透視性を有するフィルムには、第1視覚表示層の色褪せ抑制効果を向上させるために、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、シアノアクリレート系紫外線吸収剤など公知の紫外線吸収剤を少なくとも含み、更に公知のヒンダードアミン系光安定剤を併用し、更に必要に応じて公知の酸化防止剤を用いることができ、これらの総添加量は耐候保護層に対して0.05〜5質量%が好適である。耐候保護層は具体的に、アクリル樹脂、アクリル−シリコン共重合体樹脂、アクリル−フッ素共重合体樹脂、フッ素系共重合体樹脂、フッ化ビニリデン樹脂、アクリル−ウレタン共重合体樹脂、架橋型ウレタン樹脂の1種以上を溶解して含む溶液の塗布・乾燥によって得られる、0.001〜0.1mm厚さの透明な塗膜、もしくはこれらの樹脂の1種以上を熱溶融して成型した、厚さ0.01〜0.5mmの単層透明フィルム、もしくは複層化透明フィルムである。また耐候保護層表面に、微粒子シリカ(特にコロイダルシリカ)、光触媒性物質(特に二酸化チタン)、有機シリケート化合物(メチル、またはエチルシリケートの加水分解縮合物)から選ばれた1種以上による薄膜を形成することによって、更に汚れ防止性に優れた表示構造体を得ることができる。
以下、本願発明の異種視覚表示構造体を具体的に説明する。図1は本願発明の異種視覚表示構造体(1)の通常時(エレクトロルミネッセンス素子OFF)における外観の一例を示す図であり、視覚制御層(3)の表面に第1視覚表示層(4)として「STAR」の文字が、グラビア印刷、スクリーン印刷、インクジェット印刷、転写印刷などの手段によって設けられたものである。通常、第1視覚表示層(4)には、公園や公共施設の案内図、企業広告などの多彩な表示がなされるが、図示説明のため「STAR」の文字のみに簡略化した。視覚制御層(3)は実体部(3aa)及び穿孔部(3ab)とで構成されている。これらの穿孔部(3ab)部は第1視覚表示層(4)の「STAR」の文字の構成の一部を表示するための印刷が部分的に欠落し、穿孔部(3ab)にはコントラスト調整層(7)の一部が露出して観察される状態にある。異種視覚表示構造体(1)は縁部4辺がフレーム(11)で固定されている。
図2は、図1の本願発明の異種視覚表示構造体(1)の暗所作動時(エレクトロルミネッセンス素子ON)における外観の一例を示す図であり、エレクトロルミネッセンス素子発光時における暗所観察状態を表すものである。視覚制御層(3)の表面はエレクトロルミネッセンス素子層(6)の発光により第2視覚表示層(5)の「6角星型」がドット表示され、第1視覚表示層(4)の「STAR」の文字は観察されない。通常、第2視覚表示層(5)には、避難誘導のシンボルマークやメッセージの表示、または更なる企業広告などが表示されるが、図示説明のため「6角星型」の図形のみに簡略化した。視覚制御層(3)の穿孔部(3ab)に表示されてドット状に観察されるのは第2視覚表示層(5)の一部である。第2視覚表示層(5)の「6角星型」は、エレクトロルミネッセンス素子層(6)の発光及び/又は第2視覚表示層(5)の光透過発光で構成され、穿孔部(3ab)に表示されるドット表示の集合体であり、これらはコントラスト調整層(7)を透過して観察される。第2視覚表示層(5)は「6角星型」をグラビア印刷、スクリーン印刷、インクジェット印刷、転写印刷、及びマーキングフィルム貼着により形成したもので、エレクトロルミネッセンス素子層(6)の発光を隠蔽する処理がなされた部分は暗部または低輝度発光部分として「6角星型」の陰影を強くする。必ずしも陰影を付ける必要は無く、例えば「6角星型」を青緑に高輝度発光させ、背景余白を黄色に高輝度発光させたものなど、通常はエレクトロルミネッセンス素子層(6)の全面を活かした発光表示が好ましい。
図3は、図1の本願発明の異種視覚表示構造体(1)の明所作動時(エレクトロルミネッセンス素子ON)における外観の一例を示す図であり、視覚制御層(3)の表面に第1視覚表示層(4)として「STAR」の文字が観察されると同時に、エレクトロルミネッセンス素子層(6)の発光により第2視覚表示層(5)の「6角星型」が「STAR」の文字と重なって両方が観察される。特にエレクトロルミネッセンス素子層(6)の発光輝度が高いので、日中の街頭または店舗内など、充分に明るい環境においても第2視覚表示層(5)が鮮烈に表示されることで人目を惹く効果に優れ、さらにエレクトロルミネッセンス素子層(6)の発光を短時間で「ON/OFF」操作を繰り返すことで、第2視覚表示層(5)のフラッシュ点灯が演出され、一層人目を惹く効果が得られ、このような衆目効果は、災害発生時の避難誘導や注意喚起、メッセージ伝達などに対して極めて有効である。無機エレクトロルミネッセンス素子層(6)への電源供給(電源ON)、すなわち第2視覚表示層(5)の現出手段は、電波信号やインターネット回線信号のような遠隔操作、または異種視覚表示構造体(1)に附帯装備する震度センサーによる特定の揺れ感知による自己点灯(フラッシュ点灯プログラム)などによる。
図4は本願発明の異種視覚表示構造体の具体的構成の一例を示す図であり、表面となる最外層から順に、透明保護層(9)/第1視覚表示層(4)/視覚制御層(3)/光透過性平面基材(2)/コントラスト調整層(7)/着色透明フィルム層(8)/第2視覚表示層(5a)/エレクトロルミネッセンス素子層(6)/バックパネル/(10)で積層され、この積層体はフレーム(11)により固定支持されている。この積層構成において、絶縁や防湿の効果を目的に必要に応じて任意の層間に透明フィルムを介在することもできる。図4の異種視覚表示構造体は、エレクトロルミネッセンス素子層(6)上に直接第2視覚表示層(5a)を設けてあるので第2視覚表示層の表示は常時同一となる。
図5は本願発明の異種視覚表示構造体の具体的構成の一例を示す図であり、表面となる最外層から順に、透明保護層(9)/第1視覚表示層(4)/視覚制御層(3)/光透過性平面基材(2)/コントラスト調整層(7)/着色透明フィルム層(8)/第2視覚表示層(5b)/エレクトロルミネッセンス素子層(6)/バックパネル/(10)で積層され、この積層体はフレーム(11)により固定支持されている。この積層構成において、絶縁や防湿の効果を目的に必要に応じて任意の層間に透明フィルムを介在することもできる。図5の異種視覚表示構造体は、エレクトロルミネッセンス素子層(6)上に、第2視覚表示層(5b)、すなわち透明フィルム層上に設けられた第2視覚表示層がエレクトロルミネッセンス素子層(6)と接着されることなく、フリーな状態で重ねてあるため、フレーム(11)を外して第2視覚表示層(5b)を単離することで、他の第2視覚表示層(5b)との差替が容易である。従って図5の異種視覚表示構造体は随時任意の表示やメッセージ伝達を変幻自在とする。
図6は本願発明の異種視覚表示構造体において必須のコントラスト調整層(7)の一例を示す図である。コントラスト調整層(7)は、着色された光半透過性微粒子(7aa)が、無着色の熱可塑性樹脂(7ab)中に分散したものであり、これによりエレクトロルミネッセンス素子層の発光輝度を保ちながら鮮明な第2視覚表示層(5)の現出を可能とする。特に着色された光半透過性微粒子(7aa)の使用が肝要である。
図7は本願発明の異種視覚表示構造体において必須のコントラスト調整層(7)の一例を示す図である。コントラスト調整層(7)は、無着色の微粒子(7ba)が、着色された熱可塑性樹脂(7bb)中に分散したものであり、これによりエレクトロルミネッセンス素子層の発光輝度を保ちながら鮮明な第2視覚表示層(5)の現出を可能とする。
以下、本発明について実施例を挙げて具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
〔実施例1〕
〈視覚制御層及び第1視覚表示層〉
視覚制御層として、白顔料で着色された0.05mm厚の白PET(ポリエチレンテレフタレート)樹脂層と、黒顔料で着色された0.05mm厚の黒PET(ポリエチレンテレフタレート)樹脂層とからなる0.1mm厚の白/黒ツートンシートに、直径2mmφの円孔を、など間隔で多数個パンチングした、穿孔度42の穿孔シート(タテ440mm×ヨコ614mm)を用いた。(穿孔度は視覚制御層の単位面積に対して、その単位面積中に含む穿孔の合計面積との比である。)この穿孔シートは遮光性の実体部と透過性の穿孔部とからなる。この視覚制御層の白PET面に、溶剤系インク使用によるシルクスクリーン印刷によって「STAR」の文字を印刷し第1視覚表示層を形成した。第1視覚表示層は「S(青)」「T(黄)」「A(緑)」「R(赤)」で構成し、1文字サイズは長さ220mm×幅110mmである。第1視覚表示層上に、厚さが均一に1mmで、屈折率1.49nd(JIS K7105)の透明アクリル平板(タテ440mm×ヨコ614mm)を透明保護層として非接着で配置した。
〈光透過性平面基材〉
厚さが均一に5mmで、屈折率1.49nd(JIS K7105)全光線透過率(JIS K7375)が99%の透明アクリル平板(タテ440mm×ヨコ614mm)を光透過性平面基材に用い、視覚制御層の下(非第1視覚表示層形成面)に非接着で配置し[透明保護層/第1視覚表示層/視覚制御層/光透過性平面基材]中間体1を得た。
〈コントラスト調整層〉
上記中間体1の光透過性平面基材の下に、下記[配合1]及び[配合2]とからなるコントラスト調整層を非接着で配置し[透明保護層/第1視覚表示層/視覚制御層/光透過性平面基材/コントラスト調整層]中間体2を得た。
[配合1]着色微粒子
ポリメタクリル酸メチル樹脂 100質量部
アニリンブラック(着色剤) 1質量部
上記配合1の組成物から得た、粒子径が12μm、かつ、全光線透過率(JIS K7375)が25%の架橋微粒子(黒色光半透過性)を用いた。
[配合2]
コントラスト調整層
ポリウレタン樹脂 100質量部
ヘキサメチレンジイソシアネート(硬化剤) 10質量部
着色微粒子 15質量部
メチルエチルケトン(希釈溶剤) 300質量部
上記[配合2]のコントラスト調整層用組成物液体を、厚さ120μm、タテ440mm×ヨコ614mmサイズのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(160g/m2)の片面にワイヤーバーで乾燥付着質量が15μmとなるように形成し、PETフィルム層を構成成分に含む厚さ135μmのスモークグレー色のコントラスト調整層(178g/m2)を得た。着色微粒子(2.16g/m2)の含有率はコントラスト調整層全体に対して1.21質量%である。
〈着色透明フィルム層〉
上記中間体2の光透過性平面基材の下に、下記[配合3]からなる着色透明フィルム層を非接着で配置し[透明保護層/第1視覚表示層/視覚制御層/光透過性平面基材/コントラスト調整層/着色透明フィルム層]中間体3を得た。
[配合3] 着色透明フィルム層
ポリウレタン樹脂 100質量部
ヘキサメチレンジイソシアネート(硬化剤) 10質量部
(Zr,Fe)SiO4(コーラルピンク)(着色剤) 10質量部
メチルエチルケトン(希釈溶剤) 300質量部
上記[配合3]の着色透明フィルム層用組成物液体を、厚さ120μm、タテ440mm×ヨコ614mmサイズのポリエチレンテレフタレート(PET)透明フィルム(160g/m2)の片面にワイヤーバーで乾燥付着質量が15μmとなるように形成し、PETフィルム層を構成成分に含む厚さ135μmのコーラルピンク色の着色透明フィルム層(180g/m2)を得た。
〈無機エレクトロルミネッセンス素子層及び第2視覚表示層〉
上記中間体3の着色透明フィルム層の下に、下記無機エレクトロルミネッセンス素子層及び第2視覚表示層を非接着で配置し[透明保護層/第1視覚表示層/視覚制御層/光透過性平面基材/コントラスト調整層/着色透明フィルム層/第2視覚表示層/無機エレクトロルミネッセンス素子層]中間体4を得た。無機エレクトロルミネッセンス素子層は、硫化亜鉛(ZnS)を母材として銅をドープ金属とする、発光輝度350cd、発光色が青緑の市販品(タテ440mm×ヨコ614mm)、AC100−240V及び、専用インバーターを用いた。主な構成は上から、防湿PETフィルム層/導電性ポリマー透明電極層/Ag前面電極層/導電体絶縁膜層/硫化亜鉛(ZnS)発光層/誘電耐圧層/Ag背面電極層/防湿PETフィルム層である。この無機エレクトロルミネッセンス素子層の上に直接シルクスクリーン印刷により、非印刷部が星型マーク(6角星二重;サイズ、タテ360mm、ヨコ360mm)となるように印刷し、これを第2視覚表示層とした。シルクスクリーンインキは光線不透過性の黒インキを用い、非印刷部のみが発光可能領域とした。また上記中間体4の裏面にはバックパネルとして厚さ1mm、タテ440mm×ヨコ614mmのアルミ板を非接着で配置し、さらにアルミ製フレーム(タテ440mm×2本、ヨコ614mm×2本のネジ止嵌合)にて全構成層を固定して、本発明の異種視覚表示構造体を得た。
〈異種表示試験〉
得られた表示体を室内の壁に掛け、照明下で観察したところ、第1視覚表示層の「STAR」の文字「S(青)」「T(黄)」「A(緑)」「R(赤)」が明瞭に認識され、第2視覚表示層の星型マーク(6角星二重)の存在は完全に認識されなかった。次に室内照明を消し、AC200V、インバーターで周波数を1000Hzとして無機エレクトロルミネッセンス素子層を発光させたところ、第2視覚表示層の星型マーク(6角星二重)がやや緑色を帯びた白色で高輝度に現出した。この第2視覚表示層は穿孔シートの開孔部(直径2mmφの円孔)からの透過発光によりドット状集合体で表示され、第2視覚表示層の隠蔽印刷部分は開孔部(直径2mmφの円孔)がドット発光しない暗黒部分となることで明瞭な星型形状が表示された。間近に観察すると無機エレクトロルミネッセンス素子層の発光で第1視覚表示層が朧に認識されるものであったが、数メートル離れての観察では第1視覚表示層の存在は認識できないものであった。さらにこの状態で室内照明を点灯すると、第1視覚表示層に第2視覚表示層が重なった状態の現出となったが、第2視覚表示層の発光輝度が高いため第一印象は第2視覚表示層主体となり、数秒の時間を経て第1視覚表示層が第二印象となった。同様の試験を街頭で実施したところ、夜間でも街灯の多い場所、車の通行量の多い場所、店舗の密集地、ネオンサインや電飾看板などの多い、明るい場所においても、無機エレクトロルミネッセンス素子層の発光輝度が高いため、第1視覚表示層を表示しながらも第2視覚表示層をアピールする効果に優れ、特に無機エレクトロルミネッセンス素子層の発光を数秒ごとにON/OFFを交互に繰り返すことで更に第2視覚表示層のメッセージを鮮烈に印象付けるものであった。さらに驚くべきことに本発明の異種視覚表示構造体は、晴天の日中の使用においても第2視覚表示層のメッセージが鮮烈であった。
〔実施例2〕
実施例1の視覚制御層(白/黒ツートンの穿孔シート)を、下記に示すメッシュ状シートに変更した以外は、実施例1と同様にして、第1視覚表示層と第2視覚表示層を具備する、タテ440mm×ヨコ614mmサイズの異種視覚表示構造体を得た。
〈メッシュ状シート〉
黒染のポリエステル繊維マルチフィラメントフラットヤーン(750デニール)を経糸条、及び緯糸条とし、経糸条、及び緯糸条の打込本数が8本/1インチである平織物を基布として用い、これを、白色ペースト状ポリ塩化ビニル樹脂組成物(ペーストPVC、フタル酸系可塑剤、バリウム系複合金属安定剤、炭酸カルシウム系充填剤、二酸化チタン白顔料などからなる公知の配合を広く用いることができる。)で被覆し、これを加熱してゲル化させることによって、白色に着色されて表面が樹脂被覆された開孔度36のメッシュ状シート(質量190g/m2)を得た。このメッシュ状シートは遮光性の実体部と透過性の開孔部とを有し、開孔部は1辺が1.9mmサイズの角のとれた四角形であり、メッシュ状シート1インチ四方当りに含む開孔部の分布は64個である。
〔実施例3〕
実施例1の視覚制御層(白/黒ツートンの穿孔シート)を、下記に示す印刷層からなる視覚制御層に変更した以外は、実施例1と同様にして、第1視覚表示層視覚表示層と第2視覚表示層を具備する、タテ440mm×ヨコ614mmサイズの異種視覚表示構造体を得た。
〈シルクスクリーン印刷による視覚制御層〉
黒の遮光性インキを用い、幅3mmの黒ベタ線を2mm間隔で設けてなる横ストライプを黒ベタ線88本を以ってシルクスクリーン印刷により形成した。この印刷による視覚制御層の開孔度は40であった。幅3mmの黒ベタ線が印刷の実体部で遮光性であり、黒ベタ線と黒ベタ線との間隔が印刷の空隙部であり透光性である。
〔実施例4〕
光透過性平面基材として、実施例1のアクリル平板(光透過性平面基材)を、下記に示すシート状積層体に変更した以外は、実施例1と同様にして、第1視覚表示層と第2視覚表示層を具備する、タテ440mm×ヨコ614mmサイズの異種視覚表示構造体を得た。
〈シート状積層体〉
ポリエステル繊維マルチフィラメント糸条(500デニール)を経糸条、及び緯糸条とし、経糸条、及び緯糸条の打込本数が12本/1インチである平織物を基布として用い、基布の両面を、0.15mm厚のポリ塩化ビニル樹脂組成物フィルム(ストレートPVC、フタル酸系可塑剤、バリウム系複合金属安定剤などからなる公知の透明配合を広く用いることができる。)で積層被覆して、光透過性平面基材として、厚さが0.35mm、全光線透過率(JIS K7375)54%の光透過性のシート状積層体を得た。
〔実施例5〕
実施例1のコントラスト調整層を下記のコントラスト調整層2(着色熱可塑性樹脂中に無色ポリメタクリル酸メチル樹脂からなる架橋微粒子が分散した配合4)に変更した以外は、実施例1と同様にして、第1視覚表示層と第2視覚表示層を具備する、タテ440mm×ヨコ614mmサイズの異種視覚表示構造体を得た。
〈コントラスト調整層2〉
[配合4]
コントラスト調整層2
ポリウレタン樹脂 100質量部
ヘキサメチレンジイソシアネート(硬化剤) 10質量部
無色微粒子(粒子径12μm、全光線透過率(JIS K7375)が
94%の架橋ポリメタクリル酸メチル樹脂微粒子)
40質量部
アニリンブラック(着色剤) 1質量部
メチルエチルケトン(希釈溶剤) 300質量部
上記[配合2]のコントラスト調整層用組成物液体を、厚さ120μm、タテ440mm×ヨコ614mmサイズのポリエチレンテレフタレート(PET)透明フィルム(160g/m2)の片面にワイヤーバーで乾燥付着質量が15μmとなるように形成し、PETフィルム層を構成成分に含む厚さ135μmのスモークグレー色のコントラスト調整層(180g/m2)を得た。無色微粒子(26.5g/m2)の含有率はコントラスト調整層全体に対して14.7質量%である。
〔実施例6〕
実施例1のコントラスト調整層を下記のコントラスト調整層3(青(シアン)・赤(マゼンダ)・黄(イエロー)の3色混合による配合5)に変更した以外は、実施例1と同様にして、第1視覚表示層と第2視覚表示層を具備する、タテ440mm×ヨコ614mmサイズの異種視覚表示構造体を得た。
〈コントラスト調整層3〉
[配合5]着色微粒子
ポリメタクリル酸メチル樹脂 100質量部
フタロシアニンブルー(シアン着色剤) 0.5質量部
キナクリドンマゼンタ(マゼンタ着色剤) 0.6質量部
ハンザイエローミディアム(イエロー着色剤) 0.5質量部
上記配合5の組成物から得た、粒子径が12μm、かつ、全光線透過率(JIS K7375)が35%の架橋微粒子(スモークブラウン色光半透過性)を用いた。
[配合6]
コントラスト調整層3
ポリウレタン樹脂 100質量部
ヘキサメチレンジイソシアネート(硬化剤) 10質量部
着色微粒子 15質量部
メチルエチルケトン(希釈溶剤) 300質量部
上記[配合6]のコントラスト調整層用組成物液体を、厚さ120μm、タテ440mm×ヨコ614mmサイズのポリエチレンテレフタレート(PET)透明フィルム(160g/m2)の片面にワイヤーバーで乾燥付着質量が15μmとなるように形成し、PETフィルム層を構成成分に含む厚さ135μmのスモークグレー色のコントラスト調整層(178g/m2)を得た。着色微粒子(2.16g/m2)の含有率はコントラスト調整層全体に対して1.21質量%である。
〔実施例7〕
実施例1の第2視覚表示層は、無機エレクトロルミネッセンス素子層の上に直接シルクスクリーン印刷したものであるが、それに対し第2視覚表示層は、厚さ120μm、タテ440mm×ヨコ614mmサイズのポリエチレンテレフタレート(PET)透明フィルム(160g/m2)の表面に実施例1と同一の図柄を同様に形成し、この第2視覚表示層形成PET透明フィルムを非接着で無機エレクトロルミネッセンス素子層の上に配置した。これ以外は実施例1と同様にして、第1視覚表示層と第2視覚表示層を具備する、タテ440mm×ヨコ614mmサイズの異種視覚表示構造体を得た。
〔実施例8〕
実施例7の第2視覚表示層の図柄を変更した以外は、実施例7と同様にして、第1視覚表示層と第2視覚表示層を具備する、タテ440mm×ヨコ614mmサイズの異種視覚表示構造体を得た。実施例7の図柄は実施例1と同一で、光線不透過性の黒インキを使用し、非印刷部が星型マーク(6角星二重)の印刷で、非印刷部のみが無機エレクトロルミネッセンス素子発光するように意図されたものである。
これに対し、光線不透過性の黒インキを光線透過性の赤インキに変更し、印刷部と非印刷部の両方が発光するものとした。この第2視覚表示層形成PET透明フィルムを非接着で無機エレクトロルミネッセンス素子層の上に配置した。
実施例2〜8で得た異種視覚表示構造体を個々室内の壁に掛け、照明下で観察したところ、第1視覚表示層の「STAR」の文字「S(青)」「T(黄)」「A(緑)」「R(赤)」が明瞭に認識され、第2視覚表示層の星型マーク(6角星二重)の存在は完全に認識されなかった。次に室内照明を消し、AC200V、インバーターで周波数を1000Hzとして無機エレクトロルミネッセンス素子層を発光させたところ、第2視覚表示層の星型マーク(6角星二重)がやや緑色を帯びた白色で高輝度に現出した。この第2視覚表示層は視覚制御層からの透過発光によりドット状集合体(実施例3ではストライプ状)で表示され、第2視覚表示層の隠蔽印刷部分は視覚制御層の開孔部がドット発光しない暗黒部分となることで明瞭な星型形状が表示された。(実施例8では第2視覚表示層の光透過性印刷部分は視覚制御層の開孔部が有色ドット発光することでカラフルな星型形状が表示された。)何れの表示構造体も間近に観察すると無機エレクトロルミネッセンス素子層の発光で第1視覚表示層が朧に認識されるものであったが、数メートル離れての観察では第1視覚表示層の存在は認識できないものであった。さらにこの状態で室内照明を点灯すると、第1視覚表示層に第2視覚表示層が重なった状態の現出となったが、第2視覚表示層の発光輝度が高いため第一印象は第2視覚表示層主体となり、数秒の時間を経て第1視覚表示層が第二印象となった。同様の試験を街頭で実施したところ、夜間でも街灯の多い場所、車の通行量の多い場所、店舗の密集地、ネオンサインや電飾看板などの多い、明るい場所においても、無機エレクトロルミネッセンス素子層の発光輝度が高いため、第1視覚表示層を表示しながらも第2視覚表示層をアピールする効果に優れ、特に無機エレクトロルミネッセンス素子層の発光を数秒ごとにON/OFFを交互に繰り返すことで更に第2視覚表示層のメッセージを鮮烈に印象付けるものであった。さらに驚くべきことに本発明の異種視覚表示構造体は、晴天の日中の使用においても第2視覚表示層のメッセージが鮮烈であった。特に実施例7と8の表示構造体では、無機エレクトロルミネッセンス素子層の上に第2視覚表示層形成PET透明フィルムを非接着で配置したことによって、異種視覚表示構造体のフレームを分解して第2視覚表示層形成PET透明フィルムを外し、他の第2視覚表示層形成PET透明フィルムとの交換が容易であるため、特に商業用途での日替サービスやPOP表示などを効果的にアピールすることができ有益である。
〔実施例9〕
実施例2の表示構造体の第2視覚表示層を、実施例8の第2視覚表示層形成PET透明フィルムに変更し、それを非接着で無機エレクトロルミネッセンス素子層の上に配置した以外は実施例2と同一とした。
〔実施例10〕
実施例3の表示構造体の第2視覚表示層を、実施例8の第2視覚表示層形成PET透明フィルムに変更し、それを非接着で無機エレクトロルミネッセンス素子層の上に配置した以外は実施例3と同一とした。
〔実施例11〕
実施例4の表示構造体の第2視覚表示層を、実施例8の第2視覚表示層形成PET透明フィルムに変更し、それを非接着で無機エレクトロルミネッセンス素子層の上に配置した以外は実施例4と同一とした。
〔実施例12〕
実施例5の表示構造体の第2視覚表示層を、実施例8の第2視覚表示層形成PET透明フィルムに変更し、それを非接着で無機エレクトロルミネッセンス素子層の上に配置した以外は実施例5と同一とした。
〔実施例13〕
実施例6の表示構造体の第2視覚表示層を、実施例8の第2視覚表示層形成PET透明フィルムに変更し、それを非接着で無機エレクトロルミネッセンス素子層の上に配置した以外は実施例6と同一とした。
〔比較例1〕
実施例1の表示構造体において、コントラスト調整層を省略した以外は実施例1の表示構造体と同一とした。得られた表示構造体は、コントラスト調整層の欠如によって、無機エレクトロルミネッセンス素子層の発光による第2視覚表示層の表示現出の鮮明度が低下し、実施例1の表示構造体と並べて観察すると比較例1の表示体は明らかに見栄に劣るものであった。またスモークグレー色のコントラスト調整層が無いことで、無機エレクトロルミネッセンス素子層の非点灯にも拘らず、第2視覚表示層の図柄である星型マーク(6角星二重)の存在が視覚制御層の開孔部から認識可能となり、第1視覚表示層と
中途半端に図柄が重なり合うことで見栄えの悪いものとなった。
〔参考例1〕
実施例1の表示構造体において、コントラスト調整層を下記の組成とした以外は実施例1の表示構造体と同一とした。
[配合7]
コントラスト調整層
ポリウレタン樹脂 100質量部
ヘキサメチレンジイソシアネート(硬化剤) 10質量部
カーボンブラック 1質量部
メチルエチルケトン(希釈溶剤) 300質量部
上記[配合7]のコントラスト調整層用組成物液体を、厚さ120μm、タテ440mm×ヨコ614mmサイズのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(160g/m2)の片面にワイヤーバーで乾燥付着質量が15μmとなるように形成し、PETフィルム層を構成成分に含む厚さ135μmのスモークグレー色のコントラスト調整層(178g/m2)を得た。得られた表示構造体は、コントラスト調整層が単純なスモークグレー色フィルムであるため、無機エレクトロルミネッセンス素子層の発光による第2視覚表示層の表示現出の鮮明度が実施例1の表示構造体ほど優れたものではなかった。それは実施例1の表示構造体と並べて観察するとやや見栄に劣るのは明らかであった。この差は参考例1のコントラスト調整層が、「微粒子及び熱可塑性樹脂とで構成され、無着色の前記熱可塑性樹脂中に微粒子が分散してなる層を含むフィルムであって、また微粒子が着色された光半透過性微粒子であり、その粒子径が2μm〜20μm、かつ、全光線透過率(JIS K7375)が10〜40%であり、その含有率がコントラスト調整層に対して0.1〜10質量%であること」を満たさないからである。
〔比較例2〕
実施例1の表示構造体において、着色透明フィルム層を省略した以外は実施例1の表示構造体と同一とした。得られた表示構造体は、エレクトロルミネッセンス素子層の発光色と補色関係の着色着色透明フィルム層の欠如によって、エレクトロルミネッセンス素子層の発光色である青緑色がそのまま第2視覚表示層の表示現出してしまい、白色発光のできないものであった。
〔比較例3〕
実施例1の表示構造体において、着色透明フィルム層を下記着色透明フィルム層に変更した以外は実施例1の表示構造体と同一とした。得られた表示構造体は、エレクトロルミネッセンス素子層の発光色と補色関係に無いコバルトブルーの着色着色透明フィルム層の存在によって、エレクトロルミネッセンス素子層の発光色である青緑色がより強調されて第2視覚表示層の表示現出してしまい、白色発光のできないものであった。
[配合8]
着色透明フィルム層
ポリウレタン樹脂 100質量部
ヘキサメチレンジイソシアネート(硬化剤) 10質量部
CoO・AL2O3コバルトブルー(着色剤) 10質量部
メチルエチルケトン(希釈溶剤) 300質量部
上記[配合8]の着色透明フィルム層用組成物液体を、厚さ120μm、タテ440mm×ヨコ614mmサイズのポリエチレンテレフタレート(PET)透明フィルム(160g/m2)の片面にワイヤーバーで乾燥付着質量が15μmとなるように形成し、PETフィルム層を構成成分に含む厚さ135μmのコバルトブルー色の着色透明フィルム層(180g/m2)を得た。