本発明は、機体を移動させるための走行部としてクローラユニットを有する歩行型作業機において、クローラユニットおよびクローラユニットを機体に対して接続するリンク機構の構成等を工夫することにより、機体の旋回性能の向上を図ろうとするものである。以下、本発明の実施の形態を説明する。
本実施形態では、歩行型作業機として、圃場の畝に苗を移植する移植機を例にとって説明する。ただし、本発明は、移植機のほか、管理機や田植機等の他の歩行型作業機にも適用可能である。
図1および図2に示すように、本実施形態に係る移植機1は、歩行する作業者により移動させられる歩行型の野菜移植機である。なお、移植機1においては、移植機1の前進方向(図1における左方向)を前方、その反対方向(図1における右方向)を後方とし、前方に向いた状態での左方および右方をそれぞれ左方および右方とする。
移植機1は、作業者の操作により前方に移動しながら、セル成形苗を取り出して圃場の畝に移植するものである。移植機1は、走行機体2と、走行機体2の後方に設けられた苗供給部3と、走行機体2と苗供給部3との間に設けられた移植部4と、苗供給部3の後方に設けられた操縦部5とを備える。
走行機体2は、その本体部分をなす機体6と、機体6を移動させるための走行部7とを有する。機体6は、そのフレーム構造をなす機体フレーム8と、機体フレーム8の前部上に搭載されたエンジン9と、機体フレーム8の後部に支持されたミッションケース10とを有する。エンジン9の上側は、ボンネット11により覆われている。ミッションケース10は、機体6の後部における左右中央部に、機体6に対して固定された状態で設けられている。機体フレーム8の後側に、移植部4が支持されている。
機体フレーム8の後端部には、側面視で後上がりの傾斜状に配された左右一対の操作部フレーム12が設けられている。左右の操作部フレーム12の上側には、平面視で略「U」字状をなすハンドル13が設けられている。操縦部5において、ハンドル13およびその近傍には、走行機体2の走行速度を変速するための主変速レバー、植付クラッチの入切を行うための植付クラッチレバー、機体6の昇降を行うための昇降レバー14等の各種操作具を配設した操作部15が設けられている。
苗供給部3は、苗トレイ20に収容されるセル成形苗を移植部4に供給する。苗トレイ20は、可撓性を有する合成樹脂製のものであり、複数個のセル成形苗を収容する凹状の鉢部20aを縦方向及び横方向に連続して形成している。
苗供給部3は、平面視で略「U」字状をなすようにパイプを折り曲げて形成した搬送枠21に、トレイ載台22、空トレイ収納台23、および縦搬送装置24を取り付けて構成されている。トレイ載台22は、苗トレイ20を載置するものであり、側面視で前低後高に傾斜状に設けられている。
空トレイ収納台23は、移植後の空の苗トレイ20をトレイ載台22の下方で載置させるものであり、棒状体を折り曲げて形成されており、縦搬送装置24の前下部から上後方に向けて延設されている。縦搬送装置24は、図示せぬ植付ミッションケースからの動力により左右往復移動するように構成されており、植付ミッションケースからの動力を駆動軸24aに伝え、苗トレイ20を縦送りする。
縦搬送装置24は、苗取出装置25によるセル成形苗の取出し動作において、苗トレイ20を間欠的に横送りし、横1列のセル成形苗の取出し動作が終了すると、次の列のセル成形苗の取出し動作を行うために、苗トレイ20を一段縦送りする。縦搬送装置24における苗トレイ20の縦送り動作は、駆動軸24aの回転駆動力が用いられて行われる。
移植部4は、縦搬送装置24の前方に設けられており、苗供給部3から供給されるセル成形苗を畝に移植する。移植部4は、苗取出装置25と苗移植装置26を備える。苗取出装置25および苗移植装置26は、図示せぬ植付ミッションケースからの動力により駆動するように構成されている。
苗取出装置25は、苗供給部3のトレイ載台22上に載置された苗トレイ20の鉢部20aからセル成形苗を図示せぬ苗取出爪によって取り出し、苗移植装置26において下方に向けて突出するように設けられ開閉可能に構成された苗移植爪26aに放出供給する。苗移植装置26は、苗移植爪26a内のセル成形苗を畝上面に搬送し、苗移植爪26aを開いて畝に移植する(植え付ける)。セル成形苗の移植後には、苗移植装置26の後下方に設けられた左右一対の鎮圧輪27により、植え付けられた苗の根元の土が左右両側から押さえられる。
以上のように、移植機1は、苗供給部3において、苗トレイ20の横送り動作および縦送り動作を行いながら、移植部4において、苗トレイ20からセル成形苗を取り出して畝上に移植する。
図3および図4に示すように、走行部7は、機体6の前部の下側に設けられた左右の前輪31と、機体6の後部の下側に設けられた左右のクローラユニット30とを有する。走行部7は、左右の前輪31および左右のクローラユニット30、ならびにこれらの支持構成等について、左右対称または略左右対称に構成されている。
前輪31は、機体フレーム8の前端部の近傍部分の下側から左右外方向に延出した前輪支持フレーム32により左右方向を回転軸方向として回転自在に支持されている。前輪支持フレーム32は、左右方向を軸方向として機体フレーム8に対して回動可能に支持された前輪支持軸部33と、前輪支持軸部33の左右外側の端部から後側に向けて延出した前輪支持アーム34とを有し、平面視で略「L」字状をなすように構成されている。前輪支持アーム34の後端部に設けられた左右方向を軸方向とする支持軸34aにより前輪31が支承されている。
前輪支持軸部33は、六角形状の横断面形状を有する管状の外側パイプ部33aと、六角形状の横断面形状を有し外側パイプ部33aに挿嵌された挿入軸部33bとを有する。挿入軸部33bは、外側パイプ部33aに対する横断面六角形状の挿嵌構造により、外側パイプ部33aに対して相対回転不能かつ軸方向に移動可能に挿入支持されている。挿入軸部33bは、左右外側の部分を外側パイプ部33aから露出させており、挿入軸部33bの左右外側の端部に、前輪支持アーム34が溶接等によって固設されている。つまり、挿入軸部33bおよび前輪支持アーム34により、平面視で略「L」字状をなして左右方向に移動可能な一体の支持部材が構成されている。
外側パイプ部33aに対する挿入軸部33bの移動は、前輪支持軸部33に設けられた軸固定部35によって規制される。軸固定部35は、外側パイプ部33aの周壁に螺挿された固定ピン35aと、固定ピン35aを径方向に貫通して固定ピン35aを回転操作するための操作ハンドル35bとを有する。固定ピン35aは、外側パイプ部33aの周壁を貫通して挿入軸部33bの六角柱状の外形における一側面に当接し、挿入軸部33bの軸方向の移動を規制する。
このような構成を有する前輪支持軸部33により、外側パイプ部33aに対する挿入軸部33bの軸方向の位置調整によって、前輪31の左右方向の位置、つまり左右の前輪31のトレッドが調整可能となっている(図3、矢印A1参照)。
左右の各クローラユニット30は、ミッションケース10の左右外側の側方に設けられたチェンケース37に支持された状態で設けられている。チェンケース37は、ミッションケース10から左右外方向に直線状に延設された円筒状の駆動軸ケース36の左右外側の端部に連結されている。駆動軸ケース36は、左右方向を回動軸方向としてミッションケース10に対して回動可能に設けられている。駆動軸ケース36内には、ミッションケース10から左右外方向に延出し、左右方向を軸方向とするクローラ用駆動軸38が設けられている。
チェンケース37は、左右方向を板厚方向とする略板状の外形を有し、平面視で前後方向を長手方向とする。また、チェンケース37は、側面視において長手方向の両端側を半円状の丸め形状としたアーム状の外形を有する。
チェンケース37は、その長手方向の一端側である前端部を、連結部材29を介して駆動軸ケース36に連結させ、クローラ用駆動軸38の軸心P1(図6参照)を中心として、駆動軸ケース36と一体的に回動するように設けられている。連結部材29は、筒状の駆動軸ケース36の左右外側の開口部に対して嵌合した状態で、駆動軸ケース36に固定されている。連結部材29は、駆動軸ケース36に対する嵌合部から外側に張り出した突片部29aを有する。一方、チェンケース37の前端部には、斜前上方に向けて角状に突出した突片部37aが設けられている。連結部材29の突片部29aに対して、チェンケース37の突片部37aが、ボルト28等の固定具によって固定されている。
このように、チェンケース37は、その前端部において連結部材29を介して駆動軸ケース36に固定されている。これにより、チェンケース37は、駆動軸ケース36と一体的に、軸心P1を中心に左右方向を回動軸方向として回動可能に設けられている。つまり、チェンケース37は、その前端部に位置する軸心P1を中心として、後側を上下動させるように上下揺動可能に設けられている。
また、チェンケース37は、左右方向について位置調整可能に設けられている(図3、矢印A2参照)。例えば、チェンケース37は、連結部材29による駆動軸ケース36に対する支持部分において、駆動軸ケース36に対して左右方向について相対移動可能に設けられている。そして、駆動軸ケース36に対するチェンケース37の支持部分において、クローラ用駆動軸38を貫通させるリング状のスペーサ(図示略)の有無等により、チェンケース37の駆動軸ケース36に対する左右方向についての位置調整が行われる。
チェンケース37内には、駆動軸ケース36内に設けられたクローラ用駆動軸38の回転動力をクローラユニット30に伝達するためのチェン伝動機構が設けられている。チェンケース37内のチェン伝動機構は、クローラ用駆動軸38に固設された駆動スプロケットと、チェンケース37の後端部において回転可能に支持された車軸39に固設された従動スプロケットと、これらのスプロケットに巻回されたチェンとを含む。クローラユニット30は、チェンケース37に対して、車軸39により連結されている。
このような構成により、エンジン9からの動力は、ミッションケース10から駆動軸ケース36内のクローラ用駆動軸38に伝達され、さらにチェンケース37内のチェン伝動機構および車軸39を介してクローラユニット30に伝達される。クローラユニット30は、車軸39の回転駆動力により駆動する。
次に、移植機1において機体6を昇降させるための構成について説明する。機体6の昇降動作は、機体6を支持する左右の前輪31および左右のクローラユニット30を機体に対して昇降させることにより、地面G1に対して接地した状態の前輪31およびクローラユニット30に対する相対的な動作として行われる。
移植機1は、機体6を昇降させるための構成として、油圧ポンプ40と、油圧シリンダ機構である昇降シリンダ41と、スイング支点軸42と、左右のスイングロッド43と、左右の連結ロッド44とを備える。機体6の昇降動作は、油圧ポンプ40に対して設けられた油圧昇降バルブの切替えによって昇降シリンダ41を作動させることにより行われる。油圧ポンプ40は、機体フレーム8の前端部上において、エンジン9の前側に搭載されている(図1参照)。
昇降シリンダ41は、機体6の左右中央部において、ミッションケース10の後部の上方の位置に、平面視で前後方向に沿うように設けられている。昇降シリンダ41は、前下がりの傾斜状に設けられており、伸縮方向を側面視で前下がりの傾斜方向としている。
昇降シリンダ41は、シリンダ部41aと、シリンダ部41aに対して往復移動可能に設けられたピストン部41bとを有し、シリンダ部41aに対するピストン部41bの往復移動によって伸縮する。昇降シリンダ41は、ピストン部41b側を後側とする向きで、シリンダ部41aを機体6に対する固定部分として設けられている。昇降シリンダ41は、油圧ポンプ40から供給される油圧により動作する。昇降シリンダ41の後側に、スイング支点軸42が設けられている。
スイング支点軸42は、機体6の左右中央部において、ミッションケース10の後部の上方の位置に、左右方向を軸方向として設けられている。スイング支点軸42は、左右方向を筒軸方向とする筒状の軸ケース42a内に相対回動可能に挿嵌されるとともに、両端部を軸ケース42aから突出させた状態で設けられている。スイング支点軸42は、機体6において移動可能な移動軸として設けられている。スイング支点軸42は、昇降シリンダ41の伸縮動作にともなって軸ケース42aと一体的に移動する。
軸ケース42aは、その軸方向の中央部に設けられた連結プレート部42bにおいて、昇降シリンダ41のピストン部41bの後側の連結を受けている。ピストン部41bの後端部には、連結プレート部42bに重なる板状のフランジ部41cが設けられており、連結プレート部42bとフランジ部41cがボルト等によって互いに固定されることで、ピストン部41bが軸ケース42aに固定されている。このような構成により、昇降シリンダ41の伸縮動作にともなって、スイング支点軸42がピストン部41bおよび軸ケース42aと一体的に移動する。
左右のスイングロッド43のうち、左側に位置する左スイングロッド43Lは、後端部を、スイング支点軸42の左端部に設けられた左支持フランジ部42cに対して、左右方向を回動軸方向として回動可能に連結させている。左支持フランジ部42cは、スイング支点軸42の軸心位置に対して上側に突出しており、スイング支点軸42の軸心に対して上方の位置で、左スイングロッド43Lの後端部を支持している。
一方、右側に位置する右スイングロッド43Rは、後端部を、スイング支点軸42の右端部に設けられた右支持フランジ部42dに対して、左右方向を回動軸方向として回動可能に連結させている。右支持フランジ部42dは、スイング支点軸42の軸心位置に対して下側に突出しており、スイング支点軸42の軸心に対して下方の位置で、右スイングロッド43Rの後端部を支持している。
左右の各スイングロッド43の前端部は、駆動軸ケース36から突設された支持突片部36aに対して、左右方向を回動軸方向として回動可能に連結されている。支持突片部36aは、駆動軸ケース36の一部であって、左右方向を板厚方向とする板状の部分であり、駆動軸ケース36の外周面部から斜前上方に向けて突設されている。支持突片部36aは、その上端部において、スイングロッド43の前端部を支持している。
左右の各連結ロッド44は、後端部を、支持突片部36aに対して、左右方向を回動軸方向として回動可能に連結させている。連結ロッド44の後端部は、支持突片部36aにおいて、スイングロッド43の前端部の軸支部に対して下方の(支持突片部36aの付け根側の)部位に支持されている。
左右の各連結ロッド44の前端部は、前輪支持軸部33の外側パイプ部33aに設けられた支持アーム部33cに対して、左右方向を回動軸方向として回動可能に連結されている。支持アーム部33cは、前輪支持軸部33の軸心位置に対して上側に突出しており、前輪支持軸部33の軸心に対して上方の位置で、連結ロッド44の前端部を支持している。
以上のような構成により、昇降シリンダ41の伸縮動作によって機体6が昇降する。すなわち、昇降シリンダ41が伸びることにより、スイング支点軸42が後側に移動し、スイングロッド43により支持突片部36aが後方に引っ張られる。これにより、駆動軸ケース36およびチェンケース37が、クローラ用駆動軸38の軸心を中心として一体的に回動する。ここで、チェンケース37は、後側を下げる方向、つまり機体6に対してクローラユニット30を相対的に下げる方向に回動する。
また、スイングロッド43により支持突片部36aが後方に引っ張られることで、連結ロッド44により支持アーム部33cが後方に引っ張られ、前輪支持軸部33が前輪支持アーム34を下げる方向、つまり機体6に対して前輪31を相対的に下げる方向に回動する。このようなクローラユニット30および前輪31の機体6に対する相対的な下方移動が、機体6の上昇動作となる。
一方、昇降シリンダ41が縮むことにより、スイング支点軸42が前側に移動し、スイングロッド43により支持突片部36aが前方に押される。これにより、駆動軸ケース36およびチェンケース37が、クローラ用駆動軸38の軸心を中心として一体的に回動する。ここで、チェンケース37は、後側を上げる方向、つまり機体6に対してクローラユニット30を相対的に上げる方向に回動する。
また、スイングロッド43により支持突片部36aが前方に押されることで、連結ロッド44により支持アーム部33cが前方に押され、前輪支持軸部33が前輪支持アーム34を上げる方向、つまり機体6に対して前輪31を相対的に上げる方向に回動する。このようなクローラユニット30および前輪31の機体6に対する相対的な上方移動が、機体6の下降動作となる。
以上のような機体6の昇降動作は、操作部15の昇降レバーの操作により行われる。すなわち、昇降レバーは、所定の操作部材を介して油圧昇降バルブに連結されており、昇降レバーの操作によって油圧昇降バルブが作動し、油圧ポンプ40から供給される油圧によって昇降シリンダ41が作動する。
また、機体6の昇降動作に関しては、移植部4による植付深さを一定に保つように、機体6を自動的に昇降させる制御が行われる。具体的には、鎮圧輪27は、所定のセンサ部材を介して油圧昇降バルブに連結されており、畝の凹凸によって上下動する鎮圧輪27の動作が、センサ部材を介して油圧昇降バルブを作動させ、油圧ポンプ40から昇降シリンダ41へ供給される油圧が制御される。これにより、畝の凹凸に追随する鎮圧輪27の上下動に応じて、機体6の高さが一定の値に保持されるように、機体6の昇降動作が制御される。
また、機体6は、左右に傾斜するように構成されている。機体6の傾斜動作は、左右一方のクローラユニット30および前輪31を上昇させるとともに、左右他方のクローラユニット30および前輪31を下降させることにより行われる。
移植機1は、機体6を左右に傾斜させるための構成として、油圧シリンダ機構であるローリングシリンダ51を備える。機体6の傾斜動作は、油圧ポンプ40に対して設けられた所定のバルブ機構の切替えによってローリングシリンダ51を作動させることで行われる。
ローリングシリンダ51は、昇降シリンダ41の右方の位置において、平面視で前後方向に沿うように設けられている。ローリングシリンダ51は、昇降シリンダ41と平行状に設けられており、伸縮方向を昇降シリンダ41と同様に側面視で前下がりの傾斜方向としている。
ローリングシリンダ51は、シリンダ部51aと、シリンダ部51aに対して往復移動可能に設けられたピストン部51bとを有し、シリンダ部51aに対するピストン部51bの往復移動によって伸縮する。ローリングシリンダ51は、ピストン部51b側を後側とする向きで、シリンダ部51aを、昇降シリンダ41の右側に設けられたシリンダステー52に支持させた状態で設けられている。シリンダステー52は、軸ケース42aと一体の部分であり、左右方向を軸方向とするピン等の軸部材によってシリンダ部51aを回動可能に支持する。ローリングシリンダ51は、油圧ポンプ40から供給される油圧により動作する。
ローリングシリンダ51は、ピストン部51bの先端部を、スイング支点軸42の右側の部分に設けられたローリング用アーム部42eに対して、左右方向を回動軸方向として回動可能に連結させている。ローリング用アーム部42eは、右支持フランジ部42dの左方に位置し、スイング支点軸42の軸心位置に対して上側に突出しており、スイング支点軸42の軸心に対して上方の位置で、ピストン部51bの後端部を支持している。
以上のような構成により、ローリングシリンダ51の伸縮動作によって機体6が左右に傾斜する。すなわち、ローリングシリンダ51が伸びることにより、ローリング用アーム部42eが後側に押されてスイング支点軸42が左側面視で右回りに回動する。これにより、スイング支点軸42から上方に突出した左支持フランジ部42cに連結された左スイングロッド43Lは後方に引っ張られ、スイング支点軸42から下方に突出した右支持フランジ部42dに連結された右スイングロッド43Rは前方に押される。
このように左右のスイングロッド43が互いに反対に動作することで、機体6に対して相対的に下方に移動する左側のクローラユニット30および前輪31によって機体6の左側が上昇し、機体6に対して相対的に上方に移動する右側のクローラユニット30および前輪31によって機体6の右側が下降する。つまり、機体6は、右側を下げるように傾斜する。
一方、ローリングシリンダ51が縮むことにより、ローリング用アーム部42eが前側に引っ張られてスイング支点軸42が左側面視で左回りに回動する。これにより、左スイングロッド43Lは前方に押され、右スイングロッド43Rは後方に引っ張られ、ローリングシリンダ51が伸びた場合と反対に、機体6の左側が下降して右側が上昇し、機体6が左側を下げるように傾斜する。
以上のような機体6の傾斜動作については、圃場の凹凸や傾斜等によって機体6が傾いても機体6が水平状態を保つように、機体6を自動的に傾斜させる制御が行われる。具体的には次のとおりである。機体フレーム8の前端部上における油圧ポンプ40の前側に、機体6とともに傾くローリングウエイトが設けられている。ローリングウエイトの傾斜にともなって動作する所定のセンサ部材が、油圧ポンプ40に設けられたローリング用スプールに連結されている。ローリング用スプールは、油圧ポンプ40に対して設けられたコントロールバルブを作動させる。
このような構成により、圃場の凹凸や傾斜等によって機体6が傾き、ローリングウエイトが傾くことで、傾きの向きに応じて、センサ部材を介してローリング用スプールが作動し、コントロールバルブが作動する。これにより、油圧ポンプ40から所定のバルブ機構を介して、ローリングシリンダ51に圧油が供給され、ローリングシリンダ51が伸縮動作し、機体6が水平状態となるまで、機体6が左右にローリングする。なお、機体6の傾斜動作は、操作部15に設けられた機体傾斜操作用のレバーの操作により手動によっても行われる。
以上のように、本実施形態に係る移植機1は、機体6を移動させるためのクローラユニット30と、機体6に対して左右方向を軸方向として回動可能に支持された伝動ケースとしてのチェンケース37とを備える。そして、移植機1は、機体6の旋回性能の向上等を図るべく、足回りの構成について工夫が施されている。
本実施形態に係る移植機1のクローラユニット30およびその支持構成について、図3から図11を用いて説明する。なお、図6および図7は、左右両側のうち左側のクローラユニット30およびその支持構成を示している。
移植機1は、機体6側とクローラユニット30との間に設けられて機体6の昇降動作に連動するリンク機構60を備える。リンク機構60は、チェンケース37と、機体6側とクローラユニット30との間に設けられたリンク90とを含んで構成されている。
チェンケース37は、機体6に搭載されたミッションケース10に対して駆動軸ケース36を介して支持されることで、機体6側に支持されている。このように機体6側に支持されたチェンケース37に対して、クローラユニット30が車軸39により支持されており、さらに、クローラユニット30は、機体6側に対してリンク90によって支持されている。このように機体6側に対してクローラユニット30を支持するチェンケース37およびリンク90によりリンク機構60が構成されている。
クローラユニット30について説明する。クローラユニット30は、チェンケース37の他端側である後端側に設けられ左右方向を軸方向とする車軸39に支持された駆動輪である駆動スプロケット61と、従動輪である転輪62と、駆動スプロケット61および転輪62に巻回されたクローラ63とを有する。
駆動スプロケット61は、車軸39に対して固定状態で連結されている。駆動スプロケット61は、その中心部をなして車軸39の連結を受けるハブ部65と、ハブ部65から駆動スプロケット61の中心軸を中心として放射状に形成された複数のスポーク部66と、駆動スプロケット61の外縁をなすリム部67とを有する。駆動スプロケット61の中心軸は、車軸39の軸心である車軸心O1と一致する。
駆動スプロケット61は、左右方向を厚さ方向として所定の厚さを有する一体の部材として、ハブ部65、スポーク部66、およびリム部67をなすように構成されている。リム部67の外周側に、クローラ63に対する係合部分となる複数の歯部68が周方向について所定の間隔で設けられている。歯部68は、駆動スプロケット61の中心軸方向視で径方向外側に向けて山形状をなすように突出形成されている。
転輪62は、駆動スプロケット61と同様に左右方向を回転軸方向とする車輪であり、駆動スプロケット61の前方に配置されている。転輪62は、駆動スプロケット61よりも小さい。転輪62の外径は、例えば駆動スプロケット61の外径の1/3~1/2程度である。
転輪62は、互いに同径の略円盤状の部分である第1車輪部62aおよび第2車輪部62bと、これらの車輪部の中心部同士を繋ぐ小径部分である中間軸部62cとを有する。第1車輪部62a、第2車輪部62b、および中間軸部62cは、一体の回転体である転輪62を構成している。
転輪62は、第1車輪部62aを左右外側、第2車輪部62bを左右内側に位置させている。転輪62に対し、駆動スプロケット61は、その前側の端部を、第1車輪部62aと第2車輪部62bとの間に位置させている。つまり、転輪62は、回転軸方向視(側面視)において、後側の部分を、駆動スプロケット61の前側の端部にオーバーラップさせている。なお、転輪62は、駆動スプロケット61に対して側面視でオーバーラップしない位置に設けられてもよい。
転輪62は、駆動スプロケット61に対して設けられた支持フランジ部70および転輪ダンパ機構71を介して支持されている。
支持フランジ部70は、駆動スプロケット61の左右外側において、側面視で駆動スプロケット61の外形の範囲内に納まるように設けられている。支持フランジ部70は、左右方向を板厚方向とするとともに側面視で略扇形状をなす板状の部分を本体部分とする。
支持フランジ部70は、側面視での略扇形状の中心角側を転輪62側に向けている。なお、本実施形態では、支持フランジ部70がなす側面視形状は、中心角を30~40°程度とする略扇形状である。支持フランジ部70は、側面視形状である略扇形状の半径に対応する上下の直線状の縁部に沿って、本体部分に対して左右内側に屈曲形成された屈曲面部70aを有する。
支持フランジ部70は、駆動スプロケット61のハブ部65に固設された筒軸部72に対して相対回転自在に支持されている。筒軸部72は、その中心軸を車軸心O1に一致させ、駆動スプロケット61のハブ部65から左右外方に向けて突設されている。筒軸部72は、支持フランジ部70の中央部に形成された円形状の支持孔部を貫通した状態で、支持フランジ部70を支持している。筒軸部72の支持フランジ部70からの突出部分には、筒軸部72の抜止め用の止め輪73が外周溝に外嵌された状態で取り付けられている。
支持フランジ部70は、図6に示すように、側面視で、筒軸部72を貫通させる支持孔部の中心に一致する車軸心O1を通る所定の直線L1を中心線として、線対称の形状を有する。直線L1上に、転輪62の軸心O2が位置している。
転輪ダンパ機構71は、直線棒状の外形を有し、後側となる一端側を、支持フランジ部70に支持させ、前側となる他端側の端部に、転輪62を支持している。転輪ダンパ機構71は、側面視において、直線棒状の中心線を直線L1に一致させるように設けられている(図6参照)。
転輪ダンパ機構71は、六角柱状の外形を有し前側を開口させた中空状の外筒74と、六角柱状の外形を有し外筒74に移動可能に挿嵌された弾性支持軸75とを有する。転輪ダンパ機構71は、外筒74に対する弾性支持軸75の軸方向の相対移動によって伸縮するシリンダ機構として構成されている。転輪ダンパ機構71の内部には、外筒74に対して弾性支持軸75を弾性支持する弾性体である支持バネ76が設けられている。
弾性支持軸75は、両端を開口させた筒状の部材であり、外筒74に対する横断面六角形状の挿嵌構造により、外筒74に対して相対回転不能かつ軸方向に移動可能に挿入支持されている。弾性支持軸75は、前側の部分を外筒74から露出させている。
支持バネ76は、転輪ダンパ機構71の軸方向を伸縮方向とする巻きバネであり、外筒74内において、弾性支持軸75内に挿入されるとともに、後部を弾性支持軸75から後側に突出させている。支持バネ76は、外筒74内の後部に設けられたバネ受板77と、弾性支持軸75の前部に設けられたバネ受軸78との間に介装されている。つまり、支持バネ76は、後端側をバネ受板77に当接させるとともに、前端側をバネ受軸78に当接させた状態で設けられている。
バネ受板77は、転輪ダンパ機構71の軸方向を板厚方向とする板状の部材であり、外筒74の後端面をなす後面部74aを貫通したボルト状の調整軸79に固定された状態で設けられている。調整軸79は、外筒74の後面部74aのネジ孔74bにネジ係合した状態で設けられており、前端側にバネ受板77を支持するとともに、後面部74aから突出した後端部に六角形状の操作部79aを有する。
操作部79aによって調整軸79を回動させることで、後面部74aに対する調整軸79の軸方向の位置が変化し、バネ受板77の位置が変化する。これにより、支持バネ76が弾性支持軸75に作用させる弾性力が調整される。バネ受軸78は、円形の横断面形状を有する棒状の部材であり、弾性支持軸75を左右方向に貫通した状態で、弾性支持軸75に固設されている。
転輪ダンパ機構71は、外筒74の後部を、支持フランジ部70の左右外側の面に溶接等によって固定させた状態で設けられている。一方、弾性支持軸75の先端部に、転輪62を支持する転輪支持軸80が設けられている。転輪支持軸80は、バネ受軸78の前側において、バネ受軸78と平行に、弾性支持軸75の先端部を貫通した状態で設けられている。
転輪支持軸80は、弾性支持軸75の先端部から左右内方に向けて延出され、転輪62に対して、第1車輪部62aにおいて左右外側に開口した開口部62dから挿入され、転輪62の中間軸部62cの内部に設けられた軸受等を介して転輪62を支持している。転輪62は、転輪支持軸80に対して軸心O2を中心として回転自在に支持されている。このように、転輪62は、転輪支持軸80によって転輪ダンパ機構71に対して片持ち状に支持されている。
以上のような構成において、駆動スプロケット61に固設された筒軸部72に支持された支持フランジ部70、転輪ダンパ機構71、転輪支持軸80および転輪62は、車軸心O1を中心として一体的に回動する構造体をなしている。以下では、支持フランジ部70、転輪ダンパ機構71、転輪支持軸80および転輪62を含む一体的な構造体を、「転輪回動ユニット」とする。
転輪回動ユニットは、側面視において、車軸心O1および転輪62の軸心O2を通る直線L1を中心として、線対称の外形をなすように構成されている(図6参照)。したがって、転輪回動ユニットを含むクローラユニット30は、直線L1を中心として、線対称の外形をなすように構成されている。
クローラ63は、内周側について所定の横断面形状を有するとともに、外周側に所定のパターンで形成されたラグによる凹凸形状を有する無端状のゴムクローラである。クローラ63には、幅方向の中央部に、駆動スプロケット61の歯部68が差し込まれる係合孔部63aが形成されている(図5参照)。駆動スプロケット61は、周方向についてクローラ63の接触を受ける範囲に位置する歯部68を係合孔部63aに差し込ませることで、クローラ63に係合している。
クローラ63は、内周側に、横断面視において内側に凸となる左右一対の突条部63bを有する。クローラ63は、転輪62に対して、左右の突条部63bを、第1車輪部62aおよび第2車輪部62bの間に嵌合させた状態で、転輪62に係合している。なお、駆動スプロケット61は、左右方向について左右の突条部63bの間に位置している。
リンク90について説明する。リンク90は、複数の軸状の部分により構成された連結機構であり、左右方向に沿う横リンク部91と、横リンク部91の左右外側の部分から後側に延設された縦リンク部92とを有する。リンク90は、横リンク部91および縦リンク部92により、平面視で略「L」字状をなすように構成されている。
横リンク部91は、直線軸状のインナパイプ93と、インナパイプ93を軸方向に移動可能に挿嵌させた直線軸状のアウタパイプ94とを有する。インナパイプ93およびアウタパイプ94は、互いに軸心を一致させており、軸心方向を左右方向に沿わせた状態で設けられている。
横リンク部91は、駆動軸ケース36に嵌合した態様で設けられた前リンク支持アーム95に、インナパイプ93の左右内側の端部を支持させた状態で設けられている。前リンク支持アーム95は、左右方向を板厚方向とする板状の部材により構成されており、駆動軸ケース36の軸方向の略中央部の後側から上方に延出するように設けられている。前リンク支持アーム95は、その上端部にインナパイプ93の左右内側の端部を貫通させた状態で、インナパイプ93を固定状態で支持している。
前リンク支持アーム95は、機体フレーム8の後端部において左右外側に延出するように設けられた後支持フレーム96の左右端部に固定された状態で設けられている。後支持フレーム96は、機体フレーム8の一部として、ミッションケース10の後部を下側から支持している。
後支持フレーム96は、その左右両端部に、左右方向を板厚方向とする板状のフランジ部96aを有する。前リンク支持アーム95は、その下部を、フランジ部96aに重ねた状態で、後支持フレーム96対してボルト等の固定部材によって固定されている。このため、図6および図7に示すように、前リンク支持アーム95の下部には、固定部材を貫通させるための孔部95aが2箇所に形成されている。また、前リンク支持アーム95の下部には、駆動軸ケース36を前側から嵌合させる円弧状の凹部95bが形成されている。
このように、前リンク支持アーム95は、機体6側に対して固定された部分として設けられており、チェンケース37の上下回動にともなう駆動軸ケース36の回動を許容している。前リンク支持アーム95により、横リンク部91は、機体6側に対して固定の位置で支持されている。つまり、横リンク部91の軸心P2の位置は、機体6に対して固定の位置である。横リンク部91は、駆動軸ケース36の後上方に位置している。
横リンク部91においては、前リンク支持アーム95に固定されたインナパイプ93に対するアウタパイプ94の位置調整の機構により、横リンク部91の長さが調整される。アウタパイプ94は、インナパイプ93に対して、両パイプの周壁を径方向に貫通するボルト等の固定部材97によって固定される。アウタパイプ94の位置調整は、クローラユニット30の左右方向の位置調整、つまり左右のクローラユニット30のトレッドの調整に用いられる。
縦リンク部92は、前側を横リンク部91に支持させるとともに、後側を、支持フランジ部70に設けられた後リンク支持アーム100に支持させることで、横リンク部91と後リンク支持アーム100との間に架設されている。縦リンク部92は、その大部分をなすリンク本体部材101と、リンク本体部材101を後リンク支持アーム100に対して弾性的に移動可能に連結支持するための連結軸部材102とを有する。
後リンク支持アーム100は、支持フランジ部70に固定された状態で、側面視で駆動スプロケット61の外形の範囲内に納まるように設けられている。後リンク支持アーム100は、左右方向を板厚方向とするとともに側面視で略扇形状をなす板状の部分を本体部100aと、本体部100aの中心角側に設けられた軸支持部100bとを有する。
後リンク支持アーム100は、本体部100aの略扇形状の中心角側を後斜め上方に向けている。なお、本実施形態では、本体部100aがなす側面視形状は、中心角を30°程度とする略扇形状である。本体部100aの側面視形状である略扇形状の半径に対応する上下の直線状の縁部に沿って、本体部100aに対して左右外側に屈曲した屈曲面部100cが形成されている。
軸支持部100bは、左右方向に対向する一対の支持面部100dと、本体部100a側につながった底面部100eとを有し、これらの面部によって略「U」字状に形成されている。軸支持部100bの左右一対の支持面部100d間に、縦リンク部92の後端部を支持するリンク後支持軸105が架設されている。
リンク後支持軸105は、左右方向を回転軸方向とする軸であり、軸支持部100bの左右の支持面部を貫通するピン状の部材により構成されている。軸支持部100bから左右外側に突出したリンク後支持軸105の先端部には、軸を係止させるための止めピン105aが取り付けられている。
後リンク支持アーム100は、本体部100aおよび支持フランジ部70を貫通する固定部材である複数の(本実施形態では3本の)ボルト106によって支持フランジ部70に着脱可能に固定されている。後リンク支持アーム100は、本体部100aの略扇形状の円弧側の部分を、支持フランジ部70の後縁部に対して左右外側から重ねた状態で、ボルト106により固定されている。
支持フランジ部70には、ボルト106を貫通させる孔部として、5つの孔部70hが後縁部の円弧形状に沿って所定の間隔で形成されている。また、後リンク支持アーム100の本体部100aの軸支持部100b側と反対側の縁部には、3つの孔部が形成されている。後リンク支持アーム100の3つの孔部は、支持フランジ部70の5つの孔部70hのうちの連続した3つの孔部70hに整合するように形成されている。後リンク支持アーム100は、5つの孔部70hのうち、上側の3つの孔部70hが用いられ、3本のボルト106によって支持フランジ部70に固定されている。
後リンク支持アーム100は、図6に示すように、側面視で、軸支持部100bに支持されるリンク後支持軸105の軸心P3を通る所定の直線L2を中心線として、線対称の形状を有する。直線L2上に、車軸心O1が位置している。
リンク本体部材101は、所定の屈曲形状を有するパイプ状の本体軸部111と、本体軸部111の前端側に設けられた支持筒部112とを有する。
本体軸部111は、前側から後側にかけて、中心軸方向を左右方向とする横軸部111aと、横軸部111aとともに鈍角をなすように形成された傾斜軸部111bと、平面視で前後方向に沿う軸部であって傾斜軸部111bとともに鈍角をなす縦軸部111cとを有する。本体軸部111は、横軸部111a、傾斜軸部111bおよび縦軸部111cの各軸部の中心線を共通の平面に位置させるような形状を有し、側面視で直線状となるように支持されている。本体軸部111は、左右方向について、横軸部111aを、クローラ63の幅の範囲内に位置させ、縦軸部111cを、クローラ63の左右外側に位置させている。
支持筒部112は、両端を開口させた円筒状の部分であり、左右方向を中心軸方向とし、本体軸部111に対して横軸部111aの前側に溶接等によって固定されている。支持筒部112は、アウタパイプ94を貫通させた状態で、アウタパイプ94に対して相対移動可能に設けられている。このように、支持筒部112をアウタパイプ94に貫通させることで、リンク本体部材101の前側の端部、つまり縦リンク部92の前側の端部が、横リンク部91に対して左右方向を回動軸方向として回動可能に支持されている。
横リンク部91には、アウタパイプ94に対する支持筒部112の相対移動を規制するためのストッパ機構を構成するストッパ部材115が設けられている。ストッパ部材115は、図8に示すように、支持筒部112と同径または略同径の筒状ないしリング状の本体筒部115aと、本体筒部115aの外周部から延出した係止板部115bとを有する。
図8に示すように、ストッパ部材115は、本体筒部115aにアウタパイプ94を貫通させた状態で、アウタパイプ94に対して相対移動可能に設けられている。係止板部115bは、本体筒部115aの中心軸方向視で本体筒部115aの径方向に沿う板状の部分であり、本体筒部115aの下側から垂下状に設けられている。係止板部115bは、本体筒部115aの下側から、本体筒部115aの中心軸方向の一側となる左右方向の外側(図8において右側)に延出している。
係止板部115bの延出方向の先端部には、係止板部115bの本体部分に対して直角状をなす係止面115dを有する係止部115cが形成されている。係止部115cは、係止板部115bの先端部において本体筒部115aの径方向内側に突出してカギ状をなすように形成されている。係止部115cは、アウタパイプ94に干渉せずに支持筒部112に対してのみ作用するように形成されている。
ストッパ部材115は、本体筒部115aの、係止板部115bの延出側の端面115eを、支持筒部112の一方の(図8において左方の)端面112aに接触ないし略接触させるとともに、係止面115dを、支持筒部112の他方の(図8において右方の)端面112bに接触ないし略接触させた状態で、支持筒部112に係合する。すなわち、ストッパ部材115は、本体筒部115aと係止部115cとの間に支持筒部112を抱き込むような態様で支持筒部112に係合する。
図7等に示す例では、ストッパ部材115は、アウタパイプ94上において、本体筒部115aを、支持筒部112に対して左右方向の内側に位置させた状態で、支持筒部112に係合している。ストッパ部材115は、アウタパイプ94に対して、本体筒部115aの周壁およびアウタパイプ94の周壁を貫通するボルト等の固定部材116によって固定される。このように、ストッパ部材115は、支持筒部112に係合した状態でアウタパイプ94に固定されることで、アウタパイプ94上における支持筒部112の軸方向の移動を規制する。
連結軸部材102は、本体軸部111の縦軸部111cと平行な直線棒状の本体軸部102aと、本体軸部102aの前端部に設けられた弾性支持筒部102bと、本体軸部102aの後側に設けられた軸支持部102cとを有する。本体軸部102a、弾性支持筒部102bおよび軸支持部102cは、一体の部材である連結軸部材102を構成している。連結軸部材102は、リンク本体部材101とリンク後支持軸105とを連結させ、リンク本体部材101をリンク後支持軸105に支持させる。
弾性支持筒部102bは、両端を開口させた円筒状の部分であり、本体軸部102aの前端部の左右一側に溶接等によって固定されている。弾性支持筒部102bは、本体軸部111の縦軸部111cの後部をなす縮径部111dを貫通させた状態で、縮径部111dに対して相対移動可能に設けられている。
本体軸部111の縮径部111dにおいて、弾性支持筒部102bの前側および後側には、それぞれ弾性体である前支持バネ117および後支持バネ118が設けられている。前支持バネ117および後支持バネ118は、いずれも巻きバネであり、縮径部111dを貫通させた状態で設けられている。
前支持バネ117は、後端側を、弾性支持筒部102bの前側の端面に当接させるとともに、前支持バネ117の前側において縮径部111dに対して取り付けられた前係止ピン117aにより係止されている。後支持バネ118は、前端側を、弾性支持筒部102bの後側の端面に当接させるとともに、後支持バネ118の後側において縮径部111dに対して取り付けられた後係止ピン118aにより係止されている。このように、弾性支持筒部102bは、縮径部111dに対して、前後のバネにより挟まれた状態で、軸方向の移動について弾性支持されている。
軸支持部102cは、左右方向を中心軸方向とする円筒状の部分であり、本体軸部102aの後端側に溶接等によって固定されている。軸支持部102cは、後リンク支持アーム100の軸支持部100bに架設されたリンク後支持軸105を貫通させた状態で、リンク後支持軸105に対して相対回動可能に設けられている。これにより、リンク本体部材101は、リンク後支持軸105に対して回動可能に支持されている。
このように、リンク後支持軸105に対して連結軸部材102を介してリンク本体部材101を支持した構成においては、リンク本体部材101を連結軸部材102に対して軸方向の移動について弾性支持するダンパ仕組みとしての緩衝装置120が構成されている。すなわち、緩衝装置120は、リンク本体部材101の本体軸部111において、連結軸部材102の弾性支持筒部102bを前支持バネ117および後支持バネ118の間に介在させて弾性支持筒部102bを軸方向の両側から押圧付勢することで、リンク本体部材101を連結軸部材102に対して弾性支持する機構である。緩衝装置120により、リンク本体部材101が、連結軸部材102を介してリンク後支持軸105に対して近接・離間する方向に弾性支持される。
以上のような構成において、リンク機構60を構成するリンク90は、側面視でチェンケース37に対して平行状に設けられている。すなわち、上述のとおり側面視で直線状となるように設けられたリンク90は、その側面視での直線の方向を、チェンケース37の長手方向と平行または略平行としている。
詳細には、図6に示すように、側面視においてリンク90が沿う直線は、横リンク部91の軸心P2とリンク後支持軸105の軸心P3とを通る直線R1である。リンク90は、直線R1を中心として対称ないし略対称に構成されている。また、側面視においてチェンケース37の長手方向を規定する直線は、クローラ用駆動軸38の軸心P1と車軸心O1とを通る直線R2である。
このように、リンク90は、チェンケース37とともに、機体6の昇降動作に連動するリンク機構60を構成している。リンク機構60は、車軸心O1、クローラ用駆動軸38の軸心P1、横リンク部91の軸心P2、およびリンク後支持軸105の軸心P3の4つの軸心を節点とする平行リンクの態様で、クローラユニット30を機体6に対して連結支持している。
リンク機構60において、横リンク部91の軸心P2は、車軸心O1に対して前上方に位置しており、リンク後支持軸105の軸心P3は、車軸心O1に対して後上方に位置している。リンク機構60において、クローラ用駆動軸38の軸心P1および横リンク部91の軸心P2の位置は、機体6の昇降動作にかかわらず機体6に対して固定の位置である。一方、車軸心O1およびリンク後支持軸105の軸心P3の位置は、機体6の昇降動作にともなって移動する。ただし、車軸心O1と軸心P3の相対位置は、機体6の昇降動作にかかわらず一定である。
以上のようなリンク機構60を備えた移植機1は、昇降シリンダ41の伸縮動作による機体6の昇降動作にともない、図1および図2に示すように、リンク機構60を動作させる。リンク機構60の動作において、チェンケース37とリンク90とは、側面視において平行状態を保持する。つまり、図6に示すように、側面視において、車軸心O1およびクローラ用駆動軸38の軸心P1を通る直線R2と、横リンク部91の軸心P2およびリンク後支持軸105の軸心P3を通る直線R1とは、リンク機構60の動作において互いに平行な状態を保持する。なお、図1は、機体6が上昇した状態を示しており、図2は、機体6が下降した状態を示している。
また、リンク機構60は、車軸39の軸心位置である車軸心O1を節点に含み、クローラユニット30を接地させた状態での車軸39を中心とした機体6の回動動作にともなって、転輪62を昇降させるように構成されている。具体的には次のとおりである。
クローラユニット30が接地した状態において、例えば、図9に示すように、移植機1を操作する作業者によってハンドル13が押し下げられることで(矢印B1参照)、移植機1は、クローラユニット30の接地部分を支点部として、機体6の前側を上昇させるように傾動し(矢印B2参照)、前輪31を浮かせた状態となる。ここで、移植機1は、クローラ63を介して接地した状態の駆動スプロケット61の中心、つまり車軸心O1を中心として機体6を後傾させる。
車軸心O1を中心として機体6が後傾することで、リンク機構60の動作として、リンク後支持軸105を支持する後リンク支持アーム100が、リンク90によって後側に押される(矢印B3参照)。後リンク支持アーム100は、駆動スプロケット61に対して筒軸部72を介して回動可能に支持された支持フランジ部70に固定されていることから、後リンク支持アーム100が後側に押されることで、支持フランジ部70、転輪ダンパ機構71、転輪支持軸80および転輪62を含む転輪回動ユニットが車軸心O1を中心として回動し、転輪62が上昇する(矢印B4参照)。
このように、リンク機構60は、クローラユニット30を接地させた状態で機体6を車軸39を中心として後下がりとなるように回動させることで、転輪62を地面G1から離間させるように構成されている。
一方、図9に示すように機体6の後傾動作によって転輪62が上昇した状態から、ハンドル13を押し下げる力を緩めることで、移植機1は、駆動スプロケット61をクローラ63を介して接地させた状態を保持しながら、車軸心O1を中心として機体6を前傾方向に回動させる。これにより、地面G1から離れた状態の転輪62が下降することになる。
また、リンク機構60において、リンク90は、側面視でリンク90の両端に位置するリンク機構60の節点同士を近接・離間させる方向についての緩衝装置120を有する。ここで、リンク90の両端に位置するリンク機構60の節点は、横リンク部91の軸心P2とリンク後支持軸105の軸心P3である(図6参照)。
すなわち、リンク90の縦リンク部92においては、本体軸部111の縮径部111dに対する弾性支持筒部102bの貫通支持構造により、リンク本体部材101と連結軸部材102が軸方向に相対移動可能に連結されている。そして、弾性支持筒部102bの前後に前支持バネ117および後支持バネ118を設けることで、リンク本体部材101と連結軸部材102の相対移動を弾性支持する緩衝装置120が構成されている。
緩衝装置120により、連結軸部材102がリンク本体部材101に対して相対的に前方に移動することで、前支持バネ117の圧縮をともない、軸心P3が軸心P2に近付く。一方、連結軸部材102がリンク本体部材101に対して相対的に後方に移動することで、後支持バネ118の圧縮をともない、軸心P3が軸心P2から離れる。このように、リンク本体部材101と連結軸部材102の相対移動の範囲で、軸心P2および軸心P3同士が近接・離間する。
また、図1から図9に示す例では、左右のクローラユニット30は、チェンケース37の左右外側に設けられている。本実施形態に係る移植機1は、部品の交換を必要とせず、左右のクローラユニット30をチェンケース37の左右内側に設けることができるように構成されている。つまり、移植機1は、共通の部品構成により、チェンケース37の左右外側・内側で、左右のクローラユニット30の取付け位置の変更が可能となるように構成されている。以下では、左右のクローラユニット30をチェンケース37の左右内側に設けた構成を「クローラ内側配置構成」とし、クローラユニット30をチェンケース37の左右外側に設けた構成を「クローラ外側配置構成」とする。
図10および図11に示すように、クローラ内側配置構成においては、クローラ外側配置構成に対して、クローラユニット30およびリンク90がチェンケース37を介して左右対称となるように設けられる。図10は、クローラ内側配置構成における足回りの左半部の構成を示す平面図である。図11は、クローラ内側配置構成における左側のクローラユニット30およびその周辺の構成を、左右方向の内側から見た側面図である。
クローラユニット30については、図10および図11に示すように、転輪回動ユニットを含むクローラユニット30が、左右反転した状態で、チェンケース37の左右内側に取り付けられる。クローラ内側配置構成において、クローラユニット30は、クローラ外側配置構成では左右外側(図5において下側)となっていた側を左右内側(図10において上側)に向けた状態で設けられる。
クローラユニット30は、直線L1(図6参照)を中心として線対称に構成されているため、クローラ内側配置構成において、クローラ外側配置構成におけるクローラユニット30を反転させた構成が得られる。すなわち、図11に示すように、クローラ内側配置構成における側面視でのクローラユニット30は、図6に示すクローラ外側配置構成における側面視でのクローラユニット30を図面上、左右に反転させた構成となる。なお、クローラ外側配置構成とクローラ内側配置構成の構成を変更する際には、左右のクローラユニット30を入れ替えて取り付けてもよく、左側または右側のクローラユニット30をそれぞれ左側または右側において反転させることでチェンケース37の外側または内側に付け替えてもよい。
クローラ内側配置構成においては、車軸39が、チェンケース37の後端部から左右内側に突出するように設けられる。図10に示すように、チェンケース37の後端部における車軸39の支持部位の左右両側には、車軸心O1に対応して略円柱状に突出した軸支持突部37b,37cが設けられている。
クローラ外側配置構成においては、図5に示すように、車軸39は、チェンケース37の後端部において、左右外側の軸支持突部37bから左右外方に向けて突出するように設けられる。ここで、左右内側の軸支持突部37cの端面部は、円形状のキャップ部材119a等により塞がれる。一方、クローラ内側配置構成においては、図10に示すように、車軸39は、チェンケース37の後端部において、左右内側の軸支持突部37cから左右内方に向けて突出するように設けられる。ここで、左右外側の軸支持突部37bの端面部は、円形状のキャップ部材119b等により塞がれる。
また、クローラ外側配置構成およびクローラ内側配置構成の各構成において、後リンク支持アーム100は、支持フランジ部70に形成された5つの孔部70hのうち、上側の3つの孔部70hが用いられ、3本のボルト106によって支持フランジ部70に固定されている(図6、図11参照)。したがって、例えば、左右のクローラユニット30が反転されて付け替えられる場合、クローラ外側配置構成における支持フランジ部70の5つの孔部70hを上側から下側にかけて順に第1~5孔部70hとすると、クローラ外側配置構成では、上側に位置する第1,第2,第3孔部70hが用いられて後リンク支持アーム100が固定され、クローラ内側配置構成では、上側に位置する第5,第4,第3孔部70hが用いられて後リンク支持アーム100が固定されることになる。後リンク支持アーム100は直線L2を中心に線対称の形状を有することから、クローラ外側配置構成の場合とクローラ内側配置構成の場合とで、後リンク支持アーム100は支持フランジ部70に対して共通の取付け態様となる。
リンク90については、図10および図11に示すように、縦リンク部92をなす構成が左右反転した状態で取り付けられる。すなわち、縦リンク部92は、本体軸部111の縦軸部111cを、クローラ63の左右内側に位置させるように設けられる。ここで、縦リンク部92の左右方向の位置調整には、インナパイプ93に対するアウタパイプ94の位置調整の機構が用いられる。
クローラ内側配置構成において、縦リンク部92は、支持筒部112を、ストッパ部材115の左右内側に位置させている(図10参照)。このため、ストッパ部材115は、アウタパイプ94に対して、クローラ外側配置構成の場合とは左右逆向きに挿嵌され、支持筒部112に係合する。
また、リンク90は、側面視において直線R1(図6参照)に沿うように対称ないし略対称に構成されている。このため、クローラ内側配置構成においても、リンク90は、クローラ外側配置構成の場合と同様に、側面視において横リンク部91の軸心P2とリンク後支持軸105の軸心P3とを通る直線に沿った状態となる。
以上のように、移植機1において、左右のクローラユニット30は、チェンケース37の外側または内側に付け替えが可能となっている。なお、クローラユニット30の付け替え等にともなう左右のクローラユニット30のトレッドの変更に応じて、左右の前輪31の左右方向の位置がそれぞれクローラユニット30の位置と整合するように、左右の前輪31のトレッドが調整される。
以上のような構成を備えた本実施形態に係る移植機1によれば、機体6を移動させるためのクローラユニット30を有する構成において、良好な旋回性能を得ることができる。
本実施形態に係る移植機1は、チェンケース37およびリンク90により、機体6の昇降にともなって動作する平行リンクであるリンク機構60を構成している。そして、リンク機構60は、車軸心O1の位置を節点に含み、クローラユニット30を接地させた状態での車軸39を中心とした機体6の回動動作にともなって、転輪62を昇降させるように構成されている。
このような構成によれば、移植機1の車軸心O1を中心とした回動について、機体6とクローラユニット30との平行状態を保持することができる。これにより、車軸心O1を中心とした機体6の後傾回動にともない、クローラユニット30の接地状態を保持しながら転輪62側を上昇させることができる。つまり、クローラ63における駆動スプロケット61の下側の部分から転輪62の下側へ至る接地面側の部分の全体を接地させるのではなく、転輪62側を浮かせてクローラ63における駆動スプロケット61の下側の部分だけを接地させることができる。これにより、機体6の旋回を容易に行うことができ、小回り性を確保することができる。
特に、本実施形態の移植機1においては、転輪62が駆動スプロケット61の前方に配置されており、走行機体2を後下がりに回動させることで、クローラユニット30の接地面積を最小にすることができる。すなわち、移植機1を旋回させる際、走行機体2を後下がりとなるように回動させて前輪31を浮かせた状態とすることが行われるが、ここで、リンク機構60により、走行機体2の回動に連動して、クローラユニット30も前上がりに傾動する。このため、前輪31とともにクローラユニット30の転輪62側の部分を浮かせることができるので、クローラユニット30の接地面積を最小限に抑えることができる。これにより、旋回を容易に行うことが可能となる。
具体的には、例えば図9に示すように、ハンドル13を押し下げることで機体6を後傾状態とすることにより、前輪31は浮いた状態となり、クローラユニット30は、転輪62を上昇させて駆動スプロケット61の部分のみをクローラ63を介して接地させた状態となる。つまり、クローラユニット30は、地面G1に対していわば線接触した状態となる。これにより、クローラユニット30の代わりに車輪を連結したホイル式の構成の場合と同様の接地面とすることができるので、接地面積を小さくすることができ、良好な旋回性能を得ることができる。
また、移植機1の通常の走行時等においては、リンク機構60により、駆動スプロケット61および転輪62によるクローラユニット30の接地状態を保持することができる。これにより、ホイル式の構成の場合に対する接地圧の低減効果を十分に得ることができる。
また、チェンケース37およびリンク90によってリンク機構60を構成することで、機体6の高さ位置に関わらず、クローラユニット30の接地角度を一定に保持することができる。これにより、走行部7による牽引力を安定させることができる。
また、リンク機構60を構成するリンク90は、緩衝装置120を有する。このような構成によれば、移植機1の車軸心O1を中心とした回動について、機体6とクローラユニット30との平行状態を保持した状態を基準として、緩衝装置120によるリンク本体部材101と連結軸部材102の相対移動の範囲で、機体6に対する車軸心O1を中心としたクローラユニット30の相対回動を許容することができる。これにより、圃場の路面の凹凸に追従してクローラユニット30を機体6に対して回動させることが可能となり、機体6のピッチングを抑制することができる。すなわち、例えば緩衝装置120が無い構成の場合、機体6に対するクローラユニット30の水平状態が保持されることから、圃場の路面の凹凸等によって機体6全体がピッチングしやすくなるが、リンク90が緩衝装置120を有することにより、かかるピッチングが抑制されることになる。
また、リンク90は、横リンク部91において縦リンク部92の左右方向の位置を調整可能に支持するとともに、縦リンク部92の支持位置を固定するためのストッパ部材115を有する。このような構成によれば、圃場における畝幅等に応じて、左右のクローラユニット30のトレッドの調整が可能となる。
また、本実施形態に係る移植機1は、クローラユニット30およびリンク90について対称的な構成を採用することで、共通の部品構成により、クローラユニット30のチェンケース37に対する内側・外側の取付け位置の変更を可能としている。このような構成によれば、左右のクローラユニット30のトレッドの調整幅を広範囲とすることができるので、圃場における畝幅等に対して移植機1の汎用性を向上させることができる。また、クローラユニット30の付替えに関し、部品の管理を容易にすることができるとともに、部品の取付けの間違いを防止することができる。
[クローラユニットの構成について]
クローラ走行装置としてのクローラユニット30の別実施形態について説明する。本実施形態は、クローラユニット30が備える駆動輪としての駆動スプロケット61についてのものである。
例えば、移植機1の前進時において、駆動スプロケット61と転輪62との間に石等を噛み込むことによってクローラユニット30がロックした場合、駆動スプロケット61に対して支持フランジ部70および転輪ダンパ機構71を介して連結された転輪62が、車軸心O1を中心として下方に回転しようとする。このような場合、転輪62が地面G1から受ける反力によって車軸39等に対して過大なトルクが作用し、走行駆動系を構成する部品について変形や破損等の不具合が生じる可能性がある。
クローラ走行装置を構成するスプロケットに関し、次のような技術が知られている。第1の従来技術として、例えば、実公昭48-000247号公報には、スプロケットの歯の部分を、ボスに対して着脱可能な複数の部品により構成し、歯の摩耗時等において部品の交換が可能ないわゆるセグメントタイプのスプロケットが記載されている。また、第2の従来技術として、特開2012-056578号公報には、簡単な構造でより適切な範囲でのトレッド変更を可能にすべく、車軸側の取付部に取り付けられる内輪体と、内輪体に取り付けられる外輪体と、外輪体に取り付けられクローラに係合する歯を有する外周係合輪とを備えたスプロケットが開示されている。
また、第3の従来技術として、実公昭56-050202号公報には、チェン伝動装置におけるスプロケットにおいて、ローラと接触する部分として、スプロケット本体の周縁部に形成された凹溝に、交換可能な歯形ブロックを取り付けた構成が開示されている。
以上のような従来技術によれば、スプロケットの歯の部分を構成する交換可能な部品を外した状態のままでクローラ走行装置を駆動させることは困難である。このため、スプロケットの歯数を変更することで、伝達トルクを加減してトルクリミッタとして機能させることはできない。また、第1の従来技術および第2の従来技術の場合、歯の摩耗等による部品の交換としては、複数の歯を有するセグメントごとの交換が必要であった。
そこで、本実施形態に係るクローラユニット30は、駆動スプロケット61からクローラ63等に伝達されるトルクを変更することができ、良好なメンテナンス性を得ることができる構成を実現したものである。
図12および図13に示すように、本実施形態に係るクローラユニット30は、クローラ63に対して推進力を伝達する駆動スプロケット61を備える。駆動スプロケット61は、車軸心O1に対応する中心軸Q1を中心とした円周に沿う外周部であるリム部137と、リム部137から径方向外側に突出してクローラ63に推進力を伝達する複数の突出部としての歯部138とを備える。そして、複数の歯部138のうちの一部の歯部138が着脱可能に構成されている。
駆動スプロケット61は、スプロケット本体130と、スプロケット本体130に対して着脱可能に設けられた複数の歯取付部材140とを有する。
スプロケット本体130は、駆動スプロケット61の本体部分をなす部材であり、中心軸Q1を中心とした略円板形状を有する。スプロケット本体130は、その中心部をなして車軸39の連結を受ける略円板状のハブ部135と、ハブ部135から中心軸Q1を中心として放射状に形成された複数のスポーク部136と、スプロケット本体130の周縁部をなすリム部137とを有する。
リム部137の外周側に、クローラ63に対する係合部分となる複数の歯部138が周方向について所定の間隔で設けられている。歯部138は、駆動スプロケット61の中心軸方向視で径方向外側に向けて山形状をなすように突出形成されている。
スポーク部136は、ハブ部135の外周側と、リム部137の内周側とつなぐ幅狭の部分である。本実施形態では、周方向に等間隔で6本のスポーク部136が形成されている。したがって、ハブ部135とリム部137との間においては、周方向に隣り合う2本のスポーク部136の間に開口部139が形成されている。開口部139は、周方向に等間隔で6箇所に形成されている。
図12から図14に示すように、歯取付部材140は、駆動スプロケット61の歯部138をなす突起部148を含む歯形成板部141と、歯形成板部141をスプロケット本体130に支持固定するための支持固定板部142とを有する。歯形成板部141および支持固定板部142は、それぞれをなす板状の部材同士を溶接等によって互いに固定することで、スプロケット本体130に対する一体的な着脱部材としての歯取付部材140を構成している。歯形成板部141および支持固定板部142それぞれの板厚は、スプロケット本体130の板厚と同一または略同一である。
歯形成板部141は、略矩形板状の部分である本体部143を有し、本体部143の一側から突起部148が突出形成されている。突起部148は、本体部143の一側の辺部143aの中央部に形成されており、歯形成板部141は、突起部148を左右に二分する直線T1を中心として線対称の形状を有する(図12参照)。直線T1は、本体部143において突起部148が突出する側の辺部143aと反対側の辺部143bに直交する辺部143cに平行な直線となる。本体部143の突起部148が突出する側の辺部143aは、スプロケット本体130のリム部137の外縁が沿う円弧の曲率と同一または略同一の曲率の円弧に沿う形状を有する。
支持固定板部142は、細長い矩形板状の部分であり、歯形成板部141をなす板状の部材の一方の板面側に設けられている。支持固定板部142は、歯形成板部141に対して、本体部143の辺部143bに長手方向を沿わせるように設けられている。
支持固定板部142は、幅方向の全体を歯形成板部141に重ねるように設けられている。支持固定板部142は、長手方向の両側の部分を、歯形成板部141の本体部143の左右の辺部143cよりも外側に延出した延出部142aとしている。支持固定板部142は、歯形成板部141に対して、歯取付部材140が全体で直線T1を中心として線対称の形状を有するように設けられている。
スプロケット本体130においては、歯取付部材140を取り付けるために、リム部137の周方向について1つの歯部138の形成部位およびその近傍部分を切り欠いた切欠部133が形成されている。切欠部133は、リム部137の互いに対向する縁端部137aにより、開口部139につながるように形成されている。つまり、スプロケット本体130において、複数の開口部139のうち、切欠部133とつながった開口部139Aは、切欠部133により外周側に開口している。切欠部133により、リム部137は周方向について断続的に形成されている。
切欠部133が形成された開口部139Aに対して、歯取付部材140が設けられる。本実施形態では、6つの開口部139のうち、スプロケット本体130の周方向について交互に位置する3つの開口部139Aに対して切欠部133が形成されている。つまり、スプロケット本体130に対して最大3個の歯取付部材140が取付け可能となっている。
歯取付部材140は、切欠部133に本体部143の突起部148の近傍部分を位置させるとともに、本体部143の大部分を開口部139A内に位置させた状態で、スプロケット本体130に取り付けられる。歯取付部材140は、周方向に隣り合うとともに開口部139Aをなす2本のスポーク部136間に支持固定板部142を架設させた状態で、スプロケット本体130に取り付けられる。
歯取付部材140は、支持固定板部142の延出部142aおよびスプロケット本体130を貫通するボルト151およびボルト151の螺合を受けるナット152により、スプロケット本体130に着脱可能に締結固定される。このため、支持固定板部142の両端部に、ボルト151を貫通させるための孔部142bが形成されており、スプロケット本体130のスポーク部136のリム部137の近傍部分に、ボルト151を貫通させるための孔部136aが形成されている(図13参照)。なお、ボルト151およびナット152は、歯取付部材140をスプロケット本体130に固定するための固定部材の一例であり、他の固定手段が用いられてもよい。
歯取付部材140は、スプロケット本体130に取り付けられた状態(以下「取付け状態」とする。)において、本体部143の辺部143a側の部分により、切欠部133を塞いでいる。すなわち、本体部143の幅方向の寸法は、切欠部133をなす縁端部137a間の寸法と略同じとなっており、切欠部133に本体部143が嵌った状態となっている。また、歯取付部材140は、辺部143aを、スプロケット本体130のリム部137の外縁が沿う円弧形状に沿わせている。また、歯取付部材140は、取付け状態において、歯形成板部141の両側の板面を、それぞれスプロケット本体130の両側の板面に対して面一状としている。
歯取付部材140の取付け状態において、突起部148が、駆動スプロケット61の歯部138となる。本実施形態では、駆動スプロケット61は、18個の歯部138を有する。18個の歯部138のうち、最大で3個の歯部138が、歯取付部材140の突起部148により形成される。したがって、スプロケット本体130の周方向に隣り合う切欠部133間には、5個の歯部138が形成されている。
以上のような構成において、1つの歯取付部材140のみを取り付けた状態では、歯部138の数は16個となり、2つの歯取付部材140のみを取り付けた状態では、歯部138の数は17個となり、3つすべての歯取付部材140を取り付けた状態では、歯部138の数は18個となる。いずれの状態の駆動スプロケット61であっても、クローラユニット30の駆動輪として機能する。
また、図12に示すように、3つの歯取付部材140を取り付けた状態において、駆動スプロケット61は、基本的に転輪62側に位置する連続した5個の歯部138A以外の連続した13個の歯部138を、クローラ63に係合させる。したがって、1つの歯取付部材140を取り外すことで、クローラ63に係合する歯部138の最小の数は12個となる。また、2つの歯取付部材140を取り外すことで、クローラ63に係合する歯部138の最小の数は11個となる。また、3つの歯取付部材140を取り外すことで、クローラ63に係合する歯部138の最小の数は10個となる。
以上のような構成を備えた本実施形態に係るクローラユニット30によれば、スプロケット本体130に対する歯取付部材140の取付け数により、駆動スプロケット61からクローラ63等に伝達されるトルクを調整することができる。これにより、クローラ63に対する駆動スプロケット61の係合部を、トルクリミッタとして機能させることが可能となる。
したがって、例えば、比較的石が多い圃場のように、クローラユニット30において駆動スプロケット61と転輪62との間や、クローラ63と駆動スプロケット61および転輪62それぞれとの間に石等を噛み込む石噛みが生じやすい状況では、例えば駆動スプロケット61が大径でクローラ63に対する係合量が大きい(周方向についての係合範囲が大きい)場合、駆動スプロケット61からクローラ63等に対して伝達可能なトルクが過大となる。
そこで、歯取付部材140を適宜の数だけ取り外して歯部138の数を減らすことで、駆動スプロケット61からの伝達トルクを小さくすることができる。これにより、駆動スプロケット61によるクローラ63の駆動力を下げることができ、トルクリミッタとして機能させることができる。
すなわち、トルクがある程度の大きさ以上となると、クローラ63に対して駆動スプロケット61を空回りさせることができ、車軸39等に対して過大なトルクが作用することを防止することができる。これにより、走行駆動系を構成する部品について変形や破損等の不具合が生じることを防止することが可能となる。しかも、走行駆動系にリミッタを設ける必要がなくなるので、構造の簡略化を図ることができる。なお、駆動スプロケット61からの伝達トルクを下げる場合、駆動スプロケット61の周方向について切欠部133の間隔を等間隔とするため、3つすべての歯取付部材140を取り外すことが好ましい。
また、クローラユニット30の長期使用等によって歯部138に摩耗等の劣化や破損等が生じた場合、駆動スプロケット61全体ではなく、歯部138のみを交換することができる。特に、歯取付部材140は、歯部138となる1つの突起部148を有するものであるため、1つの歯部138のみを交換することができる。これにより、良好なメンテナンス性および経済性を得ることができる。
なお、本実施形態では、駆動スプロケット61は、3つの歯取付部材140を取付け可能とした構成であるが、取付け可能な歯取付部材140の個数は、駆動スプロケット61の歯部138の総数等によって適宜決められるものであり、限定されるものではない。取付け可能な歯取付部材140の個数は、1個や2個であってもよく、また4個以上であってもよい。
また、歯取付部材140が有する突起部148については、その突出量および突出形状の少なくとも一方を、スプロケット本体130に設けられた歯部138との関係で、あるいは他の歯取付部材140の突起部148との関係で、異なるものとしてもよい。
ここで、突起部148の突出量は、辺部143aからの突起部148の突出寸法であり、辺部143aが沿う円周からの径方向についての突出寸法U1である(図13参照)。また、突起部148の突出形状としては、例えば、台形状であったり矩形状であったりしてもよい。
このように、歯部138となる突起部148の突出量や突出形状を変更することで、駆動スプロケット61からの伝達トルクの細かい調整が可能となる。これにより、圃場の条件等の作業環境に応じて適切なトルク伝達を実現することができる。
(変形例)
駆動スプロケット61の変形例について、図15を用いて説明する。この変形例では、駆動スプロケット61は、スプロケット本体130に対して着脱可能に設けられ歯部138を形成する部材として、複数の歯部材160を有する。
歯部材160は、駆動スプロケット61の歯部138をなす本体歯部168と、歯部材160をスプロケット本体130に取り付けるための取付板部161とを有する。取付板部161は、本体歯部168の山形状における基部側を矩形状ないし台形状に延出させた部分である。歯部材160は、スプロケット本体130の板厚と同一または略同一の板厚を有する一体の板状部材である。
歯部材160は、取付板部161を、スプロケット本体130のリム部137の一側の板面に重ねた状態で、取付板部161およびリム部137を貫通するボルト163およびボルト163の螺合を受けるナット(図示略)によって、スプロケット本体130に着脱可能に締結固定される。このため、取付板部161の中央部に、ボルト163を貫通させるための孔部161aが形成されており、スプロケット本体130のリム部137の所定の部位に、ボルト163を貫通させるための孔部137bが形成されている。なお、ボルト163およびナットは、歯部材160をスプロケット本体130に固定するための固定部材の一例であり、他の固定手段が用いられてもよい。また、この変形例では、リム部137に切欠部133が形成されておらず、リム部137は全周にわたって円周状に連続するように形成されている。
歯部材160の取付け状態において、本体歯部168が、駆動スプロケット61の歯部138となる。この変形例では、最大6個の歯部材160が取付け可能となっており、18個の歯部138のうち、最大で6個の歯部138が、歯部材160の本体歯部168により形成される。歯部材160の取り付け部位は、駆動スプロケット61の周方向について等間隔で設けられている。したがって、スプロケット本体130の周方向に隣り合う歯部材160の取付け部位の間には、2個の歯部138が形成されている。
以上のような構成において、スプロケット本体130に対して歯部材160を全て取り外すことで、歯部138の数は12個となる。そして、スプロケット本体130に対する歯部材160の取付け個数を1個にすることで、歯部138の数は13個となる。同様に、スプロケット本体130に対する歯部材160の取付け個数を2~6個にすることで、それぞれ歯部138の数は14~18個となる。いずれの状態の駆動スプロケット61であっても、クローラユニット30の駆動輪として機能する。
また、6個の歯部材160を取り付けた状態において、駆動スプロケット61は、基本的に転輪62側に位置する連続した5個の歯部138A(図12参照)以外の連続した13個の歯部138を、クローラ63に係合させる。したがって、1~4個の歯部材160を取り外すことで、それぞれクローラ63に係合する歯部138の最小の数は12~9個となる。また、5個または6個の歯部材160を取り外すことで、クローラ63に係合する歯部138の最小の数は8個となる。
以上のような変形例の駆動スプロケット61を備えたクローラユニット30によっても、スプロケット本体130に対する歯部材160の取付け数により、駆動スプロケット61からの伝達トルクを調整することができる。これにより、クローラ63に対する駆動スプロケット61の係合部を、トルクリミッタとして機能させることが可能となる。なお、駆動スプロケット61からの伝達トルクを下げる場合、駆動スプロケット61の周方向について歯部材160を取り外した部位が等間隔となるように歯部材160を取り外すことが好ましい。
また、歯部材160によれば、1つの歯部138のみを交換することができるため、良好なメンテナンス性および経済性を得ることができる。なお、本実施形態では、駆動スプロケット61は、3つの歯部材160を取付け可能とした構成であるが、取付け可能な歯部材160の個数は、駆動スプロケット61の歯部138の総数等によって適宜決められるものであり、限定されるものではない。変形例の構成において、駆動スプロケット61が有する18個の歯部138のすべてが歯部材160の本体歯部168により形成されてもよい。また、歯取付部材140の場合と同様に、本体歯部168の突出量および突出形状の少なくとも一方を、スプロケット本体130に設けられた歯部138との関係で、あるいは他の歯部材160の本体歯部168との関係で異なるものとしてもよい。
上述した実施形態の説明は本発明の一例であり、本発明に係る歩行型作業機は上述の実施形態に限定されることはない。このため、上述した実施形態以外であっても、本発明に係る技術的思想を逸脱しない範囲であれば、設計等に応じて種々の変更が可能であることは勿論である。また、上述した各実施形態の構成は適宜組み合せることができる。
上述した実施形態では、移植機1は、伝動ケースの一例としてチェン伝動機構を収納したチェンケース37を備えるが、本発明に係る伝動ケースは、例えばベルトおよびプーリ等を含む他の伝動機構を有する構成のものであってもよい。