以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、以下の実施形態は特許請求の範囲にかかる発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
本明細書においては、半導体基板の深さ方向と平行な方向における一方の側を「上」または「おもて」、他方の側を「下」または「裏」と称する。基板、層またはその他の部材の2つの主面のうち、一方の面を上面、他方の面を下面と称する。「上」、「下」、「おもて」、および「裏」の方向は、重力方向または半導体装置の実装時における基板等への取り付け方向に限定されない。
本明細書では、X軸、Y軸およびZ軸の直交座標軸を用いて技術的事項を説明する場合がある。本明細書では、半導体基板の上面と平行な面をXY面とし、半導体基板の深さ方向をZ軸とする。また、XYZ系は右手系をなす。なお、本明細書において、Z軸方向に半導体基板を視た場合について平面視と称する。
各実施例においては、第1導電型をN型、第2導電型をP型とした例を示しているが、第1導電型をP型、第2導電型をN型としてもよい。この場合、各実施例における基板、層、領域等の導電型は、それぞれ逆の極性となる。
本明細書においてドーピング濃度とは、ドナー化またはアクセプタ化した不純物の濃度を指す。本明細書においてドナーおよびアクセプタの濃度差をドーピング濃度とする場合がある。また、ドーピング領域におけるドーピング濃度分布のピーク値を、当該ドーピング領域におけるドーピング濃度とする場合がある。
本明細書では、NまたはPを冠記した層や領域においては、それぞれ電子または正孔が多数キャリアであることを意味する。また、NやPに付す+および-は、それぞれ、それが付されていない層や領域よりも高ドーピング濃度および低ドーピング濃度であることを意味する。また、NやPに付す- -は-が付された層や領域よりもさらに低ドーピング濃度であることを意味する。
図1Aは、半導体装置100の斜視図の一例である。ただし、半導体装置100は、縦型MOSFETであってもよく、トレンチ構造によるトランジスタを有する他の半導体装置であってもよい。
本例の半導体装置100は、半導体基板10のおもて面側において、エミッタ接触トレンチ部40、ダミートレンチ部30、エミッタ非接触トレンチ部130、エミッタ領域12、ベース領域14、およびコンタクト領域15を備える。さらに、本例の半導体装置100は、半導体基板10の深さ方向において、おもて面に現れるエミッタ領域12およびコンタクト領域15の下方に接して設けられるベース領域14を備える。また、本例の半導体装置100は、ベース領域14の下方に接して設けられる蓄積領域16と、蓄積領域16の下方に接して設けられるドリフト領域18とを備える。
半導体基板10は、エミッタ接触トレンチ部40近傍においてエミッタ領域12、ベース領域14、およびドリフト領域18を有する。半導体基板10は、ダミートレンチ部30またはエミッタ非接触トレンチ部130近傍において、コンタクト領域15、ベース領域14、およびドリフト領域18を有する。なお、本例の半導体基板10は、ベース領域14およびドリフト領域18の間に蓄積領域16を有するが、蓄積領域16は有しなくてもよい。
本例の半導体基板10は、拡散領域として、ダミートレンチ部30およびエミッタ接触トレンチ部40の間のメサ部60と、エミッタ接触トレンチ部40およびエミッタ非接触トレンチ部130の間のメサ部62とを有する。また、本例の半導体基板10は、半導体基板10の裏面側に第1導電型のコレクタ領域を有するが、図1Aにおいては、半導体基板のおもて面側近傍についてのみ図示されている。
エミッタ接触トレンチ部40は、半導体基板10の上面に複数設けられる。エミッタ接触トレンチ部40は、第1トレンチ部の一例である。エミッタ接触トレンチ部40は、予め定められた配列方向(本例ではX軸方向)に沿って予め定められた間隔で配列される。エミッタ接触トレンチ部40は、半導体基板10の上面に平行であって配列方向と垂直な延伸方向(本例ではY軸方向)に沿って延伸する。
エミッタ接触トレンチ部40は、ゲート導電部44およびゲート絶縁膜42を有する。ゲート導電部44は、ゲート電位に設定され、ゲート絶縁膜42を挟んで、ゲート導電部44および半導体基板10の拡散領域の間にゲート容量が生じる。
エミッタ接触トレンチ部40は、エミッタ領域12、ベース領域14、コンタクト領域15および蓄積領域16の少なくともいずれかが設けられる領域においては、これらの領域を貫通して設けられる。エミッタ接触トレンチ部40がドーピング領域を貫通するとは、ドーピング領域を形成してからエミッタ接触トレンチ部40を形成する順序で製造したものに限定されない。エミッタ接触トレンチ部40を形成した後に、エミッタ接触トレンチ部40の間にドーピング領域を形成したものも、エミッタ接触トレンチ部40がドーピング領域を貫通しているものに含まれる。
半導体基板10は、シリコン基板であってよく、炭化シリコン基板であってよく、窒化ガリウム等の窒化物半導体基板であってもよい。本例の半導体基板10は、シリコン基板である。
エミッタ領域12は、半導体基板10のおもて面側に設けられた第1導電型の領域である。一例として、エミッタ領域12は、N+型の極性を有する。エミッタ領域12は、エミッタ接触トレンチ部40と接して設けられる。エミッタ領域12は、隣り合うエミッタ接触トレンチ部40の間に延伸する。
ベース領域14は、エミッタ領域12およびコンタクト領域の下方に接して設けられた第2導電型の領域である。一例として、ベース領域14は、P-型の極性を有する。ベース領域14は、エミッタ接触トレンチ部40に接して設けられ、エミッタ接触トレンチ部40にゲート電圧を印加した場合、エミッタ接触トレンチ部40に接するベース領域14に、N型のチャネルが生成される。ベース領域は、半導体基板10のおもて面に露出していてもよい。また、ベース領域14は、蓄積領域16の上方に接して設けられる。
コンタクト領域15は、半導体基板10のおもて面に設けられた第2導電型の領域である。一例として、コンタクト領域15は、P+型の極性を有する。コンタクト領域15は、半導体基板10のおもて面においてエミッタ領域12に接して配列される。コンタクト領域15は、エミッタ接触トレンチ部40およびエミッタ非接触トレンチ部130に接して設けられる。
P+型のコンタクト領域15を予め定められた深さに設けることで、正孔電流がエミッタ領域12側へ流れて寄生サイリスタが導通し、IGBTのラッチアップが生じることを防ぐことができる。IGBTにおいては、ターンオフ期間にはエミッタ領域12からベース領域14へと注入される電子の注入量が減少し、正孔電流が支配的となる。ターンオフ期間において、正孔電流はドリフト領域18からベース領域14、コンタクト領域15を介して、エミッタ電極へと流れる。
蓄積領域16は、ドリフト領域18の上方に接して設けられた第1導電型の領域である。本例の蓄積領域16は、N-型である。蓄積領域16は、半導体基板10の下面側からドリフト領域18に注入された正孔が、半導体基板10のおもて面側に抜けることを抑制する。蓄積領域16は、ドリフト領域18のおもて面側におけるキャリア密度を高める。蓄積領域16は、キャリア注入促進効果(IE効果)により、半導体装置100を伝導度変調させる。これにより、半導体装置100のチャネル抵抗を低減し、ターンオン損失を低減できる。
ドリフト領域18は、半導体基板10に設けられた第1導電型の領域である。本例のドリフト領域18は、N--型である。ドリフト領域18は、半導体基板10において他のドーピング領域が形成されずに残存した領域であってよい。即ち、ドリフト領域18のドーピング濃度は半導体基板10のドーピング濃度であってよい。
ダミートレンチ部30は、半導体基板10のおもて面に複数設けられる。ダミートレンチ部30は、エミッタ接触トレンチ部40と同様、予め定められた配列方向(本例ではX軸方向)に沿って予め定められた間隔で配列される。ダミートレンチ部30は、エミッタ接触トレンチ部40と同様、配列方向と垂直な延伸方向(本例ではY軸方向)に沿って延伸する。ダミートレンチ部30は、半導体基板10のおもて面において、メサ部60を介して少なくとも1つのエミッタ接触トレンチ部40と隣り合う。
ダミートレンチ部30は、ダミー絶縁膜32およびダミー導電部34を有する。ダミー導電部34は、エミッタ電位に設定される。一例として、ダミートレンチ部30は、接地電位を有するが、エミッタ電位は異なる電位であってもよい。ダミー絶縁膜32を挟んで、ダミー導電部34および半導体基板10の拡散領域の間にゲート容量が生じる。
本例のダミートレンチ部30は、半導体基板10のおもて面において、エミッタ領域12と接して設けられるが、ダミートレンチ部30はエミッタ領域12と接して設けられなくてもよい。ダミートレンチ部30には、ゲート電圧が印加されないので、ダミートレンチ部30が接するベース領域14には、N型のチャネルが生成されない。したがって、ダミートレンチ部30に接するメサ部60において、コレクタ-エミッタ間の電流密度が低減する。
エミッタ非接触トレンチ部130は、半導体基板10のおもて面に複数設けられる。エミッタ非接触トレンチ部130は、第2トレンチ部の一例である。半導体基板10のおもて面において、エミッタ非接触トレンチ部130は、エミッタ領域12と接していない。半導体基板10のおもて面において、エミッタ非接触トレンチ部130は、ベース領域14またはコンタクト領域15と接する。エミッタ非接触トレンチ部130は、半導体基板10のおもて面において、メサ部62を介して少なくとも1つのエミッタ接触トレンチ部40と隣り合う。
エミッタ非接触トレンチ部130は、ゲート導電部134およびゲート絶縁膜132を有する。ゲート導電部134はゲート電位に設定され、ゲート絶縁膜132を挟んで、ゲート導電部134および半導体基板10の拡散領域の間にゲート容量が生じる。
エミッタ非接触トレンチ部130は、エミッタ領域12と接していないため、エミッタ非接触トレンチ部130に接する拡散領域の深さ方向において、NPN型のトランジスタとしては動作しない。一方で、エミッタ非接触トレンチ部130には、ゲート電圧が印加されるので、エミッタ非接触トレンチ部130に接するベース領域14の中の電子は、エミッタ非接触トレンチ部130近傍に引き寄せられる。半導体基板10のエミッタ非接触トレンチ部130に接する領域がNPNトランジスタとして動作しないので、エミッタ非接触トレンチ部130が設けられたメサ部62では、エミッタ接触トレンチ部40同士に挟まれたメサ部より電流密度が低減する。
エミッタ接触トレンチ部40およびエミッタ非接触トレンチ部130の間のメサ部62においては、ターンオン時に、ベース領域14内の電子がエミッタ接触トレンチ部40およびエミッタ非接触トレンチ部130のそれぞれに引き寄せられる。従って、メサ部62全体として電子が多い状態となり、メサ部62に流れる電流は電子をキャリアとする電流中心となる。
他方、エミッタ接触トレンチ部40およびダミートレンチ部30の間の領域においては、ターンオン時にエミッタ接触トレンチ部40近傍のベース領域14にのみ電子が引き寄せられる。即ち、エミッタ接触トレンチ部40およびダミートレンチ部30の間のメサ部60に存在する電子の量が、エミッタ接触トレンチ部40およびエミッタ非接触トレンチ部130の間のメサ部62より少なくなる。
メサ部60は、ゲート電位であるゲート導電部44およびエミッタ電位であるダミー導電部34に挟まれている。また、メサ部62は、ゲート電位であるゲート導電部44およびゲート電位であるゲート導電部134に挟まれている。
スイッチング時において、メサ部60はメサ部62より、ゲート導電部44からダミー導電部34に向かってゲート導電部44側の電位から徐々に低くなる電位分布を有する。よって、メサ部60全体では、電位が上昇しにくくなり、スイッチング時間が長くなる。
エミッタ接触トレンチ部40およびエミッタ非接触トレンチ部130をゲート電圧に設定すべく、これらのトレンチ部にはターンオン時にゲート電圧が印加される。エミッタ接触トレンチ部40のゲート導電部44と、エミッタ接触トレンチ部40に接するメサ部と、それらの間のゲート絶縁膜42とは、エミッタ接触トレンチ部40にゲート電圧を印加する際に電荷を蓄積するゲート容量として作用する。同様に、エミッタ非接触トレンチ部130のゲート導電部134と、エミッタ非接触トレンチ部130に接するメサ部62と、それらの間のゲート絶縁膜132も、エミッタ非接触トレンチ部130にゲート電圧を印加する際に電荷を蓄積するゲート容量として作用する。エミッタ接触トレンチ部40およびエミッタ非接触トレンチ部130のスイッチング動作時には、ゲート容量の蓄電が行われる。
スイッチング時において、他方、メサ部62は、ゲート電位であるゲート導電部44およびゲート電位であるゲート導電部134に挟まれているため、メサ部60よりゲート電圧の上昇とともに電位が均一に上昇しやすい。よって、スイッチング時間が短くなる。
本例の半導体装置100では、エミッタ接触トレンチ部40に隣り合うダミートレンチ部30と、エミッタ接触トレンチ部40に隣り合うエミッタ非接触トレンチ部130とを設けることで、スイッチング時間の長さが異なる二種類のメサ部を利用する。半導体装置100のターンオン動作では、スイッチング時間の長さが異なるメサ部60およびメサ部62が段階的に駆動し、半導体装置100が段階的に駆動する。これは、2つの異なる特性を有する並列なIGBTの駆動に相当する。
上述のメサ部のスイッチング時間の長さのずれを利用して半導体装置100を段階的に駆動する場合、高いゲート抵抗を使わなくても電圧の時間変化を小さくできる。即ち、高いゲート抵抗を使用する場合に比較して、半導体装置100ではターンオン損失が低減される。
半導体装置100では、スイッチング時間の短いゲート電圧に設定されるエミッタ接触トレンチ部40およびエミッタ非接触トレンチ部130を利用し、スイッチング時間の長さの異なるメサ部の利用を組み合わせることにより、半導体装置100のターンオン損失を低減する。これにより、エミッタ接触トレンチ部40の周囲のメサ部に電界集中が生じ、急激な電流の流れが生じることを防ぎ、許容電流密度での半導体装置100の動作を保証し、半導体装置100の保護を与える。
またスイッチング時間の長さの異なるメサ部の利用は、段階的に2つの異なるIGBTを駆動することに対応する。これにより、一度にIGBTを駆動する場合と比較して、外部環境からの影響に対し、半導体装置100の動作が安定する。半導体装置100の安定動作によってもエネルギー損失は低減する。
図1Bは、半導体装置100の断面図の一例である。一例として、図1Bの断面図は、図1AのA-A'断面に対応する。
エミッタ非接触トレンチ部130に接するコンタクト領域15は、エミッタ領域12の下に入り込む構造をしている。コンタクト領域15は、ベース領域14およびエミッタ接触トレンチ部40の界面におけるN型チャネルの生成を阻害しない距離で入り込む。
図2Aは、半導体装置100の斜視図の別例である。本例の半導体装置100は、図1Aと同様に、半導体基板10を備える。以下では主に図1Aとの相違点について述べる。
本例では、エミッタ領域12は、エミッタ接触トレンチ部40からX軸方向負側へ延伸し、ダミートレンチ部30に至る前に終端している。従って、本例のダミートレンチ部30は、コンタクト領域15と接しているが、エミッタ領域12とは接していない。ダミートレンチ部30は、半導体装置100に複数設けられてよく、エミッタ領域12に接するダミートレンチ部30と、エミッタ領域12に接していないダミートレンチ部30との両方が設けられてよい。
ダミートレンチ部30はエミッタ電位に設定され、ゲート電圧が印加されない。従って、本例でも、ダミートレンチ部30は、ターンオン時にダミー導電部34と、ダミー絶縁膜32と、半導体基板10の拡散領域におけるゲート容量の蓄電を要しない。
本例においても、エミッタ接触トレンチ部40およびダミートレンチ部30の間のメサ部60は、エミッタ接触トレンチ部40およびエミッタ非接触トレンチ部130の間のメサ部62より、スイッチング時間が長くなる。当該スイッチング時間の長さのずれを利用して、段階的なターンオン動作が可能となる。
また、上述のように、ダミートレンチ部30がエミッタ領域12に接しているかいないかに関わらず、ベース領域14およびダミートレンチ部30の界面にはN型のチャネルは生成されない。従って、ダミートレンチ部30を有するメサ部60では、電界集中が緩和される。
以上の通り、エミッタ接触トレンチ部40の周囲のメサ部に電界集中が生じ、急激な電流の流れが生じることが防がれる。これは、許容電流密度での半導体装置100の動作を保証する。
図2Bは、半導体装置100の断面図の別例である。一例として、図2Bの断面図は、図2AのB-B'断面に対応する。以下では、図1Bとの相違点について述べる。
本例のダミートレンチ部30に接するコンタクト領域15は、ダミートレンチ部30側においても、エミッタ領域12の下部に入り込んでいる。コンタクト領域15は、ベース領域14のエミッタ接触トレンチ部40との界面におけるN型チャネルの生成を阻害しない距離で入り込む。コンタクト領域15は、エミッタ非接触トレンチ部130とエミッタ接触トレンチ部40との間でエミッタ領域12の下部に入り込む程度と、同じ程度にエミッタ領域12の下部に入り込んでよく、異なる程度に入り込んでもよい。
図3Aは、半導体装置100に設けられたエミッタ非接触トレンチ部130およびエミッタ接触トレンチ部40の2つのトレンチ部に係る断面図の一例を示す。エミッタ非接触トレンチ部130およびエミッタ接触トレンチ部40は、ゲート端子Gに接続されたゲート電極50と電気的に接続されて、ともにゲート電位に設定される。
半導体基板10のおもて面の上方には、層間絶縁膜56およびエミッタ電極52が設けられている。エミッタ電極52は、エミッタ端子Eに接続されて、エミッタ電位に設定される。エミッタ電極52は、層間絶縁膜56に隔てられた導電体54を有し、導電体54はコンタクト領域15に接して設けられる。
N+型のエミッタ領域12およびP+型のコンタクト領域15の下方には、P-型のベース領域14が設けられている。P-型のベース領域14の下方にはN--型のドリフト領域18が設けられている。
図1Aの例と異なり、本例においては、蓄積領域16は省略されている。蓄積領域16がない場合であっても、エミッタ接触トレンチ部40と、エミッタ非接触トレンチ部130と、ダミートレンチ部30とを組み合わせることで、スイッチング時間の長さを調整できる。ただし、本例は、蓄積領域16を設けないよう限定するものではない。
N--型のドリフト領域18の下方には、P+型のコレクタ領域が設けられる。コレクタ領域は、コレクタ端子Cに接続されて、コレクタ電位に設定される。
図3Bは、半導体装置100に設けられたエミッタ非接触トレンチ部130およびエミッタ接触トレンチ部40の2つのトレンチ部に係る上面図の一例を示す。一例として、図3Aは、図3BのC-C'断面に対応する。
半導体基板10のおもて面において、エミッタ非接触トレンチ部130は、P+型のコンタクト領域15に接する。エミッタ非接触トレンチ部130の下方のベース領域では、チャネルが形成されないので、メサ部には過度な電流が流れることが防止される。
一方、半導体装置100のおもて面において、エミッタ接触トレンチ部40に接する拡散領域では、エミッタ接触トレンチ部40の延伸方向において、N+型のエミッタ領域12と、P+型のコンタクト領域15とが予め定められた間隔で交互に配置されている。本例のエミッタ領域12およびコンタクト領域15は等しい間隔で配列されているが、配列間隔は異なっていてもよい。
一例として、半導体基板10のおもて面において、本例のエミッタ領域12およびコンタクト領域15は、長方形の形状を有するが、正方形、円形等の形状であってもよい。ただし、エミッタ領域12の下方のベース領域14において、エミッタ接触トレンチ部40との界面にターンオン時に大きなチャネルが形成され、閾値電圧を小さくするように、エミッタ領域12とエミッタ接触トレンチ部40との接触部分は、長い接線を有する形状であることが好ましい。
図4Aは、半導体装置100に設けられたダミートレンチ部30およびエミッタ接触トレンチ部40の2つのトレンチ部に係る断面図の一例を示す。ダミートレンチ部30はエミッタ電極52に接続され、エミッタ電極52はエミッタ端子Eに接続され、エミッタ電位に設定される。ダミートレンチ部30のエミッタ電位は、ゲート電位に対してより負の値を有する。
本例のダミートレンチ部30は、半導体基板10のおもて面においてP+型のコンタクト領域15に接する。ダミートレンチ部30の近傍のベース領域14の界面には、エミッタ電位を有するダミートレンチ部30からの電場が適用される。エミッタ電位はゲート電位より負の値に設定されるのでそれぞれゲート電位を有するエミッタ接触トレンチ部40またはエミッタ非接触トレンチ部130の間のメサ部62に比べ、エミッタ接触トレンチ部40およびダミートレンチ部30の間のメサ部60では、電子の量がより少なく、正孔がより多い状態となる。
正孔は電子より質量が大きいので、正孔電流においては、電子電流よりキャリア移動度が低い。また、正孔が多い状態では、キャリアの再結合も起こりやすくなり、電子電流の流れが阻害される。従って、エミッタ接触トレンチ部40およびダミートレンチ部30の間のメサ部60においては、スイッチング時間が長くなる。
メサ部60は、ゲート電位であるゲート導電部44およびエミッタ電位であるダミー導電部34に挟まれている。また、メサ部62は、ゲート電位であるゲート導電部44およびゲート電位であるゲート導電部134に挟まれている。
スイッチング時において、メサ部60はメサ部62より、ゲート導電部44からダミー導電部34に向かってゲート導電部44側の電位が徐々に低くなる電位分布を有する。よって、メサ部60全体では、電位が上昇しにくくなり、スイッチング時間が長くなる。
図4Bは、半導体装置100に設けられたダミートレンチ部30と、エミッタ接触トレンチ部40との2つのトレンチ部に係る上面図の一例を示す。一例として、図4Aは、図4BのD-D'断面に対応する。
図4Bにおけるエミッタ領域12およびコンタクト領域15の分布は、エミッタ非接触トレンチ部130と、ダミートレンチ部30とが入れ替わる点を除き、図3Bと同様であってよい。ただし、図4Bの拡散領域の分布は、図3Bとは異なる形状の分布であってよい。
図5Aは、半導体装置100に設けられたダミートレンチ部30と、エミッタ接触トレンチ部40との2つのトレンチ部に係る断面図の別例を示す。本例の半導体基板10のおもて面において、エミッタ接触トレンチ部40から延伸するエミッタ領域12は、ダミートレンチ部30に接する位置まで延伸している。
本例のダミートレンチ部30は、半導体基板10のおもて面において、エミッタ領域12と接する。ダミートレンチ部30は、エミッタ電位に設定されているため、エミッタ電極52と接している場合であっても、その下方に設けられたベース領域14にチャネルを生成しないか、または、少なくともゲート電位に設定される場合よりも電子を引き寄せない。
従って、ダミートレンチ部30およびエミッタ接触トレンチ部40の間のキャリアは、図4Aと同様に、正孔と電子が混在した状態となる。正孔は、電子より質量が大きく、電子電流よりキャリア移動度が低い。また、正孔が多い状態では、キャリアの再結合も起こりやすくなり、電子電流の流れが阻害される。従って、エミッタ接触トレンチ部40およびダミートレンチ部30の間のメサ部60においては、スイッチング時間が、エミッタ接触トレンチ部40およびエミッタ非接触トレンチ部130の間のメサ部62におけるスイッチング時間より長くなる。
スイッチング時において、他方、メサ部62は、ゲート電位であるゲート導電部44およびゲート電位であるゲート導電部134に挟まれているため、メサ部60よりゲート電圧の上昇とともに電位が均一に上昇しやすい。よって、スイッチング時間が短くなる。
本例のダミートレンチ部30においては、半導体基板10のおもて面において、エミッタ領域12と接している。半導体基板10のおもて面において、本例のダミートレンチ部30は、エミッタ接触トレンチ部40と隣り合う側と逆側でも、エミッタ領域12と接する。ただし、ダミートレンチ部30は、エミッタ接触トレンチ部40と隣り合う側と逆側において、コンタクト領域15と接していてもよい。
図5Bは、半導体装置100に設けられたダミートレンチ部30と、エミッタ接触トレンチ部40との2つのトレンチ部に係る上面図の別例を示す。一例として、図5Aは、図5BのE-E'断面に対応する。
本例においては、ダミートレンチ部30に接するメサ部60と、エミッタ接触トレンチ部40に接するメサ部60とが、同一のパターンで、交互にドーピングされている。本例のエミッタ領域12およびコンタクト領域15は、長方形の形状を有しているが、エミッタ領域12の下方にチャネル領域が十分な大きさで形成され、コンタクト領域15がラッチアップを抑制する限り、異なる形状であってよい。
ダミートレンチ部30に接する導電型は、このパターンに限定されない。ただし、トレンチ部を設ける前に本例のパターンのようにメサ部を設ける場合、一括でメサ部を設けることができる。即ち、拡散領域を設けるための工数を低減できる。
半導体装置100のトレンチ部は、図3Aのトレンチ部に、図4Aまたは図5Aのトレンチ部のいずれかを組み合わせた構成を最小の構成として有する。さらに、半導体装置100は、複数のエミッタ接触トレンチ部40と、複数のダミートレンチ部30と、複数のエミッタ非接触トレンチ部130とを有してよい。所望の電流密度、ターンオン時の電圧特性に応じて、用いるトレンチ部の種類と数の比が調整されてよい。
図6Aは、半導体装置100に設けられたエミッタ接触トレンチ部40と、狭小エミッタ接触トレンチ部140との2つのトレンチ部に係る断面図の一例を示す。狭小エミッタ接触トレンチ部140は、エミッタ非接触トレンチ部130と同様、少なくとも1つのエミッタ接触トレンチ部40のうちの1つと隣り合うトレンチ部である。以下では、狭小エミッタ接触トレンチ部140と、エミッタ非接触トレンチ部130との相違点を中心に説明する。
狭小エミッタ接触トレンチ部140は、ゲート絶縁膜142およびゲート導電部144とを有する。ゲート絶縁膜142およびゲート導電部144の材料は、ゲート絶縁膜42およびゲート導電部44と同様であってよい。狭小エミッタ接触トレンチ部140は、第2トレンチ部の別例である。
狭小エミッタ接触トレンチ部140は、エミッタ非接触トレンチ部130と同様、少なくとも1つのエミッタ接触トレンチ部40のうちの1つと隣り合い、コンタクト領域15に接する。さらに、狭小エミッタ接触トレンチ部140のゲート導電部144は、ゲート電極と電気的に接続されている。
狭小エミッタ接触トレンチ部140は、エミッタ領域12と接する点でエミッタ非接触トレンチ部130と相違する。ただし、狭小エミッタ接触トレンチ部140がエミッタ領域12と接する領域は、エミッタ接触トレンチ部40がエミッタ領域12と接する領域より狭い。
狭小エミッタ接触トレンチ部140のゲート導電部144は、半導体基板10のおもて面における各トレンチ部の延伸方向(Y方向)について、ゲート導電部44がエミッタ領域12と接する部分より短い部分を介して、エミッタ領域12と接する。従って、狭小エミッタ接触トレンチ部140は、ターンオン時において、エミッタ接触トレンチ部40と同様、エミッタ領域12の下方のベース領域14にチャネルが形成され、トランジスタとして駆動し得る。一方で、狭小エミッタ接触トレンチ部140に形成されるチャネルは小さく、エミッタ接触トレンチ部40より引き寄せる電子は少ない。
狭小エミッタ接触トレンチ部140およびエミッタ接触トレンチ部40の間のメサ部64におけるキャリアの量は、エミッタ接触トレンチ部40およびエミッタ非接触トレンチ部130の間のメサ部62に対してわずかに多い電子量を有することとなる。従って、メサ部64は、メサ部62と同様、メサ部60より短いスイッチング時間を有する。
図6Bは、半導体装置100が有する2つのトレンチ部に係る上面図の一例を示す。一例として、図6Aは、図6BのF-F'断面に対応する。
本例のエミッタ領域12は、エミッタ接触トレンチ部40と接するコンタクト領域15に囲まれるように設けられている。即ち、本例のエミッタ領域12は、狭小エミッタ接触トレンチ部140から延伸し、狭小エミッタ接触トレンチ部140およびエミッタ接触トレンチ部40の間で終端している。
本例におけるエミッタ領域12は、Y座標において、エミッタ接触トレンチ部40がコンタクト領域15と接する位置で狭小エミッタ接触トレンチ部140と接している。ただし、Y座標において、エミッタ領域12が狭小エミッタ接触トレンチ部140と接する位置は、エミッタ接触トレンチ部40がエミッタ領域に接する位置であってもよい。
図7Aは、半導体装置100に設けられたエミッタ接触トレンチ部40と、狭小エミッタ接触トレンチ部140との2つのトレンチ部に係る断面図の別例を示す。本例においては、エミッタ領域12が、狭小エミッタ接触トレンチ部140からエミッタ接触トレンチ部40まで延伸している。
図7Bは、半導体装置100が有する2つのトレンチ部の上面図の一例を示す。一例として、図7Aは、図7BのG-G'断面に対応する。
本例では、狭小エミッタ接触トレンチ部140と接するエミッタ領域12は、エミッタ接触トレンチ部40と接するエミッタ領域12と接続されるように拡がっている。即ち本例のエミッタ領域12は、狭小エミッタ接触トレンチ部140から、エミッタ接触トレンチ部40まで延伸している。
図8Aは、半導体装置100が有する3つのトレンチ部の断面図の一例を示す。本例では、エミッタ非接触トレンチ部130、エミッタ接触トレンチ部40、およびダミートレンチ部30が設けられている。
本例の半導体装置100においては、ダミートレンチ部30およびエミッタ接触トレンチ部40はエミッタ領域12に接している。エミッタ非接触トレンチ部130はコンタクト領域15に接している。即ち、本例のトレンチ部は、図5Aのようなエミッタ領域12に接するダミートレンチ部30をエミッタ接触トレンチ部40のX軸方向負側に配置して、図3Aのようなエミッタ非接触トレンチ部130をエミッタ接触トレンチ部40のX軸方向正側に配置した例に対応する。
本例は、ダミートレンチ部30、エミッタ接触トレンチ部40、およびエミッタ非接触トレンチ部130をそれぞれ一つずつ含む構成である。スイッチング時間の長さのずれを用いて、ターンオン損失を低減する効果を実現すべく、異なる三種のトレンチを含む最小構成の一例である。本例のトレンチ部の構成は、図1Aおよび図1Bのトレンチ部に対応する構成であり、図3Aおよび図5Aのトレンチ部の組み合わせから得られる構成である。
なお、本例のエミッタ非接触トレンチ部130は、狭小エミッタ接触トレンチ部140に置き換えてもよい。メサ部64は、メサ部62と同様、メサ部60より短いスイッチング時間を有するので、当該置き換えを行った半導体装置100も同様の効果を奏することができる。
エミッタ領域12およびコンタクト領域15の下方に接して、P-型のベース領域14が設けられる。ベース領域14の下方には、N--型のドリフト領域18が設けられる。さらに、ドリフト領域18の下方には、コレクタ領域22が設けられる。コレクタ領域22は、コレクタ端子Cに接続され、コレクタ電位に設定される。
図8Bは、半導体装置100が有する3つのトレンチ部上面図の一例を示す。一例として、図8Aは、図8BのH-H'断面に対応する。
本例においては、エミッタ非接触トレンチ部130は、コンタクト領域15に接して設けられる。エミッタ接触トレンチ部40およびダミートレンチ部30は、エミッタ領域12およびコンタクト領域15と交互に接して設けられる。
即ち、本例のメサ部では、エミッタ接触トレンチ部40のX軸方向負側にダミートレンチ部30を配置した上で、図5Bのようにエミッタ領域12およびコンタクト領域15を設けている。一方で、エミッタ接触トレンチ部40のX軸方向正側にはエミッタ非接触トレンチ部130が配置され、図3Bのようにエミッタ領域12およびコンタクト領域15を設けている。
図9Aは、半導体装置100が有する3つのトレンチ部の断面図の別例を示す。本例では、エミッタ非接触トレンチ部130、エミッタ接触トレンチ部40、およびダミートレンチ部30が設けられている。
本例の半導体基板10においては、エミッタ接触トレンチ部40の両側がエミッタ領域12に接しており、ダミートレンチ部30およびエミッタ非接触トレンチ部130の両側は、コンタクト領域15に接している。即ち、本例のトレンチ部は、図3Aのようなエミッタ非接触トレンチ部130をエミッタ接触トレンチ部40のX軸方向正側に配置して、図4Aのようなコンタクト領域15に接するダミートレンチ部30をエミッタ接触トレンチ部40のX軸方向負側に配置した例に対応する。
本例は、エミッタ非接触トレンチ部130、エミッタ接触トレンチ部40、およびダミートレンチ部30をそれぞれ一つずつ含む構成である。スイッチング時間の長さのずれを用いて、ターンオン損失を低減する効果を実現すべく、異なる三種のトレンチを含む最小構成のうちの一つである。本例のトレンチ部の構成は、図2Aおよび図2Bのトレンチ部に対応する構成であり、図3Aおよび図4Aのトレンチ部の組み合わせから得られる構成である。
なお、本例のエミッタ非接触トレンチ部130も、狭小エミッタ接触トレンチ部140に置き換えてもよい。メサ部64は、メサ部62と同様、メサ部60より短いスイッチング時間を有するので、当該置き換えを行った半導体装置100も同様の効果を奏することができる。
図9Bは、半導体装置100が有する3つのトレンチ部の上面図の別例を示す。一例として、図9Aは、図9BのI-I'断面に対応する。
本例においては、エミッタ非接触トレンチ部130およびダミートレンチ部30は、コンタクト領域15に接して設けられる。エミッタ接触トレンチ部40は、エミッタ領域12およびコンタクト領域15に交互に接して設けられる。
即ち、本例のメサ部では、エミッタ接触トレンチ部40のX軸方向負側にダミートレンチ部30を配置した上で、図4Bのようにエミッタ領域12とコンタクト領域15とを設けている。一方で、エミッタ接触トレンチ部40のX軸方向正側にはエミッタ非接触トレンチ部130が配置され、図3Bのようにエミッタ領域12およびコンタクト領域15を設けている。
図10Aは、半導体装置100が有する5つのトレンチ部の断面図の一例を示す。本例では、X方向負側からX方向正側へと順に、エミッタ非接触トレンチ部130、エミッタ接触トレンチ部40、ダミートレンチ部30、エミッタ接触トレンチ部40、およびエミッタ非接触トレンチ部130が配列されている。
図10Bは、半導体装置100が有する5つのトレンチ部の上面図の一例を示す。一例として、図10Aは、図10BのJ-J'断面に対応する。
エミッタ領域12は、X軸方向負側に配置されたエミッタ接触トレンチ部40からX軸の負方向に延伸し、エミッタ接触トレンチ部40およびエミッタ非接触トレンチ部130の間で終端する。エミッタ領域12は、X軸方向負側にエミッタ接触トレンチ部40からダミートレンチ部30へと延伸し、ダミートレンチ部30からX軸方向正側に配置されたエミッタ接触トレンチ部40へと延伸している。さらに、エミッタ領域12は、X軸方向正側に配置されたエミッタ接触トレンチ部40からX軸の正方向に延伸し、エミッタ接触トレンチ部40およびエミッタ非接触トレンチ部130の間で終端する。
従って、エミッタ非接触トレンチ部130を設ける位置を半導体基板10の端部にすると、エミッタ領域12は、X軸方向に延伸できる。エミッタ領域12を設けた後に各トレンチ部を設ける場合には、エミッタ領域12を連続的に設けることができ、エミッタ領域12を設けるプロセスが簡易化できる。
図11Aは、半導体装置100が有する6つのトレンチ部の断面図の一例を示す。6つのトレンチ部は、X軸方向負側から、順にエミッタ非接触トレンチ部130、エミッタ接触トレンチ部40、ダミートレンチ部30、ダミートレンチ部30、エミッタ接触トレンチ部40、およびエミッタ非接触トレンチ部130である。
図11Bは、半導体装置100が有する6つのトレンチ部の上面図の一例を示す。一例として、図11Aは、図11BのK-K'断面に対応する。図11Bの例においても、エミッタ領域12はX軸方向負側のエミッタ非接触トレンチ部130およびエミッタ接触トレンチ部40の間から、X軸方向正側のエミッタ接触トレンチ部40およびエミッタ非接触トレンチ部130の間まで延伸する。
図12Aは、半導体装置100が有する6つのトレンチ部の断面図の別例を示す。6つのトレンチ部は、X軸方向負側から、順にエミッタ非接触トレンチ部130、エミッタ接触トレンチ部40、ダミートレンチ部30、エミッタ接触トレンチ部40、エミッタ接触トレンチ部40、およびエミッタ非接触トレンチ部130である。本例のように、半導体装置100に設けられるトレンチ部は、X軸方向の負方向およびX軸方向の正方向において、非対称な配列をしていてもよい。
本例では、X方向負側から数えて2番目のトレンチ部においてエミッタ接触トレンチ部40の隣り合う2つのトレンチ部の一方は、ダミートレンチ部30で、他方はエミッタ非接触トレンチ部130となっている。半導体装置100は、エミッタ接触トレンチ部40およびエミッタ非接触トレンチ部130の間のメサ部62と、エミッタ接触トレンチ部40およびダミートレンチ部30との間のメサ部60とをそれぞれ少なくとも1つ有していればよい。他のトレンチ部の数については、所望の電流密度、コレクタ電流値、およびコレクタ電圧値などの半導体装置100の所望のターンオン波形によって決まる。
例えば、半導体装置100は、エミッタ接触トレンチ部40の隣り合うトレンチ部として、X方向負側から数えて4番目のトレンチ部のように一方がエミッタ領域12に接するダミートレンチ部30であり、もう一方が別のエミッタ接触トレンチ部40であるものを含んでもよい。あるいは、半導体装置100は、エミッタ接触トレンチ部40の隣り合うトレンチ部として、X方向負側から数えて5番目のトレンチ部のように一方がエミッタ非接触トレンチ部130であり、もう一方が別のエミッタ接触トレンチ部40であるものを含んでもよい。あるいは、半導体装置100は、エミッタ接触トレンチ部40の隣り合うトレンチ部として、両方がエミッタ非接触トレンチ部130であるものを含んでもよい。
図12Bは、半導体装置100が有する6つのトレンチ部の上面図の別例を示す。一例として、図12Aは、図12BのL-L'断面に対応する。本例のメサ部における拡散領域の配置は、図9Bの配置と同一である。ただし、半導体基板10のおもて面における拡散領域の配置は、エミッタ接触トレンチ部40がエミッタ領域に接し、エミッタ非接触トレンチ部130がエミッタ領域12に接しない限り、異なる配置であってもよい。
図13Aは、比較例1に係る半導体装置200が有する3つのトレンチ部の断面図の一例を示す。比較例1に係るトレンチ部は、2つのエミッタ非接触トレンチ部130と、それらに挟まれたエミッタ接触トレンチ部40とを有する。
半導体装置100と異なり、半導体装置200においては、ダミートレンチ部30を有していない。即ち、半導体装置200においては、エミッタ接触トレンチ部40に接するメサ部は、エミッタ非接触トレンチ部130およびエミッタ接触トレンチ部40の間に設けられるメサ部62のみである。半導体装置200におけるこれらのメサ部62同士には、スイッチング時間の長さおよびターンオンタイミングにずれはない。
図13Bは、比較例1に係る半導体装置200の等価回路の回路図を示す。エミッタ接触トレンチ部40およびエミッタ非接触トレンチ部130は、ゲート電位に設定される。
半導体装置200のターンオン時にエミッタ接触トレンチ部40およびエミッタ非接触トレンチ部130をゲート電位へ設定する際、これらのトレンチ部は寄生容量として作用する。半導体装置200の駆動時には、等価回路においてゲート端子に接続された3つの寄生容量がゲート電位に蓄電される。
半導体装置200のターンオンタイミングは、寄生容量の蓄電後となる。従って、半導体装置200のターンオンタイミングは、ダミートレンチ部30を有する半導体装置より遅くなる。
エミッタ接触トレンチ部40と接するベース領域14の界面には、N型チャネルが生成され、エミッタ非接触トレンチ部130と接するベース領域14の界面には、チャネルは生成されないものの、電子は引き寄せられる。従って、半導体装置200のメサ部62のキャリアは電子が中心となり、半導体装置200は、電子電流を中心とした電流により駆動する。電子は、正孔より質量が小さいために、スイッチング時間は短くなる。
図14Aは、比較例2に係る半導体装置300が有する3つのトレンチ部の断面図の一例を示す。比較例2に係るトレンチ部は、2つのダミートレンチ部30と、それらに挟まれたエミッタ接触トレンチ部40とを有する。
半導体装置100と異なり、半導体装置300においては、エミッタ非接触トレンチ部130を有していない。即ち、半導体装置300においては、エミッタ接触トレンチ部40に接するメサ部は、ダミートレンチ部30およびエミッタ接触トレンチ部40の間に設けられるメサ部60のみである。半導体装置300におけるこれらのメサ部60同士には、スイッチング時間の長さおよびターンオンタイミングにずれはない。
比較例2の半導体装置300の半導体基板のおもて面側において、3つのトレンチ部は、いずれもエミッタ領域12に接している。エミッタ接触トレンチ部40のみが、ゲート端子Gに接続され、ゲート電位に設定される。
ダミートレンチ部30は、エミッタ電極52に接続される。エミッタ電極52は、エミッタ端子Eに接続され、エミッタ電位に設定される。エミッタ電位は、接地電位であってもよい。
ダミートレンチ部30にはゲート電圧が印加されないので、ダミートレンチ部30およびエミッタ接触トレンチ部40の間のメサ部60には、エミッタ接触トレンチ部40およびエミッタ非接触トレンチ部130の間のメサ部62ほど、電子が集まらない。従って、ダミートレンチ部30およびエミッタ接触トレンチ部40の間のメサ部60は、電子電流を中心として駆動するエミッタ非接触トレンチ部130およびエミッタ接触トレンチ部40の間のメサ部62よりスイッチング時間が長くかかる。
図14Bは、比較例2に係る半導体装置300の等価回路の回路図を示す。回路図に示されるように、ダミートレンチ部30に対応する寄生容量は、ベース・エミッタ電位に設定されており、ゲート端子に接続されていない。
等価回路における2つのトランジスタのゲートにゲート電圧を印加して、2つのトランジスタを駆動する際には、ゲートに接続された1つの寄生容量を蓄電すればよい。2つのダイオードに並列接続されたダミートレンチ部30の寄生容量を蓄電しなくても、2つのトランジスタはエミッタ-コレクタ間に電流を流すことができる。半導体装置300においては、1つの寄生容量の蓄電のみでトランジスタを駆動できるので、ターンオンタイミングが早くなる。
図15は、比較例に係るトレンチ部のターンオン時の電流および電圧の時間変化を示す。グラフの横軸は時間、縦軸は電圧値(V)および電流値(A)を示す。
(a)のグラフは半導体装置200についての電圧および電流の時間変化を示し、(b)のグラフは半導体装置300についての電圧および電流の時間変化を示す。ゲート電圧Vg、コレクタ電圧Vc、およびコレクタ電流Icの時間変化が示されている。半導体装置200および半導体装置300の間には、ターンオンタイミングにずれがあり、動作タイミングギャップが存在する。
図16Aは、半導体装置200のターンオン時の電圧および電流の時間変化を示す。本例のゲート抵抗は、7Ωに設定されている。半導体装置200では、3つの寄生容量を蓄電してからターンオンするので、ターンオンタイミングが遅くなる。他方、寄生容量の蓄電後のスイッチング時間は、ダミートレンチ部30を有する半導体装置より短い。
図16Bは、半導体装置300のターンオン時の電圧および電流の時間変化を示す。本例のゲート抵抗は、20Ωに設定されている。半導体装置300では、半導体装置200と異なり、1つの寄生容量の蓄電のみでスイッチング動作に移行できる。従って、半導体装置300のターンオンタイミングは早い。他方、半導体装置200より正孔電流の流量が多いので、寄生容量蓄電後のスイッチング時間は長い。
図16Cは、半導体装置100のターンオン時の電圧および電流の時間変化を示す。本例のゲート抵抗は、5.5Ωに設定されている。
半導体装置100では、スイッチング時間の長いダミートレンチ部30およびエミッタ接触トレンチ部40の間のメサ部60と、スイッチング時間の短いエミッタ非接触トレンチ部130およびエミッタ接触トレンチ部40の間のメサ部62とが組み合わされて、段階的なスイッチング動作が行われる。半導体装置100のスイッチング動作開始タイミングは、半導体装置200より早い。
さらに、半導体装置100では、電子電流が中心となってスイッチング動作を行うメサ部62と、メサ部62と比較して正孔電流の流量が多いメサ部60とが組み合わされてスイッチング動作を行う。これにより、半導体装置100では、半導体装置300に比べて短いスイッチング時間を実現する。
半導体装置100では、ターンオンタイミングが早く、スイッチング時間が短いという性質により、コレクタ電圧Vcにおける電圧値の時間変化dV/dtの傾きが小さくなる。同一のゲート抵抗を有する半導体装置において、dV/dtの傾きが小さいほど、半導体装置のターンオン損失も低減される。
図17Aは、半導体装置200のターンオン時の電圧および電流の時間変化と、ターンオン損失を示す。ゲート抵抗を調整することにより、後述の図17Bおよび図17Cと、スイッチング時間におけるコレクタ電圧Vcにおける電圧の時間変化の傾きdV/dtが等しく調整されている。本例のゲート抵抗は20Ωに設定されている。
Pはコレクタ電圧Vcとコレクタ電流Icの積で表される量である。Pの占める面積がターンオン損失に対応する。
図17Bは、半導体装置300のターンオン時の電圧および電流の時間変化と、ターンオン損失を示す。ゲート抵抗を調整することにより、図17Aおよび後述の図17Cと、スイッチング時間におけるコレクタ電圧Vcにおける電圧の時間変化の傾きdV/dtが等しく調整されている。本例のゲート抵抗は、30Ωに設定されている。
半導体装置300においては、Pの占める面積は、半導体装置200に対するPの占める面積より大きい。ダミートレンチ部30を有する半導体装置300では、エミッタ非接触トレンチ部130を有する半導体装置200よりもターンオン損失が大きい。ダミートレンチ部30のスイッチング時間は、エミッタ非接触トレンチ部130のスイッチング時間より長いことによる。
図17Cは、半導体装置100のターンオン時の電圧および電流の時間変化と、ターンオン損失を示す。ゲート抵抗を調整することにより、図17Aおよび図17Bと、スイッチング時間におけるコレクタ電圧Vcにおける電圧の時間変化の傾きdV/dtが等しく調整されている。本例のゲート抵抗は、10Ωに設定されている。
半導体装置100においては、Pの占める面積は、半導体装置200および半導体装置300に対するいずれよりも小さい。半導体装置100では、エミッタ接触トレンチ部40と隣り合うエミッタ非接触トレンチ部130、エミッタ接触トレンチ部40、およびエミッタ接触トレンチ部40と隣り合うダミートレンチ部30を用いることにより、ターンオン損失を有効に低減できる。
図18は、半導体装置100、半導体装置200、および半導体装置300に対するターンオン時のdV/dtとスイッチング損失Eonとの関係を示す。ゲート抵抗を変化させて、dV/dtを変化させたときのそれぞれの半導体装置におけるターンオン損失Eonを示している。
半導体装置100においては、エミッタ接触トレンチ部40およびダミートレンチ部30の間のメサ部60と、エミッタ接触トレンチ部40およびエミッタ非接触トレンチ部130の間のメサ部62とのターンオンタイミングのずれを利用して、段階的なターンオンを行う。また、エミッタ非接触トレンチ部130のスイッチング時間は短いので、半導体装置100は、ダミートレンチ部30のみを用いる半導体装置300より小さなdV/dtの傾きを有する。
従って、半導体装置100のスイッチング損失Eonは低減される。ゲート抵抗の値を変更し、dV/dtの値を変化させたときでも、半導体装置100は、同一のdV/dtにおいて、半導体装置200および半導体装置300と比較して最小のターンオン損失を有する。
図19Aは、半導体装置300が有する蓄積領域16および3つのトレンチ部断面図の一例を示す。本例の半導体装置300は、半導体基板のおもて面において、2つのエミッタ非接触トレンチ部130、および2つのエミッタ非接触トレンチ部130の間に挟まれて配置された、2つのエミッタ非接触トレンチ部130に隣り合うエミッタ接触トレンチ部40を有する。
半導体装置300の半導体基板は、おもて面において、N+型のエミッタ領域12およびP+型のコンタクト領域15を有する。本例では、エミッタ非接触トレンチ部130およびエミッタ接触トレンチ部40の間で、エミッタ領域12は、コンタクト領域15により分断されている。エミッタ非接触トレンチ部130およびエミッタ接触トレンチ部40は、ともにエミッタ領域12に接している。
半導体装置300の半導体基板は、エミッタ領域12およびコンタクト領域15の下方に接して、P-型のベース領域14を有する。さらに半導体基板は、ベース領域14の下方に接してN-型の蓄積領域16を有し、蓄積領域16の下方に接してN--型のドリフト領域18を有し、ドリフト領域18の下方に接してP+型のコレクタ領域22を有する。
本例では、半導体基板のおもて面側において、エミッタ非接触トレンチ部130およびエミッタ接触トレンチ部40の間のエミッタ領域12およびコンタクト領域15とは接地電位に設定されている。エミッタ接触トレンチ部40とエミッタ非接触トレンチ部130のゲート導電部134は、ゲート端子に接続され、ゲート電位に設定されている。他方、半導体基板の裏面側において、コレクタ領域22は、コレクタ端子Cに接続され、コレクタ電位に設定されている。
ターンオン動作時に、エミッタ接触トレンチ部40と接するベース領域14の界面にはN型のチャネルが生成される。エミッタ接触トレンチ部40とエミッタ接触トレンチ部40側の拡散領域は、NPN型トランジスタとして動作する。
動作中コレクタ電位Vcが高くなると、ダミートレンチ部30における接地電位は相対的に低い電圧となる。接地電位が低電位とみなせる場合、N-型の蓄積領域16は、半導体基板のおもて面側において、P-型のベース領域14、半導体基板の裏面側においてP+型のコレクタ領域22を有する。従って、ダミートレンチ部30に接する拡散領域の近傍にPNP型の寄生トランジスタが形成される。
以上のように、蓄積領域16が存在する場合には、半導体装置300は、NPN型のトランジスタおよび閾値の高いPNP型の寄生トランジスタに関する2つのトランジスタを駆動する動作が行われる。これにより、半導体装置300がスイッチング動作において二段階で段階的に駆動する。
図19Bは、蓄積領域16と、3つのトレンチ部とを有する半導体装置100の構成を示す断面図の一例である。X軸方向正側から、ダミートレンチ部30、エミッタ接触トレンチ部40、およびX軸方向正側がエミッタ非接触トレンチ部130として動作するトレンチ部が配置されている。本例の半導体装置100も、エミッタ非接触トレンチ部130およびエミッタ接触トレンチ部40の間のメサ部62、およびエミッタ接触トレンチ部40およびダミートレンチ部30の間のメサ部60を有する。
X軸方向負側に配置されるトレンチ部は、X軸方向の負側においてエミッタ領域12に接し、X軸方向の正側においてコンタクト領域15に接する。すなわち、X軸方向負側においてはエミッタ非接触トレンチ部130として動作し、X軸方向正側においては、エミッタ接触トレンチ部40として動作するトレンチ部である。
本例の半導体装置100は、ベース領域14の下方に接して、かつドリフト領域の上方に接してN-型の蓄積領域16を有する。エミッタ非接触トレンチ部130およびエミッタ接触トレンチ部40の間のメサ部62と、ダミートレンチ部30およびエミッタ接触トレンチ部40の間のメサ部60とのスイッチング時間の長さおよびターンオンタイミングの差により、蓄積領域16の有無で半導体装置100は、動作波形が異なる。
エミッタ接触トレンチ部40の負側のメサ部において、エミッタ接触トレンチ部40に接するベース領域14には、ゲート電圧Vgを駆動電圧とするNPN型のトランジスタが形成される。同様にエミッタ接触トレンチ部40の正側のメサ部においても、エミッタ接触トレンチ部40に接するベース領域14にゲート電圧Vgを駆動電圧とするNPN型のトランジスタが形成される。
エミッタ接触トレンチ部40の負側のメサ部において、エミッタ非接触トレンチ部130に接する蓄積領域16には、(ゲート電圧Vg)-(コレクタ電圧Vc)を駆動電圧とするPNP型の寄生トランジスタが形成される。この場合、メサ部62はゲート電位に接続されたゲート導電部44およびゲート導電部134間に挟まれているので電位上昇がしやすく、PNP型の寄生トランジスタがオンしにくい。
他方、エミッタ接触トレンチ部40の正側のメサ部においては、ダミートレンチ部30に接する蓄積領域16に、-(コレクタ電圧Vc)を駆動電圧とするPNP型の寄生トランジスタが形成される。この場合、メサ部60はゲート電位に接続されたゲート導電部44とエミッタ電位に接続されたダミー導電部34間に挟まれているので電位上昇がしにくく、PNP型の寄生トランジスタがオンしやすい。
蓄積領域16を有する半導体装置100は、NPN型トランジスタおよび閾値電圧が高いPNP型の寄生トランジスタを有する。これにより、ダミートレンチ部30およびエミッタ接触トレンチ部40の間のメサ部60を二段階で動作する。また、蓄積領域16におけるPNP型の寄生トランジスタは、正孔電流で駆動する。これにより半導体装置100全体として、段階動作の二段階目の駆動電圧Vcが上昇する。
図20Aは、蓄積領域16を有しない半導体基板について、半導体装置100および半導体装置300のターンオン時の電流および電圧の関係を示す。エミッタ-コレクタ間電流Icを縦軸にして、コレクタ電圧Vcを横軸として、ターンオン時の電流および電圧の関係を示している。なお、ゲート端子に印加されたゲート電圧Vgは、共通して6.1Vである。
半導体装置100および半導体装置300のいずれにおいても、ベース領域14のエミッタ接触トレンチ部40の近傍の界面においてチャネルが生成される。これにより、NPN型のトランジスタが動作する。
他方、本例の半導体装置100および半導体装置300は、蓄積領域16を有しない。従って、PNP型の寄生トランジスタの閾値電圧が低くなり、低いコレクタ電圧VcからPNP型の寄生トランジスタが駆動する。
半導体装置300ついてのV-I図では、エミッタ接触トレンチ部40およびエミッタ非接触トレンチ部130の間のメサ部62のみで構成されている。よって、PNP型の寄生トランジスタがオンしないと電流量が制限されるので、二段階の段階動作による立ち上がりを示す。
他方、半導体装置100についてのV-I図では、ダミートレンチ部30およびエミッタ接触トレンチ部40の間のメサ部60を有しているので、PNP型の寄生トランジスタがオンしやすく、NPN型トランジスタと略同時に駆動する。従って、段階的な立ち上がりが見られない。
図20Bは、蓄積領域16を有する半導体基板について、半導体装置100および半導体装置300のターンオン時の電流および電圧の関係を示す。即ち、半導体装置300の動作は、図19Aの半導体装置の動作に対応し、半導体装置100の動作は、図19Bの半導体装置の動作に対応する。
再び、エミッタ-コレクタ間電流Icを縦軸にして、コレクタ電圧Vcを横軸として、ターンオン時の電流および電圧の関係を示している。ゲート端子に印加されたゲート電圧Vgは、共通して6.1Vである。
蓄積領域16がある場合には、ダミートレンチ部30の近傍の拡散領域に、閾値電圧の高いPNP型のトランジスタが形成される。これにより、半導体装置100についてのI-V図でも、駆動動作において二段階の段階的な立ち上がりを行う。
半導体装置300についてのV-I図では、エミッタ接触トレンチ部40およびエミッタ非接触トレンチ部130の間のメサ部62のみで構成されている。よって、PNP型の寄生トランジスタの閾値がさらに高くなっているため、オンするコレクタ電圧Vcが高くなる。このため、二段階の段階動作による立ち上がりが高コレクタ電圧(コレクタ電圧Vcが高い)側にシフトする。
他方で、半導体装置100についてのV-I図では、半導体装置100がダミートレンチ部30およびエミッタ接触トレンチ部40の間のメサ部60を有しているので、PNP型の寄生トランジスタはオンしやすくなる。一方で、半導体装置100が蓄積領域16を有するので、PNP型の寄生トランジスタがオンしにくくなる影響も受ける。このため、二段階の段階動作による立ち上がりを示すようになる。
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。その様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
特許請求の範囲、明細書、および図面中において示した装置、システム、プログラム、および方法における動作、手順、ステップ、および段階等の各処理の実行順序は、特段「より前に」、「先立って」等と明示しておらず、また、前の処理の出力を後の処理で用いるのでない限り、任意の順序で実現しうることに留意すべきである。特許請求の範囲、明細書、および図面中の動作フローに関して、便宜上「まず、」、「次に、」等を用いて説明したとしても、この順で実施することが必須であることを意味するものではない。