JP7432958B1 - ゆで卵の製造方法及び味付き半熟ゆで卵 - Google Patents

ゆで卵の製造方法及び味付き半熟ゆで卵 Download PDF

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Abstract

【課題】 卵黄に未硬化部分を残したゆで卵の製造技術を提供すること。【解決手段】 本発明の製造方法は、未硬化部分を残し、少なくとも塩味を有するゆで卵を製造する方法であり、生卵を、40~50℃で2~10分、予備ボイルする工程(202)と、予備ボイルされた前記生卵を、湯を貯めた処理槽中で第1熱処理してゆで卵を製造する工程(203)と、ゆで卵を、低温の調味液に浸漬して加圧下で冷却し、ゆで卵に調味する工程(204)とを含み、第1熱処理に使用する湯が90℃~100℃であり、調味する工程より前に卵黄中心の温度がピーク又は鞍部を形成するように前記ゆで卵の温度を制御する。【選択図】 図2

Description

本発明は、ゆで卵製造技術に関し、より詳細には、卵黄に未硬化部分を残したゆで卵の製造技術及び味付き半熟ゆで卵に関する。
従来から、ゆで卵は我国において広く食べられており、生食、ゆで卵、その他各種の卵料理とされている。その中でもゆで卵は、製造方法が簡単で、保存性も向上することから、身近な料理である。ゆで卵は、そのままでも喫食できるが、通常では、食塩、胡椒、マヨネーズなどの調味料をゆで卵につけて、味を調整して喫食する。
また、ゆで卵に味を付ける方法は、塩味に関わらず種々知られている。例えば、特開昭61-128864号公報(特許文献1)には、ゆで卵の調味方法が記載されており、新鮮な鶏卵を90℃以下の温湯で加熱し、次いで10℃以下に冷却した20~30重量%の食塩水又は調味液満たした槽に沈め、1~3時間槽中に浸漬して食味を浸透させる方法が記載されている。
また、特許第2851997号明細書(特許文献2)には、原料卵をボイルしてボイル卵を得る工程、室温以下の食塩水が貯められた加圧タンク内にボイル卵を入れて5~30分間加圧することにより卵を味付けする工程、味付けされた卵を再びボイルする工程を含む、味付けゆで卵の製造方法を記載する。
さらに、特開2001-245635号公報(特許文献3)には、原料となる卵を圧力容器内に保持した状態で、蒸気により加熱してボイルされた卵を得る工程、圧力容器内に外部タンクから導入した味付け液を加圧することによりボイルされた卵を味付けする工程を含む味付けゆで卵の製造方法を記載する。
また、本願出願人による特開2002-051739号公報(特許文献4)には、卵を予め所定温度で所定時間ボイルしてゆで卵とし、その後このゆで卵をゆで卵の中心温度に比べて50℃以上低い温度の塩水中で加圧冷却し、次いで、加圧冷却した塩味ゆで卵を洗浄してから周囲の塩分を除去する、塩味ゆで卵の製造方法を記載する。
その他、特許第5995935号明細書(特許文献5)には、卵黄の全体が液状の殻付きゆで卵の製造方法を記載する。
以上のとおり、ゆで卵及びゆで卵を工業的に製造する技術については種々提案されているが、固ゆで卵であったり、いわゆる半熟卵であっても味付けがなく、また安定的な生産に適さなかったり、味のばらつきの制御、サルモネラ菌などの殺菌性などの問題があり、卵黄の固まり具合を精密に調整し、免疫グロブリンである、γーリペチンをできるだけ高濃度に維持するように、黄身の一部に未硬化部分を残した味付けゆで卵の工業的な製造方法及び味付きゆで卵については、さらに改善の余地があった。
また、近年の我国の高齢層の増加に伴い、ゆで卵の栄養価にもかかわらず、固ゆで卵は、ぼそぼその黄身が嚥下性に乏しく、高齢者が食べづらく、介護食用の加工卵製品を提供する場合にも卵黄の固まり具合を制御する技術が必要とされている。さらに、安全に喫食できる、携行性の高いゆで卵のバリエーションを広げることは、我が国の卵料理を世界的に普及させることにおいても有意義である。
特開昭61-128864号公報 特許第2851997号明細書 特開2001-245635号公報 特開2002-051739号公報 特許第5995935号明細書
MSS技報、Vol.27、1~4頁、橘田 悠著(https://www.mss.co.jp/technology/report/pdf/27_01.pdf) 「委員の視点、内閣府食品安全委員会事務局発行、「加熱してもなぜ食中毒が起こるのでしょうか?」」食品安全委員会委員、石井克枝著
ここで、本実施形態における味付け機構について検討する。従来、ゆで卵の味付け、特に塩味の味付けは、卵殻膜を半透膜ととらえ、例えば、特許文献1では逆浸透、特許文献2では、浸透圧による作用とされてきている。逆浸透とは、浸透圧を超える圧力を溶液側に印加することにより、膜を通過して水が低圧側に侵入する現象である。また、浸透圧は、この逆で、半透膜を介して水と、水溶液とが隔てられている場合、溶液側に向かって水が通過し、溶液が希釈される結果を生じる現象である。
上記の機能を基に、食塩水による加圧味付けの機構について検討する。先ず、逆浸透は、高圧の食塩水にゆで卵が浸漬された場合、ゆで卵の中に水が送り込まれることとなり、加圧飽和食塩水にゆで卵を浸漬することによる食塩の侵入による味付けを説明できない。次に、浸透圧に関して検討する。浸透圧は、種々の表現が存在するが、溶質の濃度を均等化させる方向に非溶質成分である水が半透膜を通過して移動する現象と表現するのが最も理解しやすい。そうすると加圧飽和食塩水の塩分濃度を下げるためにゆで卵内の水分が加圧食塩水側に出て行くことになるが、そもそもゆで卵内の圧力は、0.1MPa(常圧)であり、外部の食塩水が0.2Mpa程度だから、卵内の水は圧力差により食塩水側には移動せず、また仮に卵殻膜が半透膜であるならば、食塩がゆで卵内に侵入することを説明できない。
従来の上述した味付け機構の解釈に疑問を感じ、本発明者らが鋭意検討した所、半透性が有ると言われている卵殻膜は、約95℃、僅か60秒の加熱処理で、半透性を失うことを見出した。すなわち、加圧冷却によりゆで卵が味付けされる機構は、逆浸透でも、浸透でもなく、ゆで卵の気孔を通して食塩水に印加された圧力で、柔軟性を維持した茹で上がりのゆで卵を収縮させ、卵殻と、ゆで卵との間に、外部の加圧食塩水が物理的に卵殻内に押し入り、卵殻内でゆで卵の成分に拡散して行くことが味付けの主なメカニズムと考えられる。
上記の知見に基づき、本発明者らは、黄身が未硬化部分を有するゆで玉子は、固ゆで卵よりも柔軟性に富み、加圧収縮し易いため、その結果、卵殻内に従来に増して均等に食塩水を行き渡らせることができ、さらに味付け品質を改善できるという着想を得、本発明に至ったものである。すなわち、本開示は、後述する実施例で説明するように、黄身が特有の特性を有する未硬化部分を有すると共に、ゆで卵の塩分のばらつきが少なく、嚥下性にすぐれた良好な品質のゆで卵製造方法及び味付き半熟ゆで卵を提供することを目的とする。
本開示によれば、未硬化部分を残し、少なくとも塩味を有するゆで卵を製造する方法であって、
生卵を、45~50℃の処理層内で6分間予備ボイルする工程と、
前記予備ボイルされた前記生卵を、湯を貯めた処理槽中で、95℃で7~7分30秒間、第1熱処理してゆで卵を製造する工程と、
60℃~70℃で1~2分の温度制御を行う工程と、
前記ゆで卵を、0~10℃の調味液に浸漬してゲージ圧で0.01~0.3MPaの加圧下で冷却し、前記ゆで卵に調味する工程と
を含み、
前記温度制御を行う工程が前記調味する工程より前に卵黄中心の温度がピーク又は鞍部を形成するように前記ゆで卵の温度を制御する
ゆで卵の製造方法が提供される。
さらに本開示では、前記調味液は、食塩水であり、前記調味する工程を経た後の前記ゆで卵の卵黄が、前記ゆで卵を先端から後端を通る中心線を横切る向きにカットした場合に、白身に取り囲まれた部分が、マンセル表色系で2.5YR~7.5YRの範囲の橙色、蜜柑色、オレンジに相当する範囲の色味を有することができる。
また、本開示では、上記いずれかに記載の製造方法で製造された味付き半熟ゆで卵が提供される。本構成は、原料卵は、外形的な規格、保存温度、その他において規定できるものの、どのような成分がどのように含まれているか、又は、その構造がどのようなものであるか、その全てを特定することが不可能又はおよそ実際的ではない程度に困難であるため、プロダクトバイプロセスクレームによる記載を採用するものである。
本発明によれば、卵黄に未硬化部分を残した良好な品質の味付けゆで卵の製造方法を提供することができる。
図1は、本実施形態に使用する味付き半熟ゆで卵の製造装置100概略図。 図2は、本実施形態の製造方法の製造フローを示す図。 図3は、実施例1及び実施例2における原卵の卵黄中心の温度プロファイルのシミュレーションを示す図。 図4は、実施例1及び実施例2の温度プロファイルに、比較例1及び比較例2の温度プロファイルを重ね合わせて示した温度プロファイルを示す図。
100 :製造装置
101 :搬送装置
103~105 :処理槽
103a~105a :温度制御装置
104 :処理槽
105b :コンプレッサ
106a :圧力調整バルブ
106b :圧力リリースバルブ
107 :第4の熱処理装置
P :循環ポンプ
以下、本発明を実施形態に基づいて説明するが、本開示における実施形態は、当業者が発明を実施することができ、その効果を認識できるようにするために例示的に選択されたものであり、本開示は、実施形態に限定されることはなく、また、本開示に使用した用語の如何なる均等的な範囲でも本発明の範囲に含まれることを明記する。
<用語の説明>
本発明で使用する用語は、実施形態を最良に説明するために選択された用語であり、当業者において慣用的な用語を含むが、以下、本発明で使用する用語を定義する。
良好:本開示で使用する用語「良好」は、従来技術を基準として、それを超える特性、機能、作用効果を生じることを意味し、特定の実施例においてのみに限定して「良好」ということを意味せず、本開示における実施形態に共通する特性、機能、作用効果が「良好」であることを意味する。
生卵:鶏が生んだ卵殻及び卵殻内に保持された白身及び黄身を有する鶏卵であって、未加工の鶏卵を言い、必要に応じて洗浄及び検査された後の鶏卵を言う。
卵黄の未硬化部分:卵黄の未硬化部分とは、卵黄が完全に硬化しておらず、流動性~粘着性を有する部分を言い、橙色、蜜柑色、オレンジなどのオレンジ系の色調を有する部分である。
未硬化部分を残した卵黄:ゆで卵を鋭端及び鈍端の中心を結ぶラインを横断して切断面とした時に、流動性~粘着性を有する部分が、断面の面積比で、20%~75%の卵黄を意味する。
予備ボイル:原卵の温度調整を行うために原卵のタンパク質を変性させない程度の温度で処理するプロセスを言う。
第1熱処理:予備ボイルの後、原卵のタンパク質を変性させて、ゆで卵を製造するためのプロセスを言う。
温度変調領域:第1加熱から冷却までの間にゆで卵の温度を制御する熱的プロセスが適用された卵黄中心の温度-時間変化の時間的範囲を言う。
温度プロファイル制御:卵黄中心の温度変調領域を形成するためのプロセス上の制御領域であり、加熱・冷却を問わず、また、室温での自然冷却を含む。
調味処理(調味する工程):ゆで卵を加圧した調味液中に浸漬して、ゆで卵に味付けする処理を言う。
調味液:ゆで卵に味付けするための材料を含む水溶液を言い、食塩、又は出汁成分、醤油成分などの調味成分又は食塩水に他の調味成分を添加した水溶液である。
加圧処理:非圧縮性流体の調味用の水溶液に圧力を加える処理、又は水溶液を介して加圧水溶液中に浸漬されたゆで卵を加圧する処理を言う。
数値と共に使用される約、概ね、又は数値の後に使用される程度:その数値を中心として測定精度を超えて異なる数値の範囲をその数値が伴うことを意味し、本開示においては(数値)±10%の範囲を意味する。
色味:卵黄の色味を言い、JISZ8721に準拠するマンセル表色系、又はJIS慣用色名で表現される。
数値と、数値との間に配置されるキャラクタ「~」:キャラクタ「~」を挟んで配置された2つの数値は、その内容及び単位にかかわらず、それら両端の数値を含む範囲を指定する。
<製造装置>
以下、本実施形態を詳細に説明する。図1は、本実施形態に使用する味付き半熟ゆで卵の製造装置100概略図である。図1に示す製造装置100は、搬送装置101と、昇降自在に保持されたカゴ102と、複数の処理槽103~105を備えている。搬送装置101は、例えば、レールに吊り下げられたクレーンなどを含んで構成することができ、レールに沿って、図1中、左右方向に移動自在である。
カゴ102は、トレー上に載置された多数の生卵を、生卵が破損しないようにして保持した多段のトレーを収容し、搬送装置101の動作に応じて、上下・左右に移動する。例えば、処理を施したい場合には、適切な処理槽上にカゴ102が停止され、例えば、矢線102a~102cで示すようにカゴ102を処理槽内に浸漬して処理を施すと共に、処理が終了した後、引き上げられた後、矢線101a~101cで示すように、順次、次段階の処理槽へと搬送される。
処理槽103~105は、原卵(生卵)に対して原卵のタンパク質を変性させるために必要な熱処理を行うと共に、本開示の実施形態においては、加熱処理後のゆで卵を冷却しながら、食塩水、調味液などを使用して調味処理を施す。なお、食塩水は、調味液の下位概念であり、調味液の概念中に種々の濃度の食塩水が包含される。
より詳細には後述するが、各処理槽103~105の機能を概略的に説明すると、処理槽103は、原料卵の温度調節処理を行うための処理槽である。処理槽104は、原料卵のタンパク質を変性させ、目的とする未硬化部分を残した卵黄を有するゆで卵とするための熱処理を行うための処理槽である、処理槽105は、製造されたゆで卵を冷却すると共に調味処理するための処理槽である。調味されたゆで卵は、任意に、特許文献4に記載された仕上げボイル及び差圧冷却の各処理が適用された後、適切な搬送手段を使用して製品としての貯蔵場所へと搬送される。
また、処理槽103~105には、循環手段を構成する温度制御装置103a~105a、及びそれぞれ循環ポンプPが配置されている。これらの循環手段は、温度調節された水を、各処理槽103~105へと供給すると共に、槽内を循環させて、槽内温度を一定に保持できるように管理されている。
また、例示的な実施形態においては、処理槽105には、加圧するためのコンプレッサ105bと、圧力調整バルブ106aと、圧力リリースバルブ106bとが配置されている。これらの機能部材が、圧力調整手段を構成する。コンプレッサ105bは、空気を加圧して、処理槽105内の非圧縮性流体である調味水溶液を加圧するために使用される。また、圧力調整バルブ106aは、カゴ102が、処理槽105内に配置され、加圧のために密閉されると、処理槽105内に圧縮空気を供給するために使用される。
また、任意的な圧力リリースバルブ106bは、急激な圧力の上昇があった時に処理槽105内の圧力を下げると共に、処理槽105内を一定の圧力下に維持するための調整バルブとしても機能する。これらの循環手段及び圧力調整手段は、マイクロコンピュータなどを搭載した制御装置により制御されて、安定な連続動作を可能とすることができる。
本実施形態の製造装置100は、加熱処理を行う処理槽104と、調味処理を行う処理槽105との間に、任意的に第4の熱処理装置107を配置することができる。図1においては、第4の熱処理装置107は、カゴ102の搬送経路上に配置されるように記載されるが、他の実施の形態では、各処理槽103~105と同一のレベルに配置された湯による熱処理用の処理槽とすることができる。
この第4の熱処理装置107は、本実施形態において、処理槽104において加熱された後のゆで卵中の熱を、処理槽105での冷却処理前に制御するために配置される。例えば、第4の熱処理装置107を搬送経路の上部に配置する場合には、エアコンディショナ、ファンなどの調温機構とすることができる。また、エアコンディショナ(高温専用)を使用することなく、ファンのみの送風、又は室温での短時間(例えば5分以下)の自然冷却を使用した温度制御を行うこともできる。
さらにもう1つの実施形態では、カゴ102の搬送の際に通過する温水シャワーを列として配置することもできるし、過熱蒸気を噴出する列となった蒸気噴出装置とすることができる。
さらにもう1つの実施形態では、第4の熱処理装置107は、製造場所のフロア上に、処理槽103~105と同一レベルで、例えば処理槽104と同様の構成を備える温水処理槽とすることができる。
第4の処理槽として、どのような形態の装置又は手段を使用するかについては、製造装置100のスペース的要請、作業効率その他を考慮して、適宜選択することができる。
<製造プロセス>
以下、本実施形態の製造方法を、本実施形態の製造プロセスの製造フロー200の形態で図2に示す。なお、図2に示した製造フロー200は、本実施形態において本質的な構成のみを抽出したものであり、ボックス201において、原卵の洗浄、検査その他の処理を含み、また終了ボックス207で、乾燥及び乾燥後のゆで卵をエージングすることを含むことができる。
製造フロー200は、ボックス201から開始され、洗浄、検査後の原卵が、トレー上に配置され、かご内に設置される。なお、本実施形態で使用する原卵のサイズは、重量が52~58gのMSサイズ及び重量が58~64gの範囲のMサイズを使用することができる。
カゴ102内に配置された原卵は、ボックス202で、処理槽103に搬送され、処理槽103内に浸漬されて原卵温度調整が行われる(予備ボイル)。処理槽103の温度は、40~50℃の範囲とすることができ、処理時間は、2~10分、好ましくは、2~8分で、さらに好ましくは3分~6分の範囲で処理温度及び処理時間を調整することができる。
例えば、予備ボイルの温度及び時間は、
55℃の場合、3分20秒~6分15秒、
予備ボイルの温度が50℃の場合、
3分45秒~8分20秒、
予備ボイルの温度が、45℃の場合、
4分35秒~10分、
予備ボイルの温度が40℃の場合、
6分15秒~10分
とすることができる。
上記予備ボイルの条件を使用することにより、短時間で卵黄を卵黄タンパクの変性温度にまで加熱でき、この結果、卵黄が硬化可能な温度に維持される期間を短縮化して、卵黄を所定の未硬化部分を含む硬化状態とするための加熱処理時間が確保しつつ、サルモネラ菌の加熱殺菌に必要とされる75℃で1分以上の加熱死滅条件を満足する製造方法を提供することができる。
なお、予備ボイルの温度が40℃を下回ると、予備ボイルによる卵黄中心の温度上昇が十分ではなく、短時間の処理では、卵白を十分に固化することができず、この結果、剥け性が低下する傾向にあり、また、50℃以上に加熱すると、第1加熱処理中に温度が上がりすぎて、卵黄の固化が進行しすぎると共に、所定の卵黄の固化状態を得る時間が短く、サルモネラ菌を加熱殺菌する条件を達成できない可能性が有るので好ましくない。また、10分を超えても、製造効率を低下させることを除き、特に効果はない。
ボックス202の予備ボイルを終了した後、カゴ102は、処理槽104に移動及び浸漬され、ボックス203で第1熱処理が適用される。処理槽104内の第1熱処理は、原卵の卵白及び卵黄タンパク質を変性させて、いわゆる、ゆで卵とするための処理である。一般に卵白は、80℃以上で固まり、卵黄は、60℃が固まり始め約75℃で顕著に固まる温度とされており、上記の温度に所定時間原卵を保持することにより、ゆで卵の特性を制御することができる。また、このプロセスは、将来には後述するように、原卵の卵白と、卵殻との間に存在する卵殻膜を変性させ、その後の調味プロセスにおいて、調味成分の主体である食塩(塩化ナトリウム)を効率的にゆで卵内に供給する作用を有する。
この第1熱処理は、本実施形態では、熱の安定的な供給及び維持、ひいては品質の安定性の観点から気体状の過熱蒸気ではなく、熱容量の大きな液状の加熱された水、すなわち湯で原卵を処理することができる。
第1熱処理に使用することができる湯の温度は、処理時間内に卵白・卵黄のタンパク質を所望するような特性とするため、本実施形態では、90℃~100℃の範囲、より好ましくは、95℃~100℃、さらに、温度の制御性の観点から、95℃~99℃の範囲とすることができる。タンパク質変性温度が、90℃よりも低いと、原卵の温度上昇速度が低く、この結果、卵黄が長時間75℃以上の環境に保持されるため、卵黄の全硬化した、いわゆる固ゆで卵になりやすく、100℃の湯は、沸騰状態を制御する必要があり製造条件的に設定しにくいためである。
上記の範囲の温度の第1熱処理は、予備ボイルの後、搬送装置101により、カゴ102が処理槽104に浸漬されて開始され、カゴ102が処理槽104に浸漬されてから、約6分~8分行われる。この間、本実施形態では卵黄中心の温度は、約75~80℃まで上昇し、卵黄の外側が十分な硬度(必ずしも固ゆで状態ではない。)を有するが、卵黄の中心部までに至る部分の卵黄が未硬化で、未硬化部分が流動性~粘着性を持った、塩味のする水飴~ゼリー状であり、卵白の外には流れ出でない特有の性状の半熟ゆで卵を製造することができる。
また、本実施形態の製造フロー200における卵黄中心の温度プロファイルは、第1熱処理の開始後、10分以下で卵黄中心の温度が温度ピーク又は温度鞍部を形成する温度変調領域を形成するように制御することができる。以下、例えば、第1の熱処理を終了した後、処理槽105での調味処理までの間に、例えば第4の熱処理装置107を配置して、第1熱処理後のゆで卵の卵黄中心に第1熱処理の開始後10分以下で温度ピーク又は温度鞍部を形成させることができる。温度ピークは、湯を保持した処理槽を使用する場合に形成しやすく、温度鞍部は、処理槽、温水シャワー、蒸気加熱を使用する場合、より低温で処理する条件で形成されがちである。
この温度ピークを形成するように温度を制御する温度プロファイル制御のプロセス(第2熱処理)は、第1熱処理後、第4の熱処理装置107などを使用して、温度変調部の形成を確実にする上で60~75℃の温度範囲で1分~5分以下、卵黄の硬化具合を考慮してより好ましくは、1分~3分以下で適用することができる。また、この段階で、黄身が完全に固まる温度以上に保持される期間を効果的に制御することができ、従来にない食感及び色の半熟ゆで卵を製造することが可能となる。このように調味処理で急冷する前に温度ピークを形成させることにより、ゆで卵の黄身が未硬化部分を相当に残している場合にでも剥け性が良好となることが見出された。
第2熱処理が終了すると、製造フロー200は、ボックス204で、調味処理が施される。調味処理は、ゆで卵に味を付けるために行われ、食塩水、又は出汁成分を含む塩水などの調味液に、カゴ102を浸漬し、さらに味付けの品質を安定化させるために、加圧・冷却下で行われる。加圧するための圧力は、これまで知られるように、ゲージ圧で、0.01~0.3MPaとすることができ、好ましくは0.1~0.2MPaの範囲とすることができる。圧力が低いと、卵殻内のゆで卵の体積収縮が小さく、十分な量の食塩を卵殻内に供給できなくなり、この結果、味付け効率が低下するためである。
0.2MPaを超えると、製造設備のコストが増加し(圧力気体保有容器の規格から、第2種圧力容器として管理しなければならない。)、0.2MPaより高圧で調味することによる効率化がそれほど期待できないためである。
また、調味処理に使用する調味液として食塩水を使用する場合、適切な濃度とすることができ、例えば、一般に受け入れられる塩味を効率的に付与する場合には、飽和食塩水とすることができ、その濃度は、約26.4質量%程度とすることができ、より好ましくは、10℃以下で24質量%程度とすることができる。また、他の調味液を併用する場合であっても、食塩濃度を24質量%程度とすることにより、効率的な味付けを行うことができる。
また、介護食用など高齢者向けの薄味にする場合、約5質量%~飽和濃度及び食塩水に浸漬する時間の制御などにより、食塩水濃度又は加圧冷却処理時間を、剥け性を考慮しながら調節すればよい。
再度図2に戻って調味処理について説明する。調味処理は、低温で行うことが、卵殻膜の剥け性を改善する上で好ましく、また、低温の加圧食塩水の方が、ゆで卵内の加熱水よりも食塩の溶解度が低いため(温度差による)、食塩が単に熱拡散ではなく、溶解性の点で卵殻内に滞留する加熱水に移行(溶解)して行く作用を期待できることから、効果的な味付けが達成される点で好ましい。調味処理における加圧食塩水の温度は、15℃以下とすることが好ましく、より好ましくは、0℃~10℃、さらに好ましくは5℃以下であり、最も好ましい温度設定は、茹で上がったゆで卵の浸漬による槽温度変化を考慮して3℃~10℃である。
また、調味処理において、ゆで卵を調味液に浸漬して圧力を保持する時間は、処理槽105に浸漬を開始した時間から計時して、12分~60分の範囲とすることが、味付け及び卵殻膜の剥け性の点から可能であり、また、製造効率及びゆで卵内の食塩量を考慮すれば、12分~30分とすることで十分である。
ボックス204の調味処理の後、ボックス205で仕上げ処理が行われる。仕上げ処理は、例えば特許文献5に記載されるように、ゆで卵を約70℃の温水に、数十秒~数分浸漬することで行われる。仕上げ処理は、卵殻に残留する塩分を除去し、塩味の経時的な変化を防止すると共に、ゆで卵のべとつきを抑制するために任意的に含まれる工程である。製造フロー200は、その後ボックス208で終了する。なおボックス208は、任意的に仕上げ工程を含むことができ、仕上げ工程では、差圧冷却を使用して、乾燥する工程を含むことができる。
以上、図2に示した本実施形態の製造フロー200は、予備ボイルを開始した後、好ましい条件を使用する場合には、約44分で、黄身が未硬化の部分を有するゆで卵製品を製造することができる。
黄身の一部が未硬化部分を残したゆで卵の未硬化部分の黄身の色は、例えばマンセル表色系を使用して表現することができる。本実施形態により製造されるゆで卵は、黄身の一部、より具体的には、卵の殻を剥き、先端から後端を通る中心線を横切る向きにゆで卵をカットした場合に、面積比率で黄身全体の面積に対して黄身部分の約20%~75%が未硬化である。なお、未硬化部分の面積比率は、未硬化部分を指定・選択することにより、画像処理・アプリケーション、例えばPhotoshop(Adobe社製)を使用することより、白身に取り囲まれた黄身部分の画像ビット数に対する該当する領域の画像ビット数の割合として決定することができる。
未硬化部分の色調は、例えばマンセル表色系のカラーパッチとの対比により決定することができ、5YR5/10、5YR6/12、5YR7/12、5YR7/12、5YR7/14などを例示することができる。色調で言えば、黄身の断面が、JIS慣用名で言うところの、黄赤系の色味で、黄茶(#E65C2E)、マンダリンオレンジ(#FF801A)、マリーゴールド(#FF800D)、金茶(#E67300)、黄赤(#FF4700)、橙色(オレンジ)(#FF5900)、蜜柑色(#FF6600)、柑子色(#FF9940)、などのオレンジ系の色調のゆで卵を提供することができる。なお、上記の()内の表記は、マンセル値に基づくR(8ビット)G(8ビット)B(8ビット)を16進数で表現した値である。表記また、一般に本実施形態で製造されるゆで卵の未硬化部分の色は、2.5YR~7.5YRの範囲にある、橙色、蜜柑色、オレンジに相当するオレンジ系の範囲の色味を有することができる。
このようなゆで卵は、半熟卵と呼ばれ、本実施形態のゆで卵は、黄身のぼそぼそ感が無く、さらに適度な塩味であるため、介護食に対して適用性が有ると共に、見栄え、食感、及び食味とも良好なので、特有の製品を提供することができる。なお、上記の色表現は、単なる例示であり、上記した色の心証を与える限り、本開示を限定することはない。
また、本実施形態のゆで卵は、直接喫食することができるし、製造後に、出汁に漬けこんで、いわゆる煮卵用の加工卵製品の原料としても使用することができる。
以下、本実施形態を、具体的な実施例により説明する。
(卵殻膜の塩分透過性)
(実験1)
原卵(MSサイズ)の長軸方向に沿った上部を楕円形にカットし、内部の卵白及び卵黄を除去し、卵殻膜と卵殻のみを残した。その後、カットした卵殻を、卵殻膜と共に、95℃の湯中につけて、約60秒加熱した。その後、加熱した卵殻を乾燥し、その内部に市水を充填した。
市水を充填した卵殻を、水温23~24℃の塩水(塩分濃度24%)中に置き、卵殻内部にマグネチック・スターラー(東京ガラス機器株式会社製F-101N)を入れて卵殻内の市水を攪拌しながら、経時的に卵殻外の塩分が、卵殻内に侵入するか否かを、塩分濃度の時間経過を計測することにより検討した。
(実験2)
また、逆に卵殻内に塩水を充填し、マグネチック・スターラーの振動槽内に市水を入れて、市水中の塩分濃度を測定する逆プロセスについても同様の測定を行った(実験2)。
下記表1に、測定結果を示す。表1に示すように、食塩水溶液に浸漬した後、1時間後、0.03%、2時間後、0.07%の塩分が卵殻内の市水中において確認された。また、逆に卵殻内に塩水を充填し、マグネチック・スターラーの振動槽内に市水を入れて、市水中の塩分濃度を測定する逆プロセスについても、1.5時間経過時に0.04%の振動槽中で塩分濃度の増加が確認された。このことから、卵殻膜は、少なくとも95℃の熱処理で、半透性を喪失していることが示された。
以上のことから、ゆで卵の卵殻膜には半透性はなく、飽和食塩水の加圧による卵殻内への圧入により卵殻内に食塩を供給できることが分かった。以下さらに、ゆで卵の製造方法について説明する。
(実施例1)
以下の条件で、黄身の一部が未硬化のゆで卵を製造した。
(1)予備ボイル:50℃、6分
(2)第1加熱処理:95℃、7分30秒
(3)温度プロファイル制御:60~70℃以下で2分
(4)調味処理:(食塩濃度24%、温度6℃)、30分
(5)検体数:6
(実施例2)
(1)予備ボイル:45℃、6分
(2)第1加熱処理:95℃、7分、
(3)温度プロファイル制御:60~70℃以下で1分
(4)調味処理(食塩濃度24%、温度6℃)、30分
(5)検体数:5
また、比較例として、以下の条件でゆで卵を製造し、塩分濃度及び卵黄の色調を評価した。
(比較例1)
以下の条件で、黄身の一部が未硬化のゆで卵を製造した。
(1)予備ボイル:60℃、4分
(2)第1加熱処理:85℃、10分
(3)なし
(4)調味処理:(食塩濃度24%、温度10℃)、30分
(5)検体数:6
(比較例2)
(1)予備ボイル:60℃、4分
(2)第1加熱処理:85℃、10分
(3)なし
(4)調味処理(食塩濃度24%、温度5℃)、35分
(5)検体数:6
以下、実施例及び比較例についての評価を記載する。
(黄身の外観)
以上のようにして製造された実施例1及び実施例2のゆで卵を、長軸(鋭端から鈍端を結ぶ中心軸)に垂直な方向でカットしたところ、卵黄の一部が未硬化で、橙色~蜜柑色~オレンジの範囲に相当し、流動性を有する部分を、概ねその断面の面積(比)において、実施例1では約35%、実施例2では約71%有する半熟ゆで卵が得られた。また得られた半熟ゆで卵は、何れも未硬化部分が水あめのような性状でありながら、卵白の外には流れ出でない程度の流動性を有し、黄身単独で充分に塩味を有する特有の水飴~ゼリー状の黄身を有する半熟ゆで卵であった。
また、比較例1及び比較例2で製造されたゆで卵を同様にカットして色味及び硬化具合を評価した所、黄身は、水飴~ゼリー状の部分の面積比が、16%で、ぼそぼそ感が強く、卵黄の色味は、より黄ばみが強い部分が多く、見栄え、食感共に劣るゆで卵であった。
(温度プロファイル)
図3に実施例1及び実施例2における原卵の卵黄中心の温度プロファイルのシミュレーションを示す。シミュレーションにおいては、原卵の熱伝導係数を0.0035として実験的に求め、以下の熱伝導式(例えば非特許文献1)を使用してシミュレーションした。
上式(1)中、Tは芯温、T0は、初期温度(例えば、室温、予備加熱槽の温度など)、TMaxは、第1熱処理の温度、であり、kは、卵黄の熱伝導係数、thは黄身に熱が到達してから(昇温が確認されてから)の経過時間である。また、上記(2)で温度プロファイル制御では、第1熱処理終了時の卵黄中心温度を、Tsecmaxとし、この処理の開始時からの時間をh2とすると、以下の温度変化関数が与えられる。なお、式(2)中、Thmaxは、第1熱処理終了時の芯温最高温度である。また、上記式(3)中、Tは芯温、Tcmaxは、塩水加圧冷却直前の芯温、kは卵内の熱伝導係数で、加熱時及び冷却時では変化しないものとし、tcは、飽和冷食塩水に浸漬してからの経過時間である。
図3(a)は、実施例1について得られた温度プロファイルであり、図3(b)が実施例2について得られた温度プロファイルである。図3(a)及び図3(b)に示されるように、第1加熱から加圧塩水冷却までの間に、図3(a)では卵黄中心の温度プロファイルに温度鞍部が形成されているのが示されている。図3(a)に示す実施例1では、10分以内である予備加熱開始後450秒後(7分30秒後)に温度ピーク(80℃)が形成され、その後鞍部を形成しながら、加圧塩水に浸漬後、急激に温度が低下する。
同様に、図3(b)に示す実施例2では、予備ボイル開始後、7分で温度プロファイルに温度ピークが形成され(77℃)、その後温水シャワーの温度まで減少し、さらに、加圧塩水に浸漬後、急激に温度が低下することがシミュレーションにより判明した。
図4には、実施例1及び実施例2の温度プロファイルに、比較例1及び比較例2の温度プロファイルを重ね合わせて示した温度プロファイルを示す。図4(a)は、実施例1と、比較例1、比較例2を比較したものであり、図4(b)は、実施例2と、比較例1、比較例2を比較したものである。図4(a)、図4(b)に示されるように、比較例1及び比較例2は、第1加熱処理が10分行われ、その後に加圧塩水処理で、急冷されており、何れも搬送装置101による搬送時間を考慮すると、10分以後にピークが形成される。
この間、実施例1では、黄味が硬化する温度(60℃)以上で、6分40秒、実施例2では、60℃以上で、約5分25秒保持されることがシミュレーションされた。一方、比較例1、比較例2とも、60℃に保持される時間は、何れも約6分40秒であるが、温度プロファイルに10分以内の温度ピーク又は鞍部を形成するような処理が行われていないので、黄身の硬化が進行したものと推定される。
(塩分濃度)
また、実施例1~比較例2において得られたゆで卵の加圧冷却後の重量増加及び塩分濃度を、突き刺し型のプローブを備える塩分濃度計(株式会社エイシン製EB-158P(突き刺し型)、株式会社アタゴ製PAL-SALT PROBE(プローブ付き))を使用して、その鋭端及び鈍端の塩分濃度を測定した。実施例1について得られた結果を表2に、実施例2について得られた結果を、表3にそれぞれ示す。
また、以下の表4に、実施例1、実施例2、比較例1及び比較例2の鋭端と鈍端の塩分含有量の比の平均値及び標準偏差を示す。
表4中、「-」は、計測していないことを示す。表4に示されるように、実施例1、2、比較例1及び比較例2について、鈍端/鋭端の塩分比は、有意な違いは見られていないが、鈍端/鋭端の塩分比のばらつきを示す標準偏差には有意差があり、実施例1及び実施例2の方が、ゆで卵の塩分濃度のばらつきが小さく、比較例1及び2に比較して、実施例1及び実施例2の製造方法は、加圧食塩水が均一に導入されていると結論された。したがって、本製造方法は、味にばらつきが少なく、より品質が均一のゆで卵を製造することができることが判明した。
(サルモネラ菌の殺菌)
サルモネラ菌の加熱死滅に関し、「委員の視点、内閣府食品安全委員会事務局発行、「加熱してもなぜ食中毒が起こるのでしょうか?」」食品安全委員会委員、石井克枝著(非特許文献2)によると、サルモネラ菌の加熱死滅条件は、75℃、1分(以上)とされている。そこで、製造されたゆで卵の安全性について検討した。ゆで卵製造プロセス中の温度プロファイルのシミュレーションによれば、実施例1で卵黄は、その中心温度が75℃以上で2分55秒、実施例2では、75℃以上で1分40秒保持されていることが示され、この時間は、サルモネラ菌の加熱死滅条件を十分に満足する。
なお、上記の温度は、卵黄中心の温度であるものの、その周囲を取り巻く卵白は、外部からの加熱により先に加熱されるので、卵黄よりも長い時間にわたり75℃以上に保持されることになる。このため、本製造プロセスは、卵白及び卵黄の何れについてもサルモネラ菌を十分加熱死滅することができ、安全な製造方法を提供することができることが示された。
さらに、安全性を確認する目的で、実施例1及び実施例2で製造した、ゆで卵の表5には、実施例1及び実施例2の製造されたゆで卵の細菌検査を行った。サルモネラ菌の検出は、DHL寒天平板塗抹培養法を使用した。表5にその結果を示す。
表5に示されるように、実施例1及び実施例2で製造されたゆで卵は、大腸菌群、黄色ブドウ球菌、及びサルモネラ菌について陰性とされており、十分な安全性を有していることが示された。
以上のように、本発明によれば、卵黄に未硬化部分を残した味付けゆで卵の製造方法を提供することを可能とし、携行食品や介護食として使用しやすく、安全性の高い味付きの半熟ゆで卵を製造することができる。

Claims (3)

  1. 未硬化部分を残し、少なくとも塩味を有するゆで卵を製造する方法であって、
    生卵を、45~50℃の処理層内で6分間予備ボイルする工程と、
    前記予備ボイルされた前記生卵を、湯を貯めた処理槽中で、95℃で7~7分30秒間、第1熱処理してゆで卵を製造する工程と、
    60℃~70℃で1~2分の温度制御を行う工程と、
    前記ゆで卵を、0~10℃の調味液に浸漬してゲージ圧で0.01~0.3MPaの加圧下で冷却し、前記ゆで卵に調味する工程と
    を含み、
    前記温度制御を行う工程が前記調味する工程より前に卵黄中心の温度がピーク又は鞍部を形成するように前記ゆで卵の温度を制御する
    ゆで卵の製造方法。
  2. 前記調味液は、食塩水であり、前記調味する工程を経た後の前記ゆで卵の卵黄が、前記ゆで卵を先端から後端を通る中心線を横切る向きにカットした場合に、白身に取り囲まれた部分が、マンセル表色系で2.5YR~7.5YRの範囲の橙色、蜜柑色、オレンジに相当する範囲の色味を有する、請求項1に記載の製造方法。
  3. 請求項1または2に記載の製造方法で製造された味付き半熟ゆで卵。
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