JP7428463B2 - タイヤトレッドおよびタイヤ - Google Patents

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Description

本発明は、所定のゴム組成物により構成されたタイヤトレッド、および、該タイヤトレッドを備えるタイヤに関する。
車両輸送を担うタイヤには、燃料代の高騰や環境規制の導入による経費増大等の理由から、低燃費性(低発熱性)が重要な特性となってきている。さらに、タイヤには、耐久性能も求められている。特に、トレッドゴムにはチップカットなどの損傷が発生するため、チップカットに対する耐久性能(耐チップカット性)を確保する必要がある。このため、トレッドゴムには低発熱性や高いゴム強度が得られる天然ゴムが多く用いられる。
また、耐久性能としては、耐摩耗性も要求されており、この目的では、例えば、ブタジエンゴムを配合して耐摩耗性の向上が図られている。しかし、ブタジエンゴムを配合すると、耐摩耗性の改善傾向はみられるものの、耐チップカット性が悪化するため、これらの性能の両立は困難であった。
例えば、特許文献1では、低燃費性を改善する方法として、アミノ基およびアルコキシ基を含有する有機ケイ素化合物で変性されたジエン系ゴム(変性ゴム)を用いる方法が提案されているが、耐摩耗性と耐チップカット性とを両立することは検討されていない。
特開2000-344955号公報
本発明は、耐摩耗性と耐チップカット性に優れるゴム組成物により構成されたタイヤトレッド、および、該タイヤトレッドを備えるタイヤを提供することを目的とする。
本発明者は、鋭意検討の結果、改質天然ゴムとスチレンブタジエンゴムとを含むゴム成分に、所定のカーボンブラックと所定の加硫剤とを適用することより、前記課題を解決できることを見出し、さらに検討を重ねて本発明を完成した。
すなわち、本発明は、
[1]窒素含有量0.40質量%以下、好ましくは0.30質量%以下、より好ましくは0.20質量%以下、さらに好ましくは0.10質量%以下の改質天然ゴム40~75質量%、好ましくは45~75質量%、より好ましくは50~75質量%、さらに好ましくは55~75質量%、スチレンブタジエンゴム10~35質量%、好ましくは10~30質量%を含むゴム成分100質量部、
臭化セチルトリメチルアンモニウム吸着比表面積(CTAB)が120m2/g以上、好ましくは120~165m2/g、より好ましくは125~165m2/g、さらに好ましくは130~165m2/gのカーボンブラック20~60質量部、好ましくは25~55質量部、
下式(A)で示される化合物0.5~3.0質量部、好ましくは0.7~2.5質量部、より好ましくは1.0~2.0質量部、
を含むゴム組成物により構成されたタイヤトレッド

1-S-S-Y-S-S-R2 (A)

(式中、Yは、炭素数2~10、好ましくは炭素数4~8のアルキレン基、R1およびR2は、同一若しくは異なって、チッ素原子を含む1価の有機基を表す。)、
[2]ゴム組成物が、硫黄2.0質量部以下、好ましくは0超~2.0質量部、より好ましくは0.1~1.5質量部、さらに好ましくは0.2~1.0質量部をさらに含むものである、上記[1]記載のタイヤトレッド、
[3]ゴム成分が、ブタジエンゴム0超~45質量%、好ましくは3~45質量%、より好ましくは5~45質量%、さらに好ましくは5~40質量%、さらに好ましくは5~35質量%、さらに好ましくは5~30質量%をさらに含むものである、上記[1]または[2]記載のタイヤトレッド、
[4]ゴム組成物が、シリカをさらに含むものである、上記[1]~[3]のいずれかに記載のタイヤトレッド、
[5]ゴム組成物が、シランカップリング剤をさらに含むものである、上記[4]記載のタイヤトレッド、
[6]改質化天然ゴムが、天然ゴムをケン化処理したものである、上記[1]~[5]のいずれかに記載のタイヤトレッド、
[7]上記[1]~[6]のいずれかに記載のタイヤトレッドを備えるタイヤ、
に関する。
本発明のタイヤトレッドおよび該タイヤトレッドを備えるタイヤは、耐摩耗性と耐チップカット性に優れる。また、本発明のタイヤトレッドおよび該タイヤトレッドを備えるタイヤは、低燃費性(低発熱性)においても優れ得るものである。
本発明の一実施形態である所定のタイヤトレッドは、窒素含有量0.40質量%以下の改質天然ゴム40~75質量%、スチレンブタジエンゴム10~35質量%を含むゴム成分100質量部、臭化セチルトリメチルアンモニウム吸着比表面積(CTAB)が120m2/g以上のカーボンブラック20~60質量部、上記式(A)で示される化合物0.5~3質量部を含むゴム組成物により構成されたタイヤトレッドであることを特徴とする。
理論に拘束されることは意図しないが、本発明において、相乗的な耐摩耗性および耐チップカット性の向上が達成されるメカニズムとしては以下が考えられる。すなわち、本発明は、天然ゴム(NR)よりも剛性の高いスチレンブタジエンゴム(SBR)が島相として点在することで、摩耗や欠けの発生により生じた亀裂の成長を食い止める効果を果たすものであるが、その一方で、界面では亀裂が発生しやすい。そこで、NRから不純物を除去し、かつ、所定のカーボンブラックおよび所定の有機加硫剤を用いることにより、カーボンブラックの分散不良を防ぐとともに、通常の硫黄架橋よりも強固にポリマー間を架橋させて亀裂の発生を抑え、これらにより、相乗的な耐摩耗性および耐チップカット性の向上が達成されていると考えられる。
<ゴム成分>
ゴム成分としては、所定の改質天然ゴム、スチレンブタジエンゴムを含むものである。
(改質天然ゴム)
改質天然ゴムとは、天然ゴムラテックスに含まれる天然ポリイソプレノイド成分以外の、主にタンパク質を低減、除去した天然ゴム(好ましくは、リン脂質やゲル分などの不純物も除去した天然ゴム)である。天然ゴムラテックスに含まれる天然ゴム粒子は、イソプレノイド成分が、不純物成分に被覆されているような構造となっている。天然ゴム粒子表面の不純物を取り除くことにより、イソプレノイド成分の構造が変化して配合剤との相互作用も変化するため、エネルギーロスが減少する、耐久性が向上するといった効果が得られると推察される。また、天然ゴムラテックスの不純物を取り除くことにより、天然ゴム特有の臭気を低減することもできる。
改質処理としては、ケン化処理、酵素処理、超音波や遠心分離などの機械的処理など、公知の方法が限定なく用いられるが、なかでも、生産効率、コスト、白色充填剤の分散性の観点から、ケン化処理が好ましい。
天然ゴムラテックスとしては、ヘベア樹をタッピングして採取した生ラテックス(フィールドラテックス)や、生ラテックスを遠心分離法やクリーミング法によって濃縮した濃縮ラテックス(精製ラテックス、常法によりアンモニアを添加したハイアンモニアラテックス、亜鉛華とTMTD(テトラメチルチウラムジスルフィド)とアンモニアとによって安定化させたLATZラテックスなど)などが挙げられる。なかでも、pHコントロールによる改質が容易であるという理由から、フィールドラテックスを用いることが好ましい。
天然ゴムラテックス中のゴム成分(固形ゴム分)は、攪拌効率等の観点から、5~40質量%が好ましく、10~30質量%がより好ましい。
ケン化処理の方法としては、例えば、特開2010-138359号公報、特開2010-174169号公報に記載の方法などが挙げられる。具体的には、天然ゴムラテックスに、塩基性化合物と、必要に応じて界面活性剤とを添加し、所定温度で一定時間静置することで実施でき、必要に応じて攪拌などを行ってもよい。
前記塩基性化合物としては特に限定されないが、タンパク質などの除去性能の点から、塩基性無機化合物が好適である。塩基性無機化合物としては、アルカリ金属水酸化物、アルカリ土類金属水酸化物などの金属水酸化物;アルカリ金属炭酸塩、アルカリ土類金属炭酸塩などの金属炭酸塩;アルカリ金属炭酸水素塩などの金属炭酸水素塩;アルカリ金属リン酸塩などの金属リン酸塩;アルカリ金属酢酸塩などの金属酢酸塩;アルカリ金属水素化物などの金属水素化物;アンモニアなどが挙げられる。
アルカリ金属水酸化物としては、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどが挙げられる。アルカリ土類金属水酸化物としては、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化バリウムなどが挙げられる。アルカリ金属炭酸塩としては、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウムなどが挙げられる。アルカリ土類金属炭酸塩としては、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸バリウムなどが挙げられる。アルカリ金属炭酸水素塩としては、炭酸水素リチウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウムなどが挙げられる。アルカリ金属リン酸塩としては、リン酸ナトリウム、リン酸水素ナトリウムなどが挙げられる。アルカリ金属酢酸塩としては、酢酸ナトリウム、酢酸カリウムなどが挙げられる。アルカリ金属水素化物としては、水素化ナトリウム、水素化カリウムなどが挙げられる。なかでも、ケン化効率と処理の容易さの観点から、金属水酸化物、金属炭酸塩、金属炭酸水素塩、金属リン酸塩、アンモニアが好ましく、アルカリ金属水酸化物である水酸化ナトリウム、水酸化カリウムがさらに好ましい。これらの塩基性化合物は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
前記界面活性剤としては特に限定されず、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩などの公知のアニオン系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤、両性界面活性剤などが挙げられるが、ゴムを凝固させず良好にケン化できるという点から、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩などのアニオン系界面活性剤が好適である。なお、ケン化処理において、塩基性化合物および界面活性剤の添加量、ケン化処理の温度および時間は、適宜設定すればよい。
凝固乾燥工程は、改質工程で得られた高純度化物を凝固させた後、凝固物を乾燥させることで改質天然ゴムを得る工程である。凝固乾燥工程で得られた天然ゴムは、前の改質工程で天然ゴム粒子表面の不純物が取り除かれているため、これを含有するゴム組成物はゴム物性に優れると考えられる。
凝固方法としては、特に限定されず、ギ酸、酢酸、硫酸などの酸を添加してpHを4~7に調整し、必要に応じてさらに高分子凝集剤を添加して攪拌する方法などが挙げられる。凝固を行うことにより改質物のゴム分を凝集させ、凝固ゴムを得ることができる。
乾燥方法としては特に限定されず、例えば、TSRなど通常の天然ゴムの製造方法の乾燥工程で使用されるトロリー式ドライヤー、真空乾燥機、エアドライヤー、ドラムドライヤーなどの通常の乾燥機を用いて実施できる。
乾燥は、得られた凝固ゴムを洗浄した後に行うことが好ましい。洗浄方法としては、ゴム全体に含まれる不純物が十分に除去可能な手段であれば特に限定されず、例えば、ゴム分を水で希釈して洗浄後、遠心分離する方法、静置してゴムを浮かせ、水相のみを排出してゴム分を取り出す方法などが挙げられる。またさらに、洗浄を、得られた凝固ゴムを塩基性化合物で処理した後に行うと、凝固時にゴム内に閉じ込められた不純物を再溶解してから洗浄することができ、凝固ゴム中に強く付着した不純物も除去できる。
改質天然ゴムにおいて、窒素含有量は0.40質量%以下である。このような範囲とすることで、発明の効果が発揮される。窒素含有量は、好ましくは、0.30質量%以下、より好ましくは0.20質量%以下、さらに好ましくは0.10質量%以下である。窒素含有量は、例えばケルダール法等、従来の方法で測定することができる。窒素は、蛋白質に由来するものである。なお、窒素含有量の下限値については、少ない方が好ましい。例えば、0.06質量%や0.01質量%であれば、十分に低い値であると考えられる。
改質天然ゴムは、リン含有量が200ppm以下であることが好ましい。このような範囲とすることで、低燃費性などゴム物性が向上する傾向がある。該リン含有量は、150ppm以下が好ましく、100ppm以下がより好ましい。ここで、リン含有量は、例えばICP発光分析等、従来の方法で測定することができる。リンは、リン脂質(リン化合物)に由来するものである。
改質天然ゴム中のゲル含有率は、20質量%以下であることが好ましい。このような範囲とすることで、低燃費性などのゴム物性が向上する傾向がある。該ゲル含有率は、10質量%以下がより好ましく、7質量%以下がさらに好ましい。ゲル含有率とは、非極性溶媒であるトルエンに対する不溶分として測定した値を意味し、以下においては単に「ゲル含有率」または「ゲル分」と称することがある。ゲル分の含有率の測定方法は次のとおりである。まず、天然ゴム試料を脱水トルエンに浸し、暗所に遮光して1週間放置後、トルエン溶液を1.3×105rpmで30分間遠心分離して、不溶のゲル分とトルエン可溶分とを分離する。不溶のゲル分にメタノールを加えて固形化した後、乾燥し、ゲル分の質量と試料の元の質量との比からゲル含有率が求められる。
改質天然ゴムのゴム成分中の含有量は、40~75質量%である。改質天然ゴムの含有量がこの範囲をはずれると、発明の効果が十分に発揮されない傾向がある。改質天然ゴムの含有量は、好ましくは、45質量%以上、より好ましくは50質量%以上である。一方、改質天然ゴムの含有量は、好ましくは70質量%以下、より好ましくは65質量%以下、さらに好ましくは60質量%以下である。
(SBR)
SBRとしては、特に限定されず、例えば未変性の乳化重合スチレンブタジエンゴム(E-SBR)や溶液重合スチレンブタジエンゴム(S-SBR)、これらを変性した変性乳化重合スチレンブタジエンゴム(変性E-SBR)や変性溶液重合スチレンブタジエンゴム(変性S-SBR)などの変性SBRが挙げられる。またSBRとしては、伸展油を加えて柔軟性を調整した油展タイプのものと、伸展油を加えない非油展タイプのものとがあるが、このいずれも使用可能である。
これらのうち、変性SBRを用いることが好ましい。変性SBRとしては、スチレン含有量が15~50質量%、重量平均分子量(Mw)が20万以上、末端変性率が30~100%のスチレンブタジエンゴムであれば、特に限定されるものではなく、溶液重合SBR(S-SBR)、乳化重合SBR(E-SBR)のいずれも使用することができ、また、末端変性のみならず、主鎖が変性されたSBR、スズ、ケイ素化合物などでカップリングされたSBR(縮合物、分岐構造を有するものなど)も使用することができる。末端変性基としては、シリカと親和性のある基であれば特に限定されるものではなく、導入される基は、例えば、アルコキシシリル基、アミノ基、水酸基、グリシジル基、アミド基、カルボキシル基、エーテル基、チオール基、シアノ基、炭化水素基、イソシアネート基、イミノ基、イミダゾール基、ウレア基、カルボニル基、オキシカルボニル基、スルフィド基、ジスルフィド基、スルホニル基、スルフィニル基、チオカルボニル基、アンモニウム基、イミド基、ヒドラゾ基、アゾ基、ジアゾ基、ニトリル基、ピリジル基、アルコキシ基、オキシ基、エポキシ基、スズやチタンなどの金属原子などが一例として挙げられる。なお、これらの官能基は、置換基を有していてもよい。なかでも、1,2,3級アミノ基(特に、グリシジルアミノ基)、エポキシ基、水酸基、アルコキシ基(好ましくは炭素数1~6のアルコキシ基)、アルコキシシリル基(好ましくは炭素数1~6のアルコキシシリル基)、炭化水素基が好ましい。変性SBRは、例えば、特開2014-19841号公報に記載された方法により製造することができる。
SBRのスチレン含量は、十分なグリップ性およびゴム強度が得られるという理由から、5.0質量%以上が好ましく、10.0質量%以上がより好ましい。また、SBRのスチレン含有量は、低燃費性の観点から、60.0質量%以下が好ましく、50.0質量%以下がより好ましい。なお、本明細書におけるSBRのスチレン含量は、1H-NMR測定により算出される値である。
SBRのビニル含量(1,2-結合ブタジエン単位量)は、十分なグリップ性およびゴム強度が得られるという理由から、10.0%以上が好ましく、15.0%以上がより好ましい。また、SBRのビニル含量は、低燃費性の観点から、65.0%以下が好ましく、60.0%以下がより好ましい。なお、本明細書におけるSBRのビニル含量は、赤外吸収スペクトル分析法によって測定できる。
SBRのゴム成分中の含有量は、10~35質量%である。SBRの含有量がこの範囲をはずれると、発明の効果が十分に発揮されない傾向がある。SBRの含有量は、好ましくは15質量%以上、さらに好ましくは20質量%以上である。一方、SBRの含有量は、好ましくは30質量%以下である。なお、SBRとして油展タイプのSBRを用いる場合は、当該油展タイプのSBR中に含まれる固形分としてのSBR自体の含有量をゴム成分中の含有量とする。
(その他のゴム成分)
その他のゴム成分としては、例えば、非改質天然ゴム(NR)、エポキシ化天然ゴム(ENR)、イソプレンゴム(IR)、ブタジエンゴム(BR)、スチレンイソプレンゴム(SIR)、スチレンイソプレンブタジエンゴム(SIBR)、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)、クロロプレンゴム(CR)、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)などが挙げられる。なかでも、耐摩耗性、低温特性および耐屈曲亀裂成長性に優れるという理由からは、BRを使用することが好ましい。
BRとしては、この分野で通常使用されるものをいずれも好適に使用することができるが、優れた耐摩耗性が得られるという点から、シス含量(シス1,4結合含有率)が90.0%以上のハイシスBRが好ましい。BRのシス含量は、95.0%以上がより好ましい。なお、本明細書におけるシス含量は、赤外吸収スペクトル分析法により測定される値である。
またBRとしては、充填剤との相互作用がより強固となり低燃費性に優れるという理由から、末端および/または主鎖が変性された変性BR、スズ、ケイ素化合物などでカップリングされた変性BR(縮合物、分岐構造を有するものなど)を用いることもでき、シリカとの反応の点からは、シリカと相互作用を持つ官能基により末端および/または主鎖が変性された変性BR、特に、シリル基、アミノ基、アミド基、水酸基、およびエポキシ基からなる群から選ばれる少なくとも1種を有する変性BRを用いることもできる。
BRを含有する場合のゴム成分中の含有量は、耐摩耗性の観点から、0超質量%以上であればよく、好ましくは3質量%以上、より好ましくは5質量%以上である。また、BRのゴム成分中の含有量は、ウェットグリップ性能の観点から、45質量%以下が好ましく、より好ましくは40質量%以下、より好ましくは35質量%以下、さらに好ましくは30質量%以下である。
<充填剤>
充填剤としては、所定のカーボンブラックが用いられるが、さらにその他の充填剤を用いてもよい。そのような充填剤としては、例えば、シリカ、炭酸カルシウム、クレーなどこの分野で一般的に使用される充填剤をいずれも用いることができる。充填剤として、カーボンブラック以外のものを用いる場合、そのような充填剤としては、シリカが好ましい。
(カーボンブラック)
カーボンブラックは、臭化セチルトリメチルアンモニウム吸着比表面積(CTAB)が120m2/g以上のものである。このようなカーボンブラックは、1種または2種以上を組合せて用いることができる。カーボンブラックのCTABが120m2/g未満ではゴムに対する補強効果が十分でなく、発明の効果が十分に発揮されないおそれがある。CTABは、125m2/g以上が好ましく、130m2/g以上がより好ましい。一方、カーボンブラックのCTABに特に上限はないが、十分な低発熱性の観点からは、165m2/g以下、好ましくは162m2/g以下、より好ましくは160m2/g以下である。ここで、CTABはカーボンブラックの粒子径の大きさに相関する値であり、CTAB吸着比表面積が大きいほどカーボンブラックの粒子径が小さいことを表す。CTABは、JIS K 6217-3:2001に準拠して測定できる。
カーボンブラックの窒素吸着比表面積(N2SA)は、ゴムに対する補強効果および低発熱性の観点から、125m2/g~180m2/gであることが好ましい。N2SAは、より好ましくは130m2/g以上である。また、N2SAは、より好ましくは170m2/g以下である。なお、カーボンブラックのN2SAは、JIS K 6217のA法によって求められる。
カーボンブラックは、通常のカーボンブラックの製造方法により得られる。例えば、ファーネス法などの方法において、原料導入量、燃焼用空気導入量、燃焼用空気の酸素含有率、反応温度、反応時間などの因子を適宜調節することにより、所望のカーボンブラックを製造できる。また、市販品を使用することもできる。
カーボンブラックの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、20~60質量部である。このような範囲にあることで、十分な補強効果および低燃費性が発揮される傾向がある。カーボンブラックの含有量は、好ましくは25質量部以上、より好ましくは30質量部以上、さらに好ましくは35質量部以上、さらに好ましくは40質量部以上である。一方、カーボンブラックの含有量は、好ましくは58質量部以下、よりが好ましくは55質量部以下である。
(シリカ)
シリカを配合する場合、シリカとしては特に限定されず、例えば、乾式法シリカ(無水ケイ酸)、湿式法シリカ(含水ケイ酸)等が挙げられるが、シラノール基が多いという理由から、湿式法シリカが好ましい。
本発明の一実施形態に用いられるシリカは、窒素吸着比表面積(N2SA)が100~300m2/g、好ましくは130~280m2/gであることが、補強効果および分散性の観点から好ましい。
シリカの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、0質量部超~90質量部であることが、低発熱性や加工性の観点から好ましい。シリカの含有量は、より好ましくは5質量部以上、さらに好ましくは10質量部以上である。一方、シリカの含有量は、より好ましくは80質量部以下、さらに好ましくは70質量部以下、さらに好ましくは60質量部以下、さらに好ましくは50質量部以下、さらに好ましくは40質量部以下である。
(充填剤の含有量)
シリカを含めた充填剤全体の含有量としては、ゴム成分100質量部に対して、20質量部~150質量部であることが好ましい。前記の範囲内とすることで発明の効果が十分に発揮される傾向がある。充填剤の含有量は、好ましくは30質量部以上、より好ましくは40質量部以上、より好ましくは50質量部以上、さらに好ましくは60質量部以上である。一方、充填剤の含有量は、好ましくは120質量部以下、より好ましくは100質量部以下、さらに好ましくは90質量部以下である。
<シランカップリング剤>
本発明の一実施形態で使用できるシランカップリング剤としては、従来からシリカと併用される任意のシランカップリング剤を用いることができる。例えば、スルフィド系、メルカプト系、ビニル系、アミノ系、グリシドキシ系、ニトロ系、クロロ系などのシランカップリング剤を用いることができる。
スルフィド系のシランカップリング剤としては、具体的には、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(2-トリエトキシシリルエチル)テトラスルフィド、ビス(3-トリメトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(2-トリメトキシシリルエチル)テトラスルフィド、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)トリスルフィド、ビス(3-トリメトキシシリルプロピル)トリスルフィド、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(3-トリメトキシシリルプロピル)ジスルフィド、3-トリメトキシシリルプロピル-N,N-ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、3-トリエトキシシリルプロピル-N,N-ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、2-トリエトキシシリルエチル-N,N-ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、2-トリメトキシシリルエチル-N,N-ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、3-トリメトキシシリルプロピルベンゾチアゾリルテトラスルフィド、3-トリエトキシシリルプロピルベンゾチアゾリルテトラスルフィド、3-トリエトキシシリルプロピルメタクリレートモノスルフィド、3-トリメトキシシリルプロピルメタクリレートモノスルフィドなどが挙げられる。
メルカプト系のシランカップリング剤としては、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリエトキシシラン、2-メルカプトエチルトリメトキシシラン、2-メルカプトエチルトリエトキシシランなどが挙げられる。
ビニル系のシランカップリング剤としては、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシランなどが挙げられる。
アミノ系のシランカップリング剤としては、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-(2-アミノエチル)アミノプロピルトリエトキシシラン、3-(2-アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシランなどが挙げられる。
グリシドキシ系のシランカップリング剤としては、γ-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシランなどが挙げられる。
ニトロ系のシランカップリング剤としては、3-ニトロプロピルトリメトキシシラン、3-ニトロプロピルトリエトキシシランなどが挙げられる。
クロロ系のシランカップリング剤としては、3-クロロプロピルトリメトキシシラン、3-クロロプロピルトリエトキシシラン、2-クロロエチルトリメトキシシラン、2-クロロエチルトリエトキシシランなどが挙げられる。
これらのなかでも、カップリング剤添加効果とコストの両立から、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、3-メルカプトプロピルトリメトキシシランなどが好適に用いられる。これらのシランカップリング剤は1種、または2種以上組み合わせて用いてよい。
シランカップリング剤の含有量は、シリカ100質量部に対して、0~20質量部であることが好ましい。シランカップリング剤の配合量が20質量部以下であることで、コストに見合ったカップリング効果が得られる傾向がある。また、分散効果、カップリング効果の観点から、シランカップリング剤の含有量は、0.5~15質量部、さらには1~15質量部であることが好ましい。
<加硫剤>
下式(A)で表される化合物が加硫剤として使用される。かかる加硫剤は、1種または2種以上を使用することができる。該加硫剤を使用することにより、結合エネルギーが高く、熱安定性が高いCC結合をゴム組成物に保有させることができるため、良好な低燃費性を維持しながら耐摩耗性や機械的強度を改善でき、発明の効果を発揮させることができる。なお、加硫剤は、下式(A)で表される化合物に加えて、硫黄を配合することもできる。

1-S-S-Y-S-S-R2 (A)

(式中、Yは、炭素数2~10のアルキレン基、R1およびR2は、同一若しくは異なって、チッ素原子を含む1価の有機基を表す。)
Yのアルキレン基(炭素数2~10)としては、特に限定されず、直鎖状、分岐状、環状のものが挙げられるが、なかでも、直鎖状のアルキレン基が好ましい。炭素数は4~8が好ましい。アルキレン基の炭素数が1では、熱的な安定性が悪く、アルキレン基を有することによる効果が得られない傾向があり、炭素数が11以上では、-S-S-Y-S-S-で表される架橋鎖の形成が困難になる傾向がある。
上記条件を満たすアルキレン基としては、エチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基、ヘプタメチレン基、オクタメチレン基、デカメチレン基などが挙げられる。なかでも、ポリマー間に-S-S-Y-S-S-で表される架橋がスムーズに形成され、熱的にも安定であるという理由から、ヘキサメチレン基が好ましい。
1およびR2としては、チッ素原子を含む1価の有機基であれば特に限定されないが、芳香環を少なくとも1つ含むものが好ましく、炭素原子がジチオ基に結合したN-C(=S)-で表される結合基を含むものがより好ましい。また、直鎖状、分岐状、環状のいずれでもよいが、分岐状が好ましい。
1およびR2は、それぞれ同一でも、異なっていてもよいが、製造の容易さなどの理由から、同一であることが好ましい。
上記条件を満たす化合物としては、例えば、1,2-ビス(N,N’-ジベンジルチオカルバモイルジチオ)エタン、1,3-ビス(N,N’-ジベンジルチオカルバモイルジチオ)プロパン、1,4-ビス(N,N’-ジベンジルチオカルバモイルジチオ)ブタン、1,5-ビス(N,N’-ジベンジルチオカルバモイルジチオ)ペンタン、1,6-ビス(N,N’-ジベンジルチオカルバモイルジチオ)ヘキサン、1,7-ビス(N,N’-ジベンジルチオカルバモイルジチオ)ヘプタン、1,8-ビス(N,N’-ジベンジルチオカルバモイルジチオ)オクタン、1,9-ビス(N,N’-ジベンジルチオカルバモイルジチオ)ノナン、1,10-ビス(N,N’-ジベンジルチオカルバモイルジチオ)デカンなどが挙げられる。なかでも、熱的に安定であり、分極性に優れるという理由から、1,6-ビス(N,N’-ジベンジルチオカルバモイルジチオ)ヘキサンが好ましい。
式(A)で表される化合物の含有量は、全ゴム成分100質量部に対して、0.5~3.0質量部である。このような範囲にあることで、発明の効果が発揮される傾向がある。式(A)で示される化合物の含有量は、好ましくは0.7質量部以上、より好ましくは1.0質量部以上である。一方、式(A)で表される化合物の含有量は、好ましくは2.5質量部以下、より好ましくは2.0質量部以下である。
加硫剤として、さらに硫黄を配合する場合、その含有量は、0質量部超~2質量部以下である。硫黄の含有量を制限するのは、式(A)で示される化合物を配合することによる効果が薄れないようにするためである。硫黄の含有量は、好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは0.2質量部以上、さらに好ましくは0.3質量部以上、さらに好ましくは0.4質量部以上である。一方、硫黄の含有量は、好ましくは1.5質量部以下、より好ましくは1.0質量部以下である。
<その他配合成分>
上記ゴム組成物には、前記成分の他に、従来ゴム工業で使用される配合剤、例えば、可塑剤若しくはオイル、酸化亜鉛、ステアリン酸、老化防止剤、加硫促進剤等を含有してもよい。
加硫促進剤としては、グアニジン系、アルデヒド-アミン系、アルデヒド-アンモニア系、チアゾール系、スルフェンアミド系、チオ尿素系、チウラム系、ジチオカルバメート系、ザンデート系の化合物などが挙げられる。これらの加硫促進剤は単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。加硫促進剤を含有する場合のゴム成分100質量部に対する含有量は、0.3質量部以上が好ましく、0.5質量部以上がより好ましい。また、加硫促進剤の含有量は2.0質量部以下が好ましく、1.5質量部以下がより好ましい。加硫促進剤の含有量が前記範囲内であると、好適な架橋密度が得られる傾向がある。
可塑剤を含有する場合のゴム成分100質量部に対する含有量は、加工性の観点から、1質量部以上であり、3質量部以上が好ましい。また、可塑剤の含有量は、耐摩耗性および操縦安定性の観点から、40質量部以下であり、20質量部以下が好ましい。なお、本明細書における可塑剤の含有量には、油展ゴムや不溶性硫黄に含まれるオイル分も含まれる。
前記オイルとしては、プロセスオイル、植物油脂、動物油脂などが挙げられる。オイルを含有する場合のゴム成分100質量部に対する含有量は、加工性の観点から、2質量部以上が好ましく、5質量部以上がより好ましい。また、オイルの含有量は、工程面での負荷の観点から、40質量部以下が好ましい。
<ゴム組成物の製造>
ゴム組成物の製造方法としては、公知の方法を用いることができ、例えば、バンバリーミキサーやニーダー、オープンロールなどで前記各成分のうち、まず硫黄および加硫促進剤を除く成分を混練りし、次に、得られた混練り物に、硫黄および加硫促進剤を添加して混練りし、その後加硫する方法などにより製造できる。
<タイヤトレッド>
前記ゴム組成物は、耐摩耗性と耐チップカット性、さらには低燃費性などのゴム物性に優れることから、タイヤ部材、特に、タイヤトレッドに用いることが好ましい。
<タイヤ>
本発明の一実施形態である所定のタイヤは、前記ゴム組成物を用いて、通常の方法により製造することができる。すなわち、前記ゴム組成物を、未加硫の段階でトレッドの形状に押出し加工し、タイヤ成形機上で他のタイヤ部材とともに貼り合わせ、通常の方法にて成形することにより、未加硫タイヤを形成し、この未加硫タイヤを加硫機中で加熱加圧することにより、製造することができる。
これらタイヤは、いずれの車両のタイヤとしても使用することができるが、特に、トラック・バスなどの重荷重車に用いられるタイヤとして好適に使用される。
本発明を実施例に基づいて説明するが、本発明は、実施例にのみ限定されるものではない。
以下、実施例および比較例において用いた各種薬品をまとめて示す。
天然ゴム(NR):TSR20
改質天然ゴム(改質NR):下記製造例1で作製したもの
スチレンブタジエンゴム(SBR):下記製造例2で作製したもの
ブタジエンゴム(BR):ハイシスブタジエンゴム(シス含量:97%、Mw:61万)
カーボンブラック(CB)1:キャボットジャパン(株)製のN220(CTAB:110m2/g、N2SA:114m2/g)
カーボンブラック(CB)2:カーボンブラック(CTAB:159m2/g、N2SA:181m2/g)
シリカ:エボニックデグサ社製のウルトラシルVN3(N2SA:175m2/g)
シランカップリング剤(カップリング剤):エボニックデグサ社製のSi266(ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド)
酸化亜鉛:三井金属鉱業(株)の酸化亜鉛2種
ステアリン酸:日油(株)ビーズステアリン酸
老化防止剤:大内新興化学工業(株)のノクラック6C
加硫剤1:硫黄(鶴見化学工業(株)の粉末硫黄)
加硫剤2:ランクセス社製のVulcuren VP KA9188(1,6-ビス(N,N’-ジベンジルチオカルバモイルジチオ)ヘキサン)
加硫促進剤:大内新興化学工業(株)のノクセラーNS
製造例1(改質NRの製造)
天然ゴムラテックス(タイテックス社から入手したフィールドラテックス)の固形分濃度(DRC)を30%(w/v)に調整した後、天然ゴムラテックス1000gに対し、Emal-E10gとNaOH20gを加え、室温で48時間ケン化反応を行い、ケン化天然ゴムラテックスを得た。このラテックスに水を添加してDRC15%(w/v)となるまで希釈した後、ゆっくり攪拌しながらギ酸を添加しpHを4.0~4.5に調整し、凝集させた。凝集したゴムを粉砕し、水1000mLで2回洗浄し、その後110℃で2時間乾燥して固形ゴム(改質NR)を得た。
製造例1により得られた固形ゴム(改質NR)および上記天然ゴムについて以下に示す方法により、窒素含有量、リン含有量、ゲル含有率を測定した。結果を表1に示す。
(窒素含有量の測定)
窒素含有量は、CHN CORDER MT-5(ヤナコ分析工業(株)製)を用いて測定した。測定には、まずアンチピリンを標準物質として、窒素含有量を求めるための検量線を作製した。次いで、製造例1で得られた改質天然ゴムまたはTSRのサンプル約10mgを秤量し、3回の測定結果から平均値を求めて、試料の窒素含有量とした。
(リン含有量の測定)
ICP発光分析装置(ICPS-8100、(株)島津製作所製)を使用してリン含有量を求めた。また、リンの31P-NMR測定は、NMR分析装置(400MHz、AV400M、日本ブルカー(株)製)を使用し、80%リン酸水溶液のP原子の測定ピークを基準点(0ppm)として、クロロホルムにより生ゴムより抽出した成分を精製し、CDCl3に溶解して測定した。
(ゲル含有率の測定)
1mm×1mmに切断した生ゴムのサンプル70.00mgを計り取り、これに35mLのトルエンを加え1週間冷暗所に静置した。次いで、遠心分離に付してトルエンに不溶のゲル分を沈殿させ上澄みの可溶分を除去し、ゲル分のみをメタノールで固めた後、乾燥し質量を測定した。次の式によりゲル含有率(質量%)を求めた。
ゲル含有率(質量%)=[乾燥後の質量mg/最初のサンプル質量mg]×100
Figure 0007428463000001
製造例2(SBRの製造)
内容積30Lの撹拌装置付きステンレス製重合反応器を、洗浄、乾燥し、重合反応器の内部のガスを乾燥窒素に置換した。次に、工業用ヘキサン(密度680kg/m3)15.3kg、1,3-ブタジエン912g、スチレン288g、テトラヒドロフラン9.1mL、エチレングリコールジエチルエーテル6.4mLを重合反応器内に投入した。次に、重合開始剤の失活に作用する不純物を予め無毒化させるために、スカベンジャーとして少量のn-1ブチルリチウムのヘキサン溶液を重合反応器内に投入した。n-ブチルリチウムのn-ヘキサン溶液(n-ブチルリチウムの含有量19.2mmol)を重合反応器内に投入し、重合反応を開始した。重合反応を3時間行った。重合反応中、重合反応器内の温度を65℃に調整し、重合反応器内の溶液を撹拌速度130rpmで攪拌し、重合反応器内には、1,3-ブタジエン1368gとスチレン432gとを連続的に供給した。2-[1-(2-ヒドロキシ-3,5-ジ-t-ペンチルフェニル)エチル]-4,6-ジ-t-ペンチルフェニルアクリレート19.2mmolを含むTHF溶液20mLを重合反応器内に投入し、重合体溶液を15分間撹拌した。次に、メタノール1.2mLを含むヘキサン溶液20mLを重合反応器内に投入し、重合体溶液を5分間撹拌した。2-tert-ブチル-6-(3-tert-ブチル-2-ヒドロキシ-5-メチルベンジル)-4-メチルフェニルアクリレート(住友化学(株)製のスミライザーGM)12.0g、ペンタエリスリチルテトラキス(3-ラウリルチオプロピオネート)(住友化学(株)製のスミライザーTP-D)6.0gを重合反応器内に投入し、次に、重合体溶液を、常温で24時間蒸発させ、さらに55℃で12時間減圧乾燥し、重合体、変性SBRを得た。
実施例1~6および比較例1~4
表2に示す配合内容に従い、配合材料のうち、硫黄および加硫促進剤以外の薬品を、1.7Lバンバリーミキサーを用いて、5分間、排出温度150℃になるまで混練りし、混練り物を得た。次に、得られた混練り物に、硫黄および加硫促進剤を添加し、2軸オープンロールを用いて、5分間、80℃になるまで練り込み、未加硫ゴム組成物を得た。
<加硫ゴムシート>
得られた未加硫ゴム組成物を、170℃の条件で10分間加硫し、加硫ゴムシートを製造した。
<試験用タイヤ>
得られた未加硫ゴム組成物をトレッドの形状に押出し成形し、タイヤ成形機上で他のタイヤ部材とともに貼り合わせ、170℃の条件で10分間加硫し、試験用タイヤ(タイヤサイズ:195/65R15、乗用車用タイヤ)を製造した。
<低発熱性(粘弾性試験)>
(株)岩本製作所製の粘弾性スペクトロメータを用いて、周波数10Hz、初期歪み10%および動歪み2%の条件下で、30℃における上記加硫ゴムシートの損失正接tanδを測定した。そして、比較例1の測定結果を100とし、下記計算式により指数表示した。なお、低発熱性指数が大きいほど、転がり抵抗特性に優れることを示す。本明細書において、低発熱性指数は、100以上であれば、低発熱性が悪化せずに十分維持されていると言える。
(低発熱性指数)=(比較例1のtanδ(30℃))/(各配合のtanδ(30℃))×100
<耐チップカット性>
上記試験用タイヤのトレッドから採取したゴム試験片を、JIS K 6251「加硫ゴムおよび熱可塑性ゴム-引張特性の求め方」に準じて引張試験を実施し、破断伸びEB(%)を測定した。そして、比較例1の破断伸びを100として、下記計算式により、各配合のEBを指数表示した。数値が大きいほど、ゴム強度が高く、耐チップカット性能に優れることを示す。
(耐チップカット性)=(各配合のEB)/(比較例1のEB)×100
<耐摩耗性>
上記加硫ゴムシートについて、ランボーン型摩耗試験機を用いて、室温、負荷荷重1.0kgf、スリップ率30%の条件で摩耗量を測定した。そして、比較例1の測定結果を100とし、下記計算式により指数表示した。なお、耐摩耗性指数が大きいほど、耐摩耗性能に優れることを示す。
(耐摩耗性指数)=(比較例1の摩耗量)/(各配合の摩耗量)×100
<走破性・耐久性(実車評価)>
上記試験用タイヤを、リム(リムサイズ:18×8J)にリム組みし、かつ、内圧(230kPa)を充填して、車両(ランドクルーザー200)の4輪に装着した。そして、1周0.3kmのオフロードコースを3周実車走行し、ドライバーによる官能評価にて走破性、耐久性を、それぞれ比較例1を100とする指数で評価し、その平均値を求めた。指数が大きいほど走破性、耐久性の総合評価に優れることを示す。
Figure 0007428463000002
本発明によれば、耐摩耗性と耐チップカット性に優れるタイヤトレッドおよび該タイヤトレッドを備えるタイヤを提供することができる。

Claims (7)

  1. 窒素含有量0.40質量%以下の改質天然ゴム40~75質量%、スチレンブタジエンゴム10~25質量%を含むゴム成分100質量部、
    臭化セチルトリメチルアンモニウム吸着比表面積(CTAB)が120m2/g以上のカーボンブラック20~60質量部、
    下式(A)で示される化合物0.5~3.0質量部、
    硫黄1.0質量部以下
    を含むゴム組成物により構成されたタイヤトレッド。

    1-S-S-Y-S-S-R2 (A)

    (式中、Yは、炭素数2~10のアルキレン基、R1およびR2は、同一若しくは異なって、チッ素原子を含む1価の有機基を表す。)
  2. ゴム成分が、ブタジエンゴム0超~45質量%をさらに含むものである、請求項1記載のタイヤトレッド。
  3. ゴム成分が、ブタジエンゴム3~45質量%をさらに含むものである、請求項記載のタイヤトレッド。
  4. ゴム組成物が、シリカをさらに含むものである、請求項1~3のいずれか1項に記載のタイヤトレッド。
  5. ゴム組成物が、シランカップリング剤をさらに含むものである、請求項4記載のタイヤトレッド。
  6. 改質天然ゴムが、天然ゴムをケン化処理したものである、請求項1~5のいずれか1項に記載のタイヤトレッド。
  7. 請求項1~6のいずれか1項に記載のタイヤトレッドを備えるタイヤ。
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