JP7424218B2 - 配線基板の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、配線基板の製造方法に関する。
従来、配線基板の製造において、配線を形成するために、めっき法が広く使用されてきた。しかし、めっき法は、めっき処理後の水洗が必要であり、廃液を処理する必要があった。そこで、特許文献1において、陽極と陰極(基材)の間に固体電解質膜を配置し、陽極と固体電解質膜の間に金属イオンを含む溶液を配置し、固体電解質膜を基材に接触させ、陽極と基材の間に電圧を印加して金属を基材の表面に析出させる、金属被膜の成膜方法が記載されている。
特開2014-185371号公報
特許文献1に記載の方法を用いて、絶縁性基材上に所定の配線パターンを有する配線層を形成する場合、所定の配線パターン以外の領域に金属が析出することがある。所定の配線パターン以外の領域に析出した金属は、配線間の短絡を引き起こすことがあるため、除去する必要がある。しかし、所定の配線パターン以外の領域に析出した金属を選択的に除去することは難しい。そのため、所定の配線パターン以外の領域に金属が析出することを防止することが望ましい。
そこで、本発明は、所定の配線パターン以外の領域に金属が析出することが防止された、配線基板の製造方法を提供する。
本発明の一態様に従えば、絶縁性基材と、前記絶縁性基材上に設けられた所定の配線パターンを有する配線層と、を備える配線基板の製造方法であって、
(a)シード層付き基材を準備するステップであって、
ここで、前記シード層付き基材は、
前記絶縁性基材と、
前記絶縁性基材上に設けられた、導電性の下地層と、
前記配線パターンに応じた所定パターンを有する第1の領域において、前記下地層上に設けられた、導電性のシード層と、を含む、ステップと、
(b)第1の領域において前記シード層を被覆するとともに、第1の領域以外の領域である第2の領域において前記下地層を被覆する、絶縁層を形成するステップと、
(c)少なくとも第1の領域の前記絶縁層をエッチングして、前記シード層の表面を露出させるとともに、第2の領域において前記下地層を被覆する残留絶縁層を形成するステップと、
(d)前記シード層の表面に金属層を形成するステップであって、
ここで、前記シード層と陽極との間に、金属イオンを含む水溶液を含有する固体電解質膜を配置し、前記固体電解質膜と前記シード層とを圧接させながら、前記陽極と前記シード層との間に電圧を印加する、ステップと、
(e)前記残留絶縁層を除去するステップと、
(f)前記下地層をエッチングするステップと、
をこの順で含む、方法が提供される。
本発明の製造方法では、所定の配線パターン以外の領域に金属が析出することが防止される。
図1は、実施形態に係る配線基板の製造方法を示すフローチャートである。 図2は、下地層を形成するステップを説明する概念図である。 図3は、シード層を形成するステップを説明する概念図である。 図4は、絶縁層を形成するステップを説明する概念図である。 図5は、絶縁層をエッチングするステップを説明する概念図である。 図6は、金属層を形成するステップを説明する概念図である。 図7は、残留絶縁層を除去するステップを説明する概念図である。 図8は、下地層をエッチングするステップを説明する概念図である。 図9は、金属層を形成するステップで用いる成膜装置を示す概略断面図である。 図10は、ハウジングを所定高さまで下降させた、図9に示す成膜装置を示す概略断面図である。 図11は、変形形態に係る配線基板の製造方法における、絶縁層をエッチングするステップを説明する概念図である。 図12は、変形形態に係る配線基板の製造方法における、金属層を形成するステップを説明する概念図である。
以下、図面を参照して本開示の実施形態を説明する。なお、以下の説明で参照する図面において、同一の部材又は同様の機能を有する部材には同一の符号を付し、繰り返しの説明は省略する場合がある。また、図面の寸法比率が説明の都合上実際の比率とは異なったり、部材の一部が図面から省略されたりする場合がある。また、本願において、記号「~」を用いて表される数値範囲は、記号「~」の前後に記載される数値のそれぞれを下限値及び上限値として含む。
実施形態の配線基板の製造方法は、図1に示すように、シード層付き基材を準備するステップ(S1)と、絶縁層を形成するステップ(S2)と、絶縁層をエッチングするステップ(S3)と、金属層を形成するステップ(S4)と、残留絶縁層を除去するステップ(S5)と、下地層をエッチングするステップ(S6)と、を含む。以下、各ステップを説明する。
(1)シード層付き基材を準備するステップ(S1)
まず、図2に示すように、絶縁性基材11上に下地層12を形成する。絶縁性基材11としては、例えば、ガラスエポキシ樹脂基材等の樹脂及びガラスを含む基材、樹脂製の基材、ガラス製の基材等を用いることができる。絶縁性基材11に用いられる樹脂の例として、エポキシ樹脂、ABS樹脂、AS樹脂、AAS樹脂、PS樹脂、EVA樹脂、PMMA樹脂、PBT樹脂、PET樹脂、PPS樹脂、PA樹脂、POM樹脂、PC樹脂、PP樹脂、PE樹脂、PI(ポリイミド)樹脂、エラストマーとPPを含むポリマーアロイ樹脂、変性PPO樹脂、PTFE樹脂、ETFE樹脂等の熱可塑性樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、アミノ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリウレタン、ジアリルフタレート、シリコーン樹脂、アルキド樹脂等の熱硬化性樹脂、エポキシ樹脂にシアネート樹脂を加えた樹脂、液晶ポリマー等が挙げられる。好ましくは、絶縁性基材11としてガラスエポキシ樹脂基材を用いてよい。
下地層12は、後述する金属層14の形成のために十分な導電性を有する。下地層12の材料の例として、FeSi、CoSi、MoSi、WSi、VSi、ReSi1.75、CrSi、NbSi、TaSi、TiSi、ZrSi等の金属ケイ化物(シリサイド)、特に遷移金属ケイ化物、TiO、SnO、GeO、ITO(酸化インジウムスズ)等の導電性金属酸化物、Ti、Al、Cr、Si、若しくはそれらの少なくとも一種を含有する合金、導電性樹脂が挙げられる。また、下地層12は、表面に自然酸化膜を有してよい。自然酸化膜とは、物質を大気中に放置した場合に物質の表面に自然に形成される酸化膜のことをいう。自然酸化膜の例には、Ti、Al、Cr、又はそれらの少なくとも一種を含有する合金の表面に形成される不動態膜、及びSi又はシリサイドの表面に形成されるSiOが含まれる。下地層12は、後述する金属層14の面内均一性の観点から20nm以上、好ましくは100μm以上の厚みを有してよく、製造コストの観点から300nm以下の厚みを有してよい。
下地層12は、絶縁性基材11の表面(主面)全体に形成されてよい。下地層12は任意の方法で形成してよい。例えば、スパッタリング法等のPVD(物理気相蒸着)法、CVD(化学気相蒸着)法、無電解めっき法により下地層12を形成することができる。
次に、図3に示すように、第1の領域R1において、下地層12の表面にシード層13を形成する。第1の領域R1は、実施形態の製造方法により製造される配線基板の配線パターンに応じた所定パターンを有する領域である。シード層13は、下地層12に電気的に接続される。
シード層13の材料は、導電性であれば特に限定されない。シード層13の材料は、高い耐酸化性を有する貴金属であってよい。例えば、シード層13は、Pt、Pd、Rh、Cu、Ag、Auからなる群より選択される金属の1種以上から形成されてよい。シード層13は、後述する金属層14の面内均一性の観点から20nm以上、好ましくは1000μm以上の厚みを有してよく、製造コストの観点から1μm以下、好ましくは300nm以下の厚みを有してよい。
シード層13は任意の方法で形成してよい。例えば、金属粒子の分散液を第1の領域R1に塗布し、該分散液を固化することにより、シード層13を形成することができる。金属粒子は、Pt、Pd、Rh、Cu、Ag、Auからなる群より選択される金属の1種以上を含んでよい。微細な配線を形成するために、金属粒子はより小さい粒径を有することが好ましく、例えば1nm以上100nm以下の粒径を有してよい。また、金属粒子は、20nm以下の粒径を有してもよい。それにより金属粒子の融点が低下するため、金属粒子の焼結が容易となる。分散液の分散媒として、加熱により揮発する液体、例えばデカノールを用いることができる。分散液は、添加剤を含んでもよい。添加剤の例として、炭素数が10~17個の直鎖脂肪酸塩が挙げられる。分散液の塗布方法としては、スクリーン印刷、インクジェット印刷、転写印刷等の印刷法が挙げられる。分散液を固化する方法は、特に限定されない。例えば、加熱により分散媒を揮発させるとともに金属粒子を焼結することにより、分散液を固化することができる。
下地層12上にメタルマスクを配置し、真空蒸着、スパッタリング等を行うことにより、第1の領域R1にシード層13を形成してもよい。
なお、第1の領域R1は、連続した1つの領域のみからなってもよいし、複数の独立した領域を含んでもよい。第1の領域R1が複数の独立した領域を含む場合、各独立した領域に形成されたシード層13は、下地層12を介して電気的に接続される。そのため、各独立した領域に形成されたシード層13毎に、後述する金属層を形成するステップ(S4)で使用するための引き出し配線を設ける必要はない。
こうして、絶縁性基材11と、絶縁性基材11上に設けられた、導電性の下地層12と、第1の領域R1において、下地層12上に設けられた導電性のシード層13と、を含む、シード層付き基材10が得られる。なお、シード層付き基材10は、自ら作製する必要はなく、予め作製されたものを購入してもよい。
(2)絶縁層を形成するステップ(S2)
図4に示すように、シード層付き基材10上に、絶縁層16を形成する。絶縁層16は、第1の領域R1においてシード層13を被覆するとともに、第1の領域R1以外の領域である第2の領域R2において下地層12を被覆する。
絶縁層16の材料は、絶縁性であれば特に限定されない。絶縁層16の材料の例として、SiO、Al、TiO、SiOC(炭素添加シリコン酸化物)等の酸化物、ポリシラン、ポリシラザン、エポキシ系樹脂、アクリレート系樹脂が挙げられる。
絶縁層16は、CVD法、スパッタ法、ミストコート法、スピンコート法、ディップコート法等の任意の方法により形成することができる。なお、ミストコート法とは、超音波振動子を用いて金属元素を含む原料溶液を霧化してミストを形成し、該ミストを基板に供給して熱エネルギー等により基板の表面で分解及び/又は反応させることにより、基板の表面に上記金属元素を含む薄膜を形成する方法である。
絶縁層16は、シード層13の厚み以上の厚みを有してよい。特に、絶縁層16は、シード層13の厚みの2.5倍~10倍の厚みを有してよい。それにより、絶縁層16の表面が十分に平坦になり、それにより、後続の絶縁層16をエッチングするステップ(S3)において、シード層13の厚みと実質的に等しい厚みを有する残留絶縁層16aを形成することが容易となる。
(3)絶縁層をエッチングするステップ(S3)
図5に示すように、絶縁層16をエッチングして、第1の領域R1においてシード層13の表面を露出させ、第2の領域R2において下地層12を被覆する残留絶縁層16aを形成する。こうして、絶縁性基材11と、絶縁性基材11上に設けられた導電性の下地層12と、第1の領域R1において下地層12上に設けられた導電性のシード層13と、第2の領域R2において下地層12上に設けられた残留絶縁層16aと、を含む絶縁処理基材15が得られる。
本実施形態においては、パターニング手法を用いることなく、絶縁層16の全面をエッチングする。すなわち、第1の領域R1及び第2の領域R2の両方において、絶縁層16をエッチングする。それにより形成される残留絶縁層16aは、シード層13の厚みと実質的に等しい厚みを有してよい。それにより、シード層13及び残留絶縁層16aの表面の高さが揃うため、後続の金属層を形成するステップ(S4)において、固体電解質膜52を、シード層13及び残留絶縁層16aの表面に、より均一な圧力で圧接することが可能となる。
なお、後述する変形形態でも説明するように、第2の領域R2における絶縁層16のエッチングは必須ではなく、少なくとも第1の領域R1において絶縁層16をエッチングすればよい。
絶縁層16のエッチングは、乾式エッチング法及び湿式エッチング法のいずれで行ってもよい。乾式エッチングの例として、反応性ガスエッチング法、スパッタエッチング法、プラズマエッチング法、反応性イオンエッチング(RIE)法、反応性イオンビームエッチング法、ラジカルエッチング法、光励起エッチング法、レーザーアシストエッチング法、レーザーアブレーションエッチング法が挙げられる。反応性イオンエッチング法には、容量結合型プラズマ(CCP)、誘導結合型プラズマ(ICP)、又はマイクロ波ECR(Electron Cyclotron Resonance)プラズマを用いることができる。湿式エッチングの例として、エッチング液としてHF等の酸又はアルカリの溶液を用いた化学的エッチング、及び化学的エッチングと機械研磨を組み合わせた化学機械研磨(CMP)が挙げられる。
エッチングに用いるエッチングガス又はエッチング液は、絶縁層16の材質に応じて、適宜選択してよい。エッチングガスの例として、CF、SF、ホウ素、塩素、HBr、BClが挙げられる。また、エッチング液として、HF等の酸又はアルカリの溶液等を用いることができる。例えば、絶縁層16が、SiO、SiOC、ポリシラン、又はポリシラザンから形成される場合、CFガスを用いた反応性イオンエッチング法によって絶縁層16をエッチングすることができる。また、絶縁層16がSiO又はSiOCから形成される場合、HF溶液を用いた湿式エッチングにより絶縁層16をエッチングできる。絶縁層16が、エポキシ系樹脂又はアクリレート系樹脂から形成される場合、O/CF混合ガス若しくはO/SF/CHF混合ガスを用いた反応性イオンエッチング法、又はアルカリ溶液を用いた湿式エッチングにより、絶縁層16をエッチングできる。
(4)金属層を形成するステップ(S4)
図6に示すように、シード層13の表面に金属層14を形成する。金属層14の材料としては、Cu、Ni、Ag、Au等が挙げられ、好ましくはCuであってよい。金属層14は、例えば1μm以上100μm以下の厚みを有してよい。
金属層14の形成に用いる成膜装置50の一例を図9及び図10に示す。成膜装置50は、シード層13に対向するように配置される金属製の陽極51と、陽極51とシード層13との間に配置される固体電解質膜52と、陽極51とシード層13との間に電圧を印加する電源部54と、を備える。
成膜装置50は、さらに、ハウジング53を備える。ハウジング53には、陽極51と、金属層14の材料である金属のイオンを含む水溶液(以下、金属溶液という)Lと、が収容される。ハウジング53は、図9に示すように、陽極51と固体電解質膜52との間に、金属溶液Lが収容される空間を画成してよい。この場合、陽極51は、金属層14の材料と同じで且つ金属溶液Lに可溶な材料(例えばCu)から形成された板状部材、又は金属溶液Lに不溶な材料(例えばTi)から形成された板状部材であり得る。陽極51と固体電解質膜52との間に金属溶液Lが収容される成膜装置50では、固体電解質膜52と絶縁処理基材15とを均一な圧力で圧接させることができるため、絶縁処理基材15の全面にわたり、シード層13上に均一に金属層14を形成することが可能である。そのため、このような成膜装置50は、微細な配線パターンの形成に好適である。
なお、図には示していないが、陽極51と固体電解質膜52とが接触していてもよい。この場合、陽極51は、金属溶液Lを透過することができる多孔質体から形成されてよく、陽極51の固体電解質膜52と接触する面の反対の面が、金属溶液Lが収容される空間と接触していてよい。
固体電解質膜52の材料としては、例えばデュポン社製のナフィオン(登録商標)等のフッ素系樹脂、炭化水素系樹脂、ポリアミック酸樹脂、旭硝子社製のセレミオン(CMV、CMD、CMFシリーズ)等の陽イオン交換機能を有する樹脂が挙げられる。固体電解質膜52を金属溶液Lに接触させると、金属溶液Lが固体電解質膜52に浸透する。その結果、固体電解質膜52は、金属溶液Lを内部に含有する。固体電解質膜52は、例えば、約5μm~約200μmの厚みを有してよい。
金属溶液Lは、金属層14の材料である金属(例えばCu、Ni、Ag、Au等)をイオンの状態で含有する。金属溶液Lは、硝酸イオン、リン酸イオン、コハク酸イオン、硫酸イオン、ピロリン酸イオンを含んでよい。金属溶液Lは、金属の塩、例えば、硝酸塩、リン酸塩、コハク酸塩、硫酸塩、ピロリン酸塩等の水溶液であってよい。
さらに、成膜装置50は、ハウジング53の上部に、ハウジング53を昇降させる昇降装置55を備える。昇降装置55は、例えば、油圧式又は空圧式のシリンダ、電動式のアクチュエータ、リニアガイド、モータ等を含んでよい。
ハウジング53は、供給口53aと排出口53bとを有する。供給口53a及び排出口53bは、配管64を介してタンク61に接続される。配管64に接続されたポンプ62によってタンク61から送り出された金属溶液Lは、供給口53aからハウジング53内に流入し、排出口53bを介してハウジング53から排出されてタンク61に戻る。配管64には、排出口53bの下流において、圧力調整弁63が設けられる。圧力調整弁63及びポンプ62によりハウジング53内の金属溶液Lの圧力を調整することができる。
成膜装置50は、さらに、絶縁処理基材15を載置する金属台座56と、該絶縁処理基材15の下地層12又はシード層13と金属台座56とを電気的に接続するための導電部材57と、を備える。導電部材57は、絶縁処理基材15の縁部の一部を覆うとともに、部分的に折り曲げられて金属台座56に接触する金属板であってよい。これにより、金属台座56が導電部材57を介して下地層12及びシード層13に電気的に接続される。なお、導電部材57は、絶縁処理基材15に脱着可能であってよい。
電源部54の負極は、金属台座56を介して下地層12及びシード層13に電気的に接続され、電源部54の正極は、陽極51に電気的に接続される。
以下のようにして、成膜装置50を用いて金属層14を形成することができる。
図9に示すように、金属台座56上の所定位置に絶縁処理基材15及び導電部材57を載置する。次いで、図10に示すように、昇降装置55によりハウジング53を所定高さまで下降させる。
次いで、ポンプ62により金属溶液Lを加圧する。すると、圧力調整弁63によりハウジング53内の金属溶液Lが、所定の圧力に保たれる。また、固体電解質膜52が、絶縁処理基材15の表面、すなわち、シード層13及び残留絶縁層16aの表面に倣うように変形し、シード層13及び残留絶縁層16aの表面に接触する。それにより、固体電解質膜52に含有される金属溶液Lが、シード層13及び残留絶縁層16aの表面に接触する。固体電解質膜52は、ハウジング53内の金属溶液Lの圧力で、シード層13及び残留絶縁層16aの表面に均一に押圧される。
電源部54により、陽極51とシード層13との間に電圧を印加する。すると、シード層13に接触した金属溶液Lに含まれる金属イオンがシード層13の表面で還元され、シード層13の表面に金属が析出する。一方、残留絶縁層16aの表面では金属イオンの還元反応は起こらないため、金属は析出しない。それにより、シード層13の表面に選択的に金属層14が形成される。なお、陽極51とシード層13との間に印加する電圧は、適宜設定してよい。より高い電圧を印加することにより、金属の析出速度を高めることができる。また、金属溶液Lを加熱してもよい。それにより、金属の析出速度を高めることができる。
所定厚みを有する金属層14が形成された後、陽極51とシード層13の間の電圧の印加を停止し、ポンプ62による金属溶液Lの加圧を停止する。そして、ハウジング53を所定高さまで上昇させ(図9参照)、金属層14が形成された絶縁処理基材15を金属台座56から取り外す。
(5)残留絶縁層を除去するステップ(S5)
図7に示すように、残留絶縁層16a(図6参照)を除去する。残留絶縁層16aはエッチングにより除去することができる。
残留絶縁層16aのエッチング法は、乾式及び湿式のいずれであってもよい。乾式エッチングの例として、反応性ガスエッチング法、スパッタエッチング法、プラズマエッチング法、反応性イオンエッチング(RIE)法、反応性イオンビームエッチング法、ラジカルエッチング法、光励起エッチング法、レーザーアシストエッチング法、レーザーアブレーションエッチング法が挙げられる。反応性イオンエッチング法には、容量結合型プラズマ(CCP)、誘導結合型プラズマ(ICP)、又はマイクロ波ECR(Electron Cyclotron Resonance)プラズマを用いることができる。
残留絶縁層16aのエッチングに用いるエッチングガス又はエッチング液は、残留絶縁層16aの材質に応じて、適宜選択してよい。エッチングガスの例として、CF、SF、ホウ素、塩素、HBr、BClが挙げられる。また、エッチング液として、HF等の酸又はアルカリの溶液等を用いることができる。例えば、残留絶縁層16aが、SiO、SiOC、ポリシラン、又はポリシラザンから形成される場合、CFガスを用いた反応性イオンエッチング法によって残留絶縁層16aをエッチングすることができる。また、残留絶縁層16aがSiO又はSiOCから形成される場合、HF溶液を用いた湿式エッチングにより残留絶縁層16aをエッチングできる。残留絶縁層16aが、エポキシ系樹脂又はアクリレート系樹脂から形成される場合、O/CF混合ガス若しくはO/SF/CHF混合ガスを用いた反応性イオンエッチング法、又はアルカリ溶液を用いた湿式エッチングにより、残留絶縁層16aをエッチングできる。
(6)下地層をエッチングするステップ(S6)
次いで、図8に示すように、下地層12(図7参照)をエッチングする。下地層12のエッチングにおいて、金属層14がマスクとなるため、下地層12の、金属層14の下に位置する部分(以下、「適宜、残留下地層」という)12aはエッチングされることなく、絶縁性基材11上に残留する。それにより、絶縁性基材11上に、残留下地層12a、シード層13及び金属層14を含む、所定の配線パターンを有する配線層2が形成される。
下地層12のエッチングに用いるエッチングガス又はエッチング液は、下地層12の材質に応じて、適宜選択してよい。エッチングガスの例として、CF、SF、ホウ素、塩素、HBr、BClが挙げられる。また、エッチング液として、HF等の酸又はアルカリの溶液等を用いることができる。例えば、下地層12が、シリサイドから形成される場合、CFガスを用いた反応性イオンエッチング法によって下地層12をエッチングすることができる。
以上のようにして、絶縁性基材11と、絶縁性基材11上に設けられた所定の配線パターンを有する配線層2と、を備える配線基板1が製造される。
本実施形態では、上述のように、第2の領域R2に残留絶縁層16aを形成することにより、金属層14を形成するステップ(S4)において、シード層13の表面に選択的に金属を析出させることができる。すなわち、所定の配線パターン以外の領域(すなわち、第2の領域R2)に金属が析出することを防止することができる。
本発明者らの鋭意検討によれば、第2の領域R2に残留絶縁層16aを形成しない場合、金属層14を形成するステップ(S4)において、より高い電圧を印加したり、金属溶液Lを加熱したりすると、第2の領域R2における金属が析出するおそれがある。しかし、実施形態に係る製造方法では、第2の領域R2に形成された残留絶縁層16aにより、このような意図しない金属の析出が防止される。そのため、金属層14を形成するステップ(S4)において、高電圧印加及び/又は金属溶液Lの加熱を行うことができ、それにより金属の析出速度を高め、配線基板1の製造時間を短縮することができる。
また、実施形態に係る製造方法では、レジストマスクを用いることなく配線基板1を製造することができるため、配線基板1の製造コストの低減及び製造時間の短縮が可能となる。
以上、本発明の実施形態について詳述したが、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の精神を逸脱しない範囲で、種々の設計変更を行うことができる。
例えば、以下に記載する変形が可能である。なお、以下の変形形態の説明において、上記実施形態とは異なる事項のみを説明し、上記実施形態と同様の事項については説明を省略する。
変形形態に係る配線基板の製造方法では、絶縁層をエッチングするステップ(S3)において、図11に示すように、第1の領域R1の絶縁層16(図4参照)のみをエッチングして、第2の領域R2に残留絶縁層16aを形成する。絶縁層16のエッチングは、レーザー加工により行ってよい。また、絶縁層16をエッチングした後、レーザー照射により、下地層12とシード層13を焼結してもよい。それにより、下地層12とシード層13の密着性を向上させることができる。
次いで、金属層を形成するステップ(S4)において、上記実施形態と同様にして金属層14を形成する。図12に示すように、本変形形態では、残留絶縁層16aの側面16bに沿って金属層14が成長する。すなわち、金属層14の横方向(絶縁性基材11の表面に平行な方向)への成長が、残留絶縁層16aにより抑制される。そのため、形成される金属層14の幅を精度良く制御することがきる。
なお、本変形形態において、絶縁層を形成するステップ(S2)において、接着剤付きの絶縁性フィルムをシード層付き基材10に接着することにより、絶縁層16を形成してもよい。この場合、残留絶縁層16aを除去するステップ(S5)において、フィルム状の残留絶縁層16aを剥離することにより除去することができる。もし金属層14を形成するステップ(S4)において残留絶縁層16a上に析出金属が付着したとしても、残留絶縁層16aを剥離することで、析出金属を残留絶縁層16aとともに剥離し、除去することができる。残留絶縁層16aの剥離後に、下地層12表面の接着剤残渣を除去するために、プラズマ処理を行ってもよい。絶縁層16として用いられる絶縁性フィルムは、例えば、15~20μmの厚さを有してよい。
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
実施例1
絶縁性基材としてガラス基材を用意した。絶縁性基材の表面に、下地層として厚み300nmのWSi層をスパッタリング法により形成した。次に、銅ナノ粒子を含有するインクを用いて、スクリーン印刷法により、下地層の表面に、所定のパターンを有する厚み300nmのCu層をシード層として形成した。それにより、シード層付き基材を得た。
ミストコート法により、シード層付き基材にポリシラザンを塗布して、シード層及び下地層を被覆する絶縁層を形成した。
絶縁層全体をイオンミリング法によりエッチングして、シード層の表面を露出させた。下地層上には絶縁層が残留し、下地層の表面は露出しなかった。
図9、10に示す成膜装置50を用いて、以下の条件にて、シード層の表面に金属層としてCu層を形成した。
陰極:シード層
陽極:無酸素銅線
固体電解質膜:ナフィオン(登録商標)(厚み約8μm)
金属溶液:1.0mol/Lの硫酸銅水溶液
固体電解質膜をシード層に押し当てる圧力:1.0MPa
印加電圧:0.5V
電流密度:0.23mA/cm
次いで、CFガスを用いた容量結合型プラズマエッチングにより、下地層上の残留絶縁層を除去した。さらに、金属層をマスクとして、CFガスを用いた容量結合型プラズマエッチングにより、絶縁性基材の表面が露出するまで下地層をエッチングした。それにより、残留下地層、シード層、及び金属層からなる所定の配線パターンの配線層が、絶縁性基材上に形成された。こうして、絶縁性基材と配線層とを備える配線基板が得られた。
実施例2
ディップコート法によりシード層付き基材にエポキシアクリレートを塗布して、シード層及び下地層を被覆する絶縁層を形成したこと、及びO/CF混合ガスを用いて下地層上の残留絶縁層を除去したこと以外は、実施例1と同様にして配線基板を作製した。
実施例3
CVD法によりシード層付き基材上にSiOを成膜して、シード層及び下地層を被覆する絶縁層を形成したこと以外は、実施例1と同様にして、配線基板を作製した。
実施例4
スパッタ法によりシード層付き基材上にSiOを成膜して、シード層及び下地層を被覆する絶縁層を形成したこと以外は、実施例1と同様にして、配線基板を作製した。
比較例
絶縁層の形成及びエッチングを行わなかったこと以外は実施例1と同様にして、配線基板を作製した。
評価
比較例の配線基板を、マイクロスコープ(倍率:100倍)にて観察した。配線パターンに対応する領域以外の領域において、Cuの析出が観察された。すなわち、配線層に含まれないCu層が観察された。マイクロスコープ像に基づき、配線パターンに対応する領域以外の領域の面積に対する、配線層に含まれないCu層の面積の割合を、画像解析ソフトウェアWinROOFを用いて計算した。Cu層の面積割合は、1%であった。
同様に、実施例1~4の配線基板もマイクロスコープにて観察した。配線パターンに対応する領域以外の領域において、Cuの析出は見られなかった。
1:配線基板、2:配線層、10:シード層付き基材、11:絶縁性基材、12:下地層、R1:第1の領域、R2:第2の領域、13:シード層、14:金属層、15:絶縁処理基材、16:絶縁層、16a:残留絶縁層、50:成膜装置

Claims (3)

  1. 絶縁性基材と、前記絶縁性基材上に設けられた所定の配線パターンを有する配線層と、を備える配線基板の製造方法であって、
    (a)シード層付き基材を準備するステップであって、
    ここで、前記シード層付き基材は、
    前記絶縁性基材と、
    前記絶縁性基材上に設けられた、導電性の下地層と、
    前記配線パターンに応じた所定パターンを有する第1の領域において、前記下地層上に設けられた、導電性のシード層と、を含む、ステップと、
    (b)第1の領域において前記シード層を被覆するとともに、第1の領域以外の領域である第2の領域において前記下地層を被覆する、絶縁層を形成するステップと、
    (c)少なくとも第1の領域の前記絶縁層をエッチングして、前記シード層の表面を露出させるとともに、第2の領域において前記下地層を被覆する残留絶縁層を形成するステップと、
    (d)前記シード層の表面に金属層を形成するステップであって、
    ここで、前記シード層と陽極との間に、金属イオンを含む水溶液を含有する固体電解質膜を配置し、前記固体電解質膜と前記シード層とを圧接させながら、前記陽極と前記シード層との間に電圧を印加する、ステップと、
    (e)前記残留絶縁層を除去するステップと、
    (f)前記下地層をエッチングするステップと、
    をこの順で含む、方法。
  2. 前記ステップ(c)において、
    第1の領域及び第2の領域の前記絶縁層をエッチングする、請求項1に記載の方法。
  3. 前記ステップ(c)において、
    第1の領域の前記絶縁層のみをエッチングする、請求項1に記載の方法。
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