JP2021066921A - 配線基板の製造方法 - Google Patents

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春樹 近藤
連太郎 森
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博 柳本
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圭児 黒田
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Abstract

【課題】下地層上に金属の析出を防止して、金属層間の絶縁性の低下を抑制する配線基板の製造方法を提供する。【解決手段】絶縁性の基材11の表面に、導電性を有する下地層12が設けられ、下地層12の表面に、配線パターンに応じた所定パターンの、金属を含有するシード層13が設けられたシード層付き基材10を準備する。シード層13から露出した露出部分12aの表面に、表面処理により、下地層12より絶縁性が高い被膜20を形成する。陽極51と陰極であるシード層13との間に固体電解質膜52を配置し、固体電解質膜52をシード層13および表面処理した状態の下地層12に押圧し、表面処理した状態の下地層12と陽極との間に電圧を印加して、固体電解質膜52に含有した金属イオンを還元することで、シード層13に金属層14を形成する。被膜20および露出部分12aを基材11から除去する。【選択図】図1

Description

本発明は、配線基板の製造方法に関する。
従来から、配線基板の製造方法では、配線基板のパターンを形成すべく、基材の表面に金属被膜が成膜される。この成膜は、無電解めっき処理等のめっき処理により成膜されるが、めっき処理後に水洗が必要であり、水洗された廃液を処理する必要があった。このような点を鑑みて、例えば、特許文献1に記載の固相電析法による金属被膜の成膜方法が提案されている。
特開2014−185371号公報
特許文献1に記載の成膜方法で、絶縁性の基材の表面に、導電性を有する下地層が設けられ、下地層の表面に、金属を含有するシード層が設けられたシード層付き基材を準備し、シード層上に金属層を形成することが考えられる。
しかしながら、発明者等の実験により、特許文献1に記載の成膜方法では、金属層を形成する際に、シード層上だけでなく、下地層上にも金属が析出される場合があることが明らかとなった。下地層に金属が析出すると、析出した金属の除去し難いため、除去できなかった金属に起因して、金属層間の絶縁性が低下するおそれがある。
本発明は、このような点を鑑みてなされたものであり、本発明として、下地層上に金属の析出を防止して、金属層間の絶縁性の低下を抑制する配線基板の製造方法を提供する。
前記課題を鑑みて、本発明に係る配線基板の製造方法は、絶縁性の基材と、前記絶縁性の基材の表面に設けられた所定の配線パターンの配線層と、を備えた配線基板の製造方法であって、前記絶縁性の基材の表面に、導電性を有する下地層が設けられ、前記下地層の表面に、前記配線パターンに応じた所定パターンの、金属を含有するシード層が設けられたシード層付き基材を準備する準備工程と、前記下地層のうち、前記シード層から露出した露出部分の表面に、表面処理により、前記下地層より絶縁性が高い被膜を形成する被膜形成工程と、陽極と陰極である前記シード層との間に固体電解質膜を配置し、前記固体電解質膜を前記シード層および表面処理した状態の前記下地層に押圧し、前記表面処理した状態の前記下地層と前記陽極との間に電圧を印加して、前記固体電解質膜に含有した金属イオンを還元することで、前記シード層に金属層を形成する金属層形成工程と、前記被膜および前記露出部分を前記基材から除去する除去工程を含むことを特徴とする。
本発明によれば、シード層から露出した露出部分の表面に、表面処理により、下地層より絶縁性が高い被膜を形成するため、表面処理した状態の下地層とシード層とに固体電解質膜を押圧して、シード層上に金属層を形成する際、露出部分の表面の絶縁性が高まる。これにより、シード層の表面に選択的に金属層が形成され、下地層上に金属が析出することを防止することができる。シード層上以外に析出した金属は基板から除去し難いため、結果として、シード層を介さない下地層上への金属の析出を防止することにより、金属層間の絶縁性の低下を抑制することができる。
(a)〜(d)は、第1実施形態に係る配線基板の製造方法を説明する模式的概念図である。 第1実施形態に係る配線基板の製造に用いる成膜装置の構造を示す断面図である。 図2に示す成膜装置において、ハウジングを所定高さまで下降させた状態を示す断面図である。 (a)〜(d)は、第2実施形態に係る配線基板の製造方法を説明する模式的概念図である。 (a)および(b)は、それぞれ、参考比較例1および参考実施例1に係る試験体の平面写真である。 (a)および(b)は、それぞれ、参考比較例2および参考実施例2に係る試験体の平面写真である。
以下に、図1〜図4を参照しながら本発明に係る実施形態について説明する。
<第1実施形態>
図1〜図3を参照して、第1実施形態に係る配線基板1の製造方法について説明する。本実施形態の製造方法は、図1(d)に示すような、絶縁性の基材11と、絶縁性の基材11の表面に設けられた所定の配線パターンの配線層2と、を備えた配線基板1の製造に適用することができ、特に、高密度配線基板の製造に好適である。
1−1.準備工程について
図1(a)に示すように、本実施形態の配線基板1の製造方法では、まず、準備工程を行う。この工程では、基材11の表面に、下地層12が設けられ、下地層12の表面に、金属を含有するシード層13が設けられたシード層付き基材10を準備する。
基材11としては、絶縁性の基材であればよく、例えばガラスエポキシ樹脂からなる基材、ポリイミド樹脂等の可撓性を有するフィルム状の基材、またはガラスからなる基材等を用いることが好ましく、ガラスエポキシ樹脂からなる基材を用いることが特に好ましい。
また、基材11として、樹脂からなる基材を用いる場合、例えばABS樹脂、AS樹脂、AAS樹脂、PS樹脂、EVA樹脂、PMMA樹脂、PBT樹脂、PET樹脂、PPS樹脂、PA樹脂、POM樹脂、PC樹脂、PP樹脂、PE樹脂、PI樹脂(ポリイミド)、エラストマーとPPを含むポリマーアロイ樹脂、変性PPO樹脂、PTFE樹脂、ETFE樹脂等の熱可塑性樹脂、あるいはフェノール樹脂、メラミン樹脂、アミノ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリウレタン、ジアリルフタレート、シリコーン樹脂、アルキド樹脂等の熱硬化性樹脂や、例えばエポキシ樹脂にシアネート樹脂を加えた樹脂や、液晶ポリマー等からなる基材を用いることができる。
下地層12の材料としては、導電性を有するものであれば特に限定されない。しかし、後述の酸化処理の際の酸化膜の形成を考慮して、下地層12の材料としては、ZrSi、WSi、CrSi、もしくはMoSi等の金属珪化物(シリサイド)、Ti、Al、Zr、Cr、Ni、In、もしくはSi等の金属、または、これらの金属の一以上を含む合金が好ましい。下地層12の厚みは、特に限定されるものではないが、金属層14を形成する際に、ムラの発生を防止することを考慮して、20nm以上とするのが好ましく、製造コストを考慮して、300nm以下とするのが好ましい。
本実施形態では、下地層12は、基材11の表面全面に形成されている。下地層12の形成方法は、特に限定されるものではなく、スパッタリング法、CVD(化学蒸着法)もしくはPVD(物理蒸着法)等の蒸着法、または無電解めっき法等を用いてよい。
シード層13の材料としては、耐酸化性の高い貴金属が好ましく、Pt、Pd、Rh、Cu、Ag、およびAuからなる群より選択される金属の1種以上を用いてよい。シード層13の厚みは、特に限定されるものではないが、金属層14を形成する際に、ムラの発生を防止することを考慮して、20nm以上とするのが好ましく、製造コストを考慮して、300nm以下とするのが好ましい。
シード層13は、配線パターンに応じた所定パターンを有し、例えば、互いに離間して配置される複数の独立パターンを有するように配列している(不図示)。シード層13は、下地層12を介して互いに導通しているため、後述する金属層14の形成の際、電圧印加用の引出し配線を各シード層13に形成することなく、複数の独立パターンとなるように、シード層13に金属層14を形成することができる。このため、引出し配線用を形成するスペースが不要となり、より高密度配線パターンを容易に形成可能となる。
シード層13は、所定パターンとなるように、金属粒子を分散したインクを下地層12の表面に配置して固化することにより、形成されている。具体的には、スクリーン印刷、インクジェット印刷、または転写印刷等の印刷法を挙げることができる。シード層13に、メタルマスクを用いてもよい。
1−2.被膜形成工程について
次に、図1(b)に示すように、被膜形成工程を行う。この工程では、下地層12のうち、シード層13から露出した露出部分12aの表面に、表面処理により、下地層12より絶縁性が高い被膜20を形成する。「絶縁性が高い」とは、その材料の抵抗率が高いことを意味する。
本実施形態では、表面処理として、酸化処理を行う。酸化処理としては、Oプラズマ処理、レーザー照射、または炉加熱等の熱処理を挙げることができる。これにより、露出部分12aの表面には、下地層12より絶縁性が高い被膜20として、上述した下地層12の材料由来の酸化膜21が形成される。特に、Oプラズマ処理で、下地層12を酸化させる場合、シード層13に、Pt、Pd、Rh、Ag、およびAuなどを用いることにより、シード層13の表面の酸化を抑えることができる。
具体的には、下地層12が上記材料として列挙した金属珪化物で構成されている場合には、露出部分12aの表面には、SiOの酸化膜21が形成される。一方、下地層12が上記材料として列挙した金属または合金の場合には、露出部分12aの表面には、下地層12より絶縁性が高い被膜20として、TiO、Al、ZrO等の酸化膜21が形成される。
なお、酸化膜21は、露出部分12aのうち、基材11とは反対側に形成されているため(図1(b)参照)、露出部分12aのうち、基材11側の、酸化膜21が形成されていない部分では、下地層12とシード層13との導通性を確保することができる。そして、下地層12を介したシード層13同士の導通性も確保可能となる。
酸化膜21の絶縁抵抗は10kΩ以上であることが好ましい。酸化膜21の厚みは、下地層を300nmとした場合1nm以上250nm以下が好ましく、10nm以上100nm以下がより好ましい。ここで、酸化膜21の厚みが1nm未満の場合には露出部分12aの表面の絶縁性を確保することができず、一方、酸化膜21の厚みが250nmを超える場合には、下地層12の導電性が阻害されることもあり、下地層12とシード層13との導通性を確保することができない。
なお、図1(b)に示す態様では、下地層12よりもシード層13が酸化し難いため、酸化処理の際、シード層13にマスキングを施していない。しかし、下地層12よりもシード層13が酸化しやすい場合には、シード層13に、酸化を防止するメタルマスク等をして、酸化処理を行い、その後、シード層13からメタルマスクを除去してもよい。
1−3.金属層形成工程について
次に、図1(c)に示すように、金属層形成工程を行う。この工程では、図2および図3に示す成膜装置50を用いてシード層13の表面13aに金属層14を形成する。金属層14の材料としては、Cu、Ni、Ag、またはAu等が好ましく、Cuが特に好ましい。金属層14の厚みは、例えば1μm以上100μm以下に形成される。
以下に、まず、図2を参照して、成膜装置50の構造について説明し、図2とともに図3を参照して、成膜装置50を用いた金属層形成について詳細する。
1)成膜装置50の構造について
成膜装置50は、固相電析法で、金属被膜として金属層14を成膜する成膜装置(めっき装置)であり、シード層13の表面13aに金属層14を成膜(形成)する際に用いられる。
図2に示すように、成膜装置50は、金属製の陽極51と、陽極51と陰極であるシード層13との間に配置された固体電解質膜52と、陽極51と下地層12との間に電圧を印加する電源部54と、を備えている。下地層12とシード層13とは導通しているため、陽極51と下地層12との間に電源部54で電圧を印加することにより、成膜時に、陽極51とシード層13との間に電流が流れる。
本実施形態では、成膜装置50は、さらにハウジング53を備えており、ハウジング53には、陽極51と、金属層14の材料である金属(たとえばCu)のイオンを含む溶液L(以下、金属溶液Lという)と、が収容されている。より具体的には、陽極51と固体電解質膜52との間に、金属溶液Lを収容する空間が形成され、収容された金属溶液Lは、一方側から他方側に流れる。
図2の如く、陽極51と固体電解質膜52とが離間して配置されている場合には、陽極51は、板状であり、金属層14と同じ材料(例えばCu)からなる可溶性の陽極、または、金属溶液Lに対して不溶性を有した材料(例えばTi)からなる陽極のいずれであってもよい。一方、図には示していないが、陽極51と固体電解質膜52とが接触している場合には、陽極51として、金属溶液Lが透過し、かつ固体電解質膜52に金属イオンを供給する、多孔質体からなる陽極を用いてもよい。
なお、陽極51を固体電解質膜52に直接押圧すると、固体電解質膜52に対する陽極51の押圧力のばらつきに起因して、析出ムラが生じる可能性がある。そのため、微細配線パターンの作製の際は、図2の如く、陽極51と固体電解質膜52とが離間している構成が好適である。
固体電解質膜52は、上述した金属溶液Lに接触させることにより、金属イオンを内部に含浸(含有)することができ、電圧を印加したときに陰極(シード層13)の表面において金属イオン由来の金属を析出可能であれば、特に限定されるものではない。
固体電解質膜52の厚みは、例えば、約5μm〜約200μmである。固体電解質膜52の材料としては、例えばデュポン社製のナフィオン(登録商標)等のフッ素系樹脂、炭化水素系樹脂、ポリアミック酸樹脂、旭硝子社製のセレミオン(CMV、CMD、CMFシリーズ)等の陽イオン交換機能を有した樹脂を挙げることができる。
金属溶液Lは、金属層14の金属をイオンの状態で含有している液であり、その金属に、Cu、Ni、Ag、またはAu等を挙げることができ、金属溶液Lは、これらの金属を、硝酸、リン酸、コハク酸、硫酸、またはピロリン酸等の酸で溶解(イオン化)したものである。
さらに、本実施形態の成膜装置50は、ハウジング53の上部に、ハウジング53を昇降させる昇降装置55を備えている。昇降装置55は、ハウジング53を昇降させることができるものであればよく、例えば、油圧式または空圧式のシリンダ、電動式のアクチュエータ、リニアガイドおよびモータ等によって構成可能である。
また、ハウジング53には、金属溶液Lが供給される供給口53aと、金属溶液Lが排出される排出口53bとが設けられている。供給口53aおよび排出口53bは、配管を介してタンク61に接続されている。タンク61からポンプ62によって送り出された金属溶液Lは、供給口53aからハウジング53内に流入し、排出口53bから排出されてタンク61に戻る。排出口53bの下流側には圧力調整弁63が設けられており、圧力調整弁63およびポンプ62によりハウジング53内の金属溶液Lを所定の圧力で加圧することが可能である。
このため、成膜時には、金属溶液Lの液圧により、固体電解質膜52がシード層13および表面処理された状態の下地層12を押圧する。これにより、シード層13および表面処理された状態の下地層12を固体電解質膜52で均一に加圧しながら、シード層13に金属層14を成膜することができる。
本実施形態の成膜装置50は、シード層付き基材10を載置する金属台座56を備えており、金属台座56は、電源部54の負極に電気的に接続されている(導通している)。電源部54の正極は、ハウジング53に内蔵された陽極51に電気的に接続されている(導通している)。
具体的には、成膜装置50は、電源部54の負極と下地層12またはシード層13とを導通するように、金属層14の成膜時に、下地層12またはシード層13の一部(具体的には端部)に接触する導電部材57を備えている。導電部材57はシード層付き基材10の縁部の一部を覆う金属板であり、導電部材57の一部は折り曲げられて金属台座56に接触するように形成されている。これにより、金属台座56が導電部材57を介して下地層12と導通する。なお、導電部材57は、シード層付き基材10に脱着可能である。
2)成膜装置50を用いた金属層形成について
金属層形成工程では、図2に示すように、金属台座56上の所定位置にシード層付き基材10および導電部材57を載置する。そして、図3に示すように、昇降装置55によりハウジング53を所定高さまで下降させる。
そして、ポンプ62により金属溶液Lを加圧すると、固体電解質膜52がシード層13および表面処理した状態の下地層12に倣うとともに、圧力調整弁63によりハウジング53内の金属溶液Lは設定された一定の圧力になる。すなわち、固体電解質膜52は、ハウジング53内の金属溶液Lの調圧された液圧で、シード層13の表面13aと、下地層12よりも絶縁性が高い被膜20(本実施形態では、酸化膜21)とを均一に押圧することができる。
この押圧状態で、陽極51と表面処理した状態の下地層12との間に電圧を印加して、固体電解質膜52に含有した金属イオンを還元することで、シード層13の表面13aに金属イオンに由来した金属が析出する。さらに、電圧の印加により、ハウジング53内の金属溶液Lの金属イオンは陰極で還元され続けるので、シード層13の表面13aに金属層14が形成される。
ここで、固体電解質膜52は、シード層13の表面13aと、酸化膜21とに密着しているが、酸化膜21は、下地層12よりも絶縁性が高いため、シード層13の表面13aにのみに電流が流れる。これにより、シード層13の表面13aでは、固体電解質膜52に含有した金属イオン(例えば、Cuイオン)が還元され、金属(例えば、Cu)が析出する。この結果、図1(c)に示すように、シード層13の表面13aに選択的に金属層14が形成され、下地層12への金属析出を防止することができる。
金属層14の形成状態は、図1(c)の如く、シード層13の上面のみを覆うように金属層14が形成された状態でもよい。しかし、金属層14とシード層13との密着性の向上を考慮すると、図には示していないが、上面とともに、その側面の少なくとも一部を覆うように、金属層14が形成された状態がより好ましい。固体電解質膜52がシード層13の上面および側面に倣った状態で金属層14が成膜されるため、成膜条件を調整することで、金属層14は、シード層13の上面とともに、側面の少なくとも一部を覆うように、形成可能となる。
金属層14が所定厚みに形成されると、陽極51と下地層12との間の電圧の印加を停止し、ポンプ62による金属溶液Lの加圧を停止する。そして、ハウジング53を所定高さまで上昇させ(図2参照)、図1(c)の如く金属層14が形成された状態のシード層付き基材10を金属台座56から取り外す。
1−4.除去工程について
次に、図1(d)に示すように、除去工程を行う。この工程では、被膜20(本実施形態では、酸化膜21)および露出部分12aを基材11から除去する。
除去する方法は、特に限定されるものではないが、例えばプラズマエッチング法、スパッタリング法、化学エッチング法等を用いることができる。なお、例えば、下地層12をWSiまたはZrSiによって形成している場合、CFガスを用いたプラズマエッチング法によって酸化膜21および露出部分12aを除去することが好ましい。このような除去により、基材11の表面に、下地層12b、シード層13、および金属層14により構成される配線層2が形成された配線基板1を製造することができる。
本実施形態では、上述の如く、表面処理で形成した酸化膜21により、シード層13の表面13aに選択的に金属層14が形成され、下地層12上に金属が析出することを防止する。シード層13以外に析出した金属は、上述した除去方法では、基材11から除去し難いため、除去できなかった金属が起因した、金属層14間の絶縁性の低下を招く。結果として、下地層12上への金属の析出を防止することにより、金属層14間の絶縁性の低下を抑制することができる。
<第2実施形態>
図4を参照して、第2実施形態に係る配線基板1の製造方法について説明する。第2実施形態の製造方法では、下地層12より絶縁性が高い被膜20として、絶縁膜22a(図4(b)参照)を露出部分12aの表面に形成する点が、第1実施形態の製造方法とは異なる。すなわち、第1実施形態では、下地層12に由来した被膜20として、酸化膜21を形成したが、本実施形態では、下地層12の表面に新たに被膜20を設けた点が相違する。よって、以下に相違点について主に説明し、上述した実施形態と同じ部材および部分に関しては、同じ符号を付してその詳細な説明は省略する。
本実施形態では、図4(a)に示すように、第1実施形態と同様に、シード層付き基材10を準備した後に、図4(b)に示すように、被膜形成工程を行う。この工程では、まず、図4(b)の左側図の如く、準備したシード層付き基材10のシード層13の表面13aにシード層13を保護するメタルマスク31を配置する。
次いで、図4(b)の中央図の如く、絶縁膜22を形成するように、メタルマスク31を配置した状態のシード層付き基材10の表面に、表面処理を施す。本実施形態では、表面処理としては、蒸着法を行い、蒸着法としては、プラズマCVD、熱CVD、またはスパッタリングを利用したPVD等を挙げることができる。表面処理後、図4(b)の右側図の如く、メタルマスク31をシード層13から外す。これにより、シード層13には絶縁膜22は形成されず、露出部分12aの表面のみに、絶縁膜22aが形成される。
このように形成された絶縁膜22aは、露出部分12aの表面上に別途設けられたものであり、すなわち、下地層12の材料を利用して形成されたものではない。絶縁膜22、22aの材料としては、SiO、SiO、Al、TiO、TiO、WO、ZrO、もしくはFe等の酸化物、CaF等のフッ化物、または、Be、HfN、Si、TaN、TiN等の窒化物を挙げることができる。
絶縁膜22aは、露出部分12aの表面上に形成されるため、下地層12の導通性は確保され、下地層12を介したシード層13同士の導通性も確保される。絶縁膜22aの厚みは、1nm以上であり、シード層13の厚みよりも小さいことが好ましい。ここで、絶縁膜22aの厚みが1nm未満の場合には露出部分12aの表面の絶縁性を確保することができず、一方、絶縁膜22aの厚みがシード層13の厚みを超えてしまうと、シード層13の表面13aに固体電解質膜52が均一に接触し難くなることがある。
図4(c)に示す金属層形成工程では、成膜装置50を用いて、絶縁膜22aを形成した状態のシード層付き基材10(図4(b)の右側図)のシード層13の表面13aに、金属層14を形成する。
本実施形態では、金属層14を形成する際、固体電解質膜52は、シード層13の表面13aと、絶縁膜22aとに密着しているが、絶縁膜22aは、下地層12よりも絶縁性が高い。このため、図4(c)に示すように、シード層13の表面13aに金属層14が選択的に形成され、下地層12上への金属析出を防止することができる。
結果として、第1実施形態で説明したように、図4(d)に示す除去工程において、所定の除去方法により、絶縁膜22aと露出部分12aを基材11から除去可能となり、金属層14間の絶縁性の低下を抑制することができる。
ここで、発明者等は、参考実施例1、2および参考比較例1、2の試験体を作製して、成膜装置50(図2、3参照)を用いて金属層を形成した後、金属の析出を評価した。以下に詳述する。
<参考実施例1>
シード層付き基材に対応する試験材として、ガラスからなる基材の表面に、厚み100nmのWSiからなる下地層が設けられ、下地層の表面に厚み100nmのAgからなるシード層が設けられた試験材を準備した。次に、下地層の露出部分の表面に、表面処理として、Oプラズマ処理(処理条件:1500W、20秒)を施した。これにより、下地層より絶縁性が高い被膜として、厚み5nmを有する酸化膜(SiO)が形成された。
次に、金属溶液として硫酸銅水溶液を用いた成膜装置で、シード層の表面に金属層を形成して、参考実施例1の試験体を作製した。具体的には、金属溶液として1.0mol/Lの硫酸銅水溶液を用い、陽極として無酸素銅線を用い、固体電解質膜としてナフィオン(登録商標)(厚み約8μm)を用い、ポンプにより固体電解質膜をシード層に1.0MPaで押圧し、0.5Vの印加電圧、0.23mA/cmの電流密度で金属層を形成した。また、金属層14の厚みを5μmに形成した。
<参考実施例2>
下地層がZrSi層であった点以外は、参考実施例1と同様にして、参考実施例2の試験体を作製した。なお、形成された酸化膜の厚みは7nmであった。
<参考比較例1、2>
露出部分にOプラズマ処理を施さなかった点以外は、参考実施例1および参考実施例2と同様にして、参考比較例1および参考比較例2の試験体をそれぞれ作製した。
[結果]
参考実施例1、2および参考比較例1、2の試験体の表面を顕微鏡で観察した。顕微鏡写真を図5および図6に示す。図5(a)および図6(a)からわかるように、露出部分にOプラズマ処理による酸化膜を形成していない参考比較例1、2では、シード層上にCuが析出されるとともに、露出部分(下地層)上にもCuの析出が認められた。一方、図5(b)および図6(b)からわかるように、露出部分の表面にOプラズマ処理による酸化膜を形成した参考実施例1、2では、シード層上にはCuが析出され、露出部分(下地層)上にはCuの析出は認められなかった。
[考察]
参考比較例1、2のシード層の上にCuが析出した(金属層が形成された)のは、下地層(WSi層およびZrSi層)の表面には、大気中の自然酸化に起因した自然酸化膜(SiO)が形成されていたからであると考えられる。しかし、電圧を高くする等の成膜速度を上げた成膜条件によっては、表面処理をせずに形成された自然酸化膜では、露出部分の絶縁性が不十分であり、下地層上に金属が析出すると考えられる。
一方、参考実施例1、2では、下地層の露出部分を表面処理(酸化処理)することより、下地層より絶縁性が高い被膜を形成した。これにより、露出部分の表面の絶縁性が高まるため、露出部分への金属イオン由来の金属の析出を防止して、シード層に選択的にCuが析出し、金属層が形成されたと考えられる。結果として、下地層上に析出した金属はエッチング等による除去が難しいことから、下地層上への金属の析出を防止することにより、金属層間の絶縁性の低下を抑制することができるといえる。
以上、本発明の一実施形態について詳述したが、本発明は、前記の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の精神を逸脱しない範囲で、種々の設計変更を行うことができるものである。
1:配線基板、2:配線層、10:シード層付き基材、11:基材、12:下地層、12a:露出部分、13:シード層、14:金属層、20:被膜

Claims (1)

  1. 絶縁性の基材と、前記絶縁性の基材の表面に設けられた所定の配線パターンの配線層と、を備えた配線基板の製造方法であって、
    前記絶縁性の基材の表面に、導電性を有する下地層が設けられ、前記下地層の表面に、前記配線パターンに応じた所定パターンの、金属を含有するシード層が設けられたシード層付き基材を準備する準備工程と、
    前記下地層のうち、前記シード層から露出した露出部分の表面に、表面処理により、前記下地層より絶縁性が高い被膜を形成する被膜形成工程と、
    陽極と陰極である前記シード層との間に固体電解質膜を配置し、前記固体電解質膜を前記シード層および表面処理した状態の前記下地層に押圧し、前記表面処理した状態の前記下地層と前記陽極との間に電圧を印加して、前記固体電解質膜に含有した金属イオンを還元することで、前記シード層に金属層を形成する金属層形成工程と、
    前記被膜および前記露出部分を前記基材から除去する除去工程を含むことを特徴とする配線基板の製造方法。
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JP2022007054A (ja) * 2020-06-25 2022-01-13 トヨタ自動車株式会社 配線基板の製造方法
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