JP7420073B2 - アニリン誘導体 - Google Patents

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Description

本発明は、アニリン誘導体に関する。
有機エレクトロルミネッセンス(以下、有機ELという)素子に用いられる電荷輸送性薄膜の着色は、有機EL素子の色純度および色再現性を低下させる等の事情から、近年、有機EL素子用の電荷輸送性薄膜は、可視領域での透過率が高く、高透明性を有することが望まれている(特許文献1参照)。
この点に鑑み、本発明者らは、可視領域での着色が抑制された、透明性に優れた電荷輸送性薄膜を与えるウェットプロセス用材料を既に見出している(特許文献1,2参照)。
しかしながら、有機ELディスプレイの大面積化が進められている現在、ウェットプロセスを用いた有機ELディスプレイの実用化に向けてその開発が精力的に行われており、高透明性の電荷輸送性薄膜を与えるウェットプロセス用材料は常に求められている。
国際公開第2013/042623号 国際公開第2008/032616号
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、有機溶媒への良好な溶解性を示すとともに、透明性の良好な薄膜を与え、この薄膜を正孔注入層等に適用した場合に優れた特性を有する有機EL素子を実現できるアニリン誘導体を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意検討を重ねた結果、分子内にメタフェニレンの繰り返し単位を有する所定のアニリン誘導体が、有機溶媒への良好な溶解性を示すとともに、消衰係数(k)が低く透明性の良好な薄膜を与え、この薄膜を正孔注入層等に適用した場合に優れた特性を有する有機EL素子を与えることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は、
1. 式(1)で表されることを特徴とするアニリン誘導体、
Figure 0007420073000001
〔式中、Ph1は、それぞれ独立して、式(P1)または式(P2)で表される基を表すが、少なくとも1つは式(P1)で表される基であり、
Figure 0007420073000002
(式中、R1~R4は、それぞれ独立して、水素原子、シアノ基、またはシアノ基で置換されていてもよい、炭素数1~20のアルキル基、炭素数2~20のアルケニル基、炭素数2~20のアルキニル基、炭素数6~20のアリール基もしくは炭素数2~20のヘテロアリール基を表す。)
Ar0は、それぞれ独立して、式(B0)で表される基を表し、
Figure 0007420073000003
(式中、ArBは、単結合またはE基以外の任意の置換基(ピリジン環を含むものを除く。以下同様。)で置換されていてもよいフェニレン基を表し、ArBが前記フェニレン基の場合、ArGまたはその他の芳香環と結合して形成される縮合環の一部であってもよく、
ArGは、それぞれ独立して、E基以外の任意の置換基で置換されていてもよい、炭素数6~20のアリール基または炭素数2~20のヘテロアリール基を表し、
Eは、単結合、-C(Ra)2-、-NRb-、-NH-、N、-O-または-S-を表し、
aは、それぞれ独立して、水素原子またはヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数1~20の1価炭化水素基を表し、Raが前記1価炭化水素基の場合、Ra同士が互いに結合して炭素原子とともに環を形成していてもよく、Rbは、ヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数1~20の1価炭化水素基を表し、
ArBが、単結合の場合、Eは単結合、かつ、ArGはE基以外の任意の置換基で置換されていてもよいナフチル基であり、
Eが、-C(Ra)2-基の場合、ArBおよびArGは、互いに結合して縮合環を形成しており、それ以外の場合、ArBおよびArGは、互いに結合して縮合環を形成していてもよく、
Gは、Eに結合するArG基の数であり、EがNの場合は2を、それ以外の場合は1を表し、ArG基が2個存在する場合、それらが互いに結合して窒素原子とともに縮合環を形成していてもよい。)
kは、1以上の整数を表す。〕
2. 前記Ar0が、それぞれ独立して、式(B1)~(B16)のいずれかで表される基である1のアニリン誘導体、
Figure 0007420073000004
(式中、R5~R25、R28~R49およびR51~R194は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、またはハロゲン原子、ニトロ基もしくはシアノ基で置換されていてもよい、ジフェニルアミノ基、炭素数1~20のアルキル基、炭素数2~20のアルケニル基、炭素数2~20のアルキニル基、炭素数6~20のアリール基もしくは炭素数2~20のヘテロアリール基を表し、R26およびR27は、それぞれ独立して、水素原子、Z1で置換されていてもよい炭素数1~20のアルキル基、Z1で置換されていてもよい炭素数2~20のアルケニル基、Z1で置換されていてもよい炭素数2~20のアルキニル基、Z2で置換されていてもよい炭素数6~20のアリール基もしくはZ2で置換されていてもよい炭素数2~20のヘテロアリール基を表し、R50は、水素原子、Z1で置換されていてもよい炭素数1~20のアルキル基、Z1で置換されていてもよい炭素数2~20のアルケニル基、Z1で置換されていてもよい炭素数2~20のアルキニル基、Z2で置換されていてもよい炭素数6~20のアリール基もしくはZ2で置換されていてもよい炭素数2~20のヘテロアリール基を表し、Z1は、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、ジフェニルアミノ基、Z3で置換されていてもよい炭素数6~20のアリール基またはZ3で置換されていてもよい炭素数2~20のヘテロアリール基を表し、Z2は、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、ジフェニルアミノ基、Z3で置換されていてもよい炭素数1~20のアルキル基、Z3で置換されていてもよい炭素数2~20のアルケニル基またはZ3で置換されていてもよい炭素数2~20のアルキニル基を表し、Z3は、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基またはジフェニルアミノ基を表し、Ar4は、それぞれ独立して、ジ(炭素数6~20のアリール基)アミノ基で置換されていてもよい炭素数6~20のアリール基を表す。)
3. 式(1-1)~(1-4)のいずれかで表される2のアニリン誘導体、
Figure 0007420073000005
(Ar1~Ar3は、それぞれ異なって前記式(B1)~(B16)のいずれかで表される基であり、各式のそれぞれにおいて、Ar1は、すべて同一の基を表し、Ar2は、すべて同一の基を表し、Ar3は、すべて同一の基を表す。)
4. 前記式(P1)で表される基の数(nm)と前記式(P2)で表される基の数(np)が、0.5≦nm/(nm+np)を満たす1~3のいずれかのアニリン誘導体、
5. 式(4)
Figure 0007420073000006
(式中、Ph1およびkは、前記と同じ意味を表す。)
で表されるアミン化合物と、式(5)
Figure 0007420073000007
(式中、Xは、ハロゲン原子または擬ハロゲン基を表し、Ar0は、前記と同じ意味を表す。)
で表されるアリール化合物とを、触媒存在下で反応させる1のアニリン誘導体の製造方法
を提供する。
本発明のアニリン誘導体は有機溶媒に溶けやすく、これを単独でまたはこれをドーパント物質とともに有機溶媒へ溶解させて容易に電荷輸送性ワニスを調製することができる。
また、本発明のアニリン誘導体は、消衰係数(k)が低く透明性に優れる高電荷輸送性の薄膜を与え、この薄膜は、有機EL素子をはじめとした電子素子用薄膜として好適に用いることができる。
以下、本発明についてさらに詳しく説明する。
本発明のアニリン誘導体は、式(1)で表される。
Figure 0007420073000008
式(1)において、Ph1は、それぞれ独立して、式(P1)または式(P2)で表される基を表すが、後述のとおり、(k+1)個のPh1基の少なくとも1つは、式(P1)で表される基である。
Figure 0007420073000009
ここで、R1~R4は、それぞれ独立して、水素原子、シアノ基、またはシアノ基で置換されていてもよい、炭素数1~20のアルキル基、炭素数2~20のアルケニル基、炭素数2~20のアルキニル基、炭素数6~20のアリール基もしくは炭素数2~20のヘテロアリール基を表す。
炭素数1~20のアルキル基としては、直鎖状、分岐鎖状、環状のいずれでもよく、例えば、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、s-ブチル、t-ブチル、n-ペンチル、n-ヘキシル、n-ヘプチル、n-オクチル、n-ノニル、n-デシル基等の炭素数1~20の直鎖または分岐鎖状アルキル基;シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、シクロノニル、シクロデシル、ビシクロブチル、ビシクロペンチル、ビシクロヘキシル、ビシクロヘプチル、ビシクロオクチル、ビシクロノニル、ビシクロデシル基等の炭素数3~20の環状アルキル基などが挙げられる。
炭素数2~20のアルケニル基の具体例としては、エテニル、n-1-プロペニル、n-2-プロペニル、1-メチルエテニル、n-1-ブテニル、n-2-ブテニル、n-3-ブテニル、2-メチル-1-プロペニル、2-メチル-2-プロペニル、1-エチルエテニル、1-メチル-1-プロペニル、1-メチル-2-プロペニル、n-1-ペンテニル、n-1-デセニル、n-1-エイコセニル基等が挙げられる。
炭素数2~20のアルキニル基の具体例としては、エチニル、n-1-プロピニル、n-2-プロピニル、n-1-ブチニル、n-2-ブチニル、n-3-ブチニル、1-メチル-2-プロピニル、n-1-ペンチニル、n-2-ペンチニル、n-3-ペンチニル、n-4-ペンチニル、1-メチル-n-ブチニル、2-メチル-n-ブチニル、3-メチル-n-ブチニル、1,1-ジメチル-n-プロピニル、n-1-ヘキシニル、n-1-デシニル、n-1-ペンタデシニル、n-1-エイコシニル基等が挙げられる。
炭素数6~20のアリール基の具体例としては、フェニル、1-ナフチル、2-ナフチル、1-アントリル、2-アントリル、9-アントリル、1-フェナントリル、2-フェナントリル、3-フェナントリル、4-フェナントリル、9-フェナントリル基等が挙げられる。
炭素数2~20のヘテロアリール基の具体例としては、2-チエニル、3-チエニル、2-フラニル、3-フラニル、2-オキサゾリル、4-オキサゾリル、5-オキサゾリル、3-イソオキサゾリル、4-イソオキサゾリル、5-イソオキサゾリル基等の含酸素ヘテロアリール基;2-チアゾリル、4-チアゾリル、5-チアゾリル、3-イソチアゾリル、4-イソチアゾリル、5-イソチアゾリル基等の含硫黄ヘテロアリール基;2-イミダゾリル、4-イミダゾリル、2-ピリジル、3-ピリジル、4-ピリジル、2-ピラジル、3-ピラジル、5-ピラジル、6-ピラジル、2-ピリミジル、4-ピリミジル、5-ピリミジル、6-ピリミジル、3-ピリダジル、4-ピリダジル、5-ピリダジル、6-ピリダジル、1,2,3-トリアジン-4-イル、1,2,3-トリアジン-5-イル、1,2,4-トリアジン-3-イル、1,2,4-トリアジン-5-イル、1,2,4-トリアジン-6-イル、1,3,5-トリアジン-2-イル、1,2,4,5-テトラジン-3-イル、1,2,3,4-テトラジン-5-イル、2-キノリニル、3-キノリニル、4-キノリニル、5-キノリニル、6-キノリニル、7-キノリニル、8-キノリニル、1-イソキノリニル、3-イソキノリニル、4-イソキノリニル、5-イソキノリニル、6-イソキノリニル、7-イソキノリニル、8-イソキノリニル、2-キノキサニル、5-キノキサニル、6-キノキサニル、2-キナゾリニル、4-キナゾリニル、5-キナゾリニル、6-キナゾリニル、7-キナゾリニル、8-キナゾリニル、3-シンノリニル、4-シンノリニル、5-シンノリニル、6-シンノリニル、7-シンノリニル、8-シンノリニル基等の含窒素ヘテロアリール基などが挙げられる。
これらの中でも、R1~R4としては、水素原子、シアノ基、シアノ基で置換されていてもよい炭素数1~20のアルキル基、シアノ基で置換されていてもよい炭素数6~20のアリール基、シアノ基で置換されていてもよい炭素数2~20のヘテロアリール基が好ましく、水素原子、シアノ基、シアノ基で置換されていてもよい炭素数1~10のアルキル基、シアノ基で置換されていてもよいフェニル基がより好ましく、水素原子、メチル基がより一層好ましく、水素原子が最適である。
すなわち、式(P1)で表される基は、無置換のメタフェニレン基(ベンゼン-1,3-ジイル基)が最適であり、式(P2)で表される基は、無置換のパラフェニレン基(ベンゼン-1,4-ジイル基)が最適である。
上記式(1)において、Ar0は、それぞれ独立して、式(B0)で表される基を表す。
Figure 0007420073000010
式中、ArBは、単結合またはE基以外の任意の置換基(ピリジン環を含むものを除く。以下同様。)で置換されていてもよいフェニレン基を表し、ArBが上記フェニレン基の場合、ArGまたはその他の芳香環と結合して形成される縮合環の一部であってもよい。
E基以外の任意の置換基で置換されていてもよいフェニレン基中のフェニレン基としては、オルトフェニレン基、メタフェニレン基、パラフェニレン基が挙げられるが、アニリン誘導体の合成の容易性の観点から、メタフェニレン基、パラフェニレン基が好ましく、さらにアニリン誘導体の溶解性を考慮すると、パラフェニレン基がより好ましい。
ArGは、それぞれ独立して、E基以外の任意の置換基で置換されていてもよい、炭素数6~20のアリール基または炭素数2~20のヘテロアリール基を表す。これらのアリール基およびヘテロアリール基の具体例としては、上記例示したものと同じものが挙げられるが、それらに限定されない。
中でも、ArGとしては、E基以外の置換基で置換されていてもよい、炭素数6~10のアリール基または炭素数2~10のヘテロアリール基が好ましく、E基以外の置換基で置換されていてもよい炭素数6~10のアリール基がより好ましく、E基以外の置換基で置換されていてもよい、フェニル基、1-ナフチル基、2-ナフチル基がより一層好ましい。
ArBおよびArGに置換するE基以外の置換基としては、ピリジン環を含むもの以外であれば特に限定されるものではないが、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、ジフェニルアミノ基、炭素数1~20のアルキル基、炭素数2~20のアルケニル基、炭素数2~20のアルキニル基、炭素数6~20のアリール基や、さらにこれらの基で置換された、ジフェニルアミノ基、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基;アリール基で置換された、炭素数1~20のアルキル基、炭素数2~20のアルケニル基、炭素数2~20のアルキニル基、炭素数6~20のアリール基などが挙げられる。アルキル基、アルケニル基、アルキニル基およびアリール基の具体例としては、上記で例示したものと同じものが挙げられるが、それらに限定されない。
ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられる。
Eは、単結合、-C(Ra)2-、-NRb-、-NH-、N、-O-または-S-を表す。
ここで、Raは、それぞれ独立して、水素原子またはヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数1~20の1価炭化水素基を表し、Raが上記1価炭化水素基の場合、Ra同士が互いに結合して炭素原子とともに環を形成していてもよい。Rbは、ヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数1~20の1価炭化水素基を表す。ヘテロ原子としては、窒素原子、酸素原子、硫黄原子等が挙げられる。
上記ヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数1~20の1価炭化水素基としては、炭素数1~20のアルキル基、炭素数2~20のアルケニル基、炭素数2~20のアルキニル基、炭素数6~20のアリール基、炭素数2~20のヘテロアリール基等が挙げられ、これらの具体例としては、上記で例示したものと同様のものが挙げられる。なお、これらの基はさらに置換基で置換されていてもよい。
そのような置換基としては、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、ジフェニルアミノ基、炭素数1~20のアルキル基、炭素数2~20のアルケニル基、炭素数2~20のアルキニル基、炭素数6~20のアリール基、炭素数2~20のヘテロアリール基、これらの基がさらに置換されたものが挙げられる。
なお、ArBが、単結合の場合、Eも単結合で、かつ、ArGはE基以外の任意の置換基で置換されていてもよいナフチル基である。このようなナフチル基としては、1-ナフチル基、2-ナフチル基が挙げられる。
また、Eが、-C(Ra)2-基の場合、ArBおよびArGは、互いに結合して縮合環を形成しており、それ以外の場合、ArBおよびArGは、互いに結合して縮合環を形成していてもよい。
Gは、Eに結合するArG基の数であり、EがNの場合は2を、それ以外の場合は1を表し、ArG基が2個存在する場合、それらが互いに結合して窒素原子とともに縮合環を形成していてもよい。
kは、1以上の整数を表すが、アニリン誘導体の溶解性の観点から、好ましくは10以下、より好ましくは5以下、より一層好ましくは4以下、さらに好ましくは3以下である。
上述のとおり、本発明のアニリン誘導体は、その直鎖に少なくとも1つのメタフェニレン構造を含むものであり、式(1)中の(k+1)個のPh1基の少なくとも1つは、式(P1)で表される基を表す。
ここで、式(1)中の式(P1)で表される基の数(nm)と式(P2)で表される基の数(np)は、nm+np=k+1を満たすが、アニリン誘導体の溶解性や得られる電荷輸送性薄膜の電荷輸送性や透明性等のバランスを考慮すると、nmおよびnpは、好ましくは0.5≦nm/(nm+np)を、より好ましくは0.6≦nm/(nm+np)を、より一層好ましくは0.8≦nm/(nm+np)を、さらに好ましくは0.9≦nm/(nm+np)を満たし、最も好ましくは1=nm/(nm+np)を満たす。
本発明の好ましい一態様においては、式(1)におけるAr0は、それぞれ独立して、式(B1)~(B16)のいずれかで表される基を表すが、特に、式(B1′)~(B16′-5)のいずれかで表される基が好ましい。
Figure 0007420073000011
Figure 0007420073000012
Figure 0007420073000013
ここで、R5~R25、R28~R49およびR51~R194は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、またはハロゲン原子、ニトロ基もしくはシアノ基で置換されていてもよい、ジフェニルアミノ基、炭素数1~20のアルキル基、炭素数2~20のアルケニル基、炭素数2~20のアルキニル基、炭素数6~20のアリール基もしくは炭素数2~20のヘテロアリール基を表し、R26およびR27は、それぞれ独立して、水素原子、Z1で置換されていてもよい炭素数1~20のアルキル基、Z1で置換されていてもよい炭素数2~20のアルケニル基、Z1で置換されていてもよい炭素数2~20のアルキニル基、Z2で置換されていてもよい炭素数6~20のアリール基もしくはZ2で置換されていてもよい炭素数2~20のヘテロアリール基を表し、R50は、水素原子、Z1で置換されていてもよい炭素数1~20のアルキル基、Z1で置換されていてもよい炭素数2~20のアルケニル基、Z1で置換されていてもよい炭素数2~20のアルキニル基、Z2で置換されていてもよい炭素数6~20のアリール基もしくはZ2で置換されていてもよい炭素数2~20のヘテロアリール基を表し、Z1は、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、ジフェニルアミノ基、Z3で置換されていてもよい炭素数6~20のアリール基またはZ3で置換されていてもよい炭素数2~20のヘテロアリール基を表し、Z2は、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、ジフェニルアミノ基、Z3で置換されていてもよい炭素数1~20のアルキル基、Z3で置換されていてもよい炭素数2~20のアルケニル基またはZ3で置換されていてもよい炭素数2~20のアルキニル基を表し、Z3は、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基またはジフェニルアミノ基を表し、これらハロゲン原子、炭素数1~20のアルキル基、炭素数2~20のアルケニル基、炭素数2~20のアルキニル基、炭素数6~20のアリール基および炭素数2~20のヘテロアリール基の具体例としては、上記で説明したものと同様のものが挙げられる。
特に、R5~R25、R28~R49およびR51~R194としては、水素原子、フッ素原子、シアノ基、フッ素原子で置換されていてもよいジフェニルアミノ基、フッ素原子で置換されていてもよい炭素数1~20のアルキル基、フッ素原子で置換されていてもよい炭素数6~20のアリール基、フッ素原子で置換されていてもよい炭素数2~20のヘテロアリール基が好ましく、水素原子、フッ素原子、シアノ基、フッ素原子で置換されていてもよい炭素数1~10のアルキル基、フッ素原子で置換されていてもよいフェニル基がより好ましく、水素原子、フッ素原子、メチル基、トリフルオロメチル基がより一層好ましく、水素原子が最適である。
26およびR27としては、Z2で置換されていてもよい炭素数6~14のアリール基、Z2で置換されていてもよい炭素数2~14のヘテロアリール基が好ましく、Z2で置換されていてもよい炭素数6~14のアリール基がより好ましく、Z2で置換されていてもよいフェニル基、Z2で置換されていてもよい1-ナフチル基、Z2で置換されていてもよい2-ナフチル基がより一層好ましい。
50としては、水素原子、Z2で置換されていてもよい炭素数6~20のアリール基が好ましく、水素原子、Z2で置換されていてもよい炭素数6~14のアリール基がより好ましく、水素原子、Z2で置換されていてもよいフェニル基、Z2で置換されていてもよい1-ナフチル基、Z2で置換されていてもよい2-ナフチル基がより一層好ましい。
また、Ar4は、それぞれ独立して、ジ(炭素数6~20のアリール基)アミノ基で置換されていてもよい炭素数6~20のアリール基を表す。
炭素数6~20のアリール基の具体例としては、上記で説明した基と同様のものが挙げられ、ジ(炭素数6~20のアリール基)アミノ基の具体例としては、ジフェニルアミノ、1-ナフチルフェニルアミノ、ジ(1-ナフチル)アミノ、1-ナフチル-2-ナフチルアミノ、ジ(2-ナフチル)アミノ基等が挙げられる。
Ar4としては、フェニル基、1-ナフチル基、2-ナフチル基、1-アントリル基、2-アントリル基、9-アントリル基、1-フェナントリル基、2-フェナントリル基、3-フェナントリル基、4-フェナントリル基、9-フェナントリル基、p-(ジフェニルアミノ)フェニル基、p-(1-ナフチルフェニルアミノ)フェニル基、p-(ジ(1-ナフチル)アミノ)フェニル基、p-(1-ナフチル-2-ナフチルアミノ)フェニル基、p-(ジ(2-ナフチル)アミノ)フェニル基が好ましく、p-(ジフェニルアミノ)フェニル基がより好ましい。
以下、Ar0として好適な基の具体例を挙げるが、これらに限定されるわけではない。
Figure 0007420073000014
(式中、DPAは、ジフェニルアミノ基を表す。)
Figure 0007420073000015
Figure 0007420073000016
Figure 0007420073000017
(式中、R50は、上記と同じ意味を表す。)
Figure 0007420073000018
Figure 0007420073000019
Figure 0007420073000020
Figure 0007420073000021
Figure 0007420073000022
本発明において、R50として好適な基の具体例としては、以下の基が挙げられるが、これらに限定されるわけではない。
Figure 0007420073000023
Figure 0007420073000024
Figure 0007420073000025
Figure 0007420073000026
Figure 0007420073000027
Figure 0007420073000028
本発明において、上記アルキル基、アルケニル基およびアルキニル基の炭素数は、好ましくは10以下であり、より好ましくは6以下であり、より一層好ましくは4以下である。
また、上記アリール基およびヘテロアリール基の炭素数は、好ましくは14以下であり、より好ましくは10以下であり、より一層好ましくは6以下である。
本発明において、合成の容易性を考慮すると、式(1)で表されるアニリン誘導体は、式(1-1)~(1-4)のいずれかで表されるアニリン誘導体が好ましい。
Figure 0007420073000029
(Ar1~Ar3は、それぞれ異なって上記式(B1)~(B16)のいずれかで表される基であり、各式のそれぞれにおいて、Ar1は、すべて同一の基を表し、Ar2は、すべて同一の基を表し、Ar3は、すべて同一の基を表す。)
本発明の式(1)で表されるアニリン誘導体は、式(4)で表されるアミン化合物と、式(5)で表されるアリール化合物とを、触媒存在下で反応させて製造できる。
Figure 0007420073000030
(式中、Xは、ハロゲン原子または擬ハロゲン基を表し、Ar0、Ph1およびkは、上記と同じ意味を表す。)
ハロゲン原子としては、上記と同様のものが挙げられる。
擬ハロゲン基としては、メタンスルホニルオキシ、トリフルオロメタンスルホニルオキシ、ノナフルオロブタンスルホニルオキシ基等の(フルオロ)アルキルスルホニルオキシ基;ベンゼンスルホニルオキシ、トルエンスルホニルオキシ基等の芳香族スルホニルオキシ基などが挙げられる。
式(4)で表されるアミン化合物と、式(5)で表されるアリール化合物との仕込み比は、アミン化合物の全NH基の物質量に対し、アリール化合物を当量以上とすることができるが、1~1.2当量程度が好適である。
上記反応に用いられる触媒としては、例えば、塩化銅、臭化銅、ヨウ化銅等の銅触媒;Pd(PPh34(テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム)、Pd(PPh32Cl2(ビス(トリフェニルホスフィン)ジクロロパラジウム)、Pd(dba)2(ビス(ジベンジリデンアセトン)パラジウム)、Pd2(dba)3(トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム)、Pd(P-t-Bu32(ビス(トリ(t-ブチルホスフィン))パラジウム)、Pd(OAc)2(酢酸パラジウム)等のパラジウム触媒などが挙げられる。これらの触媒は、単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。また、これらの触媒は、公知の適切な配位子とともに使用してもよい。
このような配位子としては、トリフェニルホスフィン、トリ-o-トリルホスフィン、ジフェニルメチルホスフィン、フェニルジメチルホスフィン、トリメチルホスフィン、トリエチルホスフィン、トリブチルホスフィン、トリ-t-ブチルホスフィン、ジ-t-ブチル(フェニル)ホスフィン、ジ-t-ブチル(4-ジメチルアミノフェニル)ホスフィン、1,2-ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン、1,3-ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン、1,4-ビス(ジフェニルホスフィノ)ブタン、1,1’-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン等の3級ホスフィン、トリメチルホスファイト、トリエチルホスファイト、トリフェニルホスファイト等の3級ホスファイトなどが挙げられる。
触媒の使用量は、式(5)で表されるアリール化合物1molに対して、0.1~0.2mol程度とすることができるが、0.15mol程度が好適である。
また、配位子を用いる場合、その使用量は、使用する金属錯体に対して、0.1~5当量とすることができるが、1~2当量が好適である。
原料化合物が全て固体である場合あるいは目的とするアニリン誘導体を効率よく得る観点から、上記各反応は溶媒中で行う。溶媒を使用する場合、その種類は、反応に悪影響を及ぼさないものであれば特に制限はない。具体例としては、脂肪族炭化水素類(ペンタン、n-ヘキサン、n-オクタン、n-デカン、デカリン等)、ハロゲン化脂肪族炭化水素類(クロロホルム、ジクロロメタン、ジクロロエタン、四塩化炭素等)、芳香族炭化水素類(ベンゼン、ニトロベンゼン、トルエン、o-キシレン、m-キシレン、p-キシレン、メシチレン等)、ハロゲン化芳香族炭化水素類(クロロベンゼン、ブロモベンゼン、o-ジクロロベンゼン、m-ジクロロベンゼン、p-ジクロロベンゼン等)、エーテル類(ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、t-ブチルメチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、1,2-ジメトキシエタン、1,2-ジエトキシエタン等)、ケトン類(アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジ-n-ブチルケトン、シクロヘキサノン等)、アミド類(N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド等)、ラクタムおよびラクトン類(N-メチルピロリドン、γ-ブチロラクトン等)、尿素類(N,N-ジメチルイミダゾリジノン、テトラメチルウレア等)、スルホキシド類(ジメチルスルホキシド、スルホラン等)、ニトリル類(アセトニトリル、プロピオニトリル、ブチロニトリル等)などが挙げられ、これらの溶媒は単独で用いても、2種以上混合して用いてもよい。
反応温度は、用いる溶媒の融点から沸点までの範囲で適宜設定すればよいが、特に、0~200℃程度が好ましく、20~150℃がより好ましい。
反応終了後は、常法にしたがって後処理をし、目的とするアニリン誘導体を得ることができる。
上記式(1-1)で表されるアニリン誘導体は、以下の方法によっても、製造することができる。
まず、式(1-1-4)で表されるジニトロ化合物と、式(6)で表されるアリール化合物とを反応させて、式(1-1-3)で表されるジニトロ化合物を得る。
Figure 0007420073000031
(式中、Ar1、Ph1、Xおよびkは、上記と同じ意味を表す。)
式(1-1-4)で表されるジニトロ化合物と、式(6)で表されるアリール化合物との仕込み比は、ジニトロ化合物の全NH基の物質量に対し、アリール化合物を当量以上とすることができるが、1~1.2当量程度が好適である。
その他、アリール化合物に対する触媒量、溶媒、反応温度等に関するカップリング反応の諸条件は、式(1)で表されるアニリン誘導体の製造方法について説明した上記条件と同様である。
次に、式(1-1-3)で表されるジニトロ化合物中のニトロ基を水添によって還元して式(1-1-2)で表されるアミン化合物を得る。水添は、Pd/C等を用いた水素添加反応が挙げられ、公知の手法によって行うことができる。
Figure 0007420073000032
(式中、Ar1、Ph1およびkは、上記と同じ意味を表す。)
次に、式(1-1-2)で表されるアミン化合物と、式(7)で表されるアリール化合物とを反応させて、式(1-1-1)で表されるアミン化合物を得、得られた式(1-1-1)で表されるアミン化合物と、式(8)で表されるアリール化合物とを反応させて、式(1-1)で表されるアニリン誘導体を得ることができる。
Figure 0007420073000033
(式中、Ar1、Ar2、Ar3、Ph1、Xおよびkは、上記と同じ意味を表す。)
式(1-1-2)で表されるアミン化合物と、式(7)で表されるアリール化合物との仕込み比または式(1-1-1)で表されるアミン化合物と、式(8)で表されるアリール化合物との仕込み比は、アミン化合物に対し、アリール化合物を2当量以上とすることができるが、2~2.4当量程度が好適である。
その他、アリール化合物に対する触媒量、溶媒、反応温度等に関するカップリング反応の諸条件は、式(1)で表されるアニリン誘導体の製造方法について説明した上記条件と同様である。
また、式(1-2)で表されるアニリン誘導体は、以下の方法によっても、製造することができる。
上述の方法で得た式(1-1-1)で表されるアミン化合物と、式(6)で表されるアリール化合物とを反応させて、式(1-2)で表されるアニリン誘導体を得ることができる。
Figure 0007420073000034
(式中、Ar1、Ar2、Ph1、Xおよびkは、上記と同じ意味を表す。)
アミン化合物とアリール化合物との仕込み比、アリール化合物に対する触媒量、溶媒、反応温度等に関するカップリング反応の諸条件は、式(1)で表されるアニリン誘導体の製造方法について説明した上記条件と同様である。
また、式(1-3)で表されるアニリン誘導体は、以下の方法によっても、製造することができる。
上述の方法で得た式(1-1-2)で表されるアミン化合物と、式(7)で表されるアリール化合物とを反応させて、式(1-3)で表されるアニリン誘導体を得ることができる。
Figure 0007420073000035
(式中、Ar1、Ar2、Ph1、Xおよびkは、上記と同じ意味を表す。)
式(1-1-2)で表されるアミン化合物と、式(7)で表されるアリール化合物との仕込み比は、アミン化合物の全NH基の物質量に対し、アリール化合物を当量以上とすることができるが、1~1.2当量程度が好適である。
その他、アリール化合物に対する触媒量、溶媒、反応温度等に関するカップリング反応の諸条件は、式(1)で表されるアニリン誘導体の製造方法について説明した上記条件と同様である。
また、式(1-4)で表されるアニリン誘導体は、以下の方法によっても、製造することができる。
式(4)で表されるアミン化合物と、式(6)で表されるアリール化合物とを反応させて、式(1-4)で表されるアニリン誘導体を得ることができる。
Figure 0007420073000036
(式中、Ar1、Ph1、Xおよびkは、上記と同じ意味を表す。)
アミン化合物とアリール化合物との仕込み比、アリール化合物に対する触媒量、溶媒、反応温度等に関するカップリング反応の諸条件は、式(1)で表されるアニリン誘導体の製造方法について説明した上記条件と同様である。
なお、本発明のアニリン誘導体の原料として用い得るアミン化合物は、下記スキームに示されるように、(A)式(1-1-4)または式(1-1-5)で表されるアミン化合物と、式(9)で表されるアリール化合物とのカップリング反応と、(B)水添によるニトロ基の還元反応で得ることができ、この(A)、(B)の反応を繰り返すことで、鎖長(m-またはp-フェニレン数)を伸長していくことができる。
Figure 0007420073000037
(式中、Ph1、Xおよびkは、上記と同じ意味を表す。)
Figure 0007420073000038
(式中、Ph1、Xおよびkは、上記と同じ意味を表す。)
より具体的な一例を挙げれば、式(4)に包含されるアミン化合物は、下記スキームに示されるように、(A)m-フェニレンジアミンまたは3-ニトロアニリンと、3-ハロニトロベンゼンとのカップリング反応と、(B)水添によるニトロ基の還元反応で得ることができ、この(A)、(B)の反応を繰り返すことで、鎖長(m-フェニレン数)を伸長していくことができる。
Figure 0007420073000039
(式中、Xは、上記と同じ意味を表す。)
それぞれ、上記スキームの上の反応と下の反応のどちらを選択するかでフェニレン数の偶奇の作り分けが可能であるため、保護基で片方のアミノ基を保護するといった合成的に難易度の高い方法を用いることなく、自由に所望のフェニレン数を有する式(4)で表されるアミン化合物を製造することできる。
この場合、式(1-1-4)で表されるアミン化合物またはm-フェニレンジアミンと、式(9)で表されるアリール化合物または3-ハロニトロベンゼンとの仕込み比は、物質量比で、式(1-1-4)で表されるアミン化合物またはm-フェニレンジアミン1に対して、式(9)で表されるアリール化合物または3-ハロニトロベンゼン2~2.4程度が好適である。
また、式(1-1-5)で表されるアミン化合物または3-ニトロアニリンと、式(9)で表されるアリール化合物または3-ハロニトロベンゼンとの仕込み比は、物質量比で、式(1-1-5)で表されるアミン化合物または3-ニトロアニリン1に対して、式(9)で表されるアリール化合物または3-ハロニトロベンゼン1~1.2程度が好適である。
なお、カップリング反応に用いるパラジウム触媒としては、上記と同様のものが挙げられる。また、この場合も配位子を用いることができる。配位子としては、上記で例示したものに加え、Aldrich社で市販されている、JohnPhos, CyjohnPhos, DavePhos, XPhos, SPhos, tBuXPhos, RuPhos, Me4tBuXPhos, sSPhos, tBuMePhos, MePhos, tBuDavePhos, PhDavePhos, 2’-Dicyclohexylphosphino-2,4,6-trimethoxybiphenyl, BrettPhos, tBuBrettPhos, AdBrettPhos, Me3(OMe)tBuXPhos, (2-Biphenyl)di-1-adamantylphosphine, RockPhos, CPhos等のビフェニルホスフィン化合物を好適に用いることができる。
カップリング反応に用いる塩基としては、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム、水素化リチウム、水素化ナトリウム、水酸化リチウム、水酸化カリウム、t-ブトキシリチウム、t-ブトキシナトリウム、t-ブトキシカリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム等のアルカリ金属単体、水素化アルカリ金属、水酸化アルカリ金属、アルコキシアルカリ金属、炭酸アルカリ金属、炭酸水素アルカリ金属;炭酸カルシウム等の炭酸アルカリ土類金属;n-ブチルリチウム、s-ブチルリチウム、t-ブチルリチウム、リチウムジイソプロピルアミド(LDA),リチウム2,2,6,6-テトラメチルピペリジン(LiTMP),ヘキサメチルジシラザンリチウム(LHMDS)等の有機リチウム;トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、テトラメチルエチレンジアミン、トリエチレンジアミン、ピリジン等のアミン類などが挙げられる。
その他、溶媒、反応温度等に関するカップリング反応の諸条件は、式(1)で表されるアニリン誘導体の製造方法について説明した上記条件と同様である。
また、Pd/Cを用いた水素添加反応は、公知の手法によって行うことができる。
なお、メタフェニレン基の代わりにパラフェニレン基を導入する場合は、3-ハロニトロベンゼンの代わりに4-ハロニトロベンゼンを用いればよい。
上述した本発明のアニリン誘導体は、電荷輸送性物質として好適に利用することができる。この場合、本発明のアニリン誘導体と、有機溶媒とを含む電荷輸送性ワニスとして用いることができるが、この電荷輸送性ワニスには、得られる薄膜の用途に応じ、その電荷輸送能の向上等を目的としてドーパント物質を含んでいてもよい。
ドーパント物質としては、ワニスに使用する少なくとも1種の溶媒に溶解するものであれば特に限定されず、無機系のドーパント物質、有機系のドーパント物質のいずれも使用できる。
また、無機系および有機系のドーパント物質は、1種類単独で用いてもよく、2種類以上組み合わせて用いてもよい。
さらにドーパント物質は、ワニスから固体膜である電荷輸送性薄膜を得る過程で、例えば焼成時の加熱といった外部からの刺激によって、例えば分子内の一部が外れることによってドーパント物質としての機能が初めて発現または向上するようになる物質、例えばスルホン酸基が脱離しやすい基で保護されたアリールスルホン酸エステル化合物であってもよい。
特に、本発明においては、無機系のドーパント物質としては、ヘテロポリ酸が好ましい。
ヘテロポリ酸とは、代表的に式(H1)で表されるKeggin型あるいは式(H2)で表されるDawson型の化学構造で示される、ヘテロ原子が分子の中心に位置する構造を有し、バナジウム(V)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)等の酸素酸であるイソポリ酸と、異種元素の酸素酸とが縮合してなるポリ酸である。このような異種元素の酸素酸としては、主にケイ素(Si)、リン(P)、ヒ素(As)の酸素酸が挙げられる。
Figure 0007420073000040
ヘテロポリ酸の具体例としては、リンモリブデン酸、ケイモリブデン酸、リンタングステン酸、ケイタングステン酸、リンタングストモリブデン酸等が挙げられ、これらは単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。なお、これらのヘテロポリ酸は、市販品として入手可能であり、また、公知の方法により合成することもできる。
特に、1種類のヘテロポリ酸を用いる場合、その1種類のヘテロポリ酸は、リンタングステン酸またはリンモリブデン酸が好ましく、リンタングステン酸が最適である。また、2種類以上のヘテロポリ酸を用いる場合、その2種類以上のヘテロポリ酸の1つは、リンタングステン酸またはリンモリブデン酸が好ましく、リンタングステン酸がより好ましい。
なお、ヘテロポリ酸は、元素分析等の定量分析において、一般式で示される構造から元素の数が多いもの、または少ないものであっても、それが市販品として入手したもの、あるいは、公知の合成方法にしたがって適切に合成したものである限り、本発明において用いることができる。
すなわち、例えば、一般的には、リンタングステン酸は化学式H3(PW1240)・nH2Oで、リンモリブデン酸は化学式H3(PMo1240)・nH2Oでそれぞれ示されるが、定量分析において、この式中のP(リン)、O(酸素)またはW(タングステン)もしくはMo(モリブデン)の数が多いもの、または少ないものであっても、それが市販品として入手したもの、あるいは、公知の合成方法にしたがって適切に合成したものである限り、本発明において用いることができる。この場合、本発明に規定されるヘテロポリ酸の質量とは、合成物や市販品中における純粋なリンタングステン酸の質量(リンタングステン酸含量)ではなく、市販品として入手可能な形態および公知の合成法にて単離可能な形態において、水和水やその他の不純物等を含んだ状態での全質量を意味する。
ヘテロポリ酸の使用量は、質量比で、式(1)で表されるアニリン誘導体からなる電荷輸送性物質1に対して0.001~50.0程度とすることができるが、好ましくは0.01~20.0程度、より好ましくは0.1~10.0程度である。
一方、有機系のドーパント物質としては、特にテトラシアノキノジメタン誘導体やベンゾキノン誘導体を用いることができる。
テトラシアノキノジメタン誘導体の具体例としては、7,7,8,8-テトラシアノキノジメタン(TCNQ)や、式(H3)で表されるハロテトラシアノキノジメタンなどが挙げられる。
また、ベンゾキノン誘導体の具体例としては、テトラフルオロ-1,4-ベンゾキノン(F4BQ)、テトラクロロ-1,4-ベンゾキノン(クロラニル)、テトラブロモ-1,4-ベンゾキノン、2,3-ジクロロ-5,6-ジシアノ-1,4-ベンゾキノン(DDQ)などが挙げられる。
Figure 0007420073000041
式中、R500~R503は、それぞれ独立して、水素原子またはハロゲン原子を表すが、少なくとも1つはハロゲン原子であり、少なくとも2つがハロゲン原子であることが好ましく、少なくとも3つがハロゲン原子であることがより好ましく、全てがハロゲン原子であることが最も好ましい。
ハロゲン原子としては上記と同じものが挙げられるが、フッ素原子または塩素原子が好ましく、フッ素原子がより好ましい。
このようなハロテトラシアノキノジメタンの具体例としては、2-フルオロ-7,7,8,8-テトラシアノキノジメタン、2-クロロ-7,7,8,8-テトラシアノキノジメタン、2,5-ジフルオロ-7,7,8,8-テトラシアノキノジメタン、2,5-ジクロロ-7,7,8,8-テトラシアノキノジメタン、2,3,5,6-テトラクロロ-7,7,8,8-テトラシアノキノジメタン、2,3,5,6-テトラフルオロ-7,7,8,8-テトラシアノキノジメタン(F4TCNQ)等が挙げられる。
テトラシアノキノジメタン誘導体およびベンゾキノン誘導体の使用量は、式(1)で表されるアニリン誘導体に対して、好ましくは0.0001~100当量、より好ましくは0.01~50当量、より一層好ましくは1~20当量である。
また、有機系ドーパント物質としては、下記式(a1)で表される1価または2価のアニオンと式(c1)~(c5)で表される対カチオンからなる、電気的に中性なオニウムボレート塩を用いることもできる。
Figure 0007420073000042
(式中、Arは、それぞれ独立して、置換基を有してもよい炭素数6~20のアリール基または置換基を有してもよい炭素数2~20のヘテロアリール基を表し、Lは、炭素数1~20のアルキレン基、-NH-、酸素原子、硫黄原子または-CN+-を表す。)
Figure 0007420073000043
式(a1)において、炭素数1~20のアルキレン基としては、直鎖状、分岐鎖状、環状のいずれでもよく、その具体例としては、メチレン、メチルメチレン、ジメチルメチレン、エチレン、トリメチレン、プロピレン、テトラメチレン、ペンタメチレン、ヘキサメチレン基等が挙げられる。なお、アリール基、ヘテロアリール基としては、上記と同様のものが挙げられる。
上記式(a1)のアニオンの好適例としては、式(a2)で表されるものが挙げられるが、これに限定されるものではない。
Figure 0007420073000044
オニウムボレート塩の使用量は、物質量(モル)比で、式(1)で表されるアニリン誘導体1に対して、0.1~10程度とすることができる。
なお、上記オニウムボレート塩は、例えば、特開2005-314682号公報等に記載された公知の方法を参考に合成することができる。
また、有機系のドーパント物質として、アリールスルホン酸化合物やアリールスルホン酸エステル化合物も好適に用いることができる。
アリールスルホン酸化合物の具体例としては、ベンゼンスルホン酸、トシル酸、p-スチレンスルホン酸、2-ナフタレンスルホン酸、4-ヒドロキシベンゼンスルホン酸、5-スルホサリチル酸、p-ドデシルベンゼンスルホン酸、ジヘキシルベンゼンスルホン酸、2,5-ジヘキシルベンゼンスルホン酸、ジブチルナフタレンスルホン酸、6,7-ジブチル-2-ナフタレンスルホン酸、ドデシルナフタレンスルホン酸、3-ドデシル-2-ナフタレンスルホン酸、ヘキシルナフタレンスルホン酸、4-ヘキシル-1-ナフタレンスルホン酸、オクチルナフタレンスルホン酸、2-オクチル-1-ナフタレンスルホン酸、ヘキシルナフタレンスルホン酸、7-へキシル-1-ナフタレンスルホン酸、6-ヘキシル-2-ナフタレンスルホン酸、ジノニルナフタレンスルホン酸、2,7-ジノニル-4-ナフタレンスルホン酸、ジノニルナフタレンジスルホン酸、2,7-ジノニル-4,5-ナフタレンジスルホン酸、国際公開第2005/000832号記載の1,4-ベンゾジオキサンジスルホン酸化合物、国際公開第2006/025342号記載のアリールスルホン酸化合物、国際公開第2009/096352号記載のアリールスルホン酸化合物等が挙げられる。
好ましいアリールスルホン酸化合物の例としては、式(H4)または(H5)で表されるアリールスルホン酸化合物が挙がられる。
Figure 0007420073000045
1は、OまたはSを表すが、Oが好ましい。
2は、ナフタレン環またはアントラセン環を表すが、ナフタレン環が好ましい。
3は、2~4価のパーフルオロビフェニル基を表し、pは、A1とA3との結合数を示し、2≦p≦4を満たす整数であるが、A3がパーフルオロビフェニルジイル基、好ましくはパーフルオロビフェニル-4,4’-ジイル基であり、かつ、pが2であることが好ましい。
qは、A2に結合するスルホン酸基数を表し、1≦q≦4を満たす整数であるが、2が最適である。
4~A8は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、炭素数1~20のアルキル基、炭素数1~20のハロゲン化アルキル基、または炭素数2~20のハロゲン化アルケニル基を表すが、A4~A8のうち少なくとも3つは、ハロゲン原子である。
炭素数1~20のハロゲン化アルキル基としては、トリフルオロメチル、2,2,2-トリフルオロエチル、1,1,2,2,2-ペンタフルオロエチル、3,3,3-トリフルオロプロピル、2,2,3,3,3-ペンタフルオロプロピル、1,1,2,2,3,3,3-ヘプタフルオロプロピル、4,4,4-トリフルオロブチル、3,3,4,4,4-ペンタフルオロブチル、2,2,3,3,4,4,4-ヘプタフルオロブチル、1,1,2,2,3,3,4,4,4-ノナフルオロブチル基等が挙げられる。
炭素数2~20のハロゲン化アルケニル基としては、パーフルオロビニル、パーフルオロプロペニル(アリル)、パーフルオロブテニル基等が挙げられる。
その他、ハロゲン原子、炭素数1~20のアルキル基の例としては上記と同様のものが挙げられるが、ハロゲン原子としては、フッ素原子が好ましい。
これらの中でも、A4~A8は、水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、炭素数1~10のアルキル基、炭素数1~10のハロゲン化アルキル基、または炭素数2~10のハロゲン化アルケニル基であり、かつ、A4~A8のうち少なくとも3つは、フッ素原子であることが好ましく、水素原子、フッ素原子、シアノ基、炭素数1~5のアルキル基、炭素数1~5のフッ化アルキル基、または炭素数2~5のフッ化アルケニル基であり、かつ、A4~A8のうち少なくとも3つはフッ素原子であることがより好ましく、水素原子、フッ素原子、シアノ基、炭素数1~5のパーフルオロアルキル基、または炭素数1~5のパーフルオロアルケニル基であり、かつ、A4、A5およびA8がフッ素原子であることがより一層好ましい。
なお、パーフルオロアルキル基とは、アルキル基の水素原子全てがフッ素原子に置換された基であり、パーフルオロアルケニル基とは、アルケニル基の水素原子全てがフッ素原子に置換された基である。
rは、ナフタレン環に結合するスルホン酸基数を表し、1≦r≦4を満たす整数であるが、2~4が好ましく、2が最適である。
ドーパント物質として用いるアリールスルホン酸化合物の分子量は、特に限定されるものではないが、本発明のアニリン誘導体とともに用いた場合における有機溶媒への溶解性を考慮すると、好ましくは2000以下、より好ましくは1500以下である。
以下、好適なアリールスルホン酸化合物の具体例を挙げるが、これらに限定されるわけではない。
Figure 0007420073000046
アリールスルホン酸化合物の使用量は、物質量(モル)比で、式(1)で表されるアニリン誘導体1に対して、好ましくは0.01~20.0程度、より好ましくは0.4~5.0程度である。
アリールスルホン酸化合物は市販品を用いてもよいが、国際公開第2006/025342号、国際公開第2009/096352号等に記載の公知の方法で合成することもできる。
一方、アリールスルホン酸エステル化合物としては、国際公開第2017/217455号に開示されたアリールスルホン酸エステル化合物、国際公開第2017/217457号に開示されたアリールスルホン酸エステル化合物、特願2017-243631に記載のアリールスルホン酸エステル化合物等が挙げられ、具体的には、下記式(H6)~(H8)のいずれかで表されるものが好ましい。
Figure 0007420073000047
(式中、mは、1≦m≦4を満たす整数であるが、2が好ましい。nは、1≦n≦4を満たす整数であるが、2が好ましい。)
式(H6)において、A11は、パーフルオロビフェニルから誘導されるm価の基である。
12は、-O-または-S-であるが、-O-が好ましい。
13は、ナフタレンまたはアントラセンから誘導される(n+1)価の基であるが、ナフタレンから誘導される基が好ましい。
s1~Rs4は、それぞれ独立して、水素原子、または直鎖状もしくは分岐鎖状の炭素数1~6のアルキル基であり、Rs5は、置換されていてもよい炭素数2~20の1価炭化水素基である。
直鎖状または分岐鎖状の炭素数1~6アルキル基の具体例としては、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、t-ブチル、n-ヘキシル基等が挙げられるが、炭素数1~3のアルキル基が好ましい。
炭素数2~20の1価炭化水素基は、直鎖状、分岐鎖状、環状のいずれでもよく、その具体例としては、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、t-ブチル基等のアルキル基;フェニル、ナフチル、フェナントリル基等のアリール基などが挙げられる。
特に、Rs1~Rs4のうち、Rs1またはRs3が炭素数1~3の直鎖アルキル基であり、残りが水素原子であるか、Rs1が炭素数1~3の直鎖アルキル基であり、Rs2~Rs4が水素原子であることが好ましい。この場合、炭素数1~3の直鎖アルキル基としては、メチル基が好ましい。
また、Rs5としては、炭素数2~4の直鎖アルキル基またはフェニル基が好ましい。
式(H7)において、A14は、置換されていてもよい、1つ以上の芳香環を含む炭素数6~20のm価の炭化水素基であり、この炭化水素基は、1つ以上の芳香環を含む炭素数6~20の炭化水素化合物からm個の水素原子を取り除いて得られる基である。
このような炭化水素化合物としては、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、ビフェニル、ナフタレン、アントラセン、フェナントレン等が挙げられる。
なお、上記炭化水素基は、その水素原子の一部または全部が、更に置換基で置換されていてもよく、このような置換基としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、ニトロ基、シアノ基、ヒドロキシ基、アミノ基、シラノール基、チオール基、カルボキシ基、スルホン酸エステル基、リン酸基、リン酸エステル基、エステル基、チオエステル基、アミド基、1価炭化水素基、オルガノオキシ基、オルガノアミノ基、オルガノシリル基、オルガノチオ基、アシル基、スルホ基等が挙げられる。
これらの中でも、A14としては、ベンゼン、ビフェニル等から誘導される基が好ましい。
また、A15は、-O-または-S-であるが、-O-が好ましい。
16は、炭素数6~20の(n+1)価の芳香族炭化水素基であり、この芳香族炭化水素基は、炭素数6~20の芳香族炭化水素化合物の芳香環上から(n+1)個の水素原子を取り除いて得られる基である。
このような芳香族炭化化合物としては、ベンゼン、トルエン、キシレン、ビフェニル、ナフタレン、アントラセン、ピレン等が挙げられる。
中でも、A16としては、ナフタレンまたはアントラセンから誘導される基が好ましく、ナフタレンから誘導される基がより好ましい。
s6およびRs7は、それぞれ独立して、水素原子、または直鎖状もしくは分岐鎖状の1価脂肪族炭化水素基であり、Rs8は、直鎖状または分岐鎖状の1価脂肪族炭化水素基である。ただし、Rs6、Rs7およびRs8の炭素数の合計は6以上である。Rs6、Rs7およびRs8の炭素数の合計の上限は、特に限定されないが、20以下が好ましく、10以下がより好ましい。
上記直鎖状または分岐鎖状の1価脂肪族炭化水素基の具体例としては、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、t-ブチル、n-ヘキシル、n-オクチル、2-エチルヘキシル、デシル基等の炭素数1~20のアルキル基;ビニル、1-プロペニル、2-プロペニル、イソプロペニル、1-メチル-2-プロペニル、1-ブテニル、2-ブテニル、3-ブテニル、ヘキセニル基等の炭素数2~20のアルケニル基などが挙げられる。
これらの中でも、Rs6は水素原子が好ましく、Rs7およびRs8は、それぞれ独立して、炭素数1~6のアルキル基が好ましい。
式(H8)において、Rs9~Rs13は、それぞれ独立して、水素原子、ニトロ基、シアノ基、ハロゲン原子、炭素数1~10のアルキル基、炭素数1~10のハロゲン化アルキル基、または炭素数2~10のハロゲン化アルケニル基である。
炭素数1~10のアルキル基は、直鎖状、分岐鎖状、環状のいずれでもよく、その具体例としては、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、s-ブチル、t-ブチル、n-ペンチル、シクロペンチル、n-ヘキシル、シクロヘキシル、n-ヘプチル、n-オクチル、n-ノニル、n-デシル基等が挙げられる。
炭素数1~10のハロゲン化アルキル基は、上記炭素数1~10のアルキル基の水素原子の一部または全部がハロゲン原子で置換された基であれば、特に限定されるものではなく、その具体例としては、トリフルオロメチル、2,2,2-トリフルオロエチル、1,1,2,2,2-ペンタフルオロエチル、3,3,3-トリフルオロプロピル、2,2,3,3,3-ペンタフルオロプロピル、1,1,2,2,3,3,3-ヘプタフルオロプロピル、4,4,4-トリフルオロブチル、3,3,4,4,4-ペンタフルオロブチル、2,2,3,3,4,4,4-ヘプタフルオロブチル、1,1,2,2,3,3,4,4,4-ノナフルオロブチル基等が挙げられる。
炭素数2~10のハロゲン化アルケニル基としては、炭素数2~10のアルケニル基の水素原子の一部または全部がハロゲン原子で置換された基であれば、特に限定されるものではなく、その具体例としては、パーフルオロビニル、パーフルオロ-1-プロペニル、パーフルオロ-2-プロペニル、パーフルオロ-1-ブテニル、パーフルオロ-2-ブテニル、パーフルオロ-3-ブテニル基等が挙げられる。
これらの中でも、Rs9としては、ニトロ基、シアノ基、炭素数1~10のハロゲン化アルキル基、炭素数2~10のハロゲン化アルケニル基が好ましく、ニトロ基、シアノ基、炭素数1~4のハロゲン化アルキル基、炭素数2~4のハロゲン化アルケニル基がより好ましく、ニトロ基、シアノ基、トリフルオロメチル基、パーフルオロプロペニル基がより一層好ましい。
s10~Rs13としては、ハロゲン原子が好ましく、フッ素原子がより好ましい。
17は、-O-、-S-または-NH-であるが、-O-が好ましい。
18は、炭素数6~20の(n+1)価の芳香族炭化水素基であり、この芳香族炭化水素基は、炭素数6~20の芳香族炭化水素化合物の芳香環上から(n+1)個の水素原子を取り除いて得られる基である。
このような芳香族炭化水素化合物としては、ベンゼン、トルエン、キシレン、ビフェニル、ナフタレン、アントラセン、ピレン等が挙げられる。
これらの中でも、A18としては、ナフタレンまたはアントラセンから誘導される基が好ましく、ナフタレンから誘導される基がより好ましい。
s14~Rs17は、それぞれ独立して、水素原子、または直鎖状もしくは分岐鎖状の炭素数1~20の1価脂肪族炭化水素基である。
1価脂肪族炭化水素基の具体例としては、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、s-ブチル、t-ブチル、n-ペンチル、シクロペンチル、n-ヘキシル、シクロヘキシル、n-ヘプチル、n-オクチル、n-ノニル、n-デシル、n-ウンデシル、n-ドデシル基等の炭素数1~20のアルキル基;ビニル、1-プロペニル、2-プロペニル、イソプロペニル、1-メチル-2-プロペニル、1-ブテニル、2-ブテニル、3-ブテニル、ヘキセニル基等の炭素数2~20のアルケニル基などが挙げられるが、炭素数1~20のアルキル基が好ましく、炭素数1~10のアルキル基がより好ましく、炭素数1~8のアルキル基がより一層好ましい。
s18は、直鎖状または分岐鎖状の炭素数1~20の1価脂肪族炭化水素基、またはORs19である。Rs19は、置換されていてもよい炭素数2~20の1価炭化水素基である。
s18の直鎖状または分岐状の炭素数1~20の1価脂肪族炭化水素基としては、上記と同様のものが挙げられる。
s18が1価脂肪族炭化水素基である場合、Rs18は、炭素数1~20のアルキル基が好ましく、炭素数1~10のアルキル基がより好ましく、炭素数1~8のアルキル基がより一層好ましい。
s19の炭素数2~20の1価炭化水素基としては、前述した1価脂肪族炭化水素基のうちメチル基以外のもののほか、フェニル、ナフチル、フェナントリル基等のアリール基などが挙げられる。
これらの中でも、Rs19は、炭素数2~4の直鎖アルキル基またはフェニル基が好ましい。
なお、上記1価炭化水素基が有していてもよい置換基としては、フッ素原子、炭素数1~4のアルコキシ基、ニトロ基、シアノ基等が挙げられる。
好適なアリールスルホン酸エステル化合物の具体例としては、以下に示すものが挙げられるが、これらに限定されない。
Figure 0007420073000048
本発明においては、高電荷輸送性の薄膜を再現性よく得ること、ドーパント物質の入手容易性などを考慮すると、ドーパント物質として、アリールスルホン酸化合物、アリールスルホン酸エステル化合物、オニウムボレート塩、ハロテトラシアノキノジメタンおよびベンゾキノン誘導体の少なくとも1種を用いることが好ましく、消衰係数の小さい薄膜を得ることを考慮すると、オニウムボレート塩を用いることがより好ましい。
本発明において、ワニス中のドーパント物質の量は、モル比で、式(1)で表されるアニリン誘導体1に対し、好ましくは0.01~20程度、より好ましくは0.05~15程度である。
さらに、得られる薄膜を有機EL素子の正孔注入層として用いる場合、正孔輸送層への注入性の向上、素子の寿命特性等の改善を目的として、上記電荷輸送性ワニスは、有機シラン化合物を含んでいても良く、その含有量は、本発明のアニリン誘導体およびドーパント物質の合計質量に対して、通常1~30質量%程度である。
なお、上記電荷輸送性ワニスには、本発明のアニリン誘導体からなる電荷輸送性物質の他に、公知のその他の電荷輸送性物質を用いることもできる。
電荷輸送性ワニスを調製する際に用いられる有機溶媒としては、電荷輸送性物質およびドーパント物質を良好に溶解し得る高溶解性溶媒を用いることができる。
このような高溶解性溶媒としては、例えば、シクロヘキサノン、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N,N-ジメチルイソブチルアミド、N-メチルピロリドン、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、ジエチレングリコールモノメチルエーテル等の有機溶媒が挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらの溶媒は1種単独で、または2種以上混合して用いることができ、その使用量は、ワニスに使用する溶媒全体に対して5~100質量%とすることができる。
なお、電荷輸送性物質およびドーパント物質は、いずれも上記溶媒に完全に溶解していることが好ましい。
また、ワニスに、25℃で10~200mPa・s、特に35~150mPa・sの粘度を有し、常圧(大気圧)で沸点50~300℃、特に150~250℃の高粘度有機溶媒を少なくとも1種類含有させることで、ワニスの粘度の調整が容易になり、その結果、平坦性の高い薄膜を再現性よく与える、用いる塗布方法に応じたワニス調整が可能となる。
高粘度有機溶媒としては、例えば、シクロヘキサノール、エチレングリコール、エチレングリコールジグリシジルエーテル、1,3-オクチレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、トリプロピレングリコール、1,3-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、プロピレングリコール、へキシレングリコール等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらの溶媒は単独で用いてもよく、2種以上混合して用いてもよい。
ワニスに用いられる溶媒全体に対する高粘度有機溶媒の添加割合は、固体が析出しない範囲内であることが好ましく、固体が析出しない限りにおいて、添加割合は、5~80質量%が好ましい。
さらに、基板に対する濡れ性の向上、溶媒の表面張力の調整、極性の調整、沸点の調整等の目的で、その他の溶媒を、ワニスに使用する溶媒全体に対して1~90質量%、好ましくは1~50質量%の割合で混合することもできる。
このような溶媒としては、例えば、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジアセトンアルコール、γ-ブチロラクトン、エチルラクテート、n-ヘキシルアセテート等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらの溶媒は1種単独で、または2種以上混合して用いることができる。
また、本発明のアニリン誘導体が、例えばカルバゾールの9位の窒素原子上に置換基を有する場合のように分子内にNH構造を有しない場合、好ましくは全ての窒素原子上に置換基を有している場合、下記に示される低極性溶媒のみを用いてワニスを調製することが容易になる。
低極性溶媒の具体例としては、クロロホルム、クロロベンゼン等の塩素系溶媒;トルエン、キシレン、テトラリン、シクロヘキシルベンゼン、デシルベンゼン等の芳香族炭化水素系溶媒;1-オクタノール、1-ノナノール、1-デカノール等の脂肪族アルコール系溶媒;テトラヒドロフラン、ジオキサン、アニソール、4-メトキシトルエン、3-フェノキシトルエン、ジベンジルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールブチルメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールブチルメチルエーテル等のエーテル系溶媒;安息香酸メチル、安息香酸エチル、安息香酸ブチル、安息香酸イソアミル、フタル酸ビス(2-エチルヘキシル)、マレイン酸ジブチル、シュウ酸ジブチル、酢酸ヘキシル、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート等のエステル系溶媒などが挙げられ、これらは単独で用いても、2種以上組み合わせて用いてもよい。
電荷輸送性ワニスの粘度は、作製する薄膜の厚み等や固形分濃度に応じて適宜定まるものではあるが、通常、25℃で1~50mPa・sである。
また、電荷輸送性ワニスの固形分濃度は、ワニスの粘度および表面張力等や、作製する薄膜の厚み等を勘案して適宜設定されるものではあるが、通常、0.1~10.0質量%程度であり、ワニスの塗布性を向上させることを考慮すると、好ましくは0.5~5.0質量%程度、より好ましくは1.0~3.0質量%程度である。
なお、本発明において、固形分とは、溶媒以外の成分を意味する。
本発明において、電荷輸送性ワニスの調製法としては、特に限定されるものではないが、例えば、上述したアニリン誘導体を、用いる溶媒の一部に溶解させ、そこへ残りの溶媒を加える手法や、用いる溶媒全て初めに混合し、そこへ上述したアニリン誘導体を溶解させる手法などが挙げられる。
特に、電荷輸送性ワニスの調製の際、より平坦性の高い薄膜を再現性よく得る観点から、電荷輸送性物質、ドーパント物質等を有機溶媒に溶解させた後、サブマイクロメートルオーダーのフィルター等を用いて濾過することが望ましい。
また、必要に応じて、ワニスの成分が変質しない限りにおいて、加熱してもよい。
以上説明した電荷輸送性物質や電荷輸送性ワニスは、これを用いることで容易に電荷輸送性薄膜を製造できることから、電子素子、特に有機EL素子を製造する際に好適に用いることができる。
この場合、電荷輸送性薄膜は、上述した電荷輸送性ワニスを基材上に塗布して焼成して形成することができる。
ワニスの塗布方法としては、特に限定されるものではなく、ディップ法、スピンコート法、転写印刷法、ロールコート法、刷毛塗り、インクジェット法、スプレー法、スリットコート法等が挙げられ、塗布方法に応じてワニスの粘度および表面張力を調節することが好ましい。
また、塗布後の電荷輸送性ワニスの焼成雰囲気も特に限定されるものではなく、大気雰囲気だけでなく、窒素等の不活性ガスや真空中でも均一な成膜面および高い電荷輸送性を有する薄膜を得ることができるが、本発明のアニリン誘導体とともに用いるドーパント物質の種類によっては、ワニスを大気雰囲気下で焼成することで、電荷輸送性を有する薄膜が再現性よく得られる場合がある。
焼成温度は、得られる薄膜の用途、得られる薄膜に付与する電荷輸送性の程度、溶媒の種類や沸点等を勘案して、100~260℃程度の範囲内で適宜設定されるものではあるが、得られる薄膜を有機EL素子の正孔注入層として用いる場合、140~250℃程度が好ましく、145~240℃程度がより好ましいが、本発明のアニリン誘導体を含む電荷輸送性ワニスでは、200℃以下という低温焼成でも、良好な電荷輸送性を有する薄膜を得ることができる。
なお、焼成の際、より高い均一成膜性を発現させたり、基材上で反応を進行させたりする目的で、2段階以上の温度変化をつけてもよく、加熱は、例えば、ホットプレートやオーブン等、適当な機器を用いて行えばよい。
電荷輸送性薄膜の膜厚は、特に限定されないが、有機EL素子の正孔注入層、正孔輸送層または正孔注入輸送層として用いる場合、通常3~300nmであるが、5~200nmが好ましい。膜厚を変化させる方法としては、ワニス中の固形分濃度を変化させたり、塗布時の基板上の溶液量を変化させたりする等の方法がある。
なお、本発明のアニリン誘導体は、昇華性を有し、これを用いて容易に蒸着膜を形成できる。従って、用途によっては、上記説明した電荷輸送性ワニスから得られる電荷輸送性薄膜ではなく、本発明のアニリン誘導体を用いた蒸着法により得られる電荷輸送性薄膜を用いてもよい。
上記電荷輸送性薄膜を有機EL素子に適用する場合、有機EL素子を構成する一対の電極の間に、上述の電荷輸送性薄膜を備える構成とすることができる。
有機EL素子の代表的な構成としては、以下(a)~(f)が挙げられるが、これらに限定されるわけではない。なお、下記構成において、必要に応じて、発光層と陽極の間に電子ブロック層等を、発光層と陰極の間にホール(正孔)ブロック層等を設けることもできる。また、正孔注入層、正孔輸送層あるいは正孔注入輸送層が電子ブロック層等としての機能を兼ね備えていてもよく、電子注入層、電子輸送層あるいは電子注入輸送層がホール(正孔)ブロック層等としての機能を兼ね備えていてもよい。更に、必要に応じて各層の間に任意の機能層を設けることも可能である。
(a)陽極/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/電子注入層/陰極
(b)陽極/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/電子注入輸送層/陰極
(c)陽極/正孔注入輸送層/発光層/電子輸送層/電子注入層/陰極
(d)陽極/正孔注入輸送層/発光層/電子注入輸送層/陰極
(e)陽極/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/陰極
(f)陽極/正孔注入輸送層/発光層/陰極
「正孔注入層」、「正孔輸送層」および「正孔注入輸送層」とは、発光層と陽極との間に形成される層であって、正孔を陽極から発光層へ輸送する機能を有するものであり、発光層と陽極の間に、正孔輸送性材料の層が1層のみ設けられる場合、それが「正孔注入輸送層」であり、発光層と陽極の間に、正孔輸送性材料の層が2層以上設けられる場合、陽極に近い層が「正孔注入層」であり、それ以外の層が「正孔輸送層」である。特に、正孔注入(輸送)層は、陽極からの正孔受容性だけでなく、正孔輸送(発光)層への正孔注入性にも優れる薄膜が用いられる。
「電子注入層」、「電子輸送層」および「電子注入輸送層」とは、発光層と陰極との間に形成される層であって、電子を陰極から発光層へ輸送する機能を有するものであり、発光層と陰極の間に、電子輸送性材料の層が1層のみ設けられる場合、それが「電子注入輸送層」であり、発光層と陰極の間に、電子輸送性材料の層が2層以上設けられる場合、陰極に近い層が「電子注入層」であり、それ以外の層が「電子輸送層」である。
「発光層」とは、発光機能を有する有機層であって、ドーピングシステムを採用する場合、ホスト材料とドーパント材料を含んでいる。このとき、ホスト材料は、主に電子と正孔の再結合を促し、励起子を発光層内に閉じ込める機能を有し、ドーパント材料は、再結合で得られた励起子を効率的に発光させる機能を有する。燐光素子の場合、ホスト材料は主にドーパントで生成された励起子を発光層内に閉じ込める機能を有する。
本発明のアニリン誘導体を含む電荷輸送性ワニスから作製された電荷輸送性薄膜は、有機EL素子において、正孔注入層、正孔輸送層、正孔注入輸送層等の陽極と発光層との間に設けられる機能層として用い得るが、正孔注入層に好適である。
本発明のアニリン誘導体を含む電荷輸送性ワニスを用いて有機EL素子を作製する場合の使用材料や、作製方法としては、下記のようなものが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
上記電荷輸送性ワニスから得られる薄膜からなる正孔注入層を有するOLED素子の作製方法の一例は、以下のとおりである。なお、電極は、電極に悪影響を与えない範囲で、アルコール、純水等による洗浄や、UVオゾン処理、酸素-プラズマ処理等による表面処理を予め行うことが好ましい。
陽極基板上に、上記の方法により、上記電荷輸送性ワニスを用いて正孔注入層を形成する。これを真空蒸着装置内に導入し、正孔輸送層、発光層、電子輸送層/ホールブロック層、電子注入層、陰極金属を順次蒸着する。あるいは、当該方法において蒸着で正孔輸送層と発光層を形成する代わりに、正孔輸送性高分子を含む正孔輸送層形成用組成物と発光性高分子を含む発光層形成用組成物を用いてウェットプロセスによってこれらの層を形成する。なお、必要に応じて、発光層と正孔輸送層との間に電子ブロック層を設けてよい。
陽極材料としては、インジウム錫酸化物(ITO)、インジウム亜鉛酸化物(IZO)に代表される透明電極や、アルミニウムに代表される金属、またはこれらの合金等から構成される金属陽極が挙げられ、平坦化処理を行ったものが好ましい。高電荷輸送性を有するポリチオフェン誘導体やポリアニリン誘導体を用いることもできる。
なお、金属陽極を構成するその他の金属としては、金、銀、銅、インジウムやこれらの合金等が挙げられるが、これらに限定されるわけではない。
正孔輸送層を形成する材料としては、(トリフェニルアミン)ダイマー誘導体、[(トリフェニルアミン)ダイマー]スピロダイマー、N,N’-ビス(ナフタレン-1-イル)-N,N’-ビス(フェニル)-ベンジジン(α-NPD)、4,4’,4”-トリス[3-メチルフェニル(フェニル)アミノ]トリフェニルアミン(m-MTDATA)、4,4’,4”-トリス[1-ナフチル(フェニル)アミノ]トリフェニルアミン(1-TNATA)等のトリアリールアミン類、5,5”-ビス-{4-[ビス(4-メチルフェニル)アミノ]フェニル}-2,2’:5’,2”-ターチオフェン(BMA-3T)等のオリゴチオフェン類などが挙げられる。
発光層を形成する材料としては、8-ヒドロキシキノリンのアルミニウム錯体等の金属錯体、10-ヒドロキシベンゾ[h]キノリンの金属錯体、ビススチリルベンゼン誘導体、ビススチリルアリーレン誘導体、(2-ヒドロキシフェニル)ベンゾチアゾールの金属錯体、シロール誘導体等の低分子発光材料;ポリ(p-フェニレンビニレン)、ポリ[2-メトキシ-5-(2-エチルヘキシルオキシ)-1,4-フェニレンビニレン]、ポリ(3-アルキルチオフェン)、ポリビニルカルバゾール等の高分子化合物に発光材料と電子移動材料を混合した系等が挙げられる。
また、蒸着で発光層を形成する場合、発光性ドーパントと共蒸着してもよく、発光性ドーパントとしては、トリス(2-フェニルピリジン)イリジウム(III)(Ir(ppy)3)等の金属錯体や、ルブレン等のナフタセン誘導体、キナクリドン誘導体、ペリレン等の縮合多環芳香族環等が挙げられる。
電子輸送層/ホールブロック層を形成する材料としては、オキシジアゾール誘導体、トリアゾール誘導体、フェナントロリン誘導体、フェニルキノキサリン誘導体、ベンズイミダゾール誘導体、ピリミジン誘導体等が挙げられる。
電子注入層を形成する材料としては、酸化リチウム(Li2O)、酸化マグネシウム(MgO)、アルミナ(Al23)等の金属酸化物、フッ化リチウム(LiF)、フッ化ナトリウム(NaF)の金属フッ化物などが挙げられるが、これらに限定されない。
陰極材料としては、アルミニウム、マグネシウム-銀合金、アルミニウム-リチウム合金等が挙げられるが、これらに限定されない。
電子ブロック層を形成する材料としては、トリス(フェニルピラゾール)イリジウム等が挙げられる。
正孔輸送性高分子としては、ポリ[(9,9-ジヘキシルフルオレニル-2,7-ジイル)-co-(N,N’-ビス{p-ブチルフェニル}-1,4-ジアミノフェニレン)]、ポリ[(9,9-ジオクチルフルオレニル-2,7-ジイル)-co-(N,N’-ビス{p-ブチルフェニル}-1,1’-ビフェニレン-4,4-ジアミン)]、ポリ[(9,9-ビス{1’-ペンテン-5’-イル}フルオレニル-2,7-ジイル)-co-(N,N’-ビス{p-ブチルフェニル}-1,4-ジアミノフェニレン)]、ポリ[N,N’-ビス(4-ブチルフェニル)-N,N’-ビス(フェニル)-ベンジジン]-エンドキャップド ウィズ ポリシルシスキノキサン、ポリ[(9,9-ジジオクチルフルオレニル-2,7-ジイル)-co-(4,4’-(N-(p-ブチルフェニル))ジフェニルアミン)]等が挙げられる。
発光性高分子としては、ポリ(9,9-ジアルキルフルオレン)(PDAF)等のポリフルオレン誘導体、ポリ(2-メトキシ-5-(2’-エチルヘキソキシ)-1,4-フェニレンビニレン)(MEH-PPV)等のポリフェニレンビニレン誘導体、ポリ(3-アルキルチオフェン)(PAT)等のポリチオフェン誘導体、ポリビニルカルバゾール(PVCz)等が挙げられる。
以下、合成例、実施例および参考例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。なお、使用した装置は以下のとおりである。
(1)MALDI-TOF-MS:ブルカー社製、autoflex III smartbeam
(2)LDI-MS:Bruker 社製AutoFlex
(3)1H-NMR:日本電子(株)製 JNM-ECP300 FT NMR SYSTEM
(4)基板洗浄:長州産業(株)製 基板洗浄装置(減圧プラズマ方式)
(5)ワニスの塗布:ミカサ(株)製 スピンコーターMS-A100
(6)膜厚測定:(株)小坂研究所製 微細形状測定機サーフコーダET-4000
(7)素子の作製:長州産業(株)製 多機能蒸着装置システムC-E2L1G1-N
(8)素子の電流密度等の測定:(株)イーエッチシー製 多チャンネルIVL測定装置
(9)消衰係数(k)の測定:ジェー・エー・ウーラムジャパン製 多入社角分光エリプソメーターVASE
[1]オニウムボレート塩の製造
[合成例1]オニウムボレート塩(P-3)の製造
Figure 0007420073000049
(1)中間体(Q-2)の合成
Figure 0007420073000050
10L四ツ口フラスコに、ジエチルエーテル6,068mL、上記式(Q-1)で表される化合物151.7g、KCN9.4gを仕込み、34~36℃で3時間反応させた。反応後、常圧濃縮を行い、267.2gの褐色液体を得た。得られた褐色液体を、55℃にてエバポレータで濃縮後、35℃で16時間減圧乾燥し、薄い茶色の固体である中間体(Q-2)157.7gを得た。得られた中間体(Q-2)は、LDI-MSにて同定した。
LDI-MS m/Z found:1050.12([M]-calcd:1049.97).
(2)オニウムボレート塩(P-3)の合成
300mL三角フラスコに、ジフェニル[4-(フェニルチオ)フェニル]スルホニウムトリフルオロメタンスルホネート11.043g、上記で得られた中間体(Q-2)22.000g、イオン交換水110mL、ジエチルエーテル110mLを仕込み、25℃で16時間反応させた。反応後、フラスコ内容物を300mL分液ロートに移して水層を分離した。イオン交換水100mLでエーテル層を5回洗浄した。エーテル層を40~45℃にてエバポレータで濃縮後、20時間減圧乾燥し、淡黄色の固体である目的物(P-3)24gを得た。得られた目的物は、1H-NMRおよびLDI-MSにて同定した。
1H-NMR(300MHz、DMSO-D6):δ7.40~7.80(19H,m)
LDI-MS m/Z found:371.04([M]+calcd:371.09).
LDI-MS m/Z found:1050.11([M]-calcd:1049.97).
[2]アニリン誘導体の製造
[実施例1]アニリン誘導体Aの製造
Figure 0007420073000051
(1)ビス(3-ニトロフェニル)アミンの合成
m-ニトロアニリン6.00g、1-ブロモ-3-ニトロベンゼン9.65g、ビス(ジベンジリデンアセトン)パラジウム0.749g、ジ-t-ブチル(2’,4’,6’-トリイソプロピル-[1,1’-ジフェニル]-2-イル)ホスフィン(tBuXPhos)1.10g、炭酸カリウム18.0g、およびトルエン60mLを反応容器に加え、窒素置換を行った後、80℃で2時間撹拌した。室温まで冷却した後、ろ過した。ろ物にイオン交換水とメタノールを加え、室温下撹拌を行った後、さらにろ過し、ろ物を乾燥して目的とするビス(3-ニトロフェニル)アミン8.54gを得た(収率:76%)。
1H-NMR(500MHz,DMSO-d6)δ[ppm]:9.23(brs),7.88(s,2H),7.73-7.77(m,2H),7.56-7.60(m,4H).
(2)ビス(3-アミノフェニル)アミン/2HClの合成
上記で得られたビス(3-ニトロフェニル)アミン3.00g、5%パラジウム/カーボン(NEケムキャット製、AERタイプ、50%含水)0.300g、およびテトラヒドロフラン30mLを反応容器に入れ、反応容器内を水素置換して50℃で7時間撹拌した。室温まで冷却した後、反応液をセライト(セライト545使用)ろ過した。ろ液を0℃に冷却した後、1MHCl酢酸エチル溶液を35mL滴下し、撹拌した。反応液をろ過して得られたろ物を乾燥し、目的とするビス(3-アミノフェニル)アミン/2HCl(ビス(3-アミノフェニル)アミン二塩酸塩3.02gを得た(収率:3.03g)。
1H-NMR(500MHz,CDCl3)δ[ppm]:7.00-7.04(m,2H),6.44-6.46(m,2H),6.42-6.43(m,2H),6.25-6.27(m,2H),5.54(brs,1H),3.61(brs,4H).
(3)アニリン誘導体Aの合成
上記で得られたビス(3-アミノフェニル)アミン/2HCl0.500g、3-(4-ブロモフェニル)-9-フェニル-9H-カルバゾール4.03g、ビス(ジベンジリデンアセトン)パラジウム0.106g、およびナトリウム-t-ブトキシド1.77gを反応容器に入れ、窒素置換をした後、トルエン30mL、および別途予め準備したフェニルジ-t-ブチルホスフィンのトルエン溶液1.45mL(濃度:50.3g/L)を加え、80℃で3.5時間撹拌した。室温まで冷却した後、トルエンおよび飽和食塩水を加えて、分液を行った。有機層をシリカゲルろ過した後、ろ液を濃縮した。得られた濃縮液をメタノール/酢酸エチルの混合溶媒中に滴下し、室温下で撹拌した。スラリー溶液をろ過し、得られたろ物を乾燥して、目的とするアニリン誘導体A3.19gを得た(収率:97%)。
MALDI-TOF-MS m/Z found:1786.06([M]+calcd:1784.71)
[実施例2]アニリン誘導体Bの製造
Figure 0007420073000052
(1)4’-(3-ブロモ-9H-カルバゾール-9-イル)-N,N-ジフェニル-[1,1’-ビフェニル]-4-アミンの合成
3-ブロモ-9-(4-ヨードフェニル)-9H-カルバゾール2.00g、(4-(ジフェニルアミノ)フェニル)ボロン酸1.35g、テトラキストリフェニルホスフィンパラジウム0.103g、Aliquat336 0.569g、テトラヒドロフラン25mL、および2M炭酸カリウム水溶液17mLを反応容器に入れ、窒素置換をした後、60℃で22時間撹拌した。室温まで冷却した後、分液を行い、有機相を濃縮乾固した。乾固物に1,4-ジオキサンを加えて80℃で溶解させた後、メタノールを加えて室温まで冷却後、2時間撹拌を続けた。撹拌終了後、ろ過して得られたろ物を乾燥して目的とする4’-(3-ブロモ-9H-カルバゾール-9-イル)-N,N-ジフェニル-[1,1’-ビフェニル]-4-アミン2.15gを得た(収率:85%)。
1H-NMR(500MHz,CDCl3)δ[ppm]:8.26(d,J=2.0Hz,1H),8.09(d,J=8.0Hz,1H),7.78(d,J=8.5Hz,2H),7.54-7.58(m,4H),7.49(dd,J=8.5,2.0Hz,1H),7.44-7.45(m,2H),7.28-7.33(m,6H),7.16-7.20(m,6H),7.05-7.08(m,2H).
(2)アニリン誘導体Bの合成
N1-(3-アミノフェニル)ベンゼン-1,3-ジアミン二塩酸塩0.163g、上記で得られた4’-(3-ブロモ-9H-カルバゾール-9-イル)-N,N-ジフェニル-[1,1’-ビフェニル]-4-アミン1.81g、ビス(ジベンジリデンアセトン)パラジウム0.0355g、およびナトリウム-t-ブトキシド0.600gを反応容器に入れ、窒素置換をした後、トルエン9mL、および別途予め準備したフェニルジ-t-ブチルホスフィンのトルエン溶液0.88mL(濃度:32.3g/L)を加え、100℃で3時間撹拌した。室温まで冷却した後、トルエンおよびイオン交換水を加えて、分液を行った。有機層をシリカゲルろ過した後、ろ液を濃縮した。得られた濃縮液をメタノール/酢酸エチルの混合溶媒中に滴下し、室温下で撹拌を行った。スラリー溶液をろ過し、得られたろ物を乾燥して目的とするアニリン誘導体B1.34gを得た(収率:85%)。
MALDI-TOF-MS m/Z found:2620.94([M]+calcd:2620.08)
[実施例3]アニリン誘導体Cの製造
Figure 0007420073000053
(1)N,N-ビス(3-ニトロフェニル)-9-フェニル-9H-カルバゾール-3-アミンの合成
ビス(3-ニトロフェニル)アミン1.00g、3-ブロモ-9-フェニル-9H-カルバゾール1.37g、ビス(ジベンジリデンアセトン)パラジウム0.0678g、ジ-t-ブチル(2’,4’,6’-トリイソプロピル-[1,1’-ジフェニル]-2-イル)ホスフィン(tBuXPhos)0.0983g、炭酸カリウム1.61g、およびトルエン10mLを反応容器に入れ、窒素置換した後、100℃で24.5時間撹拌した。反応終了後、トルエンと飽和食塩水を加えて分液した。有機層をシリカゲルろ過した後、ろ液を濃縮した。濃縮残渣にクロロホルムとヘキサンを加えて溶液とした後、カラムクロマトグラフィーにより精製(溶離液はクロロホルム/ヘキサンの混合溶媒)し、目的とするN,N-ビス(3-ニトロフェニル)-9-フェニル-9H-カルバゾール-3-アミン1.02gを得た(収率:53%)。
MALDI-TOF-MS m/Z found:499.86([M]+calcd:500.15)
(2)N1-(3-アミノフェニル)-N1-(9-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)ベンゼン-1,3-ジアミンの合成
N,N-ビス(3-ニトロフェニル)-9-フェニル-9H-カルバゾール-3-アミン0.603g、5%パラジウム/カーボン(NEケムキャット製、AERタイプ、50%含水)0.0582g、およびテトラヒドロフラン9mLを反応容器に入れた後、反応容器内を水素置換し、50℃で24時間撹拌した。室温まで冷却した後、反応液をセライト(セライト545使用)ろ過した。ろ液を乾固させて目的とするN1-(3-アミノフェニル)-N1-(9-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)ベンゼン-1,3-ジアミン0.486gを得た(収率:92%)。
1H-NMR(500MHz,CDCl3)δ[ppm]:8.00(d,J=8.0Hz,1H),7.92(m,1H),7.56-7.60(m,4H),7.45(m,1H),7.37-7.38(m,2H),7.32(d,J=8.5Hz,1H),7.20-7.23(m,2H),6.98-7.02(m,2H),6.52(d,J=8.0Hz,2H),6.45(m,2H),6.29-6.31(m,2H).
(3)アニリン誘導体Cの合成
上記で得られたN1-(3-アミノフェニル)-N1-(9-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)ベンゼン-1,3-ジアミン0.451g、3-ブロモ-9-フェニル-9H-カルバゾール1.45g、酢酸パラジウム0.0234g、およびナトリウム-t-ブトキシド0.539gを反応容器に入れ、窒素置換した後、トルエン10mL、および別途予め準備したフェニルジ-t-ブチルホスフィンのトルエン溶液0.84mL(濃度:54.0g/L)を加え、90℃で1.5時間撹拌した。室温まで冷却した後、トルエンおよび飽和食塩水を加えて分液した。有機層をシリカゲルろ過した後、ろ液を濃縮した。得られた濃縮液をメタノール/酢酸エチルの混合溶媒中に滴下し、室温下で撹拌した。スラリー溶液をろ過し、得られたろ物を乾燥して、目的とするアニリン誘導体C0.855gを得た(収率:59%)。
MALDI-TOF-MS m/Z found:2620.94([M]+calcd:2620.08)
[3]電荷輸送性ワニスの調製
[参考例1-1]
実施例3で得られたアニリン誘導体C77mgと、合成例1で得られたオニウムボレート塩(P-3)78mgとの混合物に、キシレン5.0gを加えて室温で撹拌して溶解させて得られた溶液を、孔径0.2μmのシリンジフィルターでろ過して電荷輸送性ワニスを得た。
[参考例1-2~1-4]
アニリン誘導体Cおよびオニウムボレート塩(P-3)の使用量を、それぞれ113mgと150mg、147mgと117mg、100mgと54mgとした以外は、参考例1-1と同様にして電荷輸送性ワニスを得た。
[比較参考例1-1]
国際公開第2015/050253号に記載された方法に従って合成した下記式で表されるアニリン誘導体D131mgと、オニウムボレート塩(P-3)132mgとの混合物に、キシレン5.0gを加えて室温で撹拌して溶解させて得られた溶液を、孔径0.2μmのシリンジフィルターでろ過して電荷輸送性ワニスを得た。
Figure 0007420073000054
[4]薄膜の製造および膜物性評価
[参考例2-1~2-4および比較参考例2-1]
参考例1-1~1-4および比較参考例1-1で得られたワニスを、それぞれスピンコーターを用いて石英基板に塗布した後、大気焼成下、120℃で1分間乾燥した。次に、乾燥させた石英基板を大気雰囲気下、150℃で10分間焼成し、石英基板上に50nmの均一な薄膜を形成した。
得られた膜付き石英基板を用いて、消衰係数kの測定を行った。結果を表1に示す。
Figure 0007420073000055
表1に示されるように、類似構造のアニリン誘導体を用いた場合と比較して、本発明のアニリン誘導体を含むワニスから得られる薄膜の消衰係数が低いことがわかる。
[5]有機EL素子の作製および特性評価
[参考例3-1]
参考例1-1で得られたワニスを、スピンコーターを用いてITO基板に塗布した後、大気雰囲気下、120℃で1分間乾燥した。次に、この乾燥させた塗膜付きITO基板をグローブボックス内に挿入し、大気雰囲気下、150℃で10分間焼成し、ITO基板上に50nmの薄膜を形成した。ITO基板としては、インジウム錫酸化物(ITO)が表面上に膜厚150nmでパターニングされた25mm×25mm×0.7tのガラス基板を用い、使用前にO2プラズマ洗浄装置(150W、30秒間)によって表面上の不純物を除去した。
次いで、薄膜を形成したITO基板に対し、蒸着装置(真空度1.0×10-5Pa)を用いてα-NPD(N,N’-ジ(1-ナフチル)-N,N’-ジフェニルベンジジン)を0.2nm/秒にて120nm成膜した。次に、関東化学(株)製の電子ブロック材料HTEB-01を10nm成膜した。次いで、新日鉄住金化学(株)製の発光層ホスト材料NS60と発光層ドーパント材料Ir(PPy)3を共蒸着した。共蒸着はIr(PPy)3の濃度が6%になるように蒸着レートをコントロールし、40nm積層させた。次いで、Alq3、フッ化リチウムおよびアルミニウムの薄膜を順次積層して有機EL素子を得た。この際、蒸着レートは、Alq3およびアルミニウムについては0.2nm/秒、フッ化リチウムについては0.02nm/秒の条件でそれぞれ行い、膜厚は、それぞれ20nm、0.5nmおよび80nmとした。
なお、空気中の酸素、水等の影響による特性劣化を防止するため、有機EL素子は封止基板により封止した後、その特性を評価した。封止は、以下の手順で行った。酸素濃度2ppm以下、露点-76℃以下の窒素雰囲気中で、有機EL素子を封止基板の間に収め、封止基板を接着剤((株)MORESCO製、モレスコモイスチャーカット WB90US(P))により貼り合わせた。この際、捕水剤(ダイニック(株)製,HD-071010W-40)を有機EL素子と共に封止基板内に収めた。貼り合わせた封止基板に対し、UV光を照射(波長:365nm、照射量:6,000mJ/cm2)した後、80℃で1時間、アニーリング処理して接着剤を硬化させた。
Figure 0007420073000056
[参考例3-2,3-3]
参考例1-1で得られたワニスの代わりに、それぞれ、参考例1-2,1-3で得られたワニスを用いた以外は、参考例3-1と同様の方法で各層を形成し、有機EL素子を作製した。
上記で得られた各素子について、5,000cd/m2で発光させた場合における駆動電圧、電流密度、電流効率、発光効率、外部発光量子収率(EQE)を測定した。結果を表2に示す。
Figure 0007420073000057
表2に示されるように、本発明のアニリン誘導体を含む電荷輸送性ワニスから作製された電荷輸送性薄膜を正孔注入層として備えるEL素子は好適に駆動することがわかる。

Claims (4)

  1. 式(1)で表されることを特徴とするアニリン誘導体。
    Figure 0007420073000058
    〔式中、Ph1は、それぞれ独立して、式(P1)または式(P2)で表される基を表すが、少なくとも1つは式(P1)で表される基であり、
    Figure 0007420073000059
    (式中、R1~R4は、それぞれ独立して、水素原子、シアノ基、またはシアノ基で置換されていてもよい、炭素数1~20のアルキル基、炭素数2~20のアルケニル基、炭素数2~20のアルキニル基、炭素数6~20のアリール基もしくは炭素数2~20のヘテロアリール基を表す。)
    Ar0は、それぞれ独立して、式(B1)~(B14)および(B16)のいずれかで表される基を表し、
    Figure 0007420073000060
    (式中、R5~R25、R28~R49およびR51~R178およびR186~R194は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、またはハロゲン原子、ニトロ基もしくはシアノ基で置換されていてもよい、ジフェニルアミノ基、炭素数1~20のアルキル基、炭素数2~20のアルケニル基、炭素数2~20のアルキニル基、炭素数6~20のアリール基もしくは炭素数2~20のヘテロアリール基を表し、R26およびR27は、それぞれ独立して、水素原子、Z1で置換されていてもよい炭素数1~20のアルキル基、Z1で置換されていてもよい炭素数2~20のアルケニル基、Z1で置換されていてもよい炭素数2~20のアルキニル基、Z2で置換されていてもよい炭素数6~20のアリール基もしくはZ2で置換されていてもよい炭素数2~20のヘテロアリール基を表し、R50は、水素原子、Z1で置換されていてもよい炭素数1~20のアルキル基、Z1で置換されていてもよい炭素数2~20のアルケニル基、Z1で置換されていてもよい炭素数2~20のアルキニル基、Z2で置換されていてもよい炭素数6~20のアリール基もしくはZ2で置換されていてもよい炭素数2~20のヘテロアリール基を表し、Z1は、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、ジフェニルアミノ基、Z3で置換されていてもよい炭素数6~20のアリール基またはZ3で置換されていてもよい炭素数2~20のヘテロアリール基を表し、Z2は、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、ジフェニルアミノ基、Z3で置換されていてもよい炭素数1~20のアルキル基、Z3で置換されていてもよい炭素数2~20のアルケニル基またはZ3で置換されていてもよい炭素数2~20のアルキニル基を表し、Z3は、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基またはジフェニルアミノ基を表し、Ar4は、それぞれ独立して、ジ(炭素数6~20のアリール基)アミノ基で置換されていてもよい炭素数6~20のアリール基を表す。)
    kは、1以上の整数を表す。〕
  2. 式(1-1)~(1-4)のいずれかで表される請求項1記載のアニリン誘導体。
    Figure 0007420073000061
    (Ar1~Ar3は、それぞれ異なって前記式(B1)~(B14)および(B16)のいずれかで表される基であり、各式のそれぞれにおいて、Ar1は、すべて同一の基を表し、Ar2は、すべて同一の基を表し、Ar3は、すべて同一の基を表す。)
  3. 前記式(P1)で表される基の数(nm)と前記式(P2)で表される基の数(np)が、0.5≦nm/(nm+np)を満たす請求項1または2記載のアニリン誘導体。
  4. 式(4)
    Figure 0007420073000062
    (式中、Ph1およびkは、前記と同じ意味を表す。)
    で表されるアミン化合物と、式(5)
    Figure 0007420073000063
    (式中、Xは、ハロゲン原子または擬ハロゲン基を表し、Ar0は、前記と同じ意味を表す。)
    で表されるアリール化合物とを、触媒存在下で反応させる請求項1記載のアニリン誘導体の製造方法。
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