JP7415806B2 - 光硬化性インキ - Google Patents

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Description

本発明は、光硬化性インキに関する。
光硬化性組成物を用いた光硬化性インキは、紫外線の照射により瞬時乾燥(硬化)が可
能であるため、印刷直後から後加工(書籍化、パッケージの断裁、折り加工、ニス塗工な
ど)が実施でき、短納期化が可能になり生産性が大きく向上できるため、1日程度の乾燥
時間を要する酸化重合型インキなどからの代替が急速に進んでいる。
しかしながら、光硬化性インキは光硬化時の硬化収縮により基材との接着力が低下して
剥離することがあり、特にプラスチックフィルム等の非吸収性媒体を基材として用いた場
合に剥離が生じやすく印刷物の品質を低下させる一因となる。この対応として、非吸収性
基材に対応したプライマーを印字後に画像を印字し、接着性を確保する技術が提案されて
いる(特許文献1)。
しかし、プライマーの層を付加させると工程が増加したり、コストが高くなったりする
デメリットが多いため、印字工程を簡略化するために、プライマー層を形成することなく
非吸収性基材に強固に密着できる光硬化性インキが求められていた。一方でインキ中にポ
リマー成分を導入することで様々な機能を付与する技術が知られており、塩素化オレフィ
ン構造を有する重合体を含む光硬化性インキによりプラスチック基材に対して密着性を高
め、接着性を改良する技術が提案されている(特許文献2)。
特開2013-52378号公報 特開2017-8295号公報
しかしながら、これらの技術においても、プラスチックフィルム等の非吸収性基材に対
する接着性が不十分であり、接着性のさらなる向上が望まれている。
そこで本発明は、プラスチックフィルム等の非吸収性基材に印刷した場合であっても、
基材との接着性に優れた光硬化性インキを提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題に鑑み鋭意研究を積み重ねた。その結果、光重合性化合物およ
び光重合開始剤を含む光硬化性インキにおいて、光を吸収することで固液相転移する化合
物を用いることで、上記課題が解決することを見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち本発明は、光重合性化合物と、光重合開始剤と、光を吸収することで固液相転
移する化合物と、を含む、光硬化性インキである。
本発明によれば、光を吸収することで固液相転移する化合物を用いることで、光照射に
よりインキの硬化が生じる際に、前記化合物が相転移に伴って軟化する。そのため、イン
キ塗膜形成時の柔軟性が高まり、基材との接着性が向上しうる。
以下、本発明の好ましい実施形態を説明する。本明細書において、範囲を示す「X~Y
」は「X以上Y以下」を意味する。また、特記しない限り、操作および物性等は、室温(
20~25℃)/相対湿度40~50%RHの条件で測定する。
また、「(メタ)アクリレート」とは、アクリレートおよびメタクリレートの総称であ
る。(メタ)アクリル酸等の(メタ)を含む化合物等も同様に、名称中に「メタ」を有す
る化合物と「メタ」を有さない化合物の総称である。
<光硬化性インキ>
本発明の一実施形態は、光重合性化合物と、光重合開始剤と、光を吸収することで固液
相転移する化合物と、を含む、光硬化性インキである。
本発明の光硬化性インキは、光を吸収することで固液相転移する化合物(以下、単に「
光相転移化合物」とも称する)を含有するものを使用することを特徴とする。上記化合物
は、光を吸収することにより固体状態から液体状態に変化する化合物である。このような
光相転移化合物を含む光硬化性インキにおいて基材との接着性が向上するメカニズムは明
らかになっていないが、以下のように推定される。
一般的に光硬化性インキは、モノマーなどの光重合性化合物および光重合開始剤を含み
、基材上に上記光硬化性インキを用いて形成された塗膜に紫外線などの光が照射されるこ
とで、光重合開始剤から反応が開始され重合が進行し硬化する。この重合反応に伴い、体
積収縮が生じ塗膜に残留応力が発生するため、基材と塗膜との間に歪が生じ、基材への接
着性が低下し画像不良の一因となる。
ここで、光を吸収することで固液相転移する化合物は、光吸収により固体から液体に相
転移し流動性が増加する。そのため、光重合性化合物および光重合開始剤に加えて光相転
移化合物を含む光硬化性インキでは、塗膜に光が照射されることで、光重合性化合物によ
る硬化が生じると同時に、光相転移化合物が軟化する。これにより、塗膜の粘性を制御す
ることが可能となり、硬化時の硬化収縮が緩和されることで塗膜の残留応力が低減され基
材との密着性が高まるものと考えられる。その結果、塗膜の剥離が防止され、印刷物の品
質が改善されるものと考えられる。
なお、上記メカニズムは推測に基づくものであり、その正誤が本発明の技術的範囲に影
響を及ぼすものではない。
以下、本発明の一実施形態に係る光硬化性インキを構成する各成分について説明する。
[光重合性化合物]
本発明の光硬化性インキに使用される光重合性化合物は、光の照射により硬化する化合
物であって、後述する光重合開始剤および光相転移化合物のいずれにも該当しないものを
いう。
光重合性化合物としては特に制限されず、従来公知ものが使用できるが、少ない光量あ
るいは短い時間での硬化が可能であることから、ラジカル重合可能なエチレン性不飽和結
合を有する化合物であることが好ましい。ラジカル重合可能なエチレン性不飽和結合を有
する化合物としては、(メタ)アクリロイル基(アクリロイル基(CH=CHCO-)
またはメタクリロイル基(CH=CCHCO-))を含む化合物が挙げられる。(メ
タ)アクリロイル基を有する化合物としては、(メタ)アクリレート化合物などが挙げら
れる。
(メタ)アクリレート化合物としては、分子内に1個の(メタ)アクリロイル基を有す
る単官能(メタ)アクリレート化合物および2個以上の(メタ)アクリロイル基を有する
多官能(メタ)アクリレート化合物のいずれも用いることができる。なかでも、硬化性が
良好であり、柔軟性に優れ、基材との接着性と両立しやすいことから、本発明の光硬化性
インキは多官能(メタ)アクリレート化合物を含むことが好ましい。
単官能(メタ)アクリレート化合物としては、特に限定されないが、例えば、
メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリ
レート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブ
チル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、n-ペンチル(メタ)ア
クリレート、n-ヘキシル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレ
ート、オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、ラウリル(
メタ)アクリレート、およびステアリル(メタ)アクリレートなどのアルキル(メタ)ア
クリレート類;
2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリ
レート、および4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートなどのヒドロキシアルキル(
メタ)アクリレート類;
エチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールモノ(メタ)ア
クリレート、ペンタンジオールモノ(メタ)アクリレート、およびヘキサンジオールモノ
(メタ)アクリレートなどの二価アルコールのモノ(メタ)アクリレート類;
ジエチレングリコールのモノ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールのモノ(
メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールのモノ(メタ)アクリレート、ポリエチ
レングリコールのモノ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールのモノ(メタ)ア
クリレート、トリプロピレングリコールのモノ(メタ)アクリレート、およびポリプロピ
レングリコールのモノ(メタ)アクリレートなどのポリアルキレングリコールのモノ(メ
タ)アクリレート類;等が挙げられる。
多官能(メタ)アクリレート化合物としては、例えば、トリエチレングリコールジ(メ
タ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレング
リコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、
ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)
アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオ
ールジ(メタ)アクリレート、1,10-デカンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオ
ペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジメチロール-トリシクロデカンジ(メタ
)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート
、ポリテトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジア
クリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート等の二官能(メタ)アクリレート
化合物;トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ
(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエ
リスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)ア
クリレート、グリセリンプロポキシトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールエ
トキシテトラ(メタ)アクリレート等の三官能以上の多官能(メタ)アクリレート化合物
が挙げられる。
(メタ)アクリレート化合物は、変性物であってもよく、例えば、エチレンオキサイド
変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性ペンタ
エリスリトールテトラ(メタ)アクリレート等のエチレンオキサイド変性(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート等のプロピレンオキサイド変性(メタ)アクリレート等のアルキレンオキサイド変性(メタ)アクリレート;カプロラクトン変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート等のカプロラクトン変性(メタ)アクリレート;及びカプロラクタム変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等のカプロラクタム変性(メタ)アクリレート等が挙げられる。
本発明においては、光重合性化合物は単独で用いても、混合して用いてもよい。また、
光重合性化合物は、モノマーを用いてもよいが、オリゴマー化して用いてもよい。
光重合性化合物の含有量は特に制限されないが、光硬化性インキの総質量に対して30
~80質量%であることが好ましく、45~65質量%であることがより好ましい。上記
範囲であると、着色剤を加えた場合、着色剤による十分な発色性を確保できるため好まし
い。また、硬化塗膜の強度の高い印刷物が得られるため好ましい。なお、2種類以上の光
硬化性化合物を用いる場合、その合計量が上記範囲であることが好ましい。
[光重合開始剤]
本発明の光硬化性インキにおける光重合開始剤は特に制限されず、従来公知のものを使
用することができる。
光重合開始剤は、280~480nmに吸収波長領域を有することが好ましく、330
~430nmに吸収波長領域を有することがより好ましく、350~420nmに吸収波
長領域を有することがさらに好ましい。上記範囲であれば容易に光源の発光波長領域と重
なりあう領域とすることができる。
光重合開始剤としては、分子内開裂型光重合開始剤および水素引き抜き型光重合開始剤
が挙げられ、いずれも好適に使用できる。
分子内開裂型光重合開始剤としては、例えば、ジエトキシアセトフェノン、2-ヒドロ
キシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、ベンジルジメチルケタール、1-
(4-イソプロピルフェニル)-2-ヒドロキシ-2-メチルプロパン-1-オン、4-
(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル-(2-ヒドロキシ-2-プロピル)ケトン、1-
ヒドロキシシクロヘキシル-フェニルケトン、2-ヒドロキシ-1-{4-[4-(2-
ヒドロキシ-2-メチル-プロピオニル)-ベンジル]-フェニル}-2-メチル-プロ
パン-1-オン、2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン、2,2-
ジエトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン等のアセトフェノン系化合物;1-[
4-(フェニルチオ)-,2-(O-ベンゾイルオキシム)]、1-[9-エチル-6-
(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-,1-(O-アセチルオ
キシム)等のオキシム系化合物、3,6-ビス(2-メチル-2-モルフォリノプロパノ
ニル)-9-ブチルカルバゾール等のカルバゾール系化合物、ベンゾイン、ベンゾインメ
チルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル等のベンゾイン系化合物;2-ベンジル
-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)ブタン-1-オン、2-(ジ
メチルアミノ)-2-(4-メチルベンジル)-1-(4-モルフォリノフェニル)ブタ
ン-1-オン、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルホリノプロ
パン-1-オン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルホリノフェニル)
-ブタノン等のアミノアルキルフェノン系化合物;ビス(2,4,6-トリメチルベンゾ
イル)-フェニルフォスフィンオキサイド、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニ
ルフォスフィンオキサイド、ビス(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2,4,4-トリ
メチル-ペンチルフォスフィンオキサイド等のアシルホスフィンオキシド系化合物;ベン
ジル、メチルフェニルグリオキシエステル等が挙げられる。
水素引き抜き型光重合開始剤としては、例えば、ベンゾフェノン、o-ベンゾイル安息
香酸メチル-4-フェニルベンゾフェノン、4,4’-ジクロロベンゾフェノン、ヒドロ
キシベンゾフェノン、4-ベンゾイル-4’-メチル-ジフェニルサルファイド、アクリ
ル化ベンゾフェノン、3,3’,4,4’-テトラ(t-ブチルペルオキシカルボニル)
ベンゾフェノン、3,3’-ジメチル-4-メトキシベンゾフェノン等のベンゾフェノン
系化合物;2-イソプロピルチオキサントン、2,4-ジメチルチオキサントン、2,4
-ジエチルチオキサントン、2,4-ジクロロチオキサントン等のチオキサントン系化合
物;4,4’-ビスジメチルアミノベンゾフェノン、4,4’-ビスジエチルアミノベン
ゾフェノン等のアミノベンゾフェノン系化合物;その他10-ブチル-2-クロロアクリ
ドン、2-エチルアンスラキノン、9,10-フェナンスレンキノン、カンファーキノン
等が挙げられる。
光重合開始剤は、1種単独で使用してもよいし2種以上を併用してもよい。また、光重
合開始剤は、市販品を用いてもよいし合成品を用いてもよい。
光重合開始剤の含有量は特に制限されないが、光硬化性インキの総質量に対して1~2
0質量%であることが好ましく、3~15質量%であることがより好ましい。光重合開始
剤の含有量が1質量%以上であると良好な硬化性を得ることができる。また、20質量%
以下であれば未反応の光重合開始剤が硬化物に残存することによるマイグレーションを回
避することができるため好ましい。なお、2種類以上の光重合開始剤を用いる場合、その
合計量が上記範囲であることが好ましい。
[光相転移化合物]
本発明の光硬化性インキに用いられる光を吸収することで固液相転移する化合物(光相
転移化合物)は、光を吸収することにより固体から液体に相転移する化合物であれば特に
制限されない。
光相転移化合物としては、光異性化を示す化合物であることが好ましく、例えば、光吸
収によりシス-トランス異性化反応を示す化合物などが挙げられる。なかでも、光重合性
化合物による硬化と光相転移化合物の軟化とをより効果的に進行させる観点から、好まし
くは280~480nm、より好ましくは330~430nm、さらに好ましくは350
~420nmの波長の光を吸収することで固液相転移する化合物が用いられうる。このよ
うな光吸収によりシス-トランス異性化を示す化合物としては、少ない光量で効果的に固
液相転移し、光硬化性インキの粘性を下げることができることから、アゾベンゼン化合物
(アゾベンゼン誘導体)またはアゾメチン化合物(C=N結合の両端にそれぞれ置換され
ていてもよい芳香族炭化水素基または置換されていてもよい芳香族複素環基を有する化合
物、アゾメチン誘導体ともいう)であることが好ましい。なお、本明細書中、アゾベンゼ
ン化合物(アゾベンゼン誘導体)は、アゾベンゼンを含む。本発明の光硬化性インキにお
いては、著しい着色がないことからインキの色再現性に優れるため、アゾメチン化合物が
より好ましく用いられうる。
上記光相転移化合物は、重合体であってもよい。例えば、アゾベンゼン化合物は、繰り
返し単位を含まずに構成されているアゾベンゼン化合物であってもよく、アゾベンゼン誘
導体に由来する構造単位を繰り返し単位として含む重合体であってもよい。同様に、アゾ
メチン化合物は、繰り返し単位を含まずに構成されているアゾメチン化合物であってもよ
く、アゾメチン誘導体に由来する構造単位を繰り返し単位として含む重合体であってもよ
い。また、重合体と、繰り返し単位を含まずに構成されている化合物(低分子化合物)と
の混合物であってもよい。本発明の光硬化性インキにおいては、塗膜の硬化時の粘性が低
くなって残留応力が緩和され基材との密着性がより高まることから、低分子化合物を用い
ることがより好ましい。
なお、光相転移化合物は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用
いてもよい。
以下、光相転移化合物として好適に用いられる低分子化合物としてのアゾベンゼン化合
物およびアゾメチン化合物、ならびにアゾベンゼン誘導体に由来する構造単位またはアゾ
メチン誘導体に由来する構造単位を含む重合体の具体的な形態を説明する。
(アゾベンゼン化合物)
本発明に用いられるアゾベンゼン化合物(アゾベンゼン誘導体)としては特に制限され
ないが、光照射による軟化速度が高く、基材との接着性がより向上しうることから、下記
化学式(1)で表されるアゾベンゼン化合物であることが好ましい。
上記化学式(1)中、R~R10は、それぞれ独立して、水素原子、アルキル基、ア
ルコキシ基、ハロゲン基、ヒドロキシ基およびカルボキシ基からなる群より選択される基
であり、R~R10の少なくとも3つは、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン基、ヒ
ドロキシ基およびカルボキシ基からなる群より選択される基であり、この際、R~R
の少なくとも1つは、炭素数1~18のアルキル基またはアルコキシ基であり、かつ、R
~R10の少なくとも1つは、炭素数1~18のアルキル基またはアルコキシ基である
アルキル基の例としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、n-ブチル基、n-
ペンチル基、n-ヘキシル基、n-ヘプチル基、n-オクチル基、n-ノニル基、n-デ
シル基、n-ウンデシル基、n-ドデシル基、n-トリデシル基、n-テトラデシル基、
n-ペンタデシル基、n-ヘキサデシル基などの直鎖状のアルキル基;イソプロピル基、
イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、イソアミル基、tert-ペン
チル基、ネオペンチル基、1-メチルペンチル基、4-メチル-2-ペンチル基、3,3
-ジメチルブチル基、2-エチルブチル基、1-メチルヘキシル基、tert-オクチル
基、1-メチルヘプチル基、2-エチルヘキシル基、2-プロピルペンチル基、2,2-
ジメチルヘプチル基、2,6-ジメチル-4-ヘプチル基、3,5,5-トリメチルヘキ
シル基、1-メチルデシル基、1-ヘキシルヘプチル基などの分岐状のアルキル基;が挙
げられる。
アルコキシ基の例としては、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、n-ブトキ
シ基、n-ペンチルオキシ基、n-ヘキシルオキシ基、n-ヘプチルオキシ基、n-オク
チルオキシ基、n-ノニルオキシ基、n-デシルオキシ基、n-ウンデシルオキシ基、n
-ドデシルオキシ基、n-トリデシルオキシ基、n-テトラデシルオキシ基、n-ペンタ
デシルオキシ基、n-ヘキサデシルオキシ基などの直鎖状のアルコキシ基:イソプロポキ
シ基、tert-ブトキシ基、1-メチルペンチルオキシ基、4-メチル-2-ペンチル
オキシ基、3,3-ジメチルブチルオキシ基、2-エチルブチルオキシ基、1-メチルヘ
キシルオキシ基、tert-オクチルオキシ基、1-メチルヘプチルオキシ基、2-エチ
ルヘキシルオキシ基、2-プロピルペンチルオキシ基、2,2-ジメチルヘプチルオキシ
基、2,6-ジメチル-4-ヘプチルオキシ基、3,5,5-トリメチルヘキシルオキシ
基、1-メチルデシルオキシ基、1-ヘキシルヘプチルオキシ基などの分岐状のアルコキ
シ基;が挙げられる。
ハロゲン基は、フルオロ基(-F)、クロロ基(-Cl)、ブロモ基(-Br)または
ヨード基(-I)を指す。
上記化学式(1)中、RおよびRは、それぞれ独立して、炭素数1~18のアルキ
ル基またはアルコキシ基であることが好ましい。中でも、基材との接着性のさらなる向上
の観点から、RおよびRは、それぞれ独立して、炭素数1~18のアルコキシ基であ
ることが好ましい。このように、2個のベンゼン環のパラ位に炭素数1~18のアルキル
基またはアルコキシ基を有することで、分子の熱運動性が増加し、上記のように系全体で
連鎖的に等方的な融解が生じやすくなる。この際、RおよびRで用いられる炭素数1
~18のアルキル基またはアルコキシ基は、直鎖状であってもよいし、分岐状であっても
よいが、光相転移が生じやすい棒状分子の構造を構成する観点から、直鎖状であることが
好ましい。
中でも、RおよびRは、それぞれ独立して、炭素数6~12のアルキル基またはア
ルコキシ基であることが好ましい。RおよびRが上記炭素数範囲内のアルキル基また
はアルコキシ基であれば、高い熱運動性を有しながらも、分子間に働くアルキル-アルキ
ル相互作用が比較的弱い。ゆえに、シス-トランス異性化がより進行しやすくなり、光照
射による軟化速度および基材との接着性がさらに向上する。これらの基としては、例えば
、n-ヘキシルオキシ基、n-オクチルオキシ基である。
なお、RおよびRは、同一であっても異なってもよいが、合成の容易さから、同一
であることが好ましい。
上記化学式(1)中、R~RおよびR~R10のうち少なくとも1つは、アルキ
ル基、アルコキシ基、ハロゲン基、ヒドロキシ基およびカルボキシ基からなる群より選択
される基(以下、単に置換基とも称する)である。かような構造を有することで、シス-
トランス異性化に有利に作用する格子欠陥の生成や自由体積の発現、π-π相互作用の低
減が生じる。ゆえに、シス-トランス異性化がより進行しやすくなり、光照射による軟化
速度および基材との接着性がさらに向上する。中でも、シス-トランス異性化に必要な自
由体積の確保の観点から、R~RおよびR~R10のうち少なくとも1つは分岐を
有していてもよい炭素数1~4のアルキル基もしくはアルコキシ基またはハロゲン基であ
ることが好ましく、基材との接着性のさらなる向上の観点から、炭素数1~4のアルキル
基であることがより好ましく、メチル基であることがさらにより好ましい。
上記化学式(1)中、R~RおよびR~R10における置換基の数は、好ましく
は1~8であり、より好ましくは1~6であり、よりさらに好ましくは1~4であり、特
に好ましくは1~3であり、例えば、3である。
~RおよびR~R10において置換基が存在する位置は、特に制限されないが
、上記化学式(1)のR、R、RおよびR(言い換えれば、Rのオルト位およ
びRのオルト位)のいずれかに置換基が少なくとも存在することが好ましく、上記化学
式(1)のR、R、RおよびRのいずれかにメチル基が少なくとも存在すること
がより好ましい。かような構造を有するアゾベンゼン化合物は、光照射による軟化速度が
より向上するため基材との接着性が向上する。例えば、上記化学式(1)のRにメチル
基が存在する化合物が挙げられる。
アゾベンゼン化合物は、例えば、4,4’-ジヘキシルアゾベンゼン、4,4’-ジオ
クチルアゾベンゼン、4,4’-ジデシルアゾベンゼン、4,4’-ジドデシルアゾベン
ゼン、4,4’-ジヘキサデシルアゾベンゼン等の化学式(1)のRおよびRが同一
の炭素数1~18のアルキル基である4,4’-ジアルキルアゾベンゼン;または4,4
’-ビス(ヘキシルオキシ)アゾベンゼン、4,4’-ビス(オクチルオキシ)アゾベン
ゼン、4,4’-ビス(ドデシルオキシ)アゾベンゼン、4,4’-ビス(ヘキサデシル
オキシ)アゾベンゼン等の化学式(1)のRおよびRが同一の炭素数1~18のアル
コキシ基である4,4’-ビス(アルコキシ)アゾベンゼンにおいて、ベンゼン環に付加
する水素原子がアルキル基、アルコキシ基、ハロゲン基、ヒドロキシ基およびカルボキシ
基からなる群より選択される基で一置換、二置換または三置換されている化合物であるこ
とが好ましい。より具体的には、下記の化合物(A1)~(A12)が挙げられる。
アゾベンゼン化合物は、単独でもまたは2種以上組み合わせても用いることができる。
アゾベンゼン化合物の合成方法は、特に制限されず、従来公知の合成方法を適用するこ
とができる。例えば、特開2018-124387号公報の段落「0039」~「004
8」に記載の合成方法等を適用することができる。
(アゾベンゼン誘導体に由来する構造単位を有する重合体)
アゾベンゼン化合物として、アゾベンゼン誘導体に由来する構造単位を有する重合体を
用いてもよい。
上記重合体の好ましい例としては、下記式(1’)で表される重合性基を有するアゾベ
ンゼン誘導体に由来する構造単位を含む重合体が挙げられる。当該重合体は、例えば、重
合性基を有するアゾベンゼン誘導体を含む単量体組成物を重合させて得られうる。
(式(1’)中、
~xのいずれか1つは、重合性基を有する基であり、残りは、それぞれ水素原子であり、
~rは、それぞれ水素原子、ヘテロ原子を含む官能基、炭素数1~12のアルキ
ル基または炭素数1~12のアルコキシ基である)。
ここで、前記重合性基を有する基としては、下記式(a)~(c)のいずれかで表され
る基であることが好ましい。
式(a)~(c)中、
は、水素原子またはメチル基であり、rは、炭素数1~12のアルキレン基であ
る。
アゾベンゼン誘導体に由来する構造単位を含む重合体は、アゾベンゼン基が光吸収して
、光励起・失活過程で放出される熱エネルギーが、結合する繰り返しユニット(構造単位
)に伝わること(光熱変換)により軟化する。特に、当該重合体がトランス体であると、
前述の光熱変換に加えて、トランス-シス光異性化がさらに生じやすく、Tgが低いシス
体が生成されやすい。そのため、低エネルギーの照射光量でも光硬化性インキを溶融また
は軟化させることができる。
式(1’)中、重合性基を有する基は、前述の式(a)~(c)のいずれかで表される
基であることが好ましく、式(c)で表される基であることがより好ましい。
式(1’)中、r~rは、それぞれ水素原子、ヘテロ原子を含む官能基、炭素数1
~12のアルキル基または炭素数1~12のアルコキシ基である。ヘテロ原子を含む官能
基の例には、ニトロ基、ヒドロキシ基、カルボキシ基が含まれる。炭素数1~12のアル
キル基および炭素数1~12のアルコキシ基は、それぞれは炭素数1~4のアルキル基お
よび炭素数1~4のアルコキシ基であることが好ましい。アルキル基やアルコキシ基の一
部は、ハロゲン基、ニトロ基、ヒドロキシ基、カルボキシ基などの置換基で置換されていてもよい。
重合体において光異性化を生じやすくする観点から、r~rは、炭素鎖が比較的短
い基であるか、相互作用しにくい基であることが好ましく、水素原子、炭素数1~4のア
ルキル基または炭素数1~4のアルコキシ基であることがより好ましい。
中でも、光異性化を生じやすくすることで、より低エネルギーの光照射によっても溶融
または軟化しやすくする観点では、重合性基を有するアゾベンゼン誘導体は、下記式(2
’)で表されることがより好ましく、下記式(3’)で表されることが特に好ましい。
式(2’)中、xは、重合性基を有する基であり、rは、水素原子、ヘテロ原子を含む官能基、炭素数1~12のアルキル基または炭素数1~12のアルコキシ基である。
式(3’)中、rは、式(2’)中のrと同義であり、式(3’)中、rおよびrは、式(a)~(c)中のrおよびrと同義である。中でも、式(3’)中、rは、水素原子、炭素数1~4のアルキル基、または炭素数1~4のアルコキシ基であることが好ましい。
重合体は、重合性基を有するアゾベンゼン誘導体に由来する構造単位以外にも他の単量
体に由来する構造単位をさらに含んでもよい。
アゾベンゼン誘導体に由来する構造単位を有する重合体の具体的な形態は特に制限され
ず、例えば特開2020-34640号公報に記載される形態が用いられうる。また、ア
ゾベンゼン誘導体に由来する構造単位を有する重合体の調製方法も特に制限されず、例え
ば、特開2020-34640号公報に記載の合成方法等を適用することができる。
(アゾメチン化合物)
アゾメチン化合物(アゾメチン誘導体)は、下記化学式(2)で表される化合物である
ことが好ましい。
上記化学式(2)中、Xは、NR20、OまたはSである。ここで、R20は、水素原
子、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシカルボニル基またはヒドロキシ基である。
21およびR22は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、ア
ルコキシ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、シアノ基、ニトロ基またはヒドロキシ
基である。
23およびR24は、それぞれ独立して、下記化学式(3)で表される基、水素原子
、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、シア
ノ基、ニトロ基またはヒドロキシ基である。この際、R23およびR24のいずれか一方
は、下記化学式(3)で表される基である。
上記化学式(3)中、ZおよびZは、それぞれ独立して、NまたはCHであり、か
つZ≠Zである。
上記化学式(3)中、R25~R29は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子
、アルキル基、アルコキシ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、シアノ基、ニトロ基
またはヒドロキシ基である。この際、R25~R29の少なくとも1つは、炭素数1~1
8のアルキル基、炭素数1~18のアルコキシ基、炭素数2~19のアシル基または炭素
数2~19のアルコキシカルボニル基である。
上記化学式(3)のベンゼン環の置換基の少なくとも1つが、アルキル基、アルコキシ
基、アシル基またはアルコキシカルボニル基であると、これらの置換基は熱運動性を有す
ることから、アゾメチン化合物はπ-π相互作用が支配的な周期構造中に、これらの熱運
動によって等方的に乱れた構造が共存する特異的な結晶構造を形成する。そのため、局所
的にシス-トランス異性化反応が進行しアゾメチン部位のπ-π相互作用が低減すると、
系全体で連鎖的に等方的な融解を生じる。
上記化学式(2)において、R21~R24の少なくとも1つが、ハロゲン原子、シア
ノ基、ニトロ基、ヒドロキシ基、炭素数1~18のアルキル基、炭素数1~18のアルコ
キシ基、炭素数2~19のアシル基または炭素数2~19のアルコキシカルボニル基であ
る、および/またはR20が、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、炭素数1~18のアルキル
基または炭素数2~19のアルコキシカルボニル基であることが好ましい。特に、上記化
学式(3)で表される基に隣接しないR21~R22およびR20の少なくとも1つが上
記に記載する置換基のいずれかであるのが好ましい。複素環の上記置換基を導入すること
で結晶が崩れやすく、光溶融性がよくなり、基材との接着性がよくなる。上記置換基のう
ち、炭素数1~18のアルキル基、炭素数1~18のアルコキシ基、炭素数2~19のア
シル基または炭素数2~19のアルコキシカルボニル基が好ましい。炭素数1~12のア
ルキル基、炭素数1~12のアルコキシ基、炭素数2~13のアシル基または炭素数2~
13のアルコキシカルボニル基がより好ましく、炭素数1~8のアルキル基、炭素数1~
8のアルコキシ基、炭素数2~9のアシル基または炭素数2~9のアルコキシカルボニル
基がさらに好ましい。例えば、R21は、メチル基である。このような構造とすることで
、シス-トランス異性化に有利に作用する格子欠陥の生成や自由体積の発現、π-π相互
作用の低減等が生じる。ゆえに、シス-トランス異性化がより進行しやすくなり、流動化
が発現しやすくなる点で好ましい。また、上記化学式(2)の複素環の置換基であるR
~R24およびR20のうち上記化学式(3)で表される基以外の全てが、水素原子で
ある場合も、上記と同様の流動化が発現しやすくなる点で好ましい。これは、ベンゼン環
(上記化学式(3)で表される基)に長鎖の置換基が入っているため、5員環(上記化学
式(2)の複素環)の置換基が全て水素原子でも、流動化が発現しやすくなるからである
前記R27は、炭素数1~18のアルキル基、炭素数1~18のアルコキシ基、炭素数
2~19のアシル基または炭素数2~19のアルコキシカルボニル基が好ましい。炭素数
1~12のアルキル基、炭素数1~12のアルコキシ基、炭素数2~13のアシル基また
は炭素数2~13のアルコキシカルボニル基がより好ましく、炭素数4~12のアルキル
基、炭素数4~12のアルコキシ基、炭素数5~13のアシル基または炭素数5~13の
アルコキシカルボニル基がさらに好ましい。例えば、R27は、n-へキシルオキシ基で
ある。このように、ベンゼン環のパラ位に長鎖置換基を導入することで結晶が崩れやすく
、光溶融性がよくなり、基材との接着性がよくなる。
さらに、熱運動を効率的に誘起するという観点から、上記化学式(2)の複素環(五員
環)側のR20または上記化学式(3)で表される基に隣接しないR21~R24の少な
くとも1つと、上記化学式(3)の六員環のR27とは、少なくとも一方が炭素数4~1
2のアルキル基、炭素数4~12のアルコキシ基、炭素数5~13のアシル基または炭素
数5~13のアルコキシカルボニル基であることが好ましい。例えば、R27は、n-へ
キシルオキシ基である。
25、R26、R28およびR29のうち少なくとも1つは、シス-トランス異性化
に有利に作用する格子欠陥の生成や自由体積の発現、分子間π-π相互作用の低減等を誘
起するために、分岐を有していてもよい炭素数1~4のアルキル基、分岐を有していても
よい炭素数1~4のアルコキシ基またはハロゲン原子であることが好ましい。
前記Xのヘテロ原子については、SまたはNが、基材との接着性がよくなることから好
ましい。例えば、Xは、Sである。
20~R29で用いられる炭素数1~18のアルキル基の例としては、特に制限され
るものではなく、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、n-ブチル基、n-ヘ
キシル基、n-ヘプチル基、n-オクチル基、n-ノニル基、n-デシル基、n-ウンデ
シル基、n-ドデシル基、n-トリデシル基、n-テトラデシル基、n-ペンタデシル基
、n-ヘキサデシル基などの直鎖状のアルキル基;イソプロピル基、sec-ブチル基、
イソブチル基、tert-ブチル基、1-メチルペンチル基、4-メチル-2-ペンチル
基、3,3-ジメチルブチル基、2-エチルブチル基、1-メチルヘキシル基、t-オク
チル基、1-メチルヘプチル基、2-エチルヘキシル基、2-プロピルペンチル基、2,
2-ジメチルヘプチル基、2,6-ジメチル-4-ヘプチル基、3,5,5-トリメチル
ヘキシル基、1-メチルデシル基、1-ヘキシルヘプチル基などの分岐状のアルキル基が
挙げられる。
20~R29で用いられる炭素数1~18のアルコキシ基の例としては、メトキシ基
、エトキシ基、n-プロポキシ基、n-ブトキシ基、n-ヘキシルオキシ基、n-ヘプチ
ルオキシ基、n-オクチルオキシ基、n-ノニルオキシ基、n-デシルオキシ基、n-ウ
ンデシルオキシ基、n-ドデシルオキシ基、n-トリデシルオキシ基、n-テトラデシル
オキシ基、n-ペンタデシルオキシ基、n-ヘキサデシルオキシ基などの直鎖状のアルコ
キシ基:1-メチルペンチルオキシ基、4-メチル-2-ペンチルオキシ基、3,3-ジ
メチルブチルオキシ基、2-エチルブチルオキシ基、1-メチルヘキシルオキシ基、t-
オクチルオキシ基、1-メチルヘプチルオキシ基、2-エチルヘキシルオキシ基、2-プ
ロピルペンチルオキシ基、2,2-ジメチルヘプチルオキシ基、2,6-ジメチル-4-
ヘプチルオキシ基、3,5,5-トリメチルヘキシルオキシ基、1-メチルデシルオキシ
基、1-ヘキシルヘプチルオキシ基などの分岐状のアルコキシ基が挙げられる。
20~R29で用いられる炭素数2~19のアシル基の例としては、飽和または不飽
和の直鎖状または分岐状のアシル基であり、例えば、アセチル基、プロパノイル基(プロ
ピオニル基)、ブタノイル基(ブチリル基)、イソブタノイル基(イソブチリル基)、ペ
ンタノイル基(バレリル基)、イソペンタノイル基(イソバレリル基)、sec-ペンタ
ノイル基(2-メチルブチリル基)、tert-ペンタノイル基(ピバロイル基)、ヘキ
サノイル基、ヘプタノイル基、オクタノイル基、tert-オクタノイル基(2,2-ジ
メチルヘキサノイル基)、2-エチルヘキサノイル基、ノナノイル基、イソノナノイル基
、デカノイル基、イソデカノイル基、ウンデカノイル基、ラウロイル基、ミリストイル基
、パルミトイル基、ステアロイル基、ベヘノイル基、ウンデシレノイル基およびオレオイ
ル基等が挙げられる。
20~R29で用いられる炭素数2~19のアルコキシカルボニル基の例としては、
直鎖状若しくは分岐状であり、例えば、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、
n-ブトキシカルボニル基、n-ヘキシルオキシカルボニル基、n-ヘプチルオキシカル
ボニル基、n-オクチルオキシカルボニル基、n-ノニルオキシカルボニル基、n-デシ
ルオキシカルボニル基、n-ウンデシルオキシカルボニル基、n-ドデシルオキシカルボ
ニル基、n-トリデシルオキシカルボニル基、n-テトラデシルオキシカルボニル基、n
-ペンタデシルオキシカルボニル基、n-ヘキサデシルオキシカルボニル基などの直鎖状
のアルコキシカルボニル基:1-メチルペンチルオキシカルボニル基、4-メチル-2-
ペンチルオキシカルボニル基、3,3-ジメチルブチルオキシカルボニル基、2-エチル
ブチルオキシカルボニル基、1-メチルヘキシルオキシカルボニル基、t-オクチルオキ
シカルボニル基、1-メチルヘプチルオキシカルボニル基、2-エチルヘキシルオキシカ
ルボニル基、2-プロピルペンチルオキシカルボニル基、2,2-ジメチルヘプチルオキ
シカルボニル基、2,6-ジメチル-4-ヘプチルオキシカルボニル基、3,5,5-ト
リメチルヘキシルオキシカルボニル基、1-メチルデシルオキシカルボニル基、1-ヘキ
シルヘプチルオキシカルボニル基などの分岐状のアルコキシカルボニル基が挙げられる。
上記したようにR20~R29で用いられる炭素数1~18のアルキル基、炭素数1~
18のアルコキシ基、炭素数2~19のアシル基または炭素数2~19のアルコキシカル
ボニル基は、直鎖状であってもよいし、分岐状であってもよい。例えば、これらの基は直
鎖状である。
アゾメチン化合物は、単独でもまたは2種以上組み合わせても用いることができる。
アゾメチン化合物の合成方法は、特に制限されず、従来公知の合成方法を適用すること
ができる。例えば、上記化学式(2)の複素環がチオフェン環であり、ZがCHであり
、ZがNであり、R21がBrであり、R22、R23、R25、R26、R28、R
29がHであり、R24が式(3)の基であり、R27がn-ヘキシルオキシ基である化
合物を例にとれば、下記スキーム1~3により合成できる。
ジメチルホルムアミド(DMF)中、原料の4-ニトロフェノールと1-ヨードヘキサ
ン(C13I)とを炭酸カリウム(KCO)を用いて加熱還流して反応させ、反
応液を水洗後、濃縮し、精製すれば、4-ヘキシルオキシニトロベンゼンを得ることがで
きる(下記スキーム(Scheme)1参照)。
エタノール(EtOH)とテトラヒドロフラン(THF)の混合溶媒中、パラジウム炭
素(Pd/C触媒)下、スキーム1で得られた4-ヘキシルオキシニトロベンゼンに対し
て水素ガス(H)を封入しながら攪拌して反応させ、反応液から触媒を除去し、溶液を
濃縮後、エタノールで再結晶することで、4-(ヘキシルオキシ)アニリンを得ることが
できる(下記スキーム2参照)。
エタノール(EtOH)中、スキーム2で得られた4-(ヘキシルオキシ)アニリンと
5-ブロモチオフェン-2-カルボキシアルデヒドとを加熱攪拌して反応させ、反応液を
ろ過し、得られた粉末を冷却エタノールで洗浄し、メタノール/エタノールで再結晶すれ
ば、目的物である化合物を得ることができる(下記スキーム3参照)。スキーム3の加熱攪拌の際の温度は、好ましくは0℃以上100℃以下の範囲内、より好ましくは30℃以上70℃以下の範囲内、さらに好ましくは、40℃以上60℃以下の範囲内である。
また、例えば、上記化学式(2)の複素環がチオフェン環であり、ZがNであり、Z
がCHであり、R21がn-ヘキシル基であり、R22、R23、R25、R28、R
29がHであり、R24が化学式(3)の基であり、R26がメチル基であり、R27
n-ヘキシルオキシ基である化合物は、下記スキーム4~5により合成できる。
ジメチルホルムアミド(DMF)中、原料の4-ヒドロキシ-3-メチルベンズアルデ
ヒドとヨードヘキサン(C13I)とを炭酸カリウム(KCO)を用いて加熱還
流して反応させ、反応液を水洗後、濃縮し、精製すれば、4-ヘキシルオキシ-3-メチ
ルベンズアルデヒドを得ることができる(下記スキーム4参照)。
エタノール(EtOH)中、スキーム4で得られた4-ヘキシルオキシ-3-メチルベ
ンズアルデヒドと5-ヘキシルチオフェン-2-アミンとを加熱攪拌して反応させ、反応
液をろ過し、得られた粉末を冷却エタノールで洗浄し、メタノール/エタノールで再結晶
すれば、目的物である化合物を得ることができる(下記スキーム5参照)。スキーム5の加熱攪拌の際の温度は、好ましくは0℃以上100℃以下の範囲内、より好ましくは30℃以上70℃以下の範囲内、さらに好ましくは、40℃以上60℃以下の範囲内であ
る。
また、例えば、上記化学式(2)の複素環がフラン環であり、ZがCHであり、Z
がNであり、R21がBrであり、R22、R23、R25、R28、R29がHであり
、R24が化学式(3)の基であり、R26がメチル基であり、R27がn-ヘキシルオ
キシ基である化合物は、下記スキーム6~8により合成できる。また、例えば、上記化合
物においてZとZを入れ替えた化合物についても、上記スキーム4~5及び下記スキ
ーム6~8を参照して合成できる。
ジメチルホルムアミド(DMF)中、原料の2-メチル-4-ニトロフェノールと1-
ヨードヘキサン(C13I)とを炭酸カリウム(KCO)を用いて加熱還流して
反応させ、反応液を水洗後、濃縮し、精製すれば、3-メチル-4-ヘキシルオキシニト
ロベンゼンを得ることができる(下記スキーム6参照)。
エタノール(EtOH)とテトラヒドロフラン(THF)の混合溶媒中、パラジウム炭
素(Pd/C触媒)下、前記スキーム6で得られた3-メチル-4-(ヘキシルオキシ)
ニトロベンゼンに対して水素ガス(H)を封入しながら攪拌して反応させ、反応液から
触媒を除去し、溶液を濃縮後、エタノールで再結晶することで、3-メチル-4-(ヘキ
シルオキシ)アニリンを得ることができる(下記スキーム7参照)。
エタノール(EtOH)中、スキーム7で得られた3-メチル-4-(ヘキシルオキシ
)アニリンと5-ブロモ-2-フルアルデヒドとを加熱攪拌して反応させ、反応液をろ過
し、得られた粉末を冷却エタノールで洗浄し、メタノール/エタノールで再結晶すれば、
目的物である化合物を得ることができる(下記スキーム8参照)。スキーム8の加熱
攪拌の際の温度は、好ましくは0℃以上100℃以下の範囲内、より好ましくは30℃以
上70℃以下の範囲内、さらに好ましくは、40℃以上60℃以下の範囲内である。
また、例えば、上記化学式(2)の複素環がピロール環であり、ZがCHであり、Z
がNであり、R20、R21、R22、R23、R25、R28、R29がHであり、
24が化学式(3)の基であり、R26がメチル基であり、R27がn-ヘキシルオキ
シ基である化合物は、下記スキーム9~11により合成できる。
ジメチルホルムアミド(DMF)中、原料の2-メチル-4-ニトロフェノールと1-
ヨードヘキサン(C13I)とを炭酸カリウム(KCO)を用いて加熱還流して
反応させ、反応液を水洗後、濃縮し、精製すれば、4-ヘキシルオキシ-3-メチルニト
ロベンゼンを得ることができる(下記スキーム9参照)。
エタノール(EtOH)とテトラヒドロフラン(THF)の混合溶媒中、パラジウム炭
素(Pd/C触媒)下、前記スキーム9で得られた4-ヘキシルオキシ-3-メチルニト
ロベンゼンに対して水素ガス(H)を封入しながら攪拌して反応させ、反応液から触媒
を除去し、溶液を濃縮後、エタノールで再結晶することで、3-メチル-4-(ヘキシル
オキシ)アニリンを得ることができる(下記スキーム10参照)。
エタノール(EtOH)中、スキーム10で得られた3-メチル-4-(ヘキシルオキ
シ)アニリンとピロール-2-カルボキシアルデヒドとを加熱攪拌して反応させ、反応液
をろ過し、得られた粉末を冷却エタノールで洗浄し、メタノール/エタノールで再結晶す
れば、目的物である化合物を得ることができる(下記スキーム11参照)。スキーム11の加熱攪拌の際の温度は、好ましくは0℃以上100℃以下の範囲内、より好ましくは30℃以上70℃以下の範囲内、さらに好ましくは、40℃以上60℃以下の範囲内で
ある。
(アゾメチン誘導体に由来する構造単位を有する重合体)
重合性基を有するアゾメチン誘導体に由来する構造単位を含む重合体は、特に制限され
ないが、下記化学式(4)で表される構造単位を含む重合体であることが好ましい。上記
重合体は、複素環を導入することでシス-トランス異性化速度が低下し、光照射時のシス
体量が増加し、光異性化反応に伴った流動化を誘起することができるものと考えられる。
上記重合体は、特に限定されないが、アゾメチン基を分子中に確実に導入しやすくして、
可逆的な流動化・非流動化を効率的に誘起させる観点から、下記化学式(4)で表される
重合性基を有するアゾメチン誘導体を単量体(アゾメチン誘導体モノマー)として用いて
これを重合させて得られる重合体であることが好ましい。
前記化学式(4)中、Xは、NR20、OまたはSである。
21およびR22は、それぞれ独立して、重合性基を有する基、水素原子、ハロゲン
原子、シアノ基、ニトロ基、ヒドロキシ基、カルボキシ基、炭素数1~16のアルキル基
、炭素数1~16のアルコキシ基、炭素数2~16のアシル基、炭素数2~16のアルコ
キシカルボニル基、または炭素数2~16のアシルオキシ基である。
23またはR24のいずれか一方は、Yで表される基であり、他方は、重合性基を有
する基、水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、ヒドロキシ基、カルボキシ基、
炭素数1~16のアルキル基、炭素数1~16のアルコキシ基、炭素数2~16のアシル
基、炭素数2~16のアルコキシカルボニル基、または炭素数2~16のアシルオキシ基
である。
20は、重合性基を有する基、水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、炭素数1~
16のアルキル基、炭素数1~16のアルコキシ基、炭素数2~16のアシル基、炭素数
2~16のアルコキシカルボニル基、または炭素数2~16のアシルオキシ基である。
、Zは、NまたはCHであり、かつZ≠Zである。
25~R27は、それぞれ独立して、重合性基を有する基、水素原子、ハロゲン原子
、シアノ基、ニトロ基、ヒドロキシ基、カルボキシ基、炭素数1~16のアルキル基、炭
素数1~16のアルコキシ基、炭素数2~16のアシル基、炭素数2~16のアルコキシ
カルボニル基、または炭素数2~16のアシルオキシ基である。
28およびR29は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、ニト
ロ基、ヒドロキシ基、カルボキシ基、炭素数1~16のアルキル基、炭素数1~16のア
ルコキシ基、炭素数2~16のアシル基、炭素数2~16のアルコキシカルボニル基、ま
たは炭素数2~16のアシルオキシ基である。
この際、R21、R22、R25~R27、R20、およびR23またはR24のうち
Yで表される基に選択されないもののうち少なくとも1つは重合性基を有する基である。
21、R22、R20、およびR23またはR24のうちYで表される基に選択され
ないものうち少なくとも1つが重合性基を有する基である場合、R21、R22、R20
、およびR23またはR24のうち、前記重合性基を有する基およびYで表される基以外
のものは、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、ヒドロキ
シ基、カルボキシ基、炭素数1~4のアルキル基または炭素数1~4のアルコキシ基から
選択され、ただし、R20は、水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、カルボキシ基、
炭素数1~4のアルキル基または炭素数1~4のアルコキシ基から選択され、R25~R
27の少なくとも1つが重合性基を有する基である場合、R25~R27のうち、前記重
合性基を有する基以外のもの、R28およびR29は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、ヒドロキシ基、カルボキシ基、炭素数1~4のアルキル基または炭素数1~4のアルコキシ基から選択される。
20~R29を上記のように選択することで、アゾメチン誘導体はアゾメチン基部分
で分子間のパッキング(π-π相互作用)を発現しながら、トランス-シス異性化した際
には高い熱運動性を示すため、材料としての強度を高めながら、流動化現象を誘起しやす
くなるものと考えられる。
ここで、重合性基を有する基を複素五員環上に有する場合のベンゼン環上の置換基、または重合性基を有する基をベンゼン環上に有する場合の複素五員環上の置換基としての、上述の炭素数1~16のアルキル基、炭素数1~16のアルコキシ基、炭素数2~16のアシル基、炭素数2~16のアルコキシカルボニル基、または炭素数2~16のアシルオキシ基は、それぞれ炭素数1~12のアルキル基、炭素数1~12のアルコキシ基、炭素数2~12のアシル基、炭素数2~12のアルコキシカルボニル基、または炭素数2~12のアシルオキシ基であることが好ましい。より好ましくは、それぞれ、炭素数1~8のアルキル基、炭素数1~8のアルコキシ基、炭素数2~8のアシル基、炭素数2~8のアルコキシカルボニル基、または炭素数2~8のアシルオキシ基である。当該構成とすることでアゾメチン誘導体はアゾメチン基部分で分子間のパッキング(π-π相互作用)を発現しながら、トランス-シス異性化した際には高い熱運動性を示すため、流動化現象を誘起しやすくなるものと考えられる。
本発明のより好ましい実施形態においては、光異性化のしやすさの観点から、R21
22、R20、およびR23またはR24のうちYで表される基に選択されないものの
うち少なくとも1つが重合性基を有する基である場合、R25~R29は、それぞれ独立
して、水素原子、炭素数1~8のアルキル基または炭素数1~8のアルコキシ基であるこ
とが好ましい。また、光異性化のしやすさの観点から、R25~R27の少なくとも1つ
が重合性基を有する基である場合、R21、R22、R20、およびR23またはR24
のうちYで表される基に選択されないものは、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1~
8のアルキル基または炭素数1~8のアルコキシ基であることが好ましい。
前記Xのヘテロ原子については、SまたはNが好ましい。
20~R29で用いられるアルキル基の例としては、特に制限されるものではないが
、例えば上記化学式(2)の化合物におけるアルキル基と同様のものが挙げられる。
20~R29で用いられるアルコキシ基の例としては、特に制限されるものではない
が、例えば上記化学式(2)の化合物におけるアルコキシ基と同様のものが挙げられる。
20~R29で用いられるアシル基の例としては、特に制限されるものではないが、
例えば上記化学式(2)の化合物におけるアシル基と同様のものが挙げられる。
20~R29で用いられるアルコキシカルボニル基の例としては、特に制限されるも
のではないが、例えば上記化学式(2)の化合物におけるアルコキシカルボニル基と同様
のものが挙げられる。
20~R29で用いられるアシルオキシ基の例としては、飽和または不飽和の直鎖ま
たは分岐鎖のアシル基であり、例えば、アセトキシ基、プロピオニルオキシ基、ブタノイ
ルオキシ基、イソブタノイルオキシ基、ペンタノイルオキシ基、イソペンタノイルオキシ
基、sec-ペンタノイルオキシ基、t-ペンタノイルオキシ基、ヘキサノイルオキシ基
、ヘプタノイルオキシ基、オクタノイルオキシ基、t-オクタノイルオキシ基、2-エチ
ルヘキサノイルオキシ基、ノナノイルオキシ基、イソノナノイルオキシ基、デカノイルオ
キシ基、イソデカノイルオキシ基、ウンデカノイルオキシ基、ラウロイルオキシ基、ミリ
ストイルオキシ基、パルミトイルオキシ基等が挙げられる。
上記のアルキル基、アルコキシ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、またはアシル
オキシ基は、直鎖状であっても分岐していてもよいが、光相転移が生じやすい構造を構成
する観点から直鎖状であることがより好ましい。
また、上記のアルキル基、アルコキシ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、または
アシルオキシ基の一部は、置換基で置換されていてもよい。置換基の例としては、ハロゲ
ン原子、シアノ基、ニトロ基、ヒドロキシ基、カルボキシ基などが挙げられる。
重合性基を有するアゾメチン誘導体の1分子中に含まれる重合性基の数は、1つであっ
てもよいし、2以上であってもよい。中でも、低い光照射エネルギー量であっても、溶融
しやすい重合体が得られやすい観点では、重合性基を有するアゾメチン誘導体の1分子中
に含まれる重合性基の数は1つであること、すなわち単官能の重合性単量体であることが
好ましい。
重合性基としては、例えば、(メタ)アクリロイル基、エポキシ基、ビニル基が挙げら
れるが、(メタ)アクリロイル基またはビニル基であることが好ましい。重合体の合成法
として、アニオン重合、カチオン重合、リビングラジカル重合が知られているが、重合性
基が(メタ)アクリロイル基またはビニル基であればこれらの重合法に適用しやすいため
好ましい。中でも、(メタ)アクリロイル基が好ましい。なお、(メタ)アクリロイル基
とは、アクリロイル基およびメタクリロイル基を意味する。
すなわち、重合性基を有するアゾメチン誘導体は、重合性基を有する基として、下記式
(i)~(iv)のいずれかで表される基を有することが好ましい。これらの重合性基を
有する基を有すると重合体の合成に好適であるため好ましい。なかでも、軟化溶融のしや
すさの観点から、(ii)、(iii)または(iv)で表される基を有することが好ま
しく、(iii)の基を有することがさらに好ましい。
式(i)~(iv)中、Aは、それぞれ独立して水素原子またはメチル基である。A
は、それぞれ独立して炭素数1~18のアルキレン基である。炭素数3~12のアルキ
レン基であることが好ましい。上記アルキレン基は、直鎖状であってもよいし、分岐状で
あってもよく、好ましくは直鎖状である。上記アルキレン基の一部は、置換基で置換され
ていてもよい。置換基の例としては、ハロゲン基、ニトロ基、ヒドロキシ基、カルボキシ
基などが挙げられる。Aは、それぞれ独立して炭素数1~6のアルキレン基である。炭
素数1~4のアルキレン基であることが好ましい。上記アルキレン基は、直鎖状であって
もよいし、分岐状であってもよく、好ましくは直鎖状である。上記アルキレン基の一部は
、置換基で置換されていてもよい。置換基の例としては上記と同様のものが挙げられる。
化学式(4)で表される重合性基を有するアゾメチン誘導体において、R21、R22
、R25~R27、R20、およびR23またはR24のうちYで表される基に選択され
ないもののうち少なくとも1つは重合性基を有する基であるが、光異性化を生じやすくす
ることで、より低エネルギーの光照射によっても重合体を溶融または軟化しやすくする観点から、R27、R20または上記Yで表される基に隣接しないR21~R24のいずれかに1つに重合性基を有する基を有することが好ましく、R27に重合性基を有する基を含むことがより好ましい。
重合性基を有するアゾメチン誘導体は、光異性化を生じやすくすることで、より低エネ
ルギーの光照射によっても重合体を溶融または軟化しやすくする観点から、下記化学式(
5)で表される化合物であることが好ましい。
化学式(5)中、
Xは、NR20、OまたはSであり、
21およびR22は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、ニト
ロ基、ヒドロキシ基、カルボキシ基、炭素数1~16のアルキル基、炭素数1~16のア
ルコキシ基、炭素数2~16のアシル基、炭素数2~16のアルコキシカルボニル基、ま
たは炭素数2~16のアシルオキシ基であり、
23またはR24のいずれか一方は、Yで表される基であり、他方は、水素原子、ハ
ロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、ヒドロキシ基、カルボキシ基、炭素数1~16のアル
キル基、炭素数1~16のアルコキシ基、炭素数2~16のアシル基、炭素数2~16の
アルコキシカルボニル基、または炭素数2~16のアシルオキシ基であり、
20は、水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、炭素数1~16のアルキル基、炭
素数1~16のアルコキシ基、炭素数2~16のアシル基、炭素数2~16のアルコキシ
カルボニル基、または炭素数2~16のアシルオキシ基であり、
、Zは、NまたはCHであり、かつZ≠Zであり、
27は、重合性基を有する基である。
この際、重合性基を有する基は、前述の式(i)~(iv)のいずれかで表される基で
あることが好ましく、式(iii)で表される基であることがより好ましい。
さらに、上記化学式(5)で表される重合性基を有するアゾメチン誘導体において、
(1)R21、R22、R20、およびR23またはR24のうちYで表される基に選
択されないものは全て水素原子であるか、または、
(2)R21、R22、R20、およびR23またはR24のうちYで表される基に選
択されないもののうち、Yに隣接しないR21~R24のいずれか1つが、シアノ基、ニ
トロ基、ヒドロキシ基、カルボキシ基、または炭素数1~12のアルキル基、炭素数1~
12のアルコキシ基、炭素数2~12のアシル基、炭素数2~12のアルコキシカルボニ
ル基、または炭素数2~12のアシルオキシ基であり、残り(R21、R22、R20
およびR23またはR24のうちYで表される基に選択されないもののうち、上記「Yに
隣接しないR21~R24のいずれか1つ」に選択される基以外のもの)がそれぞれ独立
して水素原子、シアノ基、ニトロ基、ヒドロキシ基、カルボキシ基、炭素数1~4のアル
キル基または炭素数1~4のアルコキシ基であり、R20が、水素原子、炭素数1~4の
アルキル基または炭素数1~4のアルコキシ基であるか、または、
(3)R20が、炭素数1~12のアルキル基、炭素数1~12のアルコキシ基、炭素
数2~12のアシル基、炭素数2~12のアルコキシカルボニル基、または炭素数2~1
2のアシルオキシ基であり、R21、R22、およびR23またはR24のうちYで表される基に選択されないものが、それぞれ独立して水素原子、シアノ基、ニトロ基、ヒドロキシ基、カルボキシ基、炭素数1~4のアルキル基または炭素数1~4のアルコキシ基である、
を満たすことが好ましい。当該構成とすることで、光異性化を生じやすくし、より低エネ
ルギーの光照射によっても重合体を溶融または軟化しやすくすることができる。
なお、上記化学式(5)で表されるアゾメチン誘導体のうち、好ましい実施形態として
は、XがSであり、ZがCHであり、ZがNであり、R21が炭素数1~12のアル
キル基または炭素数1~12のアルコキシ基(特には直鎖のアルキル基またはアルコキシ
基)であり、R22、R23が水素原子であり、R24がYで表される基であり、R27
が重合性基を有する基である、化合物である。
また、上記化学式(5)で表されるアゾメチン誘導体のうち、他の好ましい実施形態と
しては、XがNR20であり、ZがCHであり、ZがNであり、R21、R22、R
24が水素原子であり、R23がYで表される基であり、R27が重合性基を有する基で
あり、R20が炭素数1~12のアルキル基または炭素数1~12のアルコキシ基(特に
は直鎖のアルキル基またはアルコキシ基)である、化合物である。
中でも、光異性化を生じやすくすることで、重合を溶融または軟化しやすくする観点か
ら、重合性基を有するアゾメチン誘導体は、下記化学式(6)で表される化合物であるこ
とが好ましい。
化学式(6)中、
Xは、NR20、OまたはSであり、
23またはR24のいずれか一方は、Yで表される基であり、
、Zは、NまたはCHであり、かつZ≠Zであり、
は、水素原子またはメチル基であり、
は、炭素数1~18のアルキレン基であり、
21、R22、R20、およびR23またはR24のうちYで表される基に選択され
ないものは全て水素原子であるか、
または、
21、R22、R20、およびR23またはR24のうちYで表される基に選択され
ないもののうち、Yに隣接しないR21~R24のいずれか1つが、シアノ基、ニトロ基、ヒドロキシ基、カルボキシ基、または炭素数1~12のアルキル基、炭素数1~12のアルコキシ基、炭素数2~12のアシル基、炭素数2~12のアルコキシカルボニル基、または炭素数2~12のアシルオキシ基であり、残り(R21、R22、R20、およびR
またはR24のうちYで表される基に選択されないもののうち、上記「Yに隣接しない
21~R24のいずれか1つ」に選択される基以外のもの)がそれぞれ独立して水素原
子、シアノ基、ニトロ基、ヒドロキシ基、カルボキシ基、炭素数1~4のアルキル基また
は炭素数1~4のアルコキシ基であり、R20が、水素原子、炭素数1~4のアルキル基
または炭素数1~4のアルコキシ基であるか、または、
20が、炭素数1~12のアルキル基、炭素数1~12のアルコキシ基、炭素数2~
12のアシル基、炭素数2~12のアルコキシカルボニル基、または炭素数2~12のア
シルオキシ基であり、R21、R22、およびR23またはR24のうちYで表される基
に選択されないものが、それぞれ独立して水素原子、シアノ基、ニトロ基、ヒドロキシ基
、カルボキシ基、炭素数1~4のアルキル基または炭素数1~4のアルコキシ基である。
<重合性基を有するアゾメチン誘導体の調製方法>
重合性基を有するアゾメチン誘導体の調製方法は特に制限されない。例えば、はじめに
所望のアゾメチン誘導体を準備し、得られたアゾメチン誘導体に重合性基を導入すること
で調製することができる。
例えば、チオフェン環を含むアゾメチン誘導体を調製する場合、第1段階として、アニ
リン誘導体と、チオフェン環を有する化合物としてチオフェンカルボキシアルデヒド誘導
体とを反応させる。この際、原料であるアニリン誘導体またはチオフェンカルボキシアル
デヒド誘導体のいずれかに置換基としてOH基を有する場合、上記OH基の位置に重合性
基を容易に導入できる。
例えば、上記化学式(4)のXがSであり、R21がメチル基であり、R22及びR
がHであり、R24がYで表される基であり、ZがCHであり、ZがNであり、R
27が重合性基を有する基であり、R25、R26、R28及びR29がHであるアゾメ
チン誘導体の場合、下記反応式により中間体Aを得ることができる。
具体的には、メタノール(MeOH)やエタノールなどのアルコール中、4-ヒドロキシアニリンと5-メチルチオフェン-2-カルボキシアルデヒドとを処理し(加熱還流して反応させ)、反応液をろ過し、得られた粉末を冷却エタノールで洗浄し、メタノール/エタノールで再結晶すれば、目的物を得ることができる。
その後、第2段階として、上記中間体Aに対して重合性基を導入する。重合性基を導入
する方法も特に制限されない。例えば、上記中間体Aに対してリンカー部-C12
を導入する場合は、ハロゲン化アルコール化合物として、例えばCl-C12-OH
を作用させて下記の中間体Bを得る。
反応条件としては特に制限されないが、例えばジメチルホルムアミド(DMF)などの
溶媒中、炭酸カリウムおよびヨウ化カリウムの存在下、好ましくは0℃以上100℃以下
の範囲内、より好ましくは0℃以上60℃以下の範囲内、さらに好ましくは、0℃以上4
0℃以下の範囲内で反応させることが好ましい。
その後、第3段階として、中間体Bに、重合性基を構成するための化合物、例えば、ア
クリル酸塩またはメタクリル酸塩を反応させる。反応条件は特に限定されない。例えば公
知の有機溶媒中で、トリエチルアミン、トリエタノールアミンなどの三級アミン類の存在
下で反応を行うことが好ましい。好ましくは、上記中間体B、三級アミン類、および溶媒
を含む混合液を0~10℃に保ちながら、この混合液にアクリル酸塩またはメタクリル酸
塩などの重合性基を構成するための化合物を滴下して混合する。その後、混合液を例えば
室温で5~10時間程度反応させて、重合性基を有するアゾメチン誘導体を得ることがで
きる。
なお、上記の第1段階において、使用する原料を他の化合物に変更することで、所望の
置換基を有するアゾメチン誘導体を得ることができる。例えば、ベンズアルデヒド誘導体
とアミノチオフェン誘導体とを反応させることで、化学式(4)のZがNであり、Z
がCHであるアゾメチン誘導体を得ることができる。また、原料としてチオフェン環を有
する化合物に代えてフラン環、ピロール環を有する化合物を用いることでXのヘテロ原子
がO、Nであるアゾメチン誘導体を得ることができる。また、第2段階、第3段階で添加
する化合物を変化させることで異なる構造の重合性基を有する基を導入することができる
。当業者であれば、上記変更を適宜行い、適当な反応条件を選択することで、所望の重合
性基を有するアゾメチン誘導体を合成することができる。
また、上記の第1段階において、使用する原料を適当に選択することで第2段階を行わ
ずに中間体Aに重合性基を導入することもできる。
(他の構造単位)
本発明に用いられる重合体は、アゾメチン誘導体に由来する構造単位やアゾベンゼン誘
導体に由来する構造単位など、光照射による固液相転移を誘起する分子構造を含む構造単
位以外の構造単位(他の構造単位)を含んでもよい。他の構造単位を含む共重合体である
場合、共重合体の繰り返し単位の配列形態も特に制限されず、ランダム共重合体、ブロッ
ク共重合体、交互共重合体のいずれであってもよい。他の構造単位としては、特に制限さ
れないが、例えば、スチレン誘導体、(メタ)アクリル酸誘導体、オレフィン誘導体に由
来する構造単位が挙げられる。
重合体の数平均分子量(全数平均分子量)Mnは、特に制限されないが、好ましくは3
500以上であり、より好ましくは3500~100000であり、さらに好ましくは3
500~70000であり、さらにより好ましくは3500~50000であり、特に好
ましくは5000~50000である。重合体の数平均分子量が3500以上であれば、
基材との接着性が高く、さらに塗膜の靱性が高くなる観点から好ましい。また、数平均分
子量が100000以下であれば異性化および軟化溶融の効率が高くなるため好ましい。
重合体の数平均分子量はゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測
定することができる。
<重合体の調製方法>
重合体の合成方法は特に制限されず、アニオン重合、カチオン重合、リビングラジカル
重合など、公知の重合開始剤を使用して、単量体としての上記の重合性基を有するアゾメ
チン誘導体を重合する方法が用いられうる。必要に応じて公知の連鎖移動剤を使用しても
よい。
重合開始剤としては、たとえば、以下に示すアゾ系またはジアゾ系重合開始剤や過酸化
物系重合開始剤が用いられる。
アゾ系またはジアゾ系重合開始剤としては、2,2’-アゾビス-(2,4-ジメチル
バレロニトリル)、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル、1,1’-アゾビス(シク
ロヘキサン-1-カルボニトリル)、2,2’-アゾビス-4-メトキシ-2,4-ジメ
チルバレロニトリル、アゾビスイソブチロニトリルなどが挙げられる。
過酸化物系重合開始剤としては、ベンゾイルパーオキサイド、メチルエチルケトンパー
オキサイド、ジイソプロピルパーオキシカーボネート、クメンヒドロパーオキサイド、t
-ブチルヒドロパーオキサイド、ジ-t-ブチルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイ
ド、2,4-ジクロロベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、2,2-
ビス-(4,4-t-ブチルパーオキシシクロヘキシル)プロパン、トリス-(t-ブチ
ルパーオキシ)トリアジンなどが挙げられる。
連鎖移動剤としては、例えば、ジチオ安息香酸ベンジル、1-フェニルエチルジチオ安
息香酸塩、2-フェニルプロプ-2-イルジチオ安息香酸塩、1-アセトキシルエチルジ
チオ安息香酸塩、ヘキサキス(チオベンゾイルチオメチル)ベンゼン、1,4-ビス(チ
オベンゾイルチオメチル)ベンゼン、1,2,4,5-テトラキス(チオベンゾイルチオ
メチル)ベンゼン、1,4-ビス-(2-(チオベンゾイルチオ)プロプ-2-イル)ベ
ンゼン、1-(4-メトキシフェニル)エチルジチオ安息香酸塩、ジチオ酢酸ベンジル;
エトキシカルボニルメチルジチオアセタート、2-(エトキシカルボニル)プロプ-2-
イルジチオベンゾアート、2-シアノプロプ-2-イルジチオベンゾアート、t-ブチル
ジチオベンゾアート、2,4,4-トリメチルペント-2-イルジチオベンゾアート、2
-(4-クロロフェニル)プロプ-2-イルジチオベンゾアート、3-および4-ビニル
ベンジルジチオベンゾアート、S-ベンジルジエトキシホスフィニルジチオフォルマート
、t-ブチルトリチオペルベンゾアート、2-フェニルプロプ-2-イル4-クロロジチ
オベンゾアート、2-フェニルプロプ-2-イル1-ジチオナフタラート、4-シアノペ
ンタン酸ジチオベンゾアート、ジベンジルテトラチオテレフタラート、ジベンジルトリチ
オカーボネート、カルボキシメチルジチオベンゾアートなどが挙げられる。
重合温度は、用いる単量体や重合開始剤の種類によっても異なるが、50~100℃で
あることが好ましく、55~90℃であることがより好ましい。また、重合時間は、用い
る単量体や重合開始剤の種類によっても異なるが、例えば2~60時間であることが好ま
しい。
なお、他の構造単位を含む共重合体についても、その調製方法は特に制限されない。
(光相転移化合物の含有量)
本発明の光硬化性インキにおける光相転移化合物の含有量は特に制限されないが、光硬
化性インキの総質量に対して1~30質量%であることが好ましい。光相転移化合物の含
有量が1質量%以上であれば光硬化性インキに適度な粘性を付与することができる。また
、30質量%以下であれば、光硬化性インキの粘性が過度に低下することを回避できるた
め好ましい。より好ましくは、光相転移化合物の含有量は、光硬化性インキの総質量に対
して3~20質量%である。なお、2種類以上の光相転移化合物を組み合わせて用いる場
合は、その合計量が上記範囲であることが好ましい。
[着色剤]
本発明の光硬化性インキは、着色剤をさらに含んでもよい。着色剤としては、一般に知
られている染料および顔料を用いることができる。
顔料としては、無機顔料、有機顔料のいずれも使用することができる。無機顔料として
は、例えば、カーボンブラック、酸化チタン、酸化鉄、炭酸カルシウム等が挙げられる。
カーボンブラックとしてはチャンネルブラック、ファーネスブラック、アセチレンブラッ
ク、サーマルブラック、ランプブラックなどが挙げられる。
有機顔料としては、トルイジンレッド、トルイジンマルーン、ハンザイエロー、ベンジ
ジンイエロー、ピラゾロンレッドなどの不溶性アゾ顔料、リトールレッド、ヘリオボルド
ー、ピグメントスカーレット、パーマネントレッド2B等の溶性アゾ顔料;アリザリン、
インダントロン、チオインジゴマルーン等の建染染料からの誘導体;フタロシアニンブル
ー、フタロシアニングリーン等のフタロシアニン系有機顔料;キナクリドンレッド、キナ
クリドンマゼンタ等のキナクリドン系有機顔料;ペリレンレッド、ペリレンスカーレット
等のペリレン系有機顔料;イソインドリノンイエロー、イソインドリノンオレンジ等のイ
ソインドリノン系有機顔料;ピランスロンレッド、ピランスロンオレンジ等のピランスロ
ン系有機顔料;チオインジゴ系有機顔料、縮合アゾ系有機顔料、ベンズイミダゾロン系有
機顔料、キノフタロンイエロー等のキノフタロン系有機顔料;イソインドリンイエローな
どのイソインドリン系有機顔料;その他の顔料として、フラバンスロンイエロー、アシル
アミドイエロー、ニッケルアゾイエロー、銅アゾメチンイエロー、ペリノンオレンジ、ア
ンスロンオレンジ、ジアンスラキノニルレッド、ジオキサジンバイオレット等が挙げられ
る。
有機顔料をカラーインデックス(C.I.)番号で以下に例示する:
C.I.ピグメントイエロー12、13、14、17、20、24、74、83、86
、93、109、110、117、120、125、128、129、137、138、
139、147、148、150、151、153、154、155、166、168、
180、185;
C.I.ピグメントオレンジ16、36、43、51、55、59、61;
C.I.ピグメントレッド9、48、49、52、53、57、97、122、123
、149、168、177、180、192、202、206、215、216、217
、220、223、224、226、227、228、238、240;
C.I.ピグメントバイオレット19、23、29、30、37、40、50;
C.I.ピグメントブルー15、15:1、15:3、15:4、15:6、22、6
0、64;
C.I.ピグメントグリーン7、36;
C.I.ピグメントブラウン23、25、26。
また、顔料の分散性をより良好なものとするため、分散剤をさらに含んでもよい。分散
剤としては、特に制限されないが、例えば、顔料分散物を調製するのに慣用されている分
散剤が挙げられる。
染料としては、例えば、酸性染料、直接染料、反応性染料、および塩基性染料などが挙
げられる。
着色剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
着色剤の含有割合は特に制限されないが、光硬化性インキの総質量に対して0.1~3
0質量%であることが好ましい。
なお、本発明の光硬化性インキは、着色剤を含まず無色透明であってもよい。その場合
は、例えば画像を保護するためのオーバーコート層として好適である。
(樹脂)
本発明の光硬化性インキは、樹脂(ポリマー成分)を含んでもよい。樹脂を配合するこ
とにより、プラスチックフィルムなどのインキが浸透しにくく比較的平滑で塗膜の密着性
を確保しにくい基材に対しても十分な密着性を確保することができる。樹脂としては、特
に制限されず、例えば、ポリエステル樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ(メタ)アクリル酸エ
ステル、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、セルロース誘導体(例えば、エチルセルロー
ス、酢酸セルロース、ニトロセルロース)、塩化ビニル酢酸ビニル共重合体、ポリアミド
樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ジアリルフタレート樹脂、ブタジエン-アクリルニト
リル共重合体などが挙げられる。
樹脂の含有割合は特に制限されないが、光硬化性インキの総質量に対して1~40質量
%であることが好ましい。
[その他の成分]
本発明の光硬化性インキには、上記成分以外に、必要に応じて、公知の各種添加剤、例
えば、溶剤、光重合禁止剤、表面張力調整剤、界面活性剤、滑剤、離型剤、充填剤、消泡
剤、ゲル化剤、増粘剤、比抵抗調整剤、皮膜形成剤、マット剤、紫外線吸収剤、酸化防止
剤、退色防止剤、防ばい剤、防錆剤等を適宜選択して用いることができる。
[光硬化性インキの製造方法]
本発明の光硬化性インキは、例えば、上記の光重合性化合物、光重合開始剤、光相転移
化合物、および必要に応じて着色剤、樹脂、その他の成分を配合し、ミキサー等で撹拌混
合し、三本ロールミル、ビーズミル等の分散機を用いて練肉する方法によって調製するこ
とができる。
[印刷方法]
本発明の光硬化性インキは、上記の本発明の光硬化性インキを基材上に塗布して塗膜を
形成し、上記塗膜に光を照射して塗膜を硬化させることを含む、印刷方法に適用すること
ができる。
本発明の光硬化性インキに適する基材(印刷基材)は特に制限されない。例えば、普通
紙、コート紙、アート紙などの紙基材、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、
ポリカーボネート、アクリル樹脂、塩化ビニル樹脂などの樹脂フィルム、ガラス、金属、
セラミックなどを用いることができる。なかでも、樹脂フィルム、ガラス、金属、セラミ
ックのようなインキ非吸収性基材であると本発明の効果がより顕著に得られうる。
塗膜を形成する際の印刷手段としては特に制限されず、例えば、平版オフセット印刷、
凸版印刷、グラビア印刷、グラビアオフセット印刷、フレキソ印刷、スクリーン印刷等が
適用されうる。
塗膜に光線を照射して塗膜を硬化させ、これにより画像を構成する硬化塗膜を形成する
際に用いられる光としては、紫外線、可視光線が挙げられる。光源としては、発光ダイオ
ード(LED)、レーザー光源、殺菌灯、紫外線用蛍光灯、UV-LED、カーボンアー
ク、キセノンランプ、複写用高圧水銀灯、中圧又は高圧水銀灯、超高圧水銀灯、無電極ラ
ンプ、メタルハライドランプなどが挙げられる。
光照射の条件は、光重合性化合物の重合反応が進行し、光相転移化合物の軟化が進行し
うるものであれば特に制限されない。
照射する光の波長は、光源の発光ピーク波長が、好ましくは280~480nm、より
好ましくは330~430nm、さらに好ましくは350~420nmである。上記範囲
であれば、光相転移化合物および光重合開始剤が効率的に光を吸収して反応が開始される
ため、接着性が高い硬化塗膜(画像)が得られうる。
光の照射量も、光重合性化合物の重合反応が進行し、光相転移化合物の軟化が進行しう
るものであれば特に制限されず、例えば0.02~100J/cm、好ましくは0.0
5~50J/cm、より好ましくは0.1~30J/cmの範囲内である。上記範囲であれば、光相転移化合物および光重合開始剤が効率的に光を吸収して反応が開始されるため、接着性が高い硬化塗膜(画像)が得られうる。
光照射は、光重合性化合物の重合反応のための光照射と、光相転移化合物の軟化のため
の光照射とを兼ねるものであってもよい。光重合開始剤の感光波長域と、光相転移化合物
の吸収波長域が重なる場合、同一の光源からの光照射により光重合性化合物の重合反応と
光相転移化合物の軟化との両方を同時に行うことができる。そのため、光硬化性インキの
硬化塗膜の剥離を効果的に防止でき、装置が簡便化できる。
または、光重合開始剤の感光波長域と、光相転移化合物の吸収波長域が重ならない場合
、光重合開始剤の感光波長域を照射する光源と、光相転移化合物の吸収波長域とを照射す
る光源との2つの光源を用いて、順次あるいは同時に光照射を行ってもよい。このように
することで、光量や照射順、時間を個別に制御し、印刷条件に応じてより綿密にインキの
粘性を制御することができ、硬化塗膜の接着性を効果的に向上することができる。この際
、2つの光源の波長および照射量がいずれも上記範囲であることがより好ましい。
本発明の効果を、以下の実施例および比較例を用いて説明する。ただし、本発明の技術
的範囲が以下の実施例のみに制限されるわけではない。
<光相転移化合物の合成>
[合成例1:アゾメチン化合物A1の合成]
冷却管、窒素導入管、温度計を備えた100mlの4頭フラスコに、4-ニトロフェノ
ール(4.2g、30.2mmol)、1-ヨードヘキサン(19.2g、90.6mm
ol)、炭酸カリウム(10.4g、75.5mmol)、およびジメチルホルムアミド
50mlを投入し、加熱還流した。反応液を水洗した後、濃縮し、カラムクロマトグラフ
ィー(酢酸エチル:ヘプタン=1:9(体積比))で精製して4-(ヘキシルオキシ)ニ
トロベンゼンを5.8g(収率86%)得た(第1段階)。
500mlの三角フラスコに、4-(ヘキシルオキシ)ニトロベンゼン(5.8g、2
6.1mmol)とパラジウム炭素(0.12g、258mmol)とを入れ、エタノー
ルとテトラヒドロフランをそれぞれ60ml入れ、水素(H)を封入しながら攪拌した
。反応液からパラジウム炭素を除去し、得られた溶液を濃縮した後、エタノールで再結晶
を行い、4-(ヘキシルオキシ)アニリンを3.8g(収率75%)得た(第2段階)。
冷却管、窒素導入管、温度計を備えた100mlの4頭フラスコに、4-(ヘキシルオ
キシ)アニリン(1.1g、5.7mmol)と5-メチルチオフェン-2-カルボキシ
アルデヒド(0.7g、5.7mmol)とエタノール20mlを投入し、50℃で加熱
攪拌した。反応液を吸引ろ過し、得られた粉末を冷却エタノールで洗浄した。さらに、メ
タノール/エタノールで再結晶を行い、目的物であるアゾメチン化合物A1を0.75g
(収率45%)得た(第3段階)。
H NMRでアゾメチン化合物A1の生成を確認した。H NMR(400MHz
、CDCl);8.35ppm(s,1H,CH=N)、7.39ppm(d,2H,
aryl)、7.08ppm(d,1H,thiophene)、6.96ppm(d,
2H,aryl)、6.67ppm(d,2H,thiophene)、4.11ppm
(t,2H,methylene)、2.44ppm(s,3H,methyl)、1.
80ppm(m,2H,methylene)、1.47ppm(m,2H,methy
lene),1.37ppm(m,4H,methylene)、0.89ppm(t,
3H,methyl)。
また、アゾメチン化合物A1の結晶相または液晶相から等方相への相転移を確認するた
め、偏光顕微鏡観察を行った。アゾメチン化合物A1をガラスサンドイッチセルに封入し
、偏光顕微鏡観察下で365nmの光を照射し、光照射前、光照射後、および光照射停止
後の状態の変化を観察した。これにより、光照射によって異性化、ならびに結晶相-等方
相の可逆的な相変化が生じることを確認した。
[アゾメチン誘導体ポリマーA2の合成]
(アゾメチン誘導体モノマーの合成)
100mlの4頭フラスコに、4-アミノフェノール(5g、0.046mol)と5
-メチルチオフェン-2-カルボキシアルデヒド(5.8g、0.046mol)とエタ
ノール100mlとを投入し、加熱攪拌した。反応液を吸引ろ過し、得られた粉末を冷却
エタノールで洗浄した。さらに、メタノール/エタノールで再結晶を行い、目的物1を得
た。
次いで、200mlの4頭フラスコにおいて、上記で得られた目的物1(5g、0.0
23mol)を、ジメチルホルムアミド(DMF)25mlに溶解させた。これに、炭酸
カリウム4.88g(0.035mol)を加え、30℃に保ちながら攪拌した。これに
、ヨウ化カリウム10.2mg(0.06mmol)、6-クロロ-1-ヘキサノール(
3.54g、0.026mol)を添加し、110℃で反応させた。これを、室温まで冷
却し、650gの氷に添加した後、ろ過した。結晶を水400mlに分散させ、一晩攪拌
して洗浄し、ろ過して乾燥させた。さらに、エタノールにて再結晶を行い、目的物2を得
た。
次に、100mlの4頭フラスコに、上記で得られた目的物2(3g、0.001mo
l)、トリエチルアミン1.34ml(0.001mol)およびジクロロメタン30m
lを投入した。この時、原料は分散状態であった。内温を0℃に保ちながら、アクリル酸
クロライド1.04g(0.011mol)をジクロロメタン10mlに溶かした溶液を
、内温を0~5℃を保ちながら滴下した。滴下していくと、原料は溶解した。
滴下終了後、反応液を室温に戻して攪拌を行った。反応終了後、ジクロロメタンを濃縮
して除去し、酢酸エチルに溶解して、希塩酸、炭酸水素ナトリウム水溶液、飽和食塩水に
て洗浄し、有機層を硫酸マグネシウムにて乾燥させた後、濃縮した。得られたオレンジ色
の結晶をシリカゲルカラム(酢酸エチル/へプタン=1/5)にて精製し、アゾメチン誘
導体に由来する構造単位を有するアゾメチン誘導体モノマー1を得た。
(アゾメチン誘導体ポリマーA2の合成)
100mlの4頭フラスコにおいて、上記で得られたアゾメチン誘導体モノマー1を1
.5g(4.096mmоl)、4-シアノペンタン酸ジチオベンゾアートを5mg(0
.023mmоl)およびAIBN1mg(0.006mmоl)を、アニソール4ml
に溶解させた。そして、凍結脱気によりアルゴンガス雰囲気にした後、75℃に昇温し、
攪拌することで重合させた。得られたポリマー溶液に、メタノール40mlを徐々に滴下
した後、THFを加えて、未反応のアゾメチン誘導体モノマー1を除去した。分取したポ
リマー溶液は、40℃の真空乾燥炉内にて24時間乾燥させて、アゾメチン誘導体ポリマ
ーA2を得た。アゾメチン誘導体ポリマーA2の数平均分子量MnをGPC法で測定した
ところ12000であった。
なお、アゾメチン誘導体ポリマーA2の数平均分子量Mnは、装置「HLC-8120
GPC」(東ソー株式会社製)およびカラム「TSKguardcolumn+TSKg
elSuperHZ-M3連」(東ソー株式会社製)を用いて測定した。カラム温度を40℃に保持しながら、キャリア溶媒としてテトラヒドロフラン(THF)を流速0.2mL/分で流した。測定試料は、濃度1mg/mlになるようにテトラヒドロフランに溶解させた。当該溶液の調製は、超音波分散機を用いて、室温にて5分間処理を行うことにより行った。次いで、ポアサイズ0.2μmのメンブランフィルターで処理して試料溶液を得、この試料溶液10μLを上記のキャリア溶媒と共に装置内に注入し、屈折率検出器(RI検出器)を用いて検出した。単分散のポリスチレン標準粒子を用いて作成された検量線に基づいて、測定試料の分子量分布を算出した。上記検量線測定用のポリスチレンとしては10点用いた。
[合成例3:アゾベンゼン化合物A3の合成]
4-アミノフェノール(6.54g、60mmol)に2.4N塩酸75mLを加えた
後、0℃で冷却攪拌しながら、亜硝酸ナトリウム(4.98g、72mmol)を蒸留水
6mLに溶解した溶液を加え、0℃で60分間攪拌を続けた。この溶液に、o-クレゾー
ル(6.48g、60mmol)と20質量%水酸化ナトリウム水溶液24mLとの混合
溶液を加え20時間攪拌した。析出した沈殿を濾過し、固形物を水で洗浄した。得られた
固体を、酢酸エチルとヘキサンの混合液を展開溶媒とするシリカゲルカラムクロマトグラ
フィーにより精製し、アセトンとヘキサンの混合溶媒により再結晶することにより中間体
Aを得た(第1段階)。
この中間体A(2.28g、10mmol)にDMF100mL、1-ブロモヘキサン
(9.9g、60mmol)、炭酸カリウム(6.9g、50mmol)を加え、80℃
で2時間攪拌した後、室温で20時間攪拌を続けた。溶媒を減圧留去後、酢酸エチルで抽
出し、有機層を飽和食塩水で洗浄した後、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。これを濾過
した後、溶媒を減圧留去し、得られた固形物を酢酸エチルとヘキサンの混合液を展開溶媒
とするシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製することによりアゾベンゼン化合
物A3を得た(第2段階)。
[光照射による固液相転移]
上記で調製したアゾメチン化合物A1、アゾメチン誘導体ポリマーA2、およびアゾベ
ンゼン化合物A3の光照射に伴う流動性の変化を確認した。
具体的には、18mm角のカバーガラスに上記の化合物をそれぞれ2mg、ガラス中心
から半径6mm内に載せた。試料に波長365nmの光を照射量30J/cmで照射し
、固体状の試料がいずれも、軟化、溶融することを目視で確認した。
次いで、光照射終了5分(5分は、室温(25±15℃の範囲)、蛍光灯等の可視光照
射下で放置した)後に、試料がいずれも再固化していることを確認した。
<光硬化性インキの調製>
下記表1に示す組成(質量部)にしたがって各原料を配合し、ミキサーで均一に攪拌し
た後に三本ロールミル(株式会社井上製作所製 S-43/4×11)にて練肉製造する
ことで光硬化性インキ1~14を得た。
なお、使用した光重合開始剤、樹脂、着色剤は以下の通りである:
Omnirad(登録商標)907:α-アミノアルキルフェノン(IGM Resi
ns B.V.社製)
EAB-SS:4,4’-ビスジメチルアミノベンゾフェノン(大同化成工業株式会社
製)
Omnirad(登録商標)184:1-ヒドロキシ-シクロヘキシルフェニルケトン
(IGM Resins B.V.社製)
ジアリルフタレート樹脂:ダイソーダップA、株式会社大阪ソーダ製
塩素化オレフィン樹脂:東洋紡株式会社製「ハードレン(登録商標)DX530P」
カーボンブラック:三菱ケミカル株式会社製、MA-7。
<印刷物評価>
[印刷方法]
上記で作製した光硬化性インキ1~14を、それぞれ簡易展色機(RIテスター、豊栄
精工株式会社製)を用いてRIテスターのゴムロール及び金属ロール上に均一に引き伸ば
し、市販の厚さ30μmのポリプロピレンフィルム(東洋紡株式会社製、P2161)の
表面に、濃度1.8(X-Rite社製「SpectroEye」濃度計で計測)で均一
に塗布されるように展色し、印刷物を作製した。なおRIテスターとは、紙やフィルムに
インキを展色する試験機であり、インキの転移量や印圧を調整することが可能である。
次いで、光硬化性インキ塗布後の印刷物に紫外線(UV)照射を行い、インキ塗膜を硬
化乾燥させた。水冷メタルハライドランプ(出力100W/cm1灯)およびベルトコン
ベアを搭載したUV照射装置(アイグラフィックス社製、コールドミラー付属)を使用し
、印刷物をコンベア上に載せ、ランプ直下(照射距離11cm)で100m/分の速度で
通過し、硬化乾燥した。なお、照射したUV光のピーク波長は365nmであり、照射量
は30J/cmであった。
[接着試験]
紫外線照射後における硬化塗膜の接着性の評価方法として、テープ剥離テストにより確
認した。セロハンテープ(ニチバンNo.405)を紫外線照射後の硬化塗膜に強く押し
付け、素早く垂直方向に引き上げて剥がすことにより、硬化塗膜の基材上への接着状態を
確認した。画像解析により硬化塗膜とポリプロピレンが剥離していない部分の面積の割合
(面積率(%))を求め、次の3段階で評価した。〇、△を合格レベルとした:
○:ほぼ接着しており、硬化塗膜とポリプロピレンフィルムが剥離していない面積が9
0%以上残っている
△:中位に接着しており、硬化塗膜とポリプロピレンフィルムが剥離していない面積が
60%以上90%未満残っている
×:僅かに接着しており、硬化塗膜とポリプロピレンフィルムが剥離していない面積が
60%未満である。
[耐擦過性試験]
白紙(三菱製紙社製パールコートN紙)を印刷面に当て、1kgの荷重をかけて20往
復摩擦した。そして試験後、印刷面に当てた白紙に対するインキの付着度合いを目視で観
察することで、耐擦過性の評価を行った。〇、△を合格レベルとした:
〇:印刷面上にあてた白紙へインキがほとんど移らなかった(こすれなし、あるいは表
層こすれ)
△:印刷面上にあてた白紙へインキがあまり移らなかった(中間層こすれ)
×:印刷面上にあてた白紙へのインキ移りが多かった(底部こすれ、または塗膜なし)
[色再現性試験]
色再現性は、目視評価により下記評価基準に従って評価した。具体的には、評価比較用
サンプルとして、光硬化性インキ1~8、10~13のそれぞれに対し、光相転移化合物
を添加しない光硬化性インキを作製し、同様の方法で印刷物を作成した。10名のモニタ
ーに対して、前記評価比較用サンプルと実施例、比較例の光硬化性インキによる印刷物サ
ンプルとを順番に見せ、2つの画像の色が明らかに異なるか質問した。
〇:3名以下が明らかに異なると答えた
△:4名以上が明らかに異なると答えた。
これらの評価結果を下記表1に示す。
上記表1の結果から、光重合性化合物、光重合開始剤、および光相転移化合物を含む光
硬化性インキ1~12は、いずれも硬化塗膜と基材との接着性に優れ、印刷物の耐擦過性
に優れる。これに対して、光相転移化合物を含まない光硬化性インキ13、14は、硬化
塗膜と基材との接着性がおよび印刷物の耐擦過性が不十分であった。
光相転移化合物として、アゾメチン化合物A1、アゾメチン誘導体に由来する構造単位
を含む重合体A2、アゾベンゼン化合物A3を用いた光硬化性インキ9~11はいずれも
硬化塗膜と基材との接着性に優れることがわかった。なかでも、低分子化合物のアゾメチ
ン化合物A1およびアゾベンゼン化合物A3を用いた光硬化性インキ9、11では接着性
がより向上する。これは、低分子化合物を用いることで光硬化性インキの粘度調整が容易
になるためと考えられる。
また、光硬化性インキ1~7の比較から、光相転移化合物の含有量が光硬化性インキの
全量に対して1~30質量%である光硬化性インキ2~6では接着性がより優れることが
わかった。
さらに、光硬化性インキ1~8、12、13のように、光相転移化合物としてアゾメチ
ン化合物やアゾメチン誘導体に由来する構造単位を含む重合体を用いると、インキの色再
現性に優れることが確認された。

Claims (4)

  1. 光重合性化合物と、光重合開始剤と、光を吸収することで固液相転移する化合物と、を
    含む、光硬化性インキ。
  2. 前記光を吸収することで固液相転移する化合物の含有量が、1~30質量%である、請
    求項1に記載の光硬化性インキ。
  3. 前記光を吸収することで固液相転移する化合物が、アゾベンゼン化合物である、請求項
    1または2に記載の光硬化性インキ。
  4. 前記光を吸収することで固液相転移する化合物が、アゾメチン化合物である、請求項1
    または2に記載の光硬化性インキ。
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