JP4334199B2 - 色素単量体及び該単量体から得られる重合体 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、所望の色相に設計された重合可能な色素単量体及び該単量体から得られる重合体に関し、詳しくは、紫外線域及び/又は可視域の波長を吸収する重合可能な色素単量体及び該単量体から得られる重合体に関し、該色素単量体及び該単量体は、プラスチック成形物、カラープリンターのインクやカラーコピー機のトナー等に好適に用いられる。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】
色剤として染料を用いる製品において生じる問題は、耐光性、耐水性、耐熱性、耐移行性等が低く、信頼性、安全性を欠くことである。本発明は各種用途における染料の問題点を解決できる色剤を提供し得るものである。以下、上記用途ごとの課題を示す。
【0003】
(プラスチック成形物)
プラスチックはあらゆる工業製品に使用され、各々目的により着色される。中でも、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、ポリカーボネート等の透明性の高いプラスチックの着色には、透明性を損なうことがないよう、通常そのプラスチックに溶解する染料が選ばれる。しかしながら、染料で着色されたプラスチックでは、その染料の耐熱性、耐光性が問題となる他、耐溶剤性、耐移行性の低さから、抽出及び移行した染料の衛生性が問題となり、用途が限定されていた。
【0004】
(インクジェットプリンター用色剤)
各種カラープリンターの中でも、カラーインクジェットプリンターは、比較的安価に高品位な記録が可能なことから急速に普及している。カラーインクジェットプリンターのインクは主に水溶性の材料からなり、色剤としては水溶性の染料を用いることが多い。
【0005】
従って、染料を用いたインクによって印刷された印刷物では、保存中、水滴等で文字等が不鮮明となる欠点や、光によって徐々に退色してしまう欠点を有していた。これらの欠点を補うため、例えば、染料とアミン又はカチオン性の化合物とのイオン的な結合により、染料が水によって流されることを抑制し、耐水性を向上させる提案がなされている(例えば、特許文献1、2及び3参照)が、耐水性向上の機構が塩形成によるものであるため、沈殿や目詰まりが生じる等、インクの保存安定性及び印字の信頼性が不十分であった。また、インクに紫外線吸収剤を含有させることにより耐光性を上げる提案がなされている(例えば、特許文献4及び5参照)が、基本的には色素が単分子で存在するため、少量添加した紫外線吸収剤では十分な耐光性の向上は困難であった。また、トリアリールメタン系色素(カチオン)と対アニオンとしてスルホン酸基を含有する有機アニオンが感光性印刷版として提案されている(例えば、特許文献6及び7参照)。しかしながら、溶媒への溶解性については不十分であり、実用上問題があった。
【0006】
(カラートナー用色剤)
フルカラーの複写機において、トナー用の色剤としては、顔料、染料共に適用可能である。顔料を用いるトナーでは、耐光性が高いものの、透明性が低く、フルカラーの複写における色再現性確保のためには粒子径を非常に小さくしなければならない。小径トナーを製造するためには、トナー用樹脂、色素及びその他の添加剤等の混合物を十分に粉砕する方法や、重合法、すなわち、水中に樹脂単量体、色素、及びその他の添加剤等を混合し、分散させた後、重合を行うことで微粒子化したトナーを製造する方法が行われている。しかし、生産性、コスト、使用可能な樹脂の制限等の点から、未だ満足できる小径カラートナーは得られていない。
【0007】
一方、染料を用いたトナーでは、色再現性に優れ、画像の透明性が良好であり、OHPシート等、透過光を利用する用途に適している。しかし、耐光性では顔料を用いるトナーに劣る欠点を有する上、耐移行性、耐溶剤性、安全性等の点で満足できる特性を得るのは困難であった。
【0008】
従って、本発明の目的は、プラスチック成形物、カラープリンターのインクやカラーコピー機のトナー等に有用な、耐熱性、耐移行性、耐溶剤性等に優れた色素を与えることのできる色素単量体及び該単量体から得られる重合体を提供することにある。
【0009】
【特許文献1】
特開平2−296878号公報
【特許文献2】
特開平2−255876号公報
【特許文献3】
特開平6−128515号公報
【特許文献4】
特開昭54−68303号公報
【特許文献5】
特開平8−60059号公報
【特許文献6】
特開昭62−293247号公報
【特許文献7】
特開平5−313359号公報
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、上記課題を解決するため検討を重ねた結果、従来公知の合成法によって簡単に合成される特定の色素単量体又は該単量体から得られる重合体が、上記目的を達成し得ることを知見し、本発明に到達した。
【0011】
即ち、本発明は、下記一般式(1)で表されるアニオンを有する重合可能なトリアリールメタン系色素単量体を提供するものである。
【0012】
【化4】
【0013】
また、本発明は、上記重合可能なトリアリールメタン系色素単量体から得られる重合体を提供するものである。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、上記重合可能なトリアリールメタン系色素単量体及び該単量体から得られる重合物について詳細に説明する。
【0015】
本発明の重合可能なトリアリールメタン系色素単量体は、上記一般式(1)で表されるアニオンを有するものであり、特に、上記一般式(1)において、Rが水素原子であり、Xが−OCO−であり、環Aがナフチレンであり、nが4であるアニオンを含有するトリアリールメタン系色素単量体が好ましい。
【0016】
上記一般式(1)で表されるアニオンの代表例としては、下記の化合物No.1〜No.5が挙げられる。
【0017】
【化5】
【0018】
また、本発明の重合可能なトリアリールメタン系色素単量体から上記アニオンを除いた色素単量体カチオンは、下記一般式(2)で表されるものが好ましい。
【0019】
【化6】
【0020】
【化7】
【0021】
上記一般式(2)におけるR1〜R9並びに上記一般式(2)及び(3)におけるR’で表される炭素原子数1〜8のアルキル基としては、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、第二ブチル、第三ブチル、イソブチル、アミル、第三アミル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、イソオクチル、第三オクチル、2−エチルヘキシル等が挙げられる。
【0022】
特に、上記一般式(2)において、Arがフェニレン基、X’が上記一般式(3)で表される基、R’、R1、R2、R3及びR4がエチル基、R5及びR6がメチル基、R7及びR8が水素原子である色素単量体カチオン;Arがナフタレン1,4−ジイル、X’が上記一般式(3)で表される基、R’、R1及びR2がエチル基、R5、R6、R7及びR8が水素原子、R3又はR4のどちらか一方が水素原子、残りの一方がエチル基である色素単量体カチオン;Arがフェニレン基、R6とR8が共同して酸素原子、R5が−COOR’である色素単量体カチオンを含有するトリアリールメタン系色素単量体が好ましい。
【0023】
上記一般式(2)で表される色素単量体カチオンの代表例としては、下記の化合物No.6〜No.21が挙げられる。
【0024】
【化8】
【0025】
【化9】
【0026】
【化10】
【0027】
【化11】
【0028】
【化12】
【0029】
【化13】
【0030】
【化14】
【0031】
【化15】
【0032】
【化16】
【0033】
【化17】
【0034】
【化18】
【0035】
【化19】
【0036】
【化20】
【0037】
【化21】
【0038】
【化22】
【0039】
【化23】
【0040】
従って、上記一般式(1)で表されるアニオンと上記一般式(2)で表される色素単量体カチオンとからなる好ましい本発明の色素単量体の代表例としては、上記化合物No.1〜No.5のいずれかと上記化合物No.6〜No.21のいずれかとの組み合わせからなるものが挙げられる。
【0041】
上記した本発明の色素単量体は、後述する製造例に示されるように、公知の製造方法により製造することができる。
【0042】
本発明の重合体は、上述した重合可能なトリアリールメタン系色素単量体から得られるものである。本発明の重合体は、該単量体のみを重合して着色重合物とすることができる他、該単量体と従来周知の低分子及び/又は高分子の単量体との共重合体として着色重合物にすることができる。また、該着色重合物は、必要に応じて二重結合を有する基を導入することにより色素構造を有する高分子単量体にすることができる。更に、上記着色重合物又は色素構造を有する高分子単量体は、他の低分子又は高分子の単量体に加えて重合させて、さらなる他の着色重合物とすることができる。これらの着色重合物は、インクジェットプリンターのインク用、カラートナー用の色素又はプラスチック成形物の着色剤として好適に用いることができる。
【0043】
本発明の重合体の製造は、水中、有機溶剤中又は無溶媒で、従来周知の重合触媒を用いて容易に行うことができる。
【0044】
本発明の重合体である上記共重合体を合成するために用いる周知の低分子の単量体としては、例えば、スチレン系化合物並びにα,β−不飽和モノ〜ポリカルボン酸及びそのエステル、アミド、イミド、又は無水物が挙げられる。例えば、スチレン系化合物としては、スチレン、α−メチルスチレン、ヒドロキシスチレン等が挙げられる。α,β−不飽和モノ〜ポリカルボン酸としては、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、メサコン酸、1−ブチン−2,3,4−トリカルボン酸等が挙げられ、上記エステルとしては、上記α,β−不飽和カルボン酸のメチル、エチル、2−ヒドロキシエチル、プロピル、ブチル、オクチル、ドデシル、2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル、1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル、2−〔3−(2−ベンゾトリアゾリル)−4−ヒドロキシフェニル〕エチル等のエステルが挙げられ、上記アミドとしては、上記α,β−不飽和カルボン酸のメチルアミド、ジメチルアミド、エチルアミド、ジエチルアミド、プロピルアミド、ジプロピルアミド、ブチルアミド、ジブチルアミド、ヘキシルアミド、オクチルアミド、フェニルアミド等が挙げられ、上記イミドとしては、上記α,β−不飽和カルボン酸のマレイミド、イタコンイミド、N−ブチルマレイミド、N−オクチルマレイミド、N−フェニルマレイミド等が挙げられる。
【0045】
また、本発明の重合体である上記共重合体を合成するために用いる周知の高分子の単量体としては、エチレン不飽和二重結合を少なくとも1個有する質量平均分子量5000〜10万の樹脂が好適に用いられる。具体的には、水酸基、カルボキシル基、アミノ基等の反応性官能基を有する線状高分子に、上記反応性官能基と反応可能なイソシアネート基、アルデヒド基、エポキシ基等を介して、(メタ)アクリル化合物、ケイヒ酸等を反応させてエチレン不飽和二重結合を導入した樹脂等が用いられる。
【0046】
本発明の色素単量体と周知の低分子又は高分子の単量体とを用いて共重合体とする場合、該周知の単量体の使用量は用途に応じて適宣選択されるが、通常、本発明の色素単量体100質量部に対して、5〜100000質量部の範囲内である。
【0047】
本発明の重合可能なトリアリールメタン系色素単量体及び該単量体から得られる重合体は、紫外線域及び/又は可視域の波長を吸収するもので、所望の色相に設計されたものであり、単量体のまま又は上述のようにして重合体とした後、プラスチック成形物、カラープリンター(インクジェットプリンター)のインクやカラーコピー機のトナー(カラートナー)等の用途に好適に用いられる。
【0048】
【実施例】
以下、実施例をもって本発明を更に詳細に説明する。下記製造例1は本発明の色素単量体のアニオン成分のナトリウム塩の製造例を示し、下記実施例1〜4は本発明の色素単量体の製造法及び物性評価を示し、下記実施例5は本発明の重合体の製造例及び物性評価を示し、下記実施例6〜8はいずれも本発明の重合体の製造例及び使用例を示す。しかしながら、本発明は以下の実施例等によって何ら制限を受けるものではない。
【0049】
〔製造例1〕(化合物No.3のナトリウム塩の製造法)
工程1:中間体 メタンスルホン酸4−アクリルオキシブチルエステルの製造
アクリル酸4−ヒドロキシブチル288.3g(2.0mol)、トリエチルアミン242.0g(2.4mol)及び2,5−ジ−t−ブチルヒドロキノン4.2g(0.02mol)の混合物をトルエン2000mlに懸濁し、水浴下にてメタンスルホニルクロリド253.1g(2.2mol)を滴下した。その後、室温にて3時間反応させた。反応後、水を加え油水分離し、更に水1000mlで2回洗浄した。乾燥、脱溶媒を行ない、メタンスルホン酸4−アクリルオキシブチルエステルを得た(収量:429.3g)。
【0050】
工程2:4−アクリルオキシブチルオキシ−1−ナフタレンスルホン酸ナトリウム塩(化合物No.3のナトリウム塩)の製造
4−ヒドロキシ−1−ナフタレンスルホン酸ナトリウム49.4g(0.2mol)、2,5−ジ−t−ブチルヒドロキノン0.9g(0.004mol)、炭酸水素ナトリウム25.2g(0.3mol)の混合物を水480mlに懸濁し、工程1で得られたメタンスルホン酸4−アクリルオキシブチルエステル89.0g(0.4mol)を滴下した。その後66℃に加温し8時間反応させた。反応後、トルエンを加えて処理し、油水分離した。トルエン350mlを25%塩化ナトリウム水溶液458gを用いて水層を塩析処理し、目的物を得た(収量:22.2g)。
【0051】
〔実施例1〕(化合物No.6と化合物No.3との塩の製造法)
下記化合物No.6’を3.3g(0.005mol)、2,5−ジ−t−ブチルヒドロキノン0.02g(0.0001mol)、及び製造例1で得られた4−アクリルオキシブチルオキシ−1−ナフタレンスルホン酸ナトリウム塩3.7g(0.01mol)を1,2−ジクロロエタン20mlに溶解し攪拌後、窒素雰囲気下にて加熱し、66℃で5時間反応させた。反応後1,2−ジクロロエタンで希釈し、蒸留水150mlで3回洗浄した。乾燥、脱溶媒した後、次いで20%MeOH/アセトンの展開溶媒でシリカゲルカラム処理を行ない、青色結晶を得た(収量:1.7g)。得られた青色結晶は、赤外分光分析において、下記赤外分光分析データに示す波長で吸収ピークを示し、目的物であることが確認された。また、該青色結晶について各種物性測定を行った。赤外分光分析データ及び物性測定結果を以下に示す。
【0052】
【化24】
【0053】
<赤外分光分析データ>
3421cm-1、3075cm-1、2969cm-1、1720cm-1、1583cm-1、1402cm-1、1373cm-1、1344cm-1、1257cm-1、1216cm-1、1182cm-1、1155cm-1、1074cm-1、1039cm-1、767cm-1、682cm-1、615cm-1
【0054】
<物性測定結果>
λmax=606.0nm
ε=1.07×105 dm3mol-1cm-1
質量減少開始点259.8℃
【0055】
〔実施例2〕
(化合物No.7と化合物No.3との塩の製造法)
Basic Blue−7(color index−42595)7.7g(0.015mol)、2,5−ジ−t−ブチルヒドロキノン0.7g(0.0003mol)、及び製造例1で得られた4−アクリルオキシブチルオキシ−1−ナフタレンスルホン酸ナトリウム塩11.2g(0.03mol)を1,2−ジクロロエタン50mlに溶解し攪拌後、窒素雰囲気下にて加熱し、64℃で5時間反応させた。反応後1,2−ジクロロエタンで希釈し、蒸留水250mlで3回洗浄した。乾燥、脱溶媒した後、次いで20%MeOH/アセトンの展開溶媒でシリカゲルカラム処理を行ない、青色結晶を得た(収量:8.1g)。得られた青色結晶は、赤外分光分析において、下記赤外分光分析データに示す波長で吸収ピークを示し、目的物であることが確認された。また、該青色結晶について各種物性測定を行った。赤外分光分析データ及び物性測定結果を以下に示す。
【0056】
<赤外分光分析データ>
3264cm-1、2969cm-1、1718cm-1、1579cm-1、1506cm-1、1454cm-1、1411cm-1、1375cm-1、1344cm-1、1272cm-1、1218cm-1、1184cm-1、1155cm-1、1072cm-1、1037cm-1、916cm-1、825cm-1、763cm-1、709cm-1、682cm-1、615cm-1
【0057】
<物性測定結果>
λmax=592.5nm
ε=1.01×105dm3mol-1cm-1
質量減少開始点252.0℃
【0058】
〔実施例3〕
(化合物No.16と化合物No.3との塩の製造法)
ローダミン6Gを9.65g、2,5−ジ−t−ブチルヒドロキシキノン0.1g、製造例1で得られた4−アクリルオキシブチルオキシナフタレン−1−スルホン酸ナトリウム9.0g、及び1,2−ジクロロエタン150mlを混合し、還流下5時間攪拌した。有機層を水300mlで3回洗浄した後、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、溶媒を留去して赤紫色非晶質体11.7gを得た。得られた赤紫色非晶質体は、1H−NMR分析(in CDCl3)において以下のような結果を示し、目的物であることが確認された。また、該赤紫色非晶質体について各種物性測定を行った。1H−NMR分析データ及び物性測定結果を以下に示す。
【0059】
<1H−NMR分析データ>
δ=8.95ppm 1H, 8.26-8.12ppm 3H, 7.74-7.68ppm 2H, 7.47-7.33ppm 2H, 7.11ppm 1H, 6.62ppm 3H, 6.43ppm 2H, 6.32ppm 1H, 6.09-6.07ppm 1H, 5.77ppm 1H, 4.21ppm 2H, 4.10ppm 2H, 3.99ppm 2H, 3.38ppm 4H, 2.13ppm 6H, 1.93ppm 4H, 1.26ppm 6H, 0.95ppm 3H
【0060】
<物性測定結果>
λmax=526nm
ε=1.4×105dm3mol-1cm-1(in Acetone)
質量減少開始温度 308.7℃
発熱開始温度 255.3℃
【0061】
〔実施例4〕
(化合物No.13と化合物No.3との塩の製造法)
ローダミンB10g、前記製造例1で合成された4−アクリルオキシブチルオキシナフタレン−1−スルホン酸ナトリウム9.4g、クロロホルム100ml、及び水150mlを混合し、50℃で5時間反応させた。室温まで放冷後、有機層を水100mlで3回洗浄し、次いで無水硫酸マグネシウムで乾燥、溶媒を留去して、赤紫色非晶質15.5gを得た。この赤紫色非晶質を水100mlに加え、更に酢酸エチル100mlを加えて50℃で1時間攪拌後、室温まで冷却し、析出した結晶をろ取した。60℃で真空乾燥し、結晶9.6gを得た。得られた結晶は、1H−NMR分析(in CDCl3)において以下のような結果を示し、目的物であることが確認された。また、該結晶について各種物性測定を行った。1H−NMR分析データ及び物性測定結果を以下に示す。
【0062】
<1H−NMR分析データ>
δ=8.95ppm 1H, 8.34ppm 1H, 8.17-8.11ppm 2H, 7.66ppm 2H, 7.45ppm 1H, 7.38ppm 1H, 7.23ppm 1H, 7.15ppm 2H, 6.80ppm 2H, 6.71ppm 2H, 6.62ppm 1H, 6.39-6.32ppm 1H, 6.07ppm 1H, 5.77ppm 1H, 4.21ppm 2H, 4.09ppm 2H, 3.55ppm 8H, 1.94-1.90ppm 4H, 1.28ppm 12H
【0063】
<物性測定結果>
λmax =545nm
ε=1.2×105dm3mol-1cm-1(in MeOH)
質量減少開始温度 317.7℃
【0064】
〔実施例5〕(色素共重合体)
下記表1に示すカチオン成分とアニオン成分との組み合わせから得られる色素単量体を30g、メタクリル酸1.0g、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル1.0g、及びメタクリル酸n−ブチル2.5gを1−メトキシ−2−プロパノール30gに溶解した。そこにα,α−アゾビスイソブチルニトリル0.25gを加えて、攪拌及び窒素導入管による吹込みを行いながら、80〜82℃にて2時間反応させた。さらに100℃まで昇温し2時間反応させた。総反応時間が5時間経過した段階で反応を終了し、空冷後、目的物である溶液状の共重合体を得た。得られた共重合体のTgを測定した結果を下記表1示す。
【0065】
【表1】
【0066】
〔実施例6〕(色素共重合体)
下記表2に示すカチオン成分とアニオン成分との組み合わせで得られた各々の色素単量体の30質量部、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸13質量部、2−ヒドロキシエチルメタクリレート46質量部、メタクリル酸11質量部、及びアンモニア水4質量部、更に重合触媒としてアゾビスイソブチロニトリル5質量部を加え、メチルセロソルブを溶媒として、95℃で5時間反応させた。溶媒を留去し、カラープリンター用色素共重合体を得た。得られた共重合体それぞれに水を加えて、固形分25質量%の色素溶液(水溶液A〜D)とした。
【0067】
(耐熱性試験)
水溶液A〜Dそれぞれの色素溶液70質量部にグリセリン30質量部を加えてインクジェットプリンター用のインクとし、各インクを用いてインクジェットプリンターで普通紙に印刷し、試験片をそれぞれ作成した。各試験片について、80℃にて30日間保存した後の色差(ΔE)を測定した。それらの結果を下記表2に示す。下記表2から明らかなように、本発明の色素単量体から得られた共重合体を用いて作成したインクジェットプリンター用インクは、色差が小さく、耐熱性に優れるものであった。
【0068】
【表2】
【0069】
【化25】
【0070】
〔実施例7〕(色素共重合体)
下記表3に示すカチオン成分とアニオン成分との組み合わせから得られた各々の色素単量体22質量部に、n−ブチルメタクリレート52質量部、ベンジルメタクリレート21質量部及び反応性界面活性剤アデカリアソープNE−20(旭電化工業(株)製)5質量部を加え、重合開始剤として過硫酸カリウム1.5質量部を加えて水中で75℃にて3時間乳化重合させた。反応液を320メッシュの篩で濾過して粗大粒子を除去し、カラートナー用色素共重合体を得た。また、比較例として、重合性の基をもつ色素単量体の代わりに、カチオン成分としての化合物No.7とアニオン成分としての塩素イオンとの組み合わせから得られた色素単量体を用いた以外は、上述と同様の方法により、カラートナー用色素共重合体とした。
【0071】
得られた共重合体をそれぞれガラス基盤上に散布し、120℃のオーブンで加熱溶融させ、厚さ0.5mmのフィルムをそれぞれ作成した。これらのフィルムの上に白紙をのせ、10g/cm2の荷重をかけながら60℃のオーブン中で24時間放置後、それぞれの白紙の状態を観察した。それらの結果を下記表3に示す。下記表3から明らかなように、本発明の色素単量体から得られたカラートナー用色素共重合体は、白紙への移行がなく、耐移行性に優れているものであった。
【0072】
【表3】
【0073】
〔実施例8〕(着色樹脂成形物)
下記表4に示すカチオン成分とアニオン成分との組み合わせから得られる色素単量体30質量部及び過酸化ベンゾイル3質量部をメチルメタクリレート70質量部に溶解し、この溶液を直径5cmのアルミ箔カップに厚さ1cmになるように注いで60℃で塊状重合し、着色樹脂成形物とした。また、比較例として、重合性の基をもつ色素単量体の代わりに、カチオン成分としての化合物No.7とアニオン成分としての塩素イオンとの組み合わせから得られた色素単量体を用いた以外は、上述と同様の方法で、着色樹脂成形物を得た。
【0074】
得られた着色樹脂成形物それぞれを、メタノール/水混合溶液(質量比5/5)に浸漬し、室温で24時間放置した後、それぞれの溶液の色を観察した。それらの結果を下記表4に示す。下記表4から明らかなように、本発明の色素単量体を色素として着色樹脂成形物に適用した場合、色素が抽出されることがなく、耐溶剤性に優れていた。
【0075】
【表4】
【0076】
【発明の効果】
本発明の重合可能な色素単量体及び該単量体から得られる本発明の重合体は、耐熱性、耐移行性及び耐溶剤性に優れたものであり、従来の染料に代わる色素として有用である。
Claims (9)
- 上記一般式(1)において、Rが水素原子であり、Xが−OCO−であり、環Aがナフチレンであり、nが4である請求項1又は2記載の重合可能なトリアリールメタン系色素単量体。
- 上記一般式(2)において、Arがフェニレン基であり、X’が上記一般式(3)で表される基であり、R’、R1、R2、R3及びR4がエチル基であり、R5及びR6がメチル基であり、R7及びR8が水素原子である請求項2又は3記載の重合可能なトリアリールメタン系色素単量体。
- 上記一般式(2)において、Arがナフタレン1,4−ジイルであり、X’が上記一般式(3)で表される基であり、R’、R1及びR2がエチル基であり、R5、R6、R7及びR8が水素原子であり、R3又はR4のどちらか一方が水素原子であり、残りの一方がエチル基である請求項2又は3記載の重合可能なトリアリールメタン系色素単量体。
- 上記一般式(2)において、Arがフェニレン基であり、R6とR8が共同して酸素原子であり、R5が−COOR’である請求項2又は3記載の重合可能なトリアリールメタン系色素単量体。
- 請求項1〜6のいずれかに記載の重合可能なトリアリールメタン系色素単量体から得られる重合体。
- インクジェットプリンターのインク用又はカラートナー用の色素に用いられる請求項1〜6のいずれかに記載の重合可能なトリアリールメタン系色素単量体。
- インクジェットプリンターのインク用又はカラートナー用の色素に用いられる請求項7記載の重合体。
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