以下、本開示の実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、本明細書において、「見付方向」とは、建物に配置された開口部に納められた建具におけるガラスパネルの面方向を意味する。見付方向において、横方向を左右方向という。「見込方向」とは、上記ガラスパネルの厚さ方向(即ち、奥行き方向)を意味する。本実施形態においては、パネルの一例としてガラスパネルを用いた場合について説明する。パネルはガラスパネルに限定されない。パネルとしては、ガラスパネルの他に、例えば、樹脂パネル、アルミ樹脂複合板(アルポリック(登録商標)等)などが挙げられる。
図1~図3に示すように、一実施形態の建具1は、建物としてのユニットバス(図示省略)に形成される開口部に設けられる。建具1は、いわゆる引き違い窓であり、図1に示すように、枠体2と、枠体2内に開閉可能に嵌め込まれた内障子3(障子)及び外障子4(障子)と、浴室の換気構造7と、を備える。本実施形態においては、引き違い窓において、浴室側に配置される障子を内障子3といい、脱衣室側に配置される障子を外障子4という。建具1は、内障子3及び外障子4により枠体2内の開口部分を開閉可能である。本実施形態においては、浴室側に配置される障子を内障子3(浴室側から見て右側)とし、脱衣室側に配置される障子を外障子4(同左側)としたが、これに限定されない。浴室側に配置される障子を内障子3(同左側)とし、脱衣室側に配置される障子を外障子4(同右側)としてもよい。
枠体2は、建物としてのユニットバス(図示省略)に形成される開口部に設けられる。ユニットバスの内側には防水パン121及び浴槽(図示省略)等が設けられる浴室空間が形成される。ユニットバスの開口部は、浴室と脱衣室とを連通する。
枠体2は、図1~3に示すように、上枠21、下枠22及び左右の縦枠23,24により矩形に枠組みされている。上枠21は、枠体2の上部において左右方向に延びる長尺状に形成される。下枠22は、枠体2の下部において左右方向に延びる長尺状に形成される。左右の縦枠23,24は、上枠21及び下枠22の左右方向の両端部において上下方向に延びる。
上枠21は、図2に示すように、上枠21の上端に設けられ見込方向に延びる中空状の上端中空部211と、上端中空部211の下方に配置される上枠浴室側呑み込み部212及び上枠脱衣室側呑み込み部213と、中空状の上枠浴室側延在中空部214と、板状の上枠脱衣室側延在板部215と、を有する。上端中空部211、上枠浴室側呑み込み部212、上枠脱衣室側呑み込み部213及び上枠浴室側延在中空部214は、上枠21の本体部分であり、上枠脱衣室側延在板部215は、上枠21における建物構造物への取付枠部分である。
上枠浴室側呑み込み部212及び上枠脱衣室側呑み込み部213は、見込方向に隣り合って並んで配置され、いずれも下方に向けて開放する枠状に形成される。上枠浴室側呑み込み部212は浴室側に配置され、上枠脱衣室側呑み込み部213は脱衣室側に配置される。上枠浴室側呑み込み部212には、内障子3の上框31が呑み込まれて配置される。上枠脱衣室側呑み込み部213には、外障子4の上框41が呑み込まれて配置される。
上枠浴室側呑み込み部212の上部には、内障子側戸車保持部212aが形成される。内障子側戸車保持部212aには、内障子3の上框31が接続された吊車37が、左右方向に移動可能に配置される。上枠脱衣室側呑み込み部213の上部には、外障子側戸車保持部213aが形成される。外障子側戸車保持部213aには、外障子4の上框41に接続された吊車47が、左右方向に移動可能に配置される。
上枠浴室側延在中空部214は、上枠浴室側呑み込み部212の浴室側の下端部において浴室側に突出して形成される。上枠浴室側延在中空部214は、浴室側天井パネル111よりも下方側に配置される。上枠脱衣室側延在板部215は、上枠21における建物構造物への取付枠部分であり、上枠脱衣室側呑み込み部213の脱衣室側の下端部から脱衣室側に延びる。上枠脱衣室側延在板部215は、脱衣室側天井パネル112よりも下方側に配置される。上枠浴室側延在中空部214の下面と、上枠脱衣室側延在板部215の下面とは、ほぼ同じ高さに位置する。なお、上枠脱衣室側延在板部215及び脱衣室側天井パネル112の上下方向の位置は、これに限定されない。上枠脱衣室側延在板部215及び脱衣室側天井パネル112の上下方向の位置は、天井部分の納まりによっては、本実施形態の位置よりも上方に位置してもよいし、下方に位置してもよい。
上枠21の上枠浴室側延在中空部214は、図2に示すように、浴室側において、浴室側天井パネル111よりも下方側に配置される。上枠21の浴室側天井パネル111よりも上方側の部分は、浴室側から見た場合に、浴室側天井パネル111に遮蔽されている。
上枠21の取付枠部分である上枠脱衣室側延在板部215は、脱衣室側において、脱衣室側天井パネル112よりも僅かに下方側に配置される。上枠21の脱衣室側天井パネル112よりも上方側の部分は、脱衣室側から見た場合に、脱衣室側天井パネル112により遮蔽されている。
これにより、浴室側から見た場合に、上枠21の上枠浴室側延在中空部214は視認される。脱衣室側から見た場合に、上枠21の本体部分(上端中空部211、上枠浴室側呑み込み部212、上呑み込み部213及び上枠浴室側延在中空部214)は視認されずに、上枠21の取付枠部分(上枠脱衣室側延在板部215)は視認される。
下枠22は、図2に示すように、下枠本体5と、下枠スロープ部材6(下枠カバー部材)と、を有する。下枠本体5及び下枠スロープ部材6は、いずれも、左右方向に延びる長尺状に形成されると共に、見込方向に延びる。
下枠本体5は、見込方向において、浴室内の防水パン121と脱衣室内の脱衣室側床材122を跨ぐように延びる。下枠本体5は、上面が段差状に形成される。下枠本体5は、下枠本体5の下端に設けられ見込方向に延びる中空状の下端中空部51と、下端中空部51の浴室側の端部の上面から浴室側に延びる浴室側延在部52と、下端中空部51の脱衣室側の端部から上方に延びる段差部53と、段差部53の上端から脱衣室側に延びる脱衣室側延在部54と、段差部53の上端から浴室側に突出する突出片55と、を有する。下端中空部51、浴室側延在部52及び段差部53は、下枠本体5の本体部分であり、脱衣室側延在部54は、下枠本体5における建物構造物への取付枠部分である。浴室側延在部52の浴室側の端部は、浴室の防水パン121の上面に配置される。脱衣室側延在部54の脱衣室側の端部は、脱衣室側床材122の上面に配置される。なお、下枠本体5は、見込方向において、浴室内の防水パン121と脱衣室内の脱衣室側床材122とを跨がなくてもよい。
下枠スロープ部材6は、見込方向に延びる板状に形成される。下枠スロープ部材6は、下枠本体5との間に換気通路71を構成する隙間Sを形成して、下枠本体5の上方側に配置される。下枠スロープ部材6は、見込方向において、下枠本体5の段差部53の上端から浴室側に離れて配置される。
下枠スロープ部材6は、図4に示すように、複数の台座221,222により支持される。複数の台座221,222は、下枠本体5と下枠スロープ部材6との間に配置される。下枠スロープ部材6は、図2に示すように、ガイド凹部61と、スロープ延在部62と、スロープ傾斜部63と、を有する。ガイド凹部61、スロープ延在部62及びスロープ傾斜部63は、脱衣室側から浴室側に向けてこの順に配置される。
ガイド凹部61は、図2に示すように、上方側が凹んだ枠状に形成される。ガイド凹部61は、内障子3及び外障子4の下方に配置される。ガイド凹部61には、内障子3の下端突起3a及び外障子4の下端突起4aが配置される。ガイド凹部61は、スライド移動可能な内障子3及び外障子4の下端をガイドする。
スロープ延在部62は、ガイド凹部61の浴室側の端部から浴室側に水平に所定長さ延びる。スロープ傾斜部63は、スロープ延在部62の浴室側の端部から浴室側に下り傾斜で所定長さ延びる。
下枠22の下枠スロープ部材6は、図2に示すように、浴室側において、防水パン121よりも上方側に配置される。下枠22の防水パン121よりも下方側の部分は、浴室側から見た場合に、防水パン121に遮蔽されている。
下枠22の取付枠部分である脱衣室側延在部54は、脱衣室側において、脱衣室側床材122よりも僅かに上方側に配置される。下枠22の脱衣室側床材122よりも下方側の部分は、脱衣室側から見た場合に、脱衣室側天井パネル112により遮蔽されている。
これにより、浴室側から見た場合に、下枠22の下枠スロープ部材6は視認される。脱衣室側から見た場合に、下枠22の下枠本体5の本体部分(下端中空部51、浴室側延在部52及び段差部53)は視認されずに、下枠22の下枠本体5の取付枠部分(脱衣室側延在部54)は視認される。
下枠22には、浴室の換気構造7が設けられている。浴室の換気構造7は、下枠22における下枠本体5と下枠スロープ部材6との間の隙間Sを換気通路71として構成し、換気通路71を通して、浴室を換気する。浴室の換気構造7において、浴室側から脱衣室側への水の流入を抑制するために、換気通路71には、回動軸722を中心に回動可能な第1羽根板721と、回動軸732を中心に回動可能な第2羽根板731とが配置される。
図3に示すように、左右の縦枠23,24のうち、一方の縦枠23(本実施形態においては、図3における右側の縦枠23、図1における左側の縦枠23)は、見込方向に延びるように形成される。縦枠23は、浴室側中空部231と、中間中空部232と、縦枠呑み込み凹部233と、脱衣室側中空部234と、縦枠脱衣室側延在板部235と、を有する。浴室側中空部231、中間中空部232、縦枠呑み込み凹部233、脱衣室側中空部234及び縦枠脱衣室側延在板部235は、浴室側から脱衣室側に向かってこの順に配置される。浴室側中空部231、中間中空部232、縦枠呑み込み凹部233及び脱衣室側中空部234は、縦枠23の本体部分であり、縦枠脱衣室側延在板部235は、縦枠23における建物構造物への取付枠部分である。
浴室側中空部231は、見込方向の浴室側に配置される。浴室側中空部231は、見込方向に延びる中空状に形成される。中間中空部232は、浴室側中空部231の脱衣室側の端部から脱衣室側に延びる中空状に形成される。
縦枠呑み込み凹部233は、中間中空部232の脱衣室側に形成される。縦枠呑み込み凹部233は、左右方向の内側に向けて開放する枠状に形成される。縦枠呑み込み凹部233には、外障子4の戸先框44が呑み込まれて配置される。
脱衣室側中空部234は、縦枠呑み込み凹部233の脱衣室側の端部から脱衣室側に延びる中空状に形成される。縦枠脱衣室側延在板部235は、脱衣室側中空部234における枠体2の左右方向の内側の端部において脱衣室側の端部から脱衣室側に延在する板状に形成される。縦枠脱衣室側延在板部235は、脱衣室側中空部234における枠体2の左右方向の内側の端部から延在しなくてもよく、脱衣室側中空部234における枠体2の左右方向の途中から延在してもよい。
本実施形態においては、浴室側中空部231、中間中空部232及び脱衣室側中空部234を中空状に形成したが、これに限定されず、ソリッド形状に形成してもよい。
図3に示すように、左右の縦枠23,24のうち、他方の縦枠24(本実施形態においては、図3における左側の縦枠24、図1における右側の縦枠24)は、見込方向に延びるように形成される。縦枠24は、浴室側中空部241と、縦枠呑み込み凹部243と、脱衣室側中空部244と、縦枠脱衣室側延在板部245と、を有する。浴室側中空部241、縦枠呑み込み凹部243、脱衣室側中空部244及び縦枠脱衣室側延在板部245は、浴室側から脱衣室側に向かってこの順に配置される。浴室側中空部241、縦枠呑み込み凹部243及び脱衣室側中空部244は、縦枠24の本体部分であり、縦枠脱衣室側延在板部245は、縦枠24における建物構造物への取付枠部分である。
浴室側中空部241は、見込方向の浴室側に配置される。浴室側中空部241は、見込方向に延びる中空状に形成される。縦枠呑み込み凹部243は、浴室側中空部241の脱衣室側に形成される。縦枠呑み込み凹部243は、左右方向の内側に向けて開放する枠状に形成される。縦枠呑み込み凹部243には、内障子3の戸先框34が呑み込まれて配置される。
脱衣室側中空部244は、縦枠呑み込み凹部243の脱衣室側の端部から脱衣室側に延びる中空状に形成される。縦枠脱衣室側延在板部245は、脱衣室側中空部244における左右方向の内側の端部において脱衣室側の端部から脱衣室側に延在する板状に形成される。縦枠脱衣室側延在板部245は、脱衣室側中空部244における枠体2の左右方向の内側の端部から延在しなくてもよく、脱衣室側中空部244における枠体2の左右方向の途中から延在してもよい。
本実施形態においては、浴室側中空部241及び脱衣室側中空部244を中空状に形成したが、これに限定されず、ソリッド形状に形成してもよい。
左右の縦枠23,24それぞれの浴室側中空部231,241の左右方向の外側の面は、中空状のスチールフレーム236,246に固定される。スチールフレーム236,246の浴室側の面には、浴室側壁パネル131,132が配置される。浴室側壁パネル131,132は、スチールフレーム236,246の浴室側の面から浴室側に延びる。
本実施形態においては、浴室側中空部231,241を、例えば、頭部が曲面状のなべネジにより、スチールフレーム236,246にネジ固定している。しかし、これに限定されず、浴室側中空部231,241を、意匠性を考慮して、例えば、頭部が平面状の皿ネジにより、スチールフレーム236,246にネジ固定してもよい。
本実施形態においては、中空状のスチールフレーム236,246を中空状に形成したが、これに限定されず、ソリッド形状に形成してもよい。
左右の縦枠23,24それぞれの縦枠脱衣室側延在板部235,245の左右方向の外側には、造作パネル141が固定される。造作パネル141は、脱衣室側中空部234,244の脱衣室側の面から、脱衣室側に所定長さ延びる。造作パネル141の脱衣室側の端部の左右方向の外側の面には、石膏ボードなどの脱衣室側壁材142が接続される。脱衣室側壁材142は、造作パネル141の左右方向の外側の面から外側に延びる。
本実施形態においては、縦枠脱衣室側延在板部235,245を、例えば、頭部が曲面状のなべネジにより、造作パネル141にネジ固定している。しかし、これに限定されず、縦枠脱衣室側延在板部235,245は、意匠性を考慮して、例えば、頭部が平面状の皿ネジにより、造作パネル141にネジ固定してもよい。
左右の縦枠23,24それぞれにおいては、浴室側において、浴室側中空部231,241は、浴室側壁パネル131,132よりも左右方向の内側に配置される。これにより、例えば、左右の縦枠23,24を取り外してメンテナンスを行うことができる。しかし、これに限定されず、左右の縦枠23,24を浴室側から見た場合に、縦枠23,24を遮蔽するように、浴室側壁パネルを配置してもよい。
左右の縦枠23,24それぞれにおいては、脱衣室側において、取付枠部分である縦枠脱衣室側延在板部235,245は、造作パネル141よりも僅かに左右方向の内側に配置され、造作パネル141よりも左右方向の外側の部分は、造作パネル141により遮蔽されている。これにより、左右の縦枠23,24は、見込方向の脱衣室側から見た場合に、造作パネル141(建物構造物)に遮蔽されている。
よって、浴室側から見た場合に、左右の縦枠23,24の浴室側中空部231,241は視認される。脱衣室側から見た場合に、左右の縦枠23,24の本体部分(浴室側中空部231、中間中空部232、縦枠呑み込み凹部233及び脱衣室側中空部234、浴室側中空部241、縦枠呑み込み凹部243及び脱衣室側中空部244)は視認されずに、左右の縦枠23,24の取付枠部分(縦枠脱衣室側延在板部235,245)は視認される。
内障子3及び外障子4は、枠体2内をスライド可能である。内障子3及び外障子4は、いずれも引き戸であり、これらを左右方向にスライドさせることで、枠体2の内側の開口部分を開放又は閉鎖する、いわゆる引き違い窓を構成する。
内障子3は、図1~図3に示すように、いずれも、細幅で長尺状の上框31、下框32及び召内框33(縦框),戸先框34(縦框)により矩形に枠組みされた框体35と、框体35内に嵌め込まれて固定されたガラスパネル36と、を含んで構成される。上框31(図2参照)及び戸先框34(図3参照)は、上枠21及び縦枠24に呑み込まれて配置されており、図1に示すように、浴室側及び脱衣室側のいずれの側から見た場合においても遮蔽されている。そのため、上框31及び戸先框34は、建具1を浴室側及び脱衣室側のいずれの側から見た場合においても視認されない。
外障子4は、いずれも、細幅で長尺状の上框41、下框42及び召外框43(縦框),戸先框44(縦框)により矩形に枠組みされた框体45と、框体45内に嵌め込まれて固定されたガラスパネル46と、を含んで構成される。上框41(図2参照)及び戸先框44(図3参照)は、上枠21及び縦枠23に呑み込まれて配置されており、図1に示すように、浴室側及び脱衣室側のいずれの側から見た場合においても遮蔽されている。そのため、上框41及び戸先框44は、建具1を浴室側及び脱衣室側のいずれの側から見た場合においても視認されない。
内障子3及び外障子4は、図2及び図3に示すように、いずれも、上框31,41、下框32,42、召内框33、召外框43及び戸先框34,44は、ガラスパネル36,46の端部が配置される呑み込み溝38,48を有して形成される。呑み込み溝38,48は、ガラスパネル36,46の端面が対向した状態で接着されるガラス対向面39,49を有する。ガラス対向面39,49とガラスパネル36,46の端面とは、接着剤により接着されて固定される。ガラス対向面39,49とガラスパネル36,46の端面とを、接着剤により固定することに限定されない。例えば、ガラス対向面39,49とガラスパネル36,46の端面とを、両面テープ等により固定してもよい。
本実施形態においては、図2に示すように、ガラスパネル36,46の上端部は、上框31,41における見込方向の中央に配置された状態で、接着剤により接着されて固定されている。ガラスパネル36の下端部は、下框32の見込方向の中央よりも浴室側に寄った位置に配置されている。ガラスパネル46の下端部は、下框42の見込方向の中央よりも脱衣室側に寄った位置に配置されている。ガラスパネル36,46の下端部の端面は、呑み込み溝38,48のガラス対向面39,49において、接着剤により接着されて固定されている。
図3に示すように、ガラスパネル36の左右方向の端部は、召内框33及び戸先框34の見込方向の中央よりも浴室側に寄った位置に配置されている。ガラスパネル36の左右方向の端部の端面は、呑み込み溝38のガラス対向面39において、接着剤により接着されて固定されている。ガラスパネル46の左右方向の端部は、召外框43及び戸先框44の見込方向の中央よりも脱衣室側に寄った位置に配置されている。ガラスパネル46の左右方向の端部の端面は、呑み込み溝48のガラス対向面49において、接着剤により接着されて固定されている。
本実施形態においては、ガラスパネル36,46の上端部を、上框31,41における見込方向の中央に配置した。ガラスパネル36,46の下端部及び左右方向の端部を、下框32,42、召内框33、召外框43及び戸先框34,44のいずれかにおいて、見込方向の中央よりも浴室側又は脱衣室側に寄った位置に配置した。しかし、これに限定されない。ガラスパネル36,46の上端部を、上框31,41において、見込方向の中央よりも浴室側又は脱衣室側に配置してもよい。ガラスパネル36,46の下端部及び左右方向の端部を、下框32,42、召内框33、召外框43及び戸先框34,44のいずれかにおいて、見込方向の中央に配置してもよいし、見込方向の中央よりも本実施形態で配置された浴室側又は脱衣室側とは反対側に寄った位置に配置してもよい。
以上のように構成される上框31,41は、全部が、図2に示すように、上枠21の内部の呑み込み部212,213に呑み込まれて配置される。上框31,41の全部は、見込方向の浴室側及び脱衣室側のいずれの側から見た場合においても、上枠21に遮蔽されており、浴室側及び脱衣室側のいずれの側から見ても視認されない。
以上のように構成される戸先框34,44は、全部が、図3に示すように、縦枠の内部の呑み込み凹部233,243に呑み込まれて配置される。戸先框34,44の全部は、見込方向の浴室側及び脱衣室側のいずれの側から見た場合においても、縦枠23,24に遮蔽されており、浴室側及び脱衣室側のいずれの側から見ても視認されない。
次に、内障子3及び外障子4について、上框31,41、下框32,42、召内框33、召外框43及び戸先框34,44とガラスパネル36,46の端面とが接着剤により接着されて固定される構造について詳細に説明する。
内障子3の框体35は、いずれも細幅で長尺状の上框31、下框32及び召内框33,戸先框34により矩形に枠組みされている。框体35は、ガラスパネル36の四周に配置される。ガラスパネル36は、細幅の框(上框31、下框32及び召内框33,戸先框34)に嵌め込まれて固定されており、内障子3は、スッキリとしたデザイン性を有する。外障子4の框体45は、いずれも細幅で長尺状の上框41、下框42及び召外框43,戸先框44により矩形に枠組みされている。框体45は、ガラスパネル46の四周に配置される。ガラスパネル46は、細幅の框(上框41、下框42及び召外框43,戸先框44)に嵌め込まれて固定されており、外障子4は、スッキリとしたデザイン性を有する。
本実施形態においては、内障子3及び外障子4の構成は、左右の構成が逆である点のみが異なっており、他の構成は同一である。そのため、本実施形態においては、外障子4について説明する。内障子3の説明については、外障子4の左右を逆にした構成において、対応する符号をつけることで、その説明を省略する。
図5及び図6に示すように、外障子4は、L字状のコーナースペーサ部材81(スペーサ部材)を有する。ガラスパネル46は、ガラスパネル46のコーナー461にコーナースペーサ部材81(スペーサ部材)が配置された状態で、上框41、下框42、召外框43及び戸先框44に接着される。
コーナースペーサ部材81は、図6に示すように、正面から見た場合にL字状に形成され、ガラスパネル46の各コーナー461に配置される。コーナースペーサ部材81は、図7Aに示すように、ガラスパネル46の端面465の幅方向(ガラスパネル46の厚さ方向)の全域に亘って配置されている。
コーナースペーサ部材81は、ガラスパネル46の端面465と、上框41、下框42、召外框43及び戸先框44との間に配置される。コーナースペーサ部材81は、戸先框44のガラス対向面49とガラスパネル46の端面465との距離を調整することで、接着剤Aの膜厚T(図8参照)を設定することができる。
本実施形態においては、図7Aに示すように、ガラスパネル46のコーナー461にL字状のコーナースペーサ部材81を配置することで、接着剤Aの膜厚を調整した。しかし、これに限定されない。例えば、ガラスパネル46の直線部分に直線状のスペーサ部材を配置してもよい。
図7Bに示すように、例えば、ガラスパネル46の端面465の幅方向の幅よりも幅が小さいスペーサ部材82を、ガラスパネル46の全周に配置してもよい。この場合、スペーサ部材82をガラスパネル46の端面465の幅方向において、スペーサ部材82が配置されない部分に接着剤Aを配置して、接着剤Aの膜厚を調整する。図7Cに示すように、例えば、戸先框44のガラス対向面49からガラスパネル46の端面465側に突出するリブ83を設けて、リブ83を設けたガラス対向面49とガラスパネル46の端面465との間に接着剤Aを配置してもよい。この場合、リブ83からガラスパネル46の端面465までの距離が、ガラス対向面49からガラスパネル46の端面465までの距離よりも短い状態で、ガラスパネル46とリブ83が設けられたガラス対向面49との間に接着剤Aを配置できる。
図8に示すように、ガラスパネル46の左右方向の端部の端面465と、飲み込み溝48のガラス対向面49とは、接着剤Aにより接着されて固定されている。ガラスパネル46の左右方向の端部は、召外框43及び戸先框44の見込方向の中央よりも脱衣室側に寄った位置に配置されている。ガラスパネル36の左右方向の端部の端面465は、飲み込み溝38のガラス対向面39において、接着剤Aにより接着されて固定されている。
召外框43及び戸先框44は、図8に示すように、ガラス対向面49を有する飲み込み溝48と、接着剤収容部Kと、を有する。接着剤収容部Kは、召外框43及び戸先框44における見込方向の一方側に形成される。接着剤収容部Kは、ガラスパネル46の左右方向の端部の端面465に接着剤Aを配置する場合に、ガラスパネル46の端面465と飲み込み溝48のガラス対向面49の間から溢れた余剰の接着剤を収容する。
ガラスパネル46と框(召外框43、戸先框44)とを接着する場合に、ガラスパネル46の端面465に接着剤Aを塗布した後に、ガラスパネル46の端面465と框(召外框43、戸先框44)とを接着してもよいし、框(召外框43、戸先框44)に接着剤Aを塗布した後に、ガラスパネル46の端面465と框(召外框43、戸先框44)とを接着してもよい。
本実施形態においては、ガラスパネル46の左右方向の端部を、召外框43及び戸先框44において、見込方向の中央よりも脱衣室側に寄った位置において接着剤Aにより接着した。しかし、これに限定されない。図9に示すように、例えば、外障子4Aにおいて、ガラスパネル46の左右方向の端部を、下框42及び召外框43の見込方向の中央において接着剤Aにより接着してもよい。
上框41、下框42、召外框43及び戸先框44とガラスパネル46の端面との接着について、ガラスパネル46と細幅の框(上框41、下框42及び召外框43,戸先框44)とが接着されることでスッキリとしたデザイン性を有しつつ、所定の接着強度が要求される。特に、使用者が戸先框44に手を掛けて開閉する際に、戸先框44には荷重が作用する。そのため、細幅の戸先框44とガラスパネル46の端面465との接着において、所定の接着強度が要求される。
本実施形態においては、図8に示す戸先框44とガラスパネル46の端面465とを接着する接着剤Aにおいて、戸先框44のガラス対向面49とガラスパネル46の端面465との間に配置される接着剤Aの膜厚Tを、0.1~1.4mmに設定する。戸先框44のガラス対向面49とガラスパネル46の端面465との間に配置される接着剤Aの塗布幅Hを、1mm以上に設定する。ガラスパネル36,46の端面の表面粗さRaは、0.35μm以上のもので問題のないことを検証により確認した。
ここで、下記の検証に基づいて、戸先框44とガラスパネル46の端面465とを接着する接着剤Aにおいて、接着剤Aの膜厚を、0.1~1.4mmに設定した理由について説明する。下記の検証に使用した接着剤Aは、コニシ株式会社製の商品名「ボンドMOS8」である。
出願人は、次の理由により、接着剤の膜厚を、0.1~1.4mmに設定した。接着剤Aの膜厚の最小値の0.1mmは、接着剤の機能を発揮できる最小の値である。
接着剤Aの膜厚の最大値について説明する。まず、接着強度の規格値を設定する。接着長さが300mmの戸先側框にF=500Nの力を作用させた場合にガラスパネル46と戸先框44との接着強度が確保される必要があるとして、接着長さが300mmの戸先側框にF=500Nの力を作用させた場合の値を規格値として算出する。
規格値[MPa]=F[N]/(ガラス端面の接着の長さ[mm]×ガラス端面の接着の幅[mm])=500N/(300mm×2mm)=0.83[MPa]となる。「ガラスパネルの端面」を「ガラス端面」と記載している。ガラス端面の接着の長さは、ガラスパネル46の端面の縦方向の長さであり、戸先框44の上下方向の接着長さが300mmの場合におけるガラスパネル46と戸先框44との接着の長さを想定している。ガラス端面の接着の幅は、ガラスパネル46の端面465における接着剤Aの幅方向(ガラスパネル46の厚さ方向)の幅Hが、2mmの場合を想定している。
ここで、ガラスパネル46と戸先框44との接着剤の接着強度について、初期強度と耐久劣化後の強度において、バラツキを考慮して、±3σ(標準偏差)をとる。具体的には、複数サンプルの接着強度の実験値における代表値において、初期強度が、4.3MPaであり、耐久後の強度が、3.6MPaであり、±3σ(標準偏差)が、1.7MPaであることが得られた。
そして、設定した接着強度の規格値に、バラツキを考慮して、3σ(標準偏差)を加算することで、耐久後最低要求強度を算出する。耐久後最低要求強度=0.83MPa(規格値)+1.7MPa(3σ)=2.6MPaであることから、初期強度において、最低で2.6MPa以上の接着強度が必要となる。本実施形態では、余裕を見て、初期強度において、例えば、最低3MPa以上の接着強度を有する場合に、接着強度の規格を満たすとする。
ここで、図10に示すように、複数サンプルの接着強度の実験値における代表値において、初期強度について、接着剤の膜厚と接着強度の関係を実験により求めたグラフがある。このグラフから、接着強度が3MPaの場合の接着剤の膜厚を比例計算により算出する。これにより、接着剤の膜厚1.4mmを導き出すことができる。
以上により、接着強度を確保できる接着剤の膜厚の範囲は、接着剤の機能を発揮できる0.1mmを最小値とし、初期強度が3MPaとなる1.4mmを最大値として設定できる。つまり、接着強度を確保できる接着剤の膜厚の範囲を、0.1~1.4mmに設定する。
次に、下記の検証に基づいて、接着剤の塗布幅Hを、1mm以上に設定した理由について説明する。下記検証に使用した接着剤Aは、コニシ株式会社製の商品名「ボンドMOS8」である。
接着剤の塗布幅について、接着剤の塗布幅が0.5mmである場合と、接着剤の塗布幅が1mmの場合と、について検証を行った。
接着剤の塗布幅が0.5mmである場合、接着長さが300mmの戸先側框にF=500Nの力を作用させたとすると、最低要求強度=F/(ガラス端面の接着の長さ×ガラス端面の接着の幅)=500N/(300mm×0.5mm)=3.3MPaとなる。
ここで、耐久劣化について考察すると、前述のように、ガラスパネル46と戸先框44との接着剤の接着強度について、初期強度と耐久劣化後の強度において、複数サンプルの接着強度の実験値における代表値において、初期強度が、4.3MPaであり、耐久後の強度が、3.6MPaであった。初期強度と耐久後の強度との差は、4.3MPa-3.6MPa=0.7MPaである。
そこで、最低要求強度3.3MPaに対して、3σ(標準偏差)と、初期強度と耐久後の強度との差とを考慮すると、耐久劣化を踏まえた接着剤の最低要求初期強度は、3.3MPa(最低要求強度)+1.7MPa(3σ)+0.7MPa(初期強度と耐久後の強度との差)=5.7MPaとなる。接着剤の膜厚が0.1~1.4mmの範囲において、実験により接着強度を測定したが、最低要求初期強度5.7MPaを満たす接着剤の膜厚はない。接着剤の膜厚を0.1~1.4mmの範囲としているのは、前述のように、接着剤の膜厚を0.1~1.4mmに設定したためである。
一方、接着剤の塗布幅が1mmである場合、接着長さが300mmの戸先側框にF=500Nの力を作用させたとすると、最低要求強度=F/(ガラス端面の接着の長さ×ガラス端面の接着の幅)=500N/(300mm×1mm)=1.7MPaとなる。
ここで、耐久劣化について考察すると、前述のように、ガラスパネル46と戸先框44との接着剤の接着強度について、初期強度と耐久劣化後の強度において、複数サンプルの接着強度の実験値における代表値において、初期強度が、4.3MPaであり、耐久後の強度が、3.6MPaであった。初期強度と耐久後の強度との差は、4.3MPa-3.6MPa=0.7MPaである。
そこで、最低要求強度1.7MPaに対して、3σ(標準偏差)と、初期強度と耐久後の強度との差とを考慮すると、耐久劣化を踏まえた接着剤の最低要求初期強度は、1.7MPa(最低要求強度)+1.7MPa(3σ)+0.7MPa(初期強度と耐久後の強度との差)=4.1MPaとなる。接着剤の膜厚が0.1~1.4mmの範囲において、実験により接着強度を測定すると、最低要求初期強度4.1MPa以上となる接着剤の膜厚が存在する。つまり、接着剤の塗布幅は、1mm以上であればよい。接着剤の膜厚を0.1~1.4mmの範囲としているのは、前述のように、接着剤の膜厚を0.1~1.4mmに設定したためである。
以上により、接着剤の塗布幅が0.5mmであることは好ましくなく、接着剤の塗布幅を1mm以上に設定することを、検証により導き出すことができた。
以上のように構成される本実施形態の建具1は、以下の効果を奏する。
本実施形態の建具1は、枠体2と、枠体2内にスライド可能に配置される外障子4と、を備え、外障子4は、戸先側に配置された戸先框44を有する框体45と、框体45内に配置されるガラスパネル46と、を有し、ガラスパネル46の端面465は、接着剤により、戸先框44に接着されて固定され、ガラスパネル46の端面465と戸先框44との間に配置される接着剤の膜厚は、0.1~1.4mmである。これにより、戸先框44とガラスパネル46との接着について十分な接着強度が得られ、戸先框44とガラスパネル46との接着強度を確保することができる。特に、戸先框44が細幅に形成される場合において、スッキリとしたデザイン性を有しつつ、戸先框44とガラスパネル46との接着強度を確保できる。
本実施形態においては、ガラスパネル46の端面465と戸先框44との間に配置される接着剤の幅Hは、1mm以上である。これにより、戸先框44とガラスパネル46との接着について一層十分な接着強度が得られ、戸先框44とガラスパネル46との接着強度を一層確保することができる。特に、戸先框44が細幅に形成される場合において、スッキリとしたデザイン性を有しつつ、戸先框44とガラスパネル46との接着強度を一層確保できる。
本実施形態においては、ガラスパネル46の端面465と戸先框44との間には、接着剤Aの膜厚を設定するためのコーナースペーサ部材81が配置される。これにより、コーナースペーサ部材81を配置することで、接着剤Aの膜厚を容易に設定できる。
本実施形態においては、枠体2は、浴室と脱衣室とを連通する開口部に設けられる。これにより、浴室と脱衣室とを連通する開口部に設けられる建具1において、戸先框44とガラスパネル46との接着強度を確保することができる。
本実施形態においては、戸先框44は、ガラスパネル46の端面465に接着剤を配置する場合に、余剰の接着剤を収容する接着剤収容部Kを有する。これにより、余剰の接着剤が戸先框44から溢れてしまうことを抑制できる。
以下、実施例に基づいて本開示をより詳細に説明するが、本開示はこれらの実施例によって限定されるものではない。
[試験方法]まず、以下の実施例及び比較例において測定した接着強度の試験方法について説明する。ガラスパネル11とアルミ板12とを接着剤Aにより接着した後に、引張試験を行った。
具体的には、図11に示すように、アルミ板12の表面にスペーサとなるテープ13を貼着した後に、恒温室において、アルミ板12の表面における塗布幅Lの範囲に、接着剤Aを塗布した。ここで、接着剤Aの膜厚は、スペーサとなるテープ13の厚さにより設定される。接着剤Aの塗布幅Lは、テープ13を離間して形成された幅により設定される。その後、図12に示すように、ガラスパネル11とアルミ板12とを貼り合わせて、クリップ(図示省略)で固定して、所定時間養生した。
そして、図12に示すように、ガラスパネル11とアルミ板12とを貼り合わせた状態で、図13に示すように、上側治具10a及び下側治具10bに挟んだ状態で固定して、設定した温度及び湿度の環境下で、所定時間養生した。その後、この状態から、引張試験において、上側治具10aを上側に引っ張ると共に、下側治具10bを下側に引っ張る。このときの引張値を測定することで、接着強度を測定した。
[判定方法]上記試験方法において得られた実測した接着強度が、接着剤の種類に応じて算出した判定規格値である最低要求初期強度を満たしているか否かにより判定を行った。判定規格値である最低要求初期強度を次のように算出した。
以下の表1~表3に示した接着剤の種類と接着剤における膜厚及び塗布幅との組み合わせにより、ガラスパネル11とアルミ板12との接着強度として劣化前の初期強度を実測し、実測した初期強度と判定規格値である最低要求初期強度とを比較することにより接着強度の判定を行った。
接着剤の種類としては、ボンドMOS8(商品名)(コニシ株式会社製)、PM200(商品名)(セメダイン株式会社製)、スーパーシール(商品名(セメダイン株式会社製)を使用した。ボンドMOS8(商品名)(コニシ株式会社製)及びPM200(商品名)(セメダイン株式会社製)は、弾性エポキシ/変性シリコン系の接着剤である。スーパーシール(商品名(セメダイン株式会社製)は、シリコン変性ポリマー系の接着剤である。
ここで、表1~表3に記載した判定規格値である最低要求初期強度を、次のように求めた。
表1において、ボンドMOS8(商品名)(コニシ株式会社製)の接着剤について、最低要求強度を求める。接着剤の塗布幅が1mmである場合、接着長さが300mmの戸先側框にF=500Nの力を作用させたとすると、最低要求強度=F/(ガラス端面の接着の長さ×ガラス端面の接着の幅)=500N/(300mm×1mm)=1.7MPaとなる。
ここで、耐久劣化について考察すると、前述のように、ガラスパネル46と戸先框44との接着剤の接着強度について、初期強度と耐久劣化後の強度において、複数サンプルの接着強度の実験値における代表値において、初期強度が、4.3MPaであり、耐久後の強度が、3.6MPaであり、±3σ(標準偏差)が、1.7MPaであった。初期強度と耐久後の強度との差は、4.3MPa-3.6MPa=0.7MPaである。
そこで、最低要求強度1.7MPaに対して、3σ(標準偏差)と、初期強度と耐久後の強度との差とを考慮して、耐久劣化を踏まえた接着剤の最低要求初期強度を、1.7MPa(最低要求強度)+1.7MPa(3σ)+0.7MPa(初期強度と耐久後の強度との差)=4.1MPaとした。
接着剤の塗布幅が2mmである場合に、同様に、最低要求強度=500N/(300mm×2mm)=0.83MPaとなる。最低要求強度0.83MPaに対して、3σ(標準偏差)と、初期強度と耐久後の強度との差とを考慮して、耐久劣化を踏まえた接着剤の最低要求初期強度を、0.83MPa(最低要求強度)+1.7MPa(3σ)+0.7MPa(初期強度と耐久後の強度との差)=3.23MPaとした。ここでは、最低要求初期強度を、小数点以下第2位を四捨五入して、3.2MPaとした。
表2において、PM200(商品名)(セメダイン株式会社製)の接着剤について、最低要求初期強度を求める。接着剤の塗布幅が0.5mmである場合、接着長さが300mmの戸先側框にF=500Nの力を作用させたとすると、最低要求初期強度=F/(ガラス端面の接着の長さ×ガラス端面の接着の幅)=500N/(300mm×0.5mm)=3.3MPaとなる。
ここで、耐久劣化について考察すると、前述のように、ガラスパネル46と戸先框44との接着剤の接着強度について、初期強度と耐久劣化後の強度において、複数サンプルの接着強度の実験値における代表値において、初期強度が、5.1MPaであり、耐久後の強度が、4.9MPaであり、±3σ(標準偏差)が、1.7MPaであった。初期強度と耐久後の強度との差は、5.1MPa-4.9MPa=0.2MPaである。
そこで、最低要求強度3.3MPaに対して、3σ(標準偏差)と、初期強度と耐久後の強度との差とを考慮して、耐久劣化を踏まえた接着剤の最低要求初期強度を、3.3MPa(最低要求強度)+1.7MPa(3σ)+0.2MPa(初期強度と耐久後の強度との差)=5.2MPaとした。
接着剤の塗布幅が1mmである場合に、同様に、最低要求強度=500N/(300mm×1mm)=1.7MPaとなる。最低要求強度1.7MPaに対して、3σ(標準偏差)と、初期強度と耐久後の強度との差とを考慮して、耐久劣化を踏まえた接着剤の最低要求初期強度を、最低要求強度+3σ+初期強度と耐久後の強度との差=1.7MPa+1.7MPa+0.2MPa=3.6MPaとした。
接着剤の塗布幅が2mmである場合に、同様に、最低要求強度=500N/(300mm×2mm)=0.83MPaとなる。最低要求強度0.83MPaに対して、3σ(標準偏差)と、初期強度と耐久後の強度との差とを考慮して、耐久劣化を踏まえた接着剤の最低要求初期強度を、0.83MPa(最低要求強度)+1.7MPa(3σ)+0.2MPa(初期強度と耐久後の強度との差)=2.73MPaとした。ここでは、最低要求初期強度を、小数点以下第2位を四捨五入して、2.7MPaとした。
表3において、スーパーシール(商品名(セメダイン株式会社製)の接着剤について、最低要求初期強度を求める。接着剤の塗布幅が1mmである場合、長さが300mmの戸先側框にF=500Nの力を作用させたとすると、最低要求強度=F/(ガラス端面の接着の長さ×ガラス端面の接着の幅)=500N/(300mm×1mm)=1.7MPaとなる。
ここで、耐久劣化について考察すると、前述のように、ガラスパネル46と戸先框44との接着剤の接着強度について、初期強度と耐久劣化後の強度において、複数サンプルの接着強度の実験値における代表値において、初期強度が、2.2MPaであり、耐久後の強度が、1.7MPaであり、±3σ(標準偏差)が、0.4MPaであった。初期強度と耐久後の強度との差は、2.2MPa-1.7MPa=0.5MPaである。
そこで、最低要求強度0.5MPaに対して、3σ(標準偏差)と、初期強度と耐久後の強度との差とを考慮して、耐久劣化を踏まえた接着剤の最低要求初期強度を、1.7MPa(最低要求強度)+0.4MPa(3σ)+0.5MPa(初期強度と耐久後の強度との差)=2.6MPaとした。
接着剤の塗布幅が2mmである場合に、同様に、最低要求強度=500/(300×2)=0.83MPaとなる。最低要求強度0.83MPaに対して、3σ(標準偏差)と、初期強度と耐久後の強度との差とを考慮して、耐久劣化を踏まえた接着剤の最低要求初期強度は、0.83MPa(最低要求強度)+0.4MPa(3σ)+0.5MPa(初期強度と耐久後の強度との差)=1.73MPaとした。ここでは、最低要求初期強度を、小数点以下第2位を四捨五入して、1.7MPaとした。
ボンドMOS8(商品名)(コニシ株式会社製)の接着剤を使用した場合の判定結果を表1に示した。PM200(商品名)(セメダイン株式会社製)の接着剤を使用した場合の評価結果を表2に示した。スーパーシール(商品名)(セメダイン株式会社製)の接着剤を使用した場合の評価結果を表3に示した。
表1~3の判定結果において、接着剤の接着強度において、実測した初期強度が、最低要求初期強度[判定規格値]よりも1.0MPa以上である場合には、判定結果として「◎」と表示した。接着剤の接着強度において、実測した初期強度が、最低供給強度[判定規格値]以上で、かつ、1.0MPa未満である場合には、判定結果として「〇」と表示した。接着剤の接着強度において、実測した初期強度が、最低要求初期強度[判定規格値]未満である場合には、判定結果として、「×」と表示した。
実施例1~5(ボンドMOS8(商品名)(コニシ株式会社製))、6~12(PM200(商品名)(セメダイン株式会社製))、13~16(スーパーシール(商品名)(セメダイン株式会社製))の接着強度において、実測した初期強度は、判定規格値以上であった。具体的には、実施例1、2、4、6~10の接着強度においては、判定結果は「◎」であり、実測した初期強度が、判定規格値である最低要求初期強度よりも1.0MPa以上の余裕度をもって、判定規格値である最低要求初期強度を満たしている。実施例3、5、11、12、14、15の接着強度においては、判定結果は「○」であり、実測した初期強度が、判定規格値である最低要求初期強度以上であって1.0MPa未満の余裕度をもって、判定規格値である最低要求初期強度を満たしている。
一方、比較例1、2(ボンドMOS8(商品名)(コニシ株式会社製))、3、4(PM200(商品名)(セメダイン株式会社製))の接着強度において、判定結果は「×」であり、実測した初期強度が、判定規格値である最低要求初期強度を満たしていなかった。
PM200(商品名)(セメダイン株式会社製)における実施例9と実施例12とは、両者とも、接着剤の膜厚は0.1mmであって、実施例9においては接着剤の塗布幅が1mmであり、実施例12においては接着剤の塗布幅が0.5mmである。
実施例9と実施例12を比較すると、実施例9においては、判定規格値である最低要求初期強度よりも1.0MPa以上の余裕度をもって、判定規格値である最低要求初期強度を満たしている(判定結果:「◎」)。これに対して、実施例12においては、判定規格値である最低要求初期強度以上であって1.0MPa未満の余裕度をもって、判定規格値である最低要求初期強度を満たしている(判定結果:「〇」)。実施例9における接着剤の塗布幅が1mmの場合の実測した初期強度が、実施例12における接着剤の塗布幅が0.5mmの場合の実測した初期強度よりも、判定規格値である最低要求初期強度に対して余裕度が大きかった。従って、接着剤の塗布幅が1mmの場合は、接着剤の塗布幅が0.5mmの場合よりも、良好な接着強度が得られることが分かった。
以上、本開示の好ましい実施形態について説明した。本開示は、上述した実施形態に制限されるものではなく、適宜変更が可能である。
前記実施形態においては、浴室と脱衣室とを連通する開口部に配置される引き違いの内障子3及び外障子4において、ガラスパネル46と戸先框との間に配置される接着剤について説明した。しかし、これに限定されない。本開示は、片引きの引戸(障子)や、2枚以上の引戸(障子)を備える建具にも適用可能である。本開示は、開口部に対して弧を描いて開閉する開き戸や、折戸にも適用可能である。本開示は、引き違い窓、縦滑り出し窓、横滑り出し窓等にも適用可能である。浴室と脱衣室とを連通する開口部に設けられた建具にも限定されない。建物の内外を連通する建物開口部に設けられた建具に適用してもよい。