以下、図面を参照して、本発明の実施形態に係る圧縮機及び圧縮機システムについて説明する。圧縮機システムは、圧縮機、及び、圧縮機と無線通信を行う携帯端末を備える。
なお、以下では、圧縮機が可搬型の空気圧縮機である場合について説明するが、圧縮機は、可搬型の空気圧縮機に限定されず、固定型の空気圧縮機であってもよい。また、圧縮機は、空気を圧縮する空気圧縮機に限られず、空気以外の気体を圧縮する圧縮機であってもよい。
<第1実施形態>
図1を参照して、本発明の第1実施形態に係る圧縮機システム39の概略について説明する。図1に示すように、圧縮機システム39は、可搬型の圧縮機36と、圧縮機36と無線通信を行う携帯端末37とを備える。携帯端末37には、圧縮機36の運転状態を監視したり、圧縮機36を遠隔から操作したりするための監視アプリケーションがインストールされている。圧縮機36及び携帯端末37は、相互の情報を無線通信により、やり取りしている。
圧縮機36と携帯端末37との通信方法は、種々の方法を採用することができる。例えば、圧縮機36と携帯端末37とは、通信回線50を介さずに、直接的に情報の授受を行うことが可能な近距離無線通信方式として、Bluetooth(登録商標)を採用することができる。なお、近距離無線通信方式は、Bluetoothに限定されず、Wi-Fi(登録商標)、ZigBee(登録商標)などの通信方式を採用することもできる。また、圧縮機36と携帯端末37とは、広域ネットワークである通信回線50、及び通信回線50に接続される無線基地局51、無線アクセスポイント52等を介して、間接的に情報の授受を行うようにしてもよい。なお、通信回線50は、インターネット、4G,5G等の携帯電話通信網(移動通信網)、LAN(Local Area Network)、WAN(Wide Area Network)等である。
携帯端末37は、インストールされている監視アプリケーションを起動し、携帯端末37のタッチパネル上で所定の操作を行うことにより、圧縮機36の動作を制御することができる。携帯端末37の使用者(すなわち圧縮機36を用いて作業を行う作業者)の操作によって監視アプリケーションが起動されると、タッチパネル171にモード設定画面75(図8参照)が表示される。携帯端末37の使用者は、モード設定画面75の操作領域をタッチ操作することにより、圧縮機36の運転、停止、運転モードの切り替え、異常停止状態からの復帰等を行うことができる。圧縮機36の操作方法の詳細については後述する。
本実施形態では、携帯端末37がスマートフォンである場合について説明するが、携帯端末37はスマートフォンに限定されない。携帯端末37としては、作業者によって携帯可能なタブレット、ウェアラブル機器等の様々な機器を採用することができる。また、携帯端末37は、圧縮機36の操作及び監視のみを行う専用の携帯端末であってもよい。
図2~図6を参照して、圧縮機36の構成を説明する。図2~図6に示すように、圧縮機36は、空気(気体)を圧縮する圧縮機本体1と、圧縮機本体1を駆動するモータ(電動機)6と、圧縮機本体1で圧縮された空気を貯留するタンク24と、タンク24内に貯留された空気を減圧する複数の減圧弁81(図5参照)と、複数の減圧弁81の設定圧力を個別に調整可能な複数の調整装置82(図5参照)と、減圧弁81と空気工具(不図示)とを接続し減圧弁81により減圧された空気を空気工具へ供給する継手83(図5参照)と、冷却ファン10と、制御基板30と、操作パネル34と、スイッチ基板40とを備える。図2において、破線で描かれる大きな枠で囲んだ領域は空気を圧縮する圧縮機本体1であり、破線で描かれる小さな枠で囲んだ領域は圧縮機本体1を駆動するモータ6である。モータ6は、ステータ2と、ロータ8と、ロータ8に固定されるシャフト6Aと、を有する。
圧縮機本体1は、クランクケース1Aとクランクケース1Aに取り付けられたシリンダ18A,18Bとを備えている。クランクケース1A内には、モータ6のシャフト6Aが貫通している。
クランクケース1Aは、圧縮機本体1及びモータ6を覆っている。クランクケース1Aの一端側にはステータ2が直接固定されている。クランクケース1Aには、シャフト6Aの一端側を軸支するベアリング3が装着されている。クランクケース1Aにおけるステータ2の取り付け側の反対側には、シャフト6Aの他端側を軸支するベアリング4が装着された軸受箱5が嵌合されている。
クランクケース1A内を貫通するシャフト6Aの中央部にはキー12が埋め込まれている。このキー12が埋め込まれたシャフト6Aの中央部には、ベアリング15Aと偏心したエキセントリック16Aを介して、空気を圧縮するための連接棒組14Aが取り付けられている。また、シャフト6Aの中央部には、ベアリング15Bと偏心したエキセントリック16Bを介して、空気を圧縮するための連接棒組14Bが、バランス17と共に取り付けられている。
連接棒組14A,14B及びバランス17は、クランクケース1A及び軸受箱5に装着された2個のベアリング3,4によって両側から支持されている。この構造により、連接棒組14A,14Bは、ベアリング15A,15Bを介してエキセントリック16A,16Bに対して回転自在に接続されている。
本実施形態では、低圧側のシリンダ18A及び高圧側のシリンダ18Bの合計で2つのシリンダ18A,18Bがクランクケース1Aを挟んで互いに対向するように取り付けられている。
シリンダ18Aと連接棒組14Aによって圧縮室23Aが形成される。連接棒組14Aには、シリンダ18Aの内周面と連接棒組14Aの隙間をシールするピストンリング13Aが設けられる。シリンダ18Bと連接棒組14Bによって圧縮室23Bが形成される。連接棒組14Bには、シリンダ18Bの内周面と連接棒組14Bとの隙間をシールするピストンリング13Bが設けられる。
シャフト6Aの端部には冷却ファン10が取り付けられている。冷却ファン10は、モータ6によって回転し、圧縮機本体1を覆うカバー26の内側に冷却風を供給し、圧縮機本体1、モータ6、タンク24などの圧縮機36の各構成要素を冷却する。
タンク24は、圧縮機本体1の下部に配置されている。図5に示すように、タンク24には、減圧弁81が2つ取り付けられている。
本実施形態に係る圧縮機36は、約0.5MPa~約2.5MPaまでの圧力の空気を取り出すことが可能な高圧対応の減圧弁81(以下、高圧減圧弁81Hと記す)と、0MPa~約1.1MPaまでの圧力の空気を取り出すことが可能な低圧対応の減圧弁81(以下、常圧減圧弁81Lと記す)と、を備える。
高圧減圧弁81Hには、空気工具に接続される継手83(以下、高圧用継手83Hと記す)が2つ取り付けられている。なお、以下では、高圧用継手83Hに接続される空気工具を高圧ツールと記す。高圧用継手83Hは、高圧減圧弁81Hにより減圧された空気を高圧ツールへ供給する供給部(空気取り出し口)として機能する。常圧減圧弁81Lには、空気工具に接続される継手83(以下、常圧用継手83Lと記す)が2つ取り付けられている。なお、以下では、常圧用継手83Lに接続される空気工具を常圧ツールと記す。常圧用継手83Lは、常圧減圧弁81Lにより減圧された空気を常圧ツールへ供給する供給部(空気取り出し口)として機能する。
減圧弁81は、ダイアフラム(不図示)を境に調整スプリング(不図示)の力と空気の二次圧力の力のバランスによって二次圧力が設定される周知の直動式の減圧弁である。なお、減圧弁81としては、直動式に限定されず、パイロット弁を使用して主弁を作動させるパイロット作動式の減圧弁を採用してもよい。
高圧減圧弁81Hには、高圧減圧弁81Hの設定圧力を調整可能な調整装置82(以下、高圧調整装置82Hと記す)が取り付けられている。常圧減圧弁81Lには、常圧減圧弁81Lの設定圧力を調整可能な調整装置82(以下、常圧調整装置82Lと記す)が取り付けられている。調整装置82は、手指によって操作可能なノブと、ノブとともに回転する調整ボルト(不図示)と、を備える。調整ボルトはダイアフラムを押圧する調整スプリングの端部に当接され、調整ボルトの回転により調整スプリングの圧縮量が調整される。
作業者は、調整装置82のノブを回転操作することにより減圧弁81の設定圧力を調整し、継手83に取り付けられた空気工具を使用する。減圧弁81には、アナログ圧力計が設けられており、作業者は、アナログ圧力計の指示針を見ながら減圧弁81の設定圧力を調整することができる。
図2を参照して圧縮機本体1の動作について説明する。圧縮機本体1は、モータ6によってシャフト6Aが回転すると、エキセントリック16Aによって連接棒組14Aが圧縮室23A内を往復運動するとともに、エキセントリック16Bによって連接棒組14Bが圧縮室23B内を往復運動する。
連接棒組14Aが上死点から下死点へ向かう吸い込み工程では、低圧側のシリンダ18Aのシリンダヘッド21A、空気弁20Aを通じて圧縮室23A内に空気(外気)が吸い込まれる。連接棒組14Aが下死点から上死点へ向かう吐き出し工程では、圧縮室23A内に吸い込まれた空気が圧縮され、空気弁20A、シリンダヘッド21Aから吐き出される。
シリンダ18Aで圧縮されシリンダヘッド21Aから吐き出された空気は、配管27(図5参照)を通じてシリンダ18Bに送られる。連接棒組14Bが上死点から下死点へ向かう吸い込み工程では、高圧側のシリンダ18Bのシリンダヘッド21B、空気弁20Bを通じて圧縮室23B内にシリンダ18Aで圧縮した空気が吸い込まれる。連接棒組14Bが下死点から上死点へ向かう吐き出し工程では、吸い込まれた空気が更に圧縮され、空気弁20B、シリンダヘッド21Bを通じて吐き出される。
シリンダヘッド21Bから吐き出された圧縮空気は、タンク24に貯留される。このように、本実施形態に係る圧縮機36は、一方のシリンダ18Aで圧縮した空気を他方のシリンダ18Bで更に圧縮する、2段圧縮を行う。2段圧縮は、1段圧縮の場合よりも低圧側と高圧側の圧力比(吐き出し圧力/吸い込み圧力)が各々小さくなるため、効率がよくなる。その結果、本実施形態に係る圧縮機36は、1段圧縮の場合に比べて、圧縮部に発生する熱を少なくすることができる。
図3に示すように、カバー26の正面側には、操作パネル34が取り付けられている。操作パネル34は、作業者によって操作される複数のスイッチ34aを有している。複数のスイッチ34aには、運転開始と運転停止を指示するための運転・停止スイッチ34a1、運転モードの変更を指示するためのモード切替スイッチ34a2、及び、低電圧異常、高温異常等の発生により圧縮機36の運転が停止した後、圧縮機36の運転の再開を指示するため復帰スイッチ34a3が含まれる。また、操作パネル34は、作業者に圧縮機36の運転状態を知らせるための報知装置として、音出力部34c及び複数の表示部34bを有している。音出力部34cは、スピーカを有する。表示部34bは、LEDなどから構成される。複数の表示部34bには、タンク24内の空気の圧力(以下、タンク内圧力とも記す)の大きさを表す表示部、及び、現在の運転モードを表す表示部が含まれる。なお、複数の表示部34bには、液晶ディスプレイのようにメッセージ等を表示可能な表示部を含めるようにしてもよい。
図4に示すように、スイッチ基板40は操作パネル34の下方に設けられ、制御基板30は2つのタンク24の間に設けられている。制御基板30及びスイッチ基板40は、圧縮機36の運転を制御する制御装置である制御ユニット60を構成する。図6を参照して、圧縮機36の制御ユニット60について説明する。
図6に示すように、制御ユニット60は、制御基板30とスイッチ基板40とを有する。制御基板30はメインコントローラ30aを有し、スイッチ基板40はサブコントローラ40aを有する。メインコントローラ30aとサブコントローラ40aとは電気的に接続されており、相互に情報(データ)の授受を行うことができる。
メインコントローラ30a及びサブコントローラ40aは、動作回路としてのCPU(Central Processing Unit)181,184、記憶装置としての所謂RAM(Random Access Memory)と呼ばれる揮発性メモリ182,185、記憶装置としてのEEPROM(Electrically Erasable Programmable Read Only Memory)、フラッシュメモリ等の不揮発性メモリ183,186、入出力インタフェース、及び、その他の周辺回路を備えたマイクロコンピュータで構成される。なお、メインコントローラ30a及びサブコントローラ40aは、それぞれ1つのマイクロコンピュータで構成してもよいし、複数のマイクロコンピュータで構成してもよい。また、メインコントローラ30aの機能とサブコントローラ40aの機能を1つのマイクロコンピュータに集約してもよい。
メインコントローラ30a及びサブコントローラ40aの不揮発性メモリ183,186には、各種演算が実行可能なプログラムが格納されている。すなわち、不揮発性メモリ183,186は、本実施形態の機能を実現するプログラムを読み取り可能な記憶媒体である。CPU181,184は、不揮発性メモリ183,186に記憶されたプログラムを揮発性メモリ182,185に展開して演算実行する処理装置であって、プログラムに従って入出力インタフェース及び不揮発性メモリ183,186、揮発性メモリ182,185から取り入れた信号に対して所定の演算処理を行う。
メインコントローラ30aは、電源部(交流電源)41から供給される電力によってモータ6を駆動する。制御基板30は、コンバータ30b、コンデンサ30c、インバータ回路30d、及び、電圧センサ30eを有する。を有する。インバータ回路30dは、複数のスイッチング素子を有する。コンバータ30bは、電源部41から供給される交流電圧を直流電圧に変換する。インバータ回路30dは、コンデンサ30cで平滑された直流電圧をスイッチング素子によって交流電圧に変換する。電圧センサ30eは、一対の電力線(直流母線)30g間の直流電圧を検出し、その検出結果を表す電圧信号をメインコントローラ30aに出力する。
メインコントローラ30aは、操作パネル34あるいは携帯端末37に対する操作によってサブコントローラ40aから出力される操作指令、並びに、後述するタンク内圧センサ31等の各種センサでの検出結果に基づいて、モータ6の制御を行う。メインコントローラ30aは、インバータ回路30dに対して駆動制御信号を出力し、インバータ回路30dのスイッチング素子を駆動する。また、メインコントローラ30aは、タンク内圧センサ31、及び、後述する供給圧センサ38での検出結果に基づいて、報知制御信号を生成し、生成した報知制御信号をサブコントローラ40aに出力する。
スイッチ基板40は、通信アンテナを有し携帯端末37と無線通信可能な通信装置42を備える。サブコントローラ40aは、携帯端末37とBluetoothを用いたペアリングを行う。ペアリングとは、圧縮機36と携帯端末37との間で無線通信を行い、認証及び暗号化通信のためのキー交換等を行う処理のことを指す。
サブコントローラ40aは、操作パネル34におけるスイッチ34aに対する操作がなされると、操作されたスイッチ34aに対応する操作指令をメインコントローラ30aに出力する。サブコントローラ40aは、メインコントローラ30aから入力される情報(データ)に基づいて、表示部34bの表示制御を行う。
また、サブコントローラ40aは、携帯端末37のタッチパネル171(図8参照)に対する操作がなされることにより、携帯端末37から送信される操作指令をメインコントローラ30aに出力する。
タンク内圧センサ31は、タンク24に取り付けられ、タンク24内の空気の圧力を検出し、その検出結果をメインコントローラ30aに出力する。回転数センサ33は、モータ6に取り付けられ、モータ6の回転数(回転速度)を検出し、その検出結果をメインコントローラ30aに出力する。
複数の供給圧センサ38は、複数の減圧弁81のそれぞれにより減圧された空気の圧力(二次圧力)を検出し、その検出結果をメインコントローラ30aに出力する。供給圧センサ38は、減圧弁81に取り付けられる。なお、供給圧センサ38による圧力検出方式は、減圧弁81の内部の動圧経路から圧力を取り出す内部検出方式としてもよいし、減圧弁81よりも下流側(例えば、減圧弁81と継手83とを接続する流路)から圧力を取り出す外部検出方式としてもよい。
図5に示すように、本実施形態に係る圧縮機36は、高圧減圧弁81Hにより減圧された空気の圧力を検出し、その検出結果をメインコントローラ30aに出力する供給圧センサ(以下、高圧側供給圧センサ38Hと記す)と、常圧減圧弁81Lにより減圧された空気の圧力を検出し、その検出結果をメインコントローラ30aに出力する供給圧センサ38(以下、常圧側供給圧センサ38Lと記す)と、を備える。
本実施形態では、圧力制御運転方式によって圧縮機36の運転が制御される。圧力制御運転方式とは、タンク24内の圧力に応じて、モータ6の回転を制御する方式である。図6に示すように、サブコントローラ40aは、操作パネル34の運転・停止スイッチ34a1(図3参照)または携帯端末37のタッチパネル171の運転・停止ボタン75f(図8参照)が操作されると、圧力制御運転の開始と停止を指示するための操作指令である運転制御指令をメインコントローラ30aに出力する。
メインコントローラ30aは、スタンバイ状態であるときに運転制御指令が入力されると、圧力制御運転を開始する。スタンバイ状態とは、圧縮機36の電源プラグが電源部41に接続され、圧縮機36が通電された状態であって、圧力制御運転が行われていない状態のことを指す。なお、本実施形態では、正常に圧力制御運転が行われている状態のことを圧力制御運転状態と記す。メインコントローラ30aは、圧力制御運転状態のときに運転制御指令が入力されると、圧力制御運転を終了する。これにより、圧縮機36は、スタンバイ状態に戻る。
圧力制御運転が開始されると、メインコントローラ30aは、モータ6を回転させることにより、空気を圧縮してタンク24に蓄積させる空気圧縮運転を行う。タンク内圧センサ31で検出された圧力が上限側閾値以上になると、メインコントローラ30aは、モータ6の回転を停止させ空気圧縮運転を停止させる。タンク内圧センサ31で検出された圧力が下限側閾値(起動圧力とも記す)以下になると、メインコントローラ30aは、モータ6を回転させることにより圧縮機本体1を起動し、空気を圧縮してタンク24に蓄積させる空気圧縮運転を再び行う。空気圧縮運転が行われている状態を圧縮運転動作状態と記し、空気圧縮運転が行われていない状態を圧縮運転停止状態と記す。したがって、圧力制御運転状態では、圧縮運転動作状態と圧縮運転停止状態とが交互に繰り返し行われる。
メインコントローラ30aは、各種センサで検出された値が異常値となった場合、モータ6を停止させる。例えば、メインコントローラ30aは、電圧センサ30eで検出された直流電圧(入力電源電圧)が予め定めた閾値以下である場合、低電圧異常が発生していると判定し、圧力制御運転をタンク内圧力にかかわらず強制的に停止させる。このように、異常が発生して圧力制御運転が停止している状態を異常停止状態と記す。
次に、圧縮機36の運転モードの一例について説明する。
圧縮機では、作業内容、環境等に応じて、何パターンかの運転モードを備えることが一般的であり、設定される運転モードに応じて、タンク内の圧力の制御範囲、モータ回転数の制御範囲が決定される。本実施形態に係る圧縮機36は、釘打ち作業及び塗装作業用の空気工具の空気供給源として使用されることを想定し、ノーマルモード、パワフルモード、低速モードの3つの運転モードを備えている。
ノーマルモードは、タンク24内の圧力の制御範囲が3.2~4.2MPaに設定され、モータ6の回転数の制御範囲が1800~2850min-1に設定されるモードである。ノーマルモードが設定されると、モータ6の回転数が1800~2850min-1の範囲で可変制御され、タンク24内の圧力が4.2MPa(上限側閾値)になると圧縮機36の動作が停止する(すなわち、モータ6の回転が停止する)。そして、タンク24内の圧力が低下し、3.2MPa(下限側閾値)になると圧縮機36が再起動し、再びモータ6の回転数が1800~2850min-1の範囲で可変制御される。
パワフルモードは、モータ6の回転数がノーマルモードと同じ範囲で可変制御され、圧力制御範囲が3.8MPa(下限側閾値)~4.2MPa(上限側閾値)とされた運転モードである。低速モードは、圧力制御範囲がノーマルモードと同じであるが、モータ6の回転数が1500min-1で維持される運転モードである。
サブコントローラ40aは、モード切替スイッチ34a2(図3参照)または携帯端末37のタッチパネル171のモード切替ボタン75d(図8参照)が操作されると、運転モードの切り替えを指示するための操作指令であるモード切替指令をメインコントローラ30aに出力する。メインコントローラ30aは、ノーマルモードが設定されているときにモード切替指令が入力されると、運転モードをパワフルモードに設定する。メインコントローラ30aは、パワフルモードが設定されているときにモード切替指令が入力されると、運転モードを低速モードに設定する。メインコントローラ30aは、低速モードが設定されているときにモード切替指令が入力されると、運転モードをノーマルモードに設定する。つまり、メインコントローラ30aは、モード切替指令が入力されるたびに、運転モードを切り替える。
メインコントローラ30aは、圧縮機36の運転状態を監視し、種々の情報をサブコントローラ40aに出力する。サブコントローラ40aは、メインコントローラ30aから入力される情報(データ)を、通信装置42を介して携帯端末37へ送信する。
メインコントローラ30aからサブコントローラ40aに入力され、サブコントローラ40aから携帯端末37に送信される情報(データ)には、タンク内圧センサ31で検出されたタンク内圧力、回転数センサ33で検出されたモータ回転数、及び、電圧センサ30eで検出された電圧等の物理量情報が含まれる。
また、メインコントローラ30aからサブコントローラ40aに入力され、サブコントローラ40aから携帯端末37に送信される情報(データ)には、圧縮機36の運転状態(例えば、スタンバイ状態、圧縮運転動作状態、圧縮運転停止状態等)を表す運転状態情報が含まれる。なお、運転状態情報には、圧縮機36の現在の運転モードの情報も含まれる。
さらに、メインコントローラ30aからサブコントローラ40aに入力され、サブコントローラ40aから携帯端末37に送信される情報(データ)には、タンク24内の空気の圧力(タンク内圧力)が圧縮機36に接続される空気工具の作業可能下限値に近づいたことを携帯端末37によって報知させるための情報(報知制御信号)が含まれる。
次に、図7及び図8を参照して、携帯端末37について説明する。図7に示すように、携帯端末37は、入力部兼表示部としてのタッチパネル171と、入力部としての複数の入力スイッチ172(電源スイッチ172a、ホームボタン172b)と、通信アンテナを有し圧縮機36と無線通信可能な通信装置173と、振動装置174と、音出力装置175と、端末コントローラ130とを備える。端末コントローラ130は、タッチパネル171、通信装置173、振動装置174、音出力装置175等の携帯端末37の各部を制御する制御装置として機能する。
図8に示すように、タッチパネル171は、携帯端末37の前面(正面)に設けられている。タッチパネル171は、各種情報が表示される表示部としての液晶ディスプレイと、入力部としてのタッチセンサとを有する。
携帯端末37の上部には、電源スイッチ172aが設けられ、携帯端末37の前面(正面)におけるタッチパネル171の下方には、ホームボタン172bが設けられている。
振動装置174は、偏心回転質量(ERM)方式、リニア共振アクチュエータ(LRA)方式、ピエゾアクチュエータ方式等の周知の振動方式により、携帯端末37を振動させる装置である。振動装置174は、端末コントローラ130からの振動制御信号に基づき、携帯端末37を振動させる。音出力装置175は、スピーカを有し、端末コントローラ130からの音制御信号に基づき、所定の音を出力する。
図7に示すように、端末コントローラ130は、動作回路としてのCPU131、記憶装置としての所謂RAMと呼ばれる揮発性メモリ132、記憶装置としてのEEPROM、フラッシュメモリ等の不揮発性メモリ133、入出力インタフェース、及び、その他の周辺回路を備えたマイクロコンピュータで構成される。なお、端末コントローラ(制御装置)130は、1つのマイクロコンピュータで構成してもよいし、複数のマイクロコンピュータで構成してもよい。
端末コントローラ130の不揮発性メモリ133には、各種演算が実行可能なプログラムが格納されている。すなわち、不揮発性メモリ133は、本実施形態の機能を実現するプログラムを読み取り可能な記憶媒体である。CPU131は、不揮発性メモリ133に記憶されたプログラムを揮発性メモリ132に展開して演算実行する処理装置であって、プログラムに従って入出力インタフェース及び不揮発性メモリ133、揮発性メモリ132から取り入れた信号に対して所定の演算処理を行う。
不揮発性メモリ133に記憶されるプログラムには、フォアグラウンド及び/またはバックグラウンドで動作する複数のアプリケーション(アプリケーションプログラム)136,137と、アプリケーションの動作を支援する支援プログラム134とが含まれる。支援プログラム134には、例えば、OS(Operating System)が含まれる。複数のアプリケーション136,137には、圧縮機36の操作及び監視を行うための監視アプリケーション136、及び、Webサイトの情報をタッチパネル171上に表示させるWebアプリケーション137が含まれる。各アプリケーション136,137は、OSの管理下で動作する。
なお、アプリケーションがフォアグラウンドで動作している状態とは、当該アプリケーションにより生成されるアプリケーション画面がタッチパネル171に表示され、当該アプリケーションの操作が可能な状態のことを指す。また、アプリケーションがバックグラウンドで動作している状態とは、当該アプリケーションによるアプリケーション画面が表示されず、アプリケーション画面からの当該アプリケーションの操作が不能な状態のことを指す。
タッチパネル171のホーム画面(不図示)に表示される監視アプリケーション136のアプリケーションアイコンがタッチ操作されると、端末コントローラ130は、監視アプリケーション136を実行する。監視アプリケーション136が実行されることにより、図8に示すように、タッチパネル171の表示画面にモード設定画面75が表示される。
モード設定画面75には、運転状態表示領域75a、通信接続アイコン75b、ノーマル運転モードアイコン75c1、パワフル運転モードアイコン75c2、低速運転モードアイコン75c3、モード切替ボタン75d、運転・停止ボタン75f、復帰ボタン75g、メッセージ表示領域75h、及びメニューアイコン75mが表示される。
運転状態表示領域75aは、圧縮機36の動作状況を監視するための監視領域であり、タンク24内の圧力、及び、圧縮機36の運転状態を表す情報が表示される。運転状態表示領域75a内の下部には、メッセージ表示領域75hが形成される。メッセージ表示領域75hは、作業者に対して、注意喚起を促すためのメッセージ、及び、圧縮機36が異常停止した場合に、その原因と対策を知らせるためのメッセージ等が表示される領域である。
通信接続アイコン75bは、圧縮機36に電力が供給されている状態のときにタッチ操作されると、携帯端末37と圧縮機36とを相互に通信可能な状態にしたり、通信接続状態を解除したりするための操作領域である。この通信接続アイコン75bがタッチ操作されると、圧縮機36と携帯端末37とがBluetoothにより相互に通信可能となる。
ノーマル運転モードアイコン75c1、パワフル運転モードアイコン75c2、及び低速運転モードアイコン75c3は、圧縮機36の運転モードについて表示する領域である。各運転モードアイコン75c1,75c2,75c3のうち、現在設定されている運転モードのアイコンは、ハイライト表示される。このため、作業者は、現在の運転モードの確認を容易に行うことができる。
モード切替ボタン75dは、運転モードを切り替える際にタッチ操作される操作領域である。モード切替ボタン75dがタッチ操作されると、携帯端末37からモード切替指令(操作指令)が圧縮機36に送信される。したがって、モード切替ボタン75dをタッチ操作することにより、圧縮機36の運転モードをノーマルモードからパワフルモードへ、パワフルモードから低速モードへ、低速モードからノーマルモードへ切り替えることができる。
運転・停止ボタン75fは、圧縮機36を運転させたり、停止させたりする際にタッチ操作される操作領域である。運転・停止ボタン75fがタッチ操作されると、携帯端末37から運転制御指令(操作指令)が圧縮機36に送信される。したがって、圧縮機36がスタンバイ状態であるときに、運転・停止ボタン75fをタッチ操作することにより、圧縮機36の運転を開始することができる。また、圧縮機36が圧力制御運転状態であるときに、運転・停止ボタン75fをタッチ操作することにより、圧縮機36の運転を停止することができる。
復帰ボタン75gは、低電圧異常、高温異常等により圧縮機36の運転が停止した後、圧縮機36の運転を再開するためにタッチ操作される操作領域である。この復帰ボタン75gがタッチ操作されると、圧縮機36が異常停止状態から圧力制御運転状態に復帰する。メニューアイコン75mは、各種設定画面、問い合わせ画面等を表示させる際に用いられる操作領域である。
このように、モード設定画面75には、圧縮機36の運転状態に関する情報が表示されるため、作業者は、モード設定画面75を目視することにより、圧縮機36の運転状態を遠隔から監視することができる。また、モード設定画面75には、運転・停止ボタン75f等の操作領域が設けられているため、圧縮機36を遠隔から操作することができる。
ところで、可搬型の圧縮機は、建設現場での釘打ち作業、塗装作業等を行うための空気工具の空気供給源として使用される。建設現場では、圧縮機を仮設置された電源付近に置き、圧縮機に電源を入れた後、作業者は圧縮機の設置場所から作業場所まで移動し、エアホースを介して圧縮機から供給される空気を用いて作業を行う。このため、圧縮機は、作業者の目の届かないところに置かれたまま、運転されることになる。つまり、作業者は、基本的には、圧縮機の傍に常駐することはない。
遠隔操作ができない圧縮機では、圧縮機を操作するためには、一旦作業を中断して、圧縮機の設置場所まで行き、圧縮機に一体に設けられる操作部によって操作を行う必要がある。また、エラーにより圧縮機が停止した場合に、停止の原因を確認するためにも、一旦作業を中断して、圧縮機の設置場所まで行き、圧縮機に一体に設けられる表示部によって、停止の原因(エラーの内容)を確認する必要がある。
これに対して、本実施形態では、携帯端末37によって、遠隔から圧縮機36の操作が可能であるとともに、圧縮機36の運転状態を監視することが可能である。このため、圧縮機36を操作するために、あるいはエラーの内容の確認等のために、作業場所から離れて圧縮機36の設置場所まで行く必要がなくなる。このため、作業が中断される時間を短縮することができ、作業効率を向上することができる。
作業者は、釘打ち作業、塗装作業等の作業を行っている間、携帯端末37を衣服のポケット等に収納していることがある。このため、作業者は、作業中、圧縮機36のタンク24内の圧力を携帯端末37の表示画面によって確認することができない。そこで、本実施形態では、圧縮機36の制御ユニット60は、圧縮機36の状態を監視し、タンク24内の空気の圧力が作業可能下限値に近づいた場合に、その旨を作業者に知らせるためのアラート(事前通知)を報知装置によって出力する報知処理(警報出力処理)を実行する。
以下、圧縮機36の制御ユニット60による報知処理の内容について、詳しく説明する。図9では、メインコントローラ30aにより実行される報知処理に関する機能について示している。図9に示すように、メインコントローラ30aは、不揮発性メモリ183に記憶されているプログラムを実行することにより、モータ制御部161、下限値設定部162、及び、報知判定部163として機能する。
モータ制御部161は、サブコントローラ40aからの操作指令に基づき、運転モードを設定し、運転モードに応じてインバータ回路30dに駆動制御信号を出力することによりモータ6を制御する。モータ制御部161は、運転モードに応じた起動圧力Prを設定する。モータ制御部161は、ノーマルモード及び低速モードでは、起動圧力Prを3.2MPaに設定し、パワフルモードでは、起動圧力Prを3.8MPaに設定する。
下限値設定部162は、供給圧センサ38で検出された圧力を作業可能下限値Pminとして設定する。本実施形態では、減圧弁81が2つ設けられているため、作業可能下限値Pminも2つ設定される。下限値設定部162は、高圧側供給圧センサ38Hで検出された圧力を高圧側の作業可能下限値PHとして設定し、常圧側供給圧センサ38Lで検出された圧力を低圧側の作業可能下限値PLとして設定する。
作業可能下限値PHは、高圧ツールの使用圧力範囲内で調整される高圧減圧弁81Hの設定圧力に相当する。作業可能下限値PLは、常圧ツールの使用圧力範囲内で調整される常圧減圧弁81Lの設定圧力に相当する。下限値設定部162は、作業可能下限値PHから所定値ΔP1だけ加算した値を第1圧力閾値PH0として設定する。下限値設定部162は、作業可能下限値PLから所定値ΔP2だけ加算した値を第2圧力閾値PL0として設定する。以下では、第1圧力閾値PH0及び第2圧力閾値PL0を総称して圧力閾値P0とも記す。
所定値ΔP1,ΔP2は、圧力閾値PH0,PL0を定めるための値であり、予め不揮発性メモリ183に記憶されている。なお、所定値ΔP1と所定値ΔP2は同じ値としてもよいし異なる値としてもよい。異なる値とする場合には、所定値ΔP1は、所定値ΔP2よりも大きい値とすることが好ましい。高圧ツールの吐出空気量[L/秒]は、常圧ツールの吐出空気量[L/秒]よりも大きいためである(図14参照)。これにより、吐出空気量の大きい高圧ツールでは早めに、後述する報知処理が行われるため、タンク内圧力が作業可能下限値を下回ることを効果的に防止することができる。下限値設定部162は、設定した作業可能下限値Pmin(PH,PL)をサブコントローラ40aに出力する。サブコントローラ40aは、メインコントローラ30aからの作業可能下限値Pmin(減圧弁81の設定圧力)の情報を通信装置42によって携帯端末37に送信する。
報知判定部163は、タンク内圧センサ31で検出されたタンク内圧力Ptが圧力閾値P0(第1圧力閾値PH0及び第2圧力閾値PL0)未満であるか否かを判定する。報知判定部163は、タンク内圧力Ptが第1圧力閾値PH0未満であると判定した場合、タンク内圧力Ptが作業可能下限値PHに近づいたとして、タンク内圧力Ptが高圧側の作業可能下限値PHに近づいたことを報知装置(圧縮機36の表示部34b及び音出力部34c並びに携帯端末37)によって報知させるための第1報知制御信号をサブコントローラ40aに出力する。なお、報知判定部163は、タンク内圧力Ptが第1圧力閾値PH0以上であると判定した場合には、タンク内圧力Ptが作業可能下限値PHに近づいていないとして、第1報知制御信号をサブコントローラ40aに出力しない。報知判定部163は、タンク内圧力Ptが第2圧力閾値PL0未満であると判定した場合、タンク内圧力Ptが作業可能下限値PLに近づいたとして、タンク内圧力Ptが低圧側の作業可能下限値PLに近づいたことを報知装置(圧縮機36の表示部34b及び音出力部34c並びに携帯端末37)によって報知させるための第2報知制御信号をサブコントローラ40aに出力する。なお、報知判定部163は、タンク内圧力Ptが第2圧力閾値PL0以上であると判定した場合には、タンク内圧力Ptが作業可能下限値PLに近づいていないとして、第2報知制御信号をサブコントローラ40aに出力しない。
サブコントローラ40aは、メインコントローラ30aから報知制御信号が入力されると、報知制御信号に基づいて操作パネル34の表示部34b及び音出力部34cを制御することにより、タンク内圧力Ptが作業可能下限値Pminに近づいたことを操作パネル34の表示部34b及び音出力部34cによって報知させる報知処理を行う。この報知処理では、予め定められた表示態様で表示部(報知装置)34bによる表示(報知)が行われるとともに、予め定められた音出力態様で音出力部(報知装置)34cによる音出力(報知)が行われる。また、サブコントローラ40aは、メインコントローラ30aから報知制御信号が入力されると、通信装置42を介して報知制御信号を携帯端末37に送信する。携帯端末37(報知装置)は、通信装置173により報知制御信号を受信すると、端末コントローラ130が、タッチパネル171、振動装置174、及び、音出力装置175のうち1つ以上の装置を制御することにより、タンク内圧力Ptが作業可能下限値Pminに近づいたことを報知する報知処理を行う。
このため、作業者は、タンク内圧力Ptが作業可能下限値Pminに近づいたことを知ることができる。これにより、タンク内圧力Ptが作業可能下限値Pminを下回った状態で作業が行われることが防止される。その結果、作業のやり直し(釘の打ち直し作業、塗装ムラを修正するための作業等)を防ぐことができるので、作業効率を向上することができる。
端末コントローラ130は、作業者により操作される入力部としてのタッチパネル171から入力される信号、及び、圧縮機36から送信され通信装置173を介して入力される信号等に基づいて、所定の表示制御信号を表示部としてのタッチパネル171に出力し、タッチパネル171に所定の表示画像(例えば、図8に示すモード設定画面75)を表示させる。また、端末コントローラ130は、タッチパネル171から通信接続アイコン75bがタッチ操作されたことを表す信号が入力されると、圧縮機36と相互通信が可能な状態とする。
本実施形態では、監視アプリケーション136が実行されている場合において、タッチパネル171がタッチされない状態が所定時間継続すると、端末コントローラ130は、携帯端末37をスリープ状態にする。また、監視アプリケーション136が起動された後、電源スイッチ172aが操作されると、端末コントローラ130は、同様に、携帯端末37をスリープ状態にする。スリープ状態になると、端末コントローラ130は、タッチパネル171のバックライトを消灯し、モード設定画面75を非表示にする。
スリープ状態では、携帯端末37のタッチパネル171が非表示の状態となり、監視アプリケーション136は、その機能の一部が制限された制限状態(非アクティブ状態)となる。本実施形態では、スリープ状態において、監視アプリケーション136による圧縮機36の監視機能と操作機能が制限される。
また、監視アプリケーション136がフォアグラウンドで動作している通常状態であるときに、ホームボタン172bが操作されると、タッチパネル171にはホーム画面が表示され、監視アプリケーション136が通常状態からバックグラウンドで動作する制限状態となる。さらに、監視アプリケーション136とは別のアプリケーションであるWebアプリケーション137が起動され、Webアプリケーション137がフォアグラウンドで動作している場合、監視アプリケーション136はバックグラウンドで動作する制限状態となっている。
監視アプリケーション136が制限状態となった場合に、携帯端末37が圧縮機36との通信を中断してしまうと、圧縮機36からの報知制御信号に基づく報知(警報出力)をリアルタイムで実行することができなくなってしまう。
このため、本実施形態では、監視アプリケーション136が実行されている場合、端末コントローラ130は、監視アプリケーション136が制限状態となったとしても、制限が解除された通常状態のときと同じように圧縮機36と無線通信を行う。すなわち、端末コントローラ130は、監視アプリケーション136が制限状態となったとしても、圧縮機36から送信される運転状態情報を所定の時間間隔で繰り返し取得し、圧縮機36から報知制御信号を取得した場合に報知(警報出力)を行う。
したがって、本実施形態によれば、監視アプリケーション136が制限状態のときにも、通常状態のときと同様、圧縮機36のタンク24内の空気の圧力が作業可能下限値Pminに近づいたことをリアルタイムで作業者に知らせることができる。
次に、本実施形態に係る圧縮機36の携帯端末37による操作及び監視の流れについて図10を参照して説明する。
図10に示すように、まず、作業者が圧縮機36の電源プラグを電源部41に接続し、製品を通電状態(スタンバイ状態)にする(ステップc1)。作業者が携帯端末37の監視アプリケーション136を立ち上げて(ステップs1)、携帯端末37に表示されるモード設定画面75の通信接続アイコン75bをタッチ操作すると、圧縮機36と携帯端末37との通信接続が行われる。
圧縮機36と携帯端末37とが相互に通信可能な状態になると、圧縮機36は、圧縮機36の運転状態情報、物理量情報(タンク内圧力Pt等)及び設定情報(作業可能下限値Pmin等)の送信を開始する(ステップc2)。携帯端末37では、圧縮機36から送信される各種情報をタッチパネル171に表示させる(ステップs2)。
スタンバイ状態であるときに、作業者が操作パネル34の運転・停止スイッチ34a1を押すと(ステップc3)、あるいは、作業者が携帯端末37に表示されるモード設定画面75の運転・停止ボタン75fをタッチ操作すると(ステップs3)、圧縮機36が圧力制御運転を開始する(ステップc4)。
なお、圧力制御運転が開始された後、作業者は、モード切替スイッチ34a2あるいは携帯端末37に表示されるモード設定画面75のモード切替ボタン75dをタッチ操作することにより運転モードを切り替えることができる。
圧縮機36が圧力制御運転状態であるときに、作業者が操作パネル34の運転・停止スイッチ34a1を押すと(ステップc5)、あるいは、作業者が携帯端末37に表示されるモード設定画面75の運転・停止ボタン75fをタッチ操作すると(ステップs4)、圧縮機36が圧力制御運転を終了し、スタンバイ状態となる(ステップc6)。
圧縮機36の制御ユニット60は、タンク内圧センサ31で検出されたタンク内圧力Ptが圧力閾値P0未満であるか否かを判定する(ステップc7)。この判定処理は、圧縮機36の電源プラグが抜かれるか、タンク内圧力Ptが圧力閾値P0未満であると判定されるまで繰り返し実行される。
判定処理(ステップc7)において、タンク内圧力Ptが圧力閾値P0未満であると判定されると、圧縮機36の制御ユニット60は、報知処理(ステップc8)を実行する。報知処理(ステップc8)において、制御ユニット60は、表示部34b及び音出力部34cにより、タンク内圧力Ptが作業可能下限値Pminに近づいたことを報知する。さらに、報知処理(ステップc8)において、制御ユニット60は、報知制御信号を携帯端末37に送信する。
携帯端末37の端末コントローラ130は、報知制御信号を受信すると、プッシュ通知によるメッセージの表示とともに予め定めた音出力態様で音を出力することにより作業者にタンク内圧力Ptが作業可能下限値Pminに近づいたことを報知する(ステップs5)。例えば、端末コントローラ130は、メッセージ表示領域75hに、「タンク内圧力が高圧減圧弁の設定圧力(高圧ツールの作業可能下限値)に近づいています。圧縮機を起動させて、空気がたまるのを待ってください。」といったメッセージを表示させる。なお、携帯端末37がマナーモードに設定されている場合には、音出力装置175から出力される音に代えて、振動装置174による振動により作業者にタンク内圧力Ptが作業可能下限値Pminに近づいたことを報知する。
図11のタイムチャートを参照して、本実施形態に係る圧縮機システム39の主な動作について説明する。作業者によって運転操作(圧力制御運転の開始操作)が行われると、圧縮機36が圧力制御運転を開始する(時点t0)。その後、圧縮機36は、圧縮運転を行うことによりタンク内圧力Ptが上昇する。タンク内圧力Ptが上限側閾値P2aまで上昇すると、圧縮機36の運転状態が圧縮運転動作状態から圧縮運転停止状態に変化する(時点t1)。
その後、作業者の釘打ち作業等によりタンク24内の空気が消費されると、タンク内圧力Ptが減少する。タンク内圧力Ptが下限側閾値P1aまで低下すると、圧縮機36の運転状態が圧縮運転停止状態から圧縮運転動作状態に変化し(時点t2)、その後、タンク内圧力Ptが上限側閾値P2aまで上昇すると、圧縮機36の運転状態が圧縮運転動作状態から圧縮運転停止状態に変化する(時点t3)。
その後、作業者によって停止操作(圧力制御運転の終了操作)が行われると、圧縮機36は圧力制御運転を終了し、運転状態が圧力制御運転状態からスタンバイ状態に変化する(時点t4)。その後、作業者の釘打ち作業等により空気が消費されると、タンク内圧力Ptが減少する。スタンバイ状態では、タンク内圧力Ptが下限側閾値(起動圧力)P1aを下回ったとしても圧縮機36は再起動を行わない。
圧縮機36のタンク内圧力Ptが圧力閾値P0以上の状態から圧力閾値P0未満の状態に変化すると(すなわち、タンク内圧力Ptが圧力閾値P0未満まで低下すると)、圧縮機36は表示部34b及び音出力部34cによってタンク内圧力Ptが作業可能下限値Pminに近づいたことを作業者に報知する。さらに、圧縮機36は、報知制御信号を携帯端末37に送信し、携帯端末37によってタンク内圧力Ptが作業可能下限値Pminに近づいたことを作業者に報知する。したがって、作業者は、圧縮機36から離れた場所で作業を行っている場合であっても、タンク内圧力Ptが作業可能下限値(減圧弁81の設定圧力)に近づいたことを知ることができる。その結果、タンク内圧力Ptが作業可能下限値を下回った状態で作業者により作業が行われることを防止することができる。
上述した実施形態によれば、次の作用効果を奏する。
(1)圧縮機36は、空気(気体)を圧縮する圧縮機本体1と、圧縮機本体1で圧縮された空気を貯留するタンク24と、タンク24内の空気の圧力を検出するタンク内圧センサ31と、タンク24内に貯留された空気を減圧する減圧弁81と、減圧弁81の設定圧力を調整可能な調整装置82と、減圧弁81により減圧された空気を空気工具(工具)へ供給する継手(供給部)83と、減圧弁81により減圧された空気の圧力(減圧弁81の設定圧力)を検出する供給圧センサ38と、供給圧センサ38で検出された圧力を作業可能下限値Pminとし、タンク内圧センサ31で検出された圧力(タンク内圧力Pt)が作業可能下限値Pminに近づいた場合に、報知装置(表示部34b及び音出力部34c並びに携帯端末37)を制御することにより、タンク24内の空気の圧力(タンク内圧力Pt)が作業可能下限値Pminに近づいたことを報知装置(表示部34b及び音出力部34c並びに携帯端末37)によって報知させる制御ユニット(制御装置)60とを備える。
この構成によれば、作業者は、タンク24内の空気の圧力が作業可能下限値Pminに達する前に、そのことを知ることができる。その結果、タンク24内の空気の圧力が作業可能下限値Pmin(減圧弁81の設定圧力)を下回った状態で空気工具が使用されることを防止することができ、作業のやり直しが発生することがなく、作業効率を向上させることができる。
(2)圧縮機システム39は、携帯端末37と無線通信可能な通信装置42を有する圧縮機36、及び、圧縮機36と無線通信可能な通信装置173を有する報知装置としての携帯端末37を備える。制御ユニット60は、タンク内圧センサ31で検出された圧力(タンク内圧力Pt)が作業可能下限値Pminに近づいた場合に、タンク24内の空気の圧力(タンク内圧力Pt)が作業可能下限値Pminに近づいたことを携帯端末37によって報知させるための報知制御信号を、通信装置42を介して携帯端末37に無線送信する。携帯端末37は、報知制御信号を受信すると、タンク24内の空気の圧力(タンク内圧力Pt)が作業可能下限値Pminに近づいたことを報知する。
上述したように、釘打ち作業、塗装作業等、圧縮機36を用いた作業では、作業者は、圧縮機36の傍に常駐することはなく、圧縮機36の設置場所から離れた作業場所で作業を行う。このため、圧縮機36からの報知のみでは、作業者にタンク24内の空気の圧力が作業可能下限値Pminに近づいたことを適切に知らせることが難しい。本実施形態では、タンク24内の空気の圧力が作業可能下限値Pminに近づくと、携帯端末37によって報知が行われる。したがって、作業者が圧縮機36の設置場所から離れた作業場所で作業している場合であっても、作業者はタンク24内の空気の圧力が作業可能下限値Pminに達する前に、そのことを知ることができる。
(3)携帯端末37の端末コントローラ(制御装置)130は、監視アプリケーション136が実行されている場合において、監視アプリケーション136の機能の一部が制限された制限状態であるか、上記制限が解除された通常状態であるかにかかわらず、圧縮機36のタンク24内の圧力が作業可能下限値Pminに近づいた場合に、報知が行われる。このため、携帯端末37がスリープ状態になったり、監視アプリケーション136がバックグラウンドで動作する状態になったりするなどして、監視アプリケーション136が制限状態になっているときであっても、タンク24内の空気の圧力が作業可能下限値Pminに近づいたことを携帯端末37の使用者(作業者)に適切に知らせることができる。
<第1実施形態の変形例1>
制御ユニット60は、タンク内圧力Ptが作業可能下限値Pminに近づいた場合にその旨を報知装置によって報知させる報知処理に加えて、タンク内圧力Ptが起動圧力Prに近づいた場合にその旨を報知装置によって報知させる報知処理を実行してもよい。
メインコントローラ30aは、タンク内圧力Ptが第3圧力閾値Pr0未満であるか否かを判定する。第3圧力閾値Pr0は、起動圧力Prに所定値を加算した値である。メインコントローラ30aは、タンク内圧力Ptが第3圧力閾値Pr0未満であると判定された場合、タンク内圧力Ptが起動圧力Prに近づいたとして、タンク内圧力Ptが起動圧力Prに近づいたことを報知装置によって報知させるための第3報知制御信号をサブコントローラ40aに出力する。
このように、制御ユニット60は、タンク内圧センサ31で検出された圧力(タンク内圧力Pt)が起動圧力Pr(下限側閾値P1a)に近づいた場合に、報知装置(表示部34b及び音出力部34c並びに携帯端末37)を制御することにより、タンク24内の空気の圧力(タンク内圧力Pt)が起動圧力Prに近づいたことを報知装置(表示部34b及び音出力部34c並びに携帯端末37)によって報知させる。
この構成によれば、作業者は、タンク内圧力Ptが起動圧力Prに近づいたことを知ることができるので、その後の作業スケジュールを適切に立てることができ、作業効率の向上を図ることができる。
<第2実施形態>
図12~図15を参照して、第2実施形態に係る圧縮機システム39について説明する。なお、図中、第1実施形態と同一もしくは相当部分には同一の参照番号を付し、相違点を主に説明する。図12は、図9と同様の図であり、第2実施形態に係る圧縮機36のメインコントローラ230aの機能ブロック図である。メインコントローラ230aは、不揮発性メモリ183に記憶されているプログラムを実行することにより、作業可能量を演算する作業可能量演算部264として機能する。作業可能量とは、タンク内圧力Ptが、現在の圧力から所定の圧力(作業可能下限値Pminまたは起動圧力Pr)に達するまでに、空気工具により作業が可能な作業量(例えば、作業時間)を表す。
作業可能量演算部264は、作業可能下限値Pmin、使用する空気工具の空気消費特性(吐出空気量の特性)、及び、タンク内圧センサ31で検出されたタンク内圧力Ptに基づいて、タンク内圧力Ptが作業可能下限値Pminに達するまでの空気工具による作業可能量を演算する。また、作業可能量演算部264は、起動圧力Pr、使用する空気工具の空気消費特性、及び、タンク内圧センサ31で検出されたタンク内圧力Ptに基づいて、タンク内圧力Ptが起動圧力Prに達するまでの空気工具による作業可能量を演算する。
作業可能量演算部264での演算結果(作業可能量)は、サブコントローラ40aに出力される。サブコントローラ40aは、作業可能量演算部264での演算結果を携帯端末37に送信し、その演算結果を携帯端末(報知装置)37のタッチパネル(表示部)171に表示させる。
図8に示すモード設定画面75において、作業者が、メニューアイコン75mをタッチ操作し、工具選択画面275の表示を選択すると、図13に示すように、タッチパネル171に工具選択画面275が表示される。工具選択画面275は、上述した運転状態表示領域75a及びメッセージ表示領域75h、作業可能量表示領域77、工具選択スイッチ76(76L,76H)及び設定圧力表示領域78(78L,78H)が表示される。
本実施形態では、工具選択スイッチ76として常圧ツール用の工具選択スイッチ76Lと高圧ツール用の工具選択スイッチ76Hとがある。常圧ツール用の工具選択スイッチ76Lは、タッチ操作により、常圧ツールを使用する場合に選択されるオン位置と、常圧ツールを使用しない場合に選択されるオフ位置と、のいずれかに切り替えられる操作領域である。高圧ツール用の工具選択スイッチ76Hは、タッチ操作により、高圧ツールを使用する場合に選択されるオン位置と、高圧ツールを使用しない場合に選択されるオフ位置と、のいずれかに切り替えられる操作領域である。
常圧ツール用の工具選択スイッチ76Lがオン位置またはオフ位置に操作されていることを表す工具選択情報(常圧ツール選択情報)は、携帯端末37から圧縮機36に送信される。高圧ツール用の工具選択スイッチ76Hがオン位置またはオフ位置に操作されていることを表す工具選択情報(高圧ツール選択情報)は、携帯端末37から圧縮機36に送信される。
常圧ツール用の工具選択スイッチ76Lの図示下側には常圧ツール用の設定圧力表示領域78Lが表示される。常圧ツール用の設定圧力表示領域78Lには、常圧減圧弁81Lの設定圧力、すなわち作業可能下限値PL(例えば、0.5MPa)が表示される。高圧ツール用の工具選択スイッチ76Hの図示下側には高圧ツール用の設定圧力表示領域78Hが表示される。高圧ツール用の設定圧力表示領域78Hには、高圧減圧弁81Hの設定圧力、すなわち作業可能下限値PH(例えば、2.0MPa)が表示される。
作業可能量表示領域77は、作業可能量(作業可能時間)を表示する領域であり、タンク内圧力Ptが起動圧力Prに達するまでの作業可能時間(例えば、20秒)を表示する第1表示領域77aと、タンク内圧力Ptが設定圧力(作業可能下限値Pmin)に達するまでの作業可能時間(例えば、100秒)を表示する第2表示領域77bとを有する。
作業可能量としての作業可能時間N[秒]の算出方法を以下に説明する。スタンバイ状態、異常停止状態等、圧縮機36が再起動を行わない運転状態(すなわち、圧力制御運転状態以外の運転状態)において、常圧ツールのみが使用されることを想定した設定圧力PLまでの常圧ツールの作業可能時間NL[秒]は、以下の式(1)によって表される。
ここで、PL[MPa]は常圧減圧弁81Lの設定圧力(作業可能下限値)であり、Pt[MPa]はタンク内圧力であり、Pa[MPa]は大気圧であり、Vt[L]はタンク24の容積であり、m(PL)[L/秒]は常圧減圧弁81Lの設定圧力PLにおける常圧ツールからの吐出空気量(空気工具の消費空気量)である。
スタンバイ状態、異常停止状態等、圧縮機36が再起動を行わない運転状態において、高圧ツールのみが使用されることを想定した設定圧力PHまでの高圧ツールの作業可能時間NH[秒]は、以下の式(2)により表される。
ここで、PH[MPa]は高圧減圧弁81Hの設定圧力(作業可能下限値)であり、M(PH)[L/秒]は高圧減圧弁81Hの設定圧力PLにおける高圧ツールからの吐出空気量(空気工具の消費空気量)である。
圧力制御運転中の圧縮運転停止状態において、常圧ツールのみが使用されることを想定した起動圧力Pr[MPa]までの常圧ツールの作業可能時間NL[秒]は、以下の式(3)によって表される。
圧縮運転動作状態であり、かつ、タンク内圧力Ptが起動圧力Pr以上である状態において、常圧ツールのみが使用されることを想定した起動圧力Prまでの常圧ツールの作業可能時間NL[秒]は、以下の式(4)によって表される。
ここで、Q[L/秒]は、単位時間あたりに圧縮機36が生成する空気量である。
圧縮運転動作状態であり、かつ、タンク内圧力Ptが起動圧力Pr未満である状態において、常圧ツールのみが使用されることを想定した設定圧力PLまでの常圧ツールの作業可能時間NL[秒]は、以下の式(5)によって表される。
圧力制御運転中の圧縮運転停止状態において、高圧ツールのみが使用されることを想定した起動圧力Pr[MPa]までの高圧ツールの作業可能時間NH[秒]は、以下の式(6)によって表される。
圧縮運転動作状態であり、かつ、タンク内圧力Ptが起動圧力Pr以上である状態において、高圧ツールのみが使用されることを想定した起動圧力Prまでの高圧ツールの作業可能時間NH[秒]は、以下の式(7)によって表される。
圧縮運転動作状態であり、かつ、タンク内圧力Ptが起動圧力Pr未満である状態において、高圧ツールのみが使用されることを想定した設定圧力PHまでの高圧ツールの作業可能時間NH[秒]は、以下の式(8)によって表される。
常圧ツール及び高圧ツールの双方が使用されることを想定した常圧ツールの作業可能時間NL´は、以下の式(9)によって表され、常圧ツール及び高圧ツールの双方が使用されることを想定した高圧ツールの作業可能時間NH´は、以下の式(10)によって表される。
ここで、WLは、常圧ツールの作業可能時間NLに対する重み付け設定値であり、WHは、高圧ツールの作業可能時間NHに対する重み付け設定値である。
図12に示す作業可能量演算部264は、複数の供給圧センサ38で検出された圧力(減圧弁81の設定圧力)に基づいて、重み付け設定値WL,WHを演算する。作業可能量演算部264は、高圧側供給圧センサ38Hで検出された圧力(高圧減圧弁81Hの設定圧力)と、常圧側供給圧センサ38Lで検出された圧力(常圧減圧弁81Lの設定圧力)との比率を、重み付け設定値WHと重み付け設定値WLの比率として演算する。作業可能量演算部264は、重み付け設定値WL,WHに基づいて、作業可能時間NL,NHを補正し、補正後の作業可能時間NL´,NH´を演算する。例えば、常圧減圧弁81Lの設定圧力PLが0.5MPaであり、高圧減圧弁81Hの設定圧力PHが2.0MPaである場合、重み付け設定値WL,WHの比率は、WL:WH=1:4となる。この場合、常圧ツールの作業可能時間NL´は、常圧ツールのみの使用を想定したときの作業可能時間NLの20%となり、高圧ツールの作業可能時間NH´は、高圧ツールのみの使用を想定したときの作業可能時間NHの80%となる。重み付け設定値による補正を行うことにより、複数の空気工具の同時使用が想定される場合において、作業可能量を精度よく演算することができる。
本実施形態では、作業可能量演算部264は、モータ制御部161での制御状態に基づいて、運転状態が圧力制御運転状態であるか否か、及び、圧縮運転動作状態であるか否かを判定する。作業可能量演算部264は、タンク内圧センサ31で検出されたタンク内圧力Ptが起動圧力Pr以上であるか否かを判定する。
また、作業可能量演算部264は、サブコントローラ40aから工具選択情報を取得する。工具選択情報は、上述したように、携帯端末37から送信される情報(工具選択スイッチ76L,76Hのオン/オフ位置の操作情報)であり、高圧ツール及び常圧ツールを使用することが選択されているか、あるいは使用しないことが選択されているかを表す情報である。
作業可能量演算部264は、圧縮機36の運転状態及び工具選択情報に基づいて、式(1)~式(10)を選択する。作業可能量演算部264は、選択した式を用いて、タンク内圧力Pt、高圧減圧弁81Hの設定圧力PH、常圧減圧弁81Lの設定圧力PL、吐出空気量m(PL),M(PH)、起動圧力Pr、大気圧Pa及びタンク24の容積Vtのうちの必要な情報に基づいて作業可能量を演算する。大気圧Pa及びタンク24の容積Vtは、予め不揮発性メモリ183に記憶されている。なお、大気圧Paは、大気圧センサにより検出するようにしてもよい。
上述したように、タンク内圧力Ptは、タンク内圧センサ31により検出される。高圧減圧弁81Hの設定圧力PHは、高圧側供給圧センサ38Hにより検出される。常圧減圧弁81Lの設定圧力PLは、常圧側供給圧センサ38Lにより検出される。起動圧力Prは、運転モードに応じた値が予め不揮発性メモリ183に記憶されており、モータ制御部161により設定される。
吐出空気量m(PL),M(PH)は、不揮発性メモリ183に記憶されている空気消費特性に基づいて算出される。図14は、不揮発性メモリ183に記憶されている空気消費特性について示す図である。横軸は、減圧弁設定圧力[MPa]を表し、縦軸は、単位時間当たりの吐出空気量(消費空気量)[L/秒]を表している。なお、空気消費特性は、不揮発性メモリ183に、ルックアップテーブル形式で記憶してもよいし、関数形式で記憶してもよい。
図14に示すように、常圧ツールの空気消費特性mc及び高圧ツールの空気消費特性Mcは、減圧弁設定圧力が高くなるほど吐出空気量(消費空気量)が大きくなる特性である。なお、高圧ツールの使用圧力範囲は、常圧ツールの使用圧力範囲よりも高い圧力領域に設定されている。作業可能量演算部264は、常圧ツールの空気消費特性mcを参照し、常圧減圧弁81Lの設定圧力(作業可能下限値)PL[MPa]に基づいて吐出空気量m(PL)[L/秒]を演算する。作業可能量演算部264は、高圧ツールの空気消費特性Mcを参照し、高圧減圧弁81Hの設定圧力(作業可能下限値)PH[MPa]に基づいて吐出空気量M(PH)[L/秒]を演算する。
図15は、圧縮機36の運転状態、及び、使用する工具に応じた作業可能量の表示例について示す図である。
作業可能量演算部264は、高圧ツールのみを使用することが選択され(工具選択スイッチ76Hがオン位置、工具選択スイッチ76Lがオフ位置)、運転状態が圧力制御運転状態でない場合(例えば、スタンバイ状態である場合)、式(2)により設定圧力PHまでの作業可能時間NHを演算する。図15(a)に示すように、式(2)により演算された作業可能時間NH(例えば、100秒)は、第2表示領域77bに表示される。なお、第1表示領域77aには、「-」が表示される。作業可能量演算部264は、常圧ツールのみを使用することが選択され(工具選択スイッチ76Hがオフ位置、工具選択スイッチ76Lがオン位置)、運転状態が圧力制御運転状態でない場合(例えば、スタンバイ状態である場合)、式(1)により設定圧力PLまでの作業可能時間NLを演算する。なお、図示しないが、演算された作業可能時間NLは、第2表示領域77bに表示される。
作業可能量演算部264は、高圧ツールのみを使用することが選択され、運転状態が圧力制御運転状態であり、かつ、圧縮運転停止状態である場合、式(6)により起動圧力Prまでの作業可能時間NHを演算し、式(2)により設定圧力PHまでの作業可能時間NHを演算する。図15(b)に示すように、式(6)により演算された作業可能時間NH(例えば、20秒)は、第1表示領域77aに表示され、式(2)により演算された作業可能時間NH(例えば、100秒)は、第2表示領域77bに表示される。
作業可能量演算部264は、常圧ツールのみを使用することが選択され、運転状態が圧力制御運転状態であり、かつ、圧縮運転停止状態である場合、式(3)により起動圧力Prまでの作業可能時間NLを演算し、式(1)により設定圧力PLまでの作業可能時間NLを演算する。なお、図示しないが、式(3)により演算された作業可能時間NLは、第1表示領域77aに表示され、式(1)により演算された作業可能時間NLは、第2表示領域77bに表示される。
作業可能量演算部264は、高圧ツールのみを使用することが選択され、運転状態が圧力制御運転状態であり、かつ、圧縮運転動作状態であり、かつ、タンク内圧力Ptが起動圧力Pr以上である場合、式(7)により起動圧力Prまでの作業可能時間NHを演算する。図15(c)に示すように、式(7)により演算された作業可能時間NH(例えば、20秒)は、第1表示領域77aに表示される。なお、第2表示領域77bには、「-」が表示される。
作業可能量演算部264は、常圧ツールのみを使用することが選択され、運転状態が圧力制御運転状態であり、かつ、圧縮運転動作状態であり、かつ、タンク内圧力Ptが起動圧力Pr以上である場合、式(4)により起動圧力Prまでの作業可能時間NLを演算する。なお、図示しないが、式(4)により演算された作業可能時間NLは、第1表示領域77aに表示される。
作業可能量演算部264は、高圧ツールのみを使用することが選択され、運転状態が圧力制御運転状態であり、かつ、圧縮運転動作状態であり、かつ、タンク内圧力Ptが起動圧力Pr未満である場合、式(8)により設定圧力PHまでの作業可能時間NHを演算する。図15(d)に示すように、式(8)により演算された作業可能時間NH(例えば、20秒)は、第2表示領域77bに表示される。なお、第1表示領域77aには、「-」が表示される。
作業可能量演算部264は、常圧ツールのみを使用することが選択され、運転状態が圧力制御運転状態であり、かつ、圧縮運転動作状態であり、かつ、タンク内圧力Ptが起動圧力Pr未満である場合、式(5)により設定圧力PLまでの作業可能時間NLを演算する。なお、図示しないが、式(5)により演算された作業可能時間NLは、第2表示領域77bに表示される。
作業可能量演算部264は、高圧ツール及び常圧ツールの双方を使用することが選択され(工具選択スイッチ76H,76Lがそれぞれオン位置)、運転状態が圧力制御運転状態でない場合(例えば、スタンバイ状態である場合)、式(2)により演算された作業可能時間NHを用いて、式(10)により補正後の作業可能時間NH´を演算する。また、作業可能量演算部264は、式(1)により演算された作業可能時間NLを用いて、式(9)により補正後の作業可能時間NL´を演算する。図15(e)に示すように、式(10)により演算された補正後の作業可能時間NH´(例えば、20秒)は、「高圧減圧弁の設定圧力まで」という表示とともに第1表示領域77aに表示され、式(9)により演算された補正後の作業可能時間NL´(例えば、80秒)は、「常圧減圧弁設定圧力まで」という表示とともに第2表示領域77bに表示される。
本第2実施形態では、第1実施形態と同様、タンク内圧力Ptが圧力閾値P0以上の状態から圧力閾値P0未満の状態に遷移した場合に報知処理を実行する。このため、第1実施形態と同様、作業可能下限値Pminを下回った状態で空気工具が使用されることを防止することができ、作業のやり直しが発生することがなく、作業効率を向上させることができる。
さらに、第2実施形態によれば、第1実施形態で説明した作用効果に加え、次の作用効果を奏する。
(4)携帯端末(報知装置)37は、タッチパネル(表示部)171を有し、制御ユニット60は、作業可能下限値Pmin(減圧弁81の設定圧力)、及び、タンク内圧センサ31で検出された圧力(タンク内圧力Pt)に基づいて、タンク内圧力Ptが作業可能下限値Pminに達するまでの空気工具(工具)による作業可能時間(作業可能量)を演算し、その演算結果を携帯端末37のタッチパネル171に表示させる。この構成では、近距離無線通信等を利用し、携帯端末37の監視アプリケーション136により作業可能量を可視化することができる。したがって、作業者は、携帯端末37のタッチパネル171を見て、あとどのくらい作業が可能なのかを知ることができるので、その後の作業スケジュールを適切に立てることができ、作業効率の向上を図ることができる。
(5)携帯端末(報知装置)37は、運転モードに応じて設定される起動圧力Pr、及び、タンク内圧センサ31で検出された圧力(タンク内圧力Pt)に基づいて、タンク内圧力Ptが起動圧力Prに達するまでの空気工具(工具)による作業可能時間(作業可能量)を演算し、その演算結果を携帯端末37のタッチパネル171に表示させる。運転モードに応じた起動圧力Prに基づいて作業可能量が表示されるため、作業者は、作業内容に応じて適切な運転モードを選択することができる。
(6)制御ユニット60は、圧縮機本体1が動作していない状態(例えば圧縮運転停止状態)では、作業可能下限値Pmin(減圧弁81の設定圧力)、空気工具の空気消費特性(気体消費特性)、及び、タンク内圧センサ31で検出された圧力Ptに基づいて、タンク内圧力Ptが作業可能下限値Pminに達するまでの空気工具による作業可能量を演算し、その演算結果を携帯端末(報知装置)37のタッチパネル(表示部)171に表示させる。制御ユニット60は、圧縮機本体1が動作している状態(例えば圧縮運転動作状態)では、作業可能下限値Pmin(減圧弁81の設定圧力)、空気工具の空気消費特性(気体消費特性)、タンク内圧センサ31で検出された圧力Pt、及び、圧縮機本体1により生成される空気量Q(圧縮機本体1からタンク24へ吐出される空気量)に基づいて、タンク内圧力Ptが作業可能下限値Pminに達するまでの空気工具による作業可能量を演算し、その演算結果を携帯端末(報知装置)37のタッチパネル(表示部)171に表示させる。これにより、圧縮機本体1が動作している状態であっても作業可能量を精度よく算出することができる。
(7)携帯端末37は、複数の減圧弁81のうち使用する減圧弁81を選択し、減圧弁81の選択情報を圧縮機36に送信する。減圧弁81の選択情報は、上述した工具選択情報に相当する。制御ユニット60は、減圧弁81の選択情報(工具選択情報)、作業可能下限値Pmin、及び、タンク内圧センサ31で検出された圧力Ptに基づいて、使用する減圧弁81により減圧された空気が供給される工具による作業可能量を演算し、その演算結果を携帯端末37のタッチパネル171に表示させる。使用される減圧弁81に接続される工具(すなわち使用される工具)による作業可能量が演算されるため、作業者は、作業内容に応じて適切な工具を選択することができる。
<第2実施形態の変形例1>
上記第2実施形態では、第1実施形態と同様、タンク内圧力Ptが圧力閾値P0未満になった場合に報知処理を実行する例について説明したが、本発明はこれに限定されない。制御ユニット60は、タンク内圧力Ptが圧力閾値P0未満であるか否かの判定結果に基づいて報知処理を実行することに代えて、作業可能時間(作業可能量)が予め定められた作業量閾値未満であるか否かを判定し、その判定結果に基づいて報知処理を実行してもよい。制御ユニット60は、作業可能時間が作業量閾値未満であると判定された場合、タンク24内の空気の圧力が作業可能下限値Pminに近づいたことを報知装置によって報知させる。
図16は、図12と同様の図であり、第2実施形態の変形例1に係る圧縮機36のメインコントローラ330aの機能ブロック図である。図16に示すように、作業可能量演算部364は、第2実施形態に係る作業可能量演算部264と同様、作業可能量を演算する。
報知判定部363は、高圧ツールを使用することが選択されている場合、作業可能量演算部364で演算された設定圧力(作業可能下限値)PHまでの作業可能時間NHが第1作業量閾値NH0未満であるか否かを判定する。この判定処理において、作業可能時間NHが第1作業量閾値NH0未満であると判定された場合、報知判定部363は、タンク内圧力Ptが作業可能下限値PHに近づいたとして、第1報知制御信号をサブコントローラ40aに出力する。なお、報知判定部363は、作業可能時間NHが第1作業量閾値NH0以上であると判定した場合には、第1報知制御信号をサブコントローラ40aに出力しない。
報知判定部363は、常圧ツールを使用することが選択されている場合、作業可能量演算部364で演算された設定圧力(作業可能下限値)PLまでの作業可能時間NLが第2作業量閾値NL0未満であるか否かを判定する。この判定処理において、作業可能時間NLが第2作業量閾値NL0未満であると判定された場合、報知判定部363は、タンク内圧力Ptが作業可能下限値PLに近づいたとして、第2報知制御信号をサブコントローラ40aに出力する。なお、報知判定部363は、作業可能時間NLが第2作業量閾値NL0以上であると判定した場合には、第2報知制御信号をサブコントローラ40aに出力しない。
つまり、本変形例では、高圧ツールを使用しているときに、設定圧力PHに達するまでの作業可能時間NHが0(ゼロ)に近づいた場合、第1報知制御信号がサブコントローラ40aに送信され、タンク内圧力Ptが作業可能下限値に近づいたことが報知装置(表示部34b及び音出力部34c並びに携帯端末37)によって報知される。また、常圧ツールを使用しているときに、設定圧力PLに達するまでの作業可能時間NLが0(ゼロ)に近づいた場合、第2報知制御信号がサブコントローラ40aに送信され、タンク内圧力Ptが作業可能下限値PLに近づいたことが報知装置(表示部34b及び音出力部34c並びに携帯端末37)によって報知される。したがって、本変形例によれば、第1実施形態及び第2実施形態で説明した作用効果と同様の作用効果を奏する。
<第2実施形態の変形例2>
報知判定部363は、高圧ツールを使用することが選択されている場合、作業可能量演算部364で演算された起動圧力Prまでの作業可能時間NHが予め定められた第3作業量閾値N1未満であるか否かを判定する。この判定処理において、作業可能時間NHが第3作業量閾値N1未満であると判定された場合、報知判定部363は、タンク内圧力Ptが起動圧力Prに近づいたとして、第3A報知制御信号をサブコントローラ40aに出力する。なお、報知判定部363は、作業可能時間NHが第3作業量閾値N1以上であると判定した場合には、第3A報知制御信号をサブコントローラ40aに出力しない。
報知判定部363は、常圧ツールを使用することが選択されている場合、作業可能量演算部364で演算された作業可能時間NLが予め定められた第3作業量閾値N1未満であるか否かを判定する。この判定処理において、作業可能時間NLが第3作業量閾値N1未満であると判定された場合、報知判定部363は、タンク内圧力Ptが起動圧力Prに近づいたとして、第3B報知制御信号をサブコントローラ40aに出力する。なお、報知判定部363は、作業可能時間NLが第3作業量閾値N1以上であると判定した場合には、第3B報知制御信号をサブコントローラ40aに出力しない。
つまり、本変形例では、高圧ツールを使用しているときに、起動圧力Prに達するまでの作業可能時間NHが0(ゼロ)に近づいた場合、第3A報知制御信号がサブコントローラ40aに送信され、タンク内圧力Ptが起動圧力Prに近づいたことが報知装置(表示部34b及び音出力部34c並びに携帯端末37)によって報知される。また、常圧ツールを使用しているときに、起動圧力Prに達するまでの作業可能時間NLが0(ゼロ)に近づいた場合、第3B報知制御信号がサブコントローラ40aに送信され、タンク内圧力Ptが起動圧力Prに近づいたことが報知装置(表示部34b及び音出力部34c並びに携帯端末37)によって報知される。このように、本変形例に係る制御ユニット60は、作業可能時間が予め定められた第3作業量閾値N1未満であると判定された場合、タンク24内の空気の圧力が起動圧力Prに近づいたことを報知装置によって報知させる。したがって、第1実施形態の変形例1で説明した作用効果と同様の作用効果を奏する。
<第3実施形態>
図17及び図18を参照して、第3実施形態に係る圧縮機システム39について説明する。なお、図中、第1及び第2実施形態と同一もしくは相当部分には同一の参照番号を付し、第2実施形態との相違点を主に説明する。第2実施形態で説明したように、不揮発性メモリ183には、設定圧力PH,PLにおける空気工具からの吐出空気量(空気工具の消費空気量)の特性(空気消費特性)が記憶されている。
ここで、例えば、新たな空気工具を使用する場合、新たな空気工具の空気消費特性と、不揮発性メモリ183に予め記憶されている空気消費特性とが乖離する可能性がある。そこで、本第3実施形態では、携帯端末37の監視アプリケーション136によって、使用する空気工具の空気消費特性の追加及び更新を行うことができるようになっている。
図17は、本第3実施形態に係る携帯端末37に表示される工具登録画面375の一例について示す図である。図8に示すモード設定画面75において、作業者が、メニューアイコン75mをタッチ操作し、工具登録画面375の表示を選択すると、図17に示す工具登録画面375が表示される。
図17に示すように、工具登録画面375には、工具追加スイッチ375aが表示される。工具追加スイッチ375aがタッチ操作されると、端末コントローラ130及び制御ユニット60は、工具追加処理を実行する。工具追加処理について説明する。端末コントローラ130は、携帯端末37のタッチパネル171に、工具の追加に関する案内画像を表示する。例えば、携帯端末37のタッチパネル171には、追加する工具の名称の入力、及び、追加する工具が高圧ツールであるのか常圧ツールであるのかの選択操作を促す案内画像が表示される。
作業者により、追加する工具の名称の入力操作、及び、追加する工具が高圧ツールであるのか常圧ツールであるのかの選択操作が完了すると、端末コントローラ130は、携帯端末37のタッチパネル171に、試し打ちを促す案内画像を表示する。この案内画像には、「減圧弁の設定圧力を2.0[MPa]に調整し、試し打ちを行ってください」といったメッセージが含まれる。作業者は、案内画像に従って、減圧弁81の設定圧力を調整装置82により調整し、試し打ちを行う。端末コントローラ130は、所定の設定圧力での試し打ちが完了すると、上記所定の設定圧力とは異なる設定圧力での試し打ちを促す案内画像をタッチパネル171に表示させる。
制御ユニット60は、複数の設定圧力毎の試し打ちの結果に基づいて空気消費特性を演算する。制御ユニット60は、複数の設定圧力毎に、タンク内圧力Ptの時間変化(すなわちタンク内圧力Ptの降下量と時間(降下終了時刻-降下開始時刻))を測定し、その測定結果に基づいて単位時間当たりの吐出空気量(消費空気量)[L/秒]を演算する。制御ユニット60は、吐出空気量の演算結果を追加する工具の名称と対応付けて不揮発性メモリ183に記憶し、工具追加処理を終了する。
図18は、追加された空気工具の空気消費特性について示す図である。図18に示すように、高圧ツールを一つ追加する工具追加処理が行われると、予め記憶されている常圧ツールの空気消費特性mc、及び、予め記憶されている高圧ツールの空気消費特性Mc1に加えて、追加された高圧ツールの空気消費特性Mc2が不揮発性メモリ183に記憶される。つまり、本第3実施形態によれば、使用する空気工具の空気消費特性を追加登録することができる。
なお、制御ユニット60は、追加登録を行うだけでなく、登録済みの空気工具の空気消費特性を書き換える(上書きする)更新登録を行うようにしてもよい。この場合、制御ユニット60は、複数の設定圧力毎の試し打ちの結果に基づいて空気消費特性を演算し、空気消費特性全体を更新してもよいし、特定の設定圧力の吐出空気量のみを更新してもよい。また、特定の設定圧力での試し打ちの結果と、既に登録されている空気消費特性の傾きと、に基づいて空気消費特性全体を更新してもよい。
図17に示すように、工具登録画面375には、複数の特性選択スイッチ375b,375c,375dが表示される。特性選択スイッチ375b,375cは、予め登録されている空気工具の名称(エアーガンA及びエアーガンB)、及び、常圧ツールであるか高圧ツールであるかを表す情報とともに表示される。特性選択スイッチ375dは、追加した空気工具の名称(エアーガンC)、及び、常圧ツールであるか高圧ツールであるかを表す情報とともに表示される。
複数の特性選択スイッチ375b,375c,375dは、タッチ操作により、オン位置とオフ位置のいずれかに切り替え可能な操作領域である。なお、同じ種類の減圧弁81に対して複数の空気工具が登録されている場合、いずれか一つのみをオン位置に操作することができるようになっている。図示する例では、エアーガンB及びエアーガンCは双方とも高圧ツールである。このため、端末コントローラ130は、エアーガンCの特性選択スイッチ375dがオン位置に操作されると、エアーガンBの特性選択スイッチ375cをオフ位置に自動で切り替える。端末コントローラ130は、エアーガンBの特性選択スイッチ375cがオン位置に操作されると、エアーガンCの特性選択スイッチ375dをオフ位置に自動で切り替える。
端末コントローラ130は、特性選択スイッチ375c,375dのうちオン位置に操作されている空気工具を、高圧減圧弁81Hに接続される空気工具として選択し、その選択情報を圧縮機36に送信する。
圧縮機36の制御ユニット60は、作業可能量を演算する際、選択情報に基づいて携帯端末37から特性選択スイッチ375b,375c,375dによって選択された空気工具の空気消費特性を参照し、減圧弁81の設定圧力(PL,PH)に基づいて吐出空気量m(PL),M(PH)を演算する。
本第3実施形態では、圧縮機36の制御ユニット60は、所定の減圧弁81(例えば、高圧減圧弁81H)に接続可能な種類の異なる複数の空気工具(エアーガンB及びエアーガンC)に対応する空気消費特性(気体消費特性)の登録が可能である。制御ユニット60は、タンク内圧センサ31で検出された圧力Ptの時間変化に基づいて吐出空気量を演算し、空気消費特性(気体消費特性)の追加登録または更新登録を行う。携帯端末37は、複数の空気工具のうち所定の減圧弁81(例えば、高圧減圧弁81H)に接続される空気工具(例えば、エアーガンC)を選択し、空気工具の選択情報(例えば、特性選択スイッチ375bがオフ位置に操作され、特性選択スイッチ375dがオン位置に操作されていることを表す情報)を圧縮機36に送信する。圧縮機36の制御ユニット60は、空気工具の選択情報及び空気消費特性の登録情報、作業可能下限値Pmin、及び、タンク内圧センサ31で検出された圧力Ptに基づいて、空気工具(例えば、エアーガンC)による作業可能量を演算し、その演算結果を携帯端末37のタッチパネル(表示部)171に表示させる。
このような第3実施形態によれば、携帯端末37によって、空気工具の空気消費特性を追加登録することができる。また、経年劣化により空気工具の空気消費特性が変化した場合に、空気消費特性の更新登録が可能となる。つまり、本第3実施形態によれば、空気工具の管理を適切に行うことができる。その結果、空気工具を追加した場合、あるいは空気工具が経年劣化した場合であっても、追加登録、あるいは更新登録を行うことにより、作業者は、タンク内圧力Ptが作業可能下限値Pminに近づいたことを適切に知ることができる。
なお、上記実施形態は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、次のような変形例も本発明の範囲内であり、変形例に示す構成と上述の実施形態で説明した構成を組み合わせたり、以下の異なる変形例で説明する構成同士を組み合わせたりすることも可能である。
<変形例1>
第1実施形態では、タンク内圧力Ptが第1圧力閾値PH0以上の状態から第1圧力閾値PH0未満の状態へと変化したときと、タンク内圧力Ptが第2圧力閾値PL0以上の状態から第2圧力閾値PL0未満の状態へと変化したときに報知処理が実行される例について説明した。しかしながら、予め使用される工具を選択しておくことにより、選択された工具に対応する減圧弁81の設定圧力(作業可能下限値)に近づいた場合にのみ報知処理を実行するようにしてもよい。例えば、使用される工具が高圧ツールのみであると選択されている場合、制御ユニット60は、タンク内圧力Ptが第1圧力閾値PH0以上の状態から第1圧力閾値PH0未満の状態へと変化したときには報知処理を実行し、タンク内圧力Ptが第2圧力閾値PL0以上の状態から第2圧力閾値PL0未満の状態へと変化したときには報知処理を実行しない。
<変形例2>
第2及び第3実施形態では、作業可能量演算部264,364が、作業可能量として作業可能時間[秒]を演算する例について説明したが、本発明はこれに限定されない。空気工具が釘打ち機である場合、作業可能量演算部264,364は、タンク内圧力Ptが所定の圧力(作業可能下限値または起動圧力)に達するまでに、釘の打ち込みが可能な本数(作業可能本数)NLn,NHn[本]を作業可能量として演算してもよい。
作業可能量演算部264,364は、式(11)により、常圧ツールによる作業可能本数NLnを演算し、式(12)により、高圧ツールによる作業可能本数NHnを演算する。
ここで、nL[本/秒]は、常圧ツールにより単位時間当たりに打ち込み可能な釘の本数であり、nH[本/秒]は、高圧ツールにより単位時間当たりに打ち込み可能な釘の本数である。nL,nNは、予め不揮発性メモリ183に記憶されている。なお、制御ユニット60は、タンク内圧力Ptの圧力降下回数と時間を記録し、単位時間当たりの圧力降下回数(平均値)をnL,nHとして算出してもよい。平均算出の場合、作業開始から最初の数発を用いて測定してもよいし、試し打ちモードを実装し、作業開始前にnL,nNを算出し、不揮発性メモリ183の情報を上書きしてもよい。
制御ユニット60は、式(11),(12)により演算された作業可能本数が予め定められた本数閾値(例えば、10本)を下回った場合、報知処理を実行する。本数閾値は不揮発性メモリ183に予め記憶されている。
<変形例3>
第2実施形態では、常圧ツール及び高圧ツールの双方が使用される場合に式(9)及び式(10)を用いて作業可能時間を演算する例について説明したが、本発明はこれに限定されない。式(1)~(8)により算出されたNL,NHを半分にすることで、一口当たりの作業可能時間としてもよい。
<変形例4>
不揮発性メモリ183に記憶されている所定値ΔP1,ΔP2は、携帯端末37を操作することにより、変更できるようにしてもよい。
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。