以下、本発明の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。
図1〜図3は本発明の実施形態に係る給水装置を示す模式図であり、図1は平面図、図2は正面図、図3は左側面図である。図示するように本実施形態の給水装置10は、2台のポンプ30A,30Bを備える。以下、ポンプ30Aのポンプ号機をNo.1ポンプ、ポンプ30Bはポンプ号機をNo.2ポンプと称す。さらに、給水装置10は、ポンプ30A,30Bの中間に配置される圧力タンク50と、ポンプ30A,30B及び圧力タンク50等を支持するベース20とを備えている。また、給水装置10は、ポンプ30A,30Bの吐出側に接続される吐出し配管40と、圧力タンク50の上部に設置される制御盤60とを備えている。なお、本実施形態の給水装置10は、2台のポンプを備える構成としているが、1台のポンプを備える構成としてもよいし、3台以上の複数台を備える構成としてもよい。
この給水装置10は、主にオフィスビルや集合住宅などの建物への給水に使用される。給水装置10の吸込口35A,35Bは、その上流に不図示の水道本管または受水槽といった水供給源が接続されている。給水装置10の吐出し口である吐出し集合管43は、その下流に、不図示の配水管が接続されて建物の内部に配置された給水器具(例えば蛇口)に接続される。給水装置10は、水供給源の水を加圧し建物の各給水器具に供給する。
給水装置10の建物への給水方式としては、水道本管の水を一旦受水槽に貯留し、受水槽の水を給水対象へポンプ30A,30Bにて加圧する受水槽方式、及び、水道本管の本管圧を利用しポンプ30A,30Bにて増圧することにより給水対象へ水を供給する直結給水方式などがある。また、給水対象への給水方式としては、ポンプ30A,30Bにて増圧した水を直接圧送する直送式、または、ポンプ30A,30Bにて増圧した水を屋上のタンクに一旦貯留し、自然流下にて給水を行う高置水槽方式等がある。
給水装置10の各構成部品について説明する。ベース20は、ポンプ30A,30B等の各機器をその上に取り付けて基礎に固定するための台である。本実施形態のベース20は、略矩形の平板状であり、長手方向の両側辺は下方向に折り曲げられた後に外方向に折り曲げられることで、L字状の固定辺23,23を構成している。
給水装置10は、ポンプ30A,30Bを駆動するモータ33A,33Bを備えている。ポンプ30A,30Bは、吸込口35A,35Bと、ポンプ30A,30Bの上面に設けられた吐出し口37A,37Bと、を有している。なお、直結給水方式の場合には、吸込口35A,35Bが水道本管から分岐した供給管に逆流防止装置(不図示)を介して接続され、供給管には、水道本管の圧力を検出する図示しない圧力センサが設けられる。以下、供給管に設けられる水道本管の圧力を計測する圧力センサにより検出される圧力値を「流入圧力」という。
吐出し配管40は略T字状の配管であり、フロースイッチ49A,49B、及びチェッキ弁(逆止弁)47A,47Bを介して、ポンプ30A,30Bの吐出し口37A,37Bに接続されている。フロースイッチ49A,49Bは、吐出し流量が過少水量Qmin未満に至ったことを検知する流量検知器の一種である。吐出し配管40の中央には吐出集合管43が設けられている。これによって、両ポンプ30A,30Bは、並列運転を行うことができる。チェッキ弁47A,47Bによって、ポンプ30A,30Bが停止したときに吐出し配管40内の水がポンプ30A,30B側に逆流しない。吐出し配管40の中央の下部には、この吐出し配管40を圧力タンク50に連結する連結配管45が取り付けられている。連結配管45には吐出し配管40から圧力タンク50間の流路を遮断できる仕切弁45Aが設けられている。さらに吐出し配管40には吐出し配管40内の圧力を検出する圧力センサ48が取り付けられている。そして圧力タンク50とチェッキ弁47A,47Bの効果によって、ポンプ30A,30Bが停止した後の吐出し配管40内の圧力は、水が使用されない限り一定圧力に保持される。以下、圧力センサ48により検出される圧力値を「吐出し圧力」という。
制御盤60は、ケース61内に、ポンプの運転制御を行う各種電気回路からなる制御部65並びにモータ33A,33Bの可変速手段であるインバータ(不図示)を内蔵して構成されている。
図4Aは、実施形態の給水装置10の制御部65の一例を説明するためのブロック構成図である。図示するように、給水装置10の制御部65は、制御用メモリ(記憶部)66と、演算部69と、I/O部70と、運転パネル79と、通信部73と、を備えている。
制御部65の制御用メモリ66としては、ROM、HDD、EEPROM、FeRAM、及び、フラッシュメモリ等の不揮発性メモリ、RAM等の揮発性メモリが使用される。制御用メモリ66は、給水装置10を制御するための制御プログラムと、装置情報、設定値情報、メンテナンス情報、履歴情報、異常情報、運転情報等の給水装置10に関する各種データを記憶する。なお、これらは、制御用メモリ66が不揮発性記憶領域を有する場合には、その不揮発性記憶領域に記憶されてもよい。
ここで、給水装置10に関する各種データについて説明する。各種データの一部である装置情報は、給水装置10を構成する各機器に関する情報である。装置情報は、ポンプの台数、ポンプ30A,30Bの口径、給水量、全揚程、締切揚程、モータ33A,33Bの出力容量、給水方式、および、給水装置10の機種を示す機種識別情報(例えば機名、型番、シリアル番号など)を含む。
各種データの一部である設定値情報は、主に給水装置10の使用環境または給水方式等によって値が変更される情報である。設定値情報は、設定圧力PA、最低圧力PB、始動圧力P0、停止圧力P1を含む。また、設定値情報は、各種警報を検出するための閾値および検知時間等の情報を含んでもよい。
各種データの一部であるメンテナンス情報は、給水装置10のメンテナンスに関する情報であり、メンテナンス時に作成もしくは更新される情報である。メンテナンス情報は、メンテナンス作業履歴としての日時、作業内容、交換部品、メンテナンス作業者の情報などを含むとよい。また、後述する試験運転はメンテナンスに含まれるので、試験運転情報はメンテナンス情報の一部として記憶部66に記憶される。
各種データの一部である異常情報は、給水装置10における異常に関する情報である。異常情報は、現在検出中の各種警報(インバータトリップ、吐出し圧力異常低下、各種センサ異常等)および異常(流入圧低下や受水槽の満水渇水減水等)に関する情報等を含む。
各種データの一部である履歴情報は、給水装置の各種履歴に関する情報である。履歴情報は、ポンプ30A、30Bの積算運転時間並びに積算運転回数、給水装置10にける警報履歴、各種操作履歴等を含む。
各種データの一部である運転情報は、給水装置10における現在の状態を示す情報であり、一定の周期(数10mSECから数秒の間隔)にて更新される。運転情報は、現在のポンプ30A,30Bのそれぞれの運転または停止状態、ポンプ30A,30Bの回転速度並びにポンプ30A,30Bを駆動するモータに流れる電流値、更には、給水装置10の入力電圧や流入圧力、吐出し圧力、目標圧SV等を含む。また、後述するI/O部70に入力される各種センサ類の値や出力信号等を含んでもよい。
なお、上述した各種データのうち、メンテナンス情報並びに履歴情報は、給水装置10が有する現在時刻と共に記憶されていることが好ましい。
演算部69としては、CPUが使用される。演算部69は、制御用メモリ66に格納されている制御プログラム及び各種データ、並びにI/O部70から入力される信号に基づいて、給水装置10を構成する各機器を制御するための演算等を行う。また、演算部69は、通信部73並びにI/O部70等における通信制御や運転パネル79における表示や操作の制御を行う。演算部69における演算結果は、制御用メモリ66に記憶されるとともに、I/O部70、通信部73に出力される。
I/O部70としては、ポート等が使用される。I/O部70は、圧力センサ48の入力信号、及び、フロースイッチ49A,49B等の各種センサ類の検出信号等を受け入れて演算部69に送る。また、I/O部70と不図示のインバータとは、RS422,232C,485等の有線もしくは無線等の通信手段により互いに接続されるとよい。I/O部70から各種設定値や回転速度の指令値、発停信号(運転・停止信号)などの制御信号がインバータへ送られる。また、インバータから実際の周波数値および電流値等がI/O部70へと送られる。なお、I/O部70とインバータとの間で送受信される制御信号としては、アナログ信号および/またはデジタル信号を用いてもよい。また、ポンプ30A,30Bの可変速制御を行わない場合は、給水装置10にインバータが備えられなくてもよい。その場合、モータ33A,33Bの始動および停止をI/O部70の接点出力にて行うとよい。
なお、I/O部70には外部入力端子70a、外部出力端子70bを備えているとよい。外部入力端子70aには切り替えスイッチ等が接続されてもよく、切り替えスイッチからの入力信号により給水装置10の装置情報および設定値情報が変更可能なように構成されてもよい。その場合、I/O部70は、制御用メモリ66に記憶される各種データを変更可能な情報入力部として機能する。また、外部出力端子70bにて信号を出力することで、給水装置10の状態を外部へ報知することができる。
運転パネル79は、制御用メモリ66に記憶される各種データを、演算部69を介して表示ならびに変更することができるGUIである。具体的には、運転パネル79は、装置情報、設定値情報、メンテナンス情報の表示および設定変更、メンテナンス情報、履歴情報の表示、入力、履歴のクリア、異常情報の表示およびリセット、並びに、運転情報の表示等を行う。本実施形態の運転パネル79は、設定部71と表示部72を備える。なお、制御部65と運転パネル79は別々の基板としてもよい。この場合、制御部65と運転パネル79とは、シリアル通信もしくは信号線等の有線、または無線にて接続されるとよい。制御部65と運転パネル79とを別々の基板とした場合は、運転パネル79を給水装置10から離れた場所(例えば、管理人室等)に設置してもよい。また、運転パネル79は、CPUを備えて該CPUにて表示操作の制御をしたり、制御部65および外部端末80との通信制御を行ったりしてもよい。また、運転パネル79は、警告音や操作音を鳴らすためのブザー(不図示)を備えてもよい。
運転パネル79の設定部71は、制御部65の情報入力部であって、ユーザーの外部操作により給水装置10における自動給水の運転/停止、警報リセット並びに各種データの設定変更等の各種入力操作を行うために使用される。設定部71は、操作ボタンまたはタッチパネル等を備えるとよい。
本実施形態の運転パネル79の設定部71は図4Bに示すように、操作ボタンとして、運転選択ボタン71a、運転停止スイッチ71b、ポンプ選択ボタン71cおよび記録ボタン71d、上下ボタン71eを有するとよい。本実施形態の給水装置10は、これらの操作ボタンによって、後述する運転モード(試験運転モード、自動運転モード及び停止モード)が選択できる。運転選択ボタン71aは、例えば、タクトスイッチであって操作者が押下することで運転モードを試験運転モード又は自動運転モードに切り替える。運転停止スイッチ71bは、例えば、スライドスイッチであって、操作者が「運転」を選択することで、自動運転および試験運転でのポンプ30A,30Bの運転が可能となり、「停止」を選択することで運転モードは停止モードとなり、ポンプ30A,30Bを停止する。運転停止スイッチ71bにスライドスイッチを用いることで、給水装置10に電源が投入されていないときでもポンプ30A,30Bの運転停止を確認並びに選択することができる。ポンプ選択ボタン71cは、例えば、タクトスイッチであって、操作者が押下することでポンプ30Aまたは30Bのどちらか一方または両方を選択する。記録ボタン71d
は、例えば、タクトスイッチであって、操作者が押下することで後述する試験運転情報を作成し記憶部66に記憶する。上下ボタン71eは、例えば、タクトスイッチであって、操作者が押下することで後述する試験運転の回転速度を変更したり、L10に表示する項目を変更することができる。なお、本実施形態の操作ボタンに限らず設定部71には、変更する項目ごとの操作ボタンを有してもよい。一例として、ロータリスイッチにて「自動」「停止」「試験」の運転モードを選択可能としてもよい。その場合、運転選択ボタン71aは省略されてもよく、「自動」が選択されたポンプは自動運転を行い、「試験」が選択されたポンプが手動にて運転する試験運転中のポンプとなる。そして、「停止」が選択されたポンプの運転モードは停止モードとなる。
ここで、以下の説明においては、設定部71を通じた入力と、通信部73を通じた入力と、I/O部70の外部入力端子70aに入力された信号とを、外部入力という。設定部71を通じて外部操作によって入力された情報は、制御用メモリ66に記憶されることが好ましい。例えば、操作者は設定部71を介して、設定圧力PA、最低圧力PB、始動圧力P0、停止圧力P1を設定値情報として設定変更することができる。
ここで、設定値情報を設定変更する意義について説明する。設定部71または通信部73を通じてユーザーにより全揚程および締切揚程の外部入力がなされると、全揚程および締切揚程が制御用メモリ66に記憶されて設定値情報が設定変更される。演算部69は、全揚程および締切揚程に基づいてポンプの性能曲線を選択もしくは演算し、新たな性能曲線を用いてポンプ30A,30Bの回転速度を制御する制御プログラムを実行する。このように、全揚程および締切揚程を設定変更して制御部65による制御を調整できるものとすることにより、制御部65の汎用性を向上させることができ、設置環境の異なる給水装置に対して同一の制御部65並びに制御プログラムを用いることができる。なお、設定圧力PA、最低圧力PB、始動圧力P0、停止圧力P1といった他の設定値情報の設定変更についても、同様の効果が得られる。さらに、設定値情報の設定変更と同様に、ポンプ30A,30Bの口径などの装置情報を設定できるものとすることにより、装置構成の異なる給水装置に対して同一の制御部65並びに制御プログラムを用いることができる。
運転パネル79の表示部72は、ユーザーインターフェースとして機能し、制御用メモリ66に格納されている各種データを表示できるように構成されている。給水装置10は、機械室またはポンプ室などの電気的なノイズの多い環境に設置されることがある。こうした場合に備えて、表示部72として、液晶表示およびタッチパネルよりも電気的ノイズに強い7セグメントLEDまたは表示灯、並びに、機械的な押圧ボタンなどにて構成された表示器が使用されてもよい。これにより、電気的なノイズ等によって外部端末80の表示操作部80Aに異常が発生するような外部環境においても、給水装置10の運転に必要な最低限度の表示を表示部72に表示することができる。したがって、給水装置10を電気的ノイズの多い環境下にも設置することができる。ただし、表示部72としては、電気的ノイズに強い表示器に限定されず、ドットマトリクス方式による液晶表示器などが使用されてもよい。
本実施形態の運転パネル79の表示部72には、運転選択ボタン71a、ポンプ選択ボタン71cおよび記録ボタン71dの状態が表示できるとよい。具体的には、図4Bに示すように、表示部72は複数桁を表示可能な7セグメントLEDであるL10、並びに複数のLED(L1〜L4)を有するとよい。図4Bに示す例では、運転選択ボタン71aによる試験運転モードもしくは自動運転モードの選択状態がL1、L2の一方の点灯によって示され、ポンプ選択ボタン71cによるポンプ30A、30Bの選択状態がL3、L4の点灯もしくは消灯によって示される。また、記録ボタン71dによって記憶部66に記憶された試験運転情報はL10にて表示できるとよい。更には、L10の表示項目を上下ボタン71eによって切り替えることで、L10には給水装置10における各種データ
を表示することができる。
通信部73は、有線通信または無線通信によって外部端末80と通信可能なように構成されている。具体的には、制御用メモリ66に記憶された給水装置10に関する各種情報を外部端末80へ送信するとともに、制御部65の情報入力部として外部端末80からの設定値情報の設定変更を受信し、演算部69に送る。なお、上記したように、本実施形態では、外部端末80から通信部73への信号の送信は、給水装置10における「外部入力」に含まれる。通信部73における無線通信としては、例えば近距離無線通信(NFC:Near Field Communication)の技術を利用することができる。また、Bluetooth(登録商標)およびWi−Fiなど、任意の方式の無線通信を利用することができる。ただし、NFCは、制御部65と外部端末80とを近づけるだけで通信を完了させることができる点で有利である。また、有線通信としては、例えば制御部65にUSB(Universal Serial Bus)のような外部接続端子が設けられ、ここに外部端末80が接続されることによって通信がなされてもよいし、RS422,232C,485等のシリアル通信を用いてもよい。
外部端末80は、表示操作部80Aを有し、給水装置10の通信部73と通信して給水装置10に関する各種データを表示・変更可能なように構成されている。具体的には、外部端末80は、制御用メモリ66に記憶された各種データを給水装置10の通信部73から受信し表示操作部80Aに表示する。また、外部端末80は、ユーザーが表示操作部80Aを操作して入力した各種データの変更要求を給水装置10の通信部73へ送信する。表示操作部80Aは、タッチ入力方式または押圧ボタン方式を用いた液晶画面での高機能表示器を採用することができる。この場合、給水装置10の表示部72には簡易な情報を表示させ、外部端末80には大きな情報量の情報を表示させてもよい。こうした構成により、外部端末80は、制御用メモリ66に記憶された各種データのうち複数の情報(例えば、設定圧力PA、最低圧力PB、始動圧力P0、停止圧力P1、目標圧SV、現在圧PV、ポンプ30A,30Bの運転・停止、回転速度など)を、表示操作部80Aの同一画面上に表示することができる。これにより、給水装置10に不慣れなユーザーも誤解することなく、給水装置10の状態を認識したり、設定入力を行うことができる。
さらに、外部端末80として、スマートフォン、携帯電話、パソコン、又は、タブレットなどの汎用端末機器(PDA)を採用した場合には、これらのPDAに、外部端末80として作用するための専用のアプリケーションソフトウエアをインストールさせてもよい。この場合には、専用のアプリケーションソフトウエアをユーザーのレベル又は目的に沿って複数用意してもよい。
なお、上述した運転パネル79の機能は、外部端末80にて全て実施可能としてもよい。こうすれば、給水装置10が操作しにくい場所(例えば、運転パネル79が操作者の足元あたり)に設置されていても給水装置10の状態確認や設定値情報の変更等の操作が容易となる。
次に、制御部65による給水装置10の給水制御の一例である自動運転について説明する。ポンプ30A,30Bが停止している状態で吐出し圧力が所定の始動圧力P0にまで低下すると、制御部65はポンプ30A,30Bの少なくとも一方を始動させる。具体的には、制御部65はポンプ30A,30Bの駆動を開始するようにモータ33A,33B(インバータを備える場合にはインバータ)に指令を出す。ポンプ30A,30Bの運転中は、設定された圧力(設定圧力PA)により推定末端圧力一定制御または目標圧力一定制御などの制御が行われる。具体的には推定末端圧力一定制御の場合は、水供給先の末端の圧力が最低圧力PBにて一定となるように、制御部65は、ポンプ30A,30Bの回転数と目標圧力制御カーブとを用いてポンプ30A,30Bの吐出し圧力に対する目標圧
SVを設定する。目標圧力一定制御の場合は、制御部65は、ポンプ30A,30Bの吐出し側の圧力が設定圧力PAとなるように、設定圧力PAを目標圧SVと設定する。また、推定末端圧力一定制御と目標圧力一定制御とのいずれの場合にも、制御部65は、吐出し圧力を現在圧PVと設定する。そして、目標圧SVと現在圧PVの偏差にてPID演算が行われることにより、ポンプ30A,30Bの指令回転速度が設定される。なお、推定末端圧一定制御において、設定圧力PAは最大流量時の圧力値であり、最低圧力PBは、末端の給水栓における流量ゼロ時の圧力値である。直結給水にて推定末端圧力一定制御を行う場合は、流入圧力に基づいて目標圧力制御カーブを補正してもよい。具体的には目標圧力制御カーブを流入圧力だけ加算し、目標圧SVを算出する。また、制御部65は、本実施形態のようにポンプが複数台ある場合は、同時に起動可能なポンプ台数(ポンプ並列運転台数)にて水量に応じたポンプの台数制御も行う。なお、ポンプ並列運転台数は設定値情報として制御用メモリ66に記憶されるとよい。
ポンプ30A,30Bの運転中に建物での水の使用が少なくなると、ポンプ30A,30Bからの吐出し流量が過少水量Qmin未満に至ったことをフロースイッチ49A,49Bが検出し、検出信号がI/O部70を介して制御部65に送られる。制御部65は、この検出信号を受けると、所定時間で吐出し圧力が停止圧力P1に達するようにポンプ30A、30Bの回転数を制御する蓄圧運転を行う。そして、吐出し圧力が所定の停止圧力P1に達すると、圧力タンク50に蓄圧したと判断して蓄圧運転を終了し、ポンプ30A,30Bを停止(小水量停止)させる。ポンプ30A,30Bが小水量停止した後に、再び建物内で水が使用されて吐出し圧力が始動圧力P0以下まで低下すると、ポンプ30A,30Bの小停再始動が行われる。なお、本実施形態のようにポンプが複数台ある場合には、始動するポンプ30A,30Bをローテーションさせ、ポンプ30A,30B内に水が滞留するのを防ぐことが好ましい。また、小水量を検知する方法としては、フロースイッチ49A,49Bを用いずに、モータ33A,33Bの電流値による低負荷や締切揚程等その他の手段を用いてもよい。
なお、上述した自動運転は、運転選択ボタン71aにて自動運転モードが選択され、運転停止スイッチ71bにて「運転」が選択された場合に実行される。また、上記では、操作者がポンプ選択ボタン71cにてポンプ30Aとポンプ30Bの両方を選択した例について説明したが、ポンプ選択ボタン71cにてポンプ30Aまたはポンプ30Bのどちらか一方が選択された場合は、選択されたポンプのみで自動運転を行い、他方のポンプは停止または試験運転とするとよい。
また、給水装置10は、装置の据付時、または、ポンプ30A,30Bもしくはモータ33A,33Bのメンテナンス時等に配管の接続状態やポンプ30A,30Bの性能を確認できるように、ポンプ30A,30Bの試験運転を行うことができる。具体的には、本実施形態の給水装置10は、ポンプ30A,30Bの運転モードとして、上述した自動運転時の運転モードである自動運転モードと、試験運転用の運転モードである試験運転モードと、ポンプ30A,30Bの運転を不可とする停止モードを有する。運転モードの切り替えは、外部入力によって行われるとよい。一例として、運転モードの切り替えは、運転停止スイッチ71bの操作および設定部71に設けられている運転選択ボタン71aを操作者が押すことによって、または外部端末80から通信部73に指令が送信されることによって行われる。なお、自動運転モードから試験運転モードへの運転モードの切替えは、運転停止スイッチ71bによって停止モードが選択されている状態であるなど、所定の条件が成立しているときにだけ切り替え可能としてもよい。このときには、運転モードが切り替えられた後に運転停止スイッチ71bが「停止」から「運転」へ操作されることにより、切り替えられた運転モードでポンプ30A,30Bの運転されるものとしてもよい。
本実施形態の試験運転モードでは、ポンプ30A,30Bの一方が選択され、選択され
たポンプが試験運転の対象とされる(以下、試験運転モードにおいて選択されるポンプを「対象ポンプ」という)。一例として、対象ポンプの選択は、設定部71のポンプ選択ボタン71cを操作者が押すことによって行われる。そして、試験運転モードでは、一例として、操作者が手動で設定する回転速度で対象ポンプが運転されるように、制御部65が対象ポンプを制御する。つまり、対象ポンプを選択後に運転停止スイッチ71bを「運転」にすることで試験運転モードを開始し、更に操作者が設定部71の上下ボタン71eを押下することによって対象ポンプの回転速度を任意に変更することで試験運転中となる。こうした試験運転によって、操作者は対象ポンプが適正に動作するか否かを確認することができる。ポンプ30A,30Bが試験運転中の状態を終えるときには、操作者は設定部71の運転停止スイッチ71bを「運転」から「停止」へと操作して停止モードとするか、対象ポンプの回転速度を0に変更して対象ポンプを停止させる。対象ポンプを停止モードとした後に、操作者が運転選択ボタン71aを押下する、または外部端末80を用いて通信部73に試験運転の終了指令を送信することにより、運転モードが試験運転モードから対象ポンプの停止モードを経て自動運転モードへと切り替えられる。
ただし、試験運転モードは、操作者が外部入力により対象ポンプおよび回転速度を変更して試験運転が行われるものに限定されず、制御部65が予め定められたプログラムにしたがってポンプ30A,30Bの試験運転を実行するものとしてもよい。この場合には、操作者の外部入力により試験運転を開始すると、対象ポンプは試験運転中となって、制御部65によって対象ポンプの回転速度を0から所定の回転速度まで所定の時間をかけて徐々に上昇させるとよい。対象ポンプの回転速度が所定の回転速度まで達するか、運転停止スイッチ71bにて「停止」が選択される等の外部入力にて、対象ポンプの試験運転は中断されて停止する。更に、対象ポンプが停止したのちに、自動で対象ポンプが切り替えられて給水装置10内の全てのポンプ30A,30Bの試験運転が行われるとよい。
こうした本実施形態の試験運転モードにて、ポンプ30A,30Bの試験運転中に、演算部69は、対象ポンプに関する情報である運転情報や履歴情報等を用いて試験運転情報を作成し、該試験運転情報を制御用メモリ66に記憶する。以下、制御部65による試験運転情報の制御用メモリ66への記憶について説明する。図5は、制御部65により実行される試験運転時制御処理の一例を示すフローチャートである。この試験運転時制御処理は、ポンプ30A,30Bの運転モードが試験運転モードへ切り替えられたときに制御部65によって実行され、任意のタイミングにて運転モードが試験運転モードから自動運転モードへ切り替えられたときには中断される。
試験運転時制御処理が実行されると、制御部65は、まず、試験運転する対象ポンプを選択する(S110)。この処理は、外部入力に基づいて行われればよい。ここでいう外部入力とは、操作者が設定部71を操作することによって、または、操作者が外部端末80を操作して通信部73に指令を送信することによって、または、外部入力端子70aへの入力信号でもよく、更には、これら外部入力の組み合わせでもよい。ただし、こうした例に限定されず、予め定められたプログラムにしたがってポンプ30A,30Bの試験運転が実行されるものとしてもよく、この場合には、制御部65は予め定められたポンプ(例えばポンプ30A)を対象ポンプに設定してもよい。
対象ポンプが選択されると、制御部65は、対象ポンプの試験運転を行う(S120)。このときには、対象ポンプは試験運転中であり、上記したように操作者が設定した回転速度で対象ポンプが運転されるように、制御部65は対象ポンプのモータ(インバータを有する場合にはインバータ)へ指令を送信する。また、予め定められたプログラムにしたがってポンプ30A,30Bの試験運転が実行される場合には、当該プログラムに基づく回転速度で対象ポンプが運転されるように、制御部65は指令を送信する。ここで、対象ポンプの試験運転(S120)は、水漏れや対象ポンプの振動等の不具合が確認された場
合などは、運転停止スイッチ71bを「停止」とすることで、任意のタイミングで強制的に終了することができる。強制的に対象ポンプを停止してS120を終了した場合は、以下S130〜S160のステップを省略し、更に運転パネル79等にて試験運転情報が未作成である旨を報知するとよい。
続いて、制御部65は、対象ポンプの試験運転を継続しながら(S120)、所定の外部入力がなされるのを待つ(S130)。このS130の処理は、対象ポンプの試験運転情報を作成するタイミングを待つものである。ここで、所定の外部入力は、予め定められたものであり、操作者による設定部71の特定の操作としてもよいし、操作者による外部端末80からの通信部73への特定の指令の送信としてもよいし、外部端子70aへの入力信号でもよく、更には、これら外部入力の組み合わせでもよい。本実施形態では、操作者が記録ボタン71dを押したときに、制御部65は所定の外部入力がなされたと判定する。また、記録ボタン71dの操作に加えて、または、代えて操作者が対象ポンプを停止させるために運転停止スイッチ71bを操作したときに、制御部65は所定の外部入力がなされたと判定してもよい。
所定の外部入力がなされたタイミング(S130:Yes)で、制御部65は、対象ポンプの現時点での運転情報や履歴情報等を用いて試験運転情報を作成し、制御用メモリ66に記憶して対象ポンプを停止させる(S140)。ただし、試験運転情報を制御用メモリ66に記憶したときに対象ポンプを停止させなくてもよく、設定部71に記録ボタン71dが設けられている場合などには、制御部65は、試験運転情報を記憶した後も対象ポンプの試験運転を継続してもよい。この場合には、運転停止スイッチ71bが操作される、または、外部入力端子70aよりポンプ運転不可の信号が入力されるなど、他の外部入力にしたがって対象ポンプの試験運転を停止させるものとしてもよい。
図6は、制御用メモリ66に記憶された試験運転情報の一例を示す図である。なお、いまは、1台の対象ポンプの試験運転がなされたときを考えているが、図6では、2つのポンプの試験運転がなされてそれぞれの試験運転情報が示されている。図6に示す例では、制御用メモリ66には、ポンプ台数分の試験運転情報を記憶する記憶エリアが確保されており、ポンプ毎に決められた記憶エリアに試験運転情報を記憶することで、どのポンプの試験運転情報かを識別することができる。具体的には、記憶エリアAにはポンプ30Aの試験運転情報を記憶し、記憶エリアBにはポンプ30Bの試験運転情報を記憶する。演算部69にて、試験運転にて所定の外部入力によりS130がYesとなったときの対象ポンプの運転に関する情報として運転情報や履歴情報等の少なくとも一部が試験運転情報へコピーされることで、ポンプ毎の試験運転情報が作成され、上述した制御用メモリ66のポンプ毎の記憶エリアに記憶される。図6に示す例では、試験運転情報には、所定の外部入力によりS130がYesとなった時刻、並びに、所定の外部入力によりS130がYesとなった時刻における吐出し圧力、流入圧力、電源電圧、対象ポンプの回転速度、モータの電流、及び、ポンプの温度が記憶されている。また、図6に示す例では、対象ポンプの所定の外部入力によりS130がYesとなった時刻における積算運転時間および積算運転回数についても併せて記憶されている。なお、制御用メモリ66に記憶される試験運転情報としては、この例に限定されない。ただし、試験運転情報には、吐出し圧力と、対象ポンプの回転速度と、対象ポンプを駆動するモータに流れる電流との少なくとも一つが含まれることが好ましい。そして、制御用メモリ66に記憶された試験運転情報は、表示部72で表示されるものとしてもよいし、外部端末80に送信されるものとしてもよい。
このように、制御部65は、対象ポンプの試験運転中に、運転中の対象ポンプに関する情報を用いて試験運転情報を作成し、且つ作成した試験運転情報が制御用メモリ66に記憶されることにより、試験運転を行う作業者は、試験運転中に試験運転情報を紙媒体に記
録する作業を省くことができる。言い換えれば、作業者は運転パネル79や外部端末80にて、試験運転が終了した後に試験運転情報を制御用メモリ66より取得することができるので、ポンプの試験運転を容易に行うことができる。
更に、図6に示すように、制御部65は、制御用メモリ66にポンプ台数分の試験運転情報を記憶する記憶エリア(記憶エリアA,記憶エリアB)を有し制御用メモリ66のポンプ毎に決められた記憶エリアに試験運転情報を記憶する。これにより、複数の試験運転情報を制御用メモリ66に記憶できるとともに、給水装置10内の複数台のポンプのうちどのポンプに関する情報であるのかを識別可能なように複数の試験運転情報を制御用メモリ66に記憶する。つまり、制御用メモリ66に記憶された複数の試験運転情報のうち少なくとも一部を取得する際に、記憶エリアAまたは記憶エリアBを識別することで、試験運転情報の作成時に運転中であった対象ポンプを識別できる。
試験運転情報を記憶して対象ポンプを停止させると、制御部65は、制御用メモリ66に記憶された試験運転情報に所定の性能差が認められるか否かを判定する(S150)。このS150の処理は、複数のポンプ30A,30Bの間に性能差が認められるか、または、試験運転した対象ポンプに経年劣化が認められるか、の少なくとも一方を判定するものである。試験運転情報に所定の性能差が認められるか否かの判定は、一例として、制御用メモリ66に記憶された試験運転情報について要素ごとに差を算出し、その差を要素ごとに予め定めた閾値と比較することにより行われればよい。ただし、こうした例に限定されず、制御部65は、試験運転情報の要素のうち予め定めた要素(例えば、吐出し圧力とモータの電流値との少なくとも一方)だけを用いて所定の性能差が認められるか否かを判定してもよい。なお、S150の処理は、試験運転情報が制御用メモリ66に記憶されたタイミングで実行されるものに代えて、または加えて、試験運転モードから自動運転モードに切り替えられるタイミングで実行されてもよい。また、試験運転情報に所定の性能差が認められるか否かの判定は、試験運転時制御処理において実行されるものに限定されず、例えば所定の外部入力がなされたタイミングでなされてもよい。
図7は制御用メモリ66に記憶された試験運転情報の他の一例を示す図である。図7に示す例では、制御用メモリ66には、試験運転情報の履歴を記憶する記憶エリアが確保されており、演算部69は、図5のS130の所定の外部入力にて、制御用メモリ66に記憶されている1番古い試験運転情報を破棄して、試験運転情報を追加する。ここで、試験運転情報に対象ポンプの号機(No.1ポンプ又はNo.2ポンプ)を含むことで、給水装置10内の複数台のポンプのうちどのポンプに関する情報であるのかを識別可能なように複数の試験運転情報を制御用メモリ66に記憶する。これにより、後に試験運転情報を参照するときに、どのポンプの試験運転情報かを識別することができる。図7に示す例では、制御用メモリ66は、前回と最新の2回分の試験運転情報を記憶する記憶エリア1と記憶エリア2を確保しており、ポンプ30Aの試験運転を行った後にポンプ30Bの試験運転を行っており、記憶エリア1にはポンプ30Aにおける試験運転情報を記憶し、記憶エリア2にはポンプ30Bの試験運転情報を記憶している。なお、図7では、最新と前回の2回分の試験運転情報を記憶しているが、これに限らず、3回分の以上の試験運転情報を記憶してもよい。
図7は、ポンプ毎に性能差が認められるときの試験運転情報の一例を示す図である。図7は、図6に記憶された値と比較して、ポンプ30Bの吐出し側圧力の値が異なり、その他の試験運転情報の値は同一である。本実施形態の給水装置10では、2台のポンプ30A,30Bは、互いに並列に接続されており、正常時には同一の条件で運転すると略同一の性能を示す。このため、2台のポンプ30A,30B(No.1ポンプ、No.2ポンプ)の試験運転情報に所定量以上の性能差がある場合、一方のポンプに不具合が生じている可能性が高い。図7に示す例では、流入圧力およびポンプの回転速度など他の条件が略
同一であるにもかかわらず、ポンプ30Bの吐出し圧力がポンプ30Aポンプの吐出し圧力に対して7割弱の数値を示しており、ポンプ毎に性能差が認められる。
試験運転情報に所定の性能差が認められるときには(S150:Yes)、制御部65は、試験運転情報に性能差が認められることを報知する(S160)。性能差が認められることの報知としては、警告音(ブザー)を鳴らすものとしてもよいし、表示部72へ表示するものとしてもよい。また、こうした報知に代えて、または加えて、外部端末80または管理拠点等に対して、所定の警告信号を送信するものとしてもよいし、外部出力端子70bに出力してもよい。こうした制御により、操作者等は、ポンプ30A,30B毎に性能差が認められることを確認することができる。なお、通常、経年または不具合等によってポンプ30A,30Bの性能が向上することは考えられない。このため、制御部65は、試験運転情報に性能差が認められるときには、性能が低いポンプに不具合が生じていると判断して、不具合が生じているポンプを表示部72に表示するなど報知してもよい。
制御部65は、試験運転情報に所定の性能差が認められないとき(S150:No)、または、試験運転情報に所定の性能差が認められることを報知したときには(S160)、続いて対象ポンプの変更が要求されているか否かを判定する(S170)。対象ポンプの変更が要求されているか否かの判定は、外部入力に基づいてなされればよい。一例として、ユーザーによって設定部71の図示しないポンプ選択ボタンが押されたときには、制御部65は対象ポンプの変更が要求されていると判定する。一方、ユーザーによって設定部71の図示しない運転選択ボタンが押されて制御モードが切り替えられたときには、制御部65は対象ポンプの変更が要求されていないと判定する。なお、試験運転モードにおいて予め定められたプログラムにしたがってポンプ30A,30Bの試験運転が実行される場合には、制御部65はすべてのポンプの試験運転が実行されるまで対象ポンプの変更が要求されていると判定してもよい。そして、制御部65は、すべてのポンプの試験運転が実行されると、対象ポンプの変更が要求されていないと判定すればよい。
対象ポンプの変更が要求されているときには(S170:Yes)、制御部65は、試験運転する対象ポンプを変更して(S110)、上記したS120以降の処理を実行する。一方、対象ポンプの変更が要求されていないときには(S170:No)、制御部65は、試験運転モードによるポンプ30A,30Bの試験運転を完了したと判断して試験運転時制御処理を終了する。
以上説明した本実施形態の給水装置10では、試験運転モードによってポンプ30A,30Bが試験運転されるときに、試験運転しているポンプの運転に関する情報である試験運転情報が作成され、制御用メモリ66に記憶される。これにより、作業者が試験運転情報を記録する手間を低減することができ、ポンプ30A,30Bの試験運転を容易に行うことができる。
更に、図7に示すように、制御部65は、制御用メモリ66に試験運転情報の履歴を最新から過去の所定の回数分だけ記憶する記憶エリア(記憶エリア1、記憶エリア2)を有し試験運転情報とともにポンプ号機を記憶する。これにより、複数の試験運転情報を制御用メモリ66に記憶できるとともに、作業者が制御用メモリ66に記憶された複数の試験運転情報のうち少なくとも一部を制御用メモリ66より取得する際に、試験運転情報とともにポンプ号機を取得することによって試験運転情報の作成時に運転中であった対象ポンプを識別できる。
上記した実施形態の給水装置10において、図6の記憶エリアAおよび記憶エリアBには、図7の記憶エリア1および記憶エリア2と同様に、試験運転情報の履歴として、最新の試験運転情報に加えて過去の試験運転情報が格納されていてもよい。具体的には、記憶
エリアAには、ポンプ30Aの試験運転毎の試験運転情報が最新から過去の所定の回数分の記憶がなされ、記憶エリアBには、ポンプ30Bの試験運転毎の試験運転情報が最新から過去の所定の回数分の記憶がなされるとよい。ただし、記憶エリアAおよび記憶エリアBは、このメモリ配置に限らずメモリ配置とポンプ号機が関連づけられていればよい。試験運転情報の履歴を制御用メモリ66に記憶すれば、試験運転情報の履歴に基づいてポンプ30A,30Bの経年変化を確認することができる。また、制御部65は、試験運転モードにおいて新たに試験運転を行ったときに、試験運転情報の履歴に対して、今回に記憶した試験運転情報に所定の性能差が認められるか否かを判定してもよい。そして、制御部65は、試験運転情報の履歴に対して所定の性能差が認められるときには、ポンプ毎の試験運転情報に所定の性能差が認められる場合と同様に、所定の性能差が認められることを報知するとよい。こうすれば、作業者はポンプ30A,30Bに経年劣化が生じていることを確認することができる。
上記した実施形態では、試験運転モードにおいて対象ポンプを単独運転するものとした。しかしながら、こうした例に限定されず、2台のポンプを同時に試験運転させてもよい。また、3台以上のポンプを備える給水装置においては、すべてのポンプを同時に試験運転させてもよいし、1台以上の一部のポンプを試験運転させて残りのポンプを停止させるものとしてもよい。
上記した実施形態では、制御部65は、給水装置10における制御用メモリ66に試験運転情報を記憶するものとした。しかし、制御部65は、制御用メモリ66に代えて、または加えて、例えばUSB(Universal Serial Bus)のような外部接続端子を介して接続された外部メモリ(記憶部)に試験運転情報を記憶するものとしてもよい。
(変形例1)
図8は、制御部65により実行される試験運転時制御処理の変形例を示すフローチャートである。図8の試験運転時制御処理は、図5の試験運転時制御処理と比べてS130の処理が異なり、他の処理は同一である。変形例の試験運転時制御処理では、対象ポンプの試験運転をしているときに(S120)、対象ポンプが所定の運転状態に至ったか否かを判定する(S130A)。一例として、対象ポンプの回転数を予め定めた回転数以上に至ったとき、または、吐出し圧力が予め定めた圧力以上に至ったときに、制御部65は対象ポンプが所定の運転状態に至ったと判定すればよい。そして、対象ポンプが所定の運転状態に至ると(S130A:Yes)、制御部65は試験運転情報を制御用メモリ66に記憶する(S140)。こうした制御により、対象ポンプの試験運転情報を記憶するタイミングを自動とすることができ、作業者による手間を更に低減することができる。
(変形例2)
図9は、複数の給水装置と管理装置とを含むポンプシステムの一例を示す図である。図9では、上記した実施形態の給水装置10が2つ示されており、管理装置100は、これらの給水装置10(10X、10Y)を管理するために設けられている。ただし、管理装置100は、2つの給水装置10X、10Yを管理するものに限定されず、3つ以上の複数の給水装置10を管理してもよい。給水装置10(10X、10Y)は、外部端末80(80X、80Y)と通信可能であり、管理装置100は、有線または無線で外部端末80と通信可能に構成されている。一例として、図9では、管理装置100は、インターネットなどの汎用的なネットワーク網90もしくは専用回線を介して外部端末80と通信できる。これにより、管理装置100は、外部端末80を介して給水装置10からの情報を受信することができる。また、管理装置100は、受信したデータを記憶部106に記憶し、複数の給水装置10の情報を管理することができるようになっている。そして、変形例2の管理装置100は、給水装置10X、10Yを管理するための情報の1つとして、給水装置10X、10Yにおいて試験運転モードによって運転されたポンプ30A,30
Bの情報を受信し、試験運転情報として記憶部106に記憶する。なお、本変形例では、図6並びに図7に示す試験運転情報を記憶する記憶エリアは、給水装置10に代えてもしくは加えて外部端末80の不図示の記憶部に備えるとよい。外部端末80で試験運転情報を記憶する記憶エリアを備える場合には、試験運転情報を構成するための各種データ(運転情報や履歴情報等)を給水装置10から読み込み、試験運転情報を外部端末80にて作成してもよい。
図10は、管理装置100による試験運転情報の記憶を説明するための図である。この図10では、給水装置10、外部端末80、及び、管理装置100の動作のそれぞれをタイムチャートとして示しており、特に給水装置10においてポンプ30A,30Bの運転モードが試験運転モードへ切り替えられたときの動作を示している。なお、給水装置10の動作では、図5の試験運転時制御処理と同様の処理に対して、試験運転時制御処理のステップと同一の符号を付している。
給水装置10は、試験運転モードが選択されると、まずポンプ30Aを対象ポンプに選択して(S110)、選択したポンプ30Aが起動すると試験運転中となる(S120)。このとき、外部端末80は、給水装置10から試験運転情報を読み込みのタイミングであるか否かを判定し(S202)、読み込みのタイミングであると判定すると(S202:Yes)、給水装置10へ試験運転中のポンプに関する情報である試験運転情報もしくは試験運転情報を構成するための運転情報や履歴情報等(図10では試験運転情報)の読み込みを要求する。ここで、外部端末80におけるS202の判定は、たとえば操作者が外部端末80に対して所定の操作をしたときに、読み込みのタイミングである(S202:Yes)と判定するものとしてもよい。つまり、たとえば操作者が外部端末80に設けられた不図示の記録ボタンを操作したときに、外部端末80は試験運転情報を読み込みのタイミングであると判定する。また、給水装置10が試験運転情報を作成する場合は、試験運転情報を作成したときに(図5:S140)、通信している外部端末80がある場合には試験運転情報を作成したことを示す信号を外部端末80へ送信するものとしてもよい。この場合には、外部端末80は、給水装置10から試験運転情報を作成したことを示す信号を受信したときに、試験運転情報を読み込むタイミングであると判定してもよい。
給水装置10は、外部端末80から試験運転情報の読み込み要求を受信すると、要求された情報(図10では試験運転情報)を外部端末80へ送信する。なお、上記した実施形態のように給水装置10にて試験運転情報を作成する場合は、その作成した試験運転情報を外部端末80へ送信すればよい。このときには、外部端末80から試験運転情報の読み込み要求を受信したときに、所定の外部入力がなされたものと判断して(図5:S130Yes)、試験運転情報を作成してもよい。ただし、こうした例に限定されず、ポンプ30A、30Bの試験運転中に給水装置10と外部端末80との通信が確立されているような場合には、給水装置10から受信される情報に基づいて外部端末80が試験運転情報を作成してもよい。また、給水装置10が試験運転情報を送信するときには、ポンプ30Aの試験運転情報であることが識別できるように、ポンプ30Aを示す識別信号とともに試験運転情報を外部端末80へ送信するとよい。
給水装置10からポンプ30Aの試験運転情報が送信されると、外部端末80は、給水装置10から受信したポンプ30Aの試験運転情報を取得して、外部端末80の記憶部86に記憶する(S204)。また、給水装置10は、ポンプ30Aの試験運転を終了してポンプ30Aを停止する(S140)。
続いて、給水装置10及び外部端末80は、ポンプ30Bについてもポンプ30Aと同様の処理を実行する。つまり、給水装置10にて、ポンプ30Bを対象ポンプに選択して(S110)、選択したポンプ30Bの試験運転を行う(S120)。外部端末80は、
給水装置10から試験運転情報を読み込むタイミングであると判定すると(S212:Yes)、給水装置10へ試験運転情報の読み込みを要求する。そして、給水装置10は、外部端末80から要求を受信すると、ポンプ30Bの試験運転情報を外部端末80へ送信し、外部端末80は、受信したポンプ30Bの試験運転情報を取得して記憶部86に記憶する(S214)。また、ポンプ30Bの試験運転を終了してポンプ30Bを停止する。
このように、外部端末80は、試験運転モードで運転されるポンプ30A,30Bの情報を給水装置10から取得して試験運転情報として記憶部86に記憶する。このため、上記した実施形態の給水装置10と同様に、作業者が試験運転中に試験運転情報を記録する作業を省くことができ、ポンプの試験運転を容易に行うことができる。また、外部端末80は、管理装置100や作業者が試験運転情報を取得するときには、ポンプ30A,30Bを識別することができるので、どのポンプ30A,30Bによる試験運転情報であるか判別できる。
外部端末80は、書き込みのタイミングであると判断すると(S215:Yes)記憶部86に記憶された試験運転情報を管理装置100に送信することができ、管理装置100は、受信した試験運転情報を記憶部106に記憶する(S300)。この外部端末80から管理装置100への試験運転情報の送信は、任意のタイミングでなされればよい。外部端末80におけるS215の判定は、操作者が外部端末80に対して所定の操作をしたときに、書き込みのタイミングである(S215:Yes)と判定するものとしてもよい。例えば、操作者が外部端末80に設けられた不図示の送信ボタンを操作したときに、外部端末80は試験運転情報の書き込みのタイミングであると判定する。本変形例では、外部端末80が、S140にて給水装置10内の全てのポンプの試験運転が終了した後に、操作者の操作にて書き込みのタイミング(S215:Yes)とされ、試験運転情報を管理装置100に送信する。こうした構成により、給水装置10が機械室またはポンプ室などの電気的なノイズの多い環境に設置されているような場合であっても、S140にて試験運転中の対象ポンプを停止した後に、外部端末80の操作者は給水装置10から離れた通信環境の良い場所に移動して、S204とS214にて記憶したポンプ30Aとポンプ30Bの試験運転情報をまとめて管理装置100へと送信できる。管理装置100は、受信したポンプ30Aとポンプ30Bの試験運転情報を、給水装置10(10X、10Y)を識別するための情報とともに、記憶部106に記憶するとよい。これにより、管理装置100は、給水装置10毎に、給水装置10の情報を管理することができる。
なお、図10では、ポンプ30Aまたはポンプ30Bの試験運転中に外部端末80にて試験運転情報を取得したが、これに限らず、外部端末80は、ポンプ30Aとポンプ30Bの試験運転が終了した後に、制御用メモリ66に記憶された試験運転情報を取得して管理装置100に送信してもよい。
更に、給水装置10の制御用メモリ66と同様に、外部端末80の記憶部86ならびに管理装置100の記憶部106は、ポンプ30Aとポンプ30Bの試験運転情報の履歴を記憶してもよい。本変形例では、ポンプ30Aの試験運転の後にポンプ30Bの試験運転を行ったが、これに限らず、同じポンプに対して複数回の試験運転を行ってもよい。その場合は、試験運転毎に必要に応じて試験運転中のポンプに関する情報を外部端末80にて取得し、全ての試験運転が終了した後に、管理装置10へまとめて送信するとよい。また、外部端末80は、取得した給水装置10の試験運転中のポンプに関する情報のうち一部のみを管理装置100へ送信してもよい。
変形例2のポンプシステムにて示したように、給水装置10(10X,10Y)が、ポンプ30A、30Bを試験運転するステップ(S120)と、外部端末80が試験運転中のポンプに関する情報を給水装置10から取得するステップ(S202、S212)と、
外部端末80がポンプ30Aおよび/またはポンプ30Bの試験運転が終了(S202、S212)した後に外部端末80にて取得した情報の少なくとも一部を管理装置100に送信するステップ(S215:Yes)と、を含む試験運転方法によって、ポンプ30Aおよび/またはポンプ30Bの試験運転が終了した後に、外部端末80または管理装置100の操作者は、記憶部86もしくは記憶部106に記憶された情報を取得して作業報告書の作成等に利用することができるので、給水装置10におけるポンプ30A,30Bの試験運転を容易に行うことができる。更には、試験運転を行う給水装置10内の全てのポンプの試験運転が終了した後に、外部端末80にて受信した複数回分の試験運転時のポンプに関する情報を、まとめて管理装置100に送ることができるとともに、管理装置100によって、給水装置10(10X,10Y)の試験運転時のポンプに関する情報を管理することができる。
以上、本発明の実施の形態について説明してきたが、上記した発明の実施の形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定するものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得るとともに、本発明にはその均等物が含まれることはもちろんである。また、上述した課題の少なくとも一部を解決できる範囲、または、効果の少なくとも一部を奏する範囲において、特許請求の範囲および明細書に記載された各構成要素の任意の組み合わせ、または、省略が可能である。