以下、本発明の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。
図1〜図3は本発明の実施形態に係るポンプ装置の一例としての給水装置を示す模式図であり、図1は平面図、図2は正面図、図3は左側面図である。図示するように給水装置10では、ベース20の上に、2台のポンプ30A,30Bと、これらポンプ30A,30Bの中間に配置される圧力タンク50とが載置されている。また、給水装置10は、ポンプ30A,30Bの吐出側に接続される吐出配管40と、圧力タンク50の上部に設置される制御盤60とを備えている。以下各構成部品について説明する。本実施形態では、給水装置10は、ポンプ30A,30Bとポンプ2台の構成だが、ポンプ台数は1台もしくは3台以上の複数台の構成としてもよい。
この給水装置10は、主にオフィスビルや集合住宅などの建物への給水に使用される。給水装置10の吸込口35A,35Bは、その上流に不図示の水道本管または受水槽といった水供給源が接続されている。給水装置10の吐出し口である吐出集合管43は、その下流に、不図示の配水管が接続されて建物の内部に配置された給水器具(例えば蛇口)に接続されている。給水装置10は、水供給源の水を加圧し建物の各給水器具に供給するためのポンプ装置である。
まず、給水装置10の建物への給水方式としては、水道本管の水を一旦受水槽に貯留し、受水槽の水を給水対象へポンプにて加圧する受水槽方式、及び、水道本管の本管圧を利用しポンプにて増圧することにより給水対象へ水を供給する直結給水方式などがある。また、給水対象への給水方式としては、ポンプにて増圧した水を直接圧送する直送式、または、ポンプにて増圧した水を屋上のタンクに一旦貯留し、自然流下にて給水を行う高置水槽方式等がある。
ベース20は、ポンプ30A,30B等の各機器をその上に取り付けて基礎に固定するための台であって、略矩形の平板状で、長手方向の両側辺は下方向に折り曲げられた後に外方向に折り曲げられることで、L字状の固定辺23,23を構成している。
給水装置10は、ポンプ30A,30Bを駆動するモータ33A,33Bを備えている。ポンプ30A,30Bは、吸込口35A,35Bが設けられ、またポンプ30A,30Bの上面には吐出し口37A,37Bが設けられている。なお、直結給水方式の場合には、吸込口35A,35Bが水道本管から分岐した供給管に逆流防止装置(不図示)を介して
接続され、供給管には、水道本管の圧力を検出する図示しない圧力センサが設けられる。以下、供給管に設けられる水道本管の圧力を計測する圧力センサにより検出される圧力値を「流入圧力」という。
吐出配管40は略T字状の配管であり、吐出し流量が過少水量Qmin未満に至ったことを検知する流量検知器の一種であるフロースイッチ49A,49B、及びチェッキ弁(逆止弁)47A,47Bを介して、両ポンプ30A,30Bの吐出し口37A,37Bに、接続されている。吐出配管40の中央には吐出集合管43が設けられている。これによって、両ポンプ30A,30Bは、並列運転を行うことができる。チェッキ弁47A,47Bによって、ポンプ30A,30Bが停止したときに吐出配管40内の水がポンプ30A,30B側に逆流しない。吐出配管40の中央の下部には、この吐出配管40を圧力タンク50に連結する連結配管45が取り付けられ、連結配管45には吐出配管40から圧力タンク50間の流路を遮断できる仕切弁45Aが設けられている。さらに吐出配管40には吐出配管40内圧力を検出する圧力センサ48が取り付けられている。以下、圧力センサ48により検出される圧力値を「吐出し圧力」という。
圧力タンク50は、樹脂等で形成された圧力タンク本体53を備えている。圧力タンク本体53の内部には、ゴムなど弾力性のある材料により形成されたダイヤフラム(隔壁)51が配置されており、このダイヤフラム51と圧力タンク本体53によって画成された空気室52に加圧空気が予め封入されている。圧力タンク50とチェッキ弁47A,47Bの効果によって、ポンプ30A,30Bが停止した後の吐出配管40内の圧力は、水が使用されない限り一定圧力に保持される。また、圧力タンク50によって、ポンプ30A,30Bの吐出し圧力の脈動を吸収したり、配管内の圧力の急変による衝撃を緩和する。
圧力タンク50は、常に封入圧が適切な範囲内(たとえば、後述する基準封入圧力Ptbの±20%程度)となるよう定期的にメンテナンスされる。具体的には、圧力タンク50の空気室52には不図示の空気封入口が備えられており、この空気封入口より定期的に空気が封入される。圧力タンク50のメンテナンス時には、作業員は仕切弁45Aを閉めて吐出配管40と圧力タンク50との流路を遮断し、圧力タンク50から水を抜いた状態で封入圧力実測値Ptaを測定し、封入圧力が基準封入圧力Ptbとなるように空気を封入する。仕切弁45Aにより吐出配管40と圧力タンク50との流路を遮断できるので、ポンプ30A,30Bを運転しながら圧力タンクのメンテナンスを行うことができる。
なお、以下、ポンプ30A,30Bの吐出側である吐出配管40に圧力タンク50が設けられている実施形態について説明するが、こうした例には限定されない。圧力タンク50は、水を蓄圧できるように水の流路(搬送液の搬送路)に取り付けられていればよく、吐出配管40に設けられた圧力タンク50に代えてもしくは加えて圧力タンク50がポンプの流入側の配管(例えば、供給管)に設けられてもよい。そうすれば、流入圧力の脈動を吸収したり、供給管内の圧力の急変による衝撃を緩和することができる。
制御盤60は、ケース61内に、ポンプの運転制御を行う各種電気回路からなる制御部65並びにモータ33A,33Bの可変速手段であるインバータ(不図示)を内蔵して構成されている。
図4は、実施形態の給水装置10の制御部65の一例を説明するためのブロック構成図である。図示するように、給水装置10の制御部65は、制御用メモリ(記憶部)66と、演算部69と、I/O部70と、運転パネル79と、通信部73と、を備えている。
制御部65の制御用メモリ66としては、ROM、HDD、EEPROM、FeRAM、及び、フラッシュメモリ等の不揮発性メモリ、RAM等の揮発性メモリが使用される。
制御用メモリ66は、給水装置10を制御するための制御プログラムと、装置情報、設定値情報、メンテナンス情報、履歴情報、異常情報、運転情報等の給水装置10に関する各種データを記憶する。なお、これらは、制御用メモリ66が不揮発性記憶領域を有する場合には、その不揮発性記憶領域に記憶されてもよい。
ここで、給水装置10に関する各種データについて説明する。給水装置10の装置情報とは、給水装置10を構成する各機器に関する情報である。装置情報は、ポンプの台数、ポンプ30A,30Bの口径、給水量、全揚程、締切揚程、モータ33A,33Bの出力容量、給水方式、および、給水装置10の機種を示す機種識別情報(例えば機名、型番、シリアル番号など)の少なくとも1つが含まれる。設定値情報は、主に給水装置10の使用環境や給水方式等によって値が変更される情報であって、設定圧力PA、最低圧力PB、始動圧力P0、停止圧力P1の少なくとも1つを含み、更には、各種警報を検出するための閾値や検知時間等の情報を含む。メンテナンス情報は、給水装置10のメンテナンスに関する情報であって、圧力タンク50の封入圧力の基準値(基準封入圧力Ptb)、圧力タンク50の封入圧力の測定値(実測封入圧力Pta)、実測封入圧力Ptaの履歴を含み、更には、メンテナンス作業履歴としての日時、作業内容、交換部品、メンテナンス作業者、後述する閾値Pref、ΔPref等の情報が含まれてもよい。異常情報は給水装置10における異常に関する情報であって、現在検出中の各種警報(インバータトリップ、吐出し圧力異常低下、各種センサー異常等)や異常(流入圧低下や受水槽の満水渇水減水等)を含む。履歴情報は、給水装置の各種履歴に関する情報であって、ポンプ30A、30Bの積算運転時間並びに積算運転回数、給水装置10にける警報履歴、各種操作履歴等を含む。運転情報は、給水装置10における現在の状態を示す情報であって、現在のポンプ30A,30Bのそれぞれの運転または停止状態、ポンプ30A,30Bの回転速度並びに電流値、更には、給水装置10の入力電圧や流入圧力、吐出し圧力、目標圧SV等を含む。なお、メンテナンス情報並びに履歴情報は、給水装置10が有する現在時刻と共に記憶されていることが好ましい。
演算部69としては、CPUが使用される。演算部69は、制御用メモリ66に格納されている制御プログラム及び各種データ、並びにI/O部70から入力される信号に基づいて、給水装置10を構成する各機器を制御するための演算等を行う。また、演算部69は、通信部73並びにI/O部70等における通信制御や運転パネル79における表示や操作の制御を行う。演算部69における演算結果は、制御用メモリ66に記憶されるとともに、I/O部70、通信部73に出力される。
I/O部70としては、ポート等が使用される。I/O部70は、圧力センサ48の入力信号、及び、フロースイッチ49A,49B等の各種センサー類の検出信号等を受け入れて演算部69に送る。また、I/O部70と不図示のインバータとは、RS422,232C,485等の通信手段により互いに接続されるとよい。I/O部70から各種設定値や回転速度の指令値、発停信号(運転・停止信号)などの制御信号がインバータへ送られる。また、インバータから実際の周波数値や電流値等がI/O部70へと送られる。なお、I/O部70とインバータとの間で送受信される制御信号としては、アナログ信号および/またはデジタル信号を用いてもよい。また、給水装置10にて、ポンプ30A,30Bの可変速制御を行わない場合は、インバータがなくてもよい。その場合、モータ33A,33Bの電源の入り切りをI/O部70の接点出力にて行うとよい。
なお、I/O部70の入力ポートには、切り替えスイッチ等が接続され、切り替えスイッチからの入力信号により給水装置10の装置情報や設定値情報を変更可能としてもよい。その場合、I/O部70は、制御用メモリ66に記憶される各種データを変更可能な情報入力部として機能する。
運転パネル79は、制御用メモリ66に記憶される各種データを、演算部69を介して表示ならびに変更することができるGUIである。具体的には、運転パネル79は、装置情報、設定値情報、メンテナンス情報の表示や設定変更、メンテナンス情報、履歴情報の表示、入力、履歴のクリア、異常情報の表示やリセット、運転情報の表示等を行う。運転パネル79は、設定部71と表示部72を備える。なお、制御部65と運転パネル79は別々の基板としてもよい。制御部65と運転パネル79はシリアル通信や信号線等の有線もしくは無線にて接続されるとよい。制御部65と運転パネル79とを別々の基板とした場合は、給水装置10から離れた場所(例えば、管理人室等)に設置し、制御部65とシリアル通信や信号線等で接続された機器内に運転パネル79を構成してもよい。また、運転パネル79はCPUを備え、該CPUにて表示操作の制御並びに制御部65や外部端末80との通信制御を行ってもよい。
運転パネル79の設定部71は、制御部65の情報入力部であって、ユーザーの外部操作により給水装置10における自動給水の運転/停止、警報リセット並びに各種データの設定変更等の各種入力操作を行うために使用される。具体的には、設定部71は不図示の操作ボタンやタッチパネル等を備え、外部操作による入力された情報は、制御用メモリ66に記憶される。例えば、設定部71は、設定圧力PA、最低圧力PB、始動圧力P0、停止圧力P1を設定値情報として設定変更したり、圧力タンク50の実測封入圧力Pta、閾値Pref、ΔPref等をメンテナンス情報として入力したり設定変更することができる。例えば、給水装置10のメンテナンス等を行う作業者は、計測器を用いて圧力タンク50の封入圧力を計測し、設定部71を通じて実測封入圧力Ptaを入力する。入力された実測封入圧力Ptaは、制御用メモリ66に記憶される。
更に、装置情報の一例である締切揚程を設定部71より設定入力する場合を説明する。ユーザーの外部操作により設定部71もしくは通信部73より入力された全揚程は、制御用メモリ66に記憶される。演算部69は、設定された締切揚程に基づいてポンプの性能曲線を選択もしくは演算し、ポンプ30A,30Bの回転速度を制御する制御プログラムを実行する。このように、装置情報や設定値情報を変更することにより、制御部65の汎用性を向上させることができ、複数の装置構成や設置環境の異なる給水装置に対して同一の制御部65並びに制御プログラムを用いることができる。なお、設定部71よりポンプ30A,30Bの口径、及び前記給水装置の機器構成を示す機種識別情報、設定圧力PA、最低圧力PB、始動圧力P0、停止圧力P1の設定変更を行っても同様の効果が得られる。
運転パネル79の表示部72は、7セグメントLED及び表示灯によるユーザーインターフェースとして機能し、制御用メモリ66に格納されている各種データ(例えば、圧力タンク50の封入圧力の基準値(基準封入圧力Ptb)および封入圧力の測定値(実測封入圧力Pta)、実測封入圧力Ptaの履歴等を表示できるように構成されている。また表示部72は、ドットマトリクス方式による液晶表示器などであってもよい。
通信部73は、有線通信または無線通信によって外部端末80と通信可能なように構成されている。具体的には、制御用メモリ66に記憶された給水装置10に関する各種情報を外部端末80へ送信するとともに、制御部65の情報入力部として外部端末80からの設定値情報の変更要求を受信し、演算部69に送る。ここで、通信部73における無線通信としては、例えば近距離無線通信(NFC:Near Field Communication)の技術を利用することができる。また、Bluetooth(登録商標)およびWi−Fiなど、任意の方式の無線通信を利用することができる。ただし、NFCは、制御部65と外部端末80とを近づけるだけで通信を完了させることができる点で有利である。また、有線通信としては、例えば制御部65にUSB(Universal Serial Bus)のような外部接続端子が設けられ、ここに外部端末80が接続されることによって通信がなされてもよいし、R
S422,232C,485等のシリアル通信を用いてもよい。
図3のように制御部65は通信部73と別々の基板としてもよい。その場合は、制御部65と通信部73はシリアル通信や信号線等の有線もしくは無線通信にて接続される。制御部65と通信部73とを別々の基板とした場合は、給水装置10から離れた場所(例えば、管理人室等)に設置し、制御部65とシリアル通信や信号線等で接続された機器内に通信部73を構成してもよい。
外部端末80は、表示操作部80Aを有し、給水装置10に関する各種データを表示並びに変更可能なように構成されている。具体的には、外部端末80は、有線通信または無線通信によって通信部73と通信し、通信部73を介して取得した制御用メモリ66に記憶された各種データを表示操作部80Aに表示するとともに、表示操作部80Aより入力された各種データの変更要求を通信部73へ送信する。表示操作部80Aは、タッチ入力方式または押圧ボタン方式を用いた液晶画面での高機能表示器を採用することができる。この場合、表示部72には簡易な情報を表示し、外部端末80には大きな情報量の情報を表示できるとよい。こうした構成により、外部端末80は、制御用メモリ66に記憶された各種データのうち複数の情報(例えば、基準封入圧力Ptb、実測封入圧力Pta、実測封入圧力Ptaの履歴、設定圧力PA、最低圧力PB、始動圧力P0、停止圧力P1、目標圧SV、現在圧PV、ポンプ30A,30Bの運転・停止、回転速度など)を、表示操作部80Aの同一画面上に表示することができ、給水装置10に不慣れなユーザーも誤解することなく、給水装置10の状態を認識したり、設定入力を行うことができる。
また、給水装置10は、機械室またはポンプ室などの電気的なノイズの多い環境に設置されることがある。こうした場合に備えて、表示部72として、液晶表示やタッチパネルよりも電気的ノイズに強い7セグメントLEDや表示灯、機械的な押圧ボタンなどにて構成された表示器が使用されてもよい。これにより、外部環境から発生される電気的なノイズによって外部端末80の液晶表示やタッチパネル操作に異常が発生した場合でも、表示部72により給水装置10の運転に必要な最低限度の表示および操作を行うことができる。したがって、給水装置10を電気的ノイズの多い環境下にも設置することができる。
さらに、外部端末80として、スマートフォン、携帯電話、パソコン、又は、タブレットなどの汎用端末機器(PDA)を採用した場合には、これらのPDAに、外部端末80として作用するための専用のアプリケーションソフトウエアをインストールさせてもよい。この場合には、専用のアプリケーションソフトウエアをユーザーのレベル又は目的に沿って複数用意してもよい。
なお、上述した運転パネル79の機能は、外部端末80にて全て実施可能としてもよい。給水装置10が操作しにくい場所(例えば、運転パネル79が操作者の足元あたり)に設置されていても給水装置10の状態確認や設定値情報の変更等の操作が容易となる。
ここで、上述した設定値情報には、外部端末80による設定値情報の変更を制限する変更制限情報が含まれてもよい。変更制限情報によって設定値情報の変更が禁止されているときには、外部端末80から設定値情報を変更することができない。この場合には、設定部71を通じて変更制限情報を変更することで、外部端末80による設定値情報の変更(設定入力)が許容される。これにより、例えば、メンテナンス作業中に、第三者が外部端末80により設定値情報を変更することを防止することができる。また、給水装置10は、マンションやビルの道路に面した外壁面に設置されることもあり、第三者が外部端末80を用いて不正なアクセスすることが懸念される。これら不正アクセスが確認された場合に、制御部65は、変更制限情報を変更することによって、外部端末80による設定値情報の変更を禁止するとよい。そうすれば、外部端末80にて設定入力ができなくなり、第三者における不正アクセス等を防止することができる。更に、制御部65は、変更制限情報にて外部端末80による通信を禁止してもよい。そうすれば、外部端末80にて給水装置10の各種情報を閲覧することもできなくなるため、不正アクセスへのセキュリティがより向上することとなる。なお、変更制限情報は、設定値情報の内容ごとに設定できるものとしてもよい。
制御部65による給水装置10の給水制御の一例について説明する。ポンプ30A,30Bが停止している状態で吐出し圧力が所定の始動圧力P0にまで低下すると、制御部65はポンプ30A,30Bの少なくとも一方を始動させる。具体的には、制御部65はポンプ30A,30Bの駆動を開始するようにモータ33A,33B(インバータを備える場合にはインバータ)に指令を出す。ポンプ30A,30Bの運転中は、設定された圧力(設定圧力PA)により推定末端圧力一定制御または目標圧力一定制御などの制御が行われる。具体的には推定末端圧力一定制御の場合は、水供給先の末端の圧力が最低圧力PBにて一定となるように、ポンプ30A,30Bの回転数と目標圧力制御カーブとを用いてポンプ30A,30Bの吐出し圧力に対する目標圧SVを設定し、目標圧力一定制御の場合は、ポンプ30A,30Bの吐出し側の圧力が設定圧力PAとなるように、設定圧力PAを目標圧SVと設定する。また、吐出し圧力を現在圧PVとして、目標圧SVと現在圧PVの偏差にてPID演算を行いポンプ30A,30Bの指令回転速度が設定される。なお、推定末端圧一定制御において、設定圧力PAは最大流量時の圧力値であり、最低圧力PBは、末端の給水栓における流量ゼロ時の圧力値であり、直結給水にて推定末端圧力一定制御を行う場合は、流入圧力に基づいて目標圧力制御カーブを補正してもよい。具体的には目標圧力制御カーブを流入圧力だけ加算し、目標圧SVを算出する。また、制御部65は、本実施形態のようにポンプが複数台ある場合は、同時に起動可能なポンプ台数(ポンプ並列運転台数)にて水量に応じたポンプの台数制御も行われる。なお、ポンプ並列運転台数は設定値情報として制御用メモリ66に記憶されるとよい。
ポンプ30A,30Bの運転中に建物での水の使用が少なくなると、フロースイッチ49A,49Bは、ポンプ30A,30Bの吐出し流量が過少水量Qmin未満に至ったことを検出し、その検出信号をI/O部70を介して制御部65に送る。制御部65は、この検出信号を受けると、所定時間で吐出し圧力が停止圧力P1に達するようにポンプ30A、30Bの回転数を制御する蓄圧運転を行う。そして、吐出し圧力が所定の停止圧力P1に達すると、圧力タンク50に蓄圧したと判断して蓄圧運転を終了し、ポンプ30A,30Bを停止(小水量停止)させる。ポンプ30A,30Bが小水量停止した後に、再び建物内で水が使用されると吐出し圧力が始動圧力P0以下まで低下しポンプ30A,30Bが始動する小停再始動を行う。小停再始動のとき、ポンプ30A,30Bが給水可能な回転速度まで上昇するまでの間は、圧力タンク50に貯留された水で給水される。なお、本実施形態のようにポンプが複数台ある場合には、始動するポンプ30A,30Bをローテーションさせ、ポンプ30A,30B内に水が滞留するのを防ぐことが好ましい。また、小水量を検知する方法としては、フロースイッチ49A,49Bを用いずに、モータ33A,33Bの電流値による低負荷や締切揚程等その他の手段を用いてもよい。
上述したように、給水装置10は、水の使用量が少ないときにポンプ30A,30Bの運転を停止させる小水量停止機能を有している。上述した蓄圧運転において停止圧力P1まで蓄圧することで、吐出配管40を流れる水は連結配管45を通って圧力タンク50内に流れ込み、圧力タンク50内には所定量の水が貯留される。ここで、圧力タンク50の封入圧力である空気室52の圧が著しく低い状態にて、蓄圧運転を行うと、小停再始動時にタンクからの給水が遅れてしまい、給水が間に合わなくなる虞がある。また、圧力タンク内に貯留される水の量が多くなり、ダイヤフラム51が圧力タンク本体53の内壁に当たって破損する虞がある。また、空気室52の圧が過度に高い状態で蓄圧運転を行うと、
圧力タンク内に貯留される水の量が少ないため、小停再起動時の給水が間に合わなくなったり空気室52内の空気を過大圧縮するためダイヤフラム51の寿命が短くなる。そのため、圧力タンク50の封入圧力は、最適な圧力を基準封入圧力Ptbにて管理されることが望ましい。
次に、圧力タンク50の封入圧力を管理するための制御部65による制御について説明する。上記したように、圧力タンク50は、工場出荷時には、空気室52に、工場出荷時の停止圧力P1並びに始動圧力P0にて蓄圧運転並びに小停再始動時を行うのに適切な基準封入圧力Ptbで空気が予め封入されている。ここで、給水装置10の設置環境(例えば、給水対象の建物の高さ、要求される給水量、末端の水栓までの距離)によって停止圧力P1並びに始動圧力P0が変更されたり、また、圧力タンク50は経年劣化によって空気室52より空気が抜けてしまうことがあり、適正な封入圧力が維持されないことがある。封入圧力が適正でないと、吐出し圧力が不安定となったり、小水量停止時に圧力タンク50に十分な量の水を溜めることができなくなったりしてしまう。
図5は、制御部65により実行される基準封入圧力Ptb設定処理の一例を示すフローチャートである。この基準封入圧力Ptb設定処理は、給水装置10の主電源が投入(給水装置10が起動)されたとき、または、給水装置10の各種データのうち基準封入圧力Ptbに関連する情報が変更されたときに制御部65により実行されるとよい。また、基準封入圧力Ptb設定処理は、表示部72に基準封入圧力Ptbを表示するときに実行されるものとしてもよい。基準封入圧力Ptb設定処理が実行されると、制御部65は、まず制御用メモリ66に記憶された装置情報および設定値情報を取得する(S110)。そして、制御部65は、取得した装置情報および設定値情報に基づいて圧力タンク50の基準封入圧力Ptbを設定して(S120)、基準封入圧力設定処理を終了する。
基準封入圧力Ptbの設定は、一例として、装置情報と設定値情報のうちの何れかの情報と基準封入圧力Ptbとの関係を予め定めたマップまたはテーブル等を制御用メモリ66に記憶しておき、このマップまたはテーブル等と、制御用メモリ66に記憶されている装置情報と設定値情報とに基づいて行うものとすることができる。図6は、機名とポンプ30A,30Bの口径とモータ33A,33Bの出力容量と停止圧力P1と基準封入圧力Ptbとの関係を示すテーブルの一例を示す図である。図6に示すテーブルの例では、機名、ポンプ30A,30Bの口径、モータ33A,33Bの出力、及び停止圧力P1に対して、適正な封入圧力の基準値である基準封入圧力Ptbが定められている。なお、停止圧力P1と始動圧力P0が別々に設定される場合は、停止圧力P1と始動圧力P0にて基準封入圧力Ptbを設定してもよい。一例として、ポンプ30A,30Bの口径が40mmであるとともにモータ33A,33Bの出力容量が1.5kW、停止圧力P1が0.18Mpaであるときに、圧力タンク50の封入圧力の基準封入圧力Ptbが0.15Mpaであることが示されている。なお、本実施形態では、給水装置10の機名が装置の構成情報(例えば、ポンプ30A,30Bの口径、型式、運転特性である締切揚程等、並びに圧力タンク50の型式等)を含んでいるため、制御部65は、設定部71を通じて入力された機名に基づいて圧力タンク50の封入圧力の基準封入圧力Ptbを設定するものとしてもよい。
ここで、図6Aを用いて、蓄圧運転で小停再始動時の給水が確保できる圧力である基準封入圧力Ptbについて説明する。図6Aは図1に示す給水装置におけるポンプの運転特性曲線を示すグラフである。図6Aにおいて、横軸が水量、縦軸が圧力(ヘッドまたは揚程)を表している。
図6Aにおいて、曲線N1、Nminは、各回転速度におけるポンプ30A,30Bの運転特性を示している。ここで、抵抗曲線Rは、圧力タンク50の封入圧が基準封入圧力
Ptbにて、ポンプ30A、30Bが蓄圧運転を行う際の圧力タンク50内に流れ込む水量に応じた管路損失であり、水量が0の点を原点として水量Qの略二乗に比例する曲線となっている。
水量が設定量Qminよりも少なくなってフロースイッチ49A,49Bが動作すると、ポンプ30A,30Bの蓄圧運転が開始される。蓄圧運転においては、制御部65は、目標圧SVを最低圧力PBであるPminから停止圧力P1まで所定の時間をかけて徐々に上昇させる。制御部65は、目標値SVと現在圧PVのPID演算を行い、その結果、抵抗曲線Rに沿って、運転中のポンプ30Aまたは30Bの回転速度がNminからN1まで上がる。運転中のポンプ30A,または30Bの吐出し圧力は停止圧力P1に達すると、蓄圧運転が終了して、運転中のポンプ30Aまたは30Bが小水量停止される。ここで、圧力タンク50の封入圧が基準封入圧力Ptbであるときには蓄圧運転が終了する運転点は点A1であり、この点A1における圧力は停止圧力P1、水量はQ1となっている。蓄圧運転を行う時間とこのQ1ならびにQminよって蓄圧運転時に圧力タンク50に貯留される水量が求められる。
抵抗曲線RE1は、圧力タンク50の封入圧が基準封入圧力Ptbより高い場合の管路損失を示す曲線である。この場合には吐出し圧力が停止圧力P1に達するように蓄圧運転が行われると、蓄圧運転が終了する運転点が点AE1となり、このときの水量QE1は水量Q1より少なくなる。抵抗曲線RE2は、圧力タンク50の封入圧が基準封入圧力Ptbより低い場合の管路損失を示す曲線である。この場合には吐出し圧力が停止圧力P1に達するように蓄圧運転が行われると、蓄圧運転が終了する運転点が点AE2となり、このときの水量QE2はQ1より多くなる。つまり、蓄圧運転時に圧力タンク50に貯留される水量は、圧力タンク50の容積とポンプ30A,30Bの運転特性曲線、蓄圧運転を行う時間より求めることができる。
ここで、蓄圧運転時は、過少水量なので給水先における水の使用はゼロと考え、連結配管45を通って圧力タンク50内に流れ込む水の管路抵抗のみを考慮すればよく、連結配管45より下流の給水先までの管路抵抗は無視することができる。よって、蓄圧運転時のポンプ30A,30Bの運転特性曲線は、図6に示す機名、ポンプ30A,30Bの口径、モータ33A,33Bの出力及び停止圧力P1の何れかにて設定することができる。言い換えれば、基準封入圧力Ptbは、図6に示す機名、ポンプ30A,30Bの口径、モータ33A,33Bの出力の出力容量、及び停止圧力P1もしくは始動圧力P0の何れかにて設定することができる。
また、圧力タンク50は、蓄圧運転時の最高の圧力である停止圧力P1と圧力タンク50の封入圧力との比が所定の値(最大圧縮比)を超えないように使用することで、過度に加圧された状態を防止してダイヤフラム51が早期に劣化するのを防止することができる。なお、最大圧縮比は、圧力タンク50容積や構造によって決まる。制御部65は、停止圧力P1および始動圧力P0に基づいて基準封入圧力Ptbを設定できる。このときには、設定値情報である設定圧力PAに基づいて基準封入圧力Ptbを算出してもよい。こうすれば、給水装置10の設置環境(例えば、給水先の建物の高さや給水量、末端水栓までの管路抵抗など)に応じて、より適正な基準封入圧力Ptbを設定することができる。
一例として、設定圧力PAに基づく基準封入圧力Ptbの算出について説明する。制御部65は、まず、設定圧力PAに所定の係数D1を乗じて最低圧力PBを設定する。制御部65が推定末端圧一定制御を行うのであれば、係数D1は0.8、0.85、又は0.9等の1以下の係数である。制御部65が吐出圧力一定制御を行うのであれば係数D1は1となる。続いて、制御部65は、設定圧力PAと最低圧力PBとの差が所定の閾値(たとえば3m)より大きいときには最低圧力PBを始動圧力P0に設定し、始動圧力P0に
所定の閾値(たとえば3m)を加えた圧力を停止圧力P1とする。一方、制御部65は、設定圧力PAと最低圧力PBとの差が所定の閾値(たとえば3m)以下のときには設定圧力PAから所定の閾値(例えば3m)を減じた圧力を始動圧力P0に設定する。次に、制御部65は、始動圧力P0に閾値(例えば3m)を加えた圧力を停止圧力P1に設定する。なお、設定圧力PAと最低圧力PBとの差が所定の閾値以下のときには、設定圧力PAと停止圧力P1とは同じ値としてもよい。そして、停止圧力P1と基準封入圧力Ptbとの比が最大圧縮比(例えば4)以下ならば、制御部65は、始動圧力P0に所定の係数(0.8、0.85、又は0.9等)を乗じることにより、基準封入圧力Ptbを算出する。このように、始動圧力P0と停止圧力P1の差が所定の閾値によって決まることで、蓄圧運転時に圧力タンク50には適切な圧力で加圧するとともに必要量の貯水量を確保できる。また、制御部65は、設定部71等の情報入力部を通じて入力された設定圧力PAに連動して最低圧力PB、停止圧力P1、始動圧力P0、及び基準封入圧力Ptbを自動的に変更することができる。これにより、設定変更の際の利便性が良くなる。
なお、封入圧力の基準封入圧力Ptbは、設定圧力PAに代えて、または加えて、他の情報に基づいて設定されてもよい。一例として、基準封入圧力Ptbは、設定部71等の情報入力部を通じて直接設定された最低圧力PB、停止圧力P1、始動圧力P0、全揚程、及び、締切揚程の少なくとも一部に基づいて設定されてもよい。また、封入圧力の基準封入圧力Ptbが制御用メモリ66に予め記憶されるものとしたり、設定部71や通信部73等の情報入力部を通じて封入圧力の基準封入圧力Ptbを設定できるものとし、制御部65は設定された基準封入圧力Ptbを用いるものとしてもよい。
具体的には、設定部71等の情報入力部を通じて設定された始動圧力P0に所定の係数(0.8、0.85、又は0.9等)を乗じることにより、基準封入圧力Ptbを算出してもよい。または、設定部71等の情報入力部を通じて直接設定された停止圧力P1より所定の値を減算する等して始動圧力P0を求め、この始動圧力P0に所定の係数(0.8、0.85、又は0.9等)を乗じることにより、基準封入圧力Ptbを算出してもよい。設定部71等の情報入力部を通じて直接設定された全揚程及び締切揚程に所定の係数(1以下)を乗ずる、もしくは所定の値を減ずる等して停止圧力P1もしくは始動圧力P0を求め、基準封入圧力Ptbを算出してもよい。
このように本実施形態の給水装置10は、給水装置10の各種データを記憶する記憶部である制御メモリ66と給水装置10の各種データを表示する表示部72を有し、給水装置10の各種データには圧力タンク50の封入圧力の基準封入圧力Ptbを含み、表示部72で基準封入圧力Ptbを表示できる。このため、作業者が圧力タンク50の封入圧力を確認したり調整するときに、表示部72を通じて基準封入圧力Ptbを確認することができる。したがって、紙媒体の給水装置10の仕様書または作業指示書等を用いなくても圧力タンク50のメンテナンスを行うことができ、作業性を向上できる。
図7は、制御部65により実行される封入圧力管理処理の一例を示すフローチャートである。この封入圧力管理処理は、設定部71を通じて圧力タンク50の封入圧力の計測値である実測封入圧力Ptaが入力されたときに、制御部65によって実行されるとよい。封入圧力管理処理が実行されると、制御部65は、まず、入力された実測封入圧力Ptaを制御用メモリ66に記憶する(S140)。このときには、制御部65は、図示しない計時部によって計時される現在時刻とともに実測封入圧力Ptaを記憶することが好ましい。また、記憶された実測封入圧力Ptaは、その履歴と共に作業者の操作によって表示部72で表示できることが好ましい。図8は、制御用メモリ66に記憶される実測封入圧力Ptaの一例を示す図である。図8では、圧力タンク50の封入圧力が半年ごとに計測され、設定部71を通じて制御用メモリ66に記憶されている例が示されている。また、図9は、制御用メモリ66に記憶される実測封入圧力Ptaの一例を示すグラフである。
表示部72が液晶表示板など高性能である場合には、実測封入圧力Ptaの表示として図9に示すようなグラフなどを用いてもよい。こうした制御により、制御用メモリ66に実測封入圧力Ptaが保持され、作業者は紙媒体の報告書などを使用しなくても実測封入圧力Ptaを確認することができる。また、時刻とともに実測封入圧力Ptaを記憶することで実測封入圧力Ptaの履歴を確認できる。
続いて、制御部65は、入力された実測封入圧力Ptaを閾値Prefと比較する(S150)。また、実測封入圧力Ptaが閾値Prefよりも大きいときには(S150:Yes)、封入圧力の減少量ΔPtaを計算して(S160)、計算した減少量ΔPtaを閾値ΔPrefと比較する(S170)。このS150〜S170の処理は、圧力タンク50に異常が生じているか否かを判定する処理である。ここで、閾値Pref,ΔPrefは、ダイヤフラム51が損傷しているような圧力タンク50の異常を判定するための閾値であり、基準封入圧力Ptb、設定圧力PA、停止圧力P1、始動圧力P0、締切揚程、および大気圧などの給水装置10の各種データの少なくとも一部に基づいて予め定められた値を用いることができる。なお、メンテナンスによって圧力タンク50の封入圧を調整したか否かに基づいて閾値Prefの値が変更されてもよい。また、封入圧力の減少量ΔPtaは、今回に入力された実測封入圧力Pta(図9における「Pta1」)から前回に入力された実測封入圧力Pta(図9における「Pta2」)との差を計算することにより算出することができる。さらに、実測封入圧力Ptaが実測時の時刻情報とともに記憶部78に記憶されている場合には、封入圧力の減少量ΔPtaは、所定の基準時間当たりの減少量として算出されてもよい。また、これに代えて、前回に実測したときからの経過時間ΔTに基づいて閾値ΔPrefを補正するものとしてもよい。
制御部65は、実測封入圧力Ptaが閾値Pref以下であったり(S150:No)、封入圧力の減少量ΔPtaが閾値ΔPref以上であるときには(S170:No)、圧力タンク50を交換する等のメンテナンスを行うべきと判断する。このため、制御部65は、圧力タンク50を交換するように表示部72で表示して(S200)、封入圧力管理処理を終了する。制御部65は、このときには表示部72への表示に代えてまたは加えてブザー音などを鳴らしてもよい。こうした制御により、作業者は圧力タンク50の交換等のメンテナンスを行うべきことを認識することができる。なお、制御部65による圧力タンク50の異常判定は、実測封入圧力Ptaおよび減少量ΔPtaに代えて、または加えて、前回に圧力タンク50が交換されてからの経過時間など他の情報に基づいて行われてもよい。
制御部65は、実測封入圧力Ptaが閾値Prefより大きく(S150:Yes)、封入圧力の減少量ΔPtaが閾値ΔPrefより小さいときには(S170:Yes)、圧力タンク50に異常は生じていないと判断する。続いて制御部65は、実測封入圧力Ptaに基づいて、圧力タンク50のメンテナンス時期Tmを算出し(S180)、算出したメンテナンス時期Tmを表示部72で表示して(S190)、封入圧力管理処理を終了する。図8および図9に示すように、一般に圧力タンク50の封入圧力は、時間の経過とともに減少する。また、本実施形態では、圧力タンク50の封入圧力がメンテナンス値Pm以下に至ると、空気室52に空気を封入するなど圧力タンク50をメンテナンスすべきものとしている。ここで、メンテナンス値Pmは、圧力タンク50の規格および基準封入圧力Ptb等に基づいて予め定めた値を用いることができる。そして、本実施形態の制御部65は、実測封入圧力Ptaの履歴に基づいて、圧力タンク50の封入圧力がメンテナンス値Pm以下に至ると推定される時期をメンテナンス時期Tmとして算出する。一例として、制御部65は、前回に実測したときからの経過時間ΔTと減少量ΔPtaにてメンテナンス時期Tmとして算出する。具体的には、今回計測した日時からΔT経過後に、今回計測された実測封入圧力Ptaから減少量ΔPtaで減少すると仮定して、メンテナンス値Pm以下に至る時期をメンテナンス時期Tmとして算出する。ただし、こうした例に
限定されず、制御部65は、実測封入圧力Ptaの履歴に基づいてn次関数または指数関数などの近似関数を算出し、近似関数において封入圧力がメンテナンス値Pm以下に至る時期をメンテナンス時期Tmとして算出するものとしてもよい。このようにメンテナンス時期Tmが算出されて表示部72で表示されることにより、作業者が圧力タンク50をメンテナンスする時期を認識することができる。なお、メンテナンス時期Tmは、封入圧力管理処理が実行されたときに限らず、ユーザーの操作によって表示部72で表示されてもよい。
なお、図8および図9に示す例などでは、圧力タンク50の封入圧力が測定されるときに封入圧力の調整がなされていないものとしているが、こうした例には限定されず、圧力タンク50の封入圧力が調整されたときには設定部71を通じて調整した封入圧力が入力されてもよい。この場合には、封入圧力が調整された後の測定値のみを用いてメンテナンス時期Tmが算出されるものとしてもよい。
上記した実施形態では、実測封入圧力Ptaが設定部71を通じて給水装置10に入力されるとともに、圧力タンク50の基準封入圧力Ptbおよびメンテナンス時期Tmが表示部72で表示されるものとした。しかしながら、これに代えて、または加えて、実測封入圧力Ptaが外部端末80から通信部73を通じて給水装置10に入力されてもよい。このときには、制御部65は、外部端末80が有する時刻情報とともに実測封入圧力Ptaを制御用メモリ66に記憶するものとしてもよい。また、圧力タンクの基準封入圧力Ptbおよびメンテナンス時期Tmが通信部73を通じて外部端末80に送信されて、外部端末80において基準封入圧力Ptbおよびメンテナンス時期Tmが表示されるものとしてもよい。また、圧力タンク50の実測封入圧力Ptaの履歴が通信部73を通じて外部端末80に送信されて表示されてもよく、この場合には図9に示すようなグラフなどで実測封入圧力Ptaの履歴が表示されてもよい。
上述した封入圧力管理処理に加えて、例えば、S150の前やS190の後等に実測封入圧力Ptaと基準封入圧力Ptbを比較してもよい。この際、実測封入圧力Ptaが基準封入圧力Ptbよりも所定の値以上大きければ、制御部65は、圧力タンク50が過度に加圧された状態である旨を表示部72に出力してもよい。また、図5に示したように装置情報もしくは設定値情報の何れかが変更となり、制御部65によって基準封入圧力Ptbの設定が変更された場合にも封入圧力管理処理が行われるとよい。その際には、制御部65は、前回の実測封入圧力Ptaを実測封入圧力Ptaとして封入圧力管理処理を行ってもよい。
(変形例)
図10は、変形例の制御部および外部表示器である外部端末80を示す図である。この変形例では、通信部73が、制御部側アンテナ部76、集積回路77、及び、記憶部78を備えている。記憶部78は、通信用の揮発性メモリ(不図示)並びに不揮発性メモリ(不図示)を含んでいる。集積回路77は、制御部側アンテナ部76、記憶部78に電気的に接続されている。なお、図10に示す制御部65Aは表示部72を備えていないが、表示部72を備えてもよい。また、変形例の制御部65Aは、ポンプ30A,30B等の給水装置10の他の構成と一体に設けられていてもよいし、給水装置10のデータを中継するための装置として給水装置10の他の構成から離れて設けられてもよい。
変形例の外部端末80は、電波を送受信する表示器側アンテナ部81と、表示部82と、バッテリー83と、データリーダー84と、を備えている。この外部端末80では、表示器側アンテナ部81で受信したデータがデータリーダー84で読み取られる。そして、データリーダー84で読み取られたデータ(例えば、圧力タンク50の基準封入圧力Ptb、実測封入圧力Ptaの履歴、メンテナンス時期Tm、経過時間ΔT、減少量ΔPta
およびメンテナンス値Pmなどを含む圧力タンク50の封入圧力に関する情報やその他の各種データ)が表示部82で表示される。また、外部端末80より給水装置10の各種設定値を変更したり圧力タンク50の実測封入圧力Ptaを入力したりすることも可能とする。バッテリー83は、表示器側アンテナ部81、データリーダー84、および表示部82に電力を供給する。
外部端末80として、例えばスマートフォン、携帯電話、パソコン、タブレット等の汎用端末機器を用いてもよく、遠隔監視器などの専用の端末機器を用いてもよい。特に、スマートフォンなどのPDAを外部端末として使用すれば、専用の表示器を制作するコストが削減できるので、給水装置のコストを下げることができる。また、複数のユーザーが個々の汎用端末機器に給水装置10の状態を表示させたり、設定を変更したりすることができるので、ユーザーのレベル又は目的に沿った操作を提供することが可能である。たとえば、マンションまたはビルの管理人のような給水装置に関する専門知識のないユーザーに対して、ポンプ30A,30Bの制御に関する情報などを分かり易く知らせることができる給水装置を安価に提供することができる。
外部端末80は、近距離無線通信(NFC:Near Field Communication)の技術によって制御部65Aと接続される。より具体的には、外部端末80を制御部65Aに近づけた状態で、表示器側アンテナ部81が電波を発生すると、その電波を制御部側アンテナ部76が受け取り、制御部側アンテナ部76は電波を電力に変換する。この電力は集積回路77および記憶部78に供給されてこれら集積回路77および記憶部78を駆動する。外部端末80が記憶部78のデータを読取る場合、集積回路77は、電波に含まれる通信データに基づいて、記憶部78に記憶されているデータを読み取り、制御部側アンテナ部76にデータを送る。制御部側アンテナ部76は、データとともに電波を表示器側アンテナ部81に送信する。データリーダー84は、表示器側アンテナ部81が受信したデータを読み取り、そのデータを表示部82に表示させる。また、外部端末80が記憶部78のデータを変更する場合、集積回路77は、電波に含まれる通信データに基づいて、記憶部78のデータを変更し、制御部側アンテナ部76にデータ変更が実行されたことを意味するデータを送る。制御部側アンテナ部76は、データとともに電波を表示器側アンテナ部81に送信する。データリーダー84は、表示器側アンテナ部81が受信したデータを読み取り、データ変更が実行されたことを表示部82に表示させる。
外部端末80は、表示を消去するためのクリアボタン86と、データをリセットするためのリセットボタン(不図示)を備えていてもよい。ユーザーがクリアボタン86を押すと、表示部82の表示が消去される。また、リセットボタンを押すと、リセット信号が制御部65Aに送信され、リセット信号を受信した制御部65Aは、メンテナンス情報などのデータをリセットする。本実施形態のクリアボタン86は、表示部82の画面上に現れる仮想的なボタンであるが、クリアボタン86は表示部82の外に設けられた機械的なボタンであってもよい。なお、実施形態および変形例の制御部65,65Aにクリアボタン、リセットボタンを設けてもよい。
変形例では、制御部65Aの記憶部78に記憶されているデータは、無線通信により制御部65Aから外部端末80に送られる。変形例によれば、給水装置10の電源が入っていない場合でも、制御部側アンテナ部76は外部端末80から発せられる電波から電力を発生し、集積回路77および記憶部78を駆動することができる。したがって、給水装置10のメンテンナンス中などにおいて制御部65に電力が供給されていないときでも、外部端末80は、制御部65の記憶部78からデータを取得して表示したり、記憶部78に記憶されているデータを変更することができる。なお、このときには、制御部65Aは、外部端末80から受信した時刻情報に基づいて計時部74によって計数される現在時刻を修正してもよい。
NFCは、数cmの近距離にて相互通信する技術である。変形例の制御部65Aを給水装置10の他の構成と一体に設けられている場合、外部端末80にて各種情報を表示または変更するときには、ユーザー及びメンテナンス員は、相互通信可能な距離まで外部端末80を制御部65Aに近づけることになる。このことは、外部端末80を操作するときは、ユーザーおよびメンテナンス員は給水装置10の近くにいることを意味する。このため、例えば消耗品の交換作業中にリセットボタンが押されてポンプが起動するといった誤操作に起因した給水装置10の予期しない動作を防止することに繋がる。また、複数の給水装置10が設置された現場では、表示したい給水装置10の近距離で相互通信が可能となる為、意図しない別の給水装置の状態を表示または設定変更してしまうという誤表示または誤操作を防止することができる。
なお、本実施形態または変形例の給水装置10の通信部73は、公衆回線やネットワーク、専用回線等を介して、保守管理会社または管理人室に設けられた遠隔監視装置(例えば、パソコン、スマートフォン、又は、専用モニター)と通信してもよい。この場合、ポンプの運転情報、設定値情報の変更履歴、給水装置10の異常履歴等が、通信部73から遠隔監視装置に送信される。遠隔監視装置は、受信したデータを表示する表示部を備えてもよい。また、遠隔監視装置は給水装置10から受信したデータを、外部端末80に送信してもよい。また、外部端末80および遠隔監視装置は、給水装置10から受信したデータを外部サーバに送信して記憶させてもよい。また、遠隔監視装置から各種データの書き込みを行ってよいし、外部端末から遠隔監視装置へ各種データを書き込み更に遠隔監視装置より給水装置10へ各種データの書き込みを行ってもよい。このときには、給水装置10は、外部端末80と通信したときと同様に、遠隔監視装置から設定値情報の変更指令を受信したときに、または遠隔監視装置と通信したときに、上記した設定値情報変更処理または通信時制御処理を実行して、遠隔監視装置から時刻情報を受信してもよい。
給水装置10は、記憶部78に記憶した各種履歴情報を制御用メモリ66と共用してもよい。例えば、給水装置10が電源断時に記憶部78に書き込まれた情報は、給水装置10の復電後に制御用メモリ66にコピーされ、通電中に制御用メモリ66の各種履歴情報が変更された場合は、記憶部78にコピーされるとよい。但しこのようなタイミングにコピーするのみに限らず、制御用メモリ66と記憶部78の値が一致すればよい。
以上、本発明の実施の形態について説明してきたが、上記した発明の実施の形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定するものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得るとともに、本発明にはその均等物が含まれることはもちろんである。また、上述した課題の少なくとも一部を解決できる範囲、または、効果の少なくとも一部を奏する範囲において、特許請求の範囲および明細書に記載された各構成要素の任意の組み合わせ、または、省略が可能である。