JP7409907B2 - 単気筒内燃機関又はピストン同期昇降型多気筒内燃機関。 - Google Patents

単気筒内燃機関又はピストン同期昇降型多気筒内燃機関。 Download PDF

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Description

本発明は、単気筒内燃機関又はピストンが同期して昇降する多気筒内燃機関に関するものである。なお、単気筒内燃機関及び多気筒内燃機関とも、4サイクルと2サイクルとを含んでいる。
レシプロ式の内燃機関はピストンの往復動をクランク軸の回転に変換しているが、単気筒内燃機関では、ピストンの動きによってクランク室の圧力が変動する現象がある。4サイクル2気筒内燃機関では、一般に、2つの気筒の行程を360°ずらすことによって各回転ごとにクランク軸にトルクを付与しているが、この場合も、2つの気筒のピストンは同期して昇降するため、クランク室に圧力変動が発生する。
この圧力変動による弊害の一つとして、オイルパンに溜まったオイルの油面の変動があり、その対策として特許文献1には、オイルパンに貯油部を塞ぐバッフルプレートを設けて、このバッフルプレートに、クランク室の内圧が高くなると開く弁板を設けることが開示されている。
他方、機関の構造とは関係なくクランク室にブローバイガスが吹き抜ける問題があり、そこで、従来から、PCV通路(ブローバイガス排出通路)を設けてブローバイガスをクランク室から排出すると共に、クランク室に新気を導入してオイルの劣化防止とブローバイガスの排出促進とを図っている。
ブローバイガスに含まれたオイルミストはオイルセパレータ室で分離しているが、オイルセパレータ室をヘッドカバーに設けることは広く行われており、この場合は、オイルミストが分離されたブローバイガスは、動弁室を巡った換気用新気と一緒にPCVバルブを介して吸気系に還流していることが多い。
特開2005-325737号公報
さて、単気筒内燃機関及びピストン同期昇降型4サイクル2気筒内燃機関においてもブローバイガスの排出と新気の導入は必要であるが、これらのタイプの内燃機関ではクランク室内で圧力変動があることから、圧力変動がPCV通路とクランク室用新気導入通路との両方に作用することになる。このため、圧力上昇時に新気が押し戻されたり、圧力低下時にブローバイガスがクランク室に吸い戻されたりして、ブローバイガスの排出と新気の導入とが不安定になるおそれがあった。
また、クランク室と動弁室とは、例えばタイミングチェーンを覆うフロントカバーとシリンダブロックとの間の空間を介して連通しているため、クランク室の空気が動弁室に行来することによってクランク室の圧力変動が緩和されているが、圧力変動が緩和されるとピストンの摺動抵抗はそのままポンピングロスになって燃費悪化の要因になっていた。
また、特許文献1について検討するに、クランク室の圧力上昇によって弁板が開くが、弁板が開くことによって貯油部の内圧も上昇するため、圧力変動がストレーナに作用して、オイルポンプによるオイルの吸い上げ量がピストンの動きに連動して変動すること(オイルの吐出に脈動が発生すること)も懸念される。
本願発明は、このような現状を改善すべく成されたものである。
本願発明は、単気筒内燃機関又はピストンが同期して昇降する多気筒内燃機関を対象にしており、この内燃機関は、
「シリンダブロックとその下面に固定されたオイルパンとで構成されたクランク室と、シリンダヘッドとその上面に固定されたヘッドカバーとで構成された動弁室と、
前記クランク室に新気導入ポートを介して新気を送る第1新気導入通路と、前記動弁室に新気を送る第2新気導入通路と、前記クランク室に吹き抜けたブローバイガスを前記動弁室に送る機関内蔵式のPCV通路と、前記動弁室からブローバイガスを排出する換気出口とを備えている」
という基本構成になっている。
そして、上記基本構成において、
「前記クランク室は略密閉状態に保持されていると共に、前記オイルパンは貯油部がバッフルプレートによって略密閉状態に保持されて、前記貯油部とPCV通路とは空気が流れにくいオリフィス状の連通穴を介して連通しており、
前記バッフルプレートに、ピストンの下降動によってクランク室内の圧力が高くなると開く一方弁を設けて、前記第1新気導入通路及び第2新気導入通路に、それぞれ前記クランク室又は動弁室が負圧状態になると開く一方弁を設けており、
かつ、前記新気導入ポートと連通穴とは、クランク軸心方向を向いて前後両端に分かれて配置されている
という特徴を備えている。
なお、本願発明において、クランク室及び貯油部は厳密な意味で密閉している必要はない。すなわち、ピストンの下降による圧力上昇によってバッフルプレートの一方弁が開く状態であればよく、動弁室等と多少連通していてもよい。
本願発明では、クランク室用の第1新気導入通路と動弁室用の第2新気導入通路とに一方弁を設けているため、新気が逆流することはなくて、クランク室が正圧になると、ブローバイガスが換気用新気と一緒にPCV通路から排出され、動弁室が正圧になると、ブローバイガスと換気用新気とは一緒に排出される。従って、ブローバイガス及び換気用新気がクランク室や動弁室に滞留したり新気導入通路に逆流したりすることはなくて、ブローバイガス及び換気用新気の排出を確実化できる。
また、バッフルプレートに流下したオイルは、特許文献1と同様に、ピストンが下降した圧力上昇時に貯油部に還流するが、ブローバイガスはオイルと一緒に貯油部に流入してPCV通路から排出されるため、貯油部の圧力変動を無くすか大幅に低減できる。これにより、オイルポンプの吸い上げに変動(脈動)が発生することを防止して、オイルの吐出圧を安定させることができる。
また、クランク室は略密閉されているため、バッフルプレートに設けた一方弁からの空気の排出量を調整することにより、クランク室に圧力変動が残るように設定できるが、ピストンの下降によって発生した正圧によってピストンの上昇をアシストし、ピストンの上昇によって発生した負圧によってピストンの下降をアシストすることができる。これにより、ピストンのポンピングロスを低減して燃費の向上に貢献できる。
さて、PCV通路の下端の連通穴は面積が小さくて空気が流れるに際して抵抗が大きいため、ピストンが下降してクランク室の圧力が高くなっても、ピストンの下降によって発生したクランク室の圧力はその一部しか連通穴からは抜けず、クランク室に発生した圧力の大部分はクランク室に残る。このため、ピストンの上昇時には、クランク室の正圧によってピストン4の上昇がアシストされる。
逆に、ピストンが上昇すると第1一方弁が開いて新気がクランク室に流入するが、第1新気導入通路は小径で流れ抵抗が大きいため、ピストンが上昇しても流入する新気の量は僅かであり、ピストンの上昇によって発生した負圧は、その大部分がクランク室に残っている。従って、ピストンが下降するときに、その下降動が負圧によってアシストされる。従って、ピストンの上下動によって交互に発生する正圧と負圧がピストンの往復動をアシストして、ポンピングロスを低減できる。
実施形態の大まかな縦断側面図である。 (A)は図1のIIA-IIA 視断面図、(B)は(A)のB-B視断面図である。 図2(B)と同じ方向から見た別例図である。
次に、本願発明を車両用内燃機関に適用した実施形態を図面に基づいて説明する。以下では、方向を特定するため前後・左右の文言を使用するが、前後方向はクランク軸方向であり、左右方向はクランク軸線及びシリンダボア軸線と直交した方向である。前と後ろについては、タイミングチェーンが配置される側を前、ミッションケースが配置される側を後ろとしている。
図1に示すように、内燃機関は、シリンダブロック1とその頂面に固定されたシリンダヘッド2とを主要要素とする機関本体を備えており、シリンダブロック1には2つのシリンダボア3が形成されて、各シリンダボア3にはそれぞれピストン4が摺動自在に嵌挿されている。シリンダヘッド2には、ペントルーフ形の凹所5が形成されている。
各ピストン4は、コンロッド6を介してクランク軸7に連結されている。クランク軸7は、その一端部と他端部に位置したメインジャーナル8と、両者の間に位置した中間ジャーナル9とを備えており、これらジャーナル8,9は、クランクキャップ10介してシリンダブロック1に回転自在に保持されている。
また、クランク軸7は、2つのピストン4に対応した一対ずつのクランクアーム11を備えており、一対のクランクアーム11に設けたクランクピン12にコンロッド6の大端部6aが連結されて、コンロッド6の小端部6bはピストン4にピストンピン13で連結されている。各クランクアーム11には、ピストン4と反対方向にはみ出たカウンタウエイト14を設けている。
シリンダブロック1の下面には、オイルを溜めるオイルパン15が固定されている。すなわち、オイルパン15の開口縁にフランジ15aを形成し、フランジ15aをシリンダブロック1の下面にボルト(図示せず)で固定しており、シリンダブロック1とオイルパン15とで囲われた空間がクランク室16になっている。
シリンダブロック1及びシリンダヘッド2の前面には1枚のフロトンカバー17が重ね固定されており、フロントカバー17とシリンダブロック1及びシリンダヘッド2との間に形成された前部空間18に、カム軸を駆動するタイミングチェーン(図示せず)が配置されている。また、シリンダヘッド2の上面にはヘッドカバー19が重ね固定されており、ヘッドカバー19で囲われた空間が動弁室20になっている。なお、ヘッドカバー19はフロントカバー17の上面にも固定されている。実施形態では、前部空間18はPCV通路を兼用している。
オイルパン15には、貯油部21を略密閉状態に仕切るバッフルプレート22が固定されている。バッフルプレート22は、油面に沿って広がる底部22aと、底部22aから立ち上がった壁部22bとを有しており、壁部22bの上端にフランジ22cを設けて、このフランジ22cをオイルパン15のフランジ15aと一緒にシリンダブロック1の下面に共締めしている。
なお、バッフルプレート22は、オイルパン15の内周面に固定したり、オイルパン15の内周面に形成した内向き段部の上面に固定したりしてもよい。更に、オイルパン15の底部からボス部(支柱部)を突設して、このボス部にバッフルプレート22の底部22aをボルトで固定することも可能である。
バッフルプレート22の底部22aはその中央部に向けて緩く下向き傾斜しており、底部22aの略中央部にオイル落とし穴23を空けて、オイル落とし穴23をリード弁24で下方から塞いでいる。リード弁24は一方弁の一例であり、例えば板ばね製である。リード弁24は、ヒンジ部24aを介して繋がった基部24bを備えており、基部24bがバッフルプレート22の底部22aに溶接等で固定されている。オイル落とし穴23及びリード弁24は平面視四角形に形成しているが、円形などの他の形状であってもよい。
図3(A)の別例ではリード弁24を枠体23bに取り付けており、図3(B)に示す別例では、枠体23bに蝶番方式の一対のリード弁24を観音開き状に配置している。図3(B)のリード弁24は、ばねで閉じ方向に付勢されている。
クランク室16はオイルパン15によって密閉状態に保持されており、また、貯油部21はバッフルプレート22によって密閉されているが、オイルパン15及びバッフルプレート22に、貯油部21と前部空間18とに連通した連通穴25を空けている。
そして、オイルパン15及びバッフルプレート22の後部に、クランク室16に開口した新気導入ポート26を設け、新気導入ポート26に第1新気導入通路27を接続している。第1新気導入通路27には、クランク室16が負圧になったら新気をクランク室16に送り、逆流はしない第1一方弁28を設けている。
他方、ヘッドカバー19の下面にバッフルプレート19aを配置することによって内部空間29を形成し、内部空間29にオイルセパレータ通路と新気流路とを形成している。内部空間29に、新気流路に連通した新気ポート30を設けており、新気ポート30に第2新気導入通路31を接続し、第2新気導入通路31に、負圧状態になると開く第2一方弁32を配置している。新気流路に流入した新気は、小穴等を介して動弁室20に噴出する。ブローバイガスから補集されたオイルミストも、バッフルプレート19aに設けた小穴から動弁室に滴下する。
また、ヘッドカバー19に、換気出口となるPCVバルブ33を設け、PCVバルブ33に還流通路34を接続している。還流通路34は、吸気マニホールド等の吸気系に接続されている。他方、新気導入通路27,31は、吸気通路のうちエアクリーナとスロットルバルブとの間の部位に接続されている。
以上の構成において、ピストン4が下降してクランク室16の内圧が上昇すると、内圧の一部の仕事として、リード弁24が開いてオイルとブローバイガスとが貯油部21に流入し、ブローバイガスは連通穴25から前部空間18に流れ込んで、前部空間18から動弁室20を介して内部空間29に流入し、吸気系が負圧になるとPCVバルブ33が開いてブローバイガスは還流通路34から吸気系に還流する。
そして、ピストン4が下降してクランク室16が正圧になっている状態では第1一方弁28は閉じており、ピストン4が上昇してクランク室16が負圧状態になると、第1一方弁28は開いて新気がクランク室16に流入する。
他方、PCVバルブ33が閉じて動弁室20が正圧になっている状態では、第2新気導入通路31の第2一方弁32は閉じて、PCVバルブ33が開いて動弁室20が負圧状態になると、第2新気導入通路31の第2一方弁32は開いて動弁室20に新気が流入する。
連通穴25は面積が小さいオリフィス状になっていて空気が流れるに際して抵抗が大きいため、ピストン4が下降してクランク室16の圧力が高くなっても、ピストン4の下降によって発生したクランク室16の圧力はその一部しか連通穴25からは抜けず、クランク室16に発生した圧力の大部分はクランク室16に残る。このため、ピストン4の上昇時には、クランク室16の正圧によってピストン4の上昇がアシストされる。
逆に、ピストン4が上昇すると第1一方弁28が開いて新気がクランク室16に流入するが、第1新気導入通路27は小径で流れ抵抗が大きいため、ピストン4が上昇しても流入する新気の量は僅かであり、ピストン4の上昇によって発生した負圧は、その大部分がクランク室16に残っている。従って、ピストン4が下降するときに、その下降動が負圧によってアシストされる。従って、ピストン4の上下動によって交互に発生する正圧と負圧がピストン4の往復動をアシストして、ポンピングロスを低減できる。
実施形態では一方弁としてリード弁を使用したが、ボール式等の他の構造の一方弁も使用できる。第1一方弁をオイルパン又はバッフルプレートに設け、第2一方弁をヘッドカバーに設けることも可能である。また、PCV通路はシリンダブロック及びシリンダヘッドに形成してもよい。
本願発明は、単気筒内燃機関又は多気筒内燃機関に具体化できる。従って、産業上利用できる。
1 シリンダブロック
2 シリンダヘッド
3 シリンダボア
4 ピストン
7 クランク軸
15 オイルパン
16 クランク室
18 PCV通路となる前部空間
19 ヘッドカバー
20 動弁室
21 貯油部
22 バッフルプレート
25 連通穴
26 新気導入ポート
27 第1新気導入通路
28 第1一方弁
31 第2新気導入通路
32 第2一方弁
33 PCVバルブ(換気出口)

Claims (1)

  1. 単気筒内燃機関又は複数のピストンが同期して昇降する多気筒内燃機関であって、
    シリンダブロックとその下面に固定されたオイルパンとで構成されたクランク室と、シリンダヘッドとその上面に固定されたヘッドカバーとで構成された動弁室と、
    前記クランク室に新気導入ポートを介して新気を送る第1新気導入通路と、前記動弁室に新気を送る第2新気導入通路と、前記クランク室に吹き抜けたブローバイガスを前記動弁室に送る機関内蔵式のPCV通路と、前記動弁室からブローバイガスを排出する換気出口とを備えている構成において、
    前記クランク室は略密閉状態に保持されていると共に、前記オイルパンは貯油部がバッフルプレートによって略密閉状態に保持されて、前記貯油部とPCV通路とは空気が流れにくいオリフィス状の連通穴を介して連通しており、
    前記バッフルプレートに、ピストンの下降動によってクランク室内の圧力が高くなると開く一方弁を設けて、前記第1新気導入通路及び第2新気導入通路に、それぞれ前記クランク室又は動弁室が負圧状態になると開く一方弁を設けており、
    かつ、前記新気導入ポートと連通穴とは、クランク軸心方向を向いて前後両端に分かれて配置されている、
    単気筒内燃機関又はピストン同期昇降型多気筒内燃機関。
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