以下に説明される本開示に係る実施形態は本発明を説明するための例示であるので、本発明は以下の内容に限定されるべきではない。
≪実施形態の概要≫
[1]本実施形態の一つの例に係る固定子積層鉄心の製造方法は、複数の鉄心部材が積層されて構成されており、環状のヨーク部と、ヨーク部に交差する交差方向にヨーク部から延びる複数のティース部とを含む積層体を得る第1の工程と、複数のティース部のうちヨーク部の周方向において隣り合うティース部の間の空間である複数のスロット内にそれぞれ中子部材を挿入する第2の工程と、スロットと中子部材との間の充填空間に溶融状態の樹脂を充填して樹脂部を形成する第3の工程とを含む。第2の工程では、中子部材の本体部がスロットの延在方向に沿って延び且つスロットの内壁面と離間していると共に、中子部材のうち本体部に接続された閉塞部がスロットのスロット開口側に位置し且つスロットのうちスロット開口側の開放端部を閉塞している。
本実施形態の一つの例に係る固定子積層鉄心の製造方法では、第2の工程において中子部材がスロット内に配置された状態で、中子部材の本体部がスロットの延在方向に沿って延び且つスロットの内壁面と離間していると共に、中子部材の閉塞部がスロットのスロット開口側に位置し且つスロットのうちスロット開口側の開放端部を閉塞している。そのため、中子部材の周囲を溶融樹脂が流動しても中子部材の形状は変形しないので、スロット開口の外側に溶融樹脂が漏れ出る虞が殆どない。従って、第3の工程においてスロットと中子部材との間の充填空間に溶融樹脂を充填すると、スロットの内壁面のうち中子部材の本体部と対向する領域には樹脂部が形成されるが、スロット開口側よりも外側には樹脂部が形成されない。その結果、積層体の内周面と回転子の外周面との間のエアギャップを所定の大きさに保持することが可能となる。また、充填空間内に溶融樹脂を充填する第3の工程において中子部材の閉塞部が開放端部に存在しているので、開放端部が溶融樹脂によって充填されない。すなわち、スロットの内壁面に形成される樹脂部が開放端部を閉塞しない。そのため、スロット開口が開放されたままであるので、特別な材料及び装置を要することなく、一般的な巻線機等を用いてティース部に巻線を取り付けることができる。従って、巻線と積層体との間の絶縁性を樹脂部で確保しつつ、巻線作業を低コストで行うことが可能となる。さらに、第3の工程においてスロットと中子部材との間の充填空間に溶融樹脂を充填すると、積層されている複数の鉄心部材の隙間にも溶融樹脂が若干浸入していく。そのため、溶融樹脂が硬化することで、樹脂を介して鉄心部材同士が接合される。従って、積層方向における鉄心部材の拡がりを抑制することが可能となる。
[2]上記第1項に記載の方法において、第2の工程では、閉塞部が開放端部の内壁面と当接していてもよい。この場合、スロットのうち開放端部側の内壁面に樹脂部が形成されない。そのため、スロット開口の外側に溶融樹脂が漏れ出ることをより抑制することができる。
[3]上記第2項に記載の方法において第2の工程では、スロットのうちスロット開口よりも内側の領域において閉塞部が開放端部の内壁面と当接していてもよい。ところで、中子部材とスロットの内壁面とが当接していても、微視的に見ると、微細な隙間(例えば、数十μm程度の隙間)が存在する。溶融樹脂は、毛細管現象により当該隙間に浸透して、バリが生ずることがある。しかしながら、第3項に記載の方法によれば、スロットの内壁面のうちスロット開口から開放端部までの間の領域には、中子部材が当接していない。そのため、毛細管現象が生じうる微細な隙間の終点がスロット開口よりもスロットの内側に存在する。従って、仮に溶融樹脂が当該隙間に浸透したとしても、スロット開口の外側にバリが形成され難くなる。
[4]上記第3項に記載の方法において、開放端部の内壁面はティース部の延在方向に対して傾斜する第1の傾斜面を有し、閉塞部は第1の傾斜面に対応する第2の傾斜面を有し、開放端部の第1の傾斜面と閉塞部の第2の傾斜面とが互いに当接していてもよい。この場合、中子部材と開放端部との間の接触面積が増大する。そのため、中子部材の閉塞部によって開放端部がよりしっかりと閉塞される。従って、スロット開口の外側に溶融樹脂が漏れ出ることをいっそう抑制することができる。また、溶融樹脂は、毛細管現象により微細な隙間を浸透して当該隙間の終点に到達した後に、第1及び第2の傾斜面の延在方向に沿って延びるように発達する。そのため、スロット開口側においてバリがスロットの内壁面に付着し難い。従って、バリが発生しても簡単に除去することが可能となる。
[5]上記第1項~第4項のいずれか一項に記載の方法において、開放端部は、周方向において、ティース部のうちヨーク部側の基端部よりも突出していてもよい。この場合、スロット開口側から見て、スロットの内壁面に形成される樹脂部が開放端部によって保護される。そのため、例えば巻線機によって巻線をティース部に取り付ける際に、巻線又はその取付装置によって樹脂部がダメージを受け難くなる。従って、樹脂部の脱落等による異物の発生を抑制することが可能となる。
[6]上記第1項~第5項のいずれか一項に記載の方法は、第1の工程の後で且つ第3の工程の前に、積層体をその積層方向から一対の挟持プレートで挟み込む第4の工程をさらに含み、一対の挟持プレートには、充填空間に対向する領域に、充填空間と連通する補助空間が設けられており、第3の工程では、充填空間及び補助空間に溶融状態の樹脂を充填して樹脂部を形成してもよい。この場合、第3の工程において、溶融樹脂は充填空間のみならず挟持プレートの補助空間内にも充填される。そのため、スロットの内壁面に設けられる樹脂部は、積層体の端面よりも外側に突出する。従って、ティース部に巻線が取り付けられる際に、巻線が積層体(ティース部)の端面に当接し難くなる。また、巻線とティース部との直線距離が大きくなるので、巻線とティース部との間で沿面放電が生じ難くなる。さらに、積層体の端面よりも外側に樹脂部が突出しているので、樹脂部が熱によって収縮しても、鉄心部材の全体が樹脂部によって締結された状態が維持されやすい。そのため、積層体の端面側に位置する鉄心部材の剥がれを抑制することができると共に、当該剥がれに伴う樹脂部の欠け、割れ(クラック)等の発生を抑制することができる。なお、欠けが発生すると、樹脂部から脱落した樹脂片が異物として周囲に飛散してしまうので、固定子積層鉄心を用いて電動機を構成した場合に電動機の性能に影響が生じうる。割れが発生すると、割れが発生した領域において巻線と積層体との間で沿面放電が生じ、巻線と積層体とが導通してしまいうる。
[7]上記第6項に記載の方法において、一対の挟持プレートには、充填空間に対向する領域から、当該充填空間に隣り合うティース部の端面の少なくとも一部と対向する領域にわたって、連続的に補助空間が設けられていてもよい。この場合、第3の工程において、溶融樹脂は充填空間のみならず挟持プレートの補助空間内にも充填される。そのため、樹脂部は、スロットの内壁面に形成されると共に、当該内壁面を回り込んでティース部の端面にも形成される。従って、ティース部に巻線が取り付けられる際に、巻線が積層体(ティース部)の端面に当接し難くなる。
[8]上記第6項に記載の方法において、一対の挟持プレートには、充填空間に対向する領域から、当該充填空間に隣り合うティース部の端面の少なくとも一部と対向する領域にわたって、連続的に補助空間が設けられており、充填空間が補助空間よりもスロット側に向けて突出するように、充填空間が補助空間に対してずれて位置していてもよい。この場合、第3の工程において、溶融樹脂は充填空間のみならず挟持プレートの補助空間内にも充填される。そのため、樹脂部は、スロットの内壁面に形成されると共に、当該内壁面を回り込んでティース部の端面にも形成される。従って、ティース部に巻線が取り付けられる際に、巻線が積層体(ティース部)の端面に当接し難くなる。また、この場合、充填空間が補助空間よりもスロット側に向けて突出するように、充填空間が補助空間に対してずれて位置している。そのため、充填空間及び補助空間に充填された溶融樹脂が固化して樹脂部となった場合、樹脂部のうち充填空間内の樹脂主部が樹脂部のうち補助空間内の樹脂端部よりもスロット側に向けて突出するように、樹脂主部が樹脂端部に対してずれて配置される。従って、ティース部に巻線が取り付けられる際に、樹脂主部と樹脂端部とがずれた段差部分において巻線が屈曲しやすくなり、ティース部に巻回された巻線が小径化される。その結果、コイル長が全体として短くなるので、巻線において生ずる発熱を抑制することが可能となると共に、巻線が取り付けられた後の固定子積層鉄心を全体として低背化することが可能となる。
[9]上記第7項又は第8項に記載の方法において、一対の挟持プレートは、ティース部の端面と部分的に当接する領域を有していてもよい。この場合、ティース部の端面には、樹脂部で覆われた被覆領域と、樹脂部で覆われていない非被覆領域とが形成される。ここで、樹脂部は高温(例えば、120℃~200℃程度)の溶融樹脂が常温まで冷えて硬化することにより得られるが、高温から常温への温度変化に際して溶融樹脂が収縮するので、樹脂部内に内部応力が残存しうる。当該内部応力が大きい場合、樹脂部に欠け、割れ(クラック)等が生じやすくなる。しかしながら、第9項に記載の方法では、ティース部の端面に非被覆領域が存在していることから、樹脂部の膨張及び収縮が当該非被覆領域において緩和され、樹脂部内に内部応力が残存し難くなる。そのため、樹脂部における割れの発生を抑制することができる。
[10]上記第7項~第9項のいずれか一項に記載の方法において、一対の挟持プレートには、充填空間と対向する領域から、当該充填空間に隣り合うヨーク部の端面の少なくとも一部と対向する領域にわたって、連続的に補助空間が設けられていてもよい。この場合、第3の工程において、溶融樹脂は充填空間のみならず挟持プレートの補助空間内にも充填される。そのため、樹脂部は、スロットの内壁面に形成されると共に、当該内壁面を回り込んでヨーク部の端面にも形成される。従って、ティース部に巻線が取り付けられる際に、巻線が積層体(ヨーク部)の端面に当接し難くなる。
[11]上記第10項に記載の方法において、補助空間のうちヨーク部の端面と対向する部分は、周方向に沿って環状に延びていてもよい。この場合、ヨーク部の端面がより広い範囲で樹脂部によって覆われるので、巻線が積層体(ヨーク部)の端面にいっそう当接し難くなる。
[12]上記第10項又は第11項に記載の方法において、補助空間のうちヨーク部の端面と対向する一部は、補助空間のうちヨーク部の端面と対向する残部よりも高く且つ周方向に沿って延びていてもよい。この場合、溶融樹脂が補助空間に充填されると、補助空間の当該一部に対応して、背高で且つ周方向に延びる樹脂壁部がヨーク部の端面に形成される。ところで、複数のティース部を一組として巻線を巻回する場合(いわゆる分布巻の場合)、一のスロットから出た巻線はいったんヨーク部に向かい、ヨーク部上を這うように延びた後、一のスロットとは隣り合わない他のスロットに向かう。そのため、上記第12項に記載の方法により樹脂壁部をヨーク部の端面に形成しておくと、分布巻の際に樹脂壁部を巻線のガイドとして利用することが可能となる。従って、固定子積層鉄心に対して効果的に巻線を取り付けることが可能となる。
[13]上記第7項~第12項のいずれか一項に記載の方法において、積層体の端面のうち補助空間と対向する部分は、粗面化処理されているか、又は積層体の端面のうち他の部分よりも窪んでいてもよい。この場合、積層体の端面に対する樹脂部の付着性が高まる。そのため、樹脂部の積層体からの剥がれを抑制することができる。
[14]上記第7項~第13項のいずれか一項に記載の方法において、補助空間を構成する凹溝の角部が、丸みを帯びた断面形状を呈しているか、又は凹溝の底壁面と側壁面とに対して傾斜していてもよい。この場合、樹脂部のうちスロットの内壁面から積層体の端面に回り込む角部が面取りされた状態となる。そのため、ティース部に巻線が取り付けられる際に、巻線が樹脂部の外形に沿って巻回されやすくなる。そのため、巻線から樹脂部に作用する応力が低減されるので、樹脂部における欠け、割れ等の発生を抑制することができる。
[15]上記第7項~第14項のいずれか一項に記載の方法において、積層方向における積層体の両端面に向かうにつれて、ティース部の幅が狭くなるか及び/又はヨーク部の内径が大きくなってもよい。この場合、ティース部のうちスロット側の角部及び/又はヨーク部のうちスロット側の角部が傾いた状態となる。そのため、樹脂部のうちスロットの内壁面から積層体の端面に回り込む部分の厚さを確保しやすくなる。従って、樹脂部の当該部分における割れを抑制することが可能となる。また、ティース部に巻線が取り付けられたときに、樹脂部の当該部分によって巻線とティース部及び/又はヨーク部との間の絶縁破壊を抑制することが可能となる。
[16]上記第6項~第15項のいずれか一項に記載の方法は、第1の工程の後で且つ第3の工程の前に、積層体をその積層方向から一対の挟持プレートで挟み込んだ状態で、積層体の積厚が所定の目標積厚となるように積層体に対してその積層方向から一対の挟持プレートを介して荷重を付与する第5の工程をさらに含んでもよい。ところで、積層体を構成する各鉄心部材の厚さは必ずしも同一ではない。そのため、いずれの積層体にも一定の荷重を付与してスロット内に樹脂部を形成し、複数の鉄心部材を樹脂部によって締結すると、固定子積層鉄心ごとに高さが異なってしまう場合がある。しかしながら、第15項に記載の方法によれば、積層体の積厚が所定の目標積厚となるように積層体に対して荷重を付与している。そのため、得られる固定子積層鉄心の高さがいずれも略同一となる。従って、設計に沿った所望の大きさの固定子積層鉄心を得ることが可能となる。
[17]上記第16項に記載の方法において、第5の工程では、目標積厚の高さを有するストッパ部材を一対の挟持プレートの間に配置して、ストッパ部材と共に積層体をその積層方向から一対の挟持プレートで挟み込んだ状態で、一対の挟持プレートがストッパ部材に当接するように積層体に対してその積層方向から一対の挟持プレートを介して荷重を付与してもよい。この場合、積層体の積厚をストッパによって容易に目標積厚に一致させることが可能となる。
[18]上記第6項~第17項のいずれか一項に記載の方法において、一対の挟持プレートのうち少なくとも一方の熱膨張率は積層体の熱膨張率よりも高くてもよい。この場合、充填空間に溶融樹脂を充填する際に挟持プレート及び積層体が熱せられるので、積層体よりも挟持プレートが膨張する。そのため、積層体が一対の挟持プレートによって加圧される。従って、充填空間に充填される溶融樹脂が挟持プレートと積層体との間の隙間から漏れ出ることを抑制できる。
[19]上記第6項~第18項のいずれか一項に記載の方法において、一対の挟持プレートのうち少なくとも一方には、一対の挟持プレートにおいて異なる積厚の積層体を挟持可能とするために、各中子部材に対応する位置に各中子部材が通過可能な逃がし部が設けられていてもよい。この場合、積層体の積厚が相対的に大きい場合には、中子部材が逃がし部をほとんど又は全く通過しないが、積層体の積厚が相対的に小さい場合には、中子部材の端部が逃がし部を通過する。そのため、一対の挟持プレートにより挟持可能な積層体の積厚に幅を持たせることが可能となる。従って、異なる積厚の積層体を一つの樹脂充填装置で取り扱うことが可能となる。
[20]上記第1項~第19項のいずれか一項に記載の方法において、中子部材の熱膨張率は積層体の熱膨張率よりも高くてもよい。この場合、充填空間に溶融樹脂を充填する際に中子部材及び積層体が熱せられるので、積層体よりも中子部材が膨張する。そのため、膨張した中子部材の閉塞部によって開放端部がよりしっかりと閉塞される。従って、スロット開口の外側に溶融樹脂が漏れ出ることをいっそう抑制できる。
[21]上記第1項~第20項のいずれか一項に記載の方法において、中子部材の表面には離型処理が施されていてもよい。この場合、充填空間に溶融樹脂が充填されて固化した後に、中子部材をスロット内から取り出しやすくなる。
[22]上記第1項~第21項のいずれか一項に記載の方法において、中子部材には冷媒が流通する流路が設けられていてもよい。この場合、充填空間への溶融樹脂の充填後に流路内に冷媒を流通させることにより、中子部材の体積が収縮するので、中子部材を積層体のスロット内から抜去しやすくなる。そのため、積層体のスロット内から中子部材を取り出すのに要する時間が短縮化されるので、固定子積層鉄心の生産性の向上を図ることができる。
[23]上記第22項に記載の方法において、中子部材のうち少なくとも流路の周囲の部分の熱伝導率が積層体の熱伝導率よりも高くてもよい。この場合、中子部材の収縮が促進されるので、中子部材を積層体のスロット内からいっそう抜去しやすくなる。
[24]上記第1項~第23項のいずれか一項に記載の方法は、第3の工程の後に、中子部材と積層体との間に電圧を印加して、樹脂部の絶縁性を検査する第6の工程をさらに含んでもよい。この場合、中子部材が、積層体との間に充填空間を形成する機能のみならず、絶縁検査のための要素としても機能する。そのため、絶縁検査のために、中子を取り外して他の検査部材をスロット内に挿入する等の作業が不要となる。従って、絶縁検査を効率的に行うことができる。
[25]上記第1項~第24項のいずれか一項に記載の方法は、第1の工程の後で且つ第3の工程の前に、交差方向に移動可能に構成された複数の拡径部材を、周方向に沿って並び且つヨーク部の内側に配置する第7の工程と、第7の工程の後に、各拡径部材をティース部に向けて移動させ、各拡径部材の外周面を積層体の内周面に当接させることにより、交差方向の外向きの力を積層体に対して付与する第8の工程とをさらに含んでもよい。この場合、拡径部材によって積層体の形状が保持された状態で、充填空間に溶融樹脂が充填される。そのため、溶融樹脂の熱による積層体の変形が抑制される。従って、固定子積層鉄心が設計に沿った所望の形状で製造されるので、当該固定子積層鉄心を用いて電動機を構成した場合、電動機の性能向上を図ることができる。
[26]上記第25項に記載の方法において、各拡径部材の少なくとも外周面は弾性材料で構成されていてもよい。この場合、拡径部材の外周面が積層体の内周面に当接する際に、拡径部材の外周面が弾性変形する。そのため、複数の積層体の間に寸法のばらつきがある場合でも、拡径部材において積層体の寸法のばらつきを吸収することができる。
[27]上記第25項又は第26項に記載の方法は、第1の工程の後で且つ第8の工程の前に、積層体の外周面に複数の位置決め部材を当接させることにより積層体の位置決めを行う第9の工程をさらに含み、第8の工程では、各拡径部材と各位置決め部材とで積層体を交差方向において挟持してもよい。この場合、溶融樹脂の熱による積層体の変形をいっそう抑制することができる。
[28]上記第27項に記載の方法において、位置決め部材は、交差方向において拡径部材と対向するように位置していてもよい。この場合、拡径部材から積層体に作用した力の大部分が、径方向において当該拡径部材と対向する位置にある位置決め部材において受け止められるので、積層体の変形に寄与する力が抑制される。そのため、溶融樹脂の熱による積層体の変形をいっそう抑制することができる。
[29]上記第27項又は第28項に記載の方法において、第8の工程では、各位置決め部材が積層体の外周面を押圧してもよい。この場合、拡径部材によって積層体が内周面側から径方向外向きに押圧されるのみならず、位置決め部材によって積層体が外周面側から径方向内向きにも押圧される。そのため、積層体の内外から作用する力によって積層体の形状が保持されるので、溶融樹脂の熱による積層体の変形をよりいっそう抑制することができる。
[30]上記第1項~第29項のいずれか一項に記載の方法において、第2の工程では、複数のスロットのうち少なくとも2つのスロット内に位置決め治具を挿入しつつ、残余のスロット内に中子部材を挿入し、第3の工程の後に、少なくとも2つのスロット内から位置決め治具を抜去して中子部材をそれぞれ挿入することと、少なくとも2つのスロットと中子部材との間の充填空間に溶融状態の樹脂を充填して樹脂部を形成することとを行ってもよい。この場合、積層体のスロットによって位置決めが行われるので、位置決めの精度が極めて高まる。そのため、位置決め部材によって積層体の形状が保持された状態で、充填空間に溶融樹脂が充填される。従って、溶融樹脂の熱による積層体の変形が抑制される。その結果、固定子積層鉄心が設計に沿った所望の形状で製造されるので、当該固定子積層鉄心を用いて電動機を構成した場合、電動機の性能向上を図ることができる。
[31]上記第1項~第30項のいずれか一項に記載の方法において、中子部材は、その延在方向及び当該延在方向に交差する方向の少なくとも一方において分割された複数の分割片の組み合わせにより構成されていてもよい。この場合、スロット内で複数の分割片が組み合わされて、一つの中子部材となる。そのため、樹脂部が周囲に形成された状態の一本の中子部材を樹脂部から引き抜く場合と比較して、樹脂部内から中子部材を取り出しやすくなる。
[32]上記第1項~第31項のいずれか一項に記載の方法において、中子部材の少なくとも一部は、一端側から他端側に向けて縮径するテーパ形状を呈していてもよい。この場合、樹脂部が周囲に形成された状態の中子部材を樹脂部から引き抜きやすくなる。
[33]上記第1項~第32項のいずれか一項に記載の方法において、中子部材の周面には保護被膜が設けられていてもよい。この場合、中子部材の周面の摩耗を抑制することが可能となる。また、保護被膜の存在により、中子部材の樹脂部からの離型を容易に行うことが可能となる。
[34]上記第1項~第33項のいずれか一項に記載の方法において、第3の工程で充填空間に充填される溶融状態の樹脂は異方性フィラーを含有していてもよい。この場合、異方性フィラーのサイズに応じて、樹脂の流動性の向上(樹脂の充填空間への充填性の向上)又は樹脂の隙間からの漏れ抑制を図ることができる。
[35]上記第1項~第34項のいずれか一項に記載の方法において、第2の工程では、積層体が載置された搬送部材が、複数の中子部材が上方に向けて突出するように設けられたベース部材上に積み重ねられることにより、搬送部材に載置されている積層体のスロット内にそれぞれ中子部材が挿入されてもよい。この場合、複数の中子部材を同時且つ簡易に、対応するスロット内に挿入することが可能となる。
[36]上記第35項に記載の方法において、ベース部材には、交差方向に移動可能に構成された複数の拡径部材が設けられており、第2の工程は、搬送部材がベース部材上に積み重ねられることにより、搬送部材に載置されている積層体のスロット内に中子部材がそれぞれ挿入され且つ、複数の拡径部材が周方向に沿って並ぶように複数の拡径部材がヨーク部の内側に配置されることと、各拡径部材をティース部に向けて移動させ、各拡径部材の外周面を積層体の内周面に当接させることにより、交差方向の外向きの力を積層体に対して付与することとを含んでいてもよい。この場合、複数の中子部材が対応するスロット内に挿入されると同時に、積層体の内部に複数の拡径部材が配置される。そのため、中子部材及び拡径部材を積層体に対して簡易且つ迅速に配置することが可能となる。また、この場合、拡径部材によって積層体の形状が保持された状態で、充填空間に溶融樹脂が充填される。そのため、溶融樹脂の熱による積層体の変形が抑制される。従って、固定子積層鉄心が設計に沿った所望の形状で製造されるので、当該固定子積層鉄心を用いて電動機を構成した場合、電動機の性能向上を図ることができる。
[37]上記第35項又は第36項に記載の方法において、第3の工程では、第2の工程において搬送部材が積み重ねられた状態のベース部材を、ベース部材に対する搬送部材の積み重ね位置とは異なる位置に搬送した後に、充填空間に溶融状態の樹脂を充填して樹脂部を形成してもよい。ベース部材への搬送部材の積み重ねと、充填空間への樹脂の充填とが同じ位置で行われると、上下動する搬送部材又はベース部材のさらに上方に樹脂の供給機構が配置されるので、樹脂充填装置が全体として大型化してしまう傾向にある。しかしながら、第37項に記載の方法によれば、ベース部材への搬送部材の積み重ねと、充填空間への樹脂の充填とが異なる位置で行われるので、樹脂充填装置の小型化を図ることが可能となる。
[38]上記第35項~第37項のいずれか一項に記載の方法において、搬送部材のうち積層体のヨーク部よりも内側に対応する領域には貫通孔が設けられていてもよい。この場合、スロットの内壁面に樹脂部が形成された後に搬送部材がベース部材から取り外されたときに、樹脂部の形成状態を、上方側からのみならず、搬送部材側(下方側)からも貫通孔を介して確認することが可能となる。
[39]上記第1項~第38項のいずれか一項に記載の方法において、積層体におけるスロットの内壁面は、積層体の積層方向において凹凸が並ぶ凹凸面であってもよい。この場合、スロットの内周面に対する樹脂部の付着性が高まる。そのため、樹脂部の積層体からの剥がれを抑制することができる。
[40]上記第1項~第39項のいずれか一項に記載の方法において、中子部材はスロット内において拡縮可能に構成されていてもよい。この場合、スロット内に配置された状態で中子部材を拡張し、充填空間に溶融樹脂を充填した後に中子部材を縮小することにより、中子部材をスロットから引き抜きやすくなる。
[41]上記第1項~第40項のいずれか一項に記載の方法において、第3の工程では、複数のスロットのうち一部のスロットにおける充填空間に溶融状態の樹脂を充填することを順次繰り返して、全てのスロットの内壁面に樹脂部を形成してもよい。全てのスロットにおける充填空間に対して一度に溶融樹脂を充填しようとすると、樹脂充填装置が全体として大型化してしまう傾向にある。しかしながら、第41項に記載の方法によれば、一部のスロットにおける充填空間に対して溶融樹脂を順次充填すればよいので、樹脂充填装置の小型化を図ることが可能となる。
[42]上記第1項~第41項のいずれか一項に記載の方法において、第3の工程では、充填空間内に溶融状態の樹脂を部分的に充填することを積層体の積層方向において順次繰り返して、充填空間内の全体に樹脂部を形成してもよい。この場合、溶融樹脂は、積層方向において充填空間に部分的に充填される。そのため、充填空間に一度に溶融樹脂が充填される場合と比較して、充填空間への溶融樹脂の充填性を高めることが可能となる。
[43]上記第1項~第42項のいずれか一項に記載の方法において、第2の工程では、スロットの内壁面と中子部材の外周面との間に、溶融状態の樹脂に対する流路抵抗が充填空間よりも小さく且つ積層体の積層方向に延びる樹脂注入流路が設けられており、第3の工程では、樹脂注入流路を介して溶融状態の樹脂を充填空間に充填してもよい。この場合、第3の工程において、溶融樹脂は、樹脂注入流路から充填空間へと、流路抵抗が小さい順に流れる。すなわち、溶融樹脂は、積層方向に延びる樹脂注入流路内を満たし、続いて、樹脂注入流路から充填空間に向けて積層方向とは交差する方向に充填空間内を満たしていく。そのため、第43項に記載の方法によれば、樹脂注入流路が存在しない場合と比較して、充填空間の全体に溶融樹脂をより効果的に満たすことが可能となる。なお、本明細書において「流路抵抗」とは、流路(樹脂注入流路又は充填空間)を流れる際に溶融樹脂に作用する摩擦によって生ずるエネルギー損失をいうものとする。
[44]上記第1項~第43項のいずれか一項に記載の方法において、各中子部材は、積層体をその積層方向から挟み込む一対の挟持プレートの少なくとも一方、及び/又は、積層体の内部に配置される複数の拡径部材のいずれかと一体化されていてもよい。
[45]上記第1項~第44項のいずれか一項に記載の方法において、樹脂部には、スロット内において互いに対向し且つ積層体の積層方向に延びる一対の切欠溝が設けられていてもよい。この場合、一対の切欠溝内に、絶縁紙等の絶縁部材を取り付けることが可能となる。
[46]上記第1項~第45項のいずれか一項に記載の方法において、第3の工程では、ティース部の先端側がティース部の基端側よりも温度が低くなるようにティース部又は中子部材を加熱しつつ、充填空間に溶融状態の樹脂を充填してもよい。この場合、ティース部の先端側における溶融樹脂の流動性が相対的に低くなる。そのため、スロット開口からの溶融樹脂の漏出を抑制することが可能となる。一方、ティース部の基端側においては、溶融樹脂の流動性が相対的に高くなる。そのため、ティース部の基端側において、充填空間内への溶融樹脂の充填性を高めることが可能となる。
[47]上記第1項~第46項のいずれか一項に記載の方法において、第3の工程では、充填空間のうちティース部の先端側に、相対的に流動性の低い溶融状態の樹脂を充填すると共に、充填空間のうちティース部の基端部側に、相対的に流動性の高い溶融状態の樹脂を充填してもよい。この場合、第46項に記載の方法と同様に作用効果が得られる。
[48]上記第1項~第47項のいずれか一項に記載の方法において、第3の工程では、ティース部のうち溶融状態の樹脂が充填される一端面側よりも他端面側の温度が低くなるようにティース部又は中子部材を加熱しつつ、充填空間に溶融状態の樹脂を充填してもよい。この場合、ティース部の他端面側における溶融樹脂の流動性が相対的に低くなる。そのため、溶融樹脂の充填口とは反対側からの溶融樹脂の漏出を抑制することが可能となる。一方、ティース部の一端面側においては、溶融樹脂の流動性が相対的に高くなる。そのため、溶融樹脂の充填口側において、充填空間内への溶融樹脂の充填性を高めることが可能となる。
[49]上記第1項~第48項のいずれか一項に記載の方法において、第3の工程では、充填空間に、相対的に流動性の低い溶融状態の樹脂を充填した後に、相対的に流動性の高い溶融状態の樹脂を充填してもよい。この場合、第48項に記載の方法と同様の作用効果が得られる。
[50]上記第1項~第49項のいずれか一項に記載の方法において、第3の工程では、中子部材内に設けられた樹脂流路を通じて、充填空間に溶融状態の樹脂を充填してもよい。この場合、充填空間の中途に溶融樹脂が直接注入されるので、充填空間内への溶融樹脂の充填性を高めることが可能となる。
[51]上記第1項~第50項のいずれか一項に記載の方法において、第3の工程では、充填空間に溶融状態の樹脂を充填した後に、中子部材を冷却してもよい。この場合、熱膨張していた中子部材が収縮するので、中子部材をスロットから引き抜きやすくなる。
[52]上記第1項~第51項のいずれか一項に記載の方法において、第3の工程では、中子部材を加熱しつつ、充填空間に溶融状態の樹脂を充填してもよい。この場合、充填空間に注入された溶融樹脂の流動性を高めることが可能となる。
[53]本実施形態の他の例に係る固定子積層鉄心の製造方法は、複数の鉄心部材が積層されて構成されており、環状のヨーク部と、ヨーク部に交差する交差方向にヨーク部から延びる複数のティース部とを含む積層体を得る第1の工程と、複数のティース部のうちヨーク部の周方向において隣り合うティース部の間の空間である複数のスロット内にそれぞれ中子部材を挿入する第2の工程と、第1の工程の後に、積層体をその積層方向から一対の挟持プレートで挟み込む第3の工程と、第1の工程の後に、各スロットのスロット開口を閉塞するように積層体の中央に設けられている貫通孔内に少なくとも一つの閉塞部材を配置する第4の工程と、第2~第4の工程の後に、スロットと中子部材と閉塞部材との間の充填空間に溶融状態の樹脂を充填して樹脂部を形成する第5の工程とを含む。一対の挟持プレートには、充填空間に対向する領域から、当該充填空間に隣り合うティース部の端面の少なくとも一部と対向する領域にわたって、連続的に補助空間が設けられている。充填空間が補助空間よりもスロット側に向けて突出するように、充填空間が補助空間に対してずれて位置している。第2の工程では、中子部材がスロットの延在方向に沿って延び且つスロットの内壁面と離間している。第5の工程では、充填空間及び補助空間に溶融状態の樹脂を充填して樹脂部を形成する。
本実施形態の他の例に係る固定子積層鉄心の製造方法では、第2の工程において、中子部材がスロット内に配置された状態で、中子部材がスロットの延在方向に沿って延び且つスロットの内壁面と離間している。また、第4の工程において、閉塞部材がスロット開口を閉塞している。そのため、第3の工程においてスロットと中子部材との間の充填空間に溶融樹脂を充填すると、閉塞部材の存在によりスロット開口から溶融樹脂が漏れ出ることなく、スロットの内壁面及びスロット開口に樹脂部が形成される。従って、積層体の内周面と回転子の外周面との間のエアギャップを所定の大きさに保持することが可能となる。なお、本実施形態の他の例に係る固定子積層鉄心の製造方法では、スロット開口が樹脂部によって閉塞されているため、予め所定形状に巻回した巻線をスロット内に挿入することで、一般的なインサート装置等を用いてティース部に巻線を取り付けることができる(いわゆる、インサータ式)。従って、巻線と積層体との間の絶縁性を樹脂部で確保しつつ、巻線の取り付けを低コストで行うことが可能となる。
本実施形態の他の例に係る固定子積層鉄心の製造方法では、第5の工程において、溶融樹脂が充填空間のみならず挟持プレートの補助空間内にも充填される。そのため、樹脂部は、スロットの内壁面に形成されると共に、当該内壁面を回り込んでティース部の端面にも形成される。従って、ティース部に巻線が取り付けられる際に、巻線が積層体(ティース部)の端面に当接し難くなる。また、本実施形態の他の例に係る固定子積層鉄心の製造方法では、充填空間が補助空間よりもスロット側に向けて突出するように、充填空間が補助空間に対してずれて位置している。そのため、充填空間及び補助空間に充填された溶融樹脂が固化して樹脂部となった場合、樹脂部のうち充填空間内の樹脂主部が樹脂部のうち補助空間内の樹脂端部よりもスロット側に向けて突出するように、樹脂主部が樹脂端部に対してずれて配置される。従って、ティース部に巻線が取り付けられる際に、樹脂主部と樹脂端部とがずれた段差部分において巻線が屈曲しやすくなり、ティース部に巻回された巻線が小径化される。その結果、コイル長が全体として短くなるので、巻線において生ずる発熱を抑制することが可能となると共に、巻線が取り付けられた後の固定子積層鉄心を全体として低背化することが可能となる。
[54]上記第53項に記載の方法は、第1の工程の後で且つ第5の工程の前に、積層体をその積層方向から一対の挟持プレートで挟み込む第6の工程をさらに含み、一対の挟持プレートには、充填空間に対向する領域に、充填空間と連通する補助空間が設けられており、第5の工程では、充填空間及び補助空間に溶融状態の樹脂を充填して樹脂部を形成してもよい。この場合、上記第6項に係る方法と同様の作用効果が得られる。
[55]上記第54項に記載の方法において、一対の挟持プレートには、充填空間に対向する領域から、当該充填空間に隣り合うティース部の端面の少なくとも一部と対向する領域にわたって、連続的に補助空間が設けられていてもよい。この場合、上記第7項に係る方法と同様の作用効果が得られる。
[56]上記第54項に記載の方法において、一対の挟持プレートには、充填空間に対向する領域から、当該充填空間に隣り合うティース部の端面の少なくとも一部と対向する領域にわたって、連続的に補助空間が設けられており、充填空間が補助空間よりもスロット側に向けて突出するように、充填空間が補助空間に対してずれて位置していてもよい。この場合、上記第8項に係る方法と同様の作用効果が得られる。
[57]上記第55項又は第56項に記載の方法において、一対の挟持プレートは、ティース部の端面と部分的に当接する領域を有していてもよい。この場合、上記第9項に係る方法と同様の作用効果が得られる。
[58]上記第55項~第57項のいずれか一項に記載の方法において、一対の挟持プレートには、充填空間と対向する領域から、当該充填空間に隣り合うヨーク部の端面の少なくとも一部と対向する領域にわたって、連続的に補助空間が設けられていてもよい。この場合、上記第10項に係る方法と同様の作用効果が得られる。
[59]上記第58項に記載の方法において、補助空間のうちヨーク部の端面と対向する部分は、周方向に沿って環状に延びていてもよい。この場合、上記第11項に係る方法と同様の作用効果が得られる。
[60]上記第58項又は第59項に記載の方法において、補助空間のうちヨーク部の端面と対向する一部は、補助空間のうちヨーク部の端面と対向する残部よりも高く且つ周方向に沿って延びていてもよい。この場合、上記第12項に係る方法と同様の作用効果が得られる。
[61]上記第55項~第60項のいずれか一項に記載の方法において、積層体の端面のうち補助空間と対向する部分は、粗面化処理されているか、又は積層体の端面のうち他の部分よりも窪んでいてもよい。この場合、上記第13項に係る方法と同様の作用効果が得られる。
[62]上記第55項~第61項のいずれか一項に記載の方法において、補助空間を構成する凹溝の角部が、丸みを帯びた断面形状を呈しているか、又は凹溝の底壁面と側壁面とに対して傾斜していてもよい。この場合、上記第14項に係る方法と同様の作用効果が得られる。
[63]上記第55項~第62項のいずれか一項に記載の方法において、積層方向における積層体の両端面に向かうにつれて、ティース部の幅が狭くなるか及び/又はヨーク部の内径が大きくなっていてもよい。この場合、上記第15項に係る方法と同様の作用効果が得られる。
[64]上記第54項~第63項のいずれか一項に記載の方法は、第1の工程の後で且つ第5の工程の前に、積層体をその積層方向から一対の挟持プレートで挟み込んだ状態で、積層体の積厚が所定の目標積厚となるように積層体に対してその積層方向から一対の挟持プレートを介して荷重を付与する第7の工程をさらに含んでもよい。この場合、上記第16項に係る方法と同様の作用効果が得られる。
[65]上記第64項に記載の方法において、第7の工程では、目標積厚の高さを有するストッパ部材を一対の挟持プレートの間に配置して、ストッパ部材と共に積層体をその積層方向から一対の挟持プレートで挟み込んだ状態で、一対の挟持プレートがストッパ部材に当接するように積層体に対してその積層方向から一対の挟持プレートを介して荷重を付与してもよい。この場合、上記第17項に係る方法と同様の作用効果が得られる。
[66]上記第54項~第65項のいずれか一項に記載の方法において、一対の挟持プレートのうち少なくとも一方の熱膨張率は積層体の熱膨張率よりも高くてもよい。この場合、上記第18項に係る方法と同様の作用効果が得られる。
[67]上記第53項~第66項のいずれか一項に記載の方法において、一対の挟持プレートのうち少なくとも一方には、一対の挟持プレートにおいて異なる積厚の積層体を挟持可能とするために、各中子部材に対応する位置に各中子部材が通過可能な逃がし部が設けられていてもよい。この場合、上記第19項に係る方法と同様の作用効果が得られる。
[68]上記第53項~第67項のいずれか一項に記載の方法において、中子部材の熱膨張率は積層体の熱膨張率よりも高くてもよい。この場合、上記第20項に係る方法と同様の作用効果が得られる。
[69]上記第53項~第68項のいずれか一項に記載の方法において、中子部材の表面には離型処理が施されていてもよい。この場合、上記第21項に係る方法と同様の作用効果が得られる。
[70]上記第53項~第69項のいずれか一項に記載の方法において、中子部材には冷媒が流通する流路が設けられていてもよい。この場合、上記第22項に係る方法と同様の作用効果が得られる。
[71]上記第70項に記載の方法において、中子部材のうち少なくとも流路の周囲の部分の熱伝導率が積層体の熱伝導率よりも高くてもよい。この場合、上記第23項に係る方法と同様の作用効果が得られる。
[72]上記第53項~第71項のいずれか一項に記載の方法は、第5の工程の後に、中子部材と積層体との間に電圧を印加して、樹脂部の絶縁性を検査する第8の工程をさらに含んでもよい。この場合、上記第24項に係る方法と同様の作用効果が得られる。
[73]上記第53項~第72項のいずれか一項に記載の方法において、第4の工程では、交差方向に移動可能に構成された複数の閉塞部材を、周方向に沿って並び且つヨーク部の内側に配置した後、各閉塞部材をティース部に向けて移動させることにより、各閉塞部材の外周面をスロット開口に当接させつつ、交差方向の外向きの力を積層体に対して付与してもよい。この場合、上記第25項に係る方法と同様の作用効果が得られる。
[74]上記第73項に記載の方法において、各閉塞部材の少なくとも外周面は弾性材料で構成されていてもよい。この場合、上記第26項に係る方法と同様の作用効果が得られる。
[75]上記第73項又は第74項に記載の方法は、第1の工程の後で且つ第4の工程の前に、積層体の外周面に複数の位置決め部材を当接させることにより積層体の位置決めを行う第9の工程をさらに含み、第4の工程では、各閉塞部材と各位置決め部材とで積層体を交差方向において挟持してもよい。この場合、上記第27項に係る方法と同様の作用効果が得られる。
[76]上記第75項に記載の方法において、位置決め部材は、交差方向において閉塞部材と対向するように位置していてもよい。この場合、上記第28項に係る方法と同様の作用効果が得られる。
[77]上記第75項又は第76項に記載の方法において、第4の工程では、各位置決め部材が積層体の外周面を押圧してもよい。この場合、上記第29項に係る方法と同様の作用効果が得られる。
[78]上記第53項~第77項のいずれか一項に記載の方法において、第2の工程では、複数のスロットのうち少なくとも2つのスロット内に位置決め治具を挿入しつつ、残余のスロット内に中子部材を挿入し、第5の工程の後に、少なくとも2つのスロット内から位置決め治具を抜去して中子部材をそれぞれ挿入することと、少なくとも2つのスロットと中子部材との間の充填空間に溶融状態の樹脂を充填して樹脂部を形成することとを行ってもよい。この場合、上記第30項に係る方法と同様の作用効果が得られる。
[79]上記第53項~第78項のいずれか一項に記載の方法において、中子部材は、その延在方向及び当該延在方向に交差する方向の少なくとも一方において分割された複数の分割片の組み合わせにより構成されていてもよい。この場合、上記第31項に係る方法と同様の作用効果が得られる。
[80]上記第53項~第79項のいずれか一項に記載の方法において、中子部材の少なくとも一部は、一端側から他端側に向けて縮径するテーパ形状を呈していてもよい。この場合、上記第32項に係る方法と同様の作用効果が得られる。
[81]上記第53項~第80項のいずれか一項に記載の方法において、中子部材の周面には保護被膜が設けられていてもよい。この場合、上記第33項に係る方法と同様の作用効果が得られる。
[82]上記第53項~第81項のいずれか一項に記載の方法において、第5の工程で充填空間に充填される溶融状態の樹脂は異方性フィラーを含有していてもよい。この場合、上記第34項に係る方法と同様の作用効果が得られる。
[83]上記第53項~第82項のいずれか一項に記載の方法において、第2の工程では、積層体が載置された搬送部材が、複数の中子部材が上方に向けて突出するように設けられたベース部材上に積み重ねられることにより、搬送部材に載置されている積層体のスロット内にそれぞれ中子部材が挿入されてもよい。この場合、上記第35項に係る方法と同様の作用効果が得られる。
[84]上記第83項に記載の方法において、ベース部材には、交差方向に移動可能に構成された複数の拡径部材が設けられており、第2の工程は、搬送部材がベース部材上に積み重ねられることにより、搬送部材に載置されている積層体のスロット内に中子部材がそれぞれ挿入され且つ、複数の拡径部材が周方向に沿って並ぶように複数の拡径部材がヨーク部の内側に配置されることと、各拡径部材をティース部に向けて移動させ、各拡径部材の外周面を積層体の内周面に当接させることにより、交差方向の外向きの力を積層体に対して付与することとを含んでいてもよい。この場合、上記第36項に係る方法と同様の作用効果が得られる。
[85]上記第83項又は第84項に記載の方法において、第5の工程では、第2の工程において搬送部材が積み重ねられた状態のベース部材を、ベース部材に対する搬送部材の積み重ね位置とは異なる位置に搬送した後に、充填空間に溶融状態の樹脂を充填して樹脂部を形成してもよい。この場合、上記第37項に係る方法と同様の作用効果が得られる。
[86]上記第83項~第85項のいずれか一項に記載の方法において、搬送部材のうち積層体のヨーク部よりも内側に対応する領域には貫通孔が設けられていてもよい。この場合、上記第38項に係る方法と同様の作用効果が得られる。
[87]上記第53項~第86項のいずれか一項に記載の方法において、積層体におけるスロットの内壁面は、積層体の積層方向において凹凸が並ぶ凹凸面であってもよい。この場合、上記第39項に係る方法と同様の作用効果が得られる。
[88]上記第53項~第87項のいずれか一項に記載の方法において、中子部材はスロット内において拡縮可能に構成されていてもよい。この場合、上記第40項に係る方法と同様の作用効果が得られる。
[89]上記第53項~第88項のいずれか一項に記載の方法において、第5の工程では、複数のスロットのうち一部のスロットにおける充填空間に溶融状態の樹脂を充填することを繰り返して、全てのスロットの内壁面に樹脂部を形成してもよい。この場合、上記第41項に係る方法と同様の作用効果が得られる。
[90]上記第53項~第89項のいずれか一項に記載の方法において、第5の工程では、充填空間内に溶融状態の樹脂を部分的に充填することを積層体の積層方向において順次繰り返して、充填空間内の全体に樹脂部を形成してもよい。この場合、上記第42項に係る方法と同様の作用効果が得られる。
[91]上記第53項~第90項のいずれか一項に記載の方法において、第2の工程では、スロットの内壁面と中子部材の外周面との間に、溶融状態の樹脂に対する流路抵抗が充填空間よりも小さく且つ積層体の積層方向に延びる樹脂注入流路が設けられており、第3の工程では、樹脂注入流路を介して溶融状態の樹脂を充填空間に充填してもよい。この場合、上記第43項に係る方法と同様の作用効果が得られる。
[92]上記第53項~第91項のいずれか一項に記載の方法において、各中子部材は、積層体をその積層方向から挟み込む一対の挟持プレートの少なくとも一方、及び/又は、積層体の内部に配置される複数の拡径部材のいずれかと一体化されていてもよい。
[93]上記第53項~第92項のいずれか一項に記載の方法において、樹脂部には、スロット内において互いに対向し且つ積層体の積層方向に延びる一対の切欠溝が設けられていてもよい。この場合、上記第45項に係る方法と同様の作用効果が得られる。
[94]上記第53項~第93項のいずれか一項に記載の方法において、第5の工程では、ティース部の先端側がティース部の基端側よりも温度が低くなるようにティース部又は中子部材を加熱しつつ、充填空間に溶融状態の樹脂を充填してもよい。この場合、上記第46項に係る方法と同様の作用効果が得られる。
[95]上記第53項~第94項のいずれか一項に記載の方法において、第5の工程では、充填空間のうちティース部の先端側に、相対的に流動性の低い溶融状態の樹脂を充填すると共に、充填空間のうちティース部の基端部側に、相対的に流動性の高い溶融状態の樹脂を充填してもよい。この場合、第47項に記載の方法と同様に作用効果が得られる。
[96]上記第53項~第95項のいずれか一項に記載の方法において、第5の工程では、ティース部のうち溶融状態の樹脂が充填される一端面側よりも他端面側の温度が低くなるようにティース部又は中子部材を加熱しつつ、充填空間に溶融状態の樹脂を充填してもよい。この場合、上記第48項に係る方法と同様の作用効果が得られる。
[97]上記第53項~第96項のいずれか一項に記載の方法において、第5の工程では、充填空間に、相対的に流動性の低い溶融状態の樹脂を充填した後に、相対的に流動性の高い溶融状態の樹脂を充填してもよい。この場合、第49項に記載の方法と同様の作用効果が得られる。
[98]上記第53項~第97項のいずれか一項に記載の方法において、第5の工程では、中子部材内に設けられた樹脂流路を通じて、充填空間に溶融状態の樹脂を充填してもよい。この場合、上記第50項に係る方法と同様の作用効果が得られる。
[99]上記第53項~第98項のいずれか一項に記載の方法において、第5の工程では、充填空間に溶融状態の樹脂を充填した後に、中子部材を冷却してもよい。この場合、上記第51項に係る方法と同様の作用効果が得られる。
[100]上記第53項~第99項のいずれか一項に記載の方法において、第5の工程では、中子部材を加熱しつつ、充填空間に溶融状態の樹脂を充填してもよい。この場合、上記第52項に係る方法と同様の作用効果が得られる。
[101]本実施形態の他の例に係る固定子積層鉄心は、複数の鉄心部材が積層されて構成されており、環状のヨーク部と、ヨーク部に交差する交差方向にヨーク部から延びる複数のティース部とを含む積層体と、複数のティース部のうちヨーク部の周方向において隣り合うティース部の間の空間であるスロットの内壁面を覆うように設けられた樹脂部とを備える。樹脂部は、スロットのうちスロット開口側の開放端部を閉塞していない。本実施形態の他の例に係る固定子積層鉄心は、上記第1項に係る方法と同様の作用効果を奏する。
[102]上記第101項に記載の固定子積層鉄心において、樹脂部は、スロットのうち開放端部の内壁面に設けられていなくてもよい。この場合、上記第2項に係る方法と同様の作用効果が得られる。
[103]上記第102項に記載の固定子積層鉄心において、開放端部の内壁面はティース部の延在方向に対して傾斜する傾斜面を有してもよい。この場合、上記第4項に係る方法と同様の作用効果が得られる。
[104]上記第101項~第103項のいずれか一項に記載の固定子積層鉄心において、開放端部は、周方向において、ティース部のうちヨーク部側の基端部よりも突出していてもよい。この場合、上記第5項に係る方法と同様の作用効果が得られる。
[105]上記第104項に記載の固定子積層鉄心において、樹脂部は、周方向において、開放端部よりも突出していなくてもよい。この場合、上記第5項に係る方法と同様の作用効果が得られる。
[106]上記第101項~第105項のいずれか一項に記載の固定子積層鉄心において、樹脂部は積層体の積層方向において積層体の端面よりも外方に突出していてもよい。この場合、上記第6項に係る方法と同様の作用効果が得られる。
[107]上記第106項に記載の固定子積層鉄心において、樹脂部は、スロットの内壁面からティース部の端面に回り込むように、ティース部の端面の少なくとも一部に形成されていてもよい。この場合、上記第7項に係る方法と同様の作用効果が得られる。
[108]上記第107項に記載の固定子積層鉄心において、ティース部の端面は、樹脂部で覆われた被覆領域と、樹脂部で覆われていない非被覆領域とを有してもよい。この場合、上記第9項に係る方法と同様の作用効果が得られる。
[109]上記第107項又は第108項に記載の固定子積層鉄心において、樹脂部は、スロットの内壁面からヨーク部の端面に回り込むように、ヨーク部の端面の少なくとも一部に形成されていてもよい。この場合、上記第10項に係る方法と同様の作用効果が得られる。
[110]上記第109項に記載の固定子積層鉄心において、樹脂部のうちヨーク部の端面に形成されている部分は、周方向に沿って環状に延びていてもよい。この場合、上記第11項に係る方法と同様の作用効果が得られる。
[111]上記第109項~第110項のいずれか一項に記載の固定子積層鉄心において、樹脂部のうちヨーク部の端面に位置する一部は、残部よりも背高で且つ周方向に延びる樹脂壁部であってもよい。この場合、上記第12項に係る方法と同様の作用効果が得られる。
[112]上記第107項~第111項のいずれか一項に記載の固定子積層鉄心において、樹脂部のうちスロットの内壁面に設けられている樹脂主部が樹脂部のうち積層体の端面に設けられている樹脂端部よりもスロット側に向けて突出するように、樹脂主部が樹脂端部に対してずれて配置されていてもよい。この場合、上記第8項に係る方法と同様の作用効果が得られる。
[113]上記第112項に記載の固定子積層鉄心において、樹脂部のうち積層体の端面に設けられている樹脂端部の角部が面取りされていてもよい。この場合、上記第14項に係る方法と同様の作用効果が得られる。
[114]上記第107項~第113項のいずれか一項に記載の固定子積層鉄心において、積層体の端面のうち樹脂部に覆われている部分は、粗面化処理されているか、又は積層体の端面のうち他の部分よりも窪んでいてもよい。この場合、上記第13項に係る方法と同様の作用効果が得られる。
[115]上記第107項~第114項のいずれか一項に記載の固定子積層鉄心において、積層体の積層方向における積層体の両端面に向かうにつれて、ティース部の幅が狭くなるか及び/又はヨーク部の内径が大きくなっていてもよい。この場合、上記第15項に係る方法と同様の作用効果が得られる。
[116]上記第101項~第115項のいずれか一項に記載の固定子積層鉄心において、樹脂部には異方性フィラーが含まれていてもよい。この場合、上記第34項に係る方法と同様の作用効果が得られる。
[117]上記第101項~第116項のいずれか一項に記載の固定子積層鉄心において、積層体におけるスロットの内壁面は、積層体の積層方向において凹凸が並ぶ凹凸面であってもよい。この場合、上記第39項に係る方法と同様の作用効果が得られる。
[118]上記第101項~第117項のいずれか一項に記載の固定子積層鉄心において、樹脂部には、スロット内において互いに対向し且つ積層体の積層方向に延びる一対の切欠溝が設けられていてもよい。この場合、上記第45項に係る方法と同様の作用効果が得られる。
[119]本実施形態の他の例に係る固定子積層鉄心は、複数の鉄心部材が積層されて構成されており、環状のヨーク部と、ヨーク部に交差する交差方向にヨーク部から延びる複数のティース部とを含む積層体と、複数のティース部のうちヨーク部の周方向において隣り合うティース部の間の空間であるスロットの内壁面を覆うと共にスロットのスロット開口を閉塞するように設けられた樹脂部とを備える。樹脂部のうちスロットの内壁面に設けられている樹脂主部が樹脂部のうちティース部及びヨーク部の端面に設けられている樹脂端部よりもスロット側に向けて突出するように、樹脂主部が樹脂端部に対してずれて配置されている。本実施形態の他の例に係る固定子積層鉄心は、上記第53項に係る方法と同様の作用効果を奏する。
[120]上記第119項に記載の固定子積層鉄心において、樹脂部は積層体の積層方向において積層体の端面よりも外方に突出していてもよい。この場合、上記第6項に係る方法と同様の作用効果が得られる。
[121]上記第120項に記載の固定子積層鉄心において、樹脂部は、スロットの内壁面からティース部の端面に回り込むように、ティース部の端面の少なくとも一部に形成されていてもよい。この場合、上記第7項に係る方法と同様の作用効果が得られる。
[122]上記第121項に記載の固定子積層鉄心において、ティース部の端面は、樹脂部で覆われた被覆領域と、樹脂部で覆われていない非被覆領域とを有してもよい。この場合、上記第9項に係る方法と同様の作用効果が得られる。
[123]上記第121項又は第122項に記載の固定子積層鉄心において、樹脂部は、スロットの内壁面からヨーク部の端面に回り込むように、ヨーク部の端面の少なくとも一部に形成されていてもよい。この場合、上記第10項に係る方法と同様の作用効果が得られる。
[124]上記第123項に記載の固定子積層鉄心において、樹脂部のうちヨーク部の端面に形成されている部分は、周方向に沿って環状に延びていてもよい。この場合、上記第11項に係る方法と同様の作用効果が得られる。
[125]上記第123項又は第124項に記載の固定子積層鉄心において、樹脂部のうちヨーク部の端面に位置する一部は、残部よりも背高で且つ周方向に延びる樹脂壁部であってもよい。この場合、上記第12項に係る方法と同様の作用効果が得られる。
[126]上記第121項~第125項のいずれか一項に記載の固定子積層鉄心において、樹脂部のうちスロットの内壁面に設けられている樹脂主部が樹脂部のうち積層体の端面に設けられている樹脂端部よりもスロット側に向けて突出するように、樹脂主部が樹脂端部に対してずれて配置されていてもよい。この場合、上記第8項に係る方法と同様の作用効果が得られる。
[127]上記第126項に記載の固定子積層鉄心において、樹脂端部の角部が面取りされていてもよい。この場合、上記第14項に係る方法と同様の作用効果が得られる。
[128]上記第121項~第127項のいずれか一項に記載の固定子積層鉄心において、積層体の端面のうち樹脂部に覆われている部分は、粗面化処理されているか、又は積層体の端面のうち他の部分よりも窪んでいてもよい。この場合、上記第13項に係る方法と同様の作用効果が得られる。
[129]上記第121項~第128項のいずれか一項に記載の固定子積層鉄心において、積層体の積層方向における積層体の両端面に向かうにつれて、ティース部の幅が狭くなるか及び/又はヨーク部の内径が大きくなっていてもよい。この場合、上記第15項に係る方法と同様の作用効果が得られる。
[130]上記第119項~第129項のいずれか一項に記載の固定子積層鉄心において、樹脂部には異方性フィラーが含まれていてもよい。この場合、上記第34項に係る方法と同様の作用効果が得られる。
[131]上記第119項~第130項のいずれか一項に記載の方法において、積層体におけるスロットの内壁面は、積層体の積層方向において凹凸が並ぶ凹凸面であってもよい。この場合、上記第39項に係る方法と同様の作用効果が得られる。
[132]上記第119項~第131項のいずれか一項に記載の方法において、樹脂部には、スロット内において互いに対向し且つ積層体の積層方向に延びる一対の切欠溝が設けられていてもよい。この場合、上記第45項に係る方法と同様の作用効果が得られる。
≪実施形態の例示≫
以下に、本開示に係る実施形態の一例について、図面を参照しつつより詳細に説明する。以下の説明において、同一要素又は同一機能を有する要素には同一符号を用いることとし、重複する説明は省略する。
[固定子積層鉄心の構成]
まず、図1~図4を参照して、固定子積層鉄心1の構成について説明する。固定子積層鉄心1は、固定子(ステータ)の一部である。固定子は、固定子積層鉄心1に巻線が取り付けられたものである。固定子が回転子(ロータ)と組み合わせられることにより、電動機(モータ)が構成される。
固定子積層鉄心1は、積層体2と、複数の樹脂部3とを備える。積層体2は、円筒形状を呈している。すなわち、積層体2の中央部分には、中心軸Axに沿って延びる貫通孔2aが設けられている。貫通孔2a内には、回転子が配置可能である。
積層体2は、ヨーク部4と、複数のティース部5とを有する。ヨーク部4は、円環状を呈しており、中心軸Axを囲むように延びている。ヨーク部4の径方向(以下、単に「径方向」という。)における幅、内径、外径及び厚さはそれぞれ、モータの用途及び性能に応じて種々の大きさに設定しうる。
積層体2(ヨーク部4)の外周面には、複数の凹溝6(図1では6つの異形部)が設けられている。積層体2においては、一対の凹溝6Aと、4つの凹溝6Bが設けられている。凹溝6は、中心軸Ax側に向けて窪んでいる。凹溝6は、積層体2の積層方向(以下、単に「積層方向」という。)において、積層体2の一端面から他端面にかけて直線状に延びている。一対の凹溝6Aは、中心軸Axに関して対向している。4つの凹溝6Bは、ヨーク部4の周方向(以下、単に「周方向」という。)において、略等間隔で並んでいる。
ヨーク部4の外周面には、径方向外側に向けて突出する複数の耳金部(図示せず)が一体的に設けられていてもよい。当該耳金部には、積層体2の積層方向において耳金部を貫通する貫通孔が設けられていてもよい。貫通孔は、例えば、固定子積層鉄心1を電動機のハウジング(図示せず)に固定するためのボルトの挿通孔として機能する。耳金部の数(貫通孔の数)は、固定子積層鉄心1の種類等に応じて適宜設定してもよい。
各ティース部5は、ヨーク部4の内縁から中心軸Ax側に向かうように径方向(ヨーク部4に対して交差する方向)に沿って延びている。すなわち、各ティース部5は、ヨーク部4の内縁から中心軸Ax側に向けて突出している。積層体2においては、48個のティース部5がヨーク部4に一体的に形成されている。各ティース部5は、周方向において、略等間隔で並んでいる。隣り合うティース部5の間には、巻線(図示せず)を配置するための空間であるスロット7が画定されている。
各ティース部5は、図2及び図3に詳しく示されるように、基端部5aと、開放端部5bとを含む。基端部5aは、ヨーク部4から延びており、上方から見て矩形状を呈している。開放端部5bは、基端部5aに対して中心軸Ax側の端部に設けられている。開放端部5bは、ティース部5のうち中心軸Ax側の先端部でもある。開放端部5bは、周方向において隣り合う他の開放端部5bと離間している。そのため、周方向において隣り合う開放端部5b同士の間には、積層方向に延びるスリット状の開口(スロット開口)8が画定されている。スロット7は、開口8と連通している。
開放端部5bは、周方向において基端部5aよりも突出している。すなわち、開放端部5bは、基端部5aよりも幅広であり、周方向において基端部5aよりも外方に位置する一対の突出部5cを有している。突出部5cは、台形状を呈している。突出部5cの内壁面F1は、径方向に沿って開口8に向かうにつれて、周方向において隣り合う他のティース部5に近づいている。すなわち、突出部5cの内壁面F1は、ティース部5の延在方向(径方向)に対して傾斜している。換言すれば、開放端部5bは、ティース部5の延在方向に対して傾斜する傾斜面である内壁面F1(第1の傾斜面)を有している。
積層体2は、複数の打抜部材W(鉄心部材)が積み重ねられて構成されている。打抜部材Wは、後述する電磁鋼板ES(金属板;被加工板)が所定形状に打ち抜かれた板状体であり、積層体2と対応する形状を呈している。積層体2は、いわゆる転積によって構成されていてもよい。「転積」とは、打抜部材W同士の角度を相対的にずらしつつ、複数の打抜部材Wを積層することをいう。転積は、主に積層体2の板厚偏差を相殺することを目的に実施される。転積の角度は、任意の大きさに設定してもよい。
複数の樹脂部3はそれぞれ、スロット7内に一つずつ設けられている。具体的には、樹脂部3は、図2~図4に示されるように、主部3aと、端部3bとを含む。主部3aは、スロット7のうち開放端部5bよりも内側(ヨーク部4側)の内壁面F2を覆うように配置されている。すなわち、主部3a(樹脂部3)は、開放端部5bの内壁面を覆っておらず、開放端部5b及び開口8を閉塞していない。さらには、主部3a(樹脂部)は、積層体2(ティース部5)の内周面も覆っていない。主部3aの厚さは、樹脂部3の誘電率と、固定子積層鉄心1が用いられる電動機の使用電圧とに基づいて適宜設定してもよい。主部3aの厚さは、例えば、突出部5cの突出量よりも小さくてもよく、0.2mm程度であってもよい。この場合、主部3aは、周方向において開放端部5b(突出部5c)よりも突出していない。
端部3bは、積層方向において主部3aの上端及び下端にそれぞれ一体的に設けられており、内壁面F2から積層体2の端面(ヨーク部4の端面F3及びティース部5の端面F4)に回り込んでいる。端部3bは、積層方向において端面F3,F4よりも外方に突出していると共に、端面F3,F4を部分的に覆っている。すなわち、端面F3,F4はそれぞれ、樹脂部3で覆われた被覆領域R1と、樹脂部3で覆われていない非被覆領域R2とを有する(図4参照)。本実施形態においては、端面F4(ティース部5)における非被覆領域R2は、ティース部5の延在方向(積層体2の径方向)に沿って直線状に延びている。そのため、ティース部5において、周方向において隣り合う樹脂部3の端部3b同士は接続されていない。
本実施形態では、樹脂部3の角部が面取りされている。そのため、樹脂部3のうち内壁面F2から端面F3,F4に回り込む角部についても、面取りされている。面取りの形状としては、R面取りであってもよいし、C面取りであってもよいし、当該角部が削られた状態であれば、例えば台形状、階段状等の他の形状であってもよい。あるいは、ティース部5に取り付けられる巻線の形状に沿うように、樹脂部3の主部3a又は端部3bが、ティース部の延在方向において凹部と凸部とが交互に並んだ凹凸状を呈していてもよい。
[固定子積層鉄心の製造装置]
続いて、図5を参照して、固定子積層鉄心1の製造装置100について説明する。
製造装置100は、帯状の金属板である電磁鋼板ESから固定子積層鉄心1を製造するための装置である。製造装置100は、アンコイラー110と、送出装置120と、打抜装置130と、樹脂充填装置200と、コントローラ140(制御部)とを備える。
アンコイラー110は、コイル状に巻回された帯状の電磁鋼板ESであるコイル材111が装着された状態で、コイル材111を回転自在に保持する。送出装置120は、電磁鋼板ESを上下から挟み込む一対のローラ121,122を有する。一対のローラ121,122は、コントローラ140からの指示信号に基づいて回転及び停止し、電磁鋼板ESを打抜装置130に向けて一方向に間欠的に順次送り出す。
コイル材111を構成する電磁鋼板ESの長さは、例えば500m~10000m程度であってもよい。電磁鋼板ESの厚さは、例えば0.1mm~0.5mm程度であってもよい。電磁鋼板ESの厚さは、より優れた磁気的特性を有する固定子積層鉄心1を得る観点から、例えば0.1mm~0.3mm程度であってもよい。電磁鋼板ESの幅は、例えば50mm~500mm程度であってもよい。
打抜装置130は、コントローラ140からの指示信号に基づいて動作する。打抜装置130は、送出装置120によって間欠的に送り出される電磁鋼板ESを順次打ち抜き加工して打抜部材Wを形成する機能と、打ち抜き加工によって得られた打抜部材Wを順次積層して積層体2を製造する機能とを有する。
積層体2は、打抜装置130から排出されると、打抜装置130と樹脂充填装置200との間を延びるように設けられたコンベアCvに載置される。コンベアCvは、コントローラ140からの指示に基づいて動作し、積層体2を樹脂充填装置200に送り出す。なお、打抜装置130と樹脂充填装置200との間において、積層体2はコンベアCv以外によって搬送されてもよい。例えば、積層体2は、コンテナに載置された状態で、人手によって搬送されてもよい。
樹脂充填装置200は、充填空間V1(後述する)に溶融状態の樹脂を充填し、積層体2を構成する打抜部材W同士を接続する機能を有する。樹脂充填装置200の詳細については後述する。
コントローラ140は、例えば、記録媒体(図示せず)に記録されているプログラム又はオペレータからの操作入力等に基づいて、送出装置120及び打抜装置130をそれぞれ動作させるための指示信号を生成し、送出装置120及び打抜装置130に送信する。
[樹脂充填装置の構成]
続いて、樹脂充填装置200の構成について、図6~図9を参照して説明する。樹脂充填装置200は、下型210(挟持プレート)と、複数の案内シャフト220と、複数の位置決めブロック230A(位置決め部材)と、複数の位置決めピン230B(位置決め部材)と、一対のオーバーフロープレート240(挟持プレート)と、拡径具250と、複数の中子部材260と、下側カルプレート270(挟持プレート)と、上側カルプレート280(挟持プレート)と、上型290とを備える。
下型210は、図6に示されるように、矩形状を呈する板状部材である。下型210は、載置された積層体2を保持するように構成されている。下型210には、複数の挿入穴211と、複数の挿入穴212と、複数の挿入穴213と、複数の挿入穴214と、複数の案内レール215とが設けられている。
本実施形態では、4つの挿入穴211が下型210に設けられている。各挿入穴211は、下型210の四隅に一つずつ位置している。挿入穴211は、案内シャフト220の外形に対応する形状を有している。本実施形態では、挿入穴211は円形状を呈している。
本実施形態では、2つの挿入穴212が下型210に設けられている。挿入穴212は、下型210の一対の外縁近傍にそれぞれ位置しており、下型210の中心部に関して対向している。挿入穴212は、位置決めブロック230Aに対応する形状を有している。本実施形態では、挿入穴212は略矩形状を呈している。
本実施形態では、4つの挿入穴213が下型210に設けられている。挿入穴213は、挿入穴211よりも内側において、下型210の四隅に一つずつ位置している。挿入穴213は、位置決めピン230Bの外形に対応する形状を有している。本実施形態では、挿入穴213は円形状を呈している。
本実施形態では、48個の挿入穴214が下型210に設けられている。複数の挿入穴214は、挿入穴211~213よりも内側において、略等間隔で円状に並んでいる。各挿入穴214は、下型210に載置された状態の積層体2の各スロット7と一つずつ対応する位置に配置されている。挿入穴214は、中子部材260に対応する形状を有し且つ中子部材260と同程度の大きさである。本実施形態では、挿入穴214は、略台形状を呈している。挿入穴214は、下型210の中心部から外側に向けて放射状に延びている。挿入穴214をなす一対の底辺のうち短辺側は、下型210の中心部寄りに位置している。挿入穴214をなす一対の底辺のうち長辺側は、下型210の外縁寄りに位置している。
本実施形態では、4つの案内レール215が下型210の表面から上方に向けて突出するように設けられている。複数の案内レール215は、挿入穴214よりも内側において、略等間隔で円状に並んでいる。案内レール215は、下型210の中心部から外側に向けて放射状に延びている。
各案内シャフト220は、対応する挿入穴211内においてそれぞれ固定されている。すなわち、本実施形態では、樹脂充填装置200は、挿入穴211と同数の4本の案内シャフト220を備えている。案内シャフト220は、円柱形状を呈している。各案内シャフト220の上端近傍には、図示しないリテーナ(例えば、ボールリテーナ)が取り付けられている。当該各リテーナは、図示しない弾性部材(例えば、圧縮コイルばね)によって上方に付勢されている。
各位置決めブロック230Aは、対応する挿入穴212内においてそれぞれ固定されている。すなわち、本実施形態では、樹脂充填装置200は、挿入穴211と同数の2つの位置決めブロック230Aを備えている。位置決めブロック230Aは、略直方体形状を呈している。位置決めブロック230Aの一の側面には、上下方向において直線状に延びる突条231が設けられている。位置決めブロック230Aは、突条231が下型210の中心部側を向くように挿入穴212内に配置される。
各位置決めピン230Bは、対応する挿入穴213内においてそれぞれ固定されている。すなわち、本実施形態では、樹脂充填装置200は、挿入穴213と同数の4つの位置決めピン230Bを備えている。位置決めピン230Bは、円柱形状を呈している。
オーバーフロープレート240(以下では、単に「プレート240」と表記する。)は、円環状を呈する薄板である。プレート240には、一つの貫通孔240aと、複数の貫通孔242と、複数の貫通孔243と、複数の貫通孔244とが設けられている。貫通孔240aは、円形状を呈しており、プレート240の中心部に位置している。貫通孔240aは、積層体2の内径と同程度か積層体2の内径よりも若干大きくてもよい。
本実施形態では、2つの貫通孔242がプレート240に設けられている。貫通孔242は、プレート240の外周縁近傍にそれぞれ位置しており、貫通孔240aを介して対向している。貫通孔242は、位置決めブロック230Aに対応する形状を有している。本実施形態では、貫通孔242は略矩形状を呈している。
本実施形態では、4つの貫通孔243がプレート240に設けられている。貫通孔243は、プレート240の外周縁に沿って略等間隔で円状に並んでいる。貫通孔243は、位置決めピン230Bの外形に対応する形状を有している。本実施形態では、貫通孔243は円形状を呈している。
本実施形態では、48個の貫通孔244がプレート240に設けられている。複数の貫通孔244は、貫通孔242,243よりも内側において、貫通孔240aを囲むように略等間隔で円状に並んでいる。各貫通孔244は、下型210に載置された状態の積層体2の各スロット7と一つずつ対応する位置に配置されている。貫通孔244は、中子部材260に対応する形状を有し且つ中子部材260よりも一回り大きい。本実施形態では、貫通孔244は、略台形状を呈している。貫通孔244は、貫通孔240aから外側に向けて放射状に延びている。貫通孔244をなす一対の底辺のうち短辺側は、貫通孔240a寄りに位置している。貫通孔244をなす一対の底辺のうち長辺側は、プレート240の外周縁寄りに位置している。
拡径具250は、複数の拡径部材251と、押子部材252とを含む。拡径部材251は、上方から見て扇形状を呈する。拡径部材251は、例えば、円環状の柱状体を複数に分割することにより得ることができる。拡径部材251の上面及び下面は共に、円弧状の外周縁と、当該外周縁よりも長さが短い円弧状の内周縁と、外周縁の一端と内周縁の一端を接続する直線状の側縁と、外周縁の他端と内周縁の他端とを接続する直線状の側縁とで構成されている。拡径部材251の内周面253は、下方に向かうにつれて内側に近づく傾斜面を呈している。
拡径部材251の下面には、凹溝254が設けられている(図10等参照)。凹溝254は、拡径部材251の内周面253と外周面との間において延びる長穴状を呈する。凹溝254内には、対応する案内レール215が挿入可能である。凹溝254の長さは、案内レール215の長さよりも長い。そのため、拡径部材251は、案内レール215の延在方向に移動可能である。
押子部材252は、拡径部材251の内周面253内に配置されている。押子部材252は、先端(下端)に向かうにつれて縮径する円錐台形状を呈している。そのため、押子部材252の外周面は、錐面状を呈しており、拡径部材251の内周面253に対応する形状を有する。
中子部材260は、図7に示されるように、略台形状の底面を有する四角柱形状を呈している。本実施形態では、樹脂充填装置200は、挿入穴214及び貫通孔244,274,284と同数の48個の中子部材260を備えている。
下側カルプレート270(以下では、単に「プレート270」と表記する。)は、図7及び図8に示されるように、矩形状を呈する板状部材である。プレート270には、一つの貫通孔270aと、複数の貫通孔271と、複数の貫通孔272と、複数の貫通孔273と、複数の貫通孔274と、複数の貫通孔275とが設けられている。貫通孔270aは、円形状を呈しており、プレート270の中心部に位置している。貫通孔270aは、積層体2の内径と同程度か積層体2の内径よりも若干大きくてもよい。
本実施形態では、4つの貫通孔271がプレート270に設けられている。各貫通孔271は、プレート270の四隅に一つずつ位置している。各貫通孔271内には、案内シャフト220の上端近傍に位置するリテーナが挿通されている。そのため、プレート270は、案内シャフト220に対してその延在方向(上下方向)にスライド可能である。本実施形態では、貫通孔271は円形状を呈している。
本実施形態では、2つの貫通孔272がプレート270に設けられている。貫通孔272は、プレート270の一対の外縁近傍にそれぞれ位置しており、貫通孔270aを介して対向している。貫通孔272は、位置決めブロック230Aに対応する形状を有している。本実施形態では、貫通孔272は略矩形状を呈している。
本実施形態では、4つの貫通孔273がプレート270に設けられている。貫通孔273は、貫通孔271よりも内側において、プレート270の四隅に一つずつ位置している。貫通孔273は、位置決めピン230Bの外形に対応する形状を有している。本実施形態では、貫通孔273は円形状を呈している。
本実施形態では、48個の貫通孔274がプレート270に設けられている。複数の貫通孔274は、貫通孔271~273よりも内側において、貫通孔270aを囲むように略等間隔で円状に並んでいる。各貫通孔274は、下型210に載置された状態の積層体2の各スロット7と一つずつ対応する位置に配置されている。貫通孔274は、挿入穴214と同等の形状を呈している。
本実施形態では、図8に示されるように、一つの貫通孔274の周囲に3つの貫通孔275が配置されている。具体的には、貫通孔274をなす一対の底辺のうち長辺と隣り合うように一つの貫通孔275が配置されている。貫通孔274をなす一対の側辺と隣り合うように貫通孔275が一つずつ配置されている。
上側カルプレート280(以下では、単に「プレート280」と表記する。)は、図7及び図9に示されるように、円環状を呈する板状部材である。プレート280には、一つの貫通孔280aと、複数の貫通孔284と、複数の貫通孔285と、複数の凹溝286が設けられている。貫通孔280aは、円形状を呈しており、プレート280の中心部に位置している。貫通孔280aは、積層体2の内径と同程度か積層体2の内径よりも若干大きくてもよい。
本実施形態では、48個の貫通孔284がプレート280に設けられている。複数の貫通孔284は、貫通孔280aを囲むように略等間隔で円状に並んでいる。各貫通孔284は、下型210に載置された状態の積層体2の各スロット7と一つずつ対応する位置に配置されている。貫通孔284は、挿入穴214及び貫通孔274と同等の形状を呈している。
本実施形態では、図9に示されるように、一つの貫通孔284の周囲に3つの貫通孔285が配置されている。具体的には、貫通孔284をなす一対の底辺のうち長辺と隣り合うように一つの貫通孔285が配置されている。貫通孔284をなす一対の側辺と隣り合うように貫通孔285が一つずつ配置されている。
本実施形態では、12個の凹溝286がプレート280の表面に形成されている。複数の凹溝286は、貫通孔284の周囲を囲むように円状に並んでいる。一つの凹溝286は、櫛歯状を呈しており、4つの貫通孔284をプレート280の外周縁側から囲んでいる。具体的には、凹溝286は、一つの主部286aと、複数の分岐部286bとを含む。主部286aは、プレート280の外周縁と貫通孔284との間において、プレート280の外周縁に沿って延びている。複数の分岐部286bは、主部286aから分岐して貫通孔280aに向けて延びている。各分岐部286bの先端部は、一つの凹溝286が囲む4つの貫通孔284の周囲に配置された貫通孔285に接続されている。
上型290は、図7に示されるように、矩形状を呈する板状部材である。上型290には、複数の挿入穴291(図14参照)と、複数の貫通孔292が設けられている。本実施形態では、4つの挿入穴291が上型290の下面側に設けられている。各挿入穴291は、上型290の四隅に一つずつ位置している。挿入穴291は、案内シャフト220の外形に対応する形状を有している。本実施形態では、挿入穴291は円形状を呈している。本実施形態では、各貫通孔292は、図9に示されるように、プレート280の各凹溝286の主部286aと一つずつ対応する位置に配置されている。
[固定子積層鉄心の製造方法]
続いて、図10~図16を参照して、固定子積層鉄心1の製造方法について説明する。まず、積層体2を形成する(第1の工程)。具体的には、コントローラ140の指示に基づいて、送出装置120によって電磁鋼板ESを打抜装置130に送り出し、打抜装置130によって電磁鋼板ESの被加工部位を所定形状に打ち抜く。これにより、打抜部材Wが形成される。この打抜加工を繰り返すことにより、複数の打抜部材Wが所定枚数積層されて、一つの積層体2が製造される。
打抜部材Wを形成する際には、積層体2のスロット7に対応する領域と、積層体2の位置決め部(例えば、凹溝6、ボルト孔等)に対応する領域とを、電磁鋼板ESから同時に打ち抜いてもよい。この場合、積層体2の位置決め部とスロット7との相対位置のずれを低減することができる。
続いて、コントローラ140の指示に基づいて、打抜装置130から排出された積層体2をコンベアCvが樹脂充填装置200まで搬送する。樹脂充填装置200においては、積層体2が到達するまでに、下型210に積層体2を載置するための準備が行われる。具体的には、図10に示されるように、各挿入穴211に案内シャフト220が一つずつ取り付けられ、各挿入穴212に位置決めブロック230Aが一つずつ取り付けられ、各挿入穴213に位置決めピン230Bが一つずつ取り付けられる。また、拡径部材251の凹溝254内に案内レール215が挿入されるように、拡径具250が下型210上に載置される。このとき、押子部材252は、内周面253に対して相対的に上方に位置している。そのため、各拡径部材251は、全体として下型210の中心部に寄っている。
次に、図11に示されるように、プレート240を下型210上に載置する。具体的には、貫通孔240aに拡径具250が挿通され、各貫通孔242に位置決めブロック230Aが一つずつ挿通され、各貫通孔243に位置決めピン230Bが一つずつ挿通されるように、プレート240を下型210に向けて降下させる。このとき、プレート240の各貫通孔244は挿入穴214と一つずつ重なり合う。上方から見て、貫通孔244をなす一対の底辺のうち短辺側の部分は、挿入穴214をなす一対の底辺のうち短辺側の部分と重なり合っている。一方、貫通孔244は挿入穴214よりも一回り大きいので、上方から見て、貫通孔244をなす当該短辺よりも外側部分は、挿入穴214をなす当該短辺よりも外側部分よりも外方に位置している。
次に、図11に示されるように、準備完了済の下型210上に積層体2を載置する。具体的には、積層体2の貫通孔2aに拡径具250が挿通され、各凹溝6Aに位置決めブロック230Aの突条231が一つずつ係合され、各凹溝6Bに位置決めピン230Bの外周面が一つずつ係合されるように、積層体2を下型210及びプレート240に向けて降下させる。本実施形態では、各位置決めピン230Bが、径方向において対応する拡径部材251と対向するように位置している。このとき、積層体2の各スロット7は、貫通孔244と一つずつ重なり合う。また、各拡径部材251が、貫通孔2a内において周方向に沿って並ぶように、ヨーク部4及びティース部5の内側に位置している(第6の工程)。さらに、位置決めブロック230Aの突条231と、位置決めピン230Bの外周面とによって、下型210に対する積層体2の位置決めが行われる(第8の工程)。
次に、図11に示されるように、積層体2上にプレート240を載置する。これにより、積層体2は一対のプレート240で挟持され、積層体2の各端面はプレート240のうち貫通孔244を除く領域で覆われる(第4の工程)。
次に、図12に示されるように、各スロット7内に中子部材260を一つずつ挿入する(第2の工程)。このとき、積層方向において連通している挿入穴214、貫通孔244及びスロット7内に、一つの中子部材260が配置される。具体的には、図13に示されるように、中子部材260の本体部260aは、スロット7の延在方向(積層体2の径方向)に沿って延びており、スロット7の内壁面F2と離間している。中子部材260の閉塞部260bは、開口8側において本体部260aと一体的に接続されており、開放端部5bを閉塞している。そのため、閉塞部260bよりも本体部260a側においては、本体部260aの外周面とスロット7の内壁面F2との間に充填空間V1が形成されている。
本実施形態では、閉塞部260bは、台形状を呈しており、開口8に向かうにつれて幅狭となっている。すなわち、閉塞部260bの一対の外側面F5は、中子部材260の延在方向(積層体2の径方向)に対して傾斜している。換言すれば、閉塞部260bは、中子部材260の延在方向に対して傾斜する傾斜面である外側面F5(第2の傾斜面)を有している。閉塞部260bの外側面F5と開放端部5bの内壁面F2とは、互いに当接している。一方、中子部材260(閉塞部260b)は、突出部5cの間には存在していない。そのため、閉塞部260bは、開口8よりもスロット7の内側の領域において、スロット7の内壁面と当接している。
図12に戻って、充填空間V1は、その上下においてプレート240の貫通孔244と連通している。すなわち、貫通孔244と中子部材260とで囲まれる空間が、充填空間V1と連通する補助空間V2として機能する。本実施形態では、補助空間V2は、充填空間V1に対向しつつ、ヨーク部4の端面F3及びティース部5の端面F4と部分的に対向するように充填空間V1から連続的に拡がっている(図15参照)。換言すれば、プレート240のうち貫通孔244以外の領域は、積層体2の端面F3,F4と当接している。
次に、図12に示されるように、拡径具250の押子部材252を下方に向けて押し込む。これにより、押子部材252の周面(錐面)が各拡径部材251の内周面253に当接した状態のまま、押子部材252が各拡径部材251に対して押しつけられる。そのため、押子部材252の周面(錐面)が内周面253上を摺動しながら内周面253に外向きの力を付与する。従って、各拡径部材251は、案内レール215によって案内されつつ、積層体2の径方向外側に移動する。これにより、各拡径部材251の外周面はそれぞれ貫通孔2a,240aの内周面に当接し、これらに対して径方向外向きの力を付与する(第7の工程)。ここで、積層体2は、その外周面側において位置決めブロック230A及び位置決めピン230Bによって位置決めされている。そのため、拡径部材251によって径方向外向きの力が付与されると、積層体2は、拡径部材251と位置決めブロック230A及び位置決めピン230Bとの間で径方向において挟持される。
次に、図14に示されるように、積層体2及びプレート240上にプレート270を載置する。具体的には、プレート270の貫通孔270aに拡径具250が挿通され、各貫通孔271に案内シャフト220が一つずつ挿通され、各貫通孔272に位置決めブロック230Aが一つずつ挿通され、各貫通孔273に位置決めピン230Bが一つずつ挿通され、各貫通孔274に中子部材260が一つずつ挿通されるように、プレート270を積層体2及びプレート240に向けて降下させる。このとき、図15に示されるように、一つの貫通孔244の周りを3つの貫通孔275が囲んでおり、これらの貫通孔275が上方から見て貫通孔244と部分的に重なり合っている。すなわち、貫通孔275は、対応する貫通孔244と連通している。
こうして、積層体2の下側に位置する補助空間V2が下型210で覆われ、積層体2の上側に位置する補助空間V2がプレート270で覆われた状態となる。すなわち、下型210と貫通孔244との組み合わせにより生ずる凹溝によって下側の補助空間V2が構成されており、プレート270と貫通孔244との組み合わせにより生ずる凹溝によって上側の補助空間V2が構成されている。
次に、図14に示されるように、プレート270上にプレート280を載置する。こうして、積層体2は、下型210とプレート270,280との間で挟持される。具体的には、各貫通孔284に中子部材260が一つずつ挿通されるように、プレート280をプレート270に向けて降下させる。このとき、図15に示されるように、一つの貫通孔244の周りを3つの貫通孔285が囲んでおり、これらの貫通孔285が上方から見て貫通孔275と重なり合っている。すなわち、貫通孔285は、対応する貫通孔275と連通している。
次に、図14に示されるように、プレート280上に上型290を載置する。具体的には、各挿入穴291に案内シャフト220が一つずつ挿通されるように、上型290をプレート280に向けて降下させる。こうして、積層体2は、下型210と上型290との間で挟持される。このとき、図9に示されるように、一つの貫通孔292が上方から見て一つの凹溝286と重なり合っている。すなわち、貫通孔292は、対応する凹溝286と連通している。なお、図示しないアクチュエータ等により、下型210及び上型290を介して積層体2に荷重が付与される。これにより、積層体2を構成する打抜部材W同士の間の隙間が低減される。
次に、図16に示されるように、各貫通孔292に樹脂ペレットPを配置する。樹脂ペレットPは、円柱状を呈する固体状の樹脂である。続いて、各貫通孔292内にプランジャ293を一つずつ挿入する。この状態で、コントローラ140が、図示しないヒータを動作させると共に、プランジャ293を動作させる。これにより、溶融状態となった樹脂ペレットPがプランジャ293によって押し出され、当該溶融樹脂が、貫通孔292、凹溝286、貫通孔285、貫通孔275、貫通孔244(補助空間V2)、充填空間V1、貫通孔244(補助空間V2)の順に充填される。その後、成形時の加熱による化学変化で溶融樹脂が固化することにより、充填空間V1及び補助空間V2内に樹脂部3が形成される(第3の工程)。このとき、積層体2を構成する打抜部材W同士は、樹脂部3によって接続されて一体化される。こうして、積層体2のスロット7の内壁面F2に樹脂部3が設けられた固定子積層鉄心1が完成する。
[作用]
以上のような本実施形態では、中子部材260がスロット7内に配置された状態で、中子部材260の本体部260aが内壁面F2と離間していると共に、中子部材260の閉塞部260bが開放端部5bを閉塞している。そのため、中子部材260の周囲を溶融樹脂が流動しても中子部材260の形状は変形しないので、開口8の外側に溶融樹脂が漏れ出る虞が殆どない。従って、充填空間V1に溶融樹脂を充填すると、スロット7の内壁面F2には樹脂部3が形成されるが、開口8側よりも外側には樹脂部3が形成されない。その結果、積層体2(貫通孔2a)の内周面と回転子の外周面との間のエアギャップを所定の大きさに保持することが可能となる。また、充填空間V1内に溶融樹脂を充填する工程において中子部材260の閉塞部260bが開放端部5bに存在しているので、開放端部5bが溶融樹脂によって充填されない。すなわち、スロット7の内壁面F2に形成される樹脂部3が開放端部5bを閉塞しない。そのため、開口8が開放されたままであるので、特別な材料及び装置を要することなく、一般的な巻線機等を用いてティース部5に巻線を取り付けることができる。従って、巻線と積層体2との間の絶縁性を樹脂部3で確保しつつ、巻線作業を低コストで行うことが可能となる。なお、ティース部5に巻線を取り付けた後に、巻線をティース部5に固定するための固定材料を巻線に付与してもよい。具体的には、巻線にワニスを滴下含浸して乾燥させてもよいし、巻線の周囲に熱硬化性樹脂(例えば、エポキシ樹脂等)を塗布した後に硬化させてもよい。
本実施形態では、閉塞部260bが開放端部5bの内壁面と当接している。そのため、スロット7のうち開放端部5b側の内壁面に樹脂部3が形成されない。従って、開口8の外側(積層体2の貫通孔2a内)に溶融樹脂が漏れ出ることをより抑制することができる。
ところで、中子部材260とスロット7の内壁面とが当接していても、微視的に見ると、微細な隙間(例えば、数十μm程度の隙間)が存在する。溶融樹脂は、毛細管現象により当該隙間に浸透して、バリが生ずることがある。本実施形態では、閉塞部260bは、開口8よりもスロット7の内側の領域において、スロット7の内壁面と当接している。そのため、毛細管現象が生じうる微細な隙間の終点がスロット開口よりもスロットの内側に存在する。従って、仮に溶融樹脂が当該隙間に浸透したとしても、開口8の外側にバリが形成され難くなる。
本実施形態では、閉塞部260bの外側面F5と開放端部5bの内壁面F2とが、共に傾斜面であり、互いに当接している。そのため、閉塞部260bと開放端部5bとの間の接触面積が増大する。従って、中子部材260の閉塞部260bによって開放端部5bがよりしっかりと閉塞される。その結果、開口8の外側に溶融樹脂が漏れ出ることをいっそう抑制することができる。また、溶融樹脂は、毛細管現象により微細な隙間を浸透して当該隙間の終点に到達した後に、内壁面F2及び外側面F5の延在方向に沿って延びるように発達する。そのため、開口8側においてバリがスロット7の内壁面に付着し難い。従って、バリが発生しても簡単に除去することが可能となる。
本実施形態では、開放端部5bは、基端部5aよりも幅広であり、周方向において基端部5aよりも外方に位置する一対の突出部5cを有している。換言すれば、樹脂部3(主部3a)は、周方向において突出部5cよりも突出していない。そのため、開口8側から見て、スロット7の内壁面F2に形成される樹脂部3が開放端部5bによって保護される。従って、例えば巻線機によって巻線をティース部5に取り付ける際に、巻線又はその取付装置によって樹脂部3がダメージを受け難くなる。その結果、樹脂部3の脱落等による異物の発生を抑制することが可能となる。
本実施形態では、充填空間V1の上下において、充填空間V1と連通する補助空間V2が形成される。そのため、溶融樹脂は充填空間V1のみならず補助空間V2内にも充填される。従って、スロット7の内壁面F2に設けられる樹脂部3は、積層体2の端面F3,F4よりも外側に突出する。その結果、ティース部5に巻線が取り付けられる際に、巻線がティース部5の端面F4に当接し難くなる。また、巻線とティース部5との直線距離が大きくなるので、巻線とティース部5との間で沿面放電が生じ難くなる。さらに、積層体2の端面F3,F4よりも外側に樹脂部3が突出しているので、樹脂部3が熱によって収縮しても、打抜部材Wの全体が樹脂部3によって結合された状態が維持されやすい。そのため、積層体2の端面F3,F4側に位置する打抜部材Wの剥がれを抑制することができると共に、当該剥がれに伴う樹脂部3の欠け、割れ(クラック)等の発生を抑制することができる。なお、欠けが発生すると、樹脂部3から脱落した樹脂片が異物として周囲に飛散してしまうので、固定子積層鉄心1を用いて電動機を構成した場合に電動機の性能に影響が生じうる。割れが発生すると、割れが発生した領域において巻線と積層体2との間で沿面放電が生じ、巻線と積層体2とが導通してしまいうる。
本実施形態では、補助空間V2は、充填空間V1に対向しつつ、ヨーク部4の端面F3及びティース部5の端面F4と部分的に対向するように充填空間V1から連続的に拡がっている。そのため、樹脂部3は、スロット7の内壁面F2に形成されると共に、当該内壁面F2を回り込んでヨーク部4の端面F3及びティース部5の端面F4にも形成される。従って、ティース部5に巻線が取り付けられる際に、巻線が積層体2の端面F3,F4に当接し難くなる。
本実施形態では、プレート240のうち貫通孔244以外の領域は、積層体2の端面F3,F4と当接している。積層体2の端面F3,F4のうちプレート240と当接する領域には樹脂部3が形成されない。そのため、ティース部5の端面F4には、樹脂部3の端部3bで覆われた被覆領域R1と、樹脂部3で覆われていない非被覆領域R2とが形成される。ここで、樹脂部3は高温(例えば、120℃~200℃程度)の溶融樹脂が常温まで冷えて硬化することにより得られるが、高温から常温への温度変化に際して溶融樹脂が収縮するので、樹脂部3内に内部応力が残存しうる。当該内部応力が大きい場合、樹脂部3に欠け、割れ(クラック)等が生じやすくなる。しかしながら、本実施形態では、ティース部5の端面F4に非被覆領域R2が存在していることから、樹脂部3の膨張及び収縮が当該非被覆領域R2において緩和され、樹脂部3内に内部応力が残存し難くなる。そのため、樹脂部3における割れの発生を抑制することができる。
本実施形態では、補助空間V2を構成する凹溝の角部が、丸みを帯びた断面形状を呈しているか、又は凹溝の底壁面と側壁面とに対して傾斜していてもよい。あるいは、本実施形態では、補助空間V2を構成する凹溝の角部が階段状であってもよい。これらの場合、樹脂部3のうちスロット7の内壁面から積層体2の端面に回り込む角部が、面取り(R面取り又はC面取り)された状態又は階段状となる。そのため、ティース部5に巻線が取り付けられる際に、巻線が樹脂部3の外形に沿って巻回されやすくなる。従って、巻線から樹脂部3に作用する応力が低減されるので、樹脂部3における欠け、割れ等の発生を抑制することができる。また、ティース部5に対して巻線がコンパクトに巻回されるので、このような固定子積層鉄心1を用いて電動機を構成した場合、電動機の小型化、高効率化及び高出力化を図ることができる。
本実施形態では、各拡径部材251を積層体2の径方向外側に移動させることにより、積層体2(貫通孔2a)の内周面に対して径方向外向きの力を付与している。そのため、拡径部材251によって積層体2の形状が保持された状態で、充填空間V1に溶融樹脂が充填される。従って、溶融樹脂の熱による積層体2の変形が抑制される。その結果、固定子積層鉄心1が設計に沿った所望の形状で製造されるので、当該固定子積層鉄心1を用いて電動機を構成した場合、電動機の性能向上を図ることができる。しかも、本実施形態では、中子部材260がスロット7内に挿入された状態で閉塞部260bが開放端部5bの内壁面と当接するので、拡径部材251によってティース部5が径方向外向きに押されると、閉塞部260bによって開放端部5bがよりしっかりと閉塞される。そのため、開口8の外側(積層体2の貫通孔2a内)に溶融樹脂が漏れ出ることをいっそう抑制することができる。
本実施形態では、積層体2が下型210上に載置されると、各凹溝6Aに位置決めブロック230Aの突条231が一つずつ係合され、各凹溝6Bに位置決めピン230Bの外周面が一つずつ係合されることにより、積層体2の位置決めが行われる。そのため、拡径部材251によって径方向外向きの力が付与されると、積層体2は、拡径部材251と位置決めブロック230A及び位置決めピン230Bとの間で径方向において挟持される。そのため、溶融樹脂の熱による積層体2の変形をいっそう抑制することができる。
本実施形態では、各位置決めピン230Bが、径方向において対応する拡径部材251と対向するように位置している。そのため、拡径部材251から積層体2に作用した力の大部分が、径方向において当該拡径部材251と対向する位置にある位置決めピン230Bにおいて受け止められるので、積層体2の変形に寄与する力が抑制される。そのため、溶融樹脂の熱による積層体の変形をいっそう抑制することができる。
[他の実施形態]
以上、本開示に係る実施形態について詳細に説明したが、本発明の要旨の範囲内で種々の変形を上記の実施形態に加えてもよい。
1)例えば、ティース部5の開放端部5b及び中子部材260の閉塞部260bは、上記の実施形態に限られず、種々の形状を採用してもよい。例えば、図17に示されるように、開放端部5bが貫通孔2aに向かうにつれて幅狭となっていてもよい。すなわち、開口8側に向かうにつれてスロット7が拡大していてもよい。この場合、中子部材260の閉塞部260bは、台形状を呈しており、開口8に向かうにつれて幅広となるような台形状を呈していてもよい。
2)図18に示されるように、ティース部5の幅がその延在方向において略一定であってもよい。この場合、中子部材260の閉塞部260bは、周方向において本体部260aよりも外方に突出していてもよい。
3)図19に示されるように、中子部材260の閉塞部260bが、開口8に至るまで開放端部5bを閉塞していてもよい。
4)図20に示されるように、中子部材260の閉塞部260bがスロット7の外部に位置しており、閉塞部260bによって開口8が閉塞されていてもよい。この場合、樹脂部3の主部3aは、スロット7の内周壁の全面に形成される。ここで、閉塞部260bがスロット7の外部に位置しているので、拡径部材251を用いて積層体2(貫通孔2a)の内周面に対して径方向外向きの力を付与する際には、拡径部材251の外周面に閉塞部260bに対応する凹溝を設けておく。
5)図21(a)に示されるように、積層方向に延び且つスロット7に向けて突出する突条5dがティース部5に設けられていてもよい。この場合、中子部材260の閉塞部260bには、突条5dに対応する凹溝260cが設けられていてもよい。一方、図21(b)に示されるように、積層方向に延び且つティース部5に向けて突出する突条260eが中子部材260の閉塞部260bに設けられていてもよい。この場合、ティース部5には、突条260eに対応する凹溝5eが設けられていてもよい。なお、突条5d,260e及び凹溝260c,5eは図21において四角形状を呈しているが、互いに係合可能であれば、これらの凹溝及び突条の形状は特に限定されない。
6)図22に示されるように、積層体2の端面F3,F4のうち樹脂部3の端部3bに覆われている部分は、他の部分よりも窪んでいてもよい。あるいは、図示はしていないが、積層体2の端面F3,F4のうち樹脂部3の端部3bに覆われている部分が粗面化処理されていてもよい。この場合、積層体2の端面F3,F4に対する樹脂部3の付着性が高まる。そのため、樹脂部3の積層体2からの剥がれを抑制することができる。
7)図23(a)に示されるように、ティース部5(基端部5a)の端面F4の略全体が樹脂部3の端部3bによって覆われていてもよい。
8)図23(b),(c)に示されるように、ティース部5の端面F4が樹脂部3の端部3bで覆われていない非被覆領域R2を有している場合であっても、ティース部5の端面F4の略全体が樹脂部3の端部3bによって覆われている場合であっても、端部3bが所定の厚さを有していてもよい。ただし、端部3bの厚さが大きくなるほどティース部5に巻回される巻線の銅損が大きくなる傾向にあるので、電動機の性能との兼ね合いにより端部3bの厚さの上限を適宜設定してもよい。一方、端部3bが薄すぎると、ティース部5に巻回される巻線とティース部5との直線距離が小さくなり、沿面放電が生じやすくなる。そのため、沿面放電を考慮しつつ、端部3bの厚さの下限を適宜設定してもよい。例えば、端部3bの厚さは、主部3aの厚さと同程度であってもよいし、主部3aの厚さよりも大きくてもよい。
9)図24に示されるように、ヨーク部4の端面F3において、樹脂部3の端部3bがヨーク部4の外周縁に向けて拡がっていてもよい。このとき、図25に示されるように、ヨーク部4の外周縁に向けて拡がる端部3bが互いに一体化されており、端部3bが全体として環状を呈していてもよい。この場合においても、図26に示されるように、ティース部5(基端部5a)の端面F4の略全体が樹脂部3の端部3bによって覆われていてもよいし、図27に示されるように、ティース部5(基端部5a)の端面F4が樹脂部3の端部3bによって部分的に覆われていてもよい。図27に示される例では、基端部5aの端面F4において端部3bに矩形状の開口が形成されており、基端部5aが部分的に当該開口から露出している。これらの場合、ヨーク部4の端面F3がより広い範囲で樹脂部3によって覆われるので、巻線がヨーク部4の端面F3に当接し難くなる。あるいは、ティース部5の端面F4を部分的に覆うように、周方向において隣り合う樹脂部3の端部3b同士が互いに一体化されていてもよい。例えば、図28(a)に示されるように、ティース部5の端面F4のうちヨーク部4との境界近傍の領域(基端部5aの端面)からヨーク部4にかけて、樹脂部3の端部3bが互いに一体化されていてもよい。図28(b)に示されるように、ティース部5の端面F4のうちヨーク部4との境界近傍の領域(基端部5aの端面)のみにおいて、樹脂部3の端部3bが互いに一体化されていてもよい。端部3bのうち周方向において隣り合う樹脂部3を一体化している部分は、全ての樹脂部3にわたって延びており全体として環状を呈していてもよいし、全ての樹脂部3にわたって延びておらず弧状を呈していてもよい。
10)図29に示されるように、積層体2の端面F3,F4に樹脂部3が形成されていなくてもよい。このとき、樹脂部3は、積層方向において積層体2の端面F3,F4よりも外方に突出していてもよいし、突出していなくてもよい。
11)図30及び図31に示されるように、主部3aがスロット7の内壁面F2のうちヨーク部4に対応する領域に部分的に設けられていなくてもよい。同様に、端部3bがヨーク部4の端面F3に部分的に設けられていなくてもよい。すなわち、一つのスロット7内において、樹脂部3が周方向に分割された状態であってもよい。この場合、樹脂の使用量を削減することができる。
12)図30及び図31に示されるように、主部3aがスロット7の内壁面F2のうちヨーク部4に対応する領域に部分的に設けられていない場合、積層体2は、図32に示されるように、複数の鉄心片2Aが組み合わされた組物であってもよい。具体的には、各鉄心片2Aは、一つのヨーク片部4Aと、一つのティース部5とで構成されている。ヨーク片部4Aは、ヨーク部4が切断線CLで切断された時のヨーク部4の一部分である。図32においては、切断線CLは、樹脂部3と重ならないようにヨーク部4の径方向に沿って延びている。すなわち、積層体2は、中心軸Axの周方向において隣り合う鉄心片2Aがヨーク片部4Aの端部(切断線CL)において一体化されたものである。切断線CLと重ならないように樹脂部3が積層体2に設けられた後、切断線CLに沿って積層体2が分割されることで、各鉄心片2Aが得られてもよい。あるいは、分割された状態の各鉄心片2Aにそれぞれ個別に樹脂部3が設けられてもよい。
13)図33及び図34に示されるように、一のティース部5の端面F4及びそれに対応するヨーク部4の端面F3が端部3bによって部分的に覆われていると共に、当該一のティース部5と周方向において隣り合う他のティース部5の端面F4及びそれに対応するヨーク部4の端面F3が端部3bによって全体的に覆われていてもよい。換言すれば、周方向において隣り合うティース部5の端面F4に設けられる端部3bの範囲が異なっていてもよい。図34に示されるように、例えば3つのティース部5を一組として巻線400を巻回した場合(いわゆる分布巻の場合)、巻線400は全体として楕円形状を呈するので、中央に位置するティース部5と巻線400との距離が大きくなる傾向にある。そのため、巻線400と中央に位置するティース部5の端面F4との当接が生じ難い領域において、端部3bの形成を省略できる。従って、樹脂の使用量を削減することができる。2つのティース部5を一組として巻線400を巻回する場合や、4つ以上のティース部5を一組として巻線400を巻回する場合も同様であり、ティース部5の端面F4のうち巻線400との当接が生じ難い領域において端部3bの形成を省略してもよい。
14)ヨーク部4の端面F3又はティース部5の端面F4に樹脂部3の端部3bを形成する際、積層方向に延びる孔を予め端面F3,F4に形成しておき、当該孔内にも溶融樹脂を充填してもよい。この場合、アンカー効果により、積層体2に対する樹脂部3(端部3b)の付着力を高めることが可能となる。なお、当該孔の断面形状が例えばT字状となるように、当該孔の先端部が当該孔の延在方向に対して交差する方向に拡がっていてもよい。
15)ところで、溶融樹脂は、充填空間V1に存在している空気を巻き込みながら充填空間V1に充填されていく。図2~図5、図22、図23(b)、図24、図25、図27~図34に示されるように、ヨーク部4の端面F3又はティース部5の端面F4に端部3bが形成されていない領域(非被覆領域R2)が存在している場合、すなわち、積層体2の端面F3,F4にプレート240が部分的に当接している場合、溶融樹脂によって巻き込まれた空気を、端面F3,F4とプレート240との隙間から容易に排気することができる。なお、当該隙間は、通常、溶融樹脂に含まれる樹脂フィラーの粒径よりも十分に小さいので、当該隙間から溶融樹脂が漏出しない。
16)ところで、打抜部材Wはプレス加工を経て形成されるので、ティース部5にはダレ、バリ等が発生し、必ずしもティース部5が平坦ではない場合がある。そのため、溶融樹脂を充填空間V1に充填する際に、ティース部5同士の間への溶融樹脂の浸入を抑制するため、ティース部5が適切に加圧されていてもよい。具体的には、ティース部5の端面F4にプレート240が部分的に当接していてもよい。例えば、一のティース部5において周方向に隣り合う端部3bの離間距離G(図4参照)が少なくとも電磁鋼板ESの厚さの1/4程度となるように、ティース部5の端面F4とプレート240とが当接する領域が設定されていてもよい。
17)図35(a),(b)に示されるように、中子部材260には、その長手方向に貫通する貫通孔260d(流路)が設けられていてもよい。この場合、充填空間V1への溶融樹脂の充填後に貫通孔260d内に冷媒を流通させることにより、中子部材260の体積が収縮するので、中子部材260を積層体2のスロット7内から抜去しやすくなる。そのため、積層体2のスロット7内から中子部材260を取り出すのに要する時間が短縮化されるので、固定子積層鉄心1の生産性の向上を図ることができる。なお、貫通孔260dに変えて、中子部材260内を冷媒が流通可能な流路が形成されていてもよい。すなわち、流路の入口及び出口は、中子部材260において任意の位置に配置されていてもよい。熱交換効率を高めるために、貫通孔260dは、直線状ではなく、曲線状、螺旋状、蛇行形状等の種々の形状を有していてもよい。冷媒としては、液体であってもよいし、気体であってもよい。液体としては、例えば、水、油等が挙げられる。気体としては、空気、冷媒ガス(フルオロカーボン系、非フルオロカーボン系)等が挙げられる。
18)図35(b)に示されるように、中子部材260のうち貫通孔260d(流路)の周囲の部分261が、当該部分261よりも外側の部分262と異なる材質で構成されていてもよい。例えば、部分261の熱伝導率が、積層体2及び部分262の熱伝導率よりも高くてもよい。あるいは、中子部材260の全体が、積層体2の熱伝導率よりも高くてもよい。これらの場合、中子部材260の収縮が促進されるので、中子部材260を積層体2のスロット7内からいっそう抜去しやすくなる。
19)図36に示されるように、積層体2の外周面に沿った形状を呈する位置決め部材230Cを用いて積層体2の位置決めを行ってもよい。同図に示されるように、位置決め部材230Cによって積層体2の外周面に対し径方向内向きの力を付与してもよい。この場合、拡径部材251のみならず位置決め部材230Cによって積層体2の内外から積層体2が押圧される。そのため、積層体2の内外から作用する力によって積層体2の形状が保持されるので、溶融樹脂の熱による積層体2の変形をよりいっそう抑制することができる。
20)上記の実施形態では、全てのスロット7内にそれぞれ中子部材260を挿入した後に、充填空間V1に溶融樹脂を充填していた。しかしながら、図37に示されるように、積層体2のスロット7において位置決めを行ってもよい。具体的には、少なくとも2つのスロット7内に中子部材260に代えて位置決め部材500をそれぞれ挿入しつつ、残余のスロット7内に中子部材260を挿入した状態で、スロット7と中子部材260との間の充填空間V1内に溶融樹脂を充填してもよい。これにより、図37に示されるように、スロット7と中子部材260との間に樹脂部3が形成されるが、スロット7と位置決め部材500との間には樹脂部3が形成されない。
なお、位置決め部材500は、本体部500aと、端部500bとを含む。本体部500aは、スロット7に対応する形状を呈している。端部500bは、中子部材260と同様の形状を呈している。そのため、位置決め部材500がスロット7内に挿入されると、スロット7と本体部500aとの間にはほとんど隙間が生じない。下側の端部500bは、下型210の挿入穴214に挿入される。上側の端部500bは、プレート270の貫通孔274及びプレート280の貫通孔284に挿通される。
その後、図38に示されるように、スロット7から位置決め部材500を抜去して中子部材260を挿入する。続いて、スロット7と中子部材260との間の充填空間V1に溶融樹脂を充填する。これにより、位置決め部材500が挿入されていたスロット7にも、樹脂部3が形成される。
このように、位置決め部材500をスロット7に挿入して積層体2の位置決めが行われると、積層体2の位置決めの精度が極めて高まる。そのため、位置決め部材500によって積層体2の形状が保持された状態で、充填空間V1に溶融樹脂が充填される。従って、溶融樹脂の熱による積層体2の変形が抑制される。その結果、固定子積層鉄心1が設計に沿った所望の形状で製造されるので、固定子積層鉄心1を用いて電動機を構成した場合、電動機の性能向上を図ることができる。
21)なお、位置決め部材500の熱膨張率は、積層体2の熱膨張率よりも高くてもよい。具体的には、位置決め部材500の熱膨張率及び本体部500aの寸法は、溶融樹脂の充填時の温度で本体部500aがスロット7と略一致するような値に設定されていてもよい。位置決め部材500のスロット7からの抜去前後で、同一の樹脂充填装置200において溶融樹脂が充填空間V1に充填されてもよい。あるいは、位置決め部材500のスロット7からの抜去後に積層体2を異なる樹脂充填装置200に積み替えた状態で、溶融樹脂が充填空間V1に充填されてもよい。位置決め部材500の形状は、上述したものに限られない。すなわち、位置決め部材500は、スロット7の形状に対応した部分を有していればよい。
22)図39に示されるように、積層体2に樹脂部3を形成した後であって、得られた固定子積層鉄心1を樹脂充填装置200から取り出す前に、樹脂部3の絶縁性を検査してもよい。具体的には、検査装置300が備える電源(図示せず)の一方を各中子部材260に接続し、当該電源の他方を積層体2に接続した状態で、各中子部材260と積層体2との間に電圧を印加してもよい。この場合、中子部材260が、積層体2との間に充填空間V1を形成する機能のみならず、絶縁検査のための要素としても機能する。そのため、絶縁検査のために、中子を取り外して他の検査部材をスロット7内に挿入する等の作業が不要となる。従って、絶縁検査を効率的に行うことができる。なお、中子部材260をいったん抜去して、別の検査部材をスロット7内に挿入し、当該検査部材と積層体2との間に電圧を印加することにより、樹脂部3の絶縁性を検査してもよい。
23)上記の実施形態では、一つの充填空間V1に対して3つの貫通孔275,285が連通していたが、一つの充填空間V1に対して少なくとも一つの貫通孔275,285が連通していてもよい。
24)上記の実施形態では、貫通孔292からの溶融樹脂が凹溝286において分岐して複数の貫通孔285に供給されたが、このような凹溝286が存在せず、樹脂ペレットPを収容する一つの貫通孔292と一つの充填空間V1とが一つの樹脂流路により一対一で接続されていてもよい。
25)拡径部材251の少なくとも外周面が弾性材料で構成されていてもよい。この場合、拡径部材251の外周面が積層体2の内周面に当接する際に、拡径部材251の外周面が弾性変形する。そのため、複数の積層体2の間に寸法のばらつきがある場合でも、拡径部材251において積層体2の寸法のばらつきを吸収することができる。また、拡径部材251の外周面が積層体2の内周面に密着しやすくなる。そのため、開口8の外側(積層体2の貫通孔2a内)に溶融樹脂が漏れ出ることをいっそう抑制することができる。弾性材料としては、例えば、フッ素系樹脂、シリコン系樹脂、ウレタン系樹脂等が挙げられる。
26)中子部材260の表面には、離型処理が施されていてもよい。この場合、充填空間V1に溶融樹脂が充填されて固化した後に、中子部材260をスロット7内から取り出しやすくなる。離型処理としては、少なくともフッ素系樹脂を含んで構成されるコーティング膜を中子部材260の表面に形成してもよい。当該コーティング膜は、例えば、フッ素系樹脂を含有する無電解ニッケルめっき皮膜であってもよい。あるいは、離型処理としては、ハードクロムめっきを中子部材260の表面に施してもよいし、離型剤(例えばワックス等)を中子部材260の表面に塗布(例えばスプレー等)してもよい。
27)中子部材260は、その延在方向に交差する交差方向(延在方向に交差する交差面)において複数に分割されていてもよい。例えば、中子部材260は、図40及び図41に示されるように、その延在方向の中央近傍において交差面で2つに分割された分割片263,264を有していてもよい。図41に示されるように、分割片263は、分割片264に近づくにつれてその断面積が小さくなるテーパ形状を呈している。分割片264は、分割片263に近づくにつれてその断面積が小さくなるテーパ形状を呈している。この場合、中子部材260の周囲に樹脂部3が形成された状態において、分割片263を上方に引き抜きやすくなると共に、分割片264を下方に引き抜きやすくなる。分割片263のうち縮径側の端面には凹部263aが設けられていてもよく、分割片264のうち縮径側の端面には凸部264aが設けられていてもよい。この場合、分割片263,264同士を組み合わせる際に、凹部263aと凸部264aとが係合して分割片263,264のうち縮径側の端部同士が接続されるので、両者のずれを抑制することが可能となる。
なお、図42に示されるように、分割片263,264のうち縮径側の端部の一部が一定の断面積を有していてもよい。中子部材260は、図43に示されるように、その延在方向のうち積層体2の一方の端面寄りにおいて2つに分割されていてもよい。
28)中子部材260は、その延在方向(延在方向に沿って延びる延在面)において複数に分割されていてもよい。例えば、中子部材260は、図44及び図45に示されるように、その幅方向の中央近傍において延在面で2つに分割された分割片265,266を有していてもよい。図45に示されるように、分割片265は、下端側から上端側に向かうにつれてその断面積が小さくなるテーパ形状を呈している。より詳しくは、分割片265のうち分割片266と当接する当接面265aがテーパ面を呈している。分割片266は、上端側から下端側に向かうにつれてその断面積が小さくなるテーパ形状を呈している。より詳しくは、分割片266のうち分割片265と当接する当接面266aがテーパ面を呈している。この場合、中子部材260の周囲に樹脂部3が形成された状態において、分割片265を下方に引き抜きやすくなると共に、分割片266を上方に引き抜きやすくなる。
29)中子部材260は、その延在方向に交差する交差方向(中子部材260の周方向に沿って延びる延在面)において複数に分割されていてもよい。例えば、中子部材260は、図46及び図47に示されるように、その周面近傍において延在面で2つに分割された分割片267,268を有していてもよい。分割片267は、本体部267aと、本体部267aから外方に突出する突出部267bとで構成されている。分割片268は、本体部267aの周面を取り囲む本体部268aと、突出部277bの周面を覆うと共に本体部268aから外方に突出する一対の突出部268bとで構成されている。この場合、中子部材260をスロット7内に配置する際には、図46に示されるように、まず、一対の突出部268bが開口8に位置するように分割片268をスロット7内に配置し、続いて、分割片268内に分割片267を挿入する。このようにすると、一対の突出部268bが突出部267bによって押し拡げられるので、一対の突出部268bによって開口8がしっかりと閉塞される。従って、充填される溶融樹脂の開口8からの漏れをより確実に抑制することが可能となる。また、中子部材260の周囲に樹脂部3が形成された状態において、まず分割片267を分割片268から引き抜き、続いて、分割片268をスロット7から引き抜くことにより、中子部材260をスロット7から取り出しやすくなる。
30)上記27)~29)の中子部材260の分割方法が組み合わされてもよい。すなわち、中子部材260は、その延在方法及び当該延在方向に交差する方向の少なくとも一方において分割された複数の分割片の組合せによって構成されていてもよい。
31)中子部材260は、図48に示されるように、積層体2の積層方向において、上型290から下型210に向かうにつれてその断面積が小さくなるテーパ形状を呈していてもよい。あるいは、図示していないが、中子部材260は、積層体2の積層方向において、下型210から上型290に向かうにつれてその断面積が小さくなるテーパ形状を呈していてもよい。中子部材260の全ての側面が積層方向に対して傾斜していてもよいし、中子部材260の側面のうち少なくとも一つの側面が積層方向に対して傾斜していてもよい。この場合、中子部材260をスロット7内から取り出しやすくなる。
32)図49に示されるように、中子部材260の周囲に保護被膜PFが設けられていてもよい。中子部材260の周囲に対する保護被膜PFの配置方法としては、例えば、熱収縮するフィルム、テープ等を中子部材260の周囲に配置した後に加熱することが挙げられる。保護被膜PFの材料としては、例えば、シリコーンが挙げられる。この場合、中子部材260と比較して保護被膜PFの離型性が高いので、中子部材260の周囲に樹脂部3が形成された状態において、中子部材260が引き抜きやすくなる。また、保護被膜PFの存在により中子部材260自体の摩耗を抑制することが可能となる。
33)中子部材260は、その形状をある程度保持できる保形性、高耐熱性及び弾力性を有する材料で構成されていてもよい。この場合、中子部材260をスロット7内に配置し、続いて、中子部材260内に気体(例えば、空気、不活性ガス等)を充填して中子部材260の形状を維持させた状態で、充填空間V1に溶融樹脂を充填してもよい。樹脂部3の形成後は、中子部材260から気体を抜くことにより、中子部材260をスロット7から引き抜きやすくなる。
34)中子部材260の熱膨張率は、積層体2の熱膨張率よりも高くてもよい。この場合、充填空間V1に溶融樹脂を充填する際に中子部材260及び積層体2が熱せられるので、積層体2よりも中子部材260が膨張する。そのため、膨張した中子部材260の閉塞部260bによって開放端部5bがよりしっかりと閉塞される。従って、開口8の外側に溶融樹脂が漏れ出ることをいっそう抑制できる。また、この場合、溶融樹脂の充填空間V1への充填後、中子部材260が常温まで冷却されることで、中子部材260が積層体2に対して比較的大きく収縮する。そのため、樹脂部3が形成された後のスロット7から中子部材260を取り出しやすくなる。
35)上記の実施形態では、積層体2を構成する打抜部材Wが電磁鋼板ESで形成されているので、中子部材260の熱膨張率は、電磁鋼板ESの熱膨張率(10[10-6/K])よりも高くてもよい。具体的には、中子部材260は、ステンレス鋼、アルミニウム、銅合金、アルミニウム合金(例えば、Al-Cu、Al-Zn-Mg)等で構成されていてもよい。ステンレス鋼としては、例えば、SUS303を用いてもよい。SUS303の熱膨張率(線膨張率)は、17.3[10-6/K]程度である。アルミニウムの熱膨張率(線膨張率)は、23[10-6/K]程度である。
36)下型210及び下側のプレート240(ここではまとめて下側挟持プレートという)の熱膨張率は、積層体2の熱膨張率よりも高くてもよい。あるいは、上側のプレート240、プレート270,280及び上型290(ここではまとめて上側挟持プレートという)の熱膨張率は、積層体2の熱膨張率よりも高くてもよい。下側挟持プレート及び上側挟持プレートの双方の熱膨張率が、積層体2の熱膨張率よりも高くてもよい。これらの場合、充填空間V1に溶融樹脂を充填する際に、積層体2よりも下側挟持プレート又は上側挟持プレートが膨張する。そのため、積層体2が下側挟持プレート及び上側挟持プレートによって積層方向において加圧される。従って、充填空間V1に充填される溶融樹脂が、下側挟持プレート又は上側挟持プレートと積層体2との間の隙間から漏れ出ることを抑制できる。
37)下側挟持プレートをなす少なくとも一つの部材の表面には、中子部材260と同様に、離型処理が施されていてもよい。上側挟持プレートをなす少なくとも一つの部材の表面には、中子部材260と同様に、離型処理が施されていてもよい。
38)下側挟持プレートとなる下型210及び下側のプレート240は、上記の実施形態のように別体であってもよいし、一体化されていてもよい。上側挟持プレートとなる上側のプレート240、プレート270,280及び上型290のうち積層方向において隣り合う少なくとも二つは、上記の実施形態のように別体であってもよいし、一体化されていてもよい。
39)上記の実施形態では、上型290に中子部材260が挿入される挿入穴が設けられていなかったが、上型290に中子部材260が挿入される挿入穴が設けられていてもよい。ところで、固定子積層鉄心1の種類によってティース部5及びスロット7の形状が異なり、それに応じて中子部材260の形状も異なる。そのため、前者の場合は、異なる種類の固定子積層鉄心1を製造する際に上型290を交換する必要がなくなる。
40)溶融樹脂が、フィラーを含有していてもよい。フィラーは、異方性フィラーであってもよい。本明細書にいう「異方性フィラー」とは、立方体状、真球状などの形状ではなく、長辺と短辺とのサイズが異なる形状を有するフィラーを意味する。フィラーの材質は、例えば、二酸化ケイ素、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム等であってもよい。フィラーの粒径は、10μm~150μm程度であってもよいし、20μm~70μm程度であってもよい。フィラーの粒径が10μm以上であると、フィラーを含有する溶融樹脂の流動性が高まる傾向(フィラーを含有する溶融樹脂の充填空間V1及び補助空間V2への充填性が高まる傾向)にある。フィラーの粒径が150μm以下であると、フィラーを含有する溶融樹脂の隙間からの漏れが抑制される傾向にある。ここで、中子部材260の閉塞部260bとティース部5の開放端部5bとの間の離間距離は、20μm以下であってもよいし、10μm以下であってもよい。この場合、フィラーを含有する溶融樹脂が閉塞部260bと開放端部5bとの間の隙間から漏れ出ることを特に抑制できる。
41)上記の実施形態では、積層体2を下型210上に搭載した後に中子部材260を下型210に対して取り付けたが、中子部材260を下型210に取り付けた後に積層体2を下型210上に搭載してもよい。
42)全ての中子部材260を一度に下型210に取り付けてもよいし、中子部材260を一つずつ又は複数ずつ下型210に取り付けてもよい。
43)巻線のティース部5への取り付け方法としては、金属線をノズルから送出してティース部5に直接巻回させる直巻式であってもよいし、巻回済の巻線を積層方向から積層体2に挿入するインサータ方式であってもよい。
44)上記の実施形態では、複数の打抜部材Wが積層されて積層体2が構成されていたが、積層体2は、複数のブロック体(鉄心部材)が積層されたものであってもよい。ブロック体は、例えば、複数の打抜部材Wが積層されて一体化されたものである。
45)鉄心部材(打抜部材W又はブロック体)同士は、カシメによって互いに接合されていてもよいし、接着剤によって互いに接合されていてもよいし、溶接によって互いに接合されていてもよい。あるいは、図50に示されるように、鉄心部材同士は、仮カシメ部9を介して互いに接合されていてもよい。この場合、樹脂充填装置200によって積層体2に樹脂部3が形成された後に仮カシメ部9が除去されてもよいし、樹脂充填装置200によって積層体2に樹脂部3が形成される前に仮カシメ部9が除去されてもよい。
ここで、仮カシメ部9は、積層体2の凹溝6と嵌合されている。仮カシメ部9は、仮カシメ片9aが積み重ねられて構成されている。仮カシメ片9aは、プッシュバック等により所定の切断線に沿って元の鉄心部材に圧入されることで、人手では簡単に外れない程度に鉄心部材と一時的に嵌まり合っている。仮カシメ片9a同士は、仮カシメ9bによって互いに締結されている。具体的には、仮カシメ9bは、仮カシメ部9の最下層以外に位置する仮カシメ片9aに形成された屈曲部(図示せず)と、仮カシメ部9の最下層に位置する仮カシメ片9aに形成された貫通孔(図示せず)とを有する。屈曲部は、仮カシメ片9aの表面側に形成された凹部と、仮カシメ片9aの裏面側に形成された凸部とで構成されている。一の仮カシメ片9aの屈曲部の凹部は、当該一の仮カシメ片9aの表面側に隣り合う他の仮カシメ片9aの屈曲部の凸部と接合される。一の仮カシメ片9aの屈曲部の凸部は、当該一の仮カシメ片9aの裏面側において隣り合う更に他の仮カシメ片9aの屈曲部の凹部と接合される。貫通孔には、仮カシメ部9の最下層に隣接する仮カシメ片9aの屈曲部の凸部が接合される。貫通孔は、積層体2を連続して製造する際、既に製造された積層体2に対して次に製造する積層体2の仮カシメ部9が屈曲部によって締結されるのを防ぐ機能を有する。
46)上記の実施形態では、拡径具250が拡径部材251及び押子部材252で構成されていたが、積層体2の内径側(貫通孔2aの内側)から径方向外向きに積層体2(ティース部5)を押圧することができれば、他の構造の拡径具が用いられてもよい。例えば、機械式、油圧式、空圧式等の拡径具が用いられてもよい。あるいは、熱膨張特性を利用して動作する拡径具が用いられてもよい。
47)拡径具250により各拡径部材251を積層体2の径方向外側に移動させることにより、各拡径部材251の外周面をそれぞれ貫通孔2a,240aの内周面に当接させるタイミングは、上記の実施形態に限定されず、積層体2及びプレート240上にプレート270が載置された後であってもよいし、プレート270上にプレート280が載置された後であってもよいし、プレート280上に上型290が載置された後であってもよい。すなわち、下型210及び上型290を介して積層体2に荷重が付与された後に、各拡径部材251の外周面をそれぞれ貫通孔2a,240aの内周面に当接させてもよい。
48)ところで、積層体2を構成する各打抜部材Wの厚さは必ずしも同一ではなく、ばらついている場合がある。そのため、いずれの積層体2に対しても一定の荷重を付与しつつスロット7内に樹脂部3を形成し、複数の打抜部材Wを樹脂部3によって締結すると、得られる固定子積層鉄心1の高さがばらつきうる。そこで、下型210及び上型290を介して積層体2に荷重を付与する際、積層体2の積厚が所定の目標積厚となるように積層体2に対してその積層方向から下型210及び上型290を介して荷重を付与してもよい。この場合、得られる固定子積層鉄心1の高さがいずれも略同一となる。従って、設計に沿った所望の大きさの固定子積層鉄心1を得ることが可能となる。なお、積厚が例えば目標積厚±0.01mmの範囲内となるように、所定の範囲内の荷重を付与してもよい。荷重が所定の下限値以上であると、隣り合う打抜部材W同士の間に隙間が生じ難いので、当該隙間からの溶融樹脂の漏出が抑制されうる。荷重が所定の上限値以下であると、荷重が除荷されたときに積層体2が荷重付与前の積厚に戻ろうとする力(スプリングバック力ともいう)が小さくなるので、応力集中による樹脂部3の割れが生じ難い。当該所定の範囲内の荷重としては、例えば、20kN~50kN程度であってもよい。
積層体2の積厚が所定の目標積厚となるように積層体2に対してその積層方向から下型210及び上型290を介して荷重を付与するために、目標積厚の高さを有するストッパ部材を下型210及び上型290の間に配置してもよい。例えば、図51に示されるように、複数のストッパ部材210aが一体的に設けられた下型210Aが用いられてもよい。この場合、プレート270Aがストッパ部材210aの先端に当接するまで下型210A及び上型290を介して積層体2に荷重が付与されることにより、積層体2の積厚がストッパ部材210aの高さと略一致する。さらに、例えば、図52に示されるように、複数のストッパ部材210aが一体的に設けられた下型210Aに加えて、目標積厚の高さを有する拡径部材251が用いられると共に、プレート270Aの貫通孔270aの内径が拡径部材251の外形よりも小さく設定されていてもよい。この場合、プレート270Aがストッパ部材210aの先端及び拡径部材251に当接するまで下型210A及び上型290を介して積層体2に荷重が付与されることにより、積層体2の積厚がストッパ部材210aの高さと略一致する。このようにすると、積層体2の積厚を容易に目標積厚に一致させることが可能となる。なお、目標積厚の高さを有するストッパ部材210aと目標積厚の高さを有する拡径部材251との少なくとも一方を用いてもよい。また、図51及び図52の形態においては、下型210A及びプレート270Aにそれぞれプレート240が一体化されている。
49)ティース部5のうち少なくともスロット7の開口8近傍の部分と巻線との間における絶縁性をさらに高める目的で、当該部分に対して絶縁物(例えば、樹脂成形物、絶縁紙など)を追加的に設けてもよい。
50)スロット7の開口8から貫通孔2a側(回転子側)への巻線のはみ出しを抑制する目的又は巻線をスロット7内において固定する目的で、スロット7の開口8に絶縁紙を追加的に設けてもよい。このとき、ティース部5のうち開口8近傍の側面(開放端部5bの側面)に係止部(例えば、図21(b)に示される凹部、図21(a)に示される凸部)が設けられていてもよい。この場合、当該係止部に絶縁紙を安定的に取り付けることができると共に、絶縁紙が開口8近傍に配置された積層体2の生産性を高めることができる。
51)本実施形態では、打抜装置130による積層体2の形成工程の後に、樹脂充填装置200による樹脂部3の形成工程が行われる場合について説明したが、樹脂充填装置200に積層体2を投入する前に、積層体2に対して所定の熱処理を施してもよい。当該熱処理としては、例えば、バーンオフであってもよいし、焼鈍及びブルーイングの組み合わせであってもよいし、バーンオフ及びブルーイングの組み合わせであってもよい。図50に示されるように、鉄心部材同士が仮カシメ部9を介して互いに接合されている場合には、積層体2に対する熱処理の前に仮カシメ部9が積層体2から除去されてもよいし、積層体2に対する熱処理の後に仮カシメ部9が積層体2から除去されてもよい。積層体2に対する熱処理の前に仮カシメ部9が積層体2から除去されていると、鉄心部材同士が仮カシメ部9によって拘束されていないので、熱処理に伴ううねりが鉄心部材に生じ難い。そのため、樹脂充填装置200による樹脂充填処理に際して、積層体2が下型210とプレート270との間でしっかりと挟持されるので、溶融樹脂が樹脂充填装置200から漏れ出し難くなる。
52)本実施形態では、電磁鋼板ESが打ち抜かれた打抜部材Wを用いて積層体2を構成していたが、アモルファス材の薄板が打ち抜かれた打抜部材を用いて積層体2を構成してもよい。
53)本実施形態では、熱硬化性樹脂を用いて樹脂部3を形成していたが、熱可塑性樹脂を用いて樹脂部3を形成してもよい。
54)図53に示されるように、樹脂部3の主部3aと端部3bとが異なる工程で形成されていてもよい。このとき、主部3aの樹脂の種類と端部3bの樹脂の種類とが異なっていてもよい。例えば、相対的に粘度の低い(流動性の高い)第1の樹脂を用いて主部3aが構成され、相対的に粘度の高い第2の樹脂を用いて端部3bが構成されてもよい。この場合、充填空間V1内へ第1の樹脂をスムーズに充填できる。また、ティース部5への巻線の取り付け時に負荷のかかりやすい端部3bが第2の樹脂で形成されるので、端部3bの強度が高まる。そのため、端部3bにおける欠け、割れ等の発生を抑制することができる。
ここで、樹脂部3の主部3aと端部3bとを異なる工程で形成する方法の一例について、図54~図57を参照して説明する。まず、図54に示されるように、下型210上に、案内シャフト220、位置決めブロック230A、位置決めピン230B、拡径具250、積層体2、中子部材260、プレート270B、プレート280及び上型290が所定の順に取り付けられる。ここで、プレート270Bは、貫通孔275が充填空間V1に直接連通している点で、上記の実施形態に係るプレート270と相違している。
次に、図55に示されるように、上型290の各貫通孔292に樹脂ペレットP1を配置する。樹脂ペレットP1は、例えば、相対的に粘度の低い(流動性の高い)第1の樹脂により構成されていてもよい。次に、各貫通孔292内にプランジャ293を一つずつ挿入する。この状態で、コントローラ140が、図示しないヒータを動作させると共に、プランジャ293を動作させる。これにより、溶融状態となった樹脂ペレットP1がプランジャ293によって押し出され、当該溶融樹脂が、貫通孔292、凹溝286、貫通孔285、貫通孔275、充填空間V1の順に充填される。その後、成形時の加熱による化学変化で溶融樹脂が固化することにより、充填空間V1内に主部3aが形成される。このとき、積層体2を構成する打抜部材W同士は、主部3aによって接続されて一体化される。こうして、スロット7内に主部3aが設けられた積層体2が得られる。
次に、図56に示されるように、下型210B上に、案内シャフト220、位置決めブロック230A、位置決めピン230B、プレート240、拡径具250、スロット7内に主部3aが設けられた積層体2、プレート240、中子部材260、プレート270、プレート280及び上型290が所定の順に取り付けられる。ここで、下型210Bは、プレート240の貫通孔244とそれぞれ連通する複数の貫通孔216が設けられている点で、上記の実施形態に係る下型210と相違している。
次に、図57に示されるように、下型210Bの各貫通孔216に樹脂ペレットP2を配置すると共に、上型290の各貫通孔292に樹脂ペレットP2を配置する。樹脂ペレットP2は、例えば、相対的に粘度の高い第2の樹脂により構成されていてもよい。次に、各貫通孔216内にプランジャ217を一つずつ挿入すると共に、各貫通孔292内にプランジャ293を一つずつ挿入する。この状態で、コントローラ140が、図示しないヒータを動作させると共に、プランジャ217,293を動作させる。これにより、溶融状態となった樹脂ペレットP2がプランジャ217によって押し出され、当該溶融樹脂が、貫通孔216、下側の貫通孔244(補助空間V2)の順に充填される。同じく、溶融状態となった樹脂ペレットP2がプランジャ293によって押し出され、当該溶融樹脂が、貫通孔292、凹溝286、貫通孔285、貫通孔275、上側の貫通孔244(補助空間V2)の順に充填される。その後、成形時の加熱による化学変化で溶融樹脂が固化することにより、補助空間V2内に端部3bが形成される。こうして、積層体2のスロット7の内壁面F2に樹脂部3が設けられた固定子積層鉄心1が完成する。
55)図58に示されるように、主部3aが端部3bよりもスロット7側に向けて突出するように、主部3aが端部3bに対してずれて配置されていてもよい。すなわち、主部3aと端部3bとの間に段差Stが設けられていてもよい。この場合、ティース部5に巻線が取り付けられる際に、主部3aと端部3bとがずれた段差Stにおいて巻線が屈曲しやすくなり、ティース部5に巻回された巻線が小径化される。そのため、コイル長が全体として短くなる。従って、巻線において生ずる発熱を抑制することが可能となると共に、巻線が取り付けられた後の固定子積層鉄心1を全体として低背化することが可能となる。なお段差Stの幅は、例えば0.1mm以下であってもよい。主部3aが端部3bに対してずれた樹脂部3は、例えば、充填空間V1が補助空間V2に対してずれて位置するように、貫通孔244がプレート240に設けられていてもよい。
図58(a)に示されるように、端部3bのうち主部3a側の角部が面取りされている一方で、端部3bのうち主部3aとは離れた側の角部が面取りされていなくてもよい。図58(b)に示されるように、端部3bのうち主部3a側の角部及び主部3aとは離れた側の角部が共に面取りされていてもよい。この場合も、面取りの形状としては、R面取りであってもよいし、C面取りであってもよいし、当該角部が削られた状態であれば、例えば台形状、階段状等の他の形状であってもよい。あるいは、ティース部5に取り付けられる巻線の形状に沿うように、樹脂部3の主部3a又は端部3bが、ティース部の延在方向において凹部と凸部とが交互に並んだ凹凸状を呈していてもよい。なお、端部3bの角部が面取りされていると、端部3bの離型が容易に行える。
ここで、主部3a側の角部が面取りされた端部3bを形成しようとすると、当該面取りに対応した形状を有する凸部がプレート240に設けられている必要がある。端部3bのうち面取りされた角部は、積層方向において主部3aに近づくほど外方に拡がるので、当該凸部の先端が尖鋭化される。そのため、主部3aと端部3bとの間に段差Stが存在しない場合には、凸部の壁厚が薄くなる。従って、当該凸部の先端(尖鋭化した部分)の強度が弱まってしまうので、角部が面取りされた端部3bの安定的な製造に懸念が残りうる。しかしながら、主部3aと端部3bとの間に段差Stを設けるために当該凸部の先端により規定される段差Stの幅(当該凸部の「押さえ代」ともいう)を確保しようとする場合には、当該凸部が厚肉化される。そのため、当該凸部の先端の強度が確保されるので、主部3a側の角部が面取りされた端部3bをより安定的に製造することが可能となる。
図示はしていないが、端部3bのうち主部3a側の角部及び主部3aとは離れた側の角部が共に面取りされていなくてもよい。
56)積層方向における積層体2の両端面に向かうにつれて、ティース部5の幅が狭くなっていてもよいし、ヨーク部4の内径が大きくなっていてもよい。例えば、図59及び図60に示されるように、積層体2の最外層(最上層又は最下層)をなす打抜部材W1におけるティース部5の幅が積層体2の最外層以外をなす打抜部材W2におけるティース部5の幅よりも小さくなっており、且つ、積層体2の最外層をなす打抜部材W1におけるヨーク部4の内径が積層体2の最外層以外をなす打抜部材W2におけるヨーク部4の内径よりも大きくなっていてもよい。図60(a)に示されるように、積層体2の最外層をなす打抜部材W1におけるティース部5の先端は、積層体2の最外層以外をなす打抜部材W2におけるティース部5の先端と略一致していてもよい。図60(b)に示されるように、積層体2の最外層をなす打抜部材W1におけるティース部5の先端は、積層体2の最外層以外をなす打抜部材W2におけるティース部5の先端よりもヨーク部4寄りに位置していてもよい。
これらの場合、ティース部5のうちスロット7側の角部及び/又はヨーク部4のうちスロット7側の角部が欠けた状態となる。そのため、樹脂部3のうちスロット7の内壁面F2から積層体2の端面F3,F4に回り込む部分の厚さを確保しやすくなる。従って、樹脂部3の当該部分における割れを抑制することが可能となる。また、ティース部5に巻線が取り付けられたときに、樹脂部3の当該部分によって巻線とティース部5及び/又はヨーク部4との間の絶縁破壊を抑制することが可能となる。
なお、積層体2の最外層近傍をなす複数の打抜部材W1におけるティース部5の幅がその他の打抜部材Wにおけるティース部5の幅よりも小さくてもよいし、積層体2の最外層近傍をなす複数の打抜部材W1におけるヨーク部4の内径がその他の打抜部材Wにおけるヨーク部4の内径よりも大きくてもよい。積層体2の最外層近傍をなす複数の打抜部材W1におけるティース部5の幅は、積層方向において一定であってもよいし、積層体2の端面に向かうにつれて連続的又は段階的に小さくなっていてもよい。積層体2の最外層近傍をなす複数の打抜部材W1におけるヨーク部4の内径は、積層方向において一定であってもよいし、積層体2の端面に向かうにつれて連続的又は段階的に大きくなっていてもよい。また、図59及び図60に例示される形態において、図61に示されるように、主部3aと端部3bとの間に段差Stが設けられていてもよく、端部3bの角部が面取りされていてもよい。
57)上記の実施形態とは異なる構成の樹脂充填装置を用いて、固定子積層鉄心1を製造してもよい。ここで、他の例に係る樹脂充填装置700について、図62~図64を参照して説明する。樹脂充填装置700は、搬送機構710と、移動機構720と、充填機構730とを備える。
搬送機構710は、図62及び図63に示されるように、搬送ローラ711と、一対の移載アーム712とを有する。搬送ローラ711は、打抜装置130と移動機構720との間、及び、移動機構720と後続の他の装置との間に敷設されている。搬送ローラ711は、積層体2を載置するように構成された搬送部材701を、打抜装置130、移動機構720及び後続の他の装置の間で搬送する機能を有する。そのため、搬送ローラ711は、移動機構720の上流側と下流側とにそれぞれ配置されている。
ここで、搬送部材701は、図64に詳しく示されるように、搬送プレート702と、複数の位置決めピン703とを有する。搬送プレート702は、矩形状を呈する板状部材であり、積層体2を載置可能である。搬送プレート702には、一つの貫通孔702aと、複数の貫通孔702bとが設けられている。貫通孔702aは、円形状を呈しており、搬送プレート702の中心部に位置している。貫通孔702aは、積層体2の内径と同程度か積層体2の内径よりも若干小さくてもよい。
本実施形態では、48個の貫通孔702bが搬送プレート702に設けられている。複数の貫通孔702bは、貫通孔702aよりも外側において、貫通孔702aを囲むように略等間隔で円状に並んでいる。各貫通孔702bは、搬送プレート702に載置された状態の積層体2の各スロット7と一つずつ対応する位置に配置されている。各貫通孔702bは、中子部材260に対応する形状を有し且つ中子部材260と同程度の大きさである。各貫通孔702bの周囲で且つ搬送プレート702の表面には、中子部材260に対応する形状を有し且つ中子部材260よりも一回り大きい凹溝702cが設けられている。打抜装置130において形成された積層体2は、貫通孔2aが貫通孔702aと重なり合い且つ各スロット7が対応する貫通孔702bと重なり合うように、搬送プレート702上に載置される。
複数の位置決めピン703は、搬送プレート702の表面から上方に突出するように搬送プレート702に設けられている。本実施形態では、6個の位置決めピン703が搬送プレート702に設けられている。位置決めピン703は、四角柱状を呈している。位置決めピン703は、貫通孔702bよりも外側において、略等間隔で円状に並んでいる。これらの位置決めピン703は、搬送プレート702に積層体2が載置された状態において、積層体2の対応する凹溝6と係合する。
図62及び図63に戻って、一対の移載アーム712は、搬送プレート702を側方から挟持可能に構成されている。一対の移載アーム712は、上流側の搬送ローラ711によって移動機構720の近傍まで搬送された搬送プレート702を挟持し、移動機構720の下型210(詳しくは後述する)へと移載する機能を有する。一対の移載アーム712は、下型210に載置されている状態の搬送プレート702を挟持し、下流側の搬送ローラ711へと移載する機能を有する。
移動機構720は、ベース721と、昇降機構722と、一対のレール723と、下型210(ベース部材)と、拡径具250と、拡径機構724と、複数の中子部材260とを有する。
ベース721は、矩形状を呈する板状部材である。ベース721には貫通孔721aが設けられている。昇降機構722は、昇降ロッド722aと、駆動源722bとを含む。昇降ロッド722aは、直棒状を呈している。昇降ロッド722aは、ベース721の貫通孔721a内に挿通されており、鉛直方向に沿って延びている。昇降ロッド722aの上端には、昇降ロッド722aよりも径方向外方に張り出したフランジ部722cが設けられている。駆動源722bは、昇降ロッド722aの下端に取り付けられている。駆動源722bは、昇降ロッド722aをベース721に対して昇降可能に構成されている。駆動源722bは、例えば、油圧シリンダ、直動アクチュエータなどであってもよい。
一対のレール723は、ベース721上に設けられている。一対のレール723は、ベース721の貫通孔721aを間において対向するように、平行に延びている。一対のレール723の一端は、貫通孔721aの近傍に位置している。一対のレール723の他端は、ベース721の外方まで延びている。一対のレール723の他端は、上方から見て、上流側の搬送ローラ711と下流側の搬送ローラ711との間に位置している。
下型210は、下型210の下面に設けられたスライドユニット725を介して、一対のレール723に取り付けられている。そのため、下型210は、一対のレール723に沿って、一対のレール723の一端と他端との間を移動可能である。下型210の中央部には、貫通孔210bが設けられている(図63参照)。
拡径具250は、下型210上に載置されている。拡径具250の構成は、上記の実施形態と同様である。すなわち、拡径具250は、複数の拡径部材251と、押子部材252とを含む。複数の拡径部材251は、上方から見て、全体として円環状を呈している。拡径部材251の下面には凹溝254が設けられており、下型210の表面に設けられている案内レール215が凹溝254内に挿入可能である。そのため、拡径部材251は、案内レール215の延在方向に移動可能である。図示はしていないが、複数の拡径部材251には、これらに架けわたされた環状の弾性部材(例えば、Oリングなど)が取り付けられている。そのため、当該弾性部材によって、複数の拡径部材251には、互いに近づく方向(径方向内側)に付勢力が付与されている。押子部材252は、拡径部材251の内周面253内に配置されている。
拡径機構724は、図63に示されるように、昇降ロッド724aと、係合部材724bと、補助保持板724cと、弾性部材724dとを含む。昇降ロッド724aは、直棒状を呈している。昇降ロッド724aは、下型210の貫通孔210b内に挿通されており、鉛直方向に沿って延びている。昇降ロッド724aの上端には、押子部材252が取り付けられている。
係合部材724bは、略C字形状を呈している。係合部材724bは、その開放端側が下方を向くように、昇降ロッド724aの下端に取り付けられている。下型210と共に係合部材724bが一対のレール723に沿って移動し、係合部材724bがフランジ部722cに到達すると、係合部材724bがフランジ部722cと係合する。
補助保持板724cは、下型210の下面側において下型210に取り付けられている。補助保持板724cは、昇降ロッド724aが挿通された状態で、係合部材724bの上方に位置している。
弾性部材724dは、補助保持板724c上に載置されている。弾性部材724dは、昇降ロッド724aを上方に向けて付勢する機能を有する。弾性部材724dは、例えば圧縮コイルばねであってもよい。そのため、係合部材724bがフランジ部722cと係合して、昇降ロッド724aが下方に引っ張られると、それにつれて押子部材252も降下する。そのため、各拡径部材251が案内レール215に沿って径方向外方に移動する。一方、係合部材724bがフランジ部722cから離間して、昇降ロッド724aの下端から引っ張り力が除去されると、弾性部材724dが昇降ロッド724aを付勢して、昇降ロッド724aを上方に押し上げる。そのため、押子部材252から各拡径部材251に対する負荷も除去される。このとき同時に、環状の弾性部材により、各拡径部材251が案内レール215に沿って径方向内側に移動する。
複数の中子部材260は、下型210の上面から上方に向けて突出するように、下型210に取り付けられている。複数の中子部材260は、拡径具250を取り囲むように、略等間隔で円状に並んでいる。各中子部材260は、積層体2の各スロット7と一つずつ対応する位置に配置されている。
充填機構730は、プレート270及び上型290を有している。図62の形態では、プレート270には、プレート240,280が一体化されている点で、上記の実施形態に係るプレート270と異なっている。図62の形態では、上型290には、拡径具250、各中子部材260及び各位置決めピン703に対応する位置に貫通孔が設けられている点で、上記の実施形態に係る上型290と異なっている。
続いて、以上のような樹脂充填装置200を用いて積層体2の各スロット7に樹脂部3を形成する方法(固定子積層鉄心1の製造方法)について、図62及び図65~図67を参照して説明する。
まず、打抜装置130において積層体2が形成され、積層体2が打抜装置130から排出されると、搬送プレート702上に積層体2が載置される。このとき、積層体2の貫通孔2aが、搬送プレート702の貫通孔702aと重なり合う。積層体2の各スロット7が、搬送プレート702の対応する各貫通孔702bと重なり合う。搬送プレート702の各位置決めピン703が、積層体2の対応する凹溝6と係合する(図62参照)。
次に、積層体2が載置された搬送プレート702(搬送部材701)は、上流側の搬送ローラ711によって移動機構720の近傍まで搬送される(図62参照)。このとき、一対のレール723の他端側(第1の位置)に下型210が位置している。
次に、一対の移載アーム712が動作して、搬送プレート702を一対の移載アーム712によって両側から把持しつつ、搬送部材701を下型210に移載する。具体的には、移載アーム712は、搬送部材701が下型210に向けて降下するように、搬送部材701を下型210に対して積み重ねる。このとき、拡径具250は、搬送プレート702の貫通孔702a及び積層体2の貫通孔2aに挿通される。各中子部材260は、搬送プレート702の対応する貫通孔702b及び積層体2の対応するスロット7に挿通される(図65参照)。
次に、下型210が一対のレール723上を移動して、一対のレール723の一端側(第2の位置)に到達する。このとき、係合部材724bがフランジ部722cと係合して、各拡径部材251が拡径する。そのため、各拡径部材251の外周面は貫通孔2aの内周面に当接し、これに対して径方向外向きの力を付与する。
次に、積層体2上にプレート270及び上型290を載置し、上型290の各貫通孔292内に樹脂ペレットP及びプランジャ293を一つずつ配置した状態で、プランジャ293を動作させる(図66参照)。これにより、溶融状態となった樹脂ペレットPがプランジャ293によって押し出され、溶融樹脂が充填空間V1及び補助空間V2内に充填される。その後、溶融樹脂が固化して、充填空間V1及び補助空間V2内に樹脂部3が形成される。こうして、積層体2のスロット7の内壁面F2に樹脂部3が設けられた固定子積層鉄心1が完成する。
以上の樹脂充填装置700によれば、搬送部材701を下型210に対して積み重ねるだけで、複数の中子部材260を同時且つ簡易に、対応するスロット7内に挿入することが可能となる。
以上の樹脂充填装置700によれば、搬送部材701を下型210に対して積み重ねるだけで、積層体2の内部に拡径具250が配置される。そのため、拡径具250についても、積層体2に対して簡易且つ迅速に配置することが可能となる。
以上の樹脂充填装置700によれば、下型210への搬送部材701の積み重ね位置(第1の位置)と、積層体2への溶融樹脂の充填位置(第2の位置)とが異なっている。そのため、充填機構730が、移載アーム712により搬送部材701の下型210への移載が行われる領域とは異なる領域に配置される。従って、樹脂充填装置700の小型化を図ることが可能となる。
なお、以上の樹脂充填装置700において、下型210への搬送部材701の積み重ね位置(第1の位置)と、積層体2への溶融樹脂の充填位置(第2の位置)とが、同じであるか又は互いに近傍であってもよい。すなわち、この場合、樹脂充填装置700がレール723又は移動機構720自体を備えていなくてもよい。
下型210に拡径具250が設けられていなくてもよい。
以上の樹脂充填装置700では、移載アーム712により、搬送部材701が下型210に対して積み重ねられたが、下型210が搬送部材701に向けて上昇することにより両者が積み重ねられてもよい。すなわち、搬送部材701及び下型210の少なくとも一方が他方に向けて移動することにより、両者が積み重ねられてもよい。
図68に示されるように、搬送プレート702には貫通孔702b及び凹溝702cが設けられておらず、凹溝702cに対応した凹溝218aが設けられた補助板218が下型210に設けられていてもよい。この場合、搬送プレート702に積層体2が載置されると、ヨーク部4は、搬送プレート702のうち貫通孔702bの近傍領域において支持されるが、ティース部5は、貫通孔702bと重なり合うため搬送プレート702によって支持されない。この場合、同図に示されるように、スロット7の内壁面F2に樹脂部3が形成された後に搬送部材701が下型210から取り外されたときに、樹脂部3の形成状態を、上方側からのみならず、搬送プレート702側(下方側)からも貫通孔702bを介して確認することが可能となる。
58)スロット7の内壁面F2が、積層方向において凹凸が並ぶ凹凸面であってもよい。例えば、図69及び図70に示されるように、スロット7の内周面(ヨーク部4の内周縁及び/又はティース部5のうちスロット7をなす周縁)に切欠7aが設けられた打抜部材W3と、切欠7aが設けられていない打抜部材W1とを混在して積層することにより、積層体2を得てもよい。この場合、樹脂部3が切欠7a内にも設けられるので、スロット7の内壁面F2に対する樹脂部3の付着性が高まる。そのため、樹脂部3の積層体2からの剥がれを抑制することができる。なお、図70(a)に示されるように、切欠7aは、スロット7の内周面に部分的に設けられていてもよい。図70(b)に示されるように、切欠7aは、スロット7の内周面の略全体にわたって設けられていてもよい。図70(b)では、打抜部材W1,W3の積層状態の理解を容易にするために、一点鎖線で打抜部材W1も示している。
図71に示されるように、打抜部材W3のうちヨーク部4の内周縁及び/又はティース部5のうちスロット7をなす周縁には、切欠7aに代えて、異形部7bが設けられていてもよい。具体的には、図71(a)に示される形態では、異形部7bは断面三角形状を呈している。図71(b)に示される形態では、異形部7bは他の領域よりも厚さが薄い断面形状を呈している。これらの異形部7bは、例えば、コイニング加工により形成されてもよい。図72に示されるように、異形部7bが設けられた打抜部材W3のみを積層して積層体2が構成されていてもよい。
59)スロット7内において拡縮可能に構成された中子部材260Aを用いてもよい。具体的には、図73に示されるように、中子部材260Aは縦割りで2分割されており、各部分が弾性部材260fによって接続されていてもよい。そのため、中子部材260Aの各部分は、弾性部材260fによって互いに近づき合うように付勢されている。弾性部材260fは、例えば圧縮コイルばねであってもよい。中子部材260Aの上端面及び下端面にはそれぞれ、凹部260gが設けられている。凹部260gは、底壁に向かうにつれて縮径している。
このような中子部材260Aを用いて樹脂部3を形成する過程について、図73~図75を参照して説明する。まず、図73に示されるように、下型210C上に、案内シャフト220、位置決めブロック230A、位置決めピン230B、プレート240、拡径具250、スロット7内に主部3aが設けられた積層体2、プレート240、中子部材260A、プレート270、プレート280及び上型290Aが所定の順に取り付けられる。これにより、スロット7内に中子部材260Aが配置された状態となる。ここで、下型210Cは、中子部材260Aに対応する位置に貫通孔216が設けられている点で、上記の実施形態に係る下型210と相違している。また、上型290Aは、中子部材260Aに対応する位置に貫通孔294が設けられている点で、上記の実施形態に係る上型290と相違している。
次に、図74に示されるように、貫通孔216からプランジャ217を挿入すると共に、貫通孔294からプランジャ295を挿入する。プランジャ217,295の先端部は、先端に向かうにつれて縮径している。そのため、プランジャ217の先端部が中子部材260Aの上端面における凹部260gに挿入され、プランジャ293の先端部が中子部材260Aの下端面における凹部260gに挿入されると、弾性部材260fによる付勢力に抗して、中子部材260Aの各部分が互いに離間する。そこで、この状態で、溶融樹脂を充填空間V1及び補助空間V2内に充填する。
溶融樹脂が固化して、充填空間V1及び補助空間V2内に樹脂部3が形成されると、図75に示されるように、プランジャ217,295を貫通孔216,294から引き抜く。これにより、中子部材260Aの各部分は、弾性部材260fにより引き寄せられる。そのため、中子部材260Aが樹脂部3から離間する。従って、中子部材260Aのスロット7内への挿入及び引き抜きを容易に行えるようになる。
60)上型290には樹脂ペレットP及びプランジャ293が配置可能な複数の貫通孔292が設けられているが、全てのスロット7における充填空間V1に対して一度に溶融樹脂を充填しようとすると、樹脂充填装置200が全体として大型化してしまう傾向にある。そこで、図76に示されるように、複数の貫通孔292のうちの一部に樹脂ペレットP及びプランジャ293を配置し、対応するスロット7の充填空間V1内に溶融樹脂を充填してもよい。その後、積層体2側とプランジャ293側との少なくとも一方を回転又は移動して、別の貫通孔292から残余のスロット7の充填空間V1内に溶融樹脂を充填することを繰り返してもよい。この場合、一部のスロット7における充填空間V1に対して溶融樹脂を順次充填すればよいので、樹脂充填装置200の小型化を図ることが可能となる。
61)図77に示されるように、積層体2の積厚よりも小さい中子部材260を用いてもよい。この場合のこのような中子部材260を用いて樹脂部3を形成する過程について、図77及び図78を参照して説明する。まず、図77に示されるように、下型210C上に、案内シャフト220、位置決めブロック230A、位置決めピン230B、プレート240、拡径具250、スロット7内に主部3aが設けられた積層体2、プレート240、中子部材260、プレート270C、プレート280A及び上型290が所定の順に取り付けられる。これにより、スロット7内の下部に中子部材260が配置された状態となる。
ここで、下型210Cは、中子部材260に対応する位置に貫通孔216が設けられている点で、上記の実施形態に係る下型210と相違している。プレート270Cの下面には、スロット7に対応する位置に、中子部材260を保持する保持部材276が設けられていてもよい。保持部材276は、スロット7に対応する形状を有しており、中子部材260が下型210の挿入穴214に挿入された状態において中子部材260を下型210との間で挟持する。下型210及び保持部材276には、これらを貫通し、且つ、貫通孔285と充填空間V1とを連通するように構成された貫通孔270bが設けられている。プレート280Aは、中子部材260に対応する位置に貫通孔284が設けられていない点で、上記の実施形態に係るプレート280と相違している。
次に、複数の貫通孔292に樹脂ペレットP及びプランジャ293をそれぞれ一つずつ配置し、下型210、中子部材260、保持部材276及びスロット7に囲まれる空間である充填空間V1a(充填空間V1の下部)及び下方の補助空間V2内に、貫通孔285,270bを通じて溶融樹脂を充填する。
次に、プレート270C,280A及び上型290を積層体2から取り外し、これらに代えて図78に示されるように、プレート270D,270A及び上型290を積層体2に対して取り付ける。次に、貫通孔216からプランジャ217を挿入し、中子部材260の上端がプレート270Dに当接するまで中子部材260を押し上げる。この状態で、再び、複数の貫通孔292に樹脂ペレットP及びプランジャ293をそれぞれ一つずつ配置し、スロット7の下方に既に形成された樹脂部3、プレート270D、中子部材260及びスロット7に囲まれる空間である充填空間V1b(充填空間V1の上部)及び上方の補助空間V2内に、貫通孔285,270bを通じて溶融樹脂を充填する。これにより、積層体2のスロット7の内壁面F2に樹脂部3が設けられた固定子積層鉄心1が完成する。
以上によれば、溶融樹脂は、積層方向において充填空間V1a,V1bにそれぞれ部分的に充填される。そのため、充填空間V1に一度に溶融樹脂が充填される場合と比較して、充填空間V1への溶融樹脂の充填性を高めることが可能となる。なお、以上の説明では、充填空間V1内への溶融樹脂の充填を2回に分けて行う場合について説明したが、充填空間V1内への溶融樹脂の充填を3回以上に分けて行ってもよい。なお、このように充填空間V1内への溶融樹脂の充填を複数回に分けて行う場合、一の充填空間V1に充填される溶融樹脂の種類は、同じであってもよいし、異なっていてもよい。
62)図79及び図80に示されるように、プレート270と上型290との間に中間プレート800が介在していてもよい。具体的には、中間プレート800には、複数の貫通孔801と、複数の貫通孔802と、複数の貫通孔803とが設けられている。貫通孔801は、上型290の挿入穴291に対応する位置に設けられている。貫通孔802は、上型290の貫通孔292に対応する位置に設けられている。貫通孔803は、中子部材260に対応する位置に設けられている。従って、図79に示されるように、相対的に積厚の大きい積層体2を樹脂充填装置200に設置した場合、案内シャフト220の上端部は中間プレート800の貫通孔801内に位置し、中子部材260の上端部はプレート280の貫通孔285内に位置する。一方、図80に示されるように、相対的に積厚の小さい積層体2を樹脂充填装置200に設置した場合、案内シャフト220の上端部は上型290の挿入穴291内に位置し、中子部材260の上端部は中間プレート800の貫通孔803内に位置する。
以上より、中間プレート800の貫通孔801,803はそれぞれ、案内シャフト220及び中子部材260が通過可能な逃し部として機能する。この場合、異なる積厚の積層体2を一つの樹脂充填装置で取り扱うことが可能となる。なお、図79及び図80では、位置決めピン230Bと、これが挿入される挿入穴213及び貫通孔243,273の図示を省略している。図79及び図80に示される中間プレート800に代えて、プレート270,280又は上型290の厚さを厚くし、案内シャフト220又は中子部材260が通過可能な逃し部(挿通孔、貫通孔等)をこれらに設けてもよい。
63)中子部材260の外周面とスロット7の内壁面F2との間には、積層方向に延びる樹脂注入流路FPが設けられていてもよい。樹脂注入流路FPは、溶融樹脂に対する流路抵抗が充填空間V1よりも小さく設定されている。この場合、溶融樹脂は、樹脂注入流路FPから充填空間V1へと、流路抵抗が小さい順に流れる。すなわち、溶融樹脂は、積層方向に延びる樹脂注入流路FP内を満たし、続いて、樹脂注入流路FPから充填空間V1に向けて積層方向とは交差する方向に充填空間V1内を満たしていく。そのため、樹脂注入流路FPが存在しない場合と比較して、充填空間V1の全体に溶融樹脂をより効果的に満たすことが可能となる。なお、樹脂注入流路FPは、積層体2の一端面から他端面にかけて延びていてもよい。
樹脂注入流路FPは、例えば、図81(a)に示されるように、スロット7の内壁面F2のうちヨーク部4の内周面に設けられた凹溝であってもよい。樹脂注入流路FPは、例えば、図81(b)に示されるように、スロット7の内壁面F2のうちティース部5の側面に設けられた凹溝であってもよい。樹脂注入流路FPは、例えば、図82(a)に示されるように、スロット7の内壁面F2と中子部材260との間に設けられた空間であってもよい。樹脂注入流路FPは、例えば、図82(b)に示されるように、中子部材260の外周面に設けられた凹溝であってもよい。樹脂注入流路FPの数及び形状は、特に限定されない。なお、図81及び図82において、中子部材260の外周面とスロット7の内壁面F2との離間距離が例えば0.3mm~0.5mm程度である場合、樹脂注入流路FPの幅は例えば0.7mm~0.9mm程度であってもよい。
64)図83に示されるように、拡径部材251と中子部材260とが一体化されていてもよい。この場合、拡径部材251と中子部材260とを一体的に連結する連結部255は、スロット7の開口8と同程度の幅を有しており、開口8を閉塞している。積層体2が樹脂充填装置200に取り付けられる際には、図83(a)に示されるように、拡径部材251が全体として下型210の中心部に寄った状態で、各中子部材260が対応するスロット7内に挿入されると共に、連結部255が開口8内に配置される。次に、図83(b)に示されるように、連結部255が開口8を閉塞した状態のまま、拡径部材251が積層体2の径方向外側に移動し、拡径部材251の外周面が積層体2の貫通孔2aの内周面に当接する。
65)中子部材260は、樹脂充填装置200のうち積層体2を挟持する部材(上記の実施形態では、例えば、下型210、プレート240,270,280又は上型290)に一体化されていてもよい。例えば、図84に示されるように、中子部材260が2つの部分269に分割されており、一方の部分269が下型210と一体化され、他方の部分269が上型290と一体化されていてもよい。これにより、樹脂充填装置200に積層体2が設置されると、下型210と一体化された部分269と上型290と一体化された部分269とがスロット7内において当接し、中子部材260が構成される。
66)図示していないが、拡径部材251と、中子部材260と、樹脂充填装置200のうち積層体2を挟持する部材とが一体化されていてもよい。
67)図示していないが、補助空間V2のうちヨーク部4の端面F3と対向する一部は、補助空間V2のうちヨーク部4の端面F3と対向する残部よりも高く且つ周方向に沿って延びていてもよい。この場合、溶融樹脂が補助空間V2に充填されると、補助空間V2の当該一部に対応して、背高で且つ周方向に延びる樹脂壁部がヨーク部4の端面F3に形成される。ところで、複数のティース部5を一組として巻線を巻回する場合(いわゆる分布巻の場合)、一のスロット7から出た巻線はいったんヨーク部4に向かい、ヨーク部4上を這うように延びた後、一のスロット7とは隣り合わない他のスロット7に向かう。この場合、上記のように樹脂壁部がヨーク部4の端面F3に形成されていると、分布巻の際に樹脂壁部を巻線のガイドとして利用することが可能となる。従って、固定子積層鉄心1に対して効果的に巻線を取り付けることが可能となる。樹脂壁部は、端面F3上において環状を呈していてもよいし、周方向に連続して延びていなくてもよい(弧状を呈していてもよい)。
図85に示されるように、樹脂部3には、スロット7内において互いに対向し且つ積層方向に延びる一対の切欠溝3dが設けられていてもよい。この場合、一対の切欠溝3d内に、絶縁紙等の絶縁部材を取り付けることが可能となる。そのため、図85に示されるように、スロット7の内壁面F2のうちヨーク部4の内周面に樹脂部3が設けられていなくてもよい。
68)溶融樹脂を充填空間V1に充填する際に、流動性が低い状態の溶融樹脂を充填空間V1のうちティース部5の先端側に充填しつつ、流動性が高い状態の溶融樹脂を充填空間V1のうちティース部5の基端側に充填してもよい。この場合、スロット7の開口8からの溶融樹脂の漏出を抑制することが可能となると共に、ティース部5の基端側において、充填空間V1内への溶融樹脂の充填性を高めることが可能となる。
例えば、図86に示されるように、ティース部5の先端側に設けられた貫通孔292内に、相対的に低温となるように加熱された樹脂ペレットP3を配置しつつ、ティース部5の基端側に設けられた貫通孔292内に、相対的に高温となるように加熱された樹脂ペレットP4を配置した状態で、これらの樹脂ペレットP3,P4を溶融状態としつつプランジャ293で充填空間V1内に押し出してもよい。相対的に低温となるように樹脂が加熱されていると、反応が比較的進行し難いので、流動性が低く(粘性が高く)且つ硬化速度が遅くなる。一方、相対的に高温となるように樹脂が加熱されていると、反応が比較的進行しやすいので、流動性が高く(粘性が低く)且つ硬化速度が速くなる。そのため、流動性が低い状態の溶融樹脂を充填空間V1のうちティース部5の先端側に充填しつつ、流動性が高い状態の溶融樹脂を充填空間V1のうちティース部5の基端側に充填することが可能となる。なお、相対的に低温の樹脂ペレットP3と相対的に高温の樹脂ペレットP4との温度差は20℃程度であってもよい。樹脂ペレットP3の加熱温度は例えば40℃~60℃程度であってもよく、樹脂ペレットP4の加熱温度は例えば60℃~80℃程度であってもよい。異なる温度に加熱された樹脂ペレットを3つ以上用いてもよい。
例えば、ティース部5の先端側に設けられた貫通孔292内に配置される樹脂ペレットP3の特性と、ティース部5の基端側に設けられた貫通孔292内に配置される樹脂ペレットP4の特性とが異なっていてもよい。すなわち、樹脂ペレットP3,P4を構成する樹脂の種類、樹脂ペレットP3,P4が含有するフィラーの種類等により、樹脂ペレットP3が溶融樹脂となったときの流動性が、樹脂ペレットP4が溶融樹脂となったときの流動性よりも低くてもよい。
例えば、ティース部5の先端側の温度がティース部5の基端側の温度よりも低くなるように、ティース部5又は中子部材260が加熱されていてもよい。この場合も、充填空間V1に充填された溶融樹脂は、ティース部5の先端側において反応が比較的進行し難く流動性が低くなる一方で、ティース部5の基端側において反応が比較的進行しやすく流動性が高くなる。
ティース部5又は中子部材260をティース部5の延在方向において部分的に異なる温度とするために、下型210及び/又は上型290に異なる2つ以上の独立したヒータが設けられていてもよい。これらのヒータは、環状を呈しており、ティース部5の延在方向に沿って並ぶように同心円状に配置されていてもよい。ティース部5の先端側に位置するヒータの温度ほど低温に設定され、ティース部5の基端側に位置するヒータの温度ほど高温に設定される。
ティース部5又は中子部材260をティース部5の延在方向において部分的に異なる温度とするために、中子部材260の内部に異なる2つ以上の独立したヒータが設けられていてもよい。これらのヒータは、ティース部5の径方向において並んでいてもよい。ティース部5の先端側に位置するヒータの温度ほど低温に設定され、ティース部5の基端側に位置するヒータの温度ほど高温に設定される。
69)溶融樹脂を充填空間V1に充填する際に、流動性が低い状態の溶融樹脂を充填空間V1に充填した後に、流動性が高い状態の溶融樹脂を充填空間V1に充填するようにしてもよい。この場合、充填空間V1のうち溶融樹脂の充填口とは反対側に、流動性が低い状態の溶融樹脂が充填される。そのため、充填口とは反対側からの溶融樹脂の漏出を抑制することが可能となる。一方、充填口側においては、流動性が高い状態の溶融樹脂が充填される。そのため、充填口側において、溶融樹脂の充填性を高めることが可能となる。
例えば、図87に示されるように、相対的に低温となるように加熱された樹脂ペレットP3及び相対的に高温となるように加熱された樹脂ペレットP4を、樹脂ペレットP3が樹脂ペレットP4よりも充填空間V1寄りに位置するように貫通孔292内に配置した状態で、これらの樹脂ペレットP3,P4を溶融状態としつつプランジャ293で充填空間V1内に押し出してもよい。相対的に低温となるように樹脂が加熱されていると、反応が比較的進行し難いので、流動性が低く(粘性が高く)且つ硬化速度が遅くなる。一方、相対的に高温となるように樹脂が加熱されていると、反応が比較的進行しやすいので、流動性が高く(粘性が低く)且つ硬化速度が速くなる。そのため、流動性が低い状態の溶融樹脂を充填空間V1に充填した後に、流動性が高い状態の溶融樹脂を充填空間V1に充填することが可能となる。なお、相対的に低温の樹脂ペレットP3と相対的に高温の樹脂ペレットP4との温度差は20℃程度であってもよい。樹脂ペレットP3の加熱温度は例えば40℃~60℃程度であってもよく、樹脂ペレットP4の加熱温度は例えば60℃~80℃程度であってもよい。異なる温度に加熱された樹脂ペレットを3つ以上用いてもよい。
例えば、一の貫通孔292内に配置される樹脂ペレットP3,P4の特性が異なっていてもよい。すなわち、樹脂ペレットP3,P4を構成する樹脂の種類、樹脂ペレットP3,P4が含有するフィラーの種類等により、樹脂ペレットP3が溶融樹脂となったときの流動性が、樹脂ペレットP4が溶融樹脂となったときの流動性よりも低くてもよい。
例えば、ティース部5のうち溶融樹脂の充填口とは反対側の温度が充填口側の温度よりも低くなるように、ティース部5又は中子部材260が加熱されていてもよい。この場合も、充填空間V1に充填された溶融樹脂は、充填口とは反対側において反応が比較的進行し難く流動性が低くなる一方で、充填口側において反応が比較的進行しやすく流動性が高くなる。
ティース部5又は中子部材260を積層方向において部分的に異なる温度とするために、下型210と上型290とに異なる独立したヒータが設けられていてもよい。上型290側から溶融樹脂が充填される場合には、下型210に位置するヒータの温度ほど低温に設定され、上型290に位置するヒータの温度ほど高温に設定される。
ティース部5又は中子部材260を積層方向において部分的に異なる温度とするために、中子部材260の内部に異なる2つ以上の独立したヒータが設けられていてもよい。これらのヒータは、積層方向において並んでいてもよい。上型290側から溶融樹脂が充填される場合には、下型210側に位置するヒータの温度ほど低温に設定され、上型290側に位置するヒータの温度ほど高温に設定される。
70)図88に示されるように、中子部材260の端面と側面とにわたって延びる樹脂流路260hが中子部材260に設けられていてもよい。この場合、中子部材260の樹脂流路260hを通じて、溶融樹脂を充填空間V1内に充填してもよい。この場合、充填空間の中途に溶融樹脂が直接注入されるので、充填空間V1内への溶融樹脂の充填性を高めることが可能となる。なお、図88に示されるように、樹脂流路260hの位置において中子部材260が分割可能に構成されていると、樹脂流路260h内に残存した溶融樹脂の硬化物(いわゆる、「カル」)を除去しやすくなる。
71)各充填空間V1内に充填される溶融樹脂の種類は、全て同じであってもよいし、充填空間V1に応じて異なっていてもよい。
72)各充填空間V1内に対して、溶融樹脂を、下型210側から充填してもよいし、上型290側から充填してもよいし、下型210側及び上型290側の双方から充填してもよい。
73)図示していないが、ティース部5が複数に分岐されていてもよい。例えば、ヨーク部4に対して二叉状のティース部5が設けられていてもよい。この場合、ティース部5のうち分岐した隙間にも樹脂部3が設けられていてもよい。
74)図示していないが、中子部材260を加熱する加熱装置が中子部材260に接続されていてもよい。この場合、溶融樹脂の充填空間V1内への充填前に加熱装置によって中子部材260を加熱することで、中子部材260が熱膨張し、中子部材260が開口8をより確実に閉塞しうる。そのため、溶融樹脂の開口8からの漏出をより抑制することが可能となる。また、中子部材260が加熱されることで、溶融樹脂も加熱されるので、溶融樹脂の流動性を高めることが可能となる。一方、溶融樹脂の充填空間V1内への充填後に、中子部材260の加熱を停止することで、中子部材260が元の形状となるように収縮し、スロット7の内壁面F2に設けられた樹脂部3と中子部材260との間に隙間が形成されうる。そのため、中子部材260をスロット7に対して挿抜しやすくなる。中子部材260の加熱方法としては、例えば、ヒータにより中子部材260を加熱すること、中子部材260に設けられた流路に加熱流体を流通させることなどが挙げられる。
75)複数の打抜部材Wが積層されたブロック体のスロット7内に樹脂部3が設けられた中間体を得た後、複数の中間体を積み重ねて一体化することにより、固定子積層鉄心1を製造してもよい。
76)全ての中子部材260がスロット7の上方から挿抜されてもよいし、全ての中子部材260がスロット7の下方から挿抜されてもよい。あるいは、一部の中子部材260がスロットの上方から挿抜され且つ残部の中子部材260がスロット7の下方から挿抜されてもよい。この場合、中子部材260のスロット7内への挿入時に、積層体2に生ずる荷重(摩擦抵抗)が積層体2の上端面側と下端面側とで分散されるので、中子部材260をスロット7内に挿入しやすくなると共に、中子部材260をスロット7内から取り出しやすくなる。
77)以上では、樹脂部3によって開口8が閉塞されていない形態について説明したが、樹脂部3によって開口8が閉塞されている形態に対しても同様に本発明を適用しうる。例えば、図89及び図90に示されるように、開口8が樹脂部3の閉塞部3cによって閉塞されていてもよい。閉塞部3cは、主部3a及び端部3bと一体的に形成されている。
ここで、樹脂部3によって開口8が閉塞された固定子積層鉄心1を製造するためには、例えば図91に示されるように、スロット7内に配置された中子部材260がスロット7の内壁面F2と離間し、且つ、貫通孔2a内に配置された閉塞部材600で全ての開口8を閉塞した状態で、充填空間V1内に溶融樹脂を充填する。閉塞部材600は、例えば図64に示されるように、積層体2(ティース部5)の内径と略同一の外径を有する円柱状体であってもよい。閉塞部材600は、例えば図92に示されるように、円柱状体の閉塞部材600の周面に、各開口8に対応する突条601が設けられていてもよい。この場合、各開口8が対応する突条601によって閉塞されるので、溶融樹脂の開口8からの漏出を抑制することが可能となる。
閉塞部材600は、例えば図93に示されるように、複数の柱状体602で構成されていてもよい。柱状体602は、円柱状であってもよいし、四角柱状であってもよいし、他の種々の断面形状を呈する柱状であってもよい。閉塞部材600によって開口8が閉塞される場合、各柱状体602は、対応する開口8に一つずつ配置される。図94に示されるように、隣り合う柱状体602同士が接続部材603によって接続されていてもよい。この場合、柱状体602の全てが接続部材603によって接続されており、柱状体602全体が環状を呈していてもよいし、柱状体602の全てではなく一部が接続部材603によって接続されていてもよい。図示はしていないが、閉塞部材600として拡径具250を用い、拡径部材251の外周面により開口8を閉塞してもよい。
なお、図91~図94には、閉塞部材600が完全に開口8に当接している様子が示されているが、開口8と閉塞部材600との間に微細な隙間(例えば、数十μm程度の隙間)が存在していてもよい。