JP7406193B2 - ナノインプリント用硬化性樹脂組成物、硬化物の製造方法、及び凹凸構造体の製造方法 - Google Patents

ナノインプリント用硬化性樹脂組成物、硬化物の製造方法、及び凹凸構造体の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、硬化性樹脂組成物、硬化物、並びに凹凸構造体及びその製造方法に関する。
従来より、光等のエネルギー線又は熱等を付与して重合性化合物を重合させることによって硬化する硬化性の樹脂組成物が広く知られており、例えば酸等を発生して重合性化合物の重合を開始する重合開始剤を用いた硬化性組成物がある。
硬化性組成物の硬化反応は、例えば、化合物中のエチレン性不飽和二重結合による付加重合、又は化合物中のグリシジル基の開環による開環重合などによって行われる。前者では例えばアクリロイル基を有する重合性化合物が一般に知られ、後者では例えばエポキシ環を有する重合性化合物が一般に知られている。具体的な一例として、ペンタエリスリトールテトラグリシジルエーテル等のオキシラン環を有する化合物などが開示されている(例えば、特許文献1~2参照)。
一方、硬化性組成物は、成形体の作製に用いられるほか、耐傷性を付与するための保護用材料、パターンを形成するための加工用材料等に用いられている。具体的な例として、擦過等で傷がつきにくい高硬度のハードコート層を形成する硬化性組成物、及びモールド(型)と基材とで樹脂を挟み込み、モールド(型)のナノオーダーのパターンを転写するナノインプリントリソグラフィー(NIL)用の硬化性組成物等が知られている。
前記NILの中でも、UVナノインプリントリソグラフィー(UV-NIL)は、反射防止構造を有するフィルム(ARSフィルム)の大量製造に有用な技術である。ARSフィルムは、半導体等の電子デバイス、光デバイス、記録メディア等に広く利用され、スマートフォン、タブレット、タッチパネル、太陽電池、LEDなどの表面に貼り付けて使用されている。
特許文献1:特開2013-189504号公報
特許文献2:特開2013-112649号公報
従来から種々の硬化性組成物が提供されてきており、硬化性等の性能の向上が図られてきてはいるものの、近年、硬化後の硬化物における耐傷性、形状保持性、及び耐摩耗性等の耐久性に対する更なる向上が求められている。耐久性の向上には、硬化後の硬度を向上させることが有効である。
本開示は、上記に鑑みなされたものである。即ち、
本発明の一実施形態が解決しようとする課題は、モスアイ構造等の精細な構造の再現性に優れ、かつ、従来に比べてより高い硬度が得られる硬化性樹脂組成物を提供することにある。好ましくは、インプリント用の硬化性樹脂組成物を提供することにある。
本発明の他の実施形態が解決しようとする課題は、防汚性に優れ、かつ、防汚剤を含む従来の組成に比べて硬度が著しく向上された硬化性樹脂組成物を提供することにある。好ましくは、ハードコーティング(即ち、ハードコート層の形成)用の硬化性樹脂組成物を提供することにある。
本発明の他の実施形態が解決しようとする課題は、従来の硬化物に比べ、硬度が大幅に向上された硬化物を提供することにある。
本発明の他の実施形態が解決しようとする課題は、従来の硬化物に比べ、硬度が大幅に向上された凹凸構造体及びその製造方法を提供することにある。
本発明者等は、重合性を付与する成分の一つである重合性化合物のうち、ペンタエリスリトールテトラグリシジルエーテルを選択的に用いた硬化性樹脂組成物が特に硬度が高くなり、例えば、ハードコーティング用途及びインプリント用途に適しているとの知見を得、本開示の硬化性樹脂組成物及び硬化物は、かかる知見に基づいたものである。
また、防汚剤として界面活性剤を含有する硬化性の樹脂組成物は、従来から一般に防汚剤を含まない組成に比べて硬度が低下する傾向があるとされてきたが、防汚剤として界面活性剤を含有する組成でも硬度の低下が改善され、従来に比べ、硬度の高い硬化物の作製が可能になる。
上記の課題を解決するための具体的手段には、以下の態様が含まれる。
<1> ペンタエリスリトールテトラグリシジルエーテル及び重合開始剤を含有し、凹凸構造体の製造に用いられる硬化性樹脂組成物である。
<2> ペンタエリスリトールテトラグリシジルエーテル、重合開始剤、及び界面活性剤を含有し、ハードコート層の形成に用いられる硬化性樹脂組成物である。
<3> 前記界面活性剤が、フッ素化合物及びシロキサン化合物からなる群より選ばれる少なくとも一種を含む<2>に記載の硬化性樹脂組成物である。
<4> 前記界面活性剤が、含フッ素アクリル化合物及び含フッ素シロキサン化合物からなる群より選ばれる少なくとも一種を含む<2>又は<3>に記載の硬化性樹脂組成物である。
<5> 更に、フッ素化合物及びシロキサン化合物からなる群より選ばれる少なくとも一種を含む<1>に記載の硬化性樹脂組成物である。
<6> 前記重合開始剤が、光酸発生剤、熱酸発生剤、及び光カチオン発生剤からなる群より選ばれる少なくとも一種の化合物である<1>~<5>のいずれか一つに記載の硬化性樹脂組成物である。
<7> 更に、グリシジルエーテル化合物、グリシジルエステル化合物、グリシジルアミン化合物、脂肪族エポキシ化合物、オレフィン酸化エポキシ化合物、シリコーン変性化合物、フッ素変性エポキシ化合物、及びオキセタン化合物からなる群より選ばれる少なくとも一種の反応性化合物を含有する<1>~<6>のいずれか一つに記載の硬化性樹脂組成物である。
<8> 更に、アントラセン系化合物、アントラキノン系化合物、チオキサントン系化合物、ナフタレン系化合物、フェナントレン系化合物、クリセン系化合物、ペリレン系化合物、及びアクリジン系化合物からなる群より選ばれる少なくとも一種の増感剤を含有する<1>~<7>のいずれか一つに記載の硬化性樹脂組成物である。
<9> 前記増感剤が、ジアルコキシアントラセンを含む<8>に記載の硬化性樹脂組成物である。
<10> 前記ペンタエリスリトールテトラグリシジルエーテルの含有量が、硬化性樹脂組成物全質量に対して、45質量%~97質量%である<1>~<9>のいずれか一つに記載の硬化性樹脂組成物である。
<11> 前記ペンタエリスリトールテトラグリシジルエーテルは、エポキシ当量が90~150である<1>~<10>のいずれか一つに記載の硬化性樹脂組成物である。
<12> 前記重合開始剤の含有量が、前記ペンタエリスリトールテトラグリシジルエーテルに対して、3質量%~30質量%である<1>~<11>のいずれか一つに記載の硬化性樹脂組成物である。
<13> 前記重合開始剤の含有量が、硬化性樹脂組成物の全質量に対して、0.1質量%~10質量%である<1>~<12>のいずれか一つに記載の硬化性樹脂組成物である。
<14> 前記ペンタエリスリトールテトラグリシジルエーテルと、脂環式エポキシ樹脂と、前記重合開始剤である光酸発生剤と、を含有する<1>に記載の硬化性樹脂組成物である。
<15> 前記ペンタエリスリトールテトラグリシジルエーテルと、脂環式エポキシ樹脂と、前記重合開始剤である光酸発生剤と、前記界面活性剤と、を含有する<2>に記載の硬化性樹脂組成物である。
<16> 前記ペンタエリスリトールテトラグリシジルエーテルの含有量が硬化性樹脂組成物全質量に対して60質量%~85質量%であり、前記脂環式エポキシ樹脂の含有量が硬化性樹脂組成物全質量に対して10質量%~30質量%であり、前記光酸発生剤の含有量が硬化性樹脂組成物全質量に対して1質量%~6質量%である<14>又は<15>に記載の硬化性樹脂組成物である。
<17> <1>~<16>のいずれか一つに記載の硬化性樹脂組成物の硬化物であって、平膜における引っ掻き鉛筆硬度が7H以上である硬化物である。
<18> <1>に記載の硬化性樹脂組成物(<2>に関係しない<5>~<16>に記載の硬化性樹脂組成物を含む。)の硬化物であり、かつ、高さが50nm~1000nmであり、ピッチが20nm~1000nmである凹凸パターンを有する凹凸構造体である。
<19> <1>に記載の硬化性樹脂組成物(<2>に関係しない<5>~<16>に記載の硬化性樹脂組成物を含む。)を用い、高さが50nm~1000nmであり、かつ、ピッチが20nm~1000nmである凹凸パターンを成形し、硬化させる工程を有する凹凸構造体の製造方法である。
本発明の一実施形態によれば、モスアイ構造等の精細な構造の再現性に優れ、かつ、従来に比べてより高い硬度が得られる硬化性樹脂組成物が提供される。好ましくは、ナノインプリント用の硬化性樹脂組成物が提供される。
本発明の他の実施形態によれば、防汚性に優れ、かつ、防汚剤を含む従来の組成に比べて硬度が著しく向上された硬化性樹脂組成物が提供される。好ましくは、ハードコーティング用の硬化性樹脂組成物が提供される。
また、本発明の他の実施形態によれば、従来の硬化物に比べ、硬度が大幅に向上された硬化物が提供される。
更に、本発明の他の実施形態によれば、従来の硬化物に比べ、硬度が大幅に向上された凹凸構造体及びその製造方法が提供される。
凹凸構造体の製造工程の一例を示す概略図である。 ナノインプリントで製造される凹凸構造体の一例を示す概略断面図である。 光酸発生剤を含む硬化性樹脂組成物を用いてモスアイフィルムを作製する工程を示す工程図である。 スチールウールを用いた耐傷性の評価方法を説明するための概略図である。 サンプル水準1のモスアイフィルムの転写面における耐傷性試験前後でのSEM画像である。 サンプル水準2のモスアイフィルムの転写面における耐傷性試験前後でのSEM画像である。 サンプル水準3のモスアイフィルムの転写面における耐傷性試験前後でのSEM画像である。 サンプル水準1~3のモスアイフィルムの反射率を示すグラフである。 サンプル水準1~3のモスアイフィルムの透過率を示すグラフである。 サンプル水準1~2及びサンプル水準3のモスアイフィルムの硬度を示すグラフである。 熱酸発生剤を含む硬化性樹脂組成物を用いてモスアイフィルムを作製する工程を示す工程図である。 (a)はサンプル水準27の硬化膜のモスアイ構造を示すSEM写真であり、(b)はサンプル水準28の硬化膜のモスアイ構造を示すSEM写真である。 サンプル水準27及びサンプル水準28のモスアイフィルムの硬化膜における反射率を示すグラフである。 サンプル水準27の硬化膜の擦過試験前後におけるモスアイ構造を示すSEM写真である。 サンプル水準36の硬化膜の擦過試験前後におけるモスアイ構造を示すSEM写真である。 人工指紋液を滴下した後の、拭き取り前後における状態を示す写真である。 人工指紋液の拭き取りを20回繰り返す前後でのSEM写真である。 20回の拭き取り前後での反射率の変化を示すグラフである。 20回の拭き取り前後での透過率の変化を示すグラフである。 (a)はサンプル水準39の硬化膜のモスアイ構造を示すSEM写真であり、(b)はサンプル水準42の硬化膜のモスアイ構造を示すSEM写真である。
以下、本開示の硬化性樹脂組成物及び硬化物について詳細に説明する。
本明細書において、「~」を用いて表される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。本開示に段階的に記載されている数値範囲において、ある数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。また、本開示に記載されている数値範囲において、ある数値範囲で記載された上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
本明細書において、組成物中の各成分の量は、組成物中に各成分に該当する物質が複数存在する場合は、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数の物質の合計量を意味する。
本明細書において、「(メタ)アクリル」は、アクリル及びメタクリルの両方を包含する概念であり、「(メタ)アクリレート」は、アクリレート及びメタクリレートの両方を包含する概念である。
<硬化性樹脂組成物>
本開示の第一の態様の硬化性樹脂組成物は、ペンタエリスリトールテトラグリシジルエーテル及び重合開始剤を少なくとも含有し、凹凸構造体の製造に用いられるものであり、好ましくは、反応性化合物(以下、「反応性希釈剤」ともいう。)、防汚剤、増感剤、シランカップリング剤、フィラーを含有し、必要に応じて、更に、有機溶剤、その他の添加剤を含有してもよい。
本開示の第二の態様の硬化性樹脂組成物は、ペンタエリスリトールテトラグリシジルエーテル、重合開始剤、及び界面活性剤(以下、「防汚剤」ともいう。)を含有し、ハードコート層の形成(ハードコーティング)に用いられるものであり、好ましくは、反応性希釈剤、増感剤、シランカップリング剤、及びフィラーを含有し、必要に応じて、更に、有機溶剤、及び/又はその他の添加剤を含有してもよい。
以下において、第一の態様及び第二の態様の硬化性樹脂組成物を、総じて、単に「本開示の硬化性樹脂組成物」ともいう。また、「硬化性樹脂組成物」を「硬化性組成物」ということもある。
(ペンタエリスリトールテトラグリシジルエーテル)
本開示の硬化性樹脂組成物は、重合性化合物として、ペンタエリスリトールテトラグリシジルエーテル(以下、「PETG」と略記することがある。)を含有する。従来から知られている重合性化合物のうち、特にペンタエリスリトールテトラグリシジルエーテルを選択的に含有することで、従来の硬化性樹脂組成物に比べ、硬度がより改善された硬化物を得ることができる。
PETGとしては、上市されている市販品を用いてもよく、例えば、昭和電工株式会社製のショウフリー(登録商標)シリーズを用いることができる。
ペンタエリスリトールテトラグリシジルエーテル(PETG)は、エポキシ当量が90~150であることが好ましい。
PETGのエポキシ当量が90~150であると、PETGの純度が高く(純度=60%~100%)、重合反応時に反応に関与することができるエポキシ基の密度が高いため、架橋密度がより向上し、硬化後の硬度がより向上する。
PETGのエポキシ当量としては、上記と同様の理由から、120以下がより好ましく、110以下が更に好ましく、100以下が特に好ましい。また、PETGのエポキシ当量も下限値は、91以上としてもよく、92以上としてもよい。
ペンタエリスリトールテトラグリシジルエーテル(PETG)の硬化性樹脂組成物中における含有量としては、硬化性樹脂組成物の全質量に対して、15質量%~97質量%であることが好ましく、45質量%~97質量%であることがより好ましく、60質量%~85質量%であることがより好ましい。
PETGの含有量が15質量%以上であると、高硬度が得られやすい。また、PETGの含有量は、他の成分の含有量を考慮すると97質量%以下が好ましい。
(重合開始剤)
本開示の硬化性樹脂組成物は、重合開始剤の少なくとも一種を含有する。重合開始剤を含有することで、PETGの硬化反応を開始する。
重合開始剤としては、光酸発生剤、熱酸発生剤、及び光カチオン発生剤からなる群より選ばれる少なくとも一種の化合物であることが好ましい。
-光重合開始剤(光酸発生剤)-
光重合開始剤としては、オニウム塩化合物が挙げられる。
オニウム塩化合物としては、例えば、芳香族ジアゾニウム塩、芳香族ヨードニウム塩、芳香族スルホニウム塩などが挙げられる。
オニウム塩化合物は、ハロゲン金属錯体アニオン(BF 、PF 、AsF 、SbF 、B(6F5) 等)、及び(RF)PF6-nなどの特殊リン系化合物を対イオンとして有しているものであってもよい。
オニウム塩化合物の例として、ジフェニル[4-(フェニルチオ)フェニル]スルホニウム・ヘキサフルオロアンチモナート、ジフェニル[(4-フェニルチオ)フェニル]スルホニウム・ヘキサフルオロホスフェート、トリフェニルスルホニウム・ヘキサフルオロホスフェート、トリフェニルスルホニウム・ヘキサフルオロアンチモナート、トリフェニルスルホニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、4,4’-ビス〔ジフェニルスルホニウム〕ジフェニルスルフィドビスヘキサフルオロホスフェート、ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロホスフェート、ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロアンチモネート、ジフェニルヨードニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、ビス(4-tert-ブチルフェニル)ヨードニウム ヘキサフルオロホスフェート、ビス(4-tert-ブチルフェニル)ヨードニウム ヘキサフルオロアンチモネート、トリ-p-トリルスルホニウムヘキサフルオロホスファート、4-イソプロピル-4’-メチルジフェニルヨードニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボラート等が挙げられる。
また、オニウム塩化合物は、上市されている市販品を用いてもよく、市販品の具体例としては、株式会社アデカ製のオプトマーSP-150、オプトマーSP-152、オプトマーSP-170、オプトマーSP-172、オプトマーSP-300等、サンアプロ株式会社製のCPI-100P、CPI-100A、CPI-200K、CPI-210S、LW-S1、IK-1、IK-2、HS-1等、BASF社製のIrgacure250、Irgacure270、Irgacure290等、和光純薬工業株式会社製のWPI-113、WPI-116,WPI-170、WPI-124等、などを用いることができる。
上記に加え、更に、[{C(R2m [{B(R(式中、Mは中心核遷移金属であり;Cはシクロペンタジエニルを表し;Rはシクロペンタジエニルの炭素に結合する電子供与性置換基であり;nは4又は5であり;mは1又は2であり;lは1又は2であり;Rはホウ素原子(B)に配位する配位子であり、4つのRは同一である。)で表されるメタロセンとボラート化合物とを組み合わせたイオン会合体結晶性物質なども光カチオン重合開始剤として挙げられる。
光重合開始剤の含有量としては、硬化性樹脂組成物の全質量に対して、0.1質量%~10.0質量%が好ましく、1.0質量%~6.0質量%がより好ましい。
また、光重合開始剤は、一種単独で又は二種以上を組み合わせて用いてもよい。
-熱重合開始剤(熱酸発生剤)-
熱酸発生剤としては、4級アンモニウム塩、スルホニウム塩、ヨードニウム塩、ホスホニウム塩等のオニウム塩を用いることができる。
4級アンモニウム塩の例として、市販品では、King Industries社製のK-PURE(登録商標) CXC-1612、K-PURE CXC-1614、K-PURE CXC-1733、K-PURE CXC-1742、K-PURE CXC-1821、K-PURE CXC-2689、K-PURE TAG-2678、K-PURE TAG-2689、K-PURE TAG-2690等が挙げられる。
スルホニウム塩の例として、市販品では、三新化学工業株式会社製のサンエイド(登録商標)SI-60、SI-60L、SI-80、SI-80L、SI-100、SI-100L等が挙げられる。
熱酸発生剤の含有量としては、硬化性樹脂組成物の全質量に対して、0.1質量%~10.0質量%が好ましく、0.2質量%~5.0質量%がより好ましい。
また、熱重合開始剤は、一種単独で又は二種以上組み合わせて用いてもよい。
重合開始剤の含有量としては、ペンタエリスリトールテトラグリシジルエーテルに対して、3質量%~90質量%の範囲が好ましく、3質量%~50質量%の範囲がより好ましく、3質量%~30質量%の範囲が更に好ましく、3質量%~15質量%の範囲が特に好ましい。
重合開始剤の含有量が3質量%以上であると、PETGの硬化反応の開始に好適である。また、重合開始剤の含有量が90質量%以下であると、調液後の組成物の保存安定性及び硬化物の物性安定性の維持の点で有利である。
重合開始剤の含有量としては、硬化性樹脂組成物の全質量に対して、0.1質量%~10質量%の範囲が好ましく、1.0質量%~8.0質量%の範囲がより好ましく、1.5質量%~6.0質量%の範囲が特に好ましい。
重合開始剤の含有量が0.1質量%以上であると、PETGの硬化反応の開始促進に好適である。また、重合開始剤の含有量が10質量%以下であると、調液後の保存安定性や硬化後の物性保持の点で有利である。
(防汚剤)
本開示の第二の態様の硬化性樹脂組成物は、防汚剤として、界面活性剤の少なくとも一種を含有する。また、本開示の第一の態様の硬化性樹脂組成物も、防汚剤として第二の態様と同様の界面活性剤の少なくとも一種を含有してもよい。
硬化性樹脂組成物が界面活性剤を含有することで、硬化させて得られる硬化物に撥水性、撥油性、親水性、親油性等が付与され、防汚性を付与することができる。
本開示における界面活性剤は、分子中にフッ素原子又は-SiO-構造を有し、硬化後の硬化膜の表面に撥水性、撥油性、親水性、又は親油性を付与することができる化合物であり、例えば、フッ素化合物、シリコーン化合物、及びシリコーンフッ素化合物等が挙げられる。
界面活性剤としては、フッ素化合物又はシロキサン化合物(含フッ素シロキサン化合物を含む)が挙げられ、含フッ素アクリル化合物及び含フッ素シロキサン化合物からなる群より選ばれる少なくとも一種が好ましい。
界面活性剤としては、上市されている市販品を用いてもよい。市販品としては、例えば、DIC株式会社製のメガファックRS-90、RS-55、RS-72-K、RS-75、RS-76-E、RS-78、RS-90等、株式会社ネオス製のフタージェント601AD、602A、650A、710FL、208G、215M、FTX-218、FTX-601ADH、730LM、NFX-552等、AGCセイミケミカル株式会社製のサーフロンS386、S651、信越化学工業株式会社製のKY-164、KY-108、KY-1203、X-71-1206、株式会社T&K TOKA製のZX-058、ZX-101、ZX-104、ZX-105、ZX-106、ZX-108、ZX-109、ZX-022-U、ZX-201、ZX-202、ZX-203、ZX-212、ZX-401N、ZX-412 ZX-501、ダイキン工業株式会社製のオプツールDAC-HP、等が挙げられる。
界面活性剤の含有量としては、硬化性樹脂組成物の全質量に対して、0.1質量%~30質量%が好ましく、0.5質量%~20質量%がより好ましく、1.0質量%~10質量%がより好ましい。
また、界面活性剤は、一種単独で又は二種以上を組み合わせて用いてもよい。
(反応性希釈剤)
本開示の硬化性樹脂組成物は、上記成分に加え、更に、反応性化合物(反応性希釈剤)を含有することが好ましい。反応性希釈剤を含有することで、硬化性樹脂組成物の硬化性(硬化膜の硬度)及び伸び等の物性の調整もしくは向上、粘度の調整、基材への密着性、添加剤を加えた際の相溶性の向上等を行うことができる。
反応性希釈剤としては、グリシジルエーテル化合物、グリシジルエステル化合物、グリシジルアミン化合物、脂肪族エポキシ化合物、オレフィン酸化エポキシ化合物、シリコーン変性化合物、フッ素変性エポキシ化合物、及びオキセタン化合物からなる群より選ばれる少なくとも一種の反応性化合物が好適に挙げられる。
反応性希釈剤としては、ペンタエリスリトールテトラグリシジルエーテル(PETG)の物性調整を行う観点から、環状エーテル化合物、環状スルフィド類が好ましい。
環状エーテル化合物の例としては、例えば、エポキシ化合物及び変性エポキシ化合物(例えば、シリコーン(シロキサン)変性エポキシ化合物、フッ素変性エポキシ化合物)、オキセタン化合物、及びエピスルフィド化合物が好ましい。
反応性希釈剤を用いる場合、環状エーテル化合物を一種単独で含有するほか、環状エーテル化合物を二種以上併用してもよい。
更には、二種以上のエポキシ化合物を併用した態様、又は、エポキシ化合物、オキセタン化合物、シリコーン(シロキサン)変性エポキシ化合物、フッ素変性エポキシ化合物、エピスルフィド化合物、及びこれら以外の他の化合物等から選択される少なくとも二種を併用した態様のいずれであってもよい。
-エポキシ化合物-
エポキシ化合物としては、グリシジルエーテル化合物、グリシジルエステル化合物、グリシジルアミン化合物、脂肪族エポキシ化合物、オレフィン酸化エポキシ化合物、又はこれら化合物の変性体等が挙げられる。
エポキシ化合物の具体例としては、ビスフェノールA型エポキシ、ビスフェノールF型エポキシ、水添ビスフェノールA型エポキシ、水添ビスフェノールF型エポキシ、ビスフェノールS型エポキシ、臭素化ビスフェノールA型エポキシ、ビフェニル型エポキシ、ナフタレン型エポキシ、フルオレン型エポキシ、スピロ環型エポキシ、フェノールノボラック型エポキシ、オルソクレゾールノボラック型エポキシ、臭素化クレゾールノボラック型エポキシ、テトラフェニロールエタン型エポキシ脂肪酸変性エポキシ、トルイジン型エポキシ、アニリン型エポキシ、アミノフェノール型エポキシジフェニルエーテル型エポキシ、ジシクロペンタジエン型エポキシ、ダイマー酸ジグリシジルエステル、ヘキサヒドロフタル酸ジグリシジルエステル、ダイマー酸ジグリシジルエーテル、ウレタン変性エポキシ、NBR変性エポキシ、CTBN変性エポキシ、リモネンオキサイド、リモネンジオキサイド、ブチルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、1.4ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,6ヘキサンジオール ジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンポリグリシジエーテル、グリセリンポリグリシジルエーテル、トリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ソルビトール系ポリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテル、シクロヘキサンジメタノールジグリシジルエーテル、ジシクロペンタジエニルジグリシジルエーテル、ビス[2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチル]-テトラメチルジシロキサン、アリルグリシジルエーテル、2エチルへキシルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、フェノールグリシジルエーテル、p-テトラブチルフェニルグリシジルエーテル、ジブロモフェニルグリシジルエーテル、ラウリルアルコールグリシジルエーテル、レゾロシノールジグリシジルエーテル、ジグリシロールポリグリシジルエーテル、ポリグリシロールポリグリシジルエーテル、エチレングリシロールジグリシジルエーテル、スチレンオキサイド、アルコールグルシジルエーテル、オルソクレジルグリシジルエーテル、メタパラクレジルグリシジルエーテル、グリシジルメタアクリレート、ヘキサヒドロフタル酸ジグリシジルエーテル、トリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ビスフェノールAテトラグリシジルエーテル、3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシリックアリドメチルエステル、1,4-シクロヘキサンジメタノールビス(3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート)、ジシクロペンタジエンジオキサイド、3,4-エポキシシクロヘキシルメチルメタクリレート、3,4-エポキシシクロヘキシルメチルアクリレート、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル(3,4-エポキシ)シクロヘキサン、3’,4’-エポキシシクロヘキシルメチル3’,4’-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、ε-カプロラクトン変性3’,4’-エポキシシクロヘキシルメチル3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、1,2-エポキシ-4-ビニルシクロヘキサン等が挙げられる。
中でも、エポキシ化合物としては、脂環式エポキシ化合物が好ましく、下記式1で表される化合物がより好ましい。

下記式1において、Xは、単結合又は2価の連結基を表す。2価の連結基としては、例えば、2価の炭化水素基、カルボニル基、エーテル結合、エステル結合、カーボネート基、アミド基、及びこれらが複数個連結した基等が挙げられる。
Xにおける2価の炭化水素基は、直鎖状でも分岐鎖状でもよく、炭素数1~18のアルキレン基、2価の脂環式炭化水素基等が挙げられる。炭素数1~18のアルキレン基としては、例えば、メチレン、メチルメチレン、ジメチルメチレン、エチレン、プロピレン、トリメチレン基等が挙げられる。2価の脂環式炭化水素基としては、例えば、1,2-シクロペンチレン、1,3-シクロペンチレン、シクロペンチリデン、1,2-シクロヘキシレン、1,3-シクロヘキシレン、1,4-シクロヘキシレン、シクロヘキシリデン基等のシクロアルキレン基(シクロアルキリデン基を含む)等が挙げられる。
また、Xは、酸素原子を有する連結基が好ましく、-CO-、-O-CO-O-、-COO-、-O-、-CONH-、又はこれらの基が複数個連結した基等が挙げられる。
以下に、脂環式エポキシ化合物の具体例を示す。但し、本開示においては、これらに制限されるものではない。

また、エポキシ化合物は、上市されている市販品を用いてもよく、市販品の具体例としては、株式会社ダイセル製の脂環式エポキシ樹脂であるセロキサイドシリーズ(例:セロキサイド8000、セロキサイド2021P、セロキサイド2081、セロキサイド8200等)などが挙げられる。
-シリコーン(シロキサン)変性エポキシ化合物-
珪素原子を有するエポキシ化合物(シリコーン(シロキサン)変性エポキシ)の例としては、ビス[2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチル]-テトラメチルジシロキサン等が挙げられる。
また、シリコーン(シロキサン)変性エポキシは、上市されている市販品を用いてもよく、市販品の具体例としては、信越化学工業株式会社製の製品名:X-40-2678、X-40-2670、X-40-2705、X-40-2669等が挙げられる。
-フッ素変性エポキシ化合物-
フッ素原子を有するエポキシ化合物(フッ素変性エポキシ化合物)としては、3-(2,2,3,3-テトラフルオロプロポキシ)-1,2-エポキシプロパン、3-(1H,1H,5H-オクタフルオロペンチロキシ)-1,2-エポキシプロパン、3-パーフルオロブチル-1,2-エポキシプロパン、3-パーフルオロへキシル-1,2-エポキシプロパン、1.4ビス(2,3-エポキシプロピル)-パーフルオロ-n-ブタン、1.6ビス(2,3-エポキシプロピル)-パーフルオロ-n-ヘキサン等が挙げられる。
また、フッ素変性エポキシ化合物は、上市されている市販品を用いてもよく、市販品の具体例としては、ダイキン工業株式会社製の製品名:1.3CHEP等が挙げられる。
-オキセタン化合物-
オキセタン化合物の具体例としては、3-エチル-3-ヒドロキシメチルオキセタン、2-エチルヘキシルオキセタン、3-エチル-3{[(3-エチルオキセタン-3-イル)メトキシ]メチル}オキセタン、キシリレンビスオキセタン、1,3ビス[(3-エチルオキセタン-3-イル)メトキシ]ベンゼン、3-エチル-3-(シクロへキシロキシ)メチルオキセタン、3-エチル-3-(フェノキシ)メチルオキセタン、3-メチル-3-オキセタンメタノール、3-エチル-3-オキセタンメタノール、アリルオキシオキセタン、ビスフェノールAビスオキセタン、ビスフェノールFビスオキセタン、ビスフェノールSビスオキセタン等が挙げられる。
また、オキセタン化合物は、上市されている市販品を用いてもよく、市販品の具体例としては、宇部興産株式会社製のETERNACOLL(登録商標)シリーズ(例:ETERNACOLL OXBP、ETERNACOLL OXMA等)が挙げられる。更に、東亞合成株式会社製のOXT-101、OXT-212、OXT-121、及びOXT-221(製品名)等、並びに、珪素原子を有するオキセタン化合物である東亞合成株式会社製のOX-SQ TX-100、OX-SQ SI-20(製品名)(オキセタニルシルセスキオキサン又はオキセタニルシリケート)等が挙げられる。
-他の化合物-
上記のエポキシ化合物及びオキセタン化合物以外の他の化合物としては、例えば、エピスルフィド化合物が好適に挙げられる。
上記の反応性希釈剤を含有することにより硬化性樹脂組成物の物性調整を行う場合、反応性希釈剤の含有量としては、ペンタエリスリトールテトラグリシジルエーテル(PETG)の含有量に対して、5質量%~90質量%の範囲が好ましく、10質量%~50質量%がより好ましく、更に好ましくは10質量%~30質量%の範囲である。
上記のうち、本開示の硬化性樹脂組成物として、PETG、反応性希釈剤、及び重合開始剤を含有する組成は好適な態様の一つであり、PETG、反応性希釈剤、及び重合開始剤を含有する場合の好ましい態様は、(1)PETGと、脂環式エポキシ樹脂(好ましくは、上記式1で表される化合物)と、光重合開始剤である光酸発生剤と、を含有する態様、又はPETGと、脂環式エポキシ樹脂(好ましくは、上記式1で表される化合物)と、光重合開始剤である光酸発生剤と、界面活性剤と、を含有する態様が好ましく、更には、(2)PETG60質量%~85質量%と、脂環式エポキシ樹脂(好ましくは、上記式1で表される化合物)10質量%~30質量%と、光酸発生剤1質量%~6質量%と、を含有する態様がより好ましい。
(増感剤)
本開示の硬化性樹脂組成物は、更に、増感剤を含有してもよい。
増感剤としては、アントラセン系化合物、アントラキノン系化合物、チオキサントン系化合物、ナフタレン系化合物、フェナントレン系化合物、クリセン系化合物、ペリレン系化合物、及びアクリジン系化合物からなる群より選ばれる少なくとも一種の増感剤を含有することが好ましい。
増感剤の具体例としては、アントラセン、1,2-ベンゾアントラセン、9-シアノアントラセン、9,10-ジシアノアントラセン、2-エチル-9,10-ジメトキシアントラセン、9,10-ジブトキシアントラセン、9,10-ジメトキシアントラセン、9,10-ジエトキシアントラセン、9,10-ジプロポキシアントラセン、9,10-ジグリシジルオキシアントラセン、9,10-ビス(フェニルエチル)アントラセン、アントラキノン、2-メチルアントラキノン、2-エチルアントラキノン、2-クロロアントラキノン、ヒドロキシアントラキノン、アミノアントラキノン、アントラキノンスルホン酸、1-ニトロアントラキノン、1,2-ベンズアントラキノン、アセトフェノン、ジエトキシアセトフェノン、2-エトキシ-2-フェニルアセトフェノン、4-メトキシアセトフェノン、4,4-ジメトキシアセトフェノン、4-フェニルアセトフェノン、2-ヒロドキシ-1-{4-[4-(2-ヒドロキシ-2-メチル-プロピオニル)-ベンジル]フェニル}-2-メチル-プロパン-1-オン、チオキサンソン、イソプロピルチオキサントン、2,4-ジメチルチオキサントン、2,4-ジエチルチオキサントン、2,4-ジイソプロピルチチオキサントン、2-クロロチオキサントン、2-メチルチオキサンソン等が挙げられる。
上記の中でも、好ましい増感剤は、硬化性の向上効果に優れる点で、ジアルコキシアントラセンが好ましく、2-エチル-9,10-ジメトキシアントラセン、9,10-ジブトキシアントラセンは特に好ましい。
可視光線を利用して硬化性樹脂組成物の硬化反応を行う場合は、色素系増感性物質であるクマリン系、チアジン系、アジン系、アクリジン系、キサンテン系、チタノセン系の公知の増感剤を用いてもよい。
増感剤の含有量としては、硬化性樹脂組成物の全質量に対して、0.1質量%~10質量%が好ましく、0.3質量%~5質量%がより好ましい。
また、増感剤は、一種単独で又は二種以上を組み合わせて用いてもよい。
(カップリング剤)
本開示の硬化性樹脂組成物は、カップリング剤を含んでいてもよい。カップリング剤を含有することで、硬化性樹脂組成物と基材との間の密着性をより高めることができる。
カップリング剤としては、例えば、シラン系、チタネート系、又はアルミネート系等の種々のカップリング剤が挙げられる。
カップリング剤としては、例えば、「X-Si(CH-Y」で表されるシランカップリング剤が好適である。ここで、Xは、塩素原子、メトキシ基、エトキシ基、メトキシエトキシ、又はアセトキシ基等を表し、メチル基を含む場合もある。nは、0~3である。Yは、ビニル基、エポキシ基、メタクリロイルオキシ基、アクリル基、アミノ基、スルフィド基、ウレイド基、イソシアネート基、イソシアヌレート基、スチリル基、メルカプト基等が挙げられる。
シランカップリング剤としては、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、p-スチリルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-トリエトキシシリル-N-(1,3-ジメチル-ブチリデン)プロピルアミン、N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-(ビニルベンジル)-2-アミノエチル-3-アミノプロピルトリメトキシシランの塩酸塩、トリス-(トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレート、3-ウレイドプロピルトリアルコキシシラン、3-メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、ビス(トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、3-イソシアネートプロピルトリエトキシシランなどが挙げられる
カップリング剤の含有量としては、硬化性樹脂組成物の全質量に対して、0.1質量%~10.0質量%が好ましく、0.5質量%~5.0質量%がより好ましい。
また、カップリング剤は、一種単独で又は二種以上を組み合わせて用いてもよい。
(フィラー)
本開示の硬化性樹脂組成物は、用途等に応じて、更に、ナノオーダーのナノ粒子等のフィラーを含有してもよい。
ナノ粒子とは、平均一次粒子径が1nm~1000nmの有機材料又は無機材料の粒子を指す。平均一次粒子径は、レーザー解析式粒度分布計により求められる値である。
ナノ粒子としては、硬化性樹脂組成物の重合反応を阻害しない粒子であればいずれの粒子であってもよい。
ナノ粒子の例として、炭素材料又は有機材料のフィラーでは、ダイヤモンド、グラフェン、酸化グラフェン、フラーレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン等の粒子が挙げられる。無機材料のフィラーでは、金、銀、珪素、酸化インジウムスズ、シリカ、ジルコニア、アルミナ、窒化ケイ素、窒化炭素、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、酸化亜鉛、酸化チタン、炭化ケイ素等の粒子が挙げられる。
また、ナノ粒子の表面にコーティング又は反応基の化学修飾が施された粒子も好ましい。
ナノ粒子は、上市されている市販品を用いてもよく、市販品の例としては、平均一次粒子径が10nm~100nmのシリカ粒子では、株式会社アドマテックス社製のアドマナノ(登録商標)YA010C、YA050C、YC100C、YA010-SM1、YA010-SV1、YA050-SM1、YA050-SV6、YA050C-SV2、YA010-SP3、YA050C-SP3、YC100C-SP3等が挙げられる。また、ジルコニア粒子では、株式会社日本触媒製のジルコスターAX-ZP-153-A、日本電工株式会社製のPCS、PCS-90、PCS-60等が挙げられる。
フィラーの含有量としては、硬化性樹脂組成物の全質量に対して、0.1質量%~80質量%が好ましく、10質量%~50質量%がより好ましい。
また、フィラーは、一種単独で又は二種以上を組み合わせて用いてもよい。
(有機溶剤)
本開示の硬化性樹脂組成物は、有機溶剤を含有して希釈された態様に調製されてもよい。
有機溶剤としては、例えば、芳香族炭化水素類、脂肪族炭化水素類、アルコール類、エーテルアセタールエステル類、ケトン類、及び窒素化合物類から選ばれる溶剤が挙げられる。
有機溶剤としては、例えば、トルエン、キシレン、ヘキサン、シクロヘキサン、スチレン、オクタンデカン、石油エーテル、石油ナフサ、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、プロパノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、γ-ブチロラクトン、酢酸エチル、酢酸ブチル、アセトン、メチルエチルケトン、アセトニトリル、2-メトキシエタノール、2-エトキシエタノール、2-ブトキシエタノール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル等が挙げられる。
有機溶剤は、一種単独で又は二種以上を組み合わせて用いてもよい。
(その他添加剤)
本開示の硬化性樹脂組成物は、更に、必要に応じて、老化防止剤、酸化防止剤、着色剤、粘度調節剤、難燃剤、紫外線吸収剤、変色防止剤、抗菌剤、帯電防止剤、可塑剤、滑剤、消泡剤、増粘剤、チキソ性付与剤、レベリング剤、離型剤等の添加剤を含有することができる。
着色剤としては、染料、カーボンブラック、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化鉄、アンスラキノン系、フタロシアニン系等が挙げられる。
安定剤である老化防止剤、酸化防止剤の例としては、ヒンダードフェノール系化合物、リン系化合物、ベンゾフェノン系化合物、ヒドラジン系化合物等が挙げられる。
~硬化性樹脂組成物の硬化方法~
硬化性樹脂組成物の硬化は、200nm~1300nmの活性エネルギー線(紫外線等の光)もしくは50℃~250℃の熱の付与、又はこれらの両方の付与によって行うことができる。中でも、硬化性樹脂組成物の硬化は、200nm~850nm(好ましくは250nm~560nm)の活性エネルギー線を照射するか、又は80℃~180℃の温度で加熱することによって行うことができる。
活性エネルギー線としては、α線、γ線、X線、紫外線、可視光線、赤外光線、電子線などが挙げられる。
また、本開示の硬化性樹脂組成物としては、紫外線、可視光線、赤外光線などの光で硬化する光硬化性組成物が好ましく、中でも、紫外線で硬化する光硬化性組成物が好ましい。
活性エネルギー線の照射により硬化性樹脂組成物を硬化させる場合、露光装置として紫外線照射装置を用い、硬化性樹脂組成物に対して活性エネルギー線を照射することが好ましい。
紫外線照射装置としては、例えば、メタルハライドランプ、高圧水銀灯、レーザー露光機、LED等の光源を備えた露光装置を用いることができる。また、紫外線を照射して硬化させる場合、紫外線の照射量としては、1,000mJ/cm~40,000mJ/cmが好ましく、より好ましくは3,000mJ/cm~9,000mJ/cmである。
また、加熱により硬化性樹脂組成物を硬化させる場合、赤外線で被対象物を加熱する赤外線加熱装置、電気炉等の加熱装置を用い、硬化性樹脂組成物に対して80℃~180℃の温度で1分~120分の範囲で加熱することが好ましい。
本開示の第一の態様の硬化性樹脂組成物は、凹凸構造体の製造(インプリント)に用いられる。硬化性樹脂組成物を硬化させて基材上に凹凸構造(特に、モスアイ構造)を形成することで、凹凸構造体が得られる。本開示の硬化性樹脂組成物が用いられるので、硬度が高く、反射防止性に優れた凹凸構造体の製造が可能である。
凹凸構造体は、ナノスケールの微細な凹凸パターンを有する凹凸構造体が好ましい。凹凸パターンは、高さが50nm~1000nm(好ましくは100nm~300nm)であり、ピッチが20nm~1000nm(好ましくは50nm~150nm)である場合が好ましい。
モールドの凹凸パターンの高さ及びピッチが上記範囲内にあると、本開示の硬化性樹脂組成物を用いて成形する場合の効果が良好に得られ、反射防止性に優れた凹凸構造体を製造することができる。
本開示の第二の態様の硬化性樹脂組成物は、ハードコーティング、即ちハードコート層の形成に用いられる。
本開示の第二の態様の硬化性樹脂組成物は、PETGを選択的に含めて硬化する硬化性能を有する。従来、防汚成分を含有すると硬化性が低下する課題があったのに対し、本開示の第二の態様の硬化性樹脂組成物では、防汚成分を含有しても高い硬度が得られ、かつ、優れた防汚性をも付与することができる。
したがって、高い強度が要求される分野において使用される部材等の表面に本開示の第二の態様の硬化性樹脂組成物を用いてハードコート層を設けると、外力への強度耐性及び防汚性を両立することができる。
<硬化物>
本開示の硬化物は、既述の本開示の硬化性樹脂組成物の硬化物であって、平膜における引っ掻き鉛筆硬度が7H以上の硬度を有している。本開示の硬化性樹脂組成物では、従来の硬化性樹脂組成物に比べ、硬度がより向上された硬化物が得られる。
引っ掻き鉛筆硬度は、JIS-K5600 5-4 機械法に準拠し、一方に二つの車輪を有し,中央部に45°±1°の角度の鉛筆を差し込む円筒状の孔を有する手押し鉛筆引っかき硬度試験機No.553-S(株式会社安田精機製作所製)を用い、750±10gの荷重をかけて測定される値である。
平膜における引っ掻き鉛筆硬度が7H以上であることは、従来に比べてより高硬度で耐久性に優れることを示す。引っ掻き鉛筆硬度は、9Hに近いほど好ましく、中でも、8H以上が好ましく、9H以上がより好ましい。
<凹凸構造体及びその製造方法>
本開示の凹凸構造体は、既述の第一の態様の硬化性樹脂組成物の硬化物であり、かつ、高さが50nm~1000nmであり、ピッチが20nm~1000nmである凹凸パターンを有する。本開示の凹凸構造体は、既述の第一の態様の硬化性樹脂組成物が用いられるので、硬化後の表面硬度が高く、かつ、精細な構造を得やすいため、高さ:50nm~1000nm、ピッチ:20nm~1000nmの微細な凹凸パターンを作製するのに適している。
かかる観点から、既述の第一の態様の硬化性樹脂組成物は、凹凸構造体の製造(インプリント)に好適であり、精細な凹凸構造(特にモスアイ構造)構造が再現良く得られ、かつ、例えばマスターモールドを用いて成形されたレプリカモールド等の構造物(硬化物)は硬度に優れたものとなる。レプリカモールドは、マスターモールドよりも安価で量産性に適しているため、レプリカモールドが広く使用されるが、本開示の硬化性樹脂組成物を用いた例えばモスアイ構造を有するレプリカモールドは、高硬度で摩耗耐性に優れ、耐久性に優れる。
本開示の凹凸構造体は、既述の第一の態様の硬化性樹脂組成物を用いた方法であれば、いずれの方法を利用して作製されてもよい。本開示の凹凸構造体の作製は、好ましくは、既述の第一の態様の硬化性樹脂組成物を用い、高さが50nm~1000nmであり、かつ、ピッチが20nm~1000nmである凹凸パターンを成形し、硬化させる工程を有する方法により行われる。
具体的には、以下に示す方法で作製してもよい。即ち、
凹凸構造体の製造は、高さが50nm~1000nmであり、かつ、ピッチが20nm~1000nmである凹凸パターンを備える型、及び硬化性樹脂組成物が塗布された基材を用意し、前記硬化性樹脂組成物に前記凹凸パターンを接触させて押圧し、硬化性樹脂組成物を凹凸パターンに導入する導入工程と、導入された硬化性樹脂組成物を硬化する硬化工程と、硬化性樹脂組成物を硬化させて得られた凹凸構造を備える前記基材を、前記型から離型する離型工程と、を有する方法により行ってもよい。
以下、本実施形態の凹凸構造体の製造方法における各工程について図1を用いて説明する。図1は、凹凸構造体の製造工程を示す概略図である。
図1(a)に示すように、インプリント装置100は、ステージ5、プッシュジグ6、送り出しローラ7および巻き取りローラ8を備えている。インプリント装置100は、凹凸構造体10(凹凸構造を備える基材1)を製造するための装置である。
ステージ5は、モールド2を置いて固定するための台である。図1(a)に示すように、凹凸パターンと、硬化性樹脂組成物3が塗布された基材1と、が対面するようにモールド2をステージ5に固定する。
プッシュジグ6は、ステージ5を昇降させるためのものであり、モールド2をステージ5上に固定することにより、モールド2を昇降させる。
モールド2を固定したステージ5を上昇させることにより、硬化性樹脂組成物3が塗布された基材1と、モールド2の凹凸パターンと、を接触させることができ、さらに上昇させることにより、硬化性樹脂組成物3を凹凸パターンに導入することができる。
また、モールド2を固定したステージ5を下降させることにより、後述するように、凹凸構造を備える基材1をモールド2から離型することができる。
図に示すように、シート状の基材1は、送り出しローラ7および巻き取りローラ8に巻きつけられている。
送り出しローラ7は、巻きつけたシート状の基材1をモールド2が固定されたステージ5側に送り出すためのローラであり、巻き取りローラ8は、巻きつけたシート状の基材1をモールド2が固定されたステージ5側から巻き取るためのローラである。
[導入工程]
本工程では、図1(b)に示すように、硬化性樹脂組成物3が塗布された基材1及び凹凸パターンを備えるモールド2を、硬化性樹脂組成物3に凹凸パターンを接触させて押圧し、硬化性樹脂組成物3を凹凸パターンに導入する。
なお、導入工程前に基材1に硬化性樹脂組成物が塗布される。硬化性樹脂組成物の塗布方法は、特に限定されない。
導入工程では、モールド2を固定したステージ5を一定速度で上昇させることにより、硬化性樹脂組成物3が塗布された基材1とモールド2の凹凸パターンとを接触させた後、硬化性樹脂組成物3が塗布された基材1及び凹凸パターンを備えるモールド2を一定圧力で押圧する。
導入工程では、モールド及び基材を0.005MPa~1MPaの圧力で押圧することが好ましく、0.01MPa~0.2MPaの圧力で押圧することがより好ましく、0.01MPa~0.03MPaの圧力で押圧することがさらに好ましく、0.01MPa~0.02MPaの圧力で押圧することが特に好ましい。0.005MPa以上の圧力で押圧することにより、十分な量の硬化性樹脂組成物を凹凸パターンに導入することができ、その結果、透過性及び反射防止性に関して優れた機能を有する凹凸構造体が得られる。また、1MPa以下の圧力で押圧することにより、凹凸パターンに導入される硬化性樹脂組成物の量を好適に調整することができる。
[硬化工程]
本工程では、図1(c)に示すように、凹凸パターンに導入された硬化性樹脂組成物3を硬化する。
ここでは、光透過性を有する基材1及び光硬化性組成物を用い、かつ、モールド2が固定されている側とは反対側から紫外線(UV)を基材1に照射している。基材1は光透過性を有するため、基材1に照射された紫外線は基材1を透過して硬化性樹脂組成物3に照射される。これにより、凹凸パターンに導入されている硬化性樹脂組成物3が硬化するため、硬化された凹凸構造が基材1上に形成される。
なお、紫外線を硬化性樹脂組成物3に照射する際の照射時間、照射量は、凹凸パターンに導入されている硬化性樹脂組成物3を硬化するために十分な量であれば特に限定されない。
[離型工程]
本工程では、図1(d)に示すように、硬化性樹脂組成物3を硬化させて得られた凹凸構造を備える基材1を、モールド2から離型する。
離型工程では、モールド2を固定したステージ5を一定速度で下降させることにより、硬化性樹脂組成物を硬化して得られた凹凸構造とモールド2の凹凸パターンとの接触が解除される。
この際、図2に示すように凹凸構造とモールド2の凹凸パターンとの接触面積が大きいため、凹凸構造とモールド2の凹凸パターンとの接触を解除して離型する際に大きな離型力が必要となる。そのため、凹凸構造の先端部が折れてモールドの底に残存しやすく、モールドの寿命が短くなる問題が生じやすい。
しかし、本開示の凹凸構造体の製造方法では、硬化後の硬化物の硬度が高いので、凹凸構造の先端部が破損し難く、精細な構造パターンを再現した離型が可能である。これにより、本開示の凹凸構造体の製造方法により得られた凹凸構造体は、従来のナノインプリントで得られる凹凸構造体40に比べ、反射防止性及び撥水性に優れ、しかも凹凸構造体である例えばモールドは長寿命なものとなる。
以下、本発明を実施例により更に具体的に説明するが、本発明はその主旨を越えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。以下の実施例において、本開示の硬化性樹脂組成物を単に「硬化性組成物」ともいう。
なお、以下の各表中の「-」は、該当成分を含有していないことを示す。
(実施例1)
-サンプル水準1-
-硬化性組成物の調製-
褐色のガラス広口規格瓶(株式会社三商、ガラス広口規格瓶 1K、満量:14ml)に、ペンタエリスリトールテトラグリシジルエーテル(PETG;商品名:ショウフリー(登録商標)、昭和電工株式会社製)9.5gと、トリアリルスルホニウム塩(光酸発生剤;商品名:CPI210S、サンアプロ株式会社製)0.5gと、を混合し、ハンドホモジナイザー(MH-1000、アズワン株式会社製)と試験管ミキサー(VXRS1、IKA社製)を用いて撹拌混合し、硬化性組成物を調製した。
硬化性組成物の粘度(23℃)を測定したところ、159mPa・sであった。
粘度の測定は、東機産業株式会社製のE型粘度計(コーンプレートタイプ)EVT-25Lを用い、硬化性組成物を23℃に保持して行った。以下に示すサンプル水準において同様である。
-ハードコート層の形成-
調製した硬化性組成物を、予めアセトンで脱脂処理したサイズ76mm×26mmのスライドガラス(松浪硝子工業株式会社製:S1214)の上に厚みを約50μmとして塗布した試験片を、紫外線照射装置(型式:ECS5-015010、メタルハライドランプ1.5kW、アイグラフィックス株式会社製)を用いて照射量9,000mJ/cm及び照度100mW/cmの条件にて紫外線を照射し、硬化性組成物を硬化させてスライドガラス上に硬化物である硬化層(ハードコート層)を形成した。
以上のようにして、ハードコート層を有する試験片を作製した。
-評価1a-
上記のハードコート層を有する試験片に対し、以下の評価を行った。評価結果を下記表2に示す。
(鉛筆硬度)
ハードコート層を有する試験片を室温にて1日放置した。放置後の試験片に対して、JIS-K5600 5-4 機械法に準拠し、一方に二つの車輪を有し,中央部に45°±1°の角度の鉛筆を差し込む円筒状の孔を有する手押し鉛筆引っかき硬度試験機No.553-S(株式会社安田精機製作所製)を用い、750±10gの荷重をかけてハードコート層の引っ掻き鉛筆硬度を測定した。
引っ掻き鉛筆硬度は、6B~9Hの範囲で評価され、9Hに近いほどより硬い性状であることを示す。
(耐傷性)
上記と同様にハードコート層を有する試験片を用い、図4に示すように、試験片のハードコート層の表面に対して、番手:極細#0000(中心径:約0.012mm)のスチールウール(#0000、トラスコ中山株式会社製)34を接触させて水が入った容器を載せ、500gの荷重をかけた状態でハードコート層を一方向に擦過する操作を10往復繰り返し、ハードコート層の表面における傷の有無を評価した。
-GCモスアイ金型の作製-
まず、両面鏡面研磨したグラッシーカーボン(GC、東海カーボン株式会社)に電子サイクロトロン共鳴(Electron cyclotron resonance:ECR)型イオンシャワー装置を用いて酸素イオンビームを照射し、酸素イオンビームエッチングした。その後、真空蒸着機(VPC-260F、アルバック機工株式会社)により、加工後のGC表面に真空蒸着を行って厚み30nmのCr蒸着膜を形成した。その後、離型処理(フッ素系離型剤;ダイキン工業社製のオプツールDSXを塗布)を施して、モスアイ構造と呼ばれる反射防止構造を有する幅20mmのGCモスアイ金型を作製した。
GCの加工条件は以下の通りである。

イオンビーム照射には、電子サイクロトロン共鳴(ECR)イオンシャワー装置であるEIG-210ER(エリオニクス社製)を用いた。GCモスアイ金型の作製の詳細については、N. B. Abu Talip[a]Yusofand J. Taniguchi, Microelectron. Eng. 110, 163 (2013).およびJ. Taniguchi, Y. Kamiya, and N. Unno, J. Photopolym. Sci. Technol. 1, 24 (2011).に記載の通りである。
-モスアイフィルムの作製-
次いで、図3に示すように、作製したGCモスアイ金型12の加工面に上記の硬化性組成物14を1.25g/mの塗布量にて塗布して塗膜14を形成し、塗膜14の上にポリエステルフィルム(東洋紡社製、コスモシャイン(登録商標)A4300;PETフィルム)16を配置した。紫外線照射装置(型式:Aicure UP50 パナソニック株式会社製)を用いて、PETフィルムを介して塗膜14に紫外線を照射(サンプル水準1~3の照射量:10000mJ/cm、サンプル水準1~3の照度:50mW/cm)して硬化膜とし、硬化膜24をPETフィルム16とともに離型することにより、モスアイ構造が転写されたモスアイフィルムを作製した。
即ち、硬化性樹脂を用いたナノインプリントリソグラフィ(Nanoimprint Lithography: NIL、UV-NIL)によりモスアイフィルムを作製した。
-評価1b-
上記で得たモスアイフィルムに対し、以下の評価を行った。評価結果は、図5、図8A、図8B及び図9に示す。
(耐傷性)
図4に示すように、モスアイフィルム18の硬化膜24の表面に対して、番手:極細#0000(中心径:約0.012mm)のスチールウール(#0000、トラスコ中山株式会社製)34を接触させて水が入った容器32を載せ、100gの荷重をかけた状態で硬化膜24をPETフィルム16とともに一方向に擦過する試験を10往復繰り返し、硬化膜24の表面における傷の有無について以下の評価を行った。
イ.画像評価
モスアイフィルムの硬化膜24の、擦過試験前後における表面を走査型電子顕微鏡(SEM;ERA-8800FE、エリオニクス社製)で観察し、SEM写真により擦過による傷の有無を評価した。
ロ.反射率及び透過率の測定
紫外可視近赤外分光光度計(SolidSpec-3700、株式会社島津製作所)を用い、モスアイフィルムの硬化膜24の、擦過試験前後における表面の反射率及び透過率を測定した。
ハ.硬さ(マルテンス硬さ)
モスアイフィルムの硬化膜24の表面の硬さを、ダイナミック超微小硬度計(DUH-211、株式会社島津製作所)を用い、三角錐圧子を硬化膜に押し込んだ際の荷重と変位より測定した
-サンプル水準2-
サンプル水準1において、組成を下記表2に示すように変更したこと以外は、サンプル水準1と同様にして、ハードコート層を有する試験片及びモスアイフィルムの作製を行い、さらに測定及び評価を行った。測定及び評価の結果は、表2及び図6、図8A、図8B及び図9に示す。
-サンプル水準3~7-
サンプル水準1において、組成を下記表2に示すように変更したこと以外は、サンプル水準1と同様にして、ハードコート層を有する試験片及びモスアイフィルムの作製を行い、さらに測定及び評価を行った。測定及び評価の結果は、表2及び図7~図9に示す。



表2中の成分の詳細については、以下の通りである。
・セロキサイド8000:株式会社ダイセル製の脂環式エポキシ化合物
・EPICLON EXA-830-CRP:ビスフェノールF型エポキシ樹脂、DIC株式会社製
・CPI210S:トリアリルスルホニウム塩(光酸発生剤;商品名:CPI210S、サンアプロ株式会社製)
・KY-1203:片末端(メタ)アクリル変性パーフルオロポリエーテル化合物(フッ素系防汚添加剤、信越化学工業株式会社製)
表2に示されるように、PETGを含有するサンプル水準1~2では、PETGではない他のエポキシ系化合物を含有する比較例に比べ、硬度が飛躍的に向上し、スチールウールを用いた擦過試験でも傷の発生が認められず、耐傷性に優れる結果が示された。
また、サンプル水準1~2の硬化性組成物を用いて作製したモスアイフィルムでは、図5~図6に示すように、擦過試験による傷跡はみられなかった。これに対し、サンプル水準3の硬化性組成物を用いて作製したモスアイフィルムでは、図7に示すように、擦過試験による傷跡が顕著に現れており、擦過に対する耐性に劣ることがわかる。サンプル水準1~2及びサンプル水準3のモスアイフィルムの擦過前後における反射率及び透過率を図8A及び図8Bに示す。図8A及び図8Bに表される通り、サンプル水準1~2では、擦過試験による反射率及び透過率の変化は小さく、サンプル水準3では、擦過試験後の反射率の上昇及び透過率の低下が著しく現れていることが分かる。即ち、サンプル水準3のモスアイフィルムでは、サンプル水準1~2のモスアイフィルムに比べ、擦過による形状の変化が大きいことが裏付けられた。このことは、サンプル水準1~2のモスアイフィルムの硬化膜の表面の硬さ(マルテンス硬さ)が比較例に比べて高いことが図9に示されている。
(実施例2)
-サンプル水準8~20-
サンプル水準1において、組成を下記表3に示すように変更したこと以外は、サンプル水準1と同様にして、ハードコート層を有する試験片を作製した。
作製した試験片のうち、一部の試験片に対し、サンプル水準1と同様の測定及び評価を行った。次いで、試験片の他の一部を、雰囲気温度85℃の恒温槽(SAFETY OVEN SPH-201、エスペック株式会社製)に入れて30分間放置し、放置後の試験片に対して、サンプル水準1と同様の測定及び評価を行った。測定及び評価の結果を表3に示す。

サンプル水準8~20において、反応性希釈剤の種類及び含有濃度による影響を表3に示す。
表3に示されるように、PETGと反応性希釈剤であるエポキシ化合物とを含有することで、スチールウール擦過性を向上させることができた。上記より明らかなように、反応性希釈剤を含有する場合の濃度は、30質量%未満の範囲が好ましい。
また、モスアイフィルムを作製した場合、サンプル水準1~2と同様に、擦過試験による傷跡は生じにくく、また、硬化膜の表面の硬さ(マルテンス硬さ)が高く、擦過試験による反射率及び透過率の変化も小さいものと考えられる。
(実施例3)
-サンプル水準21~26-
サンプル水準1において、組成を下記表4に示すように変更したこと以外は、サンプル水準1と同様にして、ハードコート層を有する試験片を作製し、さらに測定及び評価を行った。測定及び評価の結果を表4に示す。

サンプル水準21~26において、重合開始剤の種類による影響を表4に示す。
表4に示されるように、重合開始剤の種類を変えることによる影響は小さく、いずれの重合開始剤を用いてもPETGと併用して得られる硬度は優れていた。
また、モスアイフィルムを作製した場合、サンプル水準1~2と同様に、擦過試験による傷跡は生じにくく、また、硬化膜の表面の硬さ(マルテンス硬さ)が高く、擦過試験による反射率及び透過率の変化も小さいものと考えられる。
(実施例4)
-サンプル水準27~28-
-硬化性組成物の調製-
サンプル水準1において、組成を下記表5に示すように変更したこと以外は、サンプル水準1と同様にして、硬化性組成物を調製した。
-ハードコート層の形成-
調製した硬化性組成物を、予めアセトンで脱脂処理したサイズ76mm×26mmのスライドガラス(松浪硝子工業株式会社製:S1214)の上に厚みを約50μmとして塗布した試験片を、槽内温度を130℃に調整した恒温槽(Drying Oven DV41、ヤマト科学株式会社製)に入れて15分間加熱し、恒温槽から取出して室温(25℃)下で1日放置した。このようにして、硬化性組成物を硬化させることにより、スライドガラス上に硬化物である硬化層(ハードコート層)を形成した。
以上のようにして、ハードコート層を有する試験片を作製した。
次いで、上記で作製した試験片に対し、サンプル水準1と同様にして測定及び評価を行った。測定及び評価の結果を表5に示す。
サンプル水準27~28において、重合開始剤の種類による影響を表5に示す。
表5に示されるように、重合開始剤として熱酸発生剤を用いた熱硬化系に構成されることによる影響は小さく、熱酸発生剤を用いてもPETGと併用して得られる硬度は優れていた。
-モスアイフィルムの作製-
次いで、図10に示すように、サンプル水準1と同様にして作製したGCモスアイ金型12の加工面に上記の硬化性組成物14を1.25g/mの塗布量にて塗布して塗膜14を形成し、塗膜14の上に厚み150μmのガラス基材26を載置した。次いで、加熱器30の上に置き、温度130℃、荷重1500N、荷重時間900秒の加熱条件でGCモスアイ金型を加熱して硬化膜とし、硬化膜24をガラス基材26とともに離型することにより、モスアイ構造が転写されたモスアイシートを作製した。
上記で得たモスアイシートの硬化膜24の表面を走査型電子顕微鏡(SEM;ERA-8800FE、エリオニクス社製)で観察した。その結果、サンプル水準27~28の硬化性組成物を用いて作製したモスアイシートには、図11のように、いずれも良好なモスアイ構造が転写形成されていることが目視により確認された。
さらに、紫外可視近赤外分光光度計(SolidSpec-3700、株式会社島津製作所)を用い、モスアイフィルムの硬化膜の表面の反射率を測定した。その結果を図12に示す。
(実施例5)
-サンプル水準29~36-
サンプル水準1において、組成を下記表6に示すように変更したこと以外は、サンプル水準1と同様にして、ハードコート層を有する試験片を作製し、さらに測定及び評価を行った。更に、以下の方法で防汚性の評価を行った。
測定及び評価の結果を以下の表6に示す。
-防汚性-
以下に示す油性マジック拭取り試験により防汚性を評価した。
調製した硬化性組成物をNo22バーコーターでサイズ76mm×26mmのスライドガラスの上に塗布し、紫外線照射装置(型式:ECS5-015010、メタルハライドランプ1.5kW、アイグラフィックス株式会社製)を用いて照射量6,000mJ/cm及び照度50mW/cmの条件にて紫外線を照射し、塗膜を硬化させた後、1日放置した。このようにして得た試験片の硬化膜の表面に、油性マーカーPM-41(コクヨ社製)を用いて螺旋模様を描き、キムワイプS-200(日本製紙クレシア社製)で油性インクを拭き取る操作を繰り返し、拭き取れることができた回数を記録した。

サンプル水準29~36において、防汚成分を含有させた組成を表6に示す。
表6に示されるように、防汚成分を含有することにより、硬度及び耐傷性を高く保持しながら拭き取り性をも付与することができた。これに対し、防汚成分を含有するがPETGを含有しないサンプル水準36では、拭き取り性こそ良好な結果が得られたが、硬度及び耐傷性まで両立することは不可能であった。
-モスアイフィルムの作製-
次いで、サンプル水準32及びサンプル水準36の硬化性組成物を用いてモスアイフィルムを作製し、モスアイ構造及び拭き取り性を評価した。
まず、図3に示すように、作製したGCモスアイ金型12の加工面に上記の硬化性組成物14を1.25g/mの塗布量にて塗布して塗膜14を形成し、塗膜14の上にポリエステルフィルム(東洋紡社製、コスモシャイン(登録商標)A4300;PETフィルム)16を配置した。紫外線照射装置(型式:Aicure UP50 パナソニック株式会社製)を用いて、PETフィルムを介して塗膜14に紫外線を照射(照射量:10000mJ/cm、照度:50mW/cm)して硬化膜とし、硬化膜24をPETフィルム16とともに離型することにより、モスアイ構造が転写されたモスアイフィルムを作製した。
次いで、図4に示すように擦過試験を10往復繰り返し、硬化膜の表面における傷の有無について以下の評価を行った。
イ.画像評価
モスアイフィルムの硬化膜の、擦過試験前後における表面を走査型電子顕微鏡(SEM;ERA-8800FE、エリオニクス社製)で観察し、SEM写真により擦過による傷の有無を評価した。
ロ.接触角
全自動接触角計(DM-701、株式会社協和界面科学)を用い、モスアイフィルムのモスアイ構造の転写面における水接触角を測定した。
ハ.拭き取り性
モスアイフィルムのモスアイ構造の転写面に人工指紋液を滴下し、キムワイプS-200(日本製紙クレシア社製)で油性インクを拭き取る操作を繰り返し、拭き取れることができた回数を記録した。
上記で得たモスアイフィルムの硬化膜24の表面をSEM観察したところ、サンプル水準32の硬化性組成物を用いて作製したモスアイフィルムでは、図13のように、擦過試験による傷跡はみられなかった。したがって、擦過前後での水接触角の変化は小さいものであった。これに対し、サンプル水準36の硬化性組成物を用いて作製したモスアイフィルムでは、図14に示すように、PETGを用いたサンプル水準32に比べ、擦過試験による傷跡が顕著に現れており、モスアイ構造が壊れて水接触角の変化も大きく現れた。このように、サンプル水準32とサンプル水準36とでは、擦過に対する耐性に著しい差異があることがわかる。
さらに、サンプル水準32のモスアイフィルムに対し、以下の条件にてモスアイフィルムを加熱処理した後に拭き取り試験を行った。
<条件>
・加熱温度:85℃
・加熱時間:30分
・試験布:キムワイプ
・試験液:人工指紋液
[人工指紋液]
ここで使用した人工指紋液は、JIS K2246(2007)さび止め油中に記載されている下記の組成に、ローダミンB(東京化成工業株式会社製、CAS.NO81-88-9)を下記の組成に対して0.1質量%加えて調製したものである。
<組成>・精製水:500mL
・メタノール:500mL
・塩化ナトリウム:7g
・尿素:lg
・乳酸:4g
その結果、図15に示すように、人工指紋液を良好に拭き取ることができた。
続いて、人工指紋液の拭き取りを20回繰り返した際のSEM写真を図16に示す。図16から分かるように、20回拭き取った後でもモスアイ構造に変化はなかった。また、接触角の変化も小さかった。更に、20回の拭き取り前後での反射率及び透過率の変化を図17A及び図17Bに示す。図17A及び図17Bに示すように、低下幅は1%に満たない結果であった。
(実施例6)
-サンプル水準37~38-
サンプル水準1において、組成を下記表7に示すように変更したこと以外は、サンプル水準1と同様にして、ハードコート層を有する試験片を作製し、さらに測定及び評価を行った。更に、以下の方法により増感効果の指標として接着強度の評価を行った。
測定及び評価の結果を以下の表7に示す。
-接着性-
以下の方法で、重合開始剤の吸収波長を透過しない試験体を用いて接着強度を測定し、接着性を評価した。評価結果を下記表7に示す。
エポキシガラス板(KEL-GE(10mm×250mm、新神戸電機株式会社製)の一方の表面をアセトンで脱脂処理した後、脱脂処理後の表面に、硬化性組成物の塗布厚を一定にするためのスペーサとして、メンディングテープ(MP-18、住友スリーエム株式会社製)を貼り付けた。
次いで、エポキシガラス板のメンディングテープを貼り付けた面に硬化性組成物を塗布し、硬化性組成物の塗布面積が26mm×3mmとなるように2枚のエポキシガラス板を互い違いに貼り合わせ、バチ型クリップ(クリ-44、コクヨ株式会社製)で圧締して試験体を作製した。その後、紫外線照射装置(型式:ECS5-015010、メタルハライドランプ1.5kW、アイグラフィックス株式会社製)を用い、試験体の硬化性組成物に対して照射量9,000mJ/cmとして照度100mW/cmにて紫外線を照射し、硬化性組成物を硬化させた。
その後、照射後の試験体を室温(25℃)下に1日放置した。放置後の試験片を、オートグラフAG-5KNXplus(株式会社島津製作所製)を用いて2枚のガラス板を引っ張り速度50mm/分にて引っ張り、せん断接着強度を測定した。

サンプル水準37~38において、増感剤を含有させた組成を表7に示す。
使用したエポキシガラス板は、重合開始剤の吸収波長を透過しないが、サンプル水準37~38の硬化性組成物は、増感剤を含むことで、増感剤の吸収波長である350nm~400nmの波長域の紫外線が照射された際に重合開始剤が感応し、硬化させることができた。つまり、PETGを硬化させる方法として重合開始剤及び増感剤を含む組成も有効であるといえる。
また、モスアイフィルムを作製した場合、サンプル水準1~2と同様に、擦過試験による傷跡は生じにくく、また、硬化膜の表面の硬さ(マルテンス硬さ)が高く、擦過試験による反射率及び透過率の変化も小さいものと考えられる。
(実施例7)
-サンプル水準39~42-
サンプル水準1において、組成を下記表8に示すように変更したこと以外は、サンプル水準1と同様にして、ハードコート層を有する試験片を作製し、さらに測定及び評価を行った。測定及び評価の結果を表8に示す。

サンプル水準39~42において、フィラーを含有する組成とした場合の結果を表8に示す。
表8に示されるように、フィラーを含有する組成においても、PETGと併用して得られる硬度は優れていた。
-モスアイフィルムの作製-
次いで、サンプル水準39、42の硬化性組成物を用いてモスアイフィルムを作製し、モスアイ構造を評価した。
まず、図3に示すように、作製したGCモスアイ金型12の加工面に上記の硬化性組成物14を1.25g/mの塗布量にて塗布して塗膜14を形成し、塗膜14の上にポリエステルフィルム(東洋紡社製、コスモシャイン(登録商標)A4300;PETフィルム)16を配置した。紫外線照射装置(型式:ECS5-015010、メタルハライドランプ1.5kW、アイグラフィックス株式会社製)を用いて、PETフィルムを介して塗膜14に紫外線を照射(照射量:10000mJ/cm、照度:50mW/cm)して硬化膜とし、硬化膜24をPETフィルム16とともに離型することにより、モスアイ構造が転写されたモスアイフィルムを作製した。
上記で得たモスアイフィルムの硬化膜の表面を走査型電子顕微鏡(SEM;ERA-8800FE、エリオニクス社製)で観察した。結果、サンプル水準39、42の硬化性組成物を用いて作製したモスアイフィルムには、図18のように、いずれのモスアイフィルムも目視により良好なモスアイ構造が転写形成されていることが確認された。
(実施例8)
-サンプル水準43~44-
サンプル水準1において、組成を下記表9に示すように変更したこと以外は、サンプル水準1と同様にして、ハードコート層を有する試験片を作製し、さらに測定及び評価を行った。更に、以下の方法により接着性を評価する指標として接着強度を測定した。
測定及び評価の結果を以下の表9に示す。
-接着性-
サイズ76mm×26mmのスライドガラス(S1214、松浪硝子工業株式会社製)の一方の表面をアセトンで脱脂処理した後、脱脂処理後の表面に、硬化性組成物の塗布厚を一定にするためのスペーサとして、メンディングテープ(MP-18、住友スリーエム株式会社製)を貼り付けた。
次いで、スライドガラス板のメンディングテープを貼り付けた面に硬化性組成物を塗布し、硬化性組成物の塗布面積が26mm×3mmとなるように2枚のエポキシガラス板を互い違いに張り合わせ、バチ型クリップ(クリ-44、コクヨ株式会社製)で圧締して試験体を作製した。その後、紫外線照射装置(型式:ECS5-015010、メタルハライドランプ1.5kW、アイグラフィックス株式会社製)を用い、試験体の硬化性組成物に対して照射量9,000mJ/cmとして照度100mW/cmにて紫外線を照射し、硬化性組成物を硬化させた。
その後、照射後の試験体を室温(25℃)下に1日放置した。放置後の試験片を、オートグラフAG-5KNXplus(株式会社島津製作所製)を用いて2枚のガラス板を引っ張り速度50mm/分にて引っ張り、せん断接着強度を測定した。
上記とは別に、上記スライドガラス板をアクリル板又はポリカーボネート板(PC板)に代えて同様の方法でせん断接着強度を測定した。
測定結果を下記表9に示す。

サンプル水準43~44において、シランカップリング剤を含有する組成とした場合の結果を表9に示す。
表9に示されるように、シランカップリング剤を含有する組成においても、PETGと併用して得られる硬度は優れていた。
また、モスアイフィルムを作製した場合、サンプル水準1~2と同様に、擦過試験による傷跡は生じにくく、また、硬化膜の表面の硬さ(マルテンス硬さ)が高く、擦過試験による反射率及び透過率の変化も小さいものと考えられる。
本開示の硬化性樹脂組成物は、高い硬度が求められる各種用途に好適であり、反射防止、回折格子(光学素子)、LSI(集積回路配線)、偏光板、ナノインプリントの分野に好ましく用いられる。また、ナノインプリント分野では、円錐もしくは多角錐等のモスアイパターン、ピラー構造、ホール構造、マイクロレンズアレイ構造、ハニカム構造、格子構造、ライン&スペース構造、レプリカモールド等の各種パターンの形成に適している。
2017年6月15日に出願された日本特許出願2017-117642の開示はその全体が参照により本明細書に取り込まれる。本明細書に記載された全ての文献、特許出願、および技術規格は、個々の文献、特許出願、および技術規格が参照により取り込まれることが具体的かつ個々に記された場合と同程度に、本明細書中に参照により取り込まれる。
(符号の説明)
1・・・シート状の基材
2・・・モールド
3,14・・・硬化性樹脂組成物(硬化性組成物)
5・・・ステージ
7・・・送り出しローラ
8・・・巻き取りローラ
10・・・凹凸構造体
12・・・塗膜
16・・・ポリエステルフィルム
18・・・モスアイフィルム
24・・・硬化膜
26・・・ガラス基材
30・・・加熱器
32・・・容器
34・・・スチールウール
100・・・インプリント装置

Claims (4)

  1. ペンタエリスリトールテトラグリシジルエーテル、脂環式エポキシ樹脂、重合開始剤である光酸発生剤、及び界面活性剤を含有し、前記界面活性剤が、含フッ素アクリル化合物及び含フッ素シロキサン化合物からなる群より選ばれる少なくとも一種を含み、
    前記ペンタエリスリトールテトラグリシジルエーテルの含有量が硬化性樹脂組成物全質量に対して60質量%~85質量%であり、前記脂環式エポキシ樹脂の含有量が硬化性樹脂組成物全質量に対して10質量%~30質量%であり、前記光酸発生剤の含有量が硬化性樹脂組成物全質量に対して1質量%~6質量%である、ナノインプリントリソグラフィによる凹凸構造体の製造に用いられるナノインプリント用硬化性樹脂組成物。
  2. ペンタエリスリトールテトラグリシジルエーテル、重合開始剤、及び界面活性剤を含有し、前記界面活性剤が、含フッ素アクリル化合物及び含フッ素シロキサン化合物からなる群より選ばれる少なくとも一種を含み、ナノインプリントリソグラフィによる凹凸構造体の製造に用いられるナノインプリント用硬化性樹脂組成物を用い、ナノインプリントリソグラフィにより、平膜における引っ掻き鉛筆硬度が7H以上である硬化物を製造する硬化物の製造方法。
  3. 前記ナノインプリント用硬化性樹脂組成物がフィラーを含まない請求項に記載の硬化物の製造方法。
  4. ペンタエリスリトールテトラグリシジルエーテル、重合開始剤、及び界面活性剤を含有し、前記界面活性剤が、含フッ素アクリル化合物及び含フッ素シロキサン化合物からなる群より選ばれる少なくとも一種を含み、ナノインプリントリソグラフィによる凹凸構造体の製造に用いられるナノインプリント用硬化性樹脂組成物を用い、ナノインプリントリソグラフィにより、高さが50nm~1000nmであり、かつ、ピッチが20nm~1000nmである凹凸パターンを成形し、硬化させる工程を有する凹凸構造体の製造方法。
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