以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
[本実施形態]
図1~図10を参照して、本実施形態によるロータコア4の製造方法および樹脂注入装置103について説明する。
本願明細書では、「軸方向」とは、ロータ1(ロータコア4)の回転軸線C1に沿った方向を意味し、図中のZ方向を意味する。また、「積層方向」とは、ロータコア4の電磁鋼板4a(図3参照)が積層する方向を意味し、図中のZ方向を意味する。また、「径方向」とは、ロータ1(ロータコア4)の径方向(R1方向またはR2方向)を意味し、「周方向」は、ロータ1(ロータコア4)の周方向(E1方向またはE2方向)を意味する。
(ロータコアの構造)
まず、図1を参照して、本実施形態のロータコア4の構造について説明する。
図1に示すように、回転電機100は、ロータ1とステータ2とを備える。また、ロータ1およびステータ2は、それぞれ、円環状に形成されている。そして、ロータ1は、ステータ2の径方向内側に対向して配置されている。すなわち、本実施形態では、回転電機100は、インナーロータ型の回転電機として構成されている。また、ロータ1の径方向内側には、シャフト3が配置されている。シャフト3は、ギア等の回転力伝達部材を介して、エンジンや車軸に接続されている。たとえば、回転電機100は、モータ、ジェネレータ、または、モータ兼ジェネレータとして構成されており、車両に搭載されるように構成されている。
また、ロータコア4は、複数の電磁鋼板4a(図3参照)が積層され、電磁鋼板4aの積層方向に延びる磁石収容部10を有する積層コア4d(図3参照)を備える。また、ロータコア4は、積層コア4dの磁石収容部10に挿入される永久磁石5を備える。磁石収容部10は、積層コア4dに複数(本実施形態では32個)設けられている。すなわち、回転電機100は、埋込永久磁石型モータ(IPMモータ:Interior Permanent Magnet Motor)として構成されている。また、磁石収容部10は、積層コア4d(ロータコア4)のうちの径方向外側の部分に配置されている。なお、互いに隣接する2つの磁石収容部10は、V字状に配置されている。なお、磁石収容部10の配置は、これに限られない。
また、ステータ2は、ステータコア2aと、ステータコア2aに配置されたコイル2bとを含む。ステータコア2aは、たとえば、複数の電磁鋼板(珪素鋼板)が軸方向に積層されており、磁束を通過可能に構成されている。コイル2bは、外部の電源部に接続されており、電力(たとえば、3相交流の電力)が供給されるように構成されている。そして、コイル2bは、電力が供給されることにより、磁界を発生させるように構成されている。また、ロータ1およびシャフト3は、コイル2bに電力が供給されない場合でも、エンジン等の駆動に伴って、ステータ2に対して回転するように構成されている。なお、図1では、コイル2bの一部のみを図示しているが、コイル2bは、ステータコア2aの全周に亘って配置されている。
永久磁石5は、積層コア4d(ロータコア4)の軸方向に直交する断面が長方形形状を有している。たとえば、永久磁石5は、磁化方向(着磁方向)が短手方向となるように構成されている。
また、ロータコア4は、磁石収容部10に充填されている樹脂材6(図3参照)を備える。樹脂材6は、磁石収容部10に配置されている永久磁石5を固定するように設けられている。樹脂材6は、第1温度T1において溶融するとともに第1温度T1よりも高い第2温度T2において硬化する材料(熱硬化性樹脂)により構成されている。詳細には、樹脂材6は、第1温度T1よりも低い常温において固形(フレーク状、ペレット状、または、粉状など)であり、常温から加熱されて、樹脂材6の温度が第1温度T1以上になると溶融する。そして、樹脂材6は、第1温度T1以上でかつ第2温度T2未満の状態では、溶融状態を維持する(硬化しない)ように構成されている。そして、樹脂材6は、第2温度T2以上の温度に加熱されることにより、硬化するように構成されている。なお、図1では、簡略化のため、樹脂材6の図示を省略している。
たとえば、樹脂材6として、特開2000-239642号公報に記載されているような合成樹脂材を用いることが可能である。すなわち、樹脂材6は、ウレトジオン環を100eq/T以上有する第1化合物を10%以上100%以下と、分子末端に活性水素基を有する第2化合物を0%以上90%以下と、グリシジル基を有する第3化合物を0%以上90%以下とを含有し、かつ、第1~第3化合物のいずれにも分子末端にイソシアネート基を含まないことを特徴とする反応性ホットメルト接着剤組成物を含む。
また、樹脂材6は、フィラー6a(図8参照)を含む。フィラー6aは、樹脂材6の機械的強度および耐熱性等を確保するために樹脂材6に含有されている。フィラー6aは、たとえば、シリカ、アルミナ、マイカ、および炭酸マグネシウム等により構成されている。また、樹脂材6におけるベース樹脂(基材樹脂)とフィラー6aとの比率は、たとえば、ベース樹脂(基材樹脂)が10%~30%で、フィラー6aが70%~90%である。なお、フィラー6aは、特許請求の範囲の「充填材」の一例である。
(治具の構造)
次に、図2~図4を参照して、本実施形態の治具20の構造について説明する。なお、以下の説明では、治具20に積層コア4dが配置された状態についての治具20の構造について説明する。
図2に示すように、治具20は、上方プレート21を含む。また、図3に示すように、治具20は、押圧ばね22と、押圧プレート23と、下方プレート24と、断熱部材25と、位置決めプレート26と、クランプ部材27と、を含む。なお、上方プレート21、押圧プレート23、下方プレート24、および位置決めプレート26の各々は、SUS(ステンレス)製である。
図2に示すように、上方プレート21は、中心部に貫通孔21aを有し、円環状に形成されている。また、上方プレート21は、複数の樹脂注入孔21bを含む。樹脂注入孔21bは、後述する樹脂注入装置103の金型ノズル122が挿入可能(図7参照)に設けられている。なお、樹脂注入孔21bは、複数(本実施形態では32個)の磁石収容部10の各々とオーバラップするように設けられている。なお、金型ノズル122は、特許請求の範囲の「注入ノズル」の一例である。
なお、後述する予熱用加熱装置102(図5参照)の図示しない誘導加熱コイルは、上方プレート21の貫通孔21a、および、後述する押圧プレート23の貫通孔23aの各々を介して、積層コア4dの径方向内側に挿入される。また、硬化用加熱装置104(図5参照)に設けられる図示しない誘導加熱コイルも、同様に、上方プレート21の貫通孔21a、および、後述する押圧プレート23の貫通孔23aの各々を介して、積層コア4dの径方向内側に挿入される。
押圧ばね22は、上方プレート21と、押圧プレート23との間に設けられている。また、押圧ばね22は、回転軸線C1方向から見て、周方向に沿って、等角度間隔に複数設けられている。なお、本実施形態では、押圧ばね22は、4つ設けられている。複数の押圧ばね22の各々は、治具20に積層コア4dが配置された状態で、上方(Z1方向側)から見て、積層コア4dとオーバラップする位置に設けられている。
また、図3に示すように、押圧プレート23は、積層コア4dの上端面4bに配置されている。押圧プレート23は、押圧ばね22の付勢力により、積層コア4dの上端面4bを押圧するように設けられている。
また、押圧プレート23は、中心部に貫通孔23aを有し、円環状に形成されている。また、押圧プレート23は、複数の樹脂注入孔23bを含む。複数の樹脂注入孔23bは、上方(Z1方向側)から見て、上方プレート21の複数の樹脂注入孔21bとオーバラップする位置に設けられている。なお、複数の樹脂注入孔23bは、後述する樹脂注入装置103の金型ノズル122(金型ノズル122の先端122a)が挿入可能(図7参照)に設けられている。
また、積層コア4dは、下方プレート24に配置(載置)されている。すなわち、下方プレート24は、積層コア4dの下端面4cと接触している。下方プレート24は、中心部に貫通孔24aを有し、円環状に形成されている。また、下方プレート24は、複数(本実施形態では3つ)の切り欠き部24bを含む。複数の切り欠き部24bは、貫通孔24aの内周縁において、略等角度間隔(図4参照)で設けられている。
複数の切り欠き部24bの各々には、L字状の位置決め部24cが設けられている。複数の位置決め部24cにより、下方プレート24に対する積層コア4dの径方向および周方向の位置が決められる。位置決め部24cは、締結ボルト24dにより、下方プレート24に固定(締結)されている。
また、断熱部材25は、下方プレート24と、位置決めプレート26との間に挟まれるように設けられている。断熱部材25は、中心部に貫通孔25aを有し、円環状に形成されている。また、断熱部材25は、樹脂製である。
また、位置決めプレート26は、下方プレート24の下方側(Z2方向側)に設けられている。位置決めプレート26は、後述する各装置(101~104)における治具20の位置決めに用いられる。
また、クランプ部材27は、U字形状を有しており、上方プレート21と下方プレート24とを挟み込むように設けられている。これにより、治具20に積層コア4dが固定される。クランプ部材27は、複数(本実施形態では4つ)設けられている。複数のクランプ部材27は、回転軸線C1方向から見て、周方向に沿って、略等角度間隔(すなわち90度間隔)に設けられている。
(ロータコアの製造システム)
次に、図5を参照して、ロータコア4の製造システム200について説明する。
図5に示すように、ロータコア4の製造システム200は、組立装置101と、予熱用加熱装置102と、樹脂注入装置103と、硬化用加熱装置104と、を備える。また、ロータコア4の製造システム200は、積層コア4dを搬送する搬送用コンベア105を備える。なお、組立装置101、予熱用加熱装置102、樹脂注入装置103、および硬化用加熱装置104は、互いに別個の装置である。
組立装置101は、治具20に積層コア4dを配置する(組み付ける)ように構成されている。具体的には、組立装置101は、治具20に積層コア4dを配置するとともに、永久磁石5を磁石収容部10に配置(挿入)するように構成されている。
予熱用加熱装置102は、積層コア4dを加熱することにより予熱するように構成されている。具体的には、予熱用加熱装置102は、治具20に配置された状態の積層コア4dを、第1温度T1(たとえば50℃)以上第2温度T2(たとえば120℃)未満で加熱することにより予熱するように構成されている。なお、第1温度T1とは、樹脂材6が溶融する温度(溶融が開始される温度)である。また、第2温度T2とは、樹脂材6が硬化(熱硬化)する温度(硬化(熱硬化)が開始される温度)であるとともに第1温度T1よりも大きい温度である。
樹脂注入装置103は、磁石収容部10に樹脂材6を注入するように構成されている。具体的には、樹脂注入装置103は、治具20に積層コア4dが配置された状態で、かつ、磁石収容部10に永久磁石5が挿入された状態で、磁石収容部10に、第1温度T1以上で溶融した樹脂材6を注入するように構成されている。なお、樹脂注入装置103の詳細な構成については、後述する。
硬化用加熱装置104は、積層コア4dを加熱することによって、磁石収容部10内の樹脂材6を硬化させるように構成されている。具体的には、硬化用加熱装置104は、治具20に配置された状態で、かつ、磁石収容部10に樹脂材6が注入された状態の積層コア4dを、樹脂材6が硬化する温度である第2温度T2以上で加熱することによって、磁石収容部10内の樹脂材6を硬化させるように構成されている。
[樹脂注入装置の具体的な構成]
次に、図6~図9を参照して、樹脂注入装置103の具体的な構成について説明する。
図6に示すように、樹脂注入装置103は、樹脂注入部103aを含む。樹脂注入部103aは、可塑化ユニット110と、可塑化ユニット110から樹脂材6が供給される金型部120とを有している。
可塑化ユニット110は、可塑化シリンダ111を含む。可塑化シリンダ111は、筒形状を有する。また、可塑化シリンダ111の根元側には、樹脂材投入口112が設けられている。そして、固形状(フレーク状、ペレット状、または、粉状など)の樹脂材6が、樹脂材投入口112から可塑化シリンダ111の内部に投入される。なお、可塑化シリンダ111は、特許請求の範囲の「樹脂溶融部」の一例である。
また、可塑化シリンダ111の外側には、加熱装置113が設けられている。加熱装置113は、可塑化シリンダ111の内部に投入された樹脂材6の温度が第1温度T1となるように可塑化シリンダ111を加熱する。なお、樹脂材6は、後述するスクリュー部114において回転することによっても加熱される。これにより、可塑化シリンダ111の内部に投入された樹脂材6が溶融するとともに、溶融した状態が維持される。
また、可塑化シリンダ111の内部には、スクリュー部114が設けられている。スクリュー部114は、図示しない駆動装置によって回転される。また、スクリュー部114は、筒形状の可塑化シリンダ111の中心軸線を回転軸線として回転する。そして、スクリュー部114が回転されることにより、溶融した樹脂が、可塑化シリンダ111の先端側に移送される。
また、可塑化シリンダ111の先端側には、マニホールド部115が設けられている。樹脂注入装置103は、マニホールド部115に設けられるシリンダ部116aを備える。シリンダ部116aは、プランジャ部116に設けられている。シリンダ部116aには、可塑化シリンダ111において溶融された樹脂材6が充填される。また、可塑化シリンダ111の内部とシリンダ部116aとは、マニホールド部115に設けられた樹脂注入装置103内のマニホールド内流路115aによって接続されている。マニホールド内流路115aは、可塑化シリンダ111とシリンダ部116aとを接続するマニホールド内流路115b、および、シリンダ部116aと後述する射出ノズル117とを接続するマニホールド内流路115cとにより構成されている。マニホールド内流路115bは、可塑化シリンダ111において溶融された樹脂材6をシリンダ部116aに充填するために設けられている。また、マニホールド内流路115bとマニホールド内流路115cとは互いに連通している(接続されている)。なお、マニホールド内流路115bは、特許請求の範囲の「樹脂流路」の一例である。
また、樹脂注入装置103は、シリンダ部116a内を移動するピストン部116bを備える。ピストン部116bは、プランジャ部116に設けられている。ピストン部116bが後退(マニホールド内流路115aとは反対側に移動)されることにより、マニホールド内流路115a(マニホールド内流路115b)を流通する溶融された樹脂材6がシリンダ部116a内に充填される。また、ピストン部116bが前進(マニホールド内流路115a側に移動)されることにより、シリンダ部116aに充填された樹脂材6がマニホールド内流路115a(マニホールド内流路115c)に射出される。
また、樹脂注入装置103は、マニホールド内流路115a(マニホールド内流路115c)の先端側に設けられる射出ノズル117を備える。射出ノズル117は、ピストン部116bが前進することによりシリンダ部116aからマニホールド内流路115a(115c)に射出された樹脂材6を、積層コア4dの磁石収容部10に注入するように構成されている。なお、マニホールド部115も可塑化シリンダ111と同様に、マニホールド部115の内部に収容された樹脂材6の温度が第1温度T1となるように加熱されている。
また、マニホールド内流路115aには、射出バルブピン118が設けられている。そして、射出ノズル117から樹脂材6が押し出される時には、射出バルブピン118は、開状態となる。一方、射出ノズル117から樹脂材6が押し出されない時には、射出バルブピン118は、閉状態となる。なお、図6は、射出バルブピン118および後述する金型バルブ123が閉状態である場合の図である。
また、図8および図9に示すように、樹脂注入装置103は、圧力センサ119aと、サーボモータ119bとを含む圧力制御部119(図9参照)を備える。圧力センサ119aは、シリンダ部116aの近傍に設けられている。圧力センサ119aは、シリンダ部116a内の樹脂材6の圧力を検出するために設けられている。なお、図6および図7では、簡略化のため、圧力センサ119aおよびサーボモータ119bの図示は省略している。また、圧力センサ119aおよびサーボモータ119bは、それぞれ、特許請求の範囲の「センサ部」および「駆動制御部」の一例である。
ここで、本実施形態では、圧力センサ119aは、シリンダ部116aに設けられる開口部116cの近傍に設けられている。具体的には、圧力センサ119aは、シリンダ部116aの開口部116cに対して下方側(Z2方向側)に設けられている。なお、樹脂材6は、開口部116cを介してシリンダ部116aに流入するとともに、開口部116cを介してシリンダ部116aから流出する。
また、図8に示すように、サーボモータ119bは、圧力センサ119aの検出値に基づいて、シリンダ部116aに樹脂材6を充填する際にピストン部116bが後退する速度を制御することによりシリンダ部116a内の樹脂材6の圧力を制御する。具体的には、サーボモータ119bは、圧力センサ119aから検出信号(検出結果)を受信するとともに、圧力センサ119aからの検出信号に基づいてピストン部116bを駆動するように構成されている。
ここで、本実施形態では、圧力制御部119は、シリンダ部116aに樹脂材6が充填される際のシリンダ部116a内の樹脂材6の圧力が、マニホールド内流路115bにおいて樹脂材6からフィラー6aが分離される所定の圧力P1未満に維持されるように制御を行うように構成されている。言い換えれば、シリンダ部116aに樹脂材6が充填される際のシリンダ部116a内の樹脂材6の圧力は、圧力制御部119により、マニホールド内流路115bにおいて樹脂材6からフィラー6aが分離されない圧力に維持されている。
具体的には、圧力制御部119は、シリンダ部116aに樹脂材6が充填される際のシリンダ部116a内の樹脂材6の圧力を、0よりも大きく、かつ、所定の圧力P1である1.0MPa未満に維持する制御を行う。詳細には、圧力制御部119は、圧力センサ119aの検出値に基づいて、サーボモータ119bによりピストン部116bの後退する速度を増加させることによりシリンダ部116a内の樹脂材6の圧力を低下させるとともに、サーボモータ119bによりピストン部116bの後退する速度を減少させることによりシリンダ部116a内の樹脂材6の圧力を増加させることによって、シリンダ部116a内の樹脂材6の圧力を制御する。なお、ピストン部116bを減速させる際は、ピストン部116bを停止させてもよい。
また、図6に示すように、金型部120の内部には、樹脂材6が流動する流路121が設けられている。流路121は、積層コア4d側に向かって、複数の金型内流路121aに分岐されている。そして、流路121の積層コア4d側の金型ノズル内流路121bは、積層コア4dの磁石収容部10に対応する位置に設けられている。
また、金型部120には、金型ノズル122が設けられている。金型ノズル122は、流路121(金型ノズル内流路121b)の先端側に設けられている。そして、流路121内に収容された樹脂材6が、ピストン部116bによって押し出されることにより、金型部120の金型ノズル122から、積層コア4dの磁石収容部10に注入される。
また、図6に示すように、金型ノズル内流路121bには、金型バルブ123が設けられている。そして、金型ノズル122から樹脂材6が押し出される時には、金型バルブ123は、開状態となる。一方、金型ノズル122から樹脂材6が押し出されない時には、金型バルブ123は、閉状態となる。なお、金型バルブ123は、金型バルブピン123aを含む。金型バルブピン123aが金型ノズル122の先端122aを塞ぐことにより、金型ノズル122からの樹脂材6の射出が塞き止められる。
また、金型部120の外側には、金型温調装置124が設けられている。金型温調装置124は、金型部120の内部に収容された樹脂材6の温度が第1温度T1となるように金型部120を加熱する。
(ロータの製造方法)
次に、図10を参照して、ロータコア4の製造方法について説明する。
まず、図10に示すように、ステップS1において、積層コア4dを準備する工程が行われる。具体的には、複数の電磁鋼板4a(図3参照)が積層されることによって、積層コア4dが形成される。この際、プレス加工によって、電磁鋼板4aの積層方向に延びる磁石収容部10が積層コア4dに形成される。
次に、ステップS2において、組立装置101において、治具20に積層コア4dを配置する工程が行われる。具体的には、まず、下方プレート24に積層コア4dを配置(載置)する工程が行われる。次に、下方プレート24に積層コア4dが配置された状態で、磁石収容部10に永久磁石5を配置する工程が行われる。そして、下方プレート24と上方プレート21とがクランプ部材27によりクランプ(連結)されるとともに、押圧プレート23により積層コア4dの上端面4bが押圧される。なお、治具20に積層コア4dを配置する工程(ステップS2の工程)は、断熱部材25が設けられた治具20に積層コア4dを配置する工程である。
次に、ステップS3において、積層コア4dを予熱する工程が行われる。具体的には、予熱用加熱装置102において、治具20に配置された状態の積層コア4dを、第1温度T1以上第2温度T2未満で加熱することにより予熱する工程が行われる。
次に、ステップS4において、樹脂材6を可塑化シリンダ111において溶融させる溶融工程が行われる。具体的には、可塑化シリンダ111の外側に設けられた加熱装置113(およびスクリュー部114による回転)により、可塑化シリンダ111の内部に投入された樹脂材6の温度が第1温度T1となるように可塑化シリンダ111が加熱される。これにより、可塑化シリンダ111の内部に投入された樹脂材6が溶融するとともに、溶融した状態が維持される。なお、この工程では、常温において固形状態の樹脂材6が第1温度T1で溶融される。
次に、ステップS5において、シリンダ部116aに樹脂材6を充填する充填工程が行われる。具体的には、シリンダ部116a内を移動するピストン部116bを後退させることにより、溶融した(可塑化シリンダ111において溶融された)樹脂材6がシリンダ部116aに充填される。詳細には、加熱装置113による加熱およびスクリュー部114の回転により溶融した樹脂材6がマニホールド部115に流入することにより、シリンダ部116aの圧力が上昇する。そして、シリンダ部116aの圧力が規定の圧力(たとえば0、5MPa)に達するとピストン部116bの後退が開始される。ピストン部116bの後退中は、後述するようにシリンダ部116aの圧力が規定の圧力に維持されるようにピストン部116bの速度が調整される。また、ピストン部116bが後退する距離は予め設定されているので、シリンダ部116aには常に一定量(一定の体積)の樹脂材6が充填(計量)される。なお、ピストン部116bの後退中も、スクリュー部114からシリンダ部116aへの樹脂材6の供給は継続される。シリンダ部116aへの樹脂材6の充填が完了すると、ピストン部116bおよびスクリュー部114が停止される。なお、上記充填工程では、射出バルブピン118が閉状態であることによって、スクリュー部114からマニホールド内流路115bを介しシリンダ部116aに樹脂材6が充填可能である。
ここで、本実施形態では、上記充填工程は、シリンダ部116aに充填された樹脂材6の圧力が、樹脂注入装置103内において樹脂材6からフィラー6aが分離される所定の圧力P1未満に維持されるように制御しながら、樹脂材6をシリンダ部116aに充填する工程である。また、上記充填工程は、シリンダ部116aに充填された樹脂材6の圧力が、マニホールド内流路115bにおいて樹脂材6からフィラー6aが分離される所定の圧力P1未満に維持されるように制御しながら、可塑化シリンダ111において溶融された樹脂材6をシリンダ部116aに充填する工程である。言い換えれば、上記充填工程は、樹脂材6からフィラー6aが分離されるのを防止することにより樹脂材6におけるフィラー6aの配合比率が均一になるように制御しながら、樹脂材6をシリンダ部116aに充填する工程である。
詳細には、この工程では、シリンダ部116aに充填された樹脂材6の圧力が、0よりも大きく、かつ、所定の圧力P1である1.0MPa未満に維持されながら、シリンダ部116aへの樹脂材6の充填が行われる。
また、本実施形態では、所定の圧力P1は、樹脂材6を磁石収容部10に注入する注入工程(後述するステップS6)においてシリンダ部116a内の樹脂材6にかかる圧力よりも小さい。具体的には、所定の圧力P1は、ステップS6のうちの初期注入工程においてシリンダ部116a内の樹脂材6にかかる圧力、および、ステップS6のうちの後期注入工程においてシリンダ部116a内の樹脂材6にかかる圧力(たとえば8MPa)よりも小さい。
また、上記充填工程は、シリンダ部116aに充填された樹脂材6の圧力が、所定の圧力P1未満で一定になるように制御しながら、樹脂材6をシリンダ部116aに充填する工程である。具体的には、シリンダ部116aに充填された樹脂材6の圧力が規定の圧力(たとえば0.5MPa)で一定になるように制御されながら、樹脂材6のシリンダ部116aへの充填が行われる。
また、本実施形態では、上記充填工程は、ピストン部116bが後退する速度を制御することによって、シリンダ部116aに充填された樹脂材6の圧力が、所定の圧力P1未満になるように制御しながら、樹脂材6をシリンダ部116aに充填する工程である。
たとえば、シリンダ部116aに樹脂材6を充填している間(ピストン部116bを後退させている間)に、シリンダ部116a内の樹脂材6の圧力が0.51MPaに上昇した場合、圧力制御部119は、サーボモータ119bによりピストン部116bの後退する速度を増加させることによって、シリンダ部116a内の樹脂材6の圧力を0.5MPaに低下させる制御を行う。また、シリンダ部116aに樹脂材6を充填している間(ピストン部116bを後退させている間)に、シリンダ部116a内の樹脂材6の圧力が0.49MPaに低下した場合、圧力制御部119は、サーボモータ119bによりピストン部116bの後退する速度を減少させることによって、シリンダ部116a内の樹脂材6の圧力を0.5MPaに増加させる制御を行う。なお、上記の制御は一例であり、0.5MPaに対する差分が上記の例よりも大きくなった場合に初めてピストン部116bの速度を変化させてもよい。
また、本実施形態では、上記充填工程は、圧力センサ119aの検出値に基づいて、シリンダ部116aに充填された樹脂材6の圧力を制御しながら、樹脂材6をシリンダ部116aに充填する工程である。具体的には、この工程において、圧力制御部119は、圧力センサ119aによって検出されたシリンダ部116a内の樹脂材6の圧力値に基づいてサーボモータ119bを制御するように構成されている。たとえば、圧力制御部119は、シリンダ部116aへの樹脂材6の充填工程において、圧力センサ119aの検出値が0.51MPaに増加した場合にサーボモータ119bを制御してピストン部116bの後退する速度を増加させるとともに、圧力センサ119aの検出値が0.49MPaに低下した場合にサーボモータ119bを制御してピストン部116bの後退する速度を減少させる制御を行う。
次に、ステップS6において、積層コア4dの磁石収容部10に樹脂材6を注入する注入工程が行われる。具体的には、治具20による積層コア4dの押圧が維持された状態で、かつ、磁石収容部10に永久磁石5が挿入された状態で、樹脂注入装置103に含まれる樹脂注入部103aにより、磁石収容部10に、樹脂材6の温度が、第1温度T1以上でかつ第2温度T2未満の状態で、溶融した樹脂材6を注入する。
詳細には、上記注入工程(ステップS6)では、上記充填工程(ステップS5)においてシリンダ部116aに充填された樹脂材6が、ピストン部116bを前進させる(図8のX1方向側に移動させる)ことによりシリンダ部116aから(マニホールド内流路115cに)射出される。そして、シリンダ部116aから射出された樹脂材6が、永久磁石5が配置された磁石収容部10に注入される。
図6に示すように、樹脂注入部103aの金型部120は、固定された状態である。そして、可塑化ユニット110が下方(Z2方向側)に移動されることにより、固定された状態の金型部120の孔部120aに、可塑化ユニット110の射出ノズル117が接続(図7参照)される。また、固定された状態の金型部120に対して、治具20に押圧された状態の積層コア4dが上方(Z1方向側)に移動される。そして、上方プレート21の樹脂注入孔21bに金型部120の金型ノズル122が挿入されるとともに、押圧プレート23の樹脂注入孔23bに金型部120の金型ノズル122の先端122aが挿入(図7参照)される。すなわち、本実施形態では、樹脂材6を注入する工程では、上方から、磁石収容部10に樹脂材6が注入される。
そして、射出バルブピン118および金型バルブ123が開状態(図7参照)にされるとともに、ピストン部116bによって樹脂材6が押し出されることにより、磁石収容部10に樹脂材6が注入される。磁石収容部10への樹脂材6の注入(充填)が終了した後、射出バルブピン118および金型バルブ123は、閉状態にされる。
ここで、本実施形態では、上記注入工程(ステップS6)は、ピストン部116bが前進する速度を制御することによって、シリンダ部116a内の樹脂材6の圧力を制御しながら磁石収容部10に樹脂材6を注入する初期注入工程を含む。また、上記注入工程は、初期注入工程の後に行われ、圧力センサ119aの検出値に基づいて、シリンダ部116a内の樹脂材6の圧力を制御しながら磁石収容部10に樹脂材6を注入する後期注入工程を含む。
具体的には、初期注入工程においてピストン部116bが移動する距離および移動する速度は、予め設定されている。初期注入工程におけるシリンダ部116a内の樹脂材6の圧力は、予め設定されたピストン部116bの移動距離および移動速度に基づいて制御(決定)される。詳細には、初期注入工程においてシリンダ部116a内の樹脂材6の圧力が所定の圧力になるように、ピストン部116bの移動距離および移動速度が予め設定されている。また、ピストン部116bは、上記移動距離を移動した後、一旦停止される。なお、この初期注入工程においては、圧力センサ119aの検出値は考慮されていない。
また、本実施形態では、後期注入工程は、圧力センサ119aによって検出された樹脂材6の圧力が、初期注入工程においてシリンダ部116a内の樹脂材6にかかる圧力よりも大きい所定の設定圧力値P2に上昇するまで樹脂材6を加圧しながら、磁石収容部10に樹脂材6を注入する工程である。具体的には、後期注入工程では、圧力センサ119aの検出値が上記所定の設定圧力値P2である8MPaに上昇するまで、シリンダ部116a内の樹脂材6が加圧されながら、樹脂材6が磁石収容部10に注入される。
詳細には、磁石収容部10に樹脂材6が充填されることにより、樹脂材6にかかる圧力が上昇して所定の設定圧力値P2(すなわち8MPa)を超えるとともに、上昇した圧力を所定時間維持した後、樹脂材6の注入が停止される。たとえば、樹脂材6にかかる圧力が上昇して所定の設定圧力値P2を超えた後、上昇した圧力が約5秒間維持される。なお、樹脂材6は、樹脂注入部103a(シリンダ部116a)に収容された樹脂材6のうち、必要量のみ、磁石収容部10に直接注入される。また、金型ノズル122の先端122aが、積層コア4dに当接される状態で、樹脂材6を磁石収容部10に注入してもよいし、金型ノズル122の先端122aが治具20に当接された状態(金型ノズル122が積層コア4dから離間した状態)で、樹脂材6を磁石収容部10に注入してもよい。
なお、上記注入工程(ステップS6)においては、樹脂材6はピストン部116bにより押し出されるので、樹脂材6の圧力が高くなっても、フィラー6aはベース樹脂から分離せずにベース樹脂と共に押し出される。また、樹脂材6が高圧になることにより樹脂材6の密度が上昇することに起因して、樹脂材6の動粘度(樹脂材6そのものの動きにくさ)が低下するので、樹脂材6の流動性が向上する。その結果、短時間で樹脂材6の注入を行うことが可能となる。なお、この際、樹脂材6の粘度(樹脂材6の中の物体(たとえばフィラー6a)の動きにくさ)は変化しない。
また、上記注入工程(ステップS6)では、断熱部材25が設けられた治具20に積層コア4dが配置された状態で、磁石収容部10に溶融した樹脂材6が注入される。すなわち、樹脂材6の熱が、治具20の位置決めプレート26に伝熱するのが、断熱部材25により抑制されている。
次に、ステップS7(図10参照)において、樹脂注入部103a内に収容された樹脂材6の溶融状態を維持した状態で、樹脂注入装置103の樹脂注入部103aを、治具20によって押圧されている状態の積層コア4dに対して相対的に退避させる退避工程が行われる。つまり、樹脂注入部103a内に収容された樹脂材6の温度が第1温度T1となるように加熱された状態のまま、樹脂注入部103aを積層コア4dに対して相対的に退避させる。
また、上記退避工程では、樹脂注入部103aによって、磁石収容部10に樹脂材6を注入した後、樹脂注入部103aからの樹脂材6の射出が樹脂注入部103aに設けられた金型バルブ123により遮断された状態(すなわち、金型バルブ123が閉状態)で、樹脂注入部103aが相対的に退避される。また、上記退避工程では、樹脂材6にかける圧力を、樹脂材6を注入する工程において樹脂材6にかける圧力よりも低下させた状態で、樹脂注入部103aが相対的に退避される。
また、上記退避工程では、樹脂注入部103aに対して、積層コア4dを離間させることにより、樹脂注入部103aを相対的に退避させる。つまり、樹脂注入部103aを移動させずに、樹脂注入部103aに対して、積層コア4dを下方に離間させることにより、樹脂注入部103aを積層コア4dに対して相対的に離間させる。
次に、図10に示すように、ステップS8において、上記退避工程(ステップS7)の後、磁石収容部10に樹脂材6が注入された状態の積層コア4dを、樹脂材6が硬化する第2温度T2以上で加熱することによって、磁石収容部10内の樹脂材6が硬化される。磁石収容部10内の樹脂材6を硬化させる工程では、樹脂注入装置103とは別個に設けられた硬化用加熱装置104において、磁石収容部10内の樹脂材6が硬化される。
[本実施形態の効果]
本実施形態では、以下のような効果を得ることができる。
[ロータコアの製造方法の効果]
本実施形態では、上記のように、充填工程は、シリンダ部(116a)に充填された樹脂材(6)の圧力が、樹脂材(6)から充填材(6a)が分離される所定の圧力(P1)未満に維持されるように制御しながら、樹脂材(6)をシリンダ部(116a)に充填する工程である。これにより、上記充填工程において、シリンダ部(116a)に充填された樹脂材(6)の圧力が、樹脂材(6)から充填材(6a)が分離される所定の圧力(P1)未満に維持されるので、樹脂材(6)から充填材(6a)が分離されるのを防止することができる。その結果、シリンダ部(116a)に充填される樹脂材(6)におけるベース樹脂(基材樹脂)と充填材(6a)との配合比率が不均一になるのを防止することができるので、積層コア(4d)の磁石収容部(10)に充填される樹脂材(6)におけるベース樹脂(基材樹脂)と充填材(6a)との配合比率が不均一になるのを防止することができる。その結果、積層コア(4d)の磁石収容部(10)に充填される樹脂材(6)に含まれる充填材(6a)の比率が過度に小さくなるのを防止することができるので、ロータコア(4)の樹脂材(6)の特性(機械的強度および耐熱性等)が悪化するのを防止することができる。
また、樹脂材(6)から充填材(6a)が分離されるのを防止することによって、樹脂材(6)から分離されたベース樹脂が逆流するのを防止することができるとともに、樹脂材(6)から分離された充填材(6a)によって樹脂流路(115b)が詰まるのを防止することができる。
また、本実施形態では、上記のように、上記充填工程は、シリンダ部(116a)に充填された樹脂材(6)の圧力が、所定の圧力(P1)である1.0MPa未満に維持されるように制御しながら、溶融された樹脂材(6)をシリンダ部(116a)に充填する工程である。このように構成すれば、シリンダ部(116a)に充填された樹脂材(6)の圧力が1.0MPa以上になる場合に比べて、積層コア(4d)の磁石収容部(10)に充填される樹脂材(6)に含まれる充填材(6a)の比率が過度に小さくなるのをより確実に防止することができるので、ロータコア(4)の樹脂材(6)の特性が悪化するのをより確実に防止することができる。また、樹脂材(6)から分離されたベース樹脂が逆流するのをより確実に防止することができるとともに、樹脂材(6)から分離された充填材(6a)によって樹脂流路(115b)が詰まるのをより確実に防止することができる。
また、本実施形態では、上記のように、上記充填工程は、ピストン部(116b)が後退する速度を制御することによって、シリンダ部(116a)に充填された樹脂材(6)の圧力が、所定の圧力(P1)未満になるように制御しながら、樹脂材(6)をシリンダ部(116a)に充填する工程である。このように構成すれば、ピストン部(116b)が後退する速度は、駆動制御部(119b)により容易に制御することができるので、シリンダ部(116a)に充填された樹脂材(6)の圧力の制御を容易に行うことができる。
また、本実施形態では、上記のように、上記充填工程は、シリンダ部(116a)に充填された樹脂材(6)の圧力が、所定の圧力(P1)未満で一定になるように制御しながら、樹脂材(6)をシリンダ部(116a)に充填する工程である。このように構成すれば、シリンダ部(116a)に充填された樹脂材(6)の圧力が一定であるので、シリンダ部(116a)に充填される樹脂材(6)におけるベース樹脂(基材樹脂)と充填材(6a)との配合比率が不均一になるのをより確実に防止することができる。
また、本実施形態では、上記のように、上記充填工程は、シリンダ部(116a)に充填された樹脂材(6)の圧力が、上記注入工程においてシリンダ部(116a)内の樹脂材(6)にかかる圧力よりも小さい所定の圧力(P1)未満に維持されるように制御しながら、樹脂材(6)をシリンダ部(116a)に充填する工程である。このように構成すれば、シリンダ部(116a)に樹脂材(6)を充填する際にシリンダ部(116a)内の樹脂材(6)にかかる圧力を比較的小さくすることができる。その結果、樹脂材(6)から充填材(6a)が分離されるのをより一層確実に防止することができる。また、高圧の樹脂材(6)がシリンダ部(116a)に充填されることに起因してシリンダ部(116a)が破損するのを防止することができる。
また、本実施形態では、上記のように、上記充填工程は、シリンダ部(116a)の近傍に設けられ、シリンダ部(116a)内の樹脂材(6)の圧力を検出するためのセンサ部(119a)の検出値に基づいて、シリンダ部(116a)に充填された樹脂材(6)の圧力を制御しながら、樹脂材(6)をシリンダ部(116a)に充填する工程である。このように構成すれば、センサ部(119a)の検出値に基づいてシリンダ部(116a)に充填された樹脂材(6)の圧力を制御することができるので、シリンダ部(116a)に充填された樹脂材(6)の圧力をより正確に制御することができる。
また、本実施形態では、上記のように、上記注入工程は、ピストン部(116b)が前進する速度を制御することによって、シリンダ部(116a)内の樹脂材(6)の圧力を制御しながら磁石収容部(10)に樹脂材(6)を注入する初期注入工程を含む。また、磁石収容部(10)に樹脂材(6)を注入する工程は、初期注入工程の後に行われ、センサ部(119a)の検出値に基づいて、シリンダ部(116a)内の樹脂材(6)の圧力を制御しながら磁石収容部(10)に樹脂材(6)を注入する後期注入工程を含む。このように構成すれば、ピストン部(116b)が前進する速度を容易に制御することができるので、初期注入工程においてシリンダ部(116a)に充填された樹脂材(6)の圧力を制御するのを容易に行うことができる。また、後期注入工程において、センサ部(119a)の検出値に基づいてシリンダ部(116a)内の樹脂材(6)の圧力を制御することができるので、シリンダ部(116a)から樹脂材(6)を射出する際の樹脂材(6)の圧力をより正確に制御することができる。また、樹脂材(6)をシリンダ部(116a)に充填する際に用いるセンサ部(119a)を樹脂材(6)の射出の際にも流用することができる分、樹脂注入装置(103)内の部品点数が増大するのを防止することができる。
また、本実施形態では、上記のように、後期注入工程は、センサ部(119a)によって検出された樹脂材(6)の圧力が、初期注入工程においてシリンダ部(116a)内の樹脂材(6)にかかる圧力よりも大きい所定の設定圧力値(P2)に上昇するまで樹脂材(6)を加圧しながら、磁石収容部(10)に樹脂材(6)を注入する工程である。このように構成すれば、後期注入工程においてシリンダ部(116a)内の樹脂材(6)にかかる圧力が、初期注入工程においてシリンダ部(116a)内の樹脂材(6)にかかる圧力よりも大きい所定の設定圧力値(P2)に上昇したことを、センサ部(119a)の検出値によって確実に検知することができる。
また、本実施形態では、上記のように、樹脂注入装置(103)は、樹脂材(6)を溶融する樹脂溶融部(111)を含む。また、上記充填工程は、シリンダ部(116a)に充填された樹脂材(6)の圧力が、樹脂溶融部(111)とシリンダ部(116a)との間に設けられる樹脂流路(115b)において樹脂材(6)から充填材(6a)が分離される所定の圧力(P1)未満に維持されるように制御しながら、樹脂溶融部(111)において溶融された樹脂材(6)をシリンダ部(116a)に充填する工程である。このように構成すれば、樹脂溶融部(111)とシリンダ部(116a)との間の樹脂流路(115b)が、樹脂材(6)から分離された充填材(6a)によって詰まるのを防止することができる。
[樹脂注入装置の効果]
また、本実施形態では、上記のように、樹脂注入装置(103)は、シリンダ部(116a)に溶融された樹脂材(6)が充填される際のシリンダ部(116a)内の樹脂材(6)の圧力が、樹脂材(6)から充填材(6a)が分離される所定の圧力(P1)未満に維持されるように制御を行う圧力制御部(119)を備える。これにより、樹脂材(6)から充填材(6a)が分離されるのを防止することができる。その結果、シリンダ部(116a)に充填される樹脂材(6)におけるベース樹脂(基材樹脂)と充填材(6a)との配合比率が不均一になるのを防止することができるので、積層コア(4d)の磁石収容部(10)に充填される樹脂材(6)におけるベース樹脂(基材樹脂)と充填材(6a)との配合比率が不均一になるのを防止することができる。その結果、積層コア(4d)の磁石収容部(10)に充填される樹脂材(6)に含まれる充填材(6a)の比率が過度に小さくなるのを防止することができるので、ロータコア(4)の樹脂材(6)の特性(機械的強度および耐熱性等)が悪化するのを防止することが可能な樹脂注入装置(103)を提供することができる。
また、樹脂材(6)から充填材(6a)が分離されるのを防止することによって、樹脂材(6)から分離されたベース樹脂が逆流するのを防止することが可能であるとともに、樹脂材(6)から分離された充填材(6a)によって樹脂流路(115b)が詰まるのを防止することが可能な樹脂注入装置(103)を提供することができる。
また、本実施形態では、上記のように、圧力制御部(119)は、シリンダ部(116a)に樹脂材(6)が充填される際のシリンダ部(116a)内の樹脂材(6)の圧力が、所定の圧力(P1)である1.0MPa未満に維持されるように制御を行うように構成されている。このように構成すれば、シリンダ部(116a)に充填された樹脂材(6)の圧力が1.0MPaよりも大きくなる場合に比べて、積層コア(4d)の磁石収容部(10)に充填される樹脂材(6)に含まれる充填材(6a)の比率が過度に小さくなるのをより確実に防止することができるので、ロータコア(4)の樹脂材(6)の特性が悪化するのをより確実に防止することが可能な樹脂注入装置(103)を提供することができる。また、樹脂材(6)から分離されたベース樹脂が逆流するのをより確実に防止することが可能であるとともに、樹脂材(6)から分離された充填材(6a)によって樹脂流路(115b)が詰まるのをより確実に防止することが可能な樹脂注入装置(103)を提供することができる。
また、本実施形態では、上記のように、圧力制御部(119)は、シリンダ部(116a)の近傍に設けられ、シリンダ部(116a)内の樹脂材(6)の圧力を検出するためのセンサ部(119a)を含む。また、圧力制御部(119)は、センサ部(119a)の検出値に基づいて、シリンダ部(116a)に樹脂材(6)を充填する際にピストン部(116b)が後退する速度を制御することによりシリンダ部(116a)内の樹脂材(6)の圧力を制御する駆動制御部(119b)を含む。このように構成すれば、センサ部(119a)の検出値に基づいてシリンダ部(116a)に充填された樹脂材(6)の圧力を駆動制御部(119b)により制御することができるので、シリンダ部(116a)に充填された樹脂材(6)の圧力をより正確に制御することが可能な樹脂注入装置(103)を提供することができる。
また、本実施形態では、上記のように、センサ部(119a)は、シリンダ部(116a)に設けられ、樹脂材(6)をシリンダ部(116a)に流入させるととともにシリンダ部(116a)内の樹脂材(6)をシリンダ部(116a)から流出させる開口部(116c)近傍に設けられている。このように構成すれば、センサ部(119a)がシリンダ部(116a)の開口部(116c)近傍に設けられていることによって、センサ部(119a)によりシリンダ部(116a)内の樹脂材(6)の圧力をより一層正確に検知することができる。
[変形例]
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更(変形例)が含まれる。
たとえば、上記実施形態では、シリンダ部116aに樹脂材6が充填される工程において、シリンダ部116a内の樹脂材6の圧力が1.0MPa未満に維持されるように制御される例を示したが、本発明はこれに限られない。フィラー6a(充填材)が樹脂材6から分離されないのであれば、シリンダ部116a内の樹脂材6の圧力が1.0MPaとは異なる圧力(たとえば1.5MPa)未満になるように制御されてもよい。
また、上記実施形態では、シリンダ部116aに樹脂材6が充填される工程において、シリンダ部116a内の樹脂材6の圧力が所定の圧力P1未満で一定になるように制御される例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、シリンダ部116a内の樹脂材6の圧力が所定の圧力P1未満の所定の範囲内に収まるように制御されてもよい。たとえば、シリンダ部116a内の樹脂材6の圧力が上記所定の範囲の上限よりも大きくなった場合にシリンダ部116a内の樹脂材6を減圧するとともに、シリンダ部116a内の樹脂材6の圧力が上記所定の範囲の下限よりも小さくなった場合にシリンダ部116a内の樹脂材6を加圧する制御が行われてもよい。
また、上記実施形態では、シリンダ部116aに充填された樹脂材6の圧力が、樹脂材6を磁石収容部10に注入する工程においてシリンダ部116a内の樹脂材6にかかる圧力よりも小さい例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、シリンダ部116aに充填されら樹脂材6の圧力が、初期注入工程においてシリンダ部116a内の樹脂材6にかかる圧力よりも大きくてもよい。
また、上記実施形態では、圧力センサ119a(センサ部)がシリンダ部116aの近傍(シリンダ部116aの開口部116cの近傍)に配置される例を示したが、本発明はこれに限られない。圧力センサ119aは、樹脂注入装置103内のシリンダ部116aの近傍以外の場所(たとえば、金型ノズル122(注入ノズル)の内側)に配置されていてもよい。
また、上記実施形態では、圧力センサ119a(センサ部)が樹脂材6が流れるマニホールド内流路115aに配置されることにより樹脂材6の圧力を直接的に検出する例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、圧力センサが、ピストン部116bの後方に配置され、ピストン部116bから受ける反力に基づいてシリンダ部116a内の樹脂材6の圧力を間接的に検出してもよい。
また、上記実施形態では、圧力センサ119a(センサ部)によって樹脂材6の圧力を検出する例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、樹脂材6の流量を検知する流量計の検出値に基づいて、間接的に樹脂材6の圧力を検出してもよい。
また、上記実施形態では、初期注入工程においてピストン部116bが前進する速度を制御して樹脂材6の圧力を制御する例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、初期注入工程においても、後期注入工程と同様に、圧力センサ119a(センサ部)の検出値に基づいて樹脂材6の圧力を制御してもよい。
また、上記実施形態では、樹脂注入装置103の可塑化シリンダ111(樹脂溶融部)において樹脂材6が溶融される例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、樹脂注入装置103とは異なる装置等において溶融された樹脂材6が、樹脂注入装置103に供給されてもよい。この場合、樹脂注入装置103は、供給された樹脂材6を、樹脂注入装置103に設けられた樹脂貯留部に貯留するように構成されていてもよい。
また、上記実施形態では、樹脂材6が熱硬化性樹脂である例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、樹脂材6が熱可塑性樹脂であってもよい。