以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
[本実施形態]
図1~図14を参照して、本実施形態によるロータコア4の製造方法および樹脂注入装置103について説明する。
本願明細書では、「軸方向」とは、ロータ1(ロータコア4)の回転軸線C1に沿った方向を意味し、図中のZ方向を意味する。また、「積層方向」とは、ロータコア4の電磁鋼板4a(図3参照)が積層する方向を意味し、図中のZ方向を意味する。また、「径方向」とは、ロータ1(ロータコア4)の径方向(R1方向またはR2方向)を意味し、「周方向」は、ロータ1(ロータコア4)の周方向(E1方向またはE2方向)を意味する。
(ロータコアの構造)
まず、図1を参照して、本実施形態のロータコア4の構造について説明する。
図1に示すように、回転電機100は、ロータ1とステータ2とを備える。また、ロータ1およびステータ2は、それぞれ、円環状に形成されている。そして、ロータ1は、ステータ2の径方向内側に対向して配置されている。すなわち、本実施形態では、回転電機100は、インナーロータ型の回転電機として構成されている。また、ロータ1の径方向内側には、シャフト3が配置されている。シャフト3は、ギア等の回転力伝達部材を介して、エンジンや車軸に接続されている。たとえば、回転電機100は、モータ、ジェネレータ、または、モータ兼ジェネレータとして構成されており、車両に搭載されるように構成されている。
また、ロータコア4は、複数の電磁鋼板4a(図3参照)が積層され、電磁鋼板4aの積層方向に延びる磁石収容部10を有する積層コア4d(図3参照)を備える。また、ロータコア4は、積層コア4dの磁石収容部10に挿入される永久磁石5を備える。磁石収容部10は、積層コア4dに複数(本実施形態では32個)設けられている。すなわち、回転電機100は、埋込永久磁石型モータ(IPMモータ:Interior Permanent Magnet Motor)として構成されている。また、磁石収容部10は、積層コア4d(ロータコア4)のうちの径方向外側の部分に配置されている。なお、互いに隣接する2つの磁石収容部10は、V字状に配置されている。なお、磁石収容部10の配置は、これに限られない。
また、ステータ2は、ステータコア2aと、ステータコア2aに配置されたコイル2bとを含む。ステータコア2aは、たとえば、複数の電磁鋼板(珪素鋼板)が軸方向に積層されており、磁束を通過可能に構成されている。コイル2bは、外部の電源部に接続されており、電力(たとえば、3相交流の電力)が供給されるように構成されている。そして、コイル2bは、電力が供給されることにより、磁界を発生させるように構成されている。また、ロータ1およびシャフト3は、コイル2bに電力が供給されない場合でも、エンジン等の駆動に伴って、ステータ2に対して回転するように構成されている。なお、図1では、コイル2bの一部のみを図示しているが、コイル2bは、ステータコア2aの全周に亘って配置されている。
永久磁石5は、積層コア4d(ロータコア4)の軸方向に直交する断面が長方形形状を有している。たとえば、永久磁石5は、磁化方向(着磁方向)が短手方向となるように構成されている。
また、ロータコア4は、磁石収容部10に充填されている樹脂材6(図3参照)を備える。樹脂材6は、磁石収容部10に配置されている永久磁石5を固定するように設けられている。樹脂材6は、第1温度T1において溶融するとともに第1温度T1よりも高い第2温度T2において硬化する材料(熱硬化性樹脂)により構成されている。詳細には、樹脂材6は、第1温度T1よりも低い常温において固形(フレーク状、ペレット状、または、粉状など)であり、常温から加熱されて、樹脂材6の温度が第1温度T1以上になると溶融する。そして、樹脂材6は、第1温度T1以上でかつ第2温度T2未満の状態では、溶融状態を維持する(硬化しない)ように構成されている。そして、樹脂材6は、第2温度T2以上の温度に加熱されることにより、硬化するように構成されている。なお、図1では、簡略化のため、樹脂材6の図示を省略している。
たとえば、樹脂材6として、特開2000-239642号公報に記載されているような合成樹脂材を用いることが可能である。すなわち、樹脂材6は、ウレトジオン環を100eq/T以上有する第1化合物を10%以上100%以下と、分子末端に活性水素基を有する第2化合物を0%以上90%以下と、グリシジル基を有する第3化合物を0%以上90%以下とを含有し、かつ、第1~第3化合物のいずれにも分子末端にイソシアネート基を含まないことを特徴とする反応性ホットメルト接着剤組成物を含む。
(治具の構造)
次に、図2~図4を参照して、本実施形態の治具20の構造について説明する。なお、以下の説明では、治具20に積層コア4dが配置された状態についての治具20の構造について説明する。
図2に示すように、治具20は、上方プレート21を含む。また、図3に示すように、治具20は、押圧ばね22と、押圧プレート23と、下方プレート24と、断熱部材25と、位置決めプレート26と、クランプ部材27と、を含む。なお、上方プレート21、押圧プレート23、下方プレート24、および位置決めプレート26の各々は、SUS(ステンレス)製である。
図2に示すように、上方プレート21は、中心部に貫通孔21aを有し、円環状に形成されている。また、上方プレート21は、複数の樹脂注入孔21bを含む。樹脂注入孔21bは、後述する樹脂注入装置103の金型ノズル122が挿入可能(図7参照)に設けられている。なお、樹脂注入孔21bは、複数(本実施形態では32個)の磁石収容部10の各々とオーバラップするように設けられている。
なお、後述する予熱用加熱装置102(図5参照)の図示しない誘導加熱コイルは、上方プレート21の貫通孔21a、および、後述する押圧プレート23の貫通孔23aの各々を介して、積層コア4dの径方向内側に挿入される。また、硬化用加熱装置104(図5参照)に設けられる図示しない誘導加熱コイルも、同様に、上方プレート21の貫通孔21a、および、後述する押圧プレート23の貫通孔23aの各々を介して、積層コア4dの径方向内側に挿入される。
押圧ばね22は、上方プレート21と、押圧プレート23との間に設けられている。また、押圧ばね22は、回転軸線C1方向から見て、周方向に沿って、等角度間隔に複数設けられている。なお、本実施形態では、押圧ばね22は、4つ設けられている。複数の押圧ばね22の各々は、治具20に積層コア4dが配置された状態で、上方(Z1方向側)から見て、積層コア4dとオーバラップする位置に設けられている。
また、図3に示すように、押圧プレート23は、積層コア4dの上端面4bに配置されている。押圧プレート23は、押圧ばね22の付勢力により、積層コア4dの上端面4bを押圧するように設けられている。
また、押圧プレート23は、中心部に貫通孔23aを有し、円環状に形成されている。また、押圧プレート23は、複数の樹脂注入孔23bを含む。複数の樹脂注入孔23bは、上方(Z1方向側)から見て、上方プレート21の複数の樹脂注入孔21bとオーバラップする位置に設けられている。なお、複数の樹脂注入孔23bは、後述する樹脂注入装置103の金型ノズル122(金型ノズル122の先端122a)が挿入可能(図7参照)に設けられている。なお、金型ノズル122は、特許請求の範囲の「注入ノズル」の一例である。
また、積層コア4dは、下方プレート24に配置(載置)されている。すなわち、下方プレート24は、積層コア4dの下端面4cと接触している。下方プレート24は、中心部に貫通孔24aを有し、円環状に形成されている。また、下方プレート24は、複数(本実施形態では3つ)の切り欠き部24bを含む。複数の切り欠き部24bは、貫通孔24aの内周縁において、略等角度間隔(図4参照)で設けられている。
複数の切り欠き部24bの各々には、L字状の位置決め部24cが設けられている。複数の位置決め部24cにより、下方プレート24に対する積層コア4dの径方向および周方向の位置が決められる。位置決め部24cは、締結ボルト24dにより、下方プレート24に固定(締結)されている。
また、断熱部材25は、下方プレート24と、位置決めプレート26との間に挟まれるように設けられている。断熱部材25は、中心部に貫通孔25aを有し、円環状に形成されている。また、断熱部材25は、樹脂製である。
また、位置決めプレート26は、下方プレート24の下方側(Z2方向側)に設けられている。位置決めプレート26は、後述する各装置(101~104)における治具20の位置決めに用いられる。
また、クランプ部材27は、U字形状を有しており、上方プレート21と下方プレート24とを挟み込むように設けられている。これにより、治具20に積層コア4dが固定される。クランプ部材27は、複数(本実施形態では4つ)設けられている。複数のクランプ部材27は、回転軸線C1方向から見て、周方向に沿って、略等角度間隔(すなわち90度間隔)に設けられている。
(ロータコアの製造システム)
次に、図5を参照して、ロータコア4の製造システム200について説明する。
図5に示すように、ロータコア4の製造システム200は、組立装置101と、予熱用加熱装置102と、樹脂注入装置103と、硬化用加熱装置104と、を備える。また、ロータコア4の製造システム200は、積層コア4dを搬送する搬送用コンベア105を備える。なお、組立装置101、予熱用加熱装置102、樹脂注入装置103、および硬化用加熱装置104は、互いに別個の装置である。
組立装置101は、治具20に積層コア4dを配置する(組み付ける)ように構成されている。具体的には、組立装置101は、治具20に積層コア4dを配置するとともに、永久磁石5を磁石収容部10に配置(挿入)するように構成されている。
予熱用加熱装置102は、積層コア4dを加熱することにより予熱するように構成されている。具体的には、予熱用加熱装置102は、治具20に配置された状態の積層コア4dを、第1温度T1(たとえば50℃)以上第2温度T2(たとえば120℃)未満で加熱することにより予熱するように構成されている。なお、第1温度T1とは、樹脂材6が溶融する温度(溶融が開始される温度)である。また、第2温度T2とは、樹脂材6が硬化(熱硬化)する温度(硬化(熱硬化)が開始される温度)であるとともに第1温度T1よりも大きい温度である。
樹脂注入装置103は、磁石収容部10に樹脂材6を注入するように構成されている。具体的には、樹脂注入装置103は、治具20に積層コア4dが配置された状態で、かつ、磁石収容部10に永久磁石5が挿入された状態で、磁石収容部10に、第1温度T1以上で溶融した樹脂材6を注入するように構成されている。なお、樹脂注入装置103の詳細な構成については、後述する。
硬化用加熱装置104は、積層コア4dを加熱することによって、磁石収容部10内の樹脂材6を硬化させるように構成されている。具体的には、硬化用加熱装置104は、治具20に配置された状態で、かつ、磁石収容部10に樹脂材6が注入された状態の積層コア4dを、樹脂材6が硬化する温度である第2温度T2以上で加熱することによって、磁石収容部10内の樹脂材6を硬化させるように構成されている。
[樹脂注入装置の具体的な構成]
次に、図6~図9を参照して、樹脂注入装置103の具体的な構成について説明する。
図6に示すように、樹脂注入装置103は、樹脂注入部103aを含む。樹脂注入部103aは、可塑化ユニット110と、可塑化ユニット110から樹脂材6が供給される金型部120とを有している。
可塑化ユニット110は、可塑化シリンダ111を含む。可塑化シリンダ111は、筒形状を有する。また、可塑化シリンダ111の根元側には、樹脂材投入口112が設けられている。そして、固形状(フレーク状、ペレット状、または、粉状など)の樹脂材6が、樹脂材投入口112から可塑化シリンダ111の内部に投入される。
また、可塑化シリンダ111の外側には、加熱装置113が設けられている。加熱装置113は、可塑化シリンダ111の内部に投入された樹脂材6の温度が第1温度T1となるように可塑化シリンダ111を加熱する。なお、樹脂材6は、後述するスクリュー部114において回転することによっても加熱される。これにより、可塑化シリンダ111の内部に投入された樹脂材6が溶融するとともに、溶融した状態が維持される。
また、可塑化シリンダ111の内部には、スクリュー部114が設けられている。スクリュー部114は、図示しない駆動装置によって回転される。また、スクリュー部114は、筒形状の可塑化シリンダ111の中心軸線を回転軸線として回転する。そして、スクリュー部114が回転されることにより、溶融した樹脂が、可塑化シリンダ111の先端側に移送される。
また、可塑化シリンダ111の先端側には、マニホールド部115が設けられている。樹脂注入装置103は、マニホールド部115に設けられるシリンダ部116aを備える。シリンダ部116aは、プランジャ部116に設けられている。シリンダ部116aには、可塑化シリンダ111において溶融された樹脂材6が充填される。また、可塑化シリンダ111の内部とシリンダ部116aとは、マニホールド部115に設けられた樹脂注入装置103内のマニホールド内流路115aによって接続されている。
また、樹脂注入装置103は、シリンダ部116a内を移動するピストン部116bを備える。ピストン部116bは、プランジャ部116に設けられている。ピストン部116bが後退(マニホールド内流路115aとは反対側に移動)されることにより、マニホールド内流路115aを流通する溶融された樹脂材6がシリンダ部116a内に充填される。また、ピストン部116bが前進(マニホールド内流路115a側に移動)されることにより、シリンダ部116aに充填された樹脂材6がマニホールド内流路115aに射出される。
また、樹脂注入装置103は、マニホールド内流路115aの先端側に設けられる射出ノズル117を備える。射出ノズル117は、ピストン部116bが前進することによりシリンダ部116aから(マニホールド内流路115aに)射出された樹脂材6を、積層コア4dの磁石収容部10に注入するように構成されている。なお、マニホールド部115も可塑化シリンダ111と同様に、マニホールド部115の内部に収容された樹脂材6の温度が第1温度T1となるように加熱されている。
また、マニホールド内流路115aには、射出バルブピン118が設けられている。射出バルブピン118は、射出ノズル117から樹脂材6が押し出される時には開状態となる。一方、射出バルブピン118は、射出ノズル117から樹脂材6が押し出されない時には閉状態となる。また、図8に示すように、射出バルブピン118が開状態の場合、可塑化シリンダ111(図6参照)とシリンダ部116aとの間のマニホールド内流路115aは、射出バルブピン118に設けられている膨張部118aにより塞がれている。また、図9に示すように、射出バルブピン118が閉状態の場合、射出バルブピン118が開の状態(図8の状態)から下方(Z2方向側)に移動することにより、膨張部118aによるマニホールド内流路115aの遮断が解放される。なお、膨張部118aは、射出バルブピン118のうちの他の部分に比べて外径が大きい部分である。なお、図6は、射出バルブピン118および後述する金型バルブ123が閉状態である場合の図である。
また、図8に示すように、樹脂注入装置103は、圧力センサ119aと、サーボモータ119bと、を備える。圧力センサ119aは、シリンダ部116aの近傍に設けられている。圧力センサ119aは、磁石収容部10内(シリンダ部116a内)の樹脂材6の圧力を検出するために設けられている。なお、磁石収容部10内の樹脂材6の圧力とは、磁石収容部10の上端部近傍の樹脂材6の圧力のことを意味する。また、図6および図7では、簡略化のため、圧力センサ119aおよびサーボモータ119bの図示は省略している。なお、圧力センサ119aは、特許請求の範囲の「センサ部」の一例である。
また、圧力センサ119aは、シリンダ部116aに設けられる開口部116cの近傍に設けられている。具体的には、圧力センサ119aは、シリンダ部116aの開口部116cに対して下方側(Z2方向側)に設けられている。なお、樹脂材6は、開口部116cを介してシリンダ部116aに流入するとともに、開口部116cを介してシリンダ部116aから流出する。
また、図6に示すように、金型部120の内部には、樹脂材6が流動する流路121が設けられている。流路121は、積層コア4d側に向かって、複数の金型内流路121aに分岐されている。そして、流路121の積層コア4d側の金型ノズル内流路121bは、積層コア4dの磁石収容部10に対応する位置に設けられている。
また、金型部120には、金型ノズル122が設けられている。金型ノズル122は、流路121(金型ノズル内流路121b)の先端側に設けられている。そして、流路121内に収容された樹脂材6が、ピストン部116bによって押し出されることにより、金型部120の金型ノズル122から、積層コア4dの磁石収容部10に注入される。
また、図6に示すように、金型ノズル内流路121bには、金型バルブ123が設けられている。金型バルブ123は、樹脂材6が射出される金型ノズル122の射出口122b(図12参照)を遮断するように構成されている。金型バルブ123は、金型バルブピン123aを含む。金型バルブピン123aは、上下方向に移動可能に構成されている。金型バルブ123が開いている(図12参照)状態から、金型バルブピン123aが下方(Z2方向側)に移動することにより、金型ノズル122の射出口122bが金型バルブピン123aにより塞がれる(図14参照)。これにより、金型バルブ123が閉状態となる。なお、金型バルブ123は、特許請求の範囲の「遮断部」の一例である。
また、金型部120の外側には、金型温調装置124が設けられている。金型温調装置124は、金型部120の内部に収容された樹脂材6の温度が第1温度T1となるように金型部120を加熱する。
(ロータの製造方法)
次に、図10~図14を参照して、ロータコア4の製造方法について説明する。
まず、図10に示すように、ステップS1において、積層コア4dを準備する工程が行われる。具体的には、複数の電磁鋼板4a(図3参照)が積層されることによって、積層コア4dが形成される。この際、プレス加工によって、電磁鋼板4aの積層方向に延びる磁石収容部10が積層コア4dに形成される。
次に、ステップS2において、組立装置101において、治具20に積層コア4dを配置する工程が行われる。具体的には、まず、下方プレート24に積層コア4dを配置(載置)する工程が行われる。次に、下方プレート24に積層コア4dが配置された状態で、磁石収容部10に永久磁石5を配置する工程が行われる。そして、下方プレート24と上方プレート21とがクランプ部材27によりクランプ(連結)されるとともに、押圧プレート23により積層コア4dの上端面4bが押圧される。なお、治具20に積層コア4dを配置する工程(ステップS2の工程)は、断熱部材25が設けられた治具20に積層コア4dを配置する工程である。
次に、ステップS3において、積層コア4dを予熱する工程が行われる。具体的には、予熱用加熱装置102において、治具20に配置された状態の積層コア4dを、第1温度T1以上第2温度T2未満で加熱することにより予熱する工程が行われる。
次に、ステップS4において、樹脂材6を可塑化シリンダ111において溶融させる工程が行われる。具体的には、可塑化シリンダ111の外側に設けられた加熱装置113(およびスクリュー部114による回転)により、可塑化シリンダ111の内部に投入された樹脂材6の温度が第1温度T1となるように可塑化シリンダ111が加熱される。これにより、可塑化シリンダ111の内部に投入された樹脂材6が溶融するとともに、溶融した状態が維持される。なお、この工程では、常温において固形状態の樹脂材6が第1温度T1で溶融される。
次に、ステップS5において、シリンダ部116aに(ステップS4において)溶融された樹脂材6を充填する充填工程が行われる。具体的には、シリンダ部116a内を移動するピストン部116bを後退させることにより、溶融した(可塑化シリンダ111において溶融された)樹脂材6がシリンダ部116aに充填される。また、ピストン部116bが後退する距離は予め設定されているので、シリンダ部116aには常に一定量(一定の体積)の樹脂材6が充填(計量)される。
次に、ステップS6において、樹脂注入装置103の金型ノズル122により、永久磁石5が配置された磁石収容部10に樹脂材6を注入する注入工程が行われる。具体的には、治具20による積層コア4dの押圧が維持された状態で、かつ、磁石収容部10に永久磁石5が挿入された状態で、樹脂注入装置103の金型ノズル122により、磁石収容部10に、樹脂材6の温度が、第1温度T1以上でかつ第2温度T2未満の状態で、溶融した樹脂材6を注入する。
詳細には、上記注入工程(ステップS6)では、上記充填工程(ステップS5)においてシリンダ部116aに充填された樹脂材6が、ピストン部116bを前進させる(図8のX1方向側に移動させる)ことによりシリンダ部116aから(マニホールド内流路115aに)射出される。そして、シリンダ部116aから射出された樹脂材6が、金型ノズル122により、永久磁石5が配置された磁石収容部10に注入される。
図6に示すように、樹脂注入部103aの金型部120は、固定された状態である。そして、可塑化ユニット110が下方(Z2方向側)に移動されることにより、固定された状態の金型部120の孔部120aに、可塑化ユニット110の射出ノズル117が接続(図7参照)される。また、固定された状態の金型部120に対して、治具20に押圧された状態の積層コア4dが上方(Z1方向側)に移動される。そして、上方プレート21の樹脂注入孔21bに金型部120の金型ノズル122が挿入されるとともに、押圧プレート23の樹脂注入孔23bに金型部120の金型ノズル122の先端122aが挿入(図7参照)される。すなわち、本実施形態では、上記注入工程では、上方から、磁石収容部10に樹脂材6が注入される。なお、図3、図6、および図7の樹脂注入孔23bは、簡略化のため概略的に図示したものである。
そして、射出バルブピン118および金型バルブ123が開状態(図7参照)にされた後、ピストン部116bを前進させることによってシリンダ部116aから樹脂材6が押し出されることにより、マニホールド内流路115aおよび流路121を介して磁石収容部10に樹脂材6が注入される。
また、上記注入工程(ステップS6)は、樹脂材6の圧力が所定の設定圧力値P1に上昇するまで樹脂材6を加圧しながら、樹脂材6を磁石収容部10に注入する工程である。すなわち、上記注入工程(ステップS6)では、磁石収容部10内の樹脂材6の圧力が所定の設定圧力値P1に上昇するまで樹脂材6が加圧されながら、樹脂材6が磁石収容部10に注入される。具体的には、図14の時間T1までの期間において、樹脂材6が加圧されながら磁石収容部10に注入される。
詳細には、磁石収容部10に樹脂材6が充填されることにより、樹脂材6にかかる圧力が上昇して所定の設定圧力値P1(すなわち8MPa)に到達した後、上昇した圧力が所定時間(図14の時間T1から時間T2:たとえば5秒間)維持される。そして、樹脂材6にかかる圧力が所定の設定圧力値P1に維持された後、樹脂材6の注入が停止される。なお、樹脂材6は、樹脂注入部103a(シリンダ部116a)に収容された樹脂材6のうち、必要量のみ、磁石収容部10に直接注入される。
また、図11に示すように、上記注入工程は、磁石収容部10の内側面10aと永久磁石5との隙間Cに向けて、金型ノズル122により樹脂材6を磁石収容部10に注入する工程である。具体的には、上方から見て、金型ノズル122の先端122aと上記隙間Cとがオーバラップした状態で、金型ノズル122による樹脂材6の注入が行われる。
また、図12に示すように、上記注入工程は、隙間Cの上端部Ctに金型ノズル122の先端122aを近接させた状態で、金型ノズル122により樹脂材6を磁石収容部10に注入する工程である。具体的には、金型ノズル122は、押圧プレート23に接触した状態で、かつ、金型ノズル122の先端122aを押圧プレート23の樹脂注入孔23bに挿入した状態で、樹脂材6の注入を行う。この際、金型ノズル122と隙間Cの上端部Ctとの間は、距離D(たとえば4mm)だけ離間している。距離Dは、たとえば押圧プレート23の厚みtよりも小さい。なお、「近接」とは、互いに接触している状態だけでなく、互いに僅かに離間している状態をも意味する。
また、上記注入工程では、断熱部材25が設けられた治具20に積層コア4dが配置された状態で、磁石収容部10に溶融した樹脂材6が注入される。すなわち、樹脂材6の熱が、治具20の位置決めプレート26に伝熱するのが、断熱部材25により抑制されている。
次に、ステップS7(図10参照)において、金型ノズル122を積層コア4dに対して相対的に退避させる退避工程が行われる。
ここで、本実施形態では、上記退避工程は、磁石収容部10内の樹脂材6が溶融されたままの状態で、金型ノズル122を積層コア4dに対して相対的に退避させる工程である。言い換えれば、磁石収容部10内の樹脂材6を硬化させる前に、金型ノズル122の相対的な退避が行われる。
また、この退避工程では、樹脂注入部103a内に収容された樹脂材6の溶融状態を維持した状態で、樹脂注入装置103の樹脂注入部103a(金型ノズル122)を、治具20によって押圧されている状態の積層コア4dに対して相対的に退避させる。つまり、樹脂注入部103a内に収容された樹脂材6の温度が第1温度T1となるように加熱された状態のまま、樹脂注入部103aを積層コア4dに対して相対的に退避させる。
また、本実施形態では、図14に示すように、上記退避工程は、磁石収容部10内の樹脂材6の圧力を、所定の設定圧力値P1から減圧した後に、金型ノズル122を積層コア4dに対して相対的に退避させる工程である。具体的には、磁石収容部10内の樹脂材6の圧力は、上述したように所定の設定圧力値P1まで上昇した状態が時間T1から(時間T1よりも後の)時間T2までの間(約5秒間)維持され、その後、減圧される。具体的には、磁石収容部10内の樹脂材6の圧力は、所定の設定圧力値P1(約8MPa)から減圧されることによって、時間T2よりも後の時間T3において所定の設定減圧値P2(たとえば2MPa)になる。なお、所定の設定減圧値P2が2MPa程度の場合、磁石収容部10に注入された樹脂材6は、樹脂材6の粘度が大きいので磁石収容部10から噴き出すことはない。
また、上記退避工程は、ピストン部116bを後退させることによって、磁石収容部10内の樹脂材6の圧力を所定の設定圧力値P1から減圧した後に、金型ノズル122を積層コア4dに対して相対的に退避させる工程である。具体的には、磁石収容部10に注入された樹脂材6(および金型ノズル122等に残留している樹脂材6)が、ピストン部116bの後退に起因してシリンダ部116aに吸い込まれない(逆流しない)程度の比較的緩やかな速度でピストン部116bを後退させる。なお、ピストン部116bは、時間T2から時間T3までの間、後退される。
また、上記退避工程は、ピストン部116bを後退させることによって磁石収容部10内の樹脂材6の圧力が所定の設定圧力値P1から減圧された後にピストン部116bの後退が停止された状態で、金型ノズル122を積層コア4dに対して相対的に退避させる工程である。すなわち、ピストン部116bの後退が停止されることにより磁石収容部10内の樹脂材6の圧力の減圧が完了した後に(時間T3の後に)、金型ノズル122が積層コア4dに対して相対的に退避される。また、ピストン部116bの後退が停止された後に金型ノズル122を積層コア4dに対して相対的に退避させることによって、ピストン部116bの駆動と金型ノズル122の退避(移動)とが別々に行われる。
また、上記退避工程は、圧力センサ119aの検出値が、所定の設定圧力値P1から所定の設定減圧値P2に低下したことに基づいて、金型ノズル122を積層コア4dに対して相対的に退避させる工程である。具体的には、サーボモータ119b(図8参照)は、樹脂材6にかかる圧力が所定の設定減圧値P2まで低下したことを圧力センサ119aが検出したことに基づいて、ピストン部116bの後退を停止させる制御を行う。なお、圧力センサ119aは、上記注入工程において樹脂材6にかかる圧力が所定の設定圧力値P1に上昇したことを検出する際にも用いられる。すなわち、金型ノズル122を積層コア4dに対して相対的に退避させる工程では、上記注入工程において用いられる圧力センサ119aを流用して、磁石収容部10内の樹脂材6の圧力が制御されている。
また、上記退避工程は、磁石収容部10内の樹脂材6の圧力が所定の設定圧力値P1から(所定の設定減圧値P2に)減圧された後に、金型バルブ123により金型ノズル122からの樹脂材6の射出を遮断するとともに、樹脂材6の射出が金型バルブ123により遮断された状態(図13参照)で、金型ノズル122を積層コア4dに対して相対的に退避させる工程である。具体的には、図14に示すように、減圧が完了する時間T3よりも後の時間T4において、金型バルブ123によって金型ノズル122の射出口122bが遮断される。すなわち、時間T3において樹脂材6の圧力の減圧が完了した後、所定の時間(時間T3から時間T4までの間の時間)樹脂材6の圧力が所定の設定減圧値P2に維持された後に、金型バルブ123によって金型ノズル122の射出口122bが遮断される。
また、金型バルブ123によって金型ノズル122の射出口122bが遮断されることによって、金型ノズル122の射出口122bに残留していた樹脂材6が、金型バルブ123により射出口122bの外部に押し出されるとともに積層コア4dの磁石収容部10に射出される。その結果、図14に示すように、磁石収容部10内の樹脂材6の圧力が、所定の設定減圧値P2から圧力P3(たとえば、4MPa~6MPa)まで上昇する。ここで、圧力P3は、所定の設定圧力値P1よりも小さい。また、圧力P3は、積層コア4dの磁石収容部10の許容圧力値P4(たとえば10MPa)よりも小さい。ここで、許容圧力値P4とは、磁石収容部10の変形が生じない圧力の上限値である。すなわち、射出口122bの遮断に起因して磁石収容部10内の樹脂材6の圧力の上昇した場合にも、金型バルブ123を閉じる前に減圧を行うことによって、積層コア4dが破損するのを防止することが可能である。なお、所定の設定圧力値P1は、許容圧力値P4よりも小さい。
また、上記退避工程は、磁石収容部10内の樹脂材6の圧力を減圧した後に金型バルブ123により金型ノズル122の射出口122bを遮断するとともに、金型バルブ123により金型ノズル122の射出口122bが遮断された状態(すなわち、金型バルブ123が閉状態)で、金型ノズル122を隙間Cに対して相対的に退避させる工程である。具体的には、金型バルブ123により金型ノズル122の射出口122bが遮断された状態で、金型ノズル122の先端122aが、隙間Cの上端部Ctに対して相対的に退避される。この際、磁石収容部10内の樹脂材6の圧力が圧力P3に維持された状態で、金型ノズル122が相対的に退避される。なお、金型ノズル122は、時間T4よりも後の時間T5(図14参照)において相対的な退避が開始される。
また、上記退避工程では、金型ノズル122(樹脂注入部103a)に対して、積層コア4dを下方(Z2方向側)に離間させることにより、金型ノズル122(樹脂注入部103a)を積層コア4dに対して相対的に退避させる。つまり、金型ノズル122(樹脂注入部103a)を移動させずに、金型ノズル122(樹脂注入部103a)に対して、積層コア4dを下方に離間させることにより、金型ノズル122(樹脂注入部103a)を積層コア4dに対して相対的に離間させる。
次に、図10に示すように、ステップS8において、上記退避工程の後、磁石収容部10に樹脂材6が注入された状態の積層コア4dを、樹脂材6が硬化する第2温度T2以上で加熱することによって、磁石収容部10内の樹脂材6が硬化される。磁石収容部10内の樹脂材6を硬化させる工程では、樹脂注入装置103とは別個に設けられた硬化用加熱装置104において、磁石収容部10内の樹脂材6が硬化される。
[本実施形態の効果]
本実施形態では、以下のような効果を得ることができる。
本実施形態では、上記のように、注入ノズル(122)を積層コア(4d)に対して相対的に退避させる退避工程は、磁石収容部(10)内の樹脂材(6)の圧力を、所定の設定圧力値(P1)から減圧した後に、注入ノズル(122)を積層コア(4d)に対して相対的に退避させる工程である。これにより、注入ノズル(122)を積層コア(4d)に対して相対的に退避させる際の磁石収容部(10)内の樹脂材(6)の圧力が所定の設定圧力値(P1)から減圧されているので、永久磁石(5)が配置された磁石収容部(10)に樹脂材(6)を注入する場合に、磁石収容部(10)に注入された樹脂材(6)が磁石収容部(10)から漏れる(噴き出す)のを防止することができる。
また、本実施形態では、上記のように、ロータコア(4)の製造方法は、上記注入工程の前に行われ、樹脂注入装置(103)に含まれるシリンダ部(116a)に、樹脂材(6)を充填する工程を備える。また、上記注入工程は、シリンダ部(116a)に充填された樹脂材(6)を、樹脂注入装置(103)に含まれるピストン部(116b)を前進させることによりシリンダ部(116a)から射出するとともに、シリンダ部(116a)から射出された樹脂材(6)を、注入ノズル(122)により、永久磁石(5)が配置された磁石収容部(10)に注入する工程である。そして、上記退避工程は、ピストン部(116b)を後退させることによって、磁石収容部(10)内の樹脂材(6)の圧力を所定の設定圧力値(P1)から減圧した後に、注入ノズル(122)を積層コア(4d)に対して相対的に退避させる工程である。このように構成すれば、樹脂材(6)をシリンダ部(116a)から射出する際に用いられるピストン部(116b)を後退させることによって磁石収容部(10)内の樹脂材(6)の圧力を減圧させることができるので、ピストン部(116b)とは別個の機構により減圧させる場合と異なり、樹脂注入装置(103)の装置構成が複雑化するのを防止することができる。
また、本実施形態では、上記のように、上記退避工程は、ピストン部(116b)を後退させることによって磁石収容部(10)内の樹脂材(6)の圧力が所定の設定圧力値(P1)から減圧された後にピストン部(116b)の後退が停止された状態で、注入ノズル(122)を積層コア(4d)に対して相対的に退避させる工程である。このように構成すれば、ピストン部(116b)の移動と注入ノズル(122)の退避とを別々に行うことができるので、樹脂注入装置(103)の動作制御が複雑化するのを防止することができる。
また、本実施形態では、上記のように、上記退避工程は、磁石収容部(10)内の樹脂材(6)の圧力が所定の設定圧力値(P1)から減圧された後に、樹脂材(6)が射出される注入ノズル(122)の射出口(122b)を遮断する遮断部(123)により注入ノズル(122)からの樹脂材(6)の射出を遮断するとともに、樹脂材(6)の射出が遮断部(123)により遮断された状態で、注入ノズル(122)を積層コア(4d)に対して相対的に退避させる工程である。ここで、注入ノズル(122)の射出口(122b)を遮断部(123)により遮断する際、注入ノズル(122)の射出口(122b)に残留する樹脂材(6)が遮断部(123)に押し出されるとともに磁石収容部(10)内に射出されるため、磁石収容部(10)内の樹脂材(6)の圧力は上昇する。したがって、磁石収容部(10)内の樹脂材(6)の圧力が所定の設定圧力値(P1)から減圧された後に遮断部(123)による遮断が行われることによって、遮断部(123)による遮断が行われた後の磁石収容部(10)内の樹脂材(6)の圧力が過度に大きくなるのを防止することができる。その結果、磁石収容部(10)内の樹脂材(6)が、積層コア(4d)の電磁鋼板(4a)同士の間から漏れるのを防止することができる。また、磁石収容部(10)内の樹脂材(6)の圧力が過度に大きくなるのを防止することによって、磁石収容部(10)が変形するのを防止することができる。
また、本実施形態では、上記のように、上記退避工程は、遮断部(123)により注入ノズル(122)の射出口(122b)が遮断される際に、注入ノズル(122)の射出口(122b)に残留する樹脂材(6)が遮断部(123)により押し出されることに起因して加圧された後の磁石収容部(10)内の樹脂材(6)の圧力が、所定の設定圧力値(P1)以下になるように、磁石収容部(10)内の樹脂材(6)の圧力を減圧した後に、遮断部(123)により注入ノズル(122)の射出口(122b)を遮断するとともに注入ノズル(122)を積層コア(4d)に対して相対的に退避させる工程である。このように構成すれば、遮断部(123)による遮断が行われた後の磁石収容部(10)内の樹脂材(6)の圧力が所定の設定圧力値(P1)よりも大きくなる場合に比べて、磁石収容部(10)内の樹脂材(6)が積層コア(4d)の電磁鋼板(4a)同士の間から漏れるのをより確実に防止することができる。また、磁石収容部(10)が樹脂材(6)の圧力に起因して変形するのをより確実に防止することができる。
また、本実施形態では、上記のように、上記注入工程は、磁石収容部(10)の内側面(10a)と永久磁石(5)との隙間(C)に向けて、注入ノズル(122)により樹脂材(6)を磁石収容部(10)に注入する工程である。また、上記退避工程は、磁石収容部(10)内の樹脂材(6)の圧力を減圧した後に遮断部(123)により注入ノズル(122)の射出口(122b)を遮断するとともに、遮断部(123)により注入ノズル(122)の射出口(122b)が遮断された状態で、注入ノズル(122)を上記隙間(C)に対して相対的に退避させる工程である。ここで、磁石収容部(10)の内側面(10a)と永久磁石(5)との隙間(C)にむけて樹脂材(6)の注入を行うことによって、磁石収容部(10)への樹脂材(6)の注入を容易化することができる。その一方、遮断部(123)によって注入ノズル(122)の射出口(122b)が遮断された際に注入ノズル(122)内から押し出された樹脂材(6)が磁石収容部(10)内に入りやすくなる。このため、磁石収容部(10)内の樹脂材(6)の圧力が上昇しやすくなる。したがって、磁石収容部(10)内の樹脂材(6)の圧力を減圧した後に遮断部(123)により注入ノズル(122)の射出口(122b)を遮断することは、磁石収容部(10)内の樹脂材(6)の圧力が大きくなることに起因して樹脂材(6)が磁石収容部(10)から漏れるのを防止する(磁石収容部(10)が変形するのを防止する)のに有効である。
また、本実施形態では、上記のように、上記注入工程は、磁石収容部(10)の内側面(10a)と永久磁石(5)との隙間(C)の上端部(Ct)に注入ノズル(122)の先端(122a)を近接させた状態で、注入ノズル(122)により樹脂材(6)を磁石収容部(10)に注入する工程である。また、上記退避工程は、磁石収容部(10)内の樹脂材(6)の圧力を減圧した後に遮断部(123)により注入ノズル(122)の射出口(122b)を遮断するとともに、遮断部(123)により注入ノズル(122)の射出口(122b)が遮断された状態で、注入ノズル(122)の先端(122a)を隙間(C)の上端部(Ct)に対して相対的に退避させる工程である。ここで、磁石収容部(10)の内側面(10a)と永久磁石(5)との隙間(C)の上端部(Ct)に注入ノズル(122)の先端(122a)を近接させた状態で樹脂材(6)の注入を行うことによって、磁石収容部(10)への樹脂材(6)の注入をより一層容易化することができる。その一方、遮断部(123)によって注入ノズル(122)の射出口(122b)が遮断された際に注入ノズル(122)内から押し出された樹脂材(6)が磁石収容部(10)内により一層入りやすくなる。このため、磁石収容部(10)内の樹脂材(6)の圧力がより一層上昇しやすくなる。したがって、磁石収容部(10)内の樹脂材(6)の圧力を減圧した後に遮断部(123)により注入ノズル(122)の射出口(122b)を遮断することは、磁石収容部(10)内の樹脂材(6)の圧力が大きくなることに起因して樹脂材(6)が磁石収容部(10)から漏れるのを防止する(磁石収容部(10)が変形するのを防止する)のに特に有効である。
また、本実施形態では、上記のように、上記退避工程は、樹脂注入装置(103)に設けられ、磁石収容部(10)内の樹脂材(6)の圧力を検出するためのセンサ部(119a)の検出値が、所定の設定圧力値(P1)から所定の設定減圧値(P2)に低下したことに基づいて、注入ノズル(122)を積層コア(4d)に対して相対的に退避させる工程である。このように構成すれば、センサ部(119a)の検出値に基づいて上記退避工程を開始することができるので、磁石収容部(10)内の樹脂材(6)の圧力が確実に所定の設定減圧値(P2)に低下してから上記退避工程を開始することができる。
また、本実施形態では、上記のように、上記注入工程は、磁石収容部(10)に、第1温度(T1)において溶融するとともに第1温度(T1)よりも高い第2温度(T2)において硬化する樹脂材(6)の温度が、第1温度(T1)以上でかつ第2温度(T2)未満の状態で、溶融した樹脂材(6)を注入する工程である。そして、上記退避工程は、磁石収容部(10)内の樹脂材(6)が溶融されたままの状態で、注入ノズル(122)を積層コア(4d)に対して相対的に退避させる工程である。ここで、磁石収容部(10)内の樹脂材(6)が溶融された状態で上記退避工程が行われるため、磁石収容部(10)内の樹脂材(6)が硬化されている場合に比べて、注入ノズル(122)を積層コア(4d)に対して相対的に退避させた際に、磁石収容部(10)内の樹脂材(6)が漏れる(噴き出す)可能性が高い。したがって、磁石収容部(10)内の樹脂材(6)の圧力を減圧した後に注入ノズル(122)を積層コア(4d)に対して相対的に退避させることは、磁石収容部(10)内の樹脂材(6)が溶融された状態で上記退避工程が行われる場合に、特に有効である。
[変形例]
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更(変形例)が含まれる。
たとえば、上記実施形態では、ピストン部116bを後退させることによって、磁石収容部10内の樹脂材6の圧力を減圧させる例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、磁石収容部10内の樹脂材6の温度を低下させることによって、熱収縮により樹脂材6の圧力を低下させてもよい。
また、上記実施形態では、ピストン部116bを後退させるのを停止した後に金型ノズル122(注入ノズル)を相対的に退避させる例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、磁石収容部10内の樹脂材6の圧力が所定の設定減圧値P2まで減圧されたことを検知した後であれば、ピストン部116bを後退させている途中で金型バルブ123(遮断部)による遮断および金型ノズル122の相対的な退避が行われてもよい。
また、上記実施形態では、金型バルブ123(遮断部)により金型ノズル122(注入ノズル)の射出口122bが遮断された後の樹脂材6の圧力P3が、所定の設定圧力値P1よりも小さい例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、圧力P3が、許容圧力値P4以下であれば、所定の設定圧力値P1以上であってもよい。
また、上記実施形態では、磁石収容部10の内側面10aと永久磁石5との隙間Cの上端部Ctと、金型ノズル122(注入ノズル)の先端122aとが離間した状態で、金型ノズル122による樹脂材6の注入が行われる例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、隙間Cの上端部Ctと金型ノズル122の先端122aとが接触した状態で、金型ノズル122による樹脂材6の注入が行われてもよい。
また、上記実施形態では、圧力センサ119a(センサ部)によって樹脂材6の圧力を検出する例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、樹脂材6の流量を検知する流量計の検出値に基づいて、間接的に樹脂材6の圧力を検出してもよい。
また、上記実施形態では、樹脂注入装置103の可塑化シリンダ111において樹脂材6が溶融される例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、樹脂注入装置103とは異なる装置等において溶融された樹脂材6が、樹脂注入装置103に供給されてもよい。
また、上記実施形態では、樹脂材6が熱硬化性樹脂である例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、樹脂材6が熱可塑性樹脂であってもよい。