JP7393814B2 - 吊り足場の構築方法 - Google Patents

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Description

本発明は、既設橋梁の上部構造のメンテナンス作業を行う吊り足場を構築する吊り足場の構築方法、及び吊り足場の撤去方法に関する。
橋梁は、河川や下方の道路などを跨いで建造されているため、橋梁の上部構造の防錆塗装の塗り直しやその点検作業などのメンテナンス作業を行う場合、足場を地上から構築することができない。このため、橋梁の上部構造のメンテナンス作業用の足場としては、鋼桁に滑車を取り付け、その滑車で鋼桁上を走行する吊り足場を設置することが行われている。
例えば、特許文献1には、橋梁の主桁1に沿って予めレール25が取り付けられ、そのレール25上を移動自在なローラ13を有する治具14を介しておやごパイプ15が吊り下げられた吊足場20が開示されている(特許文献1の特許請求の範囲の請求項1、明細書の段落[0009]~[0011]、図面の図1~図3等参照)。
また、特許文献2には、駆動輪7及び従動輪6を備えた移動支持装置3で橋梁の鋼桁の下フランジ上を走行する足場装置1が開示されている(特許文献2の特許請求の範囲の請求項1、明細書の段落[0016]~[0030]、図面の図1,図2等参照)。
しかし、特許文献1に記載の吊足場20や特許文献2に記載の足場装置1は、橋梁の鋼桁の下フランジ上を走行するものであり、鋼桁の防錆塗装の塗り替えなどの鋼桁の補修・修繕作業には適用することができないという問題があった。
また、鋼桁上を走行しないものとしては、特許文献3には、橋梁の高欄を跨いで橋梁の地覆部上を走行する移動式吊足場が開示されている(特許文献3の明細書の段落[0012]~[0027]、図面の図1~図7等参照)。
そして、特許文献4には、橋梁の下面側で橋梁を横断する足場ステージ部材を設け、橋梁の路面に対して接地するための支持脚部材7を取り付ける支持部8を上部に備え、且つ、下部に足場ステージ部材を連結保持可能なステージホルダー部10を備えた吊足場本体枠6を設けてある橋梁用吊足場が開示されている(特許文献4の明細書の段落[0029]~[0040]、図面の図2,図3等参照)。
しかし、特許文献3に記載の移動吊足場や特許文献4に記載の橋梁用吊足場は、橋梁専用の一体的な大規模な足場であり、そもそも使用しない場合の保管や設置場所までの搬送や荷降ろしに大型の搬送車両やクレーンなどの大型の揚重装置が必要であり、コストが嵩むという問題がある。その上、特許文献3に記載の移動吊足場や特許文献4に記載の橋梁用吊足場の設置自体は、高所作業で極めて危険であり、且つ、橋梁下に道路や鉄道が存在する場合、それらの通行止めを行わないと設置できないという問題がある。
さらに、特許文献5には、橋梁の高欄に第1吊り金具Maを設置し、この第1吊り金具Ma第1足場吊架部(盛替用走行レール)Tを吊り下げ、この第1足場吊架部(盛替用走行レール)T上を走行する吊り足場が開示されている(特許文献5の明細書の段落[0015]~[0036]、図面の図1~図8等参照)。
特許文献5に記載の吊り足場は、有人の高所作業とならずドローンを用いて無足場で設置が可能とされているものの、資材やドローンの落下の危険があり吊り足場の設置作業が極めて危険であることは変わりなく、橋梁下に道路や鉄道が存在する場合、それらの通行止めを行わないと設置できないという問題を解消することはできていなかった。
また、第1足場吊架部(盛替用走行レール)Tが不安定であり、吹き晒しとなりがちな橋梁において風圧で吊り足場が揺れて作業できないという問題や、吊り足場に乗って作業している作業員だけでは吊り足場を移動させることが困難であるという問題もあった。
なお、本願の出願人は、特許文献6にスライド枠を用いた吊り足場の組み立て方法を提案した。特許文献6に記載のスライド枠を用いた吊り足場の組み立て方法は、高所構造物の側面に初期足場を設置する準備工程と、前記初期足場内にスライド枠を設置する搭載工程と、前記初期足場から前記スライド枠の枠体部を出し入れしブラケットを前記高所構造物の側面に固定するとともに、前記ブラケット及び初期足場に足場材を連結し、延設足場を組み立て、次いで連結された延設足場にさらに前記枠体を出し入れして順次延設足場を連結伸長させる延設工程と、からなり、高所構造物の側面に吊り足場を前記初期足場から延設するものである。
特許文献6に記載のスライド枠を用いた吊り足場の組み立て方法は、確かに安全に電車が通行してる日中に足場の組み立て撤去を行うことができる。しかし、特許文献6に記載のスライド枠を用いた吊り足場の組み立て方法は、橋梁の高欄や桁側面のメンテナンス作業には適用できるものの、橋梁の上部構造の下方に架け渡すことができず、橋梁の上部構造の下面のメンテナンス作業には適用できないという問題があった。
特開平5-295712号公報 特開2007-51416号公報 特開2005-232773号公報 特開2017-115569号公報 特許第6216947号公報 特開2017-115569号公報
そこで、本発明は、前述した問題に鑑みて案出されたものであり、その目的とするところは、吊り足場の設置作業が安全に行えるとともに、風による悪影響を受けることなく安全にメンテナンス作業が可能である吊り足場の構築方法及び吊り足場の撤去方法を提供することにある。
請求項1に係る吊り足場の構築方法は、橋梁の上部構造のメンテナンス作業を行う吊り足場の構築方法であって、前記橋梁の並設された2つの下部構造に隣接して一対の作業構台を組み立てる作業構台組立工程と、前記橋梁の壁高欄の内側に複数の吊下げ金具を固定するとともに、固定ボルトで壁高欄の外面との間隔を調整することで前記複数の吊下げ金具からハンガーレールを吊り下げるハンガーレール吊下げ工程と、記作業構台組立工程で組み立てた前記一対の作業構台の一方の作業構台の上で吊り足場の1スパン分を組み立てる吊り足場組立工程を行い、次に、組み立てた吊り足場の前記1スパン分を送り出す吊り足場送出工程を行い、その空いた前記一方の作業構台上のスペースで新たな吊り足場の1スパン分を組み立てる吊り足場組立工程を行い、順次、吊り足場組立工程と吊り足場送出工程を最初に組み立てた吊り足場の1スパン分が他方の作業構台に到達するまで繰り返し、メンテナンス作業を行う前記橋梁の一径間分の上部構造の下面全域に亘る吊り足場を構築することを特徴とする。
請求項に係る吊り足場の構築方法は、請求項に係る吊り足場の構築方法において、前記吊り足場組立工程では、前記ハンガーレールに滑車を装着して、前記滑車に仮設用の梁枠を吊り下げて吊り足場の1スパン分を組み立てることを特徴とする。
請求項1~に係る発明によれば、吊り足場の設置作業を安全に行えるとともに、風による悪影響を受けることなく安全に既設橋梁のメンテナンス作業を行うことができる。また、請求項1~3に係る発明によれば、ハンガーレールを吊り下げる作業を手摺が取り付けられた壁高欄の内側から全て行うことが可能であるので、作業員の落下の恐れもなく安全に行うことができる。
特に、請求項に係る発明によれば、吊り足場を組み立てる危険な作業をクサビ緊結式足場などの一般的な仮設足場に通常設ける様々な作業員の落下を防止する施設が完備された状態で行うことができる。このため極めて安全に吊り足場の組立作業を実施することができる。
特に、請求項に係る発明によれば、吊り足場の不用意な逸走を防止することができるだけでなく、手動ウィンチにより大きな力で押すことなく容易に吊り足場を送り出すことができる。
図1は、本発明の実施形態に係る仮設足場の全体構成を示す側面図である。 図2は、同上の仮設足場を示す平面図である。 図3は、同上の仮設足場の作業構台を示す側面図である。 図4は、同上の作業構台を示す平面図である。 図5は、同上の作業構台を線路側から見た図1のA-A線矢視図である。 図6は、同上の仮設足場の吊り足場を示す鉛直断面図である。 図7は、図6のB部拡大図である。 図8は、図6のC部拡大図である。 図9は、同上の吊り足場のハンガーレールの吊下げ手段を示す側面図である 図10は、同上のハンガーレールのつなぎ目を示す見上げ斜視図である。 図11は、本実施形態に係る吊り足場の構築方法の発進構台組立工程を示す工程説明図である。 図12は、本実施形態に係る吊り足場の構築方法の到着構台組立工程を示す工程説明図である。 図13は、本実施形態に係る吊り足場の構築方法のハンガーレール吊下げ工程を示す工程説明図である。 図14は、本実施形態に係る吊り足場の構築方法の滑車装着工程を示す工程説明図である。 図15は、本実施形態に係る吊り足場の構築方法の第1回目の吊り足場組立工程を示す工程説明図であり、吊り足場の主に骨組の組立が完了した状態を示している。 図16は、同上の足場組立工程を示す工程説明図であり、吊り足場の骨組に養生材の取り付けが完了した状態を示している。 図17は、本実施形態に係る吊り足場の構築方法の第1回目の吊り足場送出工程を示す工程説明図である。 図18は、本実施形態に係る吊り足場の構築方法の第2回目の吊り足場組立工程を示す工程説明図であり、2回目の吊り足場組立工程の骨組の組立が完了した状態を示している。 図19は、同上の構築方法の第2回目の吊り足場組立工程を示す工程説明図であり、2回目の吊り足場組立工程が完了した状態を示している。 図20は、本実施形態に係る吊り足場の構築方法の第3回目の吊り足場組立工程を示す工程説明図である。 図21は、本実施形態に係る吊り足場の構築方法の第8回目の吊り足場組立工程を示す工程説明図である。 図22は、本実施形態に係る吊り足場の構築方法の全ての吊り足場組立工程が完了した状態を示す図である。 図23は、本実施形態に係る吊り足場の撤去方法の第1回目の吊り足場解体撤去工程を行う前の仮設足場の状態を示す図である。 図24は、本実施形態に係る吊り足場の撤去方法の第1回目の吊り足場解体撤去工程を示す工程説明図である。 図25は、本実施形態に係る吊り足場の撤去方法で吊り足場を全て解体撤去した状態を示す図である。 図26は、本実施形態に係る吊り足場の撤去方法のハンガーレール撤去工程を示す工程説明図である。
以下、本発明に係る吊り足場の構築方法及び吊り足場の構築方法の一実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
[仮設足場]
先ず、図1~図10を用いて、本発明の実施形態に係る仮設足場1について説明する。図1は、本発明の実施形態に係る仮設足場1の全体構成を示す側面図であり、図2は、仮設足場1を示す平面図である。
本実施形態に係る仮設足場1は、鉄道R1を跨いで設置された橋梁B1のメンテナンス作業用として設置される場合を例示して説明する。なお、メンテナンス作業とは、橋梁の防錆塗料の塗り直しなどの補修・修繕作業やこれらの作業を行うための保守点検作業を含む作業を指している(以下同じ)。
簡単に、例示する橋梁B1を説明すると、橋梁B1は、図1に示すように、下部構造である鉄筋コンクリート製の橋脚P1と橋台P2との間に上部構造BGが架け渡された7.00%勾配で図示右手方向に下る自動車用の高架橋である。この橋梁B1の上部構造BGは、図3,図5に示すように、鋼桁である箱桁G1上に鉄筋コンクリート製の床版BDが載置されている。そして、この床版BDの縁沿いには、地覆部FGが形成され、この地覆部FGの上部には、鉄筋コンクリート製の壁高欄WBが形成され、その壁高欄WBの上に、鋼製の手摺HRが取り付けられている。なお、床版BDの上には、アスファルト舗装APが積層されている。
本実施形態に係る仮設足場1は、後述の吊り足場3を組み立て又は解体する作業スペース2a(2a’)となる一対の作業構台2,2’と、メンテナンス作業を行う主な作業足場となる吊り足場3など、から構成された橋梁B1の橋脚P1~橋台P2の一径間に架け渡された橋梁B1の上部構造BGの底面及び側面のメンテナンス作業用の仮設足場である。
(作業構台)
次に、図3~図5を用いて、作業構台2,2’について説明する。図3は、本発明の実施形態に係る作業構台2,2’を示す側面図であり、図4は、作業構台2,2’を示す平面図である。また、図5は、線路側から見た作業構台2を示す立面図である。
図3~図5に示すように、一対の作業構台2,2’は、橋梁B1の一径間の橋軸方向の端部に位置するそれぞれの下部構造の周りに設置される主に吊り足場3を組み立て又は解体する作業スペース用の足場である。本実施形態に係る作業構台2,2’は、一定間隔に緊結部を備えた鋼管からなる支柱20にジャッキベース21・筋交22・布板(踏板)23などを支柱20の緊結部にくさびで緊結して組み立てる一般的なクサビ緊結式足場である。勿論、作業構台2,2’は、クサビ緊結式足場に限られず、一般的な枠組足場とすることもできる。また、作業構台2,2’は、単管パイプを組み合わせた単管足場とすることも可能であるが、クサビ緊結式足場や枠組足場とした方が短時間で組み立てが可能なため好ましい。
これらの作業構台2(2’)は、いずれも4段目の布板23上に後述の吊り足場3を組み立てる作業スペース2a(2a’)となる布板2スパン分のフラットなスペースが形成されており、最上段に至る昇降手段となる階段24も設けられている(図2も参照)。なお、符号25は、足場からの資材や工具の落下を防止する巾木25である。また、クサビ緊結式足場の外側には、作業員の落下を防止する防護ネット26(内部が見にくくなるので大部分を省略している)も取り付けられている。
本実施形態では、傾斜勾配の付いた橋梁B1で高所となる橋脚P1側に吊り足場3を送り出す発進構台となる作業構台2が設けられ、低所となる橋台P2側に到着構台となる作業構台2’が設けられている。後述のように、吊り足場3の送り出しが高所から低所の方が容易だからである。但し、本発明は、勾配のないフラットな橋梁にも適用でき、勾配のある低所の下部構造側に発進構台を設けることも可能である。
また、作業構台2のクサビ緊結式足場は、所定間隔(縦横2スパン)ごとに壁つなぎ(図示せず)で橋脚P1に固定されて支持され、作業構台2’のクサビ緊結式足場は、所定間隔(縦横2スパン)ごとに壁つなぎで橋台P2に固定されて支持されている。
なお、図5に示す作業構台2(2’)の作業スペース2a(2a’)の高さを超えるクサビ緊結式足場の左右の突出部分は、作業構台として使用されるのではなく、橋梁B1の上部構造BGの補修などメンテナンス作業用の足場として使用される。
(吊り足場)
次に、図6~図10を用いて、本発明の特徴部分である吊り足場3について説明する。図6は、本実施形態に係る吊り足場3を示す鉛直断面図であり、図7は、図6のB部拡大図であり、図8は、図6のC部拡大図である。また、図9は、ハンガーレールの吊下げ手段を示す側面図であり、図10は、ハンガーレールのつなぎ目を示す見上げ斜視図である。
吊り足場3は、吊り足場を吊り下げて移動するためのH形鋼(200×100)からなるハンガーレール30と、このハンガーレール30上を走行するプレーントロリーである複数の滑車31と、この滑車31に吊り下げ支持された床部材32と、この床部材32に立設された壁部材33と、を備えている。また、ハンガーレール30は、吊下げ手段4で橋梁B1の壁高欄WBに吊り下げ支持されており、床部材32は、長さ調整手段5を介して滑車31に吊り下げられている。
1スパン分の床部材32は、支持材なしで長いスパン(本実施形態では7316mm)飛ばすことが可能な梁枠320,320と、これらの梁枠320,320に架け渡された所定長さ(本実施形態では1219mm)の複数の布板321などから構成されている。また、布板321の上には、防炎シート322が敷き詰められている。塗料などの資材が誤って布板321同士の隙間から漏れ落ちないようにするためである。勿論、布板321の上に敷設するシートは、防炎シート322に限られず、液体の落下を防止できるシート材であればよいことは云うまでもない。
また、梁枠320の両サイドには、クサビ緊結式足場に用いる支柱323と布板321などから構成された箱桁G1の側面部分のメンテナンス作業用のサイド足場324が設けられている。サイド足場324の設置高さは、梁枠320,320より高い位置に、箱桁G1の高さなど側面部分の作業に応じて適宜定めるとよい。
1スパン分の壁部材33は、クサビ緊結式足場に用いる支柱330に単管パイプ331が横方向に架け渡されてクランプで組み立てられている。また、壁部材33には、内側にベニヤ板332が張設されているとともに、外側に落下防止用の防護ネット333も張設されている。ベニヤ板332を吊り足場3上のメンテナンス作業において、作業員や資材・工具の落下を防止するとともに風の影響を受けにくいようにするためである。壁部材33の内側に設置するベニヤ板332は、板材に限られず、風の影響を防止又は低減できるシート材(メッシュシートを含む)であっても構わない。
吊下げ手段4は、図7に示すように、壁高欄WBに固定支持するための吊り金具40と、ワイヤロープやチェーンなどの線材41を備え、この線材41がシャックル42を介して吊り金具40の下端に取り付けられている。
吊り金具40は、山形鋼などのアングル材が溶接やボルト接合で7の字状に組み合わされた壁高欄WBに掛け止めるための金具であり、壁高欄WBに固定される内側片401と、内側片401の上端から水平に延びる水平片402と、水平片402の外端付近から下方に延びる外側片403とからなる。吊り金具40は、内側片401がホールインアンカーなどのあと施工アンカーA1で壁高欄WBの内面に固定されている。
また、外側片403には、ねじ込むことで先端が壁高欄WBの外面に当接してハンガーレール30の吊り下げ位置を固定するための固定ボルト404が設けられている。
そして、図8に示すように、鋼材が溶接されて組み合わされたハンガーレール30の上フランジを保持するための保持金具43がシャックル42及びハンガーレール30の上フランジを掛け止めるための一対の山形鋼44を介して線材41の下端に取り付けられている。
また、長さ調整手段5は、図6,図8に示すように、滑車31と床部材32のサイド足場324とを左右の長さ調整自在に連結する連結部材である。長さ調整手段5は、ポリエステルなどの樹脂繊維からなり、長手方向の両端に吊り輪が形成された吊り用具である吊りスリング50と、この吊りスリング50の長手方向の両端に接続されたターンバックル51と、このターンバックル51に接続されたワイヤロープやチェーンなどの線材52を備えている。なお、吊りスリング50は、シャックル53を介して滑車31に接合されている。
なお、図10に示すように、H形鋼(200×100)からなるハンガーレール30同士のつなぎ目部分は、プレーントロリーである滑車31の走行に支障がないように、上フランジ部分だけ山形鋼30aと平鋼板30bで挟み込んで補強してボルト接合されている。
[吊り足場の構築方法]
次に、図11~図22を用いて、本発明の実施形態に係る吊り足場の構築方法について説明する。前述の橋梁B1に前述の仮設足場1を用いて吊り足場3を構築する場合を例示して説明する。
(作業構台組立工程)
図11,図12に示すように、本発明の実施形態に係る吊り足場の構築方法では、先ず、吊り足場3を組み立て又は解体する作業スペース2a(2a’)となる一対の作業構台2,2’を組み立てる作業構台組立工程を行う。図11は、本実施形態に係る吊り足場の構築方法の発進構台組立工程を示す工程説明図であり、図12は、本実施形態に係る吊り足場の構築方法の到着構台組立工程を示す工程説明図である。
図11に示すように、本実施形態に係る吊り足場の構築方法では、先ず、吊り足場3を組み立てる作業スペース2aである作業構台2を橋梁B1の一径間の端部である橋脚P1側に組み立て、次に、図12に示すように、吊り足場3を解体する作業スペース2a’である作業構台2’を橋台P2側に組み立てる。勿論、二手に分かれて同時に作業構台2及び作業構台2’を組み立ててもよいし、作業構台2’を先に組み立ててもよいことは云うまでもない。
具体的には、作業構台2及び作業構台2’いずれも、設置する場所を整地した後、木製の足場板を敷設して、その上にジャッキベース(21)を釘止めし、支柱(20)・筋交(22)・布板(23)を順次組み立てる一般的なクサビ緊結式足場の施工方法で設置する(図5等参照)。本実施形態では、クサビ緊結式足場の天端がハンガーレール30に滑車31を装着できる高さに達するまで組み立てる。図5に示したように、図示形態では、支柱(20)及び布板(23)が4段積み重なる高さまで組み立てる。
また、吊り足場3を組み立てる作業スペース2aであるので、図2に示したように、作業構台2及び作業構台2’の幅は、当然、吊り足場3の幅より広くなるように組み立てる。
(ハンガーレール吊下げ工程)
次に、図13に示すように、本実施形態に係る吊り足場の構築方法では、ハンガーレール30を吊下げ手段4で橋梁B1の壁高欄WBに吊り下げるハンガーレール吊下げ工程を行う。図13は、本実施形態に係る吊り足場の構築方法のハンガーレール吊下げ工程を示す工程説明図である。
具体的には、図6~図9に示したように、吊下げ手段4の吊り金具40を壁高欄WBに掛け止めて、固定ボルト404を回して長さ調整し、さらに、壁高欄WBに予め設置したあと施工アンカーA1で壁高欄WBの内面に内側片401を固定する。このように、固定ボルト404で壁高欄WBの外面との間隔を調整することで、壁高欄WBの厚さにかかわらず、吊り金具40で把持して固定することが可能となる。
そして、吊り金具40の外側片403に予め線材41及び保持金具43等で連結されたハンガーレール30を壁高欄WBの外側に吊り降ろす。
本工程は、安全帯を引っ掛けることが容易な手摺HRが取り付けられた壁高欄WBの内側から全て行うことが可能であるので、作業員の落下の恐れもなく安全に行うことができる。また、ハンガーレール30は、壁高欄WBの内側で吊下げ手段4に予め連結し、吊下げ手段4の吊り金具40を壁高欄WBに固定した後、吊り降ろすので、ハンガーレール30が落下するおそれを完全に払拭することができる。よって、この点でも安全に本工程を行うことができる。
なお、本工程は、メンテナンス作業を行う橋梁に壁高欄がない場合や強度に問題がある等の場合には、壁高欄に支持させるのではなく、側道などの床版の地覆部FGの上面にアンカーを打ち込みワイヤーを垂らすなどの手段を使ってても構わない。
(滑車装着工程)
次に、図14に示すように、本実施形態に係る吊り足場の構築方法では、前工程で壁高欄WBの外側に吊り下げたハンガーレール30に滑車31を装着する滑車装着工程を行う。図14は、本実施形態に係る吊り足場の構築方法の滑車装着工程を示す工程説明図である。
本工程は、作業構台組立工程で組み立てた作業構台2の作業スペース2a上で行う。このため、図14では省略しているが防護ネット26をはじめ、クサビ緊結式足場に通常設ける様々な作業員の落下を防止する施設が完備された状態で本工程を行うことができる。このため極めて安全に本工程を実施することができる。
本工程では、ハンガーレール30に滑車31を装着するだけでなく、装着した滑車31に長さ調整手段5の吊りスリング50を挿通すると好ましい。次工程の作業効率が向上するからである。
(吊り足場組立工程)
次に、図15,図16に示すように、本実施形態に係る吊り足場の構築方法では、1スパン分の吊り足場3を組み立てる第1回目の吊り足場組立工程を行う。図15、図16は、いずれも本実施形態に係る吊り足場の構築方法の第1回目の吊り足場組立工程を示す工程説明図である。図15は、吊り足場の主に骨組の組立が完了した状態を示し、図16は、吊り足場の骨組に養生材の取り付けが完了した状態を示している。
本工程は、作業構台2の作業スペース2a上で長さ調整手段5を用いて左右のバランスを取りながら吊りスリング50で床部材32を吊り下げ支持し、組み立てた床部材32に、前述の壁部材33を組み立て立設し、吊り足場3の1スパン分の骨組を完成させる。但し、吊り足場3を別の場所(例えば、近隣の地面)においてある程度地組みして作業台2上で前記ハンガーレール30に連結しても構わない。
そして、組み立てた吊り足場3の1スパン分の壁部材33の骨組に、図6に示したように、作業員や資材等の落下防止や風対策のための養生材であるベニヤ板332や防護ネット333を張設するとともに、床部材32に防炎シート322を敷設する。
(吊り足場送出工程)
次に、図17に示すように、本実施形態に係る吊り足場の構築方法では、滑車31を用いてハンガーレール30上を走行させることにより前工程で組み立てた1スパン分の吊り足場3を送り出す第1回目の吊り足場送出工程を行う。図17は、本実施形態に係る吊り足場の構築方法の第1回目の吊り足場送出工程を示す工程説明図である。
このとき、本実施形態では、前述のように、傾斜勾配の付いた橋梁B1で高所となる橋脚P1側に吊り足場3を送り出す発進構台である作業構台2が設けられているので、極めて小さな力で1スパン分の吊り足場3を送り出すことができる。
なお、本発明を傾斜勾配の急な橋梁に適用する場合は、逸走防止のため、床部材32の梁枠320等に作業構台2上に設置した手動ウィンチを連結して手動ウィンチを用いて送り出すことが好ましい。不用意な逸走を防止することができるだけでなく、手動ウィンチにより大きな力で押すことなく容易に吊り足場3を送り出せるからである。勿論、手動ウィンチではなく、電動ウィンチとしてもよいことは云うまでもない。
(吊り足場組立工程)
次に、図18、図19に示すように、本実施形態に係る吊り足場の構築方法では、前工程で1スパン分の吊り足場3を送り出してできた作業構台2の作業スペース2a上で1スパン分の吊り足場3を組み立てる第2回目の吊り足場組立工程を行う。図18、図19は、いずれも本実施形態に係る吊り足場の構築方法の第2回目の吊り足場組立工程を示す工程説明図である。図18は、2回目の吊り足場組立工程の骨組の組立が完了した状態を示し、図19は、2回目の吊り足場組立工程が完了した状態を示している。
(吊り足場組立工程と吊り足場送出工程の繰り返し)
次に、図20,図21に示すように、本実施形態に係る吊り足場の構築方法では、前述の吊り足場組立工程と吊り足場送出工程の繰り返し、順次吊り足場3を1スパンずつ組み立てて行く。図20は、本実施形態に係る吊り足場の構築方法の第3回目の吊り足場組立工程を示す工程説明図であり、図21は、本実施形態に係る吊り足場の構築方法の第8回目の吊り足場組立工程を示す工程説明図である。
(仮設足場の設置完了)
本実施形態に係る吊り足場の構築方法では、前述の吊り足場組立工程と吊り足場送出工程の繰り返し、第14回目の吊り足場組立工程が完了すると図22に示すように、14スパン分の吊り足場3が完成し、到着構台である作業構台2’上まで吊り足場3が到達する。
その後、図6に示したように、吊り足場3が移動しないように、吊り足場3の床部材32及び壁部材33と箱桁G1とを単管パイプやクランプ等を用いて連結して橋梁B1の上部構造BGの下面全域に亘る仮設足場1の構築作業が完了する。
背景技術で述べたように、従来の吊り足場では、このような吊り足場と橋桁との連結作業や、その連結を解除して吊り足場の移動する作業は、全て作業員の落下や資材・工具等の落下の恐れのある高所作業となり、クランプ等の締結作業も作業人員及び資材・工具の落下の危険があった。しかし、本実施形態に係る吊り足場の構築方法では、組立作業は全て安全な作業構台2の作業スペース2a上で行うため、極めて安全である。そして、最終的な吊り足場3と箱桁G1との連結固定作業も吊り足場3が橋梁B1の一径間の全域に設置された状態で行うため、資材・工具や作業員の落下のおそれが全くない。
つまり、前述の本発明の実施形態に係る仮設足場1及び本発明の実施形態に係る吊り足場の構築方法によれば、吊り足場の設置作業を落下防止施設の整った作業構台上で行うことができ、安全である。
しかも、前述の仮設足場1によれば、作業員や資材等の落下防止や風対策のための養生材が設けられているので、風による悪影響を受けることなく安全に既設橋梁B1のメンテナンス作業を行うことができる。
さらに、仮設足場1によれば、手動ウィンチを作業構台2上に設置して手動ウィンチと吊り足場3を送り出すので、吊り足場3の不用意な逸走を防止することができるだけでなく、手動ウィンチにより大きな力で押すことなく容易に吊り足場3を送り出すことができる。
[吊り足場の撤去方法]
次に、図23~図26を用いて、本発明の実施形態に係る吊り足場の撤去方法について説明する。前述の橋梁B1に前述の仮設足場1を用いて吊り足場3を撤去する場合を例示して説明する。本発明の実施形態に係る吊り足場の撤去方法は、基本的に前述の本発明の実施形態に係る吊り足場の構築方法の逆工程となる。
(吊り足場解体撤去工程)
先ず、図23,図24に示すように、本実施形態に係る吊り足場の撤去方法では、1スパン分の吊り足場3を解体撤去する第1回目の吊り足場解体撤去工程を行う。図23は、本実施形態に係る吊り足場の撤去方法の第1回目の吊り足場解体撤去工程を行う前の仮設足場1の状態を示す図であり,図24は、本実施形態に係る吊り足場の撤去方法の第1回目の吊り足場解体撤去工程を示す工程説明図である。
本工程は、作業構台2’の一定の広さの作業スペース2a’上で吊り足場3を解体・撤去する。このため、解体作業を安全施設の整った環境で行うことができ、作業員の落下やクランプなどの吊り足場3の構成資材や工具等を落下させるおそれがない。
(吊り足場引込工程)
次に、本実施形態に係る吊り足場の撤去方法では、前工程で解体撤去した1スパン分の吊り足場3のスペースに1スパン分の吊り足場3を引き込む吊り足場引込工程を行う。引き込むと図23の状態となる。
なお、本工程を行う前に事前に、吊り足場3の床部材32及び壁部材33と箱桁G1との連結は、クランプや単管パイプを払して撤去しておく。
また、本実施形態では、前述のように、傾斜勾配の付いた橋梁B1で低所となる橋台P2側に吊り足場3を引き込む到着構台である作業構台2’上で本工程を行うので、1スパン分の吊り足場3のスペースが空くと、吊り足場3の自重で滑車31がハンガーレール30上を走行することにより1スパン分の吊り足場3が自然に、又は容易に作業構台2’上解体作業を行う作業スペース2a’に1スパン分の吊り足場3が引き込まれる。
本発明を傾斜勾配の急な橋梁に適用する場合は、逸走防止のため、床部材32の梁枠320等に作業構台2上に設置した手動ウィンチを連結して手動ウィンチを用いて引き込むことがこのましい。不用意な逸走を防止することができるだけでなく、手動ウィンチにより大きな力で押すことなく容易に吊り足場3を引き込むことができるからである。
(吊り足場解体撤去工程と吊り足場引込工程の繰り返し)
次に、本実施形態に係る吊り足場の撤去方法では、前述の吊り足場解体撤去工程と吊り足場引込工程を繰り返し、吊り足場3を全て解体撤去する。図25は、本実施形態に係る吊り足場の撤去方法で吊り足場3を全て解体撤去した状態を示す図である。
次に、図26に示すように、本実施形態に係る吊り足場の撤去方法では、ハンガーレール30及び吊下げ手段4を撤去するハンガーレール撤去工程を行う。図26は、本実施形態に係る吊り足場の撤去方法のハンガーレール撤去工程を示す工程説明図である。
具体的には、手摺HRが取り付けられた壁高欄WBの内側から吊下げ手段4の線材41を手繰り寄せてハンガーレール30を引き上げ、あと施工アンカーA1から吊り金具40を取り外して撤去する。
また、ハンガーレール30は、前述のように、保持金具43と山形鋼44とで上フランジが挟持されているので、ハンガーレール30を引き上げる際にもハンガーレール30が外れて落下するおそれが極めて少ない。
その後、一対の作業構台2,2’をそれぞれ通常のクサビ緊結式足場として解体撤去すれば既設橋梁B1のメンテナンス作業用の足場として構築した仮設足場1を全て撤去することができる。
以上説明した本発明の実施形態に係る吊り足場の撤去方法によれば、危険な吊り足場3の解体・撤去作業を殆ど全て安全な作業構台2’の作業スペース2a’上で行うため、極めて安全である。また、ハンガーレール30及び吊下げ手段4を撤去する作業も手摺HRが取り付けられた壁高欄WBの内側から行うことができる。
以上、本発明の実施形態に係る仮設足場1、本発明の実施形態に係る吊り足場の構築方法、及び本発明の実施形態に係る吊り足場の撤去方法、について詳細に説明したが、前述した又は図示した実施形態は、いずれも本発明を実施するにあたって具体化した一実施形態を示したものに過ぎない。よって、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。特に、橋梁として傾斜勾配の付いた橋梁を例示して説明したが、傾斜勾配のない橋梁にも本発明を適用することができる。
1:仮設足場
2,2’:作業構台
2a,2a’:作業スペース
20:支柱
21:ジャッキベース
22:筋交
23:布板
24:階段枠
25:巾木
26:防護ネット
3:吊り足場
30:ハンガーレール
30a:山形鋼
30b:平鋼材
31:滑車
32:床部材
320:梁枠
321:布板
322:防炎シート
323:支柱
324:サイド足場
33:壁部材
330:支柱
331:単管パイプ
332:ベニヤ板
333:防護ネット
4:吊下げ手段
40:吊り金具
401:内側片
402:水平片
403;外側片
404:固定ボルト
41:線材
42:シャックル
43:保持金具
44:山形鋼
5:長さ調整手段
50:吊りスリング
51:ターンバックル
52:線材
53:シャックル
B1:橋梁
BG:上部構造
G1:箱桁
BD:床版
AP:アスファルト舗装
FG:地覆部
WB:壁高欄
HR:手摺
P1:橋脚(下部構造)
P2:橋台(下部構造)
R1:鉄道
A1:あと施工アンカー

Claims (3)

  1. 橋梁の上部構造のメンテナンス作業を行う吊り足場の構築方法であって、
    前記橋梁の並設された2つの下部構造に隣接して一対の作業構台を組み立てる作業構台組立工程と、前記橋梁の壁高欄の内側に複数の吊下げ金具を固定するとともに、固定ボルトで壁高欄の外面との間隔を調整することで前記複数の吊下げ金具からハンガーレールを吊り下げるハンガーレール吊下げ工程と、記作業構台組立工程で組み立てた前記一対の作業構台の一方の作業構台の上で吊り足場の1スパン分を組み立てる吊り足場組立工程を行い、
    次に、組み立てた吊り足場の前記1スパン分を送り出す吊り足場送出工程を行い、その空いた前記一方の作業構台上のスペースで新たな吊り足場の1スパン分を組み立てる吊り足場組立工程を行い、順次、吊り足場組立工程と吊り足場送出工程を最初に組み立てた吊り足場の1スパン分が他方の作業構台に到達するまで繰り返し、メンテナンス作業を行う前記橋梁の一径間分の上部構造の下面全域に亘る吊り足場を構築すること
    を特徴とする吊り足場の構築方法。
  2. 前記吊り足場組立工程では、前記ハンガーレールに滑車を装着して、前記滑車に仮設用の梁枠を吊り下げて吊り足場の1スパン分を組み立てること
    を特徴とする請求項に記載の吊り足場の構築方法。
  3. 前記吊り足場送出工程では、逸走防止のための手動ウィンチと前記吊り足場組立工程で組み立てた吊り足場と線材で連結して送り出すこと
    を特徴とする請求項に記載の吊り足場の構築方法。
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