JP5807253B2 - 伸縮式足場構造、及びこれを用いた吊り足場設置方法 - Google Patents

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Description

本願発明は、足場に関するものであり、より具体的には、スライドして伸び縮みする伸縮式足場材を用いた伸縮式足場構造、さらにはこれらを利用して吊り足場を設置する方法に関するものである。
我が国の国土は大半が山間部で占められ、しかも急峻な地形であることから、地方に整備される道路は数多くの橋梁に頼っている。一方、都市部では無数の構造物が密集しており、そこへ新たな道路を建設してきた結果、高架橋をはじめ、跨道橋、跨線橋など、やはり多くの橋梁が構築されてきた。
とくに東京オリンピックを目前にした昭和30年代は、いわゆる建設ラッシュといわれ、大量の橋梁が建設された。これらの橋梁も、現在では約50年が経過しようとしている。一般にコンクリートの耐久性は50年とも100年ともいわれるが、仮に50年とすると、当時建設された橋梁のコンクリート床版は何らかの対策を必要としていることになる。実際、昨今では地方自治体を中心に橋梁点検が実施されており、多くのコンクリート床版に劣化や損傷が確認されている。コンクリート床版に限らず、鋼床版や合成床版、あるいは鋼製主桁なども例外ではない。今後は、橋梁の床版に対する補修・補強工の増加が予想される。
他方、多くの橋梁は、谷部や道路、線路などを跨いで架設されている。そのため、例えば電線や水道管などを敷設する際には便宜に利用される。すなわち、これらの電線等を橋梁の床版や主桁に添架させることで、特別な架設構造物を省くことができるわけである。
このように、橋梁床版の補修・補強工、あるいは橋梁床版への電線等の添架など、既設橋梁の床版下や主桁下で行われる工事(以下、これらをまとめて「桁下工事」という。)は少なくない。桁下工事を行う場合、通常は高所作業となることから仮設足場が設置される。ところが、山間部の橋梁であればその桁高が数十mあることも珍しくなく、都市部に架かる高架橋であれば通常はその下に現道が通っており、数十mの高さで単管足場を組むことも、現道の一般交通を遮って枠組み足場を組むことも、いずれの場合も極めて困難である。桁下工事にとって仮設足場は大きな問題であった。
したがって昨今では、橋梁の床版下で工事を行う場合、地上から枠組み足場(あるいは単管足場)を組み立てるのではなく、吊り足場が設置されている。図13は、橋梁の主桁に連続して吊り足場を設置する一般的な例を示す説明図である。この図に基づいて、吊り足場の設置手順を説明する。まず橋台近くに最小限の枠組み足場(図示しない)を設置し、この足場を利用して主桁にブラケットBを取り付け、さらにブラケットBに第1の足場パネルPを設置する。次に、第1の足場パネルPに立って、吊具Sを主桁に固定し、これに吊チェーンCを取り付け、第2の足場パネルP2を設置する。この手順を繰り返し行い、橋台側から順に足場パネルPを設置していくことで、桁下に一連の吊り足場を形成する。
この図に示すように、吊具Sを固定する位置は、先端の足場パネルPから手が届く範囲に限られ、その結果1サイクル(吊具固定〜足場パネル設置)で延伸される吊り足場の長さも著しく短くなり(例えば660mm)、作業効率の点から問題視されていた。そのうえ、足場パネルPから手を伸ばして行う吊具Sの設置作業は、安全上も好ましくない。
そこで特許文献1では、1サイクル当たりの延伸長さを従来よりも長くすることで、効率的に設置できる吊り足場を提案している。
特開平11−13275号公報
前記したように従来の吊り足場は、その設置作業が効率的でないという問題に加え、安全上も好ましくないという問題があった。さらに、次のような工事には採用し難いという問題も抱えている。
既設橋のコンクリート床版に、電線を収容した管(以下、「電線管」という。)を添架させる場合がある。このときコンクリート床版には、橋軸方向に複数の門型の架台(例えば、山形鋼等で形成される)が設けられ、この門型架台に複数の電線管が載置される。このような状況を想定して、コンクリート床版にはあらかじめインサートアンカーが設けられることがあり、このインサートアンカーを利用して門型架台は設置すれば便宜である。つまり、門型架台を設置するため、新たにコンクリート床版にアンカー孔等を設ける必要がない。また、門型架台どうしを水平継材でつなぎ、この水平継材に吊チェーンCを取り付ければ、コンクリート床版に影響を与えることなく吊り足場を設置することもできる。
ところが、インサートアンカーは門型架台等の設置用に設けられたものであるから、通常その設置間隔(橋軸方向の間隔)は2〜3m(例えば、2.5m)である。したがって、門型架台を順次橋軸方向に設置していく場合、次に設置する門型架台の位置は2.5m先となる。一方、コンクリート床版にアンカー孔等を設けないとすれば、次の門型架台を設置して水平継材をつなげない限り、吊り足場を先方へ延伸させることはできない。もちろん吊り足場では2.5m先まで手が届かないので、次の門型架台を設置する作業はできない。すなわち、従来の吊り足場では、上記のような工事には対応できないことになる。
特許文献1の吊り足場は、既設の足場パネルに先方の足場パネルを連結して延伸させるものであり、先方の足場パネルをワイヤーロープ(ターンバックル付き)で吊った状態で、それぞれの足場パネルに設けられたパイプを接続するものである。この方法によれば、1サイクルで延伸される吊り足場の長さを、従来よりも長くすることができる。しかしながら、ワイヤーロープの始点端を固定し、ワイヤーロープを吊り具へ挿入し、ワイヤーロープの終点端と足場パネルを連結し、ターンバックルを操作し、パイプどうしを連結し、ワイヤーロープを取り外す、など多くの工程を必要とし、作業が煩雑となるだけでなく、狭隘な作業空間では安全上の問題も指摘できる。さらに、ワイヤーロープで支えるためある程度軽量な材料を用いることを考えれば、構造(部材強度)上の問題から、1サイクルの延伸長(つまり足場パネル長さ)も制限されることなる。したがって、先の工事(既設橋への電線管添架工事)のように、2.5m先で施工する必要がある場合には当該手法は採用し難い。
本願発明の課題は、従来の問題を解決することであり、すなわち、枠組み足場や単管足場を設置することなく、確保された足場から比較的離れた先方まで(例えば、2〜3m)足場を構築することができ、しかもその構築作業が容易かつ安全である足場を提供することである。より具体的には、そのような足場構造を提供することが本願発明の課題であり、この足場構造を使用して吊り足場を設置する方法を提供することも本願発明の課題の一つである。
本願発明は、手の届かないところで作業する足場を確保するため、足場材を伸縮自在とするという発想に基づいて行われたものである。
本願発明の伸縮式足場構造は、吊り足場上に設置されるものであって、伸縮式足場材と足場板と反力材を備えた構造である。この伸縮式足場材は、本体管と棒状又は管状である支持体を具備しており、この本体管はその内部に支持体を収容することができて、支持体は本体管内をスライドすることができる。2以上の伸縮式足場材が略水平姿勢かつ略平行に配置された状態で、本体管から支持体を伸出させ、複数の足場板が設置される。本体管とその上方にある不動物との間には、反力材が設置され、吊り足場上で鉛直支持されるとともに、支持体がワイヤーロープで上方から引張支持され、反力材によって上方から反力が得られる構造となっている。
本願発明の伸縮式足場構造は、伸縮式足場材の本体管に函体と回転体を具備させることもできる。この函体は、本体管の表面から突出して2以上設けられ、回転体は函体内に回転自由に納められる。函体の設置箇所には、本体管の一部を切り欠いた窓孔が形成されており、回転体の一部が窓孔から本体管内に突出することで支持体が回転体と接触する。これにより、支持体は回転体を回転させながらスライドすることができる。また2以上の函体は、それぞれ平面状の底面を有しており、しかもその底面が略同一面となるように本体管に取り付けられている。その結果、函体の底面を接地させると、本体管は略水平姿勢で載置される。
本願発明の伸縮式足場構造は、手すりを具備した構造とすることもできる。この手すりは、伸縮式足場材の支持体に軸方向に沿って延設される。また伸縮式足場材の本体管には、手すりを嵌入させるスリットが設けられ、本体管が支持体を収容させるとき、手すりはこのスリットに嵌入する。
本願発明の伸縮式足場構造は、足場板を設置したまま伸縮可能な構造とすることもできる。この場合の伸縮式足場材の支持体は、足場板を載置する載置材と、載置材を固定する固定具を具備する。この固定具は、支持体の先端付近であって、支持体の表面から突出して設けられ、載置材は、支持体と略平行に配置されるとともに、固定具で支持体に固定される。この結果、載置材と支持体の間には離隔部が形成されることとなり、本体管が支持体を収容するとき、本体管の一部は離隔部内に嵌入される。
本願発明の吊り足場設置方法は、軸方向に延びる構造物の下面に連続して吊り足場を設置する方法であり、次のような手順で行われる。まず、既に設置された吊り足場上(あるいは別に設けた足場上)に、2以上の本願発明の伸縮式足場構造を構成する伸縮式足場材を、構造物の軸方向に対して略平行に配置する。次に、本体管と構造物との間に反力材を設置して上方からの反力を確保し、それぞれの本体管から支持体を伸出させ、支持体の上に足場板を手前から配置していくことで足場(支持体上足場)を形成する。この支持体上足場を利用して、吊り材(吊り足場用)を構造物の下面に取り付ける。支持体をスライドさせて本体管内に収容し、構造物の下面に取り付けられた吊り材に、足場板(吊り足場用)を手前から設置していく。
本願発明の「伸縮式足場材を用いた足場構造」には、次のような効果がある。
(1)本体管から支持体をスライドさせるだけで、比較的離れた先方(例えば、2〜3m)まで足場板を支持することができる。
(2)構成部材の一つである伸縮式足場材は、本体管内に支持体を収容することができるので、運びやすく、不使用時の置き場所も軽減できる。
(3)構造が極めて単純であり、構成部材の製作やメンテナンスに比較的手間がかからない。
(4)本体管を2点以上で鉛直支持し、本体管と不動物との間に反力材を設置するので、より足場全体が安定し、足場上作業の安全性も向上する。
(5)伸縮式足場材に回転体を具備させれば、支持体を円滑にスライドさせることができる。
(6)伸縮式足場材の本体管に2以上の函体を具備させれば、本体管の断面形状にかかわらず載置姿勢の安定を保つことができる。
(7)伸縮式足場材の本体管に手すり嵌入用のスリットを設けると、手すりを取り付けたまま支持体を本体管内に収容させることができる。
(8)支持体から離隔をもって固定された載置材を具備すれば、この載置材に足場板を載せたまま、支持体を本体管内に収容させることができる。
本願発明の「吊り足場設置方法」には、次のような効果がある。
(1)橋梁のコンクリート床版に、手の届かない間隔で(例えば2〜3m)インサートアンカーが設けられている場合がある。本願発明の伸縮式足場構造を構成する伸縮式足場材の支持体は2〜3m程度の伸出が可能なので、この伸縮式足場材を利用すれば先のインサートアンカー位置で作業することができる。すなわち、先のインサートアンカーに架台を取付けることが可能となり、架台間を水平継材でつなぐこともできる。この結果、水平継材を利用して吊り材(吊チェーンなど)を掛けることができるので、コンクリート床版を必要以上に痛めることなく吊り足場を構築することができる。
(2)吊り材を取り付けた後、足場板の設置にとって伸縮式足場材の支持体は障害となるが、支持体は本体管内に収容できるので足場板の設置に影響を与えることはない。
既設橋梁のコンクリート床版の下に足場が設けられた状態を示す側面図。 スライド足場を示す平面図。 4本の伸縮式足場材を並べた場合のスライド足場を示す平面図 (a)は支持体が本体管から突出した状態を示す側面図、(b)は支持体が本体管内に収容された状態を示す側面図。 本体管に函体が設けられた状態を示す断面図。 (a)は手すり付きの支持体が本体管から突出した状態を示す側面図、(b)は手すり付きの支持体が本体管内に収容された状態を示す側面図。 (a)は図1及び図2に示すA−A矢視の断面図、(b)は図1及び図2に示すB−B矢視の断面図、(c)は図1及び図2に示すC−C矢視の断面図、(d)は図1及び図2に示すD−D矢視の断面図。 (a)は載置材上に足場板を設置した状態を示す側面図であり、(b)はその分解平面図。 本体管上に反力材設置することで、鉛直下向きの反力を得る状態を示す側面図。 図1及び図2に示すE−E矢視側面図であり反力材の構造を示す詳細。 本体管上に重量物を載置することで、鉛直下向きの反力を得る状態を示す側面図。 (a)は、第1スパンの吊り足場を設置する状況を示すステップ図、(b)は、第3の門型架台吊を設置する状況を示すステップ図、(c)は、第2スパンの吊チェーン(吊り材)を設置する状況を示すステップ図、(d)は、第2スパンの足場パネルを装着する状況を示すステップ図、(e)は、ある程度吊り足場の設置が進んだ状況を示すステップ図。 橋梁の主桁に連続して吊り足場を設置する一般的な例を示す説明図。
本願発明の伸縮式足場構造、及びこれを用いた吊り足場設置方法の例を図に基づいて説明する。
(全体概要)
図1は、既設橋梁のコンクリート床版Brの下に足場が設けられた状態を示す側面図である。この図に示す足場は、本願発明の伸縮式足場構造からなる足場(以下、「スライド足場1」という。)である。この図では、コンクリート床版Brの下面に門型架台Gを取り付けるために、スライド足場1が設置されている。門型架台Gは、2本の縦金物とその間に渡される横金物からなる門型であり(図では縦金物の側面を示す)、橋軸方向に所定の間隔で取り付けられる。コンクリート床版Brの略全区間にわたって取付けられた門型架台Gには、例えば電線管(電線が挿入される管)が載せられる。門型架台Gの設置間隔(橋軸方向)はもちろん任意に設計することができるが、コンクリート床版Brにはあらかじめインサートアンカーが設置されていることもあり、これを利用することを考えれば、門型架台Gの設置はインサートアンカー設置間隔(一般的には2〜3m)に合わせることが望ましい。なお、図1に示すように、門型架台Gと門型架台Gの間には水平継材Lが設置されている。これは、後に説明する吊り足場設置用の部材であり、電線管の添架工事に直接関係するものではない。
スライド足場1を構成する伸縮式足場材2は、図1に示すように、本体管3と支持体4を具備している。この図では省略しているが、本体管3は、吊り足場や他の足場(例えば、枠組み足場)によって鉛直支持されている。ここでいう鉛直支持とは、自重に対して支持することを意味している。一方の支持体4は本体管3に把持されている状態であり、足場等で鉛直支持されているわけではない。そのため本体管3と支持体4は、ヒンジ状態とならない程度に繋がれており、例えばボルト等の治具で固定するか、あるいは所定のラップ長を確保している。
2本の伸縮式足場材2が略平行して並べられ(図1では手前側のみ示す)、それぞれ支持体4の上に足場板5が架け渡されることで、概ねスライド足場1は形成される。図2は、スライド足場1を示す平面図である。一般的な足場板5は長手方向に対して幅が短いため、この図のような配置(左右方向に向けた配置)とするには、2本の支持体4の間に横梁4aが設置される。あるいは、2本の支持体4の間隔を足場板5の長手寸法程度とし、支持体4上に直接足場板5を設置することもできる(この場合、図2では足場板5を上下方向に向けて配置する)。なお、ここでは2本の支持体4を並べることとしているが、足場板5を広く設置したい場合、あるいは支持体4の断面力(部材強度)が小さい場合など、3本以上の支持体4(つまり、伸縮式足場材2)を並べることもできる。図3は、4本の伸縮式足場材2を並べた場合のスライド足場1を示す平面図である。この図に示すように、目的に応じて、多数(この図では4本)の伸縮式足場材2を組み合わせた伸縮式足場構造(スライド足場1)を構築することもできる。また図2に示すように、平行して並べられた本体管3と本体管3の間には、その間隔を保持するため、さらには枠構造としての剛性を高めるため、補強材3aを設置することが望ましい。
スライド足場1には、当然のことながら手すり6を設置することができる。この手すり6は、鉛直方向に立設する支柱6aと、水平方向に配置される手すり材6bで構成される。これらは、山形鋼などの形鋼や、一般構造用炭素鋼鋼管(いわゆる単管パイプ)が使用される。支柱6aの下部にはベースプレートが設けられ、溶接やボルト連結などの手段によって支持体4に固定される。
スライド足場1のうち足場板5の上に載って作業するわけであるが、足場板5を載せた支持体4は鉛直支持されていないため、スライド足場1は全体的に回転しようとする。これを防止するため、本体管3の端部付近(図1では右側)において鉛直下向きの反力が得られる構造をとる。たとえば、本体管3上にカウンターウェイトとして重量物(例えば、H形鋼)を載置することもできるし、図1に示すように、突っ張り材としての反力材7を設置することもできる。この反力材7は、本体管3とコンクリート床版Brの間に設置されており、さらに反力材7の上端には確実に反力が得られるようジャッキベース7aが配置されている。また、反力材7を補強するためステー7bを設置することもできる。なお、図1に示すように、レバーブロック(登録商標)とスナッチブロックを設置し、ワイヤーロープで支持体4を引張支持すれば、さらなる安全が確保できて好適である。
スライド足場1を構成する本体管3、支持体4、足場板5、手すり6、反力材7は、現場の状況に合わせて、それぞれ任意の材料を選択することができる。例えば、強度を重視する場合は形鋼をはじめとする鋼材を用いることができるし、軽量化を図りたい場合はアルミニウム製の材料を使用するなど、適宜選択することができる。
以下、本願発明を構成する要素ごとに詳述する。
(伸縮式足場材)
図4は、本願発明の伸縮足場材2を示す側面図であり、(a)は支持体4が本体管3から突出した状態を示す側面図、(b)は支持体4が本体管3内に収容された状態を示す側面図である。この図に示すように、本願発明の伸縮足場材2は、主に本体管3と支持体4で構成されるもので、図4(a)に示すように、支持体4の大部分が本体管3から突出した状態(以下、「伸出した状態」という。)とすることができる。また、図4(b)に示すように、支持体4は本体管3内をスライドさせることが可能で、これにより支持体4を本体管3内に収容することができる。
1.本体管
本体管3は、断面寸法よりも軸方向に長い細長部材であり、支持体4を収容するため中空となっているいわゆる管である。断面形状は、角形でも円形でもその他任意の形状とすることができるが、使用時には略水平状態に置くため、載置時の安定を考えれば角形が望ましい。後に説明する函体を取り付けるなど載置時の安定が確保できれば、角形以外の円形等の管を使用することもできる。さらに、支持体4を収容するという意味では、本体管3として溝形鋼を使用することもできる。
本体管3の長さや断面寸法は、現場状況に応じて適宜設計することになる。例えば、2本の伸縮式足場材2を並べたスライド足場1とした場合、本体管3の寸法は146mm×91mm(肉厚6mm)を例示できる。4本の伸縮式足場材2を並べたスライド足場1とした場合は、本体管3の寸法は150mm×50mm(肉厚2.5mm)を例示できる。このように、多くの伸縮式足場材2を配置すると、使用する部材寸法を軽減することができる。あるいは、同じ部材寸法を使用した場合は、伸縮式足場材2の配置数に応じてその配置間隔を広くすることができる。また、使用する材料についても任意に設計することができる。例えば材質としてアルミニウムを選択すると部材の軽量化を図ることができる反面、部材強度は比較的小さくなる。他方、材質として鋼材を選択すれば部材強度は期待できるものの、やや部材重量が大きくなる。
2.支持体
支持体4も、本体管3と同様、断面寸法よりも軸方向に長い細長部材である。本体管3では支持体4を収容するため中空としているが、支持体4の場合は管とすることも中実の棒状部材とすることもできる。例えば、断面形状が角形や円形の管状のものや、溝形鋼やH形鋼といった形鋼を、支持体4として使用することができる。
支持体4の長さや断面寸法も、やはり現場状況に応じて適宜設計することになるが、本体管3内に納まる程度の断面寸法が要求される。例えば、2本の伸縮式足場材2を並べたスライド足場1では、本体管3として断面寸法が146mm×91mm×6mmのものを示したが、この場合の支持体4としては断面寸法125mm×75mm(肉厚6mm)の鋼管を例示することができる。あるいは、4本の伸縮式足場材2を並べたスライド足場1では、本体管3として断面寸法が150mm×50mm×2.5mmのものを示したが、この場合の支持体4としてはC−125mm×40mm×6mm(肉厚)×6mm(肉厚)の溝形鋼を例示することができる。また、使用する材料については本体管3と同様、アルミニウムや鋼材など適宜選択することができる。
支持体4は、本体管3内に納められて、本体管3内をスライドさせることができる。すなわち、伸縮式足場材2の長さは支持体4の状態によって変化し、支持体4を本体管3内に収容した状態(図4(b))では本体管3と略同じ長さになり、支持体4が本体管3から伸出した状態(図4(a))では本体管3と支持体4を合わせた長さと略同じになる。支持体4が伸出した状態で、支持体4の上に足場板5(図1)が載せられ、足場として使用することができる。支持体4が収容された状態の伸縮式足場材2は、つまり足場として使用しない状況にあり、コンパクトになるので、運搬(長距離輸送や場内小運搬)時や保管時に省スペース化を図ることができて、また取り扱いにおいても容易となる。
前記のとおり、伸縮式足場材2を足場として実際に使用する場合、支持体4を伸出させた状態で、その上に足場板5を載せる。この足場板が敷かれた範囲が、足場として有効に使用できるわけであるが、この範囲を広く確保したいこともある。この場合、支持体4の寸法を長くして足場面積を広く確保することができる。しかしながら、支持体4を長くすると必然的に本体管3も長くなり、不使用時の伸縮式足場材2をコンパクトにするという点では、ややその特徴が失われる。
2以上の支持体4を設けることで、足場面積を広く確保すするとともに、不使用時の伸縮式足場材2もコンパクトにすることができる。例えば、3本の支持体4を設ける場合で説明すれば、第1の支持体4内に第2の支持体4を収容し、第2の支持体4内に第3の支持体4を収容し、そして、第2の支持体4は第1の支持体4内をスライド可能とし、第3の支持体4は第2の支持体4内をスライド可能とする。伸縮式足場材2を足場として使用するときは、本体管3から第1の支持体4を伸出させ、順に第2の支持体4、第3の支持体4を伸出させて、第1〜第3の支持体4の上に足場板5を載置する。複数の支持体4を設ける場合、最先端以外の支持体4(上記ケースでは、第1と第2の支持体4)は、内部に他の支持体4を収容するため中空の管を使用することになる。
支持体4を伸出させた状態を維持するため、つまりそれ以上本体管3から伸び出ないようにするため、ストッパ機能を持たせることもできる。このストッパ機能としては、従来から用いられている技術、例えば、本体管3と支持体4の双方に貫通孔を設け、ここにピンを挿入するストッパが挙げられる。あるいは、本体管3にボルト孔を開け、ボルトによって支持体4を締め付ける方法や、本体管3と支持体4の双方にボルト孔を開けて貫通ボルトで縫い付ける方法など、種々の方法がストッパ機能として採用できる。
また、単に支持体4の抜け出しを防ぐストッパ機能であれば、本体管3と支持体4の接続点がピン結合に近い状態になることも考えられる。この場合、支持体4は本体管3から抜け出さないものの、本体管3が水平姿勢を維持しているにもかかわらず、接続点を中心に支持体4が回転しようとする。このピン結合の状態を避けるため、図4(a)に示すように、本体管3と支持体4の接続点である程度のラップ長をもって伸出した状態とし、2か所以上(図では3箇所)でストッパ機能を設けることが望ましい。
3.函体
本体管3には、図1や図4に示すように、函体8を設けることができる。この函体8は、後に説明する回転体を収容するためのいわゆるハウジングである。あるいは、本体管3を載置する際のいわゆる土台として設けることもできる。もちろん、回転体のハウジング、本体管3の土台、両方の目的を兼ね備えて設けることもできる。
図5は、本体管3に函体8が設けられた状態を示す断面図である。この図に示すように、函体8は、本体管3の表面から突出するように設けられる。具体的には、溶接等の手段によって本体管3の表面に函体8が取り付けられる。函体8は、上面開放の箱形として5面の平鋼(フラットバー)で形成することもできるし、市販の溝形鋼を利用して形成することもできる。もちろん鋼材に限らず、アルミニウムやその他の材質を使用して函体8を形成することもできる。
函体8を本体管3の土台として用いる場合、函体8の底面8aは平面状とされる。ここでいう平面状とは、完全な面を意味するだけでなく、ある程度凹凸はあるものの全体的としては一面として捉えられる状態も含んでいる。また、図4に示すように、函体8は2箇所以上(図では4箇所)で設けられる。さらに、これらの函体8は、その底面8aが略同一面上となるように設けられている。これにより、函体8が下方となるように本体管3を載置すると、すべての函体8の底面8aが接地し、本体管3は水平状態(略水平状態も含む)を維持したまま安定する。このようにして函体8を設けると、本体管3の断面が不安定な形状(例えば、円形や幅細四角形)であっても、安定して本体管3を載置することができる。なお、函体8の底面8aには、ゴム製の薄板といった摩擦材を設けることもできる。函体8の代わりに摩擦材が接地するため、本体管3が滑り難くなりさらに安定性が向上する。
4.回転体
本体管3には、回転体9(図5)を設けることもできる。この回転体9は、本体管3内における支持体4のスライドを円滑にするためのものであり、図5に示すように、函体8内に納められている。この図の回転体9は、函体8の両側壁に固定された回転軸9aと、その周りを回転するリング9bで構成されている。もちろん、回転軸9aとリング9bを固定して、回転軸9aが回転する構造とすることもできる。いずれにしろ回転体9は、支持体4のスライド方向に対して回転自由となるように、函体8内に納められる。
回転体9は、回転軸9aとリング9bの組み合わせに限らず、球体を回転させる構造とすることもできるし、あるいは市販されている部材(例えば、モンホイールなど)を回転体9として使用することもできる。
回転体9は、支持体4のスライドを促進するものであるから、回転体8の一部は支持体4に接触する必要がある。そのため、図5に示すように、本体管3の一部が切り欠かれて窓孔10が設けられている。この窓孔10を設けることで、回転体9の一部が本体管3内部に突出し、この突出部が支持体4に接触できるわけである。このように、回転自由な状態にある回転体9と支持体4が接触していることから、支持体4がスライドする際これに伴って回転体9が回転し、その結果、支持体4は円滑にスライドできるようになる。
なお、回転体9は、函体8に設ける場合に限らず、本体管3と支持体4の間に設けることもできる。この場合、本体管3の内面側もしくは支持体4の外面側に、複数のベアリングを設け、これらを回転自由とさせる。あるいは、どちらかにレールを取り付け、他方に車輪を固定し、レール上で車輪を走行させることで支持体4を円滑にスライドさせる。
5.手すり
支持体4には、手すり6(図1)を設けることもできる。図6は、手すり付きの伸縮足場材2を示す側面図であり、(a)は手すり付きの支持体4が本体管3から突出した状態を示す側面図、(b)は手すり付きの支持体4が本体管3内に収容された状態を示す側面図である。
前記したように手すり6は、鉛直方向に立設する支柱6aと、水平方向に配置される手すり材6bで構成される。図6の場合では、3本の支柱6aが支持体4に固定されており、さらに2本の手すり材6bが支柱6aに取り付けられている。なお、2本の伸縮式足場材2を並べたスライド足場1ではすべての支持体4に支柱6aを取り付けるが、3本以上の伸縮式足場材2を並べたスライド足場1では両端の支持体4(図3では上下端の支持体4)に支柱6aを取り付ける。支柱6aの下部にはベースプレートを固定し、このベースプレートに設けられたボルト孔によって、支柱6aを支持体4に固定させることができる。この場合、比較的容易に支柱6aを脱着できるので、支持体4が伸出した状態で手すり6を設置し、支持体4を本体管3内に収容する前に手すり6を撤去することもできる。
あるいは、支柱6aの下部に固定されたベースプレートと支持体4を溶接することで、支柱6aを支持体4に固定させることもできる。この場合、支柱6aは容易には取り外せない。したがって、手すり6を設置した状態で支持体4を伸出させ、同じく手すり6を設置した状態で支持体4を本体管3内に収容する。そのため、支持体4を本体管3内に収容する際、手すり6の支柱6aを交わす必要があり、本体管3の上面には溝状に切り欠かれたスリット(図示せず)が設けられる。このスリットは、当然ながら支柱6aが嵌入するだけの幅を有しており、支持体4側の端部(図6では左側端部)から連続して開口している。なお、2本の伸縮式足場材2を並べたスライド足場1ではすべての本体管3にスリットaが設けられるが、3本以上の伸縮式足場材2を並べたスライド足場1では少なくとも両端の本体管3(図3では上下端の本体管3)にスリットaが設けられる。
(足場構造)
本願発明の足場構造(スライド足場1の構造)は、伸縮式足場材2が使用される。図1及び図2に基づいて説明すると、2本(又は3本以上)の伸縮式足場材2を所定の間隔をあけて略平行に配置される。このとき、通常は略水平な足場上に配置されるので、2本(又は3本以上)の伸縮式足場材2も略水平姿勢で載置される。
1.構造
2本(又は3本以上)の本体管3の間には、その間隔を保持するため、さらには枠構造としての剛性を高めるため、補強材3aが設置される。図2や図3では、3本の補強材3aが設置されているが、その数は適宜設計することができる。また、補強材3aとしては山形鋼などの形鋼を用いることができるが、これも種々の材料を適宜選択できる。なお補強材3aは、ボルトによる固定など種々の従来技術を利用して本体管3に設置することができる。
支持体4が本体管3から伸出した状態とし、2本(又は3本以上)の支持体4の間に複数の横梁4aが架け渡される。これら横梁4aは、それぞれの支持体4上に載せられてボルト等によって固定される。この横梁4aとしては山形鋼などの形鋼を用いることができるが、これも種々の材料を適宜選択できる。なお横梁4aには、角鋼管(例えば、50×50×3)などが使用できるが、もちろんこれも設計事項である。
支持体4上に横梁4aが固定されると、今度は横梁4aの上に足場板5が載せられる。この足場板5は、軽量化を図るためアルミ合板製のものを使用することができる。その平面形状を例示すれば、長さ3000mm×幅240mmである。もちろん、アルミ合板製に限らず他の足場板を使用することもできる。足場板5は、支持体4が伸出した状態で支持体4上に設置され、支持体4を本体管3内に収容する前に撤去する。あるいは次に示すように、足場板5を設置したまま支持体4を本体管3内に収容することもできる。なお、支持体4上に足場板5を設置して構成される足場面を、以下「支持体上足場」ということとする。
図7は、図1及び図2に示すスライド足場1の各断面図であり、(a)は図1及び図2に示すA−A矢視の断面図、(b)はB−B矢視の断面図、(c)はC−C矢視の断面図、(d)はD−D矢視の断面図である。手すり6は、図7(b)及び図7(c)に示すように、支持体上足場の両側部(両サイド)に設けられる。また、図7(a)に示すように、支持体上足場の先端部(いわゆる妻部)にも手すり6は設けられる。すなわち、支持体上足場の周辺開口部を封鎖するように、平面コ字状に手すり6は配置される。
2.足場板用の載置材
本願発明の足場構造は、足場板5を設置する載置材11(図8)を設けた構造とすることもできる。図8(a)は載置材11上に足場板5を設置した状態を示す側面図であり、図8(b)はその分解平面図である。
載置材11は、固定具12を介して支持体4に固定されるもので、複数の足場板5を載せるために板状もしくは格子状となっている。載置材11を形成するには、鋼製板を使用したり、平鋼を組み合わせて格子状としたり、あるいは鋼材以外の材料を使用して板状もしくは格子状とするなど、種々の手法が選択できる。
支持体4の先端部(図8(a)では左端)には、固定具12が設置されている。この固定具12としては角鋼管などが用いられ、2本(又は3本以上)の支持体4に架け渡されて固定される。つまり支持体4には、その先端部のみ突出する固定具12が設けられている。この固定具12の上には載置材11が載せられ、ボルトや溶接等の手段によって固定される。この結果、載置材11は、支持体4の上面よりも一段高い位置に配置され、固定具12を支点とする片持ち梁の状態で支持体4に設置される。言い換えれば、載置材11と支持体4は略平行に配置され、固定具12を除く区間では両者の間には隙間(以下、「離隔部13」という。)が設けられる。
載置材11と支持体4の間に離隔部13を設けた効果で、図6(b)に示すように、支持体4を本体管3内に収容するときにも、載置材11が障害(邪魔)とならない。すなわち、本体管3の一部(この場合、上面)が離隔部13内に嵌入するので、足場板5を設置したまま支持体4が本体管3内に収容されるのである。そのため、離隔部13の間隔、つまり固定具12の突出高さは、本体管3の一部(具体的には管の肉厚)が嵌入できる程度の寸法とする必要がある。
板状又は格子状の載置材11の上には、複数の足場板5が載置されて支持体上足場が形成される。この支持体足場は、先にも述べたように固定具12を支点とする片持ち梁形式であり、材料強度によってはやや不安定になる場合もある。そこで、図8(a)に示すように、本体管3に補助台14を設けることができる。この補助台14としては角鋼管が例示され、2本(又は3本以上)の本体管3に架け渡されて設置される。本体管3の端部に設けられた補助台14(図では一番左側)に、載置材11の一端が係ることによって、片持ち梁状態は解消され、載置材11すなわち支持体上足場は安定する。そのため、載置材11はやや長く形成しておくことが望ましい。なお、図8(a)では、本体管3に3か所の補助台14が設けられているが、これらは支持体4を本体管3内に収容させたときに、載置材11を支えるために利用される。
3.足場の支持
本願発明の足場構造は、本体管3を鉛直支持する構造としている。そのため、本体管3は2点以上で支持される。なお、ここでいう2点以上での支持とは、「厳密に1点のみで支持する」という場合を除くという程度の意味であり、1箇所であっても本体管3のほぼ全面を支える場合は「2点以上での支持」に含まれる。また、前記したように、支持体上足場(支持体4)では鉛直支持されないため、スライド足場1は全体的に回転しようとする。これを防止すべく、本体管3の端部付近において鉛直下向きの反力が得られる構造をとる必要がある。
図9は、本体管3上に反力材7を設置することで、鉛直下向きの反力を得る状態を示す側面図である。この図に示すように、本体管3は、橋台と、コンクリート床版Brに垂下された吊り足場に(吊具S、吊チェーンC、足場パネルP)よって鉛直支持されている。これらの鉛直支持だけでは、支持体上足場(支持体4)に人が載ったときに、吊り足場の先端を中心にスライド足場1が回転(図では反時計回り)しようとする。そこで、この回転を防ぐため反力材7が設置される。この反力材は、軸方向の圧縮力に対して相当の強度を有し、本体管3と不動体であるコンクリート床版Brとの間に挟まれて、いわゆる突っ張り材としてはたらく。なお、スライド足場1の回転を効果的に防ぐため、反力材7はできる限り本体管3の端部(図9では右側)に設置することが望ましい。
図10は、図1及び図2に示すE−E矢視側面図であり反力材7の構造を示す詳細である。この図に示すように、2本の反力材7が略平行して立設され、両者間は斜材7cで連結されている。この反力材7としては、角鋼管(例えば、75×75×2.5)を例示することができるが、現場状況に応じて種々の材料が適宜選択される。反力材7の上部にはジャッキベース7aが設置されている。このジャッキベース7aによって高さ調整することで、反力材7に対して確実に反力が伝達される。なお、反力材7をアルミニウム製とした場合、大きな反力に抵抗できないおそれもあるので、単管パイプを内挿し、この単管パイプにジャッキベース7aからの荷重を預けることもできる。
図11は、本体管3上に重量物15を載置することで、鉛直下向きの反力を得る状態を示す側面図である。この図も(図10と同様)、本体管3は、橋台と、コンクリート床版Brに垂下された吊り足場(吊具S、吊チェーンC、足場パネルP)によって鉛直支持されている。これらの鉛直支持だけでは、やはりスライド足場1が回転しようとする。そこで、この回転を防ぐため重量物15が本体管3上に載置される。この重量物15は、いわゆるカウンターウェイトとして使用するもので、所定の重量を有するものであれば種々の物が利用できる。単位体積重量が大きい物(例えば、H形鋼)を利用すれば、載置スペースが軽減できるので好適である。また、スライド足場1の回転を効果的に防ぐため、重量物15はできる限り本体管3の端部(図11では右側)に設置することが望ましい。
(吊り足場設置方法)
図12は、本願発明の吊り足場設置方法を示す各ステップ図である。この方法は、軸方向に延びる構造物の下面に、連続して吊り足場を設置する場合、特に効果を発揮する。なお図12では、軸方向に延びる構造物として既設橋梁のコンクリート床版Brの例で説明している。
図12に示す工事は、既設橋梁のコンクリート床版Brの下面に電線管を添架することを目的として行われている。この電線管は、橋軸方向に所定間隔をもって取り付けられる門型架台Gを利用して添架され、この図では門型架台Gを設置しながら吊り足場を設置している状況を示している。なお、門型架台Gは、あらかじめコンクリート床版Brに設けられたインサートアンカーを利用するため、2.5m間隔(橋軸方向)で取り付けられる。
図12(a)は、第1スパンの吊り足場を設置する状況を示すステップ図である。ここで1スパンとは、門型架台Gの設置間隔で区切られる区間であり、第1の門型架台Gと第2の門型架台Gで形成されるのが第1スパンである。この図に示すように、発進側となる橋脚付近に最小限の枠組み足場が組み立てられ、この足場を利用して第1及び第2の門型架台Gが取り付けられる。次に、第1及び第2の門型架台Gの間をつなぐように水平継材Lを取り付ける。そして、この水平継材Lを利用して吊チェーンC(吊り材)を吊り下げ、この吊チェーンCに足場パネルPを装着する。このようにして、第1スパンの吊り足場が設置される。
図12(b)は、第3の門型架台G吊を設置する状況を示すステップ図である。図12(a)で設置した吊り足場の足場パネルP上に、2本(又は3本以上)の伸縮式足場材2を略平行となるように配置し、2本(又は3本以上)の本体管3の間に補強材3aを取り付ける。2本(又は3本以上)の本体管3とコンクリート床版Brの間に反力材7を設置し、ジャッキベース7aで高さ調整が行われる。その後、それぞれの支持体4をスライドさせて伸出状態とし、支持体4上に横梁4aを固定する。そして、横梁4aの上に手前側から足場板5を載せていき、足場板5を固定して手すり6を設置する。このようにして、支持体上足場を形成する。支持体上足場が形成できたら、これを利用して第3の門型架台Gを設置する。
図12(c)は、第2スパンの吊チェーンC(吊り材)を設置する状況を示すステップ図である。図12(b)で形成した支持体上足場を利用して、第2の門型架台Gと第3の門型架台Gの間に水平継材Lを取り付ける。そして、この第2スパンの水平継材Lを利用して吊チェーンC(吊り材)を吊り下げる。
図12(d)は、第2スパンの足場パネルPを装着する状況を示すステップ図である。図12(c)で吊り下げたて吊チェーンC(吊り材)に足場パネルPを装着するわけであるが、このとき伸出状態となった支持体上足場(支持体4)が作業の邪魔になる。そこで一旦、足場板5や手すり6を撤去して、支持体4をスライドさせながら本体管3内に収容する。このとき、手すり6用のスリットや足場板5用の載置材11が設けられている場合は、足場板5や手すり6を撤去する必要がないのは前述のとおりである。支持体4が本体管3内に収容されると、吊チェーンCに足場パネルPを装着し、第2スパンの吊り足場が設置される。
図12(e)は、ある程度吊り足場の設置が進んだ状況を示すステップ図である。図12(a)〜図12(d)の手順を繰り返し行うことで、徐々に吊り足場は設置されていき、最終的には目的とする全区間に連続して吊り足場と門型架台Gを設置することができる。
本願発明の「伸縮式足場構造、及びこれを用いた吊り足場設置方法」は、橋梁のコンクリート床版で利用する場合に限らず、足場を必要とするあらゆる高所作業で利用することができる。例えば、既に組み立てられた枠組み足場からでは手の届かない範囲で作業する場合、あるいは集合住宅のベランダから手の届かない範囲で作業する場合、など種々の場所で応用することができる。
1 スライド足場
2 伸縮足場材
3 本体管
3a (本体管の)補強材
4 支持体
4a (支持体の)横梁
5 足場板
6 手すり
6a (手すりの)支柱
6b (手すりの)手すり材
7 反力材
7a (反力材に付ける)ジャッキベース
7b (反力材に付ける)ステー
7c (反力材に付ける)斜材
8 函体
8a (函体の)底面
9 回転体
9a (回転体の)回転軸
9b (回転体の)リング
10 窓孔
11 載置材
12 固定具
13 離隔部
14 補助台
15 重量物
B (吊り足場の)ブラケット
Br (吊り足場の)コンクリート床版
C (吊り足場の)吊チェーン
G 門型架台
L 水平継材
S (吊り足場の)吊具
P (吊り足場の)足場パネル

Claims (5)

  1. 吊り足場上に設置される伸縮式足場構造であって、
    伸縮式足場材と、足場板と、反力材と、を備え、
    前記伸縮式足場材は、本体管と棒状又は管状の支持体を具備し、該本体管はその内部に該支持体を収容可能であるとともに、該支持体は該本体管内をスライド可能であり、
    2以上の前記伸縮式足場材が略水平姿勢であって略平行に配置されるとともに、前記本体管から伸出した2以上の前記支持体に複数の前記足場板が設置され、
    前記本体管とその上方にある不動物との間に、前記反力材が設置され、
    前記吊り足場上で鉛直支持されるとともに、前記支持体がワイヤーロープで上方から引張支持され、前記反力材によって上方から反力が得られる、ことを特徴とする伸縮式足場構造。
  2. 前記伸縮式足場材の前記本体管は、その表面から突出して設けられる2以上の函体と、該函体内に回転自由に納められる回転体と、を備え、
    前記函体の設置箇所には、前記本体管の一部を切り欠いた窓孔が形成され、
    前記回転体の一部は、前記窓孔から前記本体管内に突出し、
    前記支持体は、前記本体管内に突出した前記回転体と接触するとともに、前記回転体を回転させながらスライド可能であり、
    2以上の前記函体は、それぞれ平面状の底面を有し、該底面が略同一面となるように前記本体管に取り付けられ、
    前記函体の底面を接地させることで、前記本体管を略水平姿勢で載置できる、ことを特徴とする請求項1記載の伸縮式足場構造。
  3. 前記伸縮式足場材の前記支持体は、その軸方向に延設される手すりを具備し、
    前記伸縮式足場材の前記本体管には、前記手すりを嵌入させるスリットが設けられ、
    前記本体管が前記支持体を収容させるときには、前記手すりは前記スリットに嵌入する、ことを特徴とする請求項1又は請求項2記載の伸縮式足場構造。
  4. 前記伸縮式足場材の前記支持体は、足場板を載置する載置材と、該載置材を固定する固定具と、を具備し、
    前記固定具は、前記支持体の先端付近であって、該支持体の表面から突出して設けられ、
    前記載置材は、前記支持体と略平行に配置されるとともに、前記固定具で固定され、
    前記固定具で固定された前記載置材と、前記支持体との間には、離隔部が形成され、
    前記本体管が前記支持体を収容するときには、前記本体管の一部は前記離隔部内に嵌入される、ことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の伸縮式足場構造。
  5. 軸方向に延びる構造物の下面に、連続して吊り足場を設置する吊り足場設置方法において、
    既に設置された吊り足場上、又は別に設けた足場上に、請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の2以上の前記伸縮式足場材を、前記構造物の軸方向に対して略平行に配置し、
    前記伸縮式足場材の前記本体管と前記構造物との間に反力材を設置することで、上方からの反力を確保し、
    それぞれの前記本体管から、前記伸縮式足場材の前記支持体を伸出させ、
    前記支持体の上に足場板を手前から配置して、支持体上足場を形成し、
    前記支持体上足場を利用して、吊り足場用の吊り材を前記構造物の下面に取り付け、
    前記支持体をスライドさせて前記本体管内に収容し、
    前記構造物の下面に取り付けられた前記吊り材に、吊り足場用の足場板を手前から設置していく、ことを特徴とする吊り足場設置方法。
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