以下、本発明に係るタイヤの実施形態について、図面を参照して例示説明する。各図において共通する部材及び部位には同一の符号を付している。本明細書において、タイヤ幅方向とは、タイヤの回転軸と平行な方向をいう。タイヤ径方向とは、タイヤの回転軸と直交し、回転軸を中心とした半径方向をいう。タイヤ周方向とは、タイヤの回転軸を中心にタイヤが回転する方向をいう。
本明細書において、「トレッド踏面」とは、リムに組み付けるとともに規定内圧を充填したタイヤを、最大負荷荷重を負荷した状態(以下、「最大負荷状態」ともいう。)で転動させた際に、路面と接触することになる、タイヤの全周に亘る外周面を意味する。また、「トレッド端」とは、トレッド踏面のタイヤ幅方向の外側端を意味する。更に、本明細書において「接地長さ」とは、トレッド踏面が路面に設置するタイヤ周方向の最大長さを意味する。
本明細書において、「リム」とは、タイヤが生産され、使用される地域に有効な産業規格であって、日本ではJATMA(日本自動車タイヤ協会)のJATMA YEAR BOOK、欧州ではETRTO (The European Tyre and Rim Technical Organisation)のSTANDARDS MANUAL、米国ではTRA (The Tire and Rim Association, Inc.)のYEAR BOOK等に記載されているまたは将来的に記載される、適用サイズにおける標準リム(ETRTOのSTANDARDS MANUALではMeasuring Rim、TRAのYEAR BOOKではDesign Rim)を指すが、上記産業規格に記載のないサイズの場合は、タイヤのビード幅に対応した幅のリムをいう。「リム」には、現行サイズに加えて将来的に上記産業規格に含まれ得るサイズも含まれる。「将来的に記載されるサイズ」の例として、ETRTOのSTANDARDS MANUAL 2013年度版において「FUTURE DEVELOPMENTS」として記載されているサイズが挙げられる。
本明細書において、「規定内圧」とは、上記のJATMA YEAR BOOK等の産業規格に記載されている、適用サイズ・プライレーティングにおける単輪の最大負荷能力に対応する空気圧(最高空気圧)をいい、上記の産業規格に記載のないサイズの場合は、タイヤを装着する車両ごとに規定される最大負荷能力に対応する空気圧(最高空気圧)をいうものとする。また、本明細書において、「最大負荷荷重」とは、上記の産業規格に記載されている適用サイズのタイヤにおける最大負荷能力に対応する荷重をいい、上記の産業規格に記載のないサイズの場合には、タイヤを装着する車両ごとに規定される最大負荷能力に対応する荷重をいうものとする。
(第1実施形態)
以下、本発明の第1実施形態としての空気入りタイヤ1(以下、単に「タイヤ1」と記載する。)について、図面を参照して例示説明する。本実施形態では、タイヤ1として乗用車用のラジアルタイヤについて例示説明するが、他の種類のタイヤであってもよい。
図1は、タイヤ1のタイヤ幅方向断面図である。図1に示すように、タイヤ1は、一対のビード部11と、一対のサイドウォール部12と、トレッド部13と、を備える。サイドウォール部12は、ビード部11のタイヤ径方向Aの外側に連なる。トレッド部13は、一対のサイドウォール部12に連なる。トレッド部13のタイヤ幅方向Bの両端それぞれが、各サイドウォール部12に連なっている。
各ビード部11は、ビードコア11aと、このビードコア11aのタイヤ径方向Aの外側に配置されるビードフィラ11bと、を備える。タイヤ1は、一対のビードコア11a間に跨るカーカス14を備える。カーカス14は、有機繊維又はスチールからなるコードが配列されているカーカスプライから構成されている。更に、タイヤ1は、カーカス14のクラウン部のタイヤ径方向Aの外側に配置されているベルト15を備える。ベルト15は、有機繊維又はスチールからなるコードが配列されているベルトプライから構成されている。ベルト15を構成するベルトプライには、コードがタイヤ周方向Cに対して10°以上傾斜する傾斜ベルト層が含まれてもよい。また、ベルト15を構成するベルトプライには、コードがタイヤ周方向Cに沿って延在する周方向ベルト層が含まれてもよい。「コードがタイヤ周方向に沿って延在する」とは、コードのタイヤ周方向Cに対する傾斜角度が0°以上、10°未満であることを意味する。更に、ベルト15は、上述の傾斜ベルト層及び周方向ベルト層それぞれを少なくとも1層を含む、タイヤ径方向Aに積層された複数のベルトプライを備えてもよい。
また、タイヤ1は、ベルト15のタイヤ径方向Aの外側に配置されているトレッドゴム7と、カーカス14のサイド部のタイヤ幅方向Bの外側に配置されているサイドゴム8と、を備える。更に、タイヤ1は、カーカス14の内面に積層されているインナーライナ16を備える。
本実施形態のタイヤ1は、上述の内部構造を備えるが、内部構造は特に限定されず、他の内部構造を備えるタイヤであってもよい。また、本実施形態のタイヤ1は、タイヤ赤道面CLに対して対称な構成であるが、この構成に限られず、タイヤ赤道面CLに対して非対称なタイヤであってもよい。
図2は、タイヤ1のトレッド部13のトレッド踏面Tの一部を示す展開図である。タイヤ1は、トレッド踏面Tに、相互間に溝2を区画する少なくとも2つのトレッド陸部3を備える。具体的に、本実施形態のタイヤ1は、トレッド陸部3として、センター陸部3aと、2つの中間陸部3bと、2つのショルダ陸部3cと、を備える。センター陸部3aは、タイヤ赤道面CLが通過する陸部である。ショルダ陸部3cは、トレッド端TEに連なる陸部である。中間陸部3bは、タイヤ幅方向Bにおいてセンター陸部3aとショルダ陸部3cとの間に位置する陸部である。図2に示すように、本実施形態のタイヤ1は、トレッド部13のトレッド踏面Tに、溝2として、タイヤ周方向Cに延在する4つの周方向溝2aを備える。「周方向溝」とは、タイヤ周方向Cに略平行に、展開視(図2参照)で直線状、ジグザグ状又は波状に延在する、環状溝を意味する。より具体的に、本実施形態の4つの周方向溝2aは、センター陸部3aと中間陸部3bとの相互間に区画されている2つの第1周方向溝2a1と、中間陸部3bとショルダ陸部3cとの相互間に区画されている2つの第2周方向溝2a2と、を備える。図2に示すように、本実施形態の第1周方向溝2a1及び第2周方向溝2a2は、展開視で直線状に延在している。
本実施形態では周方向溝2aとして、上述した2つの第1周方向溝2a1及び2つの第2周方向溝2a2を備えるが、周方向溝2aの数及びタイヤ幅方向Bの位置は特に限定されない。したがって、例えば、トレッド踏面Tに3つ以下又は5つ以上の周方向溝2aを備えるタイヤであってもよい。また、例えば、タイヤ赤道面CLが通過する位置に周方向溝2aが配置されるタイヤであってもよい。
更に、図2に示すように、本実施形態のタイヤ1は、第2周方向溝2a2に連通し、タイヤ幅方向B外側に向かって延在する、溝2としての幅方向溝2bを備える。図2に示すタイヤ1では、互いにタイヤ周方向Cに離隔して配置された複数の幅方向溝2bが形成されている。そのため、本実施形態のショルダ陸部3cは、複数の幅方向溝2bによって分離されている複数のブロック陸部30により構成されている。
図2において、溝2としての幅方向溝2bは、タイヤ幅方向Bに略平行に延在する横溝であるが、幅方向溝2bは、第2周方向溝2a2からタイヤ幅方向B外側に向かって延在していればよく、タイヤ幅方向Bに略平行に延在する横溝に限られない。換言すれば、幅方向溝2bは、展開視(図2参照)において、タイヤ周方向Cに平行に延在しない部分を有すればよい。つまり、幅方向溝2bは、タイヤ幅方向Bに平行に延在する横溝のみならず、例えば、タイヤ幅方向Bに対して傾斜する傾斜溝であってもよい。更に、幅方向溝2bは、図2に示す展開視で直線状に延在する構成に限られず、図2に示す展開視で湾曲形状、ジグザグ状又は波状に延在する構成であってもよい。
また、図2において、両側のショルダ陸部3cに配置されている幅方向溝2bは、タイヤ赤道面CLに対して互いに対称の位置に配置されているが、タイヤ赤道面CLに対して互いに対称の位置に配置されていなくてもよい。したがって、一方のショルダ陸部3cに配置されている幅方向溝2bのタイヤ周方向Cの位置が、他方のショルダ陸部3cに配置されている幅方向溝2bのタイヤ周方向Cの位置と異なって配置されていてもよい。さらに、図2において、両側のショルダ陸部3cに配置されている幅方向溝2bの形状は、タイヤ赤道面CLに対して互いに対称の形状を有しているが、異なる形状を有していてもよい。
また、図2に示すタイヤ1のトレッド踏面Tにおけるトレッドパターンは、装着される車両との位置関係が予め定められていない対称パターンであるが、装着される車両との位置関係が予め定められている非対称パターンであってもよい。
図2に示すように、溝2としての周方向溝2aのうち、第1周方向溝2a1は、段付き狭幅部21と、広幅部22と、を備える。
第1周方向溝2a1を区画する溝壁41には、溝内に向かって突出する突出部80が形成されている。段付き狭幅部21は、第1周方向溝2a1のうち、溝壁41に形成されている突出部80により区画される部分である。また、段付き狭幅部21は、第1周方向溝2a1のうち、溝壁41に形成された突出部80における少なくとも2つの段部50により少なくとも2段階で溝幅が狭くなる。より具体的に、本実施形態の段付き狭幅部21は、突出部80に設けられている2つの段部50(本実施形態では第1段部50a及び第2段部50b)により、2段階で溝幅が狭くなっている。しかしながら、段付き狭幅部21は、本実施形態の構成に限られない。3つ以上の段部50が形成されている突出部とすることで、3段階以上で溝幅が狭くなる段付き狭幅部としてもよい。本実施形態の段付き狭幅部21の詳細は後述する(図3等参照)。第1周方向溝2a1のような溝2に、このような段付き狭幅部21を設けることで、気柱共鳴音を発生させる空気(音波)が段部50で反射し易い。段部50で反射した音波は、溝内で反射を繰り返して減衰する。これにより、気柱共鳴音の低減効果を得ることができる。また、気柱共鳴音の所望の低減効果を得るための段部50を少なくとも2つに分散して設けることで、各段部50を小型化できる。そのため、タイヤ転動時に各段部50が路面に接触することで発生するピッチノイズを低減できる。また、各段部50が小型化されて、各段部50の突出量が小さくなることで、各段部50の変形による破断等を抑制できる。以上のように、溝2に上述の段付き狭幅部21を設けることで、気柱共鳴音の低減効果を高めることができると共に、ピッチノイズの発生を抑制しつつ、段部50の耐久性を高めることができる。
広幅部22は、段付き狭幅部21よりも広幅の部分である。具体的に、広幅部22の最小溝幅W2minは、段付き狭幅部21の最大溝幅W1maxよりも広い(図3等参照)。本実施形態の広幅部22は、溝壁41において突出部80が形成されていない部分により区画されている。本実施形態の広幅部22の詳細は後述する(図3等参照)。
図2に示すように、本実施形態の第1周方向溝2a1は、段付き狭幅部21及び広幅部22のみにより構成されている。また、本実施形態の第1周方向溝2a1において、段付き狭幅部21及び広幅部22は、第1周方向溝2a1の延在方向(本実施形態ではタイヤ周方向C)に沿って交互に配置されている。なお、「溝の延在方向」とは、溝の長手方向を意味し、本実施形態では溝幅方向の中心点を連続させた中心線に平行な方向である。
なお、本実施形態では、溝2の一例としての第1周方向溝2a1が段付き狭幅部21及び広幅部22を備えるが、この構成に限られない。第2周方向溝2a2などの別の周方向溝2aが段付き狭幅部21及び広幅部22を備える構成であってもよい。更に、幅方向溝2bが、段付き狭幅部21及び広幅部22を備える構成であってもよい。但し、詳細は後述するが、本実施形態のように、溝2としての周方向溝2aが段付き狭幅部21及び広幅部22を備えることが好ましい。このようにすることで、タイヤ転動時に周方向溝2aが路面との間で区画する管において空気の共鳴により発生する気柱共鳴音を低減することができる。以下、溝2の一例としての第1周方向溝2a1に設けられた段付き狭幅部21及び広幅部22の詳細について説明する。
図3は、図2に示す1つの段付き狭幅部21及びその近傍を拡大して示す図である。図3に示すように、段付き狭幅部21は、タイヤ周方向Cの両側それぞれにおいて、広幅部22と連なっている。本実施形態の段付き狭幅部21は、第1狭幅部23と、第2狭幅部24と、を備える。第1狭幅部23及び第2狭幅部24はいずれも、タイヤ周方向Cの位置によらず略一定の溝幅を有する。以下、説明の便宜上、図3に示す段付き狭幅部21とタイヤ周方向Cの一方側(図3では下側)で連なる広幅部22を、「第1広幅部22a」と記載する。また、図3に示す段付き狭幅部21とタイヤ周方向Cの他方側(図3では上側)で連なる広幅部22を、「第2広幅部22b」と記載する。
図3に示すように、第1狭幅部23は、タイヤ周方向Cの一方側で、第1広幅部22aに連なっている。また、図3に示すように、第2狭幅部24は、タイヤ周方向Cの他方側で、第2広幅部22bと連なっている。第1狭幅部23は、タイヤ周方向Cの他方側で、第2狭幅部24と連なっている。このように、本実施形態の段付き狭幅部21は、第1狭幅部23及び第2狭幅部24からなる。
図3に示すように、第1周方向溝2a1の溝壁41は、第1広幅部22aの溝壁42と、第1狭幅部23の溝壁43と、第2狭幅部24の溝壁44と、第2広幅部22bの溝壁45と、を含む。図3に示すように、本実施形態の上述の溝壁42~45はいずれも、第1周方向溝2a1の延在方向(本実施形態ではタイヤ周方向C)に略平行であるが、第1周方向溝2a1の延在方向に対して傾斜していてもよい。但し、第2狭幅部24は、第1狭幅部23よりも狭幅である。つまり、第1狭幅部23の最小溝幅は、第2狭幅部24の最大溝幅以上である。そのため、第1狭幅部23の溝壁43、及び、第2狭幅部24の溝壁44は、第2狭幅部24の任意の位置での溝幅が、第1狭幅部23の任意の位置での溝幅よりも狭くなるように、構成される。
第1広幅部22aの溝壁42と、第1狭幅部23の溝壁43と、は第1周方向溝2a1の延在方向(本実施形態ではタイヤ周方向C)に直交して溝内に面する、突出部80における第1段部50aの第1壁部46を介して、連なっている。
第1狭幅部23の溝壁43と、第2狭幅部24の溝壁44と、は第1周方向溝2a1の延在方向(本実施形態ではタイヤ周方向C)に直交して溝内に面する、突出部80における第2段部50bの第2壁部47を介して、連なっている。
第2狭幅部24の溝壁44と、第2広幅部22bの溝壁45と、は第1周方向溝2a1の延在方向(本実施形態ではタイヤ周方向C)に直交して溝内に面する、突出部80における第3段部50cの第3壁部48を介して、連なっている。
上述した第1段部50aの第1壁部46、第2段部50bの第2壁部47、及び、第3段部50cの第3壁部48は、第1周方向溝2a1の延在方向に対して直交して延在しているが、例えば、第1周方向溝2a1の延在方向に対して傾斜していてもよい。また、第1壁部46、第2壁部47及び第3壁部48は、例えば、第1周方向溝2a1の延在方向に対して直交する平面部と、第1周方向溝2a1の延在方向に対して傾斜する平面部と、が連続する、複数の平面部から構成されていてもよい。但し、図10(a)に一変形例として示すように、第1周方向溝2a1内の気柱共鳴音を発生させる音波を第1周方向溝2a1の延在方向の反対側に反射させる観点では、第1壁部46及び第2壁部47は、溝幅方向の中央側に向かうにつれて、第1広幅部22a側に近づくように傾斜する面を少なくとも含むことが好ましく、このような面のみで構成されていることが、より好ましい。また、上記同様の観点で、第3壁部48は、溝幅方向の中央側に向かうにつれて、第2広幅部22b側に近づくように傾斜する面を少なくとも含むことが好ましく、このような面のみで構成されていることが、より好ましい。
その一方で、第1段部50a、第2段部50b及び第3段部50cの変形による破断等を抑制する観点では、第1壁部46、第2壁部47及び第3壁部48は、第1周方向溝2a1の延在方向に対して、図10(a)とは反対側に傾斜していることが好ましい。
具体的には、図10(b)に一変形例として示すように、第1段部50aの第1壁部46と、第1狭幅部23の溝壁43と、の展開視(図3参照)でのなす角度が鈍角となるように、第1壁部46は第1周方向溝2a1の延在方向に対して傾斜していることが好ましい。そのため、第1壁部46は、溝幅方向の中央側に向かうにつれて、第2広幅部22b側に近づくように傾斜する面を少なくとも含むことが好ましく、このような面のみで構成されていることが、より好ましい。
また、図10(b)に示すように、第2段部50bの第2壁部47と、第2狭幅部24の溝壁44と、の展開視(図3参照)でのなす角度が鈍角となるように、第2壁部47は第1周方向溝2a1の延在方向に対して傾斜していることが好ましい。そのため、第2壁部47は、溝幅方向の中央側に向かうにつれて、第2広幅部22b側に近づくように傾斜する面を少なくとも含むことが好ましく、このような面のみで構成されていることが、より好ましい。
更に、図10(b)に示すように、第3段部50cの第3壁部48と、第2狭幅部24の溝壁44と、の展開視(図3参照)でのなす角度が鈍角となるように、第3壁部48は第1周方向溝2a1の延在方向に対して傾斜していることが好ましい。そのため、第3壁部48は、溝幅方向の中央側に向かうにつれて、第1広幅部22a側に近づくように傾斜する面を少なくとも含むことが好ましく、このような面のみで構成されていることが、より好ましい。
以上のように、第1壁部46、第2壁部47及び第3壁部48は、第1周方向溝2a1の延在方向に対して傾斜することが好ましいが、その傾斜する向きは、気柱共鳴音を発生させる音波の反射促進の観点と、倒れ込み抑制の観点と、で異なる(図10(a)、図10(b)参照)。そのため、第1壁部46、第2壁部47及び第3壁部48の傾斜の向きは、所望の性能に応じて、適宜設定されればよい。但し、気柱共鳴音を発生させる音波の反射促進と、倒れ込み抑制と、の両立という観点では、図3に示す本実施形態の第1壁部46、第2壁部47及び第3壁部48のように、第1周方向溝2a1の延在方向に対して直交していることが特に好ましい。
再び図3を参照して、本実施形態の第1周方向溝2a1の詳細について説明する。図3に示すように、本実施形態の段付き狭幅部21は、第1段部50a及び第2段部50bにより、2段階で溝幅が狭くなる。具体的に、本実施形態の段付き狭幅部21は、第1段部50aにより、第1広幅部22aの溝幅W2から第1狭幅部23の溝幅W1aに狭くなる。更に、本実施形態の段付き狭幅部21は、第2段部50bにより、第1狭幅部23の溝幅W1aから第2狭幅部24の溝幅W1bに狭くなる。そして、第1周方向溝2a1は、第3段部50cにより拡幅され、段付き狭幅部21から、溝幅W2の第2広幅部22bに切り替わる。このように、本実施形態の段付き狭幅部21の溝幅W1a、W1bは、第1段部50a及び第2段部50bにより画定される。また、本実施形態の段付き狭幅部21の長さL1は、第1段部50a及び第3段部50cにより画定される。具体的に、本実施形態の段付き狭幅部21の長さL1は、第1狭幅部23の長さL1aと、第2狭幅部24の長さL1bと、の総和であり、第1周方向溝2a1の延在方向における第1壁部46と第3壁部48との間の最大長さである。
ここで、本実施形態の上述のW1a、W1b、W2は、「W1a/W1b≦1.2、かつ、W2/W1a≦1.2」を充足する。また、本実施形態の上述のL1は、タイヤ1の接地長さの80%以下とされている。また、図2に示す広幅部22の長さL2についても、タイヤ1の接地長さよりも小さい。このようにすることで、任意の接地領域に、少なくとも1つの段付き狭幅部21が部分的又は全体的に含まれる。
また、図3に示すように、本実施形態の突出部80は、一対の溝壁41それぞれの対向する位置に形成されている。より具体的に、本実施形態の第1段部50a及び、第2段部50b及び第3段部50cは、一対の溝壁41それぞれの対向する位置に形成されている。このようにすることで、段付き狭幅部21の最も溝幅が狭く、第2広幅部22bに連なる部分(本実施形態では第2狭幅部24)を、溝幅方向の中央側に配置することができる。そのため、本実施形態の第1周方向溝2a1によれば、最も流速が大きくなる溝幅方向の中央側で、段付き狭幅部21及び広幅部22が連通するため、複数の段部50を設けることで第1周方向溝2a1の排水性能が低下することを抑制できる。
更に、一対の溝壁41は、溝2としての第1周方向溝2a1の溝幅方向の中心を通過する、タイヤ1の回転軸に直交する平面(以下、「中心平面」と記載する。)に対して、対称な構成であっても、非対称な構成であってもよい。但し、本実施形態のように、一対の溝壁41は、中心平面に対して対称な構成であることが好ましい。このようすることで、上述した排水性能の低下を、より一層抑制できる。
なお、溝2としての第1周方向溝2a1の溝壁41、及び、溝底49には、微細な凹凸が形成されていることが好ましい。特に、溝壁41のうち、気柱共鳴音を発生させる音波の反射壁となる第1壁部46、第2壁部47及び第3壁部48に少なくとも微細な凹凸が形成されていることが好ましい。このような微細な凹凸を設けることで、段付き狭幅部21による消音効果に加えて、微細な凹凸の凹部に入り込んだ音が抜け出せなくなる吸音効果を得ることができる。微細な凹凸は、例えば、凹部の底部から凸部の頂部までの高さが0.1mm~1.0mmの範囲内にある凹凸であればよい。
また、図3に示すように、本実施形態の溝壁42及び第1壁部46は、展開視で、略直角に連続しているが、溝壁42と第1壁部46との入隅部のゴム量を増量することで補強部を設けてもよい。溝壁43と第2壁部47との入隅部、及び、溝壁45と第3壁部48との入隅部についても、同様の補強部を設けてもよい。このような補強部を設けることで、段部50の破断強度が増し、段部50の耐久性を高めることができる。
更に、本実施形態のタイヤ1では、タイヤ赤道面CLを挟んでタイヤ幅方向Bの両側に位置する第1周方向溝2a1それぞれが、段付き狭幅部21を備える。そして、図2に示すように、タイヤ赤道面CLを挟んでタイヤ幅方向Bの一方側に位置する第1周方向溝2a1の段付き狭幅部21のタイヤ周方向Cの位置は、タイヤ赤道面CLを挟んでタイヤ幅方向Bの他方側に位置する第1周方向溝2a1の段付き狭幅部21のタイヤ周方向Cの位置と、異なる。このように配置することで、タイヤ1の圧縮剛性のタイヤ周方向Cの位置によるばらつきを抑制できる。
また、図2に示すように、本実施形態の広幅部22は、第1周方向溝2a1の延在方向の位置によらず一定の溝幅W2を有するが、この構成に限られない。広幅部22は、その最小溝幅W2minが段付き狭幅部21の最大溝幅W1maxより大きい構成であれば、特に限定されない。なお、本実施形態の広幅部22は、タイヤ周方向Cの位置によらず、段付き狭幅部21の最大溝幅W1maxよりも広い一定の溝幅を有している。換言すれば、本実施形態の広幅部22の最小溝幅W2min及び最大溝幅W2maxは、タイヤ周方向Cの任意の位置の溝幅である。また、本実施形態の段付き狭幅部21の最大溝幅W1maxは、第1狭幅部23の溝幅W1aである。
次に、本実施形態の溝2としての第1周方向溝2a1の消音原理について説明する。まず、第1広幅部22aから第2広幅部22bに向かう音波について説明する。気柱共鳴音のもととなる音波の一部は、図3に示す第1広幅部22aから段付き狭幅部21に向かって進むことで、第1段部50aの第1壁部46によって反射する。反射した音波は、第1広幅部22aの内部で反射を繰り返し減衰する。また、段付き狭幅部21の第1狭幅部23内に進んだ音波についても、その一部は、第2段部50bの第2壁部47によって反射する。反射した音波は、第1広幅部22aの内部及び第1狭幅部23の内部で反射を繰り返し減衰する。そのため、第1広幅部22aから第2広幅部22bに向かう音波は、第1広幅部22aから段付き狭幅部21を介して第2広幅部22bに抜けることでエネルギーが弱まる。これにより、気柱共鳴音を低減することができる。
次いで、第2広幅部22bから第1広幅部22aに向かう音波について説明する。気柱共鳴音のもととなる音波の一部は、図3に示す第2広幅部22bから段付き狭幅部21に向かって進むことで、第3段部50cの第3壁部48によって反射する。反射した音波は、第2広幅部22bの内部で反射を繰り返し減衰する。そのため、第2広幅部22bから第1広幅部22aに向かう音波は、第2広幅部22bから段付き狭幅部21を介して第1広幅部22aに抜けることでエネルギーが弱まる。これにより、気柱共鳴音を低減することができる。
このように、段付き狭幅部21によれば、第1周方向溝2a1の延在方向の両方向それぞれに進行する音波のエネルギーを弱め、気柱共鳴音を低減することができる。
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態としてのタイヤ101について、図4、図5を参照して例示説明する。本実施形態のタイヤ101は、第1実施形態のタイヤ1と比較して、段付き狭幅部に隣接するトレッド陸部の表面の構成が相違するのみで、その他の構成は共通する。したがって、ここでは、相違点のみについて説明し、共通する構成は説明を省略する。
図4は、タイヤ101のトレッド踏面Tの展開図のうち、1つの段付き狭幅部21及びその近傍を拡大して示す図である。図5(a)は、図4のI-I線に沿う断面図である。図5(b)は、図4のII-II線に沿う断面図である。
図4、図5(a)、図5(b)に示すように、トレッド陸部103の表面のうち、第2狭幅部24に隣接する部分には、溝2としての第1周方向溝2a1の延在方向(本実施形態ではタイヤ周方向C)で第1狭幅部23から第2狭幅部24に向かってタイヤ径方向A内側に近づくように傾斜する傾斜面161が形成されている。より具体的に、本実施形態において、トレッド陸部103の表面のうち第2狭幅部24に隣接する部分とは、センター陸部103aの表面の第2狭幅部24近傍の部分、及び、中間陸部103bの表面の第2狭幅部24近傍の部分である。換言すれば、本実施形態において、トレッド陸部103の表面のうち第2狭幅部24に隣接する部分とは、溝壁41に形成された突出部180のタイヤ径方向A外側の面の一部である。図5(a)、図5(b)に示すように、上述の部分には、傾斜面161が形成されている。このような傾斜面161を設けることで、傾斜面161が設けられていない上述の第1実施形態と比較して、第1周方向溝2a1の溝容量が増し、第1周方向溝2a1の排水性を高めることができる。
次に、本実施形態の溝2としての第1周方向溝2a1の消音原理について説明する。まず、第1広幅部22aから第2広幅部22bに向かう音波については、上述した第1実施形態と同様であるため、ここでは説明を省略する。
第2広幅部22bから第1広幅部22aに向かう音波について説明する。気柱共鳴音のもととなる音波は、図4に示す第2広幅部22bから段付き狭幅部21に向かって進む。本実施形態では、第1実施形態の第3壁部48(図3参照)がない。音波の一部は、傾斜面161と路面との間の空間に入り込み、傾斜面161及び路面に繰り返し反射して減衰する。そのため、第2広幅部22bから第1広幅部22aに向かう音波は、第2広幅部22bから段付き狭幅部21を介して第1広幅部22aに抜けることでエネルギーが弱まる。これにより、気柱共鳴音を低減することができる。
このように、段付き狭幅部21によれば、第1周方向溝2a1の延在方向の両方向それぞれに進行する音波のエネルギーを弱め、気柱共鳴音を低減することができる。
(第3実施形態)
次に、本発明の第3実施形態としてのタイヤ201について、図6、図7を参照して例示説明する。本実施形態のタイヤ201は、第2実施形態のタイヤ101と比較して、傾斜面の構成が相違するのみで、その他の構成は共通する。したがって、ここでは、相違点のみについて説明し、共通する構成は説明を省略する。
図6は、タイヤ201のトレッド踏面Tの展開図のうち、1つの段付き狭幅部21及びその近傍を拡大して示す図である。図7(a)は、図6のIII-III線に沿う断面図である。図7(b)は、図6のIV-IV線に沿う断面図である。
図6、図7(a)、図7(b)に示すように、トレッド陸部203の表面のうち、第2狭幅部24に隣接する部分には、上述した第2実施形態と同様、傾斜面261を備える。本実施形態の傾斜面261は、トレッド陸部203の表面のうち、段付き狭幅部21に隣接する部分の、第1周方向溝2a1の延在方向の全域に亘って形成されている。つまり、本実施形態の傾斜面261は、上述した第2実施形態の傾斜面161(図4参照)よりも、第1周方向溝2a1の延在方向における延在領域が広い。なお、トレッド陸部203の表面のうち、段付き狭幅部21に隣接する部分とは、センター陸部203aの表面の段付き狭幅部21近傍の部分、及び、中間陸部203bの表面の段付き狭幅部21近傍の部分である。換言すれば、本実施形態において、トレッド陸部203の表面のうち、段付き狭幅部21に隣接する部分とは、溝壁41に形成された突出部280のタイヤ径方向A外側の面である。図7(a)、図7(b)に示すように、上述の部分には、傾斜面261が形成されている。このような傾斜面261によれば、上述した第2実施形態の傾斜面161(図4参照)と比較して、第1周方向溝2a1の溝容量が更に増し、第1周方向溝2a1の排水性を、より高めることができる。
本実施形態の溝2としての第1周方向溝2a1の消音原理については、上述した第2実施形態と同様であるため、ここでは説明を省略する。
(第4実施形態)
次に、本発明の第4実施形態としてのタイヤ301について、図8、図9を参照して例示説明する。本実施形態のタイヤ301は、第1実施形態のタイヤ1と比較して、突出部の構成が相違するのみで、その他の構成は共通する。したがって、ここでは、相違点のみについて説明し、共通する構成は説明を省略する。
図8は、タイヤ301のトレッド踏面Tの展開図のうち、1つの段付き狭幅部321及びその近傍を拡大して示す図である。図9(a)は、図8のV-V線に沿う断面図である。図9(b)は、図8のVI-VI線に沿う断面図である。
図6、図7(a)、図7(b)に示すように、本実施形態の溝2としての第1周方向溝2a1は、溝壁41に形成された突出部380における段部350により溝幅が狭くなる段付き狭幅部321を備える。ここで、本実施形態の突出部380は、トレッド陸部3の表面よりもタイヤ径方向A内側の位置のみに形成されている。そのため、本実施形態の段部350についても、トレッド陸部3の表面よりもタイヤ径方向A内側の位置のみに形成されている。つまり、本実施形態の段部350は、トレッド陸部3の表面、すなわち、路面と接地する面よりも、タイヤ径方向Aで内側に形成されている。換言すれば、本実施形態の段部350は、溝2としての第1周方向溝2a1の溝縁には形成されておらず、溝縁よりも溝底側の位置のみに形成されている。そのため、本実施形態の第1周方向溝2a1の溝縁の位置での溝幅は、タイヤ周方向Cにおいて段付き狭幅部321が位置する領域であるか広幅部22が位置する領域であるかに関わらず、略一定である。本実施形態の第1周方向溝2a1の溝縁の位置での溝幅は、タイヤ周方向Cの位置によらず広幅部22の溝幅W2で一定であるが、この構成に限られない。例えば、広幅部22の溝幅W2よりも広い溝幅としてもよい。
なお、本実施形態の溝壁41に形成されている突出部380においても、第1段部350a、第2段部350b及び第3段部350cの3つの段部350が設けられているが、段部350の数は本実施形態の数に限定されない。
このような突出部380とすることで、上述のとおり、トレッド陸部3の表面、すなわち路面と接地する面よりもタイヤ径方向A内側にセットバックした、路面に接触し難い段部350を実現することができる。そのため、段部350によれば、上述した段部50と同様の気柱共鳴音の低減効果に加えて、ピッチノイズの発生を、より抑制できる。更に、段部350は路面に接触し難いため、路面からの外力で破断するリスクも、より低減することができる。つまり、段部350によれば、上述した段部50と同様の気柱共鳴音の低減効果を確保しつつ、ピッチノイズの抑制効果、及び、段部350の耐久性、をより高めることができる。
なお、突出部380は、溝底から溝深さDの80%以下の位置に形成されていることが好ましい。また、本実施形態のように、突出部380は、溝底と一体で形成されていることが好ましい。更に、図9に示す断面視で、突出部380のタイヤ径方向Aの外側の上面は、タイヤ幅方向Bに略平行に延在しているが、タイヤ幅方向Bに対して傾斜していてもよい。また、図9に示す断面視で、突出部380の段付き狭幅部21に面する面は、タイヤ径方向Aに略平行に延在しているが、タイヤ径方向Aに対して傾斜していてもよい。
本発明に係るタイヤは、上述した実施形態で具体的に示す構成に限られず、特許請求の範囲を逸脱しない限り、種々の変更・変形が可能である。