JP7382146B2 - 建築板及び建築板の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、一般には、建築板及びその製造方法に関する。本発明は、詳細には、凹凸模様を有する基材上にクリアー塗膜が設けられた建築板と、その製造方法とに関する。
従来、建築板に種々の塗装を施すことが行われている。この塗装として、凹凸模様を有する建築板の凸部から凹部にかけて塗膜厚みが徐々に厚くなる塗装を施すことが知られている。このような塗装によれば、例えば、木目調の建築板において、カラークリアー塗料によって凸部から凹部にかけて塗膜厚みが徐々に厚くなることによって凸部から凹部にかけて徐々に濃色となり、木目を自然な風合いで表現することができる。
例えば特許文献1には、着色凹凸模様板の製造法が開示されている。特許文献1の製造法では、凹凸模様を有し且つ凸部が傾斜した基板の模様全体に着色塗料を塗布し、着色塗料を少なくとも指触乾燥状態まで乾燥し、次いで着色塗料の塗装面全体に着色塗料とは異色のカラークリアー塗料を塗布している(特許文献1の請求項2参照)。
特許文献1の製造法によると、凸部に塗布された塗料が凹部に流下することで、凹部の塗膜の厚みが厚くなり、凹部では塗料の色調が濃厚になる。また凸部に残留した塗料によって、凸部では色調が淡い色を呈する。そのため特許文献1の製造法によると、凸部から凹部にかけて色調を徐々に変化させることができる。
特公昭60-43789号公報
しかしながら、特許文献1の製造法では、凸部に塗布された塗料が凹部に流下した結果、凸部上の塗膜が薄くなり、凸部の意匠性が不十分となることがあった。
本発明は、上記の点に鑑みてなされたものであり、凸部から凹部にかけて塗膜厚みが徐々に厚くなるクリアー塗膜を有する建築板であって、凸部上の意匠性を高めることができる建築板及びその製造方法を提供することにある。
本発明に係る建築板は、凹凸模様を有する基材上に、前記凸部上から前記凹部上にかけて膜厚が徐々に大きくなっているクリアー塗膜が設けられている。前記クリアー塗膜は、二以上の層で構成されている。前記クリアー塗膜を構成する二以上の層のうち、最上部に位置する層が骨材を含む
本発明に係る建築板の製造方法は、前記建築板の製造方法であって、凹凸模様を有する基材上に、流動性を有するクリアー塗料を塗装することで、前記基材上に前記凸部上から前記凹部上に向かって膜厚が徐々に大きくなるクリアー塗膜を形成する。前記クリアー塗膜が、二以上の層で構成されており、骨材を含むクリアー塗料を最上部に塗布してなる
本発明に係る建築板では、2以上の層で構成されたクリアー塗膜が設けられているため、凸部上に設けられたクリアー塗膜の膜厚が薄くなりにくく、凸部上の意匠性を高めることができる。
図1Aは、本発明の一実施形態に係る建築板を示す概略の斜視図である。図1Bは、図1Aに示す建築板のX-X線の拡大した断面図である。 図2A~図2Dは、本発明の一実施形態に係る建築板の製造方法を示す概略の断面図である。
1.概要
本発明の一実施形態に係る建築板100は、図1A及び図1Bに示すように、凹凸模様を有する基材1上に、凸部11から凹部12に向かって膜厚が徐々に大きくなっているクリアー塗膜3が設けられている。クリアー塗膜3は、二以上の層で構成されている。
また本発明の一実施形態に係る建築板100の製造方法では、図2A~図2Dに示すように、凹凸模様を有する基材1上に、流動性を有するクリアー塗料を塗装することで、基材1上に、凸部11上から凹部12上に向かって膜厚が徐々に大きくなるクリアー塗膜3を形成する。このクリアー塗膜3は、二以上の層で構成されている。
本実施形態に係る建築板100では、クリアー塗膜3の膜厚を、凸部11上から凹部12にかけて徐々に大きくすることにより、凸部11から凹部12にかけてクリアー塗膜3の色調を徐々に変化させることができる。この色調の変化によって、自然な風合いを表現することができる。
そして本実施形態の建築板100では、クリアー塗膜3が2以上の層で構成されているため、凸部11上においてクリアー塗膜3の膜厚T2が薄くなりにくく、クリアー塗膜3の膜厚T2を十分確保することができ、それにより、建築板100に優れた意匠性を付与することができる。
2.詳細
以下、本実施形態に係る建築板100と、建築板100の製造方法とについて詳細に説明する。
2-1.建築板について
本実施形態に係る建築板100は、図1A及び図1Bに示すように、基材1と、クリアー塗膜3と、を含む。建築板100は、クリアー塗膜3と基材1との間に着色層2を含むことができる。
本実施形態の建築板100では、基材1、着色層2、クリアー塗膜3が、この順で積層されている。以下、これらの層について、詳細に説明する。
(1)基材について
基材1の平面視の形状は、特に限定されない。例えば本実施形態の基材1は、平面視矩形状である。
基材1は、凹凸模様を有している。本実施形態の基材1では、その凹凸模様によって木目が表現されているが、それに限定されず、種々の模様が表現されていてもよい。
本実施形態の基材1は、複数の凸部11及び凹部12を有しており、これら凸部11及び凹部12によって凹凸模様が形成されている。凸部11と凹部12とは隣り合って並んでおり、凸部11の隣には凹部12が存在し、また凹部12の隣には凸部11が存在している。
凸部11は、二つの傾斜面130と、二つの傾斜面130の間に位置する頂面110とで構成されている。また凹部12は、二つの傾斜面130と、二つの傾斜面130の間に位置する底面120とで構成されている。頂面110は、底面120よりも上方に位置し、また底面120は、頂面110よりも下方に位置する。また頂面110と底面120とは、傾斜面130を介して接続されている。そのため、隣合う凸部11及び凹部12では、一つの傾斜面130を共有している。底面120と傾斜面130との間の角度(傾斜角)は、クリアー塗膜3を形成するためのクリアー塗料の流動性(粘度)、クリアー塗膜3によって形成される意匠等に応じて適宜設定される。
図1Bに示す建築板100では、同じ高さの凸部11が複数設けられているが、これに限定されない。例えば、複数の凸部11の高さがそれぞれ異なっていてもよい。また図1Bに示す建築板100では、同じ深さの凹部12が複数設けられているが、これに限定されない。例えば、複数の凹部12深さがそれぞれ異なっていてもよい。異なる高さの凸部11、異なる深さの凹部12が存在することにより、クリアー塗膜3の色調に変化をつけることができ、自然な風合いをより表現しやすくなる。なお、凸部11の高さとは、基材1の裏面から頂面110までの距離を意味する。また凹部12の深さとは、基材1の裏面から底面120までの距離を意味する。
凸部11は、例えば、点状、木目を構成するような細長い突条などの形状をなし、特に木目を構成する場合には、ほぼ直線状の部分と湾曲状の部分とを有する不定形の突条をなしている。凸部11の幅は、例えば1mm以上3mm以下であることが好ましい。また、凸部11の頂面110は、図1、2に示すような平坦な傾斜面130に限らず、例えば、凸部11の突出方向に凸となる湾曲状をなしていてもよい。さらには、凸部11の頂面110と傾斜面130とは、図1、2に示すように不連続な角部を形成しているものに限らず、両者が連続的に滑らかに繋がっていてもよい。この場合、凸部11上に塗布されるクリアー塗料は、凹部12に向かって流動しやすくなるが、クリアー塗膜3が二層以上で構成されるため、凸部11上の塗膜厚みを確保することが可能となる。それにより、建築板100に優れた意匠性を付与することができる。また本実施形態では、凸部11の頂面110の延長線と、傾斜面130との間の角度Y(図2A参照)は、30°以上90°以下であることが好ましい。
凹部12と凸部11との高さの差D(頂面110と底面120との高さの差、以下、高さの差Dともいう)は、例えば、0.2mm以上7mm以下であることが好ましい。凹部12と凸部11との高さの差Dが0.2mm以上であることにより、クリアー塗膜3によって凹部12が埋まることを抑制することができる。また凹部12と凸部11との高さの差Dが7mm以下であることにより、クリアー塗膜3の色調の変化によって、自然な風合いを表現しやすい。
凹部12は、例えば、点状、木目を構成するような細長い溝状などの形状をなし、特に木目を構成する場合には、ほぼ直線状の部分と湾曲状の部分とを有する溝をなしている。また、凹部12は、図1、2に示すような所謂箱目地(一対の傾斜面130とその間の底面120からなる目地)に限らず、例えば、断面V字状、断面U字状(底面が裏側に凸となる湾曲状)をなしていてもよい。また、凹部12の幅(隣り合う凸部11の間隔)は、例えば、0.2mm以上7mm以下であることが好ましい。
本実施形態の基材1は、例えば、セメント系成形材料の硬化物である。セメント成形材料は、例えば、水硬性膠着材に、無機充填剤、繊維質材料等を配合することで調製される。水硬性膠着材の例には、ポルトランドセメント、高炉セメント、高炉スラグ、ケイ酸カルシウム、石膏等が含まれる。無機充填剤の例には、フライアッシュ、ミクロシリカ、珪砂等が含まれる。繊維質材料の例には、パルプ、合成繊維等の無機繊維、スチールファイバー等の金属繊維等が含まれる。
なお基材1は、セメント系の成形材料の硬化物に限定されない。基材1は、例えば、フレキシブルボード、珪酸カルシウム板、石膏スラグパーライト板、木片セメント板、プレキャストコンクリート板、ALC板、石膏ボード等の無機質板であってもよく、木質系基板であってもよく、金属系基板であってもよい。
基材1の表面には、シーラー塗膜が設けられていてもよい。この場合、着色層2の発色を向上させることができると共に、基材1と着色層2との密着性を向上させることができる。シーラー塗膜は、基材1上に公知のシーラー塗料を塗布することで形成することができる。
(2)着色層について
着色層2は、上述の通り、基材1上に設けられている。この着色層2によって基材1を着色することができる。本実施形態の着色層2は、基材1の表面全体に設けられているが、これに限定されない。例えば着色層2は、基材1の表面全体に設けられておらず、基材1の表面に着色層2が設けられていない部分が存在していてもよい。着色層2の色は均一であってもよく、着色層2が領域ごとに異なる色を有していてもよい。
着色層2は、着色塗料から形成することができる。着色塗料としては、下地の隠蔽力が高く、耐久性に優れ、種類豊富な色揃えを有し、外観意匠性向上に寄与可能なアクリル樹脂系のエナメル塗料であることが好ましい。具体的には、例えば、アクリルエマルション樹脂やアクリルシリコン系エマルション樹脂に、有機顔料又は無機顔料あるいはその両方、有機溶媒、消泡剤、増粘剤等の添加剤、水等を加えて撹拌分散して調製されたエナメル塗料を用いることができる。有機顔料の例には、ローダミンレーキ、メチルバイオレットレーキ、キノリンエローレーキ、マラカイトグリーンレーキ、アリザリンレーキ、カーミン6B、レーキレットC、ジスアゾエロー、レーキレット4R、クロモフタルエロー3G、クロモフタルスカーレットRN、ニッケルアゾエロー、パーマネントオレンジHL、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、フラバンスロンエロー、チオインジゴボルドー、ペリノンレッド、ジオキサドンバイオレット、キナクリドンレッド、ナフトールエローS、ピグロントグリーンB、ルモゲンエロー、シグナルレッド、アルカリブルー及びアニリンブラック等が含まれる。無機顔料の例には、炭酸カルシウム、酸化チタン(チタンホワイト)、紺青、群青、酸化鉄、アルミペースト、ブロンズ粉、カーボンブラック等が含まれる。有機顔料及び無機顔料として、上記以外の成分を含んでもよい。
着色層2の膜厚は、基材1の色味、着色層2の色、高さの差D等に応じて適宜設定される。基材1上に設けられた着色層2の膜厚T1は、均一であってもよく、均一でなくてもよいが、10μm以上30μm以下の範囲内であることが好ましい。この場合、着色層2による下地の隠蔽力を確保しやすく、また凸部11から凹部12にかけての色調の変化を生じさせやすく、また着色層2によって凹部12が埋まることを抑制することができる。
(3)クリアー塗膜について
クリアー塗膜3は、上述の通り、着色層2上に設けられている。本実施形態のクリアー塗膜3は、着色層2全体の上に設けられているが、これに限定されない。例えばクリアー塗膜3が着色層2全体に設けられず、着色層2上にクリアー塗膜3が設けられていない部分が存在してもよい。
クリアー塗膜3は、透光性を有している。そのため、クリアー塗膜3を介して、着色層2を視認することができる。クリアー塗膜3は、有色であることが好ましい。すなわちクリアー塗膜3は、透光性を有する有色の層(カラークリア-層)であることが好ましい。この場合、凸部11上から凹部12上にかけて、クリアー塗膜3の色調の変化を生じさせやすく、この色調の変化によって自然な風合いを表現しやすい。
クリアー塗膜3の膜厚T2は、上述の通り、凸部11上から凹部12上にかけて徐々に大きくなっている。クリアー塗膜3がカラークリア層である場合、膜厚T2が最も薄い凸部11(頂面110)上では、クリアー塗膜3の色調が最も淡くなる。また凸部11上から凹部12上にかけて膜厚T2が徐々に大きくなることで、凸部11から凹部12にかけてクリアー塗膜3の色調も徐々に濃くなる。そして、膜厚T2が最も厚くなる凹部12(底面120)上では、クリアー塗膜3の色調が最も濃くなる。
クリアー塗膜3の膜厚T2は、具体的には、5μm以上40μm以下であることが好ましい。クリアー塗膜3の厚みT2が5μm以上であることにより、凸部11から凹部12にかけての色調の変化によって、自然な風合いを表現しやすい。またクリアー塗膜3の厚みT2が40μm以下であることにより、クリアー塗膜3によって凹部12が埋まることを抑制することができる。
クリアー塗膜3は、骨材を含むことが好ましい。この場合、クリアー塗膜3の質感を向上させることができる。クリアー塗膜3は二以上の層で構成されていることから、クリアー塗膜3を構成する複数の層のうち、少なくとも一つ以上の層が骨材を含むことが好ましい。例えば最上部に位置する層、すなわちクリアー塗膜3の表面を構成する層が骨材を含む場合、クリアー塗膜3の表面を粗面にすることができる。それにより、クリアー塗膜3の表面が艶消しとなり、クリアー塗膜3の外観と、クリアー塗膜3の表面に触れた際の質感とを向上させることができる。また例えば最上部に位置していない層、すなわちクリアー塗膜3の表面を構成していない層が骨材を含む場合、クリアー塗膜3に差し込んだ光が、骨材によって乱反射されるため、クリアー塗膜3の光沢を低減させることができ、クリアー塗膜3の外観を向上させることができる。クリアー塗膜3に配合する骨材としては、例えば、アクリルビーズ、マイカ、砂、つや消し材、パールマイカ等が挙げられる。クリアー塗膜3は、一種の骨材を含んでいてもよく、二種以上の骨材を含んでいてもよい。またクリアー塗膜3は、TiO等の光触媒、ZnO、CeO等の紫外線カット材、PbO等の赤外線反射材、銀(銀イオン)等の抗菌剤を含んでいてもよい。
クリアー塗膜3は、上述の通り、二以上の層で構成されている。そのためクリアー塗膜3は、二つの層を含んでいてもよく、三以上の層を含んでいてもよい。本実施形態のクリアー塗膜3は、下クリアー塗膜31と、下クリアー塗膜31上に設けられた上クリアー塗膜32とを含む。以下、下クリアー塗膜31及び上クリアー塗膜32について説明する。
(i)下クリアー塗膜について
下クリアー塗膜31は、透光性を有している。下クリアー塗膜31は、有色であってもよく、無色であってもよい。クリアー塗膜3が無色である場合には、下クリアー塗膜31も無色であることが好ましく、クリアー塗膜3が有色である場合には、下クリアー塗膜31も有色であることが好ましい。
下クリアー塗膜31は、下クリアー塗料から形成することができる。下クリアー塗料としては、例えば、アクリルエマルション塗料を採用することができる。アクリルエマルション系塗料としては、例えば、アクリル系エマルションをベースにしたアクリル樹脂塗料、アクリルシリコン系エマルションをベースにしたアクリルシリコン樹脂塗料等を使用することができる。下クリアー塗膜31が有色である場合、下クリアー塗料は、染料、顔料等の種々の着色剤を含むことが好ましい。下クリアー塗料中の着色剤の割合は、樹脂固形分全量に対して、0.01重量%以上15重量%以下であることが好ましい。
下クリアー塗膜31の膜厚T21は、凸部11(頂面110)上から凹部12(底面120)上にかけて徐々に大きくなることが好ましい。この場合、クリアー塗膜3の膜厚T2も凸部11上から凹部12上にかけて徐々に大きくしやすい。下クリアー塗膜31の膜厚T21は、具体的には、10μm以上30μm以下であることが好ましい。下クリアー塗膜31の膜厚T21が10μm以上であることにより、クリアー塗膜3の膜厚を確保しやすく、また凸部11から凹部12にかけての色調の変化を生じさせやすい。下クリアー塗膜31の膜厚T21が30μm以下であることにより、クリアー塗膜3によって凹部12が埋まることを抑制することができる。
(ii)上クリアー塗膜について
上クリアー塗膜32は、透光性を有している。上クリアー塗膜32は、有色であってもよく、無色であってもよい。クリアー塗膜3が無色である場合には、上クリアー塗膜32も無色であることが好ましく、クリアー塗膜3が有色である場合には、上クリアー塗膜31も有色であることが好ましい。
本実施形態では、下クリアー塗膜31と上クリアー塗膜32とが同系色であることが好ましい。下クリアー塗膜31と上クリアー塗膜32とが同系色でない場合、クリアー塗膜3によって着色層2が隠蔽されたり、凸部11から凹部12にかけての色調の変化を生じにくくなることがある。その点、下クリアー塗膜31と上クリアー塗膜32とが同系色であることにより、クリアー塗膜3で着色層2が隠蔽されること抑制できると共に、凸部11から凹部12にかけて色調の変化を生じさせやすく、この色調の変化によって自然な風合いを表現しやすい。なお、下クリアー塗膜31と上クリアー塗膜32とが同系色であるとは、下クリアー塗膜31の色差ΔEと、上クリアー塗膜32の色差ΔEとの差が40以下であることを意味する。この色差ΔEは、CIE1976で規定されるL表色系の色差ΔEである。下クリアー塗膜31と上クリアー塗膜32とが同色であることも好ましい。すなわち下クリアー塗膜31と上クリアー塗膜32とが同一の塗料から形成されることも好ましい。この場合、下クリアー塗膜31と上クリアー塗膜32とによってクリアー塗膜3を形成する際に、一種類の塗料でクリアー塗膜3を形成することができるため、クリアー塗膜3を効率よく形成することができる。また下クリアー塗膜31と上クリアー塗膜32とが同一の塗料から形成されることにより、上クリアー塗膜31と下クリアー塗膜32との密着性を向上させることができる。
上クリアー塗膜32は、上クリアー塗料から形成される。上クリアー塗料としては、例えば、アクリルエマルション塗料を採用することができる。アクリルエマルション系塗料としては、例えば、アクリル系エマルションをベースにしたアクリル樹脂塗料、アクリルシリコン系エマルションをベースにしたアクリルシリコン樹脂塗料等を使用することができる。上クリアー塗膜32が有色である場合には、アクリルエマルション系塗料が、染料、顔料等の種々の着色剤を含むことが好ましい。上クリアー塗料中の着色剤の割合は、樹脂固形分全量に対して、0.01重量%以上15重量%以下であることが好ましい。また、上クリアー塗膜32を構成するクリアー塗料は、下クリアー塗膜31を構成するクリアー塗料よりも高粘度であってもよい。この場合、凸部11上にクリアー塗料が留まりやすく、塗膜をより厚くしやすくなる。
本実施形態の上クリアー塗膜32は骨材を含むことが好ましい。本実施形態の建築板100において、上クリアー塗膜32は最上部に位置することから、上クリアー塗膜32が骨材を含むことにより、クリアー塗膜3の表面を粗面にすることができる。それにより、クリアー塗膜3の表面が艶消しとなり、クリアー塗膜3の外観と、クリアー塗膜3の表面に触れた際の質感を向上させることができる。
本実施形態では、骨材の最大粒径が、凹部12と凸部11との高さの差D以下であることが好ましい。この場合、骨材で凹部12が埋まったり、クリアー塗膜3から骨材が露出し過ぎて、クリアー塗膜3の表面の質感が低下することを抑制することができる。骨材の最大粒径は、具体的には5μm以上40μm以下であることが好ましい。この場合、クリアー塗膜3の質感を向上させやすい。
上クリアー塗膜32の膜厚T22は、凸部11(頂面110)上から凹部12(底面120)上にかけて徐々に大きくなることが好ましい。この場合、クリアー塗膜3の膜厚T2も凸部11上から凹部12上にかけて徐々に大きくしやすい。上クリアー塗膜32の膜厚T22は、具体的には、5μm以上15μm以下であることが好ましい。上クリアー塗膜32の膜厚T22が5μm以上であることにより、クリアー塗膜3の膜厚を確保しやすく、また凸部11から凹部12にかけての色調の変化を生じさせやすい。上クリアー塗膜32の膜厚T22が15μm以下であることにより、クリアー塗膜3によって凹部12が埋まることを抑制することができる。
2-2.建築板の製造方法について
以下、図1A及び図1Bに示す建築板100の製造方法を、図2A~図2Dを参照しながら、各工程毎に説明する。
(1)基材の用意
まず凹凸模様を有する基材を用意する。基材は、例えば、セメント系の成形材料を成形して成形体を作製した後に、この成形体を養生硬化させることによって、作製することができる。成形方法は、特に限定されないが、例えば、押出成形、注型成形、抄造成形、プレス成形等を採用することができる。成形体の養生方法は、特に限定されないが、例えば、オートクレーブ養生、蒸気養生、常温養生等を採用することができる。
基材1の凹凸模様(凸部11及び凹部12)は、成形材料の成形時に型等で形成してもよく、平坦な成形体にプレス加工、エンボス加工等を施すことで形成してもよく、養生工硬化後に切削加工等で形成してもよい。
基材1には、必要に応じて、シーラー塗膜を設けてもよい。シーラー塗膜は、基材1上に公知のシーラー塗料を塗布することで形成することができる。
(2)着色層の形成
次に、基材1上に着色塗料を塗布することで着色層2を形成する。本実施形態では、基材1の全面に着色層1を設けるため、基材1上全面に着色塗料を塗布する。着色塗料の塗布方法は、基材1上に略均一な膜厚で着色塗料を塗布することができれば特に限定されないが、例えば、スプレーコート、シャワーコート、ロールコート、フローコート、カーテンコート、刷毛塗布、浸漬、インクジェット印刷等の方法を採用することができる。着色塗料の塗布量は、着色層2の膜厚T1が10μm以上30μm以下となるように、適宜設定される。
(3)クリアー塗膜の形成
次に、着色層2上にクリアー塗膜3を形成する。クリアー塗膜3を形成する際、着色層2が未乾燥の状態でクリアー塗膜3を形成するか、着色層2を指触乾燥状態まで乾燥させてからクリアー塗膜3を形成することが好ましい。また着色層2を指触乾燥状態まで乾燥させてからクリアー塗膜3を形成する場合、クリアー塗膜3を形成するための塗料に含まれる溶剤、分散剤等で、着色層2が溶解されて、滲みが生じることを抑制することができる。着色層2を指触乾燥状態まで乾燥させる場合、乾燥方法は特に限定されない。
本実施形態では、クリアー塗膜3が下クリアー塗膜31及び上クリアー塗膜32を含むため、着色層2上に下クリアー塗料を塗布して下クリアー塗膜31を形成した後に、下クリアー塗膜31上に上クリアー塗料を塗布して上クリアー塗膜32を形成することにより、クリアー塗膜3を形成することができる。
下クリアー塗膜31は、未乾燥状態の着色層2か、指触乾燥状態の着色層2に下クリアー塗料を塗布することによって形成することができる。この下クリアー塗料は、流動性を有することが好ましい。この場合、凸部11(頂面110)上及び傾斜面130上に塗布された下クリアー塗料が凹部12(底面120)に向かって流れることができる。これにより、下クリアー塗膜の膜厚T21を、凸部11(頂面110)上から凹部12(底面120)上にかけて徐々に大きくすることができる。そのため、下クリアー塗料が凸部11上から凹部12上に向かって流れるように、下クリアー塗料の粘度が調整されることが好ましい。具体的には、下クリアー塗料の粘度は、0.05mPa・s以上0.15mPa・s以下であることが好ましい。
上クリアー塗膜32は、下クリアー塗膜31上に上クリアー塗料を塗布することによって形成することができる。この上クリアー塗料は、流動性を有することが好ましい。この場合、凸部11(頂面110)上及び傾斜面130上に塗布された上クリアー塗料が凹部12(底面120)に向かって流れることができる。これにより、上クリアー塗膜の膜厚T22を、凸部11(頂面110)上から凹部12(底面120)上にかけて徐々に大きくすることができる。そのため、上クリアー塗料が凸部11上から凹部12上に向かって流れるように、上クリアー塗料の粘度が調整されることが好ましい。具体的には、上クリアー塗料の粘度は、0.05mPa・s以上0.15mPa・s以下であることが好ましい。
本実施形態では、下クリアー塗膜31と上クリアー塗膜32とが同系色であることが好ましいことから、下クリアー塗料と上クリアー塗料とが同系色の塗料であることが好ましい。また下クリアー塗料と上クリアー塗料とが同一の塗料であることも好ましい。この場合、一種類の塗料から下クリアー塗膜31及び上クリアー塗膜32を作製することができるため、クリアー塗膜3を効率良く形成することができる。
下クリアー塗料及び上クリアー塗料の塗布方法は、特に限定されないが、例えば、スプレーコート、シャワーコート、ロールコート、フローコート、カーテンコート等の方法を採用することができる。下クリアー塗料及び上クリアー塗料の塗布後には、公知の乾燥方法で、乾燥させることが好ましい。
上記(1)~(3)の工程により、図1A及び図1Bに示す建築板100を製造することができる。
2-3.変形例
建築板100の構成は、上記の構成に限定されない。
図1Bに示す建築板100は着色層2を備えているが、これに限定されない。例えば建築板100が着色層2を備えておらず、基材1上に直接クリアー塗膜3が設けられていてもよい。
図1Bに示す建築板100では、上クリアー塗膜32のみが骨材を含み、下クリアー塗膜3は骨材を含んでいないが、これに限定されない。例えば上クリアー塗膜32と下クリアー塗膜31の両方が骨材を含んでいてもよい。また例えば上クリアー塗膜32が骨材を含まず、下クリアー塗膜31のみが骨材を含んでいてもよい。
図1Bに示す建築板100では、クリアー塗膜3が下クリアー塗膜31及び上クリアー塗膜32で構成されているが、これに限定されない。例えばクリアー塗膜3が下クリアー塗膜31及び上クリアー塗膜21以外の層を含んでいてもよい。
図1Bに示す建築板100では、下クリアー塗膜31の膜厚が凸部11上から凹部12上にかけて徐々に大きくなると共に、上クリアー塗膜32の膜厚が凸部11上から凹部12上にかけて徐々に大きくなっているが、これに限定されない。例えば下クリアー塗膜31の膜厚が凸部11上から凹部12上にかけて徐々に大きくなるが、上クリアー塗膜32の膜厚が均一であってもよい。また例えば、下クリアー塗膜31の膜厚が均一で、上クリアー塗膜32の膜厚が凸部11上から凹部12上にかけて徐々に大きくなっていてもよい。
図1Bに示す建築板100では、下クリアー塗膜31及び上クリアー塗膜32がいずれもカラークリアー層であるが、これに限定されない。例えば下クリアー塗膜31及び上クリアー塗膜32が、透光性を有し、かつ、無色の層であってもよい。この場合、クリアー塗膜3の膜厚が、凸部11上から凹部12上にかけて徐々に大きくなることによって、クリアー塗膜11の屈折率が、凸部11上から凹部12上にかけて徐々に変化する。これによっても、凸部11から凹部12にかけてクリアー塗膜3に色調の変化を生じさせることができる。
3.まとめ
第一の態様に係る建築板(100)は、凹凸模様を有する基材(1)上に、凸部(11)上から凹部(12)上にかけて膜厚が徐々に大きくなっているクリアー塗膜(3)が設けられている。クリアー塗膜(3)は、二以上の層で構成されている。
この場合、凸部(11)上においてクリアー塗膜(3)の膜厚(T2)が薄くなりにくいため、クリアー塗膜(3)の色調を、凸部(11)上から凹部(12)上にかけて徐々に変化させることができ、このクリアー塗膜(3)の色調の変化によって、自然な風合いを表現することができる。また、凸部(11)上でクリアー塗膜(3)の膜厚(T2)を十分確保することができる。それにより、建築板(100)に優れた意匠性を付与することができる。
第二の態様に係る建築板(100)は、第一の態様において、クリアー塗膜(3)が、下クリアー塗膜(31)と、下クリアー塗膜(31)上に設けられた上クリアー塗膜(32)とを含む。下クリアー塗膜(31)と上クリアー塗膜(32)とが同系色である。
この場合、クリアー塗膜(3)で着色層(2)が隠蔽されること抑制できると共に、凸部(11)上から凹部(12)上にかけて色調の変化を生じさせやすく、この色調の変化によって自然な風合いを表現しやすい。
第三の態様に係る建築板(100)は、第一又は第二の態様において、クリアー塗膜(3)が骨材を含む。
この場合、クリアー塗膜(3)の質感を向上させることができる。
第四の態様に係る建築板(100)は、第三の態様において、骨材の最大粒径は、凹部(11)と凸部(12)との高さの差D以下である。
この場合、骨材で凹部(12)が埋まったり、クリアー塗膜(3)から骨材が露出し過ぎて、クリアー塗膜(3)の表面の質感が低下することを抑制することができる。
第五の態様に係る建築板(100)は、第一~第四のいずれか一の態様において、基材(1)とクリアー塗膜(3)との間に着色層(2)が設けられている。
この場合、基材(1)を着色することができる。
第六の態様に係る建築板(100)の製造方法では、凹凸模様を有する基材(1)上に、流動性を有するクリアー塗料を塗装することで、基材(1)上に凸部(11)上から凹部(12)上にかけて膜厚が徐々に大きくなるクリアー塗膜(3)を形成する。クリアー塗膜(3)は、二以上の層で構成されている。
この場合、凸部(11)上においてクリアー塗膜(3)の膜厚(T2)が薄くなりにくいため、クリアー塗膜(3)の色調を、凸部(11)上から凹部(12)上にかけて徐々に変化させることができ、このクリアー塗膜(3)の色調の変化によって、自然な風合いを表現することができる。また、凸部(11)上でクリアー塗膜(3)の膜厚(T2)を十分確保することができ、それにより、建築板(100)に優れた意匠性を付与することができる。
1 基材
11 凸部
12 凹部
2 着色層
3 クリアー塗膜
31 下クリア-塗膜
32 上クリアー塗膜
100 建築板

Claims (5)

  1. 凹凸模様を有する基材上に、前記凸部上から前記凹部上にかけて膜厚が徐々に大きくなっているクリアー塗膜が設けられ、
    前記クリアー塗膜は、二以上の層で構成されており、
    前記クリアー塗膜を構成する二以上の層のうち、最上部に位置する層が骨材を含む、
    建築板。
  2. 前記クリアー塗膜は、下クリアー塗膜と、前記下クリアー塗膜上に設けられた上クリアー塗膜とを含み、
    前記下クリアー塗膜と前記上クリアー塗膜とが同系色である、
    請求項1に記載の建築板。
  3. 前記骨材の最大粒径は、前記凹部と前記凸部との高さの差以下である、
    請求項1又は2に記載の建築板。
  4. 前記基材と前記クリアー塗膜との間に着色層が設けられている、
    請求項1からのいずれか一項に記載の建築板。
  5. 請求項1からのいずれか一項に記載の建築板の製造方法であって、
    凹凸模様を有する基材上に、流動性を有するクリアー塗料を塗装することで、前記基材上に前記凸部上から前記凹部上に向かって膜厚が徐々に大きくなるクリアー塗膜を形成し、前記クリアー塗膜が、二以上の層で構成されており、骨材を含むクリアー塗料を最上部に塗布してなる
    建築板の製造方法。
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