JP7378648B1 - 透水性シートとその製造方法 - Google Patents

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Abstract

コンクリート成形用の型枠Fと、型枠Fに充填される生コンクリートCとの間に設けられる透水性シート10であって、生コンクリートCに接し、織布により構成された第1層11を備える。第1層11は、撥水性を有する。

Description

本発明は、透水性シートとその製造方法に関する。
コンクリート構造物を製造する方法は、型枠で囲まれた空間に流動性の生コンクリートを流し込み、この生コンクリートを固化させる工程を含む。この工程において、生コンクリートから水分を逃がすなどの目的で用いられる、型枠と流し込む生コンクリートとの間に配置される透水性シートが知られている。
そのような透水性シートとして、例えば特許文献1には、コンクリートに当接する表層と排水層としての裏層とが熱圧着により積層された積層シートが開示されている。前記積層シートにおける前記排水層は、不織布シートから構成されている。
特許第6737448号公報
ところで、透水性シートを用いて生コンクリートを固化させる場合、生コンクリートが、透水性シートとの界面付近に多数の気泡が残った状態で固化してしまう場合がある。その場合、固化したコンクリート表面に多数の気泡の形状が現れて、コンクリート表面が平滑にならず、アバタ、ピンホール、クラック等が発生して美観を損なうという問題がある。そして、この問題は、コンクリートの耐久性を低下させるという更なる問題を引き起こし得る。
また、特許文献1の透水性シートのように、コンクリートに面する層が不織布で構成されていると、この不織布層にコンクリート構成物が付着しやすい場合があり、このことによってもコンクリート表面の平滑さが失われる場合がある。特許文献1には、表層の芯鞘繊維を熱圧着の際の熱溶融によって表面の繊維の隙間を閉じることが記載されているが(特許文献1の段落0011を参照)、表層の繊維が熱溶着されていると、表層とコンクリート表面とが密着しすぎるようになる。すると、表層を、コンクリート表面から剥がすのに大きな力が必要となり、作業に手間がかかるという問題がある。
本発明の課題は、透水性シートを用いて生コンクリートを固化させた場合に、コンクリート表面を平滑に仕上げ、且つ、透水性シートを固化したコンクリート表面から剥がしやすくすることである。
本発明は、コンクリート成形用の型枠と、当該型枠に充填される生コンクリートとの間に設けられる透水性シートであって、前記生コンクリートに接し、織布により構成された第1層を備え、前記第1層は、撥水性を有する。
本発明は、前記第1層において前記型枠側に設けられ、不織布により構成された第2層と、前記第2層において前記型枠側に設けられ、前記第2層を前記型枠に張り付けるための粘着層としての第3層とを更に備える透水性シートの製造方法であって、前記第2層の前記型枠側の面に、ホットメルト材をドット状に塗工し又はホットメルト材を噴霧により塗工することにより、前記第3層を形成する。
本発明によれば、生コンクリートに接する第1層が織布により構成され且つ撥水性を有することにより、コンクリート表面が平滑に仕上がり、且つ、透水性シートがコンクリート表面から剥がしやすくなる。
実施形態に係る透水性シートの断面図である。 実施例1-1~1-5並びに比較例1-1~1-4の評価試験に用いた型枠の斜視図である。
(実施形態)
以下、実施形態について詳細に説明する。
―透水性シートの構成―
図1は、実施形態に係る透水性シート10を示す。透水性シート10は、コンクリート成形用の型枠Fと、型枠Fに充填される流動性の生コンクリートCとの間に設けられ、生コンクリートCの水分や空気を生コンクリートC外部に排出するためのものである。すなわち、透水性シート10は、透水性と通気性とを備えている。
透水性シート10は、生コンクリートCに接する第1層11と、第1層11において溶着層Wを介して型枠F側に設けられた第2層12と、第2層12において型枠F側に設けられ、第2層12を型枠Fに張り付けるための粘着層としての第3層13とを備える。
なお、以下では、透水性シート10の厚さ方向について、生コンクリートC側を「表側」といい、型枠F側を「裏側」という場合がある。
―第1層―
第1層11は、織布により構成されている。織布を形成する繊維としては、ポリエステル繊維、ナイロン繊維等の合成繊維、レーヨン、大麻、亜麻、葛、楮、木綿、バショウ等の植物繊維、羊毛、蚕糸等の動物繊維が挙げられ、これらのうち、ポリエステル繊維又はナイロン繊維が好ましい。これら繊維の平均繊維径は、280dtex以上が好ましく、560dtexがより好ましい。また、第1層11は、後述の製造方法で説明するように、撥水コーティング剤で撥水処理されている。このため、第1層11は、撥水コーティング剤に由来するベース樹脂、フィラー等を含有する。
撥水コーティング剤のベース樹脂としては、例えば、シリコーン樹脂、フッ素樹脂、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂等が挙げられ、第1層11の撥水性を高くするという観点からシリコーン樹脂及びフッ素樹脂の少なくとも一方含有することが好ましく、これらを両方含有することがより好ましい。更に、同様の観点から、架橋剤を含有していることが好ましい。架橋剤としては、例えばブロックイソシアネートが挙げられ、具体的には、芳香族系又は脂肪族系のブロックイソシアネートが挙げられる。例えば、透水性シート10が、長期間屋外に放置されことが想定される場合は、耐候性に強い脂肪族系の無黄変タイプのブロックイソシアネートを用いることが好ましい。なお、ブロックイソシアネートには、乖離温度として、低温乖離タイプ(90℃~)及び高温乖離タイプ(150℃~)があるなど、種類が豊富であり、様々な機能性を付与できる。更に、製造方法の条件(例えば、撥水コーティング剤を乾燥させる際の条件)などによって適宜選択できるので、ブロックイソシアネートを用いることで、品質設計の自由度が高くなる。
フィラーとしては、撥水コーティング剤がシリコーン樹脂を含有する場合には、第1層11の撥水性を非常に高くするという観点から、親水性タイプの多孔性微粉末シリカ、親水性タイプのヒュームドシリカ、疎水性タイプの多孔性微粉末シリカ等を含有することが好ましい。なお、撥水コーティング剤はフィラーを含有していなくてもよい。
第1層11は、第1層11の撥水性を高くするという観点から、撥水性の指標となる水との接触角が90°以上であることが好ましく、120°以上であることがより好ましく、125°以上であることが更により好ましい。この接触角は、温度25±5℃及び湿度50±10%の条件下において、実施形態に係る第1層11の表面にイオン交換水の水滴を滴下して接線法により測定される。
第1層11は、撥水性及び透水性を高くするという観点から、接触角が90°以上であり且つ透湿度が50g/m・h以上であることがより好ましく、接触角が90°以上であり且つ透湿度が200g/m・h以上であることがより好ましい。
第1層11は、透水性を高くするという観点から、耐水度が1000mm以下であることが好ましく、400mm以下であることがより好ましい。
―溶着層―
溶着層Wは、溶融した樹脂により第1層11と第2層12とを互いに結合している。溶着層Wは、ホットメルト材を溶融して形成されている。ホットメルト材を用いる場合には、平面視(すなわち表側又は裏側から見て)でドット状又はライン状に形成することが好ましい。ドット状の場合、ドット間隔は0.1mm以上3mm以下が好ましく、ドットサイズは0.2mm以上2mm以下が好ましい。ホットメルト材は、一液型接着剤である。ホットメルト材の材質としては、エチレン酢酸ビニル共重合体、ポリオレフィン、ポリアミド、合成ゴム、アクリル系ポリマー等が挙げられ、これらのうち少なくとも1種を含有することが好ましい。また、塗布加工性の観点から、ホットメルト材は、アクリル樹脂に増粘剤等を含有させたものであることがより好ましい。
―第2層―
第2層12は、不織布により構成されている。不織布を形成する繊維としては、特に限定されるものではないが、合成繊維であることが好ましく、例えば、ポリエステル繊維、ポリプロピレン繊維、ポリエチレン繊維、ポリアミド繊維、レーヨン繊維、アクリル繊維、セルロース繊維、ナイロン繊維、ポリオレフィン繊維、ビニロン繊維、ガラス繊維等が挙げられる。不織布の材質としては、これらのうち、ポリエステル繊維、ポリプロピレン繊維又はポリエチレン繊維が好ましい。
不織布を形成する繊維の繊維径は、特に限定されるものではないが、例えば5μm以上であり、好ましくは10μm以上である。不織布の目付は、第3層13を設けやすくするという観点から、10g/m以上が好ましく、透水性を高くするという観点から、200g/m以下が好ましい。また、不織布を形成する繊維の構造として、芯鞘構造が挙げられる。
―第3層―
第3層13は、特に限定されるものではないが、例えば溶着層Wと同様に構成されている。すなわち、第3層13は、ホットメルト材を溶融して形成されている。
―透水性シートの製造方法―
透水性シート10の製造方法は、第1層11としての織布及び第2層12としての不織布をそれぞれ準備する第1工程と、織布に撥水処理をする第2工程と、第1工程及び第2工程後に、第1層11と第2層12とを互いに積層する第3工程と、第3工程後に、第2層12に粘着層としての第3層13を形成する第4工程とを含む。
―第1工程―
第1工程では、織布及び不織布を準備できればよく、特に限定されるものではないが、不織布を準備する方法としては、スパンボンド法、メルトブローン法、エアレイド法、乾式法、湿式法等により作製することが挙げられる。
―第2工程―
第2工程では、第1層11に対して、撥水コーティング剤を塗工し又は含浸する。撥水コーティング剤は、前記のベース樹脂及びフィラーに加え、ベース樹脂及びフィラーを分散させる溶剤を更に含有することが好ましい。かかる溶剤としては、水及び有機溶剤が挙げられ、有機溶剤としては、芳香族炭化水素溶剤、脂肪族炭化水素溶剤、アルコール系溶剤、ケトン系溶剤、エステル系溶剤等が挙げられる。芳香族炭化水素溶剤としては、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン等が挙げられる。脂肪族炭化水素溶剤としては、例えば、n-ヘキサン、イソヘキサン、シクロヘキサン、n-オクタン、イソオクタン、デカン、ドデカン等が挙げられる。アルコール系溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール等が挙げられる。ケトン系溶剤としては、例えば、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等が挙げられる。エステル系溶剤としては、例えば、酢酸エチル、酢酸イソブチル等が挙げられる。有機溶剤は、これらのうちの1種又は2種以上を含むことが好ましく、非常に高い撥水性能を発現するという観点から、芳香族炭化水素溶剤を含むことが好ましく、トルエン及び/又はキシレンを含むことがより好ましい。
撥水コーティング剤は、ベース樹脂の硬化反応の触媒を含有していてもよい。ベース樹脂がシリコーン樹脂の場合、かかる触媒としては、例えば、有機チタン化合物、有機アルミニウム化合物、有機ジルコニウム化合物、有機亜鉛化合物、有機スズ化合物、有機コバルト化合物、リン酸化合物等が挙げられる。触媒は、これらのうちの1種又は2種以上を含むことが好ましく、有機チタン化合物を含むことがより好ましい。触媒の含有量は、バインダ樹脂の100質量部に対して、例えば3質量部以上9質量部以下である。
撥水コーティング剤は、ベース樹脂を、第1層11の織布を構成する繊維に結合させ、織布に密着させるための架橋剤を含有していてもよい。かかる架橋剤としてはブロックイソシアネートが好ましい。
撥水コーティング剤における溶剤以外の固形分濃度は、非常に高い撥水性能を発現する均一な撥水層を形成する観点から、好ましくは0.1質量%以上10質量%以下、より好ましくは0.2質量%以上5質量%以下、更により好ましくは0.3質量%以上1質量%以下である。なお、この固形分濃度は、撥水コーティング剤が所望の粘度になるように、前記数値範囲外に設定してもよい。
第1層11への撥水コーティング剤の塗工手段としては、例えば、マイヤーバーコート、アプリケーターコート、スプレーコート、ローラーコート、グラビアコーターコート、ダイコーターコート、リップコーターコート、コンマコーターコート、ナイフコーターコート、リバースコ-ターコート、スピンコーターコート、ディップコート、刷毛塗り等が挙げられる。
―第3工程―
第3工程では、ホットメルト材を溶融して溶着層Wを形成する。ホットメルト材を用いる場合、第1層11の裏側の面又は第2層12の表側の面に、粘性のホットメルト材を塗工する。このとき、通気性及び透水性を阻害しないようにするという観点から、粘性のホットメルト材をドット状に塗工し又はホットメルト材を噴霧により塗工することが好ましい。
ホットメルト材をドット状に塗工する方法としては、例えば、周面に複数の孔の空いた円筒状の金属製のロールを用い、ロールの内部からホットメルト材が当該孔を通って外部に押し出されるようにし、押し出されたホットメルト材を第1層11の裏側の面又は第2層12の表側の面に塗工する方法が挙げられる。
ホットメルト材を噴霧により塗工する方法としては、例えば、スプレーガンを用い、ホットメルト材をスプレーノズルの先端から噴霧して第1層11の裏側の面又は第2層12の表側の面に塗工する方法が挙げられる。
次いで、ホットメルト材を軟化させる温度まで加熱する。ホットメルト材の軟化点は、例えば90℃以上であることが好ましい。ホットメルト材が固化すると、第1層11の裏側の面と第2層12の表側の面とが互いに結合する。
―第4工程―
第4工程では、第2層12の裏側の面に、ホットメルト材を塗工して、これを溶融させることにより第3層13を形成する。具体的な手順は、第3工程と同様である。
あるいは、第2層12の裏側の面に、表面に粘着加工を施した保護フィルム(図示しない)を第2層12の裏側の面に張り付けることにより、保護フィルムの粘着層を第2層12の裏側の面に転写させることにより、第3層13を設けてもよい。
なお、第1工程~第4工程を行う順序は、前記のとおりでなくてもよく、例えば、第4工程を第2工程又は第3工程よりも先に行ってもよい。
―作用・効果―
ところで、透水性シート10を用いて生コンクリートCを固化させる場合、生コンクリートCが、透水性シート10との界面付近に多数の気泡が残った状態で固化してしまう場合がある。その場合、固化したコンクリート表面に多数の気泡の形状が現れて、コンクリート表面が平滑にならず、アバタ、ピンホール、クラック等が発生して美観を損なうという問題がある。そして、この問題は、コンクリートの耐久性を低下させるという更なる問題を引き起こし得る。
ここで、本実施形態では、第1層11が織布により構成され且つ撥水性を有することにより、生コンクリートC内の空気が、気泡としてコンクリート表面に残りにくくなる。そして、第1層11の撥水性が高いほど、その効果は大きくなる。そのような効果が生じる機構としては、織布が撥水処理されていることにより、生コンクリートCにおける第1層11との界面付近において、親水性成分同士集まりやすくなる、すなわち、水分が1つにまとまりやすくなること、及びそれによって気泡同士も1つにまとまりやすくなることが関与していると推定される。その結果、生コンクリートCにおける第1層11との界面付近に残る気泡の数が少なくなり、固化したコンクリート表面に多数の気泡の形状が現れにくくなると推定される。
また、固化したコンクリート表面が平滑にならない他の要因として、コンクリート表面に接する透水性シート10表面に、コンクリート構成物が付着しやすいことが挙げられる。特に、後述の実施例1-1と比較例1-1又は1-2との比較から分かるように、コンクリート表面と接する第1層11が不織布で構成されていると、第1層11の繊維内にコンクリート構成物が侵入して固化し、その結果付着しやすくなる。
ここで、本実施形態では、第1層11が、不織布ではなく織布により構成され且つ撥水性を有するので、第1層11の繊維内にコンクリート構成物が侵入しにくく、繊維内に残ることが抑制され、第1層11にコンクリート構成物が付着しにくくなる。その結果、コンクリート表面が平滑に仕上がりやすくなる。
また、本実施形態では、第1層11が織布により構成され且つ撥水性を有するので、第1層11がコンクリート表面に密着しすぎず、第1層11をコンクリート表面から剥がしやすくなる。その結果、透水性シート10をコンクリート表面から除くのに大きな力が不要となり、作業に手間がかからない。
更に、第1層11にコンクリート構成物が付着しやすいと、透水性シート10を繰り返し使用するにつれて、その透水性及び通気性が低下しやすくなるという問題があるが、本実施形態では、第1層11にコンクリートが付着しにくいので、透水性シート10を繰り返し使用しても、その透水性及び通気性が低下しにくくなる。また、第1層11に生コンクリートが多少付着した場合でも、洗浄してこれを除去しやすくなる。すなわち、透水性シート10を繰り返し使用しても、コンクリート表面が平滑に仕上がりやすくなる。
また、本実施形態では、粘着層としての第3層13を設けることで、透水性シート10にシワがよらないように、透水性シート10を型枠Fに対して平坦に貼り付けやすくなる。その結果、コンクリート表面に、透水性シート10の張りシワなどが付きにくく、コンクリート表面を平滑に仕上げることができる。
また、本実施形態では、第2層12が不織布により構成されているので、生コンクリートの水分及び空気が、第2層12を通って外部へ排出されやすくなる。
また、本実施形態では、第3層13が、第2層12の裏側の全面に塗工されておらず、ドット状又はライン状に塗工されているので、透水性シート10を、使用後に型枠Fから剥がしやすく、使いやすい。
(その他の実施形態)
前記実施形態では、透水性シート10は第2層12及び第3層13を備えるが、第2層12及び第3層13のいずれか一方を設けなくてもよい。更に、透水性シート10は、第3層13及び第2層12の両方を設けなくてもよく、第1層11のみから構成されていてもよい。なお、透水性シート10が第1層11及び第3層13を備え、第2層12を備えない場合、溶着層Wは設けない。
また、前記実施形態では、第1層11及び第2層12は、溶着層Wにより互いに結合されているが、溶着層Wを設けなくてもよい。この場合、第1層11及び第2層12を互いに固定する方法としては、例えば、第2層12から第1層11に挿通する穴を空けて固定するニードルパンチ法、第2層12を溶融させて第1層に結合させるサーマルボンド法、並びに第1層11及び第2層12の少なくとも一方に接着樹脂を含浸させておき、この接着樹脂を乾燥し及び加熱して結合させるケミカルボンド法が挙げられる。また、溶着層Wに代えて、通気性粘着剤から形成された粘着層を設けてもよい。通気粘着剤は、例えば、アクリル系粘着剤と通気剤とを混合し、成膜時に通気剤を発砲させ微細空隙を形成させることにより得られる。なお、第3層13についても、同様の通気性粘着剤から形成された粘着層としてもよい。
以下に、実施例1-1~1-5及び比較例1-1~1-4に係る透水性シートの製造方法、並びに各透水性シートの性質の評価試験を説明する。評価試験で評価した性質とは、(1)各透水性シートの接触角、(2)各透水性シートのコンクリートからの剥がしやすさ、すなわち離型性、(3)仕上がったコンクリート表面における気泡残り、及び(4)各透水性シートを繰り返し使用できるかどうか、すなわち再利用性である。表1に、各実施例及び比較例に係る透水性シートの製造条件及び評価試験の結果を示す。
(実施例1-1)
―第1工程―
実施例1-1では、第1工程において、第1層としてポリエステル製織布(150T 東レ社製)を準備した。また、第2層として、目付量100g/mのポリエステル製不織布をスパンボンド法により製造して準備した。
―第2工程―
第2工程では、まず、以下のようにして撥水コーティング剤を調製した。有機溶剤のトルエンに、ベース樹脂としての未硬化シリコーン樹脂(XR31-B2733 モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製)及びフッ素樹脂溶液(15質量%溶液)と、触媒(硬化剤)としての有機チタン化合物(TC-750 マツモトファインケミカル社製、チタンジイソプロポキシビス(エチルアセトアセテート))と、フィラーとしての小粒径の親水性ヒュームドシリカ(アエロジルOX50 日本アエロジル社製、平均粒子径:40nm、BET比表面積:50±15m/g)及び大粒径の親水性シリカ(サイリシア310P 富士シリシア化学社製、平均粒子径:1~5μm、BET比表面積:300m/g)とを投入して、撹拌して、撥水コーティング剤を調製した。撥水コーティング剤は、シリコーン樹脂固形分濃度が17質量%となるとともに、フッ素樹脂溶液、有機チタン化合物、小粒径のヒュームドシリカ及び大粒径のシリカの含有量が、シリコーン樹脂100質量部に対して、それぞれ6質量部、6質量部、5質量部及び24質量部となり、且つ全固形分濃度が22質量%となるように調製した。そして、この撥水コーティング剤を、第1層にディップコートし、次いで100℃で30分間乾燥させることにより、撥水処理を行った。
―第3工程―
第3工程では、第1層の裏側の面に、アクリル樹脂製のホットメルト材(AP1511 モレスコ社製、軟化点120℃)を、専用ホットメルトガンによりドット状に塗工した。各ドットの径は略1mm、ドット間隔は略3mmであった。次いで、第1層の裏側に第2層を配置して、加熱により軟化したホットメルトを固化させ、第1層の裏側と第2層の表側とを積層させた。
―第4工程―
第4工程では、アクリル樹脂製のホットメルト材(AP1511 モレスコ社製、軟化点120℃)を、スプレーガンを用いて、第2層の裏側の面に噴霧して、第3層を形成した。以上のようにして、透水性シートを得た。
(実施例1-2)
第2工程において、水を溶剤とし、溶剤に、フッ素樹脂溶液(15質量%溶液)のみを投入して、フッ素樹脂固形分濃度が1質量%となるように撥水コーティング剤を調製した。以上の点を除き、実施例1-1と同様の手順で透水性シートを得た。
(実施例1-3)
第2工程において、水を溶剤とし、溶剤に、フッ素樹脂溶液と、架橋剤のブロックイソシアネートとを投入した。含有量は、フッ素樹脂溶液100質量部に対してブロックイソシアネート25質量部であり、フッ素樹脂固形分濃度が2質量%となるように撥水コーティング剤を調製した。以上の点を除き、実施例1-1と同様の手順で透水性シートを得た。
(実施例1-4)
第2工程において、水を溶剤とし、溶剤に、フッ素樹脂溶液のみを投入して、フッ素樹脂固形分濃度が2質量%となるように撥水コーティング剤を調製した。以上の点を除き、実施例1-1と同様の手順で透水性シートを得た。
(実施例1-5)
第2工程において、水を溶剤とし、溶剤に、フッ素樹脂溶液と、架橋剤のブロックイソシアネートを投入して、含有量がフッ素樹脂溶液100質量部に対してブロックイソシアネート20質量部であり、フッ素樹脂固形分濃度が2質量%となるように撥水コーティング剤を調製した。以上の点を除き、実施例1-1と同様の手順で透水性シートを得た。
(比較例1-1)
第1工程において、第1層としての織布に代えてポリエステル製不織布(E05100 旭化成社製)を用いた。この不織布に、実施例1-1と同様の手順で撥水処理を行った。次いで、不織布の裏側の面に、合成ゴム系ポリマー製のホットメルト材(LT200S モレスコ社製、軟化点117℃)を、スプレーガンを用いて噴霧し、第3層を形成した。以上のようにして、透水性シートを得た。なお、溶着層W及び第2層はいずれも設けなかった。
(比較例1-2)
第1工程において、第1層としての織布に代えてポリエステル製不織布(E05100 旭化成社製)を用いた。この不織布に、実施例1-1と同様の手順で撥水処理を行った。以上のようにして、透水性シートを得た。なお、溶着層W、第2層及び第3層はいずれも設けなかった。
(比較例1-3)
第1工程において、第1層としての織布に代えてポリエステル製不織布(E05050 旭化成社製)を用いた。以上のようにして、不織布のみから構成される透水性シートを得た。なお、この不織布に撥水処理は行わず、溶着層W、第2層及び第3層はいずれも設けなかった。
(比較例1-4)
第1工程において、第1層としてポリエステル製織布(150T 東レ社製)を準備し、この織布に撥水処理を行わなかった点を除き、実施例1-1と同様の手順で透水性シートを得た。
(評価試験)
―(1)接触角―
実施例1-1~1-5及び比較例1-1及び1-2で得た透水性シートについて、接触角計(DM-500 協和界面科学社製)を用い、温度25℃及び湿度50%の条件下において、第1層の表面にイオン交換水の水滴1.6μlを滴下して接線法により接触角を測定した。
―(2)離型性―
まず、JIS A 1138に基づき生コンクリートを調製した。セメント(普通ポルトランドセメント 住友大阪セメント社製 密度:3.15g/cm)、細骨材としての海砂(佐賀県唐津産 表乾密度:2.57g/cm)及び砕砂(兵庫県相生産 表乾密度:2.59g/cm)、粗骨材としての砕石(兵庫県相生産 最大寸法:20mm 表乾密度:2.63g/cm)、水道水、混和剤(マスターポリヒード15S BASFジャパン社製)を投入して混練りすることによりコンクリートを調製した。この生コンクリートの配合は、水180kg/m、セメント286kg/m、海砂563kg/m、砕砂243kg/m、粗骨材976kg/m、細骨材比(s/a)45.8%、混和剤2.86kg/mとした。また、調製した生コンクリートは、空気量が4.5±1.5%であり、スランプ値15.0±2.5cmであった。
次いで、調製した生コンクリートを用い、コンクリートを成形した。図2に示すような、木製の型枠F(高さ23cm、上辺長さ10cm、下辺長さ32cm、斜辺長さ32cm、幅15cm)の内側表面に実施例1-1の透水性シートを貼り付け、その内部に前記調製した生コンクリートを流し込んだ。この型枠Fは、傾斜した側面を構成する板Bが取り外し可能に構成されている。コンクリートを締め固めるために、型枠の台形状の両側面を突き棒で突いた。約48時間静置後、型枠Fから板Bを取り外した。このとき、板Bに張り付けた透水性シートのコンクリート表面からの剥がしやすさ、すなわち離型性について、透水性シートを剥がすのに要する力が最も小さい場合をA、透水性シートを剥がすのに要する力がAよりも大きい場合をB、透水性シートを剥がすのに要する力がBよりも更に大きい場合をC、透水性シートを剥がすのに要する力がCよりも更に大きい又は剥がせない場合をDと、判定した。すなわち、離型性は、認定結果がAの場合が最も良好であり、B、C及びDの順に次第に悪くなる。
実施例1-2~1-5及び比較例1-1~1-4の透水性シートも、前記と同様の手順で、型枠Fの表面へ貼り付け、この型枠Fを用いてコンクリートを成形し、離型性について判定した。
―(3)気泡残り―
各実施例及び各比較例の透水性シートを用いたそれぞれの場合について、成形したコンクリートから前記のように板Bを取り外して、コンクリートの傾斜した側面を構成する表面における、気泡残りの少なさ、すなわちコンクリート表面の平滑さを目視により確認して、表面の気泡残りがほぼない場合をA、気泡残りが若干ある場合をB、気泡残りが多い場合をC、気泡残りが更に多い場合をDと判定した。
―(4)再利用性―
前記(3)及び(4)のとおり離型性及び気泡残りについて判定した各透水性シートをコンクリート表面から剥がした後、当該透水性シートを洗浄し、再び同様の手順で、型枠Fに生コンクリートを流し込み、コンクリートを成形し、型枠Fから板Bを取り外した。そして、この一連の手順を更にもう一度繰り返した。このようにして、同じ透水性シートを用いてコンクリート成形を3回行い、前記(3)と同様に、成形されたコンクリート表面の気泡残りをA~Dで判定した。
(試験結果)
試験結果を表1に示す。表1によれば、第1層に撥水処理をした実施例1-1~1-5並びに比較例1-1及び1-2は、接触角が最小でも122°(実施例1-4)であり、接触角が大きく、優れた撥水性を有することが分かる。
また、離型性の判定結果は、第1層に撥水処理された織布を用いた実施例1-1~1-5では、A(実施例1-1)又はB(実施例1-2~1-5)である一方、第1層に不織布を用いた比較例1-1~1-3ではDであり、第1層に撥水処理されていない織布を用いた比較例1-4ではBであった。したがって、第1層に撥水性を有する織布を用いることにより離型性がよくなるといえる。特に、撥水処理に用いた撥水コーティング剤がシリコーン樹脂、フッ素樹脂、小粒径のヒュームドシリカ及び大粒径のドシリカを含む、実施例1-1で、離型性が極めて良好であった。比較例1-1~1-3で、離型性が劣る理由は、不織布にコンクリート構成物が付着していたためである。なお、比較例1-1~1-3では、不織布にコンクリート構成物が付着していたことにより、コンクリート表面の平滑さも損われていた。
また、気泡残りの判定結果は、第1層に撥水処理された織布を用いた実施例1-1~1-5では、A(実施例1-2~1-5)又はB(実施例1-1)である一方、第1層に不織布を用いた比較例1-1~1-3ではB(比較例1-2)、C(比較例1-3)又はD(比較例1-1)であり、第1層に撥水処理されていない織布を用いた比較例1-4ではCであった。したがって、第1層に撥水処理された織布を用いることにより、気泡残りが少なくなり、コンクリート表面を平滑に仕上げることができるといえる。
更に、再利用性の判定結果は、第1層に撥水処理された織布を用いた実施例1-1~1-5では、A(実施例1-3,1-5)又はB(実施例1-1,1-2,1-4)である一方、第1層に撥水処理されていない織布を用いた比較例1-4ではCであった。第1層に不織布を用いた比較例1-1~1-3では1回目の使用時点で、不織布の繊維内部にコンクリート構成物が多く侵入していたため、コンクリート表面から剥がすことに大きな力を要し、また透水性シートの洗浄が困難であったため、再利用性の判定をしなかった。したがって、第1層に撥水処理された織布を用いることにより、透水性シートを繰り返し使用できる回数が多くなるといえる。また、撥水コーティング剤が架橋剤を含有していた実施例1-3及び1-5は、撥水コーティング剤が架橋剤を含有していなかった実施例1-2及び1-4とそれぞれ比較して、再利用性が良好であった。この結果は、実施例1-3及び1-5では、架橋剤により、撥水コーティング剤のフッ素樹脂が第1層から剥離しにくくなったことにより、第1層の撥水性の効果が維持されたことによるものと推定される。
以上より、第1層が織布から構成され且つ撥水性を有することで、コンクリート表面を平滑に仕上げ、且つ、透水性シートを固化したコンクリート表面から剥がしやすくでき、更に再利用性も向上するといえる。
以下に、実施例2-1~2-4及び比較例2-1~2-4に係る透水性シートの製造方法、並びに各透水性シートの性質の評価試験を説明する。実施例2-1~2-4及び比較例2-1~2-4における評価試験で評価した性質は、前記した透水性シートについての(1)接触角、(3)気泡残り及び(4)再利用性に加え、(5)第1層の透湿度及び(6)第1層の耐水度である。(5)透湿度は、JIS L 1099(A-1法)に基づき測定し、(6)耐水度は、JIS L 1092に基づき測定した。表2に、各実施例及び比較例に係る透水性シートの製造条件及び評価試験の結果を示す。
(実施例2-1)
第2工程において、固形分濃度が1質量%となるように溶剤量等を調整し、撥水コーティング剤を調製した点を除き、実施例1-3と同様の手順で透水性シートを得た。
(実施例2-2)
第2工程において、固形分濃度が20質量%となるように溶剤量等を調整し、撥水コーティング剤を調製した点を除き、実施例1-3と同様の手順で透水性シートを得た。
(実施例2-3)
第2工程において、固形分濃度が0.5質量%となるように溶剤量等を調整し、撥水コーティング剤を調製した点を除き、実施例1-3と同様の手順で透水性シートを得た。
(実施例2-4)
第2工程において、固形分濃度が0.15質量%となるように溶剤量等を調整し、撥水コーティング剤を調製した点を除き、実施例1-3と同様の手順で透水性シートを得た。
(比較例2-1)
図2に示す型枠F及び板Bとして、ウレタン塗装が施された市販のコンクリート型枠用化粧板を用いた。この化粧板に対して透水性シートを貼り付けず、(3)気泡残りの評価を前記と同様に行った。
(比較例2-2)
複数の穴の開いたポリエチレン樹脂シートの裏側に、ポリエステル製不織布が積層された積層体(スーパーエアテックス(登録商標)KD30 フクビ化学工業社製)を準備した。この積層体に、撥水処理を行わずに、実施例1-1と同様の手順で第3工程及び第4工程を行った。
(比較例2-3)
第1工程において、第1層として、目付量130g/mのポリエステル製織布(100T 東レ社製)を準備し、この織布に撥水処理を行わなかった点を除き、実施例1-1と同様の手順で透水性シートを得た。
(比較例2-4)
第1工程において、第1層として、目付量160g/mのポリエステル製織布(150T 東レ社製)を準備し、この織布に撥水処理を行わなかった点を除き、実施例1-1と同様の手順で透水性シートを得た。
(試験結果)
実施例2-1~2-4及び比較例2-1~2-4の試験結果を表2に示す。表2によれば、接触角は、実施例2-1で130°、実施例2-2で115°、実施例2-3で131°、実施例2-4で132°であり、実施例2-1~2-4の透水性シートはいずれも接触角が大きく、優れた撥水性を有することが分かる。
気泡残りの判定結果は、実施例2-1でA、実施例2-2でB、実施例2-3及び2-4でいずれもAである一方、比較例2-1ではD、比較例2-2ではB、比較例2-3及び2-4ではいずれもCであり、全体的に実施例2-1~2-4の判定結果が良好であった。したがって、第1層に撥水処理された織布を用いることにより、気泡残りが少なくなり、コンクリート表面を平滑に仕上げることができるといえる。
再利用性の判定結果は、実施例2-1及び実施例2-3でA、実施例2-2及び2-4でBである一方、比較例2-2~2-4でCであった。ウレタン塗装がされた化粧板を用いた比較例2-1では、一回目の使用時点で、気泡残りが著しかったため、再利用性の判定をしなかった。したがって、第1層に撥水処理された織布を用いることにより、再利用性の結果が良好であったといえる。
第1層の透湿度は、実施例2-1で279g/m・h、実施例2-2で64g/m・h、実施例2-3で263g/m・h、実施例2-4で276g/m・h、比較例2-2で277g/m・h、比較例2-3で401g/m・h、比較例2-4で270g/m・hであった。比較例2-1では、第1層のウレタン塗装の透湿性がないため、透湿度を測定しなかった。
第1層の耐水度は、実施例2-1で249mm、実施例2-2で571mm、実施例2-3で342mm、実施例2-4で178mm、比較例2-2で7335mmであった。比較例2-1、2-3及び2-4では、第1層に水分が浸み込み、第1層に耐水性がなかったため、耐水度を測定しなかった。
本発明は、透水性シートとその製造方法として有用である。
F 型枠
C 生コンクリート
10 透水性シート
11 第1層
12 第2層
13 第3層

Claims (9)

  1. コンクリート成形用の型枠と、当該型枠に充填される生コンクリートとの間に設けられる透水性シートであって、
    前記生コンクリートに接し、織布により構成された第1層を備え、
    前記第1層は、前記織布が撥水コーティング剤で撥水処理されたものであって、
    前記撥水コーティング剤は、シリコーン樹脂及びフッ素樹脂の少なくとも一方と、架橋剤とを含有する、透水性シート。
  2. 請求項1に記載された透水性シートにおいて、
    前記第1層において前記型枠側に設けられ、不織布により構成された第2層を更に備える、透水性シート。
  3. 請求項1又は2に記載された透水性シートにおいて、
    前記第1層は、温度25±5℃及び湿度50±10%の条件下において、表面にイオン交換水の水滴を滴下して接線法により測定される接触角が90°以上である、透水性シート。
  4. 請求項2に記載された透水性シートにおいて、
    前記第2層において前記型枠側に設けられ、前記第2層を前記型枠に張り付けるための粘着層としての第3層を更に備える、透水性シート。
  5. 請求項4に記載された透水性シートの製造方法であって、
    前記第2層の前記型枠側の面に、ホットメルト材をドット状に塗工し又はホットメルト材を噴霧により塗工することにより、前記第3層を形成する、製造方法。
  6. 請求項1に記載された透水性シートにおいて、
    前記第1層は、温度25±5℃及び湿度50±10%の条件下において、表面にイオン交換水の水滴を滴下して接線法により測定される接触角が120°以上であり且つ透湿度が50g/m・h以上である、透水性シート。
  7. 請求項6に記載された透水性シートにおいて、
    前記第1層は、耐水度が1000mm以下である、透水性シート。
  8. 請求項1に記載された透水性シートにおいて、
    前記架橋剤は、ブロックイソシアネートを含む、透水性シート。
  9. 請求項1に記載された透水性シートにおいて、
    前記撥水コーティング剤は、フィラーを更に含有する、透水性シート。
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