JP7375787B2 - ポリアリーレンスルフィド樹脂組成物及びその成形品、並びに表面実装電子部品 - Google Patents

ポリアリーレンスルフィド樹脂組成物及びその成形品、並びに表面実装電子部品 Download PDF

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Description

本発明は、ポリアリーレンスルフィド樹脂組成物及びその成形品、並びに表面実装電子部品に関する。
近年、電気・電子工業の分野では、製品の小型化や生産性の向上に伴い、樹脂系電子部品のプリント基板上への実装方式がサーフェスマウント方式(以下「SMT方式」と略すことがある。)と呼ばれる表面実装方式に移行している。このSMT方式により電子部品を基板上に実装する技術は、従来、錫-鉛共晶はんだ(融点184℃)が一般的であったが、近年、環境汚染の問題から、その代替材料として錫をベースに数種類の金属を添加した鉛フリーはんだが利用されている。
このような鉛フリーはんだは、錫-鉛共晶はんだよりも融点が高く、例えば、錫-銀共晶はんだの場合には融点が220℃に達するため、表面実装時には加熱炉(リフロー炉)の温度をさらに上昇させなければならなかった。そのため、コネクター等の樹脂系電子部品をはんだ付けする際、加熱炉(リフロー炉)内において当該電子部品が融解又は変形を生じてしまうという問題があった。したがって、表面実装電子部品に用いられる樹脂材料には耐熱性の高いものが強く求められていた。
これに対して、高耐熱性の樹脂材料としてポリフェニレンスルフィド樹脂(以下「PPS樹脂」と略すことがある。)に代表されるポリアリーレンスルフィド樹脂(以下「PAS樹脂」と略すことがある。)を用いることが提案されており、該ポリアリーレンスルフィド樹脂を含む樹脂組成物の成形品と金属端子とを備えた表面実装電子部品が、加熱炉(リフロー炉)内においても当該電子部品の融解又は変形を抑制しうることが提案されている(例えば特許文献1参照)。
国際公開第2009/096401号
ところが、従来のポリアリーレンスルフィド樹脂を含む組成物では、成形加工の際などの加熱により発生するガスの量が比較的多く、電子部品の金属端子を腐食させるおそれがあった。また、従来のポリアリーレンスルフィド樹脂組成物あるいはその成形品においては、機械的強度、金属密着性、キャビティーバランス等の特性にも未だ改善の余地があった。
そこで、本発明が解決しようとする課題は、加熱炉(リフロー炉)内において表面実装電子部品が融解又は変形することを防ぎつつ、かつ、加熱によるガス発生量を抑制でき、さらに樹脂組成物あるいはその成形品において、優れた機械的強度、金属密着性、キャビティーバランス特性を有する、ポリアリーレンスルフィド樹脂組成物、該樹脂組成物を用いた成形品、及び該成形品を備える表面実装電子部品を提供することにある。
本発明者らは種々の検討を行った結果、末端に特定の官能基を有するポリアリーレンスルフィド樹脂を用いることで上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、ポリアリーレンスルフィド樹脂と、無機質充填剤、ポリアリーレンスルフィド樹脂以外の熱可塑性樹脂、エラストマー、及び2以上の架橋性官能基を有する架橋性樹脂からなる群より選ばれる、少なくとも1種の他の成分と、を含有する、表面実装電子部品用ポリアリーレンスルフィド樹脂組成物であって、ポリアリーレンスルフィド樹脂が、ジヨード芳香族化合物と、単体硫黄と、重合禁止剤とを、ジヨード芳香族化合物、単体硫黄及び重合禁止剤を含む溶融混合物中で反応させることを含む方法により得ることのできるものである、表面実装電子部品用ポリアリーレンスルフィド樹脂組成物に関する。
本発明によれば、加熱炉(リフロー炉)内において表面実装電子部品が融解又は変形することを防ぎつつ、かつ、加熱によるガス発生量を抑制でき、さらに樹脂組成物あるいはその成形品において、優れた機械的強度、金属密着性、キャビティーバランス特性を有する、ポリアリーレンスルフィド樹脂組成物、該樹脂組成物を用いた成形品、及び該成形品を備える表面実装電子部品を提供することにある。
なお、キャビティーバランスは、複数のキャビティーを有する金型を用いた射出成形により、同時に複数の成形品を成形したときの、各キャビティーの充填度の均一性に関連する。成形材料のキャビティーバランスが十分でないと、一部のキャビティーが十分に充填されないといった成形不良が発生し易くなる傾向がある。
以下、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。ただし、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
本実施形態に用いられるポリアリーレンスルフィド樹脂は、ジヨード芳香族化合物と、単体硫黄と、重合禁止剤とを、ジヨード芳香族化合物、単体硫黄及び重合禁止剤を含有する溶融混合物中で反応させることを含む方法により得ることができる。このような方法によれば、フィリップス法をはじめとする従来法に比べ、比較的高分子量の重合体としてポリアリーレンスルフィド樹脂を得ることができる。
ジヨード芳香族化合物は、芳香族環と、芳香族環に直接結合した2個のヨウ素原子とを有する。ジヨード芳香族化合物としては、ジヨードベンゼン、ジヨードトルエン、ジヨードキシレン、ジヨードナフタレン、ジヨードビフェニル、ジヨードベンゾフェノン、ジヨードジフェニルエーテル及びジヨードジフェニルスルフォン等が挙げられるが、これらに限定されない。2つのヨウ素原子の置換位置は特に限定されないが、好ましくは2つの置換位置が分子内で出来る限り遠い位置にあることが望ましい。好ましい置換位置は、パラ位、及び4,4’-位である。
ジヨード芳香族化合物の芳香族環は、フェニル基、ヨウ素原子以外のハロゲン原子、ヒドロキシ基、ニトロ基、アミノ基、炭素原子数1~6のアルコキシ基、カルボキシル基、カルボキシレート、アリールスルホンおよびアリールケトンから選ばれる少なくとも1種の置換基によって置換されていてもよい。ただし、ポリアリーレンスルフィド樹脂の結晶化度及び耐熱性等の観点から、未置換のジヨード芳香族化合物に対する置換されたジヨード芳香族化合物の割合は、好ましくは0.0001~5質量%の範囲であり、より好ましくは0.001~1質量%の範囲である。
単体硫黄は、硫黄原子のみによって構成される物質(S、S、S、S等)を意味し、その形態は限定されない。具体的には、局法医薬品として市販されている単体硫黄を用いてもよいし、汎用的に入手することができる、S及びS等を含む混合物を用いてもよい。単体硫黄の純度も特に限定されない。単体硫黄は、室温(23℃)で固体であれば、粒形状又は粉末状であってもよい。単体硫黄の粒径は、特に限定されないが、好ましくは0.001~10mmの範囲であり、より好ましくは0.01~5mmの範囲であり、更に好ましくは0.01~3mmの範囲である。
重合禁止剤は、ポリアリーレンスルフィド樹脂の重合反応において当該重合反応を禁止又は停止する化合物であれば、特に制限なく用いることができる。重合禁止剤は、ポリアリーレンスルフィド樹脂の主鎖の末端にヒドロキシ基、アミノ基、カルボキシル基及びカルボキシル基の塩からなる群より選ばれる少なくとも一種の基を導入し得る化合物を含むことが好ましい。すなわち、重合禁止剤としては、ヒドロキシ基、アミノ基、カルボキシル基及びカルボキシル基の塩からなる群より選ばれる少なくとも一種の基を1又は2以上有す化合物が好ましい。また、重合禁止剤が上記官能基を有していてもよいし、重合の停止反応等によって、上記官能基を生成してもよい。
ヒドロキシ基又はアミノ基を有する重合禁止剤としては、例えば、下記式(1)又は(2)で表される化合物が重合禁止剤として用いられ得る。
Figure 0007375787000001
一般式(1)で表される化合物によれば、下記式(1-1)で表される一価の基が主鎖の末端基として導入される。式(1-1)中のYは、重合禁止剤に由来するヒドロキシ基、アミノ基等である。
Figure 0007375787000002
一般式(2)で表される化合物によれば、下記式(2-1)で表される一価の基が主鎖の末端基として導入される。一般式(1)で表される化合物に由来するヒドロキシ基が、例えば、式(2)中のカルボニル基の炭素原子と硫黄ラジカルと結合することによりポリアリーレンスルフィド樹脂中に導入され得る。
Figure 0007375787000003
式(1-1)又は(2-1)で表される基は、ポリアリーレンスルフィド樹脂の主鎖中に原料(単体硫黄)に由来して存在するジスルフィド結合が溶融温度下でラジカル開裂して発生した硫黄ラジカルと、一般式(1)で表される化合物又は一般式(2)で表される化合物とが結合することによって、ポリアリーレンスルフィド樹脂中に導入されると考えられる。これら特定構造の構成単位の存在は、一般式(1)又は(2)で表される化合物を用いた溶融重合により得られたポリアリーレンスルフィド樹脂に特徴的である。
一般式(1)で表される化合物としては、例えば、2-ヨードフェノール、2-アミノアニリンなどが挙げられる。一般式(2)で表される化合物としては、2-ヨードベンゾフェノンが挙げられる。
カルボキシル基を有する重合禁止剤としては、例えば、下記一般式(3)、(4)又は(5)で表される化合物から選ばれる1種以上の化合物が用いられ得る。
Figure 0007375787000004
Figure 0007375787000005
Figure 0007375787000006
一般式(3)中、R及びRはそれぞれ独立に、水素原子、又は、下記一般式(a)、(b)若しくは(c)で表される一価の基を表し、R又はRの少なくともいずれか一方は一般式(a)、(b)又は(c)で表される一価の基である。一般式(4)中、Zは、ヨウ素原子又はメルカプト基を表し、Rは、下記一般式(a)、(b)又は(c)で表される一価を表す。一般式(5)中、Rは、一般式(a)、(b)又は(c)で表される一価の基を表す。
Figure 0007375787000007
Figure 0007375787000008
Figure 0007375787000009
一般式(a)~(c)中のXは、水素原子又はアルカリ金属原子であるが、反応性が良好となる点から水素原子が好ましい。アルカリ金属原子としては、ナトリウム、リチウム、カリウム、ルビジウム、及びセシウムなどが挙げられるが、ナトリウムが好ましい。一般式(b)中、R10は炭素原子数1~6のアルキル基を表す。一般式(c)中、R11は水素原子又は炭素原子数1~3のアルキル基を表し、R12は炭素原子数1~5のアルキル基を表す。
一般式(3)、(4)又は(5)で表される化合物によれば、下記式(6)又は(7)で表される一価の基が主鎖の末端基として導入される。これら特定構造の末端の構成単位の存在は、一般式(3)、(4)又は(5)で表される化合物を用いた溶融重合により得られたポリアリーレンスルフィド樹脂に特徴的である。
Figure 0007375787000010
(式中、Rは、一般式(a)、(b)又は(c)で表される一価の基を表す。)
Figure 0007375787000011
(式中、Rは、一般式(a)、(b)又は(c)で表される一価の基を表す。)
重合禁止剤として、カルボキシル基等の官能基を有していない化合物等を使用してもよい。このような化合物としては、例えば、ジフェニルジスルフィド、モノヨードベンゼン、チオフェノール、2,2’-ジベンゾチアゾリルジスルフィド、2-メルカプトベンゾチアゾール、N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、2-(モルホリノチオ)ベンゾチアゾール及びN,N’-ジシクロヘキシル-1,3-ベンゾチアゾール-2-スルフェンアミドから選ばれる少なくとも1種の化合物を用いることができる。
本実施形態に係るポリアリーレンスルフィド樹脂は、ジヨード芳香族化合物と、単体硫黄と、重合禁止剤と、必要に応じて触媒と含む混合物を加熱して得られる溶融混合物中で溶融重合を行うことによって生成する。溶融混合物中のジヨード芳香族化合物の割合は、単体硫黄1モルに対して、好ましくは0.5~2モルの範囲であり、より好ましくは0.8~1.2モルの範囲である。また、混合物中の重合禁止剤の割合は、固体硫黄1モルに対して、好ましくは0.0001~0.1モルの範囲であり、より好ましくは0.0005~0.05モルの範囲である。
重合禁止剤を添加する時期は、特に制限されないが、ジヨード芳香族化合物、単体硫黄及び必要に応じて添加される触媒を含む混合物を加熱して、混合物の温度が好ましくは200℃~320℃の範囲、より好ましくは250~320℃の範囲となった時点で重合禁止剤を添加することができる。
溶融混合物にニトロ化合物を触媒として添加して、重合速度を調節することができる。このニトロ化合物としては、通常、各種ニトロベンゼン誘導体を用いることができる。ニトロベンゼン誘導体としては、例えば1,3-ジヨード-4-ニトロベンゼン、1-ヨード-4-ニトロベンゼン、2,6-ジヨード-4-ニトロフェノール及び2,6-ジヨード-4-ニトロアミンが挙げられる。触媒の量は、通常、触媒として添加される量であればよく、例えば単体硫黄100質量部に対して0.01~20質量部の範囲であることが好ましい。
溶融重合の条件は、重合反応が適切に進行するように、適宜調整される。溶融重合の温度は、好ましくは、175℃以上、生成するポリアリーレンスルフィド樹脂の融点+100℃以下の範囲、より好ましくは180~350℃の範囲である。溶融重合は、絶対圧が好ましくは1[cPa]~100[kPa]の範囲、より好ましくは13[cPa]~60[kPa]の範囲で行われる。溶融重合の条件は、一定である必要は無い。例えば、重合初期は温度を好ましくは175~270℃の範囲、より好ましくは180~250℃の範囲とし、かつ、絶対圧を6.7~100[kPa]の範囲とし、その後、連続的に又は階段状に昇温及び減圧させながら重合を行い、重合後期は、温度を好ましくは270℃以上、生成するポリアリーレンスルフィド樹脂の融点+100℃以下の範囲、より好ましくは300~350℃の範囲とし、かつ、絶対圧を1[cPa]~6[kPa]の範囲として重合を行うことができる。本明細書において、樹脂の融点は、示差走査熱量計(パーキンエルマー製DSC装置 Pyris Diamond)を用いてJIS K 7121に準拠して測定される値を意味する。
溶融重合は、酸化架橋反応を防ぎつつ、高い重合度を得る観点から、好ましくは、非酸化性雰囲気下で行う。非酸化性雰囲気において、気相の酸素濃度は好ましくは5体積%未満の範囲、より好ましくは2体積%未満の範囲であり、更に好ましくは気相が酸素を実質的に含有しない。非酸化性雰囲気は、好ましくは、窒素、ヘリウム及びアルゴン等の不活性ガス雰囲気である。
溶融重合は、例えば、加熱装置、減圧装置及び撹拌装置を備える溶融混練機を用いて行うことができる。溶融混錬機としては、例えば、バンバリーミキサー、ニーダー、連続混練機、単軸押出機及び二軸押出機が挙げられる。
溶融重合のための溶融混合物は、溶媒を実質的に含有しないことが好ましい。より具体的には、溶融混合物に含まれる溶媒の量が、ジヨード芳香族化合物と、単体硫黄と、重合禁止剤と、必要に応じて触媒との合計100質量部に対して、好ましくは10質量部以下の範囲、より好ましくは5質量部以下の範囲、さらに好ましくは1質量部以下の範囲である。溶媒の量は、0質量部以上、0.01質量部以上の範囲、又は0.1質量部以上の範囲であってもよい。
溶融重合後の溶融混合物(反応生成物)を冷却して固体状態の混合物を得た後、減圧下、又は非酸化性雰囲気の大気圧下で、混合物を加熱して重合反応を更に進行させてもよい。これによりさらに分子量を増大させることができるだけでなく、生成したヨウ素分子が昇華されて除去されるため、ポリアリーレンスルフィド樹脂中のヨウ素原子濃度を低く抑えることができる。好ましくは100~260℃の範囲、より好ましくは130~250℃の範囲、更に好ましくは150~230℃の範囲の温度まで冷却することで、固体状態の混合物を得ることができる。固体状態への冷却後の加熱は、溶融重合と同様の温度及び圧力条件下で行うことができる。
溶融重合工程により得られたポリアリーレンスルフィド樹脂を含む反応生成物は、そのまま直接、溶融混練機に投入する等の方法により樹脂組成物を製造するためのこともできるが、当該反応生成物に当該反応生成物が溶解する溶媒を加えて溶解物を調製し、当該溶解物の状態で反応装置から反応生成物を取り出すことが、生産性に優れるだけでなくさらに反応性も良好となるため好ましい。当該反応生成物が溶解する溶媒の添加は、溶融重合後に行うことが好ましいが、溶融重合の反応後期に行ってもよく、また、上記のとおり溶融混合物(反応生成物)を冷却して固体状態の混合物を得た後、加圧下、減圧下、又は非酸化性雰囲気の大気圧下で、混合物を加熱して重合反応を更に進行させた後であってもよい。当該溶解物を調製する工程は、非酸化性雰囲気下で行ってもよい。また、加熱溶解の温度としては、前記反応生成物が溶解する溶媒の融点以上の範囲であればよく、好ましくは200~350℃の範囲、より好ましくは210~250℃の範囲であり、加圧下で行うことが好ましい。
前記溶解物を調製するために用いる、前記反応生成物が溶解する溶媒の配合割合は、ポリアリーレンスルフィド樹脂を含む反応生成物100質量部に対して、好ましくは90~1000質量部の範囲、より好ましくは200~400質量部の範囲である。
反応生成物が溶解する溶媒としては、例えば、フィリップス法等の溶液重合において重合反応溶媒として用いられる溶媒を用いることができる。好ましい溶媒の例としては、N-メチル-2-ピロリドン(以下、NMPと略記)、N-シクロヘキシル-2-ピロリドン、2-ピロリドン、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン酸、ε-カプロラクタム、N-メチル-ε-カプロラクタム等の脂肪族環状アミド化合物、ヘキサメチルリン酸トリアミド(HMPA)、テトラメチル尿素(TMU)、ジメチルホルムアミド(DMF)、及びジメチルアセトアミド(DMA)等のアミド化合物、ポリエチレングリコールジアルキルエーテル(重合度は2000以下で、炭素原子数1~20のアルキル基を有するもの)等のエーテル化ポリエチレングリコール化合物、並びに、テトラメチレンスルホキシド、及びジメチルスルホキシド(DMSO)等のスルホキシド化合物が挙げられる。その他の使用可能な溶媒の例として、ベンゾフェノン、ジフェニルエーテル、ジフェニルスルフィド、4,4’-ジブロモビフェニル、1-フェニルナフタレン、2,5-ジフェニル-1,3,4-オキサジアゾール、2,5-ジフェニルオキサゾール、トリフェニルメタノール、N,N-ジフェニルホルムアミド、ベンジル、アントラセン、4-ベンゾイルビフェニル、ジベンゾイルメタン、2-ビフェニルカルボン酸、ジベンゾチオフェン、ペンタクロロフエノール、1-ベンジル-2-ピロリジオン、9-フルオレノン、2-ベンゾイルナフタレン、1-ブロモナフタレン、1,3-ジフェノキシベンゼン、フルオレン、1-フェニル-2-ピロリジノン、1-メトキシナフタレン、1-エトキシナフタレン、1,3-ジフェニルアセトン、1,4-ジベンゾイルプタン、フェナントレン、4-ベンゾイルビフェニル、1,1-ジフェニルアセトン、o,o’-ビフェノール、2,6-ジフェニルフェノール、トリフェニレン、2-フェニルフェノール、チアントレン、3-フェノキシベンジルアルコール、4-フェニルフェノール、9,10-ジクロロアントラセン、トリフェニルメタン、4,4’-ジメトキシベンゾフェノン、9,10-ジフェニルアントラセン、フルオランテン、ジフェニルフタレート、ジフェニルカルボネート、2,6-ジメトキシナフタレン、2,7-ジメトキシナフタレン、4-ブロモジフェニルエーテル、ピレン、9,9’-ビ-フルオレン、4,4’-イソプロピルリデン-ジフェノール、イプシロン-カプロラクタム、N-シクロヘキシル-2-ピロリドン、ジフェニルイソフタレート、ジフェニルーターフタレート及び1-クロロナフタレンからなる群から選ばれる1種以上の溶媒が挙げられる。
反応装置から取り出された当該溶解物は、後処理を行った後、前記他の成分と溶融混練して樹脂組成物を調製することが、反応性がより良好となるため好ましい。溶解物の後処理の方法としては、特に制限されるものではないが、例えば、以下の方法が挙げられる。
(1)当該溶解物を、そのまま、又は酸若しくは塩基を加えた後、減圧下又は常圧化で溶媒を留去し、次いで溶媒留去後の固形物を水、当該溶解物に用いた溶媒(又は低分子ポリマーに対して同等の溶解度を有する有機溶媒)、アセトン、メチルエチルケトン及びアルコール類などから選ばれる溶媒で1回又は2回以上洗浄し、更に中和、水洗、濾過及び乾燥する方法。
(2)当該溶解物に水、アセトン、メチルエチルケトン、アルコール、エーテル、ハロゲン化炭化水素、芳香族炭化水素及び脂肪族炭化水素などの溶媒(当該溶解物の溶媒に可溶であり、且つ少なくともポリアリーレンスルフィド樹脂に対しては貧溶媒である溶媒)を沈降剤として添加して、ポリアリーレンスルフィド樹脂及び無機塩等を含む固体状生成物を沈降させ、固体状生成物を濾別、洗浄及び乾燥する方法。
(3)当該溶解物に、当該溶解物に用いた溶媒(又は低分子ポリマーに対して同等の溶解度を有する有機溶媒)を加えて撹拌した後、濾過して低分子量重合体を除いた後、水、アセトン、メチルエチルケトン及びアルコールなどから選ばれる溶媒で1回又は2回以上洗浄し、その後中和、水洗、濾過及び乾燥をする方法。
なお、上記(1)~(3)に例示したような後処理方法において、ポリアリーレンスルフィド樹脂の乾燥は真空中で行なってもよいし、空気中又は窒素のような不活性ガス雰囲気中で行なってもよい。酸素濃度が5~30体積%の範囲の酸化性雰囲気中又は減圧条件下で熱処理を行い、ポリアリーレンスルフィド樹脂を酸化架橋させることもできる。
ポリアリーレンスルフィド樹脂が溶融重合により生成する反応を、以下に例示する。
Figure 0007375787000012
反応式(1)~(5)は、例えば一般式(a)、(b)又は(c)で表される基を含む置換基Rを有するジフェニルジスルフィドを重合禁止剤として用いた場合の、ポリフェニレンスルフィドが生成する反応の例である。反応式(1)は、重合禁止剤中の-S-S-結合が、溶融温度下でラジカル開裂する反応である。反応式(2)は、反応式(1)で発生した硫黄ラジカルが成長中の主鎖の末端ヨウ素原子の隣接炭素原子を攻撃し、ヨウ素原子が脱離することで、重合が停止するとともに、主鎖の末端に置換基Rが導入される反応である。反応式(3)は、ポリアリーレンスルフィド樹脂の主鎖中に原料(単体硫黄)に由来して存在するジスルフィド結合が溶融温度下でラジカル開裂する反応である。反応式(4)は、反応式(3)で発生した硫黄ラジカルと、反応式(1)で発生した硫黄ラジカルとの再結合によって、重合が停止するとともに、置換基Rが主鎖の末端に導入される反応である。脱離したヨウ素原子は遊離状態(ヨウ素ラジカル)にあるか、又は、反応式(5)のようにヨウ素ラジカル同士が再結合することで、ヨウ素分子が生成する。
溶融重合により得られるポリアリーレンスルフィド樹脂を含む反応生成物は、原料に由来するヨウ素原子を含有する。そのため、ポリアリーレンスルフィド樹脂は、通常、ヨウ素原子を含む混合物の状態で、紡糸用樹脂組成物の調製などのために用いられる。該混合物におけるヨウ素原子の濃度は、例えば、ポリアリーレンスルフィド樹脂に対して0.01~10000ppmの範囲であり、好ましくは10~5000ppmの範囲である。ヨウ素分子の昇華性を利用して、ヨウ素原子濃度を低く抑えることも可能であり、その場合には、900ppm以下の範囲、好ましくは100ppm以下の範囲、さらには10ppm以下の範囲とすることも可能である。さらにヨウ素原子を検出限界以下に除去することも可能ではあるものの、生産性を考えると実用的ではない。検出限界は、例えば0.01ppm程度である。溶融重合により得られる本実施形態のポリアリーレンスルフィド樹脂又はこれを含む反応生成物は、ヨウ素原子を含んでいる点で、例えば、フィリップス法等のジクロロ芳香族化合物の有機極性溶媒中での溶液重合法により得られたポリアリーレンスルフィドと明確に区別され得る。
上記反応式からも理解されるように、溶融重合により得られるポリアリーレンスルフィド樹脂は、ジヨード芳香族化合物に由来する芳香族環及びこれに直接結合した硫黄原子からなるアリーレンスルフィド単位から主として構成される主鎖と、該主鎖の末端に結合した所定の置換基Rとを含む。所定の置換基Rは、主鎖の末端の芳香族環に、直接、又は重合禁止剤に由来する部分構造を介して結合している。
一実施形態に係るポリアリーレンスルフィド樹脂としてのポリフェニレンスルフィド樹脂は、例えば、下記一般式(10):
Figure 0007375787000013
で表される繰り返し単位(アリーレンスルフィド単位)を含む主鎖を有する。式(10)で表される繰り返し単位は、パラ位で結合する下記式(10a):
Figure 0007375787000014
で表される繰り返し単位、及び、メタ位で結合する下記式(10b):
Figure 0007375787000015
で表される繰り返し単位であることがより好ましい。これらの中でも、式(10a)で表されるパラ位で結合した繰り返し単位が、樹脂の耐熱性及び結晶性の面で好ましい。
一実施形態に係るポリフェニレンスルフィド樹脂は、下記一般式(11):
Figure 0007375787000016
(式中、R20及びR21は、それぞれ独立に水素原子、炭素原子数1~4のアルキル基、ニトロ基、アミノ基、フェニル基、メトキシ基、又はエトキシ基を表す。)で表される、芳香族環に結合した側鎖としての置換基を有する繰り返し単位を含み得る。ただし、結晶化度及び耐熱性の低下の観点から、ポリフェニレンスルフィド樹脂は、一般式(11)の繰り返し単位を実質的に含まないことが好ましい。より具体的には、式(11)で表される繰り返し単位の割合は、式(10)で表される繰り返し単位と式(11)で表される繰り返し単位との合計に対して、好ましくは2質量%以下、より好ましくは0.2質量%以下である。
本実施形態のポリアリーレンスルフィド樹脂は、上記アリーレンスルフィド単位から主として構成されるが、通常、原料の単体硫黄に由来する、下記式(20):
Figure 0007375787000017
で表されるジスルフィド結合に係る構成単位も主鎖中に含む。耐熱性、機械的強度の点から、式(20)で表される構成単位の割合は、アリーレンスルフィド単位と、式(20)で表される構成部位との合計に対して、好ましくは2.9質量%以下の範囲、より好ましくは1.2質量%以下の範囲である。ポリアリーレンスルフィド樹脂が式(20)で表される構成単位を含むことによって、ポリアリーレンスルフィド樹脂組成物と金属との密着性が向上する点で好ましい。
本実施形態に係るポリアリーレンスルフィド樹脂のMw/Mtopは、好ましくは0.80~1.70の範囲であり、より好ましくは0.90~1.30の範囲である。Mw/Mtopをこのような範囲とすることで、ポリアリーレンスルフィド樹脂の加工性を向上させることができ、良好なキャビティーバランスを付与することができる。本明細書において、Mwはゲル浸透クロマトグラフィーにより測定される重量平均分子量のことを示し、Mtopは同測定により得られるクロマトグラムの検出強度が最大となる点の平均分子量(ピーク分子量)を示す。Mw/Mtopは、測定対象の分子量の分布を示し、通常、この値が1に近いと分子量の分布が狭いことを示し、この値が大きくなるにつれて、分子量の分布が広いことを示す。なお、ゲル浸透クロマトグラフィーの測定条件は、本明細書の実施例と同一の測定条件とする。ただし、Mw、Mw/Mtopの値に実質的な影響を及ぼさない範囲で、測定条件を変更することは可能である。
本実施形態に係るポリアリーレンスルフィド樹脂の重量平均分子量は、本発明の効果を損なわなければ特に限定されるものではないが、その下限は、機械的強度に優れる点から28,000以上であることが好ましく、さらに30,000以上の範囲であることがより好ましい。一方、上限は、より良好なキャビティーバランスを付与することができる点から100,000以下の範囲であることが好ましく、さらに60,000以下の範囲であることがより好ましく、さらに55,000以下の範囲であることが最も好ましい。さらに、機械的強度に優れつつ、かつ、良好なキャビティーバランスを付与できる観点から、28,000~60,000の範囲のポリアリーレンスルフィド樹脂、より好ましくは30,000~55,000の範囲のポリアリーレンスルフィド樹脂と共に、重量平均分子量が60,000超100,000以下の範囲にあるポリアリーレンスルフィド樹脂を使用してもよい。
ポリアリーレンスルフィド樹脂の非ニュートニアン指数は、好ましくは0.95~1.75の範囲であり、より好ましくは1.0~1.70の範囲である。非ニュートニアン指数をこのような範囲とすることで、ポリアリーレンスルフィド樹脂の加工性を向上させることができ、良好なキャビティーバランスを付与することができる。本明細書において、非ニュートニアン指数は温度300℃の条件下におけるせん断速度とせん断応力との下記関係式を満たす指数をいう。非ニュートニアン指数は、測定対象の分子量、又は直鎖、分岐、架橋といった分子構造に関する指標となりえ、通常、この値が1に近いと樹脂の分子構造が直鎖状であることを示し、この値が大きくなるにつれて、分岐や架橋構造が多く含まれることを示す。
D=α×S
(上記式中、Dはせん断速度を表し、Sはせん断応力を表し、αは定数を表し、nは非ニュートニアン指数を表す。)
上述の特定範囲のMw/Mtop及び非ニュートニアン指数を有するポリアリーレンスルフィド樹脂は、例えば、ジヨード芳香族化合物と、単体硫黄と、重合禁止剤とを、ジヨード芳香族化合物、単体硫黄及び重合禁止剤を含有する溶融混合物中で反応(溶液重合)させる方法において、かかるポリアリーレンスルフィド樹脂をある程度高分子量化させることにより得ることが可能である。
本実施形態に係るポリアリーレンスルフィド樹脂の融点は、好ましくは250~300℃の範囲であり、より好ましくは265~300℃の範囲である。ポリアリーレンスルフィド樹脂の300℃における溶融粘度(V6)は、好ましくは1~2000[Pa・s]の範囲であり、より好ましくは5~1700[Pa・s]の範囲である。ここで、溶融粘度(V6)は、フローテスターを用いて、温度300℃、荷重1.96MPa、オリフィス長とオリフィス径との比(オリフィス長/オリフィス径)が10/1であるオリフィスを使用して6分間保持した後の溶融粘度を意味する。
本実施形態に係るポリアリーレンスルフィド樹脂組成物は、1種又は2種以上の無機質充填剤を含有することができる。無機充填材が配合されることにより、高剛性、高耐熱安定性の組成物が得られる。無機充填材としては、例えばカーボンブラック、炭酸カルシウム、シリカ及び酸化チタン等の粉末状充填材、タルク及びマイカ等の板状充填材、ガラスビーズ、シリカビーズ及びガラスバルーン等の粒状充填材、ガラス繊維、炭素繊維及びウォラストナイト繊維等の繊維状充填材、並びにガラスフレークが挙げられる。ポリアリーレンスルフィド樹脂組成物は、ガラス繊維、炭素繊維、カーボンブラック、及び炭酸カルシウムからなる群より選ばれる少なくとも1種の無機質充填剤を含有することが特に好ましい。
無機充填材の含有量は、ポリアリーレンスルフィド樹脂100質量部に対して、好ましくは1~300質量部の範囲であり、より好ましくは5~200質量部の範囲であり、更に好ましくは15~150質量部の範囲である。無機質充填剤の含有量がこれらの範囲にあることにより、成形品の機械的強度保持の点でより優れた効果が得られる。
本実施形態に係るポリアリーレンスルフィド樹脂組成物は、熱可塑性樹脂、エラストマー、及び架橋性樹脂から選ばれる、ポリアリーレンスルフィド樹脂以外の樹脂を含有することができる。これら樹脂は、無機質充填剤とともに樹脂組成物中に配合することもできる。
ポリアリーレンスルフィド樹脂組成物に配合される熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエステル、ポリアミド、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリカーボネート、ポリフェニレンエーテル、ポリスルフォン、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルケトン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ四弗化エチレン、ポリ二弗化エチレン、ポリスチレン、ABS樹脂、シリコーン樹脂、及び液晶ポリマー(液晶ポリエステル等)が挙げられる。
ポリアミドは、アミド結合(-NHCO-)を有するポリマーである。ポリアミド樹脂としては、例えば、(i)ジアミンとジカルボン酸の重縮合から得られるポリマー、(ii)アミノカルボン酸の重縮合から得られるポリマー、及び(iii)ラクタムの開環重合から得られるポリマー等が挙げられる。ポリアミドは、単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
ポリアミドを得るためのジアミンの例としては、脂肪族系ジアミン、芳香族系ジアミン、及び脂環族系ジアミン類が挙げられる。脂肪族系ジアミンとしては、直鎖状又は側鎖を有する炭素数3~18のジアミンが好ましい。好適な脂肪族系ジアミンの例としては、1,3-トリメチレンジアミン、1,4-テトラメチレンジアミン、1,5-ペンタメチレンジアミン、1,6-ヘキサメチレンジアミン、1,7-ヘプタメチレンジアミン、1,8-オクタメチレンジアミン、2-メチル-1,8-オクタンジアミン、1,9-ノナメチレンジアミン、1,10-デカメチレンジアミン、1,11-ウンデカンメチレンジアミン、1,12-ドデカメチレンジアミン、1,13-トリデカメチレンジアミン、1,14-テトラデカメチレンジアミン、1,15-ペンタデカメチレンジアミン、1,16-ヘキサデカメチレンジアミン、1,17-ヘプタデカメチレンジアミン、1,18-オクタデカメチレンジアミン、2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジアミン、及び2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジアミンが挙げられる。これらは単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
芳香族系ジアミンとしては、フェニレン基を有する炭素数6~27のジアミンが好ましい。好適な芳香族系ジアミンの例としては、o-フェニレンジアミン、m-フェニレンジアミン、p-フェニレンジアミン、m-キシリレンジアミン、p-キシリレンジアミン、3,4-ジアミノジフェニルエーテル、4,4'-ジアミノジフェニルエーテル、4,4'-ジアミノジフェニルメタン、3,3'-ジアミノジフェニルスルフォン、4,4'-ジアミノジフェニルスルフォン、4,4'-ジアミノジフェニルスルフィド、4,4'-ジ(m-アミノフェノキシ)ジフェニルスルフォン、4,4'-ジ(p-アミノフェノキシ)ジフェニルスルフォン、ベンジジン、3,3'-ジアミノベンゾフェノン、4,4'-ジアミノベンゾフェノン、2,2-ビス(4-アミノフェニル)プロパン、1,5-ジアミノナフタレン、1,8-ジアミノナフタレン、4,4'-ビス(4-アミノフェノキシ)ビフェニル、2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、1,4-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4'-ジアミノ-3,3'-ジエチル-5,5'-ジメチルジフェニルメタン、4,4'-ジアミノ-3,3',5,5'-テトラメチルジフェニルメタン、2,4-ジアミノトルエン、及び2,2'-ジメチルベンジジンが挙げられる。
これらは単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
脂環族系ジアミンとしては、シクロヘキシレン基を有する炭素数4~15のジアミンが好ましい。好適な脂環族系ジアミンの例としては、4,4'-ジアミノ-ジシクロヘキシレンメタン、4,4'-ジアミノ-ジシクロヘキシレンプロパン、4,4'-ジアミノ-3,3'-ジメチル-ジシクロヘキシレンメタン、1,4-ジアミノシクロヘキサン、及びピペラジンが挙げられる。これらは単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
ポリアミドを得るためのジカルボン酸としては、脂肪族系ジカルボン酸、芳香族系ジカルボン酸、及び脂環族系ジカルボン酸を挙げることができる。
脂肪族系ジカルボン酸としては、炭素原子数2~18の飽和又は不飽和のジカルボン酸が好ましい。好適な脂肪族系ジカルボン酸の例としては、蓚酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸、プラシリン酸、テトラデカン二酸、ペンタデカン二酸、オクタデカン二酸、マレイン酸、及びフマル酸が挙げられる。これらは単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
芳香族系ジカルボン酸としては、フェニレン基を有する炭素数8~15のジカルボン酸が好ましい。好適な芳香族系ジカルボン酸の例としては、イソフタル酸、テレフタル酸、メチルテレフタル酸、ビフェニル-2,2'-ジカルボン酸、ビフェニル-4,4'-ジカルボン酸、ジフェニルメタン-4,4'-ジカルボン酸、ジフェニルエーテル-4,4'-ジカルボン酸、ジフェニルスルフォン-4,4'-ジカルボン酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、2,7-ナフタレンジカルボン酸、及び1,4-ナフタレンジカルボン酸が挙げられる。これらは単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。更に、トリメリット酸、トリメシン酸、及びピロメリット酸等の多価カルボン酸を、溶融成形可能な範囲内で用いることもできる。
アミノカルボン酸としては、炭素数4~18のアミノカルボン酸が好ましい。好適なアミノカルボン酸の例としては、4-アミノ酪酸、6-アミノヘキサン酸、7-アミノヘプタン酸、8-アミノオクタン酸、9-アミノノナン酸、10-アミノデカン酸、11-アミノウンデカン酸、12-アミノドデカン酸、14-アミノテトラデカン酸、16-アミノヘキサデカン酸、及び18-アミノオクタデカン酸が挙げられる。これらは単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
ポリアミドを得るためのラクタムとしては、例えば、ε-カプロラクタム、ω-ラウロラクタム、ζ-エナントラクタム、及びη-カプリルラクタムが挙げられる。これらは単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
好ましいポリアミドの原料の組み合わせとしては、ε-カプロラクタム(ナイロン6)、1,6-ヘキサメチレンジアミン/アジピン酸(ナイロン6,6)、1,4-テトラメチレンジアミン/アジピン酸(ナイロン4,6)、1,6-ヘキサメチレンジアミン/テレフタル酸、1,6-ヘキサメチレンジアミン/テレフタル酸/ε-カプロラクタム、1,6-ヘキサメチレンジアミン/テレフタル酸/アジピン酸、1,9-ノナメチレンジアミン/テレフタル酸、1,9-ノナメチレンジアミン/テレフタル酸/ε-カプロラクタム、1,9-ノナメチレンジアミン/1,6-ヘキサメチレンジアミン/テレフタル酸/アジピン酸、及びm-キシリレンジアミン/アジピン酸が挙げられる。これらの中でも、1,4-テトラメチレンジアミン/アジピン酸(ナイロン4,6)、1,6-ヘキサメチレンジアミン/テレフタル酸/ε-カプロラクタム、1,6-ヘキサメチレンジアミン/テレフタル酸/アジピン酸、1,9-ノナメチレンジアミン/テレフタル酸、1,9-ノナメチレンジアミン/テレフタル酸/ε-カプロラクタム、又は1,9-ノナメチレンジアミン/1,6-ヘキサメチレンジアミン/テレフタル酸/アジピン酸から得られるリアミド樹脂が更に好ましい。
熱可塑性樹脂の含有量は、ポリアリーレンスルフィド樹脂100質量部に対して、好ましくは1~300質量部の範囲であり、より好ましくは3~100質量部の範囲であり、更に好ましくは5~45質量部の範囲である。ポリアリーレンスルフィド樹脂以外の熱可塑性樹脂の含有量がこれらの範囲にあることにより、耐熱性、耐薬品性及び機械的物性の更なる向上という効果が得られる。
ポリアリーレンスルフィド樹脂組成物に配合されるエラストマーとしては、熱可塑性エラストマーが用いられることが多い。熱可塑性エラストマーとしては、例えば、ポリオレフィン系エラストマー、弗素系エラストマー及びシリコーン系エラストマーが挙げられる。なお、本明細書において、熱可塑性エラストマーは、前記熱可塑性樹脂ではなくエラストマーに分類される。
エラストマー(特に熱可塑性エラストマー)は、ヒドロキシ基、アミノ基、カルボキシル基及びカルボキシル基の塩からなる群より選ばれる少なくとも一種の基と反応し得る官能基を有することが好ましい。これにより、接着性及び耐衝撃性等の点で特に優れ、また加熱によるガス発生量を抑制できる樹脂組成物を得ることができる。係る官能基としては、エポキシ基、アミノ基、水酸基、カルボキシル基、メルカプト基、イソシアネート基、オキサゾリン基、及び、式:R(CO)O(CO)-又はR(CO)O-(式中、Rは炭素原子数1~8のアルキル基を表す。)で表される基が挙げられる。係る官能基を有する熱可塑性エラストマーは、例えば、α-オレフィンと前記官能基を有するビニル重合性化合物との共重合により得ることができる。α-オレフィンは、例えば、エチレン、プロピレン及びブテン-1等の炭素数2~8のα-オレフィン類が挙げられる。前記官能基を有するビニル重合性化合物としては、例えば、(メタ)アクリル酸及び(メタ)アクリル酸エステル等のα,β-不飽和カルボン酸及びそのアルキルエステル、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸及びその他の炭素数4~10のα、β-不飽和ジカルボン酸及びその誘導体(モノ若しくはジエステル、及びその酸無水物等)、並びにグリシジル(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらの中でも、エポキシ基、カルボキシル基、及び、式:R(CO)O(CO)-又はR(CO)O-(式中、Rは炭素原子数1~8のアルキル基を表す。)で表される基からなる群から選ばれる少なくとも1種の官能基を有するエチレン-プロピレン共重合体及びエチレン-ブテン共重合体が、靭性及び耐衝撃性の向上の点から好ましい。
エラストマーの含有量は、その種類、用途により異なるため一概に規定することはできないが、例えば、ポリアリーレンスルフィド樹脂100質量部に対して好ましくは1~300質量部の範囲であり、より好ましくは3~100質量部の範囲であり、更に好ましくは5~45質量部の範囲である。エラストマーの含有量がこれらの範囲にあることにより、成形品の耐熱性、靭性の確保の点でより一層優れた効果が得られる。
ポリアリーレンスルフィド樹脂組成物に配合される架橋性樹脂は、2以上の架橋性官能基を有する。架橋性官能基としては、エポキシ基、フェノール性水酸基、アミノ基、アミド基、カルボキシル基、酸無水物基、及びイソシアネート基などが挙げられる。架橋性樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、及びウレタン樹脂が挙げられる。
エポキシ樹脂としては、芳香族系エポキシ樹脂が好ましい。芳香族系エポキシ樹脂は、ハロゲン基又は水酸基等を有していてもよい。好適な芳香族系エポキシ樹脂の例としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、テトラメチルビフェニル型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、トリフェニルメタン型エポキシ樹脂、テトラフェニルエタン型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン-フェノール付加反応型エポキシ樹脂、フェノールアラルキル型エポキシ樹脂、ナフトールノボラック型エポキシ樹脂、ナフトールアラルキル型エポキシ樹脂、ナフトール-フェノール共縮ノボラック型エポキシ樹脂、ナフトール-クレゾール共縮ノボラック型エポキシ樹脂、芳香族炭化水素ホルムアルデヒド樹脂変性フェノール樹脂型エポキシ樹脂、及びビフェニルノボラック型エポキシ樹脂が挙げられる。これらの芳香族系エポキシ樹脂は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。これら芳香族系エポキシ樹脂の中でも特に、他の樹脂成分との相溶性に優れる点から、ノボラック型エポキシ樹脂が好ましく、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂がより好ましい。
架橋性樹脂の含有量は、ポリアリーレンスルフィド樹脂100質量部に対して、好ましくは1~300質量部の範囲であり、より好ましくは3~100質量部の範囲であり、更に好ましくは5~30質量部の範囲である。架橋性樹脂の含有量がこれら範囲にあることにより、成形品の剛性及び耐熱性の向上という効果が特に顕著に得られる。
ポリアリーレンスルフィド樹脂組成物は、ヒドロキシ基、アミノ基、カルボキシル基及びカルボキシル基の塩からなる群より選ばれる少なくとも一種の基と反応し得る官能基を有するシラン化合物を含有することができる。これにより、ポリアリーレンスルフィド樹脂と他の成分との相溶性を向上し、また、加熱によるガス発生量を抑制できる樹脂組成物を得ることができる。係るシラン化合物としては、例えば、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、β-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン及びγ-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン等のシランカップリング剤が挙げられる。
シラン化合物の含有量は、例えば、ポリアリーレンスルフィド樹脂100質量部に対して0.01~10質量部の範囲であることが好ましく、さらに0.1~5質量部の範囲であることがより好ましい。シラン化合物の含有量がこれらの範囲にあることにより、ポリアリーレンスルフィド樹脂と前記他の成分との相溶性向上という効果が得られる。
本実勢形態に係るポリアリーレンスルフィド樹脂組成物は、離型剤、着色剤、耐熱安定剤、紫外線安定剤、発泡剤、防錆剤、難燃剤及び滑剤等のその他の添加剤を含有してもよい。添加剤の含有量は、例えば、ポリアリーレンスルフィド樹脂100質量部に対して、1~10質量部の範囲であることが好ましい。
ポリアリーレンスルフィド樹脂組成物は、上記方法により得られたポリアリーレンスルフィド樹脂と、前記他の成分とを溶融混練する方法により、例えば、ペレット状のコンパウンド等の形態で得ることができる。溶融混錬の温度は、例えば、250~350℃の範囲であることが好ましく、さらに290~330℃の範囲であることがより好ましい。溶融混錬は、2軸押出機等を用いて行うことができる。
本実施形態に係るポリアリーレンスルフィド樹脂組成物は、単独で又は前記他の成分などの材料と組み合わせて、射出成形、押出成形、圧縮成形及びブロー成形のような各種溶融加工法により、耐熱性、成形加工性、寸法安定性等に優れた成形品に加工することができる。本実施形態に係るポリアリーレンスルフィド樹脂組成物は、加熱されたときのガス発生量が少ないことから、高品質の成形品の容易な製造を可能にする。
このようにして得られる成形品は、表面実装電子部品に好適に用いられる。表面実装電子部品は、例えば、ポリアリーレンスルフィド樹脂組成物の成形品と、金属端子とを構成要素とするもので、プリント印刷された配線基板や回路基板上に表面実装方式によって固定されるものである。この電子部品を表面実装方式で基板に固定させるには、該電子部品の金属端子がハンダボールを介して基板上の通電部に接するように基板表面に載せて、上記した加熱方式によってリフロー炉内で加熱することによって、該電子部品を基板にハンダ付けする方法が挙げられる。かかる表面実装電子部品としては、具体的には、表面実装方式対応用のコネクター、スイッチ、センサー、抵抗器、リレー、コンデンサー、ソケット、ジャック、ヒューズホルダー、コイルボビン、ICやLEDのハウジング等が挙げられる。
本実施形態に係るポリアリーレンスルフィド樹脂組成物を表面実装電子部品に用いると、加熱によるガス発生量を低減させることができるため、金属端子等の腐食を抑制できる。また、本実施形態に係るポリアリーレンスルフィド樹脂組成物によれば、例えばスナップフィット部を有する成形品に成形した場合にも、優れた機械強度を示す。
以下、実施例を挙げて本発明についてさらに具体的に説明する。ただし、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
1.評価法
[曲げ特性]
・準拠試験方法…ASTM D-790
・試験片…3.2mm(厚)×12.7mm(幅)×127mm(長)
・試験結果…試験数n=10の平均値
[耐熱水性]
試験片を95℃の熱水に浸漬し、曲げ強さの経時変化を調べた。
・試験片…3.2mm(厚)×12.7mm(幅)×127mm(長)
・曲げ強さの試験方法…ASTM D-790
・評価項目…1000時間、3000時間後の曲げ強さの初期強さに対する保持率
・試験結果…試験数n=5の平均値
[金属密着強さ]
金型にセットした4×10×49mmの金属片(SUS304)に、同寸法分のポリアリーレンスルフィド樹脂組成物を射出、成形したものについて、チャック間20mm、引張速度1mm/minの条件で引張試験を実施し、金属密着強さを測定した。
[キャビティーバランス]
40個分のキャビティーを有するワッシャー金型を用いて、一次スプルーに最も近い位置のキャビティー(C1)が完全に充填される限りで最低の成形条件でPPSコンパウンドを射出成形した。成形条件は75トン成形機、シリンダー温度320℃、金型温度140℃、保圧無しとした。
成型後の、キャビティー(C1)と同じランナーにある一次スプルーから最も遠いキャビティー(C10)の充填度を比較した。充填度(質量%)は、キャビティー(C1)の成形品に対する、キャビティー(C10)の成形品の質量比から求めた。キャビティー(C10)の充填度が高いほど、キャビティーバランスが優れていると言える。充填度に基づいて、各組成物のキャビティーバランスを以下の基準で判定した。
AA:100~90質量%の範囲
A:89~80質量%の範囲
B:79~70質量%の範囲
C:69~60質量%の範囲
D:59%質量以下の範囲
[ガス発生量]
ガスクロマトグラフ質量分析装置を用いて、ポリアリーレンスルフィド樹脂又は樹脂組成物の所定量のサンプルを325℃で15分間加熱し、そのときのガス発生量を質量%として定量した。
[耐リフロー加熱性]
樹脂組成物のペレットを、射出成形機を用いて成形し、形状が縦70mm×横10mm×高さ8mm、0.8mm厚さの箱形コネクターを作成した。次いで、この箱形コネクターをプリント基板の上に載せて、下記リフロー条件で加熱した。加熱後に箱形コネクターを目視観察し、下記の2段階の基準で外観評価を行った。
〇:外観に変化なし。
×:ブリスタ又は融解が観察された。
(リフロー条件)
リフロー加熱は赤外線リフロー装置(アサヒエンジニアリング社製「TPF-2」)で行った。この際の加熱条件としては、それぞれ180℃で100秒間予備加熱した後、基体表面が280℃に到達するまで加熱保持を行った。つまり、200℃以上の領域で100秒間、220℃以上の領域で90秒間、240℃以上の領域で80秒間、260℃以上の領域で60秒間となるように温度プロファイル(温度曲線)をリフロー装置にて設定を行い、加熱保持を行った。
2.ポリフェニレンスルフィド樹脂(PPS樹脂)の合成
(合成例1:PPS-1の合成)
p-ジヨードベンゼン(東京化成株式会社、p-ジヨードベンゼン純度98.0%以上)300.0g、固体硫黄(関東化学株式会社製、硫黄(粉末))27.00g、4,4’-ジチオビス安息香酸(和光純薬工業株式会社製、4,4’-ジチオビス安息香酸、Technical Grade)2.0gを180℃に加熱してそれらを窒素下で溶解、混合した。次に220℃に昇温し、絶対圧26.6kPaまで減圧した。得られた溶融混合物を、320℃で絶対圧133Paとなるように、段階的に温度と圧力変化させて、8時間溶融重合した。反応終了後、NMP200gを加えて、220℃で加熱撹拌し、得られた溶解物をろ過した。ろ過後の溶解物にNMP320gを加え、ケーキ洗浄ろ過を行った。得られたNMPを含むケーキにイオン交換水1Lを加え、オートクレーブ中で200℃10分間攪拌した。次いでケーキをろ過し、ろ過後のケーキに70℃のイオン交換水1Lを加えケーキ洗浄を行った。得られた含水ケーキにイオン交換水1Lを加えて10分間攪拌した。次いでケーキをろ過し、ろ過後のケーキに70℃のイオン交換水1Lを加えケーキ洗浄を行った。この操作をもう一度繰り返した後、ケーキを120℃で4時間乾燥し、PPS樹脂(PPS-1)91gを得た。
(合成例2:PPS-2の合成)
「4,4’-ジチオビス安息香酸」の替りに「2-ヨードアニリン(東京化成株式会社製)」を用いたこと以外は合成例1と同様にして、PPS樹脂(PPS-2)91gを得た。
(合成例3:PPS-3の合成)
「4,4’-ジチオビス安息香酸」の替りに「ジフェニルジスルフィド(住友精化株式会社、DPDS)」を用いたこと以外は合成例1と同様にしてPPS樹脂(PPS-3)91gを得た。
(合成例4:PPS-4の合成)
2LのオートクレーブにN-メチルピロリドン600gと硫化ナトリウム5水塩336.3g(2.0mol)とを仕込み、窒素雰囲気下、200℃まで昇温することにより水-NMP混合物を留去した。次いでこの系に、p-ジクロルベンゼン292.53g(1.99mol)と2,5-ジクロルアニリン1.62g(0.01mol)とをNMP230gに溶かした溶液を添加し、220℃で5時間、さらに240℃で2時間、窒素雰囲気下で反応させた。反応容器から冷却後内容物を取り出し、一部をサンプリングし、未反応2,5-ジクロロアニリンをガスクロマトグラフで定量した。また残りのスラリは熱水で数回洗浄し、ポリマーケーキを濾別した。このケーキを80℃減圧乾燥し、粉末のアミノ基含有ポリフェニレンスルフィド(PPS-4)を得た。
合成例1~4で得られたPPS-1~PPS-4の性状を表1に示す。
Figure 0007375787000018
3.ポリフェニレンスルフィド樹脂組成物(PPSコンパウンド)
[原料]
PPS樹脂組成物を調製するため、以下の材料を準備した。
(熱可塑性樹脂)
PA6T:テレフタル酸65モル%、イソフタル酸25モル%、アジピン酸10モル%を必須の単量体成分として反応させて得られた芳香族ポリアミド(融点310℃、Tg120℃)
PA9T:ノナンジアミンとテレフタル酸とを反応させて得られたポリアミド(株式会社クラレ製、「ジェネスタ N1000A」)
PA46:ポリアミド46(ディーエスエム ジャパン エンジニアリング プラスチックス株式会社製、「スタニール TS300」)
(無機質充填剤)
GF:ガラス繊維チョップドストランド(繊維径10μm、長さ3mm)
[コンパウンドの作製と評価]
表1に示す配合組成で各原料をタンブラーによって均一に混合した後、2軸混練押出機(TEM-35B、東芝機械)を用いて300℃で溶融混練して、ペレット状のコンパウンドを得た。得られたコンパウンドをシリンダー温度300℃、金型温度140℃の条件で射出成形し、曲げ特性、金属密着強さ、キャビティーバランス及び耐熱水性試験に用いる試験片を作製し、各種評価を行った。また、PPS樹脂単体及びコンパウンドについて、ガス発生量を測定した。評価結果を表2に示す。
Figure 0007375787000019
表2に示される結果から明らかなように、PPS-1、PPS-2及びPPS-3は、機械特性(曲げ強さ、曲げ破断伸び)、金属密着強さ、キャビティーバランス、耐熱水性、ガス発生量の点で、PPS-4よりも優れていた。

Claims (8)

  1. 電子部品の金属端子がハンダボールを介して基板上の通電部に接するように基板表面に載せて、リフロー炉内で加熱することによって、該電子部品を基板にハンダ付けする、表面実装電子部品のハンダ付け方法であって、
    前記表面実装電子部品がポリアリーレンスルフィド樹脂組成物を成形して得られる成形品と、金属端子とを備えるものであること、
    前記ポリアリーレンスルフィド樹脂組成物が、
    ポリアリーレンスルフィド樹脂と、
    無機質充填剤、前記ポリアリーレンスルフィド樹脂以外の熱可塑性樹脂、エラストマー、及び2以上の架橋性官能基を有する架橋性樹脂からなる群より選ばれる、少なくとも1種の他の成分と、
    を含有すること、かつ、ポリアリーレンスルフィド樹脂100質量部に対し、前記他の成分が1~300質量部であること、
    前記ポリアリーレンスルフィド樹脂が、ジヨード芳香族化合物と、単体硫黄と、重合禁止剤とを、前記ジヨード芳香族化合物、前記単体硫黄及び前記重合禁止剤を含む溶融混合物中で反応させることを含む方法により得ることのできるものであること、
    前記ポリアリーレンスルフィド樹脂が、前記重合禁止剤に由来するカルボキシル基及びカルボキシル基の塩からなる群より選ばれる少なくとも一種の基を有すること、
    前記ポリアリーレンスルフィド樹脂が、0.80~1.70のMw/Mtopを有し、
    前記Mw及びMtopはそれぞれゲル浸透クロマトグラフィーにより測定される重量平均分子量及びピーク分子量であること、
    を特徴とするハンダ付け方法。
  2. ハンダが、鉛フリーはんだである、請求項1に記載のハンダ付け方法。
  3. 前記基板が、プリント印刷された配線基板または回路基板である、請求項1又は2に記載のハンダ付け方法。
  4. 前記ポリアリーレンスルフィド樹脂が、
    主鎖中に下記一般式(20)
    Figure 0007375787000020
    で表されるジスルフィド結合を有するポリアリーレンスルフィド樹脂と、該ポリアリーレンスルフィド樹脂に対し0.01~10,000ppmの範囲となる割合でヨウ素原子を含む混合物である、請求項1~3の何れか一項記載のハンダ付け方法。
  5. 前記ポリアリーレンスルフィド樹脂が、
    末端に下記一般式(a)
    Figure 0007375787000021
    で表される一価の基、下記一般式(b)
    Figure 0007375787000022
    で表される一価の基、又は下記一般式(c)
    Figure 0007375787000023
    (ただし、一般式(a)~(c)中のXは、水素原子又はアルカリ金属原子である。一般式(b)中、R10は炭素原子数1~6のアルキレン基を表す。一般式(c)中、R11は炭素原子数1~3のアルキレン基を表し、R12は炭素原子数1~5のアルキル基を表す。)〕で表される一価の基を有する、請求項1~4のいずれか一項に記載のハンダ付け方法。
  6. 前記ポリアリーレンスルフィド樹脂が、300℃における0.95~1.75の非ニュートニアン指数、及び、0.80~1.70のMw/Mtopを有し、
    前記Mw及びMtopはそれぞれゲル浸透クロマトグラフィーにより測定される重量平均分子量及びピーク分子量である、請求項1~の何れか一項記載のハンダ付け方法。
  7. 前記ポリアリーレンスルフィド樹脂組成物はペレット状である、請求項1~の何れか一項記載のハンダ付け方法。
  8. 前記重合禁止剤が、下記一般式(3)、(4)または(5)
    Figure 0007375787000024
    Figure 0007375787000025
    Figure 0007375787000026
    〔式中、一般式(3)中、R及びRはそれぞれ独立に、水素原子、又は、下記一般式(a)、(b)若しくは(c)で表される一価の基を表し、R又はRの少なくともいずれか一方は一般式(a)、(b)又は(c)で表される一価の基である。一般式(4)中、Zは、ヨウ素原子又はメルカプト基を表し、Rは、下記一般式(a)、(b)又は(c)で表される一価を表す。一般式(5)中、Rは、一般式(a)、(b)又は(c)で表される一価の基を表す。
    Figure 0007375787000027
    Figure 0007375787000028
    Figure 0007375787000029
    (ただし、一般式(a)~(c)中のXは、水素原子又はアルカリ金属原子である。一般式(b)中、R10は炭素原子数1~6のアルキレン基を表す。一般式(c)中、R11は炭素原子数1~3のアルキレン基を表し、R12は炭素原子数1~5のアルキル基を表す。)〕で表される化合物を含む、請求項1~のいずれか一項に記載のハンダ付け方法。
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