以下、実施形態の一例を説明する。同一の構成要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。各図面では、説明の便宜のため、構成要素の一部を適宜省略したり、その寸法を適宜拡大、縮小する。図面は符号の向きに合わせて見るものとする。
説明の便宜上、図示のように、水平なある方向をX方向、X方向に直交する水平な方向をY方向、両者に直交する方向すなわち鉛直方向をZ方向とするXYZ直交座標系を定める。また、X方向を左右方向又は開閉方向と、Y方向を戸厚方向と、Z方向を上下方向ということがある。このような方向の表記は引戸装置100の使用姿勢を制限するものではなく、引戸装置100は、用途に応じて任意の姿勢で使用される。図1の例では、X方向は引戸30の見付け方向に沿っており、Y方向は引戸30の見込方向に沿っている。
(構成)引戸装置100は、枠体10と、駆動装置20と、引戸30と、変換機構50と、を含む。引戸30は、X方向に移動することによって、建物壁面1をY方向に貫通するとともに建物壁面1に開口する建物開口部2を開閉可能である。ここでは枠体10に建物開口部2が設けられる例を示す。図1及び図4(a)は、引戸30によって建物開口部2を完全に閉じている全閉状態を示す。図2及び図4(b)は、引戸30によって建物開口部2を開閉する途中でかつ建物開口部2が部分的に閉じた途中閉状態を示し、図3及び図4(c)は、引戸30によって建物開口部2を完全に開いている全開状態を示す。
引戸30は、駆動装置20、変換機構50と協働して、開閉動作に連動して戸厚を変更可能である。詳しくは、引戸30は、全閉状態と途中閉状態との間を移行する過程で戸厚を変更し、途中閉状態と全開状態との間を移行する過程で戸厚を維持する。引戸30は、全閉状態から途中閉状態に移行する過程で戸厚を小さくし、途中閉状態から全閉状態に移行する過程で戸厚を大きくする。
枠体10は、建物の躯体(不図示)に固定される。枠体10は、引戸30の周囲を囲み、引戸30を可動に支持する。図4(a)に示すように、枠体10は、戸厚方向の両側に設けられる一対の枠ユニット10aと、一対の枠ユニット10aを接続する接続枠10bを備える。枠ユニット10aは、上枠11と、下枠12と、一対の縦枠13と、を含む。これらは、矩形状に枠組みされる。上枠11は、枠体10の上部においてX方向に延びる。下枠12は、枠体10の下部においてX方向に延びる。一対の縦枠13は、上枠11及び下枠12の両端から両者を繋ぐようにZ方向に延びる。
図4(a)に示すように、建物壁面1は、一対の枠ユニット10aそれぞれのY方向の外側を向く外側面3と、一対の枠ユニット10aそれぞれに装着される仕切り壁19とによって形成される。
枠体10は、中間横枠14と、仕切り枠15と、キャッチャー16と、を含む。中間横枠14は、一対の縦枠13の間に設けられる。建物開口部2は、下枠12、左側の縦枠13、中間横枠14及び仕切り枠15の内側に形成される。仕切り枠15は、上枠11及び下枠12の中央部において上枠11と下枠12との間をZ方向に延びる。キャッチャー16は、左側の縦枠13に設けられる。
中間横枠14の底部には、後述する変換機構50のドアハンガー53の各戸車53a(図9等参照)をX方向に走行可能に吊り下げて保持する戸車レール17が設けられる。下枠12には、引戸30の下端に設けられた振れ止め44をガイドするための第1のガイドレール18が設けられる。仕切り枠15と右側の縦枠13との間には、ガラス製の仕切り壁19が装着される。両側の仕切り壁19と右側の縦枠13とにより包囲される空間は、引戸30を収容する戸袋を構成する。仕切り壁19としては、石膏ボード及び合板などの透明ではない材料で構成されるものが用いられてもよい。振れ止め44は、枠体10や床材に設けられてもよい。
キャッチャー16は、閉位置にある引戸30を保持可能に構成される。ここで、「閉位置」とは、引戸装置100が全閉状態又は途中閉状態のときの引戸30の位置をいう。キャッチャー16は、閉位置を維持するように引戸30を保持する。キャッチャー16は、後述する引戸30の裏側枠体32を保持した状態において裏側枠体32の保持力よりも大きい開方向の荷重が裏側枠体32に加わった場合に、裏側枠体32を離脱するように構成される。本実施形態のキャッチャー16は、マグネットである。
キャッチャー16は、閉位置にある引戸30の閉方向への更なる移動を規制可能である。したがって、キャッチャー16は、引戸30を保持する機能に加えて、引戸30のストッパーとしての機能を有する。
駆動装置20は、開閉方向の動力を出力する。駆動装置20は、引戸装置100に対する入力荷重として開閉方向の直動荷重を後述する移動体51に付与する。駆動装置20は、モータ21と、駆動プーリ22と、従動プーリ23と、コントローラ24と、センサ部25と、ベルト26と、を含む。駆動装置20は、中間横枠14内に設けられる。
モータ21は駆動プーリ22を回転駆動する。コントローラ24は、センサ部25の検出信号に基づいて通行人を検出した場合にモータ21を制御する。ベルト26は、駆動プーリ22と従動プーリ23の外周に掛け回され、駆動プーリ22の回転に伴って従動プーリ23を回転させる。モータ21により駆動プーリ22を回転させてベルト26を駆動させることにより、動力を出力する。駆動装置20は、キャッチャー16が裏側枠体32を保持する力よりも大きい荷重を出力するように構成される。
引戸30は、厚さを変更可能に構成される。引戸30は、戸厚方向の両側にそれぞれ設けられた表面材31と、両側の表面材31の間に設けられた裏側枠体32と、を含む。引戸30は例えばケンドン動作により枠体10に装着される。引戸30の上部は中間横枠14のガイド溝(不図示)に嵌め込まれる。引戸30は、変換機構50を介してX方向に移動可能に枠体10に支持される。
表面材31は、上框33と、下框34と、一対の縦框35と、ガイド枠36と、を含む。表面材31は、これらを矩形状に枠組みした枠体に面材38を取り付けたパネル部材である。上框33は、表面材31の上部においてX方向に延びる。下框34は、表面材31の下部においてX方向に延びる。一対の縦框35は、上框33及び下框34の両端から両者を繋ぐようにZ方向に延びる。ガイド枠36は、一対の縦框35の間をX方向に延びる。図7に示すように、ガイド枠36は、後述する荷重出力機構60の戸厚変更ローラー65をガイドするための第2のガイドレール37を有する。第2のガイドレール37は、ガイド枠36の下面にX方向にわたって形成される。ただし、これに限定されず、第2のガイドレール37は、戸厚変更ローラー65の可動域部分のみに形成されてもよい。
裏側枠体32は、開閉方向の荷重を受けることにより、引戸30を開閉方向に移動させるように構成される。裏側枠体32は、表面材31の裏側に配置される。裏側枠体32は、後述する荷重出力機構60を介して表面材31を戸厚方向に移動可能に支持する。裏側枠体32は、金属製であり、全閉状態又は途中閉状態においてキャッチャー16によって保持される。
裏側枠体32は、上枠39と、下枠40と、一対の縦枠41と、中枠42と、ガイド部43と、を含む。上枠39は、裏側枠体32の上部においてX方向に延びる。下枠40は、裏側枠体32の下部においてX方向に延びる。一対の縦枠41は、上枠39及び下枠40の両端から両者を繋ぐようにZ方向に延びる。中枠42は、一対の縦枠41の間をX方向に延びる。下枠40の下面には、複数の振れ止め44がX方向にそれぞれ離れて配置される。振れ止め44は、枠体10の第1のガイドレール18に沿ってスライドする。
ガイド部43は、裏側枠体32の上枠39の両端の上面にそれぞれ設けられる。図7に示すように、ガイド部43は、後述する支持具54の支持具ローラー57をガイドするための第3のガイドレール45を有する。
左右両側の第3のガイドレール45は、開閉方向について所定の長さ寸法を有する。支持具ローラー57が第3のガイドレール45の一方の端部から第3のガイドレール45に沿ってこの所定の長さ寸法分の距離を移動すると、支持具ローラー57が第3のガイドレール45の他方の端部に接触する。この接触により、ガイド部43は、支持具54を介して開閉方向の荷重を受ける。
変換機構50は、外部から入力された入力荷重を引戸30の戸厚を変更する動きに変換する。変換機構50は、移動体51と、戸厚変更機構52と、を含む。変換機構50は、引戸30とは別体に設けられる。
移動体51は、入力荷重を受けて引戸30に対してその可動域内で開閉方向に相対移動可能に構成される。移動体51は、その可動域の末端位置にあるときに引戸30とともに開閉方向に移動可能に構成される。移動体51は、ドアハンガー53と、支持具54と、接続具55と、接続部材56と、を含む。移動体51が引戸30に対して相対移動する距離は、第3のガイドレール45の長さ寸法に対応する。引戸30に対する移動体51の相対移動の可動域は、第3のガイドレール45によって定められる。
ドアハンガー53は、駆動装置20から入力荷重を受けることにより、開閉方向に移動可能に構成される。ドアハンガー53は、ベルト26を介してモータ21から荷重を受ける。この荷重を受けて、ドアハンガー53の各戸車53aが戸車レール17上を走行する。これにより、引戸30が開閉方向に移動し、開閉動作が行われる。ドアハンガー53は、中間横枠14内に設けられる。
支持具54は、ドアハンガー53と引戸30とを接続するとともに、開閉方向にスライド移動可能に引戸30を支持する。支持具54は、ドアハンガー53の両端にそれぞれ設けられる。支持具54の下端には、支持具ローラー57が設けられる。支持具ローラー57は、第3のガイドレール45に開閉方向にスライド移動可能に接続される。
接続具55は、ドアハンガー53と接続部材56とを接続する。接続具55は、駆動装置20からドアハンガー53を介して入力された荷重を接続部材56に伝達する。接続具55は、ドアハンガー53の中央部に設けられる。
接続部材56には、接続具55を介して駆動装置20から開閉方向の荷重が付与される。接続部材56の両端は、後述する戸厚変更機構52の左右の回転力出力機構58にそれぞれ接続される。接続部材56は、両側の表面材31の間に配置される。
ドアハンガー53、支持具54、接続具55及び接続部材56は、一体的に接続されるため、開閉方向に一体的に移動する。そのため、これらは、移動体51がその可動域内で開閉方向に相対移動しているとき、すなわち支持具ローラー57が第3のガイドレール45の両端部の間を移動しているとき、引戸30に対して開閉方向に相対移動する。支持具ローラー57が第3のガイドレール45の端部に接触して移動体51が可動域の末端位置に達すると、この相対移動が停止する。移動体51が可動域の開方向側の末端位置にある状態、すなわち支持具ローラー57が第3のガイドレール45の右端部に接触した状態では、ドアハンガー53、支持具54、接続具55及び接続部材56は引戸30と一体的に開閉方向に移動可能である。
戸厚変更機構52は、引戸30に対する移動体51の相対移動に連動して引戸30の戸厚を変化させる。例えば、戸厚変更機構52は、接続部材56を介して入力される開閉方向の荷重を戸厚方向の荷重に変換して引戸30に出力することにより、引戸30の厚さを変化させる。戸厚変更機構52は、移動体51の相対移動に連動して表面材31の内側から両側の表面材31に対して互いに近づく方向又は離れる方向の力を加えることにより、引戸30の厚さを変化させる。戸厚変更機構52は、引戸30に対して移動体51が開方向に相対移動したときに戸厚を小さくし、引戸30に対して移動体51が閉方向に相対移動したときに戸厚を大きくする。
戸厚変更機構52は、回転力出力機構58と、回転部材59と、荷重出力機構60と、を含む。戸厚変更機構52は、両側の表面材31の間に配置され、引戸30及び仕切り壁19とは別体に設けられる。
回転力出力機構58は、接続部材56から伝達された開閉方向の荷重を回転力に変換して回転部材59に出力することにより、回転部材59を回転させる。回転力出力機構58の閉方向側の一端は第1の接続軸61を介して接続部材56に接続され、回転力出力機構58の他端は回転部材59に接続される。左右両側の回転力出力機構58は接続部材56の両端に接続されるため、移動体51のX方向の相対移動により左右両側の回転力出力機構58は同じ動作を行う。その結果、左右両側の回転部材59は、同時に同じ回転を行う。
図5に示すように、回転力出力機構58は、細長い板状の第1~第4のリンク部材62a~62dを有するリンク機構である。第1~第4のリンク部材62a~62dは、同じ長さ寸法を有する。回転力出力機構58は、第1~第4のリンク部材62a~62dの各々を一辺とする四角形状に構成される。第1のリンク部材62a及び第4のリンク部材62dは互いに平行な状態を維持したまま動作し、第2のリンク部材62b及び第3のリンク部材62cは互いに平行な状態を維持したまま動作する。
第1のリンク部材62aの一端及び第2のリンク部材62bの一端は、第1の接続軸61によって接続される。第1のリンク部材62aの他端及び第3のリンク部材62cの一端は、ピン63aによって接続される。第2のリンク部材62bの他端及び第4のリンク部材62dの一端は、ピン63bによって接続される。第3のリンク部材62cの他端及び第4のリンク部材62dの他端は、回転部材59によって接続される。
第3のリンク部材62cは、回転部材59と一体的に回転するように、回転部材59に固定されて接続される。したがって、第3のリンク部材62cが回転すると、その回転運動が回転部材59に伝達される。
図5(a)及び(b)に示すように、第1の接続軸61及び回転部材59の間の距離をL1とし、ピン63aとピン63bとの間の距離をL2とし、第3のリンク部材62cとX方向軸とがなす角度をθ1とする。図5(a)に示すように、全閉状態では、距離L1は最も小さく、距離L2及び角度θ1は最も大きい。
図5(a)に示す全閉状態から図5(b)に示す途中閉状態に移行するとき、接続部材56は開方向に移動する。これに伴い、第1の接続軸61が開方向に移動するため、距離L1が大きくなるとともに、距離L2が小さくなる。その結果、角度θ1が小さくなる。このとき、第3のリンク部材62cは、回転部材59周りに時計回りに回転する。第3のリンク部材62cは回転部材59に固定されて接続されるため、回転部材59は第3のリンク部材62cと一体的に時計回りに回転する。その後、引戸装置100は途中閉状態となり、回転が停止する。図5(b)に示すように、途中閉状態では、距離L1は最も大きく、距離L2及び角度θ1は最も小さい。
一方、図6(a)に示す途中閉状態から図6(b)に示す全閉状態に移行するとき、接続部材56は閉方向に移動する。これに伴い、第1の接続軸61が閉方向に移動するため、距離L1が小さくなるとともに、距離L2が大きくなる。その結果、角度θ1が大きくなる。このとき、第3のリンク部材62cが回転部材59周りに反時計回りに回転する。その結果、回転部材59は第3のリンク部材62cと一体的に反時計回りに回転する。その後、引戸装置100は全閉状態となり、回転が停止する。
回転部材59は、棒状の部材であり、回転力出力機構58から入力された回転力を荷重出力機構60に伝達する。回転部材59の上端部は、第3のリンク部材62cの他端及び第4のリンク部材62dの他端に接続される。回転部材59は、裏側枠体32の上枠39及び中枠42にそれぞれ形成された挿入孔(不図示)を通して裏側枠体32に接続される。
荷重出力機構60は、入力荷重を受けて引戸30に戸厚変更荷重を出力する。荷重出力機構60は、回転部材59から伝達された回転力を戸厚変更荷重に変換して両側の表面材31に出力することにより、戸厚を変化させる。本実施形態の荷重出力機構60は、上下方向及び開閉方向に間隔を開けて4つ配置される。回転部材59において上下方向に2つ配置された荷重出力機構60は、共通する回転部材59から入力される回転力を戸厚変更荷重に変換する。接続部材56を介して開閉方向に2つ配置された荷重出力機構60は、共通する接続部材を介して入力される直動力を戸厚変更荷重に変換する。
荷重出力機構60は、第1の回転バー64a及び第2の回転バー64bと、戸厚変更ローラー65と、第2の接続軸66と、を有する。荷重出力機構60は、第1及び第2の回転バー64a及び64bの長さ方向の中央部を交差させることで十字型状に構成される。この交差部では、第1及び第2の回転バー64a及び64bが回転部材59によって接続される。
第1の回転バー64aは、回転部材59と一体的に回転するように回転部材59に固定されて接続される。第1及び第2の回転バー64a及び64bの一端部には、ガイド枠36の第2のガイドレール37によってガイドされる戸厚変更ローラー65が設けられる。第1及び第2の回転バー64a及び64bの他端部には、第1及び第2の回転バー64a及び64bをガイド枠36に回転可能に接続する第2の接続軸66が設けられる。第1の回転バー64aは上側に設けられ、第2の回転バー64bは下側に設けられる。第2の回転バー64bは、中枠42の上に設けられる。
回転部材59が回転すると、第1の回転バー64aにその回転運動が伝達され、回転部材59と一体的に第1の回転バー64aが回転する。これにより、第1の回転バー64aと第2のガイドレール37とがなす角度が変化するとともに、この回転運動のX方向の力により第1の回転バー64aの戸厚変更ローラー65は第2のガイドレール37に沿ってX方向に移動する。さらに、この回転運動のY方向の力が第1の回転バー64aを介して戸厚方向両側の表面材31に伝達されることにより、両側の表面材31が戸厚方向に移動する。また、この第1の回転バー64aの動きに連動して、第2の回転バー64bが回転部材59を中心に第1の回転バー64aとは反対方向に回転する。その結果、両側の表面材31の間の戸厚方向の距離が変化する。
図7(a)及び(b)に示すように、両側の表面材31間の距離をL3とし、第1の回転バー64aと第2のガイドレール37とがなす角度をθ2とする。図7(a)に示すように、全閉状態では、角度θ2は最も大きく、距離L3は最も大きい。
図7(a)に示す全閉状態から図7(b)に示す途中閉状態に移行するとき、上述したように回転部材59は時計回りに回転する。第1の回転バー64aは回転部材59と一体的に回転するため、第1の回転バー64aも回転部材59周りに時計回りに回転する。その結果、図7(a)に示すように、両側の表面材31には、第1の回転バー64aの両端部を介して、互いに近づく方向の力が加わる。これにより、角度θ2が大きくなるように戸厚変更ローラー65が第2のガイドレール37に沿って途中閉方向に移動するとともに、両側の表面材31が互いに近づくように移動する。そのため、距離L3が小さくなる結果、引戸30の戸厚が小さくなる。その後、引戸30は途中閉状態となり、回転が停止する。図8(b)に示すように、途中閉状態では、角度θ2は最も大きく、距離L3は最も小さい。
一方、図8(a)に示す途中閉状態から図8(b)に示す全閉状態に移行するとき、回転部材59は反時計回りに回転する。その結果、図8(a)に示すように、両側の表面材31には、第1の回転バー64aの両端部を介して、互いに離れる方向の力が加わる。これにより、角度θ2が小さくなるように戸厚変更ローラー65が第2のガイドレール37に沿って開方向に移動するとともに、両側の表面材31が互いに離れるように移動する。そのため、距離L3が大きくなる結果、引戸30の戸厚が大きくなる。その後、引戸30は全閉状態となり、回転が停止する。図8(b)に示すように、全閉状態では、角度θ2は最も小さく、距離L3は最も大きい。
変換機構50は、荷重出力機構60を支持する第1及び第2の支持部材67及び68を含む。第1の支持部材67は、中枠42の直下部分に設けられる。第2の支持部材68は、回転部材59の第1の回転バー64aの直上に設けられる。第1及び第2の支持部材67及び68により、中枠42を介して回転部材59を挟み込むように支持することにより回転部材59ひいては荷重出力機構60の上下動を抑制する。
(動作)引戸30が全閉状態から全開状態になり、再び全閉状態になるまでの引戸30の動作を説明する。
図9、10(a)を参照すると、全閉状態では、裏側枠体32がキャッチャー16によって保持され、支持具ローラー57は第3のガイドレール45の左端に接触している。このとき、図10(a)に示すように、引戸30は、戸厚方向両側の建物壁面1に対して面一になるような戸厚を有する。ここでの「面一になる」とは、戸厚方向両側の引戸30の表面材31と建物壁面1とが面一となる位置に配置されることをいう。
全閉状態において、駆動装置20が通行人を検出すると、駆動装置20は開方向に入力荷重を出力する。この入力荷重を受けて、支持具ローラー57が第3のガイドレール45に沿って開方向に移動するため、移動体51が開方向に移動する。一方、裏側枠体32はキャッチャー16によって保持されているため、引戸30は移動しない。その結果、移動体51は、引戸30に対して開方向に相対移動する。
この開方向への相対移動により、回転力出力機構58では、距離L1が大きくなるとともに、角度θ1が小さくなる。その結果、図10(b)及び図12に示すように、回転部材59が時計回りに回転する。この時計回りの回転運動は、回転部材59を介して荷重出力機構60に伝達される。
荷重出力機構60の第1の回転バー64aは、この時計回りの回転を受けて、回転部材59周りに時計回りに回転する。これにより、両側の表面材31に対して互いに近づく方向の力が加わる。その結果、両側の表面材31は互いに近づく方向に移動するため、戸厚が小さくなる。その後、支持具ローラー57が第3のガイドレール45の右端に接触すると、上記相対移動が停止し、引戸装置100が途中閉状態になる。
その後、駆動装置20は開方向の駆動力を出力し続け、この駆動力が支持具ローラー57を介して第3のガイドレール45の右端に加わる。この右端に加わった力がキャッチャー16による裏側枠体32の保持力よりも大きくなった場合、キャッチャー16による裏側枠体32の保持が解除される。その後、上記右端に駆動装置20による入力荷重が加わり続けることにより、図13に示すように、移動体51及び引戸30は、一体的に開方向に移動する。なお、図13では、簡略化のため、仕切り枠15を省略している。その後、図10(c)及び14に示すように、引戸装置100は全開状態になる。
図11(a)及び(b)に示すように、全開状態から途中閉状態に移行するとき、駆動装置20によって出力される閉方向の入力荷重は接続部材56を介して回転力出力機構58に伝達される。この入力荷重は、第1~第4のリンク部材62a~62dを回転させずに、回転部材59を介して裏側枠体32に伝達される。第1~第4のリンク部材62a~62dが回転するのに必要な力より、引戸30が閉じるのに必要な力の方が小さいためである。その結果、図15に示すように、移動体51及び引戸30は、一体的に閉方向に移動する。その後、裏側枠体32がキャッチャー16に接触して保持され、引戸装置100が途中閉状態になる。
図11(b)及び(c)に示すように、途中閉状態から全閉状態に移行するとき、駆動装置20からの閉方向の入力荷重により、支持具ローラー57が第3のガイドレール45に沿って閉方向に移動するため、移動体51が閉方向に移動する。一方、裏側枠体32はキャッチャー16によって保持されているため、引戸30は移動しない。その結果、移動体51は、引戸30に対して閉方向に相対移動する。
この閉方向への相対移動により、回転力出力機構58では、距離L1が小さくなるとともに、角度θ1が大きくなる。その結果、図11(b)及び図16に示すように、回転部材59が反時計回りに回転する。この反時計回りの回転運動は、回転部材59を介して荷重出力機構60に伝達される。
荷重出力機構60の第1の回転バー64aは、この反時計回りの回転を受けて、回転部材59周りに反時計回りに回転する。これにより、両側の表面材31に対して互いに離れる方向の力が加わる。その結果、両側の表面材31は互いに離れる方向に移動するため、戸厚が大きくなる。その後、支持具ローラー57が第3のガイドレール45の左端に接触すると、上記相対移動が停止し、引戸装置100が図9、図11(c)に示す全閉状態になる。
(作用及び効果)本実施形態の引戸装置100は、戸厚を変更可能な引戸30を含む。これにより、全開状態では引戸30を戸袋内に収容し、建物壁面1と引戸30とが面一になる。よって、見た目がスッキリした美しい建物開口部2が実現可能である。
ところで、これを実現する1つの技術として、特許文献1に記載の構成がある。特許文献1に記載の構成では、傾斜ガイド面によるガイド作用を利用して戸厚を小さくする。特に、特許文献1に記載の引戸装置では、引戸の開放動作中の引戸を傾斜ガイド面と接触させることにより、引戸に対して傾斜ガイド面から戸厚寸法を小さくする荷重が入力される。その結果、戸厚が小さくなる。
しかし、この構成では、引戸の閉鎖動作中に引戸に入力荷重を付与するように、引戸、傾斜ガイド面及び引戸のガイドレール等を設計する必要がある。そのため、特許文献1に記載の引戸装置は、傾斜ガイド面及びガイドレール等の周囲の構造物によって構造上の制約を受けやすい。したがって、引戸の設計の自由度が小さいという問題があった。
本実施形態の引戸装置100は、引戸30とは別体に設けられ、外部から入力された入力荷重を引戸30の戸厚を変更する動きに変換する変換機構50を含む。本構成によると、引戸30ではなく、引戸30とは別体に設けられた変換機構50への入力荷重の付与により、戸厚変更動作がなされる。これにより、戸厚変更のために、引戸の閉鎖動作中に引戸に入力荷重を付与する必要性が低減される。そのため、周囲の構造物による構造上の制約を受けにくい。その結果、引戸の設計の自由度が向上する。
変換機構50は、入力荷重を受けて引戸30に対して可動域内で開閉方向に相対移動可能であり、可動域の末端位置にあるときに引戸30とともに開閉方向に移動可能な移動体51と、引戸30に対する移動体51の相対移動に連動して引戸30の戸厚を変更する戸厚変更機構52と、を含む。本構成によると、開閉方向に引戸30を移動させる機構及び動力源と戸厚を変化させる機構及び動力源を別途設ける必要がなく、単一の機構及び動力源により開閉方向への移動及び戸厚の変化が実現される。
引戸装置100は、閉位置にある引戸30を保持可能なキャッチャー16を含み、キャッチャー16は、キャッチャー16の保持力より大きい開方向の荷重が引戸30に加わった場合に引戸30を離脱させることが可能である。本構成によると、閉位置にある引戸30の戸厚を簡単に小さくできる。
キャッチャー16は、引戸30の閉方向への移動を規制可能である。本構成によると、引戸30が閉位置にある状態で閉方向の荷重を加え続けるだけで、戸厚を簡単に大きくできる。
引戸30は、表面材31と、表面材31の裏側に配置される裏側枠体32と、を含み、キャッチャー16は、裏側枠体32との接触によって、引戸30の閉方向への移動を規制可能である。本構成によると、キャッチャー16と外部に露出する表面材31との接触による傷等の発生が抑制される。
引戸装置100は、入力荷重として開閉方向の直動荷重を移動体51に付与する駆動装置20を含む。本構成によると、駆動装置20によって移動体51を移動させるだけで、容易に戸厚を変化させることができる。
引戸30は、表面材31と、表面材31の裏側に配置され、表面材31を戸厚方向に移動可能に支持する裏側枠体32と、を含む。本構成によると、裏側枠体32によって表面材31を戸厚方向に移動可能に支持できるため、戸厚方向の移動のために例えば表面材31の下部に表面材31を支持するローラー等を設ける必要がない。その結果、表面材31を床等に対して戸厚方向に自由に移動させ易い。
変換機構50は、入力荷重を受けて引戸30に戸厚変更荷重を出力する荷重出力機構60を含み、荷重出力機構60は、上下方向及び開閉方向の少なくとも一方向に間隔を空けて複数配置される。本構成によると、引戸30に対して複数箇所から戸厚変更荷重を出力できるため、引戸30が鉛直状の姿勢を維持しながら戸厚を変更しやすくなる。
変換機構50は、入力荷重を回転力に変換して出力する回転力出力機構58と、前記回転力を荷重出力機構60に入力する回転部材59と、を含み、荷重出力機構60は、回転部材59において上下方向に間隔を空けて複数配置され、複数の荷重出力機構60は、共通する回転部材59から入力される回転力を戸厚変更荷重に変換する。本構成によると、共通する回転部材59に複数の荷重出力機構60が設けられるため、変換機構50の部品点数を削減できる。
変換機構50は、入力荷重による直動力を荷重出力機構60に入力する接続部材56を含み、荷重出力機構60は、共通する接続部材56を介して開閉方向に間隔を空けて複数配置され、複数の荷重出力機構60は、共通する接続部材56から入力される直動力を戸厚変更荷重に変換する。本構成によると、共通する接続部材56を介して複数の荷重出力機構60が開閉方向に設けられるため、変換機構50の部品点数を削減できる。
変換機構50は、荷重出力機構60を支持する支持部材67を含む。本構成によると、支持部材67により荷重出力機構60の上下動が抑制されるため、荷重出力機構60が安定的に動作する。
(変形例)キャッチャー16は、引戸30を保持できればどの箇所に設けられてもよく、例えば中間横枠14に設けられてもよい。キャッチャー16は、例えば、ローラー、挟み込み等であってもよい。
駆動装置20は、引戸30に荷重を付与できるものであれば特に限定されず、任意の他の周知の構成を利用可能である。例えば、駆動装置20として、使用者が開閉のために表面材31に操作力を加えた際に、この操作力が接続部材56に開閉方向の荷重を加える構成が利用されてもよい。
支持具54は、ドアハンガー53の左右両側に設けられているが、ドアハンガー53に1つだけ支持具54が設けられてもよい。或いは、ドアハンガー53に支持具54が3つ以上設けられてもよい。
裏側枠体32は、非金属製としてもよい。この場合、途中閉状態においてキャッチャー16と接触するように、金属製のキャッチャー受け部材を裏側枠体32に設ければよい。また、裏側枠体32は、中枠42を有さなくてもよい。
回転力出力機構58については、第1~第4のリンク部材62a~62dを用いた例を説明したが、これに限定されず、接続部材56の直線運動を回転運動に変換するラックアンドピニオン機構などの歯車機構が利用されてもよい。
荷重出力機構60については、第1及び第2の回転バー64a及び64bを用いた例を説明したが、これに限定されず、回転部材59の回転力が伝達され2本のチェーンがジッパーのように噛み合うことにより1本の柱状になって表面材31の押し・引きができるジップチェーン等が利用されてもよい。
荷重出力機構60は、第2の回転バー64bを有さなくてもよい。
回転力出力機構58、回転部材59及び荷重出力機構60は、接続部材56の左右両側に2組設けられているが、接続部材56に1組だけこれらが設けられてもよい。或いは、接続部材56にこれらが3組以上設けられてもよい。
荷重出力機構60は、回転部材59の上下両側にそれぞれ設けられているが、回転部材59に1つだけ荷重出力機構60が設けられてもよい。或いは、回転部材59に荷重出力機構60が3つ以上設けられてもよい。
ドアハンガー53、支持具54、接続具55及び接続部材56はそれぞれ別々の部材として一体的に接続されているが、これらは1つの部材にまとめて構成されてもよい。