以下、本発明の実施の形態1について、図面を用いて詳細に説明する。
図1は本発明に係るコントローラを示す斜視図を、図2はハウジング,紐状シールおよびカバーを示す分解斜視図を、図3は紐状シールが装着されたハウジングの内側を示す斜視図を、図4はカバーの内側を示す斜視図を、図5は図1のA-A線に沿う断面図を、図6は図1のB-B線に沿う断面(分解状態)であって、かつ装着溝,紐状シールおよび突起部の寸法を説明する説明図を、図7は図1のB-B線に沿う断面図(組み立て状態)を、図8はモールド樹脂の流れ具合を説明する部分拡大図をそれぞれ示している。
図1に示されるコントローラ10は、例えば、福祉機器としての電動アシスト付き手押し車(図示せず)に搭載されるものである。コントローラ10は、所定の制御ロジックに基づいて、電動モータ(制御対象物)への駆動電流の大きさを調整し、これにより電動モータの駆動量(アシスト量)を制御するようになっている。また、コントローラ10は、電動アシスト付き手押し車を構成するフレーム(図示せず)に対し、複数の固定ねじ(図示せず)により固定される。すなわち、コントローラ10は、雨や塵埃に曝され易くかつ振動し易い場所に設置される。
コントローラ10は、その全体形状が薄型で略扁平形状の直方体に形成されている。具体的には、コントローラ10は、外郭を形成するコントローラケース20と、コントローラケース20の内部に収容される制御基板30と、コントローラケース20の内部に収容されて制御基板30の周囲を包み込むモールド樹脂40(図中網掛部)と、を備えている。
ここで、制御基板30には、電動モータを制御する複数の電子部品(図示せず)が実装されている。また、制御基板30には、一対の雄型コネクタ(コネクタ)31がそれぞれ一体に設けられている。そして、一対の雄型コネクタ31のうちの一方の雄型コネクタ31には、電動モータ用のワイヤハーネスの雌形コネクタ(図示せず)が電気的に接続される。これに対し、一対の雄型コネクタ31のうちの他方の雄型コネクタ31には、電源(充電式のバッテリー)用のワイヤハーネスの雌形コネクタ(図示せず)が電気的に接続される。また、一対の雄型コネクタ31は、コントローラケース20の開口部21から、コントローラケース20の外部に露出されている。
さらに、モールド樹脂40は、エポキシ樹脂等を主成分とした樹脂材料からなり、制御基板30およびこれに実装された複数の電子部品を、雨や塵埃さらには振動から保護する役割を果たすものである。そして、モールド樹脂40は、「約50度」に加熱されて流体化(液状化)した樹脂材料を、コントローラケース20の開口部21からその内部に充填することで、コントローラケース20の内部に固定された制御基板30の周囲を包み込むようにして設けられる。
ここで、制御基板30に設けられた雄型コネクタ31は、本発明におけるコネクタを構成している。また、コントローラケース20の内部に充填されるモールド樹脂は、本発明における封止材を構成している。
図2に示されるように、コントローラケース20は、複数の固定ねじでフレームに固定されるハウジング50と、ハウジング50を塞ぐようにして設けられるカバー60と、これらのハウジング50とカバー60との間に挟まれるようにして設けられる紐状シール70(図中網掛部)と、を備えている。ここで、ハウジング50は、本発明における第1ケースを構成し、カバー60は、本発明における第2ケースを構成している。なお、図2においては、コントローラケース20の構造を判り易くするために、制御基板30およびモールド樹脂40の図示を省略している。
ハウジング50は、溶融されたアルミ材料を射出成形することで、略長方形形状の皿状に形成されている。ハウジング50は、ハウジング本体51を備えており、当該ハウジング本体51の内側には、複数の補強リブRBが設けられている。このように複数の補強リブRBを設けることで、ハウジング50全体の強度を高めている。
また、ハウジング本体51の内側には、合計5つの第1雌ねじ部51aが設けられている。合計5つの第1雌ねじ部51aのうちの4つは、ハウジング本体51の四隅にそれぞれ配置されている。これに対し、合計5つの第1雌ねじ部51aのうちの1つは、ハウジング本体51の中央寄りの部分に配置されている。これらの第1雌ねじ部51aには、制御基板30を固定する第1固定ねじ(図示せず)が螺合するようになっている。すなわち、制御基板30は、ハウジング本体51の内側に、合計5つの固定ねじにより強固に固定されている。
ここで、ハウジング本体51の内側で、かつ図中網掛部で示す箇所は、ハウジング本体51の補強リブRBが設けられた部分よりも若干高い位置に設けられており、当該部分は第1電子部品接触部51bとなっている。そして、第1電子部品接触部51bには、熱伝導シート(図示せず)を介して、制御基板30に実装された発熱し易い電子部品(FET等)が接触するようになっている。これにより、電動モータの制御により発熱した電子部品の熱を、熱伝導率が比較的高いアルミ製のハウジング50を介して、外部に効率良く放熱可能となっている。
ハウジング本体51の周囲には、一対の対向壁部52と、1つの底壁部53と、壁部等が設けられていない第1開口部54と、が配置されている。そして、一対の対向壁部52は、略長方形形状に形成されたハウジング本体51の短辺部分にそれぞれ対応して設けられ、ハウジング本体51の長手方向に対して、互いに対向配置されている。
また、1つの底壁部53は、一対の対向壁部52の長手方向一側に配置され、一対の対向壁部52の双方に接続して設けられている。底壁部53は、略長方形形状に形成されたハウジング本体51の一方の長辺部分に対応して設けられ、ハウジング本体51の短手方向に対して、第1開口部54と対向している。なお、第1開口部54は、コントローラケース20の開口部21(図1参照)を形成しており、紐状シール70の長手方向両端の間からハウジング50の内外を連通するようになっている。また、第1開口部54は、一対の対向壁部52の長手方向他側に配置され、略長方形形状に形成されたハウジング本体51の他方の長辺部分に対応して設けられている。
一対の対向壁部52には、それぞれブラケット部52aが一体に設けられている。具体的には、ブラケット部52aは、対向壁部52のハウジング本体51側とは反対側、つまりハウジング50の外側に設けられ、かつ対向壁部52の長手方向に沿って延在されている。そして、ブラケット部52aには、それぞれ3つの挿通孔52bが設けられており、これらの挿通孔52bには、コントローラ10をフレームに固定するための固定ボルト(図示せず)が、それぞれ挿通されるようになっている。すなわち、コントローラ10は、合計6つの固定ボルトでフレームに強固に固定されるようになっている。
一対の対向壁部52のカバー60側および1つの底壁部53のカバー60側には、カバー60の第2対向面65と対向して互いに当接される第1対向面55が設けられている。第1対向面55は、一対の対向壁部52および1つの底壁部53に倣って平面視で略U字形状に形成され、かつハウジング50の長手方向および短手方向に真っ直ぐに延びる平坦面となっている。
そして、第1対向面55には、紐状シール70を保持するシール保持凹部56が設けられている。シール保持凹部56は、第1対向面55の形状に倣って設けられ、当該シール保持凹部56においても、平面視で略U字形状に形成されている。また、シール保持凹部56は、一対の対向壁部52および1つの底壁部53の高さ方向に窪んでおり、シール保持凹部56の内部には、紐状シール70ががたつくこと無く保持されるようになっている。
シール保持凹部56は、その殆どの部分を占める装着溝56aと、当該装着溝56aの長手方向両端に設けられる一対の位置決め凹部56bと、を備えている。具体的には、装着溝56aと一対の位置決め凹部56bとは互いに接続されており、装着溝56aおよび一対の位置決め凹部56bの深さ寸法は、図6に示されるように、いずれも「D」に設定されている。そして、装着溝56aには、紐状シール70の本体部71が装着され、一対の位置決め凹部56bには、紐状シール70の一対の位置決め凸部72が装着されるようになっている。
また、第1対向面55において、一対の位置決め凹部56bの近傍には、図3に示されるように、平面視で略半円状に形成された空気抜き凹部57がそれぞれ設けられている。これらの空気抜き凹部57は、第1対向面55に対して若干窪んで設けられ、ハウジング50の外部に連通するとともに、一対の位置決め凹部56bに接続されている。これにより、ハウジング50にカバー60を装着して、両者間に紐状シール70を挟むように設ける際に、装着溝56aや位置決め凹部56bに残留した空気(エア)が外部に抜けるようになっている。これにより、装着溝56aや位置決め凹部56bの内部で、紐状シール70を適正に弾性変形させた状態にでき、よってシール性能の向上を図ることが可能となっている。
さらに、第1対向面55において、ハウジング50の角部(合計4つ)に対応する部分には、それぞれ第2雌ねじ部58が設けられている。具体的には、一対の対向壁部52の長手方向一側でかつ底壁部53の長手方向両側に、それぞれ第2雌ねじ部58(合計2つ)が配置され、一対の対向壁部52の長手方向他側に、それぞれ第2雌ねじ部58(合計2つ)が配置されている。
これらの第2雌ねじ部58は、シール保持凹部56のハウジング本体51側とは反対側(ハウジング50の外側)に、それぞれ配置されている。また、4つの第2雌ねじ部58のうちの2箇所は、一対の位置決め凹部56bの近傍にそれぞれ配置されている。そして、これらの第2雌ねじ部58には、ハウジング50およびカバー60を互いに固定するための第2固定ねじS(図1参照)が螺合するようになっている。ここで、第2固定ねじSは、本発明における固定ねじを構成している。
これにより、紐状シール70を挟んだ状態において、ハウジング50およびカバー60を、互いに強固に固定可能となっている。このとき、2つの第2雌ねじ部58(第2固定ねじS)は、一対の位置決め凹部56bの近傍にそれぞれ配置されているため、紐状シール70の一対の位置決め凸部72を、規定通りに確実に弾性変形させることが可能となっている。すなわち、紐状シール70のうちの、特に位置決め凸部72の部分において、より確実に十分なシール性能が得られるようにしている。
図2および図4に示されるように、カバー60は、ハウジング50と同様に、溶融されたアルミ材料を射出成形することで、略長方形形状の皿状に形成されている。カバー60は、カバー本体61を備えており、当該カバー本体61の内側には、複数の補強リブRBが設けられている。このように複数の補強リブRBを設けることで、カバー60全体の強度を高めている。
また、カバー本体61の内側には、図4中網掛部分に示されるように、第2電子部品接触部61aが設けられている。第2電子部品接触部61aは、カバー本体61の補強リブRBが設けられた部分よりも若干高い位置に配置されている。そして、第2電子部品接触部61aには、熱伝導シート(図示せず)を介して、制御基板30に実装された発熱し易い電子部品(FET等)が接触するようになっている。これにより、電動モータの制御により発熱した電子部品の熱を、熱伝導率が比較的高いアルミ製のカバー60を介して、外部に効率良く放熱可能となっている。
このように、本実施の形態に係るコントローラ10は、制御基板30に実装された電子部品の熱を、アルミ製のハウジング50およびカバー60の双方から素早く外部に放熱可能としている。したがって、図5に示されるように、制御基板30はモールド樹脂40によって包み込まれるが、制御基板30に熱が蓄積されることが効果的に抑えられる。よって、制御基板30は、雨や塵埃さらには熱からも確実に保護されている。
カバー本体61の周囲には、一対の対向壁部62と、1つの底壁部63と、壁部等が設けられていない第2開口部64と、が配置されている。そして、一対の対向壁部62は、略長方形形状に形成されたカバー本体61の短辺部分にそれぞれ対応して設けられ、カバー本体61の長手方向に対して、互いに対向配置されている。
また、1つの底壁部63は、一対の対向壁部62の長手方向一側に配置され、一対の対向壁部62の双方に接続して設けられている。底壁部63は、略長方形形状に形成されたカバー本体61の一方の長辺部分に対応して設けられ、カバー本体61の短手方向に対して、第2開口部64と対向している。なお、第2開口部64は、コントローラケース20の開口部21(図1参照)を形成しており、紐状シール70の長手方向両端の間からカバー60の内外を連通するようになっている。また、第2開口部64は、一対の対向壁部62の長手方向他側に配置され、略長方形形状に形成されたカバー本体61の他方の長辺部分に対応して設けられている。
なお、カバー本体61に設けられる第2開口部64の形状は、ハウジング本体51に設けられる第1開口部54の形状とは異なっている。具体的には、第1開口部54に対して、段付きの形状でかつ大きく開口されている。これにより、制御基板30に一体に設けられた一対の雄型コネクタ31(図1参照)を、コントローラケース20の開口部21の部分に配置することが可能となり、かつ一対の雄型コネクタ31を、開口部21からコントローラケース20の外部に露出させることが可能となる。
また、一対の対向壁部62のハウジング50側および1つの底壁部63のハウジング50側には、ハウジング50の第1対向面55にと対向して互いに当接される第2対向面65が設けられている。第2対向面65は、一対の対向壁部62および1つの底壁部63に倣って平面視で略U字形状に形成され、かつカバー60の長手方向および短手方向に真っ直ぐに延びる平坦面となっている。
そして、第2対向面65には、突起部66が一体に設けられている。この突起部66は、ハウジング50の第1対向面55に設けられた装着溝56aに入り込み、紐状シール70の本体部71を弾性変形させるようになっている。突起部66は、第2対向面65の形状に倣って設けられ、当該突起部66においても、平面視で略U字形状に形成されている。また、突起部66は、一対の対向壁部62および1つの底壁部63の高さ方向に突出されており、その高さ寸法は、図6に示されるように「H」に設定されている。具体的には、突起部66の高さ寸法Hは、装着溝56aの深さ寸法Dよりも小さくなっている(H<D)。
さらに、第2対向面65において、第2開口部64の近傍には、一対の押圧平面67がそれぞれ設けられている。これらの押圧平面67は、第2対向面65の一部となっており、当該第2対向面65と同じ高さ位置に配置されている。そして、一対の押圧平面67は、コントローラケース20を組み立てた状態において、ハウジング50に設けられた一対の位置決め凹部56bおよび一対の空気抜き凹部57を覆うようになっている。
また、第2対向面65において、カバー60の角部(合計4つ)に対応する部分には、ねじ挿通孔68がそれぞれ設けられている。具体的には、一対の対向壁部62の長手方向一側でかつ底壁部63の長手方向両側に、ねじ挿通孔68(合計2つ)がそれぞれ配置され、一対の対向壁部62の長手方向他側に、ねじ挿通孔68(合計2つ)がそれぞれ配置されている。
これらのねじ挿通孔68は、突起部66のカバー本体61側とは反対側(カバー60の外側)に、それぞれ配置されている。また、4つのねじ挿通孔68のうちの2箇所は、コントローラケース20を組み立てた状態において、紐状シール70の一対の位置決め凸部72の近傍にそれぞれ配置されている。そして、これらのねじ挿通孔68には、ハウジング50にカバー60を固定するための第2固定ねじS(図1参照)が挿通されるようになっている。
図2,図3および図6に示されるように、ハウジング50の第1対向面55とカバー60の第2対向面65との間には、両者に挟まれるようにして紐状シール70が設けられている。紐状シール70は、シール保持凹部56の形状に倣って、平面視で略U字形状に形成されている。紐状シール70は、天然ゴム等の弾性材料により弾性変形自在となっており、ハウジング50およびカバー60の双方に密着される。これにより、紐状シール70が設けられた部分において、コントローラケース20の内外が確実に密閉される。ここで、図2および図3においては、紐状シール70の配置関係を分かり易くするために、当該紐状シール70に網掛けを施している。
紐状シール70は、長尺の本体部71を備えている。この本体部71は、短手方向に沿う断面が略正方形形状に形成され、紐状シール70の殆どの部分を占めている。そして、本体部71の高さ寸法は、図6に示されるように「t1」に設定されている。この本体部71の高さ寸法t1は、ハウジング50の装着溝56aの深さ寸法Dよりも小さくなっている(t1<D)。
また、本体部71の高さ寸法t1は、装着溝56aの深さ寸法Dから突起部66の高さ寸法Hを差し引いた寸法(D-H)よりも大きくなっている(t1>(D-H))。これにより、ハウジング50にカバー60を装着して、突起部66が装着溝56aに入り込むと、本体部71が確実に弾性変形される。よって、図5に示されるように、装着溝56aおよび突起部66の双方に、本体部71が密着されて、十分なシール性能が確保される。
さらに、紐状シール70は、一対の位置決め凸部72を備えている。これらの位置決め凸部72は、本体部71の長手方向両端にそれぞれ一体に設けられている。そして、一対の位置決め凸部72は、本体部71に対して、当該本体部71の長手方向と交差する方向に膨出されている。すなわち、位置決め凸部72の部分は、本体部71の部分よりも肉厚で太くなっている。
具体的には、一対の位置決め凸部72は、それぞれ略円柱形状に形成されており、ハウジング50の位置決め凹部56bに、それぞれ嵌まるようにして装着されるようになっている。これにより、紐状シール70の長手方向両端が位置決め凹部56bに対して正規の位置にそれぞれ位置決めされ、ひいては紐状シール70の全体がハウジング50に対して精度良く位置決めされる。つまり、紐状シール70は、縮められたり捻れたりして無理な負荷が掛かった状態でシール保持凹部56に装着されることが無く、ハウジング50とカバー60との間において、紐状シール70を規定通りに確実に弾性変形させることが可能となっている。
ここで、紐状シール70に設けられる一対の位置決め凸部72の寸法関係について述べると、図6に示されるように、位置決め凸部72の高さ寸法は「t2」に設定されている。この位置決め凸部72の高さ寸法t2は、本体部71の高さ寸法t1よりも大きく、かつ位置決め凹部56bの深さ寸法Dよりも大きくなっている(t2>D>t1)。さらには、位置決め凸部72と本体部71との差分寸法(t2-t1)、つまり本体部71からの位置決め凸部72の突出高さは、突起部66の高さ寸法Hよりも大きくなっている((t2-t1)>H)。
これにより、ハウジング50にカバー60を装着した状態において、本体部71の部分よりも肉厚で太くなった位置決め凸部72の部分を、カバー60の押圧平面67の部分で、確実に弾性変形させることが可能となっている。このとき、位置決め凸部72は、第2固定ねじSが螺合される第2雌ねじ部58(図2参照)の近傍に配置されるため、確実に弾性変形されて位置決め凹部56bの内側に隙間無く接触される。よって、十分なシール性能を得ることができる。
なお、紐状シール70の弾性変形の具合については、図7に示される状態となる。つまり、ハウジング50にカバー60を装着した状態において、図中網掛部分で示される「潰し代」の分だけ、紐状シール70は弾性変形される。この「潰し代」の部分を見ると、紐状シール70の長手方向全域が効果的に弾性変形される(潰される)ことが分かる。これにより、紐状シール70は、本体部71の部分に加えて位置決め凸部72の部分においても、ハウジング50およびカバー60の双方に密着して挟持される。
次に、以上のように形成されたコントローラケース20の内部に、液状化されたモールド樹脂40を充填する際のモールド樹脂40の流れ具合について、図面を用いて詳細に説明する。なお、図8では、ハウジング50および紐状シール70のみを図示し、紐状シール70に網掛けを施し、かつモールド樹脂40にハッチングを施している。
まず、図8に示されるように、ハウジング50とカバー60とを組み立てて形成されたコントローラケース20の開口部21を上方に向け、この状態において「約50度」に加熱されて液状化されたモールド樹脂40を、コントローラケース20の内部に充填する。なお、液状化されたモールド樹脂40は、水の粘度程の低粘度であって、コントローラケース20の内部の隅々にまで行き渡り、かつ制御基板30の周囲を隙間無く包み込むようにして回り込む。
このとき、紐状シール70を形成する本体部71および位置決め凸部72は、その全ての部分において規定通りに弾性変形されている。そのため、液状化されたモールド樹脂40は、コントローラケース20の内部から外部に漏れ出ることは無い。ここで、紐状シール70と、ハウジング50およびカバー60との間に微小隙間があると、液状化されたモールド樹脂40は、所謂「毛細管現象」によって、紐状シール70の周囲に行き渡ってしまう。よって、図中矢印Mに示されるように、液状化されたモールド樹脂40が、紐状シール70の側部を伝うことが起こり得る。
ところが、本実施の形態においては、上述のように位置決め凸部72を肉厚でかつ他の部分に比して太くし、かつ位置決め凹部56bに嵌め込むようにし、さらには位置決め凹部56bからはみ出た部分を押圧平面67(図6,図7参照)で押し潰す(弾性変形させる)ようにしている。その結果、位置決め凸部72が、ハウジング50およびカバー60の双方に強く密着されて、当該位置決め凸部72の部分において、上述の毛細管現象を起こさせるような微小隙間が形成されない。しかも、位置決め凸部72の配置箇所が、ハウジング50にカバー60を固定するための第2固定ねじS(図1参照)の近傍なので、より確実に微小隙間を無くせるようになっている。
したがって、図8に示されるように、規定の量のモールド樹脂40(位置決め凸部72にまで到達する量)を充填しても、モールド樹脂40が位置決め凸部72の周囲を伝ってコントローラケース20の外部に漏れ出ることが効果的に抑えられる。よって、コントローラケース20の開口部21の部分の見栄えが悪化することが抑えられ、かつ漏れ出たモールド樹脂40を除去する厄介な作業も不要となる。
以上詳述したように、本実施の形態に係るコントローラ10によれば、第1対向面55および第2対向面65の間に、本体部71および当該本体部71の長手方向と交差する方向に膨出した位置決め凸部72を有する紐状シール70が設けられ、第1対向面55に、位置決め凸部72が装着される位置決め凹部56bが設けられている。
これにより、位置決め凸部72を位置決め凹部56bに装着するだけで、第1対向面55および第2対向面65に対して、紐状シール70をずれること無く規定の位置に精度良く位置決めすることができる。したがって、コントローラ10の組み立て作業性を向上させることができる。
さらには、紐状シール70のシール性能を高めることができるので、ハウジング50およびカバー60の内部に収容されるモールド樹脂40が硬化する前の液体の状態であっても、ハウジング50およびカバー60の外部に漏れ出ることを効果的に抑えることができる。
また、本実施の形態に係るコントローラ10によれば、第1対向面55に、位置決め凹部56bに接続され、本体部71が装着される装着溝56aが設けられ、第2対向面65に、装着溝56aに入り込み、本体部71を弾性変形させる突起部66が設けられている。
これにより、紐状シール70の殆どの部分を占める本体部71の部分において、シール性能をより向上させることが可能となる。
さらに、本実施の形態に係るコントローラ10によれば、位置決め凹部56bは、その深さ寸法Dが位置決め凸部72の高さ寸法t2よりも小さくなっており(D<t2)、位置決め凸部72は、第2対向面65の一部を形成する押圧平面67により弾性変形されている。
これにより、本体部71の部分よりも弾性変形の量を多くすることができるので、位置決め凸部72と、ハウジング50およびカバー60との間の微小隙間を略無くすことができる。したがって、上述の毛細管現象によりモールド樹脂40が外部に漏れ出てしまうことが効果的に抑えられる。
また、本実施の形態に係るコントローラ10によれば、位置決め凸部72が、本体部71の長手方向両端に設けられているので、長尺の紐状シール70であっても、硬化する前のモールド樹脂40が漏れ易い部分であるその両端の部分において、ハウジング50とカバー60との間に精度良く位置決めすることができる。したがって、シール性能をより向上させることが可能となる。また、比較的大きな開口部21を有するコントローラケース20であっても、上述の毛細管現象によりモールド樹脂40が外部に漏れ出てしまうことが効果的に抑えられる。
さらに、本実施の形態に係るコントローラ10によれば、位置決め凸部72が、ハウジング50およびカバー60を互いに固定する第2固定ねじSの近傍に配置されているので、第2固定ねじSを第2雌ねじ部58に螺合させるだけで、位置決め凸部72を確実に弾性変形させることができ、十分なシール性能を得ることができる。
次に、本発明の他の実施の形態について、図面を用いて詳細に説明する。なお、上述した実施の形態1と同様の機能を有する部分については同一の記号を付し、その詳細な説明を省略する。
図9(a),(b)は、紐状シールおよびハウジングの他の実施の形態を示す部分拡大図である。
[実施の形態2]
図9(a)に示されるように、実施の形態2に係るコントローラ80では、シール保持凹部81は、合計4つの位置決め凹部82を備えている。また、これに対応させて、紐状シール83は、合計4つの位置決め凸部84を備えている。また、位置決め凹部82には、それぞれ空気抜き凹部85が接続されている。なお、図9(a)においては、半分のみが図示されている。
これに対し、詳細は図示しないが、カバー60(図4参照)には、紐状シール83の本体部86に対応した部分にのみ、突起部66(図4参照)が設けられている。また、カバー60において、紐状シール83の位置決め凸部84に対応した部分には、第2対向面65(図4参照)の一部を形成し、当該第2対向面65と同じ高さ位置に配置された、押圧平面67(図4参照)と同様の押圧平面(図示せず)が設けられている。
そして、実施の形態1では、紐状シール70の本体部71の長手方向両端にそれぞれ位置決め凸部72を設けていたが(図2参照)、実施の形態2では、紐状シール83の本体部86における長手方向の途中に、位置決め凸部84をそれぞれ設けている。すなわち、実施の形態1とは異なり、本体部86の長手方向両端に位置決め凸部84を設けていない。ただし、いずれの位置決め凸部84においても、第2固定ねじS(第2雌ねじ部58)の近傍に配置されている。
以上のように形成した実施の形態2のコントローラ80においても、実施の形態1と同様の作用効果を奏することができる。これに加えて、実施の形態2では、合計4つの第2固定ねじSの近傍に、位置決め凸部84をそれぞれ設けているので、よりシール性能を向上させることが可能となる。
[実施の形態3]
図9(b)に示されるように、実施の形態3に係るコントローラ90では、シール保持凹部91は、合計2つの略長楕円形形状に形成された第1位置決め凹部92と、合計2つの略直方体形状に形成された第2位置決め凹部93と、を備えている。また、これに対応させて、紐状シール94は、合計2つの略長楕円形形状に形成された第1位置決め凸部95と、合計2つの略直方体形状に形成された第2位置決め凸部96と、を備えている。また、第1および第2位置決め凹部92,93には、それぞれ空気抜き凹部97が接続されている。なお、図9(b)においては、半分のみが図示されている。
これに対し、詳細は図示しないが、カバー60(図4参照)には、紐状シール94の本体部98に対応した部分にのみ、突起部66(図4参照)が設けられている。また、カバー60において、紐状シール94の第1および第2位置決め凸部95,96に対応した部分には、第2対向面65(図4参照)の一部を形成し、当該第2対向面65と同じ高さ位置に配置された、押圧平面67(図4参照)と同様の押圧平面(図示せず)が設けられている。
そして、実施の形態1では、紐状シール70の本体部71の長手方向両端にのみ、位置決め凸部72をそれぞれ設けていたが(図2参照)、実施の形態3では、紐状シール94の本体部98の長手方向両端に、実施の形態1よりも容積が大きな第1位置決め凸部95をそれぞれ設けている。また、紐状シール94の本体部98における長手方向の途中に、略直方体形状に形状を異ならせた第2位置決め凸部96をそれぞれ設けている。ただし、いずれの第1および第2位置決め凸部95,96においても、第2固定ねじS(第2雌ねじ部58)の近傍に配置されている。
以上のように形成した実施の形態3のコントローラ90においても、実施の形態1と同様の作用効果を奏することができる。これに加えて、実施の形態3では、合計4つの第2固定ねじSの近傍に、第1および第2位置決め凸部95,96をそれぞれ設けているので、実施の形態2と同様に、よりシール性能を向上させることが可能となる。さらには、第1位置決め凸部95の容積を大きくしたので、より弾性変形の量を多くすることができるので、第1位置決め凸部95と、ハウジング50およびカバー60との間の微小隙間をより無くすことが可能となる。よって、上述の毛細管現象によりモールド樹脂40が外部に漏れ出てしまうことが、より確実に抑えられる。
本発明は上記各実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることは言うまでもない。例えば、上記各実施の形態では、位置決め凸部72,84,95,96を、それぞれ第2固定ねじS(第2雌ねじ部58)の近傍に配置したものを示したが、本発明はこれに限らず、例えば、シール保持凹部56,81,91の長手方向の中間部分等、第2固定ねじS(第2雌ねじ部58)から離れた位置に配置することもできる。また、位置決め凸部72,84,95,96は、上述のように円柱形状や長楕円形形状さらには直方体形状に限らず、その他の形状、例えば、三角形や五角形以上の多角形形状であっても良い。さらには、位置決め凸部72,84,95,96を設ける個数については、必要とされるシール性能に応じて、任意に増減させても良い。
また、上記各実施の形態では、位置決め凹部56b,82,92,93および装着溝56aをそれぞれハウジング50に設け、突起部66をカバー60に設けたものを示したが、本発明はこれに限らず、位置決め凹部および装着溝をそれぞれカバー60に設け、突起部をハウジング50に設けることもできる。
さらに、上記各実施の形態では、福祉機器としての電動アシスト付き手押し車(図示せず)に搭載されるコントローラ10であるものを示したが、本発明はこれに限らず、外部環境に曝され得る、例えば、電動車椅子の電動モータ(制御対象物)を制御するコントローラにも適用することができる。
その他、上記各実施の形態における各構成要素の材質,形状,寸法,数,設置箇所等は、本発明を達成できるものであれば任意であり、上記各実施の形態に限定されない。