JP7369197B2 - 液晶ポリエステル組成物及び成形体 - Google Patents
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Description
本願は、2019年9月4日に、日本に出願された特願2019-161354号に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。
前記板状無機フィラーのメジアン径の比(D50/D50*)が3.0~6.0である、液晶ポリエステル組成物。
前記D50とは、レーザー回折法により測定される前記板状無機フィラーのメジアン径である。
前記D50*とは、遠心沈降法により測定される前記板状無機フィラーのメジアン径である。
<2> 前記板状無機フィラーの含有量は、前記液晶ポリエステル100質量部に対して10~80質量部である、前記<1>に記載の液晶ポリエステル組成物。
<3> 前記板状無機フィラーは、マイカである、前記<1>又は<2>に記載の液晶ポリエステル組成物。
<4> 前記板状無機フィラーの粒径D50が15~40μmである、前記<1>~<3>のいずれか一つに記載の液晶ポリエステル組成物。
前記D50とは、レーザー回折法により測定されるメジアン径である。
<5> 前記板状無機フィラーの粒径D90が40~80μmである、前記<1>~<4>のいずれか一つに記載の液晶ポリエステル組成物。
前記粒径D90とは、レーザー回折法により測定される体積基準の粒度累積分布曲線より得られる累積量90%の粒径値である。
<6> 前記液晶ポリエステルが、下式(1)で表される繰り返し単位(u1)と、下式(2)で表される繰り返し単位(u2)と、下式(3)で表される繰り返し単位(u3)とを有する、前記<1>~<5>のいずれか一つに記載の液晶ポリエステル組成物。
-O-Ar1-CO- (1)
-CO-Ar2-CO- (2)
-X-Ar3-Y- (3)
式(1)~(3)中、
Ar1は、フェニレン基、ナフチレン基又はビフェニリレン基を表す。
Ar2及びAr3は、それぞれ独立に、フェニレン基、ナフチレン基、ビフェニリレン基又は下記一般式(4)で表される基を表す。
X及びYは、それぞれ独立に、酸素原子又はイミノ基を表す。
Ar1、Ar2又はAr3で表される前記基中の1個以上の水素原子は、それぞれ独立に、ハロゲン原子、炭素数1~28のアルキル基又は炭素数6~12のアリール基で置換されていてもよい。
-Ar4-Z-Ar5- (4)
式(4)中、Ar4及びAr5は、それぞれ独立に、フェニレン基又はナフチレン基を表す。Zは、酸素原子、硫黄原子、カルボニル基、スルホニル基又は炭素数1~28のアルキリデン基を表す。
<7> 前記<1>~<6>のいずれか一つに記載の液晶ポリエステル組成物を含み作製された成形体。
<8> ASTM D638に従った引張試験における、ASTM4号ダンベル試験片としての引張強度が125MPa以上である、前記<7>に記載の成形体。
<9> 成形体がコネクターである、前記<7>又は<8>に記載の成形体。
<10> 前記<1>~<6>のいずれか一つに記載の液晶ポリエステル組成物を溶融させて成形することを含む、前記<7>~<9>のいずれか一つに記載の成形体の製造方法。
<11> 前記成形が射出成形である、前記<10>に記載の成形体の製造方法。
前記D50とは、レーザー回折法により測定されるメジアン径である。
前記D50*とは、遠心沈降法により測定されるメジアン径である。
前記粒径D90とは、レーザー回折法により測定される体積基準の粒度累積分布曲線より得られる累積量90%の粒径値である。
-O-Ar1-CO- (1)
-CO-Ar2-CO- (2)
-X-Ar3-Y- (3)
-Ar4-Z-Ar5- (4)
式(4)中、Ar4及びAr5は、それぞれ独立に、フェニレン基又はナフチレン基を表す。Zは、酸素原子、硫黄原子、カルボニル基、スルホニル基又は炭素数1~28のアルキリデン基を表す。
本発明の一態様の成形体は、コネクターであることが好ましい。
また、本発明の一態様によれば、引張強度、寸法安定性及び表面性がより高められた成形体、並びに前記成形体を備えるコネクターを提供することができる。
本実施形態の液晶ポリエステル組成物は、液晶ポリエステルと板状無機フィラーとを含有する液晶ポリエステル組成物であって、前記板状無機フィラーのメジアン径の比(D50/D50*)が3.0~6.0のものである。
前記D50とは、レーザー回折法により測定されるメジアン径である。
前記D50*とは、遠心沈降法により測定されるメジアン径である。
前記液晶ポリエステルは、溶融状態で液晶性を示す液晶ポリエステルである。前記液晶ポリエステルは、450℃以下の温度で溶融するものであることが好ましい。
本明細書において、液晶ポリエステルとは、液晶ポリエステルアミド、液晶ポリエステルエーテル、液晶ポリエステルカーボネート及び液晶ポリエステルイミドを含む。
液晶ポリエステルは、原料モノマーとして芳香族化合物に由来する繰り返し単位のみを有する全芳香族液晶ポリエステルであることが好ましい。
なお、本明細書において「由来」とは、原料モノマーが重合するために、重合に寄与する官能基の化学構造が変化し、その他の構造変化を生じないことを意味する。
ここで、芳香族ヒドロキシカルボン酸、芳香族ジカルボン酸、芳香族ジオール、芳香族ヒドロキシアミン及び芳香族ジアミンは、互いに独立に、その一部又は全部に代えて、その重合可能な誘導体が用いられてもよい。
芳香族ヒドロキシカルボン酸、芳香族ジオール又は芳香族ヒドロキシアミンのような、ヒドロキシ基を有する化合物の重合可能な誘導体の例としては、ヒドロキシ基をアシル化してアシルオキシ基に変換してなるもの(アシル化物)が挙げられる。
芳香族ヒドロキシアミン及び芳香族ジアミンのような、アミノ基を有する化合物の重合可能な誘導体の例としては、アミノ基をアシル化してアシルアミノ基に変換してなるもの(アシル化物)が挙げられる。
-CO-Ar2-CO- (2)
-X-Ar3-Y- (3)
液晶ポリエステルは、繰り返し単位(u1)~(u3)以外の繰り返し単位を1種又は2種以上有してもよいが、その含有量は、全繰り返し単位の合計量に対して、好ましくは0~10モル%、より好ましくは0~5モル%である。
溶融重合は、触媒の存在下で行ってもよく、前記触媒の例としては、酢酸マグネシウム、酢酸第一錫、テトラブチルチタネート、酢酸鉛、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、若しくは三酸化アンチモン等の金属化合物、又は、4-(ジメチルアミノ)ピリジン、若しくは1-メチルイミダゾール等の含窒素複素環式化合物が挙げられる。前記触媒としては、含窒素複素環式化合物が好ましい。
本実施形態の液晶ポリエステル組成物が含有している板状無機フィラーは、特定のメジアン径の比を有するものである。すなわち、板状無機フィラーについて、レーザー回折法により測定されるメジアン径D50と、遠心沈降法により測定されるメジアン径D50*との比(D50/D50*)が3.0~6.0である。かかる比(D50/D50*)は、本発明の効果がより高められる点から、3.5~6.0が好ましく、4.0~6.0がより好ましく、5.0~5.4がさらに好ましい。
かかる比(D50/D50*)が、前記の範囲内であれば、液晶ポリエステル組成物の流動性が良好となり、引張強度、寸法安定性及び表面性がより高められた成形体が得られる。また、かかる比(D50/D50*)が、前記範囲の上限値以下であれば、特に、液晶ポリエステル組成物の流動性が良好となり、引張強度がより高められた成形体が得られやすくなる。
かかる比(D50/D50*)が、前記範囲内であれば、板状無機フィラーの厚さ等の形状が好適であり、その厚さが流れ方向に板状無機フィラーが安定して配向しやすい範囲内にあること、また、板状無機フィラーの表面がアンカー効果を発現しやすい凹凸となっているため、上記効果が得られやすいと考えられる。
例えば、液晶ポリエステル組成物に対し、加熱処理(灰化)を施して、樹脂分を完全に除去することにより、板状無機フィラーを回収する。又は、板状無機フィラーを、採掘した原料を粉砕等することにより製造する。次いで、板状無機フィラーを水に均一に分散して、板状無機フィラーの水分散液(スラリー)を調製する。水分散液における板状無機フィラーの濃度は、板状無機フィラーの種類に応じて適宜設定すればよく、例えば1~10質量%である。
当該水分散液(スラリー)について、レーザー回折式粒度分布測定装置を用い、JIS R1629に準拠して体積基準の粒度分布を測定する。そして、この粒度分布の測定に基づく粒度累積分布曲線から読み取った累積量50%の粒径値から算出することができる。
本実施形態の液晶ポリエステル組成物が含有している板状無機フィラーにおけるメジアン径D50は、15~40μmが好ましく、20~35μmがより好ましく、20~25μmがさらに好ましい。
また、寸法安定性の観点からは、粒径D90は、40~80μmが好ましく、70~75μmがより好ましい。
板状無機フィラーの粒径D90は以下のようにして算出される。例えば、前記水分散液(スラリー)について、レーザー回折式粒度分布測定装置を用い、JIS R1629に準拠して体積基準の粒度分布を測定する。そして、この粒度分布の測定に基づく粒度累積分布曲線から読み取った微小粒子側からの累積量90%の粒径値から算出することができる。
例えば、液晶ポリエステル組成物に対し、加熱処理(灰化)を施して、樹脂分を完全に除去することにより、板状無機フィラーを回収する。又は、板状無機フィラーを、採掘した原料を粉砕等することにより製造する。次いで、板状無機フィラーを水に分散して、板状無機フィラーの水分散液(スラリー)を調製する。水分散液における板状無機フィラーの濃度は、板状無機フィラーの種類に応じて適宜設定すればよく、水分散液の総質量100質量%に対して例えば1~10質量%である。
当該水分散液(スラリー)について、遠心沈降式粒度分布測定装置を用い、JIS R1619に準拠して質量基準の粒度分布を測定する。そして、この粒度分布の測定に基づく粒度累積分布曲線から読み取った累積量50%の粒径値から算出することができる。
本実施形態の液晶ポリエステル組成物が含有している板状無機フィラーにおけるメジアン径D50*は、2.5~7.0μmが好ましく、3.0~7.0μmがより好ましく、3.5~6.0μmがさらに好ましく、3.5~5.0μmが特に好ましい。
レーザー回折法においては、板状無機フィラーを含有するスラリーにレーザー光を当て、その回折具合(散乱光)により粒度分布を測定する。直径1μmの球状粒子と同じ回折・散乱光のパターンを示す被測定粒子の粒子径は、その形状に関わらず1μmとされる。 遠心沈降法においては、板状無機フィラーを含有するスラリーを遠心分離に供し、その遠心分離状態のスラリーに光を当て、その光の透過度の推移により粒度分布を測定する。被測定粒子と同じ物質の直径1μmの球状粒子と同じ沈降速度を持った被測定粒子の粒子径は1μmとされる。遠心沈降法では、レーザー回折法に比べて、被測定粒子の形状による影響が大きく反映される。
D50*の値が小さいほど、被測定粒子が沈降し難い形状(例えば薄板状や小粒径)であると考えられる。
液晶ポリエステルと板状無機フィラーとを含有する液晶ポリエステル組成物においては、かかる比(D50/D50*)が高くても低くても不適切であり、かかる比(D50/D50*)が特定の範囲3.0~6.0であることにより、液晶ポリエステル組成物の流動性、並びに、成形体の引張強度、寸法安定性及び表面性がいずれも高められる。
マイカは、白雲母であってもよいし、金雲母であってもよいし、フッ素金雲母であってもよいし、又は四ケイ素雲母であってもよい。
例えば板状無機フィラーとしてマイカを用いる場合、原料の産地や製造条件などを適宜選択すればよい。
本実施形態の液晶ポリエステル組成物が含有している板状無機フィラーの製造方法は、上述のメジアン径の比を満たす板状無機フィラーが得られる方法であればどのような方法でもよく、粉砕及び分級は乾式法で行ってもよいし湿式法で行ってもよい。ただし、好ましい形態の板状無機フィラーが得られやすい点では、湿式法が好ましい。板状無機フィラーの製造方法としては、例えば、板状無機フィラー原料を機械的に粉砕後に分級する方法等が挙げられ、また、分級後もしくは分級前に、酸処理、熱処理もしくは酸処理と熱処理との併用処理を行ってもよい。酸処理及び/又は熱処理により、例えばマイカであれば層剥離が促進され、上述のメジアン径の比を満たす板状無機フィラーが得られやすくなる。
板状無機フィラーの含有量が、前記の好ましい範囲の下限値以上であることで、前記液晶ポリエステル組成物を成形して得られた成形体は、機械強度、寸法安定性、耐熱性がより高くなる。一方、前記の好ましい範囲の上限値以下であることで、液晶ポリエステル組成物の流動性、成形体の流動末端の表面滑らかさ(表面性)、耐衝撃性がより高くなる。
前記液晶ポリエステル組成物は、前記液晶ポリエステル及び板状無機フィラー以外に他の成分を含んでいてもよい。前記他の成分の例としては、前記板状無機フィラー以外の無機フィラー、又は添加剤等が挙げられる。
前記他の成分は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記繊維状無機フィラーの例としては、ガラス繊維;パン系炭素繊維、若しくはピッチ系炭素繊維等の炭素繊維;シリカ繊維、アルミナ繊維、若しくはシリカアルミナ繊維等のセラミック繊維;又は、ステンレス繊維等の金属繊維が挙げられる。前記繊維状無機フィラーの例としては、チタン酸カリウムウイスカー、チタン酸バリウムウイスカー、ウォラストナイトウイスカー、ホウ酸アルミニウムウイスカー、窒化ケイ素ウイスカー、又は炭化ケイ素ウイスカー等のウイスカーも挙げられる。
前記粒状無機フィラーの例としては、シリカ、アルミナ、酸化チタン、ガラスビーズ、ガラスバルーン、窒化ホウ素、炭化ケイ素又は炭酸カルシウム等が挙げられる。
前記液晶ポリエステル組成物の前記添加剤の含有量は、液晶ポリエステル100質量部に対して、好ましくは0~5質量部である。
前記液晶ポリエステル組成物は、例えば、前記液晶ポリエステル若しくは板状無機フィラー、又は必要に応じて前記他の成分を、一括で又は適当な順序で混合することにより得られる。このときの混合方法は特に限定されないが、タンブラーミキサー、又はヘンシェルミキサー等の公知の攪拌装置を用いる混合方法が挙げられる。
前記押出機は、シリンダーと、シリンダー内に配置された1本以上のスクリュウと、シリンダーに設けられた1箇所以上の供給口と、を有するものが好ましく、さらに、シリンダーに1箇所以上のベント部が設けられたものがより好ましい。
本実施形態の成形体は、前記液晶ポリエステル組成物を含み作製されたものである。
上記引張強度の上限値は、特に制限されるものではないが、本実施形態の成形体として、実施例で後述するようなASTM4号ダンベル試験片を作製した場合、ASTM D638に従って引張試験を行ったときのこの試験片の引張強度は、160MPa以下であってもよく、155MPa以下であってもよく、150MPa以下であってもよい。
上記で例示した引張強度の数値範囲の上限値と下限値とは、自由に組み合わせることができる。本実施形態の成形体として、実施例で後述するようなASTM4号ダンベル試験片を作製した場合、ASTM D638に従って引張試験を行ったときのこの試験片の引張強度は、125MPa以上160MPa以下であってもよく、125MPa以上155MPa以下であってもよく、130MPa以上150MPa以下であってもよい。
上記表面粗さ(算術平均粗さRa)の下限値は、特に制限されるものではないが、本実施形態の成形体として、実施例で後述するような厚さ0.2mmt流動長の測定時に成形した、成形体の流動末端部の表面における幅方向について、当該流動末端部の表面粗さ(算術平均粗さRa)は、0.10μm以上であってもよく、0.15μm以上であってもよく、0.20μm以上であってもよい。
上記で例示した算術平均粗さRaの数値範囲の上限値と下限値とは、自由に組み合わせることができる。本実施形態の成形体として、実施例で後述するような厚さ0.2mmt流動長の測定時に成形した、成形体の流動末端部の表面における幅方向について、当該流動末端部の表面粗さ(算術平均粗さRa)は、0.10μm以上0.60μm以下であってもよく、0.15μm以上0.50μm以下であってもよく、0.20μm以上0.40μm以下であってもよい。
ここでコネクターは、電子機器等の部材同士の接続に用いる機器、又はそれらの機器における前記接続部分に用いる部材を主に指し、特に電子機器のコード等の配線同士の接続に用いる部材を指す。コネクターの形状は、特に限定されず、長尺型の形状であってもよいし、板状などであってもよい。
フローテスター(株式会社島津製作所の「CFT-500型」)を用いて、液晶ポリエステルの約2gを、内径1mm及び長さ10mmのノズルを有するダイを取り付けたシリンダーに充填した。次に、9.8MPa(100kg/cm2)の荷重下、4℃/分の速度で昇温しながら、液晶ポリエステルを溶融させ、ノズルから押し出し、4800Pa・s(48000ポイズ)の粘度を示す温度(流動開始温度)を測定し、液晶ポリエステルの流動開始温度とした。
[製造例1:液晶ポリエステル(L1)の製造]
撹拌装置、トルクメータ、窒素ガス導入管、温度計及び還流冷却器を備えた反応器に、p-ヒドロキシ安息香酸994.5g(7.2モル)、テレフタル酸299.0g(1.8モル)、イソフタル酸99.7g(0.6モル)、4,4’-ジヒドロキシビフェニル446.9g(2.4モル)及び無水酢酸1347.6g(13.2モル)を入れ、反応器内のガスを窒素ガスで置換した後、1-メチルイミダゾール0.18gを加え、窒素ガス気流下で撹拌しながら、室温から150℃まで30分かけて昇温し、150℃で30分間還流させた。
次いで、1-メチルイミダゾール2.4gを加え、副生した酢酸及び未反応の無水酢酸を留去しながら、150℃から320℃まで2時間50分かけて昇温し、トルクの上昇が認められた時点で、反応器から内容物を取り出して、室温まで冷却し、固形物であるプレポリマーを得た。
次いで、粉砕機を用いてこのプレポリマーを粉砕し、得られた粉砕物を窒素雰囲気下、室温から250℃まで1時間かけて昇温し、250℃から295℃まで5時間かけて昇温し、295℃で3時間保持することにより、固相重合を行った。
得られた固相重合物を室温まで冷却して、粉末状の液晶ポリエステル(L1)を得た。得られた液晶ポリエステル(L1)の流動開始温度は327℃であった。
撹拌装置、トルクメータ、窒素ガス導入管、温度計及び還流冷却器を備えた反応器に、p-ヒドロキシ安息香酸994.5g(7.2モル)、テレフタル酸239.2g(1.44モル)、イソフタル酸159.5g(0.96モル)、4,4’-ジヒドロキシビフェニル446.9g(2.4モル)及び無水酢酸1347.6g(13.2モル)を入れ、反応器内のガスを窒素ガスで置換した後、1-メチルイミダゾール0.18gを加え、窒素ガス気流下で撹拌しながら、室温から150℃まで30分かけて昇温し、150℃で30分間還流させた。
次いで、1-メチルイミダゾール2.4gを加え、副生した酢酸及び未反応の無水酢酸を留去しながら、150℃から320℃まで2時間50分かけて昇温し、トルクの上昇が認められた時点で、反応器から内容物を取り出して、室温まで冷却し、固形物であるプレポリマーを得た。
次いで、粉砕機を用いてこのプレポリマーを粉砕し、得られた粉砕物を窒素雰囲気下、室温から220℃まで1時間かけて昇温し、220℃から240℃まで30分かけて昇温し、240℃で10時間保持することにより、固相重合を行った。
得られた固相重合物を室温まで冷却して、粉末状の液晶ポリエステル(L2)を得た。得られた液晶ポリエステル(L2)の流動開始温度は286℃であった。
実施例及び比較例で用いた板状無機フィラーを以下に示す。
板状無機フィラー(F1):マイカ、羽田野雲母工業株式会社製の「KT-25」
板状無機フィラー(F2):マイカ、下記製造例3で得られたもの
板状無機フィラー(F3):マイカ、Chuzhou Grea Minerals.co.,ltd製の「GM-8」
板状無機フィラー(F4):マイカ、下記製造例4で得られたもの
板状無機フィラー(F5):マイカ、下記製造例5で得られたもの
板状無機フィラー(F6):マイカ、株式会社ヤマグチマイカ製の「J-31M」
インドのビハール州産のマイカ原料(白雲母、約10~30mmのフレーク状)を湿式粉砕機にて微粉砕した後、150メッシュの篩を用いて湿式分級を行った。分級後の試料をpH3.0に調整したクエン酸溶液に1日間浸漬させた後、1時間ほど撹拌した。上澄み液のデカンテーションによる分級を繰り返し行った後、炭酸アンモニウムで中和し、試料を水洗した。その後、熱風乾燥機で乾燥し、さらにスクリュー式解砕機で解砕した後、40メッシュの篩を用いて乾式分級することで板状無機フィラー(F2)を得た。
インドのビハール州産のマイカ原料(白雲母、約10~30mmのフレーク状)を湿式粉砕機にて微粉砕した後、150メッシュの篩を用いて湿式分級を行った。分級後の試料を水に分散させ、1時間ほど撹拌し、静置後の上澄み液のデカンテーションによる分級を繰り返し行った。その後、熱風乾燥機で乾燥し、さらにスクリュー式解砕機で解砕した後、40メッシュの篩を用いて乾式分級することで板状無機フィラー(F4)を得た。
アメリカのノースカロライナ州産のマイカ原料(白雲母、約10~30mmのフレーク状)を湿式粉砕機にて微粉砕した後、150メッシュの篩を用いて湿式分級を行った。分級後の試料をpH3.0に調整したクエン酸溶液に1日間浸漬させた後、1時間ほど撹拌した。上澄み液のデカンテーションによる分級を繰り返し行った後、炭酸アンモニウムで中和し、試料を水洗した。その後、熱風乾燥機で乾燥し、さらにスクリュー式解砕機で解砕した後、40メッシュの篩を用いて乾式分級することで板状無機フィラー(F5)を得た。
板状無機フィラー(F1)~(F6)のそれぞれについて、下記の測定方法により粒径(D50、D50*、D90)を測定し、メジアン径の比(D50/D50*)を求めた。この結果を表1に示した。
板状無機フィラーを水に分散して、板状無機フィラー5質量%の水分散液(スラリー)を調製した。
当該水分散液(スラリー)について、レーザー回折式粒度分布測定装置(株式会社堀場製作所製「LA-950V2」)を用い、JIS R1629に準拠して体積基準の粒度分布を測定した。そして、この粒度分布の測定に基づく粒度累積分布曲線から読み取った累積量50%の粒径値からD50(メジアン径)[μm]を算出した。
板状無機フィラーを水に分散して、板状無機フィラー5質量%の水分散液(スラリー)を調製した。
当該水分散液(スラリー)について、レーザー回折式粒度分布測定装置(株式会社堀場製作所製「LA-950V2」)を用い、JIS R1629に準拠して体積基準の粒度分布を測定した。そして、この粒度分布の測定に基づく粒度累積分布曲線から読み取った微小粒子側からの累積量90%の粒径値からD90[μm]を算出した。
板状無機フィラーを、分散装置(VELVO CLEAR製「VS-25」)により、超音波出力25W、分散時間1分にて水に分散して、板状無機フィラー5質量%の水分散液(スラリー)(20℃)を調製した。
当該水分散液(スラリー)について、遠心沈降式粒度分布測定装置(株式会社島津製作所「SA-CP3」)を用い、JIS R1619に準拠し質量基準の粒度分布を測定した。そして、この粒度分布の測定に基づく粒度累積分布曲線から読み取った累積量50%の粒径値からD50*(メジアン径)[μm]を算出した。
上記より算出したD50及びD50*を用いて、メジアン径の比(D50/D50*)を求めた。
(実施例1)
ヘンシェルミキサーを用いて、液晶ポリエステル(L1)55質量部と、液晶ポリエステル(L2)45質量部と、板状無機フィラー(F1)33質量部とを混合した。
次いで、得られた混合物を、120℃で5時間の乾燥後、真空ベント付き二軸押出し機(株式会社池貝製「PCM-30」)にて、水封式真空ポンプ(神港精機株式会社製「SW-25S」)を用い、真空ベントで脱気しながら、シリンダー温度340℃、及びスクリュウ回転数150rpmの条件で溶融混練して、直径3mmの円形ノズル(吐出口)を経由してストランド状に吐出した。
次いで、この吐出した混練物を、水温30℃の水浴に1.5秒くぐらせた後、ストランドカッター(田辺プラスチックス機械株式会社製)にてペレタイズして、液晶ポリエステル組成物をペレット状で得た。
板状無機フィラー(F1)33質量部に代えて、板状無機フィラー(F2)33質量部を配合した以外は、実施例1と同様にして、ペレット化した液晶ポリエステル組成物を得た。
板状無機フィラー(F1)33質量部に代えて、板状無機フィラー(F3)33質量部を配合した以外は、実施例1と同様にして、ペレット化した液晶ポリエステル組成物を得た。
板状無機フィラー(F1)33質量部に代えて、板状無機フィラー(F4)33質量部を配合した以外は、実施例1と同様にして、ペレット化した液晶ポリエステル組成物を得た。
板状無機フィラー(F1)33質量部に代えて、板状無機フィラー(F5)33質量部を配合した以外は、実施例1と同様にして、ペレット化した液晶ポリエステル組成物を得た。
板状無機フィラー(F1)33質量部に代えて、板状無機フィラー(F6)33質量部を配合した以外は、実施例1と同様にして、ペレット化した液晶ポリエステル組成物を得た。
ヘンシェルミキサーを用いて、液晶ポリエステル(L1)100質量部と、板状無機フィラー(F3)20質量部とを混合して混合物を得たこと以外は、実施例1と同様にして、ペレット化した液晶ポリエステル組成物を得た。
板状無機フィラー(F3)20質量部に代えて、板状無機フィラー(F5)20質量部を配合した以外は、実施例4と同様にして、ペレット化した液晶ポリエステル組成物を得た。
板状無機フィラー(F3)20質量部を、板状無機フィラー(F3)49質量部に変更した以外は、実施例4と同様にして、ペレット化した液晶ポリエステル組成物を得た。
板状無機フィラー(F3)49質量部に代えて、板状無機フィラー(F5)49質量部を配合した以外は、実施例5と同様にして、ペレット化した液晶ポリエステル組成物を得た。
各例の液晶ポリエステル組成物から、下記方法で成形体を製造し、この成形体についての機械強度、表面性、寸法安定性及び耐熱性、並びに液晶ポリエステル組成物の流動性をそれぞれ評価した。これらの結果を表2~3に示した。
射出成形機(日精樹脂工業株式会社製「PNX40-5A」)を用い、下記の射出成形条件にて、液晶ポリエステル組成物から、成形体としてASTM4号ダンベル試験片を作製した。
次いで、作製したダンベル試験片について、ASTM D638に従って引張試験を行い、試験速度10mm/minにて引張強度を測定することにより成形体の機械強度を評価した。
シリンダー温度:340℃(実施例1~3、比較例1~3)、350℃(実施例4~5、比較例4~5)
金型温度:130℃
射出速度:75mm/秒
保圧:25MPa
図1は、薄肉流動長測定用の金型を示す斜視図である。図1中の数値の単位はmmである。
図1に示す、厚さXmm(0.2mm)、幅5.0mmの薄肉流動長測定用の金型を用い、液晶ポリエステル組成物を、射出成形機(ファナック株式会社製「Roboshot S2000i-30B」)にて下記の射出成形条件下で成形した。そして、金型内から取り出した成形体について、ゲート口から樹脂の流れ方向の流動末端部までの長さ(0.2mmt流動長)を測定する試験を行った。
この試験を10個の成形体について行い、その長さ(0.2mmt流動長)についての平均値、及び最大値と最小値との差分(バラつき)を基にし、下記の判定基準により液晶ポリエステル組成物の流動性を評価した。
判定G:流動長の平均値が大きい、かつ、バラつきが小さい場合
判定F:流動長の平均値が大きいこと、及びバラつきが小さいことのいずれかを一つでも満たさない場合
ここでの流動長の平均値及び流動長のバラつきは、各例について下記の値をそれぞれ基準とした。
実施例1~3,比較例1~3:55mm以下
実施例4,比較例4:45mm以上
実施例5,比較例5:40mm以上
実施例1~5,比較例1~5:5mm以下
[射出成形条件]
シリンダー温度:340℃(実施例1~3、比較例1~3)、350℃(実施例4~5、比較例4~5)
金型温度:120℃
計量値:20mm
射出速度:200mm/秒
VP切り替え:150MPaにて圧力切り替え
保圧:20MPa
上記[液晶ポリエステル組成物の流動性の評価]において、厚さ0.2mmt流動長の測定時に成形した、成形体の流動末端部の表面における幅方向について、表面粗さ測定器(株式会社小坂研究所製、SE600LK-31)を用い、走査速度0.5mm/秒、走査距離3mmにて当該流動末端部の表面粗さ(算術平均粗さRa)を測定することにより、成形体の流動末端の表面滑らかさ(表面性)を評価した。
射出成形機(日精樹脂工業株式会社製「PNX40-5A」)を用い、下記の射出成形条件にて液晶ポリエステル組成物から、成形体として幅12.7mm、長さ127mm、厚さ6.4mmの棒状試験片を作製した。
次いで、得られた棒状試験片について、ASTM D790に従って曲げ試験を行い、曲げ強度及び曲げ弾性率を試験速度2mm/minにて測定することにより、成形体の機械強度を評価した。
シリンダー温度:340℃(実施例1~3、比較例1~3)、350℃(実施例4~5、比較例4~5)
金型温度:130℃
射出速度:75mm/秒
保圧:25MPa
射出成形機(日精樹脂工業株式会社製「PNX40-5A」)を用い、下記の射出成形条件にて液晶ポリエステル組成物から、成形体として64mm×64mm×3mmtの平板状試験片を作製した。
次いで、マイクロメーターを用いて、液晶ポリエステル組成物の流動方向(MD)の2辺の長さを測定し、その平均値を求め、この平均値と、金型キャビティのMDの長さとから、下式により、MDの収縮率を算出した。
また、作製した平板状試験片について、液晶ポリエステル組成物の流動方向と直交する方向(TD)の2辺の長さを測定し、その平均値を求め、この平均値と、金型キャビティのTDの長さとから、下式により、TDの収縮率を算出した。
さらに、MDの収縮率とTDの収縮率との和を算出して、成形体の寸法安定性を評価した。
シリンダー温度:340℃(実施例1~3、比較例1~3)、350℃(実施例4~5、比較例4~5)
金型温度:130℃
射出速度:75mm/秒
保圧:25MPa
射出成形機(日精樹脂工業株式会社製「PNX40-5A」)を用い、下記の射出成形条件にて液晶ポリエステル組成物から、成形体として幅12.7mm、長さ127mm、厚さ6.4mmの棒状試験片を作製した。
次いで、作製した棒状試験片について、ASTM D648に従って、荷重1.82MPa、昇温速度2℃/分で荷重たわみ温度を測定することにより、成形体の耐熱性を評価した。
シリンダー温度:340℃(実施例1~3、比較例1~3)、350℃(実施例4~5、比較例4~5)
金型温度:130℃
射出速度:75mm/秒
保圧:25MPa
射出成形機(日精樹脂工業株式会社製「PNX40-5A」)を用い、下記の射出成形条件にて液晶ポリエステル組成物から、成形体として幅12.7mm、長さ127mm、厚さ6.4mmの棒状試験片を作製した。
次いで、作製した棒状試験片を長尺方向に2等分し、得られた試験片を使用し、ASTM D256に従ってIzod衝撃試験を行い、Izod衝撃強度を測定することにより成形体の耐衝撃特性を評価した。
シリンダー温度:340℃(実施例1~3、比較例1~3)、350℃(実施例4~5、比較例4~5)
金型温度:130℃
射出速度:75mm/秒
保圧:25MPa
また、実施例1及び3と実施例2との対比から、実施例1及び3の液晶ポリエステル組成物によれば、D90の値が実施例2よりも小さいことから、さらに、耐衝撃特性がより高められた成形体が得られていることが確認できる。実施例2の液晶ポリエステル組成物によれば、さらに、寸法安定性がより高められた成形体が得られていることが確認できる。
また、表3における実施例5と比較例5との対比から、本発明を適用した実施例5の液晶ポリエステル組成物によれば、流動性が良好であり、機械強度(引張強度、曲げ強度、曲げ弾性率)、耐熱性、寸法安定性及び表面性がいずれも高められた成形体が得られていることが確認できる。
Claims (9)
- 液晶ポリエステルと、板状無機フィラーと、を含有し、
前記板状無機フィラーのメジアン径の比(D50/D50*)が3.0~6.0であり、
前記板状無機フィラーは、マイカであり、
前記板状無機フィラーの含有量は、前記液晶ポリエステル100質量部に対して10~80質量部である、液晶ポリエステル組成物。
前記D50とは、レーザー回折法により測定される前記板状無機フィラーのメジアン径である。
前記D50*とは、遠心沈降法により測定される前記板状無機フィラーのメジアン径である。 - 前記板状無機フィラーの粒径D50が15~40μmである、請求項1に記載の液晶ポリエステル組成物。
前記D50とは、レーザー回折法により測定される前記板状無機フィラーのメジアン径である。 - 前記板状無機フィラーの粒径D90が40~80μmである、請求項1又は2に記載の液晶ポリエステル組成物。
前記粒径D90とは、レーザー回折法により測定される前記板状無機フィラーの体積基準の粒度累積分布曲線より得られる累積量90%の粒径値である。 - 前記液晶ポリエステルが、下式(1)で表される繰り返し単位(u1)と、下式(2)で表される繰り返し単位(u2)と、下式(3)で表される繰り返し単位(u3)とを有する、請求項1~3のいずれか一項に記載の液晶ポリエステル組成物。
-O-Ar1-CO- (1)
-CO-Ar2-CO- (2)
-X-Ar3-Y- (3)
式(1)~(3)中、
Ar1は、フェニレン基、ナフチレン基又はビフェニリレン基を表す。
Ar2及びAr3は、それぞれ独立に、フェニレン基、ナフチレン基、ビフェニリレン基又は下記一般式(4)で表される基を表す。
X及びYは、それぞれ独立に、酸素原子又はイミノ基を表す。
Ar1、Ar2又はAr3で表される前記基中の1個以上の水素原子は、それぞれ独立に、ハロゲン原子、炭素数1~28のアルキル基又は炭素数6~12のアリール基で置換されていてもよい。
-Ar4-Z-Ar5- (4)
式(4)中、Ar4及びAr5は、それぞれ独立に、フェニレン基又はナフチレン基を表す。Zは、酸素原子、硫黄原子、カルボニル基、スルホニル基又は炭素数1~28のアルキリデン基を表す。 - 請求項1~4のいずれか一項に記載の液晶ポリエステル組成物を含み作製された成形体。
- ASTM D638に従った引張試験における、ASTM4号ダンベル試験片としての引張強度が125MPa以上である、請求項5に記載の成形体。
- 成形体がコネクターである、請求項5又は6に記載の成形体。
- 請求項1~4のいずれか一項に記載の液晶ポリエステル組成物を溶融させて成形することを含む、請求項5~7のいずれか一項に記載の成形体の製造方法。
- 前記成形が射出成形である、請求項8に記載の成形体の製造方法。
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