図1は、本発明の実施形態にかかるリチウムイオンバッテリ搭載車両100の概略構成を示す図である。本図に示すように、本実施形態の車両100は、リチウムイオンバッテリ装置1(以下、単にバッテリ装置1という)を搭載した四輪自動車であり、車体2と、車体2を支持する複数(4つ)の車輪3と、車輪3を回転駆動するためのパワートレインユニット200とを備えている。なお、本明細書において、パワートレインユニット200は、車輪3を回転駆動する(換言すれば車両を走行させる)動力源である4サイクルのエンジン4と、エンジン4の回転を変速しつつ車輪3に伝達する変速機5と、これらを連結する部材とからなるユニットを指す。図1の例では、エンジン4と変速機5とは車幅方向に並列されている。
車体2の前部には、エンジンルームRが形成されている。パワートレインユニット200(エンジン4および変速機5)およびバッテリ装置1はエンジンルームRに収容されている。エンジンルームRは、車両の動力源であるエンジン4が収容される空間であり、請求項の「車両の動力室」に相当する。
なお、本明細書では、方向を表す用語として「前」「後」を用いるが、これは以下のことを前提とする。すなわち、本明細書では、車両が前進する場合の進行方向の前側(図1の例では車体2の中心からエンジンルームRに向かう側)つまり車両前側のことを「前」といい、車両が後退する場合の進行方向の前側(図1の例ではエンジンルームRから車体2の中心に向かう側)つまり車両後側のことを「後」という。
また、以下において「車幅方向」とは、車両前後方向に平面視で直交する方向のことである。また、以下において、「車幅方向」を基本的に「左右方向」という。なお、この場合において、「左右方向」は、車両前方を向いた状態での左右方向のことである。さらに、「上下方向」とは、車両上下方向であって車幅方向および前後方向の双方に直交する方向のことであり、車輪3の接地面から天に向かう側が「上」、その反対が「下」である。
バッテリ装置1は、充放電が可能な二次電池である。すなわち、バッテリ装置1は、車両に備わる種々の電装品に対してこれらを作動させるための電力を供給する電源としての機能と、エンジン4に付属されたオルタネータ等の発電機により発電された電力を充電する充電器としての機能とを兼ね備えている。
図2は、エンジンルームR内の構造であってバッテリ装置1の周辺構造を示す概略正面図である。図3は、バッテリ装置1の周辺構造を示す概略側面図である。
エンジンルームRには、前後方向に延びて左右方向に並ぶ一対のフロントサイドフレーム101、および、前後方向に延びて左右方向に並ぶ一対のサブフレーム102が配設されている。サブフレーム102は、車輪と車体とをつなぐ部材であるサスペンションを支持する部材である。詳細には、サブフレーム102は、サスペンションの一部を構成するロアアーム190(図5参照)を支持する。各サブフレーム102は、各フロントサイドフレーム101の下方となる位置に配設されている。
各フロントサイドフレーム101は、エンジンルームRと車室とを区画するダッシュパネル110から前方に延びている。ダッシュパネル110の下部には、フロントサイドフレーム101の後端から後方に延びるフロアフレーム112が配設されている。サブフレーム102は、ガセット114を介してフロアフレーム112に固定されている。
本実施形態では、車両の前突時等において、車両に前方から荷重が付与されると、サブフレーム102がガセット114およびフロアフレーム112から離脱するように構成されている。このサブフレーム102の離脱機構としては、特開2018-83513号公報に開示されている機構を用いることができる。この機構は公知であり、ここでは、前記公報に開示されている図と同様の図4、図5を用いて簡単に説明する。図4は、ロアアーム190が取り外された状態のサブフレーム102(前記公報におけるフロントサブフレーム)の構造を示す概略側面図であり、左右方向の外側からサブフレーム102を見た図である。図5は、サブフレーム102の構造の要部を示した概略斜視図である。
図4に示すように、サブフレーム102の後端部には、ガセット114の下面が当接する当接面121が形成されている。この当接面121には、上方に突出してガセット114に挿入される基準ピン122が取り付けられている。具体的には、当接面121にこれを上下に貫通する貫通孔が形成されており、この貫通孔に基準ピン122が装着されている。また、サブフレーム102の後端部には、基準ピン122よりも前方の位置に、当接面121から上方に延びるボルト123が装着されている。ガセット114およびフロアフレーム112には、このボルト123と螺合するウェルドナット(不図示)が設けられている。このボルト123とウェルドナットとの締結により、サブフレーム102はガセット114およびフロアフレーム112に固定されている。このボルト123はロアアーム190の後端部にも挿通されており、ボルト123とウェルドナットとの締結によりロアアーム190もサブフレーム102に連結されている。
このようにガセット114およびフロアフレーム112に固定されるサブフレーム102の後端部は、さらに、サブフレーム102に前方から荷重が付与されると前傾変形するように構成されており、この前傾変形によってサブフレーム102がガセット114およびフロアフレーム112から下方に離脱するようになっている。具体的には、前記の前傾変形によって、基準ピン122を支点とする力がボルト123に付与されて、所謂テコの原理によって、ボルト123が、ガセット114およびフロアフレーム112から下方且つ後方に向けて引き抜かれる、あるいは、破断し、サブフレーム102はガセット114およびフロアフレーム112から下方に離脱する。
なお、図4において、符号181はバンパーレインフォースメント、符号182、184はクラッシュカン、符号183はバンパビームである。
(バッテリ装置1の支持構造)
図6は、図3の一部を分解して示した概略分解斜視図である。図7は、図6のVII-VII線を通る面におけるバッテリ装置1の概略断面図である。図8は、図7のVIII-VIII線を通る面におけるバッテリ装置1の概略断面図である。図9は、バッテリ装置1の後述するセル収容部11の内部を分解して示した概略斜視図である。図10は、バッテリ装置1の後述する蓋部12を下方から見た状態の概略斜視図である。
バッテリ装置1は、略直方体の外形を有し、変速機5の上方に位置するように一方(図例では左側)のフロントサイドフレーム101に支持されている。
車両100には、バッテリ装置1を支持するための支持部材として、ブラケット81と、トレイ82と、クランプ84とが設けられている。バッテリ装置1は、トレイ82上に載置されており、バッテリ装置1を上方から覆うクランプ84とトレイ82とが締結されることでトレイ82上に保持されている。そして、トレイ82がブラケット81を介してフロントサイドフレーム101に支持されることで、バッテリ装置1は、フロントサイドフレーム101に支持されている。
ブラケット81は、略L字状を有し、上下方向に延びるブラケット縦壁部81aと、ブラケット縦壁部81aの上端から右側に延びるブラケット横壁部81bとを有する。ブラケット縦壁部81aがフロントサイドフレーム101の右側面にボルト等により固定されることで、ブラケット81はフロントサイドフレーム101に支持されている。
トレイ82は、略水平に延びる板状のトレイ底壁部82aと、トレイ底壁部82aの上面から上方に延びる3つの側壁部82b~82dとを有する。具体的には、トレイ82は、側壁部として、前後方向に延びるトレイ左壁部82bと、トレイ左壁部82bの後縁から右方に延びるトレイ後壁部82dと、トレイ左壁部82bの前縁から右方に延びるトレイ前壁部82eとを有する。トレイ後壁部82dおよびトレイ前壁部82eはトレイ底壁部82aの右端から左方に延びている。トレイ後壁部82dおよびトレイ前壁部82eの上端にはそれぞれ前後方向の外側に突出するクランプ固定部82f、82fが設けられている。
トレイ底壁部82aには、その下面から下方に延びるワイヤー保持部82rが形成されている。ワイヤー保持部82rの中央には、ワイヤー保持部82rの表裏を貫通して水平方向に延びる貫通孔82sが形成されている。本実施形態では、ワイヤー保持部82rは左右方向と略直交する方向に延びる板状を有し、貫通孔82sはワイヤー保持部82rを左右方向に貫通している。また、貫通孔82sは、側面視で(左右方向に沿ってみたときに)円形の孔とされている。ワイヤー保持部82rは、図2に示すように、左右方向についてフロントサイドフレーム101およびサブフレーム102よりもわずかに右側となる位置で、且つ、図3に示すように、前後方向について後述する蓋部12の前端とほぼ同じ位置に、配設されている。
トレイ底壁部82aのうち側壁部82b、82d、82eとで囲まれた領域の前部と後部とには、トレイ底壁部82aから上方に突出する左右一対の位置決め用ブロック82h、82hがそれぞれ設けられている。つまり、側壁部82b、82d、82eとで囲まれた、上面視で略長方形状の空間には、4隅にそれぞれ1つずつ位置決め用ブロック82hが設けられている。位置決め用ブロック82hは、上面視で略長方形の直方体状を有する。位置決め用ブロック82hの上下方向の寸法は、トレイ前壁部82eおよびトレイ後壁部82dの上下方向の寸法よりも小さい。これら位置決め用ブロック82hは互いに離間している。これより、前側の左右一対の位置決め用ブロック82h、82hの間および後側の左右一対の位置決め用ブロック82h、82hの間にはそれぞれ前後方向に延びる位置決め用溝82kが形成されている。前後2つの位置決め用溝82k、82kは左右方向について同じ位置に形成されている。
トレイ82は、トレイ底壁部82aがブラケット横壁部81bにボルト等で固定されることでブラケット81の上面に支持されている。
クランプ84は、前後方向に延びるクランプ横壁部84aと、クランプ横壁部84aの前後方向の両縁からそれぞれ下方に延びる一対の延設部84b、84bを備える。各延設部84bの下縁には前後方向の外側に延びるクランプ被固定部84cがそれぞれ設けられている。
クランプ横壁部84aは、バッテリ装置1(後述する蓋部12)の上面の左右方向の中央部分に沿って前後方向に延びており、この部分を上方から覆っている。クランプ84の各延設部84bは、バッテリ装置1の前後方向の両側面に沿ってそれぞれ上下方向に延びている。各クランプ被固定部84cはトレイ82の各クランプ固定部82fとボルト等で締結されており、これにより、クランプ84はトレイ82に固定されている。そして、クランプ84とトレイ82との固定により、カバー部材83およびバッテリ装置1は、トレイ82とクランプ84とで囲まれた空間に保持されている。
(バッテリ装置の詳細構造)
バッテリ装置1は、ハウジング10と、複数のバッテリーセル20と、保持プレート30と、複数の端子連結部材40と、一対の外部端子60と、複数のバスバー50とを備える。本実施形態では、バッテリ装置1は、4つのバッテリーセル20を有する。
ハウジング10は、セル収容部11と、蓋部12とを有する。ハウジング10(セル収容部11および蓋部12)は、比較的高い剛性を有するように、高強度の金属材料もしくは繊維強化樹脂等によって形成されている。
セル収容部11は、開口部11aを有する箱状の部材である。蓋部12は、セル収容部11の開口部11aを封止する部材である。
本実施形態では、バッテリ装置1は、セル収容部11が右方に開口して、蓋部12とセル収容部11とが左右方向に並び、且つ、蓋部12がセル収容部11の右方に位置する姿勢で、カバー部材83内に収容されて、トレイ82、クランプ84およびブラケット81を介してフロントサイドフレーム101に支持されている。以下のバッテリ装置1の説明では、各方向として、バッテリ装置1の姿勢がこの支持姿勢つまりセル収容部11が右方に開口して蓋部12がセル収容部11の右方に位置する姿勢にあるときの方向を用いる。
セル収容部11は、略直方体状を呈し、左右方向と略直交する面に沿って延び且つ側面視(左右方向に沿ってみたときに)前後方向に延びる略長方形状の底壁部11bと、底壁部11bから右方に延びる4つの側壁部11c~11fとを有する。具体的には、セル収容部11は、側壁部として、前後方向に延びる上壁部11dと、上壁部11dの下方に位置してこれと対向する下壁部11cと、上壁部11dと下壁部11cの各後縁どうしにわたって前後方向に延びる後壁部11fと、上壁部11dと下壁部11cの各前縁どうしにわたって前後方向に延びる前壁部11eとを有する。セル収容部11の上壁部11dと下壁部11cの右端部の前後方向の中央付近には、それぞれ上下方向の外側に突出する係止突起11gが設けられている。
セル収容部11の下壁部11cの下面の左右中央には下方に突出する位置決め用突起11kが設けられている。位置決め用突起11kは、前後に延びる略直方体形状を有する。セル収容部11およびバッテリ装置1は、この位置決め用突起11kが、前記のトレイ82の位置決め用溝82kに挿入されることでトレイ82内に位置決めされる。
蓋部12は、左右方向と略直交する面に沿って延び且つ側面視(左右方向に沿ってみたときに)前後方向に延びる略長方形の板状を有し、蓋部12の天面12a(右側面)および底面12b(左側面)は、それぞれ、側面視で長方形状を呈する。蓋部12には、一対の被係止部12gが設けられている。2つの被係止部12gは、それぞれ、蓋部12の上側面12dおよび下側面12cの前後方向の中央付近に設けられている。被係止部12gは、中央に貫通穴が形成された略方形の板状を有している。被係止部12gは、セル収容部11の係止突起11gと嵌合可能な部材であり、これらの嵌合により、蓋部12はセル収容部11に固定される。この状態において、蓋部12の底面12bはセル収容部11の各側壁部11c~11fの右端に当接し、セル収容部11は密閉される。
蓋部12の前後方向および上下方向の寸法は、セル収容部11の前後方向および上下方向の寸法とほぼ同じであり、蓋部12がセル収容部11を封止した状態で、蓋部12とセル収容部11の前、後、上、下の各外側面どうしはほぼ面一となる。
バッテリーセル20は、正極シート、負極シートおよびセパレータ(いずれも不図示)が積層されることで構成された電極体21zが収容されたセルケース21と、正極シートおよび負極シートとそれぞれ接続された一対のセル側端子22、22とを有する。バッテリーセル20はいわゆる角型のバッテリーセルであり、セルケース21は扁平な直方体を呈している。2つのセル側端子22はセルケース21の一側面から外側に突出するように設けられている。
バッテリーセル20は、セル側端子22がセルケース21の右側面21aから右方に突出する姿勢でセル収容部11内に収容されている。また、4つのバッテリーセル20は、バッテリーセル20が前後方向に並び、1のバッテリーセル20の2つのセル側端子22が上下方向に並ぶように、セル収容部11内に配設されている。
図11は、セル側端子22を拡大して示した概略斜視図である。なお、一方のセル側端子22と他方のセル側端子22の構造は互いに同じである。セル側端子22は、略円錐台状を呈するセル側基部22aと、セル側基部22aから右方(セルケース21に対してセル側端子22が突出する方向)に延びるセル側連結部22bとからなる。セル側連結部22bは、セル側基部22aよりも傾斜が緩やかな略円錐台状を呈している。セル側連結部22bには、その周方向の一部に、径方向の内側(セル側連結部22bを構成する円錐台の中心軸側)に凹む切り欠き22eが形成されている。切り欠き22eは、セル側連結部22bの左右方向(セル側連結部22bを構成する円錐台の中心軸に沿う方向)の全体にわたって形成されている。このように切り欠き22eが設けられていることで、セル側連結部22bは縮径可能となっている。
図12は、バスバー50を拡大して示した概略斜視図である。バスバー50は、異なる2つのバッテリーセルの一方のセル側端子22どうしを電気的に接続するための部材である。バスバー50は、略長方形の板状を呈するバスバープレート51と、バスバープレート51の表面からこれと直交する方向に突出する一対のバスバー側端子52とを有する。2つのバスバー側端子52は、バスバープレート51の長手方向に沿って並設されている。前記のバスバープレート51は、請求項の「バスバーの本体部」に相当する。
バスバー側端子52が蓋部12の底面12bから左方に突出する状態で、バスバープレート51は、蓋部12の内側に収容されて蓋部12に固定されている。本実施形態では、蓋部12の底面12bに切り込みが形成されており、この切り込みからバスバープレート51が蓋部12の内側に挿入されることで、バスバープレート51は蓋部12の内側に収容される。
図13は、バッテリーセル20とバスバー50との関係を模式的に示した図である。バスバー50は、バスバープレート51が2つのバッテリーセル20間にわたって前後方向に延びるように配設されている。バスバー50は、一対のバスバー側端子52と、異なる2つのバッテリーセル20の一方のセル側端子22とが互いに電気的に接続されることで、異なる2つのバッテリーセル20のセル側端子22どうしつまりバッテリーセル20どうしを電気的に接続している。具体的には、最前列のバッテリーセル20と前から2列目のバッテリーセル20の各上側のセル側端子22どうしにわたってバスバープレート51が延びるように1つのバスバー50が配設されている。そして、このバスバー50の1対のバスバー側端子52が各セル側端子22に電気的に接続されることで、最前列のセル側端子22と前から2列目のセル側端子22が電気的に接続されている。同様に、前から2列目のバッテリーセル20と前から3列目のバッテリーセル20の下側のセル側端子22どうしが1つのバスバー50で電気的に接続され、前から3列目のバッテリーセル20と前から4列目のバッテリーセル20の上側のセル側端子22どうしが1のバスバー50で電気的に接続されている。バスバー50によって他のセル側端子22と接続されないセル側端子22、具体的には、最前列のバッテリーセル20の下側のセル側端子22および前から4列目のバッテリーセル20の下側のセル側端子22は、端子連結部材40を介して外部端子60にそれぞれ連結されている。
バスバー側端子52は、その右側部分(バスバー側端子52の突出方向についてバスバープレート51側の部分)を構成するバスバー側基部52aと、その左側部分(バスバー側端子52の突出方向について反バスバープレート51側の部分)を構成するバスバー側連結部52bとからなる。
バスバー側基部52aは、左方に向けて外径が小さくなる略円錐台状の部材に、円錐台の中心軸と直交する方向に延びる貫通孔52cが形成された形状を呈する。貫通孔52cは、側面視で略台形の孔である。貫通孔52cは、左右方向について、バスバー側基部52aの右端よりも左方の位置とバスバー側連結部52bの右端位置とにわたって形成されている。バスバー側基部52aの左右方向の中央付近の外周面には、バスバー側基部52aの径方向の内側(バスバー側基部52aを構成する円錐台の中心軸側)に凹む切り欠き52dが形成されている。切り欠き52dは、バスバー側基部52aの全周にわたって形成されている。切り欠き52dは、左右方向について、貫通孔52cが形成された領域と重複するように設けられている。これより、バスバー側基部52aのうち左右方向の中央付近の部分は、バスバー側基部52aの残余の部分(前記の部分を除く部分)よりも肉厚が小さくされて剛性が低くなっている。すなわち、バスバー側基部52aのうちの左右方向(つまりバスバー側端子52の突出方向)の中央付近の領域には、バスバー側基部52aのうちの前記の領域を除く他の領域よりも剛性の低い脆弱部52eが形成されている。
バスバー側連結部52bは、左方に向かって外径が小さくなる略円錐台状を呈する。ただし、バスバー側連結部52bの傾斜は、バスバー側基部52aの傾斜よりも緩やかである。セル側連結部22bと同様に、バスバー側連結部52bにも、その周方向の一部に、径方向の内側(バスバー側連結部52bを構成する円錐台の中心軸側)に凹む切り欠き52gが形成されている。切り欠き52gは、バスバー側連結部52bの左右方向の全体にわたって形成されている。このように切り欠き52gが設けられていることで、セル側連結部22bと同様に、バスバー側連結部52bも縮径可能となっている。
端子連結部材40は、セル側端子22とバスバー側端子52およびセル側端子22と外部端子60とを電気的に接続するための部材であり、導電性を有する。例えば、端子連結部材40は、金属で形成されている。本実施形態では、8つのセル側端子22に対応して、バッテリ装置1は8つの端子連結部材40を有する。
端子連結部材40は、左右方向に延びる略円筒状を呈し、内側にはその中心軸に沿って上下方向に延びる貫通孔41が形成されている。この貫通孔41の左右方向の中央部分の径は左右方向について略一定であり、端子連結部材40の左右方向(貫通孔41の中心軸に沿う方向)の中央には、内径が左右方向でほぼ一定の端子連結部42が設けられている。端子連結部42の孔径は、セル側連結部22bの外径の最大値およびバスバー側連結部52bの外径の最大値よりもわずかに小さい寸法に設定されている。一方、貫通孔41のうち端子連結部42よりも右側の部分と左側の部分の孔径は、端子連結部42から離れるほど大きくなっている。すなわち、端子連結部材40のうち端子連結部42よりも右側には、右方ほど内径が大きくなるバスバー側挿入部43が設けられており、端子連結部材40のうち端子連結部42よりも左側には、左方ほど内径が大きくなるセル側挿入部44が設けられている。前記の端子連結部材40に形成された貫通孔41は、請求項の「挿入部」に相当する。
端子連結部42には、セル側連結部22bとバスバー側連結部52bが挿入されており、端子連結部42とこれらセル側連結部22bおよびバスバー側連結部52bとは嵌合している。つまり、端子連結部42の内周面とセル側連結部22bの外周面およびバスバー側連結部52bの外周面とが接触した状態で、端子連結部42内に各連結部22b、55bが挿入されている。そして、これにより、セル側端子22とバスバー側端子52とが、端子連結部42および端子連結部材40を介して電気的に接続されている。
端子連結部42と、セル側連結部22bおよびバスバー側連結部52bとの嵌合手順は、次の通りである。セル側端子22を、セル側挿入部44側から端子連結部材40の貫通孔41内に挿入する。このとき、セル側連結部22bを縮径させながら端子連結部42まで挿入する。このようにして端子連結部42までセル側連結部22bを挿入すれば、端子連結部42内においてセル側連結部22bは拡径し、セル側連結部22bと端子連結部42とが嵌合する。また、バスバー側端子52を、端子連結部材40のバスバー側挿入部43側から端子連結部材40の貫通孔41内に挿入する。このとき、バスバー側連結部52bを縮径させながら端子連結部材40の端子連結部42まで挿入する。このようにして端子連結部42までバスバー側連結部52bを挿入すれば、端子連結部42内においてバスバー側連結部52bは拡径し、バスバー側連結部52bと端子連結部42とが嵌合する。ここで、図10に示すように、外部端子60の左側部分も、バスバー側端子52と同様の構造を有しており、外部端子60も端子連結部材40の端子連結部42まで挿入されてこれと嵌合し、端子連結部42および端子連結部材80を介してセル側端子22と電気的に接続される。
保持プレート30は、端子連結部材40を保持するための部材である。保持プレート30は、左右方向と略直交する板状を有している。保持プレート30には、これを左右方向に貫通して端子連結部材40がそれぞれ挿入される挿入孔31が形成されている。8つの端子連結部材40に対応して、保持プレート30には8つの挿入孔31が形成されている。各挿入孔31は、互いに離間しており、各挿入孔31に挿入された端子連結部材40は、端子連結部材40どうしの間に保持プレート30が介在する状態でこれに保持される。
保持プレート30は、非導電性の部材で形成されている。例えば、保持プレート30は、樹脂でよって形成されている。
端子連結部材40は、挿入孔31内に挿入された状態で保持プレート30に固定されている。例えば、端子連結部材40は、接着剤等によって挿入孔31内に固定されている。端子連結部材40の左右方向の寸法と、保持プレート30の左右方向の寸法とはほぼ同じであり、端子連結部材40の全体が、保持プレート30の内側に収容されている。
保持プレート30は、ボルト等によってセル収容部11に固定されている。具体的には、セル収容部11の内側面には、左右方向について、セルケース21の右側面21aとほぼ同じ位置に段部11hが形成されている。この段部11hには複数のボルト孔が形成されている。保持プレート30は、この段部11hおよびセルケース21の右側面21aに当接した状態で、右方から差し込まれたボルト91が前記のボルト孔に締結されることで、セル収容部11の内側に保持されている。保持プレート30および端子連結部材40の左右方向の寸法は、セルケース21の右側面21aと蓋部12の底面12bとの左右方向の離間距離よりもわずかに短く設定されている。これより、蓋部12がセル収容部11を封止した状態で、蓋部12の底面12bと保持プレート30の右側面および端子連結部材40の右側面との間にはわずかに隙間が形成される。
以上のように構成されたバッテリ装置1は、前記のように、トレイ82上に載置されている。ここで、前記のように、セル収容部11は、その下壁部11cに設けられた位置決め用突起11kが、トレイ82の位置決め用溝82kに挿入されることでトレイ82内に位置決めされており、セル収容部11は、位置決め用ブロック82h上に載置されている。また、図2に示すように、トレイ前壁部82eおよびトレイ後壁部82dの左右方向の寸法は、セル収容部11の左右方向の寸法よりもわずかに短くなっている。これより、ハウジング10は、これらトレイ前壁部82e、トレイ後壁部82dおよびトレイ底壁部82aから蓋部12が右方に飛び出る状態でトレイ82に支持されており、蓋部12の下方には空間が確保されている。
(サブフレームと蓋部の連結構造)
車両100には、蓋部12とサブフレーム102とを連結するための連結部材70が設けられている。連結部材70は、可撓性を有する索状部材からなる。本実施形態では、連結部材70は、ワイヤーロープ、すなわち、複数の金属製の素線が撚り合わされることで形成されたストランドを芯綱周りに撚り合わせたロープで構成されている。以下では、連結部材70を、単にワイヤーロープ70という。
サブフレーム102の上面には、サブフレーム側ワイヤー固定部74が設けられており、ワイヤーロープ70の一端は、このサブフレーム側ワイヤー固定部74に固定されている。本実施形態では、サブフレーム側ワイヤー固定部74は、サブフレーム102の上面から上方に突出する略コ字状を有しており、ワイヤーロープ70の長手方向の一方側の端部は、サブフレーム102の上面とサブフレーム側ワイヤー固定部74との間に挿通された状態でこれに固定されている。
蓋部12の外周面には、蓋部12の厚み寸法(左右方向の寸法)よりもわずかに短い幅を有するバンド部材72が巻き付けられている。バンド部材72は、蓋部12の外周面の全周にわたって蓋部12に巻き付けられている。
バンド部材72には、蓋部側ワイヤー固定部73が設けられており、ワイヤーロープ70の他端は、この蓋部側ワイヤー固定部73に固定されている。本実施形態では、蓋部側ワイヤー固定部73は、バンド部材72の表面から外方に突出する略コ字状を有しており、ワイヤーロープ70の長手方向の他方側の端部は、バンド部材72の表面と蓋部側ワイヤー固定部73との間に挿通された状態でこれに固定されている。蓋部側ワイヤー固定部73は、蓋部12の下端部の前端部分と対向する位置に配設されている。
サブフレーム側ワイヤー固定部74は、その前端位置X2が、前後方向について蓋部12の前端位置X1よりも後方となる位置に設けられている。また、サブフレーム側ワイヤー固定部74は、サブフレーム102の前後方向の中央付近であって、他の部分よりも上下方向の厚みが比較的小さい部分に設けられている。
ワイヤーロープ70の途中部は、前記のワイヤー保持部82rに形成された貫通孔82s内に挿通されて、ワイヤー保持部82rに保持されている。このように、本実施形態では、ワイヤーロープ70は、蓋部側ワイヤー固定部73からトレイ底壁部82aの下方を通って左方に延びて貫通孔82sに挿通される部分と、貫通孔82sからサブフレーム側ワイヤー固定部74まで下方に延びる部分とを含む。
ここで、蓋部側ワイヤー固定部73とワイヤー保持部82rとの直線距離と、ワイヤー保持部82rとサブフレーム側ワイヤー固定部74との直線距離との合計は、ワイヤーロープ70の全長よりも短く、ワイヤーロープ70は弛緩した状態で各固定部73、74に固定されている。
(作用等)
図14は、本実施形態に係る作用効果を説明するための図であって、図3に対応する図である。図14では、上から順に時間が経過している。また、図15も本実施形態に係る作用効果を説明するための図であって、図8に対応する図である。
車両の前突時等において車両100に前方から荷重が付与された場合、バッテリ装置1よりも先にサブフレーム102に、前方からの荷重Fが付与される。荷重Fが付与されると、図14の最上部の図に示すように、サブフレーム102は後方に移動する。また、サブフレーム102の前後方向の中央付近の部分は下方に変位する。前記のように、サブフレーム側ワイヤー固定部74は、サブフレーム102の前後方向の中央付近に配設されている。これより、サブフレーム側ワイヤー固定部74は後ろ斜め下方に移動する。これに伴い、ワイヤーロープ70は後斜め下方に引っ張られて緊張状態となる。継続してサブフレーム102に対して荷重Fが付与されてサブフレーム102およびサブフレーム側ワイヤー固定部74がさらに後ろ斜め下方に移動すると、ワイヤーロープ70によって蓋部側ワイヤー固定部73および蓋部12が後斜め下方に引っ張られる。ワイヤーロープ70はバンド部材72を介して蓋部12にのみ固定されている。そのため、蓋部12はセル収容部11に対して相対的に移動し、図14の上から2つ目の図に示すように、蓋部12はセル収容部11から離脱する。そして、図14の上から3つ目の図に示すように、蓋部12は落下する。また、本実施形態では、図14の上から3つ目の図に示すように、サブフレーム102に付与された荷重が所定量を超えると、サブフレーム102の後端部はガセット114およびフロアフレーム112から離脱して下方に落下する。
ここで、バスバー50は蓋部12に固定されている。そのため、蓋部12がセル収容部11に対して相対的に後方あるいは下方に移動すると、バスバー50の位置が、セル収容部11に収容されたバッテリーセル20のセル側端子22に対応する位置からずれる。この結果、バスバー50を介したセル側端子22どうしの電気的な接続、つまり、バッテリーセル20どうしの電気的な接続が解除される。なお、蓋部12は、被係止部12gの破断を伴いつつセル収容部11に対して相対的に移動する。
本実施形態では、バスバー50のうちのバスバープレート51が蓋部12に固定されて、バスバー側端子52は、セル収容部11内に収容された端子連結部材40に挿入されている。これより、蓋部12がセル収容部11に対して相対的に後方に移動すると、図15に示すように、バスバー側端子52が破断して、バスバー50のうちバスバープレート51側の部分のみが後おいて方に移動することになる。詳細には、バスバー側端子52に形成された脆弱部52eにバスバー側端子52が破断し、脆弱部52eから右側(バスバープレート51側)の部分が、脆弱部52eから左側(セル側端子22側)の部分に対して相対的に後方に移動する。そして、このバスバー側端子52の破断により、バスバープレート51とバスバー側端子52との接続は解除され、バスバー側端子52およびバスバープレート51を介したセル側端子22どうしの電気的な接続、つまり、バッテリーセル20どうしの電気的な接続が解除される。
以上のように、本実施形態では、フロントサイドフレーム101に支持されたハウジング10の蓋部12と、フロントサイドフレーム101の下方且つハウジング10よりも後方の位置に配設されたサブフレーム102とがワイヤーロープ70で連結されている。そのため、車両の前突時等においてサブフレーム102が前方からの荷重を受けて後方あるいは下方に変位したタイミングと同時あるいはこれの直後であって、バッテリ装置1のセル収容部11に荷重が付与されるよりも早いタイミングで、蓋部12を後方あるいは下方に移動させることができる。そして、バスバー50が蓋部12に固定されていることで、蓋部12の移動に伴って、バスバー50の位置を、セル側端子22どうしを電気的に接続する位置からずらすことができ、早期にセル側端子22どうしつまりバッテリーセル20どうしの電気的な接続を解除できる。従って、前突時等において、バッテリ装置1から高電流あるいは高電圧の電気エネルギーが外部に放出される機会をより確実に少なく抑えることができる。特に、セル収容部11およびこれに収容されたバッテリーセル20自身に荷重が付与されるよりも先にバッテリーセル20どうしの電気的な接続が解除されるので、バッテリーセル20が損傷した状態で通電されるのを防止でき、火災等の発生をより確実に防止できる。
特に、本実施形態では、サブフレーム102がガセット114およびフロアフレーム112から離脱するように構成されており、蓋部12をより確実にセル収容部11に対して相対的に下方に移動させることができる。
また、本実施形態では、蓋部12とサブフレーム102とを連結する連結部材が、ワイヤーロープ70であって可撓性を有する索状部材で構成されている。そのため、通常走行時にバッテリーセルどうしの電気的な接続が不用意に解除されるのを防止できる。具体的には、車両の通常走行時においてもサブフレーム102は振動して上下方向に変位する。そのため、可撓性を有しない剛体で連結部材を構成した場合には、通常走行時にもサブフレーム102の振動を受けて蓋部12がセル収容部に対して位置ずれを起こすおそれがある。そして、バッテリーセル20どうしの電気的な接続が解除されるおそれがある。これに対して、連結部材が可撓性を有するワイヤーロープ70で構成されていることで、サブフレーム102の振動をワイヤーロープ70によって吸収させることができ、通常走行時における蓋部とセル収容部との位置ずれを防止することができる。
特に、本実施形態では、ワイヤーロープ70が、蓋部12とサブフレーム102との間で弛緩する状態でこれらに固定されている。そのため、ワイヤーロープ70によって通常走行時のサブフレーム102の振動を確実に吸収させて、蓋部12が位置ずれするのをより確実に防止できる。さらに、本実施形態では、ワイヤーロープ70の途中部がワイヤー保持部82rによって保持されている。そのため、前記のようにワイヤーロープ70を弛緩させた状態としつつワイヤーロープ70の振動を小さく抑えてワイヤーロープ70と他の部材との干渉を抑制できる。
しかも、蓋部側ワイヤー固定部73つまりワイヤーロープ70が蓋部に固定される部分が、サブフレーム側ワイヤー固定部74つまりワイヤーロープ70がサブフレーム102に固定される部分よりも上方且つ前方に位置している。そのため、車両の前突等に伴うサブフレーム102の後方あるいは下方への移動時に、ワイヤーロープ70によって蓋部12を早期に後方あるいは下方に引っ張ることができ、蓋部12をより確実に早期にセル収容部11に対して相対移動させることができる。
また、本実施形態では、バスバー50のバスバープレート51が蓋部12に固定されて、バスバー側端子52がバスバープレート51からセル収容部11側に突出するように構成されている。そして、セル収容部11の内側に配設された導電性を有する端子連結部材40の端子連結部42にセル側端子22とバスバー側端子52とが挿入されることでこれらが電気的に接続されている。
これより、端子連結部材40を介してセル側端子22とバスバー側端子52との電気的な接続を実現しつつ、バスバー側端子52を容易に破断させることができる。従って、バスバープレート51を介したバスバー側端子52どうしの電気的な接続およびバッテリーセル20どうしの電気的な接続を容易に解除することができる。
また、本実施形態では、バスバー側端子52の左右方向の中央付近に、全周にわたって脆弱部52eが設けられている。つまり、バスバー側端子52のうち、バスバー側端子52のバスバープレート51からの突出方向の一部の領域に、当該領域を除く残余の領域よりも脆弱な脆弱部52eが設けられている。これより、前記のように、バスバープレート51の後方への移動に伴って、バスバー側端子52をこの脆弱部52eにおいて容易に破断させることができる。
しかも、本実施形態では、脆弱部52eは端子連結部材40および保持プレート30の右側端よりも左方に位置している。つまり、脆弱部52eは、端子連結部材40および保持プレート30の蓋部12側の端部よりもセル収容部11側の端部に近い位置と対向するように設けられている。これより、バスバー側端子52は、端子連結部材40および保持プレート30の内側で破断する。そのため、脆弱部52eにおいてバスバー側端子52が破断したときに、破断部分のうちバスバープレート51側の部分と、セル側端子22側の部分との間で放電が生じるのを抑制することができる。特に、保持プレート30は非導電性を有しているので、前記の部分間での放電がより確実に防止される。
(変形例)
前記実施形態では、蓋部12がセル収容部11の右方に位置する姿勢でバッテリ装置1が車両100に搭載される場合を説明したが、これらの配置はこれに限らず、蓋部12とセル収容部11とは、蓋部12がセル収容部11の左方となるように配設されてもよい。また、蓋部12とセル収容部11とが前後方向に並ぶようにこれらが配設されてもよい。
また、前記実施形態では、蓋部12とサブフレーム102とがワイヤーロープ70で連結される場合を説明したが、これらを連結する部材はこれに限らない。
また、サブフレーム102は、ガセット114およびフロアフレーム112に対して離脱不能に固定されていてもよい。
また、前記実施形態では、蓋部12がセル収容部11の右方に位置する場合を説明したが、これらの配置はこれに限らず、蓋部12とセル収容部11とは、蓋部12がセル収容部11の左方となるように配設されてもよい。また、図16に示すように、蓋部12とセル収容部11とが前後方向に並ぶようにこれらが配設されてもよい。なお、図16は、蓋部12がセル収容部11の後方となるようにバッテリ装置1が配設されたときの、蓋部12、セル収容部11と、変速機5等の配置例を示した概略上面図である。この図16の例においても、蓋部12がワイヤーロープ70によって下方あるいは後方に引っ張られることで、蓋部12をセル収容部11に対して相対的に移動させることができ、早期にバッテリーセル20どうしの電気的な接続を解除できる。