JP7362989B2 - 導電性顔料ペースト、合材ペースト、及びリチウムイオン電池用電極 - Google Patents
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Description
しかしながら、上記カーボンナノチューブ分散液及び電極活物質とバインダー樹脂を含む電極スラリーは、初期の分散性や粘性等の性能は良いものの、長期の貯蔵性能は十分でない場合があった。
[項1]顔料分散樹脂(A)、導電性顔料(B)、溶媒(C)、フッ素樹脂(D)、及び高極性低分子量成分(E)を含有する導電性顔料ペーストであって、
顔料分散樹脂(A)が、アミド基、イミド基、水酸基、カルボキシル基、スルホン酸基、リン酸基、シラノール基、シアノ基、ピロリドン基からなる群より選ばれる少なくとも一種の極性官能基を有し、かつ顔料分散樹脂(A)の極性官能基濃度が0.3mmol/g以上23mmol/g以下であり、
導電性顔料(B)が、カーボンナノチューブ(B1)を含有し、
高極性低分子量成分(E)が、アミン化合物(E1)を含有する、導電性顔料ペースト。
[項2]アミン化合物(E1)の含有量が、導電性顔料(B)の固形分100質量%を基準として、12質量%以上500質量%以下である、項1に記載の導電性顔料ペースト。
[項3]カーボンナノチューブ(B1)の酸性基量が、0.01mmol/g以上0.5mmol/g以下である、項1又は2に記載の導電性顔料ペースト。
[項4]カーボンナノチューブ(B1)の体積換算のメディアン径(D50)が、10μm以上250μm以下である、項1~3のいずれか1項に記載の導電性顔料ペースト。
[項5]カーボンナノチューブ(B1)のBET比表面積が、100m2/g以上800m2/g以下であり、
カーボンナノチューブ(B1)のラマンスペクトルにおいて、1560cm-1以上1600cm-1以下の範囲内での最大ピーク強度をG、1310cm-1以上1350cm-1以下の範囲内での最大ピーク強度をDとした際のG/D比が0.1以上5.0以下である、項1~4のいずれか1項に記載の導電性顔料ペースト。
[項6]溶媒(C)の水分含有量が1質量%以下であり、かつアミン化合物含有量が1質量%以下である、項1~4のいずれか1項に記載の導電性顔料ペースト。
[項7]アミン化合物(E1)の重量平均分子量が、1,000未満である、項1~6のいずれか1項に記載の導電性顔料ペースト。
[項8]アミン化合物(E1)のアミン価が、105mgKOH/g以上1,000mgKOH/g以下である、項1~7のいずれか1項に記載の導電性顔料ペースト。
[項9]溶媒(C)が、N-メチル-2-ピロリドンである、項1~8のいずれか1項に記載の導電性顔料ペースト。
[項10]導電性顔料(B)が、さらにアセチレンブラックを含有する、項1~9のいずれか1項に記載の導電性顔料ペースト。
[項11]項1~10のいずれか1項に記載の導電性顔料ペーストと電極活物質(F)を配合してなる合材ペースト。
[項12]顔料分散樹脂(A)、導電性顔料(B)、溶媒(C)、フッ素樹脂(D)、高極性低分子量成分(E)及び電極活物質(F)を含有する合材ペーストであって、
顔料分散樹脂(A)が、アミド基、イミド基、水酸基、カルボキシル基、スルホン酸基、リン酸基、シラノール基、シアノ基、ピロリドン基からなる群より選ばれる少なくとも一種の極性官能基を有し、かつ顔料分散樹脂(A)の極性官能基濃度が0.3mmol/g以上23mmol/g以下であり、
導電性顔料(B)が、カーボンナノチューブ(B1)を含有し、
高極性低分子量成分(E)が、アミン化合物(E1)を含有する、合材ペースト。
[項13]項11又は12に記載の合材ペーストを用いて得られるリチウムイオン電池用電極。
なお、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲において実施される各種の変形例も含むものとして理解されるべきである。
本発明において、「比表面積」とは、窒素吸着法によるBET比表面積のことである。
本発明の導電性顔料ペーストは、顔料分散樹脂(A)、導電性顔料(B)、溶媒(C)、フッ素樹脂(D)、及び高極性低分子量成分(E)を含有する導電性顔料のペーストであって、顔料分散樹脂(A)が、アミド基、イミド基、水酸基、カルボキシル基、スルホン酸基、リン酸基、シラノール基、シアノ基、ピロリドン基からなる群より選ばれる少なくとも一種の極性官能基を有し、かつ顔料分散樹脂(A)の極性官能基濃度が0.3mmol/g以上23mmol/g以下であり、導電性顔料(B)が、カーボンナノチューブ(B1)を含有し、高極性低分子量成分(E)が、アミン化合物(E1)を含有するものである。
上記顔料分散樹脂(A)は、アミド基、イミド基、水酸基、カルボキシル基、スルホン酸基、リン酸基、シラノール基、シアノ基、ピロリドン基からなる群より選ばれる少なくとも一種の極性官能基を有し、かつ顔料分散樹脂(A)の極性官能基濃度が0.3mmol/g以上23mmol/g以下である。また、上記の酸基は塩になっていてもよい。
[上記式において、Rは、それぞれ同じでも異なってもよく、水素原子又は有機基である。]
上記ビニル(共)重合体(A1)としては、その構造中に「-CH2-CH(-X)-」で表される構造単位(ただし、Xは活性水素基又は活性水素基を含む有機基である。)を含むものが好ましい。上記ビニル(共)重合体(A1)としては、例えば、水酸基含有ビニル(共)重合体、カルボキシル基含有ビニル(共)重合体、アミド基含有ビニル(共)重合体、スルホン酸基含有ビニル(共)重合体、リン酸基含有ビニル(共)重合体、ピロリドン基含有ビニル(共)重合体等が挙げられる。これらの(共)重合体は、一種を単独で又は二種以上を組み合わせて用いることができる。
顔料分散樹脂(A)の固形分含有量は、導電性顔料ペーストの固形分総量を基準として、例えば0.1質量%以上、好ましくは1質量%以上、より好ましくは3質量%以上であり、例えば40質量%以下、好ましくは20質量%以下、より好ましくは15質量%以下である。
上記導電性顔料(B)は、カーボンナノチューブ(B1)を含有する。
導電性顔料(B)は、さらに、カーボンナノチューブ(B1)以外のその他の導電性顔料(B2)を含有していてもよい。
上記導電性顔料(B)中のカーボンナノチューブ(B1)の含有量としては、導電性顔料(B)100質量%を基準として、例えば50質量%以上、好ましくは75質量%以上、より好ましくは95質量%以上である。
カーボンナノチューブ(B1)としては、単層カーボンナノチューブ、又は多層カーボンナノチューブをそれぞれ単独で、又は組合せて使用できる。特に粘度、導電性及びコストの関係から、多層カーボンナノチューブを用いることが好ましい。
カーボンナノチューブ(B1)の平均長さとしては、例えば0.1μm以上、好ましくは1μm以上、より好ましくは5μm以上であり、例えば100μm以下、好ましくは80μm以下、より好ましくは60μm以下である。
<酸処理方法>
酸処理の方法としては、カーボンナノチューブに酸を接触させることができれば特に限定されないが、カーボンナノチューブを酸処理液(酸の水溶液)中に浸漬させる方法が好ましい。酸処理液に含まれる酸としては、特に限定されないが、例えば硝酸、硫酸、塩酸が挙げられる。これらは、一種単独で、又は、二種以上を組み合わせて用いることができる。そしてこれらの中でも、硝酸、硫酸が好ましい。
カーボンナノチューブの酸性基量は、酸処理液の濃度、温度、処理時間等によって調整することができる。
酸処理後、後述する洗浄方法により表面に付着した余剰な酸成分を除去し、酸処理カーボンナノチューブを得ることができる。
酸処理したカーボンナノチューブを洗浄する方法としては、特に限定されないが、水洗が好ましい。例えば、酸処理をしたカーボンナノチューブから、ろ過などの既知の手法でカーボンナノチューブを回収し、続いてカーボンナノチューブを水洗する。上記洗浄後、必要に応じて、表面に付着した水を乾燥により除去する等して、酸処理カーボンナノチューブを得ることができる。
ここで、G/D比が0.1以上5.0以下の範囲内であると、炭素表面の欠陥や結晶界面が少なく導電性が高くなりやすいため好適である。
カーボンナノチューブ(B1)以外のその他の導電性顔料(B2)としては、例えば、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、ファーネスブラック、サーマルブラック、グラフェン、黒鉛からなる群より選ばれる少なくとも一種の導電性カーボンが挙げられる。好ましくは、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、ファーネスブラック、サーマルブラックからなる群より選ばれる一種以上であり、より好ましくは、アセチレンブラック、ケッチェンブラックからなる群より選ばれる一種以上であり、さらに好ましくはアセチレンブラックの一種以上である。
導電性カーボン(B2)のジブチルフタレート(DBP)吸油量は、特に限定されない。顔料分散性及び導電性の関係から、例えば60ml/100g以上、好ましくは150ml/100g以上であり、例えば1,000ml/100g以下、好ましくは800ml/100g以下である。
導電性顔料(B)の固形分含有量は、導電性と顔料分散性の観点から、導電性顔料ペーストの固形分総量を基準として、例えば10.0質量%以上、好ましくは30.0質量%以上、より好ましくは40.0質量%以上であり、例えば99.0質量%以下、好ましくは80.0質量%以下、より好ましくは60.0質量%以下である。
上記溶媒(C)は、水や各種有機溶媒などを好適に用いることができる。
具体的には、例えば、n-ブタン、n-ヘキサン、n-ヘプタン、n-オクタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロブタン等の炭化水素系溶剤;トルエン、キシレン等の芳香族系溶剤;メチルイソブチルケトン等のケトン系溶剤;n-ブチルエーテル、ジオキサン、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコール等のエーテル系溶剤;酢酸エチル、酢酸n-ブチル、酢酸イソブチル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ブチルカルビトールアセテート等のエステル系溶剤;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジイソブチルケトン等のケトン系溶剤;エタノール、イソプロパノール、n-ブタノール、sec-ブタノール、イソブタノール等の等のアルコール系溶剤;エクアミド(アミド系溶剤、出光興産社製、商品名)、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチルホルムアミド、N-メチルアセトアミド、N-メチルプロピオアミド、N-メチル-2-ピロリドン等のアミド系溶剤等を挙げることができる。
なかでも、アミド系溶剤が好ましく、N-メチル-2-ピロリドンがより好ましい。これらの溶媒は、一種を単独で又は二種以上を併用して用いることができる。
また、本発明の導電性顔料ペーストを後述する方法で電極層にする場合、溶媒等は揮発するため残らないが、廃棄物削減、環境対応、及び/又は原料コスト削減のために揮発した溶媒を回収及び再利用することが好ましい。すなわち、溶媒(C)として再生品を使用する事が好ましい。この再生溶媒(再生品)には、本発明の導電性顔料ペーストにもともと含有しているアミン化合物(E1)も含まれることになり、同じくロット毎に導電性顔料ペーストの粘度又は増粘傾向が異なることになる。また、アミン化合物は強い臭気を有する場合が多い。
従って、再生品である溶媒(C)中のアミン化合物含有量を一定量以下に管理・調整することが好ましく、アミン化合物含有量としては、通常1質量%以下であり、好ましくは0.5質量%以下であり、特に好ましくは0.1質量%以下である。
なお、上記「溶媒(C)として再生品を使用」とは、本発明の導電性顔料ペーストに用いられる溶媒(C)中に再生品が10質量%以上(好ましくは20質量%以上)含まれるということである。
樹脂の溶解性パラメーターは、当業者に公知の濁度測定法をもとに数値定量化されるものであり、具体的には、K.W.SUH、J.M.CORBETTの式(Journal of Applied Polymer Science,12,2359,1968)に準じて求めることができる。
二種以上の溶媒(C)を組合せて混合溶媒として用いる場合、その混合溶媒の溶解性パラメーターは、実験的に求めることができ、また、簡便な方法として、個々の液状溶媒のモル分率と溶解性パラメーターとの積の総和により求めることもできる。
なお、本発明において、溶解性パラメーターの単位は「(cal/cm3)1/2」である。
上記フッ素樹脂(D)は、電極層の膜形成を目的とする樹脂である。
フッ素樹脂(D)としては、特にポリフッ化ビニリデン(PVDF)が好ましく、一種を単独で又は二種以上を併用して用いることができる。
上記高極性低分子量成分(E)は、導電性顔料のぬれ性及び/又は貯蔵安定性を上げる観点から、アミン化合物(E1)を含有するものである。
上記高極性低分子量成分(E)中のアミン化合物(E1)の含有量としては、高極性低分子量成分(E)100質量%を基準として、例えば50質量%以上、好ましくは75質量%以上、より好ましくは95質量%以上である。
上記アミン化合物(E1)としては、例えば、アンモニア、1級アミン、2級アミン、3級アミン等が挙げられる。
なかでも、酸基や水酸基などの他の官能基を含有しないことが好ましく、1級のアミン化合物が好ましく、1価のアミン化合物(モノアミン)が好ましい。
上記アミン化合物(E1)としては、脂肪族アミン、脂環族アミン、芳香族アミン等が挙げられ、いずれも好適に使用できるが、芳香族アミンが好ましい。
乾燥後の電極層にアミン化合物が残らないことが好ましいため、アミン化合物(E1)の重量平均分子量が1,000未満であることが好ましく、800以下であることがより好ましく、500以下であることがさらに好ましく、350以下であることが特に好ましい。また同じ理由で、アミン化合物の沸点としては、400℃以下が好ましく、300℃以下がより好ましく、200℃以下がさらに好ましい。
また、アミン化合物(E1)のアミン価としては、通常5mgKOH/g以上、好ましくは50mgKOH/g以上、より好ましくは105mgKOH/g以上であり、通常1,000mgKOH/g以下の範囲内である。
また、導電性顔料(B)の固形分100質量%を基準として、下限としては、例えば1質量%以上、好ましくは12質量%以上、より好ましくは40質量%以上、更に好ましくは80質量%以上である。上限としては、例えば1,000質量%以下、好ましくは500質量%以下、より好ましくは350質量%以下、更に好ましくは300質量%以下である。
また、溶媒(C)と高極性低分子量成分(E)の含有比率としては、溶媒(C)と高極性低分子量成分(E)の質量比で、通常100/0.1~100/10の範囲内であり、好ましくは100/0.5~100/8の範囲内であり、より好ましくは100/1~100/6の範囲内であり、より好ましくは100/1.5~100/4の範囲内であることが好適である。
X=α/β×300・・・式(1)
この範囲内であれば導電性顔料(B)の表面に必要十分に高極性低分子量成分(E)を濡れさせることができ、導電性顔料(B)の分散性(粘度含む)や貯蔵安定性(増粘抑制含む)を向上できることを見出した。
上記上限範囲を上回ると導電性顔料(B)の表面積に対する高極性低分子量成分(E)含有量は過剰(臭気やコスト増)であり、上記下限範囲を下回ると導電性顔料(B)の表面積に対する高極性低分子量成分(E)含有量は不足している。
本発明の導電性顔料ペーストとしては、上記の成分(A)、(B)、(C)、(D)、及び(E)の他に、必要に応じて、その他の成分を含有することができる。
本発明は、上記導電性顔料ペーストに、さらに電極活物質(F)を配合してなる合材ペーストを提供する。当該合材ペーストは、リチウムイオン電池電極用の正極又は負極用途に使用する事が好適であり、好ましくは正極用途として使用することが好適である。
電極活物質(F)としては、例えば、ニッケル酸リチウム(LiNiO2)、マンガン酸リチウム(LiMn2O4)、コバルト酸リチウム(LiCoO2)、LiNi1/3Co1/3Mn1/3O2等のリチウム複合酸化物;リン酸鉄リチウム(LiFePO4);ナトリウム複合酸化物;カリウム複合酸化物等が挙げられる。これらの電極活物質(F)は、一種を単独で又は二種以上を混合して用いることができる。上記リン酸鉄リチウムを含有する電極活物質は、安価でありサイクル特性及びエネルギー密度が比較的良好であるため、好適に用いることができる。
電極活物質の粒子径としては、通常0.5μm以上、好ましくは10.5μm以上であり、通常30μm以下、好ましくは20μm以下である。
本発明の合材ペーストは、前述した導電性顔料ペーストをまず調製し、当該ペーストに少なくとも一種の電極活物質(F)を配合することにより得ることができる。
また、本発明の合材ペーストは、前述の成分(A)、成分(B)、成分(C)、成分(D)、成分(E)、及び電極活物質(F)を混和して調製してもよい。
高極性低分子量成分(E)を導電性顔料(B)に接触させ(濡れさせ)、次いで電極活物質(F)を混合することで導電性顔料(B)と電極活物質(F)との凝集が緩和される観点から、まず導電性顔料(B)と高極性低分子量成分(E)を混合する順序を含むことが好ましい。
リチウムイオン電池電極の製法
前述したように、リチウムイオン二次電池の電極合材層(電極層又は合材層とも呼ぶ)は、リチウムイオン電池電極用合材ペーストを正極又は負極の芯材表面に塗布し、これを乾燥することで、電極層を製造することができるが、特に正極に用いることが好ましい。
また、本発明の導電性顔料ペーストの用途としては、合材層のペーストとして用いる以外に、電極芯材と合材層との間のプライマー層としても用いることができる。
リチウムイオン電池電極用合材ペーストの塗布方法は、ダイコーター等を用いたそれ自体公知の方法により行うことができる。リチウムイオン電池電極用合材ペーストの塗布量は特に限定されないが、乾燥後の合材層の厚みが、例えば0.04mm以上、好ましくは0.06mm以上であり、例えば0.30mm以下、好ましくは0.24mm以下の範囲となるように設定することができる。乾燥工程の温度としては、例えば80℃以上、好ましくは100℃以上であり、例えば200℃以下、好ましくは180℃以下の範囲内で適宜設定することができる。乾燥工程の時間としては、例えば5秒以上であり、例えば120秒以下、好ましくは60秒以下の範囲内で適宜設定することができる。
製造例1 スルホン酸変性ポリビニルアルコール樹脂
温度計、環流冷却管、窒素ガス導入管及び撹拌機を備えた反応容器に、重合性モノマーとして酢酸ビニル97質量部及びアリルスルホン酸ナトリウム3.0質量部、溶媒としてメタノール、重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリルを用いて約60度の温度で共重合反応を行った後、減圧下に未反応のモノマーを除去し、樹脂溶液を得た。次いで、水酸化ナトリウムのメタノール溶液を添加してケン化反応を行い、よく洗浄した後、熱風乾燥機で乾燥した。最終的に、重量平均分子量17,000、極性官能基濃度が18.1mmol/g、ケン化度90モル%のスルホン酸変性ポリビニルアルコール樹脂を得た。
実施例1A
製造例1で得られたスルホン酸変性ポリビニルアルコール樹脂40部(固形分40部)、カーボンナノチューブ(CNT1)200部、KFポリマーW#7300(クレハ社製、商品名、ポリフッ化ビニリデン、重量平均分子量100万)180部、N-メチル-2-ピロリドン(NMP1)9380部、及びベンジルアミン200部を混合してボールミルにて5時間分散し、導電性顔料ペースト(A-1)を製造した。
上記導電性顔料ペースト(A-1)100部に対して、活物質粒子(組成式LiNi0.5Mn1.5O4で表されるスピネル構造のリチウムニッケルマンガン酸化物粒子、平均粒子径6μm、BET比表面積0.7m2/g)900部をディスパーで混合して合材ペースト(B-1)を製造した。
下記表1及び表2の配合とする以外は、実施例1Aと同様にして、実施例2A~20A、比較例1A~2Aに係る導電性顔料ペースト(A-2)~(A-22)を得た。
下記表3の配合とする以外は、実施例1Bと同様にして、実施例2B~20B、比較例1B~2Bに係る合材ペースト(B-2)~(B-22)を得た。
なお、上記表5中のメディアン径(D50)、G/D比、及び酸性基量は下記方法で測定した。
メディアン径(D50)の測定は、レーザー回折/散乱式 粒子径分布測定装置「LA-960」(HORIBA社製、商品名)を用い、下記の手順で行った。
蒸留水100mLにF10MC(日本製紙社製、商品名、カルボキシメチルセルロースナトリウム(以下CMCNaとも記載))0.10gを添加し、24時間以上常温で撹拌し溶解させ、CMCNa0.1質量%の水分散媒を調製した。
蒸留水100mLにF10MC(日本製紙社製、商品名、カルボキシメチルセルロースナトリウム)2.0gを添加し、24時間以上常温で撹拌し溶解させ、CMCNa2.0質量%の水溶液を調製した。
バイアル瓶にカーボンナノチューブを6.0mg秤量し、前記水分散媒6.0gを添加した。測定前処理に超音波ホモジナイザー(マイクロテック・ニチオン社製、「SmurtNR-50」)を用いた。チップの劣化がないことを確認し、チップが処理サンプル液面から10mm以上つかるように調整した。TIME SET(照射時間)を40秒、POW SETを50%、START POWを50%(出力50%)とし、出力電力が一定であるオートパワー運転による超音波照射により均一化させカーボンナノチューブ水分散液を作製した。
前記カーボンナノチューブ水分散液を用い、カーボンナノチューブの1μm以下の分散粒子の割合及びメディアン径(D50)の測定を、以下の方法に従い実施した。
LS 13 320 ユニバーサルリキッドモジュールの光学モデルをカーボンナノチューブ1.520、水1.333とそれぞれの屈折率に設定し、モジュ-ル洗浄終了後にCMCNa水溶液を約1.0mL充填する。
ポンプスピード50%の条件でオフセット測定、光軸調整、バックグラウンド測定を行った後、粒度分布計に、調製したカーボンナノチューブ水分散液を粒子によってビームの外側に散乱する光のパーセントを示す相対濃度が8~12%、もしくはPIDSが40%~55%になるように加え、粒度分布計付属装置により78W、2分間超音波照射を行い(測定前処理)、30秒循環し気泡を除いた後に粒度分布測定を行った。粒度(粒子径)に対する体積%のグラフを得て、1μm以下の分散粒子の存在割合及びメディアン径(D50)を求めた。
測定は、カーボンナノチューブ1試料につき、採取場所を変え3測定用サンプルを採取して粒度分布測定を行い、1μm以下の分散粒子の存在割合及びメディアン径(D50)をその平均値で求めた。
カーボンナノチューブのラマンスペクトルは、ラマン顕微鏡(堀場製作所社製、商品名「XploRA」)にカーボンナノチューブを設置し、532nmのレーザー波長を用いて測定を行った。得られたピークの内、スペクトルで1560cm-1以上~1600cm-1以下の範囲内で最大ピーク強度をG、1310cm-1以上~1350cm-1以下の範囲内で最大ピーク強度をDとした際のG/Dの比をカーボンナノチューブのG/D比とした。
CNTを2g精秤し、0.01Mのベンジルアミン/n-メチルピロリドン溶液50mlに浸漬させ、超音波照射機で1時間分散処理をした。その後遠心分離を行い、上澄みをフィルターでろ過した。得られたろ液中に残存するベンジルアミンを0.1Mの塩酸で電位差滴定することにより定量分析し、得られたCNT1g当たりの酸性基量(mmol/g)を特定した。
用いた溶媒は水分含有量とアミン含有量をそれぞれ測定した。
水分含有量とアミン含有量は、カールフィッシャー水分率計(京都電子工業製、商品名「MKC-610)とイオンクロマトグラフィーを用いて測定した。
NMP1:N-メチル-2-ピロリドン、SP値11.1、水分含有量0.1質量%、アミン含有量0質量%
NMP2:N-メチル-2-ピロリドン、SP値11.1、水分含有量1.2質量%、アミン含有量0質量%
PGMME:SP値10.4、水分含有量0.1質量%、アミン含有量0質量%。
上記実施例及び比較例で得られた導電性顔料ペースト及び合材ペーストの評価試験を行った。評価としてはDが不合格である。1つでも不合格の評価結果がある場合、導電性顔料ペーストの評価としては不合格である。評価結果は表1及び表2に示す。
得られた導電性顔料ペーストをJIS K-5600-2-5の分散度試験に準じ、ツブゲージを用いて下記基準により分散性を評価した。
A:顔料が10μm未満で分散されている。分散性は非常に良好である。
B:顔料が10μm以上、かつ20μm未満で分散されている。分散性はやや良好である。
C:顔料が20μm以上で分散されているが、目視で凝集物は確認できない。分散性はやや劣る。
D:目視で凝集物が確認される。分散性は非常に劣る。
得られた合材ペーストをコーン&プレート型粘度計(HAAKE社製、商品名「Mars2」、直径35mm、2°傾斜のコーン&プレート)を用い、シアーレート2.0sec-1で粘度を測定し、下記基準により評価した。
A:粘度が、10Pa・s未満である。
B:粘度が、10Pa・s以上、かつ20Pa・s未満である。
C:粘度が、20Pa・s以上、かつ50Pa・s未満である。
D:粘度が、50Pa・s以上である。
得られた合材ペーストを50℃の温度で2週間貯蔵を行い、初期粘度と貯蔵後の粘度の比較を行なった。粘度は、コーン&プレート型粘度計(HAAKE社製、商品名「Mars2」、直径35mm、2°傾斜のコーン&プレート)を用い、せん断速度2.0s-1で測定し、下記式により粘度上昇率を求め、下記の基準により貯蔵安定性を評価した。
粘度上昇率(%)=貯蔵後粘度(mPa・s)/初期粘度(mPa・s)×100-100
S:貯蔵後の粘度上昇率(%)が、10%未満である。
A:貯蔵後の粘度上昇率(%)が、10%以上、かつ20%未満である。
B:貯蔵後の粘度上昇率(%)が、20%以上、かつ50%未満である。
C:貯蔵後の粘度上昇率(%)が、50%以上、かつ200%未満である。
D:貯蔵後の粘度上昇率(%)が、200%以上(又はゲル化して測定不可)である。
実施例1A、7A、8A、及び9Aで得られた導電性顔料ペーストに関して、さらに体積抵抗率の測定を行った。体積抵抗率の測定では、バインダーとしてポリフッ化ビニリデンの5質量%溶液(クレハ社製、商品名「KFポリマーW#7300」、溶媒:N-メチル-2-ピロリドン)を使用した。
得られた導電性顔料ペーストの導電性顔料(B)の質量と、導電性顔料ペーストの顔料分散樹脂(A)固形分及びKFポリマーW#7300固形分を合計した質量との比が5:100となるように、導電性顔料ペーストとKFポリマーW#7300溶液を量り取り、超音波ホモジナイザーで2分間混合して測定用試料を得た。
ガラス板(2mm×100mm×150mm)上に測定用試料をドクターブレード法にて塗工して、80℃60分で加熱乾燥し、ガラス板上に塗工膜を形成した。得られた塗工膜について膜厚を測定した後、ASPプローブ(三菱化学アナリテック社製、商品名「MCP-TP03P」)を用いて、抵抗率計(三菱化学アナリテック社製、商品名「Loresta-GP MCP-T610」)で抵抗値を測定し、得られた抵抗値に抵抗率補正係数(RCF)4.532及び塗工膜の膜厚を乗じて体積抵抗率を算出した。体積抵抗率は下記基準により評価した。
A:体積抵抗率が、7Ω・cm未満であり、導電性は良好である。
B:体積抵抗率が、7Ω・cm以上、かつ15Ω・cm未満であり、導電性は普通である。
D:体積抵抗率が、15Ω・cm以上であり、導電性は劣る。
評価結果として、実施例1A及び7Aで得られた導電性顔料ペーストは「A」であり、実施例8A及び9Aで得られた導電性顔料ペーストは「B」であった。
応用例1~20
実施例1B~20Bで得られた合材ペーストを、平均厚み15μmの長尺状アルミニウム箔(正極集電体)の両面に、片面あたりの目付量が10mg/cm2(固形分基準)となるようにローラコート法で帯状に塗布して乾燥(乾燥温度180°C、10分間)することにより、正極層を形成した。この正極集電体に担持された正極活物質層(正極電極層)をロールプレス機により圧延して、性状を調整した。
得られた電極層は残存溶媒量が1%未満であり、仕上がり性などが良好な電極層であった。
Claims (16)
- 顔料分散樹脂(A)、導電性顔料(B)、溶媒(C)、フッ素樹脂(D)、及び高極性低分子量成分(E)を含有する導電性顔料ペーストであって、
顔料分散樹脂(A)が、アミド基、イミド基、水酸基、カルボキシル基、スルホン酸基、リン酸基、シラノール基、シアノ基、ピロリドン基からなる群より選ばれる少なくとも一種の極性官能基を有し、かつ顔料分散樹脂(A)の極性官能基濃度が0.3mmol/g以上23mmol/g以下であり、
導電性顔料(B)が、カーボンナノチューブ(B1)を含有し、
高極性低分子量成分(E)が、重量平均分子量1,000未満のアミン化合物(E1)を含有し、
前記アミン化合物(E1)は、1級の芳香族アミン化合物であり、
前記カーボンナノチューブ(B1)の酸性基量が、0.01mmol/g以上0.5mmol/g以下である、
導電性顔料ペースト。 - 顔料分散樹脂(A)、導電性顔料(B)、溶媒(C)、フッ素樹脂(D)、及び高極性低分子量成分(E)を含有する導電性顔料ペーストであって、
顔料分散樹脂(A)が、アミド基、イミド基、水酸基、カルボキシル基、スルホン酸基、リン酸基、シラノール基、シアノ基、ピロリドン基からなる群より選ばれる少なくとも一種の極性官能基を有し、かつ顔料分散樹脂(A)の極性官能基濃度が0.3mmol/g以上23mmol/g以下であり、
導電性顔料(B)が、カーボンナノチューブ(B1)を含有し、
高極性低分子量成分(E)が、重量平均分子量1,000未満のアミン化合物(E1)を含有し、
前記導電性顔料ペーストは、一般式(1)で表されるトリアジン誘導体を含有しておらず、
前記導電性顔料ペーストは、一般式(2)で表されるトリアジン誘導体を含有しておらず、
前記導電性顔料ペーストは、下記トリアジン誘導体BA~BDを含有しておらず、
導電性顔料ペースト。 - 顔料分散樹脂(A)、導電性顔料(B)、溶媒(C)、フッ素樹脂(D)、及び高極性低分子量成分(E)を含有する導電性顔料ペーストであって、
顔料分散樹脂(A)が、アミド基、イミド基、水酸基、カルボキシル基、スルホン酸基、リン酸基、シラノール基、シアノ基からなる群より選ばれる少なくとも一種の極性官能基を有し、かつ顔料分散樹脂(A)の極性官能基濃度が0.3mmol/g以上23mmol/g以下であり、
導電性顔料(B)が、カーボンナノチューブ(B1)を含有し、
高極性低分子量成分(E)が、重量平均分子量1,000未満のアミン化合物(E1)を含有し、
前記導電性顔料ペーストは、一般式(1)で表されるトリアジン誘導体を含有しておらず、
前記導電性顔料ペーストは、一般式(2)で表されるトリアジン誘導体を含有しておらず、
前記導電性顔料ペーストは、下記トリアジン誘導体BA~BDを含有していない、
- アミン化合物(E1)の含有量が、導電性顔料(B)の固形分100質量%を基準として、12質量%以上500質量%以下である、請求項1又は3に記載の導電性顔料ペースト。
- カーボンナノチューブ(B1)の酸性基量が、0.01mmol/g以上0.5mmol/g以下である、請求項2又は3に記載の導電性顔料ペースト。
- カーボンナノチューブ(B1)の体積換算のメディアン径(D50)が、10μm以上250μm以下である、請求項1~3のいずれか1項に記載の導電性顔料ペースト。
- カーボンナノチューブ(B1)のBET比表面積が、100m2/g以上800m2/g以下であり、
カーボンナノチューブ(B1)のラマンスペクトルにおいて、1560cm-1以上1600cm-1以下の範囲内での最大ピーク強度をG、1310cm-1以上1350cm-1以下の範囲内での最大ピーク強度をDとした際のG/D比が0.1以上5.0以下である、請求項1~3のいずれか1項に記載の導電性顔料ペースト。 - 溶媒(C)の水分含有量が1質量%以下であり、かつアミン化合物含有量が1質量%以下である、請求項1~3のいずれか1項に記載の導電性顔料ペースト。
- アミン化合物(E1)のアミン価が、105mgKOH/g以上1,000mgKOH/g以下である、請求項1~3のいずれか1項に記載の導電性顔料ペースト。
- 溶媒(C)が、N-メチル-2-ピロリドンである、請求項1~3のいずれか1項に記載の導電性顔料ペースト。
- 導電性顔料(B)が、さらにアセチレンブラックを含有する、請求項1~3のいずれか1項に記載の導電性顔料ペースト。
- 請求項1~3のいずれか1項に記載の導電性顔料ペーストと電極活物質(F)を配合してなる合材ペースト。
- 顔料分散樹脂(A)、導電性顔料(B)、溶媒(C)、フッ素樹脂(D)、高極性低分子量成分(E)及び電極活物質(F)を含有する合材ペーストであって、
顔料分散樹脂(A)が、アミド基、イミド基、水酸基、カルボキシル基、スルホン酸基、リン酸基、シラノール基、シアノ基、ピロリドン基からなる群より選ばれる少なくとも一種の極性官能基を有し、かつ顔料分散樹脂(A)の極性官能基濃度が0.3mmol/g以上23mmol/g以下であり、
導電性顔料(B)が、カーボンナノチューブ(B1)を含有し、
高極性低分子量成分(E)が、重量平均分子量1,000未満のアミン化合物(E1)を含有し、
前記アミン化合物(E1)は、1級の芳香族アミン化合物であり、
前記カーボンナノチューブ(B1)の酸性基量が、0.01mmol/g以上0.5mmol/g以下である、
合材ペースト。 - 顔料分散樹脂(A)、導電性顔料(B)、溶媒(C)、フッ素樹脂(D)、高極性低分子量成分(E)及び電極活物質(F)を含有する合材ペーストであって、
顔料分散樹脂(A)が、アミド基、イミド基、水酸基、カルボキシル基、スルホン酸基、リン酸基、シラノール基、シアノ基、ピロリドン基からなる群より選ばれる少なくとも一種の極性官能基を有し、かつ顔料分散樹脂(A)の極性官能基濃度が0.3mmol/g以上23mmol/g以下であり、
導電性顔料(B)が、カーボンナノチューブ(B1)を含有し、
高極性低分子量成分(E)が、重量平均分子量1,000未満のアミン化合物(E1)を含有し、
前記合材ペーストは、一般式(1)で表されるトリアジン誘導体を含有しておらず、
前記合材ペーストは、一般式(2)で表されるトリアジン誘導体を含有しておらず、
前記合材ペーストは、下記トリアジン誘導体BA~BDを含有しておらず、
合材ペースト。 - 顔料分散樹脂(A)、導電性顔料(B)、溶媒(C)、フッ素樹脂(D)、高極性低分子量成分(E)及び電極活物質(F)を含有する合材ペーストであって、
顔料分散樹脂(A)が、アミド基、イミド基、水酸基、カルボキシル基、スルホン酸基、リン酸基、シラノール基、シアノ基からなる群より選ばれる少なくとも一種の極性官能基を有し、かつ顔料分散樹脂(A)の極性官能基濃度が0.3mmol/g以上23mmol/g以下であり、
導電性顔料(B)が、カーボンナノチューブ(B1)を含有し、
高極性低分子量成分(E)が、重量平均分子量1,000未満のアミン化合物(E1)を含有し、
前記合材ペーストは、一般式(1)で表されるトリアジン誘導体を含有しておらず、
前記合材ペーストは、一般式(2)で表されるトリアジン誘導体を含有しておらず、
前記合材ペーストは、下記トリアジン誘導体BA~BDを含有していない、
- 請求項13~15のいずれか1項に記載の合材ペーストを用いて得られるリチウムイオン電池用電極。
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