JP2016169267A - カーボンブラック分散液およびカーボンブラック複合樹脂 - Google Patents

カーボンブラック分散液およびカーボンブラック複合樹脂 Download PDF

Info

Publication number
JP2016169267A
JP2016169267A JP2015048784A JP2015048784A JP2016169267A JP 2016169267 A JP2016169267 A JP 2016169267A JP 2015048784 A JP2015048784 A JP 2015048784A JP 2015048784 A JP2015048784 A JP 2015048784A JP 2016169267 A JP2016169267 A JP 2016169267A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
carbon black
less
dispersant
composite resin
dispersion
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Granted
Application number
JP2015048784A
Other languages
English (en)
Other versions
JP6509592B2 (ja
Inventor
篤司 平石
Tokuji Hiraishi
篤司 平石
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Kao Corp
Original Assignee
Kao Corp
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Kao Corp filed Critical Kao Corp
Priority to JP2015048784A priority Critical patent/JP6509592B2/ja
Publication of JP2016169267A publication Critical patent/JP2016169267A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP6509592B2 publication Critical patent/JP6509592B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Landscapes

  • Addition Polymer Or Copolymer, Post-Treatments, Or Chemical Modifications (AREA)
  • Emulsifying, Dispersing, Foam-Producing Or Wetting Agents (AREA)
  • Processes Of Treating Macromolecular Substances (AREA)
  • Compositions Of Macromolecular Compounds (AREA)

Abstract

【課題】平均一次粒子径が30nm以下の微細なカーボンブラックの分散性及び分散安定性に優れるカーボンブラック分散液を提供する。さらに、平均一次粒子径が30nm以下の微細なカーボンブラックの分散状態が良好で、導電性や黒色度等の性能に優れるカーボンブラック複合樹脂を提供する。【解決手段】本発明は、カーボンブラックと、分散剤と、水性媒体とを含み、前記カーボンブラックの平均一次粒子径が30nm以下であり、前記分散剤が、分岐状α−オレフィンに由来する構成単位(a)と不飽和二塩基酸及びその無水物から選ばれる少なくとも1種の化合物に由来する構成単位(b)とを含有し、少なくとも一部が下記式(I)で表される化合物によって中和されている共重合体を含む、カーボンブラック分散液に関する。【選択図】なし

Description

本発明は、カーボンブラック分散液、カーボンブラック複合樹脂、およびカーボンブラック用分散剤に関する。
カーボンブラックはほぼ炭素のみで構成された微粒子であり、各種樹脂組成物中に種々の目的で広く使用されている。カーボンブラックは、例えば、導電性、吸光性の特長から、電池や導電樹脂の導電材料、インクや塗料の着色材料として用いられている。また、硬度等の物理物性の特長から、樹脂の強度改善や耐摩耗性の向上を目的としたフィラーとしても用いられている。
このようなカーボンブラックを各種樹脂組成物に分散させたカーボンブラック複合樹脂は、直接樹脂にカーボンブラックを練り込む方法や、カーボンブラックの分散液と樹脂エマルションとを均一混合し凝固剤で沈殿させる方法等によって得られる。
例えば、特許文献1には、カーボンブラックの表面を酸化剤で処理し表面酸性基を付与することで得られる、分散性に優れたカーボンブラック分散液、及び、該カーボンブラック分散液を用いて得られるカーボンブラック複合樹脂が提案されている。特許文献2には、アクリル系樹脂とカーボンブラックとを、溶剤を添加しメディアミルにて混合分散した後、ゴムに混合し脱溶剤することにより得られるカーボンブラック複合樹脂が提案されている。
特開2011−16874号公報 特開2002−338800号公報
しかしながら、特許文献1では、酸化剤を必要とするため、処理コストや処理廃液の問題があり、表面が処理されていないカーボンブラックでも使用できることが望まれる。特許文献2では、脱溶剤工程を必要とするため、設備コストやランニングコストがアップする上、残留する溶媒や塩がカーボンブラック複合樹脂の性能を低下させることがある。
さらに近年では、従来以上のカーボンブラック複合樹脂の導電効果、黒色度等の性能を実現するために、平均一次粒子径が30nm以下の微細なカーボンブラックが使用されるようになってきている。しかし、微細なカーボンブラックは表面積が大きいために、分散液にした際の分散安定性が低下する傾向にある。分散性を向上させるために分散剤を多量に使用すると、カーボンブラックと樹脂との共沈性が低下し、性能が良好なカーボンブラック複合樹脂が得られなくなる。
本発明は、平均一次粒子径が30nm以下の微細なカーボンブラックの分散性、分散安定性及び樹脂との共沈性に優れるカーボンブラック分散液を提供する。さらに、本発明は、平均一次粒子径が30nm以下の微細なカーボンブラックの分散状態が良好で、導電性や黒色度等の性能に優れるカーボンブラック複合樹脂を提供する。さらに、本発明は、前記樹脂との共沈性等に優れるカーボンブラック分散液が得られる、平均一次粒子径が30nm以下のカーボンブラックを分散するために用いる分散剤を提供する。
本発明者らは、上記の従来技術における課題を解決するべく鋭意検討を重ねた結果、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、カーボンブラックと、分散剤と、水性媒体とを含み、前記カーボンブラックの平均一次粒子径が30nm以下であり、前記分散剤が下記共重合体Aを含む、カーボンブラック分散液に関する。
共重合体A:分岐状α−オレフィンに由来する構成単位(a)と不飽和二塩基酸及びその無水物から選ばれる少なくとも1種の化合物に由来する構成単位(b)とを含有し、前記構成単位(b)の少なくとも一部が下記式(I)で表される化合物によって中和されている共重合体
[式(I)において、R1、R2及びR3は同一又は異なり、水素原子、及び他の元素を含んでよい炭素数1以上4以下のアルキル基から選ばれる少なくとも1種である。]
本発明は、下記工程(1)〜(3)を含む製造方法により得られるカーボンブラック複合樹脂に関する。
(1)本発明のカーボンブラック分散液と水性樹脂エマルションとを混合して混合液を得る工程。
(2)前記混合液に酸を添加し、カーボンブラックと樹脂との共沈物を生成する工程。
(3)共沈物を乾燥する工程。
本発明は、前記共重合体Aを含有する分散剤であって、
平均一次粒子径が30nm以下のカーボンブラックを水性媒体中で分散するために用いる分散剤に関する。
本発明のカーボンブラック分散液は、平均一次粒子径が30nm以下の微細なカーボンブラックの分散性、分散安定性及び樹脂との共沈性を向上できるという効果を奏しうる。さらに、本発明のカーボンブラック複合樹脂は、平均一次粒子径が30nm以下の微細なカーボンブラックの分散状態が良好で、導電性や黒色度等の性能に優れるという効果を奏しうる。さらに、本発明のカーボンブラック分散剤は、平均一次粒子径が30nm以下のカーボンブラック樹脂との共沈性等に優れるカーボンブラック分散液、及び、性能に優れたカーボンブラック複合樹脂を実現できるという効果を奏しうる。
本発明者は、分散剤として、構成単位(a)と構成単位(b)とを含有し、少なくとも一部が特定の中和剤によって中和された共重合体を用いることにより、平均一次粒子径が30nm以下の微細なカーボンブラックの分散性、分散安定性及び樹脂との共沈性に優れたカーボンブラック分散液(以下、単に「分散液」ともいう)を実現できることを見出した。さらに本発明者は、分散剤として、構成単位(a)と構成単位(b)とを含有し、少なくとも一部が特定の中和剤によって中和された共重合体を用いることにより、カーボンブラック複合樹脂(以下、単に「複合樹脂」ともいう)中において微細なカーボンブラックの分散状態を良好なものとすることができ、さらに、カーボンブラック複合樹脂の導電性や黒色度等の性能を向上できることを見出した。
本開示の分散液は、一態様において、カーボンブラックと、分散剤と、水性媒体とを含み、前記カーボンブラックの平均一次粒子径が30nm以下であり、前記分散剤が下記共重合体Aを含む。
共重合体A:分岐状α−オレフィンに由来する構成単位(a)と不飽和二塩基酸及びその無水物から選ばれる少なくとも1種の化合物に由来する構成単位(b)とを含有し、前記構成単位(b)の少なくとも一部が下記式(I)で表される化合物によって中和されている共重合体
[式(I)において、R1、R2及びR3は同一又は異なり、水素原子、及び他の元素を含んでよい炭素数1以上4以下のアルキル基から選ばれる少なくとも1種である。]
[カーボンブラック]
本開示におけるカーボンブラックの平均一次粒子径は、複合樹脂の性能向上の観点から、30nm以下であり、好ましくは25nm以下であり、そして、分散性の観点から、好ましくは10nm以上、より好ましくは15nm以上である。より具体的には、好ましくは10nm以上30nm以下であり、より好ましくは15nm以上25nm以下である。平均一次粒子径の算出方法は、後述する実施例に記載の通りである。
本開示におけるカーボンブラックとしては、分散性及び複合樹脂の性能向上の観点から、ファーネスブラック及びアセチレンブラックから選ばれる少なくとも1種が好ましい。
本開示におけるカーボンブラックのBET比表面積は、分散性の観点から、好ましくは100m2/g以上500m2/g以下、より好ましくは120m2/g以上400m2/g以下、さらに好ましくは140m2/g以上300m2/g以下である。本開示において、カーボンブラックのBET比表面積は、日本工業規格(JIS)Z8830の窒素吸着法により得られる。
本開示におけるカーボンブラックのpHは、生産性及び本発明の効果を発現させる観点から、5以上が好ましく、6以上がより好ましく、7以上がさらに好ましく、そして、複合樹脂の性能向上の観点から、10以下が好ましく、9以下がより好ましく、8以下がさらに好ましい。本開示において、カーボンブラックのpHは、以下の測定方法により得られる。まず、カーボンブラック1〜5gを精秤し、蒸留水100mLを添加し、密閉したまま室温で24時間撹拌を続け、懸濁液を得る。そして、懸濁液をガラス電極pH計で測定し、カーボンブラックのpHを得る。
本開示におけるカーボンブラックの表面全酸性基量は、生産性及び本発明の効果を発現させる観点から、3μeq/m2未満が好ましく、2μeq/m2未満がより好ましく、1μeq/m2未満がさらに好ましい。本開示において、カーボンブラックの表面全酸性基量は、以下の方法により得られる。まず、カーボンブラック1〜5gを精秤し、0.05M水酸化ナトリウム水溶液100mLを添加し、密閉したまま室温で96時間撹拌を続け、懸濁液を得る。そして、得られた懸濁液を0.1μmメンブランフィルターでろ過し、得られたろ液20mLを0.05M塩酸50mLで滴定し、等量点となる滴定量からカーボンブラック1gあたりの酸性基量を算出する。この値を前記BET比表面積で除することで、前記表面全酸性基量が求められる。
本開示の分散液に含まれるカーボンブラックの含有量は、生産性及び複合樹脂の性能向上の観点から、好ましくは1質量%以上、より好ましくは2質量%以上、さらに好ましくは5質量%以上、よりさらに好ましくは10質量%以上であり、そして、同様の観点から、好ましくは50質量%以下、より好ましくは40質量%以下、さらに好ましくは30質量%以下である。
[分散剤]
本開示における分散剤は、下記共重合体Aを含む。本開示の分散剤は、平均一次粒子径が30nm以下のカーボンブラックを水性媒体中で分散するために用いられる。
共重合体A:分岐状α−オレフィン(以下、「モノマー(a)」ともいう)に由来する構成単位(a)と不飽和二塩基酸及びその無水物から選ばれる少なくとも1種の化合物(以下、「モノマー(b)」ともいう)に由来する構成単位(b)とを含有し、少なくとも一部が下記式(I)で表される化合物によって中和されている共重合体
[式(I)において、R1、R2及びR3は同一又は異なり、水素原子、及び他の元素を含んでよい炭素数1以上4以下のアルキル基から選ばれる少なくとも1種である。]
前記共重合体Aを構成する構成単位(a)及び(b)は、好ましくはラジカル重合性モノマー由来の構成単位である。
前記構成単位(a)及び前記構成単位(b)の配列は、交互、ランダム、ブロック、グラフトのいずれであってもよいが、製造容易性及び分散性の観点から、交互が好ましい。
本開示において、分岐状α−オレフィンとは、下記式(II)で表される化合物である。共重合体Aにおいて、この分岐状α−オレフィンに由来する構成単位は、カーボンブラック表面への吸着基として作用すると考えられる。
[式(II)において、R4は水素原子及びアルキル基から選ばれる少なくとも1種、R5はアルキル基を示し、R4が水素原子の場合、R5は分岐鎖状のアルキル基であり、R4とR5との炭素数の合計は、好ましくは2以上30以下である。]
4は、分散性、複合樹脂の性能向上及び共重合体Aの製造容易性の観点から、好ましくは水素原子及びメチル基から選ばれる1種以上、より好ましくはメチル基である。
5の炭素数は、分散性及び複合樹脂の性能向上の観点から、1以上、好ましくは3以上であり、そして、好ましくは28以下、より好ましくは23以下、更に好ましくは17以下、更に好ましくは11以下、更に好ましくは7以下である。R5は、分散性及び複合樹脂の性能向上の観点から、好ましくは分岐鎖を有し、より好ましくはメチル分岐及びエチル分岐から選ばれる1種以上を有し、更に好ましくはメチル分岐を有する。R5が有するメチル分岐の数は、同様の観点から、好ましくは1以上であり、そして、好ましくは3以下、より好ましくは2以下であり、そして、更に好ましくは2である。メチル分岐を2つ有するR5の好適例としては、2,2−ジメチルプロピル基である。本開示において、メチル(エチル)分岐とは、分岐鎖状のアルキル基における分岐鎖がメチル基(エチル基)であることをいう。分散性、複合樹脂の性能向上及び共重合体Aの製造容易性の観点から、R4は、好ましくはメチル基であり、R5は、好ましくはメチル基及び2,2−ジメチルプロピル基から選ばれる1種以上、より好ましくは2,2−ジメチルプロピル基である。
前記モノマー(a)としては、分散性及び複合樹脂の性能向上の観点から、前記分岐状α−オレフィンであり、その炭素数は、4以上、好ましくは6以上であり、そして、好ましくは32以下、より好ましくは26以下、更に好ましくは20以下、更に好ましくは14以下、更に好ましくは10以下であり、そして、更により好ましくは8である。前記分岐状α−オレフィンとしては、2−メチルプロペン(以下「イソブチレン」ともいう)、3,3−ジメチル−1−ブテン、2−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、2,4−ジメチル−1−ペンテン、2,4,4−トリメチル−1−ペンテン(以下、「α−ジイソブチレン」ともいう)、2−エチル−1−ヘキセン等が挙げられ、分散性及び複合樹脂の性能向上の観点から、イソブチレン及びα−ジイソブチレンから選ばれる少なくとも1種が好ましく、α−ジイソブチレンがより好ましい。
本開示において、不飽和二塩基酸とは、分子内に炭素−炭素二重結合と2つの酸性基とを有する化合物である。前記モノマー(b)が不飽和二塩基酸の場合、モノマー(b)としては、分散性と複合樹脂の性能向上の観点から、好ましくはマレイン酸、フマル酸、及びイタコン酸から選ばれる少なくとも1種、より好ましくはマレイン酸及びフマル酸である。前記モノマー(b)が不飽和二塩基酸の無水物の場合、モノマー(b)としては、分散性と複合樹脂の性能向上の観点から、好ましくは無水マレイン酸及び無水イタコン酸から選ばれる少なくとも1種、より好ましくは無水マレイン酸である。前記モノマー(b)としては、分散性と複合樹脂の性能向上の観点から、更に好ましくはマレイン酸、フマル酸、及び無水マレイン酸から選ばれる少なくとも1種である。
共重合体Aにおいて、構成単位(a)と構成単位(b)とのモル比[(a)/(b)]は、分散性と複合樹脂の性能向上の観点から、好ましくは0.2以上、より好ましくは0.5以上、更に好ましくは0.8以上であり、そして、同様の観点から好ましくは5.0以下、より好ましくは2.0以下、更に好ましくは1.2以下である。
共重合体Aは、前記構成単位(a)及び前記構成単位(b)以外に、その他の構成単位(以下、「構成単位(c)」ともいう)をさらに含有する共重合体であってもよい。構成単位(c)は好ましくはラジカル重合性モノマー由来の構成単位である。
前記構成単位(c)を形成するモノマーとしては、(メタ)アクリル酸アルキルエステル類、不飽和一塩基酸類、ノニオン基含有モノマー類等が挙げられる。
前記(メタ)アクリル酸アルキルエステル類としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸イソステアリル、(メタ)アクリル酸ベヘニル等が挙げられる。
前記不飽和一塩基酸類としては、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸等が挙げられる。
前記ノニオン基含有モノマー類としては、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、及び下記式(III)で表される(メタ)アクリル酸ポリアルキレングリコールモノエステル等が挙げられる。
CH2=C(R6)COO(R7O)n8 (III)
式(III)中、R6は、水素原子及びメチル基から選ばれる少なくとも1種を示し、R7は、炭素数2又は3のアルカンジイル基を示し、R8は、水素原子及びメチル基から選ばれる少なくとも1種を示す。nは平均付加モル数を示し、1以上100以下であり、分散性の観点から、好ましくは1以上60以下である。
共重合体Aを構成する全構成単位中の構成単位(c)の構成モル比[構成単位(c)/全構成単位]は、0以上であり、そして、分散性及び複合樹脂の性能の観点から、0.5以下が好ましく、0.2以下がより好ましく、0.1以下がさらに好ましく、実質的に0であることが更により好ましい。
共重合体Aは、上述したように、前記式(I)で表される化合物によって中和されている共重合体である。
前記式(I)で表される化合物(以下、単に「中和剤N」ともいう)としては、アンモニア、モノメチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、モノエチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、プロピルアミン、ジプロピルアミン、イソプロピルアミン、ジイソプロピルアミン、ブチルアミン、ジブチルアミン、イソブチルアミン、ジイソブチルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、メチルジエタノールアミン、ジメチルエタノールアミン、ヒドロキシプロピルアミン、トリイソプロパノールアミン、ヒドロキシブチルアミン等が挙げられ、分散性及び複合樹脂の物性の観点から、アンモニア、トリメチルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、及びトリエタノールアミンから選ばれる少なくとも1種が好ましく、アンモニアがさらに好ましい。
共重合体Aにおける中和剤Nによる中和度は、共重合体Aの全酸性基量に対して、分散性及び複合樹脂の物性の観点から、好ましくは50モル%以上、より好ましくは60モル%以上、さらに好ましくは70モル%以上、さらに好ましくは80モル%以上、さらに好ましくは90モル%以上、さらに好ましくは実質的に100モル%であり、そして、100モル%以下であり、そして、さらにより好ましくは100モル%である。
本開示において、共重合体Aの酸性基とは、中和前の酸性基及び中和後の酸性基を包含する概念である。本開示において、不飽和二塩基酸の無水物由来の構成単位は、前記構成単位あたり2つの酸性基を有するとみなす。
本開示の分散剤を作製する際に、前記共重合体Aの全酸性基量に対して過剰に前記式(I)で表される化合物が存在する場合は、前記共重合体A中の全ての酸性基が中和されているとみなされるので、この場合の共重合体Aにおける中和剤Nによる中和度は実質的に100モル%である。
共重合体Aは、分散性及び複合樹脂の性能を損なわない程度に、中和剤N以外のアルカリ化合物(以下、「その他の中和剤」ともいう)で中和されていてもよい。
中和剤N以外のアルカリ化合物とは、水に添加した際にアルカリ性を示す化合物であって、前記式(I)で表される化合物以外の化合物である。該アルカリ化合物としては、アルカリ金属水酸化物、アルカリ土類金属水酸化物等が挙げられ、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化マグネシウム、及び水酸化カルシウムから選ばれる少なくとも1種が好ましい。
共重合体Aにおけるその他の中和剤による中和度は、分散性及び共沈性の観点から、共重合体Aの全酸性基量に対して、好ましくは50モル%未満、より好ましくは20モル%以下、さらに好ましくは15モル%以下、さらに好ましくは10モル%以下、さらに好ましくは実質的に0モル%である。
前記分散剤の形態は、共重合体Aそのものであっても、溶媒等を含んでいてもよく、中和剤Nの揮発を抑制する観点から、水性媒体に溶解させた状態が好ましい。分散剤の固形分としては、分散性及び複合樹脂の性能を効率よく発現させる観点から、1質量%以上が好ましく、5質量%以上がより好ましく、10質量%以上がさらに好ましく、そして、中和剤Nの揮発を抑制する観点から、60質量%以下が好ましく、50質量%以下がより好ましく、40質量%以下がさらに好ましい。分散剤の固形分の測定方法は、実施例に記載の通りである。
中和剤Nによって中和される前の共重合体(以下、「重合生成物」ともいう。)を合成する方法としては、ラジカル重合法が好ましく、以下の溶液重合法で行うことがより好ましい。
溶液重合法では、溶媒とモノマー混合物及び必要に応じて重合開始剤等の成分を含有する液を加熱及び攪拌しながら、前記液に重合開始剤及び必要に応じてモノマー等の混合物を滴下して重合する。
重合の際に使用される重合開始剤としては、公知のラジカル重合開始剤を用いることができ、例えば、アゾ系重合開始剤、ヒドロ過酸化物類、過酸化ジアルキル類、過酸化ジアシル類、ケトンぺルオキシド類、無機過酸化物類等が挙げられる。
重合開始剤の使用量は、全モノマー量を100モル%とした場合、好ましくは0.01モル%以上であり、そして、好ましくは5モル%以下、より好ましくは3モル%以下、さらに好ましくは1モル%以下である。
重合反応は、好ましくは窒素雰囲気下で行う。重合反応温度は、好ましくは30℃以上180℃以下である。重合反応時間は、好ましくは0.5時間以上20時間以下である。
重合の際には、さらに重合連鎖移動剤を用いてもよい。重合連鎖移動剤としては、オクチルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、t−ドデシルメルカプタン、n−テトラデシルメルカプタン、メルカプトエタノール、3−メルカプト−1,2−プロパンジオール、メルカプトプロピオン酸、メルカプトコハク酸等のメルカプタン類;チウラムジスルフィド類;不飽和ヘテロ環状化合物等が挙げられ、これらは、それぞれ単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
重合に使用される溶媒としては、水性媒体であってもよいし、水性媒体以外の媒体であってもよい。水性媒体以外の媒体としては、トルエン、キシレン等の芳香族;エタノール、2−プロパノール等のアルコール;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン;テトラヒドロフラン、ジエチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル;ヘキサン、シクロヘキサン、鉱物油等の脂肪族炭化水素等が挙げられる。重合においては、重合生成物の製造容易性の観点から、モノマー(a)である分岐状α−オレフィンを過剰に用いて溶媒として使用することがより好ましい。このような溶媒としては、好ましくは炭素数6以上10以下の分岐状α−オレフィン、より好ましくはα−ジイソブチレンである。溶媒の使用量は、モノマー全量100質量部に対し、好ましくは50質量部以上200質量部以下である。
重合に使用される溶媒が水性媒体ではない場合、重合後、溶媒置換や溶媒除去を行うと好ましい。また、水性媒体を用いた場合であっても、精製や媒体組成の変更を目的として溶媒置換や溶媒除去を行ってもよい。溶媒置換や溶媒除去の方法は、加熱、減圧等により溶媒を留去するか、重合後の溶液を共重合体の貧溶媒に滴下して沈殿を回収する方法が一般的である。
前記重合生成物の重量平均分子量は、分散性及び複合樹脂の性能向上の観点から、好ましくは2000以上、より好ましくは3000以上、さらに好ましくは5000以上、さらにより好ましくは8000以上であり、そして、同様の観点から、300000以下が好ましく、100000以下がより好ましく、70000以下がさらに好ましく、50000以下がさらに好ましく、30000以下がさらに好ましい。重量平均分子量の測定方法は、実施例に記載の通りである。
本開示において、分散剤として用いられる共重合体Aは、好ましくは前記重合生成物を中和剤Nによって中和する中和工程を経ることにより得られる。
前記中和工程で用いる前記中和剤Nがアンモニアの場合は、液体アンモニア、アンモニア水、およびアンモニアガスから選ばれる少なくとも1種を用いることができ、作業性の観点から、アンモニア水を使用することが好ましい。
前記中和工程において中和剤Nの使用量は、重合生成物中の全酸性基量に対して、分散性及び複合樹脂の性能向上の観点から、50モル%以上が好ましく、80モル%以上がより好ましく、100モル%以上がさらに好ましく、そして、同様の観点から、200モル%以下が好ましく、150モル%以下がより好ましく、120モル%以下がさらに好ましい。
共重合体Aの中和度は、前記中和工程において前記中和剤Nの使用量を、目的とする中和度に相当する量よりも過剰に添加したのち、余剰の中和剤Nを減圧や加熱で留去することにより、あるいは酸を加えて塩を析出させて系外に除去することにより、調整することができる。
中和工程における、その他の中和剤の使用量は、分散性及び共沈性(凝集性)の観点から、中和剤Nとその他の中和剤との合計量に対して、好ましくは33モル%未満、より好ましくは20モル%以下、さらに好ましくは15モル%以下、さらに好ましくは10モル%以下、さらに好ましくは実質的に0モル%である。
前記中和工程における中和方法は、製造の容易性の観点から、未中和の重合生成物及び水性媒体を含有する混合物を攪拌しながら、中和剤を加える方法が好ましく、滴下する方法がさらに好ましい。滴下する時間は、重合生成物の未中和物の凝集や反応槽への付着を抑制する観点から、0.5時間以上が好ましく、そして、効率よく製造できる観点から、3時間以下が好ましい。
前記中和工程における中和反応の温度は、中和反応を均一に進行させる観点及び中和反応速度向上の観点から、20℃以上が好ましく、40℃以上がより好ましく、そして、水等の溶媒の蒸発及び中和剤Nの揮発を抑制する観点から、90℃以下が好ましく、85℃以下がより好ましく、80℃以下がさらに好ましい。
本開示の分散液に含まれる共重合体Aの含有量は、分散性及び複合樹脂の性能向上の観点から、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上、さらに好ましくは0.5質量%以上、よりさらに好ましくは1質量%以上であり、そして、分散液の取り扱い性の観点から、好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下、さらに好ましくは3質量%以下である。
本開示の分散液に含まれるカーボンブラック100質量部に対する共重合体Aの含有量は、分散性及び複合樹脂の性能向上の観点から、好ましくは0.2質量部以上、より好ましくは1質量部以上、さらに好ましくは2質量部以上であり、そして、同様の観点から、好ましくは100質量部以下、より好ましくは20質量部以下、さらに好ましくは10質量部以下である。
[水性媒体]
本開示の分散液に含まれる水性媒体は、水に均一に混和する有機溶媒を含んでいてもよい。分散性と共沈性の観点から、水性媒体中の水の含有量は、好ましくは80質量%以上、より好ましくは90質量%以上、さらに好ましくは95質量%以上、より好ましくは実質的に100質量%であり、そして、100質量%以下であり、そして、さらにより好ましくは100質量%である。
水に均一に混和する前記有機溶媒としては、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、アセトン、2−ブタノン、テトラヒドロフラン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、エチレングリコール、ジエチレングリコール、グリセリン、N−メチルピロリドン、又は2−ピロリドン等が挙げられ、好ましくはエタノール、2−プロパノール、アセトン、2−ブタノン、及びN−メチルピロリドンから選ばれる少なくとも1種である。
本開示の分散液中に含まれる水性媒体の含有量は、分散性と共沈性の観点から、好ましくは50質量%以上、より好ましくは60質量%以上、さらに好ましくは70質量%以上、よりさらに好ましくは80質量%以上であり、そして、好ましくは99質量%以下、より好ましくは98質量%以下、さらに好ましくは95質量%以下である。
[凝集促進剤]
本開示の分散液は、必要に応じて、凝集促進剤を含有してもよい。凝集促進剤とは、カーボンブラック分散液の凝集作用を補うことが可能な物質である。
前記凝集促進剤としては、分散性及び凝集性の観点から、ポリカルボン酸化合物及びその塩が好ましく、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、及びイタコン酸から選ばれる1種または2種以上のモノマーを重合して得られる高分子化合物及びその塩がより好ましく、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、及びアクリル酸−マレイン酸コポリマーから選ばれる少なくとも1種及びその塩がさらに好ましい。
前記ポリカルボン酸化合物及びその塩の重量平均分子量は、凝集性(共沈性)の観点から、3000以上が好ましく、5000以上がより好ましく、10000以上がさらに好ましく、そして、作業性の観点から、100万以下が好ましく、50万がより好ましく、30万以下がさらに好ましい。ポリカルボン酸化合物及びその塩の重量平均分子量は、上述の重合生成物と同様の方法により測定できる。
前記ポリカルボン酸化合物は、一部または全ての酸性基が中和剤Nにより中和されていてもよく、前記重合生成物と混合して該重合生成物と同時に中和してもよいし、予め中和した状態でカーボンブラック分散液に混合してもよい。分散性または共沈性を損なわない程度に、その他の中和剤を用いて中和されてもよい。
本開示の分散液中の凝集促進剤の含有量は、分散性及び共沈性の観点から、共重合体A100質量部に対して、0質量部以上であり、そして、100質量部以下が好ましく、50質量部以下がより好ましく、20質量部以下がさらに好ましい。
[その他の成分]
本開示の分散液は、必要に応じて、カーボンブラック、分散剤、水性媒体、及び凝集促進剤以外のその他の成分を含有してもよい。その他の成分としては、カーボンブラック以外の無機フィラー、活物質、粘性調整剤、防腐剤等が挙げられる。
前記無機フィラーとしては、分散性及び複合樹脂の性能を損なわないものであればよく、シリカ、マイカ、金属酸化物、金属ハロゲン化物、前記カーボンブラック以外の炭素材料等が挙げられる。
前記活物質としては、コバルト、ニッケル、マンガン、鉄等を含む金属酸リチウム、酸化マンガン等が挙げられる。
[カーボンブラック分散液の製造方法]
本開示の分散液は、少なくとも、カーボンブラック、共重合体Aを含む分散剤、水性媒体を混合して分散する分散工程を経て製造される。
前記分散工程では、分散機を用いる。分散機としては、粉末状のカーボンブラックをストラクチャーと呼ばれる2次凝集構造まで解砕可能なせん断エネルギーを与えられる分散機であれば使用可能であり、具体的には、ロールミル、ニーダー、エクストルーダ等の混練機、ディスパー、ホモミキサー、ジェットミル、サンドミル、ビーズミル、高圧ホモジナイザー、超音波ホモジナイザー等が挙げられる。
必要に応じて添加される凝集促進剤は、前記分散工程前に添加してもよいが、分散性の観点から、分散工程の後に添加することが好ましい。
各成分の混合順序は、例えば、カーボンブラックと分散剤と水性媒体を一括して混合する方法、カーボンブラックと水性媒体の混練物に分散剤を徐々に添加する方法で、分散剤を水性媒体に混合したのちにカーボンブラックを添加する方法、分散剤と水性媒体の混合液をカーボンブラックに添加する方法等が挙げられる。
[カーボンブラック複合樹脂]
本開示の複合樹脂は、下記工程(1)〜(3)を含む製造方法により得られる。
(1)本開示の分散液と水性樹脂エマルションとを混合して混合液を得る工程。
(2)前記混合液に酸を添加し、カーボンブラックと樹脂との共沈物を生成する工程。
(3)共沈物を乾燥する工程。
前記工程(1)における混合方法としては、本開示の分散液と水性樹脂エマルションとを混合できる方法であれば公知の混合方法を用いることができる。水性樹脂エマルジョンにおける樹脂としては、アクリル系樹脂、ウレタン樹脂、SBR樹脂、天然樹脂等が挙げられる。
前記工程(2)では、前記工程(1)で得られる混合液に酸を添加することで、好ましくは混合液のpHを4以下にして、前記共沈物を生成する。
工程(3)における乾燥方法としては、前記共沈物を乾燥できれば公知の乾燥方法を用いることができる。
本開示の複合樹脂中に含まれるカーボンブラックの分散状態は、複合樹脂の性能向上の観点から、略均一又は均一であることが好ましい。カーボンブラックの分散状態については、上記の体積固有抵抗値のばらつきや、黒色度のばらつき(色むら)に基づいて判断することができる。
以下、実施例により本発明を説明する。まず、重量平均分子量、共重合比、固形分、及び平均一次粒子径の測定方法を以下に示す。
[重量平均分子量]
重合生成物の重量平均分子量は、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)により、下記条件で測定した。重量平均分子量は、予め作成した検量線に基づき算出した。検量線の作成には、下記の標準試料を用いた。
測定装置:HLC−8120GPC(東ソー社製)
カラム:TSK α−M(東ソー社製)×2本
カラム温度:40℃
検出器:RI
溶離液:H3PO4(60mmol/L)及びLiBr(50mmol/L)を加えたN,N−ジメチルホルムアミド溶液
溶離液流速:1.0mL/min
試料濃度:0.1質量%(固形分)
試料注入量:0.1mL
標準試料:単分散ポリスチレン(東ソー社製:分子量5.26×102、分子量1.02×105、分子量8.42×106;西尾工業社製:分子量4.0×103、分子量3.0×104、分子量9.0×105
[共重合比]
重合生成物を構成する構成単位(a)と構成単位(b)との共重合比は、1H−NMRの積分値より算出した。具体的には、まず、試料200mgを2mLの重クロロホルムに溶解させ、直径5mmのNMR用試料管に注入し、1H−NMR測定装置(アジレントテクノロジー社製「MR−400」)で測定した。そして、1H−NMRスペクトルのうち、構成単位(a)由来のピーク積分値と、構成単位(b)由来のピーク積分値とから、共重合比を求めた。
[固形分]
固形分の測定は以下の方法で行った。質量W3(g)のシャーレに試料:1gを採り、前記試料を含んだシャーレ全体の質量を測定し、W1(g)とした。シャーレ全体を、真空乾燥機で105℃24時間の条件で乾燥させ、さらにデシケータで30分間放冷した後、前記試料の不揮発分を含んだシャーレ全体の質量を測定し、W2(g)とした。次式より得られた値を固形分とした。
固形分(質量%)=100−(W1−W2)/(W1−W3)×100
[平均一次粒子径]
カーボンブラックの平均一次粒子径の測定は、カーボンブラックの粉体を、透過型電子顕微鏡を用いて5〜10万倍で撮影し、写真を拡大表示して、100個の粒子について粒子径を測定し、その平均値をカーボンブラックの平均一次粒子径として求めた。
カーボンブラック分散液の分散性及び分散安定性、並びに、導電性カーボンブラック複合樹脂及び着色用カーボンブラック複合樹脂の性能に関する評価については、以下の方法により行った。
[カーボンブラック分散液の分散性]
分散性の評価は、カーボンブラック分散液の分散粒径の値に基づいて行った。分散粒径の測定は、カーボンブラックの濃度が約0.05質量%になるようにイオン交換水で希釈し、Marvern Instruments社製Zetasizer Nanoを用い、[Material]としてRefractive Index 1.8、Absorption 10を入力し、[Dispersion]はWaterを選択し、指定の12mm角ガラスセルに注入することにより行った。分散粒径の値が小さいほど、分散性に優れる。
[カーボンブラック分散液の分散安定性]
調製直後のカーボンブラック分散液を容量50mLのガラス製サンプル瓶に30mL採取して、室温で1時間静置した。静置後の沈降物の有無及び分散液上層を目視で確認することにより以下のように評価した。
評価A:沈降物が確認されない。
評価B:沈降物が確認されるが、上層が不透明である。
評価C:沈降物が確認され、かつ、上層が透明である。
[導電性カーボンブラック複合樹脂の性能]
導電性カーボンブラック複合樹脂の性能は、共沈性、体積固有抵抗値、及び、カーボンブラックの分散状態に基づいて評価した。以下に各評価方法について説明する。
(1)共沈性(凝集性)
共沈性について、カーボンブラック分散液と水性樹脂エマルションとの混合液に酸を添加することで得られる共沈物及び上層(上澄み)を目視で観察することにより評価した。すなわち、各実施例において、カーボンブラック分散液と水性樹脂エマルションとの混合液にpHが3以下となるまで2Nの塩酸を加えた後、室温で1時間静置した液を観察し、以下の基準に基づき、共沈性を評価した。
評価A:上層が透明であり、沈降物の色が均一な黒色である。
評価B:上層が不透明であり、沈降物の色が均一な黒色である。
評価C:上層が不透明であり、灰色の沈降物が観察される。
(2)体積固有抵抗値
体積固有抵抗値の測定は以下のようにして行った。まず、回収した沈殿物をガラス板上にゴムべらで約1mmの厚さになるように塗布し、真空乾燥機で105℃で24時間乾燥し、測定用複合樹脂を得た。得られた測定用複合樹脂を試料とし、三菱アナリテック社製の「ロレスタGP MCP−T610」にASPプローブを接続し、マイクロメータによって測定した試料厚みを入力し、JIS K7194「導電性プラスチックの4探針法による低抵抗試験方法」に準じて、4端子4探針法によって10箇所の抵抗値の測定を行い、その平均値の常用対数値(単位:LogΩ・cm)を体積固有抵抗値とした。体積固有抵抗値が小さいほど、導電性に優れる。本実施例において、体積固有抵抗値(単位:LogΩ・cm)は、好ましくは4.8以下、より好ましくは3.6以下、更に好ましくは2.6以下、更に好ましくは2.5以下である。
(3)分散状態
複合樹脂中に含まれるカーボンブラックの分散状態については、上記体積固有抵抗値のばらつきに基づいて以下のように評価した。すなわち、前述した10箇所の体積固有抵抗値(単位:LogΩ・cm)が7.0を超える測定箇所の有無により、以下の基準で評価した。
評価A:7.0(LogΩ・cm)を超える測定箇所がない。
評価B:7.0(LogΩ・cm)を超える測定箇所が1以上ある。
[着色性カーボンブラック複合樹脂の性能]
着色性カーボンブラック複合樹脂の性能については、黒色度、及び、カーボンブラックの分散状態に基づいて評価した。以下、各評価方法について説明する。
(1)黒色度
黒色度の評価方法は以下のようにして行った。まず、回収した沈殿物をガラス板上にゴムべらで約1mmの厚さになるように塗布し、真空乾燥機で105℃で24時間乾燥し、測定用複合樹脂を得た。得られた測定用複合樹脂を試料とし、Technidyne社製の「Color Touch PC」を用いて10箇所のL*値の測定を行い、その平均値をL*aveとした。L*aveの値が小さいほど、黒色度に優れる。本実施例において、L*aveの値は、好ましくは23以下、より好ましくは21以下である。
(2)分散状態
複合樹脂中に含まれるカーボンブラックの分散状態については、複合樹脂表面のカーボンブラック由来の黒色の濃淡(色むら)の有無を目視で確認することにより次のように評価した。
評価A:複合樹脂の表面が均一な黒色であって濃淡(色むら)が確認されない場合、複合樹脂中のカーボンブラックの分散状態は均一と判断。
評価B:複合樹脂の表面が均一な黒色ではなく濃淡(色むら)が確認された場合、複合樹脂中のカーボンブラックの分散状態は不均一と判断。
次に、実施例及び比較例に用いた分散剤について説明する。
[製造例1:分散剤A1の製造]
攪拌機、温度計、還流冷却管、窒素導入管、滴下ロートを備えたガラス製反応容器内に、ジイソブチレン(丸善石油化学社製):621.8g及びルトナールA−50(BASF社製、ポリビニルエチルエーテル):3.1gを仕込んだ。反応容器内を窒素雰囲気とし、攪拌を開始した。反応容器内容物を105℃まで加熱し、これ以降、重合反応を完結させるまで、反応容器内容物の温度を105℃に保った。70℃に保温した溶融状態の無水マレイン酸(三井化学ポリウレタン社製):190.0g、及び、ジイソブチレン:23.1gにパーブチルO(日油社製、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート):10.3gを溶解させて得た開始剤溶液を、それぞれ別の滴下ロートから反応容器内に4時間かけて滴下した。滴下の終了から20分後に、ジイソブチレン:7.3gに溶解させたパーブチルO:1.2gを反応容器内に加え、さらに2時間40分熟成を行って重合反応を完結させ、重合生成物P1を含む溶液を得た。反応容器内にイオン交換水:800gを加え、ジイソブチレンに由来する構成単位(a)と無水マレイン酸に由来する構成単位(b)との重合生成物P1の沈殿物を析出させた。次いで、水蒸気蒸留によって、未反応のジイソブチレンの留去を行った。前記水蒸気蒸留は、常圧で反応容器を加熱し、反応容器内容物の温度が100℃に達し、ジイソブチレンの留出が無くなるまで行った。デカンテーションにより水を除去したのち、水で湿潤した重合生成物P1の沈殿物を105℃、100mmHgの減圧下で24時間乾燥させ、重合生成物P1を得た。得られた重合生成物P1の共重合比は、ジイソブチレン/無水マレイン酸=50モル%/50モル%であり、重合生成物P1の重量平均分子量は25000であった。
次に重合生成物P1:100gと水:100gとを反応容器に仕込み、撹拌しながら反応容器内容物を75℃とし、以下に示す中和工程を行った。中和反応を完結させるまで、反応容器内の液体の温度を75℃に保った。中和工程では、まず、25質量%のアンモニア水溶液(昭和電工社製):3.3gを反応容器内に加えて15分間保持した。続いて、25質量%のアンモニア水溶液:64.7gを反応容器内に1時間かけて滴下し、中和反応を完結させた。そして、過剰のアンモニアを揮散させるために、減圧度:−40cmHgの条件下で3時間保持した後、常圧に戻して室温まで冷却し、固形分が25質量%となるようにイオン交換水を加え、30分間保持してから攪拌を停止した。これにより、重合生成物P1をアンモニアで中和して得られる共重合体A1を25質量%含有する水溶液(分散剤A1)を得た。
[製造例2:分散剤A2の製造]
開始剤溶液として、ジイソブチレン:23.1gにパーブチルO:13.5gを溶解させて得た開始剤溶液を用いたこと以外は、上記製造例1と同様にして、ジイソブチレンに由来する構成単位(a)と無水マレイン酸に由来する構成単位(b)との重合生成物P2を得た。得られた重合生成物P2の共重合比は、ジイソブチレン/無水マレイン酸=50モル%/50モル%であり、重合生成物P2の重量平均分子量は12000であった。
続いて上記製造例1と同様の中和工程を行い、重合生成物P2をアンモニアで中和して得られる共重合体A2を25質量%含有する水溶液(分散剤A2)を得た。
[製造例3:分散剤A3の製造]
開始剤溶液として、ジイソブチレン:23.1gにパーブチルO:2.6gを溶解させて得た開始剤溶液を用いたこと以外は、上記製造例1と同様にして、ジイソブチレンに由来する構成単位(a)と無水マレイン酸に由来する構成単位(b)との重合生成物P3を得た。得られた重合生成物P3の共重合比は、ジイソブチレン/無水マレイン酸=50モル%/50モル%であり、重合生成物P3の重量平均分子量は97000であった。
続いて上記製造例1と同様の中和工程を行い、重合生成物P3をアンモニアで中和して得られる共重合体A3を25質量%含有する水溶液(分散剤A3)を得た。
[製造例4:分散剤A4の製造]
上記製造例1の重合生成物P1の代わりに、イソバン04(クラレ社製、イソブチレン−無水マレイン酸共重合物、重量平均分子量:55000〜65000)を用いたこと以外は、前記製造例1と同様にして、イソバン04をアンモニアで中和して得られる共重合体A4を25質量%含有する水溶液(分散剤A4)を得た。
[製造例5:分散剤A5の製造]
上記製造例1の重合生成物P1の代わりに、1−オクタデセンと無水マレイン酸との重合生成物(和光純薬工業社製、重量平均分子量:30000〜50000、共重合比:1−オクタデセン/無水マレイン酸=1:1)を用いたこと以外は、上記製造例1と同様にして、1−オクタデセンと無水マレイン酸との重合生成物をアンモニアで中和して得られる共重合体A5を25質量%含有する水溶液(分散剤A5)を得た。
[製造例6:分散剤A6の製造]
上記製造例1で得られた重合生成物P1:100gと水:100gとを反応容器に仕込み、撹拌しながら、反応容器内容物を75℃とし、以下に示す中和工程を行った。中和反応を完結させるまで、反応容器内の液体の温度を75℃に保った。まず、4Nの水酸化ナトリウム水溶液(和光純薬工業社製):249mLを反応容器内に1.5時間かけて滴下し、さらに3時間撹拌を続け、中和反応を完結させた。室温まで冷却し、固形分が25質量%となるようにイオン交換水を加え、30分間保持してから攪拌を停止した。これにより、重合生成物P1を水酸化ナトリウムで中和して得られる共重合体A6を25質量%含有する水溶液(分散剤A6)を得た。
[製造例7:分散剤A7の製造]
中和剤として、製造例6の4Nの水酸化ナトリウム水溶液に代えて、4Nの水酸化カリウム水溶液(和光純薬工業社製)を用いたこと以外は、上記製造例6に従い、重合生成物P1を水酸化カリウムで中和して得られる共重合体A7を25質量%含有する水溶液(分散剤A7)を得た。
[製造例8:水性樹脂エマルションの製造]
撹拌機、滴下槽及び温度計を具備した反応容器に、水:300gと、ラウリル硫酸アンモニウム:6gと、N−メチロールアクリルアミド:10gとを仕込み混合した。その後、反応容器内に窒素ガスを吹き込みながら、反応容器内容物を75℃に昇温して、スチレン:146g、メタクリル酸メチル:90g、アクリル酸:4g、及び2質量%過硫酸アンモニウム水溶液:25gの混合物を2時間かけて滴下した。次いで、85℃で2時間保持して重合を終了し、アンモニア水を加えてpH7.5に中和し、分散粒径:0.1μm、固形分濃度:40質量%のアクリル樹脂エマルションR1を得た。前記分散粒径は、カーボンブラック分散液の分散粒径と同様の測定方法による。
次に、実施例及び比較例のカーボンブラック分散液及びカーボンブラック複合樹脂について説明する。
(実施例1)
100mLのポリ広口ビン(ニッコー・ハンセン社製)内に、カーボンブラック(導電性カーボンブラック、電気化学工業社製、商品名“デンカブラックFX−35”、平均一次粒子径:23nm、BET比表面積:133m2/g、表面酸性基量:<0.1μeq/m2、pH:9):4g、分散剤A1:1.6g、及び水性媒体としてイオン交換水を全量で40gとなるように仕込み、さらに直径0.3mmのジルコニアビーズ(ニッカトー社製):80gを仕込んで、容器を密閉した後、ペイントシェーカー(浅田鉄工社製)で3時間分散し、ペーストを得た。得られたペーストから100メッシュのステンレス金網を用いてジルコニアビーズを除去することで、実施例1の分散液を得た。分散粒径は207nmであった。
実施例1の分散液:20gと製造例8で得られたアクリル樹脂エマルションR1:10gを50mLスクリュー管(マルエム社製)に入れ、マグネチックスターラーで撹拌しながら、実施例1の分散液とアクリル樹脂エマルションR1との混合液にpHが3以下となるまで2Nの塩酸を滴下した。滴下終了後に撹拌を停止し、1時間静置したところ、上層が透明となり、均一な黒色の沈降物(共沈物)が生成した。上層の液を除去し、下層の沈降物を回収して真空乾燥機で105℃24時間乾燥して実施例1の複合樹脂を得た。この複合樹脂の体積固有抵抗値は2.5(LogΩ・cm)であり、該抵抗値のばらつきはみられなかった。
(実施例2)
分散剤A1の代わりに分散剤A2を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、実施例2の分散液を得た。分散粒径は199nmであった。
実施例2の分散液と製造例8のアクリル樹脂エマルションR1との混合液を実施例1と同様にして作製し、該混合液にpHが3以下となるまで2Nの塩酸を滴下した。滴下終了後に撹拌を停止し、1時間静置したところ、上層が透明となり、均一な黒色の沈降物が生成した。上層の液を除去し、下層の沈降物を回収して真空乾燥機で105℃24時間乾燥して実施例2の複合樹脂を得た。この複合樹脂の体積固有抵抗は2.4(LogΩ・cm)であり、抵抗値のばらつきはみられなかった。
(実施例3)
分散剤A1の代わりに分散剤A3を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、実施例3の分散液を得た。分散粒径は231nmであった。
実施例3の分散液と製造例8のアクリル樹脂エマルションR1との混合液を実施例1と同様にして作製し、該混合液にpHが3以下となるまで2Nの塩酸を滴下した。滴下終了後に撹拌を停止し、1時間静置したところ、上層が透明となり、均一な黒色の沈降物が生成した。上層の液を除去し、下層の沈降物を回収して真空乾燥機で105℃24時間乾燥して実施例3の複合樹脂を得た。この複合樹脂の体積固有抵抗は2.8(LogΩ・cm)であり、抵抗値のばらつきはみられなかった。
(実施例4)
分散剤A1の代わりに分散剤A4を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、実施例4の分散液を得た。分散粒径は442nmであった、
実施例4の分散液と製造例8のアクリル樹脂エマルションR1との混合液を実施例1と同様にして作製し、該混合液にpHが3以下となるまで2Nの塩酸を滴下した。滴下終了後に撹拌を停止し、1時間静置したところ、上層は不透明のままであったが、均一な黒色の沈降物が生成した。上層の液を除去し、下層の沈降物を回収して真空乾燥機で105℃24時間乾燥して実施例4の複合樹脂を得た。この複合樹脂の体積固有抵抗は3.5(LogΩ・cm)であり、抵抗値のばらつきはみられなかった。
(実施例5)
実施例1の分散液:20gと凝集促進剤としてのポリ(アクリル酸)アンモニウム塩(和光純薬工業社製、分子量:25万)の1質量%水溶液:5gを50mLスクリュー管(マルエム社製)に入れ、マグネチックスターラーで30分間撹拌を継続し、実施例5の分散液を得た。分散粒径は253nmであった。
実施例5の分散液:20gと製造例8のアクリル樹脂エマルションR1:8gとを50mLスクリュー管(マルエム社製)に入れ、マグネチックスターラーで撹拌しながら、実施例5の分散液とアクリル樹脂エマルションR1との混合液にpHが3以下となるまで2Nの塩酸を滴下した。滴下終了後に撹拌を停止し、1時間静置したところ、上層が透明となり、均一な黒色の沈降物(共沈物)が生成した。上層の液を除去し、下層の沈降物を回収して真空乾燥機で105℃24時間乾燥して実施例5の複合樹脂を得た。この複合樹脂の体積固有抵抗は2.6(LogΩ・cm)であり、抵抗値のばらつきはみられなかった。
(実施例6)
「分散剤」として、アンモニアによる中和度が90モル%、水酸化ナトリウムによる中和度が10モル%となるように、分散剤A1と分散剤A6との混合物を用いたこと以外、実施例1と同様にして、実施例6の分散液を得た。分散粒径は215nmであった。
実施例6の分散液:20gと製造例8のアクリル樹脂エマルションR1:8gとを50mLスクリュー管(マルエム社製)に入れ、マグネチックスターラーで撹拌しながら、実施例6の分散液とアクリル樹脂エマルションR1との混合液にpHが3以下となるまで2Nの塩酸を滴下した。滴下終了後に撹拌を停止し、1時間静置したところ、上層が透明となり、均一な黒色の沈降物(共沈物)が生成した。上層の液を除去し、下層の沈降物を回収して真空乾燥機で105℃24時間乾燥して、実施例6の複合樹脂を得た。この複合樹脂の体積固有抵抗は2.6(LogΩ・cm)であり、抵抗値のばらつきはみられなかった。
(実施例7)
「分散剤」として、アンモニアによる中和度が70モル%、水酸化ナトリウムによる中和度が30モル%となるように、分散剤A1と分散剤A6との混合物を用いたこと以外、実施例1と同様にして、実施例7の分散液を得た。分散粒径は211nmであった。
実施例7の分散液:20gと製造例8のアクリル樹脂エマルションR1:8gとを50mLスクリュー管(マルエム社製)に入れ、マグネチックスターラーで撹拌しながら、実施例7の分散液とアクリル樹脂エマルションR1との混合液にpHが3以下となるまで2Nの塩酸を滴下した。滴下終了後に撹拌を停止し、1時間静置したところ、上層は不透明のままであったが、均一な黒色の沈降物(共沈物)が生成した。上層の液を除去し、下層の沈降物を回収して真空乾燥機で105℃24時間乾燥して、実施例7の複合樹脂を得た。この複合樹脂の体積固有抵抗は4.0(LogΩ・cm)であり、抵抗値のばらつきはみられなかった。
(比較例1)
分散剤A1の代わりに分散剤A5を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、比較例1の分散液を得た。比較例1の分散液は、分散粒径1120nmで分散性が悪く、1時間静置後は、上層に透明の水層があり底部にも沈降物のある分離した状態で、分散安定性も悪かった。そのため、複合樹脂は作製できなかった。
(比較例2)
分散剤A1の代わりに分散剤A6を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、比較例2の分散液を得た。分散粒径は210nmであった。
比較例2の分散液と製造例8のアクリル樹脂エマルションR1との混合液を実施例1と同様にして作製し、該混合液にpHが3以下となるまで2Nの塩酸を滴下した。滴下終了後に撹拌を停止し、1時間静置したところ、上層は不透明のままであり、灰色の沈降物が観察された。上層の液を除去し、下層の沈降物を回収して真空乾燥機で105℃24時間乾燥して比較例2の複合樹脂を得た。この複合樹脂の体積固有抵抗は6.0(LogΩ・cm)であり、抵抗値のばらつきがみられた。
(比較例3)
分散剤A1の代わりに分散剤A7を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、比較例3の分散液を得た。分散粒径は210nmであった。
比較例3の分散液と製造例8のアクリル樹脂エマルションとの混合液を実施例1と同様にして作製し、該混合液にpHが3以下となるまで2Nの塩酸を滴下した。滴下終了後に撹拌を停止し、1時間静置したところ、上層は不透明のままであり、灰色の沈降物が観察された。上層の液を除去し、下層の沈降物を回収して真空乾燥機で105℃24時間乾燥して比較例3の複合樹脂を得た。この複合樹脂の体積固有抵抗は6.4(LogΩ・cm)であり、抵抗値のばらつきがみられた。
(実施例8)
2Lステンレスビーカーに、ファーネスブラック(着色用カーボンブラック、Cabot社製、商品名“Monarch880”、平均一次粒子径16nm、BET比表面積220m2/g、表面酸性基量:0.4μeq/m2、pH:8.5):80gと、分散剤A1:64gと、及び水性媒体としてイオン交換水を全量で640gとなるように仕込み、ディスパーで予備分散した後、マイクロフルイダイザー(Microfluidics社製、高圧ホモジナイザー、商品名“M−110”)で200MPaの圧力で10パス分散処理した。
得られた液を孔径5ミクロンのシリンジフィルターを用いて全量ろ過し、イオン交換水で固形分を12質量%(カーボンブラック含有量として10質量%)に調整して、分散粒径146nmの実施例8の分散液を得た。分散粒径は146nmであった。
実施例8の分散液:2gとアクリル樹脂エマルションR1:25gを50mLスクリュー管(マルエム社製)に入れ、マグネチックスターラーで撹拌しながら、実施例8の分散液とアクリル樹脂エマルションR1との混合液を作製し、該混合液にpHが3以下となるまで2Nの塩酸を滴下した。滴下終了後に撹拌を停止し、1時間静置したところ、上層が透明となり、均一な黒色の沈降物が生成した。上層の液を除去し、下層の沈降物を回収して真空乾燥機で105℃24時間乾燥してカーボンブラック複合樹脂を得た。黒色度(L*値)21で、色むら(ばらつき)はみられなかった。
(比較例4)
分散剤A1の代わりに分散剤A6を用いたこと以外は、実施例8と同様にして、比較例4の分散液を得た。分散粒径は159nmであった。
比較例4の分散液と製造例8のアクリル樹脂エマルションR1との混合液を実施例8と同様にして作製し、該混合液にpHが3以下となるまで2Nの塩酸を滴下した。滴下終了後に撹拌を停止し、1時間静置したところ、上層は不透明のままであり、灰色の沈降物が観察された。上層の液を除去し、下層の沈降物を回収して真空乾燥機で105℃24時間乾燥して比較例4の複合樹脂を得た。黒色度(L*値)27で、色むら(ばらつき)がみられた。
(参考例1)
2Lステンレスビーカーに、ファーネスブラック(着色用カーボンブラック、Cabot社製「Blackpearls160」、平均一次粒子径:50nm、BET比表面積:35m2/g、表面酸性基量:0.4μeq/m2、pH:8.5):80gと分散剤A1:32g、及び水性媒体としてイオン交換水を全量で640gとなるように仕込み、ディスパーで予備分散した後、マイクロフルイダイザー(Microfluidics社製高圧ホモジナイザー「M−110」)で200MPaの圧力で10パス分散処理した。
得られた液を孔径5ミクロンのシリンジフィルターを用いて全量ろ過し、イオン交換水で固形分を11質量%(カーボンブラック含有量として10質量%)に調整して、参考例1の分散液を得た。分散粒径は120nmであった。
参考例1の分散液:2gと製造例8のアクリル樹脂エマルションR1:25gを50mLスクリュー管(マルエム社製)に入れ、マグネチックスターラーで撹拌しながら、pHが3以下となるまで2Nの塩酸を滴下した。滴下終了後に撹拌を停止し、1時間静置したところ、上層が透明となり、均一な黒色の沈降物が生成した。上層の液を除去し、下層の沈降物を回収して真空乾燥機で105℃24時間乾燥して参考例1の複合樹脂を得た。黒色度(L*値)24であり、色むら(ばらつき)はみられなかった。
(比較例5)
分散剤A1の代わりに分散剤A6を用いたこと以外は、参考例1と同様にして、比較例5の分散液を得た。分散粒径は121nmであった。
比較例5の分散液を参考例1と同様にpHが3以下となるまで2Nの塩酸を滴下した。滴下終了後に撹拌を停止し、1時間静置したところ、上層が透明となり、均一な黒色の沈降物が生成した。上層の液を除去し、下層の沈降物を回収して真空乾燥機で105℃24時間乾燥して比較例5の複合樹脂を得た。黒色度(L*値)24であり、色むら(ばらつき)はみられず、参考例1と同様の結果であった。
前記実施例1〜8、前記参考例1及び前記比較例1〜5の各評価結果を表1及び表2に示した。
表1及び表2に示す結果から、平均一次粒子径30nm以下のカーボンブラックの分散剤として、特定の分散剤を用いた実施例1〜8は、モノマー(a)が直鎖α−オレフィンである比較例1に比べて、カーボンブラック分散液の分散性及び分散安定性に優れ、優れた性能を有するカーボンブラック複合樹脂が得られた。さらに、実施例1〜8は、中和剤として式(I)で表される化合物以外のアルカリ化合物を用いた比較例2〜4に比べて、カーボンブラック複合樹脂の性能が優れていた。
式(I)で表される化合物による分散剤の中和度が異なる実施例1、6〜7、比較例2〜3を比較すると、式(I)で表される化合物による中和度が低くなるにつれ、複合樹脂の導電性が低下し、分散状態も悪くなっていた。よって、式(I)で表される化合物による中和度は、100モル%が好ましいことが分かった。
カーボンブラックの平均一次粒子径が30nm以下の実施例8は、カーボンブラックの平均一次粒子径が30nmを超える参考例1及び比較例5に比べて、複合樹脂の性能が優れていた。このことから、本開示における特定の分散剤は、平均一次粒子径が30nm以下のカーボンブラックの分散剤として有効であることが分かった。
本発明のカーボンブラック分散液は、分散性、分散安定性及び樹脂との共沈性に優れるため、本発明のカーボンブラック分散液を用いれば、導電性樹脂、着色樹脂等において、高い導電効果、黒色度等の性能を有するカーボンブラック複合樹脂を提供でき、これらの用途に適している。

Claims (13)

  1. カーボンブラックと、分散剤と、水性媒体とを含み、
    前記カーボンブラックの平均一次粒子径が30nm以下であり、
    前記分散剤が下記共重合体Aを含む、カーボンブラック分散液。
    共重合体A:分岐状α−オレフィンに由来する構成単位(a)と不飽和二塩基酸及びその無水物から選ばれる少なくとも1種の化合物に由来する構成単位(b)とを含有し、少なくとも一部が下記式(I)で表される化合物によって中和されている共重合体
    [式(I)において、R1、R2及びR3は同一又は異なり、水素原子、及び他の元素を含んでよい炭素数1以上4以下のアルキル基から選ばれる少なくとも1種である。]
  2. 前記式(I)で表される化合物による中和度は、共重合体Aの全酸性基量に対して、50モル%以上100モル%以下である請求項1記載のカーボンブラック分散液。
  3. 前記分岐状α-オレフィンが、2−メチルプロペン及び2,4,4−トリメチル−1−ペンテンから選ばれる少なくとも1種である、請求項1又は2に記載のカーボンブラック分
  4. 前記式(I)で表される化合物が、アンモニアである、請求項1から3のいずれかに記載のカーボンブラック分散液。
  5. 前記構成単位(b)が、マレイン酸、無水マレイン酸、及びフマル酸から選ばれる少なくとも1種の化合物由来の構成単位である、請求項1から4のいずれかに記載のカーボンブラック分散液。
  6. 前記カーボンブラックのBET比表面積が、100m2/g以上500m2/g以下である、請求項1から5のいずれかに記載のカーボンブラック分散液。
  7. 前記カーボンブラックのpHが、5以上10以下である、請求項1から6のいずれかに記載のカーボンブラック分散液。
  8. 前記カーボンブラックの表面全酸性基量が、3μeq/m2未満である、請求項1から7のいずれかに記載のカーボンブラック分散液。
  9. 前記水性媒体は、水と有機溶媒とを含み、前記水性媒体中の水の含有量は、80質量%以上100質量%以下である、請求項1から8のいずれかに記載のカーボンブラック分散液。
  10. 凝集促進剤をさらに含む、請求項1から9のいずれかに記載のカーボンブラック分散液。
  11. 下記工程(1)〜(3)を含む製造方法により得られるカーボンブラック複合樹脂。
    (1)請求項1から10のいずれかに記載のカーボンブラック分散液と水性樹脂エマルションとを混合して混合液を得る工程。
    (2)前記混合液に酸を添加し、カーボンブラックと樹脂との共沈物を生成する工程。
    (3)共沈物を乾燥する工程。
  12. 前記工程(2)は、酸を添加して混合液のpHを4以下にして、カーボンブラックと樹脂を共沈させる工程である、請求項11記載のカーボンブラック複合樹脂。
  13. 下記共重合体Aを含有する分散剤であって、
    平均一次粒子径が30nm以下のカーボンブラックを水性媒体中で分散するために用いる分散剤。
    共重合体A:分岐状α−オレフィンに由来する構成単位(a)と不飽和二塩基酸及びその無水物から選ばれる少なくとも1種の化合物に由来する構成単位(b)とを含有し、少なくとも一部が下記式(I)で表される化合物によって中和されている共重合体
    [式(I)において、R1、R2及びR3は同一又は異なり、水素原子、及び他の元素を含んでよい炭素数1以上4以下のアルキル基から選ばれる少なくとも1種である。]
JP2015048784A 2015-03-11 2015-03-11 カーボンブラック分散液およびカーボンブラック複合樹脂 Active JP6509592B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2015048784A JP6509592B2 (ja) 2015-03-11 2015-03-11 カーボンブラック分散液およびカーボンブラック複合樹脂

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2015048784A JP6509592B2 (ja) 2015-03-11 2015-03-11 カーボンブラック分散液およびカーボンブラック複合樹脂

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2016169267A true JP2016169267A (ja) 2016-09-23
JP6509592B2 JP6509592B2 (ja) 2019-05-08

Family

ID=56982080

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2015048784A Active JP6509592B2 (ja) 2015-03-11 2015-03-11 カーボンブラック分散液およびカーボンブラック複合樹脂

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP6509592B2 (ja)

Citations (5)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPS5540797A (en) * 1978-09-18 1980-03-22 Basf Ag Copolymer manufacture from maleic anhydride and alkene
JPS5689829A (en) * 1979-12-24 1981-07-21 Kao Corp Pigment dispersant for paint
JP2002179933A (ja) * 2000-09-28 2002-06-26 Sanyo Chem Ind Ltd 無機質粉末用分散剤
JP2011190400A (ja) * 2010-03-16 2011-09-29 Mitsubishi Chemicals Corp 水性顔料分散液及びインク組成物
JP2014070086A (ja) * 2012-09-27 2014-04-21 Kao Corp 重合体組成物の製造方法

Patent Citations (5)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPS5540797A (en) * 1978-09-18 1980-03-22 Basf Ag Copolymer manufacture from maleic anhydride and alkene
JPS5689829A (en) * 1979-12-24 1981-07-21 Kao Corp Pigment dispersant for paint
JP2002179933A (ja) * 2000-09-28 2002-06-26 Sanyo Chem Ind Ltd 無機質粉末用分散剤
JP2011190400A (ja) * 2010-03-16 2011-09-29 Mitsubishi Chemicals Corp 水性顔料分散液及びインク組成物
JP2014070086A (ja) * 2012-09-27 2014-04-21 Kao Corp 重合体組成物の製造方法

Also Published As

Publication number Publication date
JP6509592B2 (ja) 2019-05-08

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP6266341B2 (ja) 水性導電性ペースト
EP3348582B1 (en) Carbon nanotube dispersion liquid and manufacturing method thereof
JP5599076B2 (ja) ナノカーボン水系分散液及びナノカーボン分散樹脂組成物
JP2018534220A (ja) カーボンナノチューブ分散液およびその製造方法
JP2009024165A (ja) 顔料分散剤、その製造方法、およびその利用
JP2018534382A (ja) カーボンブラック分散液およびその製造方法
JP5340731B2 (ja) ポリアルキルアクリレートコア及びポリアニリン被膜を有する導電性ナノ複合粒子
CA3183237A1 (en) Method for polymer precipitation
JP6755218B2 (ja) ナノカーボン分散液
KR20240064021A (ko) 카본 재료 분산액 및 그의 사용
CN117157358B (zh) 碳材料分散液
JP2014182895A (ja) 電池用電極組成物用バインダー
JP5365870B2 (ja) 水溶性共重合体および水性分散剤
KR102636889B1 (ko) N-비닐카르복실산아미드의 중합체를 포함하는 수성 도공액용 조성물
JP2021163626A (ja) 正極組成物
JP6509592B2 (ja) カーボンブラック分散液およびカーボンブラック複合樹脂
JP6326958B2 (ja) 燃料電池セパレーター用水系導電性ペーストの製造方法
JP4689346B2 (ja) 水性エマルジョン
JP7262068B1 (ja) カーボン材料分散液及びその使用
KR102718047B1 (ko) 카본 재료 분산액의 제조 방법
JP7098077B1 (ja) カーボン材料分散液の製造方法
JP2002121423A (ja) 樹脂被覆アルミニウム顔料およびその製造方法
JP2024044644A (ja) 塗料用水系導電材分散体、および塗工物
WO2024204168A1 (ja) カーボンナノチューブ分散ペースト、合材ペースト、及び、リチウムイオン二次電池用電極層の製造方法

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20171207

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20180829

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20180925

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20181122

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20190402

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20190403

R151 Written notification of patent or utility model registration

Ref document number: 6509592

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R151

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250