JP7361239B1 - 環状オレフィン共重合体の製造方法 - Google Patents
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Abstract
Description
代表的な環状オレフィン共重合体として、透明樹脂として広く使用される、環状オレフィンとエチレンとの共重合体がある。環状オレフィンとエチレンとの共重合体は、そのガラス転移温度(Tg)を環状オレフィンとエチレンとの共重合組成に応じて変えることが可能なため、広い温度領域でガラス転移温度を調整した共重合体を製造することができる(例えば、非特許文献1を参照)。
また、活性の高い触媒を用いて重合を行うと、ポリエチレン様の不純物が生成しやすい場合がある。環状オレフィン共重合体にポリエチレン様の不純物が含まれると、環状オレフィン共重合体を溶媒に溶解させた場合に濁りが生じる。そのため、環状オレフィン共重合体の透明性の低下が懸念される。さらに、ポリエチレン様の不純物が生成すると、環状オレフィン共重合体を製造する一般的な製造プロセスにおいて、不溶なポリエチレン様の不純物をろ過・除去するという製造コストの増大を招くプロセスが必要である。
すなわち、従来の製造方法においては、環状オレフィン共重合体を高収率で製造することができ、かつ、ポリエチレン様の不純物の生成を抑えつつ、生成する環状オレフィン共重合体の分子量を制御することは困難であった。生成する環状オレフィン共重合体を所望の分子量となるように制御できれば有用である。
(1)ノルボルネン単量体由来の構成単位とエチレン由来の構成単位とを含む環状オレフィン共重合体の製造方法であって、
少なくとも、ノルボルネン単量体及びエチレンを含むモノマーと、水素とを重合容器内に仕込む仕込み工程と、
前記重合容器内の前記モノマーを、前記水素とホスフィンイミド基を有する触媒との存在下に重合させる重合工程と、を含み、
前記重合容器内に仕込む水素の濃度を調整して、前記重合工程により生成する環状オレフィン共重合体の分子量を制御する、環状オレフィン共重合体の製造方法。
条件(A):前記重合工程で生成した環状オレフィン共重合体の分子量が所望の分子量よりも大きいとき、次回の仕込み工程において前記重合容器内に仕込む水素の濃度を高くする。
条件(B):前記重合工程で生成した環状オレフィン共重合体の分子量が所望の分子量よりも小さいとき、次回の仕込み工程において前記重合容器内に仕込む水素の濃度を低くする。
式(a1a)中、Ra1~Ra5は、それぞれ独立に、同一でも異なっていてもよく、水素原子、ヘテロ原子を含んでいてもよい炭素原子数1~20の有機置換基、又は無機置換基であり、Ra1~Ra5のうちの5員環上で隣接する2つの基は相互に結合して環を形成してもよく、
式(a1b)中、Ra6~Ra8は、それぞれ独立に、同一でも異なっていてもよく、水素原子、ヘテロ原子を含んでいてもよい炭素原子数1~20の有機置換基、又は無機置換基であり、Ra6~Ra8から選択される2つの基が相互に結合して環を形成してもよく、
L2は上記式(a1b)で表される基である。]
で表される含金属化合物である、前記(1)又は(2)に記載の環状オレフィン共重合体の製造方法。
なお、本実施形態において、「分子量」は重量平均分子量及び数平均分子量の双方ともに含む。
また、一般的に、エチレンと、ノルボルネン単量体とを、高活性な触媒の存在下に共重合させる場合、エチレン同士の重合が進行しやすく、ポリエチレン様の不純物が生成したりしやすい。しかし、所定のホスフィンイミド基を有する触媒を用いると、ポリエチレン様の不純物の生成とを抑制しつつ環状オレフィン共重合体を良好な収率で製造しやすい。
以上より、本実施形態の環状オレフィン共重合体の製造方法においては、収率が良好で、ポリエチレン様の不純物の生成を抑えつつ、生成する環状オレフィン共重合体の分子量を制御することができる。
仕込み工程では、ノルボルネン単量体及びエチレンを含むモノマーと、水素とを重合容器内に仕込む。重合容器には、本実施形態の製造方法に悪影響を及ぼさない範囲で、ノルボルネン単量体、及びエチレン以外の他の単量体が仕込まれてもよい。環状オレフィン共重合体における、ノルボルネン単量体に由来する構成単位の比率と、エチレンに由来する構成単位の比率との合計は、典型的には、全構成単位に対して、80質量%以上が好ましく、95質量%以上がより好ましく、98質量%以上がさらに好ましい。
条件(A):重合工程で生成した環状オレフィン共重合体の分子量が所望の分子量よりも大きいとき、次回の仕込み工程において重合容器内に仕込む水素の濃度を高くする。
条件(B):重合工程で生成した環状オレフィン共重合体の分子量が所望の分子量よりも小さいとき、次回の仕込み工程において重合容器内に仕込む水素の濃度を低くする。
ノルボルネン単量体としては、例えば、ノルボルネン及び置換ノルボルネンが挙げられ、ノルボルネンが好ましい。ノルボルネン単量体は、1種単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
R9とR10、R11とR12は、一体化して2価の炭化水素基を形成してもよく、
R9又はR10と、R11又はR12とは、互いに環を形成していてもよい。
また、nは、0又は正の整数を示し、
nが2以上の場合には、R5~R8は、それぞれの繰り返し単位の中で、それぞれ同一でも異なっていてもよい。
ただし、n=0の場合、R1~R4及びR9~R12の少なくとも1個は、水素原子ではない。]
トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ-3,7-ジエン(慣用名:ジシクロペンタジエン)、トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ-3-エン;トリシクロ[4.4.0.12,5]ウンデカ-3,7-ジエン若しくはトリシクロ[4.4.0.12,5]ウンデカ-3,8-ジエン又はこれらの部分水素添加物(又はシクロペンタジエンとシクロヘキセンの付加物)であるトリシクロ[4.4.0.12,5]ウンデカ-3-エン;5-シクロペンチル-ビシクロ[2.2.1]ヘプタ-2-エン、5-シクロヘキシル-ビシクロ[2.2.1]ヘプタ-2-エン、5-シクロヘキセニルビシクロ[2.2.1]ヘプタ-2-エン、5-フェニル-ビシクロ[2.2.1]ヘプタ-2-エンといった3環の環状オレフィン;
テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ-3-エン(単にテトラシクロドデセンともいう)、8-メチルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ-3-エン、8-エチルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ-3-エン、8-メチリデンテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ-3-エン、8-エチリデンテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ-3-エン、8-ビニルテトラシクロ[4,4.0.12,5.17,10]ドデカ-3-エン、8-プロペニル-テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ-3-エンといった4環の環状オレフィン;
8-シクロペンチル-テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ-3-エン、8-シクロヘキシル-テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ-3-エン、8-シクロヘキセニル-テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ-3-エン、8-フェニル-シクロペンチル-テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ-3-エン;テトラシクロ[7.4.13,6.01,9.02,7]テトラデカ-4,9,11,13-テトラエン(1,4-メタノ-1,4,4a,9a-テトラヒドロフルオレンともいう)、テトラシクロ[8.4.14,7.01,10.03,8]ペンタデカ-5,10,12,14-テトラエン(1,4-メタノ-1,4,4a,5,10,10a-ヘキサヒドロアントラセンともいう);ペンタシクロ[6.6.1.13,6.02,7.09,14]-4-ヘキサデセン、ペンタシクロ[6.5.1.13,6.02,7.09,13]-4-ペンタデセン、ペンタシクロ[7.4.0.02,7.13,6.110,13]-4-ペンタデセン;ヘプタシクロ[8.7.0.12,9.14,7.111,17.03,8.012,16]-5-エイコセン、ヘプタシクロ[8.7.0.12,9.03,8.14,7.012,17.113,l6]-14-エイコセン;シクロペンタジエンの4量体等の多環の環状オレフィンを挙げることができる。
重合工程では、重合容器内のモノマーを、水素とホスフィンイミド基を有する触媒の存在下に重合させる。
重合時の温度は特に限定されない。環状オレフィン共重合体の収率が良好であること等から、重合時の温度は、20℃以上が好ましく、30℃以上がより好ましく、50℃以上がさらに好ましく、60℃以上がさらにより好ましく、70℃以上が特に好ましい。重合時の温度は80℃以上であってもよい。
重合時の温度の上限は特に限定されない、重合時の温度の上限は、例えば200℃以下であってよく、140℃以下であってもよく、120℃以下であってもよい。
MがZrである場合は、触媒活性向上の観点から、触媒とアルキルアルミニウム化合物とを予め接触させてから(混合してから)重合系内へ添加することが好ましい。
アルキルアルミニウム化合物としては、例えば、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、MAO(一般的に、アルキルアルミニウムを含有する)等が好ましく使用される。
触媒と混合するアルキルアルミニウム化合物の量は、触媒に対して1~100当量であることが好ましく、2~50当量であることがより好ましく、2~10当量であることがさらに好ましい。
Xは、ヘテロ原子を含んでいてもよい炭素原子数1~20の有機置換基、又はハロゲン原子である。
L1は、下記式(a1a)又は式(a1b)で表される基である。また、L2は、下記式(a1b)で表される基である。式(a1)中、L1及びL2がともに式(a1b)で表される基である場合、L1及びL2は同一の基でも異なった基でもよく、同一の基であるのが好ましい。
式(a1b)中、Ra6~Ra8は、それぞれ独立に、同一でも異なっていてもよく、水素原子、ヘテロ原子を含んでいてもよい炭素原子数1~20の有機置換基、又は無機置換基である。Ra6~Ra8から選択される2つの基が相互に結合して環を形成してもよい。
ヘテロ原子を含んでいてもよい炭素原子数1~20の有機置換基については、有機置換基がヘテロ原子を含む場合、ヘテロ原子の種類は本実施形態の製造方法の効果を阻害しない範囲で特に限定されない。ヘテロ原子の具体例としては、酸素原子、窒素原子、硫黄原子、リン原子、ケイ素原子、セレン原子、及びハロゲン原子等が挙げられる。
Ra1~Ra5としての、ヘテロ原子を含んでいてもよい炭素原子数1~20の有機置換基の具体例及び好ましい例は、それぞれ、Xとしての、ヘテロ原子を含んでいてもよい炭素原子数1~20の有機置換基の具体例及び好ましい例と同様である。中でも、Ra1~Ra5としての、ヘテロ原子を含んでいてもよい炭素原子数1~20の有機置換基としては、-(CH2)nRで表される置換基が、高い触媒活性及びポリエチレン様不純物の抑制の観点から好ましい。さらには、Ra1~Ra5のうちのいずれか1つのみが-(CH2)nRで表される置換基であり、他の4つが水素原子であることが特に好ましい。なお、-(CH2)nR中、Rは水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、ハロゲン化アルキル基、アリール基、ハロゲン化アリール基、アルキルシリル基、及びアリールシリル基から選択される1種以上を示し、nは1~5の整数を示す。
Rとしてのシクロアルキル基としては、炭素原子数3~20のシクロアルキル基が挙げられ、炭素原子数3~10のシクロアルキル基が好ましく、炭素原子数5~8のシクロアルキル基がより好ましい。Rとしてのシクロアルキル基の具体例としては、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等が挙げられ、中でも、シクロヘキシル基が好ましい。
Rとしてのハロゲン化アルキル基としては、置換基として少なくとも1つのハロゲン元素を有するアルキル基であって、炭素原子数1~7のアルキル基が挙げられ、炭素原子数1~5のアルキル基が好ましく、炭素原子数1~3のハロゲン化アルキル基がより好ましい。また、Rとしてのハロゲン化アルキル基中のハロゲン元素としては、フッ素、塩素が好ましい。Rとしてのハロゲン化アルキル基の具体例としては、モノフルオロメチル基、ジフルオロメチル基、トリフルオロメチル基、2,2,2-トリフルオロエチル基、ペンタフルオロエチル基、ヘプタフルオロプロピル基、トリクロロメチル基等が挙げられ、中でも、トリフルオロメチル基が好ましい。
Rとしてのアリール基としては、炭素原子数6~20のアリール基が挙げられ、炭素原子数6~10のアリール基が好ましく、炭素原子数7~8のアリール基がより好ましい。
Rとしてのアリール基の具体例としては、フェニル基、トリル基、キシリル基、メシチル基、ナフチル基、アラルキル基、ビフェニル基等が挙げられ、中でも、フェニル基が好ましい。
Rとしてのハロゲン化アリール基としては、上記のRとしてのアリール基に、置換基として少なくとも1つのハロゲン元素を有するアリール基であって、炭素原子数6~20のアリール基が挙げられ、炭素原子数6~10のアリール基が好ましく、炭素原子数7~8のアリール基がより好ましい。また、Rとしてのハロゲン化アリール基中のハロゲン元素としては、フッ素、塩素が好ましい。Rとしてのハロゲン化アリール基の具体例としては、4-フルオロフェニル基、2,4-ジフルオロフェニル基、2,4,6-トリフルオロフェニル基、2,3,6-トリフルオロフェニル基、パーフルオロフェニル基(-C6F5)、パーフルオロビフェニル基、パークロロフェニル基(-C6Cl5)等が挙げられ、中でも、パーフルオロフェニル基(-C6F5)が好ましい。
Rとしてのアルキルシリル基としては、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基等のトリアルキルシリル基等が挙げられ、中でも、トリメチルシリル基が好ましい。
Rとしてのアリールシリル基としては、トリフェニルシリル基、トリスペンタフルオロフェニルシリル基等のトリアリールシリル基等が挙げられ、中でも、トリフェニルシリル基が好ましい。
これらのRの中では、水素原子、アルキル基中の炭素原子数が多いもの(炭素原子数:3~12)、又はフッ素原子を含むものが好ましい。例えば、水素原子、tert-ブチル基、フェニル基、パーフルオロフェニル基(-C6F5)、トリメチルシリル基が特に好ましい。
無機置換基の具体例としては、ハロゲン原子、ニトロ基、無置換のアミノ基、及びシアノ基等が挙げられる。
Ra6~Ra8としての、ヘテロ原子を含んでいてもよい炭素原子数1~20の有機置換基の具体例及び好ましい例は、それぞれ、Xとしての、ヘテロ原子を含んでいてもよい炭素原子数1~20の有機置換基の具体例及び好ましい例と同様である。さらに、Ra6~Ra8としての、ヘテロ原子を含んでいてもよい炭素原子数1~20の有機置換基としては、アダマンチル基及びo-トリル基も好ましい例として挙げられる。
加えて、Ra6~Ra8としての、ヘテロ原子を含んでいてもよい炭素原子数1~20の有機置換基としては、式(a1b)で表される基であって、Ra6~Ra8が、それぞれ独立に炭素原子数1~20の炭化水素基である基も好ましい。
Ra6~Ra8としての、ヘテロ原子を含んでいてもよい炭素原子数1~20の有機置換基が、式(a1b)で表される基である場合の好ましい例としては、-N=P(Me)3、-N=P(Et)3、-N=P(n-Pr)3、-N=P(iso-Pr)3、-N=P(n-Bu)3、-N=P(iso-Bu)3、-N=P(sec-Bu)3、-N=P(tert-Bu)3、-N=P(-N=P(tert-Bu)3)Ph2、及び-N=P(Ph)3が挙げられる。これらの中では、-N=P(tert-Bu)3、及び-N=P(iso-Pr)3が好ましく、-N=P(tert-Bu)3がより好ましい。なお、Meはメチル基であり、Etはエチル基であり、n-Prはn-プロピル基であり、iso-Prはiso-プロピル基であり、n-Buはn-ブチル基であり、iso-Buはイソブチル基であり、sec-Buはsec-ブチル基であり、tert-Buはtert-ブチル基であり、Phはフェニル基である。
また、Ra6~Ra8としての、無機置換基の具体例は、Ra1~Ra5としての、無機置換基の具体例と同様である。
Ra6~Ra8としては、環状又は非環状の第三級アルキル基、又は、オルト位に少なくとも1つ以上のアルキル基を有する芳香環基であることが好ましい。環状の第三級アルキル基としてはアダマンチル基等が挙げられ、非環状の第三級アルキル基としてはtert-ブチル基等が挙げられる。オルト位に少なくとも1つ以上のアルキル基を有する芳香環基としては、o-トリル基、メシチル基等が挙げられる。
また、下記式中、Si(Me)3はトリメチルシリル基であり、Si(Me)2tert-ブチルは、tert-ブチルジメチルシリル基である。
ここで、イオン化合物は、ホスフィンイミド基を有する触媒との反応によりカチオン性遷移金属化合物を生成させる化合物である。
アルミノキサンとしては、従来より種々のオレフィンの重合において助触媒等として使用されている種々のアルミノキサンを特に制限なく用いることができる。典型的には、アルミノキサンは有機アルミノキサンである。
触媒組成物の製造に際して、アルミノキサンは1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
イオン化合物は、ホスフィンイミド基を有する触媒との反応によりカチオン性遷移金属化合物を生成する化合物である。
かかるイオン化合物としては、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートのアニオン、ジメチルフェニルアンモニウムカチオン((CH3)2N(C6H5)H+)のような活性プロトンを有するアミンカチオン、(C6H5)3C+のような三置換カルボニウムカチオン、カルボランカチオン、メタルカルボランカチオン、遷移金属を有するフェロセニウムカチオン等のイオンを含むイオン性化合物を用いることができる。
アルキルアルミニウム化合物としては、オレフィン類の重合等に従来より用いられている化合物を特に限定なく使用できる。アルキルアルミニウム化合物としては、例えば、下記一般式(II)で示される化合物が挙げられる。
(R10)zAlX3-z (II)
(一般式(II)中、R10は炭素原子数が1~15、好ましくは1~8のアルキル基であり、Xはハロゲン原子又は水素原子であり、zは1~3の整数である。)
ホスフィンイミド基を有する触媒、又はホスフィンイミド基を有する触媒を含む触媒組成物を加える前に、重合容器内にアルキルアルミニウム化合物を加える場合の使用量は、ホスフィンイミド基を有する触媒1モルに対するアルミニウムのモル数として、1~500000モルが好ましく、10~50000モルがより好ましい。
触媒組成物の使用量は、その調製に用いられるホスフィンイミド基を有する化合物の使用量から導出される。触媒組成物の使用量は、その調製に用いられたホスフィンイミド基を有する化合物の質量として、ノルボルネン単量体1モルに対し、0.000000001~0.005モルが好ましく、0.00000001~0.0005モルがより好ましい。
重合時間は、温度や、触媒の組成や、単量体組成によっても異なるが、典型的には0.01時間~120時間であり、0.1時間~80時間が好ましく、0.2時間~10時間がより好ましい。
触媒組成物を連続的に添加することにより、環状オレフィン共重合体の連続製造が可能になり、環状オレフィン共重合体の製造コストを低減させることが可能になる。
得られる環状オレフィン共重合体のガラス転移温度は特に限定されないが、例えば185℃以下が好ましく、160℃以下がより好ましく、130℃以下がさらに好ましく、120℃以下がさらにより好ましく、100℃以下が特に好ましい。
また、上記の方法により製造される環状オレフィン共重合体を、JIS K7121に記載の方法に従って、窒素雰囲気下、昇温速度20℃/分の条件で示差操作熱量計(DSC)により測定した場合、得られたDSC曲線が、ポリエチレン様不純物に由来する融点(融解エンタルピー)のピークを有さないことが好ましい。このことは、環状オレフィン共重合体中のポリエチレン様不純物が存在しないか極めて少ないことを意味する。なお、環状オレフィン共重合体中にポリエチレン様不純物が含まれている場合、DSC曲線上のポリエチレン様不純物に由来する融点のピークは、一般的に100℃~140℃の範囲内に検出される。
よく乾燥させた、マックスブレンド攪拌翼を装着した1000mLステンレス製オートクレーブに、デカヒドロナフタレン(デカリン)及び表1に記載の量(37~52mmol)の2-ノルボルネンを加えた。次いで、トリイソブチルアルミニウム(東ソー・ファインケム(株)製)を50μmol加えた後、オートクレーブを90℃になるまで加熱した。オートクレーブに0.001MPaの水素を導入後、ゲージ圧0.8MPaのエチレン圧をかけた後、デカリンを用いて調製したN-メチルジアルキルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート(アルキル:C14~C18(平均:C17.5)(東ソー・ファインケム(株)製)の溶液を、N-メチルジアルキルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートの量が0.3μmolになるように加えた。次いで、トルエンを用いて調製した下記構造式で示す触媒1の触媒溶液を、触媒量が0.1μmolとなるように加えた後、30秒後を重合開始点とした。なお、重合溶液の全量は、500mLとした。重合開始から15分後、エチレン供給を停止し、注意深く圧力を常圧に戻した後、反応溶液中にイソプロピルアルコールを加えて反応を停止させた。その後、アセトン1500mL、イソプロピルアルコール1000mL、塩酸25mLの混合溶媒に重合溶液を投入して共重合体を沈殿化させた。共重合体を吸引濾過にて回収し、アセトン、メタノールで洗浄後、共重合体を110℃で12時間真空乾燥を行い、ノルボルネンとエチレンとの共重合体を得た。
オートクレーブに、水素を0.003MPaとなるように導入したこと以外は実施例1と同様にして環状オレフィン共重合体を得た。
触媒1を、以下の構造式で示す触媒2に変更したこと以外は実施例2と同様にして環状オレフィン共重合体を得た。
触媒1を、以下の構造式で示す触媒3に変更したこと以外は実施例2と同様にして環状オレフィン共重合体を得た。
触媒1を、以下の構造式で示す触媒4に変更したこと以外は実施例2と同様にして環状オレフィン共重合体を得た。
触媒1を、以下の構造式で示す触媒5に変更したこと、及び触媒5の触媒溶液を以下のように添加したこと以外は実施例2と同様にして環状オレフィン共重合体を得た。すなわち、触媒溶液の添加方法は実施例2(実施例1)とは異なり、実施例1における「次いで、トルエンを用いて調製した下記構造式で示す触媒1の触媒溶液を、触媒量が0.1μmolとなるように加えた後、30秒後を重合開始点とした。」との記載を、「次いで、トルエンを用いて調製した下記構造式で示す触媒5の触媒溶液へ、トリメチルアルミニウムのトルエン溶液を、トリメチルアルミニウムの添加量が触媒量に対して6.7当量になるようにゆっくり滴下した後、室温にて1時間攪拌したものを、触媒量が0.1μmolとなるように加えた後、30秒後を重合開始点とした。」と読み替えるものとする。
触媒1を、上記構造式で示す触媒5に変更したこと、及び触媒5の触媒溶液を以下のように添加したこと以外は実施例2と同様にして環状オレフィン共重合体を得た。すなわち、触媒溶液の添加方法は実施例2(実施例1)とは異なり、実施例1における「次いで、トルエンを用いて調製した下記構造式で示す触媒1の触媒溶液を、触媒量が0.1μmolとなるように加えた後、30秒後を重合開始点とした。」との記載を、「次いで、トルエンを用いて調製した下記構造式で示す触媒5の触媒溶液へ、TMAO-211トルエン溶液(9.0質量%(Al原子の含有量として)メチルアルミノキサンの溶液、東ソー・ファインケム(株)製、なお全Alに対して26mol%のトリメチルアルミニウムを含有する)を、トリメチルアルミニウムの添加量が触媒量に対して6.7当量になるようにゆっくり滴下した後、室温にて1時間攪拌したものを、触媒量が0.1μmolとなるように加えた後、30秒後を重合開始点とした。」と読み替えるものとする。
触媒1を、以下の構造式で示す触媒6に変更したこと、及び触媒6の触媒溶液を以下のように添加したこと以外は実施例2と同様にして環状オレフィン共重合体を得た。すなわち、触媒溶液の添加方法は実施例2(実施例1)とは異なり、実施例1における「次いで、トルエンを用いて調製した下記構造式で示す触媒1の触媒溶液を、触媒量が0.1μmolとなるように加えた後、30秒後を重合開始点とした。」との記載を、「次いで、トルエンを用いて調製した下記構造式で示す触媒6の触媒溶液へ、トリメチルアルミニウムのトルエン溶液を、トリメチルアルミニウムの添加量が触媒量に対して6.7当量になるようにゆっくり滴下した後、室温にて1時間攪拌したものを、触媒量が0.1μmolとなるように加えた後、30秒後を重合開始点とした。」と読み替えるものとする。
比較例1~2において、それぞれ、オートクレーブ内にエチレン圧をかける前に、水素を導入しなかったこと以外は実施例1又は実施例2と同様にして環状オレフィン共重合体を得た。
有機金属化合物としてジイソブチルアルミニウムヒドリド(東京化成製、17wt%トルエン溶液)を使用したこと以外は比較例2と同様にして環状オレフィン共重合体を得た。
比較例4~7において、それぞれ、オートクレーブ内にエチレン圧をかける前に、水素を導入しなかったこと以外は、実施例4、5、7、8と同様にして環状オレフィン共重合体を得た。
各実施例・比較例において得られた環状オレフィン共重合体に対して以下の評価・測定を行った。
各実施例・比較例において得られた環状オレフィン共重合体の数平均分子量(Mn)、及び重量平均分子量(Mw)を以下の測定条件に従って、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより測定した。
装置:Malvern社製 Viscotek TDA302検出器+Pump autosampler装置
検出器:RI
溶媒:トルエン
カラム:東ソー(株)製 TSKgel GMHHR-M(300mm×7.8mmφ)
流速:1mL/分
温度:75℃
試料濃度:2.5mg/mL
注入量:100μL
標準試料:単分散ポリスチレン
各実施例・比較例において、触媒の使用量と、共重合体の収量とから算出される、触媒1g当たりの共重合体収量(g)を算出した。算出結果を表1~2に示す。
各実施例・比較例において得られた環状オレフィン共重合体のガラス転移温度を、DSC法(JIS K7121記載の方法)によって、示差走査熱量分析装置(TA Instrument社製、示差走査熱量計(DSC-Q1000))にて、窒素雰囲気下、昇温速度20℃/分の条件で測定した。測定結果を表1~2に示す。
ガラス転移温度の測定により得られたDSC曲線において、100~140℃の範囲内に観察されるポリエチレン様の不純物に由来する融点のピーク面積から発熱量(mJ/mg)を算出した。算出された発熱量が大きいほど、ポリエチレン様の不純物の含有量が多い。なお、表1~2中の不検出は、DSC曲線上においてポリエチレン様の不純物に由来する融点のピークが検出されないことを示す。
各実施例・比較例において得られた環状オレフィン共重合体0.1gを、トルエン10gに溶解させた後、溶液における濁りの有無を観察した。濁りが認められなかった場合を「良好」、濁りが認められた場合を「不良」と評価した。評価結果を表1~2に示す。濁りが認められた場合、環状オレフィン共重合体にポリエチレン様の不純物が含まれる。濁りが認められなかった場合、環状オレフィン共重合体にポリエチレン様の不純物が含まれない。
一方、上述の通り、ホスフィンイミド基を有する触媒として、上記式(a1)で表される含金属化合物におけるMがZrである場合は、触媒活性向上の観点から、触媒とアルキルアルミニウム化合物とを予め接触させてから(混合してから)重合系内へ添加することが好ましい。そして、実施例6~実施例8は、上記式(a1)で表される含金属化合物におけるMがZrである化合物を使用している。実施例6においては、触媒5とトリメチルアルミニウムとを予め接触させてから重合系に添加している。また、実施例7及び実施例8においては、触媒5あるいは触媒6と、トリメチルアルミニウムを含有するTMAO-211トルエン溶液とを予め接触させてから重合系に添加している。実施例6~実施例8のいずれも、トリメチルアルミニウムの添加量は触媒量に対して6.7当量である。結果として、実施例6~実施例8は、触媒1g当たりの収量も良好であることから、TMAO-211に元々含有しているアルキルアルミニウムも、上記式(a1)で表される含金属化合物におけるMがZrである化合物に対して有効であることが分かる。
さらに、実施例1~8においては、不純物熱分析で不純物が検出されず、また、濁り試験においてもポリマー溶液は濁りを示さず、ポリエチレン様の不純物の生成が抑制されていることが分かる。さらに、実施例1~8においては、触媒1g当たりの収量も良好である。一方、比較例3は、有機金属化合物により好ましくない副反応が進行し、ポリエチレン様の不純物が生成したと考えられる。
Claims (8)
- ノルボルネン単量体由来の構成単位とエチレン由来の構成単位とを含む環状オレフィン共重合体の製造方法であって、
少なくとも、ノルボルネン単量体及びエチレンを含むモノマーと、水素とを重合容器内に仕込む仕込み工程と、
前記重合容器内の前記モノマーを、前記水素とホスフィンイミド基を有する触媒との存在下に重合させる重合工程と、を含み、
前記ホスフィンイミド基を有する触媒が、下記式(a1):
式(a1b)中、R a6 ~R a8 は、それぞれ独立に、同一でも異なっていてもよく、水素原子、ヘテロ原子を含んでいてもよい炭素原子数1~20の有機置換基、又は無機置換基であり、R a6 ~R a8 から選択される2つの基が相互に結合して環を形成してもよい。]
で表される含金属化合物であり、
前記重合容器内に仕込む水素の濃度を調整して、前記重合工程により生成する環状オレフィン共重合体の分子量を制御する、環状オレフィン共重合体の製造方法。 - 一の重合工程により得られた環状オレフィン共重合体の分子量に基づき、次回の仕込み工程において、下記条件(A)又は下記条件(B)により前記重合容器内に仕込む水素の濃度を設定する、請求項1に記載の環状オレフィン共重合体の製造方法。
条件(A):前記重合工程で生成した環状オレフィン共重合体の分子量が所望の分子量よりも大きいとき、次回の仕込み工程において前記重合容器内に仕込む水素の濃度を高くする。
条件(B):前記重合工程で生成した環状オレフィン共重合体の分子量が所望の分子量よりも小さいとき、次回の仕込み工程において前記重合容器内に仕込む水素の濃度を低くする。 - 前記式(a1)中、MがTiである、請求項1又は2に記載の環状オレフィン共重合体の製造方法。
- 前記モノマーの重合を、前記ホスフィンイミド基を有する触媒、及び助触媒の存在下で行う、請求項1又は2に記載の環状オレフィン共重合体の製造方法。
- 前記助触媒が、アルミノキサン及びボレート化合物の少なくとも一方を含む、請求項4に記載の環状オレフィン共重合体の製造方法。
- 前記モノマーの重合を、炭化水素溶媒の存在下で行う、請求項1又は2に記載の環状オレフィン共重合体の製造方法。
- 前記環状オレフィン共重合体の試料を、JIS K7121に記載の方法に従って、窒素雰囲気下、昇温速度20℃/分の条件で示差走査熱量計による測定を行って得られたDSC曲線が、100℃~140℃の範囲内にポリエチレン様不純物に由来する融点ピークを有さない、請求項1又は2に記載の環状オレフィン共重合体の製造方法。
- 前記環状オレフィン共重合体の分子量分布(Mw/Mn)が3.0以下である、請求項1又は2に記載の環状オレフィン共重合体の製造方法。
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