JP7357823B1 - アセロラ乾燥粉末およびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
Description
本開示において、アセロラ乾燥粉末の収率とは、原料となるアセロラ果汁中の固形分と混合されるアルカリ剤の固形分との合計質量に対する、得られるアセロラ乾燥粉末の質量を百分率で表した値をいう。
アセロラ乾燥粉末の水分値=(1.0-X)/1.0×100
として算出される。
一つの態様によれば、アセロラ乾燥粉末の製造方法(以下、「本開示の製造方法」ともいう。)が提供される。本開示の製造方法は、アセロラ果汁と、必要に応じて水と、酸化マグネシウムを含むアルカリ剤とを撹拌して、均一に混合する工程を含む。水は、アセロラ果汁が有する固形分の濃度を調製するために用いる。本開示の製造方法によれば、従来の製造方法により得られるアセロラ乾燥粉末と比較して、良好な組成を有するアセロラ乾燥粉末(以下、「本開示のアセロラ乾燥粉末」ともいう。)を高い収率で得ることができる。
(a)アセロラ果汁と、酸化マグネシウムを含むアルカリ剤とを混合する工程、
(b)上記工程(a)で得られたアセロラ果汁とアルカリ剤との混合物を濾過する工程、
(c)上記工程(b)で得られた濾液を液滴にする工程、および
(d)上記工程(c)で得られた液滴を乾燥させ、サイクロンで乾燥粉末を回収する工程
を含む。
本開示の製造方法により製造されるアセロラ乾燥粉末は、混合するアルカリ剤の量(混合割合)を低く抑えることができるため、高濃度のビタミンCを保持することができる。具体的には、本開示のアセロラ乾燥粉末は、従来の製造方法により得られるアセロラ乾燥粉末と比較して、ビタミンCの含有量が同程度またはそれ以上である。本開示のアセロラ乾燥粉末は、ビタミンCの含有量が好ましくは34質量%以上、より好ましくは35質量%以上、より一層好ましくは35.5質量%以上、特に好ましくは36質量%以上である。ビタミンCの含有量を高めるためには、果汁中のビタミンC含有量が高いほど良く、ビタミンCを高含有するアセロラ品種(例えば、NRA309等)から得られるアセロラ果汁を用いるほか、緑熟果を用いると良い。
アセロラ果実100kgを搾汁・脱パルプ・濃縮してクリア濃縮果汁に加工し、蒸発残留物の量、すなわち固形分が30~45質量%となるようにアセロラ濃縮果汁を調製した。以下、すべての試験区および比較区において、上記の手順により調製した同一ロットのアセロラ濃縮果汁を原料として用いた。
調製例1で得られたアセロラ濃縮果汁を6群に分け、下記表1の試験区1~6に示す組成となるように水および各種アルカリ剤を添加し、T.K.ロボミックス(田島化学機械株式会社製)を用いて撹拌、混合した(図1のS1に対応する手順)。撹拌・混合後、濾過前のpHを表1に示す。pHが3程度のアセロラ果汁にアルカリ剤を添加して、pHが4~6の混合溶液を得ている。なお、アセロラ果汁のpHを調整せずに乾燥させると、飴が固まったような乾燥物となり、良好なアセロラ乾燥粉末が得られないことを確認している。次いで、得られた各群の混合物をストレーナーまたはガラス濾紙(GA-100、ADVANTEC製)を用いて濾過し、濾液を回収した(図1のS2に対応する手順)。次いで、得られた各群の濾液を、回転式噴霧ノズルを用いて噴霧法により液滴化し、熱風入口温度170℃、出口温度85℃~91℃の条件で熱風乾燥させ、サイクロンで回収し、各アセロラ乾燥粉末を得た(図1のS3に対応する手順)。一方、調製例1で得られたアセロラ濃縮果汁を用いて、米国特許出願公開第2015/327587A1号公報に開示されるExample 1に従って、下記表1に示す組成となるように水およびアルカリ剤(水酸化マグネシウム)を添加して、同様に比較区1のアセロラ乾燥粉末を得た。なお、表1には、アセロラ果汁中の固形分とアルカリ剤との総含有量を100質量%とした場合における、アルカリ剤の質量が占める割合を、アセロラ果汁と混合されるアルカリ剤の量として示す。試験区1~6のアルカリ剤としては、酸化マグネシウムを単独で、または酸化マグネシウムと水酸化マグネシウムとを組み合わせた混合物を用いた。また、比較区1としては、水酸化マグネシウムを単独で用いた。
試験区1~6および比較区1の各アセロラ乾燥粉末の製造方法について、それぞれ粉末収率を算出した。また、各アセロラ乾燥粉末について、それぞれのビタミンC含有量を、インドフェノール法を用いて測定した。結果を表1に示す。
試験区1~6および比較区1の各アセロラ乾燥粉末について、それらの色について、目視による確認で、比較区1との比較で明度が同等または高いものを「○」と評価し、明度がより低いものを「△」と評価した。結果を表1に示す。
調製例1で得られたアセロラ濃縮果汁を12群に分け、下記表2の試験区7~18に示す組成となるように水および各種アルカリ剤を添加し、撹拌機(スリーワンモータ、新東科学株式会社製)を用いて撹拌、混合した(図1のS1に対応する手順)。撹拌・混合後、濾過前のpHを表2に示す。pHが3程度のアセロラ果汁にアルカリ剤を添加して、pHが4~6の混合溶液を得ている。なお、アセロラ果汁のpHを調整せずに乾燥させると、飴が固まったような乾燥物となり、良好なアセロラ乾燥粉末が得られないことを確認している。次いで、得られた各群の混合物をストレーナーまたはガラス濾紙(GA-100、ADVANTEC製)を用いて濾過し、濾液を回収した(図1のS2に対応する手順)。次いで、得られた各群の濾液を、回転式噴霧ノズルを用いて噴霧法により液滴化し、熱風入口温度170℃、出口温度92℃~98℃の条件で熱風乾燥させ、サイクロンで回収し、各アセロラ乾燥粉末を得た(図1のS3に対応する手順)。一方、調製例2で得られた比較区1のアセロラ乾燥粉末を比較区2のアセロラ乾燥粉末として準備した。なお、表2には、アセロラ果汁中の固形分とアルカリ剤との総含有量を100質量%とした場合における、アルカリ剤の質量が占める割合を、アセロラ果汁と混合されるアルカリ剤の量として示す。試験区7~18のアルカリ剤としては、酸化マグネシウムもしくは水酸化マグネシウム単独、または酸化マグネシウムと水酸化マグネシウムとの混合物を用いた。また、比較区2としては、水酸化マグネシウムを単独で用いた。
試験区7~18および比較区2の各アセロラ乾燥粉末の製造方法について、それぞれの粉末収率を算出した。また、各アセロラ乾燥粉末について、それぞれのビタミンC含有量を、インドフェノール法を用いて測定した。粉末収率が最も高かった試験区10の収率を100とし、各試験区および比較区について、粉末収率の相対値を求めた。また、粉末収率の相対値とビタミンC含有量とを乗算し、各試験区および比較区のアセロラ乾燥粉末におけるビタミンC含有量の相対値を算出した。結果を表2に示す。
試験区7~18および比較区2の各アセロラ乾燥粉末について、上述した実施例2と同様の方法により明度を測定した。結果を表2に示す。
表2に示す結果から、試験区11~18の各アセロラ乾燥粉末は、いずれも水分値が安定的に7.0質量%以下であるため好ましい。すなわち、アルカリ剤が酸化マグネシウム単独であっても、酸化マグネシウムと水酸化マグネシウムとの混合物であっても、アルカリ剤の合計含有量は7質量%であることが、高い粉末収率を得られるのに加え、低い水分値なので好ましい。
実施例4および実施例5の結果から、試験区11~17の各アセロラ乾燥粉末が、粉末収率、明度および水分値のいずれについても優れている。すなわち、アルカリ剤として酸化マグネシウムと水酸化マグネシウムとを組み合わせて用いる場合には、アルカリ剤中の酸化マグネシウムの含有量が14~86質量%(下限値:試験区11、上限値:試験区17)であることが好ましい条件と言える。
[産業上の利用可能性]
本開示の要旨の1つは以下である。
固形分が30~45質量%であるアセロラ濃縮果汁と、水と、アルカリ剤を添加・混合して、pHが4~6の混合溶液を得る。この混合溶液を濾過して得た濾液を、スプレードライ法により乾燥し、アセロラ乾燥粉末を得る。
アセロラ濃縮果汁に代えて、濃縮していないアセロラ果汁を用いてもよい。濃縮果汁の使用は、アセロラ果汁を収穫地から粉末製造工場へ輸送するコストや、製造工場での保管コストを小さくできるので好ましい。アセロラ濃縮果汁は、固形分濃度が大きく、撹拌等の処理がしにくいため、水を添加して固形分濃度を低下させる。
アルカリ剤としては、酸化マグネシウム単独、または酸化マグネシウムおよび水酸化マグネシウムを組み合わせた混合物が用いられる。アルカリ剤をアセロラ果汁に添加してpHが4~6の混合溶液を得ることで、スプレードライしやすい効果が得られ、加えて好ましい性状を有するアセロラ粉末を得ることができる。アルカリ剤の添加量は、アセロラ果汁中の固形分とアルカリ剤との合計を100質量%とした場合の、アルカリ剤の含有量を、例えば5~15質量%とする。
アセロラ果汁と、酸化マグネシウムを含むアルカリ剤とを混合する混合工程を含む、アセロラ乾燥粉末を製造する方法。
[項目2]
前記アルカリ剤が水酸化マグネシウムをさらに含む、項目1に記載の方法。
[項目3]
前記混合工程において、前記アセロラ果汁中の固形分と前記アルカリ剤との合計を100質量%とした場合の、前記アルカリ剤の含有量が5~15質量%である、項目1または2に記載の方法。
[項目4]
前記アセロラ果汁中の固形分と前記アルカリ剤との合計を100質量%とした場合の、前記アルカリ剤の含有量が6~7質量%である、項目3に記載の方法。
[項目5]
前記アセロラ果汁中の固形分と前記アルカリ剤との合計を100質量%とした場合の、前記アルカリ剤の含有量が7質量%である、項目3に記載の方法。
[項目6]
前記アルカリ剤における酸化マグネシウムの含有量が、14~86質量%である、項目1~5のいずれか一項に記載の方法。
[項目7]
前記アルカリ剤における酸化マグネシウムの含有量が、20~80質量%である、項目1~6のいずれか一項に記載の方法。
[項目8]
前記アルカリ剤における酸化マグネシウムの含有量が、29~71質量%である、項目1~7のいずれか一項に記載の方法。
[項目9]
前記アルカリ剤が、酸化マグネシウムと水酸化マグネシウムのみから構成される、項目1~9のいずれか一項に記載の方法。
[項目10]
前記アルカリ剤における酸化マグネシウムと水酸化マグネシウムとの質量比が、酸化マグネシウム:水酸化マグネシウム=5:9である、項目9に記載の方法。
[項目11]
項目1~10のいずれか一項に記載の方法により製造される、アセロラ乾燥粉末。
[項目12]
食品組成物である、項目11に記載のアセロラ乾燥粉末。
Claims (12)
- アセロラ果汁と、酸化マグネシウムを含むアルカリ剤とを混合する混合工程を含む、アセロラ乾燥粉末を製造する方法。
- 前記アルカリ剤が水酸化マグネシウムをさらに含む、請求項1に記載の方法。
- 前記混合工程において、前記アセロラ果汁中の固形分と前記アルカリ剤との合計を100質量%とした場合の、前記アルカリ剤の含有量が5~15質量%である、請求項1または2に記載の方法。
- 前記アセロラ果汁中の固形分と前記アルカリ剤との合計を100質量%とした場合の、前記アルカリ剤の含有量が6~7質量%である、請求項3に記載の方法。
- 前記アセロラ果汁中の固形分と前記アルカリ剤との合計を100質量%とした場合の、前記アルカリ剤の含有量が7質量%である、請求項3に記載の方法。
- 前記アルカリ剤における酸化マグネシウムの含有量が、14~86質量%である、請求項1または2に記載の方法。
- 前記アルカリ剤における酸化マグネシウムの含有量が、20~80質量%である、請求項1または2に記載の方法。
- 前記アルカリ剤における酸化マグネシウムの含有量が、29~71質量%である、請求項1または2に記載の方法。
- 前記アルカリ剤が、酸化マグネシウムと水酸化マグネシウムのみから構成される、請求項1または2に記載の方法。
- 前記アルカリ剤における酸化マグネシウムと水酸化マグネシウムとの質量比が、酸化マグネシウム:水酸化マグネシウム=5:9である、請求項9に記載の方法。
- 請求項1または2に記載の方法により製造される、アセロラ乾燥粉末。
- 食品組成物である、請求項11に記載のアセロラ乾燥粉末。
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