JP7352405B2 - エレベーター及びエレベーターシステム - Google Patents

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Description

本発明は、乗りかごや主ロープ等の状態を監視するエレベーター及びエレベーターシステムに関するものである。
従来、エレベーターは、乗りかごと、釣合おもりと、乗りかごと釣合おもりを連結するロープと、このロープが巻き掛けられる巻上機とを備えている。エレベーターは、部品が経年劣化することで、乗り心地が変化するため、定期的に保守点検が行われている。また、保守点検にかかる時間を短縮するために、エレベーターを監視する技術として、例えば、特許文献1に記載されているようなものがある。
特許文献1には、エレベーターの乗りかごに設置され、乗りかごの振動を監視するエレベーター振動監視装置に関する技術が記載されている。特許文献1に記載された技術では、乗りかごの振動加速度を検出する振動検出器と、振動検出器からの振動加速度を分析して、エレベーターの乗り心地を判定する分析装置とを備えている。そして、特許文献1に記載された技術は、分析装置が振動加速度の増加量が所定の値以上の場合に乗り心地が悪化したと判定している。
特開2003-112862号公報
しかしながら、保守点検時には、複数の防振部材や主ロープ等の多数の部材を点検する必要があるが、特許文献1に記載された技術では、どの部品が劣化しているかまで判断することができない、という問題を有していた。さらに、特許文献1に記載された技術では、振動が所定の値以上になるまで、部品の異常を判断することができない。
本目的は、上記の問題点を考慮し、乗り心地が悪化する前に各部品の状態を推定することができるエレベーター及びエレベーターシステムを提供することにある。
上記課題を解決し、目的を達成するため、エレベーターは、人や荷物が載るかご室及びかご室を支持するかご枠を有する乗りかごと、乗りかごに加わる荷重を検出する荷重検出センサと、乗りかごの傾きを検出する傾斜センサと、を備えている。また、エレベーターは、荷重検出センサが検出した荷重情報と、傾斜センサが検出した傾斜情報を受信し、荷重情報及び傾斜情報に基づいて、乗りかごの部品ごとの損傷度合を推定する状態監視部を備えている。
また、エレベーターシステムは、昇降路を昇降移動する乗りかごを有するエレベーターと、エレベーターと情報を送受信可能に接続される外部装置と、を備えている。
エレベーターは、乗りかごに加わる荷重を検出する荷重検出センサと、乗りかごの傾きを検出する傾斜センサと、を備えている。そして、外部装置又はエレベーターは、荷重検出センサが検出した荷重情報と、傾斜センサが検出した傾斜情報を受信し、荷重情報及び傾斜情報に基づいて、乗りかごの部品ごとの損傷度合を推定する状態監視部を備えている。
上記構成のエレベーター及びエレベーターシステムによれば、乗り心地が悪化する前に各部品の状態を推定することができる。
第1の実施の形態例にかかるエレベーターシステムを示す概略構成図である。 第1の実施の形態例にかかるエレベーターの乗りかごを示す斜視図である。 第1の実施の形態例にかかるエレベーターの乗りかごを示す正面図である。 第1の実施の形態例にかかるエレベーターシステムの状態監視動作例を示すフローチャートである。 第1の実施の形態例にかかる状態監視部に格納された応力推定データベースを示す図である。 第2の実施の形態例にかかるエレベーターシステムを示す概略構成図である。 第3の実施の形態例にかかるエレベーターシステムにおける乗りかごの上部を示す図である。 第4の実施の形態例にかかるエレベーターシステムにおける乗りかごを示す正面図である。 第4の実施の形態例にかかるエレベーターシステムの状態監視動作例を示すフローチャートである。 第4の実施の形態例にかかるエレベーターシステムの状態監視動作例における加速度データの評価方法を示す説明図である。 任意の部品のSN曲線図である。
以下、エレベーター及びエレベーターシステムの実施の形態例について、図1~図11を参照して説明する。なお、各図において共通の部材には、同一の符号を付している。
1.第1の実施の形態例
1-1.エレベーターシステムの構成
まず、第1の実施の形態例(以下、「本例」という。)にかかるエレベーターシステムの構成について図1を参照して説明する。
図1は、エレベーターシステムを示す概略構成図である。
図1に示すように、エレベーターシステム100は、エレベーター1と、外部装置の一例を示す保守端末110と、を備えている。エレベーター1は、昇降路内を昇降する乗りかご2と、乗りかご2に接続される主ロープ3と、主ロープ3を介して乗りかご2に連結される釣合おもり4と、主ロープ3が巻き掛けられる巻上機5と、を有している。巻上機5が駆動することで、乗りかご2は、昇降路内を昇降移動する。
また、エレベーター1は、エレベーター1全体を制御する制御部6と、状態監視部7とを備えている。制御部6と状態監視部7は、建築構造物に設置された制御装置に搭載される。制御部6は、後述する乗りかご2に設けた荷重検出センサ13及び傾斜センサ15が検出した情報を受信する。そして、制御部6は、受信した情報に基づいて、乗りかご2に設けたドアの開閉を制御したり、巻上機5の駆動を制御したりする。
状態監視部7は、有線又は無線により情報を送受信可能に制御部6に接続されている。状態監視部7は、制御部6から荷重検出センサ13及び傾斜センサ15が検出した情報を受信する。また、状態監視部7は、乗りかご2の部品に加わる応力を推定するための応力推定データベースを有している。応力推定データベースは、部品ごとに予め作成される。そして、状態監視部7は、受信した情報に基づいて部品ごとに応力を推定し、記憶部に格納する。なお、状態監視部7の詳細な動作例については、後述する。
保守点検を行う際、状態監視部7又は制御部6には、保守端末110が接続される。なお、状態監視部7又は制御部6と、保守端末110は、有線又は無線により情報を送受信可能に接続される。保守端末110は、状態監視部7の記憶部に格納された情報を受信する。なお、保守端末110の詳細な動作例については、後述する。
1-2.乗りかごの構成例
次に、エレベーター1の乗りかご2の構成について、図2及び図3を参照して説明する。
図2は、本例の乗りかごを示す斜視図である。図3は、乗りかごを示す正面図である。
図2及び図3に示すように、乗りかご2は、かご室10と、かご室10を支持するかご枠11と、防振部材12と、荷重検出センサ13と、傾斜センサ15と、を備えている。かご室10は、中空の略直方体状に形成されている。かご室10には、ドア10aが開閉可能に設けられている。このかご室10には、人や荷物が載る。かご室10の天井には、傾斜センサ15が設けられている。傾斜センサ15は、かご室10の傾きを検出する。また、傾斜センサ15は、乗りかご2の昇降方向又は後述するかご枠11の側部枠23が立設する方向と直交する2軸(X軸、Y軸)の傾きを検出する。
傾斜センサ15を設ける位置は、かご室10の天井に限定されるものではなく、例えば、かご室10の側面部や床面に傾斜センサ15を設けてもよい。なお、かご室10の側面部や床面は、平板状の部材で形成されるため、かご室10に人や荷物が乗り込んだ際に、撓むおそれがある。そして、この側面部や床面の撓みを傾斜センサ15がかご室10の傾斜であると誤検出するおそれがある。そのため、側面部や床面に傾斜センサ15を設ける場合、側面部や床面の角部や剛性の高い場所に設置することが好ましい。また、傾斜センサ15としては、撓みが他の箇所よりも少ない天井に設けることが好ましい。
かご室10の外周を囲むようにして、かご枠11が設けられている。かご枠11は、上部枠21と、床枠22と、2つの側部枠23、23とを有している。上部枠21は、かご室10の上方に配置される。そして、上部枠21には、主ロープ3が接続されている。上部枠21の両端部には、側部枠23が接続されている。側部枠23は、かご室10の側方に配置される。そして、側部枠23は、乗りかご2の昇降方向と略平行に配置される。側部枠23には、昇降路内に立設するガイドレール28を摺動するスライダ23aが設けられている。また、側部枠23の下端部には、床枠22が接続されている。
床枠22は、かご室10の下方に配置される。床枠22には、複数の防振部材12と、荷重検出センサ13が設けられている。防振部材12は、床枠22の四隅に配置される。そして、防振部材12を介してかご室10が床枠22に支持されている。防振部材12としては、例えば、ゴムやばね等の弾性部材が適用される。
荷重検出センサ13は、床枠22の中央部に配置され、かご室10の床面の重心位置と対向する位置に配置される。そして、荷重検出センサ13は、かご室10の床面との距離を検出することで、かご室10への荷重を検出する。荷重検出センサ13が検出する荷重情報は、例えば、乗りかご2の定格積載量に対する割合である積載率、またはかご室10に加わる荷重の量である積載量である。
なお、荷重検出センサ13としては、かご室10の床面までの距離に基づいて荷重を検出する例に限定されるものではない。荷重検出センサ13としては、例えば、上部枠21における主ロープ3が接続される箇所に設けられ、主ロープ3を固定するばねの伸縮量からかご室10への荷重を検出してもよく、その他各種の検出方法が適用されるものである。
1-3.状態監視動作例
次に、上述した構成を有するエレベーター1及びエレベーターシステム100における状態監視動作例について図4及び図5を参照して説明する。
図4は、状態監視動作例を示すフローチャート、図5は、状態監視部7の記憶部に格納された応力推定データベースを示す説明図である。
図4に示すように、荷重検出センサ13によって乗りかご2に加わる荷重を検出すると共に、傾斜センサ15によってかご室10の傾きを検出する(ステップS11)。ステップS11に示す検出処理は、乗りかご2が昇降移動するたびに行われる。さらに、ステップS11に示す検出処理を行うタイミングは、乗りかご2が任意の階に停止し、開放されたドア10aが閉じたときである。
そして、荷重検出センサ13及び傾斜センサ15は、検出した信号を制御部6及び状態監視部7に出力する。状態監視部7は、受信した検出信号に基づいて、部品毎に作成された応力推定データベースを参照する。
図5に示すように、応力推定データベースは、縦軸に荷重情報として積載率を示し、横軸に傾斜情報としてX軸及びY軸の傾きを示している。そして、縦軸と横軸が交差するセルに予め算出した応力の値が格納されている。そして、状態監視部7は、検出信号と、図5に示す応力推定データベースに基づいて各部品に加わる応力を推定する(ステップS12)。
このように、傾き情報を取得することで、かご室10内における人や荷物の偏りを考慮することができる。その結果、状態監視部7において、例えば、かご室10の四隅に配置された複数の防振部材に加わる応力をそれぞれ個別に推定することができる。
次に、状態監視部7は、ステップS12で推定した各部品の応力の値と、起動回数を記憶部に蓄積する(ステップS13)。ここで、起動回数は、乗りかご2が上昇移動、又は下降移動した回数である。すなわち、状態監視部7は、乗りかご2における1回の上昇移動、又は下降移動を1セットとして記憶部に蓄積する。また、状態監視部7は、推定した応力が部品に加わっている時間も蓄積する。応力が加わっている時間は、1セットにおける乗りかご2の上昇移動又は下降移動の時間である。
次に、状態監視部7は、記憶部に蓄積した情報に基づいて、各部品の損傷度合又は各部品の変形量を推定する(ステップS14)。
次に、状態監視部7は、ステップS14の処理で推定した損傷度合又は変形量に基づいて、部品の交換の要否を判定する(ステップS15)。ステップS15の処理では、状態監視部7は、推定した損傷度合又は変形量が予め設定した閾値を超えたか否かで、部品の交換の要否を判定する。ステップS15の処理において、状態監視部7は、部品の交換が不要であると判定した場合、保守端末110に判定結果を出力し、ステップS11の処理に戻る。
これに対して、ステップS15の処理において、状態監視部7は、部品の交換が必要であると判定した場合、保守端末110に判定結果を出力する。そして、保守端末110は、作業者に部品の点検が必要である旨を通知し、作業者は、通知された部品の点検を行う(ステップS16)。
また、部品の交換が行われた際、状態監視部7は、記憶部に蓄積された交換した部品の起動回数や応力等の情報を消去し、初期化する。部品ごとに情報を蓄積することで、各部品の損傷度合や変形量を個別に推定することができる。その結果、保守点検時に、交換や点検を行う部品を特定することができ、保守点検にかかる時間の短縮を図ることができる。
さらに、部品の損傷度合や変形量を推定することで、乗りかご2に振動が発生する前に、点検や交換が必要な部品を判別することができ、乗りかご2の乗り心地が悪化することを抑制することができる。
また、エレベーター1における巻上機5や制御装置等の大型の装置の交換は、法定耐用年数に合わせたリニューアル時に多く行われる。そして、乗りかご2の各種部品について、次のリニューアル時までの間、部品を交換することなく安全に利用可能か否かを判断する必要がある。
そのため、状態監視部7は、エレベーター1の稼働日からの応力や起動回数、損傷度合や交換の要否判定等の情報を記憶部に、月毎又は年毎に格納する。これにより、リニューアル作業を行うまでの月日や年数において、状態監視部7は、過去の応力の発生度合いや起動回数等の傾向を考慮して、各部品の状態を推定することができる。
2.第2の実施の形態例
次に、図6を参照して第2の実施の形態例にかかるエレベーターシステムについて説明する。なお、第1の実施の形態例にかかるエレベーターシステム100と共通する部分には、同一の符号を付して重複した説明を省略する。
図6は、第2の実施の形態例にかかるエレベーターシステムを示す概略構成図である。
図6に示すように、第2の実施の形態例にかかるエレベーターシステム200は、エレベーター1と、外部装置の一例を示す監視サーバ210とを備えている。監視サーバ210は、エレベーター1とは離れた場所に設置されており、例えば、エレベーター1を監視する監視センターに設置さている。そして、監視サーバ210とエレベーター1の制御部6及び状態監視部7は、ネットワーク211を介して情報を送受信可能に接続されている。
監視サーバ210には、ネットワーク211を介して、制御部6及び状態監視部7から荷重検出センサ13が検出した荷重情報や、傾斜センサ15が検出した傾き情報が送信される。また、監視サーバ210には、状態監視部7の記憶部に蓄積された部品毎の応力情報が送信される。そして、監視サーバ210は、状態監視部から送信された応力情報を、日や週、または月等のように一定の時間毎に整理し、管理する。これにより、監視サーバ210によって各部品の損傷度合や変形量をより高精度に推定することができると共に、今後加わると想定される応力も推定することができる。その結果、部品を交換するタイミングを高精度に推定することができる。
また、監視サーバ210を設け、図4に示す状態監視動作におけるステップS12からステップS15までの処理を監視サーバ210で行ってもよい。すなわち、監視サーバ210に状態監視部7を設け、部品ごとの応力推定データベースや、推定した応力情報を監視サーバ210に蓄積し、監視サーバ210によって部品ごとの損傷度合や変形量を推定する。これにより、建築構造物に設けられる制御装置全体の容量を低減することができ、制御装置の小型化を図ることができる。
さらに、エレベーター1で想定外の故障が発生した場合、監視サーバ210において当該部品の評価方法を変更する。これにより、監視サーバ210によって監視を行う複数のエレベーターに対して、変更した評価方法を適用することができる。
その他の構成は、第1の実施の形態にかかるエレベーターシステム100と同様であるため、それらの説明は省略する。このような構成を有するエレベーターシステム200によっても、上述した第1の実施の形態例にかかるエレベーターシステム100と同様の作用効果を得ることができる。
3.第3の実施の形態例
次に、図7を参照して第3の実施の形態例にかかるエレベーターシステムの乗りかごについて説明する。
図7は、第3の実施の形態例にかかるエレベーターシステムにおける乗りかごの上部を示す図である。
第3の実施の形態例にかかる乗りかごが第1の実施の形態例にかかる乗りかご2と異なる点は、傾斜センサの構成である。そのため、ここでは傾斜センサについて説明し、第1の実施の形態例にかかる乗りかごと共通する部分には同一の符号を付して重複した説明を省略する。
ここで、スライダ23aとガイドレール28との間には、若干の隙間が生じている。また、スライダ23aとしてガイドローラを適用した場合でも、ガイドローラの固定部には、弾性部材が設けられている。そのため、スライダ23aが設けられたかご枠11も、ガイドレール28に対して傾く。そして、かご枠11の傾きは、かご枠11が支持するかご室10の傾きにも影響を与える。しかしながら、かご室10を支持する複数の防振部材12に加わる応力は、かご枠11とかご室10との相対角度によって決まる。
そして、第3の実施の形態例にかかる傾斜センサ37は、かご枠11に対するかご室10の傾斜角度(相対角度)を検出する。図7に示すように、傾斜センサ37は、受光部35と、発光部36とを有している。受光部35は、かご室10の天井に設置される。発光部36は、上部枠21に設置され、受光部35と対向する。そして、受光部35は、発光部36から照射された光を受光する。
また、発光部36は、例えば、レーザー光を照射するレーザー照射部である。受光部35は、例えば、PSDセンサ(Position Sensing Device)である。そして、受光部35は、発光部36から照射されたレーザー光の照射位置と、初期位置(例えば、中心)とのズレ量からかご枠11に対するかご室10の傾斜角度(相対角度)を検出する。これにより、かご室10を支持する複数の防振部材12にかかる応力を、かご枠11の傾きに影響を受けることなく、精度よく推定することができる。
その他の構成は、第1の実施の形態にかかる乗りかご2と同様であるため、それらの説明は省略する。このような傾斜センサ37を有するエレベーターシステムによっても、上述した第1の実施の形態例にかかるエレベーターシステム100と同様の作用効果を得ることができる。
なお、第3の実施の形態例にかかる傾斜センサ37では、かご室10に受光部35を設け、かご枠11に発光部36を設けた例を説明したが、これに限定されるものではなく、例えば、かご室10に発光部36を設け、かご枠11に受光部35を設けてもよい。
4.第4の実施の形態例
次に、図8から図10を参照して第4の実施の形態例にかかるエレベーターシステムについて説明する。
図8は、第4の実施の形態例にかかるエレベーターシステムにおける乗りかごを示す正面図である。
この第4の実施の形態例にかかるエレベーターシステムが第1の実施の形態例にかかるエレベーターシステム100と異なる点は、傾斜センサとして加速度センサを用いた点である。そのため、第1の実施の形態例にかかるエレベーターシステムと共通する部分には、同一の符号を付して重複した説明を省略する。
図8に示すように、乗りかご2Bは、かご室10と、かご枠11とを備えている。また、かご室10には、第1傾斜センサ45が設けられており、かご枠11の上部枠21には、第2傾斜センサ46が設けられている。第1傾斜センサ45と第2傾斜センサ46は、それぞれ加速度センサである。第1傾斜センサ45は、かご室10の傾きを検出し、第2傾斜センサ46は、かご枠11の傾きを検出する。
次に、図8に示す乗りかご2Bを有するエレベーターシステムの状態監視動作例について図9及び図10を参照して説明する。
図9に示すように、まず、荷重検出センサ13によって乗りかご2Bに加わる荷重を検出する。また、第1傾斜センサ45によってかご室10の傾きを検出すると共に、第2傾斜センサ46によってかご枠11の傾きを検出する(ステップS21)。荷重検出センサ13、第1傾斜センサ45及び第2傾斜センサ46は、検出した信号を制御部6及び状態監視部7(図1及び図6参照)に出力する。また、状態監視部7は、第1傾斜センサ45と第2傾斜センサ46が検出した傾斜情報から、かご枠11に対するかご室10の傾き(相対角度)を算出することができる。
次に、状態監視部7は、複数の傾斜情報と、応力推定データベースに基づいて各部品に加わる応力を推定する(ステップS22)。上述したように、かご室10のかご枠11に対する傾きを検出することができるため、かご室10を支持する複数の防振部材12にかかる応力を、かご枠11の傾きに影響を受けることなく、精度よく推定することができる。さらに、第2傾斜センサ46によるかご枠11の傾き情報から、かご枠11とガイドレール28の間にかかる応力も精度よく推定することができる。
次に、状態監視部7は、ステップS22で推定した各部品の応力の値と、起動回数を記憶部に蓄積する(ステップS23)。そして、状態監視部7は、記憶部に蓄積した情報に基づいて、各部品の損傷度合又は各部品の変形量を推定する(ステップS24)。
上述したように、第1傾斜センサ45及び第2傾斜センサ46は、加速度センサである。そのため、状態監視部7は、第1傾斜センサ45及び第2傾斜センサ46から、加速度データを取得する(ステップS25)。これにより、乗りかご2Bの昇降移動時や人や荷物の乗降時、移動開始時等で生じる振動情報も取得することができる。また、状態監視部7は、取得した加速度データを記憶部に蓄積する。
なお、乗りかご2Bの加速度情報は、かご室10内の人の状態に依存する。例えば、かご室10内で人が移動したり、暴れたりすると、かご室10の振動が一時的に増加する。このような外乱がある場合、状態監視の評価からは除外することが好ましい。そのため、状態監視部7は、取得した加速度データの評価を行う(ステップS26)。
図10は、加速度データの評価方法を示す説明図である。図10における縦軸は加速度αを示し、横軸は時間tを示している。
図10に示すように、状態監視部7は、予め設定された所定の評価期間T1における複数点の加速度データxの平均値を算出する。評価期間T1は、加速度データxを取得する毎に状態監視部7が更新する。そして、状態監視部7は、算出した加速度データxの平均値を評価点x1として用いる。これにより、上述した一時的な振動による影響を除外することができる。また、平均値を算出する際に、前回の加速度データxとの差の絶対値が閾値よりも大きな加速度データを除外して平均値を算出してもよい。
次に、ステップS24で推定した各部品の損傷度合又は各部品の変形量と、ステップS26の処理で評価した加速度データに基づいて、状態監視部7は、部品の交換の要否を判定する(ステップS27)。ステップS27の処理において状態監視部7は、部品の交換が不要であると判断した場合、ステップS21の処理に戻る。
これに対して、ステップS27の処理において、状態監視部7は、部品の交換が必要であると判定した場合、保守端末110に判定結果を出力する。そして、保守端末110は、作業者に部品の点検が必要である旨を通知し、作業者は、通知された部品の点検を行う(ステップS28)。
ステップS27の処理に示すように、応力、起動回数や時間から推定した損傷度合に加速度データを加えて部品の交換判定を行っている。これにより、防振部材12やスライダ23a等の損傷度合の状況と、乗りかご2Bの振動情報を比較することができ、部品の交換判定をより高精度に行うことができる。
また、加速度が発生すると各部品にかかる応力も増加する。そのため、状態監視部7が損傷度合や変形量を推定する際に、乗りかご2Bの動的な稼働情報である加速度データを用いることで、各部品にかかる応力の推定をより高精度に行うことができ、部品の状態をより高精度に推定することができる。
その他の構成は、第1の実施の形態にかかる乗りかご2と同様であるため、それらの説明は省略する。このような乗りかご2Bを有するエレベーターシステムによっても、上述した第1の実施の形態例にかかるエレベーターシステム100と同様の作用効果を得ることができる。
また、第4の実施の形態例では、かご室10とかご枠11の両方に加速度センサからなる傾斜センサ45、46を設けた例を説明したが、これに限定されるものではない。例えば、かご室10のみに加速度センサからなる傾斜センサを設ける。そして、かご枠11の傾きについては、乗りかご2Bの位置情報や、荷重検出センサ13が検出したかご室10の積載量又は積載率と、かご室10に設けた傾斜センサの傾き情報から推定してもよい。
ここで、かご室10に加わる荷重の偏りが発生すると共に、さらに乗りかご2Bに加わる荷重により主ロープ3が伸長することで、かご枠11に傾きが発生する。また、主ロープ3の伸長は、乗りかご2Bの位置により変化する。そのため、乗りかご2Bの位置情報と、かご室10に加わる荷重の偏りから、かご枠11の傾きを推定することができる。これにより、センサの数を削減することができるだけでなく、上述した第4の実施の形態例にかかるエレベーターシステムと同等の精度で、かご室10とかご枠11の傾きを推定することができる。
5.損傷度合の推定方法
次に、損傷度合の推定方法の一例について図11を参照して説明する。
図11は、任意の部品のSN曲線図である。図11における縦軸は応力振幅σを示し、横軸は繰り返し数Nを示す。
エレベーター1には、かご室10の床や側面部、かご枠11等は、鉄鋼材等の金属材料で構成されている。そして、鉄鋼材では、物性値として図11に示すSN曲線上に疲労限度が存在し、その応力以下であれば疲労破壊しない。例えば、図11に示すように、第1応力振幅σ1における破断に達する繰り返し数Nは、第1破断繰り返し数N1となり、第2応力振幅σ2における破断に達する繰り返し数Nは、第2破断繰り返し数N2となる。
状態監視部7は、金属材料で構成される部品に対しては、応力だけでなく、応力振幅σと、その発生回数(繰り返し数)を記憶部に蓄積する。そして、状態監視部7は、各応力振幅σ1、σ2が発生した回数n1、n2と、第1破断繰り返し数N1、第2破断繰り返し数N2との比から損傷度を算出する。これにより、金属材料で構成される部品の損傷度を推定することができる。
なお、損傷度合の推定方法は、上述した例に限定されるものではなく、例えば、部品の曲げ部等の局所応力を評価してもよい。曲げ部の局所応力の評価では、乗りかごの構造にて解析モデルを活用した評価や、実際の計測結果を活用したデータベースを参照することで、損傷度合が評価される。
また、ゴムやばね等の弾性部材から構成される防振部材12の損傷度合の推定方法は、上述したSN曲線を用いた方法ではなく、応力の値、起動回数や時間によって推定される。
なお、上述しかつ図面に示した実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の変形実施が可能である。
また、エレベーターとして、例えば、複数の乗りかごが同一の昇降路を移動するマルチカーエレベーターを制御するエレベーターシステムにも適用できるものである。
なお、本明細書において、「平行」及び「直交」等の単語を使用したが、これらは厳密な「平行」及び「直交」のみを意味するものではなく、「平行」及び「直交」を含み、さらにその機能を発揮し得る範囲にある、「略平行」や「略直交」の状態であってもよい。
1…エレベーター、 2、2B…乗りかご、 3…主ロープ、 5…巻上機、 6…制御部、 7…状態監視部、 10…かご室、 10a…ドア、 11…かご枠、 12…防振部材、 13…荷重検出センサ、 15、37…傾斜センサ、 21…上部枠、 22…床枠、 23…側部枠、 23a…スライダ、 28…ガイドレール、 35…受光部、 36…発光部、 45…第1傾斜センサ、 46…第2傾斜センサ、 100、200…エレベーターシステム、 110…保守端末(外部装置)、 210…監視サーバ(外部装置)、 211…ネットワーク

Claims (8)

  1. 人や荷物が載るかご室及び前記かご室を支持するかご枠を有する乗りかごと、
    前記乗りかごに加わる荷重を検出する荷重検出センサと、
    前記乗りかごの傾きを検出する傾斜センサと、
    前記荷重検出センサが検出した荷重情報と、前記傾斜センサが検出した傾斜情報を受信し、前記荷重情報及び前記傾斜情報に基づいて、前記乗りかごの部品ごとの損傷度合を推定する状態監視部と、
    を備え
    前記傾斜センサは、前記かご室の天井に設置される
    エレベーター。
  2. 前記状態監視部は、前記荷重情報と前記傾斜情報に基づいて、前記部品ごとに加わる応力を推定する
    請求項1に記載のエレベーター。
  3. 前記状態監視部は、推定した前記応力を蓄積する記憶部を有し、
    前記記憶部には、推定した前記応力と、前記乗りかごが昇降移動する起動回数が蓄積され、
    前記状態監視部は、前記記憶部に蓄積された前記応力と、前記起動回数に基づいて、前記損傷度を推定する
    請求項2に記載のエレベーター。
  4. 前記記憶部には、前記荷重情報と前記傾斜情報に基づいて、前記部品ごとの応力を推定するための応力推定データベースが格納されており、
    前記状態監視部は、前記荷重情報、前記傾斜情報と前記応力推定データベースを用いて、前記部品ごとの応力を推定する
    請求項3に記載のエレベーター。
  5. 前記傾斜センサは、前記かご室又は前記かご枠に設けられた光を照射する発光部と、
    前記かご室又は前記かご枠に設けられ、前記発光部から照射された光を受光する受光部と、を有する
    請求項1に記載のエレベーター。
  6. 前記傾斜センサは、
    前記かご室に設けられ、前記かご室の傾きを検出する第1傾斜センサと、
    前記かご枠に設けられ、前記かご枠の傾きを検出する第2傾斜センサと、を有し、
    前記状態監視部は、前記第1傾斜センサが検出した傾斜情報と、前記第2傾斜センサが検出した傾斜情報から前記かご枠に対する前記かご室の傾きを算出する
    請求項1に記載のエレベーター。
  7. 前記傾斜センサは、加速度センサからなり、
    前記状態監視部は、前記傾斜センサから加速度データを取得する
    請求項1に記載のエレベーター。
  8. 昇降路を昇降移動する乗りかごを有するエレベーターと、
    前記エレベーターと情報を送受信可能に接続される外部装置と、を備え、
    前記エレベーターは、
    前記乗りかごに加わる荷重を検出する荷重検出センサと、
    前記乗りかごの傾きを検出する傾斜センサと、を備え、
    前記外部装置又は前記エレベーターは、
    前記荷重検出センサが検出した荷重情報と、前記傾斜センサが検出した傾斜情報を受信し、前記荷重情報及び前記傾斜情報に基づいて、前記乗りかごの部品ごとの損傷度合を推定する状態監視部を備え、
    前記傾斜センサは、前記かご室の天井に設置される
    エレベーターシステム。
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