以下に、本開示に係る同時二軸延伸装置の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が置換可能、且つ、容易に想到できるもの、或いは実質的に同一のものが含まれる。
[第1の実施形態]
本開示の第1の実施形態は、斜め延伸を行う同時二軸延伸装置10aの例である。
[同時二軸延伸装置の概略構成の説明]
まず、図1を用いて、クリップ移動速度計測装置が適用される同時二軸延伸装置10aの全体構成について説明する。図1は、クリップ移動速度計測装置が適用される同時二軸延伸装置の全体概要図である。以下、説明を簡単にするため、同時二軸延伸装置10aに投入されたフィルムSを、幅方向(X軸方向)及び縦方向(Y軸方向)にともに延伸させる場合を例にあげて、同時二軸延伸装置10aの概略構成を説明する。なお、フィルムSは本開示における延伸対象物の一例である。
同時二軸延伸装置10aは、平面視で、左右両側に、フィルムSを把持する多数のクリップ20を有する無端ループ10Rと10Lとを左右対称に有する。延伸対象のフィルムSは、入口1aから送り込まれて、延伸した状態で出口1bから排出される。なお、延伸対象のシート・フィルムの入口1a側から見て右側の無端ループを右側無端ループ10R、左側の無端ループを左側無端ループ10Lと呼ぶことにする。なお、フィルムSは、例えば、ポリエステル、ポリアミド、ポリオレフィン等の熱可塑性樹脂からなる。
クリップ20は、各々、長方形状のメインステム30の長手方向の一端部(入口1aと出口1bとの間で、互いに向かい合う位置)に取り付けられる。すなわち、向かい合う一対のクリップ20が、延伸対象物の一例であるフィルムSの幅方向両端に配置されて、延伸対象物を把持する把持機構として機能する。
メインステム30は、基準レール100に案内されてループ状に巡回移動する。右側無端ループ10Rは時計回り方向に巡回移動し、左側無端ループ10Lは反時計回り方向に巡回移動する。具体的には、メインステム30が備える駆動ローラ58(図4参照)が、駆動用スプロケット11、12に選択的に係合して、各メインステム30を巡回経路に沿って走行させる。つまり、駆動用スプロケット11、12は、各メインステム30の駆動ローラ58と選択的に係合しており、駆動用スプロケット11は、1台の電動モータ13(非図示)によって回転駆動される。また、駆動用スプロケット12は、それぞれが電動モータ14によって回転駆動される。これによって、駆動ローラ58は、各メインステム30に、巡回経路に沿って走行させる力を与える。
右側無端ループ10Rの基準レール100と、左側無端ループ10Lの基準レール100との基準レール間隔wa(以下、単に間隔waと呼ぶ)が大きくなると、フィルムSは幅方向(X軸方向)に延伸される。
隣接するメインステム30同士は、複数のリンクで構成されたクリップリンク機構50によって接続される。クリップリンク機構50は、ピッチ設定レール120に案内されて、メインステム30を連れ添ってループ状に巡回移動する。
クリップリンク機構50は、基準レール100とピッチ設定レール120とのレール間隔wbに応じて、隣接するメインステム30の間隔であるクリップピッチCpを設定する。詳しくは後述する(図2,図3参照)。なお、クリップピッチが大きくなるほど、フィルムSは、幅方向と直交する方向、すなわち、メインステム30の移動方向である縦方向(Y軸方向)に延伸される。図1は、入口1aから送り込まれたフィルムSが、縦横2軸方向に延伸される様子を示している。図面をわかり易くするため、フィルムSを不連続に描いているが、実際には、フィルムSは入口1aから出口1bに亘って連続している。
同時二軸延伸装置10aは、フィルムSの入口1aから出口1bへ向けて、予熱ゾーンAと、延伸緩和ゾーンBと、熱処理ゾーンCとを備える。
予熱ゾーンAは、フィルムSを所定の温度まで加熱するゾーンである。予熱ゾーンAでは、左側無端ループ10Lと右側無端ループ10Rの基準レール100の間隔waが横延伸初期幅相当に設定されて、全域に亘って左側無端ループ10Lと右側無端ループ10Rとが互いに平行に配置される。なお、左側無端ループ10Lと右側無端ループ10Rとにおいて、基準レール100とピッチ設定レール120とのレール間隔wbは、縦延伸初期ピッチ相当である。
延伸緩和ゾーンBは、フィルムSを幅方向及び縦方向に延伸又は緩和することによって変形させるゾーンである。図1に示す延伸緩和ゾーンBでは、予熱ゾーンAの側から熱処理ゾーンCに向かうに従って左側無端ループ10Lと右側無端ループ10Rとの間隔waが徐々に拡大され、左側無端ループ10Lと右側無端ループ10Rとが非平行に配置される。延伸緩和ゾーンBにおける左側無端ループ10Lと右側無端ループ10Rとの間隔waは、延伸開始端(予熱ゾーンAとの接続端)では横延伸初期幅相当になっており、延伸終了端(熱処理ゾーンCとの接続端)では横延伸最終幅相当に設定されている。すなわち、延伸緩和ゾーンBでは、予熱ゾーンAの側から熱処理ゾーンCに向かうに従って、左側無端ループ10Lにおける基準レール100と、右側無端ループ10Rにおける基準レール100との間隔waが徐々に拡大される。各基準レール100の間隔waは、延伸開始端(予熱ゾーンAとの接続端)では横延伸の初期幅相当になっており、延伸終了端(熱処理ゾーンCとの接続端)では横延伸の最終幅相当になっている。
さらに、延伸緩和ゾーンBでは、予熱ゾーンAの側から熱処理ゾーンCに向かうに従って、左側無端ループ10Lにおける基準レール100とピッチ設定レール120とのレール間隔wbが徐々に縮小される。そして、右側無端ループ10Rにおける基準レール100とピッチ設定レール120とのレール間隔wbも同様に、徐々に縮小される。基準レール100とピッチ設定レール120とのレール間隔wbは、延伸開始端(予熱ゾーンAとの接続端)では縦延伸初期ピッチ相当になっており、延伸終了端(熱処理ゾーンCとの接続端)では縦延伸最終ピッチ相当になっている。すなわち、同時二軸延伸装置10aは、延伸緩和ゾーンBにおいて、フィルムSに対して、縦延伸と横延伸とを同時に行う。
熱処理ゾーンCは、延伸又は緩和させたフィルムSに対して熱処理を行うゾーンである。熱処理ゾーンCでは、左側無端ループ10Lと右側無端ループ10Rとの間隔waが横延伸最終幅相当に設定されて、全域に亘って左側無端ループ10Lと右側無端ループ10Rとが互いに平行に配置される。また、基準レール100とピッチ設定レール120とのレール間隔wbは、縦延伸最終ピッチ相当に設定されて、全域に亘って基準レール100とピッチ設定レール120とは互いに平行な配置になっている。
以上、説明を簡単にするため、同時二軸延伸装置10aが延伸緩和ゾーンBにおいて、フィルムSを幅方向(X軸方向)及び縦方向(Y軸方向)にともに延伸させる例を説明したが、本実施形態の同時二軸延伸装置10aは、延伸緩和ゾーンBにおいて、フィルムSを幅方向(X軸方向)に延伸させながら、縦方向(Y軸方向)に緩和させることを特徴とする。詳しくは後述する(図5参照)。
[クリップリンク機構の説明]
次に、図2,図3,図4を用いて、クリップリンク機構50の概略構造を説明する。図2は、同時二軸延伸装置のクリップリンク機構の最小ピッチ状態の平面図である。図3は、同時二軸延伸装置のクリップリンク機構の最大ピッチ状態の平面図である。図4は、同時二軸延伸装置に用いるクリップ周辺部位の概略構造の一例を示す側面図である。
図2に示すように、左右の無端ループ10R、10L(図1参照)に設置された複数のクリップ20は、各々、長方形状のメインステム30の長手方向の一端部(前側)に取り付けられている。なお、右側の無端ループ10Rのクリップ20と、左側の無端ループ10Lのクリップ20とは、図1に示すように、予熱ゾーンAと延伸緩和ゾーンBと熱処理ゾーンCにおいて、互いに向き合う側に設置されている。そして、隣接するクリップ20は、走行移動に伴って、縦方向(Y軸方向)に互いのクリップピッチCpを変化させる。
メインステム30は、各々、クリップ20を個々に担持するものであり、クリップ20の個数と同数個、存在する。図4に示すように、メインステム30は、上梁35と、下梁36と、前壁37と、後壁38とによる閉じ断面の剛固なフレーム構造に形成されている。メインステム30の両端(前壁37、後壁38)には各々、軸31,32によって走行輪33,34が回転可能に設けられている。走行輪33,34は、基台110に形成された水平な走行路面111,112上を転動する。走行路面111,112は全域に亘って基準レール100に並行している。なお、図4は、無端ループ10R(図1参照)を構成するメインステム30及びクリップ20が、予熱ゾーンA、延伸緩和ゾーンB、又は熱処理ゾーンCにある状態を、Y軸負側から見た側面図である。無端ループ10Lを構成するメインステム30及びクリップ20も、図2と同様の構造を有する。
図2,図3に示すように、各メインステム30の他端側(後側)には、長手方向に沿って、メインステム30をZ軸方向に貫く(図4の上梁35と下梁36とを貫く)長孔(長形の穴)39が形成されている。長孔39には、図4に示すように、上梁35側と下梁36側とに、各々スライダ40が長孔39の長手方向に沿ってスライド可能に係合している。
各メインステム30の一端部(クリップ20側)の近傍には、上梁35、下梁36を貫く一本の第1の軸部材51が、Z軸に沿って垂直に設けられている。また、各メインステム30の上下のスライダ40には一本の第2の軸部材52が、Z軸に沿って垂直に設けられている。
各メインステム30の第1の軸部材51には、主リンク部材53に加えて、副リンク部材54の一端が回動可能に連結されている。副リンク部材54は、他端を主リンク部材53の中間部に軸部材55によって回動可能に連結されている。この第1の軸部材51と、第2の軸部材52と、主リンク部材53と、副リンク部材54と、軸部材55とがクリップリンク機構50を形成する。
各メインステム30の第1の軸部材51には、主リンク部材53に加えて、副リンク部材54の一端が回動可能に連結されている。副リンク部材54は、他端を主リンク部材53の中間部に軸部材55によって回動可能に連結されている。なお、副リンク部材54は、図4に示すように、主リンク部材53の上側と下側とに設けられる。
主リンク部材53と副リンク部材54とのリンク機構により、図2に示すように、スライダ40がメインステム30の他端側(反クリップ20側)に移動するほど、メインステム30同士の間隔、すなわちクリップピッチCpが小さくなる。また、図3に示すように、スライダ40がメインステム30の一端側(クリップ20側)に移動するほど、メインステム30同士の間隔、すなわちクリップピッチCpが大きくなる。そして、クリップピッチCpが大きくなるほど、フィルムSは、メインステム30の移動方向である縦方向(Y軸方向)に延伸される。
なお、本実施形態では、メインステム30同士の最小ピッチは、図2に示すように、隣接するメインステム30同士が接触することにより決められるものとする。また、メインステム30同士の最大ピッチは、図3に示すように、スライダ40がメインステム30の一端側(クリップ20側)のストロークエンドに到達することにより決められるものとする。
再び図4に戻り、第1の軸部材51の下端には、案内ローラ56が回転可能に設けられている。案内ローラ56は基台110上に設けられてクリップ20の巡回経路を画定する基準レール100の凹溝101に係合している。また、第1の軸部材51の上端には駆動ローラ58が回転可能に設けられている。駆動ローラ58は、前記したように、駆動用スプロケット11,12(図1参照)に選択的に係合し、各メインステム30を巡回経路に沿って走行させる。
第2の軸部材52の下端にはピッチ設定ローラ57が回転可能に設けられている。ピッチ設定ローラ57は、基台110上に基準レール100に沿って設けられたピッチ設定レール120の凹溝121に係合し、長孔39におけるスライダ40の位置を設定する。
ピッチ設定レール120は、基準レール100とのレール間隔wbに応じて、長孔39におけるスライダ40の位置を決める働きをし、このことにより、隣接するメインステム30同士のクリップピッチCpを可変設定する。ピッチ設定レール120は、基準レール100とのレール間隔wbが長いほど、つまり基準レール100より遠ざかっているほど、スライダ40をメインステム30の他端側(反クリップ側)に移動させてクリップピッチCpを小さくする。また、ピッチ設定レール120は、基準レール100とのレール間隔wbが短いほど、つまり基準レール100に近づいているほど、スライダ40をメインステム30の一端側(クリップ側)に移動させてクリップピッチCpを大きくする。
ピッチ設定レール120について、図1を参照して説明する。ピッチ設定レール120は、予熱ゾーンAでは、基準レール100とのレール間隔wbが全域に亘って一様に最小ピッチ設定の最大値になっている。
延伸緩和ゾーンBでは、ピッチ設定レール120の基準レール100とのレール間隔wbは、延伸開始端(予熱ゾーンAとの接続端)において最小ピッチ設定の最大値で、これより延伸終了端側へ向かうに従って徐々に短くなり、延伸終了端において最大ピッチ設定の最小値になっている。
熱処理ゾーンCでは、ピッチ設定レール120の基準レール100とのレール間隔wbは、全域に亘って一様に最大ピッチ設定の最小値になっている。
[クリップの構造の説明]
次に、図4を用いて、クリップ20の周辺部位の概略構造を説明する。図4は、同時二軸延伸装置に用いるクリップ周辺部位の概略構造の一例を示す側面図である。
左側無端ループ10Lと右側無端ループ10Rが備える複数のクリップ20は、各々、メインステム30の長手方向の一端部(前側)に取り付けられる。クリップ20は、フィルムSを係脱可能に把持するものであり、ヨーク形状のクリップ本体21と、クリップ本体21に固定装着された下側固定クリップ部材22と、ピン23によってクリップ本体21に回動可能に取り付けられた可動レバー24と、可動レバー24の下端にピン25によって揺動可能に取り付けられた上側可動クリップ部材26とを有する。
クリップ20は、下側固定クリップ部材22と上側可動クリップ部材26とで、フィルムSの側縁を挟み込み式に把持する。これにより、クリップ20は、フィルムSを挟んで支持したり、その支持状態を開放させたりすることが可能となる。
[同時二軸延伸装置の作用の説明]
次に、図5を用いて、同時二軸延伸装置10aが行う斜め延伸の第1の実施形態を説明する。図5は、同時二軸延伸装置が行う斜め延伸の第1の実施形態を示す平面図である。
同時二軸延伸装置10aは、入口1aから投入されたフィルムSを、予熱ゾーンAで加熱して、延伸緩和ゾーンBで斜め方向に延伸する。その際、延伸緩和ゾーンBでは、左側無端ループ10Lと右側無端ループ10Rとの基準レール100の間隔waを、w1からw2に増大させることによって、フィルムSを幅方向(X軸方向)に延伸することによって変形させる。なお、左側無端ループ10Lの基準レール100と、右側無端ループ10Rの基準レール100とが、本開示における幅方向変形手段の一例である。
そして、延伸緩和ゾーンBでは、領域R1において、左側無端ループ10L側(幅方向の少なくとも一方の側)のクリップ20のクリップピッチCpを減少させることによって、フィルムSを縦方向(Y軸方向)に緩和することによって変形させる。さらに、領域R2において、右側無端ループ10R側(幅方向の少なくとも一方の側)のクリップ20のクリップピッチCpを減少させることによって、フィルムSを縦方向(Y軸方向)に緩和することによって変形させる。ここで、領域R1と領域R2とは、異なる縦方向位置(Y軸方向位置)に設定されて、尚且つ、領域R1と領域R2とは、縦方向に重複しない。なお、クリップリンク機構50とピッチ設定ローラ57とは、基準レール100とピッチ設定レール120とのレール間隔wbに応じたクリップピッチCpを実現することによって、フィルムSの幅方向の少なくとも一方の側の延伸倍率又は緩和倍率を所望の値に設定する。すなわち、クリップリンク機構50とピッチ設定ローラ57とは、本開示における縦方向変形手段の一例である。
このように、延伸緩和ゾーンBにおいては、フィルムSが、幅方向に延伸されながら、縦方向に緩和される。その際、緩和によって発生するフィルムSの弛みは、幅方向に延伸される力によって吸収されるため、フィルムSは弛むことなく斜め方向に延伸される。なお、斜め方向の配向角度は、幅方向(X軸方向)の延伸倍率と、領域R1,R2における緩和倍率と、領域R1,R2の長さ等によって決定される。
なお、本実施形態では、先に左側無端ループ10L側の領域R1で緩和を行い、次に右側無端ループ10R側の領域R2で緩和を行ったが、この順序は、生成するフィルムSの配向角度に応じて適宜設定すればよい。すなわち、領域R1を右側無端ループ10R側に設定して、領域R2を左側無端ループ10L側に設定することによって、図5に示す例とはY軸に関して線対称な配向角度を有するフィルムSを成形することができる。
[クリップピッチ及び基準レール間隔の変化の説明]
次に、図6を用いて、同時二軸延伸装置10aにおけるクリップピッチCpと基準レール間隔waとの変化の様子を説明する。図6は、第1の実施形態におけるクリップピッチと基準レール間隔の変化を示すグラフである。
図6において、左側無端ループ10LのクリップピッチCpLは、初期状態においてCp1に設定される。そして、フィルムSが延伸緩和ゾーンBに進入すると、領域R1において、クリップピッチCpLがCp1からCp2まで、一定の割合で減少する。更に、クリップピッチCpLがCp2に達すると、以降はその値を維持する。なお、Cp1,Cp2の値、及び領域R1の大きさ(Y軸方向長さ)は、フィルムSの成形条件に応じて設定される。
一方、右側無端ループ10RのクリップピッチCpRは、初期状態においてCp1に設定される。そして、左側無端ループ10LのクリップピッチCpLがCp2に達すると、クリップピッチCpRは減少を開始する。そして、領域R2において、クリップピッチCpRは、Cp1からCp2まで一定の割合で減少する。更に、クリップピッチCpRがCp2に達すると、以降はその値を維持する。なお、領域R2の大きさ(Y軸方向長さ)は、フィルムSの成形条件に応じて設定するが、一般に、領域R1におけるクリップピッチCpの変化率と、領域R2におけるクリップピッチCpの変化率とは等しく設定されるため、領域R1の大きさと領域R2の大きさとは等しく設定される。なお、領域R1と領域R2とを異なる大きさ(長さ)に設定して、クリップピッチCpの変化率を異なる設定とすることも可能である。
このように、本実施形態において、縦方向変形手段であるクリップリンク機構50とピッチ設定ローラ57とは、フィルムS(延伸対象物)の幅方向の一方の側と他方の側とを、重複しない縦方向範囲(領域R1と領域R2)において、それぞれ緩和させる。
また、図6において、基準レール間隔waは、初期状態においてw1に設定される。そして、フィルムSが延伸緩和ゾーンBに進入すると、基準レール間隔waは、w1からw2まで、一定の割合で増大する。更に、基準レール間隔waがw2に達すると、以降はその値を維持する。このように、基準レール間隔waは、延伸緩和ゾーンBの入口から出口にかけて、w1からw2まで増大する。
ここで、図13を用いて、同時二軸延伸装置10aによって、フィルムSの配向性を高めることができることを説明する。図13は、本開示の同時二軸延伸装置がフィルムの配向性を高めることを示す図である。
従来の斜め延伸は、例えば、フィルムSの幅方向の一方を延伸させて、幅方向の他方を緩和させる組み合わせで行っていたが、入口と出口のクリップピッチ比で比較すれば、延伸させているため、図13(a),(b)に示すように、フィルムSを斜め延伸することはできるが、フィルムSに描かれた単位格子のサイズは維持されるか、又は増大されるため、フィルムSを、より密にする斜め延伸を行うことはできなかった。
これに対して、本実施形態の同時二軸延伸装置10aによると、図13(c)に示すように、フィルムSを縦方向に緩和させた際に生じる弛みを、フィルムSを幅方向に延伸させることによって吸収するため、フィルムSに描かれた単位格子が、より密になるように(単位格子の間隔が狭くなるように)斜め延伸させることができる。したがって、フィルムSの配向性を高めることができる。
以上説明したように、第1の実施形態の同時二軸延伸装置10aは、左側無端ループ10Lの基準レール100(幅方向変形手段)と、右側無端ループ10Rの基準レール100(幅方向変形手段)との間隔wa(基準レール間隔)を、フィルムS(延伸対象物)の幅方向(X軸方向)の所望の延伸倍率が得られるように増大させた際に、縦方向変形手段であるクリップリンク機構50とピッチ設定ローラ57とが、フィルムSの幅方向の少なくとも一方の側の基準レール100とピッチ設定レール120とのレール間隔wbを、フィルムSの幅方向の少なくとも一方の側の縦方向(Y軸方向)の緩和倍率が所定の値となるように減少させる。すなわち、幅方向と縦方向との一方の側でフィルムSを延伸した場合、他方の側でフィルムSを緩和する。このように、フィルムSの幅方向と縦方向とで異なる態様の変形を行わせることによって、フィルムSが縦方向(Y軸方向)に緩和されることによって生じる弛みを、フィルムSを幅方向(X軸方向)に延伸することによって吸収できるため、フィルムSに弛みを生じさせることなく、斜め方向の配向性を高めることができる。
また、第1の実施形態の同時二軸延伸装置10aは、縦方向変形手段が、フィルムS(延伸対象物)の幅方向の一方の側と他方の側とを、異なる縦方向範囲(領域R1と領域R2)において緩和することによって変形させる。したがって、フィルムSを幅方向に延伸させながら、幅方向の一方の側のみを緩和させるため、フィルムSの弛みの発生を抑制することができる。
特に、第1の実施形態の同時二軸延伸装置10aは、縦方向変形手段が、フィルムS(延伸対象物)の幅方向の一方の側と他方の側とを、重複しない縦方向範囲(領域R1と領域R2)において緩和することによって変形させる。したがって、フィルムSの弛みの発生をより一層抑制することができる。
[第2の実施形態]
本開示の第2の実施形態は、斜め延伸を行う同時二軸延伸装置10bの例である。特に、第2の実施形態は、フィルムSを幅方向に緩和させながら、縦方向に延伸させることによって、斜め延伸を行う例である。なお、同時二軸延伸装置10bの構成は、前記した同時二軸延伸装置10aの構成と同じであるため、説明は省略する。
[同時二軸延伸装置の作用の説明]
図7を用いて、同時二軸延伸装置10bが行う斜め延伸の第2の実施形態を説明する。図7は、同時二軸延伸装置が行う斜め延伸の第2の実施形態を示す平面図である。
同時二軸延伸装置10bは、入口1aから投入されたフィルムSを、予熱ゾーンAで加熱して、延伸緩和ゾーンBで斜め方向に延伸する。その際、延伸緩和ゾーンBでは、左側無端ループ10Lと右側無端ループ10Rとの基準レール100の間隔waを、w3からw4に減少させることによって、フィルムSを幅方向(X軸方向)に緩和させる。
そして、延伸緩和ゾーンBでは、領域R3において、右側無端ループ10R側(幅方向の少なくとも一方の側)のクリップピッチCpを増大させることによって、フィルムSを縦方向(Y軸方向)に延伸させる。さらに、領域R4において、左側無端ループ10L側(幅方向の少なくとも一方の側)のクリップピッチCpを増大させることによって、フィルムSを縦方向(Y軸方向)に延伸させる。ここで、領域R3と領域R4とは、異なる縦方向位置(Y軸方向位置)に設定されて、尚且つ、領域R3と領域R4とは、縦方向に重複しない。
延伸緩和ゾーンBにおいては、フィルムSが、幅方向に緩和されながら、縦方向に延伸される。その際、緩和によって発生するフィルムSの弛みは、縦方向に延伸される力によって吸収されるため、フィルムSは弛むことなく斜め方向に延伸される。なお、斜め方向の配向角度は、幅方向(X軸方向)の緩和倍率と、領域R3,R4における延伸倍率と、領域R3,R4の長さ等によって決定される。
なお、本実施形態では、先に右側無端ループ10R側の領域R3で延伸を行い、次に左側無端ループ10L側の領域R4で延伸を行ったが、この順序は、生成するフィルムSの配向角度に応じて適宜設定すればよい。すなわち、領域R3を左側無端ループ10L側に設定して、領域R4を右側無端ループ10R側に設定することによって、図7に示す例とはY軸に関して線対称な配向角度を有するフィルムSを成形することができる。
[クリップピッチ及び基準レール間隔の変化の説明]
次に、図8を用いて、同時二軸延伸装置10bにおけるクリップピッチCpと基準レール間隔waとの変化の様子を説明する。図8は、第2の実施形態におけるクリップピッチと基準レール間隔の変化を示すグラフである。
図8において、右側無端ループ10RのクリップピッチCpRは、初期状態においてCp3に設定される。そして、フィルムSが延伸緩和ゾーンBに進入すると、領域R3において、クリップピッチCpRがCp3からCp4まで、一定の割合で増大する。更に、クリップピッチCpRがCp4に達すると、以降はその値を維持する。なお、Cp3,Cp4の値、及び領域R3の大きさ(Y軸方向長さ)は、フィルムSの成形条件に応じて設定される。
一方、左側無端ループ10LのクリップピッチCpLは、初期状態においてCp3に設定される。そして、右側無端ループ10RのクリップピッチCpRがCp4に達すると、クリップピッチCpLは増大を開始する。そして、領域R4において、クリップピッチCpLは、Cp3からCp4まで一定の割合で増大する。更に、クリップピッチCpLがCp4に達すると、以降はその値を維持する。なお、領域R4の大きさ(Y軸方向長さ)は、フィルムSの成形条件に応じて設定するが、一般に、領域R3におけるクリップピッチCpの変化率と、領域R4におけるクリップピッチCpの変化率とは等しく設定されるため、領域R3の大きさと領域R4の大きさとは等しく設定される。
このように、同時二軸延伸装置10bは、縦方向変形手段であるクリップリンク機構50とピッチ設定ローラ57とは、フィルムS(延伸対象物)の幅方向の一方の側と他方の側とを、重複しない縦方向範囲(領域R3と領域R4)において、それぞれ延伸させる。
また、図8において、基準レール間隔waは、初期状態においてw3に設定される。そして、フィルムSが延伸緩和ゾーンBに進入すると、基準レール間隔waは、w3からw4まで、一定の割合で減少する。更に、基準レール間隔waがw4に達すると、以降はその値を維持する。このように、基準レール間隔waは、延伸緩和ゾーンBの入口から出口にかけて、w3からw4まで減少する。
以上説明したように、第2の実施形態の同時二軸延伸装置10bは、幅方向変形手段が、左側無端ループ10Lの基準レール100と、右側無端ループ10Rの基準レール100との間隔wa(基準レール間隔)を、フィルムSの幅方向(X軸方向)の所望の緩和倍率が得られるように減少させた際に、縦方向変形手段であるクリップリンク機構50とピッチ設定ローラ57とが、フィルムSの幅方向の少なくとも一方の側の基準レール100とピッチ設定レール120とのレール間隔wbを、フィルムSの幅方向の少なくとも一方の側の縦方向(Y軸方向)の延伸倍率が所定の値となるように増大させる。すなわち、幅方向と縦方向とで、フィルムSに対して異なる態様の変形を行わせる。したがって、フィルムSが幅方向(X軸方向)に緩和されることによって生じる弛みを、フィルムSを縦方向(Y軸方向)に延伸することによって吸収できるため、フィルムSに弛みを生じさせることなく、斜め方向の配向性を高めることができる。また、特に同時二軸延伸装置10bによると、フィルムSを幅方向に緩和しながら縦方向に延伸させるため、フィルムSの配向角度を急峻にすることができる。
また、第2の実施形態の同時二軸延伸装置10bは、縦方向変形手段が、フィルムS(延伸対象物)の幅方向の一方の側と他方の側とを、異なる縦方向範囲(領域R3と領域R4)において延伸することによって変形させる。したがって、フィルムSを幅方向に緩和させながら、幅方向の一方の側のみを延伸させるため、フィルムSの弛みの発生を抑制することができる。
特に、第2の実施形態の同時二軸延伸装置10bは、縦方向変形手段が、フィルムS(延伸対象物)の幅方向の一方の側と他方の側とを、重複しない縦方向範囲(領域R3と領域R4)において延伸することによって変形させる。したがって、フィルムSの弛みの発生をより一層抑制することができる。
[第3の実施形態]
本開示の第3の実施形態は、斜め延伸を行う同時二軸延伸装置10cの例である。特に、第3の実施形態は、フィルムSを幅方向に延伸させながら、縦方向に緩和させることによって、斜め延伸を行う例であり、フィルムSを縦方向に緩和させる領域を、フィルムSの幅方向の一方の側と他方の側とで一部重複させた例である。なお、同時二軸延伸装置10cの構成は、前記した同時二軸延伸装置10aの構成と同じであるため、説明は省略する。
[同時二軸延伸装置の作用の説明]
図9を用いて、同時二軸延伸装置10cが行う斜め延伸の第3の実施形態を説明する。図9は、同時二軸延伸装置が行う斜め延伸の第3の実施形態を示す平面図である。
同時二軸延伸装置10cは、入口1aから投入されたフィルムSを、予熱ゾーンAで加熱して、延伸緩和ゾーンBで斜め方向に延伸する。その際、延伸緩和ゾーンBでは、左側無端ループ10Lと右側無端ループ10Rとの基準レール100の間隔waを、w5からw6に増大させることによって、フィルムSを幅方向(X軸方向)に延伸させる。
そして、延伸緩和ゾーンBでは、領域R5において、左側無端ループ10L側(幅方向の少なくとも一方の側)のクリップ20の間隔(クリップピッチCp)を減少させることによって、フィルムSを縦方向(Y軸方向)に緩和させる。さらに、領域R6において、右側無端ループ10R側(幅方向の少なくとも一方の側)のクリップ20の間隔(クリップピッチCp)を減少させることによって、フィルムSを縦方向(Y軸方向)に緩和させる。ここで、領域R5と領域R6とは、異なる縦方向位置(Y軸方向位置)に設定されて、尚且つ、領域R5と領域R6とは、一部が重複する。
延伸緩和ゾーンBにおいては、フィルムSが、幅方向に延伸されながら、縦方向に緩和される。その際、緩和によって発生するフィルムSの弛みは、幅方向に延伸される力によって吸収されるため、フィルムSは弛むことなく斜め方向に延伸される。また、領域R5と領域R6とを一部重複させることによって、延伸緩和ゾーンBのY軸方向のサイズを小型化することができる。なお、斜め方向の配向角度は、幅方向(X軸方向)の緩和倍率と、領域R5,R6における緩和倍率と、領域R5,R6の長さ、領域R5,R6の重複部の長さ等によって決定される。
[クリップピッチ及び基準レール間隔の変化の説明]
次に、図10を用いて、同時二軸延伸装置10cにおけるクリップピッチCpと基準レール間隔waとの変化の様子を説明する。図10は、第3の実施形態におけるクリップピッチと基準レール間隔の変化を示すグラフである。
図10において、左側無端ループ10LのクリップピッチCpLは、初期状態においてCp5に設定される。そして、フィルムSが延伸緩和ゾーンBに進入すると、領域R5において、クリップピッチCpLがCp5からCp6まで、一定の割合で減少する。更に、クリップピッチCpLがCp6に達すると、以降はその値を維持する。なお、Cp5,Cp6の値、及び領域R5の大きさ(Y軸方向長さ)は、フィルムSの成形条件に応じて設定される。
一方、右側無端ループ10RのクリップピッチCpRは、初期状態においてCp5に設定される。そして、所定のタイミングにおいて、クリップピッチCpRがCp5からCp6まで、一定の割合で減少する(領域R6)。更に、クリップピッチCpRがCp6に達すると、以降はその値を維持する。なお、クリップピッチCpRの減少を開始させる所定のタイミングは、延伸緩和ゾーンBの出口において、フィルムSが斜め延伸を完了するタイミングに決定される。また、領域R6の大きさ(Y軸方向長さ)は、フィルムSの成形条件に応じて設定するが、一般に、領域R5におけるクリップピッチCpの変化率と、領域R6におけるクリップピッチCpの変化率とは等しく設定されるため、領域R5の大きさと領域R6の大きさとは等しく設定される。
このように、同時二軸延伸装置10cは、縦方向変形手段であるクリップリンク機構50とピッチ設定ローラ57とは、フィルムS(延伸対象物)の幅方向の一方の側と他方の側とを、一部が重複した縦方向範囲(領域R5と領域R6)において、それぞれ緩和させる。
また、図10において、基準レール間隔waは、初期状態においてw5に設定される。そして、フィルムSが延伸緩和ゾーンBに進入すると、基準レール間隔waは、w5からw6まで、一定の割合で増大する。更に、基準レール間隔waがw6に達すると、以降はその値を維持する。このように、基準レール間隔waは、延伸緩和ゾーンBの入口から出口にかけて、w5からw6まで増大する。
以上説明したように、第3の実施形態の同時二軸延伸装置10cは、縦方向変形手段が、フィルムS(延伸対象物)の幅方向の一方の側と他方の側とを、一部が重複した縦方向範囲(領域R5と領域R6)において緩和することによって変形させる。したがって、延伸緩和ゾーンBの縦方向長さ(Y軸方向長さ)を短くすることができる。これによって、同時二軸延伸装置10cを小型化することができる。
なお、第3の実施形態は、フィルムSを幅方向に緩和させながら、縦方向に延伸する場合にも、同様に適用することができる。
[第4の実施形態]
本開示の第4の実施形態は、斜め延伸を実現する同時二軸延伸装置10dの例である。特に、第4の実施形態は、フィルムSを幅方向に延伸させながら、縦方向に緩和させることによって、斜め延伸を行う例であり、フィルムSを縦方向に緩和させる領域を、延伸緩和ゾーンBから熱処理ゾーンCに亘って設定した例である。なお、同時二軸延伸装置10dの構成は、前記した同時二軸延伸装置10aの構成と同じであるため、説明は省略する。
[同時二軸延伸装置の作用の説明]
図11を用いて、同時二軸延伸装置10dが行う斜め延伸の第2の実施形態を説明する。図11は、同時二軸延伸装置が行う斜め延伸の第4の実施形態を示す平面図である。
同時二軸延伸装置10dは、入口1aから投入されたフィルムSを、予熱ゾーンAで加熱して、延伸緩和ゾーンBで斜め方向に延伸する。その際、延伸緩和ゾーンBでは、左側無端ループ10Lと右側無端ループ10Rとの基準レール100の間隔waを、w7からw8に増大させることによって、フィルムSを幅方向(X軸方向)に延伸させる。
そして、延伸緩和ゾーンBでは、領域R7において、左側無端ループ10L側(幅方向の少なくとも一方の側)のクリップ20の間隔(クリップピッチCp)を減少させることによって、フィルムSを縦方向(Y軸方向)に緩和させる。さらに、領域R8において、右側無端ループ10R側(幅方向の少なくとも一方の側)のクリップ20の間隔(クリップピッチCp)を減少させることによって、フィルムSを縦方向(Y軸方向)に緩和させる。ここで、領域R7と領域R8とは、異なる縦方向位置(Y軸方向位置)に設定されて、尚且つ、領域R8は、延伸緩和ゾーンBと熱処理ゾーンCとに跨って設定される。
このように、延伸緩和ゾーンBにおいては、フィルムSが幅方向に延伸されながら、縦方向に緩和される。その際、緩和によって発生するフィルムSの弛みは、幅方向に延伸される力によって吸収されるため、フィルムSは弛むことなく斜め方向に延伸される。また、領域R8の一部を熱処理ゾーンCにまで延長することによって、延伸緩和ゾーンBのY軸方向のサイズを小型化することができる。なお、斜め方向の配向角度は、幅方向(X軸方向)の延伸倍率と、領域R7,R8における緩和倍率と、領域R7,R8の長さ等によって決定される。
[クリップピッチ及び基準レール間隔の変化の説明]
次に、図12を用いて、同時二軸延伸装置10dにおけるクリップピッチCpと基準レール間隔waとの変化の様子を説明する。図12は、第4の実施形態におけるクリップピッチと基準レール間隔の変化を示すグラフである。
図12において、左側無端ループ10LのクリップピッチCpLは、初期状態においてCp7に設定される。そして、フィルムSが延伸緩和ゾーンBに進入すると、領域R7において、クリップピッチCpLがCp7からCp8まで、一定の割合で減少する。更に、クリップピッチCpLがCp8に達すると、以降はその値を維持する。なお、Cp7,Cp8の値、及び領域R7の大きさ(Y軸方向長さ)は、フィルムSの成形条件に応じて設定される。
一方、右側無端ループ10RのクリップピッチCpRは、初期状態においてCp7に設定される。そして、所定のタイミングにおいて、クリップピッチCpRがCp7からCp8まで、一定の割合で減少する(領域R8)。更に、クリップピッチCpRがCp8に達すると、以降はその値を維持する。なお、クリップピッチCpRの減少を開始させる所定のタイミングは、熱処理ゾーンCの入口から所定の範囲において、フィルムSが斜め延伸を完了するタイミングに決定される。また、領域R8の大きさ(Y軸方向長さ)は、フィルムSの成形条件に応じて設定するが、一般に、領域R7におけるクリップピッチCpの変化率と、領域R8におけるクリップピッチCpの変化率とは等しく設定されるため、領域R7の大きさと領域R8の大きさとは等しく設定される。
このように、同時二軸延伸装置10dは、フィルムSの幅方向の延伸を延伸緩和ゾーンBの内部で行い(領域R7)、フィルムSの縦方向の緩和を延伸緩和ゾーンB及び熱処理ゾーンCで行う(領域R8)。なお、熱処理ゾーンCにおいてフィルムSを緩和させることができるのは、延伸緩和ゾーンBから排出されたフィルムSには、自身を縦方向に収縮(緩和)させようとする力が残っているためである。
また、図12において、基準レール間隔waは、初期状態においてw7に設定される。そして、フィルムSが延伸緩和ゾーンBに進入すると、基準レール間隔waは、w7からw8まで、一定の割合で増大する。更に、基準レール間隔waがw8に達すると、以降はその値を維持する。このように、基準レール間隔waは、延伸緩和ゾーンBの入口から出口にかけて、w7からw8まで増大する。
以上説明したように、第4の実施形態の同時二軸延伸装置10dは、幅方向変形手段による幅方向の変形は、延伸緩和ゾーンBの内部で行って、縦方向変形手段による縦方向の変形は、延伸緩和ゾーンBの内部及び熱処理ゾーンCの内部で行う。したがって、熱処理ゾーンCの一部を、フィルムSを縦方向に緩和する領域として使用するため、延伸緩和ゾーンBの長さを短くすることができる。これによって、同時二軸延伸装置10dを小型化することができる。
なお、第4の実施形態は、フィルムSを幅方向に緩和させながら、縦方向に延伸する場合にも、同様に適用することができる。すなわち、幅方向に緩和された状態で延伸緩和ゾーンBから排出されたフィルムSには、フィルムS自身を縦方向に延伸させようとする力が残っているため、熱処理ゾーンCにおいて縦方向に延伸してもよい。