JP7348728B2 - 活物質、それを用いた正極合剤及び固体電池 - Google Patents
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Description
前記活物質は、X線吸収微細構造の測定によって得られる動径分布関数において、0.145nm以上0.185nm以下の範囲にピークが少なくとも1つ観察されるとともに、0.280nm以上0.310nm以下の範囲にピークが少なくとも1つ観察されるものであり、
前記活物質は、芯材粒子と、該芯材粒子の表面に配置された被覆層とを有し、該芯材粒子の表面又はその近傍にハロゲン元素が存在している、活物質を提供することによって前記の課題を解決したものである。
前記活物質は、X線吸収微細構造の測定によって得られる動径分布関数において、0.145nm以上0.185nm以下の範囲にピークが少なくとも1つ観察されるとともに、0.280nm以上0.310nm以下の範囲にピークが少なくとも1つ観察されるものであり、
前記活物質は、芯材粒子と、該芯材粒子の表面に配置された被覆層とを有し、X線光電子分光分析(XPS)により測定されるLi1sの結合エネルギーが54.0eV以上55.4eV以下にピーク頂点が観察される活物質を提供することによって前記の課題を解決したものである。
1.ハロゲン
本発明の活物質は、好適には、芯材粒子と、該芯材粒子の表面に配置された被覆層とを有する。芯材粒子の表面又はその近傍にはハロゲン元素が存在することが好ましい。芯材粒子の表面にハロゲン元素が存在することによって、後述するX線吸収微細構造の測定によって得られる動径分布関数のピーク位置が特定の範囲に観察されることと相まって、充電時における活物質からのリチウムイオンの移動性(脱離性)が向上する。また、電池の充電時に生ずるおそれのある、芯材粒子に含まれる酸素と硫化物固体電解質に含まれる硫黄との反応を抑制することができ、それによってもリチウムイオンの移動(脱離)が優先的に生じるようになる。「芯材粒子の表面又はその近傍」とは、芯材粒子の表面そのもの又は表面から厚み方向に沿った200nm以内、中でも100nm以内、特に50nm以内の領域のことである。芯材粒子の表面から厚み方向に沿った所定の範囲内にハロゲン元素が存在するとは、例えば、被覆層中にハロゲン元素が存在する場合や、被覆層の最表面にハロゲン元素が存在する場合等が想定される。
本発明の活物質における被覆層は、Li、A(AはTi、Zr、Ta、Nb、Zn、W及びAlからなる群から選ばれた1種又は2種以上の元素)及びOを含む化合物(「LiAO化合物」とも称する。)を含有することが好ましい。芯材粒子の表面がLiAO化合物で被覆されていることにより、リチウムイオン伝導性が向上し、正極活物質と固体電解質との間のリチウムイオンの移動性を改善することができ、充電特性を高めることができる。また、正極活物質と固体電解質との間の界面抵抗を低減させることができる。なおA元素はバルブメタルと呼ばれる、同様の性質を有する一群の金属元素である。
本発明の活物質は、X線吸収微細構造(以下「XAFS」ともいう。)の測定によって得られる動径分布関数において、0.145nm以上0.185nm以下の範囲にピークが少なくとも1つ観察されるとともに、0.280nm以上0.310nm以下の範囲にピークが少なくとも1つ観察される。
試料調製
試料をメノウ乳鉢で粉砕した後、窒化ホウ素粉末と混合し、直径10mm、厚さ約1mmの錠剤にする。測定する試料に含まれるA元素の濃度や、LiAO化合物及び芯材粒子を構成する化合物の吸収係数に応じて、試料と窒化ホウ素の分量を適宜最適にする。
・実験施設:SPring-8
・実験ステーション:BL14b2
・分光器 :モノクロメータSi(311)
・高次光除去:Rhコートミラー2.4mrad×2枚
・入射X線サイズ:縦1mm×横5mm(試料前スリットサイズ)
・測定法:透過法
・検出器:イオンチャンバー
・測定吸収端 :Nb-K吸収端(18986eV)
各入射X線エネルギー(E、x軸)において、I0、Itを測定し、次式により、X線吸光度(y軸)を求め、x軸-y軸でプロットすることにより、XAFSスペクトルを得た。
X線吸光度μt=-ln(It/I0)
EXAFSスペクトルをフーリエ変換して得られる動径分布関数について説明する。
解析ソフトウェアとして「Athena」(Demeter Ver.0.9.25)を用いる。
初めに、同ソフトウェアにてXAFSスペクトルを読み込んだ後に、バックグラウンド吸収であるPre-edge領域(吸収端から-150~-45eV程度の領域)と、Post-edge領域(吸収端から150~1300eV程度の領域)とをフィッティングして、XAFSスペクトルを規格化する。次にEXAFSスペクトル(χ(k))を抽出するために、スプライン曲線でフィッティングを行う。同ソフトウェアでの解析においてスプライン曲線のフィッティングに用いたパラメータは以下の値である。
・Rbkg=1
・Spline range in k:1~15
・Spline clamps low:None、high:None
・k-weight=3
・Plotting k-weights : 3
最後にEXAFSスペクトル(χ(k))をフーリエ変換して、動径分布関数を示すスペクトルを得る。同ソフトウェアでのフーリエ変換のパラメータは、以下の値を用いた。
・k-range:3.5~11.5
・dk:1
・window:Hanning
・arbitrary k-weight:1
・phase correction:未使用
また、芯材粒子が、ニッケルマンガン酸リチウム(LiNi0.5Mn1.5O4)などのスピネル型化合物から構成される場合には、B/Aの値は、例えば、5以上であってもよく、20以上であってもよく、50以上であってもよく、100以上であってもよく、150以上であってもよく、200以上であってもよい。一方、前記B/Aの値は、8000以下であってもよく、5000以下であってもよく、2000以下であってもよく、1500以下でもよい。
一方、芯材粒子がスピネル型化合物を含む場合、活物質の表面に存在する炭酸イオンの量は、活物質に対して2.0質量%未満であることが好ましく、中でも1.5質量%未満、その中でも1.0質量%未満、更にその中でも0.5質量%未満、更にその中でも0.3質量%未満、更にその中でも0.2質量%未満であることが好ましい。
芯材粒子は、活物質として機能するものであればよく、特に限定されない。芯材粒子は、例えば、リチウム金属複合酸化物を含んでいてもよい。リチウム金属複合酸化物としては、公知のリチウム金属複合酸化物を用いることができる。例えば一般式LiMO2(Mは金属元素)で示される層状岩塩構造のリチウム含有複合酸化物、一般式LiM2O4で示されるスピネル構造のリチウム含有複合酸化物、一般式LiMPO4(Mは金属元素)又はLiMSiO4(Mは金属元素)で示されるオリビン構造のリチウム含有複合酸化物のうちのいずれか1種あるいは二種類以上の組み合わせであってもよい。ただし、これらに限定するものではない。
次に、本発明の活物質の好適な製造方法について説明する。本発明の活物質は例えば、ハロゲンを含有する水溶性A元素塩及び水酸化リチウムを水に溶解して表面処理液を調製し、この表面処理液中に芯材粒子を投入し、混練してスラリー状とし、これを乾燥することによって好適に製造できる。ただし、活物質の製造方法をこのような方法に限定するものではない。例えば、転動流動コーティング法(ゾルゲル法)、メカノフュージョン法、CVD法及びPVD法等でも、条件を調整することにより製造することは可能である。
ニッケル塩化合物としては、例えば、炭酸ニッケル、硝酸ニッケル、塩化ニッケル、オキシ水酸化ニッケル、水酸化ニッケル及び酸化ニッケル等が挙げられ、中でも炭酸ニッケル、水酸化ニッケル及び酸化ニッケルが好ましい。
コバルト塩化合物としては、例えば、塩基性炭酸コバルト、硝酸コバルト、塩化コバルト、オキシ水酸化コバルト、水酸化コバルト及び酸化コバルト等が挙げられ、中でも塩基性炭酸コバルト、水酸化コバルト、酸化コバルト及びオキシ水酸化コバルトが好ましい。
本発明の活物質は、通常、正極活物質として用いることができる。また、本発明の活物質は、固体電池に用いられるものである。特に本発明の活物質は、固体電解質として硫化物固体電解質を含む固体電池に用いられることが有利である。固体電池において、本発明の活物質と、硫化物固体電解質との接触部分が存在することにより、本発明の効果を享受することができる。ここで「活物質と、硫化物固体電解質との接触部分が存在する」とは、(ア)正極合剤中に硫化物固体電解質を含有させること(この場合、固体電解質層は非硫化物でも可。)、(イ)正極合剤中に硫化物固体電解質を含有させず、固体電解質層に硫化物固体電解質を含有させること、及び(ウ)正極合剤中に硫化物固体電解質を含有させ、且つ固体電解質層に硫化物固体電解質を含有させることのいずれかを意味する。
本発明の正極合剤は、活物質と、固体電解質とを含む。なお、正極合剤に含まれる活物質については、前記「A.活物質」の項に記載した内容と同様とすることができるため、ここでの記載は省略する。
本発明の固体電池は、正極層、負極層、及び固体電解質層を備え、前記正極層が、上述した正極合剤を含む。
本明細書において「X~Y」(X,Yは任意の数字)と表現する場合、特に断らない限り「X以上Y以下」の意とともに、「好ましくはXより大きい」あるいは「好ましくはYより小さい」の意も包含する。また、「X以上」(Xは任意の数字)あるいは「Y以下」(Yは任意の数字)と表現した場合、「Xより大きいことが好ましい」あるいは「Y未満であることが好ましい」旨の意図も包含する。
(1A)芯材粒子の製造
硫酸ニッケルと硫酸コバルトと硫酸マンガンとを溶解した水溶液に、水酸化ナトリウムを供給し、共沈法によって金属複合水酸化物を作製した。この金属複合水酸化物におけるニッケル、コバルト及びマンガンのモル比は、Ni:Co:Mn=0.6:0.2:0.2であった。この金属複合水酸化物を炭酸リチウムと混合し、静置式電気炉を用いて大気下で720℃、5時間仮焼成した後、大気下で905℃、22時間本焼成してリチウム金属複合酸化物を得た。このリチウム金属複合酸化物を乳鉢で解砕し、次いで目開き53μmの篩で分級し、篩下のリチウム金属複合酸化物(以下「NCM」ともいう。)粉体からなる芯材粒子を回収した。芯材粒子は層状岩塩型化合物であり、ニッケル、コバルト及びマンガンのモル比は、前記金属複合水酸化物と同様に、Ni:Co:Mn=0.6:0.2:0.2であった。
3.68gのLiOH・H2O及び24gのフッ素を含有するペルオキソニオブ酸アンモニウムを、2000mLの水に溶解して処理液を調製した。この処理液を処理液Aという。前記(1A)で得られた芯材粒子200gに処理液Aを添加し、90℃以上で加熱した。90℃以上で加熱することにより、リチウム原料とペルオキソニオブ酸アンモニウムとが溶液内で反応する。これにより、芯材粒子の表面に吸着しやすい性質を持つLi-Nb-O系化合物が、芯材粒子の表面に生成する。その後、スプレードライ造粒法によって310℃で乾燥して正極活物質を得た。得られた正極活物質のD50は以下の表1に示すとおりであった。このサンプルはXAFSの測定によって得られる動径分布関数において0.145nm以上0.185nm以下の範囲に1本ピークを有し、0.280nm以上0.310nm以下の範囲にも1本ピークを有した。
(2A)において、スプレードライ造粒法の乾燥温度を表1に示す値とした。これ以外は実施例1と同様にして正極活物質を得た。このサンプルはXAFSの測定によって得られる動径分布関数において0.145nm以上0.185nm以下の範囲に1本ピークを有し、0.280nm以上0.310nm以下の範囲にも1本ピークを有した。
(2A)において、スプレードライ造粒法の乾燥温度を表1に示す値とした。また、(2A)において最後に120℃で2時間真空熱処理を追加した。これら以外は実施例1と同様にして正極活物質を得た。このサンプルはXAFSの測定によって得られる動径分布関数において0.145nm以上0.185nm以下の範囲に1本ピークを有し、0.280nm以上0.310nm以下の範囲にも1本ピークを有した。
(1A)において、芯材粒子の組成をNi:Co:Mn=0.33:0.33:0.33に設定した。また(2A)において、スプレードライ造粒法の乾燥温度を表1に示す値とした。処理液中のペルオキソニオブ酸アンモニウムの濃度を実施例1よりも高めた。これ以外は実施例1と同様にして正極活物質を得た。このサンプルはXAFSの測定によって得られる動径分布関数において0.145nm以上0.185nm以下の範囲に1本ピークを有し、0.280nm以上0.310nm以下の範囲にも1本ピークを有した。
(1A)において、ペルオキソニオブ酸アンモニウムに含まれるフッ素の量を実施例1よりも増やした。また0.43gのLiOH・H2O及び2.13gのフッ素を含有するペルオキソニオブ酸アンモニウムを、80mLの水に溶解した。その溶液を90℃以上で加熱し処理液を得た。前記(1A)で得られた芯材粒子20gに8mLの処理液を添加し、90℃以上で加熱乾燥とボールミルで混合を行った。この操作を10回繰り返した。更に乾燥後に熱処理を350℃で5時間行った。これら以外は実施例1と同様にして正極活物質を得た。このサンプルはXAFSの測定によって得られる動径分布関数において0.145nm以上0.185nm以下の範囲に1本ピークを有し、0.280nm以上0.310nm以下の範囲にも1本ピークを有した。
(1A)において、ペルオキソニオブ酸アンモニウムに含まれるフッ素の量を実施例1よりも増やした。また(2A)において、スプレードライ造粒法の乾燥温度を表1に示す値とした。更に乾燥後に熱処理を350℃で5時間行った。これら以外は実施例1と同様にして正極活物質を得た。このサンプルはXAFSの測定によって得られる動径分布関数において0.145nm以上0.185nm以下の範囲に1本ピークを有し、0.280nm以上0.310nm以下の範囲にも1本ピークを有した。
(1A)において、芯材粒子の組成をNi:Co:Mn=0.33:0.33:0.33に設定して正極活物質を得た。この正極活物質は被覆層を有していない。
(1A)において、芯材粒子の組成をNi:Co:Mn=0.33:0.33:0.33に設定した。(2A)において、スプレードライ造粒法の乾燥温度を表1に示す値とした。更に乾燥後に熱処理を500℃で5時間行った。これら以外は実施例1と同様にして正極活物質を得た。このサンプルはXAFSの測定によって得られる動径分布関数において0.145nm以上0.185nm以下の範囲にピークを有さなかったが、0.280nm以上0.310nm以下の範囲にピークを有した。
(1B)芯材粒子の製造
炭酸リチウムと、電解二酸化マンガンと、水酸化ニッケルと、酸化チタンをそれぞれ秤量した。これらの材料をイオン交換水中へ投入して、湿式粉砕機で粉砕して粉砕スラリーを得た。得られた粉砕スラリーを熱噴霧乾燥させて造粒粉を得た。得られた造粒粉を、静置式電気炉を用いて、大気雰囲気において、900℃で37時間焼成した。焼成物を解砕し、750℃で37時間熱処理した。その後、水洗ろ過を行い、500℃で7時間乾燥させた。解砕を行った後、解砕物を管状型静置炉に設置し、該静置炉内に供給量0.5L/minで酸素を流入させながら、725℃で5時間熱処理した。熱処理物を目開き53μmの篩で分級し、篩下のリチウムマンガン含有複合酸化物からなる芯材粒子を回収した。この芯材粒子はXRD測定で、スピネル型リチウムマンガンニッケル含有複合酸化物(以下「LMNO」ともいう。)であることを同定した。化学分析の結果、LMNOは、Li:4.2質量%、Mn:41.6質量%、Ni:13.5質量%、Ti:5.1質量%であった。
13.5gのLiOH・H2Oと、フッ素を含有するペルオキソニオブ酸アンモニウム29.3gとを586mLの水に溶解して水溶液を得た。この水溶液を90℃以上で2時間加熱した後に冷却してLi-Nb-Oの結晶を得た。前記(1B)で得られた芯材粒子10gを、Li濃度を11.4g/Lに調整した水酸化リチウム水溶液45mLに添加しスラリーを作製した。そのスラリーを90℃以上に加熱し、そこへ、Li-Nb-O水溶液15mLを加えた。Li-Nb-O水溶液はLi-Nb-O結晶0.6gと水17mLを混合して作製した。更にそのスラリーを90℃以上で10分間加熱した。90℃以上で加熱することにより正極活物質の表面に吸着しやすい性質を持つLi-Nb-O系化合物が芯材粒子の表面に生成する。液をデカンテーションして、0.14mol/Lの硫酸リチウム溶液90mLで2回洗浄した。その後130℃で乾燥後、200℃で2時間熱処理して正極活物質を得た。このサンプルはXAFSの測定によって得られる動径分布関数において0.145nm以上0.185nm以下の範囲に1本ピークを有し、0.280nm以上0.310nm以下の範囲にも1本ピークを有した。
実施例7において、ペルオキソニオブ酸アンモニウムに含まれるフッ素の量を増やした。これら以外は実施例8と同様にして正極活物質を得た。このサンプルはXAFSの測定によって得られる動径分布関数において0.145nm以上0.185nm以下の範囲に1本ピークを有し、0.280nm以上0.310nm以下の範囲にも1本ピークを有した。
実施例7において(2A)を行わなかった。これ以外は実施例8と同様にして正極活物質を得た。この正極活物質は被覆層を有していない。
実施例及び比較例で得られた正極活物質について、上述の方法で、BET比表面積A(m2/g)に対するカールフィッシャー法によって測定された110℃までの水分率B(質量ppm)の比であるB/Aの値、粒径D50、BET比表面積及び水分率(110℃及び250℃)、並びに残留炭酸イオンの濃度を測定した。また、実施例及び比較例で得られた正極活物質の各種物性値を次のように測定した。それらの結果を以下の表1及び表2に示す。
誘導結合プラズマ(ICP)発光分光分析によって、正極活物質に含まれる各元素の含有量を測定した。
正極活物質を酸素及び水蒸気気流で加熱分解し、正極活物質中のフッ素を過酸化水素溶液に捕集して試料溶液を調製した。次いで、試料溶液のイオンクロマトグラフィー測定を行い、フッ化物イオンを定量することでフッ素量を測定した。測定装置には、サーモフィッシャーサイエンティフィック社製ICS-2100を用い、カラムに Ion Pac AS19、キャリア液(溶離液)に水酸化カリウム水溶液を用い、35℃で測定を行った。このようにして正極活物質に対するフッ素量の質量の割合(ppm)を求め、ICPより求めたニオブ(Nb)元素の含有量(質量%)に対する、イオンクロマトグラフィーにより求めたフッ素量(ppm)の質量比率として「F/Nb」を計算した。なお、前記の測定条件はフッ素以外のハロゲンにも適応することができる。
アルバック・ファイ社製のXPS装置である、QUANTUM2000を用いて、正極活物質の粒子表面の分析を行った。測定に使用した条件等は以下のとおりである。
励起X線:モノマーAl-Kα線(1486.6eV)
出力:100W
加速電圧:20kV
X線照射径:100μmφ
測定面積:100μm×1mm
Take of Angle:45°
パスエネルギー:23.5eV
エネルギーステップ:0.1eV
Li:1s
Ni:2p1
Nb:3d
Mn:2p1
Ti:2p3
C:1s
O:1s
F:1s
N:1s
アルバック・ファイ社製の飛行時間型二次イオン質量分析(TOF-SIMS)装置である、TRIFT IVを用いて、正極活物質の粒子表面の分析を行い、その表面に存在するハロゲンの濃度を測定した。具体的には、二次イオン極性を負の条件によって測定される、正極活物質の表面より集めた二次イオンのすべてのカウント数の合計(total)に対する、フッ素イオンのカウント数(F-)の比率(F-/total)を測定した。
一次イオン:Au+
加速電圧:30kV
測定エリア面積:10000μm2 (100μm×100μm)
測定時間の単位:10分
測定イオン種:Positive/Negative
電子中和:有
正極活物質(サンプル)と固体電解質を用いて、固体リチウム二次電池を作製し、電池特性評価(充電特性)を行った。
実施例及び比較例で作製した正極活物質を用い、負極活物質としてグラファイト(Gr)粉末を用い、固体電解質粉末として組成式:Li5.4PS4.8Cl0.8Br0.8で示される粉末を用いた。正極合材粉末は、正極活物質(NCM)、固体電解質粉末及び導電材であるVGCF(登録商標)粉末を80:17:3の質量割合、又は正極活物質(LMNO)、固体電解質粉末及び導電材であるVGCF(登録商標)粉末を60:30:10の質量割合で乳鉢混合することで調製した。負極合材粉末は、負極活物質(グラファイト)及び固体電解質を64:36の質量割合、又は、負極活物質(グラファイト)及び固体電解質を50:50の質量割合で乳鉢混合することで調製した。
正極活物質として芯材にNCMを含むものを用いる場合には、正極合材粉末14.5mgを密閉型セルの絶縁筒内(φ9mm)に充填して、500MPaで一軸成型することで正極合材粉末ペレットを作製した。得られた正極ペレットを密閉型セルの絶縁筒内(φ10.5mm)に移し、正極ペレット上に固体電解質粉末50mgを充填した。次に、正極合剤ペレットとともに184MPaで一軸成型した後、固体電解質の上に負極活物質(グラファイト)及び固体電解質を64:36の質量割合で混合した24.7mgの負極合材粉末を充填し、551MPaで一軸成型した。更に、加圧ネジで締め込み、固体リチウム二次電池を作製した。
正極活物質として芯材にLMNOを含むものを用いる場合には、正極合材粉末13.0mgを密閉型セルの絶縁筒内(φ9mm)に充填して、500MPaで一軸成型することで正極合材粉末ペレットを作製した。得られた正極ペレットを密閉型セルの絶縁筒内(φ10.5mm)に移し、正極ペレット上に固体電解質粉末50mgを充填した。次に、正極合剤ペレットとともに184MPaで一軸成型した後、固体電解質の上に負極活物質(グラファイト)及び固体電解質を50:50の質量割合で混合した10.4mgの負極合材粉末を充填し、551MPaで一軸成型した。更に、加圧ネジで締め込み、固体リチウム二次電池を作製した。
実施例1~6の固体リチウム二次電池について、1サイクルに充電終止電圧4.5Vまで0.3Cで定電流充電を行った。その後、4.5Vで電流値が0.01Cになるまで定電圧充電を行った。4.5Vに到達するまで定電流充電で得られた容量をCC容量とする。CC容量を1サイクル目の全充電容量で除した値に100を乗じた値を充電特性とした。比較例1の充電特性を実施例1~6の充電特性から引いた値を、比較例1の充電特性で除した値に100を乗じ、それによって得られた値を充電特性改善率とし、表に記載した。
実施例7~9の全固体型リチウム二次電池については、1サイクル目に充電終止電圧5.0Vまで0.1Cで定電流充電を行った。その後、5.0Vで電流値が0.01Cになるまで定電圧充電を行った。比較例3の充電特性に対して実施例1~6と同様の方法で実施例8~10の充電特性改善率を算出し、表に記載した。前記充電特性改善率は、充電時におけるリチウムイオンの移動性(脱離性)の改善率を示しており、当該充電特性改善率により、急速充電について評価することができる。
Claims (14)
- 固体電池に用いられる活物質であって、
前記活物質は、X線吸収微細構造の測定によって得られる動径分布関数において、0.145nm以上0.185nm以下の範囲にピークが少なくとも1つ観察されるとともに、0.280nm以上0.310nm以下の範囲にピークが少なくとも1つ観察されるものであり、
前記活物質は、芯材粒子と、該芯材粒子の表面に配置された被覆層とを有し、該芯材粒子の表面又はその近傍にハロゲン元素が存在しており、
前記被覆層が、リチウム(Li)元素、A元素(AはTi、Zr、Ta、Nb、Zn、W及びAlからなる群から選ばれた1種又は2種以上の元素)及び酸素(O)元素を含む化合物を含有し、
前記化合物が、A元素として少なくともNb元素を含有し、
前記化合物は、A元素1モルに対して、Liが1モルより過剰に含まれている組成である、活物質。 - 固体電池に用いられる活物質であって、
前記活物質は、X線吸収微細構造の測定によって得られる動径分布関数において、0.145nm以上0.185nm以下の範囲にピークが少なくとも1つ観察されるとともに、0.280nm以上0.310nm以下の範囲にピークが少なくとも1つ観察されるものであり、
前記活物質は、芯材粒子と、該芯材粒子の表面に配置された被覆層とを有し、X線光電子分光分析(XPS)により測定されるLi1sの結合エネルギーが54.0eV以上55.4eV以下にピーク頂点が観察され、
前記被覆層が、リチウム(Li)元素、A元素(AはTi、Zr、Ta、Nb、Zn、W及びAlからなる群から選ばれた1種又は2種以上の元素)及び酸素(O)元素を含む化合物を含有し、
前記化合物が、A元素として少なくともNb元素を含有し、
前記化合物は、A元素1モルに対して、Liが1モルより過剰に含まれている組成である、活物質。 - 飛行時間型二次イオン質量分析法(TOF-SIMS)を使用し、二次イオン極性を負の条件によって測定される、前記芯材粒子の表面より集めた二次イオンのすべてのカウント数の合計(total)に対する、ハロゲンイオンに関する二次イオン種のカウント数(X-)の比率(X-/total)が0.00075以上である請求項1又は2に記載の活物質。
- 前記活物質を全溶解して誘導結合プラズマ発光分光分析により測定されるA元素量(質量%)に対する、該活物質を加熱分解した後イオンクロマトグラフィーにより測定されるハロゲン(X)元素量(ppm)の質量比率(X/A)が0.5×10-4以上である請求項1ないし3のいずれか一項に記載の活物質。
- X線光電子分光分析によって測定される、前記芯材粒子の表面に存在するA元素量に対するハロゲン(X)元素量のmol比率(X/A)が0.011以上である請求項1ないし4のいずれか一項に記載の活物質。
- X線光電子分光分析によって測定される、前記芯材粒子の表面に存在するA元素量に対する、リチウム(Li)元素量のmol比率(Li/A)が1.0以上33.3以下である請求項1ないし5のいずれか一項に記載の活物質。
- ハロゲン(X)元素がフッ素(F)元素である請求項1ないし6のいずれか一項に記載の活物質。
- 前記芯材粒子が、一般式LiMO2(Mは金属元素)で示される層状岩塩構造のリチウム金属複合酸化物又はLiM2O4(Mは金属元素)で示されるスピネル構造のリチウム金属複合酸化物からなる請求項1ないし7のいずれか一項に記載の活物質。
- BET比表面積A(m2/g)に対するカールフィッシャー法によって測定された110℃までの水分率B(質量ppm)の比であるB/Aの値が1以上8000以下である請求項1ないし8のいずれか一項に記載の活物質。
- 前記被覆層の厚みが0.5nm以上200nm以下である請求項1ないし9のいずれか一項に記載の活物質。
- 請求項1ないし10のいずれか一項に記載の活物質と、固体電解質とを含む正極合剤。
- 前記固体電解質が、リチウム(Li)元素、リン(P)元素及び硫黄(S)元素を含み、且つリチウムイオン伝導性を有する請求項11に記載の正極合剤。
- 前記固体電解質が、アルジロダイト型構造の結晶相を有する請求項12に記載の正極合剤。
- 正極層、負極層、及び固体電解質層を備えた固体電池において、
前記正極層が、請求項1ないし10のいずれか一項に記載の活物質を含む固体電池。
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