JP2020140839A - 活物質、それを用いた正極合剤及び固体電池 - Google Patents
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Abstract
Description
X線吸収微細構造の測定によって得られる動径分布関数において、0.115nm以上0.144nm以下の範囲にピークが少なくとも一つ観察されるとともに、0.310nm超0.344nm以下の範囲にピークが少なくとも一つ観察され、
レーザー回折散乱式粒度分布測定法により測定して得られる体積粒度分布測定による前記活物質のモード径及びD10(それぞれ「モード径」、「D10」と称する。)に関し、モード径に対する、モード径とD10との差の絶対値の百分率である(|モード径−D10|/モード径)×100の値が、0%<((|モード径−D10|/モード径)×100)≦58.0%を満たす活物質を提供することによって前記の課題を解決したものである。
1.XAFS
本発明の活物質は、X線吸収微細構造(以下「XAFS」ともいう。)の測定によって得られる動径分布関数において、0.115nm以上0.144nm以下の範囲にピークが少なくとも一つ観察されるとともに、0.310nm以上0.344nm以下の範囲にピークが少なくとも一つ観察される。
本発明において観察されるピーク位置は、例えば、0.120nm以上であってもよく、0.125nm以上であってもよく、0.130nm以上であってもよい。一方、前記ピーク位置は、例えば、0.140nm以下であってもよい。前記範囲に観察されるピークは、少なくとも一つであればよく、例えば一つのみであってもよく、2つ以上であってもよい。これとともに本発明の活物質は、0.310nm超0.344nm以下の範囲にピークが少なくとも一つ観察される。本発明において観察されるピーク位置は、例えば、0.315nm以上であってもよい。
試料調製
試料をメノウ乳鉢で粉砕した後、窒化ホウ素粉末と混合し、直径10mm、厚さ約1mmの錠剤にする。測定する試料に含まれるA元素の濃度や、LiAO化合物及び芯材粒子を構成する化合物のX線吸収係数に応じて、試料と窒化ホウ素の分量を適宜最適にする。
・実験施設:SPring−8
・実験ステーション:BL14b2
・分光器 :モノクロメータSi(311)
・高次光除去:Rhコートミラー2.4mrad×2枚
・入射X線サイズ:縦1mm×横5mm(試料前スリットサイズ)
・測定法:透過法
・検出器:イオンチャンバー
・測定吸収端 :Nb−K吸収端(18986eV)
各入射X線エネルギー(E、x軸)において、I0、Itを測定し、次式により、X線吸光度(y軸)を求め、x軸−y軸でプロットすることにより、XAFSスペクトルを得た。
X線吸光度μt=−ln(It/I0)
EXAFSスペクトルをフーリエ変換して得られる動径分布関数について説明する。
解析ソフトウェアとして「Athena」(Demeter ver.0.9.25)を用いる。
初めに、同ソフトウェアにてXAFSスペクトルを読み込んだ後に、バックグラウンド吸収であるPre−edge領域(吸収端から−150eV以上−45eV以下程度の領域)と、Post−edge領域(吸収端から150eV以上1300eV以下程度の領域)とをフィッティングして、XAFSスペクトルを規格化する。次にEXAFSスペクトル(χ(k))を抽出するために、スプライン曲線でフィッティングを行う。同ソフトウェアでの解析においてスプライン曲線のフィッティングに用いたパラメータは以下の値である。
・Rbkg=1
・Spline range in k:1以上15以下
・Spline clamps low:None、high:None
・k-weight=3
・Plotting k-weights : 3
最後にEXAFSスペクトル(χ(k))をフーリエ変換して、動径分布関数を示すスペクトルを得る。同ソフトウェアでのフーリエ変換のパラメータは、以下の値を用いた。
・k-range:3.5以上11.5以下
・dk:1
・window:Hanning
・arbitrary k-weight:1
・phase correction:未使用
上述のとおり本発明の活物質は、芯材粒子と、該芯材粒子の表面に配置された被覆層とを有することが好ましい。本発明の活物質がこのような形態である場合、被覆層は、Li、A元素(AはTi、Zr、Ta、Nb、Zn、W及びAlからなる群から選ばれた1種又は2種以上の元素)及びOを含む化合物からなること、すなわち上述したLiAO化合物からなることが好ましい。芯材粒子の表面がLiAO化合物で被覆されていることにより、リチウムイオン伝導性が向上し、正極活物質と固体電解質間の界面抵抗を低減することができ、レート特性を高めることができる。なお上記の好ましい態様におけるA元素はバルブメタルと呼ばれる、同様の性質を有する一群の金属元素である。
また、芯材粒子の表面を被覆するLiAO化合物の厚みは均一でなくても構わない。
芯材粒子は、活物質として機能するものであればよく、特に限定されない。芯材粒子は、例えば、リチウム金属複合酸化物を含んでいてもよい。リチウム金属複合酸化物としては、公知のリチウム金属複合酸化物を用いることができる。例えば一般式LiMO2(Mは金属元素)で示される層状岩塩型構造のリチウム含有複合酸化物、一般式LiM2O4で示されるスピネル型構造のリチウム含有複合酸化物、一般式LiMPO4(Mは金属元素)又はLiMSiO4(Mは金属元素)で示されるオリビン構造のリチウム含有複合酸化物のうちのいずれか1種或いは二種類以上の組み合わせであってもよい。ただし、これらに限定するものではない。
芯材粒子は、Li、Mn及びOと、これら以外の1種類以上好ましくは2種類以上の元素とを含むスピネル型複合酸化物からなる粒子であることが好ましい(以下、この芯材粒子のことを「芯材粒子A」ともいう。)。芯材粒子Aを含む本発明の活物質を正極活物質として用いた場合、金属Li基準電位で4.5V以上の作動電位を有する。「金属Li基準電位で4.5V以上の作動電位を有する」とは、プラトー領域として4.5V以上の作動電位のみを有している必要はなく、4.5V以上の作動電位を一部有している場合も包含する意である。したがって本発明は、プラトー領域として4.5V以上の作動電位を有する5V級正極活物質のみからなる正極活物質に限定されるものではない。例えば本発明の活物質は、プラトー領域として4.5V未満の作動電位を有する正極活物質を含んでいてもよい。具体的には、当該5V級正極活物質が30質量%以上を占めていることが好ましく、好ましくは50質量%以上、その中でも特に好ましくは80質量%以上(100質量%含む)を占める正極活物質を許容するものである。
芯材粒子は、Li、M元素(Mは、少なくともNi、Co、Mn及びAlからなる群から選択される1種又は二種以上の元素の組み合わせを含む。)及びOを含む層状構造を持つリチウムニッケル金属複合酸化物からなる粒子であることも好ましい(以下、この芯材粒子のことを「芯材粒子B」ともいう。)。本発明の活物質は、芯材粒子Bの他に、他の成分を含んでいてもよい。尤も、芯材粒子Bの特性を効果的に得ることができる観点から、芯材粒子Bが80質量%以上、中でも90質量%以上、その中でも95質量%以上(100質量%を含む)を占めることが好ましい。
本発明の活物質は、次のような特徴を有することが好ましい。
本発明の活物質の一次粒子は、単結晶体ではなく、多結晶体であることが好ましい。詳細にいえば、多結晶体である芯材粒子の表面に非晶質である非晶質化合物が存在していることが好ましい。単結晶体とは、一次粒子が一つの結晶子で構成されている粒子を意味し、多結晶体とは一次粒子内に複数の結晶子が存在している粒子であることを意味する。
本発明の活物質のモード径、すなわちレーザー回折散乱式粒度分布測定法により測定して得られる体積粒度分布測定によるモード径は0.40μm以上11.0μm以下であることが好ましく、中でも1.00μmより大きい或いは11.0μm未満、その中でも1.00μmより大きい或いは10.0μm未満、その中でも特に1.50μmより大きい或いは10.0μm未満、更にその中でも2.00μmより大きい或いは9.0μm未満であることが特に好ましい。モード径を前記の範囲内とすることで、二次粒子内にLiが拡散するときの抵抗を小さくすることができ、その結果、放電末期特性を向上させられる。
本発明の活物質のD50、すなわちレーザー回折散乱式粒度分布測定法により測定して得られる体積粒度分布測定によるD50は、例えば0.5μm以上であることが好ましく、1.0μm以上であることが好ましく、2.0μm以上であることが好ましく、2.5μm以上であることが好ましい。一方、前記D50は、例えば15.0μm以下であることが好ましく、中でも10.0μm以下であることが好ましく、特に8.0μm以下であることが好ましい。D50を前記の範囲とすることで、二次粒子内にLiが拡散するときの抵抗を小さくすることができ、その結果、放電末期特性を向上させることができる。
本発明の活物質は、モード径に対する、モード径とD50との差の絶対値の百分率((|モード径−D50|/モード径)×100)の値が0%≦((|モード径−D50|/モード径)×100)≦25%を満たすことが好ましい。中でも((|モード径−D50|/モード径)×100)は、((|モード径−D50|/モード径)×100)≦20%を満たすことが好ましく、特に((|モード径−D50|/モード径)×100)≦17%を満たすことが好ましく、更に((|モード径−D50|/モード径)×100)≦16%を満たすことが好ましく、中でもまた((|モード径−D50|/モード径)×100)≦15%以下を満たすことが好ましい。一方、((|モード径−D50|/モード径)×100)は、0%<((|モード径−D50|/モード径)×100)を満たすことが好ましく、中でも1%≦((|モード径−D50|/モード径)×100)を満たすことが好ましく、特に2%≦((|モード径−D50|/モード径)×100)を満たすことが好ましく、更にまた2.5%≦((|モード径−D50|/モード径)×100)を満たすことが好ましい。(|モード径−D50|/モード径)×100の値が前記の範囲であるということは、粒度分布が単峰型、すなわち複数のピークを持たない分布であり、しかも、正規分布であるかそれに近い分布であることを意味する。
本発明の活物質のD10、すなわちレーザー回折散乱式粒度分布測定法により測定して得られる体積粒度分布測定によるD10は、例えば0.2μm以上8.0μm以下であることが好ましい。活物質のD10は、中でも1.0μm以上であることが好ましく、特に2.0μm以上であることが好ましい。一方、活物質のD10は、中でも6.0μm以下であることが好ましく、特に、5.0μm以下であることが好ましい。D10を前記の範囲に調整することにより、副反応を抑制することができる。
本発明の活物質は、モード径に対する、モード径とD10との差の絶対値の百分率((|モード径−D10|/モード径)×100)の値が0%<((|モード径−D10|/モード径)×100)≦58.0%であることが好ましい。中でも((|モード径−D10|/モード径)×100)は、((|モード径−D10|/モード径)×100)≦55.0%を満たすことが好ましく、特に((|モード径−D10|/モード径)×100)≦45.0%を満たすことが好ましく、更に((|モード径−D10|/モード径)×100)≦40.0%を満たすことが好ましい。一方、((|モード径−D10|/モード径)×100)は、1%≦((|モード径−D10|/モード径)×100)を満たすことが好ましく、特に2%≦((|モード径−D10|/モード径)×100)を満たすことが好ましく、更にまた2.5%≦((|モード径−D50|/モード径)×100)を満たすことが好ましい。((|モード径−D10|/モード径)×100)の値が前記の範囲であるということは、活物質のモード径からD10までの分布の幅が狭いことを意味する。
本発明の活物質のDmin、すなわちレーザー回折散乱式粒度分布測定法により測定して得られる体積粒度分布測定によるDminは、例えば0.1μm以上であることが好ましく、中でも0.15μmより大きいことが好ましく、特に2.0μmより大きいことが好ましく、更にその中でも0.6μmより大きいことが好ましい。一方、Dminは、例えば6.0μm以下であることが好ましく、中でも5.0μm未満であることが好ましく、特に4.0μm未満であることが好ましく、更にその中でも3.0μm未満であることが好ましく、更にその中でも2.0μm以下であることが好ましく、更には1.8μm未満であることが好ましい。Dminが前記の範囲であることにより、副反応を抑制でき、またサイクル特性を向上させることができる。
本発明の活物質の平均一次粒子径、すなわちSEM画像より算出した平均一次粒子径は、例えば0.10μm以上であることが好ましく、中でも0.25μmより大きいことが好ましく、特に0.40μmより大きいことが好ましく、更に0.50μmより大きいことが好ましい。一方、前記平均一次粒子径は、例えば、5.00μm以下であることが好ましく、中でも4.00μm以下であることが好ましく、特に3.00μm以下であることが好ましい。平均一次粒子径が前記の範囲内であることにより、レート特性の向上を達成できる。
本発明の活物質は、D50に対する平均一次粒子径の比率(平均一次粒子径/D50)が0.01以上0.99以下であることが好ましい。中でも、上記比率は、0.1以上であることが好ましく、特に、0.2以上であることが好ましく、その中でも0.3以上であることが好ましく、更に0.4以上であることが好ましい。一方、上記比率は、0.9以下であることが好ましく、中でも0.85以下であることが好ましく、特に0.7以下であることが好ましい。平均一次粒子径/D50を前記の範囲にすることにより、一次粒子の分散性を高めることができる。そのため、二次粒子が粒度分布の半分以上を占める場合に比べて、一次粒子1つ1つが充分に固体電解質と接触することができる。これにより、Liと粒子との反応面積が増加するとともに、二次粒子内の一次粒子どうしの界面における抵抗を減少させることができ、放電末期特性改善に繋がる。
本発明の活物質は、結晶子サイズが例えば80nm以上490nm以下であることが好ましい。中でも、結晶子サイズは、100nm以上であることが好ましく、特に110nm以上であることが好ましく、更に120nm以上であることが好ましく、その中でも130nm以上であることが好ましい。一方、結晶子サイズは、350nm以下であることが好ましく、240nm以下であることが好ましい。結晶子サイズを前記の範囲に規定することにより、結晶子内のイオン導電性を高めることができ、抵抗を低減することができる。また、抵抗低減により、サイクル時の分極を抑えることができ、高温時における充放電の繰り返しに伴って徐々に放電容量が低下するのを抑制することができる。
本発明の活物質は、結晶子サイズに対する平均一次粒子径の比率(結晶子サイズ/平均一次粒子径)が例えば0.01以上0.50以下であることが好ましい。中でも、上記比率は、0.02以上であることが好ましく、特に0.03以上であることが好ましく、更に0.04以上であることが好ましく、その中でも0.05以上であることが好ましい。一方、上記比率は、0.41以下であることが好ましく、中でも0.32以下であることが好ましく、特に0.26以下であることが好ましい。上述のように、本発明の活物質は好適には多結晶体であるから、結晶子サイズ/平均一次粒子径は1未満の値となり、更に前記の範囲であれば粉体中の一次粒子の分散性が良好となり、一次粒子と固体電解質との接触面積が増加するとともに、二次粒子内の一次粒子どうしの界面における抵抗を減少させることができ、放電末期特性改善に繋げることができる。結晶子サイズを前記の範囲に調整するには、焼成温度、焼成時間、反応性を高める助剤、焼成雰囲気、原料種などを調節することが好ましい。尤も、これらの方法に限定するものではない。
本発明の活物質は、X線回折装置(XRD)により測定されるX線回折パターンにおいて、リートベルト解析から得られる歪みの数値が、例えば0.00以上0.35以下であることが好ましい。この程度に歪みが少なければ、リチウムニッケル金属複合酸化物の骨格が充分に強固であるから、リチウム二次電池の活物質として使用した場合に、放電末期特性及びサイクル特性を更に高めることができる。かかる観点から、本発明の活物質の歪みは、中でも0.35未満、その中でも0.32未満、その中でも0.30未満、その中でも更に0.28未満、その中でも0.25未満、その中でも更に0.20未満、更にその中でも0.15未満であることがより一層好ましい。本発明の活物質の歪みを前記の範囲にするには、好ましい条件で熱処理すればよい。尤も、これらの方法に限定するものではない。
本発明の活物質はその比表面積が、副反応を抑える観点から、例えば0.1m2/g以上12.0m2/g以下であることが好ましく、中でも0.2m2/gより大きい或いは10.0m2/g未満であることが更に好ましく、その中でも8.0m2/g未満、その中でも更に7.0m2/g未満、その中でも特に5.0m2/g未満であることがより一層好ましい。場合によっては、本発明の活物質の比表面積は、例えば0.4m2/g以上或いは12.0m2/g以下であることが好ましく、中でも0.5m2/g以上或いは10.0m2/g以下であることが更に好ましく、その中でも8.0m2/g以下、その中でも更に5.0m2/g以下であることがより一層好ましい。
本発明の活物質が、芯材粒子の表面が非晶質化合物で被覆されてなる構成を備えている場合には、活物質の表面におけるLiとA元素との比率を所定範囲に制御することにより、リチウムイオン伝導性向上と抵抗抑制を両立させることができ、放電末期特性を改善するとともに、レート特性、サイクル特性を有効に改善することができる。詳細には、X線光電子分光分析(XPS)によって得られる、活物質(粒子)の表面におけるA元素含有量に対するLi含有量のmol比率(Li/A)は1.0以上33.3以下であることが好ましい。その中でも更に1.0以上25.0以下、更に1.0以上20.0以下、更に1.0以上15.0以下、更に1.0以上10.0以下、更に1.0以上6.0以下であることが更に好ましい。前記mol比率(Li/A)は炭酸リチウム起因のLiも含めた値である。
本発明の活物質の表面に存在する炭酸塩(炭酸リチウムや炭酸ナトリウムなど)の量が多いと抵抗となってリチウムイオン伝導性を低下させる可能性がある。そのため、炭酸塩由来と考えられる炭酸イオン量すなわちCO3 2−量は、本発明の活物質に対して4.0質量%未満であることが好ましく、中でも3.0質量%未満、その中でも2.5質量%未満、更にその中でも2.0質量%未満、とりわけその中でも1.0質量%未満であることが更に好ましい。活物質の表面に存在する炭酸リチウム量を低下させるためには、例えば、酸素雰囲気下などの二酸化炭素を含まない雰囲気で焼成し、更に好ましくは、超音波を照射しながら加水分解することが好ましい。
本発明の活物質は、例えば、Li、M元素(MはNi、Co、Mn及びAlからなる群から選択される1種又は2種以上の元素の組み合わせである。)及びOを含む層状構造を持つリチウム金属複合酸化物からなる芯材粒子粉末を調整する一方、リチウム原料、A元素原料を溶媒に溶解させた混合溶液に芯材粒子を加えた後、所定条件の下で乾燥、焼成することにより製造できる。或いは、リチウム原料、A元素原料を溶媒に溶解させた混合溶液に芯材粒子を加えた後、所定条件の下で乾燥、焼成することにより、芯材粒子に表面被覆処理を施して製造することができる。尤も、これらの製造方法は好ましい一例であって、このような製造方法に限定するものではない。例えば、転動流動コーティング法(ゾルゲル法)、メカノフュージョン法、CVD法及びPVD法等でも、条件を調整することにより製造することは可能である。
芯材粒子の製造方法の一例として、原料混合工程、湿式粉砕工程、造粒工程、焼成工程、熱処理工程、洗浄・乾燥工程及び粉砕工程を備えた製造方法を挙げることができる。尤も、かかる製造方法は好ましい一例であって、このような製造方法に限定するものではない。
前記のように作製した芯材粒子の表面を、LiAO化合物で被覆させるためには、例えば、リチウム原料、A元素原料を溶媒に溶解させた混合溶液に芯材粒子粉末を加えて、所定条件下で乾燥、焼成すればよい。例えば、水溶性A元素塩及びリチウム原料を水に溶解して表面処理液を調製し、この表面処理液中に芯材粒子を投入し、混練してスラリー状とし、これを乾燥することによって好適に製造できる。ただし、活物質の製造方法をこのような方法に限定するものではない。例えば、転動流動コーティング法(ゾルゲル法)、メカノフュージョン法、CVD法及びPVD法等でも、条件を調整することにより製造することは可能である。
本発明の活物質は、通常、正極活物質として用いることができる。また、本発明の活物質は、固体電池に用いられるものである。特に本発明の活物質は、固体電解質として固体電解質を含む固体電池に用いられることが有利である。固体電池において、本発明の活物質と、固体電解質との接触部分が存在することにより、本発明の効果を享受することができる。ここで「活物質と、固体電解質との接触部分が存在する」とは、(ア)正極合剤等の電極合剤中に固体電解質を含有させること(この場合、固体電解質層は硫化物でも非硫化物でも可。)、(イ)正極合剤等の電極合剤中に固体電解質を含有させず、固体電解質層に固体電解質を含有させること、及び(ウ)正極合剤等の電極合剤中に固体電解質を含有させ、且つ固体電解質層に固体電解質を含有させることのいずれかを意味する。
正極合剤等の本発明の電極合剤は、活物質と、固体電解質とを含む。なお、電極合剤に含まれる活物質については、前記「A.活物質」の項に記載した内容と同様とすることができるため、ここでの記載は省略する。
本発明の固体電池は、正極層、負極層、及び固体電解質層を備え、前記正極層が、上述した正極合剤を含む。
平均粒径(D50)7μmの炭酸リチウムと、平均粒径(D50)23μmで比表面積が40m2/gの電解二酸化マンガンと、平均粒径(D50)22μmの水酸化ニッケルと、平均粒径(D50)2μmの酸化チタンをそれぞれ秤量した。
イオン交換水中へ、分散剤としてポリカルボン酸アンモニウム塩水溶液(サンノプコ(株)製 SNディスパーサント5468)を添加した。この際、分散剤の添加量は、前述のLi原料、Ni原料、Mn原料及びTi原料の合計に対して、6質量%になるようにし、イオン交換水中へ充分に溶解混合させた。そして、秤量しておいたNi、Mn原料を、あらかじめ分散剤を溶解させた前記イオン交換水中へ加えて、混合撹拌して、続いて、湿式粉砕機で1300rpm、120分間粉砕して平均粒径(D50)を0.60μm以下の粉砕スラリーを得た。次いで、残りの原料を前記スラリー中に加えて、撹拌し、続いて1300rpm、120分間粉砕して平均粒径(D50)を0.60μm以下の粉砕スラリーを得た。この際の固形分濃度は40質量%とした。
得られた粉砕スラリーを熱噴霧乾燥機(スプレードライヤー、大川原化工機(株)製「RL−10」)を用いて造粒乾燥させた。この際、噴霧にはツインジェットノズルを用い、噴霧圧を0.46MPa、スラリー供給量340mL/min、乾燥塔の出口温度100℃以上110℃以下となるように温度を調節して造粒乾燥を行った。
前記解砕後、静置式電気炉を用いて、大気雰囲気において、750℃を37時間保持するように熱処理(第1熱処理)し、解砕機(オリエント堅型粉砕機、オリエント粉砕機株式会社製)で解砕した。
前記解砕後、pH6以上7以下、温度25℃のイオン交換水2000mLを入れたプラスチックビーカー(容量5000mL)の中に投入し、攪拌機(プロペラ面積33cm2)を用いて400rpm以上550rpm以下の回転で20分間撹拌した。撹拌後、撹拌を停止して攪拌機を水中から取り出し、10分間静置した。そして、デカンテーションにより上澄み液を除去し、残りについて吸引ろ過器(ろ紙No.131)を使用して沈降物を回収し、回収した沈降物を120℃環境下で12時間乾燥させた。その後、品温が500℃となるように加熱した状態で7時間乾燥させた。
第2熱処理後の粉体を目開き53μmの篩で分級し、篩下を回収してリチウムマンガン含有複合酸化物を得た。このリチウムマンガン含有複合酸化物は、後述するように、XRD測定で、スピネル型リチウムマンガン含有複合酸化物であることを同定した。以後の実施例及び比較例についても同様である。
なお、前記焼成時及び熱処理時の温度は、炉内の処理物に熱電対を接触させて測定した処理物の品温である。後述する実施例・比較例でも同じである。
前記A元素としてNbを用いた。Nb量に対するLi量のmol比率(Li/Nb)が1.0となるように、リチウムエトキシド及びペンタエトキシニオブの量を調整し、これらをエタノールに加えて溶解させて被覆用ゾルゲル溶液(リチウム量12mmol、ニオブ量12mmol)を調製した。この被覆用ゾルゲル溶液に前記リチウム金属複合酸化物粉体5gを投入した。更に、フッ素入りの水を滴下した後、ロータリーエバポレーターを用いて、60℃×30分間加熱して超音波を照射しながら加水分解させた。その後、60℃を維持しながら30分かけて減圧して溶媒を除去した後、そのまま常温で24時間放置して乾燥させた。次に、日陶科学社製の卓上小型電気炉であるNHK−170を用いて大気雰囲気で500℃を2時間維持するように焼成し、正極活物質を得た。このサンプルはXAFSの測定によって得られる動径分布関数において図1に示すとおり0.115nm以上0.144nm以下の範囲に1本ピークを有し、0.310nm超0.344nm以下の範囲にも1本ピークを有した。
実施例1において、静置式電気炉を用いて、大気雰囲気において、750℃を36時間保持するように熱処理(第1熱処理)し、被覆用ゾルゲル溶液を(リチウム量3mmol、ニオブ量3mmol)とした以外は実施例1と同様にして正極活物質を得た。このサンプルはXAFSの測定によって得られる動径分布関数において0.115nm以上0.144nm以下の範囲に1本ピークを有し、0.310nm超0.344nm以下の範囲にも1本ピークを有した。
平均粒径(D50)7μmの炭酸リチウムと、平均粒径(D50)23μmで比表面積が40m2/gの電解二酸化マンガンと、平均粒径(D50)22μmの水酸化ニッケルとそれぞれ秤量した。
イオン交換水中へ、分散剤としてポリカルボン酸アンモニウム塩水溶液(サンノプコ(株)製 SNディスパーサント5468)を添加した。この際、分散剤の添加量は、前述のLi原料、Ni原料及びMn原料の合計に対して、6質量%になるようにし、イオン交換水中へ充分に溶解混合させた。秤量しておいた原料を、あらかじめ分散剤を溶解させた前記イオン交換水中へ加えて、混合撹拌して、固形分濃度40質量%のスラリーを調整した。
湿式粉砕機で1300rpm、120分間粉砕して平均粒径(D50)を0.60μm以下とした。
得られた粉砕スラリーを熱噴霧乾燥機(スプレードライヤー、大川原化工機(株)製「RL−10」)を用いて造粒乾燥させた。この際、噴霧にはツインジェットノズルを用い、噴霧圧を0.19MPa、スラリー供給量350mL/min、乾燥塔の出口温度100℃以上110℃以下となるように温度を調節して造粒乾燥を行った。
熱処理して得られた焼成粉を目開き53μmの篩で分級し、篩下粉を回収してスピネル型リチウムマンガン含有複合酸化物粉末すなわち正極活物質(サンプル)を得た。
実施例及び比較例で得られた正極活物質の各種物性値を次のように測定した。
実施例及び比較例で得られた正極活物質について、誘導結合プラズマ(ICP)発光分光分析により、各元素の含有量を測定した。
実施例及び比較例で得られた正極活物質について、レーザー回折粒子径分布測定装置用自動試料供給機(マイクロトラック・ベル株式会社製「Microtrac SDC」)を用い、サンプル(粉体)を水溶性溶媒に投入し、40%の流速中、40Wの超音波を360秒間複数回照射した後、マイクロトラック・ベル株式会社製レーザー回折粒度分布測定機「MT3000II」を用いて粒度分布を測定し、得られた体積基準粒度分布のチャートからモード径、D50及びD10を測定した。
超音波の照射回数は、超音波照射前後におけるD50の変化率が8%以下となるまでの回数とした。
なお、測定の際の水溶性溶媒は60μmのフィルターを通し、「溶媒屈折率」を1.33、粒子透過性条件を「透過」、粒子屈折率2.46、「形状」を「非球形」とし、測定レンジを0.133μm以上704.0μm以下、測定時間を30秒とした。
実施例及び比較例で得られた正極活物質の平均一次粒子径を、次のように測定した。
SEM(走査型電子顕微鏡)を用いて、サンプル(粉体)を1000倍で観察し、D50に相当する大きさの粒子を選択した。次に、D50に応じて、2000倍以上10000倍以下に倍率を変更して撮影した。撮影倍率を例示すると、D50が7μm程度の場合は10000倍、15μm程度の場合は5000倍、22μm程度の場合は2000倍にすると、後述する画像解析ソフトウェアでの平均一次粒子径を求めるのに適した画像を撮影できる。
また、平均一次粒子径を算出するためには、一次粒子を30個以上測定し、その平均値を算出するのが好ましい。測定個数が足りない場合は、D50に相当する大きさの粒子を追加選択して撮影し、合計して一次粒子が30個以上になるように測定を行った。
実施例及び比較例で得られた芯材粒子について、XRD装置を使用して結晶構造を、次のように同定した。
XRD測定は、装置名「UltimaIV、(株)リガク製」を用い、下記測定条件1で測定を行って、XRDパターンを得た。統合粉末X線解析ソフトウェアPDXL((株)リガク製)を用いて、得られたXRDパターンについて結晶相情報を決定した。
観測強度と計算強度が充分に一致しているということは、得られたサンプルが空間群に限定されず、スピネル型の結晶構造である信頼性が高いことを意味している。
線源:CuKα(線焦点)、波長:1.541836Å
操作軸:2θ/θ、測定方法:連続、計数単位:cps
開始角度:15.0°、終了角度:120.0°、積算回数:1回
サンプリング幅:0.01°、スキャンスピード:1.0°/min
電圧:40kV、電流:40mA
発散スリット:0.2mm、発散縦制限スリット:10mm
散乱スリット:開放、受光スリット:開放
オフセット角度:0°
ゴニオメーター半径:285mm、光学系:集中法
アタッチメント:ASC−48
スリット:D/teX Ultra用スリット
検出器:D/teX Ultra
インシデントモノクロ:CBO
Ni−Kβフィルター:無
回転速度:50rpm
結晶子サイズを求めるためのX線回折パターンの測定は、Cu−Kα線を用いたX線回折装置(ブルカー・エイエックスエス株式会社製D8 ADVANCE)を使用し、下記測定条件2で測定を行った。
回折角2θ=10°以上120°以下の範囲より得られたX線回折パターンのピークについて解析ソフトウェア(製品名「Topas Version3」)を用いて解析することにより、サンプルの結晶子サイズ及び歪みを求めた。
なお、結晶子サイズはガウス関数を用いて解析を行い算出した。
線源:CuKα、操作軸:2θ/θ、測定方法:連続、計数単位:cps
開始角度:10°、終了角度:120°
Detector:PSD
Detector Type:VANTEC−1
High Voltage:5585V
Discr. Lower Level:0.25V
Discr. Window Width:0.15V
Grid Lower Level:0.075V
Grid Window Width:0.524V
Flood Field Correction:Disabled
Primary radius:250mm
Secondary radius:250mm
Receiving Slit Width:0.1436626mm
Divergence Slit:0.3°
Filament Length:12mm
Sample Length:25mm
Recieving Slit Length:12mm
Primary Sollers:2.623°
Secondary Sollers:2.623°
Lorentzian,1/Cos:0.004933548Th
電圧:40kV、電流:35mA
実施例及び比較例で作製した正極活物質と固体電解質とを用いて正極合剤を作製し、固体型リチウム二次電池(固体Gr/正極活物質セル)を作製して、電池特性評価を行った。
正極活物質として実施例及び比較例で作製したものを用い、負極活物質としてグラファイト(Gr)粉末を用い、固体電解質粉末としてアルジロダイト型構造を持つ硫化物固体電解質を用いた。
正極合剤粉末は、実施例及び比較例で作製した正極活物質、固体電解質粉末及び導電材(カーボン系材料)粉末を60:30:10の割合で乳鉢混合することで調整した。
負極合剤粉末は、グラファイト(Gr)粉末と固体電解質粉末を50:50の割合で乳鉢混合することで調整した。
正極合剤粉末(サンプル)13mgを密閉型セルの絶縁筒内(φ9mm)に充填して、368MPaで一軸成型することで正極合剤粉末ペレットを作製した。得られた正極合剤粉末ペレットを密閉型セルの絶縁筒内(φ10.5mm)に移し、正極合剤粉末ペレット上に固体電解質粉末50mgを充填した。
次に、正極合剤粉末ペレットとともに、固体電解質粉末を184MPaで一軸成型した。更に、前記固体電解質の上に10mgの負極合剤粉末を充填し、551MPaで一軸成型し、加圧ネジで締め込み、正極層、負極層、及び固体電解質層を備えた固体電池(固体型リチウム二次電池)を作製した。
実施例及び比較例の固体型リチウム二次電池について、1サイクル目に充電終止電圧5.0Vまで0.1Cで定電流充電を行った。その後、5.0Vで電流値が0.01Cになるまで定電圧充電を行った。0.01Cになるまでに得られた容量を充電容量とした。各実施例で得られた充電容量を比較例1の充電容量で除した値に100を乗じ、それによって得られた値を充電特性改善指数とし、表1に記載した。前記充電特性改善指数は、充電時におけるリチウムイオンの移動性(脱離性)の改善率を示しており、当該充電特性改善指数により、充電容量について評価することができる。
Claims (8)
- 固体電池に用いられる活物質であって、
X線吸収微細構造の測定によって得られる動径分布関数において、0.115nm以上0.144nm以下の範囲にピークが少なくとも一つ観察されるとともに、0.310nm超0.344nm以下の範囲にピークが少なくとも一つ観察され、
レーザー回折散乱式粒度分布測定法により測定して得られる体積粒度分布測定による前記活物質のモード径及びD10(それぞれ「モード径」、「D10」と称する。)に関し、モード径に対する、モード径とD10との差の絶対値の百分率である(|モード径−D10|/モード径)×100の値が、0%<((|モード径−D10|/モード径)×100)≦58.0%を満たす活物質。 - 結晶子サイズが80nm以上490nm以下であり、
走査型電子顕微鏡により得られる画像から算出した平均一次粒子径に対する前記結晶子サイズの比率である結晶子サイズ/平均一次粒子径の値が0.01以上0.50以下である請求項1に記載の活物質。 - レーザー回折散乱式粒度分布測定法により測定して得られる体積粒度分布測定による前記活物質のD50(「D50」と称する。)が0.5μm以上15.0μm以下であり、
モード径に対する、モード径とD50との差の絶対値の百分率である(|モード径−D50|/モード径)×100の値が、0%≦((|モード径−D50|/モード径)×100)≦25.0%を満たし、
D50に対する、走査型電子顕微鏡により得られる画像から算出した平均一次粒子径の比率である平均一次粒子径/D50の値が0.01以上0.99以下である請求項1又は2に記載の活物質。 - 芯材粒子と、前記芯材粒子の表面に配置された被覆層とを有し、前記芯材粒子がリチウム金属複合酸化物を含み、前記リチウム金属複合酸化物が、層状岩塩型構造の化合物であるか又はスピネル型構造の化合物である請求項1ないし3のいずれか一項に記載の活物質。
- 請求項1ないし4のいずれか一項に記載の活物質と、固体電解質とを含む正極合剤。
- 前記固体電解質が、リチウム(Li)元素、リン(P)元素及び硫黄(S)元素を含み、且つリチウムイオン伝導性を有する請求項5に記載の正極合剤。
- 前記固体電解質が、アルジロダイト型構造の結晶相を有する請求項6に記載の正極合剤。
- 正極層、負極層、及び固体電解質層を備えた固体電池において、
前記正極層が、請求項1ないし4のいずれか一項に記載の活物質を含む固体電池。
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