JP7348654B2 - 帯電防止性消臭シート状物及びその製造方法 - Google Patents

帯電防止性消臭シート状物及びその製造方法 Download PDF

Info

Publication number
JP7348654B2
JP7348654B2 JP2020036615A JP2020036615A JP7348654B2 JP 7348654 B2 JP7348654 B2 JP 7348654B2 JP 2020036615 A JP2020036615 A JP 2020036615A JP 2020036615 A JP2020036615 A JP 2020036615A JP 7348654 B2 JP7348654 B2 JP 7348654B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
coordination polymer
polymer particles
porous coordination
group
sol
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Active
Application number
JP2020036615A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2021137242A (ja
Inventor
俊也 狩野
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Hiraoka and Co Ltd
Original Assignee
Hiraoka and Co Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Hiraoka and Co Ltd filed Critical Hiraoka and Co Ltd
Priority to JP2020036615A priority Critical patent/JP7348654B2/ja
Publication of JP2021137242A publication Critical patent/JP2021137242A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP7348654B2 publication Critical patent/JP7348654B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Description

本発明は臭気吸着と臭気物質の分解による消臭効果、及び帯電防止性を発現するシート状物と、その製造方法に関し、詳しくは悪臭成分、及びVOC成分などの不快臭気成分全般に対して臭気濃度を効果的に減少させる減臭効果、並び消臭効果を安定的に持続し、しかも、アトピー性皮膚炎、花粉症、喘息の症状を悪化させるダニ死骸の粉塵、花粉などのアレルギー物質の帯電付着を抑止可能とし、さらには防爆性(静電気による引火爆発の防止)にも優れた帯電防止性を発現可能な耐屈曲性のシート状物と、その製造方法の発明に関する。本発明の帯電防止性消臭シート状物は、フィルム、シート、テープ、ターポリン、メッシュシート、帆布、布帛などの態様で供され、天井膜、空間仕切り、巻上昇降式シートシャッター、巻上昇降式防爆シートシャッター、カーテン、敷物、カバー、ブラインド、日用雑貨など加工されて使用される。
以前、本出願人は遮熱機能の減衰を招く原因となる煤塵付着汚れを防ぐ機能を有し、遮熱機能を効率的に持続させることができる採光性の遮熱膜材に関する発明として、光触媒物質、及び熱制御性物質を用いた膜材(特許文献1)を提案した。特に光触媒物質の態様(段落〔0063〕の1つとして、酸化チタンなどの光触媒物質を、シリカ、(合成)ゼオライト、チタンゼオライト、リン酸ジルコニウム、リン酸カルシウム、リン酸亜鉛カルシウム、ハイドロタルサイト、ヒドロキシアパタイト、シリカアルミナ、ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミン酸マグネシウム、ケイソウ土などの無機系多孔質微粒子に担持させたものを使用すること、そして光触媒物質を無機系多孔質微粒子に担持させる手段として、光触媒物質を含有する金属アルコラートによるゾル-ゲル薄膜製造工程を応用した表面処理を用いることを例示した。特許文献1の膜材の発明において光触媒物質を担持する無機系多孔質微粒子は、テント膜材への煤塵付着汚れを防ぐための存在で、無機系多孔質微粒子内に既に酸化チタンなどの光触媒物質を担持した状態にあり、さらに臭気分子を効果的に吸着できるような状態にはなかった。またこのテント膜材は静電気を帯び易く、静電気が煤塵、粉塵の付着蓄積を助長し、この蓄積汚れに細菌が繁殖することで悪臭を放つ原因となる実態が後に問題視されるようになった。
また、本出願人は、減臭効果と遮熱効果とを有する建築養生メッシュシートの発明として、無機多孔性物質、酸化・還元性物質、及び光触媒性物質などの臭気分子不活性化粒子を用いたメッシュシート(特許文献2)を提案した。特に、無機多孔性物質や酸化・還元性物質などと共に光触媒性物質を用いることで、建築養生メッシュシートが太陽光の照射を受け続ける限り、光触媒性物質を活性化し、それによって臭気分子を吸着した無機多孔性物質や、臭気分子が配位した酸化・還元性物質に常時作用し、この光触媒性物質の作用によって物理吸着や化学配位により捕捉した臭気分子を分解し、無臭化することで、無機多孔性物質や酸化・還元性物質を吸着や配位前の初期状態にリセットし、新たな臭気分子を捕捉できるようになることを段落〔0014〕に開示し、また無機多孔性物質として、活性炭、添着活性炭、白竹炭、活性白土、ゼオライト、ベントナイト、セピオライト、シラス、シリカ、シリカ-マグネシア、モレキュラーシーブなどを用いることを段落〔0023〕に開示した。しかしながら特許文献2のメッシュシートでは、臭気分子を吸着する無機多孔性物質と、臭気分子を分解する光触媒性物質とが別個に存在することで、臭気分子の分解効率が劣ることが後の検討で明らかとなった。
金属イオン(2つ以上の有機配位子と結合可能)と有機配位子(配位結合可能な部位を2つ以上有する)が交互に連結して形成され内部に多数の立体網目状空間を持つ多孔性配位高分子が種々知られ、有機配位子のサイズをコントロールすること、すなわち特定の有機化合物を用いることで任意の立体網目状空間に調整し、この立体網目状空間に特定のガス(メタンガス、二酸化炭素など)を大量貯蔵させる検討(特許文献3、特許文献4)がなされている。その他、多孔性配位高分子の立体網目状空間サイズのコントロールによって、ガスの分離フィルターとする試み、イオン電導性を付与した個体電解質の応用、未反応イオン部位を触媒とする試み、などが検討されている。また、この多孔性配位高分子のガス吸着性、金属イオンの抗菌性を利用した生活臭(タバコ臭、動物臭、排泄臭、生ごみ臭、汗臭)用消臭剤、成形品(繊維、繊維製品、フィルター)、抗ウイルス剤(特許文献5)が提案されている。多孔性配位高分子はシリカやゼオライトなどの無機多孔質粒子よりも吸着能及び吸着容量が大きいことで、消臭剤として用いた場合、より短時間で多くの臭気物質を吸着、貯蔵すること、すなわち効果的な消臭が可能となる。しかしながら、多孔性配位高分子の種類、立体網目状空間サイズの設計によっては、熱、静電気、摩擦などの刺激によって臭気物質が多孔性配位高分子や成形品から逆戻り放出される可能性があった。従って多孔性配位高分子の種類、立体網目状空間サイズの設計に無関係に、優れた消臭効果を安定持続し、しかも臭気物質、アトピー性皮膚炎、花粉症、喘息の症状を悪化させるダニ死骸の粉塵、花粉などのアレルギー物質の帯電付着を抑止可能とする優れた帯電防止性を発現可能な成形品(例えば、フィルム、シート、テープ、ターポリン、メッシュシート、帆布、布帛などのシート状物)が存在すれば、各種産業分野、及び家庭において、さらに消臭用途、衛生用途での利便性を向上させることができるようになる。特に化学工場などにおいて、巻上昇降式シートシャッターに用いることで消臭性を有し、さらに静電気による引火爆発の防止性を有する防爆性の巻上昇降式シートシャッターとして利用することが可能となる。
特開2003-251728号公報 特開2015-014093号公報 特開2001-348361号公報 特開2016-193957号公報 特開2019-088499号公報
本発明は、悪臭成分、及びVOC(揮発性有機化合物)などの不快臭気成分全般に対して臭気濃度を効果的に減少させる減臭効果、並び消臭効果を安定的に持続し、しかもアトピー性皮膚炎、花粉症、喘息の症状を悪化させるダニ死骸の浮遊粉塵、花粉などのアレルギー物質の帯電付着を抑止可能とする優れた帯電防止性、さらには防爆性(静電気による引火爆発の防止)を発現可能な耐屈曲性のシート状物と、その製造方法の提供を課題とする。この課題解決によって、フィルム、シート、テープ、ターポリン、メッシュシート、帆布、布帛などのシート状物の原反で流通し、天井膜、空間仕切り、カーテン、敷物、カバー、ブラインド、日用雑貨などに加工されて使用される。これらは安定持続した消臭効果、及びアレルギー物質の帯電付着の抑止効果を発現し、特に化学工場などにおいて、巻上昇降式シートシャッターに用いることで、消臭性を有し、さらに静電気による引火爆発の防止性を有する耐屈曲性の巻上昇降式シートシャッターとして利用することも可能となる。
本発明はかかる点を考慮し検討を重ねた結果、シート基材の少なくとも1面に多孔性配位高分子粒子が露出したシート状物において、ガス吸着性の多孔性配位高分子粒子が、カーボンナノチューブを含有するゾルゲル縮合薄膜中に固着されていることによって、悪臭成分、及びVOC成分などの不快臭気成分全般に対して臭気濃度を効果的に減少させる減臭効果、並び消臭効果を安定的に持続し、しかも臭気物質、アトピー性皮膚炎、花粉症、喘息の症状を悪化させるダニ死骸の浮遊粉塵、花粉などのアレルギー物質の帯電付着を抑止可能とする優れた帯電防止性、さらには防爆性(静電気による引火爆発の防止)を発現可能な耐屈曲性のシート状物が得られることを見出して本発明を完成させるに至った。
すなわち本発明の帯電防止性消臭シート状物は、シート基材の少なくとも1面に多孔性配位高分子粒子が露出したシート状物であって、前記多孔性配位高分子粒子が、有機錯体ユニット及び架橋性有機化合物とで構成され、両者が多方向に交互に連結して空洞セル群を有するガス吸着体であり、前記有機錯体ユニットが2~4価の金属イオン1~6個、及び2~4個のカルボキシル基を有する化合物からなり、また前記架橋性有機化合物が、構造中に2~4個の窒素原子を有する有機配位子、または構造中に1~2個のカルボキシル基及び1~2個の窒素原子を有する有機配位子、であり、さらに前記多孔性配位高分子粒子にアルコキシシラン化合物の加水分解物が結合していて、この加水分解物は、一般式:XR-Si(Y) 3 で表される化合物の加水分解物で、XR-Si(OH) 3 で示され(X=アミノ基、ビニル基、エポキシ基、メタクリル基、アクリル基、クロル基、メルカプト基、イソシアヌレート基、イソシアネート基、R=アルキル鎖、Y=メトキシ基、エトキシ基)、前記多孔性配位高分子粒子が、シラノール基含有有機シラン化合物のゾルゲル縮合薄膜、またはチタノール基含有有機チタン化合物のゾルゲル縮合薄膜中に固着され、かつ前記ゾルゲル縮合薄膜がカーボンナノチューブまたは金属酸化物コロイドを含有することが好ましい。有機錯体ユニット同士が、架橋性有機化合物を介在して多方向に規則的に連結することで形成された立体幾何学形状の空間(立方体格子状に限定されないジャングルジム状)が空洞セル群となる。この空洞セル群に、悪臭成分、及びVOC成分などの不快臭気成分を短時間で効率的に吸着することで、臭気濃度を効果的に減少させる減臭効果、並び安定持続的な消臭効果を発現する。そして多孔性配位高分子粒子は有機錯体ユニット部を有することで、多孔性配位高分子粒子を付帯する物品に帯電防止性を付与する。さらに多孔性配位高分子粒子を固着するゾルゲル縮合薄膜がカーボンナノチューブまたは金属酸化物コロイドを含有することで、ゾルゲル縮合薄膜に屈曲亀裂を生じても薄膜に内在するカーボンナノチューブ、金属酸化物コロイドの連続性(導電性)が損なわれ難いものとする。これはカーボンナノチューブの線状形態による補強効果、また金属酸化物コロイドがゾルゲル縮合薄膜中で多孔性配位高分子粒子と共存することで、有機錯体ユニットをパーツに含む多孔性配位高分子粒子の一部に何らかの態様で金属酸化物コロイドが配位した分子間力の効果と考察される。また多孔性配位高分子粒子を固着するゾルゲル縮合薄膜がカーボンナノチューブまたは金属酸化物コロイドを含有することで、アトピー性皮膚炎、花粉症、喘息の症状を悪化させるダニ死骸の粉塵、花粉などのアレルギー物質の帯電付着(静電吸着)を抑止可能な耐屈曲性のシート状物(例えば、フィルム、シート、テープ、ターポリン、メッシュシート、帆布、布帛など)を得る。さらには防爆性(静電気による引火爆発の防止)を有する帯電防止性(導電性)を発現可能な耐屈曲性のシート状物を得ることができる。特にゾルゲル縮合薄膜と多孔性配位高分子粒子の間にアルコキシシラン化合物の加水分解物が結合していることが好ましい。
本発明の帯電防止性消臭シート状物は、前記架橋性有機化合物が、構造中に2~4個の窒素原子を有する有機配位子、または構造中に1~2個のカルボキシル基及び1~2個の窒素原子を有する有機配位子、であることが好ましい。架橋性有機化合物は、有機錯体ユニット同士が、架橋性有機化合物を介在して多方向に規則的に連結することで形成された立体幾何学形状の空間が空洞セル群となる。従って架橋性有機化合物の分子量が大きい程、あるいは分子鎖の分岐が多い程、あるいは有機錯体ユニットの体積が大きい程、あるいは有機錯体ユニットと有機錯体ユニットとの結合角が大きい程、得られる空洞セルのサイズ(すなわち多孔性配位高分子の孔)が広大となる。また化学構造中の配座2~4個の選択によって幾何学的形状の結晶構造(空洞セルの形状、及びサイズ)が任意設計される。この結晶構造の任意設計によって、吸着(捕捉)可能な臭気成分(化学物質)をコントロールできる。
本発明の帯電防止性消臭シート状物は、前記空洞セル群が、酸化チタン、過酸化チタン、酸化亜鉛、酸化錫、チタン酸ストロンチウム、酸化タングステン、酸化ビスマス、及び酸化鉄、から選ばれた1種以上の光触媒性金属酸化物、もしくはフラーレンを担持することが好ましい。多孔性配位高分子の空洞セルに光触媒性金属酸化物を担持することで光触媒性金属酸化物の光触媒活性により、多孔性配位高分子の空洞セルに捕捉した有機系臭気ガスを逐次分解し、さらに有機系臭気ガスを取り込めるように空洞セルの状態を空にリセットすることができる。またウイルス、菌、黴などの増殖を抑止可能とする。特に光触媒性金属酸化物が可視光応答型光触媒であると屋内使用も可能とする。可視光応答型光触媒は、助触媒添加(担持)型光触媒、アニオンドープ型光触媒、カチオンドープ型光触媒、アニオンとカチオンの両方をドープした共ドープ型光触媒、金属ハロゲン化物担持型光触媒、酸素欠損型光触媒、などが例示できる。また多孔性配位高分子の空洞セルにフラーレンを担持することで、多孔性配位高分子自体の導電性を向上させ、帯電防止性をより向上させる。本発明において光触媒性金属酸化物、もしくはフラーレンの担持とは、空洞セルによる担持の他、多孔性配位高分子粒子表面に付着しての担持も包含するものとする。
本発明の帯電防止性消臭シート状物は、前記多孔性配位高分子粒子にアルコキシシラン化合物の加水分解物が結合していることが好ましい。これによってゾルゲル縮合薄膜に対する多孔性配位高分子粒子の固着性をより強固なものとすることができる。特にゾルゲル縮合薄膜と多孔性配位高分子粒子の間にアルコキシシラン化合物の加水分解物が結合していることが好ましい。
本発明の帯電防止性消臭シート状物は、前記シート基材が織物を芯材として含み、前記織物が、1)経糸及び緯糸からなる織物、または2)経糸及び左上バイアス糸/右上バイアス糸からなる三軸織物、または3)経糸、緯糸及び左上バイアス糸/右上バイアス糸からなる四軸織物、の何れかであることが好ましい。これによってターポリン、メッシュシート、帆布の産業用シート材を得ることができ、特に三軸織物、四軸織物などを使用すれば、糸条同士の交絡が複雑化し、多軸方向に拡がるネットワークによって産業用シート材に加えられる屈曲、はためきなどの外力ストレスの拡散伝播性が増し、ストレスを広域に分散させることで産業用シート材へのダメージを緩和し、同時に引裂などの外力に対する抵抗力を増強させることができる。ターポリンの態様は、日除けテント、テント倉庫、防音シート、建築養生シート、天井膜、間仕切りシート、横断幕、懸垂幕、電飾看板シート、巻上昇降式シートシャッター、フレキシブルコンテナ、フロアシート、屋上防水シート、などの加工用原反に、メッシュシートの態様は、建築養生シート、吸音膜、間仕切りシート、横断幕、懸垂幕、などの加工用原反に、帆布の態様は、テント倉庫、屋形テント、トラック幌、トラック荷台カバー、野積シートカバー、などの加工用原反に用いることができる。
本発明の帯電防止性消臭シート状物の製造方法は、シート基材の少なくとも1面に、空洞セル群を有する多孔性配位高分子粒子、及びカーボンナノチューブまたは金属酸化物コロイドを含むゾルゲル縮合薄膜を形成する工程、前記多孔性配位高分子粒子を含むゾルゲル縮合薄膜上に、光触媒性金属酸化物またはフラーレンを含む溶液を塗布し、前記多孔性配位高分子粒子の空洞セル群の一部または全部に前記光触媒性金属酸化物またはフラーレンを担持させる工程、を含むことが好ましい。(ここで、空洞セル群の一部または全部、とは空洞セルの数に対する一部または全部であって、空洞セル体積に対する一部または全部の意味ではない。)
本発明の帯電防止性消臭シート状物の製造方法は、前記多孔性配位高分子粒子が、有機錯体ユニット及び架橋性有機化合物とで構成され、両者が多方向に交互に連結して空洞セル群を有する結晶構造を成し、前記有機錯体ユニットが2~4価の金属イオン1~6個、及び2~4個のカルボキシル基を有する化合物であることが好ましい。
本発明の帯電防止性消臭シート状物の製造方法は、前記シート基材が織物を芯材として含み、前記織物が、1)経糸及び緯糸からなる織物、または2)経糸及び左上バイアス糸/右上バイアス糸からなる三軸織物、または3)経糸、緯糸及び左上バイアス糸/右上バイアス糸からなる四軸織物、の何れかを含ませることが好ましい。
本発明の帯電防止性消臭シート状物の製造方法は、空洞セル群を有する多孔性配位高分子粒子、及び光触媒性金属酸化物を含む溶液を配合する工程、前記多孔性配位高分子粒子の空洞セル群の一部または全部に前記光触媒性金属酸化物またはフラーレンを担持させる工程(攪拌工程、熟成工程:攪拌工程と熟成工程は兼用可能な工程)、シート基材の少なくとも1面に、光触媒性金属酸化物を担持する多孔性配位高分子粒子、及びカーボンナノチューブまたは金属酸化物コロイドを含むゾルゲル縮合薄膜形成溶液を塗布(乾燥工程を含む)し、光触媒性金属酸化物またはフラーレンを担持する多孔性配位高分子粒子、及びカーボンナノチューブまたは金属酸化物コロイドを含むゾルゲル縮合薄膜塗膜を形成する工程、を含むことが好ましい。(ここで、空洞セル群の一部または全部、とは空洞セルの数に対する一部または全部であって、空洞セル体積に対する一部または全部の意味ではない。)
本発明の帯電防止性消臭シート状物の製造方法は、前記多孔性配位高分子粒子が、有機錯体ユニット及び架橋性有機化合物とで構成され、両者が多方向に交互に連結して空洞セル群を有する結晶構造を成し、前記有機錯体ユニットが2~4価の金属イオン1~6個、及び2~4個のカルボキシル基を有する化合物であることが好ましい。
本発明の帯電防止性消臭シート状物の製造方法は、前記シート基材が織物を芯材として含み、前記織物が、1)経糸及び緯糸からなる織物、または2)経糸及び左上バイアス糸/右上バイアス糸からなる三軸織物、または3)経糸、緯糸及び左上バイアス糸/右上バイアス糸からなる四軸織物、の何れかを含ませることが好ましい。
本発明により、悪臭成分、及びVOC成分などの不快臭気成分全般に対して臭気濃度を効果的に減少させる減臭効果、並び消臭効果を安定的に持続可能、かつ耐屈曲性に優れたシート状物が得られる。多孔性配位高分子のみでも消臭性(減臭性)が発現可能であるが、特に多孔性配位高分子の空洞セルに光触媒性金属酸化物を担持することで光触媒性金属酸化物の光触媒活性により、多孔性配位高分子の空洞セルに捕捉した有機系臭気ガスを逐次分解し、さらに有機系臭気ガスを取り込めるように空洞セルの状態を空にリセットすることができる。またウイルス、菌、黴などの増殖を抑止する。特に光触媒性金属酸化物は可視光応答型光触媒が屋内用途に適している。また多孔性配位高分子の空洞セルにフラーレンを担持することで、多孔性配位高分子自体の導電性を向上させ、帯電防止性をより向上させる。また本発明のシート状物は、多孔性配位高分子を固着するゾルゲル縮合薄膜に金属酸化物コロイドを含有することで帯電防止効果及び耐屈曲性をより優れたものとし、アトピー性皮膚炎、花粉症、喘息の症状を悪化させるダニ死骸の粉塵、花粉などのアレルギー物質の帯電付着を持続的に抑止する。さらにゾルゲル縮合薄膜にカーボンナノチューブを含有することで良好な導電性が持続する耐屈曲性のシート状物を得ることができ、防爆性(静電気による引火爆発の防止)を発現可能とする。本発明の帯電防止性消臭シート状物は、フィルム、シート、テープ、ターポリン、メッシュシート、帆布、布帛などの原反で流通し、天井膜、空間仕切り、カーテン、敷物、カバー、ブラインド、日用雑貨などに加工され、工場、醸造、農場、畜産場、水産加工場、下水道、マンホール、廃棄物処理場、汚水汚泥処理施設、病院、介護施設、葬儀施設、動物園、公共浴場、公衆トイレ、飲食店、などの任意の場所、及び家庭(トイレ、浴室、キッチン、ベッド、シューズボックス、タンス、クローゼット、ペットケージ、などに任意のカットサイズで使用)などに広く使用できる。特に化学工場などにおいて、巻上昇降式シートシャッターに用いることで、消臭性を有し、さらに静電気による引火爆発の防止性を有する耐屈曲性の巻上昇降式シートシャッターとして利用できる。
本発明の帯電防止性消臭シート状物は、シート基材の少なくとも1面に多孔性配位高分子粒子が露出したシート状物であって、多孔性配位高分子粒子が、有機錯体ユニット及び架橋性有機化合物とで構成され、両者が多方向に交互に連結して空洞セル群を有するガス吸着体であり、有機錯体ユニットが2~4価の金属イオン1~6個、及び2~4個のカルボキシル基を有する化合物からなり、多孔性配位高分子粒子が、シラノール基含有有機シラン化合物のゾルゲル縮合薄膜、またはチタノール基含有有機チタン化合物のゾルゲル縮合薄膜中に固着され、かつゾルゲル縮合薄膜がカーボンナノチューブまたは金属酸化物コロイドを含有する態様で、さらに架橋性有機化合物が、構造中に2~4個の窒素原子を有する有機配位子、または構造中に1~2個のカルボキシル基及び1~2個の窒素原子を有する有機配位子である態様で、さらに空洞セル群が光触媒性金属酸化物もしくはフラーレンを担持する態様で、さらに多孔性配位高分子粒子にアルコキシシラン化合物の加水分解物が結合している態様で、さらにシート基材が織物を芯材として含み、織物が、1)経糸及び緯糸からなる織物、または2)経糸及び左上バイアス糸/右上バイアス糸からなる三軸織物、または3)経糸、緯糸及び左上バイアス糸/右上バイアス糸からなる四軸織物の何れかである態様である。
多孔性配位高分子粒子は、有機錯体ユニット及び架橋性有機化合物とで構成され、両者が多方向に交互に連結してジャングルジム状(立方体格子状に限定されない)の空洞セル群を有する結晶構造を成すものである。有機錯体ユニットは2~4価の金属イオン1~6個、及び2~4個のカルボキシル基を有する化合物からなる立体的な複合構造体で、架橋性有機化合物をピラー部に例えた場合、有機錯体ユニットはジョイント部に相当する。多孔性配位高分子粒子の多孔は結晶構造内の空洞セル群に該当し、粒子径001μm~10μmである。有機錯体ユニットには2~4価の金属イオンを有し、1つの錯体部に1つの金属イオン、もしくは同一金属イオンによる2~4つの金属イオン集合体、または同一金属イオンによる5~6つの金属イオン集合体による錯体構造物が挙げられる。2価の金属イオンは、マンガンイオン、コバルトイオン、ニッケルイオン、銅イオン、亜鉛イオン、鉄イオン、マグネシウムイオン、モリブデンイオン、パラジウムイオンなどが挙げられる。また3価イオンは、クロムイオン、鉄イオン、アルミニウムイオンなどが挙げられる。また4価イオンは、チタンイオン、ジルコニウムイオンなどが挙げられる。特に規則的な結晶構造を形成するために2価イオン(特にコバルトイオン、ニッケルイオン、銅イオン、亜鉛イオン)、または3価イオン(特にクロムイオン、鉄イオン)の使用が好ましい。多孔性配位高分子粒子を構成する金属イオンは複数種の併用であってもよいが、空洞セル群の規則性を整えるために単独使用が好ましい。3種以上用いた場合、結合の規則性が乱れ、得られる多孔性配位高分子粒子の空洞セルの構造解析を困難とすることがある。
有機錯体ユニットを形成する2~4個のカルボキシル基を有する化合物は、上記金属イオンと錯体を形成し、ZnO(CO 、ZnO(CO 、CrO(CO 、FeO(CO 、CuO(CO 、ZnO(CO 、CrO(CO 、CoO(CO 、FeO(CO 、Zr(OH)(CO 12、Zr(CO 、Zn(CO 、Co(CO 、Ni(CO 、などのパーツを構造中に有する複数の金属イオンの集合体となって4個、6個、8個、または12個の錯部を形成し、架橋性有機化合物と連結することによってピラー部を形成する。従って、分子設計的、構造解析的に1種、多くて2種のカルボキシル基を有する化合物を用いることが好ましい。3種以上用いた場合、結合の規則性が乱れ、得られる多孔性配位高分子粒子の空洞セルの構造解析が困難となることがある。
有機錯体ユニットを形成する2~4個のカルボキシル基を有する化合物は、構造中に2個のカルボキシル基を有する化合物として、フマル酸、トランス,トランスムコン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ビフェニル4,4’-ジカルボン酸、2-ヒドロキシテレフタル酸、9,10-アントラセンジカルボン酸、2,5-ジアミノテレフタル酸、2,5-ジヒドロキシテレフタル酸、2,6-ナフテレンテレフタル酸、5-シアノ-1,3-ベンゼンジカルボン酸、2-アミノテレフタル酸、3,5-ピリジンジカルボン酸、2,3-ピラジンジカルボン酸、2,2’-ジアミノ-4,4’-スチルベンジカルボン酸、2,2’-ジニトロ-4,4’-スチルベンジカルボン酸、などが挙げられる。また構造中に3個のカルボキシル基を有する化合物としては、1,3,5-ベンゼントリカルボン酸、ビフェニル-3,4’,5-トリカルボン酸、1,3,5-トリス(4-カルボキシフェニル)ベンゼン、1,3,5-トリス(4’-カルボキシ[1,1’-ビフェニル]-4-イル)ベンゼン、1,3,5-トリス(4-カルボキシフェニル)トリアジン、などが挙げられる。また構造中に4個のカルボキシル基を有する化合物としては、ビフェニル-3,3’,5,5’-テトラカルボン酸、3,3’,5,5’-テトラカルボキシジフェニルメタン、[1,1’,4’1”]ターフェニル-3,3”,5,5”-テトラカルボン酸、1,2,4,5-テトラキス(4-カルボキシフェニル)ベンゼン、などが挙げられる。これらはピラー部となる架橋性有機化合物とのジョイント部を形成するので、分子設計的、構造解析的に1種、多くて2種の有機配位子を用いることが好ましい。3種以上用いた場合、結合の規則性が乱れ、得られる多孔性配位高分子粒子の空洞セルの構造解析を困難とすることがある。この有機錯体ユニット同士が、架橋性有機化合物を介在して多方向に規則的に連結することで形成された立体幾何学形状(立方体格子状に限定されないジャングルジム状)の空間が空洞セル群を形成する。従って有機錯体ユニットの分子量が大きい程、あるいは分子鎖の分岐が多い程、あるいは有機錯体ユニットの体積が大きい程、あるいは有機錯体ユニットと有機錯体ユニットとの結合角が大きい程、得られる空洞セルのサイズが広大となる。空洞セルのサイズは3nm~12nmが好ましい。
架橋性有機化合物は、構造中に2~4個の窒素原子を有する有機配位子、または構造中に1~2個のカルボキシル基及び1~2個の窒素原子を有する有機配位子から任意に選択使用することができる。構造中に2個以上の窒素原子を有する架橋性有機化合物としては、例えば、ピリジン及びピリジン誘導体、アゾピリジン及びアゾピリジン誘導体、ピラジン及びピラジン誘導体、ビピリジン及びビピリジン誘導体、ピペリジン及びピペリジン誘導体、ジピリジル及びジピリジル誘導体、トリアジン及びトリアジン誘導体、イミダゾール及びイミダゾール誘導体、1,4-ジアザビシクロ[2,2,2]オクタン、などのヘテロ原子を両末端に有する環状構造化合物が挙げられる。また構造中に1~2個のカルボキシル基、及び1~2個の窒素原子を有する架橋性有機化合物としては、ピリジンジカルボン酸及びピリジンジカルボン酸誘導体、ビピリジンジカルボン酸及びビピリジンジカルボン酸誘導体、ピラジンジカルボン酸及びピラジンジカルボン酸誘導体、ピラゾリンジカルボン酸及びピラゾリンジカルボン酸誘導体、ピラゾールジカルボン酸及びピラゾールジカルボン酸誘導体、キノキサリンジカルボン酸及びキノキサリンジカルボン酸誘導体、イミダゾリンジカルボン酸及びイミダゾリンジカルボン酸誘導体、イミダゾールジカルボン酸及びイミダゾールジカルボン酸誘導体、ジイミドジカルボン酸及びジイミドジカルボン酸誘導体、キノリンジカルボン酸及びキノリンジカルボン酸誘導体、ビキノリンジカルボン酸及びビキノリンジカルボン酸誘導体、ピリジン誘導体トリカルボン酸、ビピリジン誘導体トリカルボン酸、ピラジン誘導体トリカルボン酸、ピラゾリン誘導体トリカルボン酸、ピラゾール誘導体トリカルボン酸、キノキサリン誘導体トリカルボン酸、イミダゾリン誘導体トリカルボン酸、イミダゾール誘導体トリカルボン酸、ジイミド誘導体トリカルボン酸、キノリン誘導体トリカルボン酸、ビキノリン誘導体トリカルボン酸、ピリジン誘導体テトラカルボン酸、ビピリジン誘導体テトラカルボン酸、ピラジン誘導体テトラカルボン酸、ピラゾリン誘導体テトラカルボン酸、ピラゾール誘導体テトラカルボン酸、キノキサリン誘導体テトラカルボン酸、イミダゾリン誘導体テトラカルボン酸、イミダゾール誘導体テトラカルボン酸、ジイミド誘導体テトラカルボン酸、キノリン誘導体テトラカルボン酸、ビキノリン誘導体テトラカルボン酸、などが挙げられる。これらは架橋性有機化合物によるピラー部を形成するので、分子設計的、構造解析的に1種、多くて2種の有機配位子を用いることが好ましい。3種以上用いた場合、結合の規則性が乱れ、得られる多孔性配位高分子粒子の構造解析を困難とすることがある。有機錯体ユニット同士は、これらの架橋性有機化合物を介在して多方向に規則的に連結することで形成された立体幾何学形状(立方体格子状に限定されないジャングルジム状)の空間が空洞セル群を形成する。従って架橋性有機化合物の分子量が大きい程、あるいは分子鎖の分岐が多い程、あるいは架橋性有機化合物の体積が大きい程、得られる空洞セルのサイズが広大となる。空洞セルのサイズは3nm~12nmが好ましい。
多孔性配位高分子粒子は有機錯体ユニット部を有することで、多孔性配位高分子粒子を付帯する物品に帯電防止性を付与することができる。そして多孔性配位高分子粒子の空洞セル群は、悪臭成分、及びVOC成分などの不快臭気成分を短時間で効率的に吸着することで、臭気濃度を効果的に減少させる減臭効果、並び安定持続的な消臭効果を発現する。さらにこの空洞セル群の一部または全部に光触媒性金属酸化物を担持することにより、光触媒性金属酸化物の光触媒活性により、多孔性配位高分子の空洞セルに捕捉した有機系臭気ガスを逐次分解し、さらに有機系臭気ガスを取り込めるように空洞セルの状態を空にリセットすることができる。(ここで、空洞セル群の一部または全部、とは空洞セルの数に対する一部または全部であって、空洞セル体積に対する一部または全部の意味ではない。)またウイルス、菌、黴などの増殖を抑止する。光触媒性金属酸化物は、酸化チタン、過酸化チタン、酸化亜鉛、酸化錫、チタン酸ストロンチウム、酸化タングステン、酸化ビスマス、及び酸化鉄、から選ばれた1種以上の粒子径3~15nmの粒子ゾルが挙げられ、特に酸化チタンゾルが好ましい。光触媒性金属酸化物の光触媒活性により、多孔性配位高分子の空洞セルに捕捉した有機系臭気ガスを分解し、またウイルス、菌、黴などの増殖を抑止する。また光触媒性金属酸化物は、波長400nmから800nmの可視光を吸収して活性を示すものが好ましく、これらは、1)上記の光触媒性金属酸化物に、銀、プラチナ、金、銅、ロジウム、パラジウム、ルテニウム、イリジウムなどの金属およびそれらの金属の化合物を助触媒として添加(担持)した助触媒添加(担持)型光触媒、2)上記の光触媒性金属酸化物に、窒素、炭素、硫黄、リン、ホウ素、フッ素などをドープしたアニオンドープ型光触媒、3)上記の光触媒性金属酸化物に、クロム、ニオブ、マンガン、コバルト、バナジウム、鉄、ニッケルなどの遷移金属イオンをドープしたカチオンドープ型光触媒、4)上記の光触媒性金属酸化物に、アニオンとカチオンの両方をドープした共ドープ型光触媒、5)上記の光触媒性金属酸化物に、白金、パラジウム、ロジウムなど貴金属のハロゲン化物を担持させた金属ハロゲン化物担持型光触媒、6)上記の光触媒性金属酸化物から部分的に酸素を引き抜いた酸素欠損型光触媒、などを用いることができる。光触媒性金属酸化物は、上記より1種、または2種以上を併用して用いることができ、多孔性配位高分子粒子の表面にも担持することが好ましい。また多孔性配位高分子の空洞セルにフラーレン(C60フラーレン:直径0.7nm、有機修飾C60フラーレン、無機修飾C60フラーレン、水素内包C60フラーレン、金属内包C60フラーレンから選ばれた1種以上)を担持することで、多孔性配位高分子自体の導電性を向上させ、得られる帯電防止性消臭シート状物の帯電防止性をより向上させることを可能とする。本発明において光触媒性金属酸化物、もしくはフラーレンの担持とは、空洞セルによる担持の他、多孔性配位高分子粒子表面に付着しての担持も包含するものとする。
多孔性配位高分子粒子の空洞セル群の一部または全部、さらに多孔性配位高分子粒子の表面に光触媒性金属酸化物を担持させる方法(ここで、空洞セル群の一部または全部、とは空洞セルの数に対する一部または全部であって、空洞セル体積に対する一部または全部の意味ではない。)、及びシート基材に光触媒性金属酸化物またはフラーレンを担持する多孔性配位高分子粒子を含むゾルゲル縮合薄膜形成溶液を形成(乾燥工程を含む)する方法は、1)シート基材の少なくとも1面に、空洞セル群を有する多孔性配位高分子粒子、及びカーボンナノチューブまたは金属酸化物コロイドを含むゾルゲル縮合薄膜を形成する工程、前記多孔性配位高分子粒子、及びカーボンナノチューブまたは金属酸化物コロイドを含むゾルゲル縮合薄膜上に光触媒性金属酸化物またはフラーレンを含む溶液を塗布し、前記多孔性配位高分子粒子の空洞セル群の一部または全部に前記光触媒性金属酸化物またはフラーレンを担持させる工程、すなわち多孔性配位高分子粒子、及びカーボンナノチューブまたは金属酸化物コロイドを含むゾルゲル縮合薄膜塗膜上に光触媒性金属酸化物またはフラーレンを含む溶液を塗布することによって光触媒性金属酸化物またはフラーレンが多孔性配位高分子粒子の空洞セル群の少なくとも一部に担持され、同時に多孔性配位高分子粒子の表面に光触媒性金属酸化物またはフラーレンを担持させることができる。この方法によれば、光触媒性金属酸化物またはフラーレンは多孔性配位高分子粒子の表面、及び多孔性配位高分子粒子の空洞セル群の一部または全部に担持された態様となる。
また、別の方法として、2)空洞セル群を有する多孔性配位高分子粒子、及び光触媒性金属酸化物またはフラーレンを含む溶液を配合する工程、前記多孔性配位高分子粒子の空洞セル群の一部または全部、さらに多孔性配位高分子粒子の表面に光触媒性金属酸化物またはフラーレンを担持させる工程(攪拌工程、熟成工程:攪拌工程と熟成工程は兼用可能な工程)、シート基材の少なくとも1面に光触媒性金属酸化物またはフラーレンを担持する多孔性配位高分子粒子、及びカーボンナノチューブまたは金属酸化物コロイドを含むゾルゲル縮合薄膜形成溶液を塗布(乾燥工程を含む)し、光触媒性金属酸化物またはフラーレンを担持する多孔性配位高分子粒子、及びカーボンナノチューブまたは金属酸化物コロイドを含むゾルゲル縮合薄膜塗膜を形成する工程、を含む方法で、光触媒性金属酸化物またはフラーレンを担持する多孔性配位高分子粒子、及びカーボンナノチューブまたは金属酸化物コロイドを含むゾルゲル縮合薄膜が形成される。この方法によれば、光触媒性金属酸化物またはフラーレンは多孔性配位高分子粒子の表面と、空洞セル群の一部または全部に担持された態様となる。上記1)及び2)の製造方法において、光触媒性金属酸化物またはフラーレンを担持する多孔性配位高分子粒子では、空洞セル全体に臭気物質を取り込む空間余裕が大きいほど、消臭効果の発現が迅速、かつ絶大となるため、個々の空洞セル内が多量の光触媒性金属酸化物またはフラーレンで充填されない状態(空洞セルの体積の50%以上が余裕空間となる状態)、多孔性配位高分子粒子の表面、及び表面近傍に集中して光触媒性金属酸化物またはフラーレンを担持させ、粒子内部の空洞セルを温存してもよい。多孔性配位高分子粒子と光触媒性金属酸化物またはフラーレンとの質量比は、50:1~1:1、特に10:1~3:2が好ましい。
本発明の帯電防止性消臭シート状物において、多孔性配位高分子粒子にアルコキシシラン化合物の加水分解物が結合していることが、多孔性配位高分子粒子とゾルゲル縮合薄膜との密着性向上、脱落防止の固着性向上のために好ましい。アルコキシシラン化合物は、一般式:XR-Si(Y)で表される分子中に2個以上の異なった反応基を有する化合物で、例えば、X=アミノ基、ビニル基、エポキシ基、メタクリル基、アクリル基、クロル基、メルカプト基、イソシアヌレート基、イソシアネート基、など(R=アルキル鎖)、Y=メトキシ基、エトキシ基などである。シランカップリング剤は、アミノシラン、ビニルシラン、エポキシシラン、メタクリルシラン、アクリルシラン、クロルシラン、メルカプトシラン、イソシアヌレートシラン、イソシアネートシラン、などが挙げられる。多孔性配位高分子粒子にアルコキシシラン化合物の加水分解物を結合させる処理は、多孔性配位高分子粒子(光触媒性金属酸化物を担持させる前でも、担持させた後、の何れでも可)を1種以上のアルコキシシラン化合物を1~5質量%濃度で含む水溶液中で処理し、アルコキシシラン化合物の加水分解物:XR-Si(OH)(X、Yは上記と同じ)を多孔性配位高分子粒子の未反応のカルボキシ基、金属イオンなどに結合させる処理である。また、この処理溶液は直接シート基材にグラビアコート法などの公知の塗工方法で塗布し、加熱乾燥することもできる。また、アルコキシシラン化合物の加水分解物が結合した多孔性配位高分子粒子は、オルガノシリケート化合物、シラノール基含有有機シラン化合物、チタノール基含有有機チタン化合物、などのゾルゲル薄膜を造膜可能な成分中に添加使用し、ゾルゲル薄膜中に多孔性配位高分子粒子が分散し、かつ多孔性配位高分子粒子が露出する態様とすることが好ましい。アルコキシシラン化合物の加水分解物が結合した多孔性配位高分子粒子は、ゾルゲル薄膜中の結合の一部に何らかの形で取り込まれ、シート基材との密着強さ、表面摩耗強さ、を向上させることができる。
本発明の帯電防止性消臭シート状物において、シート基材の表面が、シラノール基含有有機シラン化合物のゾルゲル縮合薄膜、またはチタノール基含有有機チタン化合物のゾルゲル縮合薄膜で被覆されていて、しかも多孔性配位高分子粒子がこれらのゾルゲル縮合薄膜中に分散して固着化され、かつ多孔性配位高分子粒子が露出する態様が好ましい。この露出とは多孔性配位高分子粒子の多孔部の空洞セル内に空気やガスを取り込むことを可能とする状態であれば特に限定は無く、多孔性配位高分子粒子のほぼ全体が露出した状態、約半分露出した状態、先端部のみが露出した状態の何れであってもよく、これらの状態が混在した露出状態であってもよい。シート基材の表面全域に多孔性配位高分子粒子が露出し、多孔性配位高分子粒子の露出表面積が大きいほど、多孔性配位高分子粒子内の広大な表面積を有する空洞セル内に、多量の空気やガスを取り込むことができ、そして多孔性配位高分子粒子自体の吸着効果、多孔性配位高分子粒子内に担持する光触媒性金属酸化物による有機系化学物質ガスの分解効果の相乗によって本発明の帯電防止性消臭シート状物の消臭効果は迅速、かつ絶大なものとする。多孔性配位高分子粒子のほぼ全体が露出した状態、約半分露出した状態、先端部のみが露出した状態のコントロールは、上記ゾルゲル縮合薄膜と多孔性配位高分子粒子との質量比を、4:1~1:2、特に2:1~2:3とする仕込み配合とすることが好ましい。また上記ゾルゲル縮合薄膜と多孔性配位高分子粒子(光触媒性金属酸化物またはフラーレンを担持)との質量比を、4:1~1:2、特に2:1~2:3とする仕込み配合とすることが好ましい。また上記ゾルゲル縮合薄膜と多孔性配位高分子粒子(光触媒性金属酸化物を担持し、かつアルコキシシラン化合物の加水分解物が結合)との質量比を、4:1~1:2、特に2:1~2:3とする仕込み配合とすることが好ましい。
シラノール基含有有機シラン化合物は、化学式:SiO(OR)で表される4官能加水分解性シラン化合物であり、式中、Rは炭素原子数1~10のアルキル基(特に炭素数1~3の低級アルキル基)、またはアリール基(特にフェニル基)で具体的に、テトラメトキシシラン(Si(OCH):別名テトラメチルシリケート)、テトラエトキシシラン(Si(OC):別名テトラエチルシリケート)、テトラプロポキシシラン(Si(OC):別名テトラプロピルシリケート)、テトラブトキシシラン(Si(OC):別名テトラブチルシリケート)、テトラフェノキシシラン(Si(OC):別名テトラフェニルシリケート)、ジメトキシジエトキシシラン(Si(OCH)(OC):別名ジメチルジエチルシリケート)などである。シラノール基含有有機シラン化合物の多量体は、化学式:Sin-1(OR)2(n+1)で表される縮合体であり、式中、Rは炭素原子数1~10のアルキル基(特に炭素数1~3の低級アルキル基)、またはアリール基(特にフェニル基)、nは4官能加水分解性シラン化合物の縮合分子数を表す多量化度(所謂n量体)で、nが2以上のシラノール基含有有機シラン化合物多量体は、4官能加水分解性シラン化合物が加水分解して生成するシラノール基同士の反応で2分子以上が縮合して生成する多量体であり、nの表す多量化度は多量体1分子中に含有するSi原子数を意味する。本発明においては多量化度2~10、好ましくは4~6のシラノール基含有有機シラン化合物多量体(Sin-1(OR)2(n+1))によるゾルゲル縮合薄膜であることが好ましい。このゾルゲル縮合薄膜の原子配列はヨコ軸とタテ軸からなる四角格子網目をモデルとすれば、ヨコ軸とタテ軸の交点にSi原子が配置され、上下左右に隣接するSi-Si原子間にO原子が配置されたイメージである。
チタノール基含有有機チタン化合物は、化学式:TiO(OR)で表される4官能加水分解性チタン化合物であり、式中、Rは炭素原子数1~10のアルキル基(特に炭素数1~3の低級アルキル基)、またはアリール基(特にフェニル基)で具体的に、テトラメトキシチタン(Ti(OCH):別名テトラメチルチタネート)、テトラエトキシチタン(Ti(OC):別名テトラエチルチタネート)、テトラプロポキシチタン(Ti(OC):別名テトラプロピルチタネート)、テトラブトキシチタン(Ti(OC):別名テトラブチルチタネート)、テトラフェノキシチタン(Ti(OC):別名テトラフェニルチタネート)、ジメトキシジエトキシチタン(Ti(OCH)(OC):別名ジメチルジエチルチタネート)などのチタニウムアルコキシド化合物、さらにはトリブトキシチタンステアレート、イソプロポキシチタントリステアレートなどのチタニウムアシレート化合物:Ti(OOCR)、またさらにジイソプロポキシチタンビスアセチルアセトナト、ジイソプロポキシチタンビスエチルアセトアセテートなどのチタニウムキレート化合物:(ROO)Ti(OR)錯体、その他、イソプロポキシチタントリイソステアレート、イソプロポキシチタンジメタクリレートイソステアレート、イソプロポキシチタントリスジオクチルホスフェート、ビスジオクチルホスフェートエチレングリコラートチタン、ジブトキシビストリエタノールアミナトチタンなどが例示できる。チタノール基含有有機チタン化合物の多量体は、化学式:Tin-1(OR)2(n+1)で表される縮合体であり、式中Rは炭素原子数1~10のアルキル基(特に炭素数1~3の低級アルキル基)、またはアリール基(特にフェニル基)、nは4官能加水分解性チタン化合物の縮合分子数を表す多量化度(所謂n量体)で、nが2以上のチタノール基含有有機チタン化合物多量体は、4官能加水分解性チタン化合物が加水分解して生成するチタノール基同士の反応で2分子以上が縮合して生成する多量体であり、nの表す多量化度は多量体1分子中に含有するTi原子数を意味する。本発明においては多量化度2~10、好ましくは4~6のチタノール基含有有機チタン化合物多量体(Tin-1(OR)2(n+1))によるゾルゲル縮合薄膜が好ましい。このゾルゲル縮合薄膜の原子配列はヨコ軸とタテ軸からなる四角格子網目をモデルとすれば、ヨコ軸とタテ軸の交点にTi原子が配置され、上下左右に隣接するTi-Ti原子間にO原子が配置されたイメージである。
上記ゾルゲル縮合薄膜形成用組成物(水/アルコール溶媒)に含有する、シラノール基含有有機シラン化合物、またはチタノール基含有有機チタン化合物などの加水分解生成物の濃度は0.01~30質量%、特に0.1~5質量%の範囲が好ましい。加水分解促進には、アルミニウム、チタニウム、ジルコニウムなどの金属類にアルコキシ基が結合した金属アルコキシド、又はこれらの金属アルコキシドにケト・エノール互変異性体を構成しうる金属キレート化合物、無機酸(塩酸、硝酸、リン酸など)、有機酸(ギ酸、酢酸、ベンゼンスルホン酸など)、アンモニア、有機アミン、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジオクチエートなどの化合物を加水分解触媒として任意量使用することができる。
シラノール基含有有機シラン化合物のゾルゲル縮合薄膜、またはチタノール基含有有機チタン化合物のゾルゲル縮合薄膜中に含むカーボンナノチューブとしては、平均繊維径0.5~100nm、アスペクト比50~5000のもので、整列したもの、ランダムに配列したものなど何れであってもよい。上記ゾルゲル縮合薄膜に含むカーボンナノチューブは、0.01~5質量%、特に0.05~2質量%が好ましい。この含有量範囲でカーボンナノチューブの含有量が多ほど導電性は比例的に向上する。カーボンナノチューブの種別的には、直径0.4nm~5nmの単層カーボンナノチューブ、直径1.5nm~5nmの二層カーボンナノチューブ、直径3nm~50nmの多層カーボンナノチューブ、カップ積重型カーボンナノチューブ、酸化カーボンナノチューブ、官能化カーボンナノチューブ(末端修飾及び/または側壁修飾)、金属(蒸着またはスパッタ)カーボンナノチューブ、から選ばれた1種以上で、カーボンナノチューブを構成する六角形の配置(カイラル指数)が(n,n)のアームチェア型、(n,0)のジグザグ型、(n,m)のヘリカル型の何れであってもよい。また、これらのカーボンナノチューブは、他の電気活性材料と併用することで導電性を向上させることができる。電気活性材料は、Ru、Ir、W、Mo,Mn、Ni,及びCoなどの遷移金属の酸化物が例示できる。特に金属(蒸着またはスパッタ)カーボンナノチューブは、Au、Ag、Cu、Al、Zn、Tiなどを蒸着法またはスパッタ法によって表面を金属化したカーボンナノチューブで、特に2層構造で、アンカーをTi層とするAu/Ti、Ag/Ti、Cu/Tiなどでは導電性を飛躍的に向上させる。これらのカーボンナノチューブは、シラノール基含有有機シラン化合物のゾルゲル縮合薄膜、またはチタノール基含有有機チタン化合物のゾルゲル縮合薄膜を形成させる溶液組成物中(段落〔0032〕)に分散させて用いることが好ましい。多孔性配位高分子粒子を固着するゾルゲル縮合薄膜がカーボンナノチューブを含有することで、ゾルゲル縮合薄膜に屈曲亀裂を生じても薄膜に内在するカーボンナノチューブの連続性(導電性)が損なわれ難いものとする。これはカーボンナノチューブの線状形態による補強効果によるものと考察される。
またシラノール基含有有機シラン化合物のゾルゲル縮合薄膜、またはチタノール基含有有機チタン化合物のゾルゲル縮合薄膜中に含む金属酸化物コロイドとしては、酸化チタン、酸化ケイ素、酸化鉄、酸化銅、酸化亜鉛、酸化錫、酸化ジルコニウム、酸化モリブデン、酸化インジウム、酸化タングステン、三酸化アンチモン、五酸化アンチモン、酸化ニオブ、酸化ビスマス、から選ばれた1種以上の金属酸化物によるコロイド粒子、または複合コロイド粒子が好ましい。複合コロイド粒子は上記2~3種のコロイド粒子が化学的結合により一体化した態様で、具体的に酸化錫と酸化タングステン、酸化錫と酸化亜鉛、酸化亜鉛と五酸化アンチモン、五酸化アンチモンと酸化インジウムなどの複合コロイド粒子が挙げられる。これらのコロイド粒子、及び複合コロイド粒子はリン酸をドープした複合体が帯電防止効果により優れている。これらのコロイド粒子、及び複合コロイド粒子は、段落〔0028〕に記載したアルコキシシラン化合物による表面修飾がなされた、あるいは表面修飾がなされていない、10~50nmの一次粒子径のものが使用できる。上記ゾルゲル縮合薄膜に含む金属酸化物コロイドは、1~20質量%、特に3~15質量%が好ましい。この含有量範囲で金属酸化物コロイドの含有量が多ほど帯電防止性は比例的に向上する。これらの金属酸化物コロイドは、シラノール基含有有機シラン化合物のゾルゲル縮合薄膜、またはチタノール基含有有機チタン化合物のゾルゲル縮合薄膜を形成させる溶液組成物中(段落〔0032〕)に分散させて用いることが好ましい。多孔性配位高分子粒子を固着するゾルゲル縮合薄膜が金属酸化物コロイドを含有することで、ゾルゲル縮合薄膜に屈曲亀裂を生じても、金属酸化物コロイドの連続性(導電性)が損なわれ難いものとする。これは金属酸化物コロイドがゾルゲル縮合薄膜中で多孔性配位高分子粒子と共存することにより、有機錯体ユニットをパーツに含む多孔性配位高分子粒子に何らかの態様で金属酸化物コロイドが配位した分子間力の作用によるものと考察される。
本発明の帯電防止性消臭シート状物はシート基材が織物を芯材として含んでいてもよい。織物として、1)経糸及び緯糸からなる織物、または2)経糸及び左上バイアス糸/右上バイアス糸からなる三軸織物、または3)経糸、緯糸、及び左上バイアス糸/右上バイアス糸からなる四軸織物、である。また上記織物は、平織物(二軸織物、三軸織物、四軸織物)、斜子織物(2×2、3×3、4×4などの正則斜子織、3×2、4×2、4×3、5×3、2×3、2×4、3×4、3×5などの不規則斜子織)、綾織物(経糸、緯糸とも最少3本ずつ用いた最小構成単位を有する:3枚斜文、4枚斜文、5枚斜文、6枚斜文など)、朱子織物(経糸、緯糸とも最少5本ずつ用いた最小構成単位を有する:2飛び、3飛び、4飛び、5飛びなどの正則朱子)、及び変化平織物、変化綾織物、変化朱子織物など、さらに蜂巣織物、梨子地織物、破れ斜文織物、昼夜朱子織物、もじり織物(紗織物、絽織物)、縫取織物、二重織物などの織物が使用できる。織物の目付量は100~500g/m、空隙率は0~25%、が適している。これらの織物には精練、漂白、染色、柔軟化、撥水、防黴、防炎、カレンダー、などの公知の染色整理加工を施したものを使用することもできる。
織物を構成する糸条は、合成繊維、天然繊維(綿、ケナフ)、半合成繊維(レーヨン)、無機繊維(ガラス、シリカ、アルミナ)及びこれらの2種以上から成る混合繊維など、何れの繊維も使用できるが、汎用的には、ポリプロピレン繊維、ポリエチレン繊維、ポリビニルアルコール繊維、ポリエステル(ポリエチレンテレフタレート:PET、ポリブチレンテレフタレート:PBT、ポリナフタレンテレフタレート:PNTなど)繊維、ナイロン繊維、アラミド繊維及び、これらの混用繊維(混撚・合撚)などの合成繊維による、1)マルチフィラメント糸条、2)短繊維紡績糸条、3)及びカバリング糸条、から選ばれた1種以上の糸条が使用できる。マルチフィラメント糸条は、ナイロン、ポリエステルなどの熱可塑性樹脂を紡糸口金から押出して紡糸した長繊維紡原糸を3~5倍に延伸した長繊維紡糸束(50~500本のフィラメント束)のまま無撚、または1~200回/m撚りを掛けた、繊度125~2000デニール(139~2222dtex)の糸条が好ましい。これらのマルチフィラメント糸条には、タスラン糸条、ウーリー糸条などの嵩高加工糸条を包含する。短繊維紡績糸条は、ナイロン、ポリエステルなどの熱可塑性樹脂を紡糸口金から押出して紡糸した長繊維紡糸束(延伸していてもよい)を3.8~5.8mm長程度に切断したステープルを開繊練条したスライバを引き伸ばしたロービング(粗糸)とし、これに所定の番手太さにドラフトと撚りを掛けてトウ紡績したものが好ましい。撚糸は単糸または単糸2本を引き揃えてS(右)撚りもしくはZ(左)撚りしたもの、また単糸または単糸2本を引き揃えて下撚りした加撚糸を2本引き揃えて上撚りを掛けてなる双糸が挙げられる。これらの撚糸の撚り回数は200~2000回/m程度である。またカバリング糸条は、上記マルチフィラメント糸束の外周に上記短繊維を巻き付けたカバリング糸条が挙げられ、芯鞘複合糸条もカバリング糸条に包含される。
本発明の帯電防止性消臭シート状物において、シート基材は熱可塑性樹脂組成物による厚さ0.1mm~0.29mmのフィルム、または厚さ0.3mm~5mmのシートであることが好ましい。熱可塑性樹脂組成物の熱可塑性樹脂は、軟質塩化ビニル樹脂(可塑剤配合)、塩化ビニル系共重合体樹脂、塩素化塩化ビニル樹脂、オレフィン樹脂(PE,PP)、オレフィン系共重合体樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合体樹脂(EVA)、エチレン-(メタ)アクリル酸(エステル)共重合体樹脂、ウレタン樹脂、酢酸ビニル系共重合体樹脂、スチレン系共重合体樹脂、ポリエステル系共重合体樹脂、フッ素含有共重合体樹脂など、ショアA硬度35~85程度の熱可塑性樹脂、またはエラストマーであり、これらにはウレタンゴム、アクリルゴム、ブタジエンゴム、クロルスルホン化ポリエチレン、SBR、EPDM、EPMなどを含み、ゴム弾性を強化させたものでもよい。エラストマーとは2種以上のモノマーからなるブロック共重合体樹脂で、個々のブロック成分がハードセグメント、及びソフトセグメントを構成する樹脂である。これらの熱可塑性樹脂、エラストマーのうち、特に高周波溶着性を有する軟質塩化ビニル樹脂、塩化ビニル系共重合体樹脂、塩素化塩化ビニル樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合体樹脂(EVA)、エチレン-(メタ)アクリル酸(エステル)共重合体樹脂、ウレタン樹脂、及びフッ素含有共重合体樹脂などを高周波溶着性付与成分として被覆層に対し50質量%以上含有することが好ましい。熱可塑性樹脂組成物は、上記熱可塑性樹脂を主体に、安定剤、フィラー、着色剤、顔料、メタリック顔料、蓄光顔料、難燃剤、防炎剤、紫外線吸収剤、光安定剤、防黴剤、抗菌剤、帯電防止剤、架橋剤などの公知の添加剤を任意に組み合わせ配合したものである。
本発明の帯電防止性消臭シート状物が、シート基材に織物を芯材として含む場合、その製造方法は、熱可塑性樹脂組成物(特に好ましくは塩化ビニル樹脂/可塑剤など)を熱混練し、カレンダー法、またはTダイス押出法で溶融圧延したフィルム、またはシートを使用し、これを織物の表裏に熱ラミネートで積層することで得られる。この熱ラミネートは例えば、熱ロール/ゴムロールの連続圧着ユニットを1~2と、冷却ロールユニット、及び巻取ユニットを有するラミネーターを用い、ラミネーターの1回通しまたは2回通しの工程により熱溶融圧着する方法が挙げられる。また、シート基材に織物を芯材として含む態様として、織物の表裏に溶液状の熱可塑性樹脂組成物(特に好ましくは塩化ビニル樹脂/可塑剤などによるペースト)をナイフコート、クリアランスコート、グラビアコートなどのコーティング法により塗工し、これを熱乾燥、または加熱ゲル化によって、樹脂被覆層を形成したもの、または溶液状の熱可塑性樹脂組成物(特に好ましくは塩化ビニル樹脂ペースト)を充填した液浴中に織物を浸漬し、これを引き上げると同時に1対のゴムロール間で圧搾し、直後に熱乾燥、または加熱ゲル化させるディッピング法によって、織物の表裏に樹脂被覆層を形成したものが挙げられる。
本発明を下記の実施例及び比較例を挙げて更に説明するが、本発明の態様はこれらの例の範囲に限定されるものではない。実施例及び比較例において、試験シートの帯電防止性、消臭性は下記の試験方法により測定し、評価した。
(1)帯電防止性:表面抵抗率測定(JIS K7194準拠)
a)23℃、相対湿度50%RHで膜材片を24時間静置後、下記の抵抗率計(JIS K7194準拠)を用い表面抵抗率を3回測定し、その平均値を表面抵抗率とした。
A)高抵抗抵抗率計
株式会社三菱化学アナリテック製「ハイレスタUP MCP-HT800(レンジ103~1014Ω)
B)低抵抗抵抗率計
株式会社三菱化学アナリテック製「ロレスタGX MCP-T700(レンジ10-4~107Ω)」
b)耐屈曲揉み性:JIS L1096 8.19.2 B法)スコット形法に準拠し、1kgf荷重×300回の屈曲揉みを施した後の表面抵抗率を測定した。
(2)消臭性(減臭性)
容積5LのTedlar(登録商標)ガスバリヤーバッグを4個用意し、各々のバッグに濃度10ppmに調整した4種の化学物質ガス、1)アンモニア(塩基性)、2)イソ吉草酸(酸性)、3)硫化水素(酸性)、4)トルエン(VOC)を各々3L封入した4バッグを3セット準備した。
10cm×10cmサイズの試験シート状物(片面に多孔性配位高分子粒子が露出)を、1)→2)→3)→4)の順にバッグ内に入れ、各々ブラックライト(ピーク365nm)照射(多孔性配位高分子粒子露出面に照射:照射距離2.5cm:テドラーバッグ内に密封静置)の環境下、各々25℃×30分、25℃×60分、25℃×120分、の3水準を室内静置した後の各々のガス濃度をガス検知管(ガステック)で測定した。
※ブラックライト 機種SL-B01A5(オーム電機株式会社)
W55mm×H160mm×D25mm
[実施例1]
織物
1000デニール(1111dtex)のポリエチレンテレタレート(PET)繊維(フィラメント数192本)からなり、S撚50T/mを施したPETマルチフィラメント糸条を経糸群及び緯糸群に用い、経糸群は1インチ間16本の織組織とし、また緯糸群は1インチ間16本の織組織とする平織物を用いた。この織物の質量は150g/m、空隙率(目抜け部総和)は14%であった。
<シート基材>
この織物を基材として、その両面に下記〔配合1〕の軟質塩化ビニル樹脂組成物からなる厚さ0.2mmのカレンダー成型フィルムを表裏の被覆層として、ラミネーターでの熱圧着による溶融ラミネートを施して、厚さ0.7mm、質量830g/mのシート基材を得た。
〔配合1〕:軟質塩化ビニル樹脂組成物(コンパウンド)
塩化ビニル樹脂(K値71.5) 100質量部
4-シクロヘキセン-1,2-ジカルボン酸ビス(2-エチルヘキシル)(可塑剤)
55質量部
リン酸トリクレジル(防炎可塑剤) 10質量部
エポキシ化大豆油(安定剤兼可塑剤) 5質量部
バリウム/亜鉛複合安定剤 2質量部
三酸化アンチモン(難燃剤) 10質量部
ルチル型酸化チタン(白顔料) 5質量部
ベンゾトリアゾール骨格化合物(紫外線吸収剤) 0.3質量部
<多孔性配位高分子粒子(1)>
下記有機錯体ユニット及び架橋性有機化合物との多角的交互連結体による粒子径0.5~1μmの結晶粒子
有機錯体ユニット:テレフタル酸銅「Cu(CCO)
架橋性有機化合物:1,4-ジアザビシクロ[2,2,2]オクタン「C12
アルコキシシラン化合物による処理
多孔性配位高分子粒子(1)、アルコキシシラン化合物(エポキシシラン:3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン)、水をこの順番に質量比率、10(固形分):1(固形分):100で配合した溶液を密閉容器内、30℃で2時間攪拌した後、ろ過物を乾燥し、エポシシラン化合物の加水分解物が結合した多孔性配位高分子粒子(1a)を得た。
<シラノール基含有有機シラン化合物のゾルゲル縮合薄膜の形成>
下記〔配合2〕の組成を配合してゾルゲル縮合薄膜形成用組成物(1)を得た。
次にシート基材の片表面上に、このゾルゲル縮合薄膜形成用組成物(1)を100メッシユのグラビアロールによりグラビア塗工し、120℃の熱風炉で2分間加熱乾燥し、ゾルゲル縮合薄膜形成用組成物(1)をゾルゲル硬化させて、カーボンナノチューブを含むシラノール基含有有機シラン化合物のゾルゲル縮合薄膜(1)を形成し、厚さ0.7mm、質量833g/mの多孔性配位高分子粒子(1a)が表面に露出している帯電防止性消臭シート状物(1)を得た。
〔配合2〕ゾルゲル縮合薄膜形成用組成物(1)
テトラエチルシリケート(Si(OC):SiO換算40質量%)5質量%、及び
[Si(OC)12]のテトラエトキシシラン5量体が95質量%の混合体
25質量部
加水分解触媒:2%塩酸 1質量部
多孔性配位高分子粒子(1a) 10質量部
2層カーボンナノチューブ(直径2~4nm) 0.25質量部
水(50質量%)/エタノール(50質量%) 100質量部
[実施例2]
実施例1の多孔性配位高分子粒子(1)を多孔性配位高分子粒子(2)に変更(〔配合3〕)した以外は実施例1と同様として、厚さ0.7mm、質量833g/mの多孔性配位高分子粒子(2a)が表面に露出している、カーボンナノチューブを含むシラノール基含有有機シラン化合物のゾルゲル縮合薄膜(2)を付帯する帯電防止性消臭シート状物(2)を得た。
<多孔性配位高分子粒子(2)>
下記有機錯体ユニット及び架橋性有機化合物との多角的交互連結体による粒子径0.5~1μmの結晶粒子
有機錯体ユニット:テレフタル酸亜鉛「ZnO(CCO)
架橋性有機化合物:1,4-ジアザビシクロ[2,2,2]オクタン「C12
アルコキシシラン化合物による処理
多孔性配位高分子粒子(2)を用い、実施例1の多孔性配位高分子粒子(1a)の製造プロセスと同様に行い、エポシシラン化合物の加水分解物が結合した多孔性配位高分子粒子(2a)を得た。
[実施例3]
実施例1の多孔性配位高分子粒子(1)を多孔性配位高分子粒子(3)に変更(〔配合4〕)した以外は実施例1と同様として、厚さ0.7mm、質量833g/mの多孔性配位高分子粒子(3a)が表面に露出している、カーボンナノチューブを含むシラノール基含有有機シラン化合物のゾルゲル縮合薄膜(3)を付帯する帯電防止性消臭シート状物(3)を得た。
<多孔性配位高分子粒子(3)>
下記有機錯体ユニット及び架橋性有機化合物との多角的交互連結体による粒子径0.5~1μmの結晶粒子
有機錯体ユニット:2,6-ナフタレンジカルボン酸銅「Cu(C10CO)
架橋性有機化合物:1,4-ジアザビシクロ[2,2,2]オクタン「C12
アルコキシシラン化合物による処理
多孔性配位高分子粒子(3)を用い、実施例1の多孔性配位高分子粒子(1a)の製造プロセスと同様に行い、エポシシラン化合物の加水分解物が結合した多孔性配位高分子粒子(3a)を得た。
[実施例4]
実施例1の多孔性配位高分子粒子(1)を多孔性配位高分子粒子(4)に変更(〔配合5〕)した以外は実施例1と同様として、厚さ0.7mm、質量833g/mの多孔性配位高分子粒子(4a)が表面に露出している、カーボンナノチューブを含むシラノール基含有有機シラン化合物のゾルゲル縮合薄膜(4)を付帯する帯電防止性消臭シート状物(4)を得た。
<多孔性配位高分子粒子(4)>
下記有機錯体ユニット及び架橋性有機化合物との多角的交互連結体による粒子径0.5~1μmの結晶粒子
有機錯体ユニット:2,3-ピラジンジカルボン酸銅「Cu(CCO)
架橋性有機化合物:ピリジン「CN」
アルコキシシラン化合物による処理
多孔性配位高分子粒子(4)を用い、実施例1の多孔性配位高分子粒子(1a)の製造プロセスと同様に行い、エポシシラン化合物の加水分解物が結合した多孔性配位高分子粒子(4a)を得た。
[実施例5]
実施例1の多孔性配位高分子粒子(1)を多孔性配位高分子粒子(5)に変更(〔配合6〕)した以外は実施例1と同様として、厚さ0.7mm、質量833g/mの多孔性配位高分子粒子(5a)が表面に露出している、カーボンナノチューブを含むシラノール基含有有機シラン化合物のゾルゲル縮合薄膜(5)を付帯する帯電防止性消臭シート状物(5)を得た。
<多孔性配位高分子粒子(5)>
下記有機錯体ユニット及び架橋性有機化合物との多角的交互連結体による粒子径0.5~1μmの結晶粒子
有機錯体ユニット:1,3,5-ベンゼントリカルボン酸銅「Cu(CCO)
架橋性有機化合物:ピリジン「CN」
アルコキシシラン化合物による処理
多孔性配位高分子粒子(5)を用い、実施例1の多孔性配位高分子粒子(1a)の製造プロセスと同様に行い、エポシシラン化合物の加水分解物が結合した多孔性配位高分子粒子(5a)を得た。
[実施例6]
実施例1の共通のカーボンナノチューブを含むシラノール基含有有機シラン化合物のゾルゲル縮合薄膜(1)を、金属酸化物コロイド(リン酸ドープ酸化錫)を含むシラノール基含有有機シラン化合物のゾルゲル縮合薄膜(6)に変更した以外は各々実施例1と同様にして、厚さ0.7mm、質量836g/mの多孔性配位高分子粒子(1a)が表面に露出している帯電防止性消臭シート状物(6)を得た。
すなわち実施例6は〔配合2〕ゾルゲル縮合薄膜形成用組成物(1)を下記の〔配合7〕ゾルゲル縮合薄膜形成用組成物(6)に変更した。
〔配合7〕ゾルゲル縮合薄膜形成用組成物(6)
テトラエチルシリケート(Si(OC):SiO換算40質量%)5質量%、及び
[Si(OC)12]のテトラエトキシシラン5量体が95質量%の混合体
25質量部
加水分解触媒:2%塩酸 1質量部
多孔性配位高分子粒子(1a) 10質量部
リン酸ドープ酸化錫(粒子径10nm:固形分31質量%) 10質量部
水(50質量%)/エタノール(50質量%) 100質量部
[実施例7]
実施例1の共通のカーボンナノチューブを含むシラノール基含有有機シラン化合物のゾルゲル縮合薄膜(1)を、金属酸化物コロイドを含むチタノール基含有有機チタン化合物のゾルゲル縮合薄膜(7)に変更した以外は各々実施例1と同様にして、厚さ0.7mm、質量836g/mの多孔性配位高分子粒子(1a)が表面に露出している、金属酸化物コロイド(リン酸ドープ酸化錫)を含むチタノール基含有有機チタン化合物のゾルゲル縮合薄膜(7)を付帯する帯電防止性消臭シート状物(7)を得た。
すなわち実施例7は〔配合2〕ゾルゲル縮合薄膜形成用組成物(1)を下記の〔配合8〕ゾルゲル縮合薄膜形成用組成物(7)に変更した。
〔配合8〕ゾルゲル縮合薄膜形成用組成物(7)
テトラエチルチタネート(Ti(OC):TiO換算40質量%)5質量%、及び
[Ti(OC)12]のテトラエトキシチタン5量体が95質量%の混合体
25質量部
加水分解触媒:2%塩酸 1質量部
多孔性配位高分子粒子(1a) 10質量部
リン酸ドープ酸化錫(粒子径10nm:固形分31質量%) 10質量部
水(50質量%)/エタノール(50質量%) 100質量部
[実施例8]
実施例6の〔配合7〕のリン酸ドープ酸化錫10質量部を、酸化亜鉛/五酸化アンチモン複合コロイド(粒子径15nm:固形分30質量%)10質量部に置き換えた〔配合9〕を用いた以外は実施例6と同様として、厚さ0.7mm、質量836g/mの多孔性配位高分子粒子(1a)が表面に露出している、金属酸化物コロイド(酸化亜鉛/五酸化アンチモン)を含むシラノール基含有有機シラン化合物のゾルゲル縮合薄膜(8)を付帯する帯電防止性消臭シート状物(8)を得た。
[実施例9]
実施例7の〔配合8〕のリン酸ドープ酸化錫10質量部を、酸化亜鉛/五酸化アンチモン複合コロイド(粒子径15nm:固形分30質量%)10質量部に置き換えた〔配合10〕を用いた以外は実施例7と同様として、厚さ0.7mm、質量836g/mの多孔性配位高分子粒子(1a)が表面に露出している、金属酸化物コロイド(酸化亜鉛/五酸化アンチモン)を含むチタノール基含有有機チタン化合物のゾルゲル縮合薄膜(9)を付帯する帯電防止性消臭シート状物(9)を得た。
[実施例10]
実施例1に用いた多孔性配位高分子粒子(1a)を、下記の光触媒性金属酸化物を空洞セル群に担持する多孔性配位高分子粒子(1b)に変更(〔配合11〕)した以外は実施例1と同様として、厚さ0.7mm、質量833g/mの多孔性配位高分子粒子(1b)が表面に露出している、カーボンナノチューブを含むシラノール基含有有機シラン化合物のゾルゲル縮合薄膜(10)を付帯する帯電防止性消臭シート状物(10)を得た。
〈光触媒性金属酸化物の担持〉
多孔性配位高分子粒子(1a)、光触媒性酸化チタンゾル(1次粒子径5nm)、水(50質量%)/エタノール(50質量%)をこの順番に質量比率、4(固形分):1(固形分):15で配合した溶液を密閉容器内、80℃で2時間攪拌した後、ろ過物を乾燥し、光触媒性金属酸化物を表面及び内部に担持する多孔性配位高分子粒子(1b)を得た。
〔配合11〕ゾルゲル縮合薄膜形成用組成物(10)
テトラエチルシリケート(Si(OC):SiO換算40質量%)5質量%、及び
[Si(OC)12]のテトラエトキシシラン5量体が95質量%の混合体
25質量部
加水分解触媒:2%塩酸 1質量部
多孔性配位高分子粒子(1b) 12質量部
2層カーボンナノチューブ(直径2~4nm) 0.25質量部
水(50質量%)/エタノール(50質量%) 100質量部
[実施例11]
実施例2に用いた多孔性配位高分子粒子(2a)を、下記の光触媒性金属酸化物を空洞セル群に担持する多孔性配位高分子粒子(2b)に変更(〔配合13〕)した以外は実施例2と同様として、厚さ0.7mm、質量833g/mの多孔性配位高分子粒子(2b)が表面に露出している、カーボンナノチューブを含むシラノール基含有有機シラン化合物のゾルゲル縮合薄膜(11)を付帯する帯電防止性消臭シート状物(11)を得た。
〈光触媒性金属酸化物の担持〉
多孔性配位高分子粒子(2a)、光触媒性酸化チタンゾル(1次粒子径5nm)、水(50質量%)/エタノール(50質量%)をこの順番に質量比率、4(固形分):1(固形分):15で配合した溶液を密閉容器内、80℃で2時間攪拌した後、ろ過物を乾燥し、光触媒性金属酸化物を表面及び内部に担持する多孔性配位高分子粒子(2b)を得た。
〔配合12〕ゾルゲル縮合薄膜形成用組成物(11)
テトラエチルシリケート(Si(OC):SiO換算40質量%)5質量%、及び
[Si(OC)12]のテトラエトキシシラン5量体が95質量%の混合体
25質量部
加水分解触媒:2%塩酸 1質量部
多孔性配位高分子粒子(2b) 12質量部
2層カーボンナノチューブ(直径2~4nm) 0.25質量部
水(50質量%)/エタノール(50質量%) 100質量部
[実施例12]
実施例3に用いた多孔性配位高分子粒子(3a)を、下記の光触媒性金属酸化物を空洞セル群に担持する多孔性配位高分子粒子(3b)に変更(〔配合3〕)した以外は実施例3と同様として、厚さ0.7mm、質量833g/mの多孔性配位高分子粒子(3b)が表面に露出している、カーボンナノチューブを含むシラノール基含有有機シラン化合物のゾルゲル縮合薄膜(12)を付帯する帯電防止性消臭シート状物(12)を得た。
〈光触媒性金属酸化物の担持〉
多孔性配位高分子粒子(3a)、可視光応答型酸化チタンゾル(Si,N共ドープ:Feイオン担持)、及び可視光応答型酸化タングステンゾル(Cu/Ptイオン共担持)を50質量%:50質量%のブレンド(1次粒子径5nm)、水(50質量%)/エタノール(50質量%)をこの順番に質量比率、4(固形分):1(光触媒ブレンド固形分):15で配合した溶液を密閉容器内、80℃で2時間攪拌した後、ろ過物を乾燥し、光触媒性金属酸化物を表面及び内部に担持する多孔性配位高分子粒子(3b)を得た。
〔配合13〕ゾルゲル縮合薄膜形成用組成物(12)
テトラエチルシリケート(Si(OC):SiO換算40質量%)5質量%、及び
[Si(OC)12]のテトラエトキシシラン5量体が95質量%の混合体
25質量部
加水分解触媒:2%塩酸 1質量部
多孔性配位高分子粒子(3b) 12質量部
2層カーボンナノチューブ(直径2~4nm) 0.25質量部
水(50質量%)/エタノール(50質量%) 100質量部
[実施例13]
実施例4に用いた多孔性配位高分子粒子(4a)を、下記の光触媒性金属酸化物を空洞セル群に担持する多孔性配位高分子粒子(4b)に変更(〔配合14〕)した以外は実施例4と同様として、厚さ0.7mm、質量833g/mの多孔性配位高分子粒子(4b)が表面に露出している、カーボンナノチューブを含むシラノール基含有有機シラン化合物のゾルゲル縮合薄膜(13)を付帯する帯電防止性消臭シート状物(13)を得た。
〈光触媒性金属酸化物の担持〉
多孔性配位高分子粒子(4a)、可視光応答型酸化チタンゾル(Si,N共ドープ:Feイオン担持)、及び可視光応答型酸化タングステンゾル(Cu/Ptイオン共担持)を50質量%:50質量%のブレンド(1次粒子径5nm)、水(50質量%)/エタノール(50質量%)をこの順番に質量比率、4(固形分):1(光触媒ブレンド固形分):15で配合した溶液を密閉容器内、80℃で2時間攪拌した後、ろ過物を乾燥し、光触媒性金属酸化物を表面及び内部に担持する多孔性配位高分子粒子(4b)を得た。
〔配合14〕ゾルゲル縮合薄膜形成用組成物(13)
テトラエチルシリケート(Si(OC):SiO換算40質量%)5質量%、及び
[Si(OC)12]のテトラエトキシシラン5量体が95質量%の混合体
25質量部
加水分解触媒:2%塩酸 1質量部
多孔性配位高分子粒子(4b) 12質量部
2層カーボンナノチューブ(直径2~4nm) 0.25質量部
水(50質量%)/エタノール(50質量%) 100質量部
[実施例14]
実施例5に用いた多孔性配位高分子粒子(5a)を、下記のフラーレンC60を空洞セル群に担持する多孔性配位高分子粒子(5c)に変更(〔配合15〕)した以外は実施例5と同様として、厚さ0.7mm、質量833g/mの多孔性配位高分子粒子(5c)が表面に露出し、カーボンナノチューブを含むシラノール基含有有機シラン化合物のゾルゲル縮合薄膜(14)を付帯する帯電防止性消臭シート状物(14)を得た。
〈光触媒性金属酸化物の担持〉
多孔性配位高分子粒子(5a)、フラーレンC60、水(50質量%)/エタノール(50質量%)をこの順番に質量比率、4(固形分):1(光触媒ブレンド固形分):15で配合した溶液を密閉容器内、80℃で2時間攪拌した後、ろ過物を乾燥し、フラーレンC60を表面及び内部に担持する多孔性配位高分子粒子(5c)を得た。
〔配合15〕ゾルゲル縮合薄膜形成用組成物(14)
テトラエチルシリケート(Si(OC):SiO換算40質量%)5質量%、及び
[Si(OC)12]のテトラエトキシシラン5量体が95質量%の混合体
25質量部
加水分解触媒:2%塩酸 1質量部
多孔性配位高分子粒子(5c) 12質量部
2層カーボンナノチューブ(直径2~4nm) 0.25質量部
水(50質量%)/エタノール(50質量%) 100質量部
[実施例15]
実施例6に用いた多孔性配位高分子粒子(1a)10質量部を、光触媒性金属酸化物を表面及び内部に担持する多孔性配位高分子粒子(1b)12質量部に変更(〔配合16〕)した以外は実施例6と同様とし、厚さ0.7mm、質量836g/mの多孔性配位高分子粒子(1b)が表面に露出している、金属酸化物コロイド(リン酸ドープ酸化錫)を含むシラノール基含有有機シラン化合物のゾルゲル縮合薄膜(15)を付帯する帯電防止性消臭シート状物(15)を得た。
[実施例16]
実施例7に用いた多孔性配位高分子粒子(1a)10質量部を、光触媒性金属酸化物を表面及び内部に担持する多孔性配位高分子粒子(2b)12質量部に変更(〔配合17〕)した以外は実施例7と同様とし、厚さ0.7mm、質量836g/mの多孔性配位高分子粒子(2b)が表面に露出している、金属酸化物コロイド(リン酸ドープ酸化錫)を含むチタノール基含有有機チタン化合物のゾルゲル縮合薄膜(16)を付帯する帯電防止性消臭シート状物(16)を得た。
[実施例17]
実施例8に用いた多孔性配位高分子粒子(1a)10質量部を、可視光応答型光触媒性金属酸化物を表面及び内部に担持する多孔性配位高分子粒子(3b)12質量部に変更(〔配合18〕)した以外は実施例8と同様とし、厚さ0.7mm、質量836g/mの多孔性配位高分子粒子(3b)が表面に露出している、金属酸化物コロイド(酸化亜鉛/五酸化アンチモン)を含むシラノール基含有有機シラン化合物のゾルゲル縮合薄膜(17)を付帯する帯電防止性消臭シート状物(17)を得た。
[実施例18]
実施例9に用いた多孔性配位高分子粒子(1a)10質量部を、可視光応答型光触媒性金属酸化物を表面及び内部に担持する多孔性配位高分子粒子(4b)12質量部に変更(〔配合19〕)した以外は実施例9と同様とし、厚さ0.7mm、質量836g/mの多孔性配位高分子粒子(4b)が表面に露出している、金属酸化物コロイド(酸化亜鉛/五酸化アンチモン)を含むチタノール基含有有機チタン化合物のゾルゲル縮合薄膜(18)を付帯する帯電防止性消臭シート状物(18)を得た。
[実施例19]
実施例8に用いた多孔性配位高分子粒子(1a)10質量部を、フラーレンC60を表面及び内部に担持する多孔性配位高分子粒子(5c)12質量部に変更(〔配合20〕)した以外は実施例8と同様とし、厚さ0.7mm、質量836g/mの多孔性配位高分子粒子(5b)が表面に露出している、金属酸化物コロイド(酸化亜鉛/五酸化アンチモン)を含むシラノール基含有有機シラン化合物のゾルゲル縮合薄膜(19)を付帯する帯電防止性消臭シート状物(19)を得た。
[実施例20]
実施例9に用いた多孔性配位高分子粒子(1a)10質量部を、フラーレンC60を表面及び内部に担持する多孔性配位高分子粒子(5c)12質量部に変更(〔配合21〕)した以外は実施例9と同様とし、厚さ0.7mm、質量836g/mの多孔性配位高分子粒子(5b)が表面に露出している、金属酸化物コロイド(酸化亜鉛/五酸化アンチモン)を含むチタノール基含有有機チタン化合物のゾルゲル縮合薄膜(20)を付帯する帯電防止性消臭シート状物(20)を得た。
[実施例21]
実施例1の0.7mm、質量830g/mのシート基材を用い、それ以降の実施例1の製造プロセスを変更した。
アルコキシシラン化合物による多孔性配位高分子粒子処理
実施例1の多孔性配位高分子粒子(1)、アルコキシシラン化合物(エポキシシラン:3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン)、水をこの順番に質量比率、10(固形分):1(固形分):100で配合した溶液を密閉容器内、30℃で2時間攪拌した後、ろ過物を乾燥し、エポシシラン化合物の加水分解物が結合した多孔性配位高分子粒子(1a)を得た。
<シラノール基含有有機シラン化合物のゾルゲル縮合薄膜の形成>
下記〔配合22〕の組成を配合してゾルゲル縮合薄膜形成用組成物(21)を得た。
次にシート基材の片表面上に、このゾルゲル縮合薄膜形成用組成物(21)を100メッシユのグラビアロールによりグラビア塗工し、120℃の熱風炉で2分間加熱乾燥し、ゾルゲル縮合薄膜形成用組成物(21)をゾルゲル硬化させてシラノール基含有有機シラン化合物のゾルゲル縮合薄膜(21)を形成し、厚さ0.7mm、質量832g/mのシート状物を得た。
〔配合22〕ゾルゲル縮合薄膜形成用組成物(21)
テトラエチルシリケート(Si(OC):SiO換算40質量%)5質量%、及び
[Si(OC)12]のテトラエトキシシラン5量体が95質量%の混合体
25質量部
加水分解触媒:2%塩酸 1質量部
多孔性配位高分子粒子(1a) 10質量部
水(50質量%)/エタノール(50質量%) 100質量部
多孔性配位高分子粒子への光触媒性金属酸化物担持
多孔性配位高分子粒子(1a)、光触媒性酸化チタンゾル(1次粒子径5nm)、水(50質量%)/エタノール(50質量%)をこの順番に質量比率、2(固形分):1(固形分):10で配合した溶液を、シート状物のシラノール基含有有機シラン化合物のゾルゲル縮合薄膜(21)上に、100メッシユのグラビアロールによりグラビア塗工し、120℃の熱風炉で2分間加熱乾燥し、光触媒性金属酸化物を表面及び内部に担持する多孔性配位高分子粒子(1b)が表面に露出している厚さ0.7mm、質量833g/mの帯電防止性消臭シート状物(21)を得た。
実施例1~5の帯電防止性消臭シート状物(1)~(5)は、シート基材の表面に多孔性配位高分子粒子が露出したシート状物で、多孔性配位高分子粒子が空洞セル群を有するガス吸着体であり、多孔性配位高分子粒子を固着するゾルゲル縮合薄膜中にカーボンナノチューブを含む最外層が黒色スモーク(半透明)外観の態様である。また実施例6~9の帯電防止性消臭シート状物(6)~(9)は、帯電防止性消臭シート状物(1)~(5)のカーボンナノチューブを金属酸化物コロイドに置換え、シート状物(7),(9)はゾルゲル縮合薄膜をチタノール基含有有機チタン化合物のゾルゲル縮合薄膜に変更した最外層が無色透明外観の態様である。帯電防止性消臭シート状物(1)~(9)は、多孔性配位高分子粒子の有する空洞セル群によって、アンモニア(塩基性)、イソ吉草酸(酸性)、硫化水素(酸性)、トルエン(VOC)の4種の化学物質ガスに対して偏在の無い吸着、貯蔵性を発現し、10ppm×3L容量の4種のガス濃度を消臭試験開始30分で約5ppm前後に半減し、120分後には3ppm前後まで減臭する消臭効果を確認した。特に開始30分での4種の化学物質ガスに対する半減効果は10cm×10cmの小片の消臭性として実用性十分であると認められる。また帯電防止性消臭シート状物(1)~(5)は、ゾルゲル縮合薄膜中にカーボンナノチューブを1質量%含むことで10レベルの優れた導電性を発現し、シート状物の屈曲試験後にも導電性の低下は生じていなかった。帯電防止性消臭シート状物(6)~(9)は、ゾルゲル縮合薄膜中にカーボンナノチューブを1質量%含むことで10レベルの優れた帯電防止性を発現し、シート状物の屈曲試験後にも帯電防止性の低下は生じていなかった。
実施例10~14の帯電防止性消臭シート状物(10)~(13)は、帯電防止性消臭シート状物(1)~(4)の多孔性配位高分子粒子に光触媒性金属酸化物を担持させた態様で、特にシート状物(12),(13)は可視光応答型光触媒性金属酸化物を担持させた最外層が黒色スモーク(半透明)外観の態様である。また実施例14の帯電防止性消臭シート状物(14)は、帯電防止性消臭シート状物(5)の多孔性配位高分子粒子にフラーレンを担持させた最外層が黒色スモーク(半透明)外観の態様である。帯電防止性消臭シート状物(1)~(4)の多孔性配位高分子粒子に光触媒性金属酸化物を担持させたことで、紫外線を至近距離照射しての消臭試験では多孔性配位高分子粒子内に吸着した4種の化学物質ガスに対する分解効果が発現し、帯電防止性消臭シート状物(1)~(4)の消臭性能を上回り、120分後に1ppm未満の検出限界レベルとなった。これは吸着された化学物質ガスが光触媒活性によって逐次分解され、空洞セルがリセット状態となったことで、この空洞セル内に新たな化学物質ガスが取り込まれるサイクルが発動し、効率的に化学物質ガス濃度が減少したものと考察される。特に可視光応答型光触媒性金属酸化物を担持する多孔性配位高分子粒子を用いたシート状物(12),(13)は屋内での使用が可能で、特に2種類の可視光応答型の光触媒性金属酸化物の併用によって、より広範囲の可視光領域の波長に対する光触媒活性を効果的とする。また帯電防止性消臭シート状物(14)は、帯電防止性消臭シート状物(5)の多孔性配位高分子粒子にフラーレンを担持させたことで、ゾルゲル縮合薄膜中にカーボンナノチューブを含む効果と相乗して10レベルの優れた導電性を得た。
実施例15~18の帯電防止性消臭シート状物(15)~(18)は、帯電防止性消臭シート状物(6)~(9)の多孔性配位高分子粒子に光触媒性金属酸化物を担持させた最外層が無色透明外観の態様で、特にシート状物(17),(18)は可視光応答型光触媒性金属酸化物を担持させた態様である。また実施例19,20の帯電防止性消臭シート状物(19),(20)は、帯電防止性消臭シート状物(6),(7)の多孔性配位高分子粒子にフラーレンを担持させた最外層が黒色スモーク(半透明)外観の態様である。帯電防止性消臭シート状物(6)~(9)の多孔性配位高分子粒子に光触媒性金属酸化物を担持させたことで、紫外線を至近距離照射しての消臭試験では多孔性配位高分子粒子内に吸着した4種の化学物質ガスに対する分解効果が発現し、帯電防止性消臭シート状物(6)~(9)の消臭性能を上回り、120分後に1ppm未満の検出限界レベルとなった。これは吸着された化学物質ガスが光触媒活性によって逐次分解され、空洞セルがリセット状態となったことで、この空洞セル内に新たな化学物質ガスが取り込まれるサイクルが発動し、効率的に化学物質ガス濃度が減少したものと考察される。特に可視光応答型光触媒性金属酸化物を担持する多孔性配位高分子粒子を用いたシート状物(17),(18)は屋内での使用が可能で、特に2種類の可視光応答型の光触媒性金属酸化物の併用によって、より広範囲の可視光領域の波長に対する光触媒活性を効果的とする。また帯電防止性消臭シート状物(19),(20)は、帯電防止性消臭シート状物(8),(9)の多孔性配位高分子粒子にフラーレンを担持させたことで、ゾルゲル縮合薄膜中にカーボンナノチューブを含む効果と相乗して10レベルの優れた導電性を得た。
[比較例1]
実施例1の帯電防止性消臭シート状物(1)に用いる多孔性配位高分子粒子(1)を全量省略した以外は実施例1と同様の製造プロセスとして最外層が黒色スモーク(半透明)外観のシート状物(22)を得た。得られたシート状物(22)は、導電性による帯電防止効果には優れていたが、多孔性配位高分子粒子(1)を省略したことで、実施例1の帯電防止性消臭シート状物(1)と比較して、実質的に消臭・減臭性を有していないものであった。
[比較例2]
実施例1の帯電防止性消臭シート状物(1)の〔配合2〕に用いる多孔性配位高分子粒子(1)10質量部を、ゼオライト吸着体(Y型:細孔径9Å:粒子径2~3μm:BET比表面積600m/g:SiO/Al3モル比100)10質量部に置換した以外は実施例1と同様の製造プロセスとして最外層が黒色スモーク(半透明)外観のシート状物(23)を得た。得られたシート状物(23)は、導電性による帯電防止効果には優れていたが、ゼオライト吸着体を用いたことで、トルエンなどのVOCの吸着による減臭効果は認めるものの、実施例1の帯電防止性消臭シート状物(1)と比較して、アンモニア、イソ吉草酸、硫化水素の消臭は実質的に有していないものであった。
[比較例3]
実施例1の帯電防止性消臭シート状物(1)のシラノール基含有有機シラン化合物のゾルゲル縮合薄膜中に含むカーボンナノチューブを全量省略した以外は実施例1と同様の製造プロセスとして最外層が無色透明外観のシート状物(24)を得た。得られたシート状物(24)は、アンモニア、イソ吉草酸、硫化水素、トルエンなどの消臭効果は十分なものであったが、カーボンナノチューブを省略したことで導電性、帯電防止性を発現しないものであった。
[比較例4]
実施例1の帯電防止性消臭シート状物(1)の〔配合2〕に用いる2層カーボンナノチューブ0.25質量部を、カーボンブラック(ファーネス法:粒子径20nm:BET比表面積200m/g:DBP吸油量140ml/100g)0.25質量部に置換した以外は実施例1と同様の製造プロセスとして最外層が漆黒不透明外観のシート状物(25)を得た。得られたシート状物(25)は、アンモニア、イソ吉草酸、硫化水素、トルエンなどの消臭効果は十分なものであったが、カーボンブラックを用いたことで実施例1のシート状物(1)と比較して導電性にやや劣るものであった。導電性は十分であったが最外層が漆黒不透明外観で、シート状物(25)の屈曲揉み試験を行った結果、導電性が10から1010に2オーダー低下していた。これはゾルゲル縮合薄膜に屈曲亀裂を生じ、カーボンブラック粒子同士の近接が分断されたものと考察する。これに対してカーボンナノチューブを用いた実施例1のシート状物(1)ではゾルゲル縮合薄膜に亀裂を生じてもカーボンナノチューブの連続性(導電性)が損なわれ難いものであった。このカーボンナノチューブの補強効果は実施例2~5,10~14においても同様であった。またゾルゲル縮合薄膜に金属酸化物コロイドを含む実施例6~9,15~20においてもゾルゲル縮合薄膜に屈曲亀裂を生じても導電性が損なわれ難いものであった。これはゾルゲル縮合薄膜に多孔性配位高分子粒子を共存させたことにより、有機錯体ユニットをパーツに含む多孔性配位高分子粒子に何らかの態様で金属酸化物コロイドが配位した分子間力の作用によるものと考察される。カーボンブラック粒子ではこのような多孔性配位高分子粒子との相互作用が得られないことが明らかとなった。
本発明により、悪臭成分、及びVOC成分などの不快臭気成分全般に対して臭気濃度を効果的に減少させる減臭効果、並び消臭効果を安定的に持続可能、かつ耐屈曲性に優れたシート状物が得られる。多孔性配位高分子のみでも消臭性(減臭性)が発現可能であるが、特に多孔性配位高分子の空洞セルに光触媒性金属酸化物を担持することで光触媒性金属酸化物の光触媒活性により、多孔性配位高分子の空洞セルに捕捉した有機系臭気ガスを逐次分解し、さらに有機系臭気ガスを取り込めるように空洞セルの状態をリセットすることができる。またウイルス、菌、黴などの増殖を抑止する。特に光触媒性金属酸化物は可視光応答型光触媒が屋内用途に適している。また多孔性配位高分子の空洞セルにフラーレンを担持することで、多孔性配位高分子自体の導電性を向上させ、得られる帯電防止性消臭シート状物の帯電防止性をより向上させる。また本発明のシート状物は、多孔性配位高分子を固着するゾルゲル縮合薄膜に金属酸化物コロイドを含有することで帯電防止効果及び耐屈曲性をより優れたものとし、アトピー性皮膚炎、花粉症、喘息の症状を悪化させるダニ死骸の粉塵、花粉などのアレルギー物質の帯電付着を持続的に抑止する。さらにゾルゲル縮合薄膜にカーボンナノチューブを含有することで良好な導電性が持続する耐屈曲性のシート状物を得ることができ、防爆性(静電気による引火爆発の防止)を発現する。本発明の帯電防止性消臭シート状物は、フィルム、シート、テープ、ターポリン、メッシュシート、帆布、布帛などの原反で流通し、天井膜、空間仕切り、カーテン、敷物、カバー、ブラインド、日用雑貨などに加工され、工場、醸造、農場、畜産場、水産加工場、下水道、マンホール、廃棄物処理場、汚水汚泥処理施設、病院、介護施設、葬儀施設、動物園、公共浴場、公衆トイレ、飲食店、などの任意の場所、及び家庭(トイレ、浴室、キッチン、ベッド、シューズボックス、タンス、クローゼット、ペットケージ、などに任意のカットサイズで使用)などに広く使用できる。特に化学工場などにおいて、巻上昇降式シートシャッターに用いることで、消臭性を有し、さらに静電気による引火爆発の防止性を有する耐屈曲性の巻上昇降式シートシャッターとしての利用を可能とする。

Claims (7)

  1. シート基材の少なくとも1面に多孔性配位高分子粒子が露出したシート状物であって、前記多孔性配位高分子粒子が、有機錯体ユニット及び架橋性有機化合物とで構成され、両者が多方向に交互に連結して空洞セル群を有するガス吸着体であり、前記有機錯体ユニットが2~4価の金属イオン1~6個、及び2~4個のカルボキシル基を有する化合物からなり、また前記架橋性有機化合物が、構造中に2~4個の窒素原子を有する有機配位子、または構造中に1~2個のカルボキシル基及び1~2個の窒素原子を有する有機配位子、であり、さらに前記多孔性配位高分子粒子にアルコキシシラン化合物の加水分解物が結合していて、この加水分解物は、一般式:XR-Si(Y) 3 で表される化合物の加水分解物で、XR-Si(OH) 3 で示され(X=アミノ基、ビニル基、エポキシ基、メタクリル基、アクリル基、クロル基、メルカプト基、イソシアヌレート基、イソシアネート基、R=アルキル鎖、Y=メトキシ基、エトキシ基)、前記多孔性配位高分子粒子が、シラノール基含有有機シラン化合物のゾルゲル縮合薄膜、またはチタノール基含有有機チタン化合物のゾルゲル縮合薄膜中に固着され、かつ前記ゾルゲル縮合薄膜がカーボンナノチューブまたは金属酸化物コロイドを含有することを特徴とする帯電防止性消臭シート状物。
  2. 前記空洞セル群が、酸化チタン、過酸化チタン、酸化亜鉛、酸化錫、チタン酸ストロンチウム、酸化タングステン、酸化ビスマス、及び酸化鉄、から選ばれた1種以上の光触媒性金属酸化物、もしくはフラーレンを担持する請求項1に記載の帯電防止性消臭シート状物。
  3. 前記シート基材が織物を芯材として含み、前記織物が、1)経糸及び緯糸からなる織物、または2)経糸及び左上バイアス糸/右上バイアス糸からなる三軸織物、または3)経糸、緯糸及び左上バイアス糸/右上バイアス糸からなる四軸織物、の何れかである請求項1または2に記載の帯電防止性消臭シート状物。
  4. シート基材の少なくとも1面に、空洞セル群を有する多孔性配位高分子粒子、及びカーボンナノチューブまたは金属酸化物コロイドを含むゾルゲル縮合薄膜を形成する工程、前記多孔性配位高分子粒子を含むゾルゲル縮合薄膜上に、光触媒性金属酸化物またはフラーレンを含む溶液を塗布し、前記多孔性配位高分子粒子の空洞セル群の一部または全部に前記光触媒性金属酸化物またはフラーレンを担持させる工程、を含むことを特徴とする請求項1に記載の帯電防止性消臭シート状物の製造方法。
  5. 前記シート基材が織物を芯材として含み、前記織物が、1)経糸及び緯糸からなる織物、または2)経糸及び左上バイアス糸/右上バイアス糸からなる三軸織物、または3)経糸、緯糸及び左上バイアス糸/右上バイアス糸からなる四軸織物、の何れかを含ませる請求項4に記載の帯電防止性消臭シート状物の製造方法。
  6. 空洞セル群を有する多孔性配位高分子粒子、及び光触媒性金属酸化物を含む溶液を配合する工程、前記多孔性配位高分子粒子の空洞セル群の一部または全部に前記光触媒性金属酸化物またはフラーレンを担持させる工程(攪拌工程、熟成工程:攪拌工程と熟成工程は兼用可能な工程)、シート基材の少なくとも1面に、光触媒性金属酸化物を担持する多孔性配位高分子粒子、及びカーボンナノチューブまたは金属酸化物コロイドを含むゾルゲル縮合薄膜形成溶液を塗布(乾燥工程を含む)し、光触媒性金属酸化物またはフラーレンを担持する多孔性配位高分子粒子、及びカーボンナノチューブまたは金属酸化物コロイドを含むゾルゲル縮合薄膜塗膜を形成する工程、を含むことを特徴とする請求項1に記載の帯電防止性消臭シート状物の製造方法。
  7. 前記シート基材が織物を芯材として含み、前記織物が、1)経糸及び緯糸からなる織物、または2)経糸及び左上バイアス糸/右上バイアス糸からなる三軸織物、または3)経糸、緯糸及び左上バイアス糸/右上バイアス糸からなる四軸織物、の何れかを含ませる請求項6に記載の帯電防止性消臭シート状物の製造方法。

JP2020036615A 2020-03-04 2020-03-04 帯電防止性消臭シート状物及びその製造方法 Active JP7348654B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2020036615A JP7348654B2 (ja) 2020-03-04 2020-03-04 帯電防止性消臭シート状物及びその製造方法

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2020036615A JP7348654B2 (ja) 2020-03-04 2020-03-04 帯電防止性消臭シート状物及びその製造方法

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2021137242A JP2021137242A (ja) 2021-09-16
JP7348654B2 true JP7348654B2 (ja) 2023-09-21

Family

ID=77666927

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2020036615A Active JP7348654B2 (ja) 2020-03-04 2020-03-04 帯電防止性消臭シート状物及びその製造方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP7348654B2 (ja)

Citations (14)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2013021944A1 (ja) 2011-08-05 2013-02-14 国立大学法人京都大学 金属ナノ粒子のpcp複合体とその作製方法
JP2013065450A (ja) 2011-09-16 2013-04-11 Fujifilm Corp 導電性部材、導電性部材の製造方法、タッチパネル及び太陽電池
JP2013140245A (ja) 2012-01-04 2013-07-18 Hiraoka & Co Ltd 照明カバー用不燃膜材
JP2013154301A (ja) 2012-01-30 2013-08-15 Toyobo Co Ltd 吸着シート、および、それを用いた吸着エレメント
WO2013159797A1 (en) 2012-04-25 2013-10-31 BLüCHER GMBH Filtering material and use thereof
JP2015522406A (ja) 2012-05-25 2015-08-06 エルジー・ハウシス・リミテッドLg Hausys,Ltd. 光触媒材、その製造方法及び光触媒装置
JP2015197614A (ja) 2014-04-02 2015-11-09 平岡織染株式会社 光拡散透過性膜材
JP2017093728A (ja) 2015-11-20 2017-06-01 平岡織染株式会社 消臭性メッシュシート及びその消臭性能の再生方法
JP2017523913A (ja) 2014-08-06 2017-08-24 エルジー・ハウシス・リミテッドLg Hausys,Ltd. 光触媒機能性フィルム及びこの製造方法
JP2017526523A (ja) 2014-08-06 2017-09-14 エルジー・ハウシス・リミテッドLg Hausys,Ltd. 光触媒機能性フィルム及びこの製造方法
WO2018062504A1 (ja) 2016-09-30 2018-04-05 国立研究開発法人科学技術振興機構 複合材料及びガス吸着材並びに複合材料の製造方法
JP2019064077A (ja) 2017-09-29 2019-04-25 平岡織染株式会社 帯電防止性抗菌膜材
JP2019088499A (ja) 2017-11-15 2019-06-13 大原パラヂウム化学株式会社 生活臭用消臭剤
JP2019528200A (ja) 2016-08-23 2019-10-10 ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピアBasf Se 複合材料

Patent Citations (14)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2013021944A1 (ja) 2011-08-05 2013-02-14 国立大学法人京都大学 金属ナノ粒子のpcp複合体とその作製方法
JP2013065450A (ja) 2011-09-16 2013-04-11 Fujifilm Corp 導電性部材、導電性部材の製造方法、タッチパネル及び太陽電池
JP2013140245A (ja) 2012-01-04 2013-07-18 Hiraoka & Co Ltd 照明カバー用不燃膜材
JP2013154301A (ja) 2012-01-30 2013-08-15 Toyobo Co Ltd 吸着シート、および、それを用いた吸着エレメント
WO2013159797A1 (en) 2012-04-25 2013-10-31 BLüCHER GMBH Filtering material and use thereof
JP2015522406A (ja) 2012-05-25 2015-08-06 エルジー・ハウシス・リミテッドLg Hausys,Ltd. 光触媒材、その製造方法及び光触媒装置
JP2015197614A (ja) 2014-04-02 2015-11-09 平岡織染株式会社 光拡散透過性膜材
JP2017523913A (ja) 2014-08-06 2017-08-24 エルジー・ハウシス・リミテッドLg Hausys,Ltd. 光触媒機能性フィルム及びこの製造方法
JP2017526523A (ja) 2014-08-06 2017-09-14 エルジー・ハウシス・リミテッドLg Hausys,Ltd. 光触媒機能性フィルム及びこの製造方法
JP2017093728A (ja) 2015-11-20 2017-06-01 平岡織染株式会社 消臭性メッシュシート及びその消臭性能の再生方法
JP2019528200A (ja) 2016-08-23 2019-10-10 ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピアBasf Se 複合材料
WO2018062504A1 (ja) 2016-09-30 2018-04-05 国立研究開発法人科学技術振興機構 複合材料及びガス吸着材並びに複合材料の製造方法
JP2019064077A (ja) 2017-09-29 2019-04-25 平岡織染株式会社 帯電防止性抗菌膜材
JP2019088499A (ja) 2017-11-15 2019-06-13 大原パラヂウム化学株式会社 生活臭用消臭剤

Also Published As

Publication number Publication date
JP2021137242A (ja) 2021-09-16

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP3215318B2 (ja) 消臭性繊維およびその製造方法
JP5631747B2 (ja) 化学剤または生物剤を分解するための光触媒特性を有する織物用繊維、その製造方法、および光触媒作用におけるその使用
JP2013212238A (ja) 減臭メッシュシート
KR101765135B1 (ko) 은나노-실리카 복합체를 포함하는 고기능성 항균·탈취 필터
JP2019064078A (ja) 帯電防止性抗菌膜材
JP7241403B2 (ja) 産業用シート材
JP7290330B2 (ja) 消臭抗菌性シート状物及びその製造方法
JP3713122B2 (ja) 消臭性繊維製品
JP7348654B2 (ja) 帯電防止性消臭シート状物及びその製造方法
JP7333076B2 (ja) 帯電防止性抗菌防黴膜材
JP6076077B2 (ja) エアフィルター
JP7339666B2 (ja) 消臭抗菌性シート状物及びその製造方法
JPH10204727A (ja) 消臭性複合繊維およびその製造方法
JP2022013196A (ja) 消臭性抗菌防黴物質、消臭性抗菌防黴塗料組成物、及び消臭性抗菌防黴塗膜
JP6402392B2 (ja) 臭気吸着メッシュシート及びその臭気吸着性能の回復方法
JPH08266902A (ja) 光触媒を用いた環境浄化材料およびその組成物
JP2015063494A (ja) メッシュシート
JP3720466B2 (ja) 消臭繊維
JP6852914B2 (ja) テント構造物用膜材
CN216507140U (zh) 一种具有过滤功能多层无纺布
CN112874034A (zh) 一种抗菌效果好的阻燃无纺布
JP3905823B2 (ja) 消臭複合繊維
JP2016017245A (ja) 消臭性を有するエチレン−ビニルアルコール系繊維および糸、並びに繊維製品
KR102582881B1 (ko) 게르마늄이 함유된 기능성 침대 매트리스
KR102466308B1 (ko) 가구용 직물 마감재 및 그 제조방법

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20220719

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20230718

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20230721

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20230831

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20230901

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 7348654

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150