JP7333076B2 - 帯電防止性抗菌防黴膜材 - Google Patents

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本発明は、健康阻害要因、及び悪臭発生要因となり得る雑菌や黴の増殖を抑止する抗菌防黴性、さらにウイルスの飛沫感染予防となる抗ウイルス性を安定持続し、しかも黴、ダニダスト(死骸、糞塵)、花粉などのアレルゲン物質を静電吸着する心配のない帯電防止性を備えた膜材に関する。本発明の帯電防止性抗菌防黴膜材は、フィルム、シート、テープの形態、織物、ターポリン、メッシュシート、合成皮革、帆布などの形態で用いられ、これらの原反パーツを熱融着法で縫製し、天井膜、空間仕切り、巻上昇降式シートシャッター、クリーンルームカーテン、壁紙、敷物、カバー、ブラインド、防護衣、フェイスガード、など加工されて、工場、オフィス、学校、商業施設、病院、介護施設、式場、ごみ集積場、公衆トイレ、動物園などに広く使用される。特にターポリン、帆布などは、医療検査用パーティション、空気注入式仮設膜構造による医療検査用陰圧テントシェルターに適して用いることができる。
静電気の除去を促すために界面活性剤を利用する方法は古くから行われ、埃の付着防止が目的であれば表面固有抵抗値を1012Ω台以下にすれば十分となる。界面活性剤の分子は親水基と親油基を持ち、合成樹脂成型品の表面に塗布すると親油基が合成樹脂成型品の表面に向き、外部を向いた親水基が空気中の水分を吸着し、その水分子の層がわずかな電気伝導性を発現することで電荷を漏洩させる機構であるが、この効果発現は湿度依存性とする難点を有している。界面活性剤などの帯電防止剤を合成樹脂成型品に適用するには、1)合成樹脂成型品の表面に塗布する方法、2)合成樹脂成型品内部に練り込む方法がある。塗布用(外部用)帯電防止剤は使用法が簡便であるが、表面を拭き取ったり洗浄したりすると、その制電性が著しく低下する欠点がある。また練り込み用(内部用帯電防止剤)では練り込まれた帯電防止剤は少しずつ表面に浸出(ブリードアウト)することで帯電防止作用を持続するが、合成樹脂のガラス転移点以下の温度では拡散が起こりにくい欠点を有している。一方、カーボンブラックを導電性フィラーとして添加する方法が汎用的であるが、この方法だと、合成樹脂成型品中に濃密に分散したカーボンブラック粒子の連結が電荷の通り道となる導電回路を形成することで優れた導電性を付与するものであり、効果の持続性や湿度依存性に優れている。しかし、カーボンブラック自体の黒色の影響で合成樹脂成型品外観を黒色として、透明品、任意の着色品が得られない難点があった。
そこで、界面活性剤やカーボンブラックなどの一長一短のある帯電防止剤を使用せずに、帯電防止性を付与する手段として、織布の両面に軟質合成樹脂層を設けてなるフレキシブルコンテナで、軟質合成樹脂層に導電性可塑剤(リチウムイオン系可塑剤)を含有するフレキシブルコンテナ(特許文献1)が提案されている。しかしリチウムイオン系可塑剤は可塑化効率が悪く、所望の表面固有抵抗1010 Ω以下導電性を得るために多量の配合量を必要とし、さらに汎用可塑剤も相当量必要とする(実施例1、実施例2)ため、軟質合成樹脂層が軟弱化、かつ脆弱化する傾向がありフレキシブルコンテナとして実用的ではない。また帯電防止性のフレキシブルコンテナとして、エチレン-酢酸ビニル共重合体樹脂100質量部に高分子型永久帯電防止剤(ポリエチレンオキサイド系高分子)を10~50質量部含有したフレキシブルコンテナ用ターポリンの発明(特許文献2)が開示されている。しかし、ポリエチレンオキサイド系高分子は、軟質塩化ビニル樹脂との相溶性に劣り、本質的にこの2つをブレンドすること、透明化することはできず、また溶融温度の差によりシート加工することも困難である。従って、界面活性剤、カーボンブラック、高分子型永久帯電防止剤などの種々難点を有する帯電防止剤を使用せずに帯電防止性が安定持続的な軟質塩化ビニル樹脂製の汎用膜材が存在すれば、黴、ダニダスト(死骸、糞塵)、花粉などのアレルゲン物質が膜材に静電吸着して蓄積され、日常生活を脅かす心配の解消となる。そしてさらに抗菌防黴性、抗ウイルス性の兼備ともなれば、菌、黴、ウイルスなどが膜材に付着したとしても、これらの活性・増殖の抑止となることで、医療検査用パーティション、空気注入式仮設膜構造による医療検査用陰圧テントシェルターなどの膜構造物の部材に適した膜材に特化する。以前に本出願人はこの課題に対して、分子中に1個以上のエーテル結合を有する液状エステル化合物、及びイオン液体化合物を併用する帯電防止性樹脂層を備えた可撓性積層体(特許文献3)の提案を行った。この提案による可撓性積層体は確かに帯電防止性を有しアレルゲン物質を静電吸着し難く、抗菌防黴性を兼備するものであったが、イオン液体化合物と液状エステル化合物(分子中に1個以上のエーテル結合を有する)を多量含有させた場合に、経時的にこれらの液体が膜材表面にブリードし、このブリード液体に煤塵が付着蓄積する汚れ問題、ブリードで膜材同士が癒着するブロッキング問題を生じていた。昨今においてはこれらの汚れ問題、ブロッキング問題の解決に加え、抗ウイルス性、抗アレルゲン性(黴、ダニダスト、花粉)を有する膜材開発の要望が大きいものとなっている。
特開2002-240884号公報 特開2017-019145号公報 特開2019-093625号公報
本発明は帯電防止性が安定持続的に発揮され、アレルゲン性(黴、ダニダスト、花粉)物質の静電吸着が抑止可能、かつ抗菌防黴性、抗ウイルス性、抗アレルゲン性(黴、ダニダスト、花粉)を兼備する軟質塩化ビニル樹脂製の膜材で、ブリードによる汚れ、膜材同士が癒着するブロッキング問題を生じることのない膜材(塗膜、フィルム、シート、ターポリン、帆布、合成皮革など)の提供を課題とする。
本発明は上記の現状に鑑みて研究、検討を重ねた結果、少なくともイオン液体化合物、及び可塑剤を含有する軟質塩化ビニル樹脂シートであって、イオン液体化合物が、特定のカチオン及びアニオンのイオン対で形成されたものであることによって、上記従来技術で困難であった、帯電防止性が安定持続的に発揮され、アレルゲン性(黴、ダニダスト、花粉)物質の静電吸着が抑止可能、かつ抗菌防黴性、抗ウイルス性、抗アレルゲン性(黴、ダニダスト、花粉)を兼備する軟質塩化ビニル樹脂製の膜材で、ブリードによる汚れ、膜材同士が癒着するブロッキング問題を生じることのない膜材(塗膜、フィルム、シート、ターポリン、帆布、合成皮革など)が得られることを見出して本発明を完成するに至った。
すなわち本発明の帯電防止性抗菌防黴膜材は、少なくともイオン液体化合物、及び分子量390以上、574以下の可塑剤を含有する軟質塩化ビニル樹脂シートであって、この軟質塩化ビニル樹脂シートの一面上に、ゾルゲル縮合体を含むラジカル発生層が設けられていて、前記軟質塩化ビニル樹脂シートに含む前記可塑剤量は、塩化ビニル系樹脂100質量部に対し35~90質量部、かつ、前記イオン液体化合物、及び前記可塑剤との併用質量比が、1:100~1:5であって、前記イオン液体化合物が、有機系カチオンと、無機系アニオン、及び/または有機系アニオンとの対イオンで形成され、前記有機系カチオンが、 ~C 12 直鎖アルキル基、または分岐アルキル基を有するもので、イミダゾリウム系、イミダゾリニウム系、ピリジニウム系、ピラゾリウム系、ピロリジニウム系、ピペリジニウム系、アンモニウム系、ホスホニウム系、スルホニウム系、から選ばれた1種以上、かつ前記アニオンが、BF4 -、PF6 -、TaF6 -、NbF6 -、SiF6 -、AlF4 -、AlCl4 -、NO2 -、NO3 -、F-、Cl-、Br-、I-、CN-、AsF6 -、SbF6 -、NbF6 -、TaF6 -、CF3SO2 -、(CF3SO22-、p-CH3PhSO3 -、CH3CO2 -、CH3SO3 -、CF3SO3 -、(CF3SO23-、C37CO2 -、C49SO3 -、(C25SO22-、(CF3SO2)(CF3CO)N-、(CN)2-から選ばれた1種以上、であり、さらに前記ラジカル発生層が、紫外線(200nm~399nm)励起または可視光線(400nm~780nm)励起が可能な、酸化チタン、過酸化チタン、酸化亜鉛、酸化錫、チタン酸ストロンチウム、酸化タングステン、酸化ビスマス、及び酸化鉄、から選ばれた1種以上の光触媒性金属酸化物であり、かつ、前記ゾルゲル縮合体が、シラノール基含有有機シラン化合物のゾルゲル縮合、またはチタノール基含有有機チタン化合物のゾルゲル縮合によって形成され、前記光触媒性金属酸化物を担持していることが好ましい。これによって、帯電防止性が安定持続的に発揮され、アレルゲン性(黴、ダニダスト、花粉)物質の静電吸着が抑止可能、かつ抗菌防黴性、抗ウイルス性、抗アレルゲン性(黴、ダニダスト、花粉)を兼備する軟質塩化ビニル樹脂製の膜材で、ブリードによる汚れ、膜材同士が癒着するブロッキング問題を生じることのない膜材を得ることができる。
本発明の帯電防止性抗菌防黴膜材は、前記可塑剤が、〔化1〕、〔化2〕から選ばれた1種以上の液状エステル化合物(アルキル鎖中に1個以上のエーテル結合を有する分子量390以上の可塑剤)を30質量%以上含むことが好ましい。このような液状エステル化合物の存在によって、より帯電防止性に優れた膜材を得ることができる。
〔化1〕
R(AO)OOC-X-COO(AO)
(式中、Xは:C、C、C10、C~C16、Rは:C3~15の直鎖または分岐鎖のアルキル基(Rは互いに同一または異なる)、Aは:C2~4の アルキレン基、mとnは1~10の整数(互いに同一または異なる)で表される化合物)
〔化2〕
CO(OCHCH-RCOOR
(式中、R及びRは:C3~15の直鎖または分岐鎖のアルキル基、またはアルケニル基、Rは:H、CH、C、nは3~20の整数で表される化合物)
本発明の帯電防止性抗菌防黴膜材は、前記イオン液体化合物、及び前記可塑剤との併用質量比が、1:100~1:5であることが好ましい。このようなイオン液体化合物と可塑剤の併用によって、帯電防止性が安定持続的に発揮され、アレルゲン性(黴、ダニダスト、花粉)物質の静電吸着が抑止可能、かつ抗菌防黴性、抗ウイルス性、抗アレルゲン性(黴、ダニダスト、花粉)を兼備する軟質塩化ビニル樹脂製の膜材で、ブリードによる汚れ、膜材同士が癒着するブロッキング問題を生じることのない膜材を得ることができる。
本発明の帯電防止性抗菌防黴膜材は、前記軟質塩化ビニル樹脂シートの一面上に、紫外線(200nm~399nm)励起または可視光線(400nm~780nm)励起が可能なラジカル発生層が設けられ、このラジカル発生層が、酸化チタン、過酸化チタン、酸化亜鉛、酸化錫、チタン酸ストロンチウム、酸化タングステン、酸化ビスマス、及び酸化鉄、から選ばれた1種以上の光触媒性金属酸化物であることが好ましい。このようなラジカル発生層の存在によって、黴、菌の細胞壁をラジカル攻撃し、またウイルスの核酸(DNA、RNA)を損傷させることで、これらの活性、増殖を封止することにより抗菌防黴性、抗ウイルス性を相乗強化することができる。
本発明の帯電防止性抗菌防黴膜材は、前記ラジカル発生層にゾルゲル縮合体を含み、このゾルゲル縮合体が、シラノール基含有有機シラン化合物のゾルゲル縮合、またはチタノール基含有有機チタン化合物のゾルゲル縮合によって形成されたもので、前記光触媒性金属酸化物を担持していることが好ましい。これによって軟質塩化ビニル樹脂シートに対するラジカル発生層の密着性、及びラジカル発生層内での光触媒性金属酸化物担持の密着性を高めると同時に、ブリードによる汚れ、膜材同士が癒着するブロッキング問題を生じることのない膜材を得ることができる。
本発明の帯電防止性抗菌防黴膜材は、前記軟質塩化ビニル樹脂シートが織物を芯材として含み、この織物が、1)経糸及び緯糸からなる織物、または2)経糸及び左上バイアス糸/右上バイアス糸からなる三軸織物、または3)経糸、緯糸及び左上バイアス糸/右上バイアス糸からなる四軸織物、の何れかであることが好ましい。このような織物を芯材として含むターポリン、メッシュシート、合成皮革、帆布などの形態で、天井膜、空間仕切り、巻上昇降式シートシャッター、クリーンルームカーテン、敷物、カバー、ブラインドなどの用途で使用することができる。
本発明によれば、帯電防止性が安定持続的に発揮され、アレルゲン性(黴、ダニダスト、花粉)物質の静電吸着が抑止可能、かつ抗菌防黴性、抗ウイルス性、抗アレルゲン性(黴、ダニダスト、花粉)を兼備する軟質塩化ビニル樹脂製の膜材で、ブリードによる汚れ、膜材同士が癒着するブロッキング問題を生じることのない膜材が得られるので、これらの膜材は、フィルム、シート、テープの形態、織物、ターポリン、メッシュシート、合成皮革、帆布などの形態で、これらのパーツを熱融着法で縫製し、天井膜、空間仕切り、巻上昇降式シートシャッター、クリーンルームカーテン、壁紙、敷物、カバー、ブラインド、防護衣、フェイスガード、など加工されて、工場、オフィス、学校、商業施設、病院、介護施設、式場、ごみ集積場、公衆トイレ、動物園などに広く使用される。特にターポリン、帆布などは、医療検査用パーティション、空気注入式仮設膜構造による医療検査用陰圧テントシェルターに適して用いることができ、(透明)フィルムはウイルス感染に対する、パーソナル空間構築用、対人カウンターの間仕切り構築用、フェイスガード(シールド)などの用途に適している。
※本発明において、数多くある菌種、黴種、ウイルス種のうちの代表的一部に対しての有効性を確認したことでの、抗菌防黴効果、抗ウイルス効果の応用の可能性を提案するのもで、未知を含めたあらゆる菌種、黴種、ウイルス種に対する有効性を示唆するものではない。
本発明の帯電防止性抗菌防黴膜材は、少なくともイオン液体化合物、及び可塑剤を含有する軟質塩化ビニル樹脂シートであって、前記イオン液体化合物が、特定のカチオン及びアニオンのイオン対で形成され、可塑剤が液状エステル化合物(アルキル鎖中に1個以上のエーテル結合を有する可塑剤)を30質量%以上含み、イオン液体化合物、及び可塑剤との併用質量比が、1:100~1:5の態様を包含し、特に軟質塩化ビニル樹脂シートの一面上に特定の光触媒性金属酸化物によるラジカル発生層が設けられた態様を包含し、またラジカル発生層にゾルゲル縮合体を含み、このゾルゲル縮合体が光触媒性金属酸化物を担持する態様を包含し、さらに軟質塩化ビニル樹脂シートが特定の織物を芯材として含む態様を包含する。
本発明の帯電防止性抗菌防黴膜材の実体は、少なくともイオン液体化合物、及び可塑剤を含有する軟質塩化ビニル樹脂シート(塗膜、フィルム、シート、ターポリン、帆布、合成皮革など)であって、その主構成は、塩化ビニル系樹脂(懸濁重合PVC、乳化重合PVC、塩ビ-酢ビ共重合体樹脂、ポリ塩化ビニリデン、塩素化塩化ビニル樹脂など)、分子量390以上の可塑剤(アジピン酸エステル系、フタル酸エステル系、シクロヘキサンエステル系、トリメリット酸エステル系、ピロメリット酸エステル系、ポリエステル系、エポキシ化大豆油系、芳香族リン酸エステル系、エチレンCO酢酸ビニルエステル系高分子可塑剤など)、イオン液体化合物(後述)で、特に塩化ビニル系樹脂はK値65~85(JIS K7367-2)、1000~2500の平均重合度(旧JIS K6721)の塩化ビニル樹脂を用い、分子量390以上の可塑剤を併用することが好ましい。K値が65を下回る塩化ビニル樹脂を用いることで、得られる軟質塩化ビニル樹脂シート同士のブロッキング現象を引き起こし易くなることがあり、また可塑剤がシート表面に移行するブリード現象を促進することでよりブロッキング現象を過酷なものとすることがある。イオン液体化合物と可塑剤との併用質量比は1:100~1:5、特に3:100~1:10が好ましい。そして副成分には、耐熱安定剤(カルシウム亜鉛複合系、バリウム亜鉛複合系、有機錫ラウレート、有機錫メルカプタイト、エポキシ系など)、難燃剤(リン含有化合物、窒素含有化合物、無機系化合物、ハロゲン置換有機化合物)、耐光安定剤(HALS)、紫外線吸収剤(ベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系など)、酸化防止剤(フェノール系)、蛍光増白剤、帯電防止剤、硬化剤(イソシアネート系など)、防虫剤(ピレスロイド系など)、消臭剤(酸化珪素・金属酸化物複合系など)、遮熱フィラー(中空粒子、粗粒酸化チタンなど)、芳香剤、蓄光顔料(アルミン酸ストロンチウム系など)、アルミフレーク顔料、パール顔料、有機系顔料、無機系顔料、無機充填剤(炭酸カルシウム、硫酸バリウムなど)などの公知の添加剤を必要に応じて任意量配合した組成である。
分子量390以上の可塑剤としては、例えば、フタル酸ジ(2-エチルヘキシル)(C8:MW390)、フタル酸ジノニル(C9:MW418)、フタル酸ジイソノニル(C9:MW418)、フタル酸ジイソデシル(C10:MW447)、フタル酸ジデシル(C10:MW447)などのフタル酸ジアルキルエステル系可塑剤などのフタル酸系可塑剤が例示できる。またフタル酸系可塑剤の位置異性体である、ベンゼン環に対するC8以上のジカルボン酸ジアルキルエステルの結合位置が、メタ位(1,3位)のイソフタル酸系可塑剤、パラ位(1,4位)のテレフタル酸系可塑剤などであってもよい。また例えば、1,2-シクロヘキサンジカルボン酸ジオクチル(C8:MW393)、1,2-シクロヘキサンジカルボン酸ジノニル(C9:MW421)、1,2-シクロヘキサンジカルボン酸ジイソノニル(C9:MW421)、1,2-シクロヘキサンジカルボン酸ジイソデシル(C10:MW450)、1,2-シクロヘキサンジカルボン酸ジデシル(C10:MW450)などのシクロヘキサンジカルボン酸ジアルキルエステル系可塑剤が例示される。シクロヘキサンジカルボン酸ジアルキルエステル系可塑剤は、シクロヘキサン環に対するC8以上のジカルボン酸ジアルキルエステルの結合位置が、メタ位(1,3位)、パラ位(1,4位)の位置異性体であってもよい。また4-シクロヘキセン-1,2-ジカルボン酸ビス(2-エチルヘキシル)(C8:MW395)、4-シクロヘキセン-1,2-ジカルボン酸ジノニル(C9:MW423)、4-シクロヘキセン-1,2-ジカルボン酸ジイソノニル(C9:MW423)、4-シクロヘキセン-1,2-ジカルボン酸ジイソデシル(C10:MW452)、4-シクロヘキセン-1,2-ジカルボン酸ジデシル(C10:MW452)などのシクロヘキセンジカルボン酸ジアルキルエステル系可塑剤が例示される。シクロヘキセンジカルボン酸ジアルキルエステル系可塑剤は、シクロヘキセン環に対するC8以上のジカルボン酸ジアルキルエステルの結合位置が、メタ位(1,3位)、パラ位(1,4位)の位置異性体であってもよい。
またアジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、フタル酸などのジカルボン酸とエチレングリコール、1,2-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオールなどのグリコール類との反応によって得られる分子量600~2500のオリゴマー、またはトリマーであるポリエステル系可塑剤を用いることができ、段落〔0016〕に記載の可塑剤と併用することができる。またトリキシレニルホスフェート(MW410)、ビス-(t-ブチルフェニル)フェニルホスフェート(MW438)、トリス-(t-ブチルフェニル)ホスフェート(MW494)などの芳香族リン酸エステルを用いることができ、段落〔0016〕に記載の可塑剤、及び上記ポリエステル系可塑剤と併用することができる。また分子末端または側鎖に(メタ)アクリロイル基を2個以上有する反応性アクリル系化合物、アリル基を2個以上有するアリルフタレート系化合物などを段落〔0016〕に記載の可塑剤、及び上記ポリエステル系可塑剤などと併用することができる。分子量390を下回る可塑剤を主体に使用することで可塑剤がシート表面に移行するブリード現象を促進し、シート同士のブロッキング現象を過酷なものとすることがある。
また特に全可塑剤量に対し、液状エステル化合物(アルキル鎖中に1個以上のエーテル結合を有する分子量390以上の可塑剤)を30質量%以上含むことが好ましい。アルキル鎖中に1個以上のエーテル結合を有する液状エステル化合物を含むことで得られる軟質塩化ビニル樹脂シートに帯電防止性を向上させる。このような帯電防止性を向上させる可塑剤としても作用する液状エステル化合物は、〔化1〕、〔化2〕から選ばれた1種以上である。軟質塩化ビニル樹脂シートに含む可塑剤量は、塩化ビニル系樹脂100質量部に対し35~90質量部、特に45~75質量部が好ましく、この可塑剤量の30質量%以上を〔化1〕、〔化2〕から選ばれた1種以上の液状エステル化合物とすることが好ましく、全可塑剤量に対する液状エステル化合物の占有率は100質量%であってもよい。全可塑剤量が90質量部を超えると得られる軟質塩化ビニル樹脂シートの風合いがラバー化してブロッキング現象を引き起こし易くなる。特に可塑剤量はデュロメータA硬度(JIS K6253:10秒後)がA60~85の範囲に軟質塩化ビニル樹脂シートの硬度を調整することが好ましい。硬度がA60を下回ると、得られる軟質塩化ビニル樹脂シートの風合いがラバー化してブロッキング現象を引き起こし易くなる。
〔化1〕
R(AO)OOC-X-COO(AO)
(式中、Xは:C、C、C10、C~C16、Rは:C3~15の直鎖または分岐鎖のアルキル基(Rは互いに同一または異なる)、Aは:C2~4のアルキレン基、mとnは1~10の整数(互いに同一または異なる)で表される化合物)
〔化2〕
CO(OCHCH-RCOOR
(式中、R及びRは:C3~15の直鎖または分岐鎖のアルキル基、またはアルケニル基、Rは:H、CH、C、nは3~20の整数で表される化合物)
上記〔化1〕式の液状エステル化合物の製造に用いられるジカルボン酸としては、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、コハク酸、ブラシル酸、テトラヒドロフタル酸、フタル酸などのジカルボン酸が好ましく、上記〔化2〕式の液状エステル化合物の製造に用いられるカルボン酸としては、モノカルボン酸、三価以上の多価カルボン酸、またはエポキシシクロヘキサン環を有する二価カルボン酸である。これらのカルボン酸はメチル基、エチル基などのアルキル基、水酸基、酸素、ケイ素、ハロゲンなどのヘテロ原子を含む置換基を有していてもよい。モノカルボン酸としては炭素数2~22の脂肪族モノカルボン酸が好ましく、更に炭素数3~8のカルボン酸残基からなる脂肪族、脂環式若しくは芳香族の多塩基酸で、具体的には、クエン酸、アコニット酸、ブタントリカルボン酸、ブタンテトラカルボン酸などの脂肪族多価カルボン酸、エポキシヘキサヒドロフタル酸などの脂環式カルボン酸、トリメリット酸、ピロメリット酸などの芳香族多価カルボン酸、並びにこれらのカルボン酸の酸無水物などを用いることができる。上記〔化1〕式、及び上記〔化2〕式の液状エステル化合物は上記カルボン酸を単独で用いたもの、あるいは2種以上の混合物を用いたものである。
このような液状エステル化合物〔化1〕は具体的に、フタル酸ジエチルセロソルブ、フタル酸ジブチルセロソルブ、アジピン酸ジエチルセロソルブ、アジピン酸ジブチルセロソルブ、アゼライン酸ジエチルセロソルブ、アゼライン酸ジブチルセロソルブ、セバシン酸ジエチルセロソルブ、セバシン酸ジブチルセロソルブ、などのジカルボン酸アルキルセロソルブ系エステル化合物、及びアジピン酸、フタル酸などのジカルボン酸と、モノ-及びポリ-アルキレングリコールモノアルキルエーテルとの反応物が挙けられる。モノ-及びポリ-アルキレングリコールモノアルキルエーテルは、プロパノール、ブタノール、ヘキサノール、ヘプタノール、オクタノール、ノナノールなどのアルコールとエチレンオキシドとの付加化合物、アルコールとプロピレンオキシドとの付加化合物、アルコールとブチレンオキシドとの付加化合物、あるいは、アルコールと、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシドなどアルキレンオキシドから選ばれた2種以上のアルキレンオキシドとの付加化合物であり、これらは具体的に、エチレングリコールモノオクチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノヘプチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノプロピルエーテル、テトラエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノオクチルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、ブチレングリコールモノエチルエーテルなどの(モノ~ポリ)アルキレングリコールモノアルキルエーテルなど、その他、ジエチレングリコールジ-2-エチルヘキソネート、テトラエチレングリコールジ-2-エチルヘキソネート、ヘキサエチレングリコールジ-2-エチルヘキソネート、トリエチレングリコールジエチルブチレート、ポリエチレングリコールジエチルブチレート、ポリプロピレングリコールジエチルヘキソネート、トリエチレングリコールジベンゾエート、テトラエチレングリコールジベンゾエート、ポリエチレングリコールジベンゾエート、ポリプロピレングリコールジベンゾエート、またはポリエチレングリコール-2-エチルヘキソネートベンゾエートなどである。また液状エステル化合物〔化2〕は、トリエチレングリコールのカプリル酸エステル、テトラエチレングリコールのオクチル酸エステル、ポリエチレングリコールと2-エチル酢酸とのジエステル、ポリエステルグリコールと2-エチルヘキサン酸とのジエステルなどが挙げられる。
本発明の帯電防止性抗菌防黴膜材に用いるイオン液体化合物は、有機系カチオンと、無機系アニオン、及び/または有機系アニオンとの対イオンを成して形成される常温液体の塩である。有機系カチオンは、イミダゾリウム系、イミダゾリニウム系、ピリジニウム系、ピラゾリウム系、ピロリジニウム系、ピペリジニウム系、アンモニウム系、ホスホニウム系、スルホニウム系、から選ばれた1種以上である。具体的に、1)イミダゾリウム系イオン液体化合物として、1-(R)-3-(R)イミダゾリウム/テトラフルオロボレート(BF4 -)、1-(R)-3-(R)イミダゾリウム/トリフルオロメタンスルホネート(CF3SO -)、1-(R)-3-(R)イミダゾリウム/ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(〔CF3SO22-)、1-(R)-3-(R)イミダゾリウム/ヘキサフルオロホスフェート(PF6 -)、1-(R)-3-(R)イミダゾリウム/ブロマイド(Br-)またはクロライド(Cr-)、などのイミダゾリニウム塩:ここでR:メチル基、エチル基、ブチル基、プロピル基、イソプロピル基などのC~C12直鎖アルキル基、または分岐アルキル基、R:メチル基、エチル基、ブチル基、プロピル基、イソプロピル基などのC~C12直鎖アルキル基、または分岐アルキル基、でRとRは互いに同一、あるいは互いに異なるアルキル基である。RとRは以下、2)~7)に記載のイオン液体化合物においても同様の定義である。2)イミダゾリニウム系イオン液体化合物として、1-(R)-3-(R)イミダゾリニウム/テトラフルオロボレート、1-(R)-3-(R)イミダゾリニウム/トリフルオロメタンスルホネート、1-(R)-3-(R)イミダゾリニウム/ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、1-(R)-3-(R)イミダゾリニウム/ヘキサフルオロホスフェート、1-(R)-3-(R)イミダゾリニウム/ブロマイドまたはクロライド、などのイミダゾリニウム塩、3)ピリジニウム系イオン液体化合物として、1-(R)-3-(R)ピリジニウム/テトラフルオロボレート、1-(R)-3-(R)ピリジニウム/トリフルオロメタンスルホネート、1-(R)-3-(R)ピリジニウム/ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、1-(R)-3-(R)ピリジニウム/ヘキサフルオロホスフェート、1-(R)-3-(R)ピリジニウム/ブロマイドまたはクロライド、などのピリジニウム塩;4)ピラゾリウム系イオン液体化合物として、N-(R)-N-(R)ピラゾリウム/テトラフルオロボレート、N-(R)-N-(R)ピラゾリウム/トリフルオロメタンスルホネート、N-(R)-N-(R)ピラゾリウム/ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N-(R)-N-(R)ピラゾリウム/ヘキサフルオロホスフェート、N-(R)-N-(R)ピラゾリウム/ブロマイドまたはクロライド、などのピラゾリウム塩;5)ピロリジニウム系イオン液体化合物として、N-(R)-N-(R)ピロリジニウム/テトラフルオロボレート、N-(R)-N-(R)ピロリジニウム/トリフルオロメタンスルホネート、N-(R)-N-(R)ピロリジニウム/ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N-(R)-N-(R)ピロリジニウム/ヘキサフルオロホスフェート、N-(R)-N-(R)ピロリジニウム/ブロマイドまたはクロライド、などのピロリジニウム塩;6)ピペリジニウム系イオン液体化合物として、N-(R)-N-(R)ピペリジニウム/テトラフルオロボレート、N-(R)-N-(R)ピペリジニウム/トリフルオロメタンスルホネート、N-(R)-N-(R)ピペリジニウム/ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N-(R)-N-(R)ピペリジニウム/ヘキサフルオロホスフェート、N-(R)-N-(R)ピペリジニウム/ブロマイドまたはクロライド、などのピペリジニウム塩;7)アンモニウム系イオン液体化合物として、N,N,N-トリ(R)-N-(R)アンモニウム/ブロマイドまたはクロライド、N,N,N-トリ(R)-N-(R)アンモニウム/テトラフルオロボレート、N,N,N-トリ(R)-N-(R)アンモニウム/ヘキサフルオロホスフェート、N,N,N-トリ(R)-N-(R)アンモニウム/ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、アミルトリエチルアンモニウム/ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、メチルトリ-n-オクチルアンモニウム/ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、2-プロペン-1-アミニウム-N,N-ジメチル-1-N-2-プロペン-1-イル塩などのアンモニウム塩などが挙げられ、これらは1種のみを使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
上記段落〔0021〕記載の有機系カチオンと対となるカウンターイオン(アニオン)は、BF4 -、PF6 -、TaF6 -、NbF6 -、SiF6 -、AlF4 -、AlCl4 -、NO2 -、NO3 -、F-、Cl-、Br-、I-、CN-、AsF6 -、SbF6 -、NbF6 -、TaF6 -の無機系アニオン、及びCF3SO2 -、(CF3SO22-、p-CH3PhSO3 -、CH3CO2 -、CH3SO3 -、CF3SO3 -、(CF3SO23-、C37CO2 -、C49SO3 -、(C25SO22-、(CF3SO2)(CF3CO)N-、(CN)2-の有機系アニオンから選ばれた1種以上のアニオンで、上記段落〔0021〕記載の有機系カチオンと対となって帯電防止性及び抗菌・防黴性・抗ウイルス性を発現する。これによって、帯電防止性が安定持続的に発揮され、アレルゲン性(黴、ダニダスト、花粉)物質の静電吸着が抑止可能となり、かつ抗菌防黴性、抗ウイルス性、抗アレルゲン性(黴、ダニダスト、花粉)を兼備する軟質塩化ビニル樹脂製の膜材で、ブリードによる汚れ、膜材同士が癒着するブロッキング問題を生じることのない膜材を得ることができる。抗菌性は、黄色ブドウ球菌、大腸菌、肺炎桿菌、緑膿菌、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌、および腸管出血性大腸菌など、防黴性は、黒黴(クラドスポリウム)、青黴(ペニシリウム)、緑黴(トリコデルマ)、赤黴(フザリウム)、黄黴(カワキコウジカビ)など、抗ウイルス性は、インフルエンザウイルス、ノルウイルス、ヘルペスウイルスなど、それらの増殖を抑止する効果を発現し得る。抗菌・防黴効果はイオン液体化合物による細胞膜の破壊によるもので、細胞膜破壊には、イオン液体の有機系カチオンの正電荷とそのカチオンのアルキル鎖長が関与する。静電相互作用によって、イオン液体化合物の有機系カチオンが菌・黴の細胞膜のリン脂質のアニオン部位に引き寄せられた後、有機系カチオンのアルキル鎖が細胞膜のリン脂質の疎水部と疎水性相互作用することによって膜に入り込み、カチオン部が細胞膜に蓄積することで菌・黴の細胞膜を破壊するメカニズムのため、有機系カチオンのアルキル鎖が長いほど細胞膜の破壊に効果的となる。ウイルスに対しては核酸のDNA、またはRNAの塩基にイオン液体化合物(カチオン、またはアニオン)が配位することで、DNA、RNAの複製を阻害する作用でウイルスを抑制する。イオン液体化合物と上述の可塑剤との併用質量比は1:100~1:5、特に3:100~1:10が好ましい。イオン液体化合物の含有量が1:100未満だと帯電防止性、及び抗菌・防黴性、抗ウイルス性が不十分となることがあり、またイオン液体化合物の含有量が1:5を超えるとイオン液体化合物の膜材表面へのブリード現象が顕著となることがある。このようなイオン液体化合物と可塑剤の併用によって、帯電防止性が安定持続的に発揮され、アレルゲン性(黴、ダニダスト、花粉)物質の静電吸着が抑止可能、かつ抗菌防黴性、抗ウイルス性、抗アレルゲン性(黴、ダニダスト、花粉)を兼備する軟質塩化ビニル樹脂製の膜材で、ブリードによる汚れ、膜材同士が癒着するブロッキング問題を生じることのない膜材を得ることができる。また黴に対しては、イミダゾリウム系、イミダゾリニウム系、ピリジニウム系、ピラゾリウム系、ピロリジニウム系、ピペリジニウム系、アンモニウム系、ホスホニウム系、スルホニウム系などの有機系カチオンが効果的である。
軟質塩化ビニル樹脂シート(帯電防止性抗菌防黴膜材)の一面上に、紫外線(200nm~399nm)励起または可視光線(400nm~780nm)励起が可能なラジカル発生層が設けられていることが好ましく、このラジカル発生層は紫外線励起、または可視光線励起によって、有機物に対するラジカル酸化攻撃を行い、この作用によって菌・黴の細胞膜を破壊し死滅させ、菌・黴の増殖を抑止するもので、この作用はイオン液体化合物によるイオン配位との相乗でより効果的、かつ即効的に作用する。ウイルスに対しては核酸のDNA、またはRNAの二重螺旋をラジカル酸化攻撃してDNA、RNAを破壊する作用でウイルスを抑制するもので、この作用はイオン液体化合物によるイオン配位との相乗でより効果的、かつ即効的に作用する。このラジカル発生層は、酸化チタン、過酸化チタン、酸化亜鉛、酸化錫、チタン酸ストロンチウム、酸化タングステン、酸化ビスマス、及び酸化鉄、から選ばれた1種以上の光触媒性金属酸化物により構成される。特に可視光線励起可能なラジカル発生層は、1)上記の光触媒性金属酸化物に、銀、プラチナ、金、銅、ロジウム、パラジウム、ルテニウム、イリジウムなどの金属およびそれらの金属の化合物を助触媒として添加(担持)した助触媒添加(担持)型光触媒、2)上記の光触媒性金属酸化物に、窒素、炭素、硫黄、リン、ホウ素、フッ素などをドープしたアニオンドープ型光触媒、3)上記の光触媒性金属酸化物に、クロム、ニオブ、マンガン、コバルト、バナジウム、鉄、ニッケルなどの遷移金属イオンをドープしたカチオンドープ型光触媒、4)上記の光触媒性金属酸化物に、アニオンとカチオンの両方をドープした共ドープ型光触媒、5)上記の光触媒性金属酸化物に、白金、パラジウム、ロジウムなど貴金属のハロゲン化物を担持させた金属ハロゲン化物担持型光触媒、6)上記の光触媒性金属酸化物から部分的に酸素を引き抜いた酸素欠損型光触媒、などが例示できる。光触媒性金属酸化物は、上記より1種、または2種以上を併用して用いることができ、特に紫外線励起可能な光触媒性金属酸化物と、可視光線励起可能な光触媒性金属酸化物との併用によるラジカル発生層により、屋内外の光源の種類を問わず光触媒活性によるラジカル酸化作用を発現し、抗菌防黴、及び抗ウイルス性などを常時持続的なものとする。
ラジカル発生層にはゾルゲル縮合体を含み、このゾルゲル縮合体は、シラノール基含有有機シラン化合物のゾルゲル縮合、またはチタノール基含有有機チタン化合物のゾルゲル縮合によって形成されたもので、ゾルゲル縮合体によって光触媒性金属酸化物が担持された態様が好ましい。このゾルゲル縮合体の存在によって、軟質塩化ビニル樹脂シートに対するラジカル発生層の密着性、及びラジカル発生層内での光触媒性金属酸化物担持の密着性を高めると同時に、ブリードによる汚れ、膜材同士が癒着するブロッキング問題を生じることのない膜材を得ることができる。光触媒性金属酸化物は、シラノール基含有有機シラン化合物、チタノール基含有有機チタン化合物、などのゾルゲル縮合体を生成可能な成分と共に使用し、ゾルゲル縮合体中に光触媒性金属酸化物が密集した態様のラジカル発生層が好ましい。光触媒性金属酸化物は、ゾルゲル縮合体中の結合の一部に何らかの形で取り込まれた塗膜層となり、基材との密着強さ、表面摩耗強さを向上させる。ラジカル発生層は、光触媒性金属酸化物を含む塗料組成物の塗布、乾燥(熱処理)によるゾルゲル縮合反応により形成される。
シラノール基含有有機シラン化合物は、化学式:SiO(OR)で表される4官能加水分解性シラン化合物であり、式中、Rは炭素原子数1~10のアルキル基(特に炭素数1~3の低級アルキル基)、またはアリール基(特にフェニル基)で具体的に、テトラメトキシシラン(Si(OCH):別名テトラメチルシリケート)、テトラエトキシシラン(Si(OC):別名テトラエチルシリケート)、テトラプロポキシシラン(Si(OC):別名テトラプロピルシリケート)、テトラブトキシシラン(Si(OC):別名テトラブチルシリケート)、テトラフェノキシシラン(Si(OC):別名テトラフェニルシリケート)、ジメトキシジエトキシシラン(Si(OCH)(OC):別名ジメチルジエチルシリケート)などである。シラノール基含有有機シラン化合物の多量体は、化学式:Sin-1(OR)2(n+1)で表される縮合体であり、式中、Rは炭素原子数1~10のアルキル基(特に炭素数1~3の低級アルキル基)、またはアリール基(特にフェニル基)、nは4官能加水分解性シラン化合物の縮合分子数を表す多量化度(所謂n量体)で、nが2以上のシラノール基含有有機シラン化合物多量体は、4官能加水分解性シラン化合物が加水分解して生成するシラノール基同士の反応で2分子以上が縮合して生成する多量体であり、nの表す多量化度は多量体1分子中に含有するSi原子数を意味する。本発明においては多量化度2~10、好ましくは4~6のシラノール基含有有機シラン化合物多量体(Sin-1(OR)2(n+1))によるゾルゲル縮合体によるラジカル発生層であることが好ましい。このゾルゲル縮合体の原子配列はヨコ軸とタテ軸からなる四角格子網目をモデルとすれば、ヨコ軸とタテ軸の交点にSi原子が配置され、上下左右に隣接するSi-Si原子間にO原子が配置されたイメージである。
チタノール基含有有機チタン化合物は、化学式:TiO(OR)で表される4官能加水分解性チタン化合物であり、式中、Rは炭素原子数1~10のアルキル基(特に炭素数1~3の低級アルキル基)、またはアリール基(特にフェニル基)で具体的に、テトラメトキシチタン(Ti(OCH):別名テトラメチルチタネート)、テトラエトキシチタン(Ti(OC):別名テトラエチルチタネート)、テトラプロポキシチタン(Ti(OC):別名テトラプロピルチタネート)、テトラブトキシチタン(Ti(OC):別名テトラブチルチタネート)、テトラフェノキシチタン(Ti(OC):別名テトラフェニルチタネート)、ジメトキシジエトキシチタン(Ti(OCH)(OC):別名ジメチルジエチルチタネート)などのチタニウムアルコキシド化合物、さらにはトリブトキシチタンステアレート、イソプロポキシチタントリステアレートなどのチタニウムアシレート化合物:Ti(OOCR)、またさらにジイソプロポキシチタンビスアセチルアセトナト、ジイソプロポキシチタンビスエチルアセトアセテートなどのチタニウムキレート化合物:(ROO)Ti(OR)錯体、その他、イソプロポキシチタントリイソステアレート、イソプロポキシチタンジメタクリレートイソステアレート、イソプロポキシチタントリスジオクチルホスフェート、ビスジオクチルホスフェートエチレングリコラートチタン、ジブトキシビストリエタノールアミナトチタンなどが例示できる。チタノール基含有有機チタン化合物の多量体は、化学式:Tin-1(OR)2(n+1)で表される縮合体であり、式中Rは炭素原子数1~10のアルキル基(特に炭素数1~3の低級アルキル基)、またはアリール基(特にフェニル基)、nは4官能加水分解性チタン化合物の縮合分子数を表す多量化度(所謂n量体)で、nが2以上のチタノール基含有有機チタン化合物多量体は、4官能加水分解性チタン化合物が加水分解して生成するチタノール基同士の反応で2分子以上が縮合して生成する多量体であり、nの表す多量化度は多量体1分子中に含有するTi原子数を意味する。本発明においては多量化度2~10、好ましくは4~6のチタノール基含有有機チタン化合物多量体(Tin-1(OR)2(n+1))によるゾルゲル縮合体によるラジカル発生層が好ましい。このゾルゲル縮合体の原子配列はヨコ軸とタテ軸からなる四角格子網目をモデルとすれば、ヨコ軸とタテ軸の交点にTi原子が配置され、上下左右に隣接するTi-Ti原子間にO原子が配置されたイメージである。
本発明の帯電防止性抗菌防黴膜材は、軟質塩化ビニル樹脂シート(またはフィルム、塗膜)の態様であると同時に、軟質塩化ビニル樹脂シートが織物を芯材として含み、この織物が、1)経糸及び緯糸からなる織物、または2)経糸及び左上バイアス糸/右上バイアス糸からなる三軸織物、または3)経糸、緯糸及び左上バイアス糸/右上バイアス糸からなる四軸織物、の何れかの態様でもある。上記織物は、平織物(二軸織物、三軸織物、四軸織物)、斜子織物(2×2、3×3、4×4などの正則斜子織、3×2、4×2、4×3、5×3、2×3、2×4、3×4、3×5などの不規則斜子織)、綾織物(経糸、緯糸とも最少3本ずつ用いた最小構成単位を有する:3枚斜文、4枚斜文、5枚斜文、6枚斜文など)、朱子織物(経糸、緯糸とも最少5本ずつ用いた最小構成単位を有する:2飛び、3飛び、4飛び、5飛びなどの正則朱子)、及び変化平織物、変化綾織物、変化朱子織物など、さらに蜂巣織物、梨子地織物、破れ斜文織物、昼夜朱子織物、もじり織物(紗織物、絽織物)、縫取織物、二重織物などの織物が使用できる。織物の目付量は100~500g/m、空隙率は0~25%、が適している。これらの織物には精練、漂白、染色、柔軟化、撥水、防黴、防炎、カレンダー、などの公知の染色整理加工を施したものを使用することもできる。
織物を構成する糸条は、合成繊維、天然繊維(綿、ケナフ)、半合成繊維(レーヨン)、無機繊維(ガラス、シリカ、アルミナ)及びこれらの2種以上から成る混合繊維など、何れの繊維も使用できるが、ポリプロピレン繊維、ポリエチレン繊維、ポリビニルアルコール繊維、ポリエステル(ポリエチレンテレフタレート:PET、ポリブチレンテレフタレート:PBT、ポリナフタレンテレフタレート:PNTなど)繊維、ナイロン繊維、アラミド繊維及び、これらの混用繊維(混撚・合撚)などの合成繊維による、1)マルチフィラメント糸条、2)短繊維紡績糸条、3)及びカバリング糸条、から選ばれた1種以上の糸条態様にて使用できる。マルチフィラメント糸条は、ナイロン、ポリエステルなどの熱可塑性樹脂を溶融紡糸した長繊維紡原糸を3~5倍に延伸した長繊維紡糸束(50~500本のフィラメント束)のまま無撚、または1~200回/m撚りを掛けた、繊度125~2000デニール(139~2222dtex)の糸条が使用できる。これらのマルチフィラメント糸条には、タスラン糸条、ウーリー糸条などの嵩高加工糸条を包含する。短繊維紡績糸条は、ナイロン、ポリエステルなどの熱可塑性樹脂を溶融紡糸した長繊維紡糸束(延伸していてもよい)を3.8~5.8mm長程度に切断したステープルを開繊練条したスライバを引き伸ばしたロービング(粗糸)とし、これに所定の番手太さにドラフトと撚りを掛けてトウ紡績したものが使用できる。撚糸は単糸または単糸2本を引き揃えてS(右)撚りもしくはZ(左)撚りしたもの、また単糸または単糸2本を引き揃えて下撚りした加撚糸を2本引き揃えて上撚りを掛けてなる双糸が挙げられる。これらの撚糸の撚り回数は200~2000回/m程度である。またカバリング糸条は、上記マルチフィラメント糸束の外周に上記短繊維を巻き付けたカバリング糸条が挙げられ、芯鞘複合糸条もカバリング糸条に包含するものとする。
本発明の帯電防止性抗菌防黴膜材において、軟質塩化ビニル樹脂シートは、厚さ0.1mm~0.29mmのフィルム、または厚さ0.3mm~2.5mmのシートであることが好ましい。軟質塩化ビニル樹脂シートに織物を芯材として含む態様の製造方法は、軟質塩化ビニル樹脂組成物を熱混練し、カレンダー法、またはTダイス押出法で溶融圧延したフィルム、またはシートを使用し、これを織物の表裏に熱ラミネートで積層することで得られる。この熱ラミネートは例えば、熱ロール/ゴムロールの連続圧着ユニットを1~2と、冷却ロールユニット、及び巻取ユニットを有するラミネーターを用い、ラミネーターの1回通しまたは2回通しの工程により熱溶融圧着する方法が挙げられる。また、シート基材に織物を芯材として含む態様として、織物の表裏に軟質塩化ビニル樹脂組成物ゾルをナイフコート、クリアランスコート、グラビアコートなどのコーティング法により塗工し、これを熱乾燥、または加熱ゲル化によって、樹脂被覆層を形成したもの、または軟質塩化ビニル樹脂組成物ゾルを充填した液浴中に織物を浸漬し、これを引き上げると同時に1対のゴムロール間で圧搾し、直後に熱乾燥、または加熱ゲル化させるディッピング法によって、織物の表裏に樹脂被覆層を形成したものが挙げられる。
また軟質塩化ビニル樹脂シート(帯電防止性抗菌防黴膜材)には、アルキルアミン類、第4級アンモニウム塩類などのカチオン性帯電防止剤;脂肪酸塩類、アルキル硫酸エステル塩類、アルキルベンゼンスルホン酸塩類、アルキルナフタレンスルホン酸類、アルキルスルホコハク酸塩類、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸塩類、アルキルリン酸塩類、ポリオキシエチレンアルキル硫酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルアリル硫酸エステル塩類、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物、カルボン酸型高分子界面活性剤類などのアニオン性帯電防止剤;及びアルキルベタイン類、アミンオキサイド類などの両性イオン性帯電防止剤、及び上記帯電防止剤を高分子量化した高分子型帯電防止剤などを軟質塩化ビニル樹脂シートに対して0.05~2質量%程度併用することができる。無機導電性材料としては、カーボンブラック、黒鉛、フラーレン、カーボンナノチューブなどの炭素系材料や、酸化インジウム、酸化亜鉛、酸化スズ、チタン酸カリウム、酸化チタン、スズ-アンチモン系酸化物、インジウム-スズ系酸化物、アンチモン-スズ系酸化物などの金属系材料を軟質塩化ビニル樹脂シートに対して0.05~2質量%程度併用することができる。
また軟質塩化ビニル樹脂シート(帯電防止性抗菌防黴膜材)には、黴、細菌(グラム陽性、グラム陰性)、真菌などの細胞壁、細胞膜、細胞質、及び細胞核などに対して、酸化的リン酸化阻害、電子伝達系阻害、-SH基阻害、DNA合成阻害、細胞表皮機能阻害、脂質代謝阻害、キレート形成などの作用を及ぼす有機化合物を含むことが好ましく、このような有機化合物としては、イミダゾール系化合物、チアゾール系化合物、イソチアゾリン系化合物、ピリジン系化合物、トリアジン系化合物、トリアゾール系化合物、N-ハロアルキルチオ系化合物、四級アンモニウム塩系化合物、フェノキシアルシン化合物など、具体的に、10,10-オキシビスフェノキシアルシン、2-(4-チアゾリル)-ベンズイミダゾールが特に好ましい。これら有機化合物は、メソポーラスシリカ、(合成)ゼオライト、チタンゼオライト、リン酸ジルコニウム、リン酸カルシウム、リン酸亜鉛カルシウム、ハイドロタルサイト、ヒドロキシアパタイト、シリカアルミナ、ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミン酸マグネシウム、ケイソウ土などの粒子、及びこれら粒子のシランカップリング剤処理物、から選ばれた1種以上の多孔質粒子に担持されていることが徐放効果の観点において好ましい。有機化合物または多孔質粒子担持物は、軟質塩化ビニル樹脂シートに対して0.05~1質量%程度併用することができる。
本発明の帯電防止性抗菌防黴膜材は、フィルム、シート、テープの形態、織物、ターポリン、メッシュシート、合成皮革、帆布などの形態で、これらのパーツを熱融着法で縫製し、天井膜、空間仕切り、巻上昇降式シートシャッター、クリーンルームカーテン、壁紙、敷物、カバー、ブラインド、防護衣、フェイスガード、など加工されて、工場、オフィス、学校、商業施設、病院、介護施設、式場、ごみ集積場、公衆トイレ、動物園などに広く使用される。特にターポリン、帆布などは、医療検査用パーティション、空気注入式仮設膜構造による医療検査用陰圧テントシェルターに適して用いることができる。膜材同士の接合(同じ面に向き揃えての端部重ね合わせ接着)は、高周波ウエルダー機を用いて高周波振動によって接合を行うことができる。具体的に、2ヶ所の電極(一方の電極は、ウエルドバー)間に膜材を置き、ウエルドバーで加圧しながら高周波(1~200MHz)で発振する電位差を印加することで膜材を分子摩擦熱で溶融軟化状態とすることで融合し、その状態で冷却固化して接合体を得る。また、超音波振動子から発生する超音波エネルギー(16~30KHz)の振幅を増幅させ、膜材の境界面に発生する摩擦熱を利用して融合を行う超音波融着法、またはヒーターの電気制御によって、100~700℃に無段階設定された熱風を、ノズルを通じて膜材間に吹き込み、膜材の表面を溶融軟化させ、ノズル通過直後膜材を圧着して融合を行う熱風融着法、膜材の溶融温度以上にヒーター内蔵加熱した金型(こて)を用いて被着体を圧着し融合を行う熱板融着法などによって接合可能である。これらの融着接合方法において、ラジカル発生層の存在が融着接合の阻害となって融着接合部の耐久強度が得られないことがあるので、ラジカル発生層を付帯する態様においては、グラインダーなどによるラジカル発生層の切削、研削除去を行うことが好ましい。
次ぎに実施例、比較例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの例の範囲に限定されるものではない。以下、実施例1~8を参考例1~8に読み替えるものとする。下記実施例及び比較例において、帯電防止性抗菌防黴膜材の効果は以下の測定方法によって評価した。
(1)表面抵抗率測定(JIS K7194準拠)
23℃、相対湿度50%RHで膜材片を24時間静置後、下記の抵抗率計(JIS K7194準拠)を用い表面抵抗率を3回測定し、その平均値を表面抵抗率とした。帯電防止性の基準は表面抵抗率109Ω/□以下とし、109Ω/□以下であれば、アレルゲン性(黴、ダニダスト、花粉)物質の静電吸着が抑止可能、アレルゲン性物質を寄せ付け難いものとした。
1)高抵抗・抵抗率計
株式会社三菱化学アナリテック製「ハイレスタUP MCP-HT800(レンジ103~1014Ω)
2)低抵抗・抵抗率計
株式会社三菱化学アナリテック製「ロレスタGX MCP-T700(レンジ10-4~107Ω)」
(2)抗菌性(JIS Z2801:2010年準拠)
シート状物試験片(ラジカル発生層のある試験片はラジカル発生層)の表面に菌液を滴下して植菌し(植菌数10)、試験片が菌液に接するように、菌液と試験片シート状物を密着させ、35℃、相対湿度90%以上の環境下、ブラックライト(ピーク365nm)照射(ラジカル発生層形成のある試験片のみ:照射距離2.5cm)条件下で24時間培養した。培養後、試験片シートを洗い流し1cmあたりの生菌数を測定し、抗菌活性値(対象区における菌数対数値から実施例または比較例の試験片シート状物における菌数対数値を差し引いた値)を算出した。
また実施例のシート状物試験片にブラックライトの照射、または蛍光灯の照射を行わず、ブラックライトもしくは蛍光灯の有無による抗菌効果の対比試験を行った結果を参考例の扱いとした。
表中の数値は試験片1cm当たりの生菌数であり、「ND」は生菌の不検出(Not Detected)とする。菌液調整溶液は1/200NB培地を用いた。使用した菌種を以下に示す。
黄色ぶどう球菌「Staphylococcus aureus subsp. aureus 12732」
大腸菌「Escherichia coli NBRC 3972」
※ブラックライト 機種SL-B01A5(オーム電機株式会社)実施例9~12
W55mm×H160mm×D25mm
※直管蛍光灯 4W(FL4D)×2本(パナソニック株式会社)実施例13~16
(3)防黴性(JIS Z2911培養試験)
幅3cm×長さ3cmのシート状物(ラジカル発生層のある試験片はラジカル発生層)に、下記試験用黴の胞子を接種し、ポテト・デキストロース寒天培地上に置き、ブラックライト(ピーク365nm)照射、または蛍光灯照射(ラジカル発生層形成のある試験片のみ:照射距離2.5cm)条件下、28℃×7日間、及び14日間、黴の発生状況を観察し、以下の判定基準で評価した。
また実施例のシート状物試験片にブラックライトの照射、または蛍光灯の照射を行わず、ブラックライトもしくは蛍光灯の有無による防黴効果の対比試験を行った結果を参考例の扱いとした。
1:接種部分に菌糸の発育が認められない
2:接種部分に認められる菌糸の発育部分の面積が全面積の1/3を超えない
3:接種部分に認められる菌糸の発育部分の面積が全面積の1/3を超える
〈試験用黴〉(A)+(B)+(C)の混合黴
(A)Aspergillus niger NBRC 105649(黒黴)
(B)Penicillium citrinum NBRC 6352(青黴)
(C)Cladosporium cladosporioides NBRC 6348(クロカワ黴)
※ブラックライト 機種SL-B01A5(オーム電機株式会社)実施例9~12
W55mm×H160mm×D25mm
※直管蛍光灯 4W(FL4D)×2本(パナソニック株式会社)実施例13~16
(4)抗ウイルス性(ISO 21720)
※プラスチック製品向け抗菌試験方法:ISO 22196(JIS Z2801)準拠
試験方法:一般財団法人カケンテストセンター法
5cm×5cmの試験片(ラジカル発生層のある試験片はラジカル発生層)に0.4mlのネコカリシウイルス(feline calicivirus)液を滴下し、4cm×4cmのフィルムで被覆し、25℃×24Hr静置(ブラックライト:ピーク365nm照射、または蛍光灯照射(ラジカル発生層形成のある試験片のみ:照射距離2.5cm条件下)した後、抗ウイルス活性値を測定。
抗ウイルス活性値は、抗ウイルス未加工の試験片の24時間静置後のウイルス感染価(PFU/cm)の常用対数の平均値から、抗ウイルス加工品の24時間静置後のウイルス感染価(PFU/cm)の常用対数の平均値を差し引いた値で、抗ウイルス活性値2.0以上(ウイルスの減少率1/100以上、抗ウイルス活性値3.0以上はウイルスの減少率1/1000)を効果ありと判断する。
また実施例のシート状物試験片にブラックライトの照射、または蛍光灯の照射を行わず、ブラックライトもしくは蛍光灯の有無による抗ウイルス性の効果の対比試験を行った結果を参考例とした。
(5)ブロッキング抑止効果(積重法)
10cm×10cmサイズの正方形試料2枚を位置ズレのないよう(一方の試料の表面に、もう一方の試料の裏面が重なる状態)に重ね、2枚のガラス板(10cm×10cmサイズ×5mm厚)で挟み、5kg荷重×35℃×240時間静置後、取り出した積重試料の一角を2cm(対角を結ぶ線上の距離)剥がしてスタンドにクリップ止めで固定し、もう一方の一角2cm(対角を結ぶ線上の距離)部を重り(100g)を装備したクリップで掴み、重りから手を離した瞬間から2枚の試料が分離するまでの時間(荷重した試料が落下するまでの時間)を計測した。この試験試料の密着面積は92cmである。
※シート巻回体を横に倒して長期間床置した状態を想定した試験
1(極めて良好):分離して即時落下
2(良好):3秒以内
3(やや不良):3秒超10秒以内
4(不良):10秒を超えても分離しない
5(劣悪):癒着して樹脂層が剥がれる
[実施例1]
ポリエステル繊維平織基布(経糸1111dtexマルチフィラメント糸条:糸密度22本/2.54cm×緯糸1111dtexマルチフィラメント糸条:糸密度24本/2.54cm:空隙率21%:質量165g/m)を基材として、その両面に下記〔配合1〕軟質塩化ビニル樹脂組成物からなる厚さ0.2mmのカレンダー成型フィルムを表層、及び裏層として熱圧着ブリッジ溶融ラミネートにより「表フィルム層/織物/裏フィルム層」とする、厚さ0.75mm、質量785g/mのターポリン(1)を得た。
〔配合1〕軟質塩化ビニル樹脂組成物
塩化ビニル樹脂(重合度1300) 100質量部
液状エステル化合物(1) 30質量部
※nオクタノールにエチレンオキシドを付加したアルコールとアジピン酸との反応によ
るアジピン酸ジエステル:(エーテル結合2個〔化1〕に相当:分子量490の可塑剤)
4-シクロヘキセン-1,2-ジカルボン酸ビス(2-エチルヘキシル)30質量部
※分子量394の可塑剤
エポキシ化大豆油(安定剤) 5質量部
バリウム/亜鉛複合安定剤 2質量部
三酸化アンチモン(難燃剤) 10質量部
ルチル型酸化チタン(白顔料) 5質量部
ベンゾトリアゾール骨格化合物(紫外線吸収剤) 0.3質量部
1-エチル-3-メチルイミダゾリウム/ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(〔CF3SO22-):イオン液体化合物(1) 3質量部
※イオン液体化合物(1)と液状エステル化合物(1)との併用質量比は1:10、イオン液体化合物(1)と可塑剤との併用質量比は1:20
[実施例2]
実施例1のターポリン(1)において〔配合1〕の液状エステル化合物(1)30質量部を、n-オクタノールにエチレンオキシドを付加したアルコールと無水フタル酸の反応によるフタル酸ジエステル:液状エステル化合物(2):(エーテル結合2個〔化1〕に相当:分子量510の可塑剤)、30質量部に置換えた〔配合2〕とした以外は実施例1と同様にして厚さ0.75mm、質量785g/mのターポリン(2)を得た。
[実施例3]
実施例1のターポリン(1)において〔配合1〕の液状エステル化合物(1)30質量部を、nオクタノールにプロピレンオキシドを付加したアルコールとセバシン酸との反応によるセバシン酸ジエステル:液状エステル化合物(3):(エーテル結合2個〔化1〕に相当:分子量574の可塑剤)、30質量部に置換えた〔配合3〕とした以外は実施例1と同様にして厚さ0.75mm、質量785g/mのターポリン(3)を得た。
[実施例4]
実施例1のターポリン(1)において〔配合1〕の液状エステル化合物(1)30質量部を、テトラエチレングリコールのオクチル酸エステル:液状エステル化合物(4):(エーテル結合3個〔化2〕に相当:分子量478の可塑剤)、30質量部に置換えた〔配合4〕とした以外は実施例1と同様にして厚さ0.75mm、質量785g/mのターポリン(4)を得た。
[実施例5]
実施例1のターポリン(1)において〔配合1〕の1-エチル-3-メチルイミダゾリウム/ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド:イオン液体化合物(1)3質量部を、1-エチル-3-メチルイミダゾリウム/テトラフルオロボレート(BF4 -):イオン液体化合物(2)3質量部に置換えた〔配合5〕とした以外は実施例1と同様にして厚さ0.75mm、質量785g/mのターポリン(5)を得た。
[実施例6]
実施例1のターポリン(1)において〔配合q〕の1-エチル-3-メチルイミダゾリウム/ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド:イオン液体化合物(1)3質量部を、1-ブチル-3-メチルピリジニウム/ビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド(〔CF3SO22-):イオン液体化合物(3)3質量部に置換えた〔配合6〕とした以外は実施例1と同様にして厚さ0.75mm、質量785g/mのターポリン(6)を得た。
[実施例7]
実施例1のターポリン(1)において〔配合1〕の1-エチル-3-メチルイミダゾリウム/ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド:イオン液体化合物(1)3質量部を、1-ブチル-3-メチルピリジニウム/トリフルオロメタンスルホネート(CF3SO -):イオン液体化合物(4)3質量部に置換えた〔配合7〕とした以外は実施例1と同様にして厚さ0.75mm、質量785g/mのターポリン(7)を得た。
[実施例8]
実施例1のターポリン(1)において〔配合1〕の1-エチル-3-メチルイミダゾリウム/ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド:イオン液体化合物(1)3質量部を、N,N,N-トリメチル-N-ブチルアンモニウム/クロライド(Cl-):イオン液体化合物(5)3質量部に置換えた〔配合8〕とした以外は実施例1と同様にして厚さ0.75mm、質量785g/mのターポリン(8)を得た。
[実施例9-12]
実施例1のターポリン(1)、実施例2のターポリン(2)、実施例5のターポリン(5)、実施例6のターポリン(6)、各々のターポリンの表面上に、下記〔配合9〕の塗工液を用い、100メッシュのグラビアロール塗工を行い、120℃の熱風炉で2分間加熱乾燥してゾルゲル硬化を完結させ、紫外線(200nm~399nm)励起型の光触媒性金属酸化物粒子を担持するラジカル発生層(1)を付帯する、質量787g/mのターポリン(9-12)を得た。
〔配合9〕ラジカル発生層用溶液
エチルシリケート(Si(OC):SiO換算40質量%)5質量%、及び
[Si(OC)12]のテトラエトキシシラン5量体が95質量%の混合体
25質量部
加水分解触媒:2%塩酸 1質量部
光触媒性酸化チタンゾル(1次粒子径5nm:紫外線励起型) 5質量部
水(50質量%)/エタノール(50質量%) 100質量部
[実施例13-16]
実施例3のターポリン(3)、実施例4のターポリン(4)、実施例7のターポリン(7)、実施例8のターポリン(8)、各々のターポリンの表面上に、下記〔配合10〕の塗工液を用い、100メッシュのグラビアロール塗工を行い、120℃の熱風炉で2分間加熱乾燥してゾルゲル硬化を完結させ、可視光線(400nm~780nm)励起型の光触媒性金属酸化物粒子を担持するラジカル発生層(2)を付帯する、質量787g/mのターポリン(13-16)を得た。
〔配合10〕ラジカル発生層用溶液
エチルシリケート(Si(OC):SiO換算40質量%)5質量%、及び
[Si(OC)12]のテトラエトキシシラン5量体が95質量%の混合体
25質量部
加水分解触媒:2%塩酸 1質量部
光触媒性酸化タングステンゾル(1次粒子径5nm:Si/N共ドープ:
Feイオン助触媒の可視光線励起型) 5質量部
水(50質量%)/エタノール(50質量%) 100質量部
[実施例17]
〔配合1〕軟質塩化ビニル樹脂組成物からなる厚さ0.2mm、質量310g/mのカレンダー成型フィルム(1)を得た。
[実施例18]
〔配合2〕軟質塩化ビニル樹脂組成物からなる厚さ0.2mm、質量310g/mのカレンダー成型フィルム(2)を得た。
[実施例19]
〔配合3〕軟質塩化ビニル樹脂組成物からなる厚さ0.2mm、質量310g/mのカレンダー成型フィルム(3)を得た。
[実施例20]
〔配合4〕軟質塩化ビニル樹脂組成物からなる厚さ0.2mm、質量310g/mのカレンダー成型フィルム(4)を得た。
[実施例21]
〔配合5〕軟質塩化ビニル樹脂組成物からなる厚さ0.2mm、質量310g/mのカレンダー成型フィルム(5)を得た。
[実施例22]
〔配合6〕軟質塩化ビニル樹脂組成物からなる厚さ0.2mm、質量310g/mのカレンダー成型フィルム(6)を得た。
[実施例23]
〔配合7〕軟質塩化ビニル樹脂組成物からなる厚さ0.2mm、質量310g/mのカレンダー成型フィルム(7)を得た。
[実施例24]
〔配合8〕軟質塩化ビニル樹脂組成物からなる厚さ0.2mm、質量310g/mのカレンダー成型フィルム(8)を得た。
[実施例25-28]
実施例17のフィルム(1)、実施例18のフィルム(2)、実施例21のフィルム(5)、実施例22のフィルム(6)、各々のフィルムの表面上に、〔配合9〕の塗工液を用い、100メッシュのグラビアロール塗工を行い、120℃の熱風炉で2分間加熱乾燥してゾルゲル硬化を完結させ、紫外線(200nm~399nm)励起型の光触媒性金属酸化物粒子を担持するラジカル発生層(1)を付帯する、質量312g/mのフィルム(9-12)を得た。
[実施例29-32]
実施例19のフィルム(3)、実施例20のフィルム(4)、実施例23のフィルム(7)、実施例24のフィルム(8)、各々のフィルムの表面上に、〔配合10〕の塗工液を用い、100メッシュのグラビアロール塗工を行い、120℃の熱風炉で2分間加熱乾燥してゾルゲル硬化を完結させ、可視光線(400nm~780nm)励起型の光触媒性金属酸化物粒子を担持するラジカル発生層(2)を付帯する、質量312g/mのフィルム(13-16)を得た。
[実施例1~8の効果]
イオン液体化合物、及び分子量390以上の可塑剤を併用質量比1:20で含有する軟質塩化ビニル樹脂組成物からなるターポリン1~8は、何れも表面抵抗率10Ω/□程度か、それよりも優れた帯電防止性を有することで、黴、ダニダスト(死骸、糞塵)、花粉などのアレルゲン物質を静電吸着する心配のないもので、さらに抗菌性・防黴性・抗ウイルス性を有し、しかもターポリン同士のブロッキングの心配のない使い勝手のよい態様であった。イオン液体化合物の有機系カチオンが菌・黴の細胞膜のリン脂質のアニオン部位に引き寄せられた後、イオン液体化合物の有機系カチオンのアルキル鎖が細胞膜のリン脂質の疎水部と疎水性相互作用することによって膜に入り込み、カチオン部が細胞膜に蓄積することで菌・黴の細胞膜を破壊し、死滅させた。ウイルスに対しては核酸のDNA、またはRNAの塩基にイオン液体化合物(カチオン、またはアニオン)が配位して、DNA、RNAの複製を阻害する作用でウイルスの増殖を抑制した。
[実施例9~16の効果]
ターポリン1,2,5,6に紫外線励起型のラジカル発生層(1)を付帯するターポリン9~12は、ブラックライト(紫外線)照射によって、照射30分経過後から抗菌性・防黴性・抗ウイルス性の効果を即効的に発現するなど、ターポリン1~8よりも短時間で抗菌性・防黴性・抗ウイルス性を発現し、しかもこれらの効果をさらに増強した。またターポリン3,4,7,8に可視光線励起型のラジカル発生層(2)を付帯するターポリン13~16は、可視光照射によって、照射30分経過後から抗菌性・防黴性・抗ウイルス性の効果を即効的に発現するなど、ターポリン1~8よりも短時間で抗菌性・防黴性・抗ウイルス性を発現し、しかもこれらの効果をさらに増強した。ラジカル発生層は紫外線励起、または可視光線励起によって、菌・黴の細胞膜へのラジカル酸化攻撃を行って細胞膜を破壊し死滅させ、菌・黴の増殖を抑止した。この作用はイオン液体化合物の作用(実施例1~8:前述の菌・黴の細胞膜を破壊、ウイルスのDNA、RNAの複製を阻害)と相乗的となった。ウイルスに対しては核酸のDNA、またはRNAの二重螺旋をラジカル酸化攻撃して破壊する作用でDNA、RNAの複製を阻害してウイルスの増殖を抑制した。この作用はイオン液体化合物の作用(実施例1~8:前述の菌・黴の細胞膜を破壊、ウイルスのDNA、RNAの複製を阻害)と相乗的となった。そしてターポリン9~16は、ラジカル発生層(1),(2)に含むゾルゲル縮合体の存在によって、ターポリン同士のブロッキング性がターポリン1~8よりも格段優れたものとなった。紫外線励起型、または可視光線励起型のラジカル発生層を片面に付帯するターポリン9~16は、紫外線及び可視光線の照射の無い環境下における抗菌性・防黴性・抗ウイルス性などの性能は、各々の基材であるターポリン1~8と同等で、夜間、暗闇でも抗菌性・防黴性・抗ウイルス性などの効果発現可能なものであった。
[実施例17~32の効果]
カレンダー成型フィルム1~8は、各々ターポリン1~8で用いたフィルムと同一、カレンダー成型フィルム9~16は、各々ターポリン9~16で用いたフィルムと同一(紫外線励起型、または可視光線励起型のラジカル活性層付帯)であるため、これらのフィルムの帯電防止効果、抗菌性・防黴性・抗ウイルス性、及びブロッキング防止効果などは、各々ターポリン1~16と同機構、同等性能である。カレンダー成型フィルム1~16は、ウイルス感染に対する防御空間構築用、間仕切り構築用などに用いることができ、特に〔配合1〕の軟質塩化ビニル樹脂組成物から、三酸化アンチモン(難燃剤)10質量部、及びルチル型酸化チタン(白顔料)5質量部を省略した組成物からカレンダー成型された透明フィルムは、ウイルス感染に対する、パーソナル空間構築用、対人カウンターの間仕切り構築用、フェイスガード(シールド)などの用途に適している。




[比較例1]
実施例1のターポリン(1)において、軟質塩化ビニル樹脂組成物(配合1)の液状エステル化合物(1)30質量部を、4-シクロヘキセン-1,2-ジカルボン酸ビス(2-エチルヘキシル)30質量部に置換し、軟質塩化ビニル樹脂組成物中の可塑剤を4-シクロヘキセン-1,2-ジカルボン酸ビス(2-エチルヘキシル)60質量部とし、分子中にエーテル結合を有する可塑剤を含有しないこと以外は実施例1と同様として、質量785g/mのターポリン(17)を得た。得られたターポリンの帯電防止性は実施例1のターポリン(1)よりも劣る7.3×1010Ω/□であったが、抗菌性・防黴性は同等であった。
[比較例2]
実施例1のターポリン(1)において、軟質塩化ビニル樹脂組成物(配合1)のイオン液体化合物(1)、3質量部を省略した以外は実施例1と同様として質量785g/mのターポリン(18)を得た。得られたターポリンの帯電防止性は実施例1のターポリン(1)よりも劣る8.5×1011Ω/□で、抗菌性・防黴性も劣るものであった。
[比較例3]
実施例1のターポリン(1)において、軟質塩化ビニル樹脂組成物(配合1)のイオン液体化合物(1)、3質量部を18質量部に増量した以外は実施例1と同様として質量785g/mのターポリン(19)を得た。得られたターポリンの帯電防止性は実施例1のターポリン(1)よりもやや優れた2.2×10Ω/□で、抗菌性・防黴性もやや優れていたが、イオン液体化合物(1)のブリードが顕著となり、ブロッキングを引き起こしていた。
[比較例4]
実施例1のターポリン(1)において、軟質塩化ビニル樹脂組成物(配合1)の4-シクロヘキセン-1,2-ジカルボン酸ビス(2-エチルヘキシル)30質量部を、フタル酸ジブチル(分子量278)30質量部に変更し、また液状エステル化合物(1)30質量部を、nブタノールにエチレンオキシドを付加したアルコールとアジピン酸との反応によるアジピン酸ジエステル:(エーテル結合2個〔化1〕に相当:分子量378の可塑剤)である液状エステル化合物(5)30質量部に変更した以外は実施例1と同様として質量785g/mのターポリン(20)を得た。得られたターポリンの帯電防止性は実施例1のターポリン(1)と同等の6.8×10Ω/□で、抗菌性・防黴性・抗ウイルス性も同等であったが、経時的に可塑剤(フタル酸ジブチル)、及び液状エステル化合物(5)のブリードが顕著となり、ブロッキングを引き起こしていた。
上記、実施例、及び比較例から明らかな様に、本発明によれば、帯電防止性が安定持続的に発揮され、アレルゲン性(黴、ダニダスト、花粉)物質の静電吸着が抑止可能、かつ抗菌防黴性、抗ウイルス性、抗アレルゲン性(黴、ダニダスト、花粉)を兼備する軟質塩化ビニル樹脂製の膜材で、ブリードによる汚れ、膜材同士が癒着するブロッキング問題を生じることのない膜材が得られるので、これらの膜材は、フィルム、シート、テープの形態、織物、ターポリン、メッシュシート、合成皮革、帆布などの形態で、これらのパーツを熱融着法で縫製し、天井膜、空間仕切り、巻上昇降式シートシャッター、クリーンルームカーテン、壁紙、敷物、カバー、ブラインド、防護衣、フェイスガード、など加工されて、工場、オフィス、学校、商業施設、病院、介護施設、式場、ごみ集積場、公衆トイレ、動物園などに広く使用される。特にターポリン、帆布などは、医療検査用パーティション、空気注入式仮設膜構造による医療検査用陰圧テントシェルターに適して用いることができ、(透明)フィルムはウイルス感染に対する、パーソナル空間構築用、対人カウンターの間仕切り構築用、フェイスガード(シールド)などの用途に適している。
※本発明において、数多くある菌種、黴種、ウイルス種のうちの代表的一部に対しての有効性を確認したことでの、抗菌防黴効果、抗ウイルス効果の応用の可能性を提案するのもで、未知を含めたあらゆる菌種、黴種、ウイルス種に対する有効性を示唆するものではない。

Claims (3)

  1. 少なくともイオン液体化合物、及び分子量390以上、574以下の可塑剤を含有する軟質塩化ビニル樹脂シートであって、この軟質塩化ビニル樹脂シートの一面上に、ゾルゲル縮合体を含むラジカル発生層が設けられていて、前記軟質塩化ビニル樹脂シートに含む前記可塑剤量は、塩化ビニル系樹脂100質量部に対し35~90質量部、かつ、前記イオン液体化合物、及び前記可塑剤との併用質量比が、1:100~1:5であって、前記イオン液体化合物が、有機系カチオンと、無機系アニオン、及び/または有機系アニオンとの対イオンで形成され、前記有機系カチオンが、 ~C 12 直鎖アルキル基、または分岐アルキル基を有するもので、イミダゾリウム系、イミダゾリニウム系、ピリジニウム系、ピラゾリウム系、ピロリジニウム系、ピペリジニウム系、アンモニウム系、ホスホニウム系、スルホニウム系、から選ばれた1種以上、かつ前記アニオンが、BF4 -、PF6 -、TaF6 -、NbF6 -、SiF6 -、AlF4 -、AlCl4 -、NO2 -、NO3 -、F-、Cl-、Br-、I-、CN-、AsF6 -、SbF6 -、NbF6 -、TaF6 -、CF3SO2 -、(CF3SO22-、p-CH3PhSO3 -、CH3CO2 -、CH3SO3 -、CF3SO3 -、(CF3SO23-、C37CO2 -、C49SO3 -、(C25SO22-、(CF3SO2)(CF3CO)N-、(CN)2-から選ばれた1種以上、であり、さらに前記ラジカル発生層が、紫外線(200nm~399nm)励起または可視光線(400nm~780nm)励起が可能な、酸化チタン、過酸化チタン、酸化亜鉛、酸化錫、チタン酸ストロンチウム、酸化タングステン、酸化ビスマス、及び酸化鉄、から選ばれた1種以上の光触媒性金属酸化物であり、かつ、前記ゾルゲル縮合体が、シラノール基含有有機シラン化合物のゾルゲル縮合、またはチタノール基含有有機チタン化合物のゾルゲル縮合によって形成され、前記光触媒性金属酸化物を担持していることを特徴とする帯電防止性抗菌防黴膜材。
  2. 前記可塑剤が、〔化1〕、〔化2〕から選ばれた1種以上の液状エステル化合物(アルキル鎖中に1個以上のエーテル結合を有する分子量390以上の可塑剤)を30質量%以上含んでいる請求項1に記載の帯電防止性抗菌防黴膜材。
    〔化1〕
    R(AO)OOC-X-COO(AO)
    (式中、Xは:C、C、C10、C~C16、Rは:C3~15の直鎖または分岐鎖のアルキル基(Rは互いに同一または異なる)、Aは:C2~4のアルキレン基、mとnは1~10の整数(互いに同一または異なる)で表される化合物)

    〔化2〕
    CO(OCHCH-RCOOR
    (式中、R及びRは:C3~15の直鎖または分岐鎖のアルキル基、またはアルケニル基、Rは:H、CH、C、nは3~20の整数で表される化合物)
  3. 前記軟質塩化ビニル樹脂シートが織物を芯材として含み、この織物が、1)経糸及び緯糸からなる織物、または2)経糸及び左上バイアス糸/右上バイアス糸からなる三軸織物、または3)経糸、緯糸及び左上バイアス糸/右上バイアス糸からなる四軸織物、の何れかである請求項1または2に記載の帯電防止性抗菌防黴膜材。

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