JP7348416B1 - 水性ニス組成物及び積層体 - Google Patents
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Abstract
Description
本発明は、ベルトコンベヤー用潤滑剤に対する耐性に優れるニス層が得られる水性ニス組成物、及び前記ニス層を有する積層体を提供することを課題とする。
[1] 水性バインダー樹脂と、撥水性シリコーン又はパラフィンワックスと、を含有する水性ニス組成物であって、前記水性ニス組成物を、フレキソ印刷によって、印刷対象物に乾燥後の塗工量が1g/m2となるように印刷して形成される乾燥塗膜の表面の水接触角が90°以上である、水性ニス組成物。
[2] 前記撥水性シリコーンの不揮発分の含有量が、前記水性ニス組成物の不揮発分の総質量に対して0.1質量%以上である、[1]に記載の水性ニス組成物。
[3] 前記パラフィンワックスの不揮発分の含有量が、前記水性ニス組成物の不揮発分の総質量に対して3質量%以上である、[1]又は[2]に記載の水性ニス組成物。
[4] 前記乾燥塗膜の表面の水接触角が90°以上110°以下である、[1]に記載の水性ニス組成物。
[5] 前記撥水性シリコーンの不揮発分の含有量が、前記水性ニス組成物の不揮発分の総質量に対して0.1~6質量%である、[4]に記載の水性ニス組成物。
[6] 前記パラフィンワックスの不揮発分の含有量が、前記水性ニス組成物の不揮発分の総質量に対して3~30質量%である、[4]又は[5]に記載の水性ニス組成物。
[7] 硬化剤とともに使用されるための[1]~[6]のいずれかに記載の水性ニス組成物。
[8] 前記水性バインダー樹脂が、ガラス転移温度-20~80℃であるアクリル樹脂エマルジョンを含む、[1]~[7]のいずれかに記載の水性ニス組成物。
[9] 前記水性バインダー樹脂が、重量平均分子量5,000~1,150,000であるアクリル樹脂エマルジョンを含む、[1]~[8]に記載の水性ニス組成物。
[10] 前記パラフィンワックスの融点が、30~130℃である、[1]~[9]のいずれかに記載の水性ニス組成物。
[11] プラスチックフィルムと、前記プラスチックフィルムの一方の面上に、[1]~[10]のいずれかに記載の水性ニス組成物を用いて形成された印刷層と、を有する、積層体。
[12] プラスチックフィルムと、前記プラスチックフィルムの一方の面上に、着色顔料を含む水性インキ組成物を用いて形成された第一の印刷層と、前記第一の印刷層の前記プラスチックフィルムとは反対の面上に、[1]~[10]のいずれかに記載の水性ニス組成物を用いて形成された第二の印刷層と、を有する、積層体。
本発明において、水性ニス組成物における「水性」とは、媒体として水を含むことを意味する。
「水性アクリル樹脂」とは、「水溶性アクリル樹脂」及び「水分散性アクリル樹脂(アクリル樹脂エマルジョン、アクリル樹脂ディスパージョン)」の総称である。「水性アクリルウレタン樹脂」、「水性ウレタン樹脂」等についても同様である。
「不揮発分」とは、水性ニス組成物に含まれる成分のうち、水や有機溶剤等の揮発する媒体を除いた成分を指し、最終的に印刷層を形成することになる成分であり、具体的にはJIS K 5601-1-2:2008に準拠して測定したものである。
本明細書において、「(メタ)アクリレート」とは、「アクリレート」及び「メタクリレート」の総称である。「(メタ)アクリル酸」とは、「アクリル酸」及び「メタクリル酸」の総称である。「(メタ)アクリロイルオキシ基」とは、「アクリロイルオキシ基」及び「メタクリロイルオキシ基」の総称である。
水性バインダー樹脂の重量平均分子量は、標準ポリスチレン分子量換算による重量平均分子量であり、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)により測定される。
水性バインダー樹脂のガラス転移温度は、JIS K 7121:2012に準拠し、以下のようにして測定される。示差走査熱量計を用い、水性バインダー樹脂10mgを-100℃から160℃まで、20℃/分の条件で昇温させて得られる曲線(DSC曲線)におけるベースラインと吸熱カーブの接線との交点からガラス転移温度を求める。
水性バインダー樹脂の酸価は、試料不揮発分1g当たりのカルボキシ基等の酸基を中和するのに必要な水酸化カリウムの量をミリグラム数で表したものであり、JIS K 5601-2-1:1999に準拠して測定される。
本発明の一実施形態に係る水性ニス組成物は、以下に示す水性バインダー樹脂(A)と、撥水性シリコーン(B)又はパラフィンワックス(C)と、を含有する。
水性ニス組成物は、本発明の効果を損なわない範囲内であれば、必要に応じて水性バインダー樹脂(A)、撥水性シリコーン(B)、及びパラフィンワックス(C)以外の成分(任意成分)をさらに含有してもよい。例えば、水性ニス組成物は、典型的には、さらに水性媒体(D)を含む。
水接触角が上記下限値以上であると、得られるニス層のベルトコンベヤー用潤滑剤に対する耐性が向上する。水接触角が上記上限値以下であると、ニス層の上に印刷する層の積層性が向上する。積層性とは本実施形態のニス層の上に印刷する層が本実施形態のニス層の上に弾かれずに転移する性能を意味する。前記印刷する層としては、本実施形態の水性ニス組成物又はその他のニス組成物により形成されるニス層(ニス層を積層する場合)、後述のインキ組成物により形成されるインキ層が例として挙げられる。以下、「隣接する層」とは、本実施形態のニス層の上に印刷する層を意味する。
水接触角は、水性ニス組成物の組成を調整することにより、調節できる。特に、撥水性シリコーン(B)、パラフィンワックス(C)の種類及び含有量を調整することにより調節できる。
水性バインダー樹脂(A)としては、水性アクリル樹脂、水性アクリルウレタン樹脂、水性ウレタン樹脂、水性ポリエステル樹脂、水性ポリアミド樹脂、水性塩酢ビ共重合樹脂、水性セルロース樹脂、水性エポキシ樹脂、水性オレフィン樹脂等が挙げられる。プラスチックフィルムに対する密着性がより向上する観点から、水性アクリル樹脂、水性アクリルウレタン樹脂、水性ウレタン樹脂が好ましく、水性アクリル樹脂、水性アクリルウレタン樹脂がより好ましく、アクリル樹脂エマルジョン、アクリルウレタン樹脂エマルジョンがさらに好ましく、アクリル樹脂エマルジョンが特に好ましい。ニス層を二軸延伸ポリプロピレン(OPP)製のフィルム(以下、「OPPフィルム」ともいう。)上に形成する場合のOPPフィルムに対する密着性に特に優れる観点から、水性バインダー樹脂(A)はアクリル樹脂エマルジョンを含むことが好ましい。
これらの水性バインダー樹脂(A)は1種を単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。
水性アクリル樹脂は、(メタ)アクリレート単位を含む樹脂である。
水性アクリル樹脂としては、例えば(メタ)アクリレートの単独重合体、2種以上の(メタ)アクリレートの共重合体、(メタ)アクリレートと(メタ)アクリレート以外の単量体との共重合体が挙げられる。
水性アクリル樹脂を構成する全ての単量体単位の総質量に対する(メタ)アクリレート単位の割合は、10~100質量%が好ましく、20~100質量%がより好ましい。
これらの(メタ)アクリレートは1種を単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。
これらの単量体は1種を単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。
特に、アクリルエマルジョン樹脂のガラス転移温度は、-20~120℃が好ましく、-20~100℃がより好ましく、-20~80℃がさらに好ましく、0~80℃が特に好ましく、10~80℃が最も好ましい。
水性アクリル樹脂の酸価が50mgKOH/g以上の場合、水性アクリル樹脂の重量平均分子量は、100,000超500,000以下が好ましく、130,000~400,000がより好ましく、150,000~350,000がさらに好ましい。
重合方法としては特に限定されないが、例えば公知のラジカル重合開始剤の存在下で、単量体成分を溶液重合法、塊状重合法、乳化重合法等で重合する方法が挙げられる。
水性アクリル樹脂は自己架橋型であってもよい。
これら水性アクリル樹脂は1種を単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。
水性アクリルウレタン樹脂としては、例えば、多価イソシアネート化合物とポリオール化合物とヒドロキシ基含有(メタ)アクリレートとの反応生成物、又は多価イソシアネート化合物とヒドロキシ基含有(メタ)アクリレートとの反応生成物が挙げられる。
これらの多価イソシアネート化合物は1種を単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。
これらのポリオール化合物は1種を単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。
また、水性アクリルウレタン樹脂として、例えばコア部にアクリル樹脂を有し、シェル部にウレタン樹脂を有するコアシェル型の樹脂を用いてもよい。
水性アクリルウレタン樹脂は1種を単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。
水性ウレタン樹脂としては、例えば多価イソシアネート化合物とポリオール化合物との反応生成物が挙げられる。多価イソシアネート化合物は、1分子中に少なくとも2つのイソシアネート基を有する有機化合物である。ポリオール化合物は、1分子中に少なくとも2つの水酸基を有する有機化合物である。
多価イソシアネート化合物としては、水性アクリルウレタン樹脂の説明において先に例示した多価イソシアネート化合物が挙げられる。
ポリオール化合物としては、水性アクリルウレタン樹脂の説明において先に例示したポリオール化合物が挙げられる。
また、多価イソシアネート化合物とポリオール化合物との反応生成物に対して、加水分解性ケイ素基含有化合物を反応させて、シラノール基を導入してもよい。本明細書において、シラノール基を導入した水性ウレタン樹脂を「シラノール基含有水性ウレタン樹脂」ともいう。
加水分解性ケイ素基含有化合物は、加水分解性ケイ素基を含有する化合物であり、加水分解性ケイ素基に加えて活性水素基をさらに含有することが好ましい。
加水分解性ケイ素基としては、シラノール縮合触媒の存在下又は非存在下で、加水分解を受けたときに生じる加水分解性基がケイ素基原子に結合している基が挙げられる。加水分解性基としては、例えば水素原子、ハロゲン原子、アルコキシ基、アシルオキシ基、ケトキシメート基、アミノ基、アミド基、アミノオキシ基、メルカプト基、アルケニルオキシ基などが挙げられる。通常、加水分解性基は、1つのケイ素原子に1~3つの範囲で結合している。
活性水素基としては、例えばアミノ基、ヒドロキシ基、メルカプト基などが挙げられる。
水性ウレタン樹脂は1種を単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。
撥水性シリコーン(B)は、得られるニス層のベルトコンベヤー用潤滑剤に対する耐性の向上のために用いられる。
撥水性シリコーン(B)は、シロキサン結合を有する化合物である。
ポリオルガノシロキサンは、一部が有機基で変性されていてもよいし、変性されていなくてもよいが、有機基で変性することで得られるニス層の撥水性が高まるため、好ましい。また、水性媒体(D)への溶解性や分散性が高まるため好ましい。ポリオルガノシロキサンは、反応性であってもよいし、非反応性であってもよいが、後述の硬化剤(E)を併用する際には反応性である方が好ましい。なお、本明細書においては、ポリオルガノシロキサンの一部が有機基で変性したものを特に「変性ポリオルガノシロキサン」ともいう。
撥水性シリコーン(B)が有する有機基は、1種でも、2種以上でもよい。
これらの撥水性シリコーン(B)は1種を単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。
パラフィンワックス(C)は、得られるニス層のベルトコンベヤー用潤滑剤に対する耐性の向上のために用いられる。
パラフィンワックス(C)は、一部が有機基で変性されていてもよい。
パラフィンワックス(C)の平均粒子径は、動的光散乱方式により体積基準の粒子径分布を測定し、得られた粒子径分布より算出される体積基準の累積頻度50%の粒子径(メジアン径:D50)であり、体積平均粒子径ともいう。
これらのパラフィンワックス(C)は1種を単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。
パラフィンワックス(C)としては、市販品を用いてもよい。市販品としては、例えばBYK社製の製品名「AQUACER497」、「AQUACER537」、「AQUACER539」、「AQUACER1039」;日本精蝋株式会社製の製品名「EMUSTAR-0135」、「EMUSTAR-0136」、「EMUSTAR-1155」;中京油脂株式会社製の製品名「ハイドリンL-703-35」、「トラソルPF60」などが挙げられる。
任意成分としては、例えば水性媒体(D)、添加剤等が挙げられる。
水性媒体(D)としては、例えば水;水と有機溶剤との混合溶剤が挙げられる。
混合溶剤における有機溶剤としては、水に可溶であれば特に制限されないが、例えばメタノール、エタノール、プロパノール、n-ブタノール、i-ブタノール等のアルコール系溶剤;アセトン等のケトン系溶剤;プロピレングリコールモノメチルエーテル等のグリコールエーテル系溶剤が挙げられる。これらの有機溶剤は1種を単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。
添加剤としては、例えば、パラフィンワックス(C)以外のワックス(以下、「その他のワックス」ともいう。)、増粘剤、沈降防止剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、レベリング剤、粘弾性調整剤、消泡剤、滑剤、分散剤、安定剤が挙げられる。
これらの添加剤は1種を単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。
なお、視認性を考慮すると、水性ニス組成物は顔料等の着色剤を実質的に含まないことが好ましい。
ここで、「実質的に含まない」とは、意図せずして含有するものを除き、積極的に着色剤を配合しないことを意味する。
これらのその他のワックスは1種を単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。
増粘剤としては、例えばウレタン系増粘剤、ポリアクリル系増粘剤、ポリアマイド系増粘剤、セルロース系増粘剤、ベントナイト等の粘土鉱物等の増粘剤が挙げられる。これらの中でも、ウレタン系増粘剤がより好ましい。
ウレタン系増粘剤はいわゆる会合型の増粘剤であり、水性媒体(D)中において、ウレタン結合同士が会合することにより、効果的に増粘作用を示す。ウレタン系増粘剤(ウレタン会合型増粘剤)としては、例えば、分子中にウレタン結合とポリエーテル鎖を有し、末端に疎水基を有する化合物が挙げられる。市販品のウレタン系増粘剤としては、サンノプコ株式会社製の製品名「SNシックナー612」、「SNシックナー621N」、「SNシックナー625N」、「SNシックナー627N」、「SNシックナー660T」が挙げられる。
これらの増粘剤は1種を単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。
消泡剤としては、シリコーン及び疎水性微粒子の混合物が挙げられる。市販のシリコーン及び疎水性微粒子の混合物としては、BYK社製の製品名「BYK-011」、「BYK-012」、「BYK-014」、「BYK-015」、「BYK-017」、「BYK-018」、「BYK-019」、「BYK-021」、「BYK-022」、「BYK-023」、「BYK-024」、「BYK-025」、「BYK-028」、「BYK-038」、「BYK-039」、「BYK-044」、「BYK-093」、「BYK-094」、「BYK-1610」、「BYK-1611」、「BYK-1615」、「BYK-1617」、「BYK-1640」、「BYK-1650」、「BYK-1710」、「BYK-1711」、「BYK-1719」、「BYK-1723」、「BYK-1724」、「BYK-1730」、「BYK-1740」、「BYK-1770」、「BYK-1780」、「BYK-1781」、「BYK-1785」、「BYK-1786」、「BYK-1798」、サンノプコ社製の製品名「SNデフォーマー121N」、「SNデフォーマー1311」、「SNデフォーマー1312」、「SNデフォーマー1313」、「SNデフォーマー1314」、「SNデフォーマー1315」、「SNデフォーマー1316」、「SNデフォーマー154」、「SNデフォーマー154S」、「SNデフォーマー180」、「SNデフォーマー265」、「SNデフォーマー317」、「SNデフォーマー380」、「SNデフォーマー381」、「SNデフォーマー391」、「SNデフォーマー393」、「SNデフォーマー395」、「SNデフォーマー399」、「SNデフォーマー5016」、「SNデフォーマー5016」、「ノプコDF-122-NS」、「ノプタム3590」、「ノプタム6030PC」、「ノプタム777-F」、「ノプタム8000PC」、「ノプタム8034-F」、「ノプタム8034-LF」などが挙げられる。
これらの消泡剤は1種を単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。
水性バインダー樹脂(A)の不揮発分の含有量は、水性ニス組成物の総質量に対して15~50質量%が好ましく、20~45質量%がより好ましく、23~40質量%がさらに好ましく、23~35質量%が特に好ましい。
水性バインダー樹脂(A)の不揮発分の含有量は、水性ニス組成物の不揮発分の総質量に対して50~99質量%が好ましく、60~99質量%がより好ましく、70~98質量%がさらに好ましく、80~97質量%がさらに好ましい。
水性バインダー樹脂(A)の不揮発分の含有量が、上記下限値以上であると、プラスチックフィルム対する密着性が向上する。
撥水性シリコーン(B)の不揮発分の含有量は、水性ニス組成物の不揮発分の総質量に対して0.1質量%以上が好ましく、0.3質量%以上がより好ましく、0.4質量%以上がさらに好ましく、0.5質量%以上が特に好ましい。撥水性シリコーン(B)の不揮発分の含有量の上記上限値及び上記下限値は任意に組み合わせることができる。撥水性シリコーン(B)の不揮発分の含有量は、水性ニス組成物の不揮発分の総質量に対して6質量%以下が好ましく、5質量%以下がより好ましく、4質量%以下がさらに好ましく、3質量%以下がさらに好ましく、2質量%以下がさらに好ましく、1質量%以下が特に好ましい。撥水性シリコーン(B)の不揮発分の含有量の上記上限値及び上記下限値は任意に組み合わせることができる。
撥水性シリコーン(B)の不揮発分の含有量が上記下限値以上であると、得られるニス層のベルトコンベヤー用潤滑剤に対する耐性が向上する。撥水性シリコーン(B)の不揮発分の含有量が上記上限値以下であると、ニス層の隣接する層に対する積層性が向上する。
パラフィンワックス(C)の不揮発分の含有量は、水性ニス組成物の不揮発分の総質量に対して3質量%以上が好ましく、5質量%以上がより好ましく、7質量%以上がさらに好ましく、10質量%以上が特に好ましい。パラフィンワックス(C)の不揮発分の含有量は、水性ニス組成物の不揮発分の総質量に対して30質量%以下が好ましく、25質量%以下がより好ましく、20質量%以下がさらに好ましく、15質量%以下が特に好ましい。パラフィンワックス(C)の不揮発分の含有量の上記上限値及び上記下限値は任意に組み合わせることができる。
パラフィンワックス(C)の不揮発分の含有量が上記下限値以上であると、得られるニス層のベルトコンベヤー用潤滑剤に対する耐性が向上する。パラフィンワックス(C)の不揮発分の含有量が上記上限値以下であると、ニス層の隣接する層に対する積層性が向上する。
(A)/(B)比が上記下限値以上であると、得られるニス層のベルトコンベヤー用潤滑剤に対する耐性が向上する。(A)/(B)比が上記上限値以下であると、ニス層の隣接する層に対する積層性が向上する。
(A)/(C)比が上記下限値以上であると、得られるニス層のベルトコンベヤー用潤滑剤に対する耐性が向上する。(A)/(C)比が上記上限値以下であると、ニス層の隣接する層に対する積層性が向上する。
なお、有機溶剤の含有量は、水性ニス組成物の総質量に対して0~5質量%が好ましく、0~4質量%がより好ましく、0~3質量%がさらに好ましい。有機溶剤の含有量が5質量%を超えると、フレキソ印刷時に乾燥が早すぎて版からみ等の印刷不良となる傾向にある。
水性媒体(D)以外の任意成分の含有量は、水性ニス組成物の不揮発分の総質量に対して0~15質量%が好ましく、0~10質量%がより好ましい。
水性ニス組成物が任意成分としてその他のワックスを含む場合、その他のワックスの不揮発分の含有量は、水性ニス組成物の不揮発分の総質量に対して0.2~20質量%が好ましく、0.5~15質量%がより好ましく、1~10質量%がさらに好ましい。
水性ニス組成物が任意成分として増粘剤を含む場合、増粘剤の不揮発分の含有量は、水性ニス組成物の不揮発分の総質量に対して0.02~7質量%が好ましく、0.05~4質量%がより好ましく、0.1~2質量%がさらに好ましい。
増粘剤の不揮発分の含有量が、上記下限値以上であると、増粘剤による効果が充分に発現され水性ニス組成物の粘度を所望の値に容易に調整でき、上記上限値以下であると、水性ニス組成物の物性を良好に維持できる。
水性ニス組成物が任意成分として消泡剤を含む場合、消泡剤の不揮発分の含有量は、水性ニス組成物の不揮発分の総質量に対して0.005~4質量%が好ましく、0.01~2質量%がより好ましく、0.05~1質量%がさらに好ましい。
本実施形態の水性ニス組成物は、例えば水性バインダー樹脂(A)、撥水性シリコーン(B)又はパラフィンワックス(C)と、必要に応じて任意成分のうちの1つ以上とを、各成分が所望の含有量となるように混合することで得られる。
各成分の混合方法としては特に限定されず、種々の方法により各成分を混合することができる。
本実施形態の水性ニス組成物は、グラビア印刷又はフレキソ印刷により、プラスチックフィルム等の基材の表面又は基材の表面に形成されたインキ層の表面に印刷する際のニスとして好適である。特に、フレキソ印刷により基材の表面又は基材の表面に形成されたインキ層の表面に印刷する際のニスとして好適である。すなわち、本実施形態の水性ニス組成物は、フレキソ印刷用として好適である。
本実施形態の水性インキ組成物は、後述の硬化剤(E)とともに使用されることが好ましい。
上述したように、本実施形態の水性ニス組成物は、フレキソ印刷によって乾燥後の塗工量が1g/m2となるように印刷して形成される乾燥塗膜の表面の水接触角が90°以上である。水接触角が90°以上であるということは、乾燥塗膜が撥水性に優れることを意味する。乾燥塗膜(ニス層)の撥水性が優れることにより、界面活性剤を含む水溶液、具体的にはベルトコンベヤー用潤滑剤に対する耐性が向上すると考えられる。
硬化剤(E)は、ニス層のベルトコンベヤー用潤滑剤に対する耐性、及びプラスチックフィルムに対する密着性のさらなる向上のために用いられる。加えて、硬化剤(E)を併用することで、ニス層の耐水性が向上する。
これらの硬化剤(E)は1種を単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。
イソシアネート系硬化剤は1種を単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。
これらのブロックイソシアネート系硬化剤は1種を単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。
これらのカルボジイミド系硬化剤は1種を単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。
これらのオキサゾリン系硬化剤は1種を単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。
これらのエポキシ系硬化剤は1種を単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。
これらのアジリジン系硬化剤は1種を単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。
本発明の一実施形態に係るキットは、上述した本実施形態の水性ニス組成物と、上述した硬化剤(E)とを各々独立して含有する。
ここで「独立して」とは、水性ニス組成物と硬化剤(E)とが互いに非接触とされた状態で存在することを意味し、例えばキットは、水性ニス組成物が収容された第1の容器と、硬化剤(E)が収容された第2の容器とを備えている。
他の成分としては、例えば溶剤、安定剤などが挙げられる。
溶剤としては、水性ニス組成物の説明において先に例示した水性媒体(D)が挙げられる。
水性ニス組成物と硬化剤(E)とを混合する際は、水性ニス組成物の不揮発分100質量部に対して、硬化剤(E)の不揮発分が1~15質量部の割合となるように、両者を混合することが好ましく、より好ましくは1.5~10質量部であり、さらに好ましくは2~8質量部であり、特に好ましくは3~7質量部である。硬化剤(E)の割合が、上記下限値以上であると、硬化反応が十分に進行し、上記上限値以下であると、ニス層の耐水性がより向上する。
図1、2に、本発明の一実施形態に係る積層体の一例を示す。なお、図1、2における寸法比は、説明の便宜上、実際のものとは異なったものである。
図1の積層体10は、基材であるプラスチックフィルム11と、プラスチックフィルム11の一方の面上に設けられた印刷層(ニス層)12と、を備える。
図2の積層体20は、基材であるプラスチックフィルム21と、プラスチックフィルム21の一方の面上に設けられた第一の印刷層(インキ層)22と、前記第一の印刷層の前記プラスチックフィルムとは反対の面上に設けられた第二の印刷層(ニス層)23と、を備える。
なお、積層体をプラスチックラベルとして包装容器に装着する場合、プラスチックフィルム11、21が印刷層12及び第二の印刷層23よりも外側、すなわち、印刷層12及び第二の印刷層23が内側(包装容器と接する側)となるように装着することが好ましい。また、プラスチックフィルム11、21の表面に、例えばニス組成物や体質顔料等のマット剤を含む組成物を印刷して、他の印刷層を設けてもよい。ここで、プラスチックフィルム11の表面とは、プラスチックフィルム11の印刷層12が設けられる面とは反対の面を意味する。プラスチックフィルム21の表面とは、プラスチックフィルム21の第一の印刷層22が設けられる面とは反対の面を意味する。また、プラスチックフィルム11の印刷層12が設けられる面をプラスチックフィルム11の裏面とし、プラスチックフィルム21の第一の印刷層22が設けられる面をプラスチックフィルム21の裏面とする。
プラスチックフィルム11、21の種類は、積層体10、20の種類等に応じて適宜選択することが可能であり、特に限定されないが、例えば、積層体10、20を熱収縮性ラベル(シュリンクラベル)として用いる場合には、プラスチックフィルム11、21は熱収縮性フィルム(シュリンクフィルム)が好ましい。積層体10、20をロールラベルとして用いる場合には、プラスチックフィルム11、21はポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、二軸延伸PPフィルムが好ましい。積層体10、20をストレッチラベルとして用いる場合には、プラスチックフィルム11、21はストレッチフィルムが好ましい。これらの中でも、プラスチックフィルム11、21は、熱収縮性フィルム、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、二軸延伸PPフィルムが好ましい。
プラスチックフィルム11、21としては、例えば、二軸延伸PPフィルム及び無延伸PPフィルム等のように、延伸及び無延伸のいずれのプラスチックフィルムも用いることができる。プラスチックフィルム11、21の表面には、コロナ放電処理、プラズマ処理、フレーム処理、溶剤処理等の表面処理が施されていてもよい。
積層体10において、印刷層(ニス層)12は、プラスチックフィルム11の一方の面上に設けられている。積層体20において、第二の印刷層(ニス層)23は、プラスチックフィルム21の一方の面上に設けられた第一の印刷層(インキ層)22の前記プラスチックフィルム21とは反対の面上に設けられている。
印刷層12、第二の印刷層23は、上述した本実施形態の水性ニス組成物又はキットを用いて形成された印刷層であり、保護層の役割を果たす。
印刷層12、第二の印刷層23の厚さは、0.2~3.0μmが好ましく、0.3~2.0μmがより好ましく、0.3~1.5μmがさらに好ましい。
積層体20において、第一の印刷層(インキ層)22は、プラスチックフィルム21の一方の面上に設けられている。
第一の印刷層22は、積層体20に意匠性や機能性等を付与する点でインキ組成物を用いて形成された印刷層である。
第一の印刷層22は、単層構造であってもよいし、積層構造であってもよい。
第一の印刷層22の合計の厚さは、0.2~15μmが好ましく、0.3~10μmがより好ましく、0.3~8μmがさらに好ましい。
水性インキ組成物としては特に限定されず、公知のものを使用できるが、例えば水性バインダー樹脂と、水性媒体と、着色顔料と、必要に応じて他の成分とを含有する組成物などが挙げられる。
水性バインダー樹脂としては、上述した本発明の水性ニス組成物の説明において先に例示した水性バインダー樹脂(A)などが挙げられる。
水性媒体としては、上述した本発明の水性ニス組成物の説明において先に例示した水性媒体(D)などが挙げられる。
着色顔料としては、例えばアゾ系顔料(モノアゾ、縮合アゾ等)、スレン系顔料(アントラキノン系、ペリノン系、ペリレン系、チオインジゴ系等)、フタロシアニン系顔料(フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン等)、キナクリドン系顔料、ジオキサジン系顔料、イソインドリノン系顔料、ピロロピロール系顔料、アニリンブラック、有機蛍光顔料等の有機顔料;天然物(クレー等)、フェロシアン化物(紺青等)、硫化物(硫化亜鉛等)、硫酸塩、酸化物(酸化クロム、亜鉛華、酸化チタン、酸化鉄等)、水酸化物(水酸化アルミニウム等)、ケイ酸塩(群青等)、炭酸塩、炭素(カーボンブラック、グラファイト等)、金属粉(アルミニウム粉、ブロンズ粉、亜鉛粉等)、焼成顔料等の無機顔料などが挙げられる。
他の成分としては、例えばワックス類、分散剤、消泡剤、潤滑剤、滑剤などが挙げられる。
図1の積層体10の製造方法は、プラスチックフィルム11の一方の面上に、本実施形態の水性ニス組成物又はキットを用いて印刷層12を形成する工程を含む。
図2の積層体20の製造方法は、プラスチックフィルム21の一方の面上に、インキ組成物を用いて第一の印刷層22を形成する工程(1)と、前記第一の印刷層22の前記プラスチックフィルム21とは反対の面上に、本実施形態の水性ニス組成物又はキットを用いて第二の印刷層23を形成する工程(2)を含む。
本実施形態のキットを用いて印刷層12を形成する場合、キットに含まれる水性ニス組成物と硬化剤(E)とを混合して混合物を調製し、得られた混合物をプラスチックフィルム11の一方の面上に塗工し、乾燥させて印刷層12を形成すればよい。水性ニス組成物と硬化剤(E)とを混合する際の混合割合は、上述した通りである。
なお、水性ニス組成物又は混合物をプラスチックフィルム11の一方の面上に塗工し、乾燥させて印刷層12を形成した後、さらに水性ニス組成物又は混合物を塗工(重ね塗り)してもよい。
加熱する際の温度は、30~150℃が好ましく、40~100℃がより好ましい。
工程(1)では、例えばプラスチックフィルム21の一方の面上にインキ組成物を塗工し、乾燥させて第一の印刷層22を形成する。工程(2)では、例えば前記第一の印刷層22のプラスチックフィルム21とは反対の面上に本実施形態の水性ニス組成物を塗工し、乾燥させて第二の印刷層23を形成する。積層体10の製造方法と同様に、水性ニス組成物に代えて本実施形態のキットを使用してもよい。
工程(1)は1回でもよいし、2回以上でもよい。すなわち、インキ組成物を重ね塗りしてもよい。
工程(2)は1回でもよいし、2回以上でもよい。すなわち、水性ニス組成物又は混合物を重ね塗りしてもよい。
工程(1)、工程(2)における塗工方法、乾燥方法としては、積層体10の製造方法と同様の方法を適用できる。
積層体10、20は、飲料、惣菜や弁当などの食品、化粧品等の日用品等の包装容器に装着されるプラスチックラベルとして用いることができる。特に、積層体10、20を構成するプラスチックフィルム11、21が熱収縮性フィルムである場合、シュリンクラベルとして好適である。
以上説明した本実施形態の積層体は、プラスチックフィルムの一方の面上に、上述した本発明の水性ニスインキ組成物又はキットを用いて形成されたニス層が形成されているので、ベルトコンベヤー用潤滑剤に対する耐性に優れる。
積層体は、上述した実施形態に限定されない。
例えば、図1に示す積層体10の場合、印刷層12はプラスチックフィルム11の一方の面の全体に設けられているが、印刷層12はプラスチックフィルム11の一方の面の一部に設けられていてもよい。この場合、プラスチックフィルム11の一方の面の印刷層12が設けられていない領域には、他の印刷層が設けられていることが好ましい。他の印刷層は、例えば酸化チタンを含むインキ組成物などが挙げられる。
同様に、図2に示す積層体20の場合、第二の印刷層23は第一の印刷層22の一方の面の全体に設けられているが、第二の印刷層23は第一の印刷層22の一方の面の一部に設けられていてもよい。この場合、第一の印刷層22の一方の面の第二の印刷層23が設けられていない領域には、他の印刷層が設けられていることが好ましい。他の印刷層は、例えば酸化チタンを含むインキ組成物などが挙げられる。
また、図1に示す積層体10の場合、印刷層12のプラスチックフィルム11とは反対の面上に、他の印刷層が設けられていてもよい。他の印刷層は、例えば本実施形態の水性ニス組成物より形成される層などが挙げられる。
同様に、図2に示す積層体20の場合、第二の印刷層23の第一の印刷層22とは反対の面上に、他の印刷層が設けられていてもよい。他の印刷層は、例えば水性ニス組成物より形成される層などが挙げられる。
水性バインダー樹脂(A)として、以下に示す化合物を用いた。
・A-1:アクリル樹脂エマルジョン(重量平均分子量291,000、ガラス転移温度9℃、最低造膜温度<5℃、酸価38mgKOH/g、不揮発分38.5質量%)。
・A-2:アクリル樹脂エマルジョン(重量平均分子量215,000、ガラス転移温度25℃、酸価78mgKOH/g、不揮発分45.5質量%)。
・A-3:アクリル樹脂エマルジョン(重量平均分子量218,000、ガラス転移温度14℃、酸価52mgKOH/g、不揮発分49質量%)。
・A-4:アクリル樹脂エマルジョン(重量平均分子量71,000、ガラス転移温度75℃、酸価82mgKOH/g、不揮発分45質量%)。
・A-5:水性アクリルウレタンエマルジョン樹脂(大成ファインケミカル株式会社製、製品名「WEM-200U」、ガラス転移温度27℃、酸価16mgKOH/g、不揮発分38質量%)。
・A-6:水性ウレタンディスパージョン樹脂(三井化学株式会社性、製品名「WS-5000」、不揮発分30質量%)。
・B-1:シリコーン変性コポリマー(EVONIK社製、製品名「テゴグライド482」、不揮発分65質量%)。
・B-2:アミノ変性ポリジメチルシロキサン(信越化学工業株式会社製、製品名「KF-868」、不揮発分100質量%)。
・C-1:変性パラフィンワックス(日本蜜蝋社製、製品名「EMUSTAR-0135」、融点60℃、不揮発分40質量%)。
・C-2:変性パラフィンワックス(BYK社製、製品名「AQUACER537」、融点110℃、不揮発分30質量%)。
・その他のワックス:ポリエチレンワックス(三井化学株式会社製、商品名「ケミパールW400」、体積平均粒子径4μm、不揮発分40質量%、針入度法による硬度3、環球法による軟化点110℃)。
・増粘剤:ウレタン会合型増粘剤(サンノプコ株式会社製、製品名「SNシックナー612」、不揮発分40質量%)。
・消泡剤:シリコーン及び疎水性微粒子の混合物(BYK社製、製品名「BYK-094」、不揮発分96質量%)。
・D-1:水。
・E-1:カルボジイミド系硬化剤(日清紡ケミカル株式会社製、製品名「カルボジライトE-02」、不揮発分40質量%)。
・E-2:オキサゾリン系硬化剤(株式会社日本触媒製、製品名「エポクロスWS-500」、不揮発分39質量%)。
・E-3:エポキシ系硬化剤(ナガセケムテックス製、製品名「デナコールEX-612」、不揮発分99質量%)。
・E-4: アジリジン系硬化剤(日本触媒製、製品名「ケミタイトPZ-33」不揮発分99質量%)。
・E-5:イソシアネート系硬化剤(旭化成製、製品名「デュラネートWT30-100」、不揮発分100質量%)。
<水接触角の評価>
実施例1~33、比較例1~7で得られた積層体を用いて、乾燥塗膜(ニス層)表面の水接触角をJIS R 3257:1999に準拠して測定を行った。以下の基準で表1~4中に水接触角を示す。
A1:水接触角が80°未満。
A2:水接触角が80°以上90°未満。
A3:水接触角が90°以上95°未満。
A4:水接触角が95°以上100°未満。
A5:水接触角が100°以上110°以下。
A6:水接触角が110°超。
カチオン界面活性剤としてセチルトリメチルアンモニウムブロマイド10質量部及びヤシアルキルジメチルベンジルアンモニウムクロライド10質量部、アルキルリン酸エステル塩としてLP-TEA(トリエタノールアミン・ラウリルリン酸エステル)10質量部、ポリオキシエチレン(10モル)ラウリルエーテル2質量部及び水68質量部を溶解槽にとり、撹拌溶解して、均一なベルトコンベヤー用潤滑剤を調製した。この潤滑剤を250倍に水希釈した水溶液を実施例1~33、比較例1~7で得られた積層体のニス層に垂らして1日後にふき取り、ニス層表面の外観変化を観察した。以下の基準で評価を行った。◎、〇又は△の場合、実用性がある。
◎:塗膜の外観変化がない。
〇:塗膜に薄く滴下痕が残る。
△:塗膜にはっきりと滴下痕が残る。
×:塗膜の脱落が観察される。
実施例1~33、比較例1~7で得られた積層体のニス層のインキ層とは反対の面にアクリル系カラーインキ(大日精化工業株式会社製、製品名「ハイドリックFCGシリーズ」)を、乾燥塗膜の塗工量が1.0g/m2となるようにフレキソハンドプルーファーをアプリケーターとして用いて塗工した。次いで、ドライヤーの温風で1分間乾燥させて第三の印刷層(第二のインキ層)を形成し、印刷物(積層体)を得た。第二のインキ層を目視にて確認し、以下の評価基準にて積層性を評価した。
○:ニス層の面積に対する、第二のインキ層の面積の割合が100%である。
△:ニス層の面積に対する、第二のインキ層の面積の割合が80%以上100%未満である。
×:ニス層の面積に対する、第二のインキ層の面積の割合が80%未満である。
実施例1~33、比較例1~7で得られた積層体のニス層の表面に幅18mmのセロハンテープ(ニチバン株式会社製)を貼り付けて指で圧着した後、このセロハンテープを速やかに剥がし、プラスチックフィルム上に残ったニス層の状態を目視にて確認し、以下の評価基準にてニス層の密着性を評価した。なお、積層体はプラスチックフィルム/インキ層/ニス層の積層体であるが、フレキソ印刷によって設けたインキ層は網点状にプラスチックフィルムに転移したものが濡れ広がるため、プラスチックフィルムの上を隙間なく覆っているわけではなく空隙が存在する。そのため、その上にニス層を印刷した際にインキ層の空隙部分ではプラスチックフィルムに直接ニス層が形成される。上記密着性の評価ではインキ層にプラスチックフィルムに密着性良好なインキを使用しているため、密着性が悪いものについてはニス層のプラスチックフィルムへの密着性が悪いと判断することが出来る。
◎:ニス層が全く剥離していない。
〇:セロハンテープの接着面積に対して、剥離したニス層の面積の割合(剥離割合)が0%超、10%未満である。
△:セロハンテープの接着面積に対して、剥離したニス層の面積の割合(剥離割合)が10%以上である。
一軸収縮性PETフィルムに代えて、二軸延伸OPPフィルム(東洋紡株式会社製、商品名「パイレンP2161」、厚さ30μm)又は一軸収縮性PSフィルム(タキロンシーアイ株式会社製、商品名「ボンセットEPS45TD」、厚さ40μm)を用いた以外は実施例1~33、比較例1~7と同様にして得られた印刷物(積層体)を用いて、<密着性(PET)の評価>と同様に密着性の評価を行った。
<水性ニス組成物の調製>
表1~4に示す配合に従って、水性バインダー樹脂(A)と、撥水性シリコーン(B)と、パラフィンワックス(C)と、任意成分と、を混合し、水性ニス組成物を得た。
また、表中の空欄は、その成分が配合されていないこと(配合量0質量部)を意味する。表中のNVは各成分の総質量に対する不揮発分の含有量を意味する。
水性ニス組成物の不揮発分の総質量に対する、水性ニス組成物中の各成分の含有量を表1~4に示す。
プラスチックフィルムとして、一軸収縮性PETフィルム(東洋紡株式会社製、製品名「東洋紡スペースクリーンS7053」、厚さ40μm)を用いた。
セルボリューム10.0cm3/m2のアニロックスロールを搭載したフレキソハンドプルーファーをアプリケーターとして用い、プラスチックフィルムの第一の面にウレタン系カラーインキ(大日精化工業株式会社製、製品名「ハイドリックFCFシリーズ」)を、乾燥塗膜の塗工量が1.0g/m2となるように塗工した。次いで、ドライヤーの温風で1分間乾燥させて第一の印刷層(インキ層)を形成した。前記アプリケーターを用い、インキ層のプラスチックフィルムとは反対の面に実施例1~32、比較例1~7の水性ニス組成物又は混合物を、乾燥塗膜の塗工量が1.0g/m2となるように塗工した。次いで、ドライヤーの温風で1分間乾燥させて第二の印刷層(ニス層)を形成し、印刷物(積層体)を得た。
実施例33では、ウレタン系カラーインキに代えてアクリル系カラーインキ(大日精化工業株式会社製、製品名「ハイドリックFCGシリーズ」)を使用したこと以外は同様にして印刷物(積層体)を得た。
得られた積層体を用いて、水接触角、ベルトコンベヤー用潤滑剤耐性、積層性、及び密着性を評価した。結果を表1~4に示す。
11 プラスチックフィルム
12 印刷層(ニス層)
20 積層体
21 プラスチックフィルム
22 第一の印刷層(インキ層)
23 第二の印刷層(ニス層)
Claims (14)
- 水性バインダー樹脂と、撥水性シリコーン又はパラフィンワックスと、を含有する、飲料の包装容器のプラスチックラベルに使用される水性ニス組成物であって、
前記水性ニス組成物を、フレキソ印刷によって、印刷対象物に乾燥後の塗工量が1g/m2となるように印刷して形成される乾燥塗膜の表面の水接触角が90°以上である、水性ニス組成物。 - 前記水性バインダー樹脂は、水性アクリル樹脂又は水性アクリルウレタン樹脂を含み、
前記水性アクリル樹脂の重量平均分子量は、100,000~1,150,000である、請求項1に記載の水性ニス組成物。 - 前記水性アクリル樹脂のガラス転移温度は、-20~70℃である、請求項2に記載の水性ニス組成物。
- 前記撥水性シリコーンの不揮発分の含有量が、前記水性ニス組成物の不揮発分の総質量に対して0.1質量%以上である、請求項1に記載の水性ニス組成物。
- 前記パラフィンワックスの不揮発分の含有量が、前記水性ニス組成物の不揮発分の総質量に対して3質量%以上である、請求項1に記載の水性ニス組成物。
- 前記乾燥塗膜の表面の水接触角が90°以上110°以下である、請求項1に記載の水性ニス組成物。
- 前記撥水性シリコーンの不揮発分の含有量が、前記水性ニス組成物の不揮発分の総質量に対して0.1~6質量%である、請求項6に記載の水性ニス組成物。
- 前記パラフィンワックスの不揮発分の含有量が、前記水性ニス組成物の不揮発分の総質量に対して3~30質量%である、請求項6に記載の水性ニス組成物。
- 硬化剤とともに使用されるための請求項1に記載の水性ニス組成物。
- 前記水性バインダー樹脂が、ガラス転移温度-20~80℃であるアクリル樹脂エマルジョンを含む、請求項1に記載の水性ニス組成物。
- 前記水性バインダー樹脂が、重量平均分子量5,000~1,150,000であるアクリル樹脂エマルジョンを含む、請求項1に記載の水性ニス組成物。
- 前記パラフィンワックスの融点が、30~130℃である、請求項1に記載の水性ニス組成物。
- プラスチックフィルムと、前記プラスチックフィルムの一方の面上に、請求項1~12のいずれか一項に記載の水性ニス組成物を用いて形成された印刷層と、を有する、積層体。
- プラスチックフィルムと、前記プラスチックフィルムの一方の面上に、着色顔料を含む水性インキ組成物を用いて形成された第一の印刷層と、前記第一の印刷層の前記プラスチックフィルムとは反対の面上に、請求項1~12のいずれか一項に記載の水性ニス組成物を用いて形成された第二の印刷層と、を有する、積層体。
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