以下、本願の実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、以下の実施形態は、本質的に好ましい例示であって、本願に開示の技術、その適用物、あるいはその用途の範囲を制限することを意図するものではない。
本実施形態のドレントラップ1は、蒸気システム等に設けられ、ドレンが流入してきた場合にはドレンを流出させる一方、蒸気が流入してきた場合には蒸気の流出を阻止する。ドレントラップ1は弁装置の一例であり、ドレンは液体の一例である。
図1に示すように、ドレントラップ1は、液体を含む流体の流路が形成されたケーシング10と、流路中に設けられ、流路を開閉する3つの弁機構30,40,50とを備えている。ケーシング10内に流入したドレンは、第1弁機構30および第2弁機構40を介してケーシング10から流出する。第3弁機構50は、基本的に、ケーシング10内に流入した空気を排出する。ただし、第3弁機構50は、ケーシング10内に流入したドレンを排出する場合もある。
ケーシング10は、中部11と、該中部11の上下に取り付けられる上部12および下部13とを有している。ケーシング10には、ドレンの流入口21および流出口24と、ドレンの貯留室と、2つの排出通路25,26とが設けられている。貯留室は、流入口21に連通する第1貯留室22と、第1貯留室22の下方に設けられ、第1貯留室22と連通する第2貯留室23とを有している。第1排出通路25は、第1貯留室22と流出口24とを連通させ、第2排出通路26は、第1貯留室22と第1排出通路25とを連通させている。
ケーシング10では、流入口21、2つの貯留室22,23、流出口24および2つの排出通路25,26によって流路が形成される。具体的には、流路は、ドレンを排出するための第1流路および第2流路と、空気およびドレンを排出するための第3流路を有している。第1流路は、流入口21、第1貯留室22、第1排出通路25および流出口24によって形成される。第2流路は、流入口21、第1貯留室22および第2貯留室23によって形成される。第3流路は、流入口21、第1貯留室22、第2排出通路26、第1排出通路25および流出口24によって形成される。
第1貯留室22は、中部11と上部12とに跨って形成され、第2貯留室23は、下部13に形成されている。第1貯留室22と第2貯留室23とは、中部11の一部である仕切壁11aによって上下に区画されており、仕切壁11aに設けられた連通孔14を通じて連通している。第2貯留室23は、第1貯留室22よりも貯留容積が小さい。第2貯留室23は、第1貯留室22とは異なり、第1排出通路25および流出口24には連通しておらず、第2弁機構40を介してケーシング10の外部(大気)に連通している。
流入口21および流出口24は中部11に設けられ、流入口21は第1貯留室22の上部に連通している。流入口21と流出口24とは、水平に延びる同一の軸上に形成されている。第1排出通路25は、中部11に形成されており、上流端が第1貯留室22の下部に接続され、下流端が流出口24に接続されている。第2排出通路26は、中部11と上部12とに跨って形成されており、上流端が第1貯留室22の上部に接続され、下流端が第1排出通路25に接続されている。なお、流入口21および流出口24は、蒸気システムの配管と接続される。
第1弁機構30は、第1流路を開閉するものである。具体的に、第1弁機構30は、第1貯留室22から第1排出通路25にドレンを流出させる一方、第1貯留室22から第1排出通路25への蒸気の流出を阻止する弁機構である。第1弁機構30は、第1貯留室22に設けられており、第1弁体31および第1弁座32を有している。
第1弁体31は、中空球形のフロートであり、第1貯留室22に自由状態で収容されている。第1弁座32は、第1貯留室22における第1排出通路25の接続部に設けられている。第1弁座32には、第1弁孔であるドレンの第1排出孔33が形成されている。つまり、第1排出孔33は、第1貯留室22に設けられ、第1貯留室22と第1排出通路25とを連通させている。第1排出孔33の上流端は、オリフィスを構成している。
第1弁機構30では、第1貯留室22におけるドレンの貯留位(ドレン水位)に応じて第1弁体31が浮上降下し第1排出孔33を開閉する。具体的に、第1貯留室22のドレンが増加すると、第1弁体31が浮上して第1弁座32から離座し、第1排出孔33が開放される。一方、第1貯留室22のドレンが減少すると、第1弁体31が下降して第1弁座32に着座し、第1排出孔33が閉鎖される。こうして、第1排出孔33が開閉されることにより、第1流路が開閉される。
より詳しくは、蒸気システムの運転時には、第1排出孔33の上流側の圧力は所定値(以下、運転時の圧力Paとも言う)まで上昇する。即ち、第1排出孔33の上下流において圧力差(上流側である第1貯留室22の圧力と、下流側である第1排出通路25の圧力との差)が生じる。一方、運転開始時(運転立ち上げ時)では、第1排出孔33の上流側の圧力は直ぐには上昇しないため、第1排出孔33の上流側の圧力は運転時の圧力Paよりも低い圧力Pb(以下、運転開始時の圧力Pb)となる。即ち、運転開始時の第1排出孔33における圧力差は運転時よりも小さくなる。
ここに、第1排出孔33(または後述する第2排出孔43)の上流側の圧力は、流入口21、第1貯留室22および第2貯留室23の圧力とも言え、第1貯留室22および第2貯留室23内のドレンの圧力とも言える。
第1弁体31には、運転時の圧力Paおよび運転開始時の圧力Pbによって閉弁方向の力(以下、閉弁力とも言う)が作用する。言い換えれば、第1排出孔33において圧力差が生じることによって、第1弁体31に閉弁力が作用する。第1弁機構30では、第1貯留室22のドレン水位が所定位における第1弁体31の浮上力が、運転時の圧力Paによる第1弁体31の閉弁力よりも大きくなるように設定されている。そのため、第1弁機構30では、運転時および運転開始時のいずれかに拘わらず、第1貯留室22のドレン水位が所定位に達した場合、第1弁体31が浮上し、開弁される。
なお、当然ながら、第1弁体31は、運転開始時の圧力Pbによる閉弁力よりも運転時の圧力Paによる閉弁力が大きい。また、上述した第1弁体31の浮上力は、第1弁体31に作用する浮力から自重を差し引いたものである。
また、第1貯留室22には、流入口21との連通部にスクリーン27が設けられている。スクリーン27によって、流入口21から第1貯留室22への異物の流入が防止される。また、第1貯留室22には、上部寄りに弁カバー28が設けられている。弁カバー28は、第1弁座32の上方に設けられ、第1貯留室22を上下に仕切っている。弁カバー28は、第1弁体31が浮上して弁カバー28に接触することにより、第1弁体31が所定の高さ以上に浮上するのを規制するものである。なお、図示しないが、弁カバー28には流入口21からのドレンが流通する貫通孔が設けられている。
第3弁機構50は、第3流路を開閉するものである。具体的に、第3弁機構50は、第1貯留室22から第2排出通路26に低温の空気やドレンを流出させる一方、第1貯留室22から第2排出通路26への蒸気の流出を阻止する弁機構である。第3弁機構50は、第1貯留室22の上部に設けられており、第3弁体51および第3弁座52を有している。
第3弁体51は、温度変化によって変位する温度応動部材により構成されている。第3弁座52は、第1貯留室22における第2排出通路26の接続部に設けられている。第3弁座52には、弁孔である第3排出孔53が形成されている。第3排出孔53の上流端は、オリフィスを構成している。
第3弁機構50では、温度変化によって第3弁体51が変位し第3排出孔53を開閉する。具体的に、第3弁体51(第1貯留室22)の温度が低くなると、第3弁体51が収縮して第3弁座52から離座し、第3排出孔53が開放される。一方、第3弁体51の温度が高くなると、第3弁体51が膨張して第3弁座52に着座し、第3排出孔53が閉鎖される。こうして、第3排出孔53が開閉されることにより、第3流路が開閉される。
第2弁機構40は、第2流路を開閉するものである。具体的に、第2弁機構40は、第2貯留室23から直接、ケーシング10外(大気)にドレンを流出させる一方、第2貯留室23からケーシング10外への蒸気の流出を阻止する弁機構である。
図2~図6にも示すように、第2弁機構40は、第2貯留室23に設けられており、第2弁体41、第2弁座42、バネ44、邪魔板45、斜面42dおよびバイメタル47を有している。
第2弁体41は、本願の請求項に係る弁体に相当し、円板状(ディスク形)に形成されている。第2弁体41は、軸心が上下方向に延びる状態で第2貯留室23に収容されている。第2弁体41は、上下動自在に設けられている。
下部13は、上下方向に延びる略円筒状に形成され、内部が第2貯留室23となっている。下部13の内周面には、該内周面から径方向内方へ突出し且つ上下方向に延びるガイド部13aが設けられている。ガイド部13aは、下部13の周方向において複数(本実施形態では、3つ)設けられている(図3参照)。第2弁体41は、複数のガイド部13aの内側に設けられており、ガイド部13aに沿って上下動する。
第2弁座42は、第2貯留室23の底部に設けられている。第2弁座42は、上下方向に延びる円筒状に形成されている。第2弁座42には、第2弁孔であるドレンの第2排出孔43が形成されている。つまり、第2排出孔43は、第2弁座42において上下方向に開口している。第2排出孔43は、第2貯留室23とケーシング10外(大気)とを連通させている。
第2排出孔43の上流端は、オリフィスを構成している。第2排出孔43は、第1排出孔33よりも孔径が大きい。ここに、孔径とは、各排出孔33,43の上流端の孔径(即ち、オリフィスの径)を意味する。
第2弁体41は、第2弁座42(第2排出孔43)の上方に配置され、上下動することによって第2排出孔43を開閉する。第2弁体41は、第2弁座42(第2排出孔43)と同軸に設けられている。第2弁座42の上端は、第2弁体41が離着座するシート面42aとなっている。つまり、第2弁体41は、上下動し第2弁座42のシート面42aに離着座することによって第2排出孔43を開閉する。
バネ44は、第2弁体41を開弁方向に付勢するものであり、コイルバネにより構成されている。バネ44は、第2貯留室23における第2弁体41の下方に設けられ、第2弁体41を上方へ付勢している。バネ44は、一端が第2弁体41の下面に接続されて第2弁体41を支持している。より詳しくは、バネ44の一端は、第2弁体41の下面に形成された環状の凹部41aに嵌め込まれて接続されている。バネ44の他端は、第2弁座42の外周に嵌め込まれて接続されている。
邪魔板45は、第1貯留室22から連通孔14を通じて第2貯留室23に流下するドレンが第2弁体41の上面に当たるのを阻止するものである。邪魔板45は、第2貯留室23における第2弁体41の上方に設けられている。
邪魔板45は、略円板状に形成され、軸心が上下方向に延びる状態で設けられている。邪魔板45は、直径が第2弁体41と略同じであり、第2弁体41と同軸に設けられている。つまり、邪魔板45は第2弁体41の上面を覆うように設けられている。第2弁体41は、開弁時にはバネ44の付勢力によって邪魔板45に押し付けられている。
邪魔板45は、上下方向の位置が変更可能に設けられている。具体的に、邪魔板45は、ねじ46によって仕切壁11aに固定されている。仕切壁11aに対するねじ46のねじ込み長さを変えることで、邪魔板45の上下方向の位置が変更される。つまり、邪魔板45は、開弁時の第2弁体41の上限位置を規制する規制部材としても機能する。
斜面42dは、第2弁座42の外周に設けられ、第2弁座42の径方向外方に向かって昇り勾配の斜面である。より詳しくは、斜面42dは、第2弁座42の外周に設けられている環状溝42bに形成されている。環状溝42bは、第2弁座42と同軸の円環状に形成され、外径が第2弁体41の外径よりも小さい。環状溝42bでは、内周面42f側から外周面42g側に向かって順に、底面42c、斜面42dおよび水平面42eが形成されている。環状溝42bの内周面42fは、第2弁座42の外周面でもある。
底面42cは、内周面42fと繋がっている水平な面であり、環状溝42bにおいて最も低い位置に形成されている。斜面42dは、底面42cと繋がっており、外周面42g側へいくに従って上昇するテーパ状の面である。水平面42eは、斜面42dと外周面42gとに繋がっている。内周面42fおよび外周面42gは、上下方向(即ち、鉛直方向)に延びる面である。
バイメタル47は、円環状に形成されている。バイメタル47は、熱膨張係数の異なる2種類の金属を貼り合わせて成る帯状のものを円環状に曲げて形成している。厳密には、バイメタル47は、完全に閉じられた環状ではなく、周方向における一部が開口する平面視C字状に形成されている。以下、この開口している部分を開口47bと言う(図6参照)。
バイメタル47は、第2弁座42と斜面42dとの間に設けられている。つまり、バイメタル47は環状溝42bに挿入されている。バイメタル47は、温度変化によって径が変化するように構成されている。具体的に、バイメタル47は、第2貯留室23の温度が所定値(後述する運転開始時の温度Tb)まで低下すると、径が拡大する一方、第2貯留室23の温度が所定値(後述する運転時の温度Ta)まで上昇すると、径が縮小するように構成されている。
バイメタル47は、高位状態(図2および図5に示す状態)と低位状態(図4に示す状態)とに切り換わる。具体的に、バイメタル47は、径が拡大することによって斜面42dに沿って上昇し、上端が第2弁座42(シート面42a)よりも高くなる高位状態になる。また、バイメタル47は、径が縮小することによって斜面42dに沿って下降し、上端が第2弁座42(シート面42a)よりも低くなる低位状態になる。このように、バイメタル47は、温度変化によって、径が拡大縮小すると共に上昇下降するように構成されている。
バイメタル47は、高位状態では水平面42eに位置し、低位状態では底面42cに位置する。このように、バイメタル47は、環状溝42b内において変位(径が変化)する。つまり、バイメタル47の径は、第2弁体41の外径以上に拡大することはなく、第2弁体41の外径よりも小さい範囲で変化する。
さらに、バイメタル47は、高位状態のバイメタル47における第2弁座42(シート面42a)よりも高い部分に、内外を貫通して形成される溝47aを有している。この溝47aは、高位状態のバイメタル47の上端に第2弁体41が接した際(図5に示す状態)、第2貯留室23のドレンがバイメタル47の内周側に流出可能な流出部を構成している。
より詳しくは、溝47aは、バイメタル47の上端に設けられている。溝47aは、周方向において互いに間隔を置いて複数設けられている(図6参照)。溝47aは、V字状に形成されている。なお、この溝の形状は、V字状に限らず、U字状や矩形状、半円状であってもよい。また、溝の大きさは、大小が混在していてもよい。
つまり、第2弁機構40は、高位状態のバイメタル47の上側開口が第2弁体41によって閉塞された場合でも、第2貯留室23のドレンが溝47aを通じて第2排出孔43に流れるようになっている。
第2弁機構40は、第2貯留室23の圧力および温度に応じて第2弁体41が上下動し第2排出孔43を開閉するように構成されている。
具体的に、第2弁機構40では、第2貯留室23の圧力が所定値(運転開始時の圧力Pb)まで低下すると、バネ44の付勢力によって第2弁体41が上方へ移動して第2弁座42のシート面42aから離座する。また、第2弁機構40では、第2貯留室23の圧力が所定値(運転時の圧力Pa)まで上昇すると、該圧力によって第2弁体41がバネ44の付勢力に抗して下方へ移動して第2弁座42のシート面42aに着座する。
より詳しくは、蒸気システムの運転時には、第1排出孔33と同様、第2排出孔43の上流側の圧力も運転時の圧力Paまで上昇する。即ち、第2排出孔43の上下流において圧力差(上流側である第2貯留室23の圧力と下流側であるケーシング10外の大気圧との差)が生じる。一方、運転開始時(運転立ち上げ時)においても、第1排出孔33と同様、第2排出孔43の上流側の圧力は運転時の圧力Paよりも低い運転開始時の圧力Pbとなる。即ち、運転開始時の第2排出孔43における圧力差は運転時よりも小さくなる。
第2弁体41には、第1弁体31と同様、運転時の圧力Paおよび運転開始時の圧力Pbによって閉弁力が作用する。言い換えれば、第2排出孔43において圧力差が生じることによって、第2弁体41には閉弁力が作用する。なお、当然であるが、第2弁体41は、運転開始時の圧力Pbによる閉弁力よりも運転時の圧力Paによる閉弁力が大きい。
バネ44の付勢力は、運転開始時の圧力Pbによる第2弁体41の閉弁力よりも大きく設定されている。また、バネ44の付勢力は、運転時の圧力Paによる第2弁体41の閉弁力よりも小さく設定されている。そのため、第2弁体41は、運転開始時には、第2貯留室23の圧力が運転開始時の圧力Pbまで低下するので上方(開弁方向)へ移動し、その後の運転時には、第2貯留室23の圧力が運転時の圧力Paまで上昇するので下方(閉弁方向)へ移動する。
また、蒸気システムの運転時には、第2排出孔43の上流側の圧力が運転時の圧力Paまで上昇すると共に、第1貯留室22および第2貯留室23の温度が所定値(以下、運転時の温度Taとも言う)まで上昇する。即ち、第2排出孔43の上下流において圧力差(上流側である第2貯留室23の圧力と下流側であるケーシング10外の大気圧との差)が生じる。
一方、運転開始時(運転立ち上げ時)には、第2排出孔43の上流側の圧力が運転時の圧力Paよりも低い運転開始時の圧力Pbになると共に、第1貯留室22および第2貯留室23の温度が運転時の温度Taよりも低い温度(以下、運転開始時の温度Tbとも言う)になる。即ち、運転開始時の第2排出孔43における圧力差は運転時よりも小さくなる。
第2弁機構40では、第2貯留室23の温度が運転開始時の温度Tbまで低下すると、バイメタル47が上昇して高位状態となり第2弁体41を上方(開弁方向)へ変位させる。これにより、第2弁体41が第2弁座42のシート面42aから離座する。また、第2弁機構40では、第2貯留室23の温度が運転時の温度Taまで上昇すると、バイメタル47が下降して低位状態となる。これにより、第2弁体41が第2弁座42のシート面42aに着座することが可能となる。こうして、第2弁体41がシート面42aに離着座することにより、第2排出孔43が開閉され、第2流路が開閉される。
〈運転開始時の動作〉
蒸気システムの運転開始時(運転立ち上げ時)における上述したドレントラップ1の動作について説明する。運転開始時は、第1排出孔33および第2排出孔43の上流側の圧力および温度は低い状態となっており、蒸気システムの配管等には低温低圧のドレンが残留している。つまり、第1貯留室22および第2貯留室23の圧力および温度が運転開始時の圧力Pbおよび温度Tbまで低下している。
第1弁機構30では、第1貯留室22のドレンが無い場合またはドレン水位が所定位よりも低い場合は、第1弁体31が第1弁座32に着座し、第1排出孔33が閉鎖されている(図1参照)。第3弁機構50では、第1貯留室22の温度が低いため、第3弁体51が第3弁座52から離座し、第3排出孔53が開放されている(図1参照)。
第2弁機構40では、バネ44の付勢力が運転開始時の圧力Pbによる第2弁体41の閉弁力よりも大きいため、第2弁体41がシート面42aから離座し、第2排出孔43が開放されている(図2参照)。このとき、バイメタル47は上昇して高位状態になるところ、第2弁体41はバネ44によってバイメタル47の上端よりも十分に高い位置まで上昇しているので、第2排出孔43に向かうドレンの流通面積が十分に確保される。
こうして、運転開始時には、第2弁機構40および第3弁機構50が開弁しており、蒸気システムの残留ドレンがドレントラップ1に流入する。ドレントラップ1では、流入口21から流入したドレンが、第1貯留室22から連通孔14を通じて第2貯留室23に流れ、第2排出孔43からケーシング10外に流出する(排出される)。第2排出孔43は第1排出孔33よりも孔径が大きいため、多量のドレンが素早く排出される。
なお、蒸気システムの配管等に存在している空気も、残留ドレンと共にドレントラップ1に流入する。ドレントラップ1に流入した空気は、第1貯留室22から第3弁機構50を介して第2排出通路26に流出し、第1排出通路25を通って流出口24から流出していく。
このように、ドレントラップ1は、運転開始時には、蒸気システム内に残留している低温ドレンおよび空気をいち早く排出する。
また、ドレンが第1貯留室22から第2貯留室23へ流下する際、ドレンが第2弁体41の上面に当たることを邪魔板45によって阻止することができる。そのため、ドレンが第2弁体41の上面に当たることによって発生しうる第2弁体41の揺れが防止される。さらに、図2に示すように、第2弁体41は、バネ44の付勢力によって邪魔板45に押し付けられているため、これによっても、ドレンが当たることに起因する第2弁体41の揺れが防止される。
〈運転時の動作〉
蒸気システムの運転時における上述したドレントラップ1の動作について説明する。運転時は、第1排出孔33および第2排出孔43の上流側の圧力および温度は高い状態となり、高温高圧のドレンがドレントラップ1に流入してくる。つまり、第1貯留室22および第2貯留室23の圧力および温度が運転時の圧力Paおよび温度Taまで上昇する。
第2弁機構40では、バネ44の付勢力が、運転時の圧力Paによる第2弁体41の閉弁力よりも小さいため、運転時の圧力Paによって第2弁体41が下方(閉弁方向)へ移動する。このとき、バイメタル47は低位状態になりバイメタル47の上端がシート面42aよりも低くなっているため、第2弁体41はシート面42aに着座し、第2排出孔43が閉鎖される(図4参照)。つまり、第2弁機構40は閉弁する。そのため、ドレントラップ1に流入したドレンは、第1貯留室22から第2貯留室23に流れて貯留されていく。
第2貯留室23のドレンが満杯になると、第1貯留室22にドレンが溜まり始める。第1弁機構30では、第1貯留室22のドレン水位が所定位まで上昇すると、第1弁体31が浮上して第1弁座32から離座し、第1排出孔33が開放される。つまり、第1弁機構30は開弁する。そうすると、第1貯留室22のドレンは、第1弁機構30を介して第1排出通路25に流れて流出口24から流出していく。
また、ドレンと共にドレントラップ1に流入した空気は、第1貯留室22の上部に滞留する。このとき、空気の温度がかなりの高温でない限り、第3弁体51の膨張量は小さく、第3弁体51は第3弁座52から離座したままである。つまり、第3弁機構50は開弁したままである。そのため、空気は、第3弁機構50を介して第2排出通路26に流出し、第1排出通路25を通って流出口24から流出していく。
また、第1弁機構30からのドレンの流出量に対して流入口21から第1貯留室22へのドレンの流入量が多い場合には、第1貯留室22においてドレンは上部まで溜まる。そうすると、第3弁体51の温度はドレンの温度に近づくが、この場合でも、第3弁体51の膨張量は小さく、第3弁体51は第3弁座52から離座したままである。そのため、ドレンは、第3弁機構50を介して第2排出通路26に流出し、第1排出通路25を通って流出口24から流出していく。
一方、流入口21から第1貯留室22に高温高圧の蒸気が流入した場合、第1貯留室22のドレンは、第1弁機構30から流出して減少していき、やがて第1弁体31が第1弁座32に着座する。こうして、第1弁機構30が閉弁し、第1排出孔33からの蒸気の流出が阻止される。また、第1貯留室22に蒸気が流入した場合、第3弁体51の温度が上昇する。そうすると、第3弁体51は膨張して第3弁座52に着座する。こうして、第3弁機構50が閉弁し、第3排出孔53からの蒸気の流出が阻止される。
このように、ドレントラップ1は、運転時には、流入してきた高温ドレンおよび空気を下流側へ流出させる一方、流入してきた蒸気の流出を阻止する。また、運転時では、第2弁機構40は閉弁状態に維持され、第2貯留室23にはドレンが満杯に溜まったままである。
蒸気システムの運転が停止すると、第1排出孔33および第2排出孔43の上流側の圧力および温度は次第に低下していく。そして、第2貯留室23の圧力および温度が運転開始時の圧力Pbおよび温度Tbまで低下すると、第2弁体41はバネ44の付勢力によって上昇し第2弁座42から離座する。なお、バイメタル47は高位状態になる。こうして、第2弁機構40が開弁することで、第2貯留室23に溜まっていたドレンが第2排出孔43からケーシング10外に排出される。第2弁機構40は、次回の運転開始時まで開弁状態に維持される。
〈過渡期の動作〉
上述した運転開始時から運転時へ移行する過渡期の動作について説明する。この過渡期では、第1排出孔33および第2排出孔43の上流側の圧力は高い状態になる一方、第1排出孔33および第2排出孔43の上流側の温度は低い状態のままであり、低温高圧のドレンがドレントラップ1に流入してくる。つまり、第1貯留室22および第2貯留室23の圧力は運転時の圧力Paまで上昇し、第1貯留室22および第2貯留室23の温度は運転開始時の温度Tbのままである。
このような過渡期が生じるのは、圧力と熱(温度)とで伝達速度が異なるためである。このような過渡期において、第2貯留室23に流入してくる低温のドレンは、運転開始時と同様に外部に排出する必要がある。
第2弁機構40では、バネ44の付勢力が、運転時の圧力Paによる第2弁体41の閉弁力よりも小さいため、運転時の圧力Paによって第2弁体41が下方(閉弁方向)へ移動する。一方、バイメタル47は、第2貯留室23の温度が運転開始時の温度Tbのままであるため、運転開始時と同様、上端がシート面42aよりも高い高位状態になっている。そのため、図5に示すように、第2弁体41はバイメタル47の上端に接した状態になる。
第2弁体41がバイメタル47の上端に接した状態では、第2貯留室23と第2排出孔43とはバイメタル47の複数の溝47aを介して連通している。つまり、第2弁機構40は、実質、開弁している。そのため、第2貯留室23に流入してきた低温のドレンは、複数の溝47aを介して第2排出孔43に流れ、ケーシング10外に流出する(排出される)。なお、第2貯留室23に流入してきた低温のドレンは、溝47aだけでなく開口47bも介して第2排出孔43に流れる。
このように、ドレントラップ1は、運転開始時から運転時へ移行する過渡期においても、第2弁機構40が開弁しており、確実に低温ドレンを排出する。
以上のように、上記実施形態のドレントラップ1(弁装置)は、ケーシング10と、第1弁機構30と、第2弁機構40とを備える。ケーシング10は、ドレンの流入口21、流入口21に連通するドレンの貯留室22,23が設けられている。第1弁機構30は、貯留室22に設けられた第1弁座32、貯留室22に収容され、第1弁座32の第1排出孔33を開閉する第1弁体31(フロート)を有する。第2弁機構40は、貯留室23に設けられ、第1排出孔33よりも孔径が大きい第2排出孔43が上下方向に開口する筒状の第2弁座42、上下動し第2弁座42のシート面42a(上端)に離着座することによって第2排出孔43を開閉する板状の第2弁体41を有する。
そして、第2弁機構40は、斜面42dと、環状のバイメタル47とをさらに有する。斜面42dは、第2弁座42の外周に設けられ、第2弁座42の径方向外方に向かって昇り勾配となっている。バイメタル47は、第2弁座42と斜面42dとの間に設けられ、温度変化によって径が変化するように構成されている。バイメタル47は、温度が所定値(運転開始時の温度Tb)まで低下すると、径が拡大することによって斜面42dに沿って上昇し上端が第2弁座42よりも高くなる高位状態と、温度が所定値(運転時の温度Ta)まで上昇すると、径が縮小することによって斜面42dに沿って下降し上端が第2弁座42よりも低くなる低位状態とに切り換わる。そして、バイメタル47は、高位状態のバイメタル47の上端に第2弁体41が接した際、貯留室23のドレンがバイメタル47の内周側に流出可能な流出部(溝47a)を有する。
上記の構成によれば、運転開始時には、バイメタル47が高位状態になることによって第2弁体41を押し上げて第2弁座42から離座させることが可能である。その際、貯留室23のドレンをバイメタル47の流出部(溝47a)を介して第2排出孔43から排出可能である。また、運転時には、バイメタル47の上端が第2弁座42よりも低くなるため、第2弁体41が運転時の圧力Paによって第2弁座42に着座することができる。
このように、第2弁機構40において確実に運転開始時には開弁させ運転時には閉弁させることができる。そのため、運転開始時に、蒸気システム内に残留している多量の低温ドレンおよび空気をいち早く排出することができる。したがって、低温ドレンに蒸気が混合することによって発生しうるウォーターハンマーを未然に防止することができる。
さらに、運転開始時から運転時へ移行する過渡期においても、バイメタル47が高位状態に維持されるため、運転開始時と同様、第2弁機構40を開弁させることができる。そのため、過渡期においても確実に低温ドレンを排出することができる。
また、上記実施形態のドレントラップ1において、流出部は、高位状態のバイメタル47における第2弁座42よりも高い部分に、内外を貫通して形成される溝47aである。この構成によれば、簡易な構成で低温ドレンを排出することができる。
また、上記実施形態のドレントラップ1において、貯留室は、流入口21に連通すると共に、第1弁機構30が設けられる第1貯留室22と、第1貯留室22の下方に設けられ第1貯留室22と連通すると共に、第2弁機構40が設けられる第2貯留室23とを有している。
上記の構成によれば、2つの弁機構30,40がそれぞれの貯留室22,23に設けられるので、例えば1つの貯留室に2つの弁機構を設ける場合と比べて、フロートである第1弁体31を第2弁機構40との干渉を気にすることなく貯留室に自由状態で収容することができる。
また、第2貯留室23が第1貯留室22の下方に設けられることにより、第2貯留室23のドレンには第1貯留室22のドレンの水頭が付加されるため、運転開始時において第2弁機構40によるドレンの排出能力が高くなる。
また、上記実施形態のドレントラップ1において、第2弁機構40は、第2弁体41を上方へ付勢するバネ44を有し、第2貯留室23の圧力が所定値(運転時の圧力Pa)まで上昇すると、該圧力によって第2弁体41がバネの付勢力に抗して下方へ移動するように構成されている。
上記の構成によれば、運転開始時には、第2弁体41をバネ44の付勢力によって高位状態のバイメタル47よりも高い位置に移動(上昇)させることが可能である。そのため、第2排出孔43に向かうドレンの流通面積を十分に確保することができる。したがって、運転開始時において第2弁機構40によるドレンの排出能力が高くなる。
また、上記実施形態のドレントラップ1において、第2弁座42(第2排出孔43)は第2貯留室23の底部に設けられているので、第2貯留室23のドレンの水頭をできるだけ稼ぐことができ、第2弁機構40によるドレンの排出能力がより高くなる。
また、上記実施形態のドレントラップ1において、バネ44は、一端が第2弁体41の下面に接続されて第2弁体41を支持している。第2弁機構40は、第2貯留室23における第2弁体41の上方に設けられ、第1貯留室22から第2貯留室23に流下するドレンが第2弁体41の上面に当たるのを阻止する邪魔板45を有している。
上記の構成によれば、第2弁機構40が開弁状態において、第1貯留室22から流下するドレンが第2弁体41の上面に当たることによって発生しうる第2弁体41の揺れを防止することができる。第2弁体41が不規則に揺れると、第2排出孔43へ向かうドレンの流れが乱れてしまい、それによってドレンの排出効率が損なわれる虞があるが、本実施形態ではそれを防止することができる。特に、第2弁体41は下面に接続されたバネ44によって支持されていることから揺れの発生が顕著になる虞があるところ、それを効果的に防止することができる。
さらに、上記実施形態のドレントラップ1では、第2弁体41がバネ44の付勢力によって邪魔板45に押し付けられているので、これによっても、ドレンが当たることに起因する第2弁体41の揺れを防止することができる。
(その他の実施形態)
なお、本願に開示の技術は、上記実施形態のドレントラップ1について、以下のような構成としてもよい。
例えば、上記実施形態のドレントラップ1では、斜面42dは第2弁座42の径方向外方に向かって昇り勾配のものとしたが、斜面は第2弁座42の径方向内方に向かって昇り勾配のものとしてもよい。その場合、バイメタルは、斜面の外周に設けられる。そして、バイメタルは、温度が所定値(運転開始時の温度Tb)まで低下すると、径が縮小することによって斜面に沿って上昇し上端が第2弁座42よりも高くなる高位状態と、温度が所定値(運転時の温度Ta)まで上昇すると、径が拡大することによって斜面に沿って下降し上端が第2弁座42よりも低くなる低位状態とに切り換わる。この形態の場合も、上記実施形態と同様の作用効果を奏する。
また、上記実施形態のドレントラップ1では、バイメタル47は流出部として溝47aを有するようにしたが、バイメタル47は流出部として孔を有するようにしてもよい。この孔は、高位状態のバイメタルにおける第2弁座42よりも高い部分に、内外を貫通して形成される貫通孔である。この孔は、上記実施形態の溝47aと同様、バイメタルの周方向において互いに間隔を置いて複数設けられることが好ましい。この形態の場合も、高位状態のバイメタルの上端に第2弁体41が接した際、第2貯留室23のドレンは、孔を介してバイメタルの内周側に流出し第2排出孔43から排出される。
また、上記実施形態のドレントラップ1では、流出部をバイメタル47に設けるようにしたが、第2弁体に設けるようにしてもよい。
例えば、図7に示すように、第2弁機構40において、第2弁体48は流出部として切除部48aを有している。切除部48aは、第2弁体48の外縁部の一部が切除されてなる。切除部48aは、第2弁体48の周方向において1つまたは複数設けられる。第2弁体48は、第2弁座42のシート面42aに着座するために必要な領域を確保するように切除部48aが設けられている。また、バイメタル49は、上記実施形態と同様、平面視C字状に形成され、開口49aを有している。
上記の構成によれば、図7に示すように、高位状態のバイメタル49の上端に第2弁体48が接した際、第2貯留室と第2排出孔43とは第2弁体48の切除部48aを介して連通している。つまり、第2弁機構40は、実質、開弁している。そのため、第2貯留室に流入してきた低温のドレンは、切除部48aを介してバイメタル49の内周側に流出し第2排出孔43から排出される。このように、第2弁体48に流出部を設けた場合も、上記実施形態と同様の作用効果を奏する。
また、上記実施形態のドレントラップ1では、流出部をバイメタル47のみに設けたが、バイメタルおよび第2弁体の両方に設けるようにしてもよい。つまり、本願に開示の技術は、バイメタルおよび第2弁体の少なくとも一方が流出部を有していればよい。
また、上記実施形態のドレントラップ1では、第2弁機構40においてバネ44を省略するようにしてもよい。その場合、バイメタル47の上昇する力(即ち、バイメタル47の径の拡大する力)は、例えば運転開始時の圧力Pbによる第2弁体41の閉弁力よりも大きくなるように設定される。
また、上記実施形態のドレントラップ1は、蒸気の流出を阻止するスチームトラップに限らず、空気の流出を阻止するエアトラップ、またはガスの流出を阻止するガストラップ等であってもよい。
また、上記実施形態のドレントラップ1では、バネ44を第2弁体41の下方に設けたが、第2弁体の上方に設けるようにしてもよい。その場合、バネは、第2弁体を開弁方向(上方)に付勢する引っ張りバネとして構成される。
また、上記実施形態では、弁装置の一例としてドレントラップ1について説明したが、本願の弁装置は、例えば、蒸気の圧力を調節する減圧弁や、ドレンと空気を分離する気液分離器にも適用することができる。