JP7341343B2 - 樹脂成形品の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、樹脂成形品の製造方法に関するものである。
樹脂材料を用いて樹脂成形を行う樹脂成形方法としては、成形型のポット内に収容した樹脂材料をプランジャによって成形型のキャビティに押し出すことにより、成形対象物を樹脂封止するものがある。
ここで、ポット内に収容される樹脂材料は、搬送時やポットへの装着時に樹脂粉塵が発生してしまう。この樹脂粉塵は、封止設備に悪影響を与えるだけでなく清掃作業も必要となる。このため、樹脂材料から発生する粉塵を防止するものとして、特許文献1に示す樹脂ペレットが考えられている。この樹脂ペレットは、表面に糊粉やワックスからなる発塵防止膜を成膜して、樹脂粉塵の発生を抑制するものである。
特開平11-291242号公報
しかしながら、上記のような樹脂材料を用いたとしても、ポットの内面に樹脂カスが付着して、次の樹脂成形へのコンタミネーションの原因となるだけでなく、プランジャの摺動抵抗が大きくなり、ポットやプランジャの寿命短縮の原因にもなってしまう。また、ポットに収容された樹脂材料をプランジャによって押し出す際に、ポットの内面とプランジャとの摺動部に溶融した樹脂材料が侵入し、プランジャの下部に樹脂カスが堆積してしまうという問題がある。このように樹脂カスとは、ポット内の樹脂材料をプランジャによってキャビティに押し出した際に、ポット外に移送されずに、ポットの内面とプランジャとの摺動部に侵入して生じる残りカス(残滓)のことである。この問題に対しては、ポットの内面とプランジャとの摺動部のクリアランスを狭めることによって、当該摺動部への樹脂材料の侵入を防ぐことも考えられるが、そうするとプランジャの摺動抵抗が大きくなってしまい、ポットやプランジャの寿命短縮を招いてしまう。
そこで本発明は、上記の問題点を解決すべくなされたものであり、樹脂成形時における樹脂カスの発生を抑制することをその主たる課題とするものである。
すなわち本発明に係る樹脂成形品の製造方法は、成形型のポット内に収容した樹脂材料をプランジャによって前記成形型のキャビティに押し出すことにより、成形対象物を樹脂封止して樹脂成形品を製造する樹脂成形品の製造方法であって、前記ポットの内面と前記樹脂材料との間に、前記樹脂材料が押し出される方向を開放しつつ前記樹脂材料を取り囲む被覆体を配置し、前記被覆体に取り囲まれた前記樹脂材料を前記プランジャによって前記キャビティに押し出すことを特徴とする。
このように構成した本発明によれば、樹脂成形時における樹脂カスの発生を抑制することができる。
本発明の一実施形態の樹脂成形装置の構成を模式的に示す断面図である。 同実施形態の樹脂材料を取り囲む被覆体の一例を示す模式図である。 樹脂材料を取り囲む被覆体の変形例1、2を示す模式図である。 樹脂材料を取り囲む被覆体の変形例3を示す模式図である。 同実施形態の樹脂成形品の製造方法を説明するための図である。 同実施形態の樹脂成形品の製造方法を説明するための図である。 同実施形態の樹脂成形品の製造方法を説明するための図である。 実験例1の結果を示す図である。 実験例2の結果を示す図である。 ポット及び樹脂材料の各変形例(a)~(e)を示す図である。 ポット及び樹脂材料の変形例を示す(a)斜視図、(b)平面図、(c)断面図である。
100・・・樹脂成形装置
J ・・・樹脂材料
W ・・・成形対象物
P ・・・樹脂成形品
2 ・・・下型(成形型)
21 ・・・ポット
3 ・・・上型(成形型)
31 ・・・キャビティ
32 ・・・カル部
33 ・・・ランナ部
51 ・・・プランジャ
7 ・・・被覆体
7K ・・・切り欠き
次に、本発明について、例を挙げてさらに詳細に説明する。ただし、本発明は、以下の説明により限定されない。
本発明の樹脂成形品の製造方法は、前述のとおり、成形型のポット内に収容した樹脂材料をプランジャによって前記成形型のキャビティに押し出すことにより、成形対象物を樹脂封止して樹脂成形品を製造する樹脂成形品の製造方法であって、前記ポットの内面と前記樹脂材料との間に、前記樹脂材料が押し出される方向を開放しつつ前記樹脂材料を取り囲む被覆体を配置し、前記被覆体に取り囲まれた前記樹脂材料を前記プランジャによって前記キャビティに押し出すことを特徴とする。
この樹脂成形品の製造方法であれば、ポットの内面と樹脂材料との間に、樹脂材料を取り囲む被覆体を配置しているので、樹脂材料がポットの内面に触れないようにでき、ポットの内面に付着する樹脂カスを低減することができる。また、被覆体により樹脂材料が取り囲まれているので、たとえモールドアンダーフィル(MUF)用樹脂やクリアレジンなどの高流動樹脂であったとしても、ポットの内面とプランジャとの摺動部に溶融した樹脂材料が侵入しにくくなり、摺動部に侵入した樹脂材料によって発生する樹脂カスを低減することができる。ここで、被覆体は、樹脂材料が押し出される方向を開放しているので、プランジャによる樹脂材料の押し出しを邪魔することもない。
このように樹脂カスを低減することにより、次の樹脂成形へのコンタミネーションを低減でき樹脂成形品の品質を向上することができる。また、樹脂カスによる設備トラブルを防止でき、清掃作業の頻度も低減できる。さらに、被覆体を用いることにより、従来のようにポットの内面とプランジャとのクリアランスを狭める設計をする必要がなく、プランジャの摺動抵抗の増大を防止できるので、ポット及びプランジャの長寿命化も実現できる。
被覆体の具体的な実施の態様としては、前記被覆体は、シート状のものであり、前記樹脂材料に巻き付けられた状態で前記ポットに配置されていることが望ましい。このようにシート状の被覆体を樹脂材料に巻きつける構成であれば、被覆体の構成を簡単にでき、加工コストを低減することができる。
ポットの内面とプランジャとの摺動部に溶融した樹脂材料が侵入しにくくするためには、前記被覆体は、前記ポットの内面に密着するものであることが望ましい。このように被覆体がポット内面に密着することによって、被覆体がプランジャの先端面の周縁部を覆い、ポットの内面とプランジャとの摺動部を塞ぐ構成となり、溶融した樹脂材料が摺動部に侵入しにくくなる。
被覆体がポットの内面に密着する具体的な構成としては、前記被覆体は、前記ポット内で溶融又は軟化した前記樹脂材料から加わる内圧によって前記ポットの内面に密着するものであることが望ましい。ここで、溶融又は軟化した樹脂材料から加わる内圧は、プランジャによる注入動作中において、溶融又は軟化した樹脂材料がプランジャに押されて周方向に広がる、又は、溶融又は軟化した樹脂材料がプランジャ及び成形型のカル部から押されて周方向に広がることにより生じる。この構成であれば、被覆体をポットに配置する際には、ポットの内面に密着させる必要がないので、被覆体をポット内に配置しやすくできる。
プランジャの先端面に樹脂カスが付着しにくくするためには、前記被覆体は、前記ポット内において前記樹脂材料と前記プランジャとの間にも配置されていることが望ましい。
被覆体又は被覆体を構成する成分が、溶融した樹脂材料とともにキャビティに導入されないようにするためには、前記被覆体は、成形温度において溶融及び熱分解しない材料から構成されていることが望ましい。
具体的に前記被覆体は、紙製、樹脂製、セルロース製、織布製、不織布製又はこれらのうち少なくとも2つを含む複合材製のものであることが考えられる。
被覆体に取り囲まれた樹脂材料が、キャビティに押し出されやすくするためには、前記被覆体は、前記樹脂材料が押し出される側の開口端部に切り欠きが形成されていることが望ましい。
本発明の樹脂成形方法に用いられる樹脂成形装置の具体的な実施の態様としては、前記成形型のポットが、平面視において縦横寸法が異なる形状をなすものであることが考えられる。この構成の場合には、前記ポットに収容された前記樹脂材料は、平面視において前記ポットに対応して縦横寸法が互いに異なるものであることが望ましい。
樹脂材料の具体的な実施の態様としては、前記樹脂材料は、粉粒体状、液状又は板状であることが考えられる。なお、粉粒体状の樹脂材料は、粒径を問わない。また、液状の樹脂材料は、例えばペースト状等の高粘度のものも含み、粘性は問わない。さらに、板状の樹脂材料は、例えば被覆体よりも厚いものが考えられる。
被覆体は溶融した樹脂材料とともにポットから押し出されるものの、成形型のキャビティには導入されずに、樹脂成形後において、成形型のカル部又はランナ部に残留する。このため、前記被覆体は、樹脂成形後において、カル部又はランナ部に残留した樹脂とともに廃棄されることになる。
<本発明の一実施形態>
以下に、本発明に係る樹脂成形装置の一実施形態について、図面を参照して説明する。なお、以下に示すいずれの図についても、わかりやすくするために、適宜省略し又は誇張して模式的に描かれている。同一の構成要素については、同一の符号を付して説明を適宜省略する。
<樹脂成形装置の全体構成>
本実施形態の樹脂成形装置100は、電子部品Wxが実装された成形対象物Wを、樹脂材料Jを用いたトランスファ成形によって樹脂成形するものである。
ここで、成形対象物Wとしては、例えば金属製基板、樹脂製基板、ガラス製基板、セラミックス製基板、回路基板、半導体製基板、配線基板、リードフレーム等であり、配線の有無は問わない。また、樹脂成形のための樹脂材料Jは、例えば熱硬化性樹脂を含む複合材料であり、樹脂材料Jの形態は、例えば円柱状をなすタブレット状の固形である。また、成形対象物Wの上面に実装される電子部品Wxとしては、例えばベアチップ又は樹脂封止されたチップである。
具体的に樹脂成形装置100は、図1に示すように、樹脂材料Jを収容するポット21が形成された一方の成形型2(以下、下型2)と、当該下型2に対向して設けられ、樹脂材料Jが注入されるキャビティ31が形成された他方の成形型3(以下、上型3)と、下型2及び上型3を型締めする型締め機構(不図示)とを有する。下型2は、型締め機構により昇降する可動盤(不図示)に下型保持部材4を介して設けられている。上型3は、上部固定盤(不図示)に上型保持部材(不図示)を介して設けられている。なお、下型保持部材4は、例えば、ヒータープレートや断熱プレート等を有している。
下型2には、例えば複数のポット21が下型2の上面(型面)に開口して形成されている。このポット21は、下型2に形成された貫通孔2Hにより構成されており、当該貫通孔2Hは、例えば超硬合金製や鋼材製の円筒状をなすポット部材20を下型2に嵌めることにより形成されている。ポット21は、樹脂材料Jの形状に対応した形状をなしており、本実施形態では、樹脂材料Jが円柱状であることから、ポット21もそれに合わせて断面円形状をなすものである。また、下型2の上面には、成形対象物Wが装着される装着部22が形成されている。
また、上型3の下面(型面)には、下型2の装着部22に装着された成形対象物Wの電子部品Wxを収容するキャビティ31が形成されている。また、上型3の下面には、下型2のポット21に対向する部分に凹部であるカル部32が形成されるとともに、当該カル部32とキャビティ31とを接続するランナ部33が形成されている。
そして、樹脂成形装置100は、下型2の複数のポット21に収容された樹脂材料Jを押し出す複数のプランジャ51を有するプランジャユニット5と、プランジャ51がポット21内で進退移動するようにプランジャユニット5を移動させる駆動機構6とを備えている。
プランジャユニット5は、下型2の下方に設けられており、プランジャ51が、下型2の貫通孔2Hに挿入して設けられている。そして、プランジャ51の上面は、下型2のポット21の底面を構成する。また、プランジャ51は、ポット21において加熱されて溶融した樹脂材料Jをポット21から上型3に向かって押圧するものである。
駆動機構6は、プランジャユニット5を下型2に対して相対移動させるものであり、これにより、プランジャ51はポット21内において進退する。本実施形態の駆動機構6は、プランジャユニット5に対して下型2とは反対側(プランジャユニット5の下側)に設けられている。ここで、駆動機構6としては、例えば、サーボモータとボールねじ機構とを組み合わせたものや、エアシリンダや油圧シリンダとロッドとを組み合わせたもの等を用いることができる。
そして、型締め機構により下型2及び上型3を型締めした状態でプランジャユニット5を上昇させると、樹脂成形装置100に備えられたヒータ(不図示)の熱により溶融した樹脂材料Jがキャビティ31に注入される。これにより、キャビティ31内に収容された成形対象物Wの電子部品Wxが樹脂封止される。
<樹脂成形品の製造方法の特徴部分>
次に、上記の樹脂成形装置100を用いた樹脂成形品Pの製造方法の特徴部分について説明する。
図1に示すように、下型2のポット21に樹脂材料Jを収容する場合に、ポット21の内面と樹脂材料Jとの間に、樹脂材料Jがポット21の内面に接触しないように被覆体7を配置する。
この被覆体7は、ポット21内において樹脂材料Jが押し出される方向を開放しつつ樹脂材料Jの全周を取り囲むものである。具体的に被覆体7は、ポット21内において樹脂材料Jの上面を覆うことなく樹脂材料Jの外側周面の全周を取り囲む。
この被覆体7は、1回の樹脂成形ごとに廃棄される消耗材であり、例えば、紙製、樹脂製、セルロース製、織布製、不織布製又はこれらの複合材製のものを挙げることができる。なお、複合材としては、紙に例えば10μm以下の耐熱フィルム等の樹脂フィルムをラミネートしたもの、紙に樹脂をコーティング(塗布)したもの、紙に樹脂を含浸させたもの、パルプと樹脂の繊維を混ぜて紙として抄いたもの等が考えられる。これら被覆体7は、樹脂材料Jによって樹脂封止をするための成形温度(例えば170℃程度)において溶融及び熱分解しない材料から構成されている。
具体的に被覆体7は、図2に示すように、例えば矩形状をなすシート状のものであり、樹脂材料Jの外側周面に巻き付けられた状態でポット21に配置される。ここで、図2の(d)展開図に示すように、被覆体7の幅寸法L1は、樹脂材料Jの外側周面の軸方向全体を覆う寸法であり、被覆体7の長さ寸法L2は、樹脂材料Jの外側周面の周りを1巻き以上できる寸法である。このようにシート状の被覆体7を樹脂材料Jに巻きつける構成にすることで、被覆体7の構成を簡単にでき、加工コストを低減することができる。なお、被覆体7の幅寸法L1は樹脂材料Jの軸方向寸法よりも小さい構成の場合には、当該被覆体7を樹脂材料Jの外側周面に螺旋状に巻きつけることが考えられる。その他、被覆体7としては、円筒形状をなすものであっても良い。円筒状の被覆体7とする場合には、軸方向において等断面形状としても良いし、軸方向において一方から他方に行くに従って径が小さくなるテーパ形状としても良い。
また、被覆体7の厚みは、ポット21の内面とプランジャ51とのクリアランス(隙間)よりも大きく、被覆体7自体がポット21の内面とプランジャ51の摺動部に侵入しないように構成されている。例えばクリアランスが10μmに対して、被覆体7の厚みは50μmである。
そして、被覆体7は、ポット21の内面に密着するように構成されている。具体的に被覆体7は、ポット21内で溶融又は軟化した樹脂材料Jから加わる内圧によって被覆体7がポット21の内面に密着する構成としている。本実施形態では、被覆体7を樹脂材料Jに巻きつけるとともに当該被覆体7を周方向に拘束しない構成としている。これにより、被覆体7は、溶融又は軟化した樹脂材料Jから加わる内圧によって径方向に拡がりやすく、ポット21の内面に密着しやすくなる。なお、溶融又は軟化した樹脂材料Jから加わる内圧とは、主として、プランジャ51による注入動作中において、溶融又は軟化した樹脂材料Jがプランジャ51に押されて周方向に広がる、又は、溶融又は軟化した樹脂材料Jがプランジャ51及び上型3のカル部32から押されて周方向に広がることにより生じる圧力である。
このように被覆体7がポット21の内面に密着する構成とすることで、被覆体7がポット21の内面とプランジャ51との摺動部を塞ぐ構成となり、溶融した樹脂材料Jが摺動部により一層侵入しにくくなる。また、被覆体7は、ポット21内で溶融又は軟化した樹脂材料Jから加わる内圧によってポット21の内面に密着するものであることから、被覆体7をポット21に配置する際にポット21の内面に密着させる必要がなく、被覆体7をポット21内に配置しやすくできる。
その他、被覆体7がポット21の内面に密着する構成としては、被覆体7をシート状の弾性部材とし、ポット21内に丸めて配置することで弾性部材の復元力によりポット21の内面に密着する構成とすることも考えられる。
また、被覆体7は、ポット21内において樹脂材料Jとプランジャ51の上面との間に配置してもよい。これにより、プランジャ51への樹脂カスの付着をより一層低減することができる。このとき、被覆体7は、樹脂材料Jの外側周面だけでなく底面を覆う構成とすることが考えられる。
例えば、図3(1)に示すように、矩形シート状をなす被覆体7の下辺部に複数の切り込みを入れて分割片71を形成し、当該被覆体7を樹脂材料Jに巻きつけるとともに、分割片71を内側に折り曲げることにより、樹脂材料Jの外側周面だけでなく底面を覆う構成とすることが考えられる。なお、下辺部に切り込みを入れることなく単に内側に折り曲げる構成としても良い。
また、図3(2)に示すように、底を有する円筒形状(カップ形状)をなす構成とすることが考えられる。底を有する円筒形状の被覆体7とする場合は、軸方向において等断面形状の円筒形状としても良いし、軸方向において一方から他方に行くに従って径が小さくなるテーパ形状としても良い。その他、被覆体7は、樹脂材料Jの外側周面を覆う部材と、樹脂材料Jの底面を覆う部材との別々の部材を用いた構成であってもよい。
さらに、被覆体7は、図4に示すように、溶融した樹脂材料Jが押し出される側の開口端部(ここでは上端部)に切り欠き7Kが形成されていても良い。この切り欠き7Kの形態としては、溶融した樹脂材料Jの流動を妨げないものであり、図4(a)に示すように、被覆体7の開口端部に線状の切り込みを入れたものであっても良いし、図4(b)に示すように、三角状又は円弧状の切り込みを入れたものであっても良い。その他、被覆体7の開口端部を切り欠いた形状は、溶融した樹脂材料Jが上端部からキャビティ31に流出しやすくする形状であれば良い。
その他、本実施形態の被覆体7は、図1に示すように、全体がポット21内に収容される構成であるが、被覆体7の上端部がポット21から伸び出る構成としても良い。この場合、被覆体7の上端部にフランジ部を形成し、当該フランジ部がポット21の開口周縁を覆う構成としても良い。このフランジ部により、溶融した樹脂材料Jがポット21の内面とプランジャ51との摺動部に侵入しにくくすることができる。
次に、被覆体7をポット21の内面と樹脂材料Jとの間に配置する方法について説明する。
被覆体7をポット21の内面と樹脂材料Jとの間に配置する方法としては、(1)樹脂材料Jをポット21に収容する前に、ポット21に被覆体7を配置する方法、(2)樹脂材料Jをポット21に収容する前に、当該樹脂材料Jを被覆体7で覆い、被覆体7で覆われた樹脂材料Jをポット21に収容することで、被覆体7をポット21に配置する方法を挙げることができる。
上記(1)において、ポット21に被覆体7を配置する構成としては、被覆体搬送機構(不図示)によりポット21に配置する構成が考えられる。上記(2)において、ポット21に被覆体7を配置する構成としては、樹脂成形装置外で予め人又は機械により樹脂材料Jが被覆体7に覆われたものを準備し、樹脂材料搬送機構(不図示)によりポット21に配置する構成、又は、樹脂成形装置内で樹脂材料Jに被覆体7を巻きつける等によって樹脂材料Jを被覆体7で覆う被覆機構を設けておき、当該被覆機構によって樹脂材料Jが被覆体7に覆われたものを、樹脂材料搬送機構(不図示)によりポット21に配置する構成が考えられる。なお、樹脂材料搬送機構により搬送される途中に被覆機構部を設けても良い。
<樹脂成形品Pの製造方法の全体工程>
まず、図5(a)に示すように、型開きされた状態の下型2のポット21内に樹脂材料J及び被覆体7を収容する。また、下型2の装着部22に成形対象物Wを装着する。
そして、図5(b)に示すように、上型3及び下型2を型締めして成形対象物Wを上型3と下型2とで挟み込む。このとき、成形対象物Wの電子部品Wxは、上型3のキャビティ31内に収容された状態となる。
そして、ポット21内で溶融した樹脂材料Jをプランジャ51によって押し出す。これにより、図6(c)に示すように、溶融した樹脂材料Jは、上型3のカル部32及びランナ部33を通過してキャビティ31に導入される。ここで、被覆体7を樹脂製のものとした場合には、樹脂成形装置100に備えられたヒータの熱により柔らかくなり、溶融した樹脂材料Jの流動を阻害しにくい。
そして、図6(d)に示すように、硬化に必要な所要時間だけ溶融した樹脂材料Jを加熱することによって、樹脂材料Jを硬化させて硬化樹脂を形成する。これにより、キャビティ31内の電子部品Wxとその周辺の基板とは、キャビティ31の形状に対応して成形された硬化樹脂(封止樹脂)内に封止される。
次に、硬化に必要な所要時間の経過後において、図7(e)に示すように、上型3と下型2とを型開きして、封止済基板(樹脂成形品P)を不要樹脂J1とともに離型して一体的に搬送する。ここで、不要樹脂J1は、カル部32に残留した樹脂(カルJ11)及びランナ部33に残留した樹脂(ランナJ12)とからなる。その後、成形型(上型3及び下型2)から離れた別のスペースで、図7(f)に示すように、樹脂成形品Pから不要樹脂J1を除去し、不要樹脂J1を廃棄する。ここで、樹脂成形後において被覆体7は、カル部32又はランナ部33に残留し、カル部32及びランナ部33に残留した不要樹脂J1(カルJ11又はランナJ12)内に含まれており、当該不要樹脂J1とともに廃棄される。
<実験例1>
各種素材の被覆体7を用いた場合と被覆体7を用いない場合とで、1回の樹脂成形でポット21の内面及びプランジャ51に付着する樹脂カスを観察した。
被覆体7の形状は、樹脂材料Jの外側周面を覆うとともに樹脂材料Jの底面を覆う形状(図3(1)に示す形状)とした。樹脂材料Jは、半導体封止用エポキシ樹脂組成物(一般樹脂A)である。また、被覆体7の素材としては、コピー紙、耐油紙、無塵紙、ポリエチレンテレフタラート(PET)フィルム、ポリスチレン系の離型フィルム、フッ素樹脂(ETFE)フィルムを用いた。
図8に示すように、被覆体7を用いない場合は、ポット21の内面及びプランジャ51の両方において樹脂カスの付着が激しいことが分かる。一方で、被覆体7を用いた場合は、被覆体7を用いない場合に比べて、ポット21の内面及びプランジャ51の両方において付着する樹脂カスが低減された。特に、耐油紙、PETフィルム、離型フィルム、ETFEフィルムにおいて、樹脂カスが大幅に低減された。なお、折り曲げ性(加工性)及びコスト性を考えた場合には、耐油紙、PETフィルム、離型フィルムが望ましい。
<実験例2>
各種素材の被覆体7を用いた場合と被覆体7を用いない場合とで、連続成形後におけるポット21の内面の樹脂カス及びプランジャ51の下部に堆積した樹脂カスを観察した。なお、プランジャ51の下部に堆積した樹脂カスは、下型2のポット21の内面とプランジャ51の摺動部を通じて下型2の貫通孔2Hの下側開口から落下して生じる。また、被覆体7の形状は、樹脂材料Jの外側周面のみを覆い、底面は覆わない形状(図2に示す形状)とした。
樹脂材料Jを、半導体封止用エポキシ樹脂組成物(一般樹脂A、B)とした場合には、耐油紙の被覆体7を用いた場合と、被覆体7を用いない場合とで100回連続成形した後の状態を比較した。
図9の左側「一般樹脂」に示すように、被覆体7を用いない場合に比べて、被覆体7を用いた場合及び離型フィルムの被覆体7を用いた場合は、ポット21の内面に付着した樹脂カスが低減されているだけでなく、プランジャ51の下部に堆積した樹脂カスが低減されていることが分かる。特に、離型フィルムの被覆体7を用いた場合には、どちらの一般樹脂においても、プランジャ51の下部に堆積した樹脂カスがほとんど無いことが分かる。また、プランジャ51の下部に堆積した樹脂カス発生量(g/100回)を比較したところ、一般樹脂Aにおいては、被覆体7を用いた場合は、被覆体7を用いない場合に比べて、樹脂カス発生量が95.7%低減された。また、一般樹脂Bにおいては、同じく樹脂カス発生量が90.4%低減された。さらに、離型フィルムの被覆体7を用いた場合は、どちらの一般樹脂においても、樹脂カス発生量が計量不能なほど低減された。これらの結果により、被覆体7がプランジャ51の上面の周縁部を覆い、被覆体7がポット21の内面とプランジャ51との摺動部を塞ぐことにより、溶融した樹脂材料Jが摺動部に侵入しにくくなっていることが分かる。
また、樹脂材料Jを、モールドアンダーフィル(MUF)用樹脂(MUF用樹脂C)とした場合には、耐油紙の被覆体7を用いた場合と、離型フィルムの被覆体7を用いた場合と、被覆体7を用いない場合とで75回連続成形した後の状態を比較した。
図9の右側「MUF用樹脂」に示すように、被覆体7を用いない場合に比べて、耐油紙の被覆体7を用いた場合及び離型フィルムの被覆体7を用いた場合は、ポット21の内面に付着した樹脂カスが低減されているだけでなく、プランジャ51の下部に堆積した樹脂カスが低減されていることが分かる。特に、離型フィルムの被覆体7を用いた場合には、プランジャ51の下部に堆積した樹脂カスがほとんど無いことが分かる。また、プランジャ51の下部に堆積した樹脂カス発生量(g/75回)を比較したところ、耐油紙の被覆体7を用いた場合は、被覆体7を用いない場合に比べて樹脂カス発生量が92.0%低減され、離型フィルムの被覆体7を用いた場合は、樹脂カス発生量が計量不能なほど低減された。これらの結果により、被覆体7がプランジャ51の上面の周縁部を覆い、被覆体7がポット21の内面とプランジャ51との摺動部を塞ぐことにより、溶融した樹脂材料Jが摺動部に侵入しにくくなっていることが分かる。
<本実施形態の効果>
本実施形態の樹脂成形装置100によれば、ポット21の内面と樹脂材料Jとの間に、樹脂材料Jを取り囲む被覆体7を配置しているので、樹脂材料Jがポット21の内面に触れないようにでき、ポット21の内面に付着する樹脂カスを低減することができる。また、被覆体7により樹脂材料Jが取り囲まれているので、たとえモールドアンダーフィル(MUF)用樹脂やクリアレジンなどの高流動樹脂であったとしても、ポット21の内面とプランジャ51との摺動部に溶融した樹脂材料Jが侵入しにくくなり、摺動部に侵入した樹脂材料Jによって発生する樹脂カスを低減することができる。ここで、被覆体7は、樹脂材料Jが押し出される方向を開放しているので、プランジャ51による樹脂材料Jの押し出しを邪魔することもない。
このように樹脂カスを低減することにより、次の樹脂成形へのコンタミネーションを低減でき樹脂成形品Pの品質を向上することができる。また、樹脂カスによる設備トラブルを防止でき、清掃作業の頻度も低減できる。さらに、被覆体7を用いることにより、従来のようにポット21の内面とプランジャ51とのクリアランスを狭める設計をする必要がなく、プランジャ51の摺動抵抗の増大を防止できるので、ポット21及びプランジャ51の長寿命化も実現できる。
<その他の変形実施形態>
なお、本発明は前記実施形態に限られるものではない。
例えば、前記実施形態では、ポットが下型に形成されており、キャビティが上型に形成されたものであったが、ポット又はキャビティは何れの成形型に形成されたものであっても良い。
また、ポット及びプランジャは、断面円形状のものに限られず、例えば、断面矩形状等のその他の形状のものであっても良い。例えば、図10(a)~(e)に示すように、ポット21を平面視において縦横寸法が異なる形状(プランジャ51の摺動方向に直交する断面形状において縦横寸法が異なる形状)をなすものとすることができる。この場合、樹脂材料Jは、平面視においてポット21に対応して縦横寸法が互いに異なるものとなる。また、プランジャ51は、各ポット21に対応した形状をなしている。なお、図10において、被覆体7は図示していないが、例えば、樹脂材料Jに巻き付けられた状態でポット21に配置される。
具体的には、図10(a)のポット21は、平面視において縦横寸法が異なる矩形状をなすものであり、樹脂材料Jは、平面視においてポット21に対応して縦横寸法が異なる矩形状をなすものである。図10(b)のポット21は、平面視において縦横寸法が異なる矩形状をなし、角部がR形状とされたものであり、樹脂材料Jは、平面視においてポット21に対応して縦横寸法が異なる矩形状をなし、角部がR形状とされたものである。図10(c)のポット21は、平面視において縦横寸法が異なる長円形状をなすものであり、樹脂材料Jは、平面視においてポット21に対応して縦横寸法が異なる長円形状をなすものである。図10(d)は、複数のポット21が一列に形成されたものであり、各ポット21は、平面視において縦横寸法が異なる矩形状をなすものである。また、樹脂材料Jは、平面視において各ポット21に対応して縦横寸法が異なる矩形状をなす例えばペレット状のものである。図10(e)のポット21は、平面視において縦横寸法が異なる細長い矩形状をなすものであり、樹脂材料Jは、平面視においてポット21に対応して縦横寸法が異なる板状をなすものである。
さらにに、図11に示すように、ポット21及びプランジャ51により形成される樹脂収容空間が浅い構成とし、当該ポット21内に樹脂材料Jを面状に収容する構成としても良い。ここで、収容される樹脂材料Jとしては、粉粒体状、液状又は板状であることが考えられる。この構成においては、粉粒体状又は液状の樹脂材料Jの場合には、被覆体7を樹脂材料に巻きつけることができないため、あるいは、板状の樹脂材料Jの場合には、樹脂材料Jの厚みが小さく巻きつけることが難しいため、予め被覆体7をポット21内に配置することが考えられる。ここで、樹脂材料Jの押し出しを邪魔しないために、被覆体7はポット21の上部開口からはみ出さないように配置される(図11(c)参照)。なお、被覆体7は、ポット21内に配置された状態において底を有する構成であっても良いし、底を有さない構成であっても良い。
また、樹脂成形装置はマルチプランジャ方式に限定されず、1つのプランジャを有するものであっても良い。この場合、プランジャユニットは1つのプランジャを有する構成となる。
その上、一対の成形型は、上型及び下型に限られず、トランスファ成形に用いることができるその他の成形型(例えば、中間プレートが存在しているトップゲートタイプの成形型)であっても良い。
その他、本発明は前記実施形態に限られず、その趣旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能であるのは言うまでもない。
本発明によれば、樹脂成形時における樹脂カスの発生を抑制することができる。

Claims (11)

  1. 成形型のポット内に収容した樹脂材料をプランジャによって前記成形型のキャビティ内に押し出すことにより、成形対象物を樹脂封止して樹脂成形品を製造する樹脂成形品の製造方法であって、
    前記ポットの内面と前記樹脂材料との間に、前記樹脂材料が押し出される方向を開放しつつ前記樹脂材料を取り囲む被覆体を配置し、
    前記被覆体に取り囲まれた前記樹脂材料を前記プランジャによって前記キャビティに押し出す樹脂成形品の製造方法であり、
    前記被覆体は、シート状のものであり、前記樹脂材料に巻き付けられた状態で前記ポットに配置されている、樹脂成形品の製造方法。
  2. 前記被覆体は、前記ポットの内面に密着するものである、請求項に記載の樹脂成形品の製造方法。
  3. 前記被覆体は、前記ポット内で溶融又は軟化した前記樹脂材料から加わる内圧によって前記ポットの内面に密着する、請求項に記載の樹脂成形品の製造方法。
  4. 前記被覆体は、前記ポット内において前記樹脂材料と前記プランジャとの間にも配置されている、請求項1乃至の何れか一項に記載の樹脂成形品の製造方法。
  5. 前記被覆体は、成形温度において溶融及び熱分解しない材料から構成されている、請求項1乃至の何れか一項に記載の樹脂成形品の製造方法。
  6. 前記被覆体は、紙製、樹脂製、セルロース製、織布製、不織布製又はこれらのうち少なくとも2つを含む複合材製のものである、請求項1乃至の何れか一項に記載の樹脂成形品の製造方法。
  7. 前記被覆体は、前記樹脂材料が押し出される側の開口端部に切り欠きが形成されている、請求項1乃至の何れか一項に記載の樹脂成形品の製造方法。
  8. 前記成形型のポットは、平面視において円ではない形状をなすものであり、
    前記ポットに収容された前記樹脂材料は、平面視において前記ポットに対応して円ではない形状である、請求項1乃至の何れか一項に記載の樹脂成形品の製造方法。
  9. 前記成形型のポットは、平面視において縦横寸法が異なる形状をなすものであり、
    前記ポットに収容された前記樹脂材料は、平面視において前記ポットに対応して縦横寸法が互いに異なるものである、請求項1乃至の何れか一項に記載の樹脂成形品の製造方法。
  10. 前記樹脂材料は、粉粒体状、液状又は板状である、請求項1乃至の何れか一項に記載の樹脂成形品の製造方法。
  11. 前記被覆体は、樹脂成形後において、成形型のカル部又はランナ部に残留し、当該カル部又はランナ部に残留した樹脂とともに廃棄される、請求項1乃至10の何れか一項に記載の樹脂成形品の製造方法。
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